特許異議申立
2023-701299
カバーテープおよび電子部品包装体
- 審判番号
- 2023-701299
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-059684外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7289816
- 請求日
- 2023年12月08日
- 審決日
- 2025年09月25日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】住友ベークライト株式会社
- 【権利者代理人】速水 進治
- 【異議申立人】渡辺 陽子
- 分類
- P1651.121-ZDA(B65D) / P1651.113-ZDA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7289816号発明「カバーテープおよび電子部品包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7289816号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7289816号の請求項1、2、4に係る特許を取り消す。
特許第7289816号の請求項3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7289816号の請求項1~4に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和2年3月30日に出願され、令和5年6月2日にその特許権の設定登録がされ、同年6月12日に特許掲載公報が発行された。
本件特許についての特許異議申立人渡辺陽子(以下「申立人」という。)による本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和5年12月 8日 特許異議の申立て
令和6年 2月15日付け 取消理由通知
同年 4月17日 特許権者による意見書・訂正請求書の提出
同年 6月27日 申立人による意見書の提出
同年10月29日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和7年 1月 8日 特許権者による意見書・訂正請求書の提出
同年 4月23日 特許権者による手続補正書(方式)の提出
同年 6月16日 申立人による意見書の提出
なお、令和6年4月17日の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和7年1月8日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)及び(2)のとおりである(なお、下線は訂正箇所である。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記シーラント層は、当該カバーテープの最表面に設けられており、前記シーラント層における前記基材層側とは反対側の面の全ては露出している、カバーテープ。」
と記載されているのを、
「前記シーラント層は、当該カバーテープの最表面に設けられており、前記シーラント層における前記基材層側とは反対側の面の全ては露出しており、
前記中間層は、
(i)単層であり、前記ポリエチレン以外に、密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含むか、または、
(ii)多層構成であり、前記基材層と前記シーラント層との間に、前記基材層に近いほうから、第一中間層と、前記第一中間層とは異なる第二中間層とがあり、前記第二中間層は前記ポリエチレンを含み、前記第一中間層は密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含む、
カバーテープ。」
に訂正する(請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2及び4も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に
「請求項1または2に記載のカバーテープであって、
前記シーラント層は、スチレン系樹脂および/または(メタ)アクリル系樹脂を含む、カバーテープ。」
と記載されているのを、
「電子部品包装用のカバーテープであって、
当該カバーテープは、基材層と、前記基材層の片面側に設けられた単層のシーラント層とを備え、
前記基材層と前記シーラント層の間には少なくとも1層の中間層があり、
前記中間層は、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含み、
前記基材層は、樹脂としてポリエステル系樹脂のみを含み、
前記シーラント層は、帯電防止剤を含み、前記帯電防止剤は、金属含有フィラーを含み、前記金属含有フィラーは、金属酸化物粒子を含み、
前記中間層と前記シーラント層とは直接接しており、
前記シーラント層は、当該カバーテープの最表面に設けられており、前記シーラント層における前記基材層側とは反対側の面の全ては露出しており、
前記中間層は、単層であり、前記ポリエチレン以外に、密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含み、
前記シーラント層は、スチレン系樹脂および/または(メタ)アクリル系樹脂を含む、カバーテープ。」
に訂正する(請求項3の記載を引用する請求項4も同様に訂正する)。
(3)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~4は、請求項2~4が、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する関係にあるから、本件訂正の請求は、一群の請求項〔1~4〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、訂正前の請求項1に、「前記中間層は、(i)単層であり、前記ポリエチレン以外に、密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含むか、または、(ii)多層構成であり、前記基材層と前記シーラント層との間に、前記基材層に近いほうから、第一中間層と、前記第一中間層とは異なる第二中間層とがあり、前記第二中間層は前記ポリエチレンを含み、前記第一中間層は密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含む」との事項を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項1は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)の「中間層2が多層構成である場合の好ましい態様として、図2に示される態様が挙げられる。図2のカバーテープ10においては、基材層1とシーラント層3の間には、基材層1に近いほうから、第一中間層2Aと、第一中間層2Aとは異なる第二中間層2Bとがある。そして、好ましくは、第二中間層2Bが、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含む。」(【0029】)、「第一中間層2Aは、好ましくは密度が0.912g/cm3超、より好ましくは0.913~0.935g/cm3であるポリエチレンを含むことができる。」(【0030】)及び「中間層2が単層である場合、中間層2は、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレン以外の他の樹脂を含んでもよい。他の樹脂は特に限定されないが、好ましくは、上述の密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンなどを挙げることができる。」(【0033】)との記載に基づくものと認められるから、新規事項を追加するものではない。
