審決検索MVP
← 検索一覧に戻る
特許異議申立

2020-700683

植物由来ポリエチレンを用いた包装材用シーラントフィルム、包装材用積層フィルム、および包装袋

審判番号
2020-700683
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-218098
登録番号
6662437
請求日
2020年09月10日
審決日
2022年11月25日
公報発行日
2023年04月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】大日本印刷株式会社
  • 【権利者代理人】結田 純次
  • 【権利者代理人】竹林 則幸
  • 【異議申立人】土田 裕介
  • 【異議申立人代理人】長谷川 芳樹
  • 【異議申立人代理人】黒木 義樹
  • 【異議申立人代理人】吉住 和之
審判長/審判官
  • 審判長 藤原 直欣
  • 審判官 久保 克彦
  • 審判官 藤井 眞吾
分類
P1651.113-ZDA(B65D) / P1651.121-ZDA(B65D) / P1651.55 -ZDA(B65D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第17条の3
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6662437号発明「植物由来ポリエチレンを用いた包装材用シーラントフィルム、包装材用積層フィルム、および包装袋」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6662437号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、5〕、4について訂正することを認める。 特許第6662437号の請求項1、4に係る特許を取り消す。 同請求項2、3、5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6662437号の請求項1~4に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成23年2月14日の出願である特願2011-28784号の一部を平成27年4月3日に新たな特許出願とした特願2015-77247号の一部を、平成28年12月22日に新たな特許出願とした特願2016-248731号の一部を、さらに平成30年11月21日に新たな特許出願(以下、「本件特許出願」という。)としたものであって、令和2年2月17日にその特許権の設定登録がされ、同年3月11日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 ・ 令和2年9月10日 :特許異議申立人土田裕介(以下、「申立人」という。)による請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て ・ 同年12月11日付け:取消理由通知書 ・ 令和3年2月2日 :特許権者による意見書の提出 ・ 同年4月16日付け :取消理由通知書(決定の予告) ・ 同年7月16日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 ・ 同年9月6日 :申立人による意見書の提出 ・ 同年11月25日 :特許権者による上申書の提出 ・ 同年12月14日付け:取消理由通知書(決定の予告) ・ 令和4年2月14日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 (以下、この訂正請求書による請求を「本件訂正請求」といい、この請求による訂正を「本件訂正」という。) ・ 同年5月13日 :申立人による意見書の提出 なお、特許権者が令和3年7月16日に提出した訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正の適否 1.本件訂正の内容 本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。 (1)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1の 「少なくとも基材フィルムと、ヒートシール性フィルムからなる包装材用積層フィルムであって、 該ヒートシール性フィルムは、植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとが気相重合法により共重合された植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による単層構成のフィルムからなり、 該植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度が80~100%未満のエチレン-α-オレフィン共重合体であって、メルトフローレートが0.70~1.30g/10分の物性を有することを特徴とする包装材用積層フィルム。」を、 「少なくとも基材フィルムと、ヒートシール性フィルムからなる包装材用積層フィルムであって、 該ヒートシール性フィルムは、植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとが気相重合法により共重合された植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による単層構成のインフレーションフィルムからなり、 該植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度が80~100%未満のエチレン-α-オレフィン共重合体であって、メルトフローレートが0.70~1.30g/10分の物性を有し、 該基材フィルムがポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂のいずれかであることを特徴とする包装材用積層フィルム。」 に訂正する。 (2)訂正事項2 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2の 「少なくとも基材フィルムと、ヒートシール性フィルムからなる包装材用積層フィルムであって、 該ヒートシール性フィルムは、植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとが気相重合法により共重合された植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による層を少なくとも1層含む多層構成のフィルムからなり、 該植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度が80~100%未満のエチレン-α-オレフィン共重合体であることを特徴とする包装材用積層フィルム。」を、 「少なくとも基材フィルムと、ヒートシール性フィルムからなる包装材用積層フィルムであって、 該ヒートシール性フィルムは、外層と、中間層と、内層とを有する多層構成であり、 該中間層は、植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとが気相重合法により共重合された植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による層からなり、 該外層と該内層は、石油由来ポリエチレン系樹脂からなり、 該植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度が80~100%未満のエチレン-α-オレフィン共重合体であることを特徴とする包装材用積層フィルム。」に訂正する。(請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項3、5も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4の「請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装材用積層フィルムを用いてなることを特徴とする包装袋。」のうち、請求項1を引用する請求項4を独立形式として、 「少なくとも基材フィルムと、ヒートシール性フィルムからなる包装材用積層フィルムであって、 該ヒートシール性フィルムは、植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとが気相重合法により共重合された植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による単層構成のインフレーションフィルム(ただし、重量平均分子量/数平均分子量の1.5~3のものを除く)からなり、 該植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度が80~100%未満のエチレン-α-オレフィン共重合体であって、メルトフローレートが0.70~1.30g/10分の物性を有し、 該基材フィルムがポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂のいずれかであることを特徴とする包装材用積層フィルムを用いてなることを特徴とする包装袋。」に訂正する。 (4)訂正事項4 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4の「請求項1ないし3のいずれか1項に記載の包装材用積層フィルムを用いてなることを特徴とする包装袋。」を、「請求項2または3に記載の包装材用積層フィルムを用いてなることを特徴とする包装袋。」に訂正して、新たな請求項5とする。 2.