2023-700318
W1/O/W2型乳化食品
- 審判番号
- 2023-700318
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-077136外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7143618
- 請求日
- 2023年03月28日
- 審決日
- 2023年05月26日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.537-Y (A23D) / P1651.121-Y (A23D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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特許第7143618号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、平成30年4月12日の出願であって、令和4年9月20日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年同月29日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年3月28日に特許異議申立人 森田 弘潤(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし3)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】内水相(W1)、油相(O)及び外水相(W2)から構成されるW1/O/W2型乳化食品であって、(1)乳化食品の全重量に対する油相の量は、5重量%以上、35重量%以下であり、(2)内水相(W1)は、酢酸及び酢酸1重量部あたり、0.001重量部以上、0.0025重量部以下の酢酸エチルを含有し、続きを表示(全12行)(3)外水相(W2)は、酢酸及び酢酸1重量部あたり、0.0018重量部以下の酢酸エチルを含有する、乳化食品であって、乳化食品は、酢酸1重量部あたり、0.002重量部以上、0.0035重量部以下の酢酸エチルを含有し、乳化食品中の酢酸濃度は、0.1重量以上、5重量%以下である、乳化食品。【請求項2】(2)内水相(W1)は、酢酸及び酢酸1重量部あたり、0.0016重量部以上、0.0025重量部以下の酢酸エチルを含有し、乳化食品は、酢酸1重量部あたり、0.0024重量部以上、0.0032重量部以下の酢酸エチルを含有する、請求項1に記載の乳化食品。【請求項3】乳化食品が、半固体状ドレッシングまたはサラダクリーミードレッシングである、請求項1又は2に記載の乳化食品。」
第3 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
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令和5年3月28日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明1の構成要件C「(2)内水相(W1)は、酢酸及び酢酸1重量部あたり、0.001重量部以上、0.0025重量部以下の酢酸エチルを含有し」及び本件特許発明2の構成要件C-2「(2)内水相(W1)は、酢酸及び酢酸1重量部あたり、0.0016重量部以上、0.0025重量部以下の酢酸エチルを含有し」は、内水相(W1)の含有成分として、酢酸及び酢酸エチルを規定すると共に、内水相(W1)中の酢酸エチルの割合を規定している。
また、本件特許発明1の構成要件D「(3)外水相(W2)は、酢酸及び酢酸1重量部あたり、0.0018重量部以下の酢酸エチルを含有する」は、前記構成要件C及びC-2と同様、外水相(W2)の含有成分として、酢酸及び酢酸エチルを規定すると共に、外水相(W2)中の酢酸エチルの割合を規定している。
そうすると、前記各構成要件において共通する「酢酸及び酢酸1重量部あたり」に係る部分の2つの「酢酸」は、構成要件C及びC-2の場合は、内水相(W1)に含まれる「酢酸」と、構成要件Dの場合は、外水相(W2)に含まれる「酢酸」と理解される。
しかしながら、本件明細書の内水相(W1)中の酢酸エチルの割合に係る段落0012、及び外水相(W2)中の酢酸エチルの割合に係る段落0014には、酢酸エチルの割合をいずれも「乳化食品に含まれる酢酸1重量部あたり」で記載されている。
してみると、前記各構成要件で共通する「酢酸及び酢酸1重量部あたり」に係る部分の2つの「酢酸」のうち、先の「酢酸」は、構成要件C及びC-2の場合は、内水相(W1)に含まれる「酢酸」、後の「酢酸」は、乳化食品に含まれる「酢酸」と、内水相(W1)に係る同一の文言ではあるにも拘わらず、意味することが異なる。同様に、構成要件Dの場合は、先の「酢酸」は、外水相(W2)に含まれる「酢酸」、後の「酢酸」は、乳化食品に含まれる「酢酸」であり、意味することが異なる。
よって、本件特許発明1の構成要件C及び構成要件D、並びに本件特許発明2の構成要件C-2は、各構成要件において共通する「酢酸及び酢酸1重量部あたり」に係る部分の2つの「酢酸」において、意味することが同一であるのか、あるいは異なるのか、その解釈において当業者に不測の不利益を被ることとなり、不明確と謂わざるを得ない。
2 申立理由2(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許発明1ないし3は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 証拠方法
