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特許異議申立

2025-700255

カバーテープおよび電子部品包装体

審判番号
2025-700255
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-167983
登録番号
7544680
請求日
2025年02月28日
審決日
2026年01月29日
公報発行日
2026年05月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】住友ベークライト株式会社
  • 【権利者代理人】速水 進治
  • 【異議申立人】北野 好人
審判長/審判官
  • 審判長 神山 茂樹
  • 審判官 長清 吉範
  • 審判官 稲葉 大紀
分類
P1651.113-YAA(B65D) / P1651.121-YAA(B65D)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7544680号発明「カバーテープおよび電子部品包装体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7544680号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 特許第7544680号の請求項1~6、8~10に係る特許を維持する。 特許第7544680号の請求項7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7544680号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和2年9月1日(優先権主張 令和元年11月15日)に出願した特願2020-146683号の一部を令和3年10月13日に新たな特許出願としたものであって、令和6年8月26日に特許権の設定登録がされ、令和6年9月3日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和7年 2月28日 :特許異議申立人北野好人(以下「申立人」という。)による請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立て 令和7年 4月24日付け:取消理由通知書 令和7年 6月20日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和7年 7月25日 :申立人による意見書の提出 令和7年 9月 4日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和7年11月10日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和7年12月19日 :申立人による意見書の提出(以下「意見書」という。) なお、令和7年6月20日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 訂正請求書(以下、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7544680号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~10について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は当審において訂正箇所に付したものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「前記シーラント層は、以下の成分(A)、(B)を含むシーラント層形成用の樹脂組成物から形成され、 (A)スチレン系樹脂 (B)ポリ(メタ)アクリル酸誘導体 成分(A)中のスチレン含有率は15質量%以上である、」とあるのを、 「前記シーラント層は、以下の成分(A)、(B)及び(C)を含むシーラント層形成用の樹脂組成物から形成され、 (A)スチレン系樹脂 (B)ポリ(メタ)アクリル酸誘導体 (C)帯電防止剤 成分(A)中のスチレン含有率は15質量%以上であり、 成分(C)は金属フィラーであって、含有量が前記シーラント層全体に対して、10質量%以上である、」に訂正する。 (請求項1の記載を引用する請求項2~6、8~10も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項8に 「請求項1乃至7いずれか1項に記載のカバーテープ。」とあるのを、 「請求項1乃至6いずれか1項に記載のカバーテープ。」に訂正する。 (請求項8の記載を引用する請求項9、10も同様に訂正する。) (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項9に 「(A)スチレン系樹脂の含有量は、前記シーラント層形成用の樹脂組成物100質量%に対し、3.38質量%以上90質量%以下である、」とあるのを、 「(A)スチレン系樹脂の含有量は、前記シーラント層形成用の樹脂組成物100質量%に対し、3.38質量%以上80質量%以下である、」に訂正する。 (請求項9の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。) (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項9に 「請求項1乃至8いずれか1項に記載のカバーテープ。」とあるのを、 「請求項1乃至6、及び8いずれか1項に記載のカバーテープ。」に訂正する。 (請求項9の記載を引用する請求項10も同様に訂正する。) (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項10に 「請求項1乃至9いずれか1項に記載のカバーテープと、」とあるのを、 「請求項1乃至6、8及び9いずれか1項に記載のカバーテープと、」に訂正する。 (7)一群の請求項について 訂正前の請求項1~10は、請求項2~10が本件訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるところ、請求項2~10は訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~10〕について請求されたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1 訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載のシーラント層形成用の樹脂組成物が帯電防止剤を含有し、当該帯電防止剤が金属フィラーであって、シーラント層全体に対して10質量%以上含有することを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1は、本件明細書の【0035】、【0037】、【0038】の記載に基づく訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。 さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (2)訂正事項2 訂正事項2は、請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的するものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (3)訂正事項3、5、6 訂正事項3、5、6は、本件訂正前の請求項8~10について、請求項7が削除されたことに伴い引用する請求項の数を減少させるものであり、また、削除された請求項7を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 (4)訂正事項4 訂正事項4は、訂正前の請求項9に記載のスチレン系樹脂の含有量の数値範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項4は、本件明細書の【0027】の記載に基づく訂正であるから、新規事項の追加に該当しない。 さらに、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。 3 小括 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1~6、8~10に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6、8~10に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 基材層と、中間層と、シーラント層とがこの順に積層し、当該シーラント層によりキャリアテープをシールするために用いられる、カバーテープであって、 前記シーラント層の厚み(μm)は、0.01~5μmであって、かつ前記カバーテープ全体の厚み(μm)に対して、0.001~0.03であって、 前記シーラント層は、以下の成分(A)、(B)及び(C)を含むシーラント層形成用の樹脂組成物から形成され、 (A)スチレン系樹脂 (B)ポリ(メタ)アクリル酸誘導体 (C)帯電防止剤 成分(A)中のスチレン含有率は15質量%以上であり、 成分(C)は金属フィラーであって、含有量が前記シーラント層全体に対して、10質量%以上である、カバーテープ。 【請求項2】 成分(A)が、(A-1)スチレン系ポリマーまたは(A-2)スチレン系オリゴマーである、請求項1に記載のカバーテープ。 