一群の請求項 訂正前の請求項1~4について、請求項3、4は、訂正請求の対象である請求項2の記載を引用する関係にあり、また、請求項4は、訂正請求の対象である請求項1を引用する関係にあるから、本件訂正は一群の請求項について請求されている。 また、特許権者は、訂正後の請求項4について、別の訂正単位とすることを求めている。 3.訂正の適否について (1)訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1における単層構成の「フィルム」についてその種類を「インフレーションフィルム」と限定し、「基材フィルム」について「該基材フィルムがポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂のいずれかである」と、樹脂の種類を直列的に付加して限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること 本件明細書等の段落【0049】等には樹脂組成物を上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により成形して実施例たるフィルムを製膜することが記載されており、また、段落【0042】に「なお、基材フィルム5としては、例えば、・・・ポリプロピレン系樹脂、・・・ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、・・・等の各種樹脂フィルムまたはシートを使用することができる。」と記載されているから、訂正事項1は、新規事項を追加するものではない。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではないこと 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「単層構成のフィルム」、「基材フィルム」について上記のように発明特定事項を直列的に付加するものであるから、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、本件訂正前の請求項2の「ヒートシール性フィルム」について、「外層と、中間層と、内層とを有する多層構成」であることを直列的に付加して限定するとともに、本件訂正前の請求項2の「植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとが気相重合法により共重合された植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による層を少なくとも1層含む」とされている層がヒートシール性フィルムを構成する「当該中間層」であることを特定して限定し、また「該外層と該内層は、石油由来ポリエチレン系樹脂からな」ることを直列的に付加して限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、本件明細書等の段落【0037】に「また、(B)のフィルムF3として、図4に示すように、中間層を樹脂組成物1とし、外層および内層を石油由来ポリエチレン系樹脂2とした多層構成にすることもできる。」と記載されているとともに、段落【0054】の実施例3に「第1層用および第3層用樹脂組成物として、スクリュー径30mmφ押出機を用いて、三井化学C6LL-エボリューSP2020(d=0.916、MFR=2.3g/10分)を200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。同様に第2層用樹脂組成物として、スクリュー径30mmφ押出機を用いて、サトウキビ由来直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂であるブラスケム社C4LL-LL118(d=0.916、MFR=1.0g/10分)を200℃で溶融混練し、樹脂組成物を得た。・・・」と記載されているから、訂正事項2は、新規事項を追加するものではない。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではないこと 訂正事項2は、訂正前の請求項2の「ヒートシール性フィルムフィルム」について上記のような発明特定事項を直列的に付加し、「植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとが気相重合法により共重合された植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による層を少なくとも1層含む」とされている層が「当該中間層」であることを特定するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的について 訂正事項3の、訂正前の請求項1を引用する請求項4を独立形式とすることは、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 また、訂正事項3は、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項4における「単層構成のフィルム」についてその種類を「インフレーションフィルム」と限定し、「基材フィルム」について「該基材フィルムがポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂のいずれかである」ことを直列的に付加して減縮するとともに、「ヒートシール性フィルム」について、「(ただし、重量平均分子量/数平均分子量の1.5~3のものを除く)」ことを直列的に付加して減縮するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3のうち、「単層構成のインフレーションフィルム」、「該基材フィルムがポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂のいずれかである」については、上記(1)イに示したとおり、新規事項を追加するものではない。 また、訂正事項3のうち、「ヒートシール性フィルム」について、「(ただし、重量平均分子量/数平均分子量の1.5~3のものを除く)」ことを直列的に付加する訂正は、訂正前の請求項1を引用する請求項4に記載した事項の記載表現を残したままで、訂正により願書に添付した明細書に記載したそれに含まれる事項の一部を除外するいわゆる「除くクレーム」とするものであって、令和3年4月16日付け取消理由通知書(決定の予告)で引用した引用文献1(申立人が提出した甲第2号証:特開平9-150489号公報)に記載された事項であるLLDPEのみを除外することを明示したものであり、新規事項を追加するものではない。 したがって、訂正事項3は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものである。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではないこと 訂正事項3は、本件訂正前の請求項1を引用する請求項4の「単層構成のフィルム」、「基材フィルム」及び「ヒートシール性フィルム」について上記のような発明特定事項を直列的に付加するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上、特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正事項4は、本件訂正前の請求項4が択一的に引用していた請求項を実質的に一つ減らすものであって、かつ、本件訂正前は請求項1を引用するものであったものを、請求項1を引用しないものとする訂正であるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4は、本件訂正前の請求項4について「請求項1ないし3のいずれか1項に記載」と択一的に記載されていた発明特定事項の一つを削除するものであって、本件訂正前は請求項1を引用するものであったものを、請求項1を引用しないものとする訂正であるから、新規事項を追加するものではない。 ウ 実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではないこと 訂正事項4は、訂正前の請求項4について択一的に引用していた請求項を実質的に一つ減らすものであって、本件訂正前は請求項1を引用するものであったものを、請求項1を引用しないものとする訂正であるから、実質上特許請求の範囲を拡張、又は変更するものではない。 4.本件訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、訂正事項1~4は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 したがって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~3、5〕、4について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の発明 本件特許の請求項1~請求項5に係る発明(以下、各々「本件発明1」~「本件発明5」という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~請求項5に記載された次の事項により特定される次のとおりのものである。 