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特許異議申立

2022-700038

断熱容器用積層体、断熱容器、断熱容器用積層体の製造方法、および断熱容器の製造方法

審判番号
2022-700038
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2017-192023外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6922630
請求日
2022年01月17日
審決日
2023年03月15日
公報発行日
2023年08月25日
結論
請求成立(取消)
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-ZAA(B65D) / P1651.121-ZAA(B65D) / P1651.537-ZAA(B65D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第113条第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6922630号発明「断熱容器用積層体、断熱容器、断熱容器用積層体の製造方法、および断熱容器の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6922630号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、〔9~14〕について訂正することを認める。 特許第6922630号の請求項1~4、7、8に係る特許を取り消す。 特許第6922630号の請求項5、6、9~14に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6922630号の請求項1~14に係る特許についての出願は、平成29年9月29日の出願であって、令和3年8月2日にその特許権の設定登録がされ、令和3年8月18日に特許掲載公報が発行された。 本件の特許異議の申立ての手続の経緯の概要は、次のとおりである。 令和4年 1月17日 :特許異議申立人福島増男(以下「申立人1」という。)による請求項1~14に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「申立1」という。) 令和4年 2月16日 :特許異議申立人赤松智信(以下「申立人2」という。)による請求項1~14に係る特許に対する特許異議の申立て(以下「申立2」という。) 令和4年 5月13日付け:取消理由通知書 令和4年 7月15日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和4年 8月29日付け:訂正拒絶理由通知書 令和4年 9月29日 :特許権者による意見書の提出 令和4年10月26日付け:取消理由通知書(決定の予告) 令和4年12月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出(以下、この訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。) 令和5年 2月 6日 :申立人2による意見書の提出 令和5年 2月 8日 :申立人1による意見書の提出 令和4年7月15日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正の適否 1 本件訂正の内容 本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。 (1)訂正事項1 本件訂正前の請求項1に記載された「前記カバー層は、前記基材層を構成する紙から発生する水蒸気によって発泡可能な熱可塑性樹脂から構成されており、」を、 「前記カバー層は、前記基材層を構成する紙から発生する水蒸気によって発泡可能な熱可塑性樹脂から構成されており、 前記カバー層は、発泡しており、」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4、7、8も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 本件訂正前の請求項1に記載された「前記発泡抑制層は、発泡抑制層用バインダーを含み、前記発泡抑制層用バインダーは、ウレタン樹脂を含まないか、ウレタン樹脂を含む場合であってもその割合が発泡抑制層の全固形分の合計質量に対して18質量%未満であり、前記カバー層に対する追従性が低いことで前記カバー層の発泡を抑制する、 ことを特徴とする断熱容器用積層体。」を、 「前記発泡抑制層は、発泡抑制層用バインダーを含み、前記発泡抑制層用バインダーは、ウレタン樹脂を含まないか、ウレタン樹脂を含む場合であってもその割合が発泡抑制層の全固形分の合計質量に対して18質量%未満であり、前記カバー層に対する追従性が低いことで前記カバー層の発泡を抑制し、 前記発泡抑制層が前記ウレタン樹脂を含む場合、前記発泡抑制層の全固形分の合計質量に対する前記ウレタン樹脂の割合と、前記印刷層の全固形分の合計質量に対する前記ウレタン樹脂の割合との差が5質量%以上であり、 前記発泡抑制層がない部分のカバー層の厚みが、300μm以上であり、 前記発泡抑制層がある部分におけるカバー層の厚みと、前記発泡抑制層がない部分におけるカバー層の厚みの差が150μm以上である、ことを特徴とする断熱容器用積層体。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4、7、8も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 本件訂正前の請求項2に記載された「前記発泡抑制層用バインダーが、硝化綿樹脂、ビニル系共重合物、ポリアミド樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、ロジン系樹脂、ダイマー酸系樹脂、マレイン酸系樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、ブチラール樹脂および石油樹脂からなる群から選択される1または2以上である、」を、 「前記発泡抑制層用バインダーが、硝化綿樹脂、アクリル樹脂、および塩素化ポリプロピレン樹脂からなる群から選択される1または2以上である、」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3、4、7、8も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 本件訂正前の請求項5を削除する。 (5)訂正事項5 本件訂正前の請求項6を削除する。 (6)訂正事項6 本件訂正前の請求項7に記載された「少なくともその一部が前記請求項1~6のいずれか一項に記載の断熱容器用積層体によって構成されていることを特徴とする断熱容器。」を、 「少なくともその一部が前記請求項1~4のいずれか一項に記載の断熱容器用積層体によって構成されていることを特徴とする断熱容器。」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する。)。 (7)訂正事項7 本件訂正前の請求項8に記載された「少なくとも前記胴部は、前記請求項1~6のいずれか一項に記載の断熱容器用積層体によって構成されていることを特徴とする請求項7に記載の断熱容器。」を、 「少なくとも前記胴部は、前記請求項1~4のいずれか一項に記載の断熱容器用積層体によって構成されていることを特徴とする請求項7に記載の断熱容器。」に訂正する。 (8)訂正事項8 本件訂正前の請求項9を削除する。 (9)訂正事項9 本件訂正前の請求項10を削除する。 (10)訂正事項10 本件訂正前の請求項11を削除する。 (11)訂正事項11 本件訂正前の請求項12を削除する。 (12)訂正事項12 本件訂正前の請求項13を削除する。 (13)訂正事項13 本件訂正前の請求項14を削除する。 2 一群の請求項 本件訂正前の請求項1~8は、請求項2~8が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあり、本件訂正前の請求項9~14は、請求項10~14が、本件訂正前の請求項9の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~8〕、〔9~14〕について請求されたものである。 3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について (1)訂正事項1について 訂正事項1は、本件訂正前の「カバー層」について、「発泡しており」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項1は、本件特許の明細書の【0044】及び図面の【図2】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものである。 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、本件訂正前の「発泡抑制層」について、「前記発泡抑制層が前記ウレタン樹脂を含む場合、前記発泡抑制層の全固形分の合計質量に対する前記ウレタン樹脂の割合と、前記印刷層の全固形分の合計質量に対する前記ウレタン樹脂の割合との差が5質量%以上であり」と限定し、また、本件訂正前の「カバー層」について、「前記発泡抑制層がない部分のカバー層の厚みが、300μm以上であり、前記発泡抑制層がある部分におけるカバー層の厚みと、前記発泡抑制層がない部分におけるカバー層の厚みの差が150μm以上である」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項2は、本件特許の明細書の【0046】、【0070】、【0123】の記載に基づくものであるから、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 訂正事項2は、本件訂正前の請求項1に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、本件訂正前の「発泡抑制層用バインダー」について、択一的記載の要素を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項3は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。 訂正事項3は、本件訂正前の請求項2に係る発明の発明特定事項をさらに限定するものであり、また、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (4)訂正事項4、5、8~13について 訂正事項4、5、8~13は、それぞれ本件訂正前の請求項5、6、9~14を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (5)訂正事項6について 訂正事項6は、訂正事項4、5によって請求項5、6が削除されたことに伴い、本件訂正前の請求項7について、引用する請求項の数を減少させ、また、訂正事項4、5によって削除された請求項5、6を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項6は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (6)訂正事項7について 訂正事項7は、訂正事項4、5によって請求項5、6が削除されたことに伴い、本件訂正前の請求項8について、引用する請求項の数を減少させ、また、訂正事項4、5によって削除された請求項5、6を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項7は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 4 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項並びに第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕、〔9~14〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり本件訂正が認められたことから、本件特許の請求項1~4、7、8に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4、7、8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~4、7、8の記載は、次のとおりである。 【請求項1】 外面側から、カバー層、紙から構成される基材層、前記基材層を構成する紙から発生する水蒸気を遮断する水蒸気遮断層、を有するとともに、 前記カバー層の外面側表面の少なくとも一部には、印刷層を有し、 さらに、前記印刷層の外面側表面、前記印刷層と前記カバー層との間、および前記印刷層が形成されていない部分における前記カバー層の外側面表面、の少なくとも一箇所には、前記カバー層の発泡を抑制する発泡抑制層を有する、断熱容器用積層体であって、 前記カバー層は、前記基材層を構成する紙から発生する水蒸気によって発泡可能な熱可塑性樹脂から構成されており、 前記カバー層は、発泡しており、 前記印刷層は、印刷層用バインダーを含み、前記印刷層用バインダーは、ウレタン樹脂を含み、かつ印刷層の全固形分の合計質量に対する前記ウレタン樹脂の割合が18質量%以上であり、 前記発泡抑制層は、発泡抑制層用バインダーを含み、前記発泡抑制層用バインダーは、ウレタン樹脂を含まないか、ウレタン樹脂を含む場合であってもその割合が発泡抑制層の全固形分の合計質量に対して18質量%未満であり、前記カバー層に対する追従性が低いことで前記カバー層の発泡を抑制し、 前記発泡抑制層が前記ウレタン樹脂を含む場合、前記発泡抑制層の全固形分の合計質量に対する前記ウレタン樹脂の割合と、前記印刷層の全固形分の合計質量に対する前記ウレタン樹脂の割合との差が5質量%以上であり、 前記発泡抑制層がない部分のカバー層の厚みが、300μm以上であり、 前記発泡抑制層がある部分におけるカバー層の厚みと、前記発泡抑制層がない部分におけるカバー層の厚みの差が150μm以上である、ことを特徴とする断熱容器用積層体。 