特許異議申立
2024-701146
ランダムエステル交換油
- 審判番号
- 2024-701146
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-513533
- 登録番号
- 7491487
- 請求日
- 2024年11月27日
- 審決日
- 2025年08月01日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】不二製油株式会社
- 【異議申立人】中野 圭二
- 審判長/審判官
- 審判長 柴田 昌弘
- 審判官 松本 陶子
- 審判官 加藤 友也
- 分類
- P1651.113-YAA(A23D) / P1651.121-YAA(A23D) / P1651.537-YAA(A23D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7491487号発明「ランダムエステル交換油」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7491487号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び2〕、3、4、〔5ないし7〕、〔8及び9〕、10並びに11について訂正することを認める。
特許第7491487号の請求項1ないし4及び6ないし11に係る特許を維持する。
特許第7491487号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7491487号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、2023年(令和5年)8月31日(優先権主張 令和4年9月2日)を国際出願日とする出願であって、令和6年5月20日にその特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、同年同月28日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年11月27日に特許異議申立人 中野 圭二(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし9)がされ、令和7年2月17日付けで取消理由が通知され、同年4月16日に特許権者 不二製油株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年4月25日付けで特許異議申立人に対し訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)が通知され、それに対し特許異議申立人からは何ら応答がなかったものである。
なお、令和7年5月21日付けで特許権者及び特許異議申立人双方に対し手続続行の通知がされている。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和7年4月16日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1を、
「下記(A)~(C)の全てを満たす、ランダムエステル交換油(ただし、以下に挙げる油脂組成物1~3を除く) 。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下
(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下
油脂組成物1:パーム核オレイン40.0質量%、ハイオレイックヒマワリ油10.0質量%、パームスーパーオレイン30.0質量%、米油20.0質量%を混合溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭を実施した油脂組成物。
油脂組成物2:パーム核オレイン35.0質量%、ハイオレイックヒマワリ油20.0質量%、パームスーパーオレイン30.0質量%、ハイエルシンナタネ油15.0%質量%を混合溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭を実施した油脂組成物。
油脂組成物3:パーム核オレイン45.0質量%、ハイオレイックナタネ油20.0質量%、パームオレイン25.0質量%、米油10.0%質量%を混合溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭を実施した油脂組成物。」に訂正する。併せて、請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
訂正前の特許請求の範囲の請求項1を直接的に引用する請求項3を、独立形式に改めるとともに、
「下記(A)~(C)の全てを満たす、ランダムエステル交換油を含む、チョコレート類。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下
(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下」に訂正する。
(3)訂正事項3
訂正前の特許請求の範囲の請求項1を直接的に引用する請求項4を、独立形式に改めるとともに、
「チョコレート類中の油脂分が10質量%~70質量%、チョコレート類中の油脂分中にカカオバターを3質量%~40質量%、及び、下記(A)~(C)の全てを満たす、ランダムエステル交換油を5質量%~97質量%含有する、チョコレート類。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下
(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下」に訂正する。
(4)訂正事項4
訂正前の特許請求の範囲の請求項3の請求項2を引用するものについて、
「下記(A)~(D)の全てを満たす、ランダムエステル交換油を含む、チョコレート類。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下
(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下
(D)構成脂肪酸組成中、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が5質量%以上30質量%以下」と記載し、新たに独立形式の請求項10とする。
(5)訂正事項5
訂正前の特許請求の範囲の請求項4の請求項2を引用するものについて、
「チョコレート類中の油脂分が10質量%~70質量%、チョコレート類中の油脂分中にカカオバターを3質量%~40質量%、及び、下記(A)~(D)の全てを満たす、ランダムエステル交換油を5質量%~97質量%含有する、チョコレート類。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下
(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下
(D)構成脂肪酸組成中、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が5質量%以上30質量%以下」と記載し、新たに独立形式の請求項11とする。
(6)訂正事項6
訂正前の特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(7)訂正事項7
訂正前の特許請求の範囲の請求項6を、独立形式に改めるとともに、
「下記(A)~(C)の全てを満たす、ランダムエステル交換油を使用することを特徴とする、チョコレート類のグレーニングの抑制方法。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下
(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下」に訂正する。
(8)訂正事項8
訂正前の特許請求の範囲の請求項7を、請求項5又は請求項6に従属するものから、請求項6に従属するものに訂正する。
(9)訂正事項9
訂正前の特許請求の範囲の請求項8を、
「下記(A)~(C)の全てを満たすランダムエステル交換油となるように、原料油脂を配合する、ランダムエステル交換油の製造方法(ただし、以下に挙げる油脂組成物1~3の製造方法を除く)。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下
(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下
油脂組成物1:パーム核オレイン40.0質量%、ハイオレイックヒマワリ油10.0質量%、パームスーパーオレイン30.0質量%、米油20.0質量%を混合溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭を実施した油脂組成物。
油脂組成物2:パーム核オレイン35.0質量%、ハイオレイックヒマワリ油20.0質量%、パームスーパーオレイン30.0質量%、ハイエルシンナタネ油15.0%質量%を混合溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭を実施した油脂組成物。
油脂組成物3:パーム核オレイン45.0質量%、ハイオレイックナタネ油20.0質量%、パームオレイン25.0質量%、米油10.0%質量%を混合溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭を実施した油脂組成物。」に訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「ランダムエステル交換油」から「以下に挙げる油脂組成物1~3」(当審注:「以下に挙げる油脂組成物1~3」については、上記1(1)を参照。以下、同様。)を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2についての訂正について
訂正事項1による請求項2についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)請求項3についての訂正について
訂正事項2による請求項3についての訂正は、訂正前の請求項2の記載を引用する請求項3を削除し、訂正前の請求項1の記載を直接的に引用する請求項3の記載を請求項1を引用しない独立形式に書き下したものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項2による請求項3についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
4)請求項4についての訂正について
訂正事項3による請求項4についての訂正は、訂正前の請求項2の記載を引用する請求項4を削除し、訂正前の請求項1の記載を直接的に引用する請求項4の記載を請求項1を引用しない独立形式に書き下したものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項3による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)請求項5についての訂正について
訂正事項6による請求項5についての訂正は、請求項5を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項6による請求項5についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)請求項6についての訂正について
訂正事項7による請求項6についての訂正は、訂正前の請求項5の記載を引用する請求項6の記載を請求項5を引用しない独立形式に書き下したものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項7による請求項6についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)請求項7についての訂正について
訂正事項7による請求項7についての訂正は、請求項6についての訂正と同様に他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものである。
