審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2024-700331

化粧シートおよび化粧材

審判番号
2024-700331
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-158634外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7359275
請求日
2024年04月11日
審決日
2024年11月21日
公報発行日
2025年02月28日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.537-YAA(B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第5項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7359275号発明「化粧シートおよび化粧材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7359275号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。 特許第7359275号の請求項1~8に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7359275号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和4年9月30日に出願され、令和5年10月2日にその特許権の設定登録(特許掲載公報令和5年10月11日発行)がされ、その後、その特許について、令和6年4月11日に特許異議申立人森川元嗣(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和6年7月19日付けで取消理由が通知され、令和6年9月2日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)がされた。 なお、当審から令和6年9月6日付けで申立人に対して訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を、期間を指定して行ったが、当該期間内に申立人からは応答がなかった。 第2 本件訂正請求について 1 訂正の内容 本件訂正請求は、特許第7359275号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求めるものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項を含むものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「JIS B0601:2013に規定される、」と記載されているのを、「ISO 25178-2:2012に規定される、」に訂正する。請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~8も同様に訂正する。 (2)一群の請求項について 訂正前の請求項2~8は、訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件訂正は一群の請求項について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正の目的について 「Spc(突起部頂点の算術平均曲率)」を規定する規格は、「JIS B0601:2013」ではなく、「ISO 25178-2:2012」により規定されていることは技術常識である。そうすると、「皺構造のSpc(突起部頂点の算術平均曲率)」を「JIS B0601:2013に規定される」とした記載が誤記であることは明らかである。 してみれば、訂正事項1は、本来の「ISO 25178-2:2012」に訂正するというものであるから、当該訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。 (2)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、明細書の段落【0015】に、「Spc」と同様の面粗さの指標である「Sku」が「ISO 25178-2:2012」によって規定されることが記載され、「ISO 25178-2:2012」には「Spc」も記載されていることから、当該訂正事項1は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。 (3)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと 訂正事項1は、「皺構造のSpc(突起部頂点の算術平均曲率)」を規定する規格を、本来の「ISO 25178-2:2012」に訂正し、発明を明確にするものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。 3.訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、本件訂正後の請求項〔1~8〕について訂正を認める。 第3 本件特許発明 本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、訂正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 基材層と、前記基材層の一方の面に配置された装飾層と、前記装飾層の前記基材層とは反対側の面に配置された艶消層と、を有する化粧シートであって、 前記艶消層の前記装飾層とは反対側の表面が、皺構造を有する表面形状を備え 前記皺構造は、不規則な皺による凹凸形状を有する構造であり、前記不規則な皺は、複数の突起部により形成する複数の凸部と、前記複数の突起部により囲まれて形成する凹部と、を有し、 ISO 25178-2:2012に規定される、前記皺構造のSpc(突起部頂点の算術平均曲率)が1200mm-1以上10000mm-1以下であり、 ISO 25178-2:2012に規定される、前記皺構造のSku(クルトシス)が3.5以下である、化粧シート。 【請求項2】 前記Spcが3713mm-1以上である、請求項1に記載の化粧シート。 