特許異議申立
2021-700258
吸水性樹脂粒子
- 審判番号
- 2021-700258
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-055275外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6752319
- 請求日
- 2021年03月09日
- 審決日
- 2021年10月11日
- 公報発行日
- 2022年03月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 分類
- P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J) / P1651.536-YAA(C08J) / P1651.537-YAA(C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6752319号発明「吸水性樹脂粒子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6752319号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。
特許第6752319号の請求項1及び2に係る特許を維持する。
特許第6752319号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6752319号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成31年3月22日(優先権主張 平成30年12月12日)の出願であって、令和2年8月20日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年9月9日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和3年3月9日に特許異議申立人 株式会社日本触媒(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし3)がされ、同年5月21日付けで取消理由が通知され、同年7月26日に特許権者 住友精化株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正の請求がされるとともに意見書が提出され、同年同月30日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年9月3日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和3年7月26日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、「吸水性樹脂粒子であって、」とあるのを、「吸水性樹脂粒子であって、
前記無機粒子が非晶質シリカで、前記無機粒子の平均粒子径が0.1~50μmであり、」と訂正する。
併せて、請求項1を引用する請求項2についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に、「吸水速度指数Iが2mL/g以上であり、」とあるのを、「吸水速度指数Iが2mL/g以上30mL/g以下であり、」と訂正する。
併せて、請求項1を引用する請求項2についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に、「吸水速度指数IIが8mL/g以上である、」とあるのを、「吸水速度指数IIが13mL/g以上であり、」と訂正する。
併せて、請求項1を引用する請求項2についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に、「吸水性樹脂粒子。」とあるのを、「 当該吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量が35~60g/gである、吸水性樹脂粒子。」と訂正する。
併せて、請求項1を引用する請求項2についても、請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「無機粒子」の種類及びその平均粒子径を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2による請求項1についての訂正は、「吸引速度指数I」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3による請求項1についての訂正は、「吸引速度指数II」の数値範囲を狭くするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4による請求項1についての訂正は、「吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量」に関する限定を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし4による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2についての訂正について
訂正事項1ないし4による請求項2についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)請求項3についての訂正について
訂正事項5による請求項3についての訂正は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、請求項1ないし3についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
また、請求項1ないし3についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし3は一群の請求項に該当するものである。
そして、請求項1ないし3についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし3に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子であって、
前記無機粒子が非晶質シリカで、前記無機粒子の平均粒子径が0.1~50μmであり、
吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上であり、
吸水速度指数Iが2mL/g以上30mL/g以下であり、
吸水速度指数IIが13mL/g以上であり、
当該吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量が35~60g/gである、
吸水性樹脂粒子。
【請求項2】
当該吸水性樹脂粒子の中位粒子径が、250~850μmである、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項3】(削除)」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和3年3月9日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第3ないし5、7及び13ないし19号証のいずれかに基づく新規性)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3ないし5、7及び13ないし19号証のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第8又は1号証若しくは甲第13、14及び16ないし19号証のいずれかに基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第8又は1号証若しくは甲第13、14及び16ないし19号証のいずれかに記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・全ての無機粒子とその含有量にて、シリカ粒子を所定量添加した場合と同様に、吸水性樹脂粒子の3つのパラメータ「静的吸引指数α、吸水速度指数I、吸水速度指数II」を制御して、本件特許発明1ないし3の発明の課題を解決できることはありえない。
よって、本件特許発明1ないし3の発明の課題を解決するためには、無機粒子の種類と使用量を規定することが必須の構成であると考えられる。
一方、本件特許発明1ないし3は、無機粒子の種類と使用量が特定されていない。
したがって、本件特許発明1ないし3は、発明の詳細な説明に記載された範囲を超えている。
4 申立理由4(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・本件特許発明1ないし3は、無機粒子の種類と使用量が欠如しており、発明の詳細な説明に、本件特許発明1ないし3を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
5 証拠方法
甲第1号証:国際公開第2016/104374号
甲第2号証:国際公開第2011/086438号
甲第3号証:特開2006-68731号公報
甲第4号証:特開2005-111474号公報
甲第5号証:国際公開第2017/170605号
甲第6号証:国際公開第2018/155591号
甲第7号証:特開2012-236898号公報
甲第8号証:特開2012-12451号公報
甲第9号証:特開2011-178969号公報
甲第10号証:甲第3号証の実施例2の実験成績証明書
甲第11号証:甲第4号証の実施例32の実験成績証明書
甲第12号証:甲第5号証の実施例2及び実施例11-5の実験成績証明書
甲第13号証:特開2009-019065号公報
甲第14号証:特開2009-057496号公報
甲第15号証:国際公開第2008/015980号
甲第16号証:特開平2-227435号公報
甲第17号証:特開昭60-163956号公報
甲第18号証:特開平04-214736号公報
甲第19号証:国際公開第2015/129917号
甲第20号証:甲第15号証の実施例3の実験成績証明書
甲第21号証:特許第5485805号公報
甲第22号証:Modern Superabsorbent Polymer Technology(発行1998)p69-117
甲第23号証:特開2003-088552号公報
甲第24号証:特開2000-342963号公報
甲第25号証:日本アエロジル株式会社 製品案内(第10版)
参考文献1:特開2008-133441号公報
なお、参考文献1は令和3年9月3日に提出された意見書に添付されたものである。また、証拠の表記は、特許異議申立書及び上記意見書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
令和3年5月21日付けで通知した取消理由の概要はおおむね次のとおりである。
1 取消理由1(甲3ないし5、7及び14ないし19のいずれかに基づく新規性)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3ないし5、7及び14ないし19のいずれかに記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由1は、申立理由1のうち、甲3ないし5、7及び14ないし19のいずれかに基づく新規性を含むものである。
2 取消理由2(甲3ないし5、7及び14ないし19のいずれかに基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲3ないし5、7及び14ないし19のいずれかに記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由2は、申立理由2のうち、甲14及び16ないし19のいずれかに基づく進歩性を含むものである。
3 取消理由3(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由3は申立理由4とおおむね同旨である。
・本件特許発明1における「無機粒子」が「平均粒径が0.1~50μm」の「非晶質シリカ等のシリカ粒子」以外である場合、特に「疎水化された無機粉末」の場合に、どの種類・粒径の無機粒子を選択し、どの程度含有させればよいのか、当業者は理解できない。
よって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1を生産し、使用することができる程度の記載があるとはいえない。
また、本件特許発明2及び3についても同様である。
したがって、本件特許発明1ないし3に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足しない。
第6 取消理由についての当審の判断
以下に述べるように、取消理由1ないし3には理由がない。
1 取消理由1(甲3ないし5、7及び14ないし19のいずれかに基づく新規性)及び取消理由2(甲3ないし5、7及び14ないし19のいずれかに基づく進歩性)について
(1)甲3ないし5、7及び14ないし19に記載された事項等
ア 甲3に記載された事項及び甲3発明
(ア)甲3に記載された事項
甲3には、「吸水性樹脂を主成分とする粒子状吸水剤、その製造方法及び吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0148】
[アクリル酸の製造例1]
市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm含有)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)等の除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm含有)を得た。」
・「【0151】
[実施例1]
攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2Lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK-エステルF-50、HLB=6)3.8gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出した。フラスコ中に、製造例1のアクリル酸の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、製造例1のアクリル酸21.6g及びN,N’-メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC-ダイセルEP-850)0.4gを溶解させ、モノマー濃度35質量%のモノマー水溶液を調製した。このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する酸素を追い出した。次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させた。その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了した。重合終了後、シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、ろ過し、80℃で減圧乾燥し、球状のポリマー粉体を得た。得られたポリマー粉体の含水率は、5.6%であった。
【0152】
上記ポリマー100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4-ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部とを混合した。上記の混合物を210℃で45分間加熱処理した。表面架橋後さらに、水3質量部を添加して60℃で30分密閉して加熱し、850μmで分級することで造粒された粒子状吸水剤(1)を得た。得られた粒子状吸水剤(1)の無加圧下吸収倍率、1.9kPaでの加圧下吸収倍率、粒度分布、質量平均粒子径(D50)、対数標準偏差(σζ)及び粒子径150μm未満の質量百分率、水可溶分、耐尿性評価、吸収速度、吸湿ブロッキング率、揮発性有機溶媒、及び180℃での3時間加熱後の残存モノマーの含有量が表1及び表2に示される。」
・「【0155】
[実施例2]
実施例1で得られた粒子状吸水剤(1)100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製、アエロジル200(1次粒子の平均粒子径12nm))0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、粒子状吸水剤(2)を得た。得られた粒子状吸水剤(2)を実施例1と同様に評価した結果が、表1及び表2に示される。」
・「【0162】
【表1】
[図:0001382381000001.jpg]
【0163】
【表2】
[図:0001382381000002.jpg]
」
(イ)甲3発明
甲3に記載された事項を、特に実施例2に関して整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。
「市販のアクリル酸(アクリル酸ダイマー2000ppm、酢酸500ppm、プロピオン酸500ppm含有)を、無堰多孔板50段を有する高沸点不純物分離塔の塔底に供給して、還流比を1として蒸留し、マレイン酸やアクリル酸からなる二量体(アクリル酸ダイマー)等の除去後、さらに晶析を行なうことで、アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm含有)を得、攪拌機、還流冷却機、温度計、窒素ガス導入管及び滴下漏斗を付した2Lの四つ口セパラブルフラスコにシクロヘキサン1.0Lをとり、分散剤としてのショ糖脂肪酸エステル(第一工業薬品株式会社製、DK-エステルF-50、HLB=6)3.8gを加えて溶解させ、窒素ガスを吹き込んで溶存酸素を追い出し、フラスコ中に、上記アクリル酸の中和物であるアクリル酸ナトリウム84.6g、上記アクリル酸21.6g及びN,N’-メチレンビスアクリルアミド0.016gをイオン交換水197gに溶解し、さらにヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業株式会社製、HEC-ダイセルEP-850)0.4gを溶解させ、モノマー濃度35質量%のモノマー水溶液を調製し、このモノマー水溶液に過硫酸カリウム0.15gを加えて溶解させた後、窒素ガスを吹き込んで水溶液内に溶存する酸素を追い出し、次いでこのフラスコ内のモノマー水溶液を上記セパラブルフラスコに加えて攪拌することにより分散させ、その後、浴温を60℃に昇温して重合反応を開始させた後、2時間この温度に保持して重合を完了し、重合終了後、シクロヘキサンとの共沸脱水により含水ゲル中の水を留去した後、ろ過し、80℃で減圧乾燥し、球状のポリマー粉体を得、得られたポリマー粉体100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.03質量部と、1,4-ブタンジオール0.3質量部と、水2.7質量部とからなる表面架橋剤3.53質量部とを混合し、上記の混合物を210℃で45分間加熱処理し、表面架橋後さらに、水3質量部を添加して60℃で30分密閉して加熱し、850μmで分級することで造粒された粒子状吸水剤(1)を得、この粒子状吸水剤(1)100質量部に微粒子状の二酸化ケイ素(日本アエロジル株式会社製、アエロジル200(1次粒子の平均粒子径12nm))0.3質量部を添加・混合(ドライブレンド)して、得た粒子状吸水剤(2)。」
イ 甲4に記載された事項及び甲4発明
(ア)甲4に記載された事項
甲4には、「吸水剤およびその製法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0248】
(実施例15)
断熱材である発泡スチロールで覆われた内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸192.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)2.79g、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液156.8gと40℃に調温したイオン交換水239.3gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合した。中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度39重量%、中和率71.3モル%が得られた。さらに、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液8.89gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1-1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注いだ。
【0249】
単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始した。水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮した。この膨張収縮は約1分以内に終了し、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出した。
【0250】
この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、重量平均粒子径325μm、対数標準偏差(σζ)0.35の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは31.4g/g、ゲル層膨潤圧は40.1kdyne/cm2であった。その他の諸物性を表12、13に示した。
【0251】
得られた吸水性樹脂粒子100重量部にエチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール1重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を190℃で35分間加熱処理した。さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得た。得られた吸水剤(15)の諸物性を表12に示した。」