そして、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正前の請求項1を引用する請求項3を独立請求項とした上で、訂正前の請求項3の「中間層」について、「単層であり、前記ポリエチレン以外に、密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含み」との事項を付加するものである。そうすると、訂正事項2の目的は、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることに加え、特許請求の範囲の減縮も目的とするものである。
訂正事項2は、訂正前の請求項1と、本件明細書等の「中間層2が単層である場合、中間層2は、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレン以外の他の樹脂を含んでもよい。他の樹脂は特に限定されないが、好ましくは、上述の密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンなどを挙げることができる。」(【0033】)との記載に基づくものと認められるから、新規事項を追加するものではない。
そして、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。
3 小括
以上によれば、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正は認められたから、本件訂正後の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものであると認められる。
「【請求項1】
電子部品包装用のカバーテープであって、
当該カバーテープは、基材層と、前記基材層の片面側に設けられた単層のシーラント層とを備え、
前記基材層と前記シーラント層の間には少なくとも1層の中間層があり、
前記中間層は、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含み、
前記基材層は、樹脂としてポリエステル系樹脂のみを含み、
前記シーラント層は、帯電防止剤を含み、前記帯電防止剤は、金属含有フィラーを含み、前記金属含有フィラーは、金属酸化物粒子を含み、
前記中間層と前記シーラント層とは直接接しており、
前記シーラント層は、当該カバーテープの最表面に設けられており、前記シーラント層における前記基材層側とは反対側の面の全ては露出しており、
前記中間層は、
(i)単層であり、前記ポリエチレン以外に、密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含むか、または、
(ii)多層構成であり、前記基材層と前記シーラント層との間に、前記基材層に近いほうから、第一中間層と、前記第一中間層とは異なる第二中間層とがあり、前記第二中間層は前記ポリエチレンを含み、前記第一中間層は密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含む、
カバーテープ。
【請求項2】
請求項1に記載のカバーテープであって、
前記ポリエチレンの融点が、60~104℃である、カバーテープ。
【請求項3】
電子部品包装用のカバーテープであって、
当該カバーテープは、基材層と、前記基材層の片面側に設けられた単層のシーラント層とを備え、
前記基材層と前記シーラント層の間には少なくとも1層の中間層があり、
前記中間層は、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含み、
前記基材層は、樹脂としてポリエステル系樹脂のみを含み、
前記シーラント層は、帯電防止剤を含み、前記帯電防止剤は、金属含有フィラーを含み、前記金属含有フィラーは、金属酸化物粒子を含み、
前記中間層と前記シーラント層とは直接接しており、
前記シーラント層は、当該カバーテープの最表面に設けられており、前記シーラント層における前記基材層側とは反対側の面の全ては露出しており、
前記中間層は、単層であり、前記ポリエチレン以外に、密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含み、
前記シーラント層は、スチレン系樹脂および/または(メタ)アクリル系樹脂を含む、カバーテープ。
【請求項4】
電子部品が凹部に収容されたキャリアテープと、請求項1~3のいずれか1項に記載のカバーテープとを備え、
前記電子部品を封止するように前記シーラント層が前記キャリアテープに接着された電子部品包装体。」
第4 取消理由(決定の予告)の概要
当審において、令和6年10月29日付けで通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、以下のとおりである。
[取消理由]
本件特許の下記請求項に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、この出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
以下、申立人が提出した「甲第○号証」は「甲○」という。
記
[引用文献一覧]
甲1:国際公開第2004/094258号
甲2:特開2011-121602号公報
甲3:特開2005-82162号公報
甲4:再公表特許第2010/104010号
甲6:再公表特許第2010/018791号
甲9:特開2017-177699号公報
甲10:特開2019-123792号公報
[上記取消理由における請求項と引用文献等の関係]
・請求項 1、2
・引用文献 甲4、1、2
・請求項 3、4
・引用文献 甲4、1~3
・請求項 1、2
・引用文献 甲6(甲9、10も参照。)
・請求項 3、4
・引用文献 甲6、2~4(甲9、10も参照。)
第5 取消理由通知(決定の予告)において採用しなかった特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書において、訂正前の特許請求の範囲の請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件訂正前発明1」等という。)について、通知した取消理由(決定の予告)以外に、以下の(1)及び(2)を主張する。
1 特許異議申立理由1(新規性)
本件訂正前発明1~4は、甲1に記載された発明である。