【請求項2】 前記発泡抑制層用バインダーが、硝化綿樹脂、アクリル樹脂、および塩素化ポリプロピレン樹脂からなる群から選択される1または2以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の断熱容器用積層体。 【請求項3】 前記発泡抑制層は、着色剤を含む、ことを特徴とする請求項1または2に記載の断熱容器用積層体。 【請求項4】 前記発泡可能な熱可塑性樹脂が、高圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン・α-オレフィン共重合体の何れかである、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の断熱容器用積層体。 【請求項7】 少なくともその一部が前記請求項1~4のいずれか一項に記載の断熱容器用積層体によって構成されていることを特徴とする断熱容器。 【請求項8】 胴部と底部を有し、 少なくとも前記胴部は、前記請求項1~4のいずれか一項に記載の断熱容器用積層体によって構成されていることを特徴とする請求項7に記載の断熱容器。 第4 取消理由の概要 当審において、請求項1~8に係る特許に対して、令和4年10月26日付け取消理由通知書(決定の予告)で通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 1 取消理由1(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が次の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (1)本件発明1の「印刷層」は、「印刷層用バインダーを含み、前記印刷層用バインダーは、ウレタン樹脂を含み、かつ印刷層の全固形分の合計質量に対する前記ウレタン樹脂の割合が18質量%以上」であるものの、当該発明特定事項では、「カバー層11Aが発泡状態となった際に当該カバー層11Aの発泡にうまく追従」しないものまで包含する。 (2)本件発明1の「発泡抑制層」の発泡を抑制する材料について、実施例を踏まえても、「硝化綿樹脂」、「アクリル樹脂」、「塩素化ポリプロピレン樹脂」以外の「発泡抑制層用バインダー」であっても課題が解決することが可能であることを、当業者が理解できるとはいえない。 (3)本件発明1では、「発泡抑制層」のウレタン樹脂の割合について、「発泡抑制層用バインダーを含み、前記発泡抑制層用バインダーは、ウレタン樹脂を含まないか、ウレタン樹脂を含む場合であってもその割合が発泡抑制層の全固形分の合計質量に対して18質量%未満」であると特定しているが、実施例を踏まえても、「18質量%」を境に課題が解決することが可能であることを、当業者が理解できるとはいえない。 (4)本件発明1は、「発泡抑制層がウレタン樹脂を18質量%未満の割合で含有する場合にあっては、前記印刷層に含まれるウレタン樹脂の割合との差が5質量%以上となっている」という課題を解決するために必要な構成を発明特定事項としておらず、課題を解決しないものまで包含する。 (5)本件発明5は、「前記印刷層とカバー層との間に表面層を有」し、かつ、「前記カバー層の外面側表面の少なくとも一部には、印刷層を有」するものであるが、このようなものについては本件特許の発明の詳細な説明に記載されていない。 (6)本件発明5は、「前記印刷層とカバー層との間に表面層を有」し、かつ、「前記印刷層の外面側表面、前記印刷層と前記カバー層との間、および前記印刷層が形成されていない部分における前記カバー層の外側面表面、の少なくとも一箇所には、前記カバー層の発泡を抑制する発泡抑制層を有する」ものであるが、このうち「前記印刷層とカバー層との間に表面層を有」し、かつ、「前記印刷層の外面側表面」に「前記カバー層の発泡を抑制する発泡抑制層を有する」ものについては、本件特許の発明の詳細な説明に記載されていない。 2 取消理由2(進歩性{取消理由3の明確性(ア)に係る判断}) 本件特許の請求項1~4、6~8に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3 取消理由3(明確性) 請求項1の「前記印刷層の外面側表面、前記印刷層と前記カバー層との間、および前記印刷層が形成されていない部分における前記カバー層の外側面表面、の少なくとも一箇所には、前記カバー層の発泡を抑制する発泡抑制層を有する」の記載について、(ア)請求項1に係る「断熱容器用積層体」が、「印刷層の外面側表面」、「印刷層とカバー層との間」及び「印刷層が形成されていない部分におけるカバー層の外側面表面」の全ての箇所を有しており、それらの「少なくとも一箇所」に「発泡抑制層」を有していること、あるいは(イ)請求項1に係る「断熱容器用積層体」が有する「発泡抑制層」が、「印刷層の外面側表面」、「印刷層とカバー層との間」及び「印刷層が形成されていない部分におけるカバー層の外側面表面」の三箇所のうち少なくともいずれかにあり、「断熱容器用積層体」が、前記三箇所のうち「発泡抑制層」が設けられない箇所を必ずしも有しているとは限らないことのいずれを意味するのかが不明であるから、本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 4 取消理由4(新規性、進歩性{取消理由3の明確性(イ)に係る判断}) 本件特許の請求項1、2、6に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 また、本件特許の請求項1~4、6~8に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> (以下、申立人1が提出した甲第1号証を「申立1の甲1」等という。) 