・「【0270】
(実施例20)
実施例15に記載の方法においてポリエチレングリコールジアクリレートを0.05モル%に変更した以外は同様の操作を行い、重量平均粒子径323μm、対数標準偏差(σζ)0.37の不定形破砕状の吸水性樹脂を得た。得られた吸水性樹脂のCRCsは43.5g/g、ゲル層膨潤圧は35.1kdyne/cm2であった。その他の諸物性を表12、13に示した。」
・「【0282】
(実施例32)
実施例20で得られた吸水剤(20)100重量部に、ReolosilQS-20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、吸水剤を得た。得られた吸水剤の諸物性を表14、15に示した。」
・「【0296】
【表14】
[図:0001382381000003.jpg]
【0297】
【表15】
[図:0001382381000004.jpg]
」
(イ)甲4発明
甲4に記載された事項を、特に実施例32に関して整理すると、甲4には次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。
「断熱材である発泡スチロールで覆われた内径80mm、容量1リットルのポリプロピレン製容器に、アクリル酸192.2g、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)0.05モル%、およびジエチレントリアミン5酢酸・5ナトリウム0.01gを混合した溶液(A)と、48.5重量%NaOH水溶液156.8gと40℃に調温したイオン交換水239.3gを混合した溶液(B)を、マグネチックスターラーで攪拌しながら(A)に(B)を開放系で一気に加え混合し、中和熱と溶解熱で液温が約100℃まで上昇した単量体水溶液(単量体濃度39重量%、中和率71.3モル%)が得られ、さらに、この単量体水溶液に3重量%の過硫酸ナトリウム水溶液8.89gを加え、数秒攪拌した後すぐに、ホットプレート(NEO HOTPLATE H1-1000(株)井内盛栄堂製)により表面温度を100℃まで加熱された、内面にテフロン(登録商標)を貼り付けた底面250×250mmのステンレス製バット型容器中に開放系で注ぎ、単量体水溶液がバットに注がれて間もなく重合は開始し、水蒸気を発生し上下左右に膨張発泡しながら重合は進行し、その後、底面よりもやや大きなサイズにまで収縮し、この膨張収縮は約1分以内に終了し、3分間重合容器中に保持した後、含水重合体を取り出し、この細分化された含水重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で40min間熱風乾燥を行い、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmのJIS標準篩で分級することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂を得、得られた吸水性樹脂粒子100重量部にエチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール1重量部、純水3重量部の混合液からなる表面架橋剤を混合した後、混合物を190℃で35分間加熱処理し、さらに、その粒子を目開き600μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、表面が架橋された吸水性樹脂を得、この吸水剤100重量部に、ReolosilQS-20(親水性アモルファスシリカ、TOKUYAMA社製)0.3重量部を均一に混合し、得た吸水剤。」
ウ 甲5に記載された事項及び甲5発明
(ア)甲5に記載された事項
甲5には、「粒子状吸水剤」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「<ダメージ付与後の微粉増加量>
[0293] 吸水剤に下記のペイントシェーカーテストを行い、目開き150μmのJIS標準篩で分級し、テスト前後における150μm以下の粒子径を有する粒子の増加量を測定した。
[0294] [ペイントシェーカーテスト]
ペイントシェーカーテスト(PS-test)とは、直径6cm、高さ11cmのガラス製容器に、直径6mmのガラスビーズ10g、吸水性樹脂30gを入れてペイントシェーカー(東洋製機製作所 製品No.488)に取り付け、800cycle/min(CPM)で30分間、振盪するものであり、装置詳細は特開平9-235378号公報に開示されている。」
・「[0331] [製造例2]
アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(2)を作製した。
[0332] 次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(2)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングした。尚、この時、中和熱によって単量体水溶液(2)の液温は81℃まで上昇した。
[0333] 更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給した。その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(2)を得た。得られた帯状の含水ゲル(2)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(2)を得た。含水ゲル(2)は、CRC36.0[g/g]、樹脂固形分48.1重量%であった。」
・「[0351] [実施例1]
(ゲル粉砕)
上記製造例1で得られた含水ゲル(1)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕した。該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径9.5mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用した。該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(1)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給する。この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は26.9[J/g]、GGE(2)は13.6[J/g]であった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(1)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粉砕ゲル、即ち粒子状含水ゲル(1)の温度は85℃に上昇していた。
[0352] 上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(1)は、樹脂固形分49.1重量%、重量平均粒子径(D50)994μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)1.01であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(1)の物性を表2に示す。
[0353](乾燥)
次に、上記粒子状含水ゲル(1)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(1)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(1)を得る。熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]である。尚、熱風の風速は、日本カノマックス株式会社製定温度熱式風速計アネモマスター 6162で測定する。
[0354](粉砕・分級)
次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(1)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(1)を得る。吸水性樹脂粒子(1)は、重量平均粒子径(D50)348μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32であり、CRC42.1[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.5重量%である。
[0355](表面処理・添加剤添加)
次に、上記吸水性樹脂粒子(1)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、1,4-ブタンジオール0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(1)のCRCが35g/gとなるように加熱処理する。その後冷却を行い、上記ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合する。60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4重量部を均一に添加する。こうして、粒子状吸水剤(1)を得た。粒子状吸水剤(1)の諸物性を表3~6に示す。なお、ペイントシェーカーテスト後の150μm通過粒子増加量は粒子状吸水剤に対して、さらにペイントシェーカーテストを実施した際(おむつなどの吸収体製造時のプロセスダメージを想定したもの)の150μm通過粒子の増加量を示す。」
・「[0356] [実施例2]
実施例1と以下に示す操作以外は同様の操作を行う。含水ゲル(1)のかわりに上記製造例2で得られた含水ゲル(2)を用いる。スクリュー押出機の先端部の多孔板の孔径を8mmに変更する。この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9[J/g]、GGE(2)は17.5[J/g]であった。尚、ゲル粉砕前の含水ゲル(2)の温度は80℃であり、ゲル粉砕後の粉砕ゲル、即ち粒子状含水ゲル(2)の温度は84℃に上昇していた。
[0357] 上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(2)は、樹脂固形分47.5重量%、重量平均粒子径(D50)860μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.95であった。当該ゲル粉砕工程の条件を表1に、粒子状含水ゲル(2)の物性を表2に示す。
[0358] 次いで、実施例1と同様の乾燥・粉砕・分級操作を行い、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得る。吸水性樹脂粒子(2)は、重量平均粒子径(D50)355μm、粒度分布の対数標準偏差(σζ)0.32であり、CRC48.2[g/g]、150μm通過粒子(目開き150μmの篩を通過する粒子の割合)0.4重量%である。
[0359] 次に、上記吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(2)のCRCが38g/gとなるように加熱処理する。その後、実施例1と同様の操作を行う。こうして、粒子状吸水剤(2)を得た。粒子状吸水剤(2)の諸物性を表3~6に示す。」
・「[0376]
[実施例11-1]
実施例2で得られた吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、175℃で40分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(11-1)のCRCが38~40g/gとなるように加熱処理した。その後冷却を行い、上記ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、ハイドロタルサイト(製品名:DHT-6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O[一般式(1)のx=0.25、m=0.50]、体積平均粒子径0.5μm)0.3重量部を均一に混合した。こうして、粒子状吸水剤(11-1)を得た。粒子状吸水剤(11-1)の諸物性を表3~5に示す。なお、ペイントシェーカーテスト後の150μm通過粒子増加量は粒子状吸水剤に対して、さらにペイントシェーカーテストを実施した際(おむつなどの吸収体製造時のプロセスダメージを想定したもの)の150μm通過粒子の増加量を示す。また、吸水剤中のXRD測定によるハイドロタルサイトの含有量は0.3重量%であった。また、上記吸水剤の表面上に存在するハイドロタルサイトの粒度測定による平均粒子径は0.5μmであった。
・・・(略)・・・
[0380]
[実施例11-5]
実施例11-1の表面処理条件を、以下のとおり変更した。
吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.030重量部、プロピレングリコール1.0重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で45分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(11-5)のCRCが35~36g/gとなるように加熱処理した。その後冷却を行い、上記ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合した。60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、ハイドロタルサイト(製品名:DHT-6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO・4H2O[一般式(1)のx=0.25、m=0.50]、体積平均粒子径0.5μm)0.3重量部を均一に混合した。こうして、粒子状吸水剤(11-5)を得た。粒子状吸水剤(11-5)の諸物性を表3~5に示す。なお、ペイントシェーカーテスト後の150μm通過粒子増加量は粒子状吸水剤に対して、さらにペイントシェーカーテストを実施した際(おむつなどの吸収体製造時のプロセスダメージを想定したもの)の150μm通過粒子の増加量を示す。」
・「[0438]
[表3-1]
[図:0001382381000005.jpg]
」
(イ)甲5発明
甲5に記載された事項を、特に実施例2及び実施例11-5に関して整理すると、甲5には次の発明(以下、順に「甲5実施例2発明」及び「甲5実施例11-5発明」という。)が記載されていると認める。
<甲5実施例2発明>
「アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(2)を作製し、次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(2)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングし、更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給し、その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(2)を得、得られた帯状の含水ゲル(2)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(2)を得、上記含水ゲル(2)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕し、該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径8mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用し、該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(2)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給し、この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9[J/g]、GGE(2)は17.5[J/g]であり、上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(2)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(2)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(2)を得、熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]であり、次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(2)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得、次に、上記吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部、エチレンカーボネート0.4重量部、プロピレングリコール0.6重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、190℃で30分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(2)のCRCが38g/gとなるように加熱処理し、その後冷却を行い、ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合し、60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、二酸化ケイ素(商品名:アエロジル200、日本アエロジル製)0.4重量部を均一に添加して得た粒子状吸水剤(2)。」
<甲5実施例11-5発明>
「アクリル酸300重量部、48重量%水酸化ナトリウム水溶液100重量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(平均n数9)0.61重量部、1.0重量%エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)5ナトリウム水溶液6.5重量部、脱イオン水346.1重量部からなる単量体水溶液(2)を作製し、次に、40℃に調温した上記単量体水溶液(2)を定量ポンプで連続供給した後、更に48重量%水酸化ナトリウム水溶液150.6重量部を連続的にラインミキシングし、更に、4重量%過硫酸ナトリウム水溶液14.6重量部を連続的にラインミキシングした後、両端に堰を備えた平面状の重合ベルトを有する連続重合機に、厚みが10mmとなるように連続的に供給し、その後、重合(重合時間3分間)が連続的に行われ、帯状の含水ゲル(2)を得、得られた帯状の含水ゲル(2)を重合ベルトの進行方向に対して幅方向に、切断長が300mmとなるように等間隔に連続して切断することで、含水ゲル(2)を得、上記含水ゲル(2)を、スクリュー押出機に供給しゲル粉砕し、該スクリュー押出機としては、先端部に直径100mm、孔径8mm、孔数40個、開孔率36.1%、厚さ10mmの多孔板が備えられた、スクリュー軸の外径が86mmのミートチョッパーを使用し、該ミートチョッパーのスクリュー軸回転数を130rpmとした状態で、含水ゲル(2)を4640[g/min]、同時に、水蒸気を83[g/min]でそれぞれ供給し、この時のゲル粉砕エネルギー(GGE)は31.9[J/g]、GGE(2)は17.5[J/g]であり、上記ゲル粉砕工程で得られた粒子状含水ゲル(2)をゲル粉砕終了後1分以内に通気板上に散布(この時の粒子状含水ゲル(2)の温度は80℃)し、185℃で30分間乾燥を行い、乾燥重合体(2)を得、熱風の平均風速は通気ベルトの進行方向に対して垂直方向に1.0[m/s]であり、次いで、上記乾燥工程で得られた乾燥重合体(2)全量を3段ロールミルに供給して粉砕(粉砕工程)し、その後更に、目開き710μm及び175μmのJIS標準篩で分級することで、不定形破砕状の吸水性樹脂粒子(2)を得、次に、吸水性樹脂粒子(2)100重量部に対して、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.030重量部、プロピレングリコール1.0重量部及び脱イオン水3.0重量部からなる(共有結合性)表面架橋剤溶液を均一に混合し、100℃で45分間程度、得られる吸水性樹脂粉末(11-5)のCRCが35~36g/gとなるように加熱処理し、その後冷却を行い、ペイントシェーカーテストを実施し、製造プロセス相当のダメージを付与した後に、吸水性樹脂粒子100重量部に対して、水1重量部、ジエチレントリアミン5酢酸3ナトリウム0.01重量部からなる水溶液を均一に混合し、60℃で1時間乾燥した後、目開き710μmのJIS標準篩を通過させ、ハイドロタルサイト(製品名:DHT-6、協和化学工業株式会社製、Mg6Al2(OH)16CO・4H2O[一般式(1)のx=0.25、m=0.50]、体積平均粒子径0.5μm)0.3重量部を均一に混合して得た粒子状吸水剤(11-5)。」
エ 甲7に記載された事項及び甲7発明
(ア)甲7に記載された事項
甲7には、「吸水性樹脂、及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【請求項7】
以下(イ)~(ニ)の特徴を有する吸水性樹脂。
(イ)中位粒子径が200~800μm、かつ粒子径分布の均一度が1.0~2.2
(ロ)無荷重下の吸水量が35g/g以上、かつ荷重下の吸水量が15mL/g以上
(ハ)初期吸水速度が0.35mL/s以下、かつ中期吸水速度が0.20mL/s以上
(ニ)水可溶分が20質量%以下」
・「【0018】
水溶性エチレン性不飽和単量体