2 特許異議申立理由2(進歩性)
本件訂正前発明1、2は、甲1に記載された発明、又は、甲1に記載された発明、甲1に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件訂正前発明3、4は、甲1に記載された発明、甲1~3に記載された事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 当審の判断
1 引用文献の記載事項等
(1)甲6について
ア 記載事項
甲6には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付与。「・・・」は省略を示す。以下同様。)。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品を搬送する際に用いられるキャリアテープにヒートシールしうる電子部品包装用カバーテープ及び電子部品包装体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ICチップや表面実装部品等の電子部品の保管や搬送には、電子部品の形状に合わせ凹状に加工されたポケット部を連続的に設けたキャリアテープが広く用いられている。電子部品をキャリアテープの凹状ポケット部に収納した後は、搬送時の電子部品の落下防止や、環境異物から電子部品の保護のためにヒートシール可能なカバーテープを用いて凹状ポケット部に封がされる。」
「【0027】
発明を実施するための最良の形態について、以下図面を用いて説明する。
本発明に係る電子部品包装用カバーテープは、電子部品包装用キャリアテープにヒートシールして用いられる電子部品包装用カバーテープである。図1は本発明に係るカバーテープの一例を示す概略図であり、本発明に係るカバーテープは図1に示すように少なくとも基材層2、クッション層3、ヒートシール追従層4及びヒートシール層5がこの順に積層されている。・・・」
「【0047】
(ヒートシール層)
本発明に係る電子部品包装用カバーテープのヒートシール層は、加熱によりキャリアテープと融着する役割を果たす。ヒートシール層には、キャリアテープに対して熱融着可能な樹脂が用いられる。例えば、アイオノマー樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、アクリル樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、マレイン酸樹脂などが挙げられる。特に、多種多様なキャリアテープに熱融着可能であるという点で、アクリル系樹脂が好適に用いられる。また、ヒートシール層には、帯電防止効果を付与するために金属酸化物等の導電性フィラーや高分子型共重合体タイプの帯電防止剤等を添加することができる。更に必要に応じて分散剤、充填剤、可塑剤等の添加剤を添加しても良い。」
「【0052】
以下具体的な実施例により本発明を詳細に説明する。実施例及び比較例に使用した原料及びその物性は下記の通りである。クッション層とヒートシール追従層に用いた樹脂の特性を表1に示す。
(1)基材層
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート:東洋紡株式会社製エステルフィルム
T6140
二軸延伸6-ナイロン:株式会社興人製ボニールW
(2)クッション層
メタロセンLLDPE1:株式会社プライムポリマー製エボリューSP1510(ビカット軟化点:98℃、曲げ弾性率:240MPa、分子量分布:4.5)メタロセンLLDPE2:株式会社プライムポリマー製エボリューSP212(ビカット軟化点:104℃、曲げ弾性率:240MPa、分子量分布:2.5)
メタロセンLLDPE3:株式会社プライムポリマー製エボリューSP1540 (ビカット軟化点:96℃、曲げ弾性率:190MPa、分子量分布:2.5)
(3)ヒートシール追従層
メタロセンLLDPE4:株式会社プライムポリマー製エボリューSP0511(ビカット軟化点:84℃、曲げ弾性率:130MPa、分子量分布:4.5)メタロセンLLDPE5:株式会社プライムポリマー製エボリューSP0540(ビカット軟化点:83℃、曲げ弾性率:120MPa、分子量分布:2.5)
メタロセンLLDPE6:株式会社プライムポリマー製エボリューSP1020 (ビカット軟化点:92℃、曲げ弾性率:140MPa、分子量分布:2.5)
(4)ヒートシール層
アクリル系接着樹脂:大日本インキ株式会社製 A450A
【0053】
(試料作製方法)
実施例として表2および表3に示す層構成となるように、下記方法により電子部品包装用カバーテープサンプルを作成した。また比較例としては、表4に示す層構成となるように、下記同様の方法により電子部品包装用カバーテープサンプルを作成した。・・・」
「【0062】
【表4】
[図:0001432015000001.jpg]
」
「【図1】
[図:0001432015000002.jpg]
」
イ 認定事項
【0027】の記載及び図1の図示内容によれば、ヒートシール層5における基材層2側とは反対側の面の全ては露出していると認められる。
ウ 甲6発明
上記ア及びイを総合すると、甲6には、比較例2として次の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されていると認められる。
「電子部品包装用カバーテープであって、
基材層、クッション層、ヒートシール追従層及びヒートシール層がこの順に積層されており、
基材層は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートであり、
クッション層は、メタロセンLLDPE3であり、
ヒートシール追従層は、メタロセンLLDPE5であり、
ヒートシール層は、アクリル系接着樹脂であり、
ヒートシール層における基材層側とは反対側の面の全ては露出している、カバーテープ。」
エ 甲6記載事項1、2
(ア)【0047】の記載によれば、甲6には、次の事項(以下「甲6記載事項1」という。)が記載されていると認められる。
「ヒートシール層に、帯電防止効果を付与するために金属酸化物の導電性フィラーを添加することができること」
(イ)【0001】及び【0002】の記載によれば、甲6には、次の事項(以下「甲6記載事項2」という。)が記載されていると認められる。
「電子部品が凹状ポケット部に収納されたキャリアテープと、電子部品包装用カバーテープとを有し、電子部品を収納した凹状ポケット部に封がされるように電子部品包装用カバーテープがヒートシールされる電子部品包装体」
(2)甲4について
ア 記載事項
甲4には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の包装に使用するキャリアテープ用カバーフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器の小型化に伴い、使用される電子部品についても小型高性能化が進むとともに、電子機器の組み立て工程においてはプリント基板上に電子部品を自動的に実装することが行われている。一般に、表面実装用の電子部品は、電子部品を収納するためのポケットが連続的にエンボス成形されたキャリアテープに収納され、そのキャリアテープの上面に蓋材としてカバーフィルムを重ねてシールバーで連続的にヒートシールして得られる電子部品包装体の形態で保管および移送される。カバーフィルムとしては、二軸延伸したポリエステルフィルムからなる基材に、熱可塑性樹脂からなるシーラント層を積層したものなどが使用されている。」