【請求項1】 少なくとも基材フィルムと、ヒートシール性フィルムからなる包装材用積層フィルムであって、 該ヒートシール性フィルムは、植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとが気相重合法により共重合された植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による単層構成のインフレーションフィルムからなり、 該植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度が80~100%未満のエチレン-α-オレフィン共重合体であって、メルトフローレートが0.70~1.30g/10分の物性を有し、 該基材フィルムがポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂のいずれかであることを特徴とする包装材用積層フィルム。 【請求項2】 少なくとも基材フィルムと、ヒートシール性フィルムからなる包装材用積層フィルムであって、 該ヒートシール性フィルムは、外層と、中間層と、内層とを有する多層構成であり、 該中間層は、植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとが気相重合法により共重合された植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による層からなり、 該外層と該内層は、石油由来ポリエチレン系樹脂からなり、 該植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度が80~100%未満のエチレン-α-オレフィン共重合体であることを特徴とする包装材用積層フィルム。 【請求項3】 前記α-オレフィンが、ブテン-1またはヘキセン-1またはこれらの混合物であって、前記植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、密度が0.910~0.925g/cm3、メルトフローレートが0.5~4.0g/10分の物性を有することを特徴とする請求項2に記載の包装材用積層フィルム。 【請求項4】 少なくとも基材フィルムと、ヒートシール性フィルムからなる包装材用積層フィルムであって、 該ヒートシール性フィルムは、植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとが気相重合法により共重合された植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による単層構成のインフレーションフィルム(ただし、重量平均分子量/数平均分子量の1.5~3のものを除く)からなり、 該植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度が80~100%未満のエチレン-α-オレフィン共重合体であって、メルトフローレートが0.70~1.30g/10分の物性を有し、 該基材フィルムがポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂のいずれかであることを特徴とする包装材用積層フィルムを用いてなることを特徴とする包装袋。 【請求項5】 請求項2または3に記載の包装材用積層フィルムを用いてなることを特徴とする包装袋。 第4 取消理由の概要 当審が令和3年12月14日付けで特許権者に通知した取消理由通知書(決定の予告)の概要は、次のとおりである。 本件特許の請求項1、4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項1、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 ・ 引用文献6:特開2011-6677号公報(当審が発見した引用文献) ・ 引用文献3:杉山英路ほか、「地球環境にやさしい「サトウキビ由来のポリエチレン」」 コンバーテック 株式会社加工技術研究会 2009年8月15日 第37巻第8号 第63ページ~67ページ(申立人の提出した甲第3号証) ・ 引用文献4:杉山英路 「新しいバイオマスプラスチックの可能性~「サトウキビ由来ポリエチレン」の製品化から~」 Polyfile 株式会社大成社 2009年12月10日 第46巻 第12号 第28ページ~30ページ(申立人の提出した甲第4号証) ・ 引用文献5:特開2010-162748号公報(当審が発見した引用文献) 第5 当審の判断 1.引用文献に記載された事項及び引用発明 (1)引用文献6 引用文献6には、次の事項が記載されている。 ア「【技術分野】 【0001】 本発明は、押出しラミネート用エチレン-α-オレフィン共重合体およびその積層体に関するものである。 【背景技術】 【0002】 ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、紙などの基材にエチレン系樹脂を押出ラミネートして得られる積層体は、食品や工業部品等の包装材料として用いられている。エチレン系樹脂を用いて押出ラミネートする場合、Tダイより押出した溶融状フィルム端部が中央方向へと縮んでしまうネックインが発生することがある。ネックインが発生すると、フィルム幅が小さくなるとともにフィルム端部の厚みがフィルム中央部に比べ厚くなってしまうため、製品の歩留まりが悪化する。ネックインを抑えるためには、溶融張力の大きいエチレン系樹脂を使用することが有効である。」 イ「【0014】 本発明のエチレン-α-オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン-1-オクテン共重合体等があげられ、好ましくはエチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-ブテン-1-オクテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン-1-オクテン共重合体である。 【0015】 本発明のエチレン-α-オレフィン共重合体の密度(以下、「d」と記載することがある。)は、860~950kg/m3である。得られる成形体の機械的強度を高める観点から、好ましくは940kg/m3以下であり、より好ましくは935kg/m3以下であり、更に好ましくは930kg/m3以下である。また、得られる成形体の剛性を高める観点から、好ましくは870kg/m3以上であり、より好ましくは880kg/m3以上であり、更に好ましくは890kg/m3以上であり、特に好ましくは900kg/m3以上である。該密度は、JIS K6760-1995に記載のアニーリングを行った後、JIS K7112-1980のうち、A法に規定された方法に従って測定される。また、エチレン-α-オレフィン共重合体の密度は、エチレン-α-オレフィン共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量により変更することができる。 【0016】 本発明のエチレン-α-オレフィン共重合体のメルトフローレート(以下、「MFR」と記載することがある。)は、通常、1~100g/10分である。該メルトフローレートは、成形加工時の押出負荷を低減する観点から、好ましくは1.5g/10分以上である。該メルトフローレートは、JIS K7210-1995に規定された方法において、温度190℃、荷重21.18Nの条件で、A法により測定される値である。また、エチレン-α-オレフィン共重合体のメルトフローレートは、後述する製造方法において、例えば、水素濃度または重合温度により変更することができ、水素濃度または重合温度を高くすると、エチレン-α-オレフィン共重合体のメルトフローレートが大きくなる。」 ウ「【0019】 本発明のエチレン-α-オレフィン共重合体の重量平均分子量(以下、「Mw」と記載することがある。)と数平均分子量(以下、「Mn」と記載することがある。)との比(以下、「Mw/Mn」と記載することがある。)は、4~30であり、Z平均分子量(以下、「Mz」と記載することがある。)と重量平均分子量(Mw)との比(以下、「Mz/Mw」と記載することがある。)は、2~5である。Mw/Mnが小さすぎると、成形加工時の押出負荷が高くなることがある。Mw/Mnは、好ましくは4.5以上であり、より好ましくは5.5以上であり、さらに好ましくは6以上である。・・・Mw/Mnは、好ましくは25以下であり、より好ましくは20以下であり、さらに好ましくは15以下であり、特に好ましくは12以下である。・・・なお、該Mw/Mnと該Mz/Mwとは、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)およびZ平均分子量(Mz)を測定し、MwをMnで除し、MzをMwで除すことにより求められる。また、該Mw/Mnは、後述する製造方法において、例えば、水素濃度または重合温度により変更することができ、水素濃度または重合温度を高くすると、エチレン-α-オレフィン共重合体のMw/Mnが大きくなる。・・・」 エ「【0204】 本発明のエチレン-α-オレフィン共重合体の製造方法としては、気相重合法、スラリー重合法、バルク重合法などにより、エチレンとα-オレフィンとを共重合する方法があげられる。好ましくは、気相重合法であり、より好ましくは連続気相重合法である。該重合法に用いられる気相重合反応装置としては、通常、流動層型反応槽を有する装置であり、好ましくは、拡大部を有する流動層型反応槽を有する装置である。反応槽内に撹拌翼が設置されていてもよい。」 オ「【0218】 本発明の積層体は、該エチレン-α-オレフィン共重合体を基材上にフィルム状に溶融押出し、基材と溶融樹脂とを圧着して得られる。 【0219】 基材を構成する原料としては、樹脂、紙、金属などが挙げられる。該樹脂としては、例えばポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、セロハン、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、フッ素樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリブテン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、アセチルセルロースなどがあげられる。」 