本発明の製造方法において使用される水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(本明細書においては、「アクリル」、及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記し、「アクリレート」、及び「メタクリレート」を合わせて「(メタ)アクリレート」とそれぞれ表記する。以下同様)、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体、並びに、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体やその4級化物等を挙げることができる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体のなかでも、アクリル酸、メタクリル酸、及びそれらの塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミドが好ましく用いられる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体は、1種単独で使用してもよく、また2種以上組み合わせて使用してもよい。」
・「【0064】
かくして得られる吸水性樹脂の乾燥後における水分率は、流動性を持たせる観点から20質量%未満であり、好ましくは1~15質量%、より好ましくは3~10質量%である。また、流動性を向上させるために、非晶質シリカ粉末を添加してもよい。水分率は、実施例に記載の方法に従って測定される。」
・「【0067】
本発明の吸水性樹脂の中位粒子径としては、例えば200~800μmが挙げられるが、衛生材料用途に好適に用いられる観点から、250~600μmがより好ましく、300~550μmがさらに好ましく、350~500μmがよりさらに好ましい。粉体としての流動性が悪く、かつ吸水時のゲルブロッキング現象を発生しやすい微粉末の使用を避け、吸収体の吸収性能を高める観点から、吸水性樹脂の中位粒子径は200μm以上であることが好ましく、吸収体のゴツゴツする感触を低減して、触感を改善するという観点から、吸水性樹脂の中位粒子径は800μm以下であることが好ましい。中位粒子径は、後述の実施例に記載の方法に従って測定される。」
・「【0071】
本発明の吸水性樹脂の初期吸水速度は、例えば0.35mL/s以下が挙げられるが、液浸透の初期におけるゲルブロッキング現象の発生を抑制して吸収体における液拡散を促進させる観点から、好ましくは0.05~0.30mL/sであり、さらに好ましくは0.10~0.25mL/sである。液拡散させつつ、液浸透の初期における肌へのドライ感を確保する観点から、0.05mL/s以上がより好ましい。なお、本明細書において、初期吸水速度とは、吸水時間0~30秒間における1秒間あたりの液体の吸水量(mL)である。吸水性樹脂の初期吸水速度は、後述の実施例に記載の方法に従って測定される。
【0072】
本発明の吸水性樹脂の中期吸水速度は、例えば0.20mL/s以上が挙げられるが、液浸透の初期において拡散した液体を、吸収体から漏れが発生しない程度で速やかに吸収し、肌へのドライ感を確保する観点から、好ましくは0.25~0.60mL/sであり、さらに好ましくは0.30~0.50mL/sである。なお、本明細書において、中期吸水速度とは、吸水時間60~120秒間における1秒間あたりの液体の吸水量(mL)である。吸水性樹脂の中期吸水速度は、後述の実施例に記載の方法に従って測定される。」
・「【0092】
実施例1
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn-ヘプタン500mLをとり、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS-370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50℃まで冷却した。
一方、500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、20.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液154.3gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、室温にて撹拌して完全に溶解させた。過硫酸アンモニウム0.11g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド9.2mgを加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
攪拌機の回転数を450rpmとして、前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第1段目の重合後スラリーを得た。(なお、この重合後スラリーを120℃の油浴を用いて、水とn-ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、球状の1次粒子の中位粒子径は80μmであった。)
一方、別の500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液110.4gをとり、外部より冷却しつつ、24.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液149.9gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩0.13g、N,N’-メチレンビスアクリルアミド33.1mgを加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製した。
前記重合後スラリーの撹拌回転数を1000rpmに変更した後、23℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持したのち、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第2段目の重合後スラリーを得た。
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn-ヘプタンを共沸することにより、n-ヘプタンを還流しながら、256.1gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液8.10gを添加し、80℃で2時間保持した後、n-へプタンを蒸発させて乾燥することによって、球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂213.8gを得た。得られた吸水性樹脂の中位粒子径は400μm、水分率は6質量%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0093】
実施例2
実施例1において、第1段目の単量体に添加する過硫酸アンモニウムに代えて、過硫酸カリウム0.11gを添加し、重合後スラリーの温度を24℃に変更し、さらに、水とn-ヘプタンを共沸による系外に抜き出した水を258.1gに変更する以外は、実施例1と同様の操作を行い、球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂216.1gを得た。得られた吸水性樹脂の中位粒子径は360μm、水分率は7質量%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0094】
実施例3
実施例2において、第2段目の単量体に添加する2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩に代えて、過硫酸カリウム0.03gとL-アスコルビン酸0.002gを添加する以外は、実施例2と同様の操作を行い、球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂215.8gを得た。得られた吸水性樹脂の中位粒子径は440μm、水分率は7質量%であった。各性能の測定結果を表1に示す。
【0095】
実施例4
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、攪拌機として、翼径50mmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径100mmの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコにn-ヘプタン500mLをとり、HLB3のショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ社製、リョートーシュガーエステルS-370)0.92g、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学社製、ハイワックス1105A)0.92gを添加し、80℃まで昇温して界面活性剤を溶解したのち、50℃まで冷却した。
一方、500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液92gをとり、外部より冷却しつつ、20.0質量%の水酸化ナトリウム水溶液154.3gを滴下して75モル%の中和を行ったのち、室温にて撹拌して完全に溶解させた。過硫酸アンモニウム0.11g、エチレングリコールジグリシジルエーテル18.4mgを加えて溶解し、第1段目の単量体水溶液を調製した。
攪拌機の回転数を500rpmとして、前記単量体水溶液を前記セパラブルフラスコに添加して、系内を窒素で置換しながら、35℃で30分間保持した後、70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第1段目の重合後スラリーを得た。(なお、この重合後スラリーを120℃の油浴を用いて、水とn-ヘプタンを共沸し、水のみを系外へ抜き出した後、n-ヘプタンを蒸発させて乾燥することで得られた、球状の1次粒子の中位粒子径は60μmであった。)
一方、別の500mLの三角フラスコに80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8gをとり、外部より冷却しつつ、24.7質量%の水酸化ナトリウム水溶液174.9gを滴下して75モル%の中和を行なったのち、2,2'-アゾビス(1-イミノ-1-ピロリジノ-2-メチルプロパン)二塩酸塩0.15g、エチレングリコールジグリシジルエーテル51.5mgを加えて溶解して、第2段目の単量体水溶液を調製した。
前記重合後スラリーの撹拌回転数を1000rpmに変更した後、21℃に冷却し、前記第2段目の単量体水溶液を系内に添加し、窒素で置換しながら30分間保持したのち、再度、フラスコを70℃の水浴に浸漬して昇温し、重合を行なうことにより、第2段目の重合後スラリーを得た。
次いで、120℃の油浴を使用して昇温し、水とn-ヘプタンを共沸することにより、n-ヘプタンを還流しながら、259.2gの水を系外へ抜き出した後、エチレングリコールジグリシジルエーテルの2質量%水溶液8.83gを添加し、80℃で2時間保持した後、n-へプタンを蒸発させて乾燥することによって、球状の1次粒子が凝集した2次粒子の形態を有する吸水性樹脂233.1gを得た。得られた吸水性樹脂の中位粒子径は490μm、水分率は6質量%であった。各性能の測定結果を表1に示す。」
・「【0099】
【表1】
[図:0001382381000006.jpg]
」
(イ)甲7発明
甲7に記載された事項を、特に【請求項7】、【0018】、【0064】、【0067】、【0071】及び【0072】に関して整理すると、甲7には次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されていると認める。
<甲7発明>
「(メタ)アクリル酸及びその塩を1種単独で使用して製造された以下(イ)~(ニ)の特徴を有する吸水性樹脂に非晶質シリカ粉末を添加した得た吸水性樹脂。
(イ)中位粒子径が250~800μm、かつ粒子径分布の均一度が1.0~2.2
(ロ)無荷重下の吸水量が35g/g以上、かつ荷重下の吸水量が15mL/g以上
(ハ)初期吸水速度が0.05mL/s以上0.35mL/s以下、かつ中期吸水速度が0.20mL/s以上
(ニ)水可溶分が20質量%以下」
オ 甲14に記載された事項及び甲14発明
(ア)甲14に記載された事項
甲14には、「吸水性樹脂粒子、吸収体及び吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0029】
本発明の吸水性樹脂粒子の拡散性指数(ml/分)は、10~30が好ましく、さらに好ましくは12~29、特に好ましくは14~27、最も好ましくは15~26である。この範囲であると、吸収特性がさらに良好となる。
拡散性指数とは、垂直方向拡散性指数(VD)から水平方向拡散指数(HV)を差し引いた値を意味し、垂直方向拡散性指数(VD)及び水平方向拡散指数(HV)は、DW法{Demand Wettability法;JIS K7224-1996の解説3~4頁}を用いて、以下の通り測定される。
【0030】
<垂直方向拡散性指数>
25℃、湿度50%の室内で、DW装置{ビューレット(1)の容量25ml、長さ55cm、小穴(9)の直径3mm;図1参照}を用い、空気流入細管(2)の最下端部と支持板(3)の最上端部とを同一水平面になるように調整し、バルブ(4)及び(5)を閉じた状態で、約25mlの生理食塩水をビューレット(1)に入れ、ゴム栓(6)を装着し、バルブ(4)及び(5)を開けることにより、配管(11)を生理食塩水で充填すると共に、支持板(3)の中央に設けられた小穴(9)から生理食塩水を溢れ出させ、バルブ(4)を閉じてから、溢れ出た生理食塩水を拭き取り、ビューレット(1)の液面(h1)を読み取る。引き続き、支持板(3)上に、平織りナイロンメッシュ(7)(目開き63μm、5cm×5cm)をのせ、さらにこの平織りナイロンメッシュ(7)の上に、小穴(9)が中央に位置するようにして内径2.8cm、高さ6.0cmの円柱筒(10)を載せて、この円柱筒(10)の中に測定試料(8)を1.000g散布した後、円柱筒(10)を除去し、バルブ(4)を開けてから1分後に、ビューレットの液面(h2)を読み取り、液面の差{(h1)-(h2)}を垂直方向拡散性指数(ml/分)とする。
【0031】
<水平方向拡散性指数>
測定試料を「1.000g」から「2.000g」に変更したこと、「内径2.8cm、高さ6.0cmの円柱筒(10)」を「内径6.0cm、高さ5.0cmの円柱筒(10)」に変更したこと以外、垂直方向拡散性指数と同様にして、液面(h1)及び液面(h2)を読み取り、液面の差{(h1)-(h2)}を水平方向拡散性指数(ml/分)とする。」
・「【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、特記しない限り、部は重量部を、%は重量%を示す。
<製造例1>
アクリル酸ナトリウム88部(0.94モル部)、アクリル酸22.85部(0.3174モル部)、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.3部(0.002モル部)、脱イオン水293部及びジクロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ルテニウム0.001部を攪拌・混合しながら、温度を1~2℃に保ち、この混合液中に窒素を流入して、混合液中の溶存酸素濃量を0.5ppm以下とした。
【0041】
引き続き、この混合液に、1%過酸化水素水溶液0.3部、0.2%アスコルビン酸水溶液0.8部及び2%の2,2’-アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライド水溶液0.8部を添加・混合して重合を開始させ、反応液が80℃に達した後、重合温度80±2℃で約5時間重合することにより、含水ゲルを得た。この含水ゲル400部をミンチ機(目皿穴径:6mm、飯塚工業社製 12VR-400K)にて25℃で5分間細断した後、通気型バンド乾燥機(135℃、2.0m/秒;井上金属工業(株)製)で乾燥し、乾燥重合体を得た。
【0042】
この乾燥重合体をジューサーミキサー(National MX-X53、松下電器(株)製)で粉砕し、目開き150及び710μmのふるいを用いて150~710μmの粒子径範囲に調整した後、この100部を高速攪拌(細川ミクロン製 高速攪拌タービュライザーミキサー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの1%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=60/40)の5.5部{エチレングリコールジグリシジルエーテル0.055部(0.00032モル部)}をスプレー噴霧しながら添加・混合し、140℃で30分間静置し加熱架橋(表面架橋)することにより架橋重合体粒子(A1)を得た。」
・「【0049】
<実施例1>
架橋重合体粒子(A1)100部と水不溶性無機微粒子(B1){株式会社ノザワ製針状非晶質シリカ、SP-01、流動性62秒/10g}2.5部とを、コニカルブレンダー(ホソカワミクロン(株)製)で均一混合して、本発明の吸水性樹脂粒子(1)を得た。」
・「【0059】
<実施例11>
「水不溶性無機微粒子(B1)2.5部」を「水不溶性無機微粒子(B4){日本アエロジル株式会社製シリカ、アエロジルOX50T、流動性55秒/g}1部」に変更したこと以外、実施例1と同様にして吸水性樹脂粒子(11)を得た。」
・「【0065】
【表1】
[図:0001382381000007.jpg]
」
(イ)甲14発明
甲14に記載された事項を、特に実施例11に関して整理すると、甲14には次の発明(以下、「甲14発明」という。)が記載されていると認める。
「実施例11として得た垂直方向拡散指数38ml/分の吸水性樹脂粒子(11)。」(当審注:実施例11については上記(ア)参照。)
キ 甲15に記載された事項及び甲15発明
(ア)甲15に記載された事項
甲15には、「吸水性樹脂粒子、その製造方法、およびそれを用いた吸収体」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「[0043]・・・(略)・・・
実施例
[0044] 以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例により何ら限定されるものではない。
[0045] 製造例1
内容積500mlの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92gを入れ、氷冷しながら20.0質量%水酸化ナトリウム水溶液154.1gを滴下してアクリル酸の中和を行い、アクリル酸部分中和塩水溶液を調製した。得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、架橋剤としてN,N’-メチレンビスアクリルアミド9.2mgおよび水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.11gを添加し、これを単量体水溶液とした。
一方、攪拌機、2段パドル翼、還流冷却器、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた内容積2リットルの五つ口円筒型丸底フラスコに、n-ヘプタン340gと、界面活性剤として、ショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社の商品名;リョートーシュガーエステルS-370)0.92gを加えてn―ヘプタンに溶解させた後、上記の重合用の単量体水溶液を加えて35℃に保ち攪拌下で懸濁した。その後、系内を窒素で置換後、70℃の水浴を用いて昇温して逆相懸濁重合を行った。
[0046] 次いで、別に、内容積500mlの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8gを入れ、氷冷しながら24.7質量%水酸化ナトリウム水溶液173.8gを滴下してアクリル酸の中和を行い、アクリル酸部分中和塩水溶液を調製した。得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、架橋剤としてN,N’-メチレンビスアクリルアミド12.9mgおよび水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.16gを添加し、これを第2段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液とした。
第1段目の逆相懸濁重合の終了後、重合スラリーを冷却し、第2段目重合用の単量体水溶液を系内に滴下し、23℃に保ちながら30分間攪拌を行った。その後、系内を窒素で置換し、70℃の水浴を用いて昇温して第2段目の逆相懸濁重合を行った。重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により、266gの水を系外に除去し、2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.83gを添加し、80℃で2時間保持し、後架橋処理を行った。さらに水およびn-ヘプタンを蒸留により除去して乾燥し、質量平均粒子径が360μm、水分率5%の吸水性樹脂粒子227.2gを得た。
[0047]実施例1
製造例1と同様にして得られた吸水性樹脂粒子200gに非晶質シリカ粒子1g((株)トクヤマ製、トクシールNP)を添加、混合後、内容積2リットルのセパラブルフラスコに入れ、撹拌しながら室温下、加湿機((株)トヨトミ製、ハイブリッド加湿器)により水添加量0.4L/hで20分間、セパラブルフラスコ内を加湿し、水分率11%の吸水性樹脂を得た。」
・「[0049]実施例3
製造例1と同様にして得られた吸水性樹脂粒子200gに非晶質シリカ粒子2g((株)トクヤマ製、トクシールNP)を添加、混合後、内容積2リットルのセパラブルフラスコに入れ、撹拌しながら室温下、加湿機((株)トヨトミ製、ハイブリッド加湿器)により水添加量0.4L/hで45分間、セパラブルフラスコ内を加湿し、水分率17%の吸水性樹脂粒子を得た。」
・「[0067][表1]
[図:0001382381000008.jpg]
」
(イ)甲15発明
甲15に記載された事項を、特に実施例3に関して整理すると、甲15には次の発明(以下、「甲15発明」という。)が記載されていると認める。