引用文献1:特開2015-67337号公報(申立1の甲4、申立2の甲1) 引用文献2:国際公開第2017/73537号(申立1の甲1) 引用文献3:特開2009-190756号公報(申立1の甲7) 引用文献4:特開平11-147270号公報(申立1の甲2) 第5 当審の判断 1 取消理由3(明確性) 請求項1の「前記印刷層の外面側表面、前記印刷層と前記カバー層との間、および前記印刷層が形成されていない部分における前記カバー層の外側面表面、の少なくとも一箇所には、前記カバー層の発泡を抑制する発泡抑制層を有する」の記載は、「前記カバー層の発泡を抑制する発泡抑制層」が、「前記印刷層の外面側表面」、「前記印刷層と前記カバー層との間」、および「前記印刷層が形成されていない部分における前記カバー層の外側面表面」の三箇所のうち少なくともいずれかにあること、すなわち、上記第4の3における(イ)の場合を意味することは明らかである。 よって、本件発明1~4、7、8は明確である。 2 取消理由4(新規性、進歩性) (1)引用文献の記載及び引用発明 引用文献1には、次の記載がある。 「【0001】 本発明は、紙製容器及び該紙製容器の製造方法に関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 しかし、特許文献4に記載された発泡断熱性紙製容器にあっては、発泡断熱層を厚くするために発泡する低融点熱可塑性樹脂層の厚さを厚くすると大幅なコストアップにつながり、また、紙基材の水分量を高くすると発泡面を均一に平滑にすることが難しく、ブリスター状の大きな粒状の発泡(以下、過発泡という。)が発生し易くなり、外観が悪化するといった問題がある。 本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、発泡断熱層の厚さを厚くすることやそれに伴う輸送効率の悪化も無く、手に持ったときに熱さを感じさせ難くし、さらに過発泡による外観不良の発生を防止した紙製容器、及び該紙製容器の製造方法を提供する。」 「【0017】 図1に示すように、本実施形態の紙製容器20は、胴部1と底板部2とからなる容器本体3と、胴部1の外面側に設けられた、発泡部4a及び発泡抑制部4bからなる発泡断熱層4と、を有する容器である。発泡断熱層4は、発泡抑制インキ塗装部を有する熱可塑性樹脂層を加熱してなる。発泡抑制インキ塗装部中の樹脂成分が、熱可塑性樹脂層よりも耐熱性を有することにより、加熱の際、寸法膨張しにくい。そのため、加熱により、熱可塑性樹脂層の発泡抑制インキ塗装部以外の部分から発泡部4aが形成され、発泡抑制インキ塗装部から発泡抑制部4bが形成される。 そして、図3に示すように、発泡部4aの厚さL1に対する発泡抑制部4bの厚さL2の割合が25%以下である。係る割合は、後述する発泡抑制インキの発泡抑制率と逆相関する。・・・」 「【0025】 本実施形態において、発泡抑制インキ塗装部12は、樹脂、着色剤及び助剤を含有する。発泡抑制インキ塗装部12(図4参照。)は、乾燥状態で、ガラス転移点が30℃以上の樹脂を90重量%以上含有することが好ましい。本実施形態において、「乾燥状態」とは、熱可塑性樹脂層に塗布した発泡抑制インキ中の溶剤が蒸発した状態を意味する。乾燥状態の発泡抑制インキ塗装部12における、ガラス転移点が30℃以上の樹脂の割合は、90重量%以上が好ましく、92重量%以上がより好ましく、94重量%以上が更に好ましく、96重量%以上が特に好ましく、98重量%以上が最も好ましい。ガラス転移点が30℃以上の樹脂の割合が、90重量%以上の場合、発泡抑制効果が大きい。 即ち、乾燥状態の発泡抑制インキ塗装部12における、ガラス転移点が30℃未満の樹脂及び着色剤の割合は、10重量%未満が好ましく、8重量%未満がより好ましく、6重量%未満が更に好ましく、4重量%未満が特に好ましく、2重量%未満が最も好ましい。 【0026】 また、発泡抑制インキ塗装部12は、乾燥状態で、ガラス転移点が30℃以上の樹脂を含有することが好ましく、ガラス転移点が40℃以上の樹脂を含有することがより好ましく、ガラス転移点が50℃以上の樹脂を含有することが特に好ましい。 ガラス転移点が30℃以上の樹脂としては、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-酢酸ビニル-マレイン酸共重合体、UV硬化型樹脂、及びウレタン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも一種が挙げられる。 【0027】 ・・・上記アクリル系樹脂の重量平均分子量は、特に限定されないが、1万~15万が好ましく、2万~10万がより好ましく、4万~9.5万が特に好ましい。上記重量平均分子量が1万以上の場合、印刷インキの粘度が低くなりすぎず、印刷層のタック低減の効果が効率的に得られる。更に紙製容器を発泡させる工程でアクリル系樹脂の重量平均分子量が大きい方が、同じ物質であってもガラス転移点が高くなり、ガラス転移点を超えて軟化した際にも粘度または弾性率が高くなるので変形しにくく、発泡抑制効果が高くなる。・・・ 【0036】 これらガラス転移点が30℃以上の樹脂の中でも、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体または塩化ビニル-酢酸ビニル-マレイン酸共重合体が好ましく、酢酸ビニルの割合が20重量%以下の塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体または塩化ビニル-酢酸ビニル-マレイン酸共重合体がより好ましい。 【0037】 本実施形態において、発泡抑制インキ塗装部12は、着色剤を含有してもしなくてもよい。着色剤としては染料と顔料とがあり、顔料は無機系と有機系に分けられるがいずれのタイプの着色剤を使用しても問題ない。発泡抑制インキに含まれる樹脂は基材との十分な接着性を得るために乾燥状態で20重量%以上とすることが好ましい。ただし、外観上凹凸を見やすくするためには、発泡部と発泡抑制部で色が大きく違わないことが好ましく、そのためには発泡抑制インキは着色剤を含有しないかまたは乾燥状態で着色剤を30重量%以下含有することが好ましく、20重量%以下含有することが更に好ましく、10重量%以下が特に好ましい。 発泡抑制インキ部は、有色でも無色でもよい。無色又は淡色の場合、発泡部4a及び発泡抑制部4bの凹凸が見えやすくなる点から好ましい。また、有色であっても、寒色系の淡い青又は緑とする場合、凹凸が深く協調されて見えやすくなる点から好ましい。」 「【0044】 <紙製容器の製造方法> 本発明の紙製容器の製造方法は、 紙基材の一方の面に熱可塑性樹脂層を設ける工程Aと、 前記熱可塑性樹脂層の前記紙基材に接している面とは反対側の面の一部の上に、発泡抑制インキを塗布して発泡抑制インキ塗装部を形成する工程Bと、 前記発泡抑制インキ塗装部を有する熱可塑性樹脂層を加熱処理して、該熱可塑性樹脂層における前記発泡抑制インキ塗装部を設けていない部分を発泡させて、発泡部及び発泡抑制部を設ける工程Cと、を有し、 前記発泡抑制インキは、ガラス転移点が30℃以上の樹脂を7重量%以上含有する。 以下、本発明に係る紙製容器の実施の形態の一例を、図面を参照して詳細に説明する。 