訂正事項8による請求項7についての訂正は、引用請求項を削減するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項7及び8による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)請求項8についての訂正について
訂正事項9による請求項8についての訂正は、「ランダムエステル交換油の製造方法」から「以下に挙げる油脂組成物1~3の製造方法」を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項9による請求項8についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(9)請求項9についての訂正について
訂正事項9による請求項9についての訂正は、請求項8についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項9による請求項8についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(10)請求項10についての訂正について
訂正事項4による請求項10についての訂正は、訂正前の請求項1の記載を直接的に引用する請求項3を削除し、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用する請求項3の記載を請求項1及び2を引用しない形式に書き下した上で、新たに請求項10とするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項4による請求項10についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(11)請求項11についての訂正について
訂正事項5による請求項11についての訂正は、訂正前の請求項1の記載を直接的に引用する請求項4を削除し、訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を引用する請求項4の記載を請求項1及び2を引用しない形式に書き下した上で、新たに請求項11とするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項5による請求項11についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし9による請求項1ないし11についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1又は4号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし9による請求項1ないし11についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし4は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項1ないし5による請求項1ないし4、10及び11についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
訂正前の請求項5ないし7は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項6ないし8による請求項5ないし7についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
訂正前の請求項8及び9は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項9による請求項8及び9についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし9に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
さらに、訂正後の請求項3、4、10及び11については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがされている。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び2〕、3、4、〔5ないし7〕、〔8及び9〕、10並びに11について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
下記(A)~(C)の全てを満たす、ランダムエステル交換油(ただし、以下に挙げる油脂組成物1~3を除く)。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下
(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下
油脂組成物1:パーム核オレイン40.0質量%、ハイオレイックヒマワリ油10.0質量%、パームスーパーオレイン30.0質量%、米油20.0質量%を混合溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭を実施した油脂組成物。
油脂組成物2:パーム核オレイン35.0質量%、ハイオレイックヒマワリ油20.0質量%、パームスーパーオレイン30.0質量%、ハイエルシンナタネ油15.0%質量%を混合溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭を実施した油脂組成物。
油脂組成物3:パーム核オレイン45.0質量%、ハイオレイックナタネ油20.0質量%、パームオレイン25.0質量%、米油10.0%質量%を混合溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭を実施した油脂組成物。
【請求項2】
(D)構成脂肪酸組成中、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が5質量%以上30質量%以下である、請求項1に記載のランダムエステル交換油。
【請求項3】
下記(A)~(C)の全てを満たす、ランダムエステル交換油を含む、チョコレート類。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下
(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下
【請求項4】
チョコレート類中の油脂分が10質量%~70質量%、チョコレート類中の油脂分中にカカオバターを3質量%~40質量%、及び、下記(A)~(C)の全てを満たす、ランダムエステル交換油を5質量%~97質量%含有する、チョコレート類。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下
(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下
【請求項5】
(削除)
【請求項6】
下記(A)~(C)の全てを満たす、ランダムエステル交換油を使用することを特徴とする、チョコレート類のグレーニングの抑制方法。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下
(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下
【請求項7】
使用するランダムエステル交換油がさらに下記の(D)を満たす、請求項6に記載のチョコレート類のグレーニングの抑制方法。
(D)構成脂肪酸組成中、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が5質量%以上30質量%以下
【請求項8】
下記(A)~(C)の全てを満たすランダムエステル交換油となるように、原料油脂を配合する、ランダムエステル交換油の製造方法(ただし、以下に挙げる油脂組成物1~3の製造方法を除く)。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下
(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下
油脂組成物1:パーム核オレイン40.0質量%、ハイオレイックヒマワリ油10.0質量%、パームスーパーオレイン30.0質量%、米油20.0質量%を混合溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭を実施した油脂組成物。
油脂組成物2:パーム核オレイン35.0質量%、ハイオレイックヒマワリ油20.0質量%、パームスーパーオレイン30.0質量%、ハイエルシンナタネ油15.0%質量%を混合溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭を実施した油脂組成物。
油脂組成物3:パーム核オレイン45.0質量%、ハイオレイックナタネ油20.0質量%、パームオレイン25.0質量%、米油10.0%質量%を混合溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行い、脱色、脱臭を実施した油脂組成物。
【請求項9】
ランダムエステル交換の前記原料油脂に、下記油脂原料a及び油脂原料bを含む、請求項8に記載のランダムエステル交換油の製造方法。
油脂原料a:ヨウ素価50~150の植物油脂
油脂原料b:ラウリン油脂
【請求項10】
下記(A)~(D)の全てを満たす、ランダムエステル交換油を含む、チョコレート類。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下
(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下
(D)構成脂肪酸組成中、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が5質量%以上30質量%以下
【請求項11】
チョコレート類中の油脂分が10質量%~70質量%、チョコレート類中の油脂分中にカカオバターを3質量%~40質量%、及び、下記(A)~(D)の全てを満たす、ランダムエステル交換油を5質量%~97質量%含有する、チョコレート類。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下
(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下
(D)構成脂肪酸組成中、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が5質量%以上30質量%以下」
第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要等
令和6年11月27日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、2、8及び9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいてその優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、8及び9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明5及び7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項5及び7に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第3号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明5は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明5及び7は、甲第3号証に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項5及び7に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲第4号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明5及び7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第4号証に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項5及び7に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(甲第5号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明5及び7は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第5号証に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項5及び7に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 申立理由6(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明1、5及び8の「(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上」はサポート要件違反であること
