特許異議申立
2025-700375
包装材料、包装体及び包装物品
- 審判番号
- 2025-700375
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-000322
- 登録番号
- 7563636
- 請求日
- 2025年04月01日
- 審決日
- 2026年04月17日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
- 【異議申立人】渡辺 陽子
- 【異議申立人】三輪 貴幸
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 金丸 治之
- 審判官 神山 茂樹
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第2条第3項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7563636号発明「包装材料、包装体及び包装物品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7563636号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7563636号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7563636号の請求項1~6に係る特許についての出願(特願2024-322号)は、令和4年9月2日(優先権主張 令和3年9月3日、令和3年9月6日(3件)、令和3年9月21日、令和3年11月26日(2件)、令和3年11月30日)を国際出願日とする出願である特願2022-577735号の一部を令和5年1月27日に新たな特許出願とした特願2023-10918号の一部を令和6年1月4日に新たな特許出願としたものであって、令和6年9月30日にその特許権の設定登録がされ、令和6年10月8日に特許掲載公報が発行された。
本件の特許異議の申立てに係る手続の経緯の概要は、次のとおりである。
令和7年 4月 1日 :特許異議申立人渡辺陽子(以下「申立人1」という。)による請求項1~6に係る特許に対する本件特許異議の申立て(以下「申立1」という。)
令和7年 4月 8日 :特許異議申立人三輪貴幸(以下「申立人2」という。)による請求項1~6に係る特許に対する本件特許異議の申立て(以下「申立2」という。)
令和7年 6月 2日 :令和7年4月8日に申立人2から提出された特許異議申立書に対する手続補正書(方式)の提出
令和7年10月28日付け:取消理由通知書
令和7年12月15日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
(以下、当該令和7年12月15日に提出された訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)
令和8年 2月17日 :申立人2による意見書(以下「意見書」という。)の提出
また、令和8年1月15日付けで申立人1及び申立人2に対して、訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を、期間を指定して行ったものであるが、当該期間内に申立人1からは応答がなかった。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7563636号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、次のとおりである。
本件訂正前の請求項1に記載された
「前記基材層は、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上である」を、
「前記基材層は、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上75%以下である」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項1~6は、請求項2~6が、本件訂正前の請求項1の記載を引用する関係にあるから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであり、本件訂正請求は、一群の請求項〔1~6〕について請求されたものである。
3 訂正の目的、新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の適否について
本件訂正は、本件訂正前の請求項1において、基材層の結晶化度の上限値を「75%以下」と限定したものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
本件訂正は、本件特許の明細書の【0055】の記載に基づくものであるから、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてするものである。
また、本件訂正は、発明のカテゴリーや対象を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正が認められたから、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下「本件発明1」等という。また、本件発明1~6を「本件発明」と総称することもある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え、
前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含み、
前記接着剤層は無溶剤型接着剤を含み、
前記基材層は、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上75%以下である包装材料。
【請求項2】
前記接着剤層は、厚さが0.1μm乃至20μmの範囲内にある請求項1に記載の包装材料。
【請求項3】
前記接着剤層は、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とリン酸変性化合物を含む樹脂組成物の硬化物である請求項1に記載の包装材料。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の包装材料を含んだ包装体。
【請求項5】
スタンディングパウチである請求項4に記載の包装体。
【請求項6】
請求項4に記載の包装体と、これに収容された内容物とを含んだ包装物品。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1~6に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
申立人1が提出した甲第○号証を甲1-○、申立人2が提出した甲第○号証を甲2-○という。
(1)取消理由1(新規性)
本件発明1、2は以下の甲1-1(甲2-2)又は甲2-1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、当該発明に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
(2)取消理由2(進歩性)
本件発明3~6は、以下の甲1-1(甲2-2)又は甲2-1に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから当該発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
甲1-1:特開2020-55158号公報
甲1-2:仁田勇、外1名、「高分子物質の結晶度(II)」、高分子、高分子学会、1956年6月20日、5巻、7号、p.345-352
甲1-3:Tim A.Osswald、外1名、「エンジニアのためのプラスチック材料工学」、初版第1刷、株式会社シグマ出版、1997年11月1日、p.33-37
甲1-4:特開2013-203441号公報
甲1-5:高原淳、「高分子機器分析 小角X線散乱,広角X線回折」、高分子、高分子学会、1991年6月1日、40巻、6号、p.394-397
甲1-6:長尾圭悟、「X線回折装置の最近の進歩」、日本接着学会誌、日本接着学会、2008年5月1日、44巻、5号、p.180-187
甲2-1:特開2020-55157号公報
甲2-2:(甲1-1と同じ)
甲2-6:竹田政民、外5名、「市販ポリエチレンの基礎的物性と機械的性質の関係の研究」、高分子化学、1967年、第24巻、第264号、p.277-284
甲2-8:岩政健司、「ポリエチレン-その用途と物性のコントロール」、化学と教育、1998年、46巻、8号、p.502-505
甲2-9:宮下直円、外4名、「結晶化度がPEフィルム中の薬剤拡散性に及ぼす影響」、成形加工、プラスチック成形加工学会、2020年12月20日、第33巻、第1号、p.22-26
甲2-10:「機械設計エンジニアの基礎知識 ポリエチレン(PE)」、[online]、MONOWEB、[2024年1月31日検索]、インターネット<URL:https://d-engineer.com/plastic/pe.html>
甲2-11:「広角X線回折による試料延伸時の結晶性変化測定」、[online]、株式会社三井化学分析センター、[2024年1月31日検索]、インターネット<URL:https://www.mcanac.co.jp/images/pdf/1022.pdf>
甲2-12:(甲1-2と同じ)
甲2-13:(甲1-4と同じ)
2 取消理由通知に記載した取消理由についての当審の判断
当審合議体は、上記取消理由で通知した取消理由1及び2によっては、本件発明1~6に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。
また、申立人は、請求項3~6についても、甲1-1(甲2-2)又は甲2-1を引用例とする新規性(上記取消理由1)を、請求項1、2についても、甲1-1(甲2-2)又は甲2-1を主引用例とする進歩性(上記取消理由2)をそれぞれ主張していることから、これらについても併せて検討を行った。当審合議体は以下のとおり、取消理由1(新規性)によっては、本件発明3~6に係る特許、取消理由2(進歩性)によっては、本件発明1、2に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。
(1)引用文献の記載及び引用発明
ア 甲1-1(甲2-2)
(ア)甲1-1(甲2-2)に記載された事項
甲1-1(甲2-2)には、次の事項が記載されている。(下線は当審で付与し、「・・・」は文章の省略を表す。以下同様。)。
「【請求項1】
基材と、中間層と、ヒートシール層とを備え、
前記中間層が、蒸着膜および基材本体を備え、
前記基材が、延伸樹脂フィルムであり、
前記基材本体が、延伸樹脂フィルムであり、
前記基材、前記基材本体および前記ヒートシール層が共にポリエチレンにより構成され基材本体る(当審注:原文表記のまま)ことを特徴とする、積層体。
【請求項2】
前記基材と前記中間層との間に接着層を備える、請求項1に記載の積層体。
・・・