【請求項3】 成分(A-1)が、スチレン-オレフィン共重合体である、請求項2に記載のカバーテープ。 【請求項4】 成分(B)が、以下の成分(B-1)、(B-2)およびこれらのうち少なくとも一方を用いた共重合体である、請求項1または2に記載のカバーテープ。 (B-1)アクリル酸またはメタクリル酸 (B-2)(メタ)アクリル酸エステル 【請求項5】 成分(B-2)が、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、および(メタ)アクリル酸エチルヘキシルの中から選ばれる1種または2種以上である、請求項4に記載のカバーテープ。 【請求項6】 成分(B)の含有量に対する、成分(A)の含有量[(A)/(B)]が、0.015以上である、請求項1乃至5いずれか1項に記載のカバーテープ。」 「【請求項8】 前記シーラント層の前記中間層側の面上の任意の位置に、さらに補強層を含有する、請求項1乃至6いずれか1項に記載のカバーテープ。 【請求項9】 (A)スチレン系樹脂の含有量は、前記シーラント層形成用の樹脂組成物100質量%に対し、3.38質量%以上80質量%以下である、請求項1乃至6、及び8いずれか1項に記載のカバーテープ。 【請求項10】 電子部品が格納されたキャリアテープと、 当該キャリアテープ上に前記シーラント層よりシールされた請求項1乃至6、8及び9いずれか1項に記載のカバーテープと、 を備える電子部品包装体。」 第4 取消理由通知(決定の予告)について 1 取消理由の概要 当審において令和7年9月4日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。 理由1(新規性)本件特許の請求項1~6に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 理由2(進歩性)本件特許の請求項1~10に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 記 (1)請求項及び引用文献の関係 (申立人が提出した甲○号証を以下「甲○」という。) 請求項1~6 :甲1 請求項7 :甲1、周知技術 請求項8~10 :甲1、甲8、周知技術 (2)引用文献一覧 甲1:国際公開第2010/055804号 甲8:特開平8-258888号公報 甲4:特開2016-182989号公報(周知技術を示す文献) 甲5:特開2019-64640号公報(周知技術を示す文献) 甲6:特開2016-104641号公報(周知技術を示す文献) 甲7:特開2015-127125号公報(周知技術を示す文献) 2 当審における判断 当審合議体は以下のとおり、上記取消理由で通知した取消理由1、2によって、本件発明1~6、8~10に係る発明は取り消されるべきものではないと判断する。 (1)引用文献一覧 申立人が、特許異議申立書とともに提出した甲1~甲11は、次のとおりである。 甲1:国際公開第2010/055804号 甲2:特開2013-180792号公報 甲3:特開2018-118766号公報 甲4:特開2016-182989号公報 甲5:特開2019-64640号公報 甲6:特開2016-104641号公報 甲7:特開2015-127125号公報 甲8:特開平8-258888号公報 甲9:特開2015-20750号公報 甲10:特開2014-31197号公報 甲11:特許第3241220号公報 (2)引用文献の記載、発明 ア 甲1について (ア)甲1の記載 甲1には以下の記載がある。なお、下線は当審において付したものであり、「・・・」は省略を示す。以下同様。 「[0004] このため静電気障害を防止することを目的とした種々のカバーテープが検討されている。例えば、特許第3241220公報(特許文献1)では、テーピング包装体における静電気の帯電防止手段として、キャリアテープ及び/又はカバーテープ中に導電性カーボン粒子、金属酸化物等の導電粉、金属微粒子を練り込んだり塗布することが行われている。カバーテープの場合、透明性を確保する点から、そのヒートシール層に金属酸化物(酸化錫、酸化亜鉛等)を混合するのが一般的である。 [0005] また、特開2005-178073号公報(特許文献2)では、基材層とヒートシール層の間に電荷移動層を設け、カバーテープ表面に静電気が帯電することを防止する方法が提案されている。」 「[0008] しかしながら、特許文献1および2に記載されている帯電防止手段は、発生した静電気を、基材表面又はヒートシール層表面を通して大気中に逃がすことを意図したものであり、剥離帯電による静電気の発生そのものを抑制するものではない。このため、実装工程における静電気障害を、十分に避けることができない場合がある。 [0009] また、特許文献1記載のカバーテープでは、ヒートシール層に前記のような金属酸化物等の導電粉を多量に均一に分散させることは容易な事ではなく、分散不良を生じることがあり、キャリアテープにカバーテープをシールした際に剥離方向に沿った剥離強度の差(以下、単に「レンジ」という)が大きくなってしまう。剥離強度のレンジが大きいと、カバーテープを剥離する際にキャリアテープが激しく振動して、キャリアテープのエンボス部から電子部品が飛び出したり、電子部品がキャリアテープやカバーテープと接触して、破損、劣化、汚染が生じるおそれがある。」 「[0047] 次に、キャリアテープ11からカバーテープ1を剥離する場合の剥離形態を図3を参照しながら説明する。先ず、図3Aおよび図3Bに示されるように、例えばエンボス部12を備えたキャリアテープ11に、カバーテープ1が熱融着される。この熱融着は、図2のヒートシール領域Hにおいて行われる。カバーテープ1のヒートシール層6は、(a)アクリル樹脂からなる熱可塑性樹脂成分からなる島領域7と、(b)スチレン-共役ジエン共重合体あるいはその水素添加樹脂からなる海領域8とから構成される海島構造を有すことから、カバーテープ1は、キャリアテープ11に対して、ヒートシール性も剥離帯電特性も異なる二種類の領域で接着する。 [0048] カバーテープ1をキャリアテープ11から剥離する場合、図3Cに示すように、アクリル樹脂からなる島領域7のヒートシール性が比較的高いため、島領域7では電荷移動層5と中間層4との間で層間剥離が生じ、ヒートシール層6が電荷移動層5ごとキャリアテープ側に付着したまま残存する。 一方、海領域8に該当する部位では、海領域8のヒートシール性が比較的小さいため、キャリアテープ11と海領域8との間で界面剥離が生じ、ヒートシール層6がカバーテープ1とともにキャリアテープ11から剥離する。 [0049] このため、カバーテープ1の剥離に必要とされる力、すなわち剥離強度を、ヒートシール層6における海と島の構成比率、すなわち(a)アクリル樹脂からなる熱可塑性樹脂成分と、(b)スチレン-共役ジエン共重合体あるいはその水素添加樹脂との配合比率を変更すること、並びに、電荷移動層5の酸変性比率を変更することで容易に調節することが可能である。・・・ [0050] また、この剥離形態によれば、帯電列で最も正極に位置するアクリル樹脂からなるヒートシール層6の島領域7が電荷移動層またはキャリアテープ11から剥離することがないため剥離帯電を小さく抑えることができる。また、この島領域7はヒートシール層6内において海領域8と島領域7との界面で剥離するが、剥離の際に擦れる面積が十分に小さいことから、この剥離による静電気の発生量は極めて低い。このため、カバーテープ1をキャリアテープ11から剥離する際の静電気の発生を抑制することができる。」 「[0052] 実施例1 帯電防止処理が施された二軸延伸PETフィルム(東洋紡社製「T6140」、厚さ12μm)の片面に乾燥後の厚みが3μmとなるようにエステル系接着剤を塗布して乾燥固化させた後、中間層として直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(フタムラ化学社製「LL-UL」、厚さ40μm)をドライラミネートさせ、フィルム状物を得た。次に、上記フィルム状物の直鎖状低密度ポリエチレンフィルム表面に対してコロナ処理機により易接着処理を施した後、電荷移動層として無水マレイン酸により変性されたエチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)樹脂6質量部に対して一次粒子の質量平均粒子径が0.008μmの酸化錫94質量部を混合した水溶液を乾燥後の厚みが0.4μmとなるようグラビアコート法により塗布した。前記酸変性ポリオレフィンは組成樹脂100質量部に対する酸変性比率が10質量部のものを用いた。更にヒートシール層として、メタクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル共重合体「ダイヤナール BR-106」(三菱レイヨン社製/酸価:3.5mgKOH/g)30質量部とSEBS共重合体「タフテック H1141」(旭化成ケミカルズ社製/St比率:30質量%)70質量部に対して、一次粒子の質量平均粒子径が0.1μmのシリカ粉末を10質量部混合したものをトルエンに溶解させ、乾燥後の厚みが1.0μmとなるようにグラビアコート法により塗布して、カバーテープとなる積層フィルムを作製した。」 