【0045】 工程Aは、紙基材7の一方の面に熱可塑性樹脂層を設ける工程である。容器本体3を構成する胴部1と底板部2で使用される紙基材7は、木材より得られた化学パルプ、機械パルプを主体とし、これにケナフ、竹等の非木材パルプを必要に応じて配合し、通常の抄紙工程により抄造して得ることができるがこれに限定されない。紙基材7の坪量は、容器本体3の製造上、また容器本体3の剛性上100~500g/m2の範囲であることが好ましいが、これに限定されない。 また含有水分は、後述する低融点熱可塑性樹脂層の必要な発泡量を確保するとともに過発泡の発生を防ぐため5~9重量%であることが好ましく、6~8重量%が好ましい。含有水分が9重量%以下の場合、紙基材に含まれる水分が加熱により蒸発して、軟化した熱可塑性樹脂層が水蒸気で紙基材の外側に過剰に押し出されて発泡する確率を効果的に抑制できる。そのため、本実施形態によれば、発泡部がブリスター状になり外観が悪化することを効果的に抑制できる。 紙基材は化学パルプを使用することが好ましい。化学パルプを使用することにより機械パルプを使用する場合と比較して、密度を高くしやすく、光を長時間浴びた場合または高温で長時間保管された場合に黄変を抑制することができ、更に強度が高くなることによりカップ成型時にトップカールを付与する際に破断しにくくなる。化学パルプの配合率は80重量%以上が好ましく、90重量%以上が更に好ましく、95重量%以上が最も好ましい。 【0046】 また、紙基材の密度は、0.7g/cm3以上であることが好ましく、0.75g/cm3以上であることがより好ましく、0.8g/cm3以上であることが特に好ましい。後記工程Bにおける加熱発泡工程では、紙基材7の水分が蒸発して熱可塑性樹脂層を外側に押し広げることにより発泡するが、紙基材の密度が0.7g/cm3以上の場合、紙基材の端面から水蒸気が逃げにくく、同じ坪量で密度の低い紙基材と比較して発泡厚さが大きくなるため好ましい。低密度紙基材は高密度紙基材と同じ発泡厚を得るために、坪量を大きくするため、材料を多く使う必要がある。一方、紙基材の密度が0.7g/cm3以上の場合、材料を多く使う必要がなく、コスト面でも優れている。」 「【0048】 工程Bは、低融点熱可塑性樹脂層8の紙基材7に接している面8aとは反対側の面8bの一部の上に、発泡抑制インキを塗布して発泡抑制インキ塗装部12を形成する工程である。 本実施形態において、紙基材7の一方の面7a側(外面側)に加熱により発泡する低融点熱可塑性樹脂を溶融押出法により20~100μmの範囲となるように積層して低融点熱可塑性樹脂層8を設けるとともに、他方の面7b側(内面側)に高融点熱可塑性樹脂を溶融押出法により15~60μmの範囲となるように積層して高融点熱可塑性樹脂層9を設けた胴部用加工紙10が形成される(図4参照。)。 【0049】 低融点熱可塑性樹脂としては、融点の低い低密度ポリエチレンが用いられ、また、高融点熱可塑性樹脂としては、融点の高い中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、トリメチルペンテン等が用いられる。 【0050】 紙基材の坪量が大きいと水分量も多くなるので低融点熱可塑性合成樹脂層をより多く発泡させることができる。紙基材の坪量が大きくて低融点熱可塑性合成樹脂層が厚ければ発泡厚さを厚くすることができる。紙基材の坪量が大きくて低融点熱可塑性合成樹脂層が薄ければ、発泡途中で樹脂厚さが薄くなりすぎて発泡セルが壊れやすくなり、外観が悪化するため、坪量の大きい紙基材と薄いラミネート層の組合せは好ましくない。一方、紙基材の坪量が小さくて低融点熱可塑性合成樹脂層が厚ければ、紙基材水分量が少ないので厚いラミネート層を十分に発泡させることができないため、不経済であり、坪量の小さい紙基材と厚いラミネート層の組合せは好ましくない。 そのため、紙基材の坪量Xg/m2と低融点熱可塑性合成樹脂のラミネート層の厚さYμmは、下記式(2)の関係で表され、Zの範囲が20以上60以下であることが好ましい。 【0051】 【数2】 Y=0.33X-Z (2) 【0052】 本実施形態において、低融点熱可塑性樹脂層8の面8bには、発泡を抑制しにくい低発泡抑制インキで全面べた印刷して発泡低抑制印刷層11を設けておくことが好ましい(図4参照。)。即ち、前記工程Aは、紙基材の一方の面に低融点熱可塑性樹脂層を設けた後、更に前記低融点熱可塑性樹脂層上に発泡低抑制印刷層を設ける工程であることが好ましい。 低融点熱可塑性樹脂層8の面8bに発泡低抑制印刷層11を設けておくと、低融点熱可塑性樹脂層8を発泡させたとき、発泡抑制インキ塗装部12がアンカーとなって、ブリスター状の過発泡の広がりを発泡抑制インキ塗装部で食い止めて外観の悪化を最小限に留めることができると共に、発泡低抑制印刷層11に斜め下方向に張力を加えることができることにより、低融点熱可塑性樹脂層8の過発泡を抑制するため好ましい。(図6参照。) 発泡抑制インキ塗装部がなく、発泡低抑制印刷層だけの場合には、横方向に張力が伝わるだけなので過発泡の広がりを抑制する効果が小さく、広範囲に過発泡が発生してしまう。 発泡低抑制印刷層11の厚さは0.5~10μmであることが好ましい。発泡低抑制印刷層11の厚さが0.5μm以上の場合、発泡部の厚さに対する発泡抑制率を75%以上とすることができると共に過発泡の圧力を効率よく分散・緩和させることができ、10μm以下の場合、材料の無駄とならず経済的である。 【0053】 発泡抑制部以外は低発泡抑制インキが塗装されていてもよい。発泡を抑制しないインクとしては、乾燥状態で、ガラス転移点が30℃未満の樹脂を20重量%以上含有することが好ましい。ガラス転移点が30℃未満の樹脂としてはポリアミド系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリプロピレン系等が挙げられるが、ガラス転移点が30℃未満のアクリル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、硝化綿等を使用してもよい。 【0054】 発泡低抑制印刷層11の面11aの一部に、低融点熱可塑性樹脂層8を発泡させた発泡断熱層4の表面に凹部5を形成する発泡抑制インキを塗布して発泡抑制インキ塗装部を設ける。 発泡抑制インキは、上述した乾燥状態の発泡抑制インキ塗装部の構成に溶剤を加えたものである。即ち、発泡抑制インキは、樹脂、着色剤、助剤、及び溶剤を含有する。発泡抑制インキは、ガラス転移点が30℃以上の樹脂を7重量%以上含有し、9重量%以上含有することが好ましく、11重量%以上含有することがより好ましく、13重量%以上含有することが特に好ましい。」 「【0057】 金型によるエンボス加工ではなく、印刷工程にて発泡抑制インキを印刷することにより、加熱発泡後に発泡部と発泡抑制部による凹凸が付与されるので、安価に自由にデザインすることができる。金型によるエンボス加工では難しい複雑な、又は、細かいデザインも可能となる。