「内容積500mlの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液92gを入れ、氷冷しながら20.0質量%水酸化ナトリウム水溶液154.1gを滴下してアクリル酸の中和を行い、アクリル酸部分中和塩水溶液を調製し、得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、架橋剤としてN,N’-メチレンビスアクリルアミド9.2mgおよび水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.11gを添加し、これを単量体水溶液とし、一方、攪拌機、2段パドル翼、還流冷却器、滴下ロートおよび窒素ガス導入管を備えた内容積2リットルの五つ口円筒型丸底フラスコに、n-ヘプタン340gと、界面活性剤として、ショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社の商品名;リョートーシュガーエステルS-370)0.92gを加えてn―ヘプタンに溶解させた後、上記の重合用の単量体水溶液を加えて35℃に保ち攪拌下で懸濁し、その後、系内を窒素で置換後、70℃の水浴を用いて昇温して逆相懸濁重合を行い、次いで、別に、内容積500mlの三角フラスコに80質量%のアクリル酸水溶液128.8gを入れ、氷冷しながら24.7質量%水酸化ナトリウム水溶液173.8gを滴下してアクリル酸の中和を行い、アクリル酸部分中和塩水溶液を調製し、得られたアクリル酸部分中和塩水溶液に、架橋剤としてN,N’-メチレンビスアクリルアミド12.9mgおよび水溶性ラジカル重合開始剤として過硫酸カリウム0.16gを添加し、これを第2段目の逆相懸濁重合用の単量体水溶液とし、第1段目の逆相懸濁重合の終了後、重合スラリーを冷却し、第2段目重合用の単量体水溶液を系内に滴下し、23℃に保ちながら30分間攪拌を行い、その後、系内を窒素で置換し、70℃の水浴を用いて昇温して第2段目の逆相懸濁重合を行い、重合終了後、120℃の油浴で加熱し、共沸蒸留により、266gの水を系外に除去し、2質量%エチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液8.83gを添加し、80℃で2時間保持し、後架橋処理を行い、さらに水およびn-ヘプタンを蒸留により除去して乾燥し、得られた吸水性樹脂粒子200gに非晶質シリカ粒子2g((株)トクヤマ製、トクシールNP)を添加、混合後、内容積2リットルのセパラブルフラスコに入れ、撹拌しながら室温下、加湿機((株)トヨトミ製、ハイブリッド加湿器)により水添加量0.4L/hで45分間、セパラブルフラスコ内を加湿し、得た水分率17%の吸水性樹脂粒子。」
ク 甲16に記載された事項及び甲16発明
(ア)甲16に記載された事項
甲16には、「吸液性ポリマー組成物及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「実施例 1
吸水性で市販の、架橋され、部分的に中和された澱粉-アクリル酸グラフトポリマー[IM-1000 ヘキスト セラニーズ コーポレーション(以下HCC社)]をふるいにかけて次の表のような粒子サイズにした。架橋および造粒の前の化合物の典型的な分析結果は、次のとおりである。常圧吸収能(0.9%塩水中におけるg/g)-65、ゲル強度(剪断弾性率)-35,000dynes/cm2。各フラクションの一部を表面架橋および造粒し、次いで各フラクション(処理前後品)の吸収速度を測定した。次の方法で、各フラクションの表面架橋および造粒を効果的に行なった。
1,200ml量をもつ高速(12,000rpm)実験室用混合機の中に各吸液性ポリマーフラクション30gを入れた。10重量%のアルミニウムナトリウムサルフェート[AlNa(SO4)212H2O]水溶液を準備し、シリンジ(注入器)を用いて、この水溶液の1.5g(ポリマー重量に対する0.5%架橋剤を含む5%架橋剤溶液)を撹拌されたポリマーの中に注入した。アルミニウムナトリウムサルフェートの添加終了後,混合機を止め、ポリマーをおよそ40分間室温で放置した。次いで、必要に応じてふるいにかけて、はじめの粒子サイズに相当する粒子サイズにふるい分けした。アエロジル200の細かい二酸化硅素の粉体を、小さなプラスチックバッグの中で攪拌することによりふるい分けたポリマーのフラクション毎に混合した。
[図:0001382381000009.jpg]
」(第9ページ右上欄下から4行ないし左下欄下から3行)
(イ)甲16発明
甲16に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、甲16には次の発明(以下、「甲16発明」という。)が記載されていると認める。
「実施例1として得た粒子サイズが325メッシュより小さく、吸収速度が6.8秒及び5.6秒のフラクション。」(当審注:実施例1については上記(ア)参照。)
ケ 甲17に記載された事項及び甲17発明
(ア)甲17に記載された事項
甲17には、「吸水性樹脂の製法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「実施例1
ポリアクリル酸カリウム塩架橋物の粉末(荒川化学工業(株)製のアラソーブ)100gおよびアエロジル200(平均粒径約0.012μm、日本アエロジル(株)製の微粒子状シリカ)3gを300mlの3つ口セパラブルフラスコに入れ、撹拌機で充分攪拌したのち、攪拌をつづけながら、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.20gと水25gとからなる溶液を徐々に加え、均一な分散状態にした。そののち加熱し、約120℃で水を留去させながら約1時間架橋させた。ついで減圧下(約30mmHg)にて約10分間残存する水を留去させ、改質された吸水性樹脂95gをえた。」(第5ページ右上欄下から7行ないし左下欄第6行)
・「(吸水速度)
あらかじめ100mlビーカーに生理食塩水(0.9%食塩水)50gと攪拌子とを入れ、マグネチックスターラーにて600rpmの速度で攪拌しておき、この中に吸水性樹脂2.0gを投入すると、吸水膨潤作用にてゲル化がおこり、流動性が減少して攪拌中心の水流渦が消える。吸水性樹脂投入から渦が消失するまでに要した時間を測定し、吸水速度とする。」(5ページ左下欄下から2行ないし右下欄第7行)
・「実施例2~13ならびに比較例2および5
第1表に示す反応系組成にて実施例1と同様にして改質された吸水性樹脂をえ、物性を評価した。その結果を架橋反応中の吸水性樹脂の状態とともに第1表に示す。
なお第1表中のでんぷん-アクリル酸ナトリウムグラフト共重合体架橋物は一般市販品、アクリルアミド/アクリル酸カリウム塩/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸カリウム塩の3元共重合体はモル比 3/ 4/ 3の3元共重合体、EGDGはエチレングリコールジグリシジルエーテルを示す。」(第6ページ左上欄第4ないし15行)
・「
[図:0001382381000010.jpg]
」(第7ページ)
(イ)甲17発明
甲17に記載された事項を、特に実施例1又は8に関して整理すると、甲17には次の発明(以下、「甲17発明」という。)が記載されていると認める。
「実施例1又は8として得られた吸水速度0.6秒の吸水性樹脂。」(当審注:実施例1又は8については上記(ア)参照。)
コ 甲18に記載された事項及び甲18発明
(ア)甲18に記載された事項
甲18には、「流体安定性造粒物の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0078】実施例1
内容積10リットル、220mm×240mmの開口部および深さ240mmおよび、回転直径120mmからなる2つのシグマ型羽根が備わっているステンレススチール製の双腕型捏和機が、蓋により止められた。75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウム水溶液5500gおよびトリメチロールプロパントリアクリレート3.4g(75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウム水溶液に対し0.05モル%)(水溶液中37重量%濃度の単量体)が導入され、窒素ガスが反応系に存在する空気を置換するために導入された。その後シグマ型羽根が46rpmで回転させられ、同時にジャケットが、35℃の熱水により暖められた。重合開始剤として、過硫酸ナトリウム2.8gおよびL-アスコルビン酸0.14gが加えられた。重合は、重合開始剤の添加4分後に開始した。反応系内のピーク温度は、重合開始剤の添加に続き15分経過後82℃に到達した。含水ゲル重合体は、5mmの大きさの細粒に砕かれた。撹拌は、さらに継続された。前記蓋は、重合開始60分後に捏和機から取り外され、前記ゲルが、捏和機から取り出された。
【0079】このようにして得られた含水ゲル重合体の細粒は、50メッシュの金網の上に広げられ、150℃で90分間熱風乾燥された。乾燥された含水ゲル重合体の細粒は、ハンマー型粉砕機で粉砕され、20メッシュを通過できるもの[吸水性樹脂粉末(A-1)]を得るため20メッシュの金網で篩にかけられた。
【0080】図1に示される厚さ10mmを有するポリテトラフルオロエチレン(接触角114°および熱変形温度121℃)で作られた内管5が取り付けられた、タービュライザー1(細川ミクロン株式会社製)において、吸水性樹脂粉末(A-1)が、粒子入口2から連続的に供給され、グリセリンと水の液体混合物が、吸水性樹脂粉末(A-1)100部に対してグリセリン2部と水4部の割合で液体入口4から連続的に供給され、該混合物が混合される。タービュライザー1において、攪拌羽根3の先端部の回転速度は、1280m/minであつた。出口6より取り出された混合物700gが、オイルバス(220℃)に漬されたボールの中に充填され、造粒された高分子組成物を得るために、モルタルミキサー(西日本試験機制作所製)による撹拌(60rmp)下、80分間熱処理を受けた。投入電力は、パワーアナライザーPA1000(株式会社武蔵電気計器制作所製)により計測され165Wで安定していた。一方、同じモルタルミキサーを空で80分間運転したとき、投入電力は163Wで安定していた。効率は、モーターの特性表から読み取られ、架橋反応する間混合物に加えられる力学的エネルギーが以下の数式6に算出された:
F=4.8W・hr/kg=17,280J/kg (数式6)
得られた造粒された高分子組成物は、18メッシュの金網(ASTM)を通過させられ、流体安定性造粒物(FSA)(1)を得た。」
・「【0084】(b)膨脹速度:吸水性樹脂粉末(A-1)あるいは流体安定性造粒物(1)のサンプルは、常法にしたがって縮分され、30メッシュ(600ミクロン)で遮られ20メッシュ(850ミクロン)を通過するものあるいは、50メッシュ(300ミクロン)で遮られ30メッシュを通過するものを得るために篩にかけられた。
【0085】20/30カットあるいは、30/50カットのサンプル0.450gが、計量され、標準0.5インチ径の試験管の底に置かれた。Jayco人工尿(0.2%のKCl、0.2%のNa2SO4、0.085%の(NH4)H2PO4、0.015%の(NH4)2HPO4、0.025%のCaCl2・2H2Oおよび0.050%のMgCl2・6H2Oを含有する)12.6gが、垂直に支えられた試験管に添加されると同時にストップウォッチを動かした。
【0086】ストップウォッチは、上昇するゲルの集団が試験管内の流体のメニスカスの底に達した、ちょうどその時に止めた。サンプルの単位グラム当りの人工尿グラムすなわち28g/gを膨脹速度を得るために秒の単位で経過した時間で割った。」
・「【0109】実施例8
乾燥ゲルを実施例1よりも厳しい条件でハンマー型粉砕機により粉砕し、20メッシュの金網を通過する粒子[吸水性樹脂粉末(A-3)]を得、該吸水性樹脂粉末(A-3)100重量部とアエロジル200の1重量部が、V-型ミキサーにより混合された以外は実施例1に準じる操作を行ない吸水性樹脂粉末Cを得た。」
・「【0113】
【表3】
[図:0001382381000011.jpg]
」
(イ)甲18発明
甲18に記載された事項を、特に実施例8に関して整理すると、甲18には次の発明(以下、「甲18発明」という。)が記載されていると認める。
「実施例8として得た#20~30の膨張速度が0.31秒、#30~50の膨張速度が0.20秒の吸水性樹脂粉末C。」(当審注:実施例8については上記(ア)参照。)
サ 甲19に記載された事項及び甲19発明
(ア)甲19に記載された事項
甲19には、「ポリ(メタ)アクリル酸(塩)系粒子状吸水剤及び製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「[0240](式2) AAP(g/g)=(W5-W4)/W3
(c)吸水時間(Vortex法)
予め調製された0.90重量%塩化ナトリウム水溶液の1000重量部に食品添加物である食用青色1号0.02重量部を添加し、液温30℃に調整した。青色に着色した0.90重量%塩化ナトリウム水溶液50mlを100mlビーカーに計り取り、長さ40mmで太さ8mmの円筒型攪拌子で600rpmで攪拌する中に、粒子状吸水剤2.00gを投入し、吸水時間(秒)を測定した。終点は、JISK 7224-1996年度「高吸水性樹脂の吸水速度試験方法 解説」に記載されている基準に準じ、吸水剤が生理食塩水を吸液して試験液がスターラーチップを覆うまでの時間を吸水時間(秒)として測定した。」
・「[0266] (吸水性樹脂の製造例)
(製造例1)発泡重合体以外の形態の吸水性樹脂の製造例
アクリル酸ナトリウム(中和率75モル%)の38重量%水溶液5500重量部に、ポリエチレングリコールジアクリレート(n=9)4.4重量部を溶解させて単量体水溶液とした。次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で30分間脱気した。次いで、開閉可能な蓋付きのシグマ型羽根を2本有するジャケット付きステンレス製双腕型ニーダーに上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換した。続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウム2.8重量部およびL-アスコルビン酸0.12重量部を添加したところ、凡そ1分後に重合が開始した。そして、30~90℃で重合を行い、重合を開始して60分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出した。
[0267] 得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mmに細分化されていた。この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、160℃で60分間熱風乾燥した。次いで、乾燥物をロールミル(有限会社井ノ口技研社製、WML型ロール粉砕機)を用いて粉砕し、吸水性樹脂粒子(A)を得た。さらに吸水性樹脂粒子(A)を目開き850μmの金網と180μmの金網で分級することにより、850μmの金網を通過し、180μmの金網を通過しなかった分画である吸水性樹脂粒子(A1)と180μmの金網を通過した分画である吸水性樹脂微粒子(A2)を得た。このとき、吸水性樹脂粒子(A)における粒子径が150μm未満の粒子の割合は10.5重量%であり、分級することにより得られた吸水性樹脂粒子(A1)では、粒子径が150μm未満の粒子の割合を1.9重量%まで減少することができた。得られた吸水性樹脂粒子(A1)及び吸水性樹脂微粒子(A2)のCRC、含水率、粒度分布およびD50を表1に示す。」
・「[0274] (製造例4)造粒物の形態の吸水性樹脂の製造例(1)
製造例1で得られた吸水性樹脂微粒子(A2)300gを西日本試験機製作所製5Lモルタルミキサー(5L容器は80℃のバスで保温されている)に入れ、該モルタルミキサーの攪拌羽根を60Hz/100Vで高速回転させながら、90℃に加熱した脱イオン水300gを一気に投入した。
[0275] 吸水性樹脂微粒子(A2)と脱イオン水とは10秒以内に混合され、内容物全体が粒子径約3~10mmの含水ゲル状造粒物となった。モルタルミキサー中で、該含水ゲル状造粒物はバラバラの状態で、攪拌羽根の混合によって混練される様子はなかった。1分間モルタルミキサー中で高速攪拌した後、得られたバラバラの含水ゲル状造粒物を50メッシュの金網上に広げ、150℃で60分間熱風乾燥した。次いで、乾燥造粒物をロールミルを用いて粉砕し、吸水性樹脂造粒物(A3’)を得た。さらに吸水性樹脂造粒物(A3’)をさらに目開き850μmの金網と150μmの金網で分級することにより、850μmの金網を通過し、150μmの金網を通過しなかった分画である吸水性樹脂造粒物(A3)を得た。このとき、吸水性樹脂造粒物(A3’)における粒子径が150μm未満の粒子の割合は21.8重量%であり、分級することにより得られた吸水性樹脂造粒物(A3)では、150μm未満の粒子の割合を2.0重量%まで減少することができた。吸水性樹脂造粒物(A3)の形状をSEMにて観察したところ、原料に使用した吸水性樹脂微粒子の形状を部分的に維持しながら、大きな粒子に造粒されており、粒子表面に多数の凹凸を有する表面積の大きい粒子であった。得られた吸水性樹脂造粒物(A3)のCRC、含水率、粒度分布およびD50を表1に示す。」
・「[0278] (実施例1)造粒物の形態の吸水性樹脂を用いる製造方法1による吸水剤
製造例4で得られた吸水性樹脂造粒物(A3)100重量部に、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.025重量部と、エチレンカーボネート0.3重量部と、プロピレングリコール0.5重量部と、脱イオン水2.0重量部とからなる表面架橋剤溶液を混合した。上記の混合物を200℃で35分間加熱処理することにより、表面架橋された吸水性樹脂造粒物(A4)を得た。
[0279] 表面架橋された吸水性樹脂造粒物(A4)を0.90重量%の塩化ナトリウム水溶液で膨潤させて光学顕微鏡にて観察したところ、表面架橋の結果、吸水後でも粒子形状を維持できるようになっていることが確認された。
[0280] 表面架橋された吸水性樹脂造粒物(A4)100重量部に対して、1重量%のDTPA水溶液1重量部を攪拌しながら添加し、1分間混合した。次いで60℃の熱風乾燥機中に30分間放置してから、目開き850μmの金網を通過させ、吸水性樹脂造粒物(A4’)を得た。更に、得られた吸水性樹脂造粒物(A4’)100重量部に対して、ハイドロタルサイト(製品名DHT-6、協和化学工業株式会社製)0.3重量部を混合した。混合は吸水性樹脂30gを容量225mlのマヨネーズ瓶にハイドロタルサイトと共に入れ、ペイントシェーカー(No.488/東洋製機製作所製)を用いて800(cycle/min(CPM))の条件下3分間振とうし、粒子状吸水剤(EX-1)を得た。
[0281] (実施例2)
実施例1において、ハイドロタルサイト0.3重量部をアエロジル200(日本アエロジル製)0.3重量部に変更した以外は、実施例1と同様の反応・操作を行って、粒子状吸水剤(EX-2)を得た。」
「[0318]
[表2]
[図:0001382381000012.jpg]
」
(イ)甲19発明
甲19に記載された事項を、特に実施例2に関して整理すると、甲19には次の発明(以下、「甲19発明」という。)が記載されていると認める。
「実施例2として得た吸水時間(Vortex)が24sec.の粒子状吸水剤(EX-2)。」(当審注:実施例2については上記(ア)参照。)
(2)甲3に基づく新規性・進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲3発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3-1>
本件特許発明1においては、「前記無機粒子が非晶質シリカで、前記無機粒子の平均粒子径が0.1~50μmであり」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3-2>
本件特許発明1においては、「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上であり、
吸水速度指数Iが2mL/g以上30mL/g以下であり、
吸水速度指数IIが13mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3-3>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量が35~60g/gである」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、事案に鑑み相違点3-2から検討する。
甲10によると、甲3発明における「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」はそれぞれ「7.3mL/g」、「3.0mL/g」及び「11.6mL/g」であり、「吸水速度指数II」が「13mL/g以上」の条件を満たさない。
したがって、相違点3-2は実質的な相違点である。
また、甲3には「吸水速度指数II」に関する記載はなく、他の証拠(実験成績証明書を除く。以下同様。)にも甲3発明において「吸水速度指数II」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲3発明において、「吸水速度指数II」に着目し、これを「13mL/g以上」として、相違点3-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる」(本件特許の明細書の【0008】参照。)という甲3発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
なお、特許異議申立人は、令和3年9月3日に提出した意見書において、本件特許の明細書に「吸水速度指数II」の範囲(13mL/g以上)の臨界的意義が示されていないから、「吸水速度指数II」の範囲を13mL/g以上とする訂正は、単に、無加圧DWの3分値がより高く、吸水速度がより速い吸水性樹脂粒子に限定する訂正に過ぎず、「吸水速度指数II」の範囲を13mL/g以上とすることは甲3と甲19の組み合わせから容易に想到できる旨主張する。