【請求項3】 前記Skuが1.5以上である、請求項1に記載の化粧シート。 【請求項4】 前記表面形状の60°グロス値が、10.0以下である、請求項1に記載の化粧シート。 【請求項5】 前記艶消層と前記装飾層との間に、透明性樹脂層が配置されている、請求項1に記載の化粧シート。 【請求項6】 前記基材層の前記装飾層とは反対の面側に、接着層が配置されている、請求項1に記載の化粧シート。 【請求項7】 被着体と、前記被着体の面に配置された化粧シートと、を有する化粧材であって、 前記化粧シートが、請求項1から請求項6までのいずれかの請求項に記載の化粧シートである、化粧材。 【請求項8】 前記化粧材は、床用部材である、請求項7に記載の化粧材。」 第4 取消理由について 1.取消理由の概要 請求項1には、「JIS B0601:2013に規定される、前記皺構造のSpc(突起部頂点の算術平均曲率)」と記載されている。しかし、この「Spc(突起部頂点の算術平均曲率)」が、「JIS B0601:2013」に規定されていることを確認できない。 他方で、「Spc(突起部頂点の算術平均曲率)」は、甲第4号証(「INTERNATIONAL STANDARD ISO 25178:2012」、2012.4.1、p.28-29)の記載によると、「Surface texture:Areal」に係る国際規格「ISO 25178:2012」に規定されるパラメータとされるが、「JIS B0601:2013」が準拠することは確認できない。 すると、請求項1の「Spc(突起部頂点の算術平均曲率)」が、どのようなパラメータか不明であり、上記記載を含む本件発明1~8は、明確でない。 よって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2.取消理由についての判断 本件訂正により、「JIS B0601:2013に規定される、」が「ISO 25178-2:2012に規定される、」に訂正され、発明が明確になり、取消理由は解消した。 第5 取消理由に採用しなかった特許異議申立理由について 1.申立理由 申立人は、取消理由で採用した明確性要件違反のほか、次の理由を申し立てている。 (1)進歩性違反 本件発明1~8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証記載の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである(特許法第29条第2項)。 (2)実施可能要件違反 発明の詳細な説明は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでない(特許法第36条第4項第1号)。 (3)サポート要件違反 本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない(特許法第36条第6項第1号)。 (4)証拠方法 甲第1号証:特開2021-54045号公報 甲第2号証:韓国公開特許第10-2020-0025050号公報 甲第3号証:韓国公開特許第10-2020-0031282号公報 甲第4号証:「INTERNATIONAL STANDARD ISO 25178-2:2012」、2012.4.1、p.28-29 甲第5号証:津谷裕子、外2名、「環境に広がるイソシアネートの有害性」、臨床環境、日本臨床環境医学会、2012年、Vol.21、No.1、p.82-94 甲第6号証:清水兵衛、外4名、「キシリレンジイソシアネートの特性とその塗料用硬化剤への応用」、ネットワークポリマー、合成樹脂工業協会、2011年、Vol. 32、No. 6、p.310-316 甲第7号証:「ポリオール(PPG)輸送管理指針」、ウレタン原料工業会、2015年9月、第5版、p.1-4 甲第8号証:芥子明三、外1名、「ポリオール化合物」、日本ゴム協会誌、日本ゴム協会、1982年、第55巻、第3号、p.143-150 甲第9号証:「特許・実用新案 審査基準」の抜粋(第II部第1章第1節(実施可能要件)の1~9頁、第II部第2章第2節(サポート要件)の1~5頁) 甲第10号証:知的財産高等裁判所判決(平成17年(行ケ)第10280号)、平成17年6月30日判決言渡 以下、「甲第1号証」を「甲1」といい、他も同様にいう。 2.進歩性についての判断 (1)甲1に記載された発明 甲1には、特に実施例1の化粧シートに着目すると、次の「甲1発明」が記載されているといえる。 「両面にコロナ放電処理を施した基材(60μm厚、着色ポリプロピレンシート)を準備し、その一方の面にウレタン-硝化綿混合樹脂100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート5重量部を添加するインキを塗布して2μm厚さの裏面プライマー層を形成し、他方の面にアクリルウレタン系樹脂100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート8質量部、酸化チタン70量部を添加するインキを塗布して2μm厚さの隠蔽層(ベタ印刷層)を形成し、 次いで、上記隠蔽層上にアクリルウレタン系樹脂に着色顔料を添加したインキを塗布して1μm厚さの図柄層(石目模様)を形成し、 次いで、上記隠蔽層上に、アクリルウレタン系樹脂100質量部に光輝性顔料として平均粒子径10μm(粒径分布5~25μm)の酸化チタン被覆雲母パール顔料を38質量部添加したインキを塗布して1μm厚さの第一光輝性層を形成し、 次いで、アクリルポリオール-ウレタン混合樹脂100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート11重量部を添加したインキを塗布して2μm厚さの接着剤層を形成し、 該接着剤層上に、Tダイ押出機でポリプロピレン樹脂を加熱溶融押出しして80μm厚さの透明性樹脂層を形成すると共に、該透明樹脂層上にアクリルポリオール-ウレタン混合樹脂100重量部にヘキサメチレンジイソシアネート6重量部を添加したインキを塗布して2μm厚さのプライマー層を形成し、 次いで該プライマー層上に、アクリレート系電子線硬化型樹脂をグラビアコート法により固形分が5g/m2となるように塗布・乾燥した後、酸素濃度200ppm、加速電圧165KeV、5Mradの条件で電子線を照射して電子線硬化型樹脂からなる表面保護層を形成し、さらに該表面保護層側からエンボス加工を施して石目模様調の凸模様を形成した化粧シートであって、 凸形状のSpcは1315.8(1/mm)、Skuは3.0である、化粧シート。」 (2)判断 ア 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「基材(60μm厚、着色ポリプロピレンシート)」、「図柄層(石目模様)」、「化粧シート」は、それぞれ、本件発明1の「基材層」、「装飾層」、「化粧シート」に相当する。 甲1発明の「表面保護層」は、「図柄層(石目模様)」とは反対側の表面に、エンボス加工による凸模様が形成されるものであり、本件発明1の、「装飾層とは反対側の表面」に凹凸形状を有する「艶消層」とは、「表面に凸部を有する層」という限りで一致する。 そうすると、本件発明1と甲1発明の、一致点・相違点は、次のとおりである。 《一致点》 基材層と、前記基材層の一方の面に配置された装飾層と、前記装飾層の前記基材層とは反対側の面に配置された表面に凸部を有する層と、を有する化粧シート。」 《相違点》 表面に凸部を有する層について、 本件発明1が、「前記装飾層とは反対側の表面が、皺構造を有する表面形状を備え、前記皺構造は、不規則な皺による凹凸形状を有する構造であり、前記不規則な皺は、複数の突起部により形成する複数の凸部と、前記複数の突起部により囲まれて形成する凹部と、を有し、 ISO 25178-2:2012に規定される、前記皺構造のSpc(突起部頂点の算術平均曲率)が1200mm-1以上10000mm-1以下であり、 ISO 25178-2:2012に規定される、前記皺構造のSku(クルトシス)が3.5以下である」のに対し、 甲1発明は、エンボス加工を施して石目模様調の凸模様を形成したものであって、凸形状のSpcは1315.8(1/mm)、Skuは3.0である点。 イ 上記相違点について検討する。 甲1発明の「凸形状のSpcは1315.8(1/mm)、Skuは3.0」であることは、化粧シートに「奥行感や、輝度感といった優れた意匠効果を付与する」(甲1の【0008】)ために備える構成であるところ、甲1発明では、それを「エンボス加工を施して石目模様調の凸模様を形成」することにより成すものである。 甲2及び甲3には、艶消しのため、複数の突起部と、複数の突起部に囲まれた凹部を有する構造が記載されているが、甲1発明と同様に化粧シートに係る技術であるとはいえ、この構造を、奥行感や輝度感といった意匠効果を付与しようとする甲1発明の凸模様に採用する動機付けはない。むしろ、甲1発明が、「石目模様調の凸模様」で「凸形状のSpcは1315.8(1/mm)、Skuは3.0」とすることで、奥行感や輝度感といった意匠効果を付与しようとしているものを、甲2及び甲3の上記構造を採用したことで、「石目模様調の凸模様」で「凸形状のSpcは1315.8(1/mm)、Skuは3.0」とはならなくなる恐れがあり、甲2及び甲3の上記構造を採用することには阻害事由が存在する。 よって、本件発明1の相違点に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものではなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2、甲3記載の技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2~8は、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものであるところ、上記イで述べたように、本件発明1は、甲1発明及び甲2、甲3記載の技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明2~8も、甲1発明及び甲2、甲3記載の技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 以上より、進歩性に係る申立理由には、理由がない。 3.実施可能要件及びサポート要件についての判断 (1)発明の詳細な説明の記載 ア 発明が解決しようとする課題 「【0004】 例えば床材用の化粧材には、ヒールマークが付着しないことが望まれている。ヒールマークとは、典型的には、ゴム底靴で歩行した際に、床材にゴム跡(すり跡)が残ることをいう。ヒールマークは、化粧シートの艶消層がゴム底と接触した際に、艶消層によってゴム底の一部が削り取られることで形成される。ヒールマークは、通常の洗浄では落ちにくく、美観を損ねる要因になる。そのため、ヒールマークの発生を抑制すること、より広義には、化粧シートの艶消層による接触物の削り取りを抑制することが望まれている。 【0005】 特許文献1のように、マット層に艶消剤(マット剤)を添加すると、艶消性が得られるものの、マット剤は硬質であるため、化粧シートの艶消層による接触物の削り取りが生じやすい。一方、化粧シートの艶消層による接触物の削り取りを抑制するために、マット剤の添加量を減らすと、良好な艶消性を得ることが難しい。 【0006】 本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、化粧シートの艶消層による接触物の削り取りを抑制しつつ、良好な艶消効果を有する化粧シートを提供することを主目的とする。」 イ 発明を実施するための形態 「【0015】 A.化粧シート 本開示における化粧シートは、基材層と、上記基材層の一方の面に配置された装飾層と、上記装飾層の上記基材層とは反対側の面に配置された艶消層と、を有する化粧シートであって、上記艶消層の上記装飾層とは反対側の表面が、皺構造を有する表面形状を備え、JIS B0601:2013に規定される、上記皺構造のSpc(突起部頂点の算術平均曲率)が10000mm-1以下であり、ISO 25178-2:2012に規定される、上記皺構造のSku(クルトシス)が3.5以下である。 ・・・ 【0017】 本開示における化粧シートによれば、艶消層が特定の皺構造を有するため、艶消層と空気との屈折率差界面での光拡散効果により、光反射を抑制することができる。これにより、良好な艶消効果が得られる。また、皺構造のSpcおよびSkuが特定の範囲にあることから、良好な艶消効果を発揮しつつ、化粧シートの艶消層による接触物の削り取りを抑制することができる。 