全面単色、全面多色印刷、部分印刷または印刷なしなどの印刷と自由に組み合わせることができる。 【0058】 低融点熱可塑性樹脂層8の面8aに凹部5を形成する発泡抑制インキ塗装部12を設けてから、発泡低抑制印刷層11を設けるようにしてもよい。」 「【0062】 工程Cは、発泡抑制インキ塗装部12を有する低融点熱可塑性樹脂層8を加熱処理して、低融点熱可塑性樹脂層8における発泡抑制インキ塗装部12を設けていない部分を発泡させて、発泡部4a及び発泡抑制部4bを設ける工程である。 【0063】 本実施形態において、このようにして成形した容器本体3を加熱乾燥機で、約110℃~140℃の範囲で、約40秒~6分間加熱する。 この加熱で紙基材7に含有されている水分により、低融点熱可塑性樹脂層8が発泡して発泡断熱層4を形成するが、低融点熱可塑性樹脂層8の表面に発泡抑制インキ塗装部12を設けてある部分は発泡抑制インキ塗装部12により発泡が抑制され、抑制された部分が発泡断熱層4の表面に設けられる凹部5となる。 このとき、低融点熱可塑性樹脂層8の表面に発泡を抑制しない低発泡抑制インキで全面べた印刷して発泡低抑制印刷層11が設けられていると、低融点熱可塑性樹脂層8を発泡させたとき、発泡抑制インキ塗装部12がアンカーとなって、発泡低抑制印刷層11に斜め下方向に張力を加えることができることにより、低融点熱可塑性樹脂層8の過発泡を効果的に抑制し、発泡断熱層4の発泡面が均一となり、平滑性や外観の向上が図れる(図6参照。)。 また、発泡断熱容器に内容物を入れて電子レンジで調理する際に、水位を示す線状の凹みや糸底部は、発泡前に低融点熱可塑性樹脂面が圧縮応力によるダメージを受けているので、電子レンジによる加熱で二次発泡(過発泡)が発生しやすい。 電子レンジでの加熱による二次発泡では発泡層と原紙層が剥離する点が、原紙水分過多等による過発泡(発泡セルが結合して大きく膨らむ)とはメカニズムが異なる。二次発泡の発生が予想される部分または二次発泡が発生しやすい部分に予め発泡抑制インキを塗装しておけば、発泡層と原紙層が剥離する二次発泡が発生することなく外観の悪化を防ぐことができる(図7参照。)。一例として、電子レンジにより二次発泡が発生した断面を図8(a)に示し、発泡低抑制印刷層が設けられらことにより、二次発泡が抑制された断面を図8(b)に示す。 【0064】 本実施形態においては、発泡抑制インキ塗装部12を形成した後に容器本体3を成形しているが、容器本体3を成形した後に発泡抑制インキ塗装部12を形成してもよい。 【実施例】 【0065】 次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。各実施例及び比較例の詳細を表1~2に示す。表1~2の各項目の説明図を図9に示す。 【0066】 ≪実施例1≫ 220g/m2(厚さ259μm、密度0.85g/cm3、化学パルプ100%、パルプの濾水度(CSF)400ml、含水率7.5%)の紙基材の片面に低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製銘柄名:ペトロセン213、密度0.918g/cm3、融点105℃)を厚さ40μmで押出ラミネートした。紙基材の反対面には中密度ポリエチレンン(日本ポリエチレン株式会社製銘柄名:LC680、密度0.936g/cm3、融点118℃)を厚さ20μmで押出ラミネートした。この低密度ポリエチレンラミネートフィルム面に、低発泡抑制インキ(乾燥状態でウレタン樹脂A(ガラス転移点10℃)30重量%、硝化綿B(ガラス転移点60℃)20重量%、着色剤50重量%、溶剤に分散した状態での樹脂及び着色剤の合計含有率は20重量%)を全面に塗布、乾燥させ、2.0μmの発泡低抑制印刷層を設けた。溶剤としてはイソプロピルアルコール(10%)/酢酸エチル(40%)/トルエン(30%)/メチルエチルケトン(20%)からなる混合溶剤を使用した。 更に、この発泡低抑制印刷層に、発泡抑制インキ(乾燥状態で塩化ビニル酢酸ビニル共重合体C(ガラス転移点70℃)70重量%、アクリル樹脂D(ガラス転移点35℃)30重量%、着色剤0%、インキの状態での樹脂含有率は10%)を発泡低抑制印刷層の上に部分的に(表1~2を参照。)塗布、乾燥させ、2.5μmの発泡抑制印刷層を設けた。 この両面ラミネート紙基材の全体厚さ(インキ層を除く)は319μmであった。この両面ラミネート紙基材から容器胴部材ブランクを打ち抜いた。次いで坪量220g/m2の胴部材に使用したのと同じ原紙の片面に低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製銘柄名:ペトロセン213、密度0.918g/cm3、融点105℃)を厚さ30μmで押出しラミネートし、この片面ラミネート紙基材から容器底部材ブランクを打ち抜いた。容器胴部材ブランクの中密度ポリエチレンラミネートフィルム面と容器底部材ブランクの低密度ポリエチレンラミネートフィルム面が容器内壁面となるように容器胴部材ブランクと容器底部材ブランクを常用のカップ成型機で一体化させ、紙製容器を組み立てた。容器の寸法はブリム外径72.5mm、カップ高さ80mm、満杯容量197mlでこの紙製容器をコンベアオーブンに入れ、120℃で120秒間加熱した。紙製容器の胴部の低密度ポリエチレンラミネートフィルム上に設けられた発泡低抑制印刷層に対応して、胴部に発泡断熱層を有する紙製容器が得られた。発泡断熱層を有する紙製容器の胴部全体の厚さは779μm(低発泡層500μm+原紙259μm+中密度ポリエチレン層20μm)であった。発泡抑制部の発泡抑制率は78.0%であった(図10参照)。」 「【0072】 [断熱性評価] 実施例1及び比較例1の紙製容器における、熱湯を入れてからの時間と、紙製容器外側の発泡断熱層に接触させた銅版の温度(外部表面温度)との関係を、図12に示す。室温25℃の条件下で、87℃の熱湯を満杯より10mm下まで充填し、容器胴部の高さ方向に中央となる位置に面積3cm×3cm、厚さ12μmの銅版を容器胴部に接触させた上で、銅板の温度を接触式温度計にて測定した。 図12に示すように、比較例1と比べて、発泡抑制部を有する実施例1の紙容器は、断熱性に優れていた。 また、実施例1~7、及び比較例1、2の紙製容器における、熱湯を入れてから30秒後、60秒後における、紙製容器外側の発泡断熱層に接触させた銅版の温度(外部表面温度)を、表1に示す。 比較例1と比べて、発泡抑制部を有する実施例1~6の紙容器は、手で持ったときの熱さが弱く感じられ、表1に示すように、断熱性に優れていた。また、比較例2と比べて、発泡抑制部を有する実施例7の紙容器は、手で持ったときの熱さが感じられず、表1に示すように、断熱性に優れていた。更に、原紙の含水率が8.8%の場合に比較例3での紙製容器には過発泡が発生したが、原紙の含水率が同じであっても実施例8の紙製容器からは過発泡が観察されなかった。」 