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製された包装材料。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、従来ヒートシール層として使用していたポリエチレンを、延伸樹脂フィルムとすることで基材として使用でき、当該基材をポリエチエレンから構成されるヒートシール層と積層して使用することで、十分な強度や耐熱性を有し、かつリサイクル可能な包装材料などを作製することができるとの知見を得た。
さらに、本発明の積層体において、ポリエチレンから構成される延伸樹脂フィルムおよび蒸着膜を備える中間層をさらに設けることにより、そのリサイクル性を維持しつつ、バリア性、特には、酸素バリア性および水蒸気バリア性に優れる包装材料などを作製することができるとの知見を得た。
【0007】
本発明は、上記知見に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、包装材料などとして適用可能な強度やバリア性を備えながらリサイクル性にも優れる包装材料などを実現することができる積層体を提供することである。
また、本発明の解決しようとする課題は、該積層体から作製される包装材料を提供することである。
また、本発明の解決しようとする課題は、該積層体から作製される包装袋を提供することである。
さらに、本発明の解決しようとする課題は、該積層体から作製されるスタンドパウチを提供することである。」
「【発明を実施するための形態】
【0022】
<積層体>
本発明による積層体を図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、積層体10は、基材11と、蒸着膜12および基材本体13を備える中間層14と、ヒートシール層15とを備える。
【0023】
また、本発明の一実施形態において、積層体10は、図2に示すように、基材11と中間層14との間、および中間層14とヒートシール層15との間の少なくとも一方に接着層16を備えることができる。」
「【0077】
接着層は、少なくとも1種の接着剤を含み、1液硬化型若しくは2液硬化型、または非硬化型のいずれも接着剤であってもよい。また、接着剤は、無溶剤型の接着剤であっても、溶剤型の接着剤であってもよいが、環境負荷の観点からは、無溶剤型の接着剤が好ましく使用できる。
無溶剤型接着剤としては、例えば、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤およびウレタン系接着剤などが挙げられ、これらのなかでも2液硬化型のウレタン系接着剤を好ましく使用することができる。・・・」
「【0129】
<用途>
本発明の積層体は、包装材料用途に特に好適に使用することができる。
包装材料の形状としては、特に限定されず、図3に示すように、包装袋20であってもよく、図4に示すように、胴部31および底部32を備えるスタンドパウチ30であってもよい。なお、スタンドパウチにおいては、胴部のみが上記積層体により形成されていても、底部のみが上記積層体により形成されていても、胴部および底部の両方が上記積層体により形成されていてもよい。」
「【0135】
<実施例1-1>
中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3、融点129℃、MFR:1.3g/10分、Dowchemical社製、商品名:Elite5538G)をインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Aを得た。・・・
【0136】
基材Aの一方の面に、水性フレキソインキ(東洋インキ(株)製、商品名:アクワリオナ)を用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0137】
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た後、長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材本体Aを得た。次いで、該基材本体Aの一方の面に、PVD法により、厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成し、中間層Aを得た。
【0138】
上記基材Aの画像形成面を、中間層Aの蒸着面に、2液硬化型ウレタン系接着剤(ロックペイント(株)製、商品名:RU-77T/H-7)を介して積層した。2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
【0139】
中間層Aの非蒸着面に、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、ヒートシール層として、厚さ40μmの未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム(三井化学東セロ(株)商品名:TUX-TCS)を積層し、本発明の積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、92質量%であった。」
(イ)甲1-1(甲2-2)に記載された発明
上記(ア)の記載を参酌し、特に、請求項10及び実施例1-1の記載に着目すると、甲1-1(甲2-2)には、次の「甲1-1発明」が記載されているといえる。参考のため、関連する段落番号を記載した。以下同様。
[甲1-1発明]
「中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3、融点129℃、MFR:1.3g/10分、Dowchemical社製、商品名:Elite5538G)をインフレーション成形法により製膜して、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを作製し、このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Aを作製し、(【0135】)
この基材Aの一方の面に、水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により画像を形成し、(【0136】)
上記中密度ポリエチレンを、インフレーション成形法により製膜して、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを作製し、このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材本体Aを得て、この基材本体Aの一方の面に、PVD法により、厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成して、中間層Aを作製し、(【0137】)
上記基材Aの画像形成面を、中間層Aの蒸着面に、2液硬化型ウレタン系接着剤を介して積層し、(【0138】)
中間層Aの非蒸着面に、2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、ヒートシール層として、厚さ40μmの未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを積層した積層体を用いて作製された包装材料であって、(【0139】、【請求項10】)
2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであり、積層体におけるポリエチレンの割合は、92質量%である、積層体を用いて作製された包装材料。(【0138】、【0139】、【請求項10】)」
イ 甲2-1
(ア)甲2-1に記載された事項
甲2-1には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
基材と、接着層と、ヒートシール層とを備え、
前記基材および前記ヒートシール層がポリエチレンから構成され、
前記基材と前記接着層との間、および前記ヒートシール層と前記接着層との間の少なくとも一方に蒸着膜を備え、
前記基材が、延伸フィルムからなることを特徴とする、積層体。
・・・
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の積層体を用いて作製されたものである包装材料。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、従来ヒートシール層として使用していたポリエチレンを、延伸フィルムにすることで基材として使用することができ、当該基材をポリエチレンから構成されるヒートシール層と積層して使用することで、十分な強度や耐熱性を有し、かつリサイクル可能な包装材料などを作製とすることができるとの知見を得た。
さらに、本発明の積層体において、蒸着膜をさらに設けることにより、そのリサイクル性を維持しつつ、バリア性、特には、酸素バリア性および水蒸気バリア性に優れる包装材料などを作製することができるとの知見を得た。
【0007】
本発明は、上記知見に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、包装材料などとして適用可能な十分な強度、耐熱性やバリア性を備え、かつリサイクル性にも優れる包装材料を実現することができる積層体を提供することである。
また、本発明の解決しようとする課題は、該積層体から構成される包装材料を提供することである。
また、本発明の解決しようとする課題は、該積層体から作製される包装袋を提供することである。
さらに、本発明の解決しようとする課題は、該積層体から作製されるスタンドパウチを提供することである。」
「【0020】
<積層体>
本発明による積層体を図面を参照しながら説明する。
本発明の第1の実施形態において、図1および2に示すように、積層体10は、基材11と、接着層12と、ヒートシール層13とを備え、基材11と接着層12との間、およびヒートシール層13と接着層12との間の少なくとも一方に蒸着膜14を備える。
【0021】
また、本発明の第2の実施形態において、図2に示すように、積層体10は、基材11と、接着層12と、中間層15と、第2の接着層16と、ヒートシール層13とを備え、基材11と接着層12との間、接着層12と中間層15との間、およびヒートシール層13と第2の接着層16との間の少なくともいずれかに蒸着膜14を備える。」
「【0030】
基材に含まれるポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)および超低密度ポリエチレン(VLDPE)を使用することができる。
ここで、高密度ポリエチレンとしては、密度が0.945g/cm3以上のポリエチレンを使用することができ、中密度ポリエチレンとしては、密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満のポリエチレンを使用することができ、低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満のポリエチレンを使用することができ、直鎖状低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm3以上0.925g/cm3未満のポリエチレンを使用することができ、超低密度ポリエチレンとしては、密度が0.900g/cm3未満のポリエチレンを使用することができる。
これらの中でも、本発明の積層体の印刷適性、強度および耐熱性、並びにフィルムの延伸適正という観点から、高密度ポリエチレンおよび中密度ポリエチレンが好ましく、延伸適正という観点から、中密度ポリエチレンがより好ましい。」