【0018】 上述したように、マット層に艶消剤(マット剤)を添加すると、艶消性が得られるものの、マット剤は硬質であるため、化粧シートの艶消層による接触物の削り取りが生じやすい。一方、化粧シートの艶消層による接触物の削り取りを抑制するために、マット剤の添加量を減らすと、良好な艶消性を得ることが難しい。これに対して、本開示においては、艶消層が特定の皺構造を有するため、マット剤を添加しない場合またはマット剤の使用量を低減した場合であっても、良好な艶消性が得られる。また、艶消層が特定の皺構造を有するため、マット剤の使用量を低減またはゼロにでき、マット剤に起因する接触物の削り取りを抑制できる。 ・・・ 【0020】 後述するように、Spc(突起部頂点の算術平均曲率)が小さいほど、突起部は丸みを帯びており、平面に近づくため、化粧シートの艶消層による接触物の削り取りを抑制できる。また、Sku(クルトシス)が小さいほど、平均面からの高さ分布の尖りの度合いが小さくなるため、化粧シートの艶消層による接触物の削り取りを抑制できる。また、Spc(突起部頂点の算術平均曲率)およびSku(クルトシス)の両方を規定することにより、良好な艶消効果と、接触物の削り取り抑制効果とを両立できる。 ・・・ 【0022】 ・・・これに対して、Spc≦10000mm-1であり、かつ、Sku≦3.5の場合、凸部の頂部の曲率が小さく(頂部が丸みを帯びており)、凸部全体に対して凸部先端側が尖っていない形状に該当するため、例えばケース1に比べて、rが小さくなる(凸部の裾野部分が狭くなる)。その結果、単位面積当たりの凸部の数が多くなり、良好な艶消効果が得られやすい。また、凸部が尖っていないため、接触物の削り取りも発生しにくい。すなわち、良好な艶消効果と、接触物の削り取り抑制効果とを両立できる。」 「【0024】 1.艶消層 本開示において、艶消層の装飾層とは反対側の表面は、皺構造を有する表面形状を備える。 【0025】 (1)表面形状 本開示における艶消層が有する表面形状は、皺構造を有する。 【0026】 (i)皺構造の形状 皺構造は、不規則な皺による凹凸形状を有することが好ましい。不規則な皺は、複数の突起部により形成する複数の凸部と、複数の突起部により囲まれて形成する凹部と、を有することが好ましい。また、突起部は、線条の突起部を有することが好ましい。 ・・・ 【0028】 皺構造の具体的な態様としては、例えば図2に示される態様が挙げられる。図2には、艶消層3における皺構造として、平面視において不規則な皺を有していること;不規則な皺が、湾曲した複数の線条突起部により形成する複数の凸部4と、複数の線条突起部(複数の凸部4)により囲まれて形成する凹部5とを有すること;湾曲した複数の凸部4の少なくとも一部が、各々蛇行する線条突起部により形成され、蛇行する線条突起部に囲まれるようにして蛇行する凹部5が形成していること;も示されている。艶消層は、図2に示されるような不規則な皺により構成される皺構造を有することで、艶消効果が向上する。 ・・・ 【0050】 (ii)皺構造の表面性状 皺構造は、以下の表面性状を有することが好ましい。皺構造の表面性状は、艶消層に用いられる材料の種類、艶消層の厚さ、後述する照射処理の条件を調整することにより、制御される。 【0051】 (a)Spc(突起部頂点の算術平均曲率) JIS B0601:2013に規定される、皺構造のSpc(突起部頂点の算術平均曲率)は、通常、10000mm-1以下である。上記Spc(突起部頂点の算術平均曲率)は、9000mm-1以下であってもよく、8000mm-1以下であってもよい。一方、上記Spc(突起部頂点の算術平均曲率)は、例えば、1000mm-1以上であり、1200mm-1以上であってもよい。Spcが小さすぎると、良好な艶消効果が得られない場合がある。 【0052】 Spc(突起部頂点の算術平均曲率)は、JIS B0601:2013に規定される三次元表面性状パラメータの一つであり、基準領域に含まれる形体画像で山(凸部)と分類された箇所の山頂(突起部頂点)の曲率半径の算術平均値から求められる、山頂の先端部の平均曲率(平均的な鋭さ)である。このためSpc(突起部頂点の算術平均曲率)は、半径(mm)の逆数(mm-1)となる。 【0053】 Spc(突起部頂点の算術平均曲率)の値が大きいほど、山頂(凸部)の先端部の曲率は大きくなる(その逆数の曲率半径は小さく、先端部の形状は鋭くなる)。一方、Spc(突起部頂点の算術平均曲率)の値が小さいほど、突起部頂点の曲率は小さくなる(その逆数の曲率半径は大きく、先端部の形状は鈍くなる)。つまり、Spc(突起部頂点の算術平均曲率)が小さいほど、突起部は丸みを帯びており、平面に近づくため、化粧シートの艶消層による接触物の削り取りを抑制できる。 ・・・ 【0055】 (b)Sku(クルトシス) ISO 25178-2:2012に規定される、皺構造のSku(クルトシス)は、通常、3.5以下である。上記Sku(クルトシス)は、3.3以下であってもよく、3.1以下であってもよい。一方、上記Sku(クルトシス)は、例えば、1.5以上であり、2.0以上であってもよい。Skuが小さすぎると、良好な艶消効果が得られない場合がある。 【0056】 Sku(クルトシス)は、ISO 25178-2:2012に規定される三次元表面性状パラメータの一つであり、平均面からの高さ分布の尖りの度合いを示す指標である。Skuが3である場合は表面形状が平均面に対して対称(正規分布)であり、Skuが3を超えると高さ分布が尖った形状を有し、Skuが3未満となると高さ分布がつぶれる形状を有する傾向にあると把握できるという測定値である。」 「【0070】 (2)艶消層の物性 本開示における化粧シートは、特定の表面形状を備える艶消層を有することにより、良好な艶消効果が得られる。艶消効果によって、光沢を視認しにくくなり、低艶感が得られる。 【0071】 艶消層の表面形状の60°グロス値は、例えば10.0以下であり、7.5以下であってもよく、5.0以下であってもよく、4.0以下であってもよく、3.6以下であってもよい。 【0072】 ここで、艶消層の表面形状の60°グロス値は、JIS K5600-4-7:1999に準拠して測定した60°鏡面光沢度のことであり、例えばグロスメータを用いて測定することができる。艶消層の表面形状の60°グロス値は、任意の10箇所における測定値の平均値である。」 「【0075】 (3)艶消層の材料 艶消層は、樹脂組成物の硬化物を含有することが好ましい。