「【0014】
【図1】中間層が二層からなる本発明の一実施形態にかかるカバーフィルムの概略断面図である。・・・」
「【0032】
また、図1に示すカバーフィルム1のように、第一中間層41を構成する樹脂組成物とシーラント層5を構成する樹脂組成物とを、それぞれ別の単軸または二軸の押出機を用いて溶融混練し、両者をフィードブロックやマルチマニホールドダイを介して積層一体化した後、Tダイから共押し出しすることにより、第一中間層41とシーラント層5とが積層された二層フィルムを製膜し、次いで、二層フィルムの第一中間層41側の表面と、基材層2との間に、第二中間層42を構成する溶融したm-LLDPEを主成分とする樹脂組成物を押出ラミネート法によって供給することにより、複数の層からなる中間層を有するカバーフィルム1を製造することも可能である。・・・」
「【0050】
【表1】
[図:0001432015000003.jpg]
m-LLDPE:メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン
HIPS:ハイインパクトポリスチレン
LDPE:低密度ポリエチレン
注(*1) JISK-7112準拠、 190℃×5kg荷重での測定値」
「【0053】
[基材層/中間層/シーラント層の層構造を有するカバーフィルム]
(実施例1)
スチレン-ブタジエン-スチレンのトリブロック共重合体の水素添加物「タフテックH1041」(旭化成ケミカルズ社製)100質量部と、50質量%の低密度ポリエチレン、45質量%のシリカ、および5質量%のタルクからなるブロッキング防止剤マスターバッチ「PEX ABT-16」(東京インキ社製)(以下、「ブロッキング防止剤1」と表記する)25質量部とをタンブラーにてプリブレンドして、径40mmの単軸押出機を用いて200℃で混練し、毎分20mのライン速度でシーラント層用樹脂組成物を得た。
このシーラント層用樹脂組成物と、第一中間層用のm-LLDPE「エボリューSP3010」(プライムポリマー社製)とを、それぞれ個別の単軸押出機から押出し、マルチマニホールドTダイで積層押出することにより、シーラント層および第一中間層の厚みが、それぞれ10μmおよび20μmの二層フィルムを得た。
一方で、基材層を構成する二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み16μm)に2液硬化型ポリウレタン型アンカーコート剤をロールコーターで塗布しておき、当該塗布面と、上述した二層フィルムの第一中間層側表面との間に、第二中間層を構成する溶融したm-LLDPE「ハーモレックスNH745」(日本ポリエチレン社製)を10μmの厚みになるように押出し、押出ラミネート法によって積層フィルムを得た。
この積層フィルムのシーラント層側表面および基材層側表面をコロナ処理した後、グラビアコーターを用いてカチオン型帯電防止剤「SAT-6C」(日本純薬社製)を積層フィルムの両表面に塗布し、基材層/第二中間層/第一中間層/シーラント層の層構造を有するカバーフィルムを得た。
【0054】
(実施例2~11、比較例1~7)
下記の表4および表7に記載した樹脂組成および厚みとしたこと以外は実施例1と同様の方法で、カバーフィルムを作製した。」
「【0066】
【表4】
[図:0001432015000004.jpg]
」
「【図1】
[図:0001432015000005.jpg]
」
イ 認定事項
【0032】の記載及び図1の図示内容によれば、シーラント層5における基材層2側とは反対側の面の全ては露出していると認められる。
ウ 甲4発明
上記ア及びイを総合すると、甲4には、実施例4として次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
「電子部品の包装に使用するキャリアテープ用カバーフィルムであって、
基材層/第二中間層/第一中間層/シーラント層の層構造を有し、
基材層は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムで構成し、
第二中間層は、密度が0.913g/cm3であるm-LLDPE5であり、
第一中間層は、密度が0.904g/cm3であるm-LLDPE4であり、
シーラント層は、スチレン-ブタジエン-スチレンのトリブロック共重合体の水素添加物を含み、カチオン型帯電防止剤が塗布されており、
シーラント層における基材層側とは反対側の面の全ては露出している、カバーフィルム。」
(3)甲1について
ア 記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。
(ア)「技 術 分 野
本発明は、テーピング包装用のカバーテープに関し、さらに詳しくは、電子部品を収納する収納部が連続して形成されたキャリアテープをヒートシールするカバ一テープに関するものである。」(1ページ3~6行)
(イ)「(カバーテープの層構成)
本発明のカバーテープでは、基材フィルム層11、柔軟材層15、及び、熱接着層17が積層されている。各層間には、接着性を向上させるために、プライマ層や易接着処理を施した易接着処理層を設けてもよい。例えば、図2では、基材フィルム11、接着剤層13、柔軟材層15、易接着処理層16、及び、熱接着層17が、この順に積層されている。また、熱接着層17には、導電性剤を含有させてもよい。あるいは、熱接着層17の表面へ導電性剤層を設けたりしてもよい。
そして、柔軟材層15は、比重が0.888~0.907、好ましくは0.892~0.907、及び/又は、JISK7196によるTMA法の軟化温度が75~97℃、に限定されたメタロセン系触媒により重合された直鎖状低密度ポリエチレン(メタロセン直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセンLLDPEという)である。」(6ページ18行~7ページ3行)
(ウ)「(柔軟材層の密度)
図3は、密度とDSC法融点との関連を示す図である。
図3に示すように、柔軟材層15のJIS-K7112による密度は、0.888~0.907、特には0.892~0.907、とすることが好ましい。また、このときのJIS-K7121によるDSC法(示差走査熱分析法)の融点は、60~99℃、好ましくは70~87℃である。」(13ページ5~10行)
(エ)「(熱接着層中への導電剤)
通常、電子部品と直接接触し得る最も内側の層には、界面活性剤などの帯電防止剤;硫化亜鉛などの硫化物に導電性をもたせた導電性微粒子;または、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化チタンなどの金属酸化物、導電性カーボン微粒子、ケイ素有機化合物、若しくは表面金属メッキ微粒子などの導電剤;を練り混んで、帯電防止処理を行う。
好ましくは、アンチモンがドーピングされた酸化錫、錫がドーピングされた酸化インジウム、酸化錫系などの金属酸化物微粒子、導電性カーボン微粒子、帯電防止型ケイ素有機化合物、または、表面金属メッキ粒子が用いられる。」(18ページ4~12行)