「【0052】
接着層は、少なくとも1種の接着剤を含み、1液硬化型若しくは2液硬化型、または非硬化型のいずれも接着剤であってもよい。また、接着剤は、無溶剤型の接着剤であっても、溶剤型の接着剤であってもよいが、環境負荷の観点からは、無溶剤型の接着剤が好ましく使用できる。
無溶剤型接着剤としては、例えば、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤およびウレタン系接着剤などが挙げられ、これらのなかでも2液硬化型のウレタン系接着剤を好ましく使用することができる。・・・」
「【0121】
<用途>
本発明の積層体は、包装材料用途に特に好適に使用することができる。
包装材料としては、特に限定されず、図4に示すように、包装袋20であってもよく、図5に示すように、胴部31および底部32を備えるスタンドパウチ30であってもよい。なお、スタンドパウチにおいては、胴部のみが上記積層体により形成されていても、底部のみが上記積層体により形成されていても、胴部および底部の両方が上記積層体により形成されていてもよい。」
「【0127】
<実施例1-1>
上記中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを得た。
このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Aを得た。・・・
【0128】
基材Aの一方の面に、上記水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成した。
【0129】
ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、この一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成した。
【0130】
基材Aの画像形成面と、ヒートシール層の蒸着面とを、上記2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層し、本発明の積層体を得た。
なお、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであった。
また、このようにして得られた積層体におけるポリエチレンの割合は、94質量%であった。」
(イ)甲2-1に記載された発明
上記(ア)の記載を参酌し、特に、請求項8及び実施例1-1の記載に着目すると、甲2-1には、次の「甲2-1発明」が記載されているといえる。
[甲2-1発明]
「中密度ポリエチレンをインフレーション成形法により製膜し、厚さ100μmのポリエチレンフィルムを作製し、このポリエチレンフィルムを長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸し、厚さ20μmの基材Aを作製し、(【0127】)
この基材Aの一方の面に、水性フレキソインキを用いて、フレキソ印刷法により、画像を形成し、(【0128】)
ヒートシール層として、厚さ40μmの上記未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを準備し、この一方の面に、PVD法により厚さ20nmのアルミニウム蒸着膜を形成し、(【0129】)
基材Aの画像形成面と、ヒートシール層の蒸着面とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層した積層体を用いて作製された包装材料であって、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層の厚さは3.0μmであり、積層体におけるポリエチレンの割合は、94質量%である、積層体を用いて作製された包装材料。(【0130】、【請求項8】)」
ウ 甲1-3
甲1-3には、以下の記載がある。
「
[図:0001437367000001.jpg]
」
(第35ページ)
エ 甲2-6
甲2-6には、以下の記載がある。
「
[図:0001437367000002.jpg]
[図:0001437367000003.jpg]
・・・
[図:0001437367000004.jpg]
」
(第277ページ左欄第20行~同右欄第27行)
「
[図:0001437367000005.jpg]
」
(第278ページ)
オ 甲2-9
甲2-9には、以下の記載がある。
(ア)「
[図:0001437367000006.jpg]
」
(第23ページ 左欄第19行~同第35行)
(イ)「
[図:0001437367000007.jpg]
」
(第23ページ 左欄)
(ウ)「
[図:0001437367000008.jpg]
」
(第24ページ)
カ 技術常識
(ア)甲1-2(甲2-12)
甲1-2(甲2-12)には、以下の記載がある。
a「
[図:0001437367000009.jpg]
[図:0001437367000010.jpg]
」
(第345ページ左欄第5行~同右欄第8行)
b「
[図:0001437367000011.jpg]
」
(第345ページ右欄第10行~同第12行)
(イ)甲2-8
甲2-8には、以下の記載がある。
a「
[図:0001437367000012.jpg]
」
(第503ページ左欄第5行~同第7行)
b「
[図:0001437367000013.jpg]
」
(第503ページ左欄)
(ウ)甲1-4(甲2-13)
甲1-4(甲1-13)には、以下の記載がある。
「【0016】
樹脂フィルム2は、例えば低密度ポリエチレンフィルム、中密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムからなる。
上記の樹脂フィルムには、延伸処理を施して得られた樹脂フィルムを用いることが好ましい。この場合、樹脂フィルムの結晶化度が60%~90%の範囲となるように延伸処理を施すことがより好ましい。
延伸処理が施された樹脂フィルムから樹脂フィルム2を形成することで、樹脂の配向性や結晶化度を高めることができる。また、樹脂フィルムの延伸処理は広く一般に行われる処理であり、フィルム製膜ラインに組み込むことも可能なため、製造時間を大幅に増加させたり、製造コストを大幅に引き上ることなく、実施することが可能となる。」
(エ)甲2-11
甲2-11には、以下の記載がある。
「
[図:0001437367000014.jpg]
」(第3行~第5行)
「
[図:0001437367000015.jpg]
」
(オ)技術常識について
上記(ア)a、(イ)a、bより、以下の事項は技術常識(以下「技術常識1」という。)と認める。
[技術常識1]
「ポリエチレンの密度が増加するに従い、結晶部分(非晶部分以外)の割合が大きくなる傾向があること。」
また、上記(ウ)、(エ)より、以下の事項は技術常識(以下「技術常識2」という。)と認める。
[技術常識2]
「一般に、ポリエチレンフィルムは延伸により結晶化度が増加すること。」
(2)甲1-1を主引用例とする場合
ア 本件発明1について
(ア)本件発明1と甲1-1発明を対比する。
甲1-1発明の積層体の「中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3、融点129℃、MFR:1.3g/10分、Dowchemical社製、商品名:Elite5538G)」からなる「基材A」は、本件発明1の「ポリエチレンを含」む「基材層」に相当する。
甲1-1発明の「2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層」は、甲1-1の【0077】の「無溶剤型接着剤としては、例えば、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤およびウレタン系接着剤などが挙げられ、これらのなかでも2液硬化型のウレタン系接着剤を好ましく使用することができる。」との記載を踏まえると、本件発明1の「無溶剤型接着剤を含」む「接着剤層」に相当する。
甲1-1発明の「未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルム」の「ヒートシール層」は、本件発明1の「ポリエチレンを含」む「シーラント層」に相当する。
甲1-1発明の「積層体を用いて作製された包装材料」は、「基材Aの一方の面に、」「フレキソ印刷法により画像を形成し、」「基材本体Aの一方の面に、」「アルミニウム蒸着膜を形成して、中間層Aを作製し、上記基材Aの画像形成面を、中間層Aの蒸着面に、2液硬化型ウレタン系接着剤を介して積層し、中間層Aの非蒸着面に、2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、ヒートシール層として、」「未延伸直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを積層し」ているので、基材A、2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層、ヒートシール層の順に備えるものであるから、本件発明1の「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え」た「包装材料」に相当する。
(イ)そうすると、本件発明1と甲1-1発明とは、以下の一致点で一致し、次の相違点で相違する。
《一致点1》
「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え、
前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含み、
前記接着剤層は無溶剤型接着剤を含む、包装材料。」
《相違点1》
基材層に関し、本件発明1は、「X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上75%以下である」のに対し、甲1-1発明では、基材Aの結晶化度が不明な点。
(ウ)上記相違点について検討する。
a 相違点1が実質的なものであるかについて
上記(1)カ(オ)で示したように、ポリエチレンの密度が増加するに従い、結晶部分(非晶部分以外)の割合が大きくなる傾向があることは技術常識1であり、上記(1)カ(ア)aによれば、ポリエチレンの密度と結晶度x(%)(結晶化度)の間には、「密度=2.0×10-3x+0.803」の式の関係が成立するとされる。
ここで、甲1-1発明の「中密度ポリエチレン(密度:0.941g/cm3、融点129℃、MFR:1.3g/10分、Dowchemical社製、商品名:Elite5538G)」からなる「中密度ポリエチレン」の「密度:0.941g/cm3」を上記の式に代入すると、その結晶度は「69%」となる。
この「中密度ポリエチレン」の結晶度は、本件発明1と同様のX線回折で測定した値であり、上記(1)カ(イ)bの表1で示される密度0.940g/ccの結晶化度62.1%及び上記(1)ウの表2.3で示される高密度(比重0.941-0.965g/cm3)の結晶化度64-80の値とも概ね整合するものである。