しかし、本件特許の明細書に「吸水速度指数II」の範囲(13mL/g以上)の臨界的意義が示されていないとしても、上記のとおり、甲3に「吸水速度指数II」に関する記載はなく、甲9にも甲3発明において「吸水速度指数II」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲9を参照しても、甲3発明において、「吸水速度指数II」に着目し、これを「13mL/g以上」とすることは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(ウ)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3発明であるとはいえないし、甲3発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)甲4に基づく新規性・進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲4発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点4-1>
本件特許発明1においては、「前記無機粒子が非晶質シリカで、前記無機粒子の平均粒子径が0.1~50μmであり」と特定されているのに対し、甲4発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点4-2>
本件特許発明1においては、「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上であり、
吸水速度指数Iが2mL/g以上30mL/g以下であり、
吸水速度指数IIが13mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲4発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点4-3>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量が35~60g/gである」と特定されているのに対し、甲4発明においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、事案に鑑み相違点4-2から検討する。
甲11によると、甲4発明における「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」はそれぞれ「10.5mL/g」、「12mL/g」及び「9.1mL/g」であり、「吸水速度指数II」が「13mL/g以上」の条件を満たさない。
したがって、相違点4-2は実質的な相違点である。
また、甲4には「吸水速度指数II」に関する記載はなく、他の証拠にも甲4発明において「吸水速度指数II」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲4発明において、「吸水速度指数II」に着目し、これを「13mL/g以上」として、相違点4-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる」という甲4発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
(ウ)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲4発明であるとはいえないし、甲4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲4発明であるとはいえないし、甲4発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)甲5に基づく新規性・進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲5実施例2発明又は甲5実施例11-5発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点5-1>
本件特許発明1においては、「前記無機粒子が非晶質シリカで、前記無機粒子の平均粒子径が0.1~50μmであり」と特定されているのに対し、甲5実施例2発明又は甲5実施例11―5発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5-2>
本件特許発明1においては、「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上であり、
吸水速度指数Iが2mL/g以上30mL/g以下であり、
吸水速度指数IIが13mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲5実施例2発明又は甲5実施例11―5発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点5-3>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量が35~60g/gである」と特定されているのに対し、甲5実施例2発明又は甲5実施例11―5発明においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、事案に鑑み相違点5-2から検討する。
甲12によると、甲5実施例2発明における「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」はそれぞれ「12.6mL/g」、「14.4mL/g」及び「10.9mL/g」であり、「吸水速度指数II」が「13mL/g以上」の条件を満たさない。
また、甲12によると、甲5実施例11-5発明における「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」はそれぞれ「15.1mL/g」、「19.2mL/g」及び「11.0mL/g」であり、「吸水速度指数II」が「13mL/g以上」の条件を満たさない。
したがって、相違点5-2は実質的な相違点である。
また、甲5には「吸水速度指数II」に関する記載はなく、他の証拠にも甲5実施例2発明又は甲5実施例11-5発明において「吸水速度指数II」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲5実施例2発明又は甲5実施例11-5発明において、「吸水速度指数II」に着目し、これを「13mL/g以上」として、相違点5-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる」という甲5実施例2発明又は甲5実施例11-5発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
なお、特許異議申立人は、令和3年9月3日に提出した意見書において、本件特許の明細書に「吸水速度指数II」の範囲(13mL/g以上)の臨界的意義が示されていないから、「吸水速度指数II」の範囲を13mL/g以上とする訂正は、単に、無加圧DWの3分値がより高く、吸水速度がより速い吸水性樹脂粒子に限定する訂正に過ぎず、「吸水速度指数II」の範囲を13mL/g以上とすることは甲5と甲14の組み合わせから容易に想到できる旨主張する。
しかし、本件特許の明細書に「吸水速度指数II」の範囲(13mL/g以上)の臨界的意義が示されていないとしても、上記のとおり、甲5に「吸水速度指数II」に関する記載はなく、甲14にも甲5実施例2発明又は甲5実施例11-5発明において「吸水速度指数II」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲14を参照しても、甲5実施例2発明又は甲5実施例11-5発明において、「吸水速度指数II」に着目し、これを「13mL/g以上」とすることは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(ウ)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲5実施例2発明又は甲5実施例11-5発明であるとはいえないし、甲5実施例2発明又は甲5実施例11-5発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲5実施例2発明又は甲5実施例11-5発明であるとはいえないし、甲5実施例2発明又は甲5実施例11-5発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)甲7に基づく新規性・進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲7発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点7-1>
本件特許発明1においては、「前記無機粒子が非晶質シリカで、前記無機粒子の平均粒子径が0.1~50μmであり」と特定されているのに対し、甲7発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点7-2>
本件特許発明1においては、「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上であり、
吸水速度指数Iが2mL/g以上30mL/g以下であり、
吸水速度指数IIが13mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲7発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点7-3>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量が35~60g/gである」と特定されているのに対し、甲7発明においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、事案に鑑み相違点7-2から検討する。
甲7発明は「中位粒子径」、「粒子径分布の均一度」、「無荷重下の吸水量」、「荷重下の吸水量」、「初期吸水速度」、「中期吸水速度」及び「水可溶分」を規定するものであるが、「中位粒子径」、「粒子径分布の均一度」、「無荷重下の吸水量」、「荷重下の吸水量」、「初期吸水速度」、「中期吸水速度」又は「水可溶分」から「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」を定量的に推定することはできないから、甲7発明が「静的吸引指数αが5.0mL/g以上」、「吸引速度指数Iが2mL/g以上30mL/g以下」及び「吸引速度指数IIが13mL/g以上」という条件を満たすものであるとはいえない。
したがって、相違点7-2は実質的な相違点である。
また、甲7には「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」に関する記載はなく、他の証拠にも甲7発明における「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲7発明において、「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」に着目し、これらをそれぞれ「5.0mL/g以上」、「2mL/g以上30mL/g以下」及び「13mL/g以上」となるようにして、相違点7-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる」という甲7発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
(ウ)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲7発明であるとはいえないし、甲7発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲7発明であるとはいえないし、甲7発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)甲14に基づく新規性・進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲14発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点14-1>
本件特許発明1においては、「前記無機粒子が非晶質シリカで、前記無機粒子の平均粒子径が0.1~50μmであり」と特定されているのに対し、甲14発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点14-2>
本件特許発明1においては、「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上であり、
吸水速度指数Iが2mL/g以上30mL/g以下であり、
吸水速度指数IIが13mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲14発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点14-3>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量が35~60g/gである」と特定されているのに対し、甲14発明においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、事案に鑑み相違点14-2から検討する。
一般に、吸水性樹脂の吸水速度は吸水時間の経過に伴って変化するものであるから、単に無加圧DW1分値の大小関係に基づいて、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」を定量的に推定することはできない。特に吸水開始から10秒までという最初期の極めて短い時間と、10秒から60秒までの間とでは吸水挙動が大きく変化し得るため、より長い吸水時間における吸水量から吸水開始から10秒までという最初期の極めて短い時間の吸水量を高い精度で推定することはできない。
したがって、甲14発明における垂直方向拡散指数は、本件特許の実施例1ないし4の「無加圧DW1分値」に相当するものであり、それが38ml/gであって、本件特許の実施例1ないし4の無加圧DW1分値(7.8~18/8mL/g)より2倍以上大きいとしても、甲14発明が相違点14-2に係る本件特許発明1の発明特定事項、特に「吸水速度指数I」の条件を満たす蓋然性が高いとはいえない。また、甲14発明が相違点14-2に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たす蓋然性が高いといえる証拠も示されていない。
したがって、相違点14-2は実質的な相違点である。
また、甲14には「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」に関する記載はなく、他の証拠にも甲14発明において「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲14発明において、「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」に着目し、これらをそれぞれ「5.0mL/g以上」、「2mL/g以上30mL/g以下」及び「13mL/g以上」となるようにして、相違点14-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる」という甲14発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
なお、特許異議申立人は、令和3年9月3日に提出した意見書において、甲14発明において、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」は本件特許発明1に規定される要件を満たす蓋然性が高い旨主張する。
しかし、上記のとおり、単に無加圧DW1分値の大小関係に基づいて、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」を定量的に推定することはできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(ウ)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲14発明であるとはいえないし、甲14発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲14発明であるとはいえないし、甲14発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(7)甲15に基づく新規性・進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲15発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点15-1>
本件特許発明1においては、「前記無機粒子が非晶質シリカで、前記無機粒子の平均粒子径が0.1~50μmであり」と特定されているのに対し、甲15発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点15-2>
本件特許発明1においては、「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上であり、
吸水速度指数Iが2mL/g以上30mL/g以下であり、
吸水速度指数IIが13mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲15発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点15-3>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量が35~60g/gである」と特定されているのに対し、甲15発明においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、事案に鑑み相違点15-3から検討する。
甲20(当審注:実験の内容中の数値は甲15のものと異なるが、物質の量としては同じである。)によると、甲15発明における「生理食塩水の保水量」は「31.5g/g」であり、「35~60g/g」の条件を満たさない。
したがって、甲15発明は、相違点15-3に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たさない。
したがって、相違点15-3は実質的な相違点である。
また、甲15には「生理食塩水の保水量」を積極的に高くする動機付けとなるような記載はなく、他の証拠にも甲15発明において「生理食塩水の保水量」を積極的に高くする動機付けとなる記載はないから、甲15発明において、相違点15-3に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる」という甲15発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
(ウ)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲15発明であるとはいえないし、甲15発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲15発明であるとはいえないし、甲15発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(8)甲16に基づく新規性・進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲16発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点16-1>
本件特許発明1においては、「前記無機粒子が非晶質シリカで、前記無機粒子の平均粒子径が0.1~50μmであり」と特定されているのに対し、甲16発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点16-2>
本件特許発明1においては、「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上であり、
吸水速度指数Iが2mL/g以上30mL/g以下であり、
吸水速度指数IIが13mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲16発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点16-3>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量が35~60g/gである」と特定されているのに対し、甲16発明においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、事案に鑑み相違点16-2から検討する。
甲16発明における吸収速度は、1gの吸液性ポリマーに30mlの食塩水が吸収されるまでの時間であり、それが6.8秒及び5.6秒と速いことからみて、甲16発明は、「吸水速度指数I」が「30mL/g」を超える蓋然性が高い。
したがって、相違点16-2は実質的な相違点である。
また、甲16には「吸水速度指数I」に関する記載はなく、他の証拠にも甲16発明において「吸水速度指数I」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲16発明において、「吸水速度指数I」に着目し、これを「2mL/g以上30mL/g以下」となるようにして、相違点16-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる」という甲16発明からみて格別顕著な効果を奏するものである。