「(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上」について、本件明細書には、下記の記載がある。
「【0015】
前記(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量は、20質量%以上、好ましくは20質量%以上50質量%以下、より好ましくは20質量%以上45質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上40質量%以下である。」
一方、実施例としては、【0050】の【表4】に、下限20.4質量%~上限39.3質量%が開示されているにすぎない。
「(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上」における「20質量%以上」は、上限が規定されていないため、最大で100質量%まで含むことができる。
しかしながら、本件特許発明の課題のチョコレートのグレーニング等の物性は、通常、配合される油脂に影響を受けるのが、当業者の技術常識である。してみると、ランダムエステル交換油の炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が39.3質量%を超える場合は、本件特許発明の課題が解決できるかどうか不明である。
以上より、上記段落【0015】には、本件特許出願時の技術常識に照らしても本件特許発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度に具体例又は説明が記載されているとはいえないため、実施例の記載をもって、「20質量%以上(100質量%以下)」にまで拡張できるとはいえない。
したがって、本件特許の請求項1、5及び8は、サポート要件違反である。
請求項1、5及び8を引用する本件特許の請求項2ないし4、6、7及び9についても同様である。
7 申立理由7(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし4及び6ないし9に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明1、6及び8の「(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上」は明確性要件違反であること
「(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上」における「20質量%以上」は、上限が規定されていないため、最大で100質量%まで含むことができる。
一方、本件特許発明1、6及び8は、「(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下」の発明特定事項を有しているため、 「(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上」との関係で100質量%を超える場合があり、発明が不明確となっている。
したがって、本件特許の請求項1、6及び8は、明確性要件違反である。
請求項1、6及び8を引用する本件特許の請求項2ないし4、7及び9についても同様である。
8 証拠方法
甲第1号証:特開2013-226099号公報
甲第2号証:国際公開第2007/129590号
甲第3号証:国際公開第2019/026670号
甲第4号証:特開2020-156415号公報
甲第5号証:特開2020-54340号公報
甲第6号証:特開2008-228641号公報
甲第7号証:特開2013-201907号公報
甲第8号証:特開平5-41948号公報
甲第9号証:国際公開第2010/113969号
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
令和7年2月17日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、2、8及び9に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、8及び9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由1は申立理由1とおおむね同旨である。
2 取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項5及び7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲2に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項5及び7に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由2は申立理由2とおおむね同旨である。
3 取消理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲3に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項5に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由3は申立理由3のうち請求項5に対する新規性・進歩性とおおむね同旨である。
4 取消理由4(甲4に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項5及び7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲4に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項5及び7に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由4は申立理由4とおおむね同旨である。
5 取消理由5(甲5に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項5及び7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲5に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲5に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項5及び7に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由5は申立理由5とおおむね同旨である。
第6 取消理由についての当審の判断
1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、「クリーム用油脂組成物」に関しておおむね次の事項が記載されている。下線は当審で付したものと予め付されたものである。他の文献について同様。
・「【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、酸化安定性に優れるクリーム用油脂組成物であって、更に凍結耐性及びヒートショック耐性にも優れるクリーム用油脂組成物を提供することを目的とする。」
・「【0028】
本発明のクリーム組成物は、様々な用途に使用できるが、特に飲料添加用途に適している。飲料の具体例としては、コーヒー、紅茶、緑茶、果実飲料等が挙げられ、コーヒー、紅茶等が特に好ましい。」
・「【0030】
【表1】
[図:0001427976000001.jpg]
【0031】
【表2】
[図:0001427976000002.jpg]
【0032】
<油脂組成物の調製>
[実施例1]
表3に示すように、パーム核オレイン40.0質量%、ハイオレイックヒマワリ油10.0質量%、パームスーパーオレイン30.0質量%、米油20.0%質量%を混合後、結晶を完全に溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行った。その後、脱色、脱臭を実施して、実施例1の油脂組成物を得た。
【0033】
[実施例2]
表3に示すように、パーム核オレイン35.0質量%、ハイオレイックヒマワリ油20.0質量%、パームスーパーオレイン30.0質量%、ハイエルシンナタネ油15.0%質量%を混合後、結晶を完全に溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行った。その後、脱色、脱臭を実施して、実施例2の油脂組成物を得た。
【0034】
[実施例3]
表3に示すように、パーム核オレイン45.0質量%、ハイオレイックナタネ油20.0質量%、パームオレイン25.0質量%、米油10.0%質量%を混合後、結晶を完全に溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行った。その後、脱色、脱臭を実施して、実施例3の油脂組成物を得た。」
・「【0035】
[図:0001427976000003.jpg]
」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に実施例1ないし3に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1実施例1物発明」ないし「甲1実施例3物発明」及び「甲1実施例1製法発明」ないし「甲1実施例3製法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1実施例1物発明>
「パーム核オレイン40.0質量%、ハイオレイックヒマワリ油10.0質量%、パームスーパーオレイン30.0質量%、米油20.0%質量%を混合後、結晶を完全に溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行って、その後、脱色、脱臭を実施して、得られる油脂組成物。」
<甲1実施例2物発明>
「パーム核オレイン35.0質量%、ハイオレイックヒマワリ油20.0質量%、パームスーパーオレイン30.0質量%、ハイエルシンナタネ油15.0%質量%を混合後、結晶を完全に溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行って、その後、脱色、脱臭を実施して、得られる油脂組成物。」
<甲1実施例3物発明>
「パーム核オレイン45.0質量%、ハイオレイックナタネ油20.0質量%、パームオレイン25.0質量%、米油10.0%質量%を混合後、結晶を完全に溶解し、油脂に対し、0.12質量%のナトリウムメチラートを触媒として、90℃で30分間、非選択的エステル交換反応を行って、その後、脱色、脱臭を実施して、得た油脂組成物。」
<甲1実施例1製法発明>
「甲1実施例1物発明となるように、原料油脂を配合する油脂組成物の製造方法。」
<甲1実施例2製法発明>
「甲1実施例2物発明となるように、原料油脂を配合する油脂組成物の製造方法。」
<甲1実施例3製法発明>
「甲1実施例3物発明となるように、原料油脂を配合する油脂組成物の製造方法。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1実施例1物発明ないし甲1実施例3物発明のいずれかを対比する。