カ「【0225】 上記の通り、本発明のエチレン-α-オレフィン共重合体は、成形加工時の押出負荷、引取性といった成形加工性に優れる。そのため、Tダイによる溶融膜成形時のネックインも低くなりうる。また、押出成形時の高速加工性も良好である。 基材上に押出しラミネートされた、本発明のエチレン-α-オレフィン共重合体からなる層は、従来の高圧法低密度ポリエチレンからなる層に比べてヒートシール強度に優れる。 よって本発明のエチレン-α-オレフィン共重合体、および該共重合体を押出しラミネート加工してなる積層体は、食品包装などの種々な用途に用いることができ、特にヒートシールが求められる用途に好適である。」 キ「【0241】 (16)ネックイン-1(NI-1) 溶融樹脂の押出厚み50μm、加工速度1.5m/minの条件下における、押出加工時のダイの開口部と多層フィルムの樹脂膜の幅の差(両側合計値)を測定し、エチレン系樹脂RS9(押出しラミネート用の高圧法低密度ポリエチレン;物性値は表6に記載)の値を基準としたときの下記評価基準にてネックインの良否を判定した。 ・・・ 【0242】 (17)ネックイン-2(NI-2) 溶融樹脂の押出厚み20μm、加工速度80m/minの条件下における、押出加工時のダイの開口部と多層フィルムの樹脂膜の幅の差(両側合計値)を測定し、エチレン系樹脂RS9(押出しラミネート用の高圧法低密度ポリエチレン;物性値は表7に記載)の値を基準としたときの下記評価基準にてネックインの良否を判定した。 ・・・」 ク「【0247】 実施例1 (1)固体触媒成分の調製 窒素置換した撹拌機を備えた反応器に、窒素流通下で300℃において加熱処理したシリカ(デビソン社製 Sylopol948;50%体積平均粒子径=55μm;細孔容量=1.67ml/g;比表面積=325m2/g)2.8kgとトルエン24kgとを入れて、撹拌した。その後、5℃に冷却した後、1,1,1,3,3,3-ヘキサメチルジシラザン0.9kgとトルエン1.4kgとの混合溶液を反応器の温度を5℃に保ちながら30分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌し、次に95℃に昇温し、95℃で3時間撹拌し、ろ過した。得られた固体生成物をトルエン20.8kgで6回、洗浄を行った。その後、トルエン7.1kgを加えスラリーとし、一晩静置した。 【0248】 上記で得られたスラリーに、ジエチル亜鉛のヘキサン溶液(ジエチル亜鉛濃度:50重量%)1.73kgとヘキサン1.02kgとを投入し、撹拌した。その後、5℃に冷却した後、3,4,5-トリフルオロフェノール0.78kgとトルエン1.44kgとの混合溶液を、反応器の温度を5℃に保ちながら60分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間撹拌し、次に40℃に昇温し、40℃で1時間撹拌した。その後、22℃に冷却し、H2O0.11kgを反応器の温度を22℃に保ちながら1.5時間で滴下した。滴下終了後、22℃で1.5時間撹拌し、次に40℃に昇温し、40℃で2時間撹拌し、更に80℃に昇温し、80℃で2時間撹拌した。撹拌後、室温にて、残量16Lまで上澄み液を抜き出し、トルエン11.6kgを投入し、次に、95℃に昇温し、4時間撹拌した。撹拌後、室温にて、上澄み液を抜き出し、固体生成物を得た。得られた固体生成物をトルエン20.8kgで4回、ヘキサン24リットルで3回、洗浄を行った。その後、乾燥することにより、固体触媒成分を得た。 (2)重合 減圧乾燥後アルゴンで置換した内容積3リットルの撹拌機付きオートクレーブ内を真空にし、水素をその分圧が0.03MPaになるように加え、1-ヘキセンを180ml、重合溶媒としてブタンを650g仕込み、70℃まで昇温した。その後、エチレンを、その分圧が1.6MPaになるように加え系内を安定させた。ガスクロマトグラフィー分析の結果、系内のガス組成は、水素=1.84mol%であった。これに、有機アルミニウム化合物(C)として濃度を1mol/lに調整したトリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液 0.9mlを投入した。次に、濃度を2μmol/mlに調整したラセミ-エチレンビス(1-インデニル)ジルコニウムジフェノキシド[遷移金属化合物(A1)に相当]のトルエン溶液 0.5mlと、濃度を0.1μmol/mlに調整したジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル)(9-フルオレニル)ジルコニウムジクロライド[遷移金属化合物(A2)に相当]のトルエン溶液 0.8mlを投入し、続いて上記実施例1(1)で得られた固体触媒成分38.7mgを投入した。重合中は全圧、およびガス中の水素濃度を一定に維持するように、エチレン/水素混合ガス(水素=0.25mol%)を連続的に供給しながら、70℃で60分間重合した。その後、ブタン、エチレン、水素をパージして、エチレン-1-ヘキセン共重合体182gを得た。得られた共重合体の物性を表1に示した。」 ケ「【0262】 【表1】 [図:0001396243000001.jpg] 」 コ 上記実施例1のエチレン及び1-ヘキセンは、引用文献6が発行された当時の技術水準から考えて、石油由来エチレン及び石油由来1-ヘキセンと認められる。 以上の摘記事項ア~ケ及び認定事項コから、実施例1について整理すると、引用文献6には、次の発明が記載されている(以下、「引用発明6」という。) (引用発明6) 基材フィルムと、基材フィルム上にフィルム状に溶融押出されたエチレン-1-ヘキセン共重合体からなる包装材料として用いられる積層体であって、 エチレン系樹脂は、石油由来エチレンと石油由来1-ヘキセンとが気相重合法により共重合された密度918kg/m3のエチレン-1-ヘキセン共重合体による単層のフィルムであって、Mw/Mnが5.2であり、MFRが1.03g/10分の物性を有し、 基材フィルムが、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂のいずれかである包装材料に用いられる積層体、及び当該積層体を用いた包装材。 (2)引用文献3に記載された事項 ア「ポリエチレン原料を従来の石油系原料から再生可能なサトウキビ(バイオマス系)に置き換えることは、植物の生育時のCO2吸収と燃焼時の排出が同一(カーボンニュートラル)になり、地球上のCO2を増やさないので地球環境にもやさしく、また石油資源利用の節約にも貢献する。」(第63ページ左欄第25行~第32行) イ「サトウキビ由来ポリエチレンの製造フローを図1に示す。サトウキビ畑より刈り取ったサトウキビを圧延ローラーで糖液を取り出し、その糖液を加熱濃縮して結晶化する粗糖分(砂糖原料)と残糖液(廃糖蜜)を遠心分離器により分離する。この廃糖蜜を適切な濃度まで水で希釈して酵母菌により発酵させエタノールを作る。次にバイオエタノールを300~400℃に加熱してアルミナ等の触媒により分子内脱水反応させると高い収率でエチレンが生成される。生成物にはエチレン以外に水分、有機酸、一酸化炭素等の不純物が含まれるので必要な純度までエチレンを精製して、次の工程のポリエチレン重合プラントへ導入する。ポリエチレン重合プラントで重合触媒によりエチレンを高分子化(重合)してポリエチレンを生産する。」(第63ページ中欄第3行~第21行) ウ「当社とBraskem社は共同でトリウンフォ工場内の研究開発センターで図2にある試験設備により同等性を評価した。 (1)エチレン 試験設備にバイオマス由来エタノールを導入し、出来上がったエチレンの成分分析を行った結果、従来の石油由来エチレンとの品質同等性を確認した。 (2)ポリエチレン 試験重合機に石油系エチレンとバイオマス系エチレンをそれぞれ投入し、同一条件でポリエチレンを重合し、出来上がったポリマーの同等性を検討した。この結果を表1に示す。多少の数値上の差異はあるが、テスト重合機の条件設定に影響されていると考えられ、基本的にはいずれの用途グレードとも石油系、バイオマス系の品質は同等であることが確認できた。」(第63ページ右欄第6行~第24行) エ「サトウキビ由来ポリエチレンはBraskem社のトリウンフォ工場で、2011年から高密度ポリエチレン(HDPE)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を合わせて年産20万トン生産される計画である。」(第64ページ左欄第4行~中欄第4行) オ「今回開発されたサトウキビ由来ポリエチレンは植物由来の樹脂であるが、従来から生産されてきた石油由来ポリエチレンと外観、物性が同じであり、バイオマス度(カーボンの由来比)を数値化することが重要であると考え、14C(放射性炭素年代測定)による分析手法により判別を行った。図6は、Braskem社の試験プラントで試作したサトウキビ由来のHDPEを米国のベータアナリティック社においてASTM D6866測定法に基づいて炭素分析した結果であるが、100%バイオベースであることが確認された。」(第65ページ左欄第28行~中欄第10行) カ 第64ページの表1には、「用途:フィルム成形インフレ、種類:LLDPE、エチレン由来:バイオマス、相当グレード:LL-118、コモノマー:C4、MFR:1.0、Density:0.916」と記載されたインフレフィルム用直鎖状低密度ポリエチレンが記載されている。 キ 第66ページの図9には、サトウキビ由来ポリエチレンの用途として「各種包装材」が記載されている。 (3)引用文献4に記載された事項 ア「・・・サトウキビ由来ポリエチレンの商業生産は,まだ少し先のことであり,また,価格は石油系と比べて高価であるにもかかわらず,欧米・日本・韓国などのグローバル企業や業界トップ企業の関心は非常に高く,商業生産前に取引契約を進める企業が多い。日本では既に(株)資生堂が採用を公表しており,環境省が進める「エコファースト制度」の認定においても当ポリエチレンへの切り替えをコミットしている。引合い用途においては,化粧品やシャンプー等のボトル・チューブ類,レジ袋・ゴミ袋,レジカゴ,食品包装材,・・・など多種多様である。・・・」(第28ページ左欄第19行~右欄第8行) イ「2011年初旬より,Braskem社はトリウンフォ工場でHDPEとLLDPEを合せて年産20万トンの規模で生産する計画である。エタノールをエチレンに変換するプラントを新設して,重合機は,既存のスラリー法と気層法の設備をそれぞれ流用する。今回の生産スキームのメリットは,既存の重合機を流用することにより,生産初期トラブルを防ぐことができ,各グレード生産の立上げ,品質確保が早く実現できることである。」(第28ページ右欄第13行~第20行) ウ「図1にサトウキビ由来ポリエチレン製造フローを示す。まず,サトウキビから糖液を取り出し,その糖液を加熱濃縮して結晶化する粗糖分(砂糖原料)と残糖液(廃糖蜜)を分離する。この廃糖蜜を適切な濃度まで水で希釈して酵母菌によりエタノール発酵させて,蒸留によりエタノールを得る。尚,サトウキビから糖液を絞り出す際に大量の絞りかす(バガス)が発生する。ブラジルでは,このバガスを燃料として蒸気を発生させ,砂糖・バイオエタノールに必要な熱・電気エネルギーを全て賄うことができ,また,その余剰電力がブラジルの重要な電力源となっている。このように生産されたエタノールは,Braskem社工場に運ばれ,エチレンに加工される。エタノールを300~400℃に加熱し,特別に開発されたアルミナ触媒により分子内脱水反応をさせることでエチレンが高い収率で生成する。生成物にはエチレン以外に水分,有機酸,一酸化炭素等の不純物が含まれるので必要な純度まで精製する。最後にこの精製エチレンを重合プラントにおいて触媒重合しポリエチレンを得る。」(第29ページ左欄第5行~第22行) エ「バイオマス度は14C(放射性炭素)の分析により測定することができる。原料となるバイオマスには,一定比率で14Cを含むのに対し,一方で石油・ガス・石炭に含まれるカーボンは,全て12Cであり,その差を測定することで,バイオマス度を測定する。図4にBraskem社の試験プラントで試作したサトウキビ由来のHDPEを米国のベータアナリティック社がASTM-D6866・・・測定法に基づき炭素分析した結果であり,100%バイオマス由来であることが確認された。・・・」(第29ページ右欄第第9行~第17行) オ 第28ページの表1には、「種類:LLDPE、コモノマー:C4、グレード:LL-118、MFR:1.0、Density:0.916、用途:インフレフィルム用」と記載された生産予定のサトウキビ由来ポリエチレンが記載されている。 (4)引用文献5に記載された事項 ア「【技術分野】 【0001】 本発明は建築内装材、建具の表面、家電品の表面材等に用いられる化粧シートに関するものであって、木質ボード類、無機系ボード類、金属板等に貼り合わせて化粧板として用いられるものである。 【背景技術】 【0002】 近年、塩化ビニル製化粧シートに替わる化粧シートとしてオレフィン系樹脂を使用した化粧シートが数多く提案されている。塩化ビニル樹脂を使用しないことにより、焼却時の有毒ガス等の発生は無くなる。しかしながら、これらオレフィン系樹脂を使用した化粧シートであっても、使用する樹脂は石油由来の原料により重合されているため、二酸化炭素排出量は塩化ビニル製化粧シートに対して同等なレベルであり、近年注目されている地球温暖化に対する抑制効果は期待できなかった。 【0003】 そこで最近、石油由来の原料ではなく植物由来の原料からなる樹脂としてポリエステル系樹脂、特にポリ乳酸を使用した化粧シートが開発されている。しかしながら、植物由来のポリエステル系樹脂は、耐加水分解性が悪く、高温多湿下での使用も想定される化粧シートにおいては用途が著しく限定されてしまい、普及には至っていない。 【0004】 一方、サトウキビ由来のバイオエタノールからポリエチレンを重合していく研究が始められている。しかしながら現在はまだ商業ベースでの生産は行われていない。オレフィン系樹脂を使用した化粧シートで用いられている樹脂はポリプロピレンが主でり、ポリエチレンはアイデアはあったものの、ある程度の硬度を必要とする表面側に用いる透明フィルムとして使用するには透明性が足りず、また透明性を優先させると耐傷付き性など、剛性が影響する物性が著しく低下する問題があり、使用することができなかった。」 イ「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明はこれらの問題点を解決する為になされたものであり、その課題とするところは、植物由来度が高く、環境に優しい化粧シートであって、表面の透明性や耐傷付き性を有する化粧シートを提供することにある。」 ウ「【0022】 透明フィルム3に用いるポリエチレンは植物原料由来のポリエチレンを80重量%以上含んでいれば特に制約を受けるものではないが、剛性と透明性を両立させる為にはなるべく組成分布が均一なものを使うことが望ましい。結晶性の分布が広い樹脂を使うと球晶サイズの分布が大きくなるなどの要因で透明性が低下するため、メタロセン触媒により重合されたポリエチレンなど結晶性分布の狭い材料を積極的に利用していくことが望ましい。 なお、メタロセン触媒により重合されたポリエチレンは密度0.95以上の高密度のグレードは開発されていない。従って用途に応じて密度を上げる必要がある場合は高密度ポリエチレンをブレンドする等の工夫が必要になる。尚、各層のポリエチレンにおける植物原料由来度は放射性炭素C14量の測定により確認することが可能である。」 エ「【0030】 以下、本発明を実施例に基づき説明する。まず、使用する樹脂組成などを以下に示す。 <ポリエチレンA> エチレン(サトウキビ原料)97重量% 1-ヘキセン(石化原料)3重量% 重合触媒:チグラー触媒 (MFR:5 密度:0.96 植物由来度:0.96) 【0031】 <ポリエチレンB> エチレン(サトウキビ原料)94重量% 1-ヘキセン(石油原料)6重量% 重合触媒:メタロセン触媒 (MFR:4 密度:0.93 植物由来度:0.93)」 2.対比・判断 (1)本件発明1について ア.対比 (ア)本件発明1と引用発明6とを対比すると、引用発明6の「基材フィルム」は、本件発明1の「基材フィルム」に相当する。 また、引用発明6の「基材フィルム上にフィルム状に溶融押出されたエチレン-1-ヘキセン共重合体」は、エチレン-1-ヘキセン共重合体が熱可塑性であり、加熱により溶融することでヒートシール性を有することが技術常識であって、引用文献6にも「本発明のエチレン-α-オレフィン共重合体、および該共重合体を押出しラミネート加工してなる積層体は、食品包装などの種々な用途に用いることができ、特にヒートシールが求められる用途に好適である。」(段落【0225】。前記「1(1)カ」参照。)と記載されているから、本件発明1の「ヒートシール性フィルム」に相当する。 そして、引用発明6の「包装材料として用いられる積層体」は、本件発明1の「包装材用積層フィルム」に相当する。 (イ)引用発明6の「石油由来エチレンと石油由来1-ヘキセンとが気相重合法により共重合された密度918kg/m3のエチレン-1-ヘキセン共重合体による単層のフィルム」は、「エチレンと石油由来αオレフィンとが気相重合法により共重合された低密度ポリエチレン系樹脂による単層のフィルム」の限りにおいて、本件発明1の「植物由来エチレンと石油由来αオレフィンとが気相重合法により共重合された植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による単層構成のインフレーションフィルム」と一致する。 引用発明6の「MFRが1.03g/10分の物性」は、本件発明1の「メルトフローレートが0.70~1.30g/10分の物性」の数値範囲内であるから、両者は一致する。 そして、引用発明6の「ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂」は、それぞれ、本件発明1の「ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂」に相当する。 (ウ)してみると、本件発明1と引用発明6とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。 (一致点) 基材フィルムと、ヒートシール性フィルムからなる包装材用積層フィルムであって、 該ヒートシール性フィルムは、エチレンと石油由来α-オレフィンとが気相重合法により共重合された低密度ポリエチレン系樹脂による単層のフィルムからなり、 メルトフローレートが0.70~1.30g/10分の物性を有し、 該基材フィルムがポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂のいずれかであることを特徴とする包装材用積層フィルム。 (相違点) 本件発明1の「ヒートシール性フィルム」は、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による「単層構成のインフレーションフィルム」であって、エチレンが「植物由来エチレン」であって、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂が「植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」であり、「該植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度が80~100%未満のエチレン-α-オレフィン共重合体」であるのに対し、 引用発明6の「基材フィルム上にフィルム状に溶融押出されたエチレン-1-ヘキセン共重合体」は、「低密度ポリエチレン系樹脂」による「溶融押出された」「単層のフィルム」であって、エチレンが「石油由来」であって、低密度ポリエチレン系樹脂が「石油由来」である点。 