(ウ)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲16発明であるとはいえないし、甲16発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲16発明であるとはいえないし、甲16発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(9)甲17に基づく新規性・進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲17発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点17-1>
本件特許発明1においては、「前記無機粒子が非晶質シリカで、前記無機粒子の平均粒子径が0.1~50μmであり」と特定されているのに対し、甲17発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点17-2>
本件特許発明1においては、「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上であり、
吸水速度指数Iが2mL/g以上30mL/g以下であり、
吸水速度指数IIが13mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲17発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点17-3>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量が35~60g/gである」と特定されているのに対し、甲17発明においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、事案に鑑み相違点17-2から検討する。
甲17発明における吸収速度は、2.0gの吸水性樹脂に50mlの生理食塩水が吸収されるまでの時間であり、それが0.6秒と速いことからみて、甲17発明は、「吸水速度指数I」が「30mL/g」を超える蓋然性が高い。
したがって、相違点17-2は実質的な相違点である。
また、甲17には「吸水速度指数I」に関する記載はなく、他の証拠にも甲17発明において「吸水速度指数I」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲17発明において、「吸水速度指数I」に着目し、これを「2mL/g以上30mL/g以下」となるようにして、相違点17-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる」という甲17発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
(ウ)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲17発明であるとはいえないし、甲17発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲17発明であるとはいえないし、甲17発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(10)甲18に基づく新規性・進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲18発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点18-1>
本件特許発明1においては、「前記無機粒子が非晶質シリカで、前記無機粒子の平均粒子径が0.1~50μmであり」と特定されているのに対し、甲18発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点18-2>
本件特許発明1においては、「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上であり、
吸水速度指数Iが2mL/g以上30mL/g以下であり、
吸水速度指数IIが13mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲18発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点18-3>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量が35~60g/gである」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、事案に鑑み相違点18-2から検討する。
甲18発明における膨張速度は、1gの吸水性樹脂粉末に人工尿28gが吸収されるまでの時間であり、それが0.31秒及び0.20秒と速いことからみて、甲18発明は、「吸水速度指数I」が「30mL/g」を超える蓋然性が高い。
したがって、相違点18-2は実質的な相違点である。
また、甲18には「吸水速度指数I」に関する記載はなく、他の証拠にも甲18発明において「吸水速度指数I」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲18発明において、「吸水速度指数I」に着目し、これを「2mL/g以上30mL/g以下」となるようにして、相違点18-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる」という甲18発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
(ウ)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲18発明であるとはいえないし、甲18発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲18発明であるとはいえないし、甲18発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(11)甲19に基づく新規性・進歩性について
ア 本件特許発明1について
(ア)対比
本件特許発明1と甲19発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点19-1>
本件特許発明1においては、「前記無機粒子が非晶質シリカで、前記無機粒子の平均粒子径が0.1~50μmであり」と特定されているのに対し、甲19発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点19-2>
本件特許発明1においては、「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上であり、
吸水速度指数Iが2mL/g以上30mL/g以下であり、
吸水速度指数IIが13mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲19発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点19-3>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量が35~60g/gである」と特定されているのに対し、甲19発明においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、事案に鑑み相違点19-2から検討する。
令和3年7月26日に特許権者が提出した意見書に添付された実験報告書(乙第3号証)によると、甲19発明における「吸水速度指数II」は「10mL/g」であり、「13mL/g以上」の条件を満たさない。
したがって、相違点19-2は実質的な相違点である。
また、甲19には「吸水速度指数II」に関する記載はなく、他の証拠にも甲19発明において「吸水速度指数II」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲19発明において、「吸水速度指数II」に着目し、これを「13mL/g以上」となるようにして、相違点19-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる」という甲19発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
なお、特許異議申立人は、令和3年9月3日に提出した意見書において、吸水時間の値の違い(甲19の実施例2では吸水時間は「24秒」となっているが、測定値では「30秒」となっている。)から「10mL/g」を1.25(=30÷24)倍に換算すべきであり、そうすれば、「12.5mL/g」となり、その値を四捨五入すれば、「13mL/g以上」となるから、「13mL/g以上」の条件を満たす旨主張するが、吸水時間と「吸引速度指数II」が同じ挙動を示す証拠はないし、吸水時間の値も四捨五入されていると考えられるので、1.25倍とすることが正しいともいえない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(ウ)まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲19発明であるとはいえないし、甲19発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
イ 本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲19発明であるとはいえないし、甲19発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(12)取消理由1及び2についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び2は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、また、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、同法第113条第2号に該当しないので、取消理由1及び2によっては取り消すことはできない。
2 取消理由3(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
本件特許発明1及び2は物の発明であるところ、物の発明の実施とは、その物の生産及び使用等をする行為であるから、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)発明の詳細な説明及び図面の記載
本件特許の発明の詳細な説明及び図面にはおおむね次の記載がある。
・「【0001】
本発明は吸水性樹脂粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、尿等の水を主成分とする液体を吸収するための吸収性物品には、吸水性樹脂粒子を含有する吸収体が用いられている。例えば下記特許文献1には、おしめなどの吸収性物品に好適に用いられる粒子径を有する吸水性樹脂粒子の製造方法が、また特許文献2には、尿の様な体液を収容するのに効果的な吸収性部材として、特定の食塩水流れ誘導性、圧力下性能等を有するヒドロゲル吸収性重合体を使用する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-345819号公報
【特許文献2】特表平09-510889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の吸収体を用いた吸収性物品では、吸液対象の液が吸収体に十分吸収されずに、余剰の液が吸収体表面を流れる現象(液走り)が起こりやすく、結果として液が吸収性物品の外に漏れるという、漏れ性の点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、吸収体の液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することを目的とする。」
・「【0006】
本発明の一側面は、
吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上である、吸水性樹脂粒子に関する。
【0007】
無加圧DWは、吸水性樹脂粒子が、無加圧下で、生理食塩水(濃度0.9質量%の食塩水)と接触してから所定の時間経過するまでに生理食塩水を吸収した量で表される吸水速度である。無加圧DWは、生理食塩水の吸収前の吸水性樹脂粒子1g当たりの吸収量(mL)で表される。無加圧DWの10秒値及び3分値は、それぞれ、吸水性樹脂粒子が生理食塩水と接触してから10秒後及び3分後の吸収量を意味する。吸水速度指数I及びIIは、無加圧DWの10秒値及び3分値を、1分当たりの吸水速度に換算した値に相当する。静的吸引指数αは、吸水速度指数I及びIIの平均値に相当し、静的吸引指数αが大きいことは、10秒から3分の間にわたって比較的大きな吸水速度が維持されることを意味する。本発明者の知見によれば、5.0mL/g以上の静的吸引指数αを示す吸水性樹脂粒子は、液体漏れを効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる。」
・「【0012】
一実施形態に係る吸水性樹脂粒子の無加圧DWの10秒値及び3分値から下記の吸水速度指数係数I及びIIを求めたときに、
吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上である。静的吸引指数αが大きいと、吸水性樹脂粒子による液体漏れがより効果的に抑制される傾向がある。静的吸引指数αは6.0mL/g以上、7.0mL/g以上、9.0mL/g以上、10mL/g以上、11mL/g以上、12mL/g以上、13mL/g以上、14mL/g以上、又は15mL/g以上であってもよい。静的吸引指数αの上限は特に制限されないが、通常、25mL/g以下である。
【0013】
吸水速度指数Iは、2mL/g以上であってもよく、30mL/g以下であってもよい。吸水速度指数IIは、8mL/g以上であってもよく、30mL/g以下であってもよい。吸水速度指数I及びIIがこれら数値範囲内であると、静的吸引指数αが5.0mL/gとなり易い。
【0014】
5.0mL/g以上の静的吸引指数αを示す吸水性樹脂粒子は、例えば、後述の重合体粒子にシリカ粒子(例えば非晶質シリカ)を付着させること、吸水性樹脂粒子の表面積を大きくすること、吸水性樹脂粒子の表層における架橋密度を調整すること、又はこれらの組み合わせにより、得ることができる。
【0015】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量は、例えば、20~60g/g、25~55g/g、30~50g/g、又は32~42g/gであってよい。生理食塩水の保水量は、後述する実施例に記載の方法によって測定される。」
・「【0017】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の形状としては、略球状、破砕状、顆粒状等が挙げられる。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子の中位粒子径は、250~850μm、300~700μm、又は、300~600μmであってよい。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、後述する製造方法により得られた時点で所望の粒度分布を有していてよいが、篩による分級を用いた粒度調整等の操作を行うことにより粒度分布を調整してもよい。」
・「【0019】
吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体を含む単量体を重合させる工程を含む方法により、製造することができる。重合方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。これらの中では、得られる吸水性樹脂粒子の良好な吸水特性の確保、及び、重合反応の制御が容易である観点から、逆相懸濁重合法又は水溶液重合法が好ましい。以下においては、エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明する。
・・・(略)・・・
【0021】
これらの中でも、工業的に入手が容易である観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びに、N,N-ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに、アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことがより好ましい。吸水特性を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
・・・(略)・・・
【0023】
吸水性樹脂粒子を得るための単量体としては、上述のエチレン性不飽和単量体以外の単量体が使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上述のエチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量に対して70~100モル%であることが好ましい。中でも、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70~100モル%であることがより好ましい。」
・「【0060】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、重合体粒子のみから構成されていてもよいが、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤(エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン5酢酸及びその塩、例えばジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム等)、及び流動性向上剤(滑剤)等から選ばれる各種の追加の成分を更に含むことができる。追加の成分は、重合体粒子の内部、重合体粒子の表面上、又はそれらの両方に配置され得る。追加の成分としては、流動性向上剤(滑剤)が好ましく、そのなかでも無機粒子がより好ましい。無機粒子としては、例えば、非晶質シリカ等のシリカ粒子が挙げられる。
【0061】
吸水性樹脂粒子は、重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子を含んでいてもよい。例えば、重合体粒子と無機粒子とを混合することにより、重合体粒子の表面上に無機粒子を配置することができる。この無機粒子は、非晶質シリカ等のシリカ粒子であってもよい。吸水性樹脂粒子が重合体粒子の表面上に配置された無機粒子を含む場合、重合体粒子の質量に対する無機粒子の割合は、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、又は1.5質量%以上であってもよく、5.0質量%以下、又は3.5質量%以下であってもよい。ここでの無機粒子は、通常、重合体粒子の大きさと比較して微小な大きさを有する。例えば、無機粒子の平均粒子径が、0.1~50μm、0.5~30μm、又は1~20μmであってもよい。ここでの平均粒子径は、動的光散乱法、又はレーザー回折・散乱法によって測定される値であることができる。」
・「【実施例】
【0078】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0079】
1.吸水性樹脂粒子の作製
実施例1
第1段目の重合反応
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、並びに、攪拌機として、翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、n-ヘプタン293g、及び、高分子系分散剤としての無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社、ハイワックス1105A)0.736gを入れた。フラスコ内の反応液を攪拌しつつ80℃まで昇温して、高分子系分散剤をn-ヘプタンに溶解させた。その後、反応液を50℃まで冷却した。
【0080】
内容積300mLのビーカーに、濃度80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.03モル)を入れた。ビーカーを外部から冷却しつつ、アクリル酸水溶液に対して濃度20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gを滴下し、それにより75モル%のアクリル酸を中和した。次いで、アクリル酸水溶液に、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HECAW-15F)、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)及び過硫酸カリウム0.018g(0.068ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.010g(0.057ミリモル)を溶解させて、第1段目の単量体水溶液を調製した。
【0081】
第1段目の単量体水溶液を、セパラブルフラスコ内の上述の反応液に添加し、反応液を10分間攪拌した。次いで、n-ヘプタン6.62g及びショ糖ステアリン酸エステル(HLB:3、三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370)0.736gを含む界面活性剤溶液を反応液に添加し、撹拌翼の回転数を550rpmとして反応液を攪拌しながら、系内を窒素で十分に置換した。その後、セパラブルフラスコを70℃の水浴中で加熱しながら、60分間かけて重合反応を進行させた。この重合反応により、含水ゲル状重合体を含む第1段目の重合スラリー液を得た。
【0082】
第2段目の重合反応
内容積500mLのビーカーに、濃度80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.43モル)を入れた。ビーカーを外部より冷却しつつ、アクリル酸水溶液に対して濃度27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下し、それにより75モル%のアクリル酸を中和した。次いで、アクリル酸水溶液に、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)、及び過硫酸カリウム0.026g(0.095ミリモル)を溶解させて、第2段目の単量体水溶液を調製した。