艶消層を樹脂組成物の硬化物で構成することにより、特定の表面形状を有する艶消層を形成しやすい。 【0076】 艶消層の形成に用いられる樹脂組成物としては、硬化することにより硬化物となる樹脂を含む組成物であればよい。樹脂組成物は、艶消層の形成方法に応じて適宜選択される。樹脂組成物は、電離放射線による硬化により、特定の表面形状を形成可能な組成物であることが好ましい。 【0077】 (i)樹脂 樹脂組成物に含まれる樹脂は、電離放射線硬化性樹脂であることが好ましい。特定の表面形状を形成しやすいからである。 【0078】 電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線硬化性官能基を有する樹脂のことであり、電離放射線硬化性官能基は電離放射線の照射によって架橋硬化する基である。電離放射線硬化性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性二重結合を有する官能基が挙げられる。 【0079】 なお、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基またはメタクロイル基を示す。また、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを示す。 ・・・ 【0082】 電離放射線硬化性樹脂は、具体的には、従来、電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる。 【0083】 重合性モノマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ電離放射線硬化性官能基として、少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。 【0084】 多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は、例えば、2以上8以下であり、2以上6以下であってもよい。また、上記官能基数であると、皺構造が得られやすくなる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは、単独で、または複数種を組み合わせて用いてもよい。 【0085】 重合性モノマーは単独で、または複数種を組み合わせて用いることができ、二種以上の重合性モノマーを組み合わせて用いることが好ましい。二種以上の重合性モノマーを組み合わせて用いることで、特定の表面形状が得られやすい。 ・・・ 【0090】 重合性オリゴマーとしては、例えば、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ電離放射線硬化性官能基として、少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。・・・ ・・・ 【0092】 重合性オリゴマーとしては、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましい。 ・・・ 【0094】 重合性オリゴマーの官能基数は、例えば、2以上8以下であり、2以上6以下であってもよく、2以上4以下であってもよい。 【0095】 重合性オリゴマーの重量平均分子量は、例えば、2,500以上7,500以下であり、3,000以上7,000以下であってもよく、3,500以上6,000以下であってもよい。」 「【0128】 (4)艶消層 艶消層の厚さは、特定の表面形状を形成することができる厚さであれば特に限定されないが、例えば1μm以上であり、2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよく、4μm以上であってもよく、5μm以上であってもよい。また、艶消層の厚さは、例えば300μm以下であり、200μm以下であってもよく、150μm以下であってもよく、100μm以下であってもよい。艶消層の厚さが上記範囲内であると、表面形状が特定の表面形状となりやすい。」 「【0131】 (5)艶消層の形成方法 艶消層の形成方法は、装飾層の基材層とは反対側の面に、樹脂組成物を塗布して塗布層を形成する塗布層形成工程と、電離放射線による照射処理により塗布層を硬化させて、特定の表面形状を有する艶消層を形成する艶消層形成工程とを有することが好ましい。 【0132】 (i)塗布層形成工程 塗布層形成工程において、樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、グラビア印刷法、バーコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、コンマコート法等の公知の方法が挙げられる。 ・・・ 【0135】 (ii)艶消層形成工程 艶消層形成工程では、上記塗布層を、電離放射線による照射処理により硬化させて、特定の表面形状を有する艶消層を形成する。 【0136】 照射処理としては、少なくとも以下(1)および(2)の照射処理をこの順に行うことが好ましい。 (1)100nm以上200nm未満の第1の波長光の照射処理 (2)電子線および200nm以上400nm以下の第2の波長光の少なくとも一方での照射処理 上記(1)および(2)の照射処理を行うことで、表面形状が特定の表面形状となりやすく、さらに耐傷性が向上しやすくなる。」 ウ 実施例と比較例 「【0215】 [実施例1] (艶消層形成用組成物の調製) 3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(3官能オリゴマー)を30質量部、3官能アクリレートモノマー(3官能モノマー)を30質量部、および、2官能アクリレートモノマー(2官能モノマー)を40質量部の割合で混合し、混合物を得た。得られた混合物に、皺形成安定剤(シリカ粒子、平均粒径:3μm、比表面積100m2/g、吸油率:40ml/100g)を3質量部添加し、光重合開始剤(ベンゾフェノン系)を0.8質量部添加し、艶消層形成用組成物を得た。 【0216】 (化粧シートの作製) 基材層(紙)上に、装飾層を形成した。次いで、装飾層上に、アクリル樹脂およびウレタン樹脂を含む組成物を塗布し、厚さ2μmのプライマー層を形成した。プライマー層上に、艶消層形成用組成物を、乾燥時塗布量15g/m2で塗布し、塗布層を形成した。