イ.判断 上記相違点について検討する。 (ア)本件特許の出願時、温室効果ガス対策として、ポリエチレンの原材料を石油由来のものから植物由来のものに置換することは、当業者によく知られた技術的事項であった(引用文献3、4)。すなわち、ポリエチレンを含む物において、原材料を石油由来のものから植物由来のものに替えることは、一般的な技術課題であったということができるのであって、引用発明6においても、このことがあてはまる。 また、引用文献3、4には、石油由来のエチレンとサトウキビ(植物)由来のエチレンとは同等性を有し、また、石油由来のエチレンから製造したポリエチレンとサトウキビ(植物)由来のエチレンから製造したポリエチレンも同等性を有することが確認されたこと、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)について、バイオマス(植物)由来のエチレンから生産されることが、記載されている。 そうすると、引用発明6において、石油由来のエチレンをサトウキビ(植物)由来のエチレンに替え、低密度ポリエチレン系樹脂を「植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」とすることは、当業者にとって容易に着想し得たことといえる。 このように引用発明6において石油由来のエチレンをサトウキビ(植物)由来のエチレンに替える際に、石油由来α-オレフィンをそのまま用いることは、引用文献5に、サトウキビ(植物)由来のエチレンと石油由来のα-オレフィンである1-ヘキセンを重合させてポリエチレンとすることが記載されていることを考慮しても、当業者がごく普通に採用し得たことである。また、植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂のバイオマス度は、当業者が適正設定すべき性格の事項ということができて、特に「80~100%未満」という値も当業者が適宜採用し得たものといえる。 そして、引用文献3、4には、サトウキビ由来ポリエチレンとして、種々のものが開示されるところ、樹脂の種類が直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であるものについて、MFRの値が1.0g/10分であって、インフレフィルム、すなわちインフレーションにより成形されるフィルムの用途を有するとされている “グレードLL118”と称されるものが含まれている。このグレードLL118の存在に照らせば、引用発明6においてエチレンとしてサトウキビ(植物)由来のエチレンを採用した「植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」によるインフレーションフィルムからなるヒートシール性フィルムを用いた構成とすることは、当業者にとって容易になし得たことである。 (イ)そして、樹脂を用いてフィルムを成形するにあたり、Tダイを用いて押出しを行うものも、インフレーションによるものも、広く知られた手法である。 また、それら両手法において、使用する樹脂のメルトフローレートの値に好ましい範囲があることも、当業者によく知られたことである。 そして、低密度ポリエチレン系樹脂として、直鎖状のものも、そうでないものも当業者によく知られたものである。 引用発明6においては、単層のフィルムを成形するために、低密度ポリエチレン系樹脂を「溶融押出」したものであるが、この樹脂のメルトフローレートの値は「1.03g/10分」である。そして、引用文献3、4には、サトウキビ由来ポリエチレンとして、樹脂の種類がLLDPE、すなわち直鎖状低密度のものであり、MFRの値が1.0g/10分であって、インフレフィルム、すなわちインフレーションにより成形されるフィルムの用途を有するとされている直鎖状で低密度な “グレードLL118”が記載されている。 そうすると、MFRの値がこの“グレードLL118”と同程度の引用発明6においても、フィルムを成形するために、「溶融押出」を行う替わりに、「直鎖状低密度ポリエチレン」用いて、「インフレーション」によるものとすることは、当業者にとって格別の創作能力を要さずになし得たことである。 (ウ)効果について 本件明細書等の発明の詳細な説明、とりわけ“実施例”と称して説明されているものをみても、植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとが気相重合法により共重合された、バイオマス度が80~100%未満の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による単層構成のインフレーションフィルムを用いたことを発明特定事項に含んだ本件発明1によって、引用発明6及び引用文献3~5に記載された技術的事項から予測される以上の格別顕著な効果がもたらされると確認できるものではない。 (エ)以上を踏まえると、本件発明1は、引用発明6及び引用文献3~5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (2)本件発明4について 本件発明4と引用発明6とを対比すると、 引用発明6のエチレン系樹脂は、「Mw/Mnが5.2」であるから、本願発明4のシーラント性フィルムの「(ただし、重量平均分子量/数平均分子量の1.5~3のものを除く)」で除かれた数値範囲の範囲外であるから、両者は、本件発明4と引用発明6を対比した際の一致点に加えて次の一致点2でも一致し、上記相違点1、2に加えて次の相違点3でも相違する。 (一致点2) シーラント性フィルムが「(ただし、重量平均分子量/数平均分子量の1.5~3のものを除く)」ものである点。 (相違点3) 本願発明4が「包装袋」であるのに対して、引用発明6の用途が「包装材」である点。 相違点3について検討するに、基材フィルムとシーラント性フィルムとを積層した包装材用積層フィルムを用いて包装袋を構成することは、例示するまでもなく従来周知の技術手段であって、当業者が容易に選択し得た包装材用積層フィルムの一態様にすぎない。 よって、本件発明4は、引用発明6及び引用文献3~5に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3.小括 以上のとおりであるから、本件発明1及び4は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明である。 したがって、本件発明1及び4に係る特許は、特許法第113条第2号に該当することを理由として、取り消されるべきである。 4. 取消理由の通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)進歩性について 特許異議申立書において、申立人は、本件訂正前の請求項1、4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、また、請求項2~4に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、それぞれ、当業者が容易に発明し得たものである旨主張しているので、これについての合議体の見解を以下に記す。なお、以下、各甲号証を「甲1」のようにいう。 ア.甲1に基づくもの (ア)甲1(特開2009-149013号公報)に記載された事項 ・ 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 基材と、該基材の少なくとも片面に、バイオマス樹脂と合成樹脂を含む樹脂層を有する積層体において、前記バイオマス樹脂が微生物産生系ポリエステル及び/又は脂肪族ポリエステルであり、前記樹脂層のバイオマス樹脂と合成樹脂の配合割合が質量基準で50~90:50~10であり、保香性に優れることを特徴とする積層体。 【請求項2】 請求項1に記載の積層体であって、上記バイオマス樹脂がポリ乳酸系樹脂であり、上記合成樹脂がポリオレフィン系樹脂であり、かつ、前記積層体の樹脂層へオレンジジュースが接していても、香りと風味を損ないにくく保香性に優れることを特徴とする積層体。」 ・ 「【0003】 (主なる用途)本発明の積層体から製造されてなるパウチやスタンドパウチなどの軟包装袋の主なる用途としては、ジュース、清涼飲料及びアルコールなどの飲料、アイスクリーム、冷菓及びヨーグルトなどの液状、粘調状、固形分を含む液状食品の容器などで、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会、地球温暖化防止、農業の活性化なども標榜したものである。しかしながら、保香性に優れ、かつ、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会、地球温暖化防止、農業の活性化などを必要とし、ポリオレフィン系樹脂と同程度のヒートシール性も必要とする用途であれば、特に限定されるものではない。」 ・ 「【0007】 そこで、本発明は上記のような問題点を解消するために、本発明者らは鋭意研究を進め、本発明の完成に至ったものである。その目的は、保香性に優れ、環境への負荷を低減し、さらには省資源、循環型社会へ近づくバイオマス樹脂を用いても、該バイオマス樹脂を含む層の加工性がよくより高速で積層体とすることができ、またパウチやスタンディングパウチなどの製造ではヒートシール性に優れるので、従来設備で容易に製造でき、液体用のパウチやスタンディングパウチなどの軟包装にも用いることのできる積層体を提供することである。」 ・ 「【0011】 本発明の積層体10は、図1に示すように、基材11の少なくとも片面に、バイオマス樹脂と合成樹脂を含む樹脂層19を有している。例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン(商品名)6などのポリアミド系樹脂、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル系樹脂、セルローストリアセテートなどのセルロース系フィルム、ポリカーボネート系樹脂などがある。これら樹脂を主成分とする共重合樹脂、または、混合体(アロイでを含む)、若しくは複数層からなる積層体であっても良い。」 ・ 「【0014】 (樹脂層)樹脂層としてはバイオマス樹脂と合成樹脂の混練物からなる樹脂組成物であり、質量基準でバイオマス樹脂:合成樹脂=50~90:50~10とする。合成樹脂成分としては特に限定されないが、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、該ポリオレフィン系樹脂としてはLDPE、エチレン-不飽和カルボン酸共重合体やカルボン酸をグラフト重合した酸変性ポリオレフィン、アイオノマーなどが混練性のよい点で好ましい。さらに好ましくは安価でヒートシール性のよいLDPEである。生分解性や強度に優れるポリ乳酸系樹脂と安価でヒートシール性に優れるポリオレフィン系樹脂の組み合わせである。また、樹脂層を構成するバイオマス樹脂と合成樹脂からなる樹脂組成物に加えて、着色剤、顔料、体質顔料、充填剤、滑剤、可塑剤、界面活性剤、増量剤などの添加剤を加えてもよい。 【0015】 (バイオマス樹脂)バイオマス樹脂としては、澱粉、ポリ乳酸系樹脂、微生物産生ポリエステル、脂肪族又は芳香族ポリエステルなどがあるが、微生物産生ポリエステル及び/又は脂肪族ポリエステルを用いる。バイオマス樹脂には生分解するもの、生分解しないものなどがあるが、いずれでもよく、好ましくは生分解性の樹脂であり、特に好ましくは生分解性や強度の点でポリ乳酸系樹脂である。」 ・ 「【図1】 [図:0001396243000002.jpg] 」 (イ)以上を踏まえると、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認めることができる。 (甲1発明) ポリエステル系樹脂等の基材(11)と、当該基材(11)の片面に設けられた樹脂層(19)とを備える二層構造の積層体であって、 当該樹脂層(19)が、生分解性や強度に優れるポリ乳酸系樹脂と安価でヒートシール性のよいLDPEの混練物からなる樹脂組成物であり、質量基準でポリ乳酸系樹脂:LDPE=50~90:50~10である、積層体。 (ウ)対比・判断 本件発明1と甲1発明を対比すると、両発明は、以下の点で相違する。 (相違点a)「ヒートシール性フィルム」が、本件発明1では「植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとが気相重合法により共重合された植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による単層構成のインフレーションフィルム」からなり、「該植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度が80~100%未満のエチレン-α-オレフィン共重合体であって、メルトフローレートが0.70~1.30g/10分の物性を有する」のに対して、甲1発明は「生分解性や強度に優れるポリ乳酸系樹脂と安価でヒートシール性のよいLDPEの混練物からなる樹脂組成物であり、質量基準でポリ乳酸系樹脂:LDPE=50~90:50~10である」ものから成形されたものである点。 相違点aにつき検討するに、甲1発明は、ポリエステル系の樹脂たる「ポリ乳酸系樹脂」が積極的に採用されているのであるから、これを異なる「植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」に替えるには、明確な動機の存在が必要である。 申立人は、このことにつき、甲3、4を用いて該当する技術分野における技術常識を説明するが、そのような技術常識、さらには他の証拠を考慮しても、甲1発明において「植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂」を採用すること自体が当業者にとって容易に想到し得たとは言い得ない。 したがって、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。 また、本件発明4は、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、これも、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものとはいえない。 イ.甲2に基づくもの (ア)甲2(特開平9-150489号公報)に記載された事項 ・ 「【請求項1】 基材層と、その少なくとも片面に積層されたシール層とからなる多層シーラントフィルムであって、該基材層は、炭素数6未満のα-オレフィンとエチレンとの共重合体でありかつ密度0.910~0.930g/cm3を有する直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなり、該シール層は、密度が0.885~0.920g/cm3の範囲にあり、重量平均分子量/数平均分子量の値が1.5~3であり、示差走査熱量計を用いて測定した結晶融解温度において、結晶融解ピークが単一であり、かつフィルムの全結晶が融解し始めてからし終るまでの温度幅が20℃以内である直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなり、基材層とシール層の厚み比が2/1~1/10である、多層シーラントフィルム。 ・・・ 【請求項3】 請求項1または2記載の多層シーラントフィルムの非シール面、もしくはシール層が基材層の両面に形成されている場合は少なくとも一方のシール層と基材層の間に補強層が積層されてなる複合包装材。」 ・ 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えば液体食品包装などに用いられる多層シーラントフィルムに関し、より詳しくは、従来のシーラントフィルムと同じ厚味、同じ積層構成で、充分な耐衝撃性を有するシーラントフィルムに関し、さらに、このシーラントフィルムを用いて得られる複合包装材料に関する。」 ・ 「【0008】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のような実情に鑑み、従来のシーラントフィルムと同じ厚味、同じ積層構成で、耐衝撃強度に優れたシーラントフィルムを提供することを目的とする。」 ・ 「【0023】フィルムの製造方法は特に限定されない。例えば、樹脂組成物をインフレーション法、Tダイ法等によって成膜することができる。また、積層のために使用される方法も特に限定されず、ドライラミネート法、共押出法などが適用できる。ただし、本発明のフィルムの成形性のためには、基材層用のLLDPEとシール層用のLLDPEとを共押出するのが好ましい。その理由は、シール層用のLLDPEのみでフィルムを成形した場合、成形機のモーターに負荷がかかりすぎたり、メルトフラクチャーが生じたり、インフレーション法の場合はバブルが不安定になる等、安定したフィルム成形ができないことがあるためである。また、他の理由は、共押出でないと、成形したフィルムが非常に柔軟で、フィルム成形時の巻取りや加工性が悪くなることがあるためである。」 ・ 「【0028】請求項3記載の発明では、請求項1または2記載の多層シーラントフィルムの非シール面、すなわちシール面とは異なる面に、補強層が積層されて、複合包装材料が得られる。請求項1または2記載の多層シーラントフィルムが、基材層とその片面に積層されたシール層とからなる場合、補強層は基材層におけるシール層の反対面に設けられる。また、請求項1または2記載の多層シーラントフィルムが、基材層とその両面に積層されたシール層とからなる場合、補強層は少なくとも一方のシール層と基材層との間に設けられる。補強層としては、シール層のフィルムとは別種のプラスチックフィルム例えばポリアミド系フィルム、ポリエステル系フィルムの他、金属箔、紙等が用いられる。本発明による多層シーラントは、DSC測定によるフィルム融点より低融点および高融点の成分が極めて少ないLLDPEをシール層の原料樹脂に用いるため、優れた耐衝撃性を有する。」 ・ 「【0032】実施例1 単一活性点触媒を用いた重合により得られたLLDPE(密度=0.902g/cm3、メルトインデックス(MI)=1g/10分、DSC測定による融点=103℃、結晶融解温度幅=17℃、MW /MN =2.4)をシール層用樹脂に、重合活性点が複数ある触媒を用いた重合によって得られ、炭素数8のα-オレフィンとエチレンとの共重合体であるLLDPE(密度=0.920g/cm3、MI=2g/10分、DSC測定による融点=110℃および123℃、結晶融解温度幅=26℃)を基材層用樹脂にそれぞれ用い、インフレーション成形機を用いて共押出法によって成膜をし、シール層と基材層からなるシーラントフィルムを得た。層厚比はシール層/基材層=1/1とした。」 (イ)LLDPEは、石油由来のエチレンと石油由来のα-オレフィンとを重合したことにより得たものであることの技術常識を勘案すると、甲2に記載されたLLDPEの原料は、石油由来のエチレン及び石油由来のα-オレフィンであって、両者が単一活性点触媒を用いた重合法により共重合することでLLDPEが得られたものであると認められる。 