(オ)「(実施例1)
基材フィルム11として、厚さ16μmのテトロンフィルムFタイプ(帝人社製、ポリエチレンテレフタレート商品名)が用いられた。該基材フィルム11へ、テトライソブチルチタネート5質量部とn-へキサン95質量部からなるアンカーコート剤が、乾燥後の厚さが0.01μmとなるように、ロールコーティング法で塗布され乾燥された。その後、柔軟材層15として、メタロセンLLDPE(密度0.892)が、押出機で加熱され溶融されて、Tダイスで必要な幅方向に拡大されつつ伸張されて、厚さ35μmのカーテン状に押し出された。そして、ゴムロールと冷却した金属ロールとで挟持されることによって、基材フィルム11/アンカコート剤層/柔軟材層15の3層が接着し積層された。続いて、公知のコロナ処理機で、柔軟材層15の面にコロナ処理が行われ、その表面張力が0.00043N/cmとされた。該コロナ処理面へ、熱接着層17を構成するための組成物が、乾燥後の厚さが2.0μmになるように、グラビアリバースコーテイング法で塗布され乾燥された。これにより、実施例1のカバーテープが得られた。
熱接着層17を構成するための組成物としては、ダイヤナールBR-83(三菱レイヨン社製、アクリル樹脂商品名)100質量部、アンチモンドープ酸化錫(導電性微粒子、石原産業社製、50%粒子径0.32μm)150質量部、混合溶剤(メチルエチルケトンとトルエンを等量混合)750質量部を混合し、分散又は溶解した組成物とした。
(実施例2~10)
柔軟材層15に用いられるメタロセンLLDPE(表ではLLと略す)としては、表1~表2に記載の性質を有する以外は実施例1と同様にして、実施例2~10のカバーテープが得られた。」(24ページ26行~25ページ最終行)
(カ)「
[図:0001432015000006.jpg]
(比較例1~6)
柔軟材層15に用いられるメタロセンLLDPEとしては、表2に記載の性質を有する以外は実施例1と同様にして、比較例1~4のカバーテープが得られた。
[図:0001432015000007.jpg]
なお、単位は、表1及び表2ともに、密度はg/cm3、DSC融点及びTMA軟化温度は℃である。」(26ページ冒頭~27ページ2行)
(キ)図1
「
[図:0001432015000008.jpg]
」
(ク)図2
「
[図:0001432015000009.jpg]
」
イ 認定事項
図2によれば、熱接着層17は、熱接着層17における基材フィルム11とは反対側の面の全ては露出していることが認められる。
ウ 甲1発明
上記ア及びイから、特に実施例1に着目すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「電子部品のテーピング包装用のカバーテープであって、
当該カバーテープは、基材フィルム11/アンカコート剤層/柔軟材層15の3層がこの順で接着し積層され、
柔軟材層15のコロナ処理面に熱接着層17を構成し、
柔軟材層15は、密度0.892g/cm3であり、DSC融点が77℃であるメタロセンLLDPEであり、
基材フィルム11は、ポリエチレンテレフタレートからなり、
熱接着層17は、アクリル樹脂100質量部、導電性微粒子であるアンチモンドープ酸化錫150質量部、混合溶剤750質量部を混合し、分散又は溶解した組成物からなり、
熱接着層17は、当該カバーテープの最表面に設けられており、熱接着層17における基材フィルム11とは反対側の面の全ては露出している、カバーテープ。」
(4)甲9について
甲9には、以下の事項が記載されている。
「【0080】
【表1】
[図:0001432015000010.jpg]
」
2 取消理由(決定の予告)についての判断
(1)甲6を主引用文献にする場合
事案に鑑み、まず甲6を主引用文献とする場合について検討する。
ア 本件発明1について
(ア)対比
a 本件発明1と甲6発明とを対比すると、後者の「電子部品包装用カバーテープ」は、前者の「電子部品包装用のカバーテープ」に相当し、以下同様に、「基材層」は「基材層」に、「クッション層」は「第一中間層」に、「ヒートシール追従層」は「第二中間層」に、「クッション層」及び「ヒートシール追従層」は「中間層」に、「ヒートシール層」は「シーラント層」に、「二軸延伸ポリエチレンテレフタレート」は「ポリエステル系樹脂」に、「メタロセンLLDPE3」及び「メタロセンLLDPE5」は「ポリエチレン」に、それぞれ相当する。
b 上記aを踏まえると、後者の「基材層、クッション層、ヒートシール追従層及びヒートシール層がこの順に積層されて」いることは、前者の「基材層と、前記基材層の片面側に設けられた単層のシーラント層とを備え」ること、「前記基材層と前記シーラント層の間には少なくとも1層の中間層があ」ること、「前記中間層と前記シーラント層とは直接接して」いること及び「前記中間層は、」「(ii)多層構成であり、前記基材層と前記シーラント層との間に、前記基材層に近いほうから、第一中間層と、前記第一中間層とは異なる第二中間層とがあ」ることに相当する。
c 後者の「基材層は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートであ」ることは、当該「基材層」においてポリエステル系樹脂以外のものを含んでいないものと理解されるから、前者の「前記基材層は、樹脂としてポリエステル系樹脂のみを含」むことに相当する。また、後者の「ヒートシール層における基材層側とは反対側の面の全ては露出している」ことは、前者の「前記シーラント層は、当該カバーテープの最表面に設けられており、前記シーラント層における前記基材層側とは反対側の面の全ては露出して」いることに相当する。
また、後者の「メタロセンLLDPE3」は、株式会社プライムポリマー製エボリューSP1540であり、甲9の表1(上記1(4)参照)を参照すると、密度は0.913g/cm3であるから、後者の「クッション層は、メタロセンLLDPE3であ」ることは、前者の「(ii)」における「前記第一中間層は密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含む」ことに相当し、後者の「メタロセンLLDPE5」は、株式会社プライムポリマー製エボリューSP0540であり、甲10の【0039】を参照すると、密度は0.903g/cm3であるから、後者の「ヒートシール追従層は、メタロセンLLDPE5であ」ることは、前者の「前記中間層は、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含」むこと及び「(ii)」における「前記第二中間層は前記ポリエチレンを含」むことに相当する。
d 前者の「前記中間層は、(i)単層であり、前記ポリエチレン以外に、密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含むか、または、(ii)多層構成であり、前記基材層と前記シーラント層との間に、前記基材層に近いほうから、第一中間層と、前記第一中間層とは異なる第二中間層とがあり、前記第二中間層は前記ポリエチレンを含み、前記第一中間層は密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含む」点に関し、その択一的な記載を考慮しつつ上記a~cを踏まえると、後者は、前者の当該事項を充足する。