「[図1] [図:0001435182000001.jpg] 」 「[図3] [図:0001435182000002.jpg] 」 (イ)甲1に記載された発明 上記(ア)の記載のうち、特に実施例1について着目すると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「帯電防止処理が施された二軸延伸PETフィルム(東洋紡社製「T6140」、厚さ12μm)の片面に乾燥後の厚みが3μmとなるようにエステル系接着剤を塗布して乾燥固化させた後、中間層として直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(フタムラ化学社製「LL-UL」、厚さ40μm)をドライラミネートさせ、フィルム状物を得、 次に、上記フィルム状物の直鎖状低密度ポリエチレンフィルム表面に対してコロナ処理機により易接着処理を施した後、電荷移動層として無水マレイン酸により変性されたエチレン-アクリル酸エチル共重合体(EEA)樹脂6質量部に対して一次粒子の質量平均粒子径が0.008μmの酸化錫94質量部を混合した水溶液を乾燥後の厚みが0.4μmとなるようグラビアコート法により塗布し、 更にヒートシール層として、メタクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル共重合体「ダイヤナール BR-106」(三菱レイヨン社製/酸価:3.5mgKOH/g)30質量部とSEBS共重合体「タフテック H1141」(旭化成ケミカルズ社製/St比率:30質量%)70質量部に対して、一次粒子の質量平均粒子径が0.1μmのシリカ粉末を10質量部混合したものをトルエンに溶解させ、乾燥後の厚みが1.0μmとなるようにグラビアコート法により塗布して作製した、 キャリアテープをヒートシールする、カバーテープとなる積層フィルム。」 イ 周知技術A (ア)甲2の記載 「【0001】 本発明は、チップ型電子部品等を保管、搬送する包装体に使用されるエンボスキャリアテープの電子部品を収納する収納部の開口面を、熱シールにて被覆するチップ型電子部品包装用カバーテープに関する。」 「【0006】 また、リール状に巻かれたチップ型電子部品の包装体が、搬送される際に発生する振動により、カバーテープ内側と電子部品とが接触し摩擦することで発生する静電気、或いはカバーテープを剥離する際に発生する静電気により電子部品が帯電し、カバーテープに付着して飛び出してしまう問題がある。」 「【0010】 本発明は以上の点に着目し成されたもので、凝集破壊タイプのカバーテープの構造が、帯電防止剤を含む帯電防止層、透明な二軸延伸プラスチックフィルムの基材層、基材層と中間層の積層強度を向上させるための層間接着層、熱及び圧力に対するクッション機能と耐引裂性を向上させた中間層、及び透明性を有する熱可塑性樹脂に導電性徴粉末及び真球状ポリマー微粒子が均一に分散された導電性熱接着層のシール層からなる五層構造を備え、ピール速度が3000mm/分の高速剥離にも使用可能なチップ型電子部品包装用カバーテープを提供することを目的とする。」 (イ)甲8の記載 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はチップ型電子部品の保管、輸送、装着に際し、チップ型表面実装用電子部品を汚染から保護し、電子回路基板に実装するために整列させ、取り出せる機能を有する包装体のうち、収納ポケットを形成したプラスチック製エンボスキャリアテープに熱シールされるカバーテープに関するものである。」 「【0009】且つ、接着剤中に酸化錫、酸化亜鉛のいずれかの導電性微粉末が均一に分散されており、その際、製膜後の接着層の表面抵抗値は少なくとも1013Ω/■以下が必要であり、更に好ましくは106Ω/■~1010Ω/■の範囲が良い。1013Ω/■より大きくなると、静電効果が極端に悪くなり目的とする性能が得られない。・・・」 (ウ) 周知技術 上記(ア)、(イ)を参照すると、以下の事項は本件出願当時において周知の技術(以下「周知技術A」という。)であったといえる。 「電子部品包装用カバーテープのシーラント層に導電性の帯電防止剤を含有させること。」 ウ 甲8について (ア)甲8の記載 甲8には以下の記載がある。 「【請求項1】 チップ型電子部品を収納する収納ポケットを連続的に形成したプラスチック製キャリアテープに熱シールしうるカバーテープであって、該カバーテープは、外層がポリエステル、ポリプロピレンのいずれかである二軸延伸フィルムであり、中間層が引裂強度(JIS K 7128)が100kg/cm以上、引張衝撃強度(ASTM D 1822)が100kg-cm/cm2以上、曇度(JIS K 7105)が15%以下であるエチレン-αオレフィン共重合体であって、接着層がプラスチック製キャリアテープに熱シールしうるポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、エチレンビニルアセテート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂のいずれか、又は、これらの組合せによる接着剤であって、その接着剤中に酸化錫、酸化亜鉛のいずれかの導電性微粉末を分散させてあり、導電性微粉末の添加量が接着剤のベース樹脂100重量部に対して10~1000重量部であり、接着層の表面抵抗値が1013Ω/■以下であり、該カバーテープの接着層と該キャリアテープのシール面の接着強度が該カバーテープの中間層と接着層の層間密着強度よりも大きく該カバーテープの中間層と接着層と層間密着強度がシール幅1mm当り10~130grであり、該カバーテープの全光線透過率が70%以上であり、引張衝撃強度が400kg-cm/cm2以上である表面実装用エンボスキャリアテープ用カバーテープ。」 