甲1実施例1物発明ないし甲1実施例3物発明のいずれかにおける「非選択的エステル交換反応」は本件特許発明1における「ランダムエステル交換」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ランダムエステル交換油。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-1a>
本件特許発明1においては「下記(A)~(C)の全てを満たす」(当審注:「下記(A)~(C)」については、上記第3の【請求項1】を参照。以下、同様。)と特定されているのに対し、甲1実施例1物発明ないし甲1実施例3物発明のいずれかにおいてはそのようには特定されていない点。
<相違点1-1b>
本件特許発明1においては「(ただし、以下に挙げる油脂組成物1~3を除く)」(当審注:「以下に挙げる油脂組成物1~3については、上記第3の【請求項1】を参照。以下、同様。)と特定されているのに対し、甲1実施例1物発明ないし甲1実施例3物発明のいずれかにおいてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点1-1bについて検討する。
甲1実施例1物発明ないし甲1実施例3物発明は実質的に本件特許発明1における「以下に挙げる油脂組成物1~3」であり、ただし書きで除かれるものであるから、相違点1-1bは実質的な相違点である。
また、甲1には、甲1実施例1物発明ないし甲1実施例3物発明のいずれかにおいて、相違点1-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲1実施例1物発明ないし甲1実施例3物発明のいずれかにおいて、相違点1-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の奏する「チョコレート類において、グレーニングの発生を抑制する油脂を提供することができる。」、「ブルーム耐性の良好な、滑らかな食感のソフトチョコレート類が得られる油脂を提供することができる。」、「従来使用されている液状油よりも、グレーニングの発生を抑制可能な油脂を提供することができる。」及び「グレーニングの発生が抑制されたチョコレート類を提供することができる。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0010】)という効果は、甲1実施例1物発明ないし甲1実施例3物発明のいずれか並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1実施例1物発明ないし甲1実施例3物発明のいずれかであるとはいえない。
また、本件特許発明1は甲1実施例1物発明ないし甲1実施例3物発明のいずれか並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明2について
本件特許発明2は、請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1における発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1実施例1物発明ないし甲1実施例3物発明のいずれかであるとはいえないし、甲1実施例1物発明ないし甲1実施例3物発明のいずれか並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明8について
ア 対比
本件特許発明8と甲1実施例1製法発明ないし甲1実施例3製法発明のいずれかを対比する。
上記(2)アと同様のことがいえるから、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ランダムエステル交換油となるように、原料油脂を配合する、ランダムエステル交換油の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点1-8a>
本件特許発明8においては「下記(A)~(C)の全てを満たす」と特定されているのに対し、甲1実施例1製法発明ないし甲1実施例3製法発明のいずれかにおいてはそのようには特定されていない点。
<相違点1-8b>
本件特許発明8においては「(ただし、以下に挙げる油脂組成物1~3の製造方法を除く)」と特定されているのに対し、甲1実施例1製法発明ないし甲1実施例3製法発明のいずれかにおいてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点1-8bについて検討する。
甲1実施例1製法発明ないし甲1実施例3製法発明は実質的に本件特許発明8における「以下に挙げる油脂組成物1~3の製造方法」であり、ただし書きで除かれるものであるから、相違点1-8bは実質的な相違点である。
また、甲1には、甲1実施例1製法発明ないし甲1実施例3製法発明のいずれかにおいて、相違点1-8bに係る本件特許発明8の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
したがって、甲1実施例1製法発明ないし甲1実施例3製法発明のいずれかにおいて、相違点1-8bに係る本件特許発明8の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明8の奏する「チョコレート類において、グレーニングの発生を抑制する油脂を提供することができる。」、「ブルーム耐性の良好な、滑らかな食感のソフトチョコレート類が得られる油脂を提供することができる。」、「従来使用されている液状油よりも、グレーニングの発生を抑制可能な油脂を提供することができる。」及び「グレーニングの発生が抑制されたチョコレート類を提供することができる。」という効果は、甲1実施例1製法発明ないし甲1実施例3製法発明のいずれか並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明8の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明8は甲1実施例1製法発明ないし甲1実施例3製法発明のいずれかであるとはいえない。
また、本件特許発明8は甲1実施例1製法発明ないし甲1実施例3製法発明のいずれか並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明9について
本件特許発明9は、請求項8を引用して特定するものであり、本件特許発明8における発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明8と同様に、甲1実施例1製法発明ないし甲1実施例3製法発明のいずれかであるとはいえないし、甲1実施例1製法発明ないし甲1実施例3製法発明のいずれか並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1、2、8及び9は、甲1実施例1物発明ないし甲1実施例3物発明及び甲1実施例1製法発明ないし甲1実施例3製法発明のいずれか、すなわち甲1に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、2、8及び9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、取消理由1によっては取り消すことはできない。
2 取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2には、「チョコレート用油脂組成物」に関しておおむね次の事項が記載されている。なお、摘記に際し、半角の英数字(段落番号及びスペースを含む。)は適宜全角で摘記した。他の証拠についても同様。
・「発明が解決しようとする課題
[0008] 本発明の目的は、チョコレートを製造するに際して、テンパリング操作しないで、ココアバターを含む風味、口溶けに優れたチョコレートが得られ、経時保存で品質劣化が防止されているチョコレート及び当該チョコレートに使用する油脂組成物を提供することにある。」
・「発明の効果
[0010] 本発明の油脂組成物はトランス型不飽和脂肪酸を10%以下しか含まないにも拘らず、油脂中ココアバターが5%以上含むチョコレートでもテンパリング操作することなしで、風味、口溶けに優れ、経時保存でブルーム、グレーニング、艷等の品質劣化が防止されているチョコレートを製造することができるチョコレート用油脂組成物である。」
・「実施例
[0017] 以下、実施例を例示して本発明の効果を明瞭にするが、本発明の精神は以下の実施例に限定されるものではない。なお、例中、%及び部は重量基準を意味する。
実験例1 (油脂の調製)
ヤシ油(ヨウ素価8)50部、パーム分別ステアリン(ヨウ素価31)40部、高エルシン酸菜種極度硬化油(ヨウ素価1以下)10部を混合した油脂に、金属触媒(ナトリウムメトキシド)0.3部を加え、真空下80℃で60分ランダムエステル交換させた。得られた油脂を定法に従い精製を行い油脂Aとした。ヨウ素価は17であり、上昇融点は35℃であった。
[0018] 実験例2(油脂の調製)
実験例1で作製したエステル交換脂99.6部に高エルシン酸菜種極度硬化油(ヨウ素価1以下)0.4部を混合し油脂Bとした。ヨウ素価は17であり、上昇融点は35℃であった。
実験例3(油脂の調製)
実験例1で作製したエステル交換脂98部に高エルシン酸菜種極度硬化油(ヨウ素価 1以下)2部を混合し油脂Cとした。ヨウ素価は17であり、上昇融点は36℃であった。
[0019] 実験例4(油脂の調製)
ヤシ油(ヨウ素価8)40部、パーム分別ステアリン(ヨウ素価31)55部、高エルシン酸菜種極度硬化油(ヨウ素価1以下)5部を混合した油脂に、金属触媒(ナトリウムメトキシド)0.3部を加え、真空下80℃で 60分ランダムエステル交換させた。得られたエステル交換脂99.5部に高エルシン酸菜種極度硬化油(ヨウ素価1以下)0.5部を混合し油脂Dとした。ヨウ素価は20であり、上昇融点は38℃であった。
[0020] 実験例5(油脂の調製)
ヤシ油(ヨウ素価8)50部、パーム分別ステアリン(ヨウ素価31)20部、硬化パームォ レイン(ヨウ素価55)20部、高エルシン酸菜種極度硬化油(ヨウ素価1以下)10部を混合した油脂に、金属触媒0.3部を加え、真空下80℃で60分ランダムエステル交換させた。得られた油脂を定法に従い精製を行った。得られたエステル交換脂99部と高エルシン酸菜種極度硬化油(ヨウ素価1以下)1部を混合し油脂Eとした。ヨウ素価は21であり、上昇融点は32℃であった。
[0021] 実験例6(油脂の調製)
パーム核油(ヨウ素価17)95部とパーム油(ヨウ素価52)5部を混合し極度硬化した。この極度硬化した油脂(ヨウ素価1以下)70部、パーム分別ステアリン(ヨウ素価31)15部、ハイオレイックヒマワリ油(ヨウ素価84)5部、高エルシン酸菜種極度硬化油(ヨウ素価1以下)10部を混合し、金属触媒(ナトリウムメトキシド)0.3部を加え、真空下80℃で60分ランダムエステル交換させた。得られた油脂を定法に従い精製を行い、油脂Fとした。ヨウ素価は9であり、上昇融点は36℃であった。
[0022] 実験例7 (油脂の調製)
パーム核油(ヨウ素価17)95部とパーム油(ヨウ素価52)5部を混合し極度硬化した。この極度硬化した油脂(ヨウ素価1以下)70部、パーム分別ステアリン(ヨウ素価31)25部、高エルシン酸菜種極度硬化油(ヨウ素価1以下)5部を混合し、金属触媒(ナトリウムメトキシド)0.3部を加え、真空下80℃で60分ランダムエステル交換させた。得られた油脂を定法に従い精製を行い油脂Gとした。ヨウ素価は7であり、上昇融点は38℃であった。
[0023] 以下油脂A、油脂B、油脂C、油脂D、油脂E、油脂F、油脂Gの脂肪酸組成を表1に纏めた。
脂肪酸の測定は以下のように行った。先ず脂肪酸の調製は「基準油脂分析法の2.4.1.2-1996」に従い実施した。得られた脂肪酸調製液はガスクロマトグラフ法で分析した。
[表1]
[図:0001427976000004.jpg]
」
・「[0031] 実施例1
カカオマス8部、ココアパウダー15部、砂糖43部、実験例1で得られた油脂A20部をミキサーで混合し、ドウを調製した(ミキシング)。これをリファイナーに通し、粒度を 約 20マイクロメーターに調製した(リファイニング)。得られたフレークをコンチングした。尚コンチングの最終段階で残りの油脂A14部とレシチン0.4部を加え、チョコレートを作製した。チョコレートの最終的な配合は表4に記載した。
[表4]
[図:0001427976000005.jpg]
[0032] 実施例2~実施例7及び比較例1~比較例5
実施例1において、油脂Aを油脂Bに替えた以外は実施例1と同様な配合、同様な処理を行い実施例2に基づくチョコレートを得た。