【0083】
セパラブルフラスコ内の第1段目の重合スラリー液を、撹拌翼の回転数を1000rpmとして撹拌しながら25℃に冷却した。そこに、第2段目の単量体水溶液の全量を添加し、続いて系内を窒素で30分間かけて置換した。その後、セパラブルフラスコを70℃の水浴中で加熱しながら、60分間かけて重合反応を進行させた。重合後架橋のための架橋剤として2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液0.580g(0.067ミリモル)を添加し、含水ゲル状重合体を得た。
【0084】
含水ゲル状重合体を含む反応液に、濃度45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.265gを攪拌下で添加した。その後、125℃に設定した油浴にフラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、238.5gの水を系外へ抜き出した。その後、反応液に表面架橋剤として濃度2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(0.507ミリモル)を添加し、83℃で2時間かけて、表面架橋剤による架橋反応を進行させた。
【0085】
表面架橋反応後の反応液から、125℃での加熱によりn-ヘプタンを留去して、重合体粒子(乾燥品)を得た。得られた重合体粒子を目開き850μmの篩に通過させた。その後、重合体粒子の質量に対して0.2質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)を重合体粒子と混合し、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子232.1gを得た。該粒子の中位粒子径は396μmであった。
・・・(略)・・・
【0087】
実施例3
第1段目の重合反応における水溶性ラジカル重合開始剤を2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩を用いずに、過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)に変更し、第2段目の重合反応における水溶性ラジカル重合開始剤を2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩を用いずに、過硫酸カリウム0.090g(0.334ミリモル)に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で、重合体粒子(乾燥品)を得た。共沸蒸留により含水ゲル状重合体を含む反応液から抜き出した水の量は、247.9gであった。
重合体粒子の質量に対して0.5質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)を重合体粒子と混合し、吸水性樹脂粒子231.0gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は355μmであった。
【0088】
実施例4
第1段目の重合反応における水溶性ラジカル重合開始剤を2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩を用いずに、過硫酸カリウム0.0736g(0.272ミリモル)に変更し、第2段目の重合反応における水溶性ラジカル重合開始剤を2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩を用いずに、過硫酸カリウム0.090g(0.334ミリモル)に変更したこと以外は実施例1と同様の手順で、重合体粒子(乾燥品)を得た。共沸蒸留により含水ゲル状重合体を含む反応液から抜き出した水の量は、239.7gであった。
重合体粒子の質量に対して0.5質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)を重合体粒子と混合し、吸水性樹脂粒子229.2gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は377μmであった。」
・「【0089】
比較例1
・・・(略)・・・重合体粒子に対して、0.1質量%の非晶質シリカを混合したこと以外は、実施例1と同様にして、吸水性樹脂粒子230.8gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は349μmであった。
【0090】
比較例2
・・・(略)・・・以外は実施例1と同様の手順で、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子226.6gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は356μmであった。
【0091】
比較例3
・・・(略)・・・以外は実施例1と同様の手順で、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子220.6gを得た。該吸水性樹脂粒子の中位粒子径は355μmであった。
【0092】
比較例4
・・・(略)・・・以外は実施例1と同様の手順で、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子222.2gを得た。該粒子の中位粒子径は396μmであった。」
・「【0093】
2.評価
2-1.生理食塩水保水量
吸水性樹脂粒子2.0gを量り取った綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)を500mL容のビーカー内に設置した。吸水性樹脂粒子の入った綿袋中に0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)500gをママコができないように一度に注ぎ込み、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、30分静置させることで吸水性樹脂粒子を膨潤させた。30分経過後の綿袋を、遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機(株式会社コクサン製、品番:H-122)を用いて1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂粒子を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時の空質量Wb(g)を測定し、以下の式から生理食塩水保水量を算出した。
生理食塩水保水量(g/g)=[Wa-Wb]/2.0
・・・(略)・・・
【0096】
<中位粒子径>
吸水性樹脂粒子50gを中位粒子径測定用に用いた。
【0097】
JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、及び受け皿の順に組み合わせた。
【0098】
組み合わせた最上の篩に、吸水性樹脂粒子を入れ、ロータップ式振とう器を用いて20分間振とうさせて分級した。分級後、各篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出し粒度分布を求めた。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に篩上を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
【0099】
2-2.無加圧DW
吸水性樹脂の粒子の無加圧DWは、図2に示す測定装置を用いて測定した。測定は1種類の吸水性樹脂粒子に関して5回実施し、最低値と最高値とを除いた3点の測定値の平均値を求めた。
当該測定装置は、ビュレット部1、導管5、測定台13、ナイロンメッシュシート15、架台11、及びクランプ3を有する。ビュレット部1は、目盛が記載されたビュレット管21と、ビュレット管21の上部の開口を密栓するゴム栓23と、ビュレット管21の下部の先端に連結されたコック22と、ビュレット管21の下部に連結された空気導入管25及びコック24とを有する。ビュレット部1はクランプ3で固定されている。平板状の測定台13は、その中央部に形成された直径2mmの貫通孔13aを有しており、高さが可変の架台11によって支持されている。測定台13の貫通孔13aとビュレット部1のコック22とが導管5によって連結されている。導管5の内径は6mmである。
【0100】
測定は温度25℃、湿度60±10%の環境下で行なわれた。まずビュレット部1のコック22とコック24を閉め、25℃に調節された0.9質量%食塩水50をビュレット管21上部の開口からビュレット管21に入れた。食塩水の濃度0.9質量%は、食塩水の質量を基準とする濃度である。ゴム栓23でビュレット管21の開口の密栓した後、コック22及びコック24を開けた。気泡が入らないよう導管5内部を0.9質量%食塩水50で満たした。貫通孔13a内に到達した0.9質量%食塩水の水面の高さが、測定台13の上面の高さと同じになるように、測定台13の高さを調整した。調整後、ビュレット管21内の0.9質量%食塩水50の水面の高さをビュレット管21の目盛で読み取り、その位置をゼロ点(0秒時点の読み値)とした。
【0101】
測定台13上の貫通孔13aの近傍にてナイロンメッシュシート15(100mm×100mm、250メッシュ、厚さ約50μm)を敷き、その中央部に、内径30mm、高さ20mmのシリンダーを置いた。このシリンダーに、1.00gの吸水性樹脂粒子10aを均一に散布した。その後、シリンダーを注意深く取り除き、ナイロンメッシュシート15の中央部に吸水性樹脂粒子10aが円状に分散されたサンプルを得た。次いで、吸水性樹脂粒子10aが載置されたナイロンメッシュシート15を、その中心が貫通孔13aの位置になるように、吸水性樹脂粒子10aが散逸しない程度にすばやく移動させて、測定を開始した。空気導入管25からビュレット管21内に気泡が最初に導入された時点を吸水開始(0秒)とした。
【0102】
ビュレット管21内の0.9質量%食塩水50の減少量(すなわち、吸水性樹脂粒子10aが吸水した0.9質量%食塩水の量)を0.1mL単位で順次読み取り、吸水性樹脂粒子10aの吸水開始から起算して10秒後、1分後、3分後、5分後及び10分後の0.9質量%食塩水50の減量分Wc(g)を読み取った。Wcから、下記式により無加圧DWの10秒値、1分値、3分値、5分値及び10分値を求めた。無加圧DWは、吸水性樹脂粒子10aの1.00g当たりの吸水量である。
無加圧DW値(mL/g)=Wc/1.00
【0103】
2-3.吸水性樹脂粒子の漏れ性
(1)人工尿の調製
塩化ナトリウム、塩化カルシウム及び硫酸マグネシウムを下記の濃度でイオン交換水に溶解させた。得られた溶液に少量の青色1号加えて、青色に着色した人工尿を得た。得られた人工尿を、漏れ性評価のための試験液として用いた。下記の濃度は、人工尿の全質量を基準とする濃度である。
人工尿組成
NaCl:0.780質量%
CaCl2:0.022質量%
MgSO4:0.038質量%
青色一号:0.002質量%
【0104】
(2)漏れ性試験
以下のi)、ii)、iii)、iv)及びv)の手順により、吸水性樹脂粒子の液体漏れ性を評価した。
i)長さ15cm、幅5cmの短冊状の粘着テープ(ダイヤテックス株式会社製、パイオランテープ)を粘着面が上になるよう実験台上に置き、その粘着面上に、吸水性樹脂粒子3.0gを均一に散布した。散布された吸水性樹脂粒子の上部に、ステンレス製ローラー(質量4.0kg、径10.5cm、幅6.0cm)を載せ、ローラーを、粘着テープの長手方向における両端の間で3回往復させた。これにより、吸水性樹脂粒子からなる吸水層を粘着テープの粘着面上に形成した。
ii)粘着テープを垂直に立てて持ち上げ、余剰の吸水性樹脂粒子を吸水層から除いた。再度、吸水層に前記ローラーを載せ、粘着テープの長手方向における両端の間で3回往復させた。
iii)温度25±2℃の室内において、長さ30cm、幅55cmの長方形の平坦な主面を有するアクリル樹脂板を、その幅方向が水平面に平行で、その主面と水平面とが30度をなすように固定した。固定されたアクリル板の主面に、吸水層が形成された粘着テープを、吸水層が露出し、その長手方向がアクリル樹脂板の幅方向に対して垂直になる向きで貼り付けた。
iV)吸水層の上端から約1cmの位置で表面から約1cmの高さから、液温25℃の試験液0.25mLを、マイクロピペット(エムエス機器社製ピペットマン・ネオP1000N)を用いて、1秒以内に全て注入した。
v)試験液の注入開始から30秒後に、吸水層に注入された試験液の移動距離の最大値を読み取り、拡散距離Dとして記録した。なお、拡散距離Dは、主面上において、滴下点(注入点)と最長到達点とを、アクリル樹脂板の短辺に対して垂直方向の直線で結んだ距離である。
【0105】
2-3.結果
評価結果を表1に示す。静的吸引指数αが所定値以上である実施例1~4の吸水性樹脂粒子は、小さい拡散係数を示し、液体漏れを抑制できることが確認された。拡散距離の「14*」は、吸水層の下部からの試験液の漏れが発生したことを示す。
【0106】
【表1】
[図:0001382381000013.jpg]
」
・「【図2】
[図:0001382381000014.jpg]
」
(3)判断
上記(2)のとおり、本件特許の発明の詳細な説明及び図面には、本件特許発明1の各発明特定事項及びその製造方法について具体的な記載があり、特に「非晶質シリカ」で「平均粒子径が0.1~50μm」の「無機粒子」について、重合体粒子の質量に対して「0.2質量%以上」「5.0質量%以下」含ませることが記載され、実施例として、「非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)」を0.2質量%、0.5質量%又は2質量%含ませ、比較例として、「非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)」を0.1質量%又は0.2質量%含ませたものが記載されている。
したがって、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
また、本件特許発明2についても同様であり、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明2を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
したがって、本件特許発明1及び2に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。
(4)取消理由3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、取消理由3によっては取り消すことはできない。
第7 特許異議申立人が主張する本件訂正により生じた新たな取消理由についての当審の判断
特許異議申立人は、令和3年9月3日に提出した意見書において、新たに以下の取消理由を主張する。
1 新たな取消理由の概要
本件訂正により、本件特許の請求項1に追加された発明特定事項である「無機粒子の平均粒子径」に関して、「平均」が数平均、質量平均及び体積平均のいずれなのかが、本件特許の明細書に規定されていない。
そして、一般に、数平均粒子径、質量平均粒子径及び体積平均粒子径はそれぞれの値が異なっており、全く異なるパラメータである。
したがって、本件特許発明1における「無機粒子の平均粒子径が0.1~50μm」という発明特定事項の意味が不明確である。
また、本件特許発明2は、請求項1を引用するものであるから、同様に不明確である。
よって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
2 明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
3 明確性要件の判断
本件特許の明細書の【0061】には、「ここでの平均粒子径は、動的光散乱法、又はレーザー回折・散乱法によって測定される値であることができる。」と記載されている。
したがって、本件特許発明1及び2における「無機粒子の平均粒子径」は「動的光散乱法」又は「レーザー回折・散乱法」によって測定される「平均粒子径」であると当業者は理解する。
また、一般に粒度分布測定装置と呼ばれる装置の場合、体積基準で粒度分布を測定している装置が多いことから、「動的光散乱法」又は「レーザー回折・散乱法」も、粒子の「体積平均粒子径」を測定するものといえる。
したがって、本件特許発明1における「無機粒子の平均粒子径が0.1~50μm」という発明特定事項の意味が不明確であるとはいえない。
よって、本件特許発明1及び2に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
4 特許異議申立人が主張する新たな取消理由についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、特許異議申立人が主張する新たな取消理由によっては取り消すことはできない。
第8 取消理由に採用しなかった特許異議の申立ての理由についての当審の判断
取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由は、申立理由1のうち甲13に基づく新規性及び申立理由2のうち甲13に基づく進歩性(以下、「甲13に基づく新規性・進歩性」という。)、申立理由2のうち甲8に基づく進歩性(以下、「甲8に基づく進歩性」という。)、申立理由2のうち甲1に基づく進歩性(以下、「甲1に基づく進歩性」という。)及び申立理由3(サポート要件)である。
以下、順に検討する。
1 甲13に基づく新規性・進歩性について
(1)甲13に記載された事項及び甲13発明
ア 甲13に記載された事項
甲13には、「重合体粒子の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0077】
実施例1
撹拌機,還流冷却管,モノマー滴下口,窒素ガス導入管,温度計を取り付けたSUS304製5L反応容器(アンカー翼使用)に分散剤として下記式(II-1)で表される陰イオン界面活性剤を0.10%[対アクリル酸重量]仕込み、重合溶媒ヘプタン1600mLを加えた。溶存酸素を追い出す目的で窒素ガスを吹き込み、アンカー翼を300r/minで撹拌し、内温88℃まで昇温した。
【0078】
C12H25O(PO)0.2(EO)2SO3Na (II-1)
一方、2L三つ口フラスコ中に、東亞合成(株)製80%アクリル酸506.2g、イオン交換水200.2gを仕込み、氷冷しながら旭硝子(株)製48%苛性ソーダ水溶液347.1gを滴下し、モノマー水溶液としてのアクリル酸ナトリウム水溶液1053.5gを得た。このモノマー水溶液に、N-パーム油脂肪酸アシル-L-グルタミン酸ソーダ(味の素(株)製、商品名 アミソフトPS-11)0.245gをイオン交換水3gに溶解させたものを添加し、暫く撹拌した後、264g、264g、528gに三分割した。
【0079】
次いで、和光純薬工業(株)製2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド(商品名V-50)0.0408g、花王(株)製ポリエチレングリコール(PEG6000)0.204g、イオン交換水9gを混合溶解し、開始剤(A)水溶液を調製した。また、和光純薬工業(株)製過硫酸ナトリウム0.61gをイオン交換水10gに溶解し、開始剤(B)水溶液を調製した。さらに、クエン酸チタン水溶液(クエン酸/Tiモル比1.0、固形分19.0%、Ti量0.039%[対アクリル酸])を調製した。
【0080】
三分割したモノマー水溶液の1つ(264g)に、開始剤(A)水溶液2.31gを加えた(モノマー(1))。また、三分割したもう1つのモノマー水溶液(264g)に、開始剤(A)水溶液6.93gとクエン酸チタン水溶液1.57gを加えた(モノマー(2))。三分割した残りのモノマー水溶液(528g)に、開始剤(B)水溶液10.61gとクエン酸チタン水溶液3.15gを加えた(モノマー(3))。
【0081】
前述の5L反応容器の内温が88℃であることを確認した後、モノマー滴下口からマイクロチューブポンプを用いて、モノマー(1)を15分かけて滴下し重合した。引き続き、モノマー(2)を15分かけて滴下し重合した。さらに引き続き、モノマー(3)を30分かけて滴下し重合した。重合終了後、脱水管を用いて共沸脱水を行い、重合体粒子の含水量を重合体粒子100部に対して60部に調整した。その後、架橋剤としてナガセ化成工業(株)製エチレングリコールジグリシジルエーテル(商品名デナコールEX-810)0.122gを水10gに溶解したものを添加した。その後、更に共沸脱水を行い、重合体粒子の含水量を重合体粒子100部に対して40部に調整した。冷却後、ヘプタンをデカンテーションで除き、130℃、約6.7kPa、14時間の条件で乾燥させることにより重合体粒子を得た。得られた重合体粒子について、平均粒径及び嵩比重を測定した。
【0082】
この重合体粒子100部に対し日本アエロジル(株)製アエロジル200 0.5部をドライブレンドすることにより表面処理を行った。この表面処理後の重合体粒子について、吸水量、吸水速度、加圧通液速度及び安定性の評価を行った。
これらの結果を表1に示す。」
・「【0086】
【表1】
[図:0001382381000015.jpg]
」
イ 甲13発明
甲13に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、甲13には次の発明(以下、「甲13発明」という。)が記載されていると認める。
「実施例1として得た重合体粒子。」(当審注:実施例1については、上記ア参照。)
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲13発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点13-1>