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第4 当審の判断
1 証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「W/O/W型乳化調味料」に関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、下線は当審で付したものである。
・「【請求項1】
外水相に油相の油滴が分散し、該油相に内水相の水滴が分散しているW/O/W型乳化調味料であって、
該W/O/W型乳化調味料が、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、有機酸、食用油脂15質量%以上30質量%未満、食塩1~6質量%を含有し、
内水相が増粘剤を含有し
外水相が卵黄を含有し、
内水相における水分量が、W/O/W型乳化調味料の40~60質量%、
外水相における水分量が、W/O/W型乳化調味料の10質量%未満、
外水相に分散している油相の油滴の平均粒子径が10~25μmであり、
粒子径3μmを超える内水相の水滴の含有数が5以下又は0である粒子径10μm以上の油相の油滴を含有し
W/O/W型乳化調味料の粘度(25℃)が4~800Pa・sである、
W/O/W型乳化調味料。」
・「【0008】
本発明は、W/O/W型乳化調味料において、酸味を抑制し、油脂特有のコク味が強く感じられるようにすること、また、W/O/W型乳化調味料の乳化安定性を高めると共に、W/O/W型乳化調味料を使用した食品からの離水を効果的に抑制することを課題とする。」
・「【0012】
本発明のW/O/W型乳化調味料によれば、食用油脂の含有量が15質量%以上30質量%未満と低いので、低カロリーの乳化調味料となり、乳化調味料の材料コストも低下する。
【0013】
また、外水相における水分量がW/O/W型乳化調味料の10質量%未満と低いので、本発明のW/O/W型乳化調味料の食味は、有機酸による酸味が抑えられ、油脂特有のコク味が強く感じられるものとなる。さらに、外水相に含まれる水分量が少ないことにより外水相に含まれる食塩量も少なくなるので、W/O/W型乳化調味料を食品に適用した場合の食品からの離水を抑制することができる。」
・「【0025】
2.内水相の成分
内水相は、水、増粘剤、有機酸及び食塩その他の調味料等を含有することができる。
・・・(略)・・・
【0032】
2-2 有機酸
内水相W1に含有させる有機酸としては、食用として供されるものであれば特に限定するものではないが、例えば、食酢、酢酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、グルコン酸などを挙げることができる。このうち、食酢としては、醸造酢、ワインビネガーなどを使用することができる。
【0033】
内水相W1における有機酸の含有量は、乳化調味料Aの全体に対して0.2~2%とすることができ、さらに0.5~1.5%とすることができる。有機酸の含有量が前記数値の範囲であることにより、風味が良好であり、微生物の繁殖を抑制し、かつ、油相Oの油滴Pの安定化および内水相W2の水滴Qの微細化に寄与することができる。
また、食感および離水抑制効果が優れている点で、有機酸全量に対する内水相W1の有機酸含有量の質量比が70/100~90/100であるとよく、さらに75/100~90/100であるとよい。」
・「【0037】
3.外水相の成分
外水相W2は、水及び卵黄を含有し、さらに、有機酸、増粘剤、卵白、食塩その他の調味料等を含有することができる。
・・・(略)・・・
【0040】
3-2 有機酸
外水相W2には、内水相W1について記載した上述の有機酸を含有させることができる。ただし、W/O/W型乳化調味料Aの酸味を抑える点から、外水相W2における有機酸の含有量は、内水相W1における有機酸の含有量よりも少なくすることが好ましく、特に、W/O/W型乳化調味料A全体に対して0.1~0.5%とすることができ、さらに0.2~0.4%とすることができる。有機酸の含有量が前記数値の範囲であることにより、W/O/W型乳化調味料Aの酸味が適度に感じられて風味が良好であり、微生物の繁殖を抑制することができ、かつ、油相Oの油滴Pの安定化および内水相W2の水滴Qの微細化に寄与することができる。
また、食感および離水抑制効果が優れている点で、有機酸全量に対する外水相W2の有機酸含有量の質量比が10/100~30/100であるとよく、さらに10/100~25/100であるとよい。」
・「【0050】
4.油相の成分
油相Oは、食用油脂及びポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルを含有することができる。」
・・・(略)・・・
【0053】
4-2 ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル
ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルは、本発明のW/O/W型乳化調味料Aにおいて乳化剤として機能し、食用油脂と共に油相Oを形成する。
・・・(略)・・・
【0055】