同様に油脂Aを油脂Cに替え、実施例3に基づくチョコレートを得、同様にして、実施例4~実施例7及び比較例1~比較例5に基づくチョコレートを得た。
・・・(略)・・・
[0035] 結果は油脂A~Gでは保存中ブルーム若しくはグレーニングの発生は認められなかった。」
イ 甲2に記載された発明
甲2に記載された事項を、特に油脂AないしGに関して整理すると、甲2には次の発明(以下、順に「甲2油脂A発明」のようにいう。油脂AないしG及び表4に関しては上記ア参照。)が記載されていると認める。
<甲2油脂A発明>
「油脂Aを表4に記載した配合で用いるチョコレートのグレーニング等の品質劣化を防止する方法。」
<甲2油脂B発明>
「油脂Bを表4に記載した配合で用いるチョコレートのグレーニング等の品質劣化を防止する方法。」
<甲2油脂C発明>
「油脂Cを表4に記載した配合で用いるチョコレートのグレーニング等の品質劣化を防止する方法。」
<甲2油脂D発明>
「油脂Dを表4に記載した配合で用いるチョコレートのグレーニング等の品質劣化を防止する方法。」
<甲2油脂E発明>
「油脂Eを表4に記載した配合で用いるチョコレートのグレーニング等の品質劣化を防止する方法。」
<甲2油脂F発明>
「油脂Fを表4に記載した配合で用いるチョコレートのグレーニング等の品質劣化を防止する方法。」
甲2油脂G発明>
「油脂Gを表4に記載した配合で用いるチョコレートのグレーニング等の品質劣化を防止する方法。」
(2)本件特許発明5について
本件訂正により、請求項5は削除された。
(3)本件特許発明7について
ア 対比
本件特許発明7と甲2油脂A発明ないし甲2油脂G発明のいずれかを対比する。
甲2油脂A発明ないし甲2油脂G発明における「油脂A」ないし「油脂G」はいずれも本件特許発明7における「ランダムエステル交換油」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ランダムエステル交換油を使用する、チョコレート類のグレーニングの抑制方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点2-7a>
本件特許発明7においては「下記(A)~(C)の全てを満たす」と特定されているのに対し、甲2油脂A発明ないし甲2油脂G発明のいずれかにおいてはそのようには特定されていない点。
<相違点2-7b>
本件特許発明7においては「使用するランダムエステル交換油がさらに下記の(D)を満たす」(当審注:「下記(D)」については、上記第3の【請求項7】を参照。以下、同様。)と特定されているのに対し、甲2油脂A発明ないし甲2油脂G発明のいずれかにおいてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点2-7aについて検討する。
甲2の[表1]の分析結果を基に、甲2油脂A発明ないし甲2油脂G発明における「構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量」を計算すると、次のように66.9質量%から85.4質量%の範囲内の値となり、甲2油脂A発明ないし甲2油脂G発明において、「(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下」とならないことは当業者に明らかである。
[図:0001427976000006.jpg]
そうすると、相違点2-7aは実質的な相違点である。
また、甲2には、甲2油脂A発明ないし甲2油脂G発明のいずれかにおいて、相違点2-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
そして、本件特許発明7の奏する「チョコレート類において、グレーニングの発生を抑制する油脂を提供することができる。」、「ブルーム耐性の良好な、滑らかな食感のソフトチョコレート類が得られる油脂を提供することができる。」、「従来使用されている液状油よりも、グレーニングの発生を抑制可能な油脂を提供することができる。」及び「グレーニングの発生が抑制されたチョコレート類を提供することができる。」という効果は、甲2油脂A発明ないし甲2油脂G発明のいずれか並びに甲2及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明7の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明7は甲2油脂A発明ないし甲2油脂G発明のいずれかであるとはいえないし、甲2油脂A発明ないし甲2油脂G発明のいずれか並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)取消理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明7は、甲2油脂A発明ないし甲2油脂G発明のいずれか、すなわち甲2に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、甲2に記載された発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項7に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、取消理由2によっては取り消すことはできない。
3 取消理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)及び申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)のうち請求項7に対する進歩性について
取消理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)及び申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)のうち請求項7に対する進歩性は同じ証拠(甲3)に基づく理由であるから、併せて検討する。
(1)甲3に記載された事項等
ア 甲3に記載された事項
甲3には、「油脂組成物及び油脂組成物を含む油性食品」に関しておおむね次の事項が記載されている。
・「背景技術
[0002] 油脂が連続相をなす油性食品としては、例えば、チョコレートやファットクリーム、バタークリーム、マーガリン、スプレッドなどが挙げられる。一般的に、油性食品の保形性の大部分は、油脂により維持される。すなわち、連続相を形成する油脂の結晶構造が、油性食品の物性および品質に大きく影響する。
[0003] 例えば、テンパー型チョコレートの油脂は、対称型トリアシルグリセロールの構造を有する、カカオ脂もしくはカカオ脂の類似脂から構成される。テンパー型チョコレートの製造においては、テンパリングと呼ばれる非常に複雑な調温操作が行われる。テンパリングにより、油脂を構成する対称型トリアシルグリセロールの結晶は、安定形であるV型に調整される。油脂の結晶形がV型に調整されることにより、良好な型離れと光沢を有するチョコレートが得られる。
[0004] しかしながら、不十分なテンパリングにより不安定形の油脂結晶が生成したり、気温の変化などよりチョコレートの一部が融解後再度固まったりすると、場合により、チョコレートの油脂の結晶形がV型からVI型へと移行する。チョコレートの油脂の結晶形がV型からVI型へと移行すると、チョコレートは白い粉を吹いたような状態(いわゆるブルーム)になることがある。したがって、チョコレートの品質保持のためには、油脂の結晶形をV型に維持することが重要である。」
・「[0006] また、マーガリン、スプレッドなどの可塑性油脂組成物は、相対的に液体油の含有量が多い油性食品である。可塑性油脂組成物においては、製造直後の油脂結晶は微細な状態にある。しかし、温度変化などにより、油脂結晶の多形変化が起こる。油脂結晶は、場合により、多形変化とともに粗大化してグレインを発生する。したがって、可塑性油脂組成物の品質保持には、油脂結晶を微細な状態で維持することが重要である。」
・「発明が解決しようとする課題
[0009] したがって、油性食品に含まれる油脂に由来するブルームおよびグレインの発生を効果的に抑制する、ブルームおよびグレインの抑制剤の開発が待たれていた。
[0010] 本発明の課題は、油性食品に含まれる油脂に由来するブルームおよびグレインの発生を効果的に抑制する、ブルームおよびグレインの抑制効果を有する組成物を提供することである。」
課題を解決するための手段
[0011] 本発明者らは、鋭意検討を行った。その結果、特定のトリアシルグリセロールを構成成分とする油脂組成物が、極めて有効な油性食品のブルームおよびグレイン抑制効果を有することを見いだした。これにより本発明は完成された。」
・「[0050]〔油脂組成物の調製1〕
以下の油脂組成物A~Jが調製された。油脂組成物の脂肪酸およびトリアシルグリセロール(TAG)の構成が表1~2の例1~10に示される。油脂組成物C~Hは、本発明の第1の態様に相当する油脂組成物である。
・・・(略)・・・
(油脂組成物C)
20質量部のMCT1、55質量部の極度硬化パーム核油および25質量部の極度硬化菜種油の混合油脂が、触媒としてナトリウムメトキシドを使用することにより、エステル交換された。得られたエステル交換油脂は、脱色および脱臭された。当該エステル交換油脂が油脂組成物Cとされた。
(油脂組成物D)
10質量部のMCT2、65質量部の極度硬化パーム核油および25質量部の極度硬化菜種油の混合油脂が、触媒としてナトリウムメトキシドを使用することにより、エステル交換された。得られたエステル交換油脂は、脱色および脱臭された。当該エステル交換油脂が油脂組成物Dとされた。
・・・(略)・・・
(油脂組成物F)
10質量部のMCT1、65質量部の極度硬化パーム核油および25質量部の極度硬化菜種油の混合油脂が、触媒としてナトリウムメトキシドを使用することにより、エステル交換された。得られたエステル交換油脂は、脱色および脱臭された。当該エステル交換油脂が油脂組成物Fとされた。
(油脂組成物G)
10質量部のMCT1、65質量部の極度硬化パーム核油および25質量部の極度硬化パーム油の混合油脂が、触媒としてナトリウムメトキシドを使用することにより、エステル交換された。得られたエステル交換油脂は、脱色および脱臭された。当該エステル交換油脂が油脂組成物Gとされた。」
・「[0051]〔ブルーム耐性評価〕
100質量部のココアバターに対して、5質量部の油脂組成物A~Jが、それぞれ添加混合された。得られた混合油脂は、80℃に加熱されることにより、完全に融解された。融解された混合油脂は、60℃に維持された後、0℃で1時間冷却されることにより、固化された。固化された混合油脂に対して、20℃で2時間保持後30℃で1時間保持のサイクルが、224サイクル繰り替えされた。8、56、112、168および224サイクル後に、X線回折像の測定が行われた。X線回折像の、3.75Åに検出される回折ピークに対する3.69Åに検出される回折ピークの強度比が、表1~2に示される。当該強度比が3.0を超えると、VI型結晶が優勢になった(ブルームが生じやすい状態になった)と判断できる。なお、ココアバターのみの場合、224サイクル後の当該強度比は、8.0であった。
[0052]〔グレイン耐性評価〕
50質量部のカカオマスおよび50質量部のソフトチョコレート用油脂(菜種油を60質量%含有)が混合された。当該混合物は、60℃に加熱されることにより、融液状にされた。当該混合物の融液100質量部に対して、7.5質量部の完全に融解された油脂組成物A~Jが、それぞれ添加混合された。40グラムの得られた混合物は、カップに注入された後、冷却され、10℃で保持された。21日間10℃で保持された混合物の、内部の状態が観察された。観察結果は、以下の基準に従って評点された。評点は表1~2に示される。なお、油脂組成物を混合しない場合、評点は0であった。
[図:0001427976000007.jpg]
[0053]
[図:0001427976000008.jpg]
[0054]
[図:0001427976000009.jpg]
」
・「[0057][チョコレートの製造および評価〕
表4~5の配合にしたがって、常法(混合、微粒化、精練、テンパリング、型への充填および冷却)により、例15~21のチョコレートが製造された。チョコレートに対して、20℃で12時間保持後32℃で12時間保持のサイクルが、12サイクル繰り替えされた。0、4、5、6、7、8、11および12サイクル後に、チョコレートの状態(ブルーム耐性)が観察された。観察結果は、以下の基準に従って評点された。評点は表4~5に示される。