以上を踏まえ、特に請求項3でシール層が基材層の片面に形成されている場合に着目すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認めることができる。 (甲2発明) 基材層と、その少なくとも片面に積層されたシール層とからなる多層シーラントフィルムと、前記多層シーラントフィルムの該基材層の非シール面に積層された補強層と、を備え、 該基材層は、炭素数6未満のα-オレフィンとエチレンとの共重合体でありかつ密度0.910~0.930g/cm3を有する直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなり、 該シール層は、密度が0.885~0.920g/cm3の範囲にあり、重量平均分子量/数平均分子量の値が1.5~3であり、示差走査熱量計を用いて測定した結晶融解温度において、結晶融解ピークが単一であり、かつフィルムの全結晶が融解し始めてからし終るまでの温度幅が20℃以内である直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂からなり、 基材層とシール層の厚み比が2/1~1/10である、複合包装材。 (ウ)対比・判断 本件発明2と甲2発明を対比すると、両発明は、以下の点で相違する。 (相違点b)本件発明2は、「ヒートシール性フィルム」が「外層と、中間層と、内層とを有する多層構成」であって、中間層が「植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとが気相重合法により共重合された植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による層からなり」、「該植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度が80~100%未満のエチレン-α-オレフィン共重合体」であり、外層と内層が「石油由来ポリエチレン系樹脂」からなるのに対して、甲2発明は、ヒートシール性フィルム(シール層)は、炭素数6未満のα-オレフィンとエチレンとの共重合体である直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂の基材層と直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂のシール層からなる点。 相違点bにつき検討する。まず、甲2発明において、ヒートシール性フィルム(基材層及びシール層とからなる多層シーラントフィルム)を三層構成に変えることが当業者にとって容易に動機付けられることではない。 次に、仮にそのようなことが動機付けられたとしても、甲3、甲4等を考慮しても、中間層、外層、内層の構成を本件発明2のように限定することが当業者にとって容易に採用し得たとはいえない。 したがって、本件発明2は、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものではない。 また、本件発明3、さらに、本件発明5は、いずれも、本件発明2の発明特定事項を全て含むものであるから、これらも、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものとはいえない。 ウ.以上のとおりであるから、本件発明1~5は、甲1発明又は甲2発明の存在を根拠として特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではなく、それらに係る特許が特許法第113条第2号に該当することを理由として取り消すことができない。 (2)新規事項について ア.特許異議申立書において、申立人は、平成31年2月15日付け手続補正書により、特許請求の範囲に加えられた「請求項2」は、本件特許出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件特許出願当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内のものではない旨主張するところ、当該請求項2には、次のように記載されている(本件発明2と同じ)。 「【請求項2】 少なくとも基材フィルムと、ヒートシール性フィルムからなる包装材用積層フィルムであって、 該ヒートシール性フィルムは、外層と、中間層と、内層とを有する多層構成であり、 該中間層は、植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとが気相重合法により共重合された植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による層からなり、 該外層と該内層は、石油由来ポリエチレン系樹脂からなり、 該植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂は、放射性炭素年代測定14Cの測定値から算定するバイオマス度が80~100%未満のエチレン-α-オレフィン共重合体であることを特徴とする包装材用積層フィルム。」 イ.この請求項2の記載には、「該ヒートシール性フィルムは、外層と、中間層と、内層とを有する多層構成であり、」という発明特定事項とともに「該中間層は、植物由来エチレンと石油由来α-オレフィンとが気相重合法により共重合された植物由来の直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂による層からなり、」「該外層と該内層は、石油由来ポリエチレン系樹脂からなり、」という発明特定事項が含まれている。 これらの発明特定事項からすれば、請求項2に係る包装材用積層フィルムのヒートシール性フィルムは、「多層構成」とされるものの、その構成は、三層構成に特定されたものである。 本件特許出願当初明細書等には、実施例3、4として図4、5を用いて請求項2の発明特定事項と同様に三層構成とされたヒートシール性フィルムが記載されていた。 そうすると、請求項2の記載事項は、本件特許出願当初明細書等に記載された事項の範囲内のものといえる。 したがって、本件特許は、特許法第17条の3に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、同法第113条第1項に該当するものではない。 第6 むすび 請求項1、4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 請求項2、3、5に係る特許は、当審が通知した取消理由又は特許異議の申立ての理由によって取り消すことはできない。また、他に請求項2、3、5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。

J-PlatPat 審決検索を開く
2020-700683

番号・当事者・条文・審決分類・商標の称呼が一致(または近い)審決を機械的に集めた候補です。判断内容は各審決の本文でご確認ください。

同じ当事者の審決1,237件(土田 裕介、大日本印刷株式会社)
  • 2023-701055異議申立 / 2025-11-27 / 請求成立(取消)ポリオレフィン樹脂フィルム
    同じ当事者: 土田 裕介、大日本印刷株式会社
  • 2021-700934異議申立 / 2024-10-29 / 訂正認容植物由来ポリエチレンを用いた包装材用シーラントフィルム、包装材用積層フィルム、お…
    同じ当事者: 土田 裕介、大日本印刷株式会社
  • 2023-700212異議申立 / 2024-03-06 / 訂正認容植物由来ポリエチレンを用いた包装材用シーラントフィルム、包装材用積層フィルム、お…
    同じ当事者: 土田 裕介、大日本印刷株式会社
  • 2020-700906異議申立 / 2023-06-23 / 訂正認容植物由来ポリエチレンを用いた包装材用シーラントフィルム、包装材用積層フィルム、お…
    同じ当事者: 土田 裕介、大日本印刷株式会社
  • 2021-700696異議申立 / 2023-05-23 / 請求成立(取消)バイオマス由来の樹脂層を備えた積層体
    同じ当事者: 土田 裕介、大日本印刷株式会社
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,348件(113・B65D、121・B65D、55・B65D)
  • 2020-700906異議申立 / 2023-06-23 / 訂正認容植物由来ポリエチレンを用いた包装材用シーラントフィルム、包装材用積層フィルム、お…
    共通の審決分類: 113・B65D、121・B65D、55・B65D
  • 2021-700241異議申立 / 2022-08-02 / 訂正認容噴出器
    共通の審決分類: 113・B65D、121・B65D、55・B65D
  • 2018-700520異議申立 / 2019-08-06 / 訂正認容缶体の製造方法、印刷装置、および、飲料用缶
    共通の審決分類: 113・B65D、121・B65D、55・B65D
  • 2018-700374異議申立 / 2019-06-05 / 却下パウチ
    共通の審決分類: 113・B65D、121・B65D、55・B65D
  • 2018-700229異議申立 / 2019-03-27 / 請求成立(取消)植物由来ポリエチレンを用いた包装材用シーラントフィルム、包装材用積層フィルム、お…
    共通の審決分類: 113・B65D、121・B65D、55・B65D

メモ・タグ(非公開)

あなただけに表示されます。審決本文の公開範囲は変わりません。

メモとタグは Pro の機能です。ログイン/Proでメモを保存