「【0078】 【表1】 [図:0001400418000001.jpg] 」 「【図1】 [図:0001400418000002.jpg] 」 「【図4】 [図:0001400418000003.jpg] 」 「【図6】 [図:0001400418000004.jpg] 」 以上の記載事項から、引用文献1には、特に実施例1に着目すると、次の引用発明1が記載されている。 [引用発明1] 「220g/m2の紙基材の片面に低密度ポリエチレン(融点105℃)を厚さ40μmで押出ラミネートし、紙基材の反対面には中密度ポリエチレン(融点118℃)を厚さ20μmで押出ラミネートし、この低密度ポリエチレンラミネートフィルム面に、低発泡抑制インキ(乾燥状態でウレタン樹脂A(ガラス転移点10℃)30重量%、硝化綿B(ガラス転移点60℃)20重量%、着色剤50重量%、溶剤に分散した状態での樹脂及び着色剤の合計含有率は20重量%)を全面に塗布、乾燥させ、2.0μmの発泡低抑制印刷層を設け、溶剤としてはイソプロピルアルコール(10%)/酢酸エチル(40%)/トルエン(30%)/メチルエチルケトン(20%)からなる混合溶剤を使用し、更に、この発泡低抑制印刷層に、発泡抑制インキ(乾燥状態で塩化ビニル酢酸ビニル共重合体C(ガラス転移点70℃)70重量%、アクリル樹脂D(ガラス転移点35℃)30重量%、着色剤0%、インキの状態での樹脂含有率は10%)を発泡低抑制印刷層の上に部分的に塗布、乾燥させ、2.5μmの発泡抑制印刷層を設けて、両面ラミネート紙基材とし、 この両面ラミネート紙基材から容器胴部材ブランクを打ち抜き、容器胴部材ブランクの中密度ポリエチレンラミネートフィルム面と容器底部材ブランクの低密度ポリエチレンラミネートフィルム面が容器内壁面となるように容器胴部材ブランクと容器底部材ブランクを常用のカップ成型機で一体化させ、紙製容器を組み立て、この紙製容器をコンベアオーブンに入れ、120℃で120秒間加熱して得られた、紙製容器の胴部の低密度ポリエチレンラミネートフィルム上に設けられた発泡低抑制印刷層に対応して、胴部に発泡断熱層を有する紙製容器の胴部であって、 発泡後のラミネート層が、発泡低抑制部の厚さが500μm、凹部の深さが390μm(500×0.78)、発泡抑制部の厚さが110μmである紙製容器の胴部。」 (2)本件発明1について ア 対比 本件発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「紙基材」は本件発明1の「基材層」に相当し、以下同様に、「発泡低抑制印刷層」は「印刷層」に、「発泡抑制印刷層」は「発泡抑制層」に、それぞれ相当する。 引用発明1の「発泡後のラミネート層」は、本件発明1の「発泡して」いる「カバー層」に相当する。 引用文献1の「また含有水分は、後述する低融点熱可塑性樹脂層の必要な発泡量を確保するとともに過発泡の発生を防ぐため5~9重量%であることが好ましく、6~8重量%が好ましい。含有水分が9重量%以下の場合、紙基材に含まれる水分が加熱により蒸発して、軟化した熱可塑性樹脂層が水蒸気で紙基材の外側に過剰に押し出されて発泡する確率を効果的に抑制できる」(【0045】)の記載から、紙基材に含まれる水分が蒸発した水蒸気は、紙基材の外側に押し出され、低融点熱可塑性樹脂層を発泡させるものであるから、引用発明1の「紙基材の反対面」に「押出ラミネート」された高融点の「中密度ポリエチレン」は、紙基材に含まれる水分が蒸発した水蒸気が内側に押し出されるのを遮断して外側に押し出されるようにする機能を有するといえるから、本件発明1の「水蒸気遮断層」に相当する。 引用発明1の「低発泡抑制インキ(乾燥状態でウレタン樹脂A(ガラス転移点10℃)30重量%、硝化綿B(ガラス転移点60℃)20重量%、着色剤50重量%、溶剤に分散した状態での樹脂及び着色剤の合計含有率は20重量%)を全面に塗布、乾燥させ、2.0μmの発泡低抑制印刷層を設け」たことは、「ウレタン樹脂A」の「発泡低抑制印刷層」の合計重量に対する割合が「30重量%」であるから、本件発明1の「前記印刷層は、印刷層用バインダーを含み、前記印刷層用バインダーは、ウレタン樹脂を含み、かつ印刷層の全固形分の合計質量に対する前記ウレタン樹脂の割合が18質量%以上であ」ることに相当する。 引用発明1において、「発泡低抑制印刷層の上に部分的に塗布、乾燥させ、2.5μmの発泡抑制印刷層を設けた」ことは、引用発明1の「両面ラミネート紙基材」が、「発泡低抑制印刷層の上」に「発泡抑制印刷層」を有しているといえるから、本件発明1の「前記印刷層の外面側表面、前記印刷層と前記カバー層との間、および前記印刷層が形成されていない部分における前記カバー層の外側面表面、の少なくとも一箇所には、前記カバー層の発泡を抑制する発泡抑制層を有する」ことに相当する。 引用文献1の「発泡抑制インキ塗装部中の樹脂成分が、熱可塑性樹脂層よりも耐熱性を有することにより、加熱の際、寸法膨張しにくい。そのため、加熱により、熱可塑性樹脂層の発泡抑制インキ塗装部以外の部分から発泡部4aが形成され、発泡抑制インキ塗装部から発泡抑制部4bが形成される。」(【0017】)の記載から、引用発明1において、「発泡抑制インキ(乾燥状態で塩化ビニル酢酸ビニル共重合体C(ガラス転移点70℃)70重量%、アクリル樹脂D(ガラス転移点35℃)30重量%、着色剤0%、インキの状態での樹脂含有率は10%)を発泡低抑制印刷層の上に部分的に塗布、乾燥させ、2.5μmの発泡抑制印刷層を設け」たことと、本件発明1において、「前記発泡抑制層は、発泡抑制層用バインダーを含み、前記発泡抑制層用バインダーは、ウレタン樹脂を含まないか、ウレタン樹脂を含む場合であってもその割合が発泡抑制層の全固形分の合計質量に対して18質量%未満であり、前記カバー層に対する追従性が低いことで前記カバー層の発泡を抑制し、前記発泡抑制層が前記ウレタン樹脂を含む場合、前記発泡抑制層の全固形分の合計質量に対する前記ウレタン樹脂の割合と、前記印刷層の全固形分の合計質量に対する前記ウレタン樹脂の割合との差が5質量%以上であ」ることとは、発泡抑制層は、発泡抑制層用バインダーを含み、カバー層に対する追従性が低いことでカバー層の発泡を抑制する限りで一致する。 引用発明1の「胴部に発泡断熱層を有する」「紙製容器の胴部」は、「紙基材」、「中密度ポリエチレン」、「発泡後のラミネート層」、「発泡低抑制印刷層」、「発泡抑制印刷層」を積層したものであるから、本件発明1の「断熱容器用積層体」に相当する。 引用発明1の「発泡後のラミネート層が、発泡低抑制部の厚さが500μm、凹部の深さが390μm(500×0.78)、発泡抑制部の厚さが110μmである」ことは、本願発明1の「前記発泡抑制層がない部分のカバー層の厚みが、300μm以上であり、前記発泡抑制層がある部分におけるカバー層の厚みと、前記発泡抑制層がない部分におけるカバー層の厚みの差が150μm以上である」ことに相当する。 