そうすると、本件発明1と甲6発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点1>
「電子部品包装用のカバーテープであって、
当該カバーテープは、基材層と、前記基材層の片面側に設けられた単層のシーラント層とを備え、
前記基材層と前記シーラント層の間には少なくとも1層の中間層があり、
前記中間層は、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含み、
前記基材層は、樹脂としてポリエステル系樹脂のみを含み、
前記中間層と前記シーラント層とは直接接しており、
前記シーラント層は、当該カバーテープの最表面に設けられており、前記シーラント層における前記基材層側とは反対側の面の全ては露出しており、
前記中間層は、
(i)単層であり、前記ポリエチレン以外に、密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含むか、または、
(ii)多層構成であり、前記基材層と前記シーラント層との間に、前記基材層に近いほうから、第一中間層と、前記第一中間層とは異なる第二中間層とがあり、前記第二中間層は前記ポリエチレンを含み、前記第一中間層は密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含む、
カバーテープ。」
<相違点1-1>
シーラント層について、本件発明1では、「帯電防止剤を含み、前記帯電防止剤は、金属含有フィラーを含み、前記金属含有フィラーは、金属酸化物粒子を含む」のに対し、甲6発明では、そのような特定はない点。
(イ)相違点についての判断
a 相違点1-1について
甲6(上記1(1)エ(ア)参照)に記載された、ヒートシール層に、帯電防止効果を付与するために金属酸化物の導電性フィラーを添加することができること(甲6記載事項1)を参照すると、甲6発明において、相違点1-1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
b 特許権者の主張について
特許権者は、令和7年6月16日の意見書(7~8ページ)において、甲6の【0047】の記載に基づく甲6記載事項1は、甲6に記載された発明やその実施例についてのものであり、甲6に記載された比較例についてのものではないから、比較例2に基づく甲6発明には、甲6記載事項1は適用できない旨主張する。
しかしながら、甲6発明も、甲6に記載された実施例等と同様に、電子部品包装用カバーテープであり、電子部品を扱うためのものであり、帯電防止というカバーテープの当然の課題を内包するものであるから、甲6記載事項1を適用する動機付けは十分にあり、また、甲6発明において、甲6記載事項1を適用するに際して阻害要因があるとも認められない。
したがって、特許権者の上記主張は当を得たものとはいえず、採用することはできない。
(ウ)小括
以上により、本件発明1は、甲6発明及び甲6記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 本件発明2について
本件発明2と甲6発明とを対比すると、後者の「メタロセンLLDPE5」は、株式会社プライムポリマー製エボリューSP0540であり、甲10の【0039】を参照すれば、融点が98℃であるから、後者の「ヒートシール追従層は、メタロセンLLDPE5であ」ることは、後者の「前記ポリエチレンの融点は、60~104℃である」ことに相当する。
そうすると、両者は、相違点1-1で相違し、その余の点で一致する。
したがって、本件発明2は、上記ア(イ)で説示したのと同様の理由により、甲6発明及び甲6記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
ウ 本件発明3について
(ア)対比
本件発明3と甲6発明とを対比すると、後者の「アクリル系接着樹脂」は、前者の「(メタ)アクリル系樹脂」に相当するから、後者の「ヒートシール層は、アクリル系接着樹脂であ」ることは、前者の「前記シーラント層は、スチレン系樹脂および/または(メタ)アクリル系樹脂を含む」ことに相当する。
上記ア(ア)を踏まえると、両者は、相違点1-1以外に以下の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点1-2>
中間層について、本件発明3は、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含み、「単層であり」、前記ポリエチレン以外に、密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含むのに対し、甲6発明では、「クッション層とヒートシール追従層からなり、単層ではなく」、クッション層は、密度が0.913g/cm3であるメタロセンLLDPE3であり、ヒートシール追従層は、密度が0.903g/cm3であるメタロセンLLDPE5である点。
(イ)相違点についての判断
相違点1-2について検討すると、カバーテープにおいて、中間層は、単層であり、かつ、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンと密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含むことについては、甲6だけでなく、申立人が提出したいずれの証拠(甲1~5、7~18)にも、記載も示唆も見いだせないから、甲6発明において、相違点1-2に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、本件発明3は、甲6発明及び甲1~18に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ここで、申立人が提出した証拠は、上記第4で示したもの以外で、以下のとおりである。
甲5:再公表特許第2012/137630号
甲7:「エボリュー(キャストフィルム)銘柄物性表」、[online]、2021年7月、株式会社プライムポリマー、<URL:https://www.primepolymer.co.jp/content/dam/mitsuichemicals/sites/primepolymer/documents/common/product/pe/evlue-fc_202107.pdf>(なお、「エボリュー」の直後の○の中にRの記載は省略した。以下同様。)
甲8:「Datasheet Evolue SP1540」、[online]、Material Data Center、<URL:https://www.materialdatacenter.com/ms/en/Evolue/Prime+Polymer+Co%252E%2C+Ltd/Evolue%C2%AE+SP1540/5d06d137/1649>
甲11:「Evolue(Blown Film) Product Data Sheet」、[online]、Prime Polymer Co., Ltd、<URL:https://media.knowde.com/image/upload/v1572079418/production/Collateral/89094/240538/Evolue_Blown_Film_Technical_Data_Sheet.pdf>