しかしながら、甲1-1発明の「長手方向(MD)に、5倍の延伸倍率で延伸」される「中密度ポリエチレン」からなる「基材A」は、上記(1)カ(オ)で示した技術常識2に照らすと、延伸により結晶化度が更に増加すると考えられるところ、その結晶化度は「40%」以上となる蓋然性は高いといえるものの、「75%以下」になるとはいえないし、そもそも、ポリエチレンフィルムの結晶化度に影響を及ぼす因子は様々であり、ポリエチレンの密度及び延伸倍率だけでなく、フィルム製造時又は製造後の熱履歴や添加物、上記(1)カ(ア)bに記載の、結晶化度に最も重要とされている分岐の数、分子量なども結晶化度に影響を及ぼすところ、これらの因子について甲1-1発明の基材Aは不明であるから、「基材A」の結晶化度が40%以上75%以下であるとはいえない。
そうすると、上記相違点1は、実質的な相違点である。
b 相違点1の容易想到性について
甲1-1発明は、基材Aの結晶化度の調整に関するものではない。
したがって、甲1-1発明において、基材Aの結晶化度を調整する動機付けは存在せず、甲1-1発明に基いて、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
そして、甲1-1(甲2-2)のほか、申立人1、2が提出する他の証拠のいずれにも、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは記載も示唆もされていない。
(エ)小括
よって、本件発明1は、甲1-1発明でない。また、甲1-1発明及び他の証拠に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから上記ア(ウ)aと同様の理由により、甲1-1発明ではない。また、本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記ア(ウ)bと同様の理由により、甲1-1発明及び他の証拠に記載の事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)甲2-1を主引用例とする場合
ア 本件発明1について
(ア) 本件発明1と甲2-1発明を対比する。
甲2-1発明の積層体の「中密度ポリエチレン」からなる「基材A」は、本件発明1の「ポリエチレンを含」む「基材層」に相当する。
甲2-1発明の「2液硬化型ウレタン系接着剤により形成される接着層」は、甲2-1の【0052】の「無溶剤型接着剤としては、例えば、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤およびウレタン系接着剤などが挙げられ、これらのなかでも2液硬化型のウレタン系接着剤を好ましく使用することができる。」との記載を踏まえると、本件発明1の「無溶剤型接着剤を含」む「接着剤層」に相当する。
甲2-1発明の「未延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルム」の「ヒートシール層」は、本件発明1の「ポリエチレンを含」む「シーラント層」に相当する。
甲2-1発明の「積層体を用いて作製された包装材料」は、本件発明1の「包装材料」に相当する。
したがって、甲2-1発明の「基材Aの画像形成面と、ヒートシール層の蒸着面とを、2液硬化型ウレタン系接着剤を介して、積層した積層体を用いて作製された包装材料」は、本件発明1の「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え」た「包装材料」に相当する。
(イ) そうすると、本件発明1と甲2-1発明とは、以下の一致点で一致し、次の相違点で相違する。
《一致点2》
「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え、
前記接着剤層は無溶剤型接着剤を含み、
前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含む、包装材料。」
《相違点2》
基材層に関し、本件発明1は、「X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上75%以下である」のに対し、甲2-1発明では、「基材A」の結晶化度が不明な点。
(ウ)上記相違点について検討する。
甲2-1発明は、基材Aの結晶化度が不明なため、相違点2は実質的な相違点である。
また、甲2-1発明は、基材Aの結晶化度の調整に関するものではない。 したがって、甲2-1発明において、結晶化度を調整する動機付けは存在せず、甲2-1発明に基いて、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
仮に、甲2-1発明の中密度ポリエチレンの密度が、甲2-1の【0030】における「基材に含まれるポリエチレンとしては、・・・中密度ポリエチレン(MDPE)・・・を使用することができる。ここで、・・・中密度ポリエチレンとしては、密度が0.925g/cm3以上0.945g/cm3未満のポリエチレンを使用することができ、・・・。」の記載から、その密度を925g/cm3以上0.945g/cm3未満として、上記第4の2(1)カ(ア)aに記載のポリエチレンの密度と結晶度の関係式で計算すると、その結晶化度は「61%以上71%未満」となるものの、上記第4の2(2)ア(ウ)bと同様の理由により、甲2-1発明の基材Aの結晶化度は「40%以上75%以下」となる蓋然性が高いとはいえない。
そして、甲2-1のほか、申立人1、2が提出する他の証拠のいずれにも、相違点2に係る本件発明1の構成とすることは記載も示唆もされていない。
(エ)小括
よって、本件発明1は、甲2-1発明でない。また、甲2-1発明及び他の証拠に記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから上記(2)ウと同様の理由により、甲2-1発明ではなく、また、甲2-1発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立人2の主張について
a 申立人2の主張
申立人2は、意見書(2~6頁)において、概略、以下の主張をしている。
甲2-1には、特に、請求項1、請求項8及び【0052】に着目すると、次の「甲2-1発明1」が記載されている。
[甲2-1発明1]
「基材と、接着層と、ヒートシール層をこの順序で備え、
前記基材及び前記ヒートシール層がポリエチレンから構成され、
前記基材と前記接着層との間、および前記ヒートシール層と前記接着層との間の少なくとも一方に蒸着膜を備え、
前記接着層は無溶剤型の接着剤を含み、
前記基材が、延伸フィルムからなる、積層体を用いて作製された包装材料。」
本件発明1と甲2-1発明1とを対比すると、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
《相違点A》
基材層に関し、本件発明1は、「X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上75%以下である」のに対し、甲2-1発明1では、基材の結晶化度が不明な点。
上記相違点Aに関し、甲2-14には、平均結晶化度が30%以上50%以下である第一層、及び、平均結晶化度が40%以上60%以下である第二層を有しており、前記第一層の平均結晶化度よりも高いことを特徴とする熱可塑性樹脂を主樹脂とした積層フィルム及び該積層フィルムを用いた包装材が記載され(請求項1、請求項9)、第一層はヒートシール層であるといえ、第二層は基材に相当するといえる。
なお、甲2-14には、裏面3に基材層を形成することで包装材が得られることが記載されているが(【0039】)、この「基材」という文言に拘泥されることなく、甲2-14の積層フィルム及び甲2-1発明1における、共にポリエチレンから構成される2つの層の関係から、甲2-14の第二層が甲2-1発明1の基材に相当し、甲2-14の第一層が甲2-1発明1のヒートシール層に相当すると解しても何ら差し支えはない。
そして、甲2-14の【0019】には、甲2-1発明1の基材に相当する第二層の平均結晶化度が40%以下である場合、引裂き性や剛性の低下を引き起こし、60%以上である場合、耐衝撃性が低下したり、必要以上の膜厚であるためにコストが高くなるといった問題があることが記載されているため、これらのことに鑑み、甲2-1発明1の基材の平均結晶化度を40%以上60%以下にすることは当業者が容易になし得たことである。
特に、甲2-1発明1は、甲2-1の【0179】、【0182】及び【0183】から明らかなように、剛性に優れる発明であるといえるため、このような甲2-1発明1において、剛性に優れる包装材料を得ることを目的として、基材の結晶化度を40%以上60%以下にすることは当業者が容易になし得たことである。
したがって、本件発明1(及び本件発明2~6)は甲2-1及び甲2-14の記載に基き当業者が容易になし得た発明である。
b 主張に対しての当審の判断
以下の第5の2(1)に示したように、甲2-14の【0019】の記載より、積層フィルム1の第一層4及び第二層5は、ヒートシール性を有していることは明らかであり、第5の2(2)に示したように、第一層4及び第二層5はヒートシール性を有していることから、本件発明1の「シーラント層」に相当するものである。これは、甲2-14の請求項1が「積層フィルム」であり、請求項9が「請求項1乃至8のいずれか一項に記載の積層フィルムに、基材層が積層されていることを特徴とする包装材。」とされているところ、甲2-14では、「包装材」には「積層フィルム」とは別の「基材層」が設けられることとも整合する。
申立人2は、「甲2-14の第二層が甲2-1発明1の基材に相当し、甲2-14の第一層が甲2-1発明1のヒートシール層に相当すると解しても何ら差し支えはない。」と主張しているが、上述したように、甲2-14の包装材の基材は、請求項9で示される「基材層」であることが明らかであり、甲2-14の「第二層」は、ヒートシール層を構成する複数の層のうちの一つにすぎない。
したがって、甲2-14の第二層が基材に相当するとして進歩性欠如を論じた申立人2の上記主張はその前提を欠くものであるといわざるを得ない。
よって、申立人2の上記主張は、採用できない。
その他、縷々主張するが、いずれも同様である。
第5 取消理由通知で採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立理由の概要
申立理由1(甲2-14を主引例とする進歩性)(申立2)
本件特許の1~6に係る発明は、甲2-14に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
申立理由2(実施可能要件)(申立2)
本件明細書の発明の詳細な説明は、次の点で当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
ポリエチレンの密度と結晶化度とは相関関係にあることは技術常識である。
一方、本件明細書の実施例の欄には、まったく同じ密度を有するポリエチレンフィルムの結晶化度が14.8~71.8%もの結晶化度の幅を有することが記載されており、結晶化度が14.8%や27.5%であるポリエチレンフィルムが記載されている。このようなポリエチレンフィルムは、前記技術常識に反しており、また、その製造方法に関する記載は本件の発明の詳細な説明には一切なく、どのようにこのようなポリエチレンフィルムを作製するのかを理解できない。
つまり、本件の発明の詳細な説明は、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。
申立理由3(サポート要件)(申立2)