本件特許発明1においては、「前記無機粒子が非晶質シリカで、前記無機粒子の平均粒子径が0.1~50μmであり」と特定されているのに対し、甲13発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点13-2>
本件特許発明1においては、「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上であり、
吸水速度指数Iが2mL/g以上30mL/g以下であり、
吸水速度指数IIが13mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲13発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点13-3>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量が35~60g/gである」と特定されているのに対し、甲13発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、事案に鑑み相違点13-2から検討する。
甲13には「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」に関する記載はない。
したがって、相違点13-2は実質的な相違点である。
また、他の証拠にも甲13発明において「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」を調整する動機付けとなる記載はないから、甲13発明において、「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」に着目し、これらをそれぞれ「5.0mL/g以上」、「2mL/g以上30mL/g以下」及び「13mL/g以上」として、相違点13-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる」という甲13発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲13の実施例1に記載の重合体粒子のDW1分値は本件特許の実施例1及び4のDW1分値よりも高いから、甲13の実施例1に記載の重合体粒子は「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」の条件を満たす旨主張する。
しかし、特許異議申立書には、DW1分値から「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」の値がどのように推定されるのか示されていない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲13発明であるとはいえないし、甲13発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲13発明であるとはいえないし、甲13発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)甲13に基づく新規性・進歩性についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、甲13に基づく新規性・進歩性によっては取り消すことはできない。
2 甲8に基づく進歩性について
(1)甲8に記載された事項及び甲8発明
ア 甲8に記載された事項
甲8には、「吸収性樹脂粒子及び吸収性物品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【0043】
<吸収性樹脂粒子の吸収速度測定方法>
JIS K7224-1996にて規定のDW法(Demand Wettability法)を用いて、以下の通り測定される。
25℃、湿度50%の室内で、DW装置{ビューレット(1)の容量50ml、長さ55cm、小穴(9)の直径3mm;図1参照}を用い、空気流入細管(2)の最下端部と支持板(3)の最上端部とを同一水平面になるように調整し、バルブ(4)及び(5)を閉じた状態で、約50mlの生理食塩水をビューレット(1)に入れ、ゴム栓(6)を装着し、バルブ(4)及び(5)を開けることにより、配管を生理食塩水で充填すると共に、支持板(3)の中央に設けられた小穴(9)から生理食塩水を溢れ出させ、バルブ(4)を閉じてから、溢れ出た生理食塩水を拭き取る。引き続き、支持板(3)上に、平織りナイロンメッシュ(7)(目開き63μm、5cm×5cm)をのせ、さらにこの平織りナイロンメッシュ(7)の上に、小穴(9)が中央に位置するようにして内径5.0cm、高さ3.0cmの円柱筒(10)を載せて、この円柱筒(10)の中に測定試料(8)を1.000g散布した後、円柱筒(10)を除去する。ここで、支持板(3)のみの荷重がかかるようにセットした天秤のゼロ点調整を行い、バルブ(4)を開けて測定を開始する。バルブ(4)を開けてから1秒ごとに天秤の重量データを読み取り10分間継続する。天秤の重量データは、表示値を読み取り記録してもよいが、天秤とパソコンを接続し、パソコン上で1秒ごとに重量データを記録した方が好ましい。
天秤の重量データは、ビューレット内の生理食塩水の減少量であり、吸収性樹脂粒子の生理食塩水の吸収量は、天秤の重量データの絶対値にて与えられる。
【0044】
得られた時間ごとの重量データをプロットしていくと、吸収性樹脂粒子が生理食塩水を吸収した挙動がグラフ化でき、この吸収挙動を以降、吸収カーブと記載する。一般的に、測定開始後、時間と共に生理食塩水を吸収していくが、測定開始初期と測定開始後期とを比べると、吸収速度は経時的に変化していく。一般的な吸収カーブを図2に示す。」
・「【0055】
<製造例1>
ガラス製反応容器に、アクリル酸ナトリウム77部、アクリル酸22.85部、N,N’-メチレンビスアクリルアミド0.15部、脱イオン水299.54部及びジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.001部を仕込み、攪拌、混合しながら内容物の温度を3℃に保った。内容物に窒素を流入して溶存酸素量を1ppm以下とし、過酸化水素の1%水溶液0.3部、アスコルビン酸の0.2%水溶液0.8部及び2,2’-アゾビスアミジノプロパンジハイドロクロライドの2%水溶液0.8部を添加・混合して重合を開始させ、反応液が80℃に達した後、重合温度80±2℃で約5時間重合することにより、架橋重合体からなる含水ゲル(1)を得た。含水率(120±5℃×30分)は75%であった。
【0056】
含水ゲル(1)400部をミンチ機(目皿の穴径:6mm、飯塚工業株式会社製 12VR-400K)にて25℃で破砕した後、135℃、風速2.0m/秒の条件の通気型バンド乾燥機で乾燥し、乾燥体を得た。この乾燥体を市販のジューサーミキサー(松下電器産業株式会社、ファイバーミキサーMX-X57)にて粉砕し、目開き850及び150μmのふるいを用いて850~150μmの粒度に調整して、架橋重合体粒子を得た。
【0057】
<製造例2>
製造例1で得られた架橋重合体粒子100部を高速攪拌(細川ミクロン製高速攪拌タービュライザー:回転数2000rpm)しながらエチレングリコールジグリシジルエーテルの10%水/メタノール混合溶液(水/メタノールの重量比=70/30)の2部をスプレー噴霧しながら加えて混合し、140℃で30分間静置して表面架橋することにより、吸収性樹脂粒子を得た。この吸収性樹脂粒子の重量平均粒子径は400μmであった。」
・「【0060】
<実施例1>
製造例1で得た含水ゲル(1)400部をミンチ機(目皿の穴径:6mm、飯塚工業株式会社製 12VR-400K)にて25℃で破砕した後、水溶性ケイ素化合物(c1){富士化学株式会社製珪酸ソーダ1号}3部を添加し、手でよく混合した後、万能混合機(プライミクス株式会社製 T.K.ハイビスディスパーミックス 3D-5型)にて15分間混練した。その後、135℃、風速2.0m/秒の条件の通気型バンド乾燥機で乾燥し、乾燥体を得た。この乾燥体を市販のジューサーミキサー{松下電器産業株式会社、ファイバーミキサーMX-X57}にて粉砕し、目開き850及び150μmのふるいを用いて850~150μmの粒度に調整し、架橋重合体粒子(1)を得た。製造例2の「架橋重合体粒子」を「架橋重合体粒子(1)」に変更したこと以外同様に操作を行い本発明の吸収性樹脂粒子(1)を得た。吸収性樹脂粒子(1)の重量平均粒子径は400μmであった。」
・「【図2】
[図:0001382381000016.jpg]
」
イ 甲8発明
甲8に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、甲8には次の発明(以下、「甲8発明」という。)が記載されていると認める。
「実施例1として得た吸収性樹脂粒子(1)。」(当審注:実施例1については、上記ア参照。)
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲8発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点8-1>
本件特許発明1においては、「前記無機粒子が非晶質シリカで、前記無機粒子の平均粒子径が0.1~50μmであり」と特定されているのに対し、甲8発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点8-2>
本件特許発明1においては、「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上であり、
吸水速度指数Iが2mL/g以上30mL/g以下であり、
吸水速度指数IIが13mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲8発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点8-3>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量が35~60g/gである」と特定されているのに対し、甲8発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、事案に鑑み相違点8-2から検討する。
甲8には「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」に関する記載はなく、他の証拠にも甲8発明において「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」を調整する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲8発明において、「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」に着目し、これらをそれぞれ「5.0mL/g以上」、「2mL/g以上30mL/g以下」及び「13mL/g以上」として、相違点8―2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる」という甲8発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲8の図2に記載の吸収カーブから、甲8に記載の吸水性樹脂粒子は、DW10秒の値が1mL/g、DW3分の値が26mL/gであることが読み取れるので、甲8に記載の吸水性樹脂粒子は「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」の条件を満たす旨主張する。
しかし、甲8の図2に記載の吸収カーブから、甲8に記載の吸水性樹脂粒子は、DW10秒の値が1mL/g、DW3分の値が26mL/gであることは読み取れないし、そもそも、甲8の図2が甲8に記載されたどの樹脂粒子のものなのかも明らかでない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲8発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲8発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)甲8に基づく進歩性についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、甲8を主引用文献とする進歩性によっては取り消すことはできない。
3 甲1に基づく進歩性について
(1)甲1に記載された事項及び甲1発明
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「吸水性樹脂組成物」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「[0014] 本発明において用いられる水溶性エチレン性不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸(本明細書においては「アクリ」及び「メタクリ」を合わせて「(メタ)アクリ」と表記する。以下同様。)、・・・(略)・・・及びその塩;・・・(略)・・・が挙げられる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
[0015]・・・(略)・・・この場合、前記(メタ)アクリル酸及びその塩は、主となる水溶性エチレン性不飽和単量体として、総水溶性エチレン性不飽和単量体に対して70~100モル%用いられることが好ましい。」
・「[0053] 本発明に用いられる湿潤促進剤としては、例えば、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミ、・・・(略)・・・等の親水性の無機微粉末;・・・(略)・・・が挙げられる。なかでも、高い液体吸収性能及び高い通液性を両立させる観点から親水性の無機微粉末が好ましく、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミ及びゼオライトがより好ましい。これらの湿潤促進剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。」
・「[0061] 本発明の吸水性樹脂組成物の中位粒子径は、200~600μmであることが好ましく、250~550μmであることがより好ましく、280~500μmであることがさらに好ましく、300~450μmであることがよりさらに好ましい。中位粒子径を前記範囲とすることで、微粒子による吸液時のゲルブロッキングと、粗粒子による吸収性物品の触感の悪化とを回避することができる。なお、吸水性樹脂組成物の中位粒子径は、後述する「(4)中位粒子径」に記載されている測定方法により測定した値である。」
・「請求の範囲
[請求項1] 水溶性エチレン性不飽和単量体をアゾ系重合開始剤存在下で重合させることにより得られる吸水性樹脂と、湿潤促進剤とを含む吸水性樹脂組成物であって、以下(A)~(D)の性能を満たす吸水性樹脂組成物。
(A)生理食塩水保水能が、38~44g/g
(B)無加圧DWの5分値が、50mL/g以上
(C)無加圧DWの60分値が、60mL/g以上
(D)生理食塩水通液速度が、5g/分以上」
(イ)甲1発明
甲1に記載された事項を整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
「(メタ)アクリル酸及びその塩をアゾ系重合開始剤存在下で重合させることにより得られる吸水性樹脂と、無機微粉末とを含む吸水性樹脂組成物であって、以下(A)~(D)の性能を満たし、中位粒子径は、200~600μmである吸水性樹脂組成物。
(A)生理食塩水保水能が、38~44g/g
(B)無加圧DWの5分値が、50mL/g以上
(C)無加圧DWの60分値が、60mL/g以上
(D)生理食塩水通液速度が、5g/分以上」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むエチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する架橋重合体を含む重合体粒子と、該重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子と、を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記架橋重合体中の単量体単位全量に対して70~100モル%である、吸水性樹脂粒子。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-1>
本件特許発明1においては、「前記無機粒子が非晶質シリカで、前記無機粒子の平均粒子径が0.1~50μmであり」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1-2>
本件特許発明1においては、「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上であり、
吸水速度指数Iが2mL/g以上30mL/g以下であり、
吸水速度指数IIが13mL/g以上であり」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1-3>
本件特許発明1においては、「当該吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量が35~60g/gである」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
そこで、事案に鑑み相違点1-2から検討する。
甲1には「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」に関する記載はなく、他の証拠にも甲1発明において「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」を調整する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1発明において、「静的吸引指数α」、「吸水速度指数I」及び「吸水速度指数II」に着目し、これらをそれぞれ「5.0mL/g以上」、「2mL/g以上30mL/g以下」及び「13mL/g以上」として、相違点1―2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供することができる」という甲1発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲1に記載の吸水性樹脂組成物は、DW5分値が、50mL/g以上であり、甲8の図2に記載の吸収カーブを参照すると、甲1に記載の吸水性樹脂組成物は、DW3分値の値が30mL/g以上であるから、甲1に記載の吸水性樹脂組成物は「吸水速度指数II」の条件を満たす蓋然性が高い旨主張する。
しかし、甲1発明に甲8の図2を適用する動機付けとなる記載は甲1及び8の何れにもないし、そもそも、甲8の図2が甲8に記載されたどの樹脂粒子のものなのかも明らかでない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様の理由で、甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)甲1に基づく進歩性についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、甲1を主引用文献とする進歩性によっては取り消すことはできない。
4 申立理由3(サポート要件)
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)発明の詳細な説明の記載
本件特許の発明の詳細な説明には、上記第6 2(2)のとおりの記載がある。
(3)サポート要件の判断
ア 発明の課題
本件特許の発明の詳細な説明の【0001】ないし【0005】によると、本件特許発明1及び2の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「吸収体の液体漏れを抑制可能な吸水性樹脂粒子を提供すること」である。
イ 判断
本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明1の各発明特定事項について具体的な記載がある、
また、本件特許の発明の詳細な説明において、実施例として、「吸水速度指数I=(無加圧DWの10秒値)×6[mL/g]で、
吸水速度指数II=(無加圧DWの3分値)/3[mL/g]であるとき、
下記式:
α=(I+II)/2
で算出される静的吸引指数αが5.0mL/g以上」である「吸水性樹脂粒子」が、濡れ性の指標である拡散距離が小さいこと、すなわち液体漏れが抑制されていることを確認しており、「静的吸引指数αが5.0mL/g以上」である「吸水性樹脂粒子」は発明の課題を解決できると当業者は認識できる。
そして、本件特許発明1は、上記吸水性樹脂粒子の範囲のものである。
したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
また、請求項1を引用する本件特許発明2についても同様である。
よって、本件特許発明1及び2に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、発明の課題を解決するためには、無機粒子の種類と使用量を規定することが必須の構成である旨主張する。
しかし、上記のとおり、「静的吸引指数αが5.0mL/g以上」であれば、発明の課題を解決できると当業者は認識できる。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(4)申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由3によっては取り消すことはできない。
第9 結語
上記第6ないし8のとおり、本件特許の請求項1及び2に係る特許は、取消理由及び特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1及び2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項3に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項3に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700258