[図:0001427976000010.jpg]
[0058]
[図:0001427976000011.jpg]
」
イ 甲3に記載された発明
甲3に記載された事項を、特に油脂組成物C、D、F及びGに関して整理すると、甲3には次の発明(以下、順に「甲3油脂組成物C発明」のようにいう。油脂組成物C、D、F及びGに関しては上記ア参照。)が記載されていると認める。
<甲3油脂組成物C発明>
「油脂組成物Cを用いるチョコレートのグレインの発生を抑制する方法。」
<甲3油脂組成物D発明>
「油脂組成物Dを用いるチョコレートのグレインの発生を抑制する方法。」
<甲3油脂組成物F発明>
「油脂組成物Fを用いるチョコレートのグレインの発生を抑制する方法。」
<甲3油脂組成物G発明>
「油脂組成物Gを用いるチョコレートのグレインの発生を抑制する方法。」
(2)本件特許発明5について
本件訂正により、請求項5は削除された。
(3)本件特許発明7について
ア 対比
本件特許発明7と甲3油脂組成物C発明、甲3油脂組成物D発明、甲3油脂組成物F発明及び甲3油脂組成物G発明のいずれかを対比する。
甲3油脂組成物C発明、甲3油脂組成物D発明、甲3油脂組成物F発明及び甲3油脂組成物G発明における「油脂組成物C」、「油脂組成物D」、「油脂組成物F」及び「油脂組成物G」はいずれも、触媒としてナトリウムメトキシドを使用したエステル交換油であるから、本件特許発明7における「ランダムエステル交換油」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ランダムエステル交換油を使用する、チョコレート類のグレーニングの抑制方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点3-7a>
本件特許発明7においては「下記(A)~(C)の全てを満たす」と特定されているのに対し、甲3油脂組成物C発明、甲3油脂組成物D発明、甲3油脂組成物F発明及び甲3油脂組成物G発明のいずれかにおいてはそのようには特定されていない点。
<相違点3-7b>
本件特許発明7においては「使用するランダムエステル交換油がさらに下記の(D)を満たす」と特定されているのに対し、甲3油脂組成物C発明、甲3油脂組成物D発明、甲3油脂組成物F発明及び甲3油脂組成物G発明のいずれかにおいてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点3-7aについて検討する。
甲3の[表1]及び[表2]の分析結果を基に、甲3油脂組成物C発明、甲3油脂組成物D発明、甲3油脂組成物F発明及び甲3油脂組成物G発明における「構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量」を計算すると、次のように75.7質量%から85.0質量%の範囲内の値となり、甲3油脂組成物C発明、甲3油脂組成物D発明、甲3油脂組成物F発明及び甲3油脂組成物G発明において、「(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下」とならないことは当業者に明らかである。
なお、甲3の[表1]及び[表2]におけるカプリル酸は炭素数が8の飽和脂肪酸、カプリン酸は炭素数が10の飽和脂肪酸、ラウリン酸は炭素数が12の飽和脂肪酸、ミリスチン酸は炭素数が14の飽和脂肪酸、パルミチン酸は炭素数が16の飽和脂肪酸、ステアリン酸は炭素数が18の飽和脂肪酸、ベヘン酸は炭素数が22の飽和脂肪酸である。
[図:0001427976000012.jpg]
そうすると、相違点3-7aは実質的な相違点である。
また、甲3には、甲3油脂組成物C発明、甲3油脂組成物D発明、甲3油脂組成物F発明及び甲3油脂組成物G発明のいずれかにおいて、相違点3-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
そして、本件特許発明7の奏する「チョコレート類において、グレーニングの発生を抑制する油脂を提供することができる。」、「ブルーム耐性の良好な、滑らかな食感のソフトチョコレート類が得られる油脂を提供することができる。」、「従来使用されている液状油よりも、グレーニングの発生を抑制可能な油脂を提供することができる。」及び「グレーニングの発生が抑制されたチョコレート類を提供することができる。」という効果は、甲3油脂組成物C発明、甲3油脂組成物D発明、甲3油脂組成物F発明及び甲3油脂組成物G発明のいずれか並びに甲3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明7の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明7は甲3油脂組成物C発明、甲3油脂組成物D発明、甲3油脂組成物F発明及び甲3油脂組成物G発明のいずれかであるとはえいえないし、甲3油脂組成物C発明、甲3油脂組成物D発明、甲3油脂組成物F発明及び甲3油脂組成物G発明のいずれか並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)取消理由3及び申立理由3のうち請求項7に対する進歩性についてのむすび
したがって、本件特許発明7は、甲3油脂組成物C発明、甲3油脂組成物D発明、甲3油脂組成物F発明及び甲3油脂組成物G発明、すなわち甲3に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、甲3に記載された発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項7に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、取消理由3及び申立理由3のうち請求項7に対する進歩性によっては取り消すことはできない。
4 取消理由4(甲4に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲4に記載された事項等
ア 甲4に記載された事項
甲4には、「ブルーム抑制用油脂組成物及びこれを使用した油脂性菓子」に関しておおむね次の事項が記載されている。
・「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、良好な口どけを保ちつつ、高いブルーム抑制効果を有するブルーム抑制剤を提供することにある。」
・「【0013】
(エステル交換)
エステル交換には、トリグリセリドの1位と3位に結合する脂肪酸を酵素を用いて特異的に交換する方法(1、3位特異的エステル交換)と、酵素もしくは金属触媒(例えばナトリウムメチラート)を用いて脂肪酸の結合位置に関係なくランダムに交換する方法(ランダムエステル交換)がある。本発明においては、後者のランダムエステル交換が好ましいが、これはより多くのトリグリセリドの種類を生成することにより油脂結晶種が複雑になるため、SUS型トリグリセリドの粗大化を抑制するのに効果的であり、ココアバターとの相溶性を高める観点から好ましいためである。」
・「【実施例】
【0027】
以下に実施例を記載するが、この発明の技術思想がこれらの例示によって限定されるものではない。なお、例中、部及び%は何れも重量基準を意味する。
【0028】
(油脂A)
パーム油(ヨウ素価52)、パームステアリン(ヨウ素価31)及びパーム核オレイン(ヨウ素価26)を配合した油脂を常法によりナトリウムメチラートによるランダムエステル交換を行い、得られた油脂を常法に従い精製を行って油脂Aとした。
・・・(略)・・・
(油脂C)
パーム極硬油(ヨウ素価1)、パームスーパーオレイン(ヨウ素価67)及びパーム核オレイン(ヨウ素価26)、ハイオレイックひまわり油(ヨウ素価81)及びハイオレイックひまわり油の極硬油(ヨウ素価1)を配合した油脂を常法によりナトリウムメチラートによるランダムエステル交換を行い、得られた油脂を常法に従い精製を行って油脂Cとした。」
・「【0029】
表1 脂肪酸組成(%)
[図:0001427976000013.jpg]
【0030】
油脂A~EとStOSt脂(StOStトリグリセリドを76重量%含む油脂)をそれぞれ50/50(重量比)で配合し実施例1~3、比較例1~2の油脂組成物を得た。各油脂組成物の配合を表2に示す。
【0031】
表2 油脂配合
[図:0001427976000014.jpg]
【0032】
(テスト方法)
・実施例及び比較例の油脂組成物を用いて、表3の配合を基に常法に従いチョコレート生地(油分38.2重量%)を得た。
・上記チョコレート生地を50℃以上で完全に溶解後、13℃の冷水で冷却しながら31℃まで温度を下げた。
・シード剤(不二製油株式会社製/商品名「チョコシードA」)をチョコレートに対し0.2重量%加えてテンパリング処理し、モールドに流しいれた。
・10℃で30分冷却、デモールドした。
・20℃にて1週間エージング後、1日で17℃を10時間、30.5℃を10時間保持できる恒温器(温度を17℃から30.5℃に変えるのに2時間、同様に30.5℃から17℃に変えるのに2時間)に保管し、目視によるブルーム評価を実施した。
・油脂A~Eの炭素数8~14の脂肪酸含量、炭素数20以上の飽和脂肪酸含量、ヨウ素価、上昇融点、ステアリン酸含量及び炭素数の合計が40~46のトリグリセリド含量を表4に示す。
・チョコレート油脂中の炭素数8~14の脂肪酸含量及びブルーム評価結果を表5に示す。
【0033】
表3 チョコレート配合
[図:0001427976000015.jpg]
【0034】
表4 油脂A~Eの各パラメーター
[図:0001427976000016.jpg]
【0035】
表5 炭素数8~14の脂肪酸含量及びブルーム評価
[図:0001427976000017.jpg]
(評価基準)
-:ツヤ有、±:曇り、+:ブルーム、2+:やや激しくブルーム、3+:激しくブルーム
*±については、-に近い場合-/±、+に近い場合±/+と表記した。
±となるまでの経過日数が19日以上となるチョコレートサンプルを合格とした。
【0036】
(ブルーム評価結果)
油脂A~Cはそれぞれ炭素数8~14の脂肪酸含量5~50重量%及び、ヨウ素価21~60の数値範囲を満たすエステル交換油であり、油脂A~Cを含む実施例1~3の油脂組成物を配合したチョコレートはブルームテストにおいて±となるまでの日数がいずれも19日以上で合格であった。」
イ 甲4に記載された発明
甲4に記載された事項を、特に油脂A及び油脂Cに関して整理すると、甲4には次の発明(以下、順に「甲4油脂A発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲4油脂A発明>
「パーム油(ヨウ素価52)、パームステアリン(ヨウ素価31)及びパーム核オレイン(ヨウ素価26)を配合した油脂をナトリウムメチラートによるランダムエステル交換を行い、得られた油脂を精製して得た油脂Aをチョコレートに配合してブルームを抑制する方法。」
<甲4油脂C発明>
「パーム極硬油(ヨウ素価1)、パームスーパーオレイン(ヨウ素価67)及びパーム核オレイン(ヨウ素価26)、ハイオレイックひまわり油(ヨウ素価81)及びハイオレイックひまわり油の極硬油(ヨウ素価1)を配合した油脂をナトリウムメチラートによるランダムエステル交換を行い、得られた油脂を精製して得た油脂Cをチョコレートに配合してブルームを抑制する方法。」
(2)本件特許発明5について
本件訂正により、請求項5は削除された。
(3)本件特許発明7について
ア 対比
本件特許発明7と甲4油脂A発明及び甲4油脂C発明のいずれかを対比する。
甲4油脂A発明及び甲4油脂C発明のいずれかにおける「チョコレートに配合してブルームを抑制する方法」は本件特許発明7における「チョコレート類のグレーニングを抑制する方法」と「チョコレート類の品質保持方法」という限りにおいて一致する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ランダムエステル交換油を使用する、チョコレート類の品質保持方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点4-7a>
本件特許発明7においては「下記(A)~(C)の全てを満たす」と特定されているのに対し、甲4油脂A発明及び甲4油脂C発明のいずれかにおいてはそのようには特定されていない点。