甲12:「Datasheet Evolue SP1020」、[online]、Material Data Center、<URL:https://www.materialdatacenter.com/ms/fr/Evolue/Prime+Polymer+Co%252E%2C+Ltd/Evolue%C2%AE+SP1020/07d222df/1649/>
甲13:「Datasheet Evolue SP0540」、[online]、Material Data Center、<URL:https://www.materialdatacenter.com/ms/en/Evolue/Prime+Polymer+Co%252E%2C+Ltd/Evolue%C2%AE+SP0540/69e0caec/1649>
甲14:特開2009-96130号公報
甲15:国際公開第2022/080458号
甲16:特開2003-246358号公報
甲17:再公表特許第2015/029867号
甲18:特開2018-90326号公報
エ 本件発明4について
甲6(上記1(1)エ(イ)参照)に記載された、電子部品が凹状ポケット部に収納されたキャリアテープと、電子部品包装用カバーテープとを有し、電子部品を収納した凹状ポケット部に封がされるように電子部品包装用カバーテープがヒートシールされる電子部品包装体(甲6記載事項2)を参照すると、本件発明4は、甲6発明及び甲6記載事項1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)甲4を主引用文献とする場合
事案に鑑み、本件発明3についてのみ検討する。
ア 本件発明3について
(ア)対比
a 本件発明3と甲4発明とを対比すると、後者の「電子部品の包装」は、前者の「電子部品包装」に相当し、以下同様に、「キャリアテープ用カバーフィルム」は「カバーテープ」に、「基材層」は「基材層」に、「第二中間層」及び「第一中間層」は、「中間層」に、「シーラント層」は「シーラント層」に、「二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム」は「ポリエステル系樹脂」に、「m-LLDPE5」及び「m-LLDPE4」は「ポリエチレン」に、「カチオン型帯電防止剤」は「帯電防止剤」に、「スチレン-ブタジエン-スチレンのトリブロック共重合体の水素添加物」は「スチレン系樹脂」に、それぞれ相当する。
b 上記aを踏まえると、後者の「電子部品の包装に使用するキャリアテープ用カバーフィルム」は、前者の「電子部品包装用のカバーテープ」に相当し、以下同様に、
「基材層は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムで構成」することは「前記基材層は、樹脂としてポリエステル系樹脂のみを含」むことに、「第二中間層は、密度が0.913g/cm3であるm-LLDPE5であ」ることは「前記第一中間層は密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含む」ことに、「第一中間層は、密度が0.904g/cm3であるm-LLDPE4であ」ることは、「前記中間層は、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含」むこと及び「前記第二中間層は前記ポリエチレンを含」ことに、「シーラント層における基材層側とは反対側の面の全ては露出している」ことは「前記シーラント層における前記基材層側とは反対側の面の全ては露出して」いることに、「シーラント層は、スチレン-ブタジエン-スチレンのトリブロック共重合体の水素添加物を含」むことは「前記シーラント層は、スチレン系樹脂および/または(メタ)アクリル系樹脂を含む」ことに、それぞれ相当する。
また、後者の「シーラント層は、」「カチオン型帯電防止剤が塗布されて」いることは、前者の「前記シーラント層は、帯電防止剤を含」むことと、「前記シーラント層は、帯電防止剤を備え」るという点で共通する。
c 上記a、bを踏まえると、後者の「基材層/第二中間層/第一中間層/シーラント層の層構造を有」すること、「第二中間層は、密度が0.913g/cm3であるm-LLDPE5であ」ること、及び「第一中間層は、密度が0.904g/cm3であるm-LLDPE4であ」ることは、前者の「前記中間層は、(i)単層であり、前記ポリエチレン以外に、密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含むか、または、(ii)多層構成であり、前記基材層と前記シーラント層との間に、前記基材層に近いほうから、第一中間層と、前記第一中間層とは異なる第二中間層とがあり、前記第二中間層は前記ポリエチレンを含み、前記第一中間層は密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含む」に相当する。
そうすると、本件発明3と甲4発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点2>
「電子部品包装用のカバーテープであって、
当該カバーテープは、基材層と、前記基材層の片面側に設けられた単層のシーラント層とを備え、
前記基材層と前記シーラント層の間には少なくとも1層の中間層があり、
前記中間層は、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含み、
前記基材層は、樹脂としてポリエステル系樹脂のみを含み、
前記シーラント層は、帯電防止剤を備え、
前記中間層と前記シーラント層とは直接接しており、
前記シーラント層は、当該カバーテープの最表面に設けられており、前記シーラント層における前記基材層側とは反対側の面の全ては露出しており、
前記シーラント層は、スチレン系樹脂および/または(メタ)アクリル系樹脂を含む、カバーテープ。」
<相違点2-1>
シーラント層について、本件発明3では、帯電防止剤を「含み、前記帯電防止剤は、金属含有フィラーを含み、前記金属含有フィラーは、金属酸化物粒子を含む」のに対し、甲4発明では、カチオン型帯電防止剤が「塗布されている」点。
<相違点2-2>
中間層について、本件発明3は、「密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含み、」「単層であり、前記ポリエチレン以外に、密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含む」のに対し、甲4発明では、中間層が「第二中間層と第一中間層からな」るものであり単層ではなく、また、第二中間層は、密度が0.913g/cm3であるm-LLDPE5であり、第一中間層は、密度が0.904g/cm3であるm-LLDPE4である点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2-2から検討する。