塗布層に対して、LEDから構成されるUV照射装置を用いて紫外線を照射して(LED-UV照射、波長395nm、最大照度0.6W/cm2、積算光量30~100mJ/cm2)、予備硬化を行った。次いで、エキシマ光照射装置を用いて紫外線を照射した(エキシマ照射、波長172nm(Xe2)、紫外線出力密度30mW/cm2、積算光量5~100mJ/cm2、窒素雰囲気)。さらに、電子線を照射して(加速電圧100~150kV、照射線量30~100kGy)、艶消層を形成し、化粧シートを得た。 【0217】 [実施例2] 艶消層形成用組成物の乾燥時塗布量を5g/m2に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。 【0218】 [実施例3] 3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(3官能オリゴマー)を40質量部、3官能アクリレートモノマー(3官能モノマー)を30質量部、および、2官能アクリレートモノマー(2官能モノマー)を30質量部の割合で混合し、混合物を得た。得られた混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。 【0219】 [比較例1] 3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(3官能オリゴマー)を20質量部、2官能アクリレートモノマー(2官能モノマー)を40質量部、および、単官能アクリレートモノマー(単官能モノマー)を40質量部の割合で混合し、混合物を得た。得られた混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。 【0220】 [比較例2] 3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(3官能オリゴマー)を80質量部、および、2官能アクリレートモノマー(2官能モノマー)を20質量部の割合で混合し、混合物を得た。得られた混合物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。 【0221】 [比較例3] 実施例1で作製した艶消層形成用組成物に対して、マット剤(シリカ粒子、平均粒径:8μm)を15質量部添加し、艶消層形成用組成物を得た。得られた艶消層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、化粧シートを得た。」 エ 測定方法、結果 「【0222】 [評価] (顕微鏡観察) 実施例1~3で得られた化粧シートの艶消層の表面を、光学顕微鏡で観察した。その結果、実施例1~3で得られた化粧シートは、艶消層の表面に皺構造を有することが確認された。 【0223】 (皺構造の測定) 実施例1~3および比較例1~3で得られた化粧シートに対して、皺構造のSpc(突起部頂点の算術平均曲率)およびSku(クルトシス)を測定した。測定は、化粧シートの皺構造の任意箇所の長方形(1024μm×768μm)について、形状解析レーザ顕微鏡(「VK-X150(制御部)/VK-X160(測定部)」、株式会社キーエンス製)を用い、対物レンズ:50倍、レーザ波長:658nm、測定モード:表面形状モード、測定ピッチ:0.13μm、測定品質:高速モードで測定した。また、カットオフ値は0.8mmとした。その結果を表1に示す。 【0224】 (ヒールマーク試験) 実施例1~3および比較例1~3で得られた化粧シートに対して、ヒールマーク試験を行った。具体的には、5cm×5cm×5cmの立法体のゴム片(JIS S 5050の6.2(表底及びかかと用材料)に規定するゴム製かかとの材質に適合する、カーボンブラック配合の黒色ゴム、質量140g~160g)を用い、ゴム片の角部にて、200gの荷重をかけ、サンプル(化粧シート)に押し当てて10cm移動させた。・・・ その結果を表1に示す。 【0225】 (60°グロス値) 実施例1~3および比較例1~3で得られた化粧シートの皺構造に対して、グロスメータ(BYKガードナー社製「マイクログロス」)を用いて、JIS K5600-4-7に準拠して60°鏡面光沢度を測定した。その結果を表1に示す。 【0226】 【表1】 [図:0001419355000001.jpg] 【0227】 表1に示すように、実施例1~3では、ヒールマーク試験の結果が良好であり、60°グロス値も低かった。これに対して、比較例1では、60°グロス値が高く、良好な艶消性が得られなかった。また、比較例2、3では、ヒールマーク試験において良好な結果が得られなかった。このように、SpcおよびSkuを所定の範囲に調整することで、良好な艶消効果と、接触物の削り取り抑制効果とを両立できた。」 (2)実施可能要件に係る申立理由について ア 発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすというためには、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度の記載があることを要する。以下、この点について検討する。 イ 上記(1)イによれば、化粧シートは、「基材層と、前記基材層の一方の面に配置された装飾層と、前記装飾層の前記基材層とは反対側の面に配置された艶消層と」を有するものであり、このうち、艶消層について、「前記艶消層の前記装飾層とは反対側の表面が、皺構造を有する表面形状を備え、JIS B0601:2013に規定される、上記皺構造のSpc(突起部頂点の算術平均曲率)が10000mm-1以下であり、ISO 25178-2:2012に規定される、上記皺構造のSku(クルトシス)が3.5以下」(【0015】)とされる。 皺構造を有する艶消層の形成に用いられる樹脂組成物は、「電離放射線硬化性樹脂であることが好ましい」(【0077】)とされ、「電離放射線硬化性樹脂は、具体的には、従来、電離放射線硬化性樹脂として慣用されている重合性モノマー、重合性オリゴマーの中から適宜選択して用いることができる」(【0082】)とされる。 また、実施例の記載(上記(1)ウ)において、化粧シートの積層構造と各層の厚さ、艶消層の組成物と硬化条件が示されている。 ウ 当業者であれば、以下の発明の詳細な説明の記載にしたがい、本件発明の化粧シートを製造(実施)することができるものといえる。 (ア)実施例の記載(上記(1)ウ)において、艶消層の組成物のうち、「3官能ウレタンアクリレートオリゴマー」、「3官能アクリレートモノマー」、「2官能アクリレートモノマー」及び「単官能アクリレートモノマー」は、その含有量が記載されている。製造会社及び製品名が記載されていないが、官能基数が記載されており、この官能基数に合致する「ウレタンアクリレートオリゴマー」及び「アクリレートモノマー」を、各種樹脂の中から選択し入手することができる。 そして、艶消層の「Spc(突起部頂点の算術平均曲率)」と「Sku(クルトシス)」は、測定方法の記載(上記(1)エ)にしたがい測定できるから、本件発明の化粧シートが製造できたか確認できるものといえる。 (イ)さらに、当業者であれば、実施例の組成物を参考に、重合性モノマー及び重合性オリゴマーに係るa~cの記載(上記(1)イ)をもとに適宜変更することができる。 a 重合性モノマーは、「分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好ましく、中でも多官能性(メタ)アクリレートモノマーが好まし」く、「多官能性(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子中に2つ以上の電離放射線硬化性官能基を有し、かつ電離放射線硬化性官能基として、少なくとも(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる」(【0083】)。「多官能性(メタ)アクリレートモノマーの官能基数は、例えば、2以上8以下であり、2以上6以下であってもよ」く、「上記官能基数であると、皺構造が得られやすくなる」(【0084】)。「重合性モノマーは単独で、または複数種を組み合わせて用いることができ、二種以上の重合性モノマーを組み合わせて用いることが好まし」く、「二種以上の重合性モノマーを組み合わせて用いることで、特定の表面形状が得られやすい。」(【0085】)とされる。 b 重合性オリゴマーとして、「例えば、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマー、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられ、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましい」(【0092】)とされる。重合性オリゴマーの「官能基数は、例えば、2以上8以下であり、2以上6以下であってもよく、2以上4以下であってもよ」(【0094】)く、「重量平均分子量は、例えば、2,500以上7,500以下であり、3,000以上7,000以下であってもよく、3,500以上6,000以下であってもよい」(【0095】)とされる。 c 電離放射線による照射処理については、少なくとも「(1)100nm以上200nm未満の第1の波長光の照射処理」、「(2)電子線および200nm以上400nm以下の第2の波長光の少なくとも一方での照射処理」の順に行うことで、「表面形状が特定の表面形状となりやすく、さらに耐傷性が向上しやすくなる」(【0136】)とされている。 エ 申立人の主張について (ア)申立人は、実施例1~3の「3官能ウレタンアクリレートオリゴマー」は、「イソシアネート」と「ポリオール」から成るウレタン結合を有するオリゴマー骨格と呼ばれるものに、アクリロイル基を複数付加した構造的特徴を標記したものであるところ、上記「イソシアネート」と「ポリオール」には、いずれも膨大な数の種類が存在し、あらゆる種類のイソシアネート化合物とあらゆる種類のポリオール化合物とを組み合わせて、本件発明を満足するための適切な多官能ウレタンアクリレートオリゴマーを見出すためには、当業者といえども過度な試行錯誤を強いられることとなる。また、実施例1~3の「3官能アクリレートモノマー」及び「2官能アクリレートモノマー」についても、アクリル酸に対して「アルコール」を付加した構造的特徴を標記したものであるところ、上記「アルコール」は多岐に渡っており、樹脂材料を特定することができないから、実施可能要件違反が存在する旨主張する(特許異議申立書21~23頁)。 (イ)しかし、上記ウ(ア)で述べたように、発明の詳細な説明の実施例の記載に基づいて、「ウレタンアクリレートオリゴマー」と「アクリレートモノマー」について、各種樹脂の中から該当する官能基数のものを選択し入手できるから、過度な試行錯誤を強いられるものではない。 (ウ)申立人は、実施例に記載された官能基数に合致するウレタンアクリレートオリゴマーとアクリレートモノマーであっても、本件発明を満足しない場合があることを具体的に例示しておらず、官能基数が合致するものを選択しても、本件発明の化粧シートが製造できる場合とできない場合があり、製造できる場合を見つけるのが難しいことを主張するものではない。「多官能ウレタンアクリレートオリゴマー」と「多官能アクリレートモノマー」が実施例に特定して記載されていないことのみをもって、多官能ウレタンアクリレートオリゴマーと多官能アクリレートモノマーの組み合わせを見出すことに、過度な試行錯誤が強いられるとすることは根拠が乏しく、申立人の上記主張は採用できない。 オ 以上より、実施可能要件に係る申立理由には理由がない。 (3)サポート要件に係る申立理由について ア 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、この点について検討する。 イ 本件発明の解決しようとする課題は、「化粧シートの艶消層による接触物の削り取りを抑制しつつ、良好な艶消効果を有する化粧シートを提供すること」(上記(1)ア)である。 ウ 発明の詳細な説明の記載によると、本件発明の化粧シートは、「基材層と、上記基材層の一方の面に配置された装飾層と、上記装飾層の上記基材層とは反対側の面に配置された艶消層と、を有する」ものであり、艶消層の装飾層とは反対側の表面が、「皺構造を有する表面形状を備え、JIS B0601:2013に規定される、上記皺構造のSpc(突起部頂点の算術平均曲率)が10000mm-1以下であり、ISO 25178-2:2012に規定される、上記皺構造のSku(クルトシス)が3.5以下」(【0015】)である。 