<相違点4-7b>
「チョコレート類の品質保持方法」に関して、本件特許発明7においては「チョコレート類のグレーニングを抑制する方法」と特定されているのに対し、甲4油脂A発明及び甲4油脂C発明のいずれかにおいては「チョコレートに配合してブルームを抑制する方法」と特定されている点。
<相違点4-7c>
本件特許発明7においては「使用するランダムエステル交換油がさらに下記の(D)を満たす」と特定されているのに対し、甲4油脂A発明及び甲4油脂C発明のいずれかにおいてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点4-7aについて検討する。
甲4の【0029】の表1の分析結果を基に、甲4油脂A発明及び甲4油脂C発明における「構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量」を計算すると、次のようにそれぞれ57.7質量%及び65.3質量%となり、甲4油脂A発明及び甲4油脂C発明において、「(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下」とならないことは当業者に明らかである。
[図:0001427976000018.jpg]
そうすると、相違点4-7aは実質的な相違点である。
また、甲4には、甲4油脂A発明及び甲4油脂C発明甲のいずれかにおいて、相違点4-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
そして、本件特許発明7の奏する「チョコレート類において、グレーニングの発生を抑制する油脂を提供することができる。」、「ブルーム耐性の良好な、滑らかな食感のソフトチョコレート類が得られる油脂を提供することができる。」、「従来使用されている液状油よりも、グレーニングの発生を抑制可能な油脂を提供することができる。」及び「グレーニングの発生が抑制されたチョコレート類を提供することができる。」という効果は、甲4油脂A発明及び甲4油脂C発明のいずれか並びに甲4及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明7の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明7は甲4油脂A発明及び甲4油脂C発明のいずれかであるとはいえないし、甲4油脂A発明及び甲4油脂C発明のいずれか並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)取消理由4についてのむすび
したがって、本件特許発明7は、甲4油脂A発明及び甲4油脂C発明のいずれか、すなわち甲4に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、甲4に記載された発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項7に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、取消理由4によっては取り消すことはできない。
5 取消理由5(甲5に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲5に記載された事項等
ア 甲5に記載された事項
甲5には、「ラウリン系ハードバター組成物及びそれを含有するチョコレート様食品」に関しておおむね次の事項が記載されている。
・「【0008】
かかる従来技術を認識した上で、本発明の目的は、ラウリン系ハードバターを含有するノーテンパー型チョコレートにおいて、カカオバターが配合でき、食感、風味、及びブルーム耐性が良好なチョコレート様食品を提供することである。」
・「【0049】
表4に記載の割合にて調合した原料油脂1.0kgに、ナトリウムメチラートを触媒として1.5g添加し、80℃にて30分ランダムエステル交換を行った後、常法に従い水洗/脱色/脱臭を行いエステル交換油脂を得た。脂肪酸組成を分析した結果を表5に示す。
油脂Aとして、使用した油脂A-1:パーム核油分別硬化油(上昇融点35.0℃)、
油脂Cとして、使用した油脂C-1:パーム油極度硬化油、それぞれの分析結果を表5に示す。
【0050】
【表4】
[図:0001427976000019.jpg]
【0051】
なお、パーム核油分別油は、パーム核油を分別した高融点側、硬化パーム核油は、パーム核油を硬化したもの、パームステアリンは、パーム油を分別した高融点側である。
【0052】
【表5】
[図:0001427976000020.jpg]
【0053】
表6の配合に従い、油脂Bには、前記作製した油脂B-1~B-5を使用し、それぞれ、配合例1~3のチョコレートを作製した。(単位/質量部)
使用したココアパウダーの油脂(カカオバター)含有量は約11質量%、チョコレート中の油脂分は31.65質量%であった。
作製したチョコレートを油脂が融解している温度(50℃)で型に流し込み、10℃で冷却固化した。
【0054】
【表6】
[図:0001427976000021.jpg]
【0055】
(ブルーム耐性の評価)
20℃で一晩静置し、15℃恒温インキュベータにて保管し経時変化を観察した。テスト開始してから、ブルームが発生するまでに経過した日数を、表7にまとめた。
【0056】
【表7】
[図:0001427976000022.jpg]
【0057】
(口溶け)
冷却固化後20℃で1週間熟成(エージング)後に試食し、前記比較例1のチョコレートと対比して下記基準に従って評価した。結果を表8にまとめた。
◎ : 比較例1と同等。
○ : 比較例1よりも若干劣る。
△ : 許容範囲であるが、油脂B-1、油脂B-2使用したチョコレート食品よりも劣る。
× : 口どけが悪い。
(固化時間)
チョコレートを完全融解した後50℃に調整し、室温(22℃)で固化するまでの時間を、前記比較例1のチョコレートと対比して下記基準に従って評価した。結果を表8にまとめた。
◎ : 比較例1と同等。
○ : 比較例1よりも若干劣る。
△ : 許容範囲であるが、油脂B-1、油脂B-2使用したチョコレート食品よりも劣る。
× : 比較例1よりも劣る。
【0058】
【表8】
[図:0001427976000023.jpg]
【0059】
(考察)総合評価
・油脂B-1を使用したチョコレート食品は、ブルーム耐性が良好。口溶け、固化は比較例1同等で、優れた結果が得られた。
・油脂B-2を使用したチョコレート食品は、ブルーム耐性が良好。口溶け、固化は比較例1同等で、優れた結果が得られた。
・油脂B-3を使用したチョコレート食品は、ブルーム耐性が向上できなかった。
・油脂B-4を使用したチョコレート食品は、ブルーム耐性、固化が良好。口溶けが許容範囲であるが、油脂B-1、油脂B-2使用したチョコレート食品よりも劣る結果が得られた。
・油脂B-5を使用したチョコレート食品は、ブルーム耐性、口溶けが良好。固化は許容範囲であるが、油脂B-1、油脂B-2使用したチョコレート食品よりも劣る結果が得られた。」
イ 甲5に記載された発明
甲5に記載された事項を、特に油脂B-1、油脂B-2、油脂B-4及び油脂B-5に関して整理すると、甲5には次の発明(以下、順に「甲5油脂B-1発明」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲5油脂B-1発明>
「表4に記載の割合にて調合した原料油脂1.0kgに、ナトリウムメチラートを触媒として1.5g添加し、80℃にて30分ランダムエステル交換を行った後、水洗/脱色/脱臭を行い得たエステル交換油脂B-1を使用してチョコレートのブルーム耐性を良好にする方法。」(当審注:「表4」については上記ア参照。以下、同様。)
<甲5油脂B-2発明>
「表4に記載の割合にて調合した原料油脂1.0kgに、ナトリウムメチラートを触媒として1.5g添加し、80℃にて30分ランダムエステル交換を行った後、水洗/脱色/脱臭を行い得たエステル交換油脂B-2を使用してチョコレートのブルーム耐性を良好にする方法。」
<甲5油脂B-4発明>
「表4に記載の割合にて調合した原料油脂1.0kgに、ナトリウムメチラートを触媒として1.5g添加し、80℃にて30分ランダムエステル交換を行った後、水洗/脱色/脱臭を行い得たエステル交換油脂B-4を使用してチョコレートのブルーム耐性を良好にする方法。」
<甲5油脂B-5発明>
「表4に記載の割合にて調合した原料油脂1.0kgに、ナトリウムメチラートを触媒として1.5g添加し、80℃にて30分ランダムエステル交換を行った後、水洗/脱色/脱臭を行い得たエステル交換油脂B-5を使用してチョコレートのブルーム耐性を良好にする方法。」
(2)本件特許発明5について
本件訂正により、請求項5は削除された。
(3)本件特許発明7について
ア 対比
本件特許発明7と甲5油脂B-1発明、甲5油脂B-2発明、甲5油脂B-4発明及び甲5油脂B-5発明のいずれかを対比する。
甲5油脂B-1発明、甲5油脂B-2発明、甲5油脂B-4発明及び甲5油脂B-5発明のいずれかにおける「チョコレートのブルーム耐性を良好にする方法」は本件特許発明7における「チョコレート類のグレーニングを抑制する方法」と「チョコレート類の品質保持方法」という限りにおいて一致する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「ランダムエステル交換油を使用する、チョコレート類の品質保持方法。」
そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。
<相違点5-7a>
本件特許発明7においては「下記(A)~(C)の全てを満たす」と特定されているのに対し、甲5油脂B-1発明、甲5油脂B-2発明、甲5油脂B-4発明及び甲5油脂B-5発明のいずれかにおいてはそのようには特定されていない点。
<相違点5-7b>
「チョコレート類の品質保持方法」に関して、本件特許発明7においては「チョコレート類のグレーニングを抑制する方法」と特定されているのに対し、甲5油脂B-1発明、甲5油脂B-2発明、甲5油脂B-4発明及び甲5油脂B-5発明のいずれかにおいては「チョコレートのブルーム耐性を良好にする方法」と特定されている点。
<相違点5-7c>
本件特許発明7においては「使用するランダムエステル交換油がさらに下記の(D)を満たす」と特定されているのに対し、甲5油脂B-1発明、甲5油脂B-2発明、甲5油脂B-4発明及び甲5油脂B-5発明のいずれかにおいてはそのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点5-7aについて検討する。
甲5の【0052】の【表5】の分析結果を基に、甲5油脂B-1発明、甲5油脂B-2発明、甲5油脂B-4発明及び甲5油脂B-5発明における「構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量」を計算すると、次のように75.9質量%から87.9質量%の範囲内の値となり、甲5油脂B-1発明、甲5油脂B-2発明、甲5油脂B-4発明及び甲5油脂B-5発明において、「(C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下」とならないことは当業者に明らかである。
[図:0001427976000024.jpg]
そうすると、相違点5-7aは実質的な相違点である。
また、甲5には、甲5油脂B-1発明、甲5油脂B-2発明、甲5油脂B-4発明及び甲5油脂B-5発明のいずれかにおいて、相違点5-7aに係る本件特許発明7の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。
そして、本件特許発明7の奏する「チョコレート類において、グレーニングの発生を抑制する油脂を提供することができる。」、「ブルーム耐性の良好な、滑らかな食感のソフトチョコレート類が得られる油脂を提供することができる。」、「従来使用されている液状油よりも、グレーニングの発生を抑制可能な油脂を提供することができる。」及び「グレーニングの発生が抑制されたチョコレート類を提供することができる。」という効果は、甲5油脂B-1発明、甲5油脂B-2発明、甲5油脂B-4発明及び甲5油脂B-5発明のいずれか並びに甲5及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明7の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明7は甲5油脂B-1発明、甲5油脂B-2発明、甲5油脂B-4発明及び甲5油脂B-5発明のいずれかであるとはいえないし、甲5油脂B-1発明、甲5油脂B-2発明、甲5油脂B-4発明及び甲5油脂B-5発明のいずれか並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)取消理由5についてのむすび