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はチップ型電子部品の保管、輸送、装着に際し、チップ型表面実装用電子部品を汚染から保護し、電子回路基板に実装するために整列させ、取り出せる機能を有する包装体のうち、収納ポケットを形成したプラスチック製エンボスキャリアテープに熱シールされるカバーテープに関するものである。」 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】本発明は前述の様な問題を解決すべく、実装時にカバーテープを剥離する際テープ切れを完全に防ぎ、同時に低温シール性や透明性も損なわない機械的強度の優れたプラスチック製エンボスキャリアテープに熱シールされるカバーテープを提供するものである。」 「【0009】且つ、接着剤中に酸化錫、酸化亜鉛のいずれかの導電性微粉末が均一に分散されており、・・・その添加量は上記表面抵抗特性により接着剤のベース樹脂100重量部に対して10~1000重量部であり更に好ましくは100~300重量部が良い。10重量部より少ないと静電防止効果は発現せず、1000重量部より多いと接着剤への分散性が著しく悪くなり生産に適さない。・・・又、ヒートシール型接着剤の形成方法については溶融製膜法と溶液製膜法のどちらでも良いが好ましくは溶液製膜が導電性微粉末の分散性の点から望ましい。 【0010】又、カバーテープのシール-ピール過程において、まず、該カバーテープ1は該キャリアテープ6の両サイドに片方で1mm前後の幅でレール状に連続的にシールされる。(図3)・・・本発明の様に該カバーテープ1の接着層5と該キャリアテープ6のシール面の接着強度が該カバーテープ1の中間層4と接着層5の層間密着強度よりも大きいと、製膜された接着層5のうちシールされた部分のみがキャリアテープに残り(図4)、引き剥された後のカバーテープ(図5)は接着層5のヒートシールされた部分のみが脱落した形となるいはゆる転写剥離によりピールが行われる。即ち、ピールオフ強度は接着層5と中間層4との層間密着強度と対応するものとなっており、剥離面がカバーテープ内に設計されておりその層間密着強度をキャリアテープの材質に依らず設定できるため、該カバーテープと該キャリアテープのシール状態には影響を受けず安定したピールオフ強度が得られる。・・・」 「【0012】 【実施例】本発明の実施例を以下に示すがこれらの実施例によって本発明は何ら限定されるものではない。 《実施例1~7及び比較例1~5》表1及び表2に示した層構成のように外層に2軸延伸フィルム、その内側に中間層をラミネートしたものと、外層と中間層の間に更に耐引き裂き性、耐衝撃性に優れた延伸又は未延伸のフィルムをラミネートしたものを作製した。中間層の外層または耐引き裂き性、耐衝撃性に優れた層と接する側とは反対側にロールコーターにより接着層を膜厚2μmに溶液製膜した。尚、中間層の樹脂の密度、融点、フィルムの引き裂き強度、引張衝撃強度、曇度については表1及び表2に併せて示した。また接着層の後の( )内に導電性微粉末の種類と添加量を示す。添加量は接着層の熱可塑性樹脂 100重量部に対する量(重量部)である。・・・」 「【0015】 表2 [図:0001435182000003.jpg] 」 「【図3】 [図:0001435182000004.jpg] 」 「【図4】 [図:0001435182000005.jpg] 」 「【部5】 [図:0001435182000006.jpg] 」 (イ)甲8に記載された発明 上記(ア)の記載を参照し、特に実施例7に着目すると、甲8には以下の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されている。 「外層と、中間層と、接着層とがこの順に積層し、接着層によりキャリアテープに熱シールしうるカバーテープであって、 接着層の厚みは2μmであって、カバーテープ全体の厚みが70μm(=外層16μm+第2層12μm+中間層40μm+接着層2μm)であって、 接着層は、スチレン系樹脂、及び導電性微粉末を含み、 導電性微粉末はSnO2であり、その含有量が接着層の熱可塑性樹脂100重量部に対して400重量部であり、 シーラント層の中間層側の面上に第2層を含有する、カバーテープ。」 (3)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 <前提構成について> 甲1発明の「二軸延伸PETフィルム」、「中間層」、「ヒートシール層」、「キャリアテープをヒートシールする、カバーテープとなる積層フィルム」はそれぞれ、本件発明1の「基材層」、「中間層」、「シーラント層」、「シーラント層によりキャリアテープをシールするために用いられる、カバーテープ」に相当する。 甲1発明は、「二軸延伸PETフィルム・・・の片面に・・・エステル系接着剤を塗布して乾燥固化させた後、中間層として直鎖状低密度ポリエチレンフィルム・・・をドライラミネートさせ、・・・電荷移動層として・・・グラビアコート法により塗布し、更にヒートシール層として、・・・グラビアコート法により塗布して作製し」ているから、本件発明1の「基材層と、中間層と、シーラント層とがこの順に積層し」ている層構成を有している。 <ヒートシール層について> 甲1発明は、「ヒートシール層」の「乾燥後の厚みが1.0μm」であり、また、甲1発明の積層フィルムの総厚56.4μm(=12+3+40+0.4+1.0)に対するヒートシール層の厚みは約0.02(=1.0/56.4)と計算できるから、本件発明1の「前記シーラント層の厚み(μm)は、 0.01~5μmであって、かつ前記カバーテープ全体の厚み(μm)に対して、0.001~0.03であ」ることを満たす。 甲1発明の「SEBS共重合体「タフテック H1141」(旭化成ケミカルズ社製/St比率:30質量%)」は、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン共重合体であるから本件発明1の「(A)スチレン系樹脂」に相当するとともに、「St比率:30質量%」であるから本件発明1の「成分(A)中のスチレン含有率は15質量%以上である」ことも満たす。 甲1発明の「メタクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル共重合体「ダイヤナール BR-106」(三菱レイヨン社製/酸価:3.5mgKOH/g)」は、メタクリル酸ブチルとメタクリル酸メチルはいずれもメタクリル酸の誘導体であり、これらの共重合によって得られるポリマーはポリ(メタ)アクリル酸誘導体に分類されるから、本件発明1の「(B)ポリ(メタ)アクリル酸誘導体」に相当する。 甲1発明の「メタクリル酸ブチル/メタクリル酸メチル共重合体「ダイヤナール BR-106」(三菱レイヨン社製/酸価:3.5mgKOH/g)30質量部とSEBS共重合体「タフテック H1141」(旭化成ケミカルズ社製/St比率:30質量%)70質量部に対して、一次粒子の質量平均粒子径が0.1μmのシリカ粉末を10質量部混合したもの」は、本件発明1の「シーラント層形成用の樹脂組成物」に相当する。 以上を総合すると、本件発明1と甲1発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。 [一致点] 「基材層と、中間層と、シーラント層とがこの順に積層し、当該シーラント層によりキャリアテープをシールするために用いられる、カバーテープであって、 前記シーラント層の厚み(μm)は、0.01~5μmであって、かつ前記カバーテープ全体の厚み(μm)に対して、0.001~0.03であって、 前記シーラント層は、以下の成分(A)、(B)及び(C)を含むシーラント層形成用の樹脂組成物から形成され、 (A)スチレン系樹脂 (B)ポリ(メタ)アクリル酸誘導体 成分(A)中のスチレン含有率は15質量%以上である、カバーテープ。」 [相違点] シーラント層形成用の樹脂組成物について、本件発明1では、「金属フィラーであって、含有量が前記シーラント層全体に対して、10質量%以上である、」「(C)帯電防止剤」を含むのに対し、甲1発明では、かかる構成を有していない点。 イ 判断 甲1発明は、ヒートシール層に帯電防止手段としての金属酸化物等の導電粉を添加すると分散不良を生じて剥離強度の差(レンジ)が大きくなってしまい、カバーテープを剥離する際にキャリアテープが振動して電子部品が飛び出してしまうという課題([0004]、[0009])を前提に、ヒートシール層を、アクリル系樹脂からなる島領域と、スチレン系樹脂からなる海領域との海島構造として、それらの配合比率により剥離強度を調整するとともに剥離帯電量を抑制し、仮に静電気が発生してしまっても電荷移動層により除電する([0047]~[0049])ものである。 