上記「皺構造」は、「平面視において不規則な皺を有し」、「不規則な皺が、湾曲した複数の線条突起部により形成する複数の凸部4と、複数の線条突起部(複数の凸部4)により囲まれて形成する凹部5とを有する」ものであり、「不規則な皺により構成される皺構造を有することで、艶消効果が向上する」(【0028】)とされる。 また、皺構造の表面性状について、「Spc≦10000mm-1であり、かつ、Sku≦3.5の場合、凸部の頂部の曲率が小さく(頂部が丸みを帯びており)、凸部全体に対して凸部先端側が尖っていない形状に該当するため、例えばケース1に比べて、rが小さくなる(凸部の裾野部分が狭くなる)。その結果、単位面積当たりの凸部の数が多くなり、良好な艶消効果が得られやすい。また、凸部が尖っていないため、接触物の削り取りも発生しにくい。すなわち、良好な艶消効果と、接触物の削り取り抑制効果とを両立できる。」(【0022】)と記載されている。 これらより、「不規則な皺による凹凸形状を有する構造であり、前記不規則な皺は、複数の突起部により形成する複数の凸部と、前記複数の突起部により囲まれて形成する凹部と、を有」する「皺構造」とすることにより、艶消効果が向上できることが認識される。 また、皺構造の表面性状を「Spc≦10000mm-1であり、かつ、Sku≦3.5」とすることにより、良好な艶消効果と、接触物の削り取り抑制効果とを両立できることが認識される。 さらに、実施例1~3、比較例1~3の結果より、「Spcが1200mm-1以上10000mm-1以下」であり、「Skuが3.5以下」であれば、化粧シートの艶消層による接触物の削り取りを抑制しつつ、良好な艶消効果を発揮することが確認できる。 そうすると、これらの構成を備える本件発明は、上記アの課題を解決すると認識できるものである。 エ 申立人の主張について (ア)申立人は、次のa、bを主張する(特許異議申立書27頁)。 a 発明の詳細な説明には、本件発明1~8に係る艶消層を構成する肝心の「ウレタンアクリレートオリゴマー」及び「アクリレートモノマー」についての具体的な樹脂材料が開示されていない。したがって、発明の詳細な説明は本件発明1~8を実現するための具体的な技術手段を欠いており、請求項において発明の課題を解決するための手段が反映されているとはいえない。 b Spc(突起部頂点の算術平均曲率)やSku(クルトシス)は、標準として規定されているものの、いずれも表面形状を表す特殊なパラメータであって、当業者といえども、請求項に係る発明の範囲まで発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるともいえない。 (イ)上記aの主張については、上記(2)ウ(ア)で述べたように、「ウレタンアクリレートオリゴマー」と「アクリレートモノマー」について、各種樹脂の中から該当する官能基数のものを選択し入手できるから、申立人がいうような、発明の詳細な説明は本件発明を実現するための具体的な技術手段を欠いているということはない。 (ウ)また、上記bの主張についても、上記ウで述べたように、発明の詳細な説明の記載から、「不規則な皺による凹凸形状を有する構造であり、前記不規則な皺は、複数の突起部により形成する複数の凸部と、前記複数の突起部により囲まれて形成する凹部と、を有」する皺構造を備え、「JIS B0601:2013に規定される、前記皺構造のSpc(突起部頂点の算術平均曲率)が1200mm-1以上10000mm-1以下であり、ISO 25178-2:2012に規定される、前記皺構造のSku(クルトシス)が3.5以下である」化粧シートは、良好な艶消効果と接触物の削り取り抑制効果を両立できることが認識され、実施例及び比較例の結果から、本件発明の課題を解決できることが確認されている。 (エ)よって、申立人の上記主張は、いずれも採用できない。 オ 以上より、サポート要件に係る申立理由には理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議の申立ての理由によっては、請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700331

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決1,216件(大日本印刷株式会社、森川 元嗣)
  • 2024-700306異議申立 / 2024-11-11 / 訂正認容シート、物品、化粧シート、化粧材、および硬化性組成物
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社、森川 元嗣
  • 2024-700208異議申立 / 2024-08-20 / 維持化粧シート
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社、森川 元嗣
  • 2024-700913異議申立 / 2026-09-08
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2026-700281異議申立 / 2026-07-30 / 維持化粧シート
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
  • 2026-700223異議申立 / 2026-06-30 / 維持加飾シート
    同じ当事者: 大日本印刷株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)574件(537・B32B)
  • 2026-700281異議申立 / 2026-07-30 / 維持化粧シート
    共通の審決分類: 537・B32B
  • 2026-700223異議申立 / 2026-06-30 / 維持加飾シート
    共通の審決分類: 537・B32B
  • 2025-700921異議申立 / 2026-06-29 / 維持化粧材及び該表面保護層形成用樹脂組成物
    共通の審決分類: 537・B32B
  • 2026-700157異議申立 / 2026-06-23 / 維持リサイクルフィルム
    共通の審決分類: 537・B32B
  • 2025-700020異議申立 / 2026-06-12 / 訂正認容積層体、包装材料、包装袋およびスタンドパウチ
    共通の審決分類: 537・B32B

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存