以上のことから、本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点1] 「外面側から、カバー層、紙から構成される基材層、前記基材層を構成する紙から発生する水蒸気を遮断する水蒸気遮断層、を有するとともに、 前記カバー層の外面側表面の少なくとも一部には、印刷層を有し、 さらに、前記印刷層の外面側表面、前記印刷層と前記カバー層との間、および前記印刷層が形成されていない部分における前記カバー層の外側面表面、の少なくとも一箇所には、前記カバー層の発泡を抑制する発泡抑制層を有する、断熱容器用積層体であって、 前記カバー層は、前記基材層を構成する紙から発生する水蒸気によって発泡可能な熱可塑性樹脂から構成されており、 前記カバー層は、発泡しており、 前記印刷層は、印刷層用バインダーを含み、前記印刷層用バインダーは、ウレタン樹脂を含み、かつ印刷層の全固形分の合計質量に対する前記ウレタン樹脂の割合が18質量%以上であり、 前記発泡抑制層は、発泡抑制層用バインダーを含み、前記カバー層に対する追従性が低いことで前記カバー層の発泡を抑制し、 前記発泡抑制層がない部分のカバー層の厚みが、300μm以上であり、 前記発泡抑制層がある部分におけるカバー層の厚みと、前記発泡抑制層がない部分におけるカバー層の厚みの差が150μm以上である、断熱容器用積層体。」 [相違点1] 発泡抑制層は、発泡抑制層用バインダーを含み、カバー層に対する追従性が低いことでカバー層の発泡を抑制することに関して、本件発明1は、「前記発泡抑制層は、発泡抑制層用バインダーを含み、前記発泡抑制層用バインダーは、ウレタン樹脂を含まないか、ウレタン樹脂を含む場合であってもその割合が発泡抑制層の全固形分の合計質量に対して18質量%未満であり、前記カバー層に対する追従性が低いことで前記カバー層の発泡を抑制し、前記発泡抑制層が前記ウレタン樹脂を含む場合、前記発泡抑制層の全固形分の合計質量に対する前記ウレタン樹脂の割合と、前記印刷層の全固形分の合計質量に対する前記ウレタン樹脂の割合との差が5質量%以上であ」るのに対して、引用発明1は、「発泡抑制インキ(乾燥状態で塩化ビニル酢酸ビニル共重合体C(ガラス転移点70℃)70重量%、アクリル樹脂D(ガラス転移点35℃)30重量%、着色剤0%、インキの状態での樹脂含有率は10%)を発泡低抑制印刷層の上に部分的に塗布、乾燥させ、2.5μmの発泡抑制印刷層を設け」たものである点。 イ 新規性について 引用発明1の「発泡抑制印刷層」を形成する「発泡抑制インキ」の成分は「乾燥状態で塩化ビニル酢酸ビニル共重合体C(ガラス転移点70℃)70重量%、アクリル樹脂D(ガラス転移点35℃)30重量%、着色剤0%、インキの状態での樹脂含有率は10%」であるから、ウレタン樹脂を含んでいない。 そうすると、相違点1は実質的な相違点ではない。 よって、本件発明1は、引用発明1である。 ウ 進歩性について 引き続き、相違点1について検討する。 引用文献1には、「発泡抑制インキ塗装部12」に関して、「弾性率が高くなるので変形しにくく、発泡抑制効果が高くなる」(【0027】)とされている。 また、一般にウレタン樹脂は弾性率が低いことを考慮すると、引用発明1において、「発泡抑制印刷層」を形成する「発泡抑制インキ」の成分として、ウレタン樹脂を含まないものとするか、又は含むとしても少量とすることで、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 よって、本件発明1は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明できたものである。 (3)本件発明2について 引用発明1の「発泡抑制インキ」に含有される「アクリル樹脂D」は、本件発明2の「アクリル樹脂」に相当する。 そうすると、本件発明2と引用発明1とは、「前記発泡抑制層用バインダーが、硝化綿樹脂、アクリル樹脂、および塩素化ポリプロピレン樹脂からなる群から選択される1または2以上である」点でも一致する。 したがって、本件発明2は、引用発明1であるか、又は引用発明1に基いて当業者が容易に発明できたものである。 (4)本件発明3について 本件発明3と引用発明1とは、上記の一致点及び相違点に加えて、本件発明3は、「前記発泡抑制層は、着色剤を含む」のに対して、引用発明1は、「発泡抑制印刷層」が着色剤を含まない点(以下「相違点2」という。)において相違する。 相違点2について検討するに、引用文献1の「本実施形態において、発泡抑制インキ塗装部12は、着色剤を含有してもしなくてもよい。」(【0037】)の記載を参考にして、引用発明1の「発泡抑制印刷層」に着色剤を含ませることは、当業者が適宜なし得たことである。 したがって、本件発明3は、引用発明1に基いて当業者が容易に発明できたものである。 (5)本件発明4について 本件発明4と引用発明1とは、上記の一致点及び相違点に加えて、「発泡可能な熱可塑性樹脂」が、本件発明4は、「高圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、およびエチレン・α-オレフィン共重合体の何れかである」のに対して、引用発明1は、「低密度ポリエチレン」である点(以下「相違点3」という。)において相違する。 「低密度ポリエチレン」を高圧法で得ることは、例示するまでもない周知技術であり、引用発明1の「低密度ポリエチレン」を「高圧法低密度ポリエチレン」とすることに格別の困難性はない。 したがって、本件発明4は、引用発明1及び周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものである。 (6)本件発明7、8について 引用発明1に係る「紙製容器の胴部」を「胴部材」として使用した「紙製容器」は、本件発明7、8の「断熱容器」に相当する。 そうすると、本件発明7、8は、引用文献1に記載された「紙製容器」に係る発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明できたものである。 第6 むすび 以上のとおり、請求項1、2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、また、請求項1~4、7、8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、請求項1~4、7、8に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件特許の請求項5、6、9~14は、本件訂正により削除されたため、請求項5、6、9~14に係る特許についての本件特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700038

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