本件発明1~6は、次の点で本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件発明の課題は、「ポリエチレンを含み、リサイクル適性を有する積層体において、耐熱性又は強度に優れた積層体、並びに、これを含む包装体及び包装物品を提供すること」にある(本件明細書の【0006】)。このリサイクル適性に関する課題を解決するための手段として、本件明細書の【0029】には、積層体における「ポリエチレンの割合を90質量%以上とすることにより、高いリサイクル性を達成することができる」ことが記載され、本件明細書の【0003】には、「一般に、包装材料に含まれる主要な樹脂の割合が90質量%以上であるとリサイクル性が高いと考えられている」ことが記載され、本件明細書の実施例でも、リサイクル性に優れるか否かは、ポリエチレンの割合が90質量%以上であったか否かにより判断されている(本件明細書の【0296】)。
本件発明1は、「前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含み」と規定するものであるが、これは各層にポリエチレン以外の樹脂材料を多く含むものを包含するものであり、このように、ポリエチレンに加えてポリエチレン以外の樹脂材料を多く含むものは、リサイクル適正を有するという本件特許の解決しようとする課題を解決するものとはいえない。
よって、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2~6は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
申立理由4(明確性要件)(申立2)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
請求項3では、接着剤層が、リン酸変性化合物を含む樹脂組成物の硬化物であることを規定しているが、この「リン酸変性化合物」はどのような化合物をリン酸で変性したものなのか不明であり、本件明細書を見ても「リン酸変性化合物」についての説明はなく、当業者であっても理解できない。
よって、本件発明3及び本件発明3を引用する本件発明4~6は、不明確である。
<証拠方法一覧>
申立人1は甲1-1~甲1-6を、申立人2は甲2-1~甲2-14を、それぞれ提出している。
甲1-1:特開2020-55158号公報
甲1-2:仁田勇、外1名、「高分子物質の結晶度(II)」、高分子、高分子学会、1956年6月20日、5巻、7号、p.345-352
甲1-3:Tim A. Osswald、外1名、「エンジニアのためのプラスチック材料工学」、初版第1刷、株式会社シグマ出版、1997年11月1日、p.33-37
甲1-4:特開2013-203441号公報
甲1-5:高原淳、「高分子機器分析 小角X線散乱,広角X線回折」、高分子、高分子学会、1991年6月1日、40巻、6号、p.394-397
甲1-6:長尾圭悟、「X線回折装置の最近の進歩」、日本接着学会誌、日本接着学会、2008年5月1日、44巻、5号、p.180-187
甲2-1:特開2020-55157号公報
甲2-2:(甲1-1と同じ)
甲2-3:特開2020-90307号公報
甲2-4:国際公開第2021/076552号
甲2-5:特開2021-30609号公報
甲2-6:竹田政民、外5名、「市販ポリエチレンの基礎的物性と機械的性質の関係の研究」、高分子化学、1967年、第24巻、第264号、p.277-284
甲2-7:桜田一郎、外2名、「低密度および高密度ポリエチレンのX線図的研究 第1報 X線計数管による結晶化度の測定」、高分子化学、1958年、第15巻、第163号、p.728-734
甲2-8:岩政健司、「ポリエチレン-その用途と物性のコントロール」、化学と教育、1998年、46巻、8号、p.502-505
甲2-9:宮下直円、外4名、「結晶化度がPEフィルム中の薬剤拡散性に及ぼす影響」、成形加工、プラスチック成形加工学会、2020年12月20日、第33巻、第1号、p.22-26
甲2-10:「機械設計エンジニアの基礎知識」、[online]、MONOWEB、[2024年1月31日検索]、インターネット<URL:https://d-engineer.com/plastic/pe.html>
甲2-11:「広角X線回折による試料延伸時の結晶性変化測定」、[online]、株式会社三井化学分析センター、[2024年1月31日検索]、インターネット<URL:https://www.mcanac.co.jp/images/pdf/1022.pdf>
甲2-12:(甲1-2と同じ)
甲2-13:(甲1-4と同じ)
甲2-14:特開2018-62173号公報
2 申立理由1についての判断
(1)甲2-14に記載された発明
甲2-14の【0019】の記載より、積層フィルム1の第一層4及び第二層5は、ヒートシール性を有していることは明らかである。
そうすると、甲2-14には、特に、【0016】、【0017】、【0019】、【0025】、【0039】、【0040】、【0042】及び図3の記載に着目すると、次の「甲2-14発明」が記載されているといえる。
[甲2-14発明]
「積層フィルム1は、熱可塑性樹脂の第二層5の一方の面上に少なくとも第一層4を備えており、(【0016】)
平均結晶化度が、第一層4は30%以上~50%以下であり、第二層5は40%以上~60%以下であって、(【0017】)
第一層4及び第二層5は、ヒートシール性を有しており、(【0019】)
第一層4、第二層5ともに直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)を混合しており、(【0025】)
積層フィルム1に対して、ヒートシール層としての機能を果たす表面2とは反対の裏面3に、基材層7や、さらには、印刷層やバリア層といった機能層8を形成した包装材6であって、(【0039】)、
基材層7の材料としては、プラスチックを主とするフィルム以外にも、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどが使用され、(【0042】)
包装材6の加工工程において、積層フィルム1と基材層7および機能層8を積層させる際に有機系の接着剤を用いた包装材6。(【0040】)」
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と甲2-14発明を対比する。
甲2-14発明の「基材層7」は、本件発明1の「基材層」に相当する。 甲2-14発明の「積層フィルム1と基材層7および機能層8を積層させる際に」「用い」られた「有機系の接着剤」は、積層後、層を形成することは明らかであるから、本件発明1の「接着剤層」に相当するとともに、本件発明1の「接着剤層は無用剤型接着剤を含」む態様とは、「接着剤層は接着剤を含」む態様である限りにおいて一致する。
甲2-14発明の「熱可塑性樹脂の第二層5の一方の面上に少なくとも第一層4を備え」た「積層フィルム1」は、第一層4及び第二層5がヒートシール性を有していることから、本件発明1の「シーラント層」に相当するので、甲2-14発明の積層フィルム1の「第一層4、第二層5ともに直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と低密度ポリエチレン(LDPE)を混合して」いる態様及び「基材層7の材料としては、プラスチックを主とするフィルム以外にも、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどが使用され」る態様は、本件発明1の「前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含」む態様とは、前記基材層は樹脂を含み、前記シーラント層はポリエチレンを含む限りにおいて一致する。
甲2-14発明の「包装材6」は、本件発明1の「包装材料」に相当する。
そして、甲2-14発明の「加工工程において、積層フィルム1と基材層7および機能層8を積層させる際に有機系の接着剤を用いた包装材6」は、本件発明1の「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え」た「包装材料」に相当する。
イ そうすると、本件発明1と甲2-14発明とは、以下の一致点で一致し、少なくとも、次の相違点で相違する。
《一致点3》
「基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順序で備え、前記基材層は樹脂を含み、前記シーラント層はポリエチレンを含み、前記接着剤層は接着剤を含む、包装材料。」
《相違点3》
本件発明1の「前記基材層は、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が40%以上75%以下である」のに対し、甲2-14発明の「基材層7」の結晶化度は、特定されていない点。
ウ 上記相違点について検討する。
甲2-14発明は、基材層7の結晶化度の調整に関するものではない。
したがって、甲2-14発明において、結晶化度を調整する動機付けは存在せず、甲2-14発明に基いて、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
そして、甲2-14のほか、申立人1、2が提出する他の証拠のいずれにも、相違点3に係る本件発明1の構成とすることは記載も示唆もされていない。
エ 小括
よって、本件発明1は、甲2-14発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記(2)ウと同様の理由により、甲2-14発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 申立理由2及び3についての判断
(1)本件発明の詳細な説明の記載
ア 背景技術、発明が解決しようとする課題
(ア)「【0002】
包装袋等に使用される包装材料には、用途に応じてさまざまな特性が求められる。必要とされる特性の例を挙げれば、包装材料として必要な耐熱性、透明性、ヒートシール性、強度、ガスバリア性、突き刺し強さ、視認性、製袋適性、印刷適性、輸送適性等々である。このようにさまざまな性能をそれぞれ十分に満たすために、従来は特性の異なる複数の種類の合成樹脂フィルムを複合して用いることが一般的に行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、高いリサイクル性を有する包装材料が求められている。一般に、包装材料に含まれる主要な樹脂の割合が90質量%以上であるとリサイクル性が高いと考えられている。しかしながら、従来の包装材料は、上記したように異種の樹脂材料から構成されており、使用後に樹脂材料ごとに分離することが困難であるため、それぞれの材料としてリサイクルすることは出来なかった。したがって、従来の包装材料を用いて形成された包装体は、折角回収したとしても、燃やして熱として回収利用する以外になく、近年の地球環境保護の立場からは、相容れないものとなっているのが現状である。
【0004】
リサイクル性の観点から、ポリエチレン含有率の高い包装材料や、包装用フィルムをできるだけ単純な層構成とするための技術が提案されている(例えば、特許文献2及び3を参照)。しかしながら、例えば、強度や耐熱性などの面から軽包装の用途に留まるなどの問題があり、包装材料としての用途に応じて求められる様々な特性を満たすための改善の余地がある。」