したがって、本件特許発明7は、甲5油脂B-1発明、甲5油脂B-2発明、甲5油脂B-4発明及び甲5油脂B-5発明のいずれか、すなわち甲5に記載された発明であるとはいえず、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、甲5に記載された発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項7に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当しないので、取消理由5によっては取り消すことはできない。
第7 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由について
取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由は、申立理由3のうち請求項7に対する進歩性、申立理由6(サポート要件)及び申立理由7(明確性要件)である。
以下、順に検討する。
1 申立理由3のうち請求項7に対する進歩性について
上記第6 3で検討したとおりであり、本件特許の請求項7に係る特許は、申立理由3のうち請求項7に対する進歩性によっては取り消すことはできない。
2 申立理由6(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0002】ないし【0008】によると、本件特許発明1及び2の解決しようとする課題は「チョコレート類におけるグレーニングを低減させる油脂」を提供することであり、本件特許発明3、4、10及び11の解決しようとする課題は「チョコレート類におけるグレーニングを低減させる油脂を含むチョコレート類」を提供することであり、本件特許発明6及び7の解決しようとする課題は「チョコレート類におけるグレーニングの抑制方法」を提供することであり、本件特許発明8及び9の解決しようとする課題は「チョコレート類におけるグレーニングを低減させる油脂の製造方法」を提供することである(以下、総称して「発明の課題」という。)。
発明の詳細な説明の【0009】には「本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意検討を重ねた結果、構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上、及び、構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたときのY/Xを0.2以上1.0以下、としたランダムエステル交換油が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。」と記載されている。
発明の詳細な説明の【0010】には「すなわち、本発明は以下の内容を含む。
(1) 下記(A)及び(B)を満たす、ランダムエステル交換油。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下
(2) (C)構成脂肪酸組成中、不飽和脂肪酸の含有量が50質量%以上80質量%以下である、(1)のランダムエステル交換油。
(3) (D)構成脂肪酸組成中、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が5質量%以上30質量%以下である、(1)のランダムエステル交換油。
(4) (D)構成脂肪酸組成中、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量が5質量%以上30質量%以下である、(2)のランダムエステル交換油。
(5) (1)又は(2)のランダムエステル交換油を含む、チョコレート類。
(6) (3)又は(4)のランダムエステル交換油を含む、チョコレート類。
(7) チョコレート類中の油脂分が10質量%~70質量%、チョコレート類中の油脂分中にカカオバターを3質量%~40質量%、及び、(1)又は(2)のランダムエステル交換油を5質量%~97質量%含有する、チョコレート類。
(8) チョコレート類中の油脂分が10質量%~70質量%、チョコレート類中の油脂分中にカカオバターを3質量%~40質量%、及び、(3)又は(4)のランダムエステル交換油を5質量%~97質量%含有する、チョコレート類。
(9) (1)又は(2)のランダムエステル交換油を使用することを特徴とする、チョコレート類のグレーニングの抑制方法。
(10) (3)又は(4)のランダムエステル交換油を使用することを特徴とする、チョコレート類のグレーニングの抑制方法。
(11) 下記(A)及び(B)を満たすランダムエステル交換油となるように、原料油脂を配合する、ランダムエステル交換油の製造方法。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下
(12) ランダムエステル交換の前記原料油脂に、下記油脂原料a及び油脂原料bを含む、(11)のランダムエステル交換油の製造方法。
油脂原料a:ヨウ素価50~150の植物油脂
油脂原料b:ラウリン油脂」と記載され、形式的には本件特許発明1ないし4及び6ないし11に対応する記載がある。
発明の詳細な説明の【0035】ないし【0063】には「下記(A)及び(B)を満たす、ランダムエステル交換油。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下」という条件を満たすランダムエステル交換油4ないし6及び9ないし14を含むチョコレートの実施例1ないし9はグレーニングが28日目でも発生せず目標品質が得られたことを確認する記載がある。
そうすると、発明の詳細な説明の上記記載により当業者は「下記(A)及び(B)を満たす、ランダムエステル交換油。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下」、「下記(A)及び(B)を満たすランダムエステル交換油を含むチョコレート類。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下」、「下記(A)及び(B)を満たす、ランダムエステル交換油を使用する、チョコレート類のグレーニング抑制方法。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下」及び「下記(A)及び(B)を満たす、ランダムエステル交換油となるように、原料油脂を配合する、ランダムエステル交換油の製造方法。
(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上
(B)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量をX、炭素数12~14の飽和脂肪酸の含有量をYとしたとき、Y/Xが0.2以上1.0以下」は発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1及び2は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「ランダムエステル交換油」をさらに限定したものであり、本件特許発明3、4、10及び11は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「ランダムエステル交換油を含むチョコレート類」をさらに限定したものであり、本件特許発明6及び7は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「ランダムエステル交換油を使用する、チョコレート類のグレーニング抑制方法」をさらに限定したものであり、本件特許発明8及び9は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「ランダムエステル交換油となるように、原料油脂を配合する、ランダムエステル交換油の製造方法」をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明1ないし4及び6ないし11は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
よって、本件特許発明1ないし4及び6ないし11に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 6における主張について検討する。
発明の詳細な説明に「構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量」が下限20.4質量%~上限39.3質量%の実施例しか記載されておらず、39.3質量%を超える実施例は記載されていないとしても、39.3質量%を超えるものにおいても、程度の差はあれグレーニングの抑制の効果が得られ、発明の課題を解決できると当業者は理解する。
また、特許異議申立人の上記第4 6における主張は、「構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量」が39.3%を超えるとグレーニングの抑制の効果が得られず、発明の課題を解決できないことを示す具体的な証拠を伴うものでもない。
したがって、特許異議申立人の上記第4 6における主張は採用できない。
(4)申立理由6についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし4及び6ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由6によっては取り消すことはできない。
3 申立理由7(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
本件特許の請求項1ないし4及び6ないし11の記載は、それら自体に不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明の記載とも整合している。
したがって、本件特許発明1ないし4及び6ないし11に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 7における主張について検討する。
本件特許発明1、6及び8の「(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上」という発明特定事項において上限が規定されていないとしても、「炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量」と「不飽和脂肪酸の含有量」の和が100質量%を超えることがないことは当業者に明らかである。
したがって、「(A)構成脂肪酸組成中、炭素数12~18の飽和脂肪酸の含有量が20質量%以上」との関係で100質量%を超える場合があり、発明が不明確となっている。」とはいえず、特許異議申立人の上記第4 7における主張は採用できない。
(4)申立理由7についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし4及び6ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由7によっては取り消すことはできない。
第8 むすび
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1ないし4及び6ないし11に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし4及び6ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項5に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項5に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701146