また、油相Oにおけるポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルの含有量は、W/O/W型乳化調味料Aに対して0.1~5%とすることができ、特に、W/O/W型乳化調味料Aの乳化安定性を高めると共に、W/O/W型乳化調味料Aを使用した食品からの離水を効果的に抑制することができる点から、0.5~3%とすることができる。」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に【請求項1】に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「外水相に油相の油滴が分散し、該油相に内水相の水滴が分散しているW/O/W型乳化調味料であって、該W/O/W型乳化調味料が、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、有機酸、食用油脂15質量%以上30質量%未満、食塩1~6質量%を含有する、W/O/W型乳化調味料。」
(2)甲2に記載された事項
甲2には、「マイルドホワイトビネガー」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【請求項1】 酢酸100重量部あたり、0.04~0.4容量部の酢酸エチル、0.01~1.33容量部のエチルアルコール及び0.00007~0.007重量部のクエン酸を含有することを特徴とするマイルドホワイトビネガー。」
・「【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、刺激臭が弱く、かつ刺激味が軽減された高酸度のマイルドホワイトビネガーを提供することにあり、乳化タイプのドレッシング等の製造に用いた場合に、該ドレッシング等の香味をマイルドにすることができるホワイトビネガーを提供することにある。」
・「【0034】実施例1
(1)ホワイトビネガーの製造
5L容のジャーファーメンターに下記組成の原料液を発酵槽容積の約半分に相当する量仕込み、これに凍結保存してあったアセトバクター・アルトアセチゲネスMH-24(FERM BP-491)を接種し、酢酸発酵を開始した。発酵は、通気攪拌を行う深部発酵法を採用して行った。なお、他の条件は、温度30℃、回転数600rpm、通気量0.15vvmとした。
【0035】〔原料液の組成〕
酵母エキス(粉): 0.2%(w/v)
グルコース(粉): 0.2%(w/v)
【0036】菌体の明らかな増殖が認められ、残留エタノール濃度が2%(v/v)になった段階で、下記組成の原料液(以下、50%エタノール含有液と称する。)を流加し、発酵液のエタノール濃度が1~2%(v/v)の範囲となるように制御した。
【0037】〔原料液の組成〕
酵母エキス(粉): 0.2%(w/v)
グルコース(粉): 0.2%(w/v)
・・・(略)・・・
【0039】発酵液を遠心分離及び0.45μmのフィルターを通過させることによって酢酸菌体等を除去した。得られた発酵液の酸度を15%に調整し、30℃で1ヶ月熟成したものを試料1(本発明品1)とした。また、上記原料液において、酵母エキスを他の市販品に代え、かつ酢酸発酵の終了をエタノール濃度が0.17%(v/v)になった時点とし、除菌発酵液の熟成を2℃で2週間行ったものを試料2(本発明品2)とした。
【0040】・・・(略)・・・これら各試料の分析値を第1表に示す。
【0041】
【表1】
[図:0001398330000001.jpg]
【0042】注)第1表中の( )内の数値は、酢酸(w/v)を100重量部とした場合の相対比率の数値を示す。
【0043】(2)マヨネーズの製造
上記(1)で得た各試料(いずれも酸度15%のホワイトビネガー)を用い、以下の処方により、マヨネーズを製造した。
【0044】〔処方〕
水 : 30.0ml
【0045】まず、卵黄と精製塩を混合し、細かく攪拌しながらサラダ油を滴下し、硬くなってきたところで、一旦、滴下を止め、上記(1)で得た醸造酢と水の混合物を少量づつ加えた。その後、残りのサラダ油及び白コショウを攪拌しながら加えてマヨネーズを得た。」
(3)甲3に記載された事項
甲3には、「半固体状ドレッシング」、「マヨネーズ」及び「サラダクリーミードレッシング」の定義が記載されている。
2 申立理由1(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
本件特許の請求項1ないし3(以下、順に「請求項1」のようにいう。)の記載は、上記第2のとおりである。
そして、請求項1の「(2)内水相(W1)は、酢酸及び酢酸1重量部あたり、0.001重量部以上、0.0025重量部以下の酢酸エチルを含有し」及び「(3)外水相(W2)は、酢酸及び酢酸1重量部あたり、0.0018重量部以下の酢酸エチルを含有する」という記載における「酢酸」は、「酢酸」自体を意味するものであることは当業者に明らかであるし、上記記載における「酢酸1重量部あたり」は、「乳化食品に含まれる酢酸1重量部あたり」を意味するものであることは、本件特許の発明の詳細な説明の【0012】、【0014】及び実施例に関する記載を考慮すれば、当業者に明らかである。
また、請求項2の「(2)内水相(W1)は、酢酸及び酢酸1重量部あたり、0.0016重量部以上、0.0025重量部以下の酢酸エチルを含有し」という記載における「酢酸」及び「酢酸1重量部あたり」についても同様である。
さらに、他に請求項1ないし3に、それ自体不明確な記載はない。
したがって、本件特許発明1ないし3に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の申立理由1の主張について検討する。
請求項1及び2に記載された「酢酸」及び「酢酸1重量部あたり」の意味は、上記(2)のとおりであり、本件特許発明1ないし3に関して、特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
したがって、申立理由1の主張は採用できない。
(4)申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由1によっては取り消すことはできない。