(イ)「【0006】
本発明は、ポリエチレンを含み、リサイクル適性を有する積層体において、耐熱性又は強度に優れた積層体、並びに、これを含む包装体及び包装物品を提供することを目的とする。」
イ 発明を実施するための形態
(ア)「【0028】
<1>第1実施形態
<1.1>積層体
図1は、本発明の第1実施形態に係る積層体を概略的に示す断面図である。
図1に示す積層体10A1は、基材層1と印刷層4と接着剤層3とシーラント層2とをこの順に含んでいる。
【0029】
基材層1とシーラント層2とはポリエチレンを含む。積層体10A1は、ポリエチレンの割合が90質量%以上であることが好ましい。ここで、積層体におけるポリエチレンの割合とは、積層体を構成する各層における樹脂材料の合計量に占めるポリエチレンの合計量の割合を意味する。ポリエチレンの割合を90質量%以上とすることにより、高いリサイクル性を達成することができる。」
「【0084】
<1.7>変形例
積層体10A1には、様々な変形が可能である。
図2は、図1に示す積層体の一変形例を概略的に示す断面図である。図2に示す積層体10A2は、基材層1と印刷層4との間に介在した無機化合物層5を更に含んでいること以外は、積層体10A1と同様である。無機化合物層5は、無機化合物、例えば、酸化アルミニウムや酸化ケイ素のような無機酸化物からなる薄膜であり、酸素や水蒸気の透過を抑制するガスバリア層として機能する。」
(イ)「【0030】
<1.2>基材層
基材層1はポリエチレンを含んでいる。好ましくは、基材層1はポリエチレンからなる。基材層1は、X線回折の平行ビーム法により回折角度10°~30°の範囲で測定した、全ピーク面積に対する結晶ピーク面積の比である結晶化度が35%以上である。ここで、基材層1の結晶化度は、後述する測定方法によって得られる値である。
【0031】
本発明に係る積層体10A1においては、基材層1の結晶化度が35%以上であることにより、基材層1の耐熱性が向上する。これにより、積層体10A1を包装材料として用いて製袋機において製袋加工をする際にも、製袋速度を低下させる必要がなく、加工適性に優れている。
【0032】
また、基材層1の結晶化度が35%以上であることで、基材層1の伸びが少なくなり、印刷適性が向上する。
【0033】
基材層1に含まれるポリエチレンは、エチレンのホモポリマーであってもよく、エチレンと他のモノマーとの共重合体であってもよい。ポリエチレンがエチレンと他のモノマーとの共重合体である場合、共重合体に占めるエチレンの割合は、例えば、80mol%以上である。
【0034】
他のモノマーは、例えば、α-オレフィンである。一例によると、α-オレフィンは炭素数が3乃至20の範囲内にある。そのようなα-オレフィンは、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、又は6-メチル-1-ヘプテンである。
【0035】
ポリエチレンは、エチレンと、酢酸ビニル及びアクリル酸エステルのうちの一方との共重合体であってもよい。
【0036】
基材層1は、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、又は超低密度ポリエチレン(VLDPE)である。・・・
【0041】
基材層1は、無延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよい。基材層1は、延伸フィルムであることが望ましい。基材層1が結晶化度が35%以上であることに加え延伸フィルムである場合、以下の効果がある。すなわち、耐熱性及び強度に特に優れる。また、基材層1の伸びが少なくなり、印刷適性が向上する。なお、本明細書において、用語「フィルム」は厚さの概念を含まない。
【0042】
基材層1が延伸フィルムである場合、基材層1は、一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよい。基材層1として一軸延伸フィルムを使用すると、製袋時の耐熱性、即ち、後述するシール性がさらに向上する。基材層1として二軸延伸フィルムを使用すると、積層体10A1を包装材料として使用した包装物品の落下強度が向上する。
・・・
【0049】
基材層1の厚さは、10μm乃至200μmの範囲内にあることが好ましい。基材層1の厚さは、例えば、10μm乃至50μmの範囲内であり、又は、15μm乃至50μmの範囲内であり、又は、12μm乃至35μmの範囲内である。基材層1が薄すぎると、積層体10A1の強度が小さくなりやすい。また、基材層1が厚すぎると、積層体10A1の加工適性が低下しやすい。
・・・
【0052】
基材層1は、添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、及び改質用樹脂などが挙げられる。
【0053】
基材層1に占めるポリエチレンの割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。一例によると、基材層1は、ポリエチレンからなる。他の例によると、基材層1はポリエチレンと添加剤とからなる。
・・・
【0055】
基材層1は、上述したとおり、結晶化度が35%以上である。印刷層4は、基材層1の内面側に配置されているが、印刷層4が表示する図柄や文字等の画像は、良好な視認性で視認することができる。この観点から、基材層1の結晶化度は40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。結晶化度は、一例によると、50%乃至75%の範囲内にある。また、結晶化度が35%以上であるポリエチレン含有層は、以下に説明するように、突き刺し強度にも優れる。この観点から、基材層1の結晶化度は、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。
【0056】
ポリエチレンは結晶性高分子であるため結晶部と非晶部を併せ持っている。結晶化度が高いポリエチレンは、結晶部分の比率が高い。この結晶部分は樹脂の粘弾性挙動における弾性部分を支配するため、結晶化度が高いとフィルムの剛性が向上する。
【0057】
この粘弾性挙動の影響で、結晶化度の高いフィルムにおいては、樹脂の塑性変形に伴う歪も大きくなる。その結果、フィルムに加わった瞬間衝撃にて発生した歪に対して樹脂の変形を抑制する効果が得られ、破壊が起きにくくなる。このため、ポリエチレンを含み結晶化度が35%以上の基材1を備えた積層体10A1は、瞬間衝撃に対する耐性に優れ、積層体10A1を包装材料として使用した包装物品は、落下による破損(破袋)を生じ難い。すなわち、破袋耐性に優れる。
【0058】
基材層1の結晶化度は、基材層1に使用するポリエチレンフィルムの延伸度合いや、フィルム製造時又は製造後の熱履歴を制御することなどで調整することができる。例えば、製膜後に徐冷すると結晶化度は高まり、急冷すると結晶化度は下がる。また、結晶核剤などの添加物を配合することで結晶化度を向上させることも可能である。」
(ウ)「【0066】
<1.3>シーラント層
シーラント層2は、基材層1と向き合っている。シーラント層2はポリエチレンを含んでいる。好ましくは、シーラント層2はポリエチレンからなる。ポリエチレンとしては、例えば、基材層1が含むポリエチレンについて上述したものを使用することができる。シーラント層2は、好ましくは、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、又は超密度ポリエチレン(VLDPE)であり、より好ましくは、直鎖状低密度ポリエチレンである。
・・・
【0070】
シーラント層2の厚さは、製造する包装袋の形状や、収容される内容物の質量等を考慮して適宜設定できるが、例えば30~150μmとすることができる。
【0071】
シーラント層2は、例えば、未延伸のポリエチレン樹脂フィルム、又はポリエチレンの溶融押出により形成される層である。」
(エ)「【0074】
<1.5>接着剤層
接着剤層3は、印刷層4が設けられた基材層1とシーラント層2とを貼り合わせている。
接着剤層3は、少なくとも1種類の接着剤を含む。接着剤は、1液硬化型接着剤であってもよく、2液硬化型接着剤であってもよく、非硬化型接着剤であってもよい。また、接着剤は、無溶剤型接着剤であってもよく、溶剤型接着剤であってもよい。
【0075】
接着剤としては、ポリエーテル系接着剤、ポリエステル系接着剤、シリコーン系接着剤、ポリアミン系接着剤等のエポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、ゴム系接着剤、ビニル系接着剤、シリコーン系接着剤、エポキシ系接着剤、フェノール系接着剤及びオレフィン系接着剤などが挙げられる。バイオマス成分を含む接着剤も好ましく用いることができる。
接着剤は、好ましくは、ガスバリア性を有するポリアミン系接着剤、又はウレタン系接着剤である。ガスバリア性接着剤の具体例としては、三菱ガス化学社製の「マクシーブ」及びDIC社製の「Paslim」が挙げられる。
【0076】
接着剤層3は、ポリエステルポリオールとイソシアネート化合物とリン酸変性化合物を含む樹脂組成物の硬化物であってもよい。このような接着剤層3は、積層体10A1の酸素バリア性及び水蒸気バリア性を更に改善することができる。
【0077】
接着剤層3の厚さは、0.1μm乃至20μmの範囲内にあることが好ましく、0.5μm乃至10μmの範囲内にあることがより好ましく、1乃至5μmの範囲内にあることが更に好ましい。
【0078】
接着剤層3は、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法およびトランスファーロールコート法など従来公知の方法により、シーラント層2の上に塗布及び乾燥することにより形成することができる。」
(オ)「【0059】
<結晶化度の測定方法>
基材層1の結晶化度は、平行ビーム法を用いたX線回折法によって測定する。以下に結晶化度の測定方法の一例について説明する。
【0060】
先ず、基材層1のX線回折パターンを、リガク社製の広角X線回折装置を使用し、アウト・オブ・プレーン(Out-of-plane)測定で、回折角度10°~30°の範囲を2θ/θスキャンさせることで得る。X線は特性X線CuKαを用い、多層膜ミラーによりX線を平行化してX線を基材層1へ入射させ、受光ユニットには平板コリメータを取り付けたシンチレーション検出器を用いる。
【0061】
得られたX線回折パターンより、結晶成分のピーク面積と非晶成分のハローパターン面積とを求め、それら面積の合計に占める結晶成分のピーク面積の割合を結晶化度として算出する。
基材層1が複数の層を有する場合は、基材層1の最表面の何れか一方の結晶化度を測定する。
【0062】
基材層1がポリエチレンフィルムの場合、回折角度10°~30°の範囲でスキャンを行うと、(110)面と(200)面に対応する2つのシャープな結晶成分のピークとブロードな非晶成分のハローパターンとが観測される。これらを分離解析し、結晶成分のピークの面積と非晶成分のハローパターンの面積を算出すると、下記式(1)より結晶化度が求められる。
【0063】
結晶化度=結晶成分のピーク面積/(結晶成分のピーク面積+非晶成分のハローパターン面積)…(1)