相違点2-2は、相違点1-2と実質的に同じであるから、上記(1)ウ(イ)で説示したのと同様の理由により、甲4発明において、相違点2-2に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいない。
したがって、相違点2-1を検討するまでもなく、本件発明3は、甲4発明及び甲1~18に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)まとめ
以上によれば、本件発明1、2は、甲6発明及び甲6記載事項1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明4は、甲6発明及び甲6記載事項1、2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本件発明3は、甲6発明又は甲4発明及び甲1~18に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 特許異議申立理由についての判断
事案に鑑み、特許異議理由1、2の本件発明3に関する部分のみ検討する。
(1)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
(ア)後者の「電子部品のテーピング包装用のカバーテープ」は、前者の「電子部品包装用のカバーテープ」に相当し、以下同様に、「基材フィルム11」は「基材層」に、「熱接着層17」は「シーラント層」に、「メタロセンLLDPE」は「ポリエチレン」に、「ポリエチレンテレフタレート」は「ポリエステル系樹脂」に、「アクリル樹脂」は「(メタ)アクリル系樹脂」に、それぞれ相当する。
(イ)後者の「アンカコート剤層」及び「柔軟材層15」は、基材フィルム11と熱接着層17の間にあるから、上記(ア)を踏まえると、前者の「中間層」に相当する。
(ウ)上記(ア)、(イ)を踏まえると、後者の「当該カバーテープは、基材フィルム11/アンカコート剤層/柔軟材層15の3層がこの順で接着し積層され、柔軟材層15のコロナ処理面に熱接着層17を構成」することは、前者の「当該カバーテープは、基材層と、前記基材層の片面側に設けられた単層のシーラント層とを備え、前記基材層と前記シーラント層の間には少なくとも1層の中間層があ」ること及び「前記中間層と前記シーラント層とは直接接して」いることに相当する。
また、後者の「柔軟材層15は、密度0.892g/cm3であるメタロセンLLDPEであ」ることは、前者の「前記中間層は、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含」むことに相当する。
(エ)後者の「基材フィルム11は、ポリエチレンテレフタレートからな」ることは、他の樹脂を含まないものと理解できるから、上記(ア)を踏まえると、前者の「前記基材層は、樹脂としてポリエステル系樹脂のみを含」むことに相当する。
(オ)甲1の上記1(3)ア(エ)の記載を参照すると、後者の「アンチモンドープ酸化錫」は、前者の「耐電防止剤」及び「金属含有フィラー」に相当するから、上記アも踏まえると、後者の「熱接着層17は、アクリル樹脂100質量部、導電性微粒子であるアンチモンドープ酸化錫150質量部、混合溶剤750質量部を混合し、分散又は溶解した組成物からな」ることは、前者の「前記シーラント層は、帯電防止剤を含み、前記帯電防止剤は、金属含有フィラーを含み、前記金属含有フィラーは、金属酸化物粒子を含」むことに相当する。
(カ)上記(ア)を踏まえると、後者の「熱接着層17は、当該カバーテープの最表面に設けられており、熱接着層17における基材フィルム11とは反対側の面の全ては露出している」ことは、前者の「前記シーラント層は、当該カバーテープの最表面に設けられており、前記シーラント層における前記基材層側とは反対側の面の全ては露出している」ことに相当する。
(キ)上記(ア)を踏まえると、後者の「熱接着層17は、アクリル樹脂100質量部、導電性微粒子であるアンチモンドープ酸化錫150質量部、混合溶剤750質量部を混合し、分散又は溶解した組成物からな」ることは、前者の「前記シーラント層は、スチレン系樹脂および/または(メタ)アクリル系樹脂を含む」ことに相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点3>
「電子部品包装用のカバーテープであって、
当該カバーテープは、基材層と、前記基材層の片面側に設けられた単層のシーラント層とを備え、
前記基材層と前記シーラント層の間には少なくとも1層の中間層があり、
前記中間層は、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含み、
前記基材層は、樹脂としてポリエステル系樹脂のみを含み、
前記シーラント層は、帯電防止剤を含み、前記帯電防止剤は、金属含有フィラーを含み、前記金属含有フィラーは、金属酸化物粒子を含み、
前記中間層と前記シーラント層とは直接接しており、
前記シーラント層は、当該カバーテープの最表面に設けられており、前記シーラント層における前記基材層側とは反対側の面の全ては露出しており、
前記シーラント層は、スチレン系樹脂および/または(メタ)アクリル系樹脂を含む、カバーテープ。」
<相違点3-1>
中間層について、本件発明3は、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンを含み、「単層であり、前記ポリエチレン以外に、密度が0.912g/cm3超であるポリエチレン」を含むのに対し、甲1発明では、アンカーコート剤層と柔軟材層15からなり、密度0.892g/cm3であるメタロセンLLDPE以外のポリエチレンを含まない点。
(イ)相違点についての判断
相違点3-1は実質的な相違点であるので、本件発明3は甲1発明ではない。
そして、上記(1)ウ(イ)で説示したように、カバーテープにおいて、中間層は、単層であり、かつ、密度が0.890~0.912g/cm3であるポリエチレンと密度が0.912g/cm3超であるポリエチレンを含むことについては、甲1だけでなく、申立人が提出したいずれの証拠(甲2~18)にも、記載も示唆も見いだせないから、甲1発明において、相違点3-1に係る本件発明3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
したがって、本件発明3は、甲1発明及び甲1~18に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)まとめ
以上により、本件発明3について、特許異議申立理由1、2は成り立たない。
第7 むすび
以上のとおり、請求項1、2、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから、取り消されるべきものである。
また、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由並びに特許異議申立書に記載された特許異議申立理由及び証拠によっては、本件請求項3に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に本件請求項3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701299