3 申立理由2(甲1に基づく進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明における「外水相」は本件特許発明1における「外水相(W2)」に相当し、以下同様に、「油相」は「油相(O)」に、「内水相」は「内水相(W1)」に、「W/O/W型調味料」は「W1/O/W2型乳化食品」に、それぞれ相当する。
甲1発明における「油相」は「食用油脂」及び「ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル」から形成されるものである(甲1の【0050】及び【0053】)ところ、甲1発明は「食用油脂」を「15質量%以上30質量%未満」含有するものであり、甲1発明における「ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル」の含有量は「0.1~5%」である(同【0055】)から、甲1発明は、本件特許発明1における「乳化食品の全重量に対する油相の量は、5重量%以上、35重量%以下であり」という発明特定事項を充足する。
したがって、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「内水相(W1)、油相(O)及び外水相(W2)から構成されるW1/O/W2型乳化食品であって、(1)乳化食品の全重量に対する油相の量は、5重量%以上、35重量%以下である、乳化食品。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
本件特許発明1においては、「(2)内水相(W1)は、酢酸及び酢酸1重量部あたり、0.001重量部以上、0.0025重量部以下の酢酸エチルを含有し、
(3)外水相(W2)は、酢酸及び酢酸1重量部あたり、0.0018重量部以下の酢酸エチルを含有する、乳化食品であって、
乳化食品は、酢酸1重量部あたり、0.002重量部以上、0.0035重量部以下の酢酸エチルを含有し」と特定されているのに対して、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2>
本件特許発明1においては、「乳化食品中の酢酸濃度は、0.1重量以上、5重量%以下である」と特定されているのに対して、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点1について検討する。
甲1には、「酢酸エチル」に関する記載は全くなく、ましてや、甲1発明における「外水相」及び「内水相」に「酢酸エチル」を所定の数値範囲内の量含有させることは記載も示唆もされていない。
また、甲1には、甲2に「本発明品1」及び「本発明品2」として記載された「マイルドホワイトビネガー」を用いることの動機付けとなる記載もない。
甲2には、「本発明品1」及び「本発明品2」として記載された「マイルドホワイトビネガー」が酢酸エチルを含有することが記載されているにとどまり、甲1発明における「外水相」及び「内水相」に「酢酸エチル」を所定の数値範囲内の量含有させることの動機付けとなる記載はないし、「本発明品1」及び「本発明品2」として記載された「マイルドホワイトビネガー」を甲1発明に用いることの動機付けとなる記載もない。
甲3には、「半固体状ドレッシング」、「マヨネーズ」及び「サラダクリーミードレッシング」の定義が記載されているにすぎない。
すなわち、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載は、甲1ないし3のいずれにもない。
したがって、甲1ないし3に記載された事項を考慮しても、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「低カロリーでありながら酸味の抑制されたキレのある乳化食品を提供することができる」(本件特許の発明の詳細な説明の【0008】)という効果は、甲1発明及び甲1ないし3に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の特許異議申立書第11ないし19ページにおける主張は、おおむね、甲1発明に甲2に「本発明品1」及び「本発明品2」として記載された「マイルドホワイトビネガー」を適用した場合に、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすようになる又は相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすようにすることは当業者が容易に想到し得るというものであるが、上記イのとおり、甲1発明に甲2に記載された事項を適用する動機付けはないから、該主張は採用できない。
エ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明及び甲1ないし3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2)本件特許発明2及び3について
本件特許発明2及び3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明及び甲1ないし3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし3は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。
第5 結語
上記第4のとおり、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700318