平行ビーム法以外のX線回折法として集中法が知られているが、集中法では、樹脂フィルム等の表面に凹凸を有する試料の場合、測定面の位置ずれによるピークの広がり等の測定結果への影響が生じやすい。これに対し、平行ビーム法では、表面に凹凸を有する試料の場合であっても、測定面の位置ずれが測定結果へ及ぼす影響が小さい。
【0064】
一方で、基材層1は1軸延伸ないし2軸延伸であることが好ましいが、上述の通り、これらの判別法としては、X線回折法によるin-plane法を用いることが可能である。このin-plane法は、X線入射角度θ、及び、回折されたX線が検出器にて検知される角度2θを、それぞれ、上記のout-of-plane法において特定の結晶面に対応した回折ピーク、例えば、ポリエチレンフィルムの(110)面に対応した回折ピークが検出されたときの角度θ及び角度2θへ固定し、この状態で、測定対象であるフィルムを面内方向にスキャンすることで回折パターンを得るというものである。
【0065】
機械方向(MD)に一軸延伸された一軸延伸フィルムに対してin-plane測定を行うと、MD方向を0°と定義した場合、(110)面に対応したシャープな回折ピークを角度2θが約±90°の位置に有する回折パターンを得ることができる。一方で、二軸延伸されたフィルムの場合は、一軸延伸により得られた高次構造が2回目の延伸により乱され、異方性が低下しているため、この(110)面に対応したシャープな回折ピークを有している回折パターンは得られない。従って、in-plane測定は、一軸延伸フィルムと二軸延伸フィルムとを互いから区別する方法の一つとして挙げることができる。」
(カ)「【0079】
<1.6>効果
上述した積層体10A1は、耐熱性及びリサイクル性に優れている。これについて、以下に説明する。
【0080】
包装袋の製造には、一般に、積層体のシーラント層同士を接触させ、それらが接触した部分を治具で挟んで圧力及び熱を加えることにより、上記接触部を熱溶着(ヒートシール)させる工程がある。ヒートシール機の治具は高温になっており、治具に直接接触する基材層の表面は高温に曝される。その結果、耐熱性が劣るポリエチレンを基材層に使用した場合、基材層の表面が熱に冒されて治具に付着するなどの不具合が生じる場合がある。そのため、ポリエチレンを基材層に使用した従来の積層体は、製袋温度の適正条件が狭く、生産性が悪いことが課題となっていた。
【0081】
本発明者らは、種々のポリエチレンについて上記の結晶化度を測定した結果、基材層1の結晶化度が35%以上であると、基材層1が優れた耐熱性を示し、それ故、積層体10A1も優れた耐熱性を示すことを見出し、特には良好なヒートシール適性を達成することを見出した。積層体10A1では、基材層1として、一般に耐熱性が乏しいと言われているポリエチレンを用いている。しかしながら、基材層1の結晶化度を35%以上とすることにより、製袋のために行うヒートシールの温度範囲が拡がり、生産性の低下を生じることなく、更にはシール部の収縮による外観不良を生じることもなく、包装体を製造することができる。
【0082】
このように優れた耐熱性を有する積層体10A1は、基材層1の結晶化度を指標とするものであるため、積層体10A1の表面特性を簡易に測定し、把握することができ、包装材料としての品質を容易に安定化できる。
【0083】
更に、積層体10A1は、ポリエチレンを主成分とする基材層1及びシートヒール層を備えるため、ポリエチレンの割合を90質量%以上とすることが容易である。従って、積層体10A1はリサイクル性にも優れている。」
ウ 試験例
「【0249】
以下に、本発明に関連して行った試験の結果を記載する。
(1)試験A
(1.1)積層体の製造
(1.1.1)例1A
図2に示す積層体10A2を、以下の方法により製造した。
先ず、基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であるポリエチレンフィルムを準備した。なお、本例並びに以下に記載する例及び比較例において示す結晶化度は、上述した測定方法により測定したものである。
【0250】
次に、基材層の一方の面に、無機化合物層として、酸化ケイ素(SiOx)蒸着膜を形成した。その後、無機化合物層上に印刷層を形成した。
【0251】
次に、基材層の印刷層を形成した面に、ドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を塗布した。そして、この接着剤層を介して、シーラント層である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルム(厚さ60μm)を基材層へ貼り合せた。
以上のようにして、積層体を作成した。
【0252】
(1.1.2)例2A
図2に示す積層体10A2を、無機化合物層を設けなかったこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0253】
(1.1.3)例3A
図2に示す積層体10A2を、接着剤としてドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりに、ポリアミン系ガスバリア接着剤を用いたこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0254】
(1.1.4)例4A
図2に示す積層体10A2を、基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が71.8%であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0255】
(1.1.5)例5A
図2に示す積層体10A2を、基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が55.9%であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0256】
(1.1.6)例6A
図2に示す積層体10A2を、基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが20μmであり、結晶化度が54.1%であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0257】
(1.1.7)例7A
図2に示す積層体10A2を、基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが30μmであり、結晶化度が55.9%であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0258】
(1.1.8)例8A
図2に示す積層体10A2を、シーラント層として、厚さが60μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルムを使用する代わりに、厚さが40μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0259】
(1.1.9)例9A
図2に示す積層体10A2を、シーラント層として、厚さが60μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルムを使用する代わりに、厚さが120μmの直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)フィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0260】
(1.1.10)例10A
図2に示す積層体10A2を、無機化合物層を設けず、且つ、接着剤としてドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりに、ポリアミン系ガスバリア接着剤を用いたこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0261】
(1.1.11)例11A
図2に示す積層体10A2を、無機化合物層を設けず、且つ、接着剤としてドライラミネート用接着剤(ウレタン系接着剤)を使用する代わりに、ウレタン系ガスバリア接着剤を用いたこと以外は、例1Aと同様の方法により製造した。
【0262】
(1.1.12)比較例1A
基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが32μmであり、結晶化度が14.8%であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により積層体を製造した。
【0263】
(1.1.13)比較例2A
基材層として、厚さが25μmであり、結晶化度が58.5%であるポリエチレンフィルムを使用する代わりに、厚さが25μmであり、結晶化度が20.6%であるポリエチレンフィルムを使用したこと以外は、例1Aと同様の方法により積層体を製造した。」
エ 測定及び評価方法、結果
「【0264】
(1.2)測定及び評価方法
上記の積層体の製造に使用した基材層について、上述した広角X線回折法によるin-plane測定を行った。そして、この測定によって取得した回折パターンが(110)面に対応したシャープな回折ピークを有しているかを調べた。
【0265】
また、上記の積層体について、シール性、耐熱性、視認性、及びガスバリア性を評価した。シール性、耐熱性、視認性、及びガスバリア性の評価方法を以下に記載する。
【0266】
(1.2.1)シール性の評価方法
積層体を10cm角に切り出してなる試料を、シーラント層が内側になるように二つ折りし、ヒートシールテスターを用いてヒートシールした。具体的には、先ず、下面シール温度を100℃に設定するとともに、上面シール温度を120℃に設定して、0.1MPaの圧力を1秒間加えた。そして、シール面の溶融の有無を確認するとともに、二つ折りした試料の上面のうちヒートシールバーを当てた領域を観察した。シール面が溶融しておらず且つ試料上面も溶融していなかった場合には、シール面及び試料上面の少なくとも一方が溶融するまで、下面シール温度を100℃に固定したまま、上面シール温度を10℃ずつ高めて、上記と同様の加圧及び観察を行った。そして、下記基準により、シール性を評価した。
A:試料上面に溶融がなく、外観上問題がなかった。
B:試料上面が溶融しており、外観上問題があった。
【0267】
(1.2.2)耐熱性の評価方法
積層体を10cm角に切り出してなる試料を、シーラント層が内側になるように二つ折りした。次に、ヒートシールテスターの下面シール温度を30℃に設定するとともに、上面シール温度を170℃に設定して、二つ折りした試料へ0.2MPaの圧力を1秒間加えた。そして、シール面の溶融の有無を確認するとともに、二つ折りした試料の上面のうちヒートシールバーを当てた領域がヒートシールバーに付着しているか観察し、下記基準により耐熱性を評価した。
A:試料上面がヒートシールバーへ付着しなかった。
B:試料上面がヒートシールバーへ付着した。
【0268】
(1.2.3)視認性の評価方法
印刷層が表示するパターンを基材層側から目視により観察し、下記基準により視認性を評価した。
A:印刷層が表示するパターンを鮮明に確認できた。
B:印刷層が表示するパターンがぼやけて不鮮明であった。
【0269】
(1.2.4)ガスバリア性の評価方法