そうすると、上記(2)イで示したように「電子部品包装用カバーテープのシーラント層に導電性の帯電防止剤を含有させること」が周知技術であったとしても、静電気障害を、シーラント層を海島構造とすること及び電荷移動層を設けることにより解決している甲1発明に、甲1において分散不良が生じるとされている導電性の帯電防止剤をあえて適用することには阻害要因があるといえる。 そうすると、甲1発明に基づいて、相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。 ウ 申立人の主張について (ア)主張の概要 a 甲1の[0009]にはヒートシール層に金属酸化物を混合する場合に分散不良を生じることがある記載があるものの、甲8の【0009】には導電性粉末を均一に分散させることが記載されているから、甲1発明に、甲8に記載されているか又は周知技術である、カバーテープのシーラント層に導電性粉末を含ませる事項を適用することは当業者にとって容易である。(意見書の2~5ページ) b 甲8の実施例7に記載された発明(上記(2)ウで示した甲8発明)の接着層(シーラント層)として、静電気障害をより防止するために、甲1に記載されている、シーラント層をアクリル系樹脂とスチレン系樹脂から構成する事項を適用することは当業者にとって容易である。(意見書の5~10ぺージ) (イ)当審における判断 a 上記(ア)aの主張について 上記イで説示したとおり、甲1に周知技術Aを適用することには阻害要因がある。よって申立人の当該主張は採用できない。 b 上記主張(ア)bの主張について 甲8の「又、カバーテープのシール-ピール過程において、まず、該カバーテープ1は該キャリアテープ6の両サイドに片方で1mm前後の幅でレール状に連続的にシールされる。(図3)・・・本発明の様に該カバーテープ1の接着層5と該キャリアテープ6のシール面の接着強度が該カバーテープ1の中間層4と接着層5の層間密着強度よりも大きいと、製膜された接着層5のうちシールされた部分のみがキャリアテープに残り(図4)、引き剥された後のカバーテープ(図5)は接着層5のヒートシールされた部分のみが脱落した形となるいはゆる転写剥離によりピールが行われる。即ち、ピールオフ強度は接着層5と中間層4との層間密着強度と対応するものとなっており、剥離面がカバーテープ内に設計されておりその層間密着強度をキャリアテープの材質に依らず設定できるため、該カバーテープと該キャリアテープのシール状態には影響を受けず安定したピールオフ強度が得られる。・・・」(【0010】)との記載及び【図3】~【図5】を踏まえると、甲8は、接着層5のレール状のシール領域の全体において、中間層4と接着層5の間で層間剥離させることで安定した剥離強度を得るものである。 一方、甲1は、[0047]~[0049]、[図1]、[図3]の記載を踏まえると、カバーテープ1をキャリアテープ11から剥離する際に、ヒートシール層6を構成する海島構造のうち、アクリル系樹脂からなる島領域7がキャリアテープ11側に残り、スチレン系樹脂からなる海領域8がカバーテープ側に残り、これら島領域7と海領域8の割合を調整することで、カバーテープ1の剥離強度を調整するものである。 そうすると、甲8発明に、甲1に記載されたヒートシール層6を海島構造とする事項を適用することには阻害要因があるといえる。よって、申立人の当該主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~6、8~10について 本件発明2~6、8~10は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記(3)と同様の理由により、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由の概要 申立理由1(新規性)本件特許の請求項9、10に係る発明は、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 2 当審における判断 上記第4の2(3)アで示したとおり、本件発明1と甲1発明には実質的な相違点があるから、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明である本件発明9、10は、甲1に記載された発明ではない。 よって、上記申立理由1には理由がない。 第6 むすび 以上のとおり、請求項1~6、8~10に係る特許は、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項1~6、8~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項7に係る特許についての特許異議の申立ては、本件訂正により申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700255

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