積層体をボイル処理し、その後、30℃、相対湿度70%における酸素透過速度(Oxygen Transmission Rate、OTR)を測定した。この測定は、JIS K-7126、B法に準拠して行った。そして、酸素透過速度を下記基準へ参照して、ガスバリア性を評価した。
A:OTRが10cc/m2・day・atm未満であった。
B:OTRが10cc/m2・day・atm以上であった。
【0270】
(1.3)結果
上記測定及び評価の結果を、以下の表1-1及び表1-2に纏める。
【0271】
【表1-1】
[図:0001437367000016.jpg]
【0272】
【表1-2】
[図:0001437367000017.jpg]
【0273】
表1-1及び表1-2に示すように、基材層の結晶化度が35%以上である積層体は、何れもシール性、耐熱性及び視認性が良好であった。これに対して、基材層の結晶化度が35%未満である積層体は、何れもシール性、耐熱性及び視認性が不十分であった。」
(2)実施可能要件に係る申立理由についての判断
ア 本件発明は物の発明である。物の発明における発明の実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号の要件を満たすためには、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基いて、過度の試行錯誤をすることなく、その物を製造し、使用することができる程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に記載されていることを要するものと解される。
イ そこで、発明の詳細な説明を参照すると、積層体の全体構成については上記(1)イ(ア)に、基材層については同(イ)に、シーラント層については同(ウ)に、接着剤層については同(エ)に、結晶化度の測定方法については同(オ)に示されるように、それぞれ記載されている。
ウ そして、上記(1)ウに示すように、具体的に、例1A~例11Aの積層体を製造し、上記(1)エに示すように、例1A~例11Aの積層体が所定の性能を満たし使用できることを確認していることから、例1A~例11Aの積層体からなる包装材料についても所定の性能を満たし使用できるものと理解できる。
以上より、当業者は、過度の試行錯誤をすることなく、その物を製造し、使用することができる程度に、発明の詳細な説明は、明確かつ十分に記載されているものといえる。
エ 申立人2は、ポリエチレンの密度と結晶化度とは相関関係にあることは技術常識である一方、本件明細書の実施例には、まったく同じ密度を有するポリエチレンフィルムでも、結晶化度に幅を有することが記載されており、これは前記技術常識に反するものであり、このようなポリエチレンフィルムは、どのように作製するのか理解できない旨主張する(上記1 申立理由2)。
しかし、本件明細書の【0058】に「基材層1の結晶化度は、基材層1に使用するポリエチレンフィルムの延伸度合いや、フィルム製造時又は製造後の熱履歴を制御することなどで調整することができる。例えば、製膜後に徐冷すると結晶化度は高まり、急冷すると結晶化度は下がる。また、結晶核剤などの添加物を配合することで結晶化度を向上させることも可能である。」と記載されるように、ポリエチレンフィルムの結晶化度は、延伸度合いや熱履歴等により調整し得るものである。そして、延伸等により結晶化度を調整したポリエチレンフィルムを、発明の詳細な説明に記載された結晶化度の測定方法(上記(1)イ(オ))で測定し、所定の結晶化度を満たすポリエチレンフィルムを選択することができる。また、本件明細書の【0052】、【0138】に、基材層1、中間層8には添加剤として「架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、及び改質用樹脂」を含んでよいことが記載されており、これらの添加剤を加えることにより異なる密度で同じ結晶化度のポリエチレンフィルムを作製することができることから、同じ密度で異なる結晶化度のポリエチレンフィルムも作製することができることが理解できる。
したがって、申立人2の上記主張は採用できない。
以上より、実施可能要件に係る申立理由2には理由がない。
(3)サポート要件に係る申立理由についての判断
ア 特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 本件発明の解決しようとする課題は、「ポリエチレンを含み、リサイクル適性を有する積層体において、耐熱性又は強度に優れた積層体、並びに、これを含む包装体及び包装物品を提供すること」(【0006】)である。
ウ 上記課題の解決にあたり、発明の詳細な説明には、次の記載がある。
(ア)基材層について
・「基材層1はポリエチレンを含んでいる。好ましくは、基材層1はポリエチレンからなる。」(【0030】)
・「基材層1が延伸フィルムである場合、基材層1は、一軸延伸フィルムであってもよく、二軸延伸フィルムであってもよい。基材層1として一軸延伸フィルムを使用すると、製袋時の耐熱性、即ち、後述するシール性がさらに向上する。基材層1として二軸延伸フィルムを使用すると、積層体10A1を包装材料として使用した包装物品の落下強度が向上する。」(【0042】)
・「基材層1は、添加剤を更に含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、架橋剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、滑(スリップ)剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、補強剤、帯電防止剤、顔料、及び改質用樹脂などが挙げられる。」(【0052】)
・「基材層1に占めるポリエチレンの割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。一例によると、基材層1は、ポリエチレンからなる。他の例によると、基材層1はポリエチレンと添加剤とからなる。」(【0053】)
(イ)シーラント層について
・「シーラント層2は、基材層1と向き合っている。シーラント層2はポリエチレンを含んでいる。好ましくは、シーラント層2はポリエチレンからなる。ポリエチレンとしては、例えば、基材層1が含むポリエチレンについて上述したものを使用することができる」(【0066】)
・「シーラント層2は、上述した添加剤を更に含んでいてもよい。シーラント層2に占めるポリエチレンの割合は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。一例によると、シーラント層2は、ポリエチレンからなる。他の例によると、シーラント層2はポリエチレンと添加剤とからなる。」(【0068】)
エ そして、上記(1)エに示すように、本件発明の構成を備える、例1A~例11Aの積層体は、上記課題を解決することが確認されている。
発明の詳細な説明の、「更に、積層体10A1は、ポリエチレンを主成分とする基材層1及びシートヒール層を備えるため、ポリエチレンの割合を90質量%以上とすることが容易である。従って、積層体10A1はリサイクル性にも優れている。」(【0083】)との効果の記載にあるように、基材層、シーラント層の各層が、いずれもポリエチレンを含むことにより、リサイクル性が向上するものと理解でき、同じく、「基材層の結晶化度が35%以上である積層体は、何れもシール性、耐熱性及び視認性が良好であった。」(【0273】)との試験例の評価の記載から、基材層の結晶化度が40%以上75%以下であることにより、耐熱性に優れた積層体からなる包装材料とすることができることが理解できるから、本件発明1は、上記課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものではない。
オ 申立人2は、本件発明1は、「前記基材層と前記シーラント層とはポリエチレンを含み」と規定するものであるが、これは各層にポリエチレン以外の樹脂材料を多く含むものを包含するものであり、このように、ポリエチレンに加えてポリエチレン以外の樹脂材料を多く含むものは、リサイクル適正を有するという本件特許の解決しようとする課題を解決するものとはいえない旨主張する(上記1 申立理由3)。
しかしながら、本件特許の明細書の【0004】に「リサイクル性の観点から、ポリエチレン含有率の高い包装材料や、包装用フィルムをできるだけ単純な層構成とするための技術が提案されている(例えば、特許文献2及び3を参照)。しかしながら、例えば、強度や耐熱性などの面から軽包装の用途に留まるなどの問題があり、包装材料としての用途に応じて求められる様々な特性を満たすための改善の余地がある。」と記載されており、本件は、リサイクル性を上げること自体を目的としているのではなく、リサイクル性が高いものであったとしても、強度や耐熱性においても遜色のないものを得ようとするものであり、このことは、本件特許の明細書の【0006】で把握される発明が解決しようとする課題に符合するものである。そして、上記エでも示したとおり、上記(1)ウ及びエに示す、本件発明1の構成を備える例1A~例11Aの積層体が、本件特許に係る発明が解決しようとする課題を解決するものとして記載されているものである。そうすると、本件発明1は、各層にポリエチレン以外の樹脂材料を含むものを包含するものではあるが、強度や耐熱性においても遜色のないものを得ることができるものを示しているといえる。
したがって、申立人2の上記主張は採用できない。
カ 以上より、サポート要件に係る申立理由3には理由がない。
(4)小括
よって、申立理由2及び3には理由がない。
4 申立理由4についての判断
(1)請求項に係る発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという規範で判断され、すなわち、ある具体的な物や方法が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるように記載されていることが必要である。以下、検討する。
(2)本件発明1は、特許請求の範囲の請求項1の記載で特定される「包装材料」に関するものであるが、当該特許請求の範囲の請求項1の記載は明確であり、ある具体的な物が本件発明1の範囲に入るか否かを当業者が理解できるものである。
また同様に、請求項1の記載を引用する請求項3の記載で特定される本件発明3についても明確であり、ある具体的な物が本件発明3の範囲に入るか否かを当業者が理解できるものである。
(3)申立人2の主張について
申立人2は特許異議申立書において、上記1の主張をしているが、上記(2)で説示したように、特許請求の範囲の請求項3の記載で特定される本件発明3は明確であり、ある具体的な物が請求項に係る発明の範囲に入るか否かを当業者が理解できるものである。すなわち、ある具体的な物が「リン酸変性化合物を含む樹脂組成物の硬化物」に該当するか否かについては、当業者であれば理解できるものであり、このことは、「リン酸変性化合物」がどのような化合物をリン酸で変性したものなのかについて特定することまでは要さないということはいうまでもない。
したがって、申立人2の主張は採用することができない。
(4)小括
よって、申立理由4には理由がない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1~6に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700375