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特許異議申立

2024-700267

油脂組成物の製造方法、油っぽさ低減剤、加熱臭抑制剤、調理用食用油脂の製造方法、油っぽさ低減方法、加熱臭抑制方法、食品の製造方法

審判番号
2024-700267
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-548474
登録番号
7352562
請求日
2024年03月25日
審決日
2025年01月30日
公報発行日
2025年05月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社J-オイルミルズ
  • 【権利者代理人】デロイトトーマツ弁理士法人
  • 【異議申立人】田代 攻治
審判長/審判官
  • 審判長 柴田 昌弘
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 天野 宏樹
分類
P1652.113-YAA(A23D) / P1652.121-YAA(A23D) / P1652.537-YAA(A23D) / P1652.575-YAA(A23D)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7352562号発明「油脂組成物の製造方法、油っぽさ低減剤、加熱臭抑制剤、調理用食用油脂の製造方法、油っぽさ低減方法、加熱臭抑制方法、食品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7352562号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、〔3及び4〕、5、6、7、8、9、10、11、12及び13について訂正することを認める。 特許第7352562号の請求項1ないし3及び5ないし13に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7352562号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし13に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)9月13日(優先権主張 平成30年9月25日)を国際出願日とする出願であって、令和5年9月20日にその特許権の設定登録(請求項の数13)がされ、同年同月28日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年3月25日に特許異議申立人 田代 攻治(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし3及び5ないし13)がされ、同年5月17日付けで取消理由が通知され、同年7月19日に特許権者 株式会社J-オイルミルズ(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年同月25日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)が通知され、同年8月30日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年10月4日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年11月7日に特許権者から意見書及び手続補正書が提出され、同年同月15日付けで手続補正指令(方式)が通知され、同年同月29日に特許権者から手続補正書が提出されたものである。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 特許権者から令和6年11月29日に提出された手続補正書により補正された同年同月7日に提出された手続補正書による補正は、同年7月19日にされた訂正請求による訂正のうちの訂正事項4を削除するものであって、訂正請求書の要旨を変更するものではないので、該補正を認める。 そうすると、上記補正された令和6年7月19日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、 「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油及び焙煎物を除く)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含むことを特徴とする油脂組成物の製造方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」 と記載されているのを、 「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含むことを特徴とする油脂組成物の製造方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」 と訂正する。 (2)訂正事項2 訂正前の特許請求の範囲の請求項2に、 「前記油糧原料は、コーンジャーム、大豆、菜種、綿実、米糠、ごま、オリーブ、ひまわり、えごま、及び亜麻仁からなる群より選ばれた1種又は2種以上であり、前記加工物は破砕物、絞り粕、及び焙煎物より選ばれた1種又は2種以上である、請求項1に記載の油脂組成物の製造方法。」 と記載されているのを、 「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法であって、 前記油糧原料は、コーンジャーム、大豆、菜種(但し、種の状態のものを除く。)、綿実、ごま、オリーブ、ひまわり、えごま、及び亜麻仁からなる群より選ばれた1種又は2種以上であり、前記加工物は破砕物及び絞り粕より選ばれた1種又は2種以上である、該油脂組成物の製造方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」 と訂正する。 (3)訂正事項3 訂正前の特許請求の範囲の請求項3に、 「前記加熱工程の後に固形分を除去する除去工程を含む、請求項1又は2に記載の油脂組成物の製造方法。」 と記載されているのを、 「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法であって、 前記加熱工程の後に固形分を除去する除去工程を含む、該油脂組成物の製造方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」 と訂正する。 (4)訂正事項5 訂正前の特許請求の範囲の請求項5に、 「前記油脂の質量に対して、前記油糧原料及び前記油糧原料の加工物の質量が0.05倍以上1倍以下となるように、前記油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上を添加する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の油脂組成物の製造方法。」 と記載されているのを、 「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法であって、 前記油脂の質量に対して、前記油糧原料及び前記油糧原料の加工物の質量が0.05倍以上1倍以下となるように、前記油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上を添加する、該油脂組成物の製造方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」 と訂正する。 (5)訂正事項6 訂正前の特許請求の範囲の請求項6に、 「請求項1乃至5のいずれか1項に記載された製造方法により得られた油脂組成物を有効成分とすることを特徴とする油っぽさ低減剤。」 と記載されているのを、 「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法により得られた前記油脂組成物を有効成分とすることを特徴とする油っぽさ低減剤。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」 と訂正する。 (6)訂正事項7 訂正前の特許請求の範囲の請求項7に、 「請求項1乃至5のいずれか1項に記載された製造方法により得られた油脂組成物を有効成分とすることを特徴とする加熱臭抑制剤。」 と記載されているのを、 「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法により得られた前記油脂組成物を有効成分とすることを特徴とする加熱臭抑制剤。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」 と訂正する。 (7)訂正事項8 訂正前の特許請求の範囲の請求項8に、 「請求項1乃至5のいずれか1項に記載された製造方法により得られた油脂組成物を食用油脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下添加することを特徴とする調理用食用油脂の製造方法。」と記載されているのを、 「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法により得られた前記油脂組成物を食用油脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下添加することを特徴とする調理用食用油脂の製造方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」 と訂正する。 (8)訂正事項9 訂正前の特許請求の範囲の請求項9に、 「請求項8に記載された製造方法により得られた調理用食用油脂を用いて食品を調理することを特徴とする油っぽさ低減方法。」 と記載されているのを、 「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法により得られた前記油脂組成物を食用油脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下添加することにより調理用食用油脂を得、 得られた前記調理用食用油脂を用いて食品を調理することを特徴とする油っぽさ低減方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」 と訂正する。 (9)訂正事項10 訂正前の特許請求の範囲の請求項10に、 「前記調理が油ちょうである、請求項9に記載の油っぽさ低減方法。」 と記載されているのを、 「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法により得られた前記油脂組成物を食用油脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下添加することにより調理用食用油脂を得、 得られた前記調理用食用油脂を用いて食品を調理する油っぽさ低減方法であって、前記調理が油ちょうである、該油っぽさ低減方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」 と訂正する。 (10)訂正事項11 訂正前の特許請求の範囲の請求項11に、 「請求項8に記載された製造方法により得られた調理用食用油脂を用いて食品を調理することを特徴とする加熱臭抑制方法。」 と記載されているのを、 「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法により得られた前記油脂組成物を食用油脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下添加することにより調理用食用油脂を得、 得られた前記調理用食用油脂を用いて食品を調理することを特徴とする加熱臭抑制方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」 と訂正する。 (11)訂正事項12 訂正前の特許請求の範囲の請求項12に、 「前記調理が油ちょうである、請求項11に記載の加熱臭抑制方法。」 と記載されているのを、 「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法により得られた前記油脂組成物を食用油脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下添加することにより調理用食用油脂を得、 得られた前記調理用食用油脂を用いて食品を調理する加熱臭抑制方法であって、 前記調理が油ちょうである、該加熱臭抑制方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」 と訂正する。 (12)訂正事項13 訂正前の特許請求の範囲の請求項13に、 「請求項8に記載された製造方法により得られた調理用食用油脂を用いて食品を製造することを特徴とする食品の製造方法。」 と記載されているのを、 「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法により得られた前記油脂組成物を食用油脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下添加することにより調理用食用油脂を得、 得られた前記調理用食用油脂を用いて食品を製造することを特徴とする食品の製造方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」 と訂正する。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)請求項1についての訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、「油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上」から除く対象を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)請求項2についての訂正について 訂正事項2による請求項2についての訂正は、訂正前の請求項2が請求項1を引用していたのを、請求項1を引用しない独立形式に書き下すとともに「油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上」から除く対象を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)請求項3についての訂正について 訂正事項3による請求項3についての訂正は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用していたのを、請求項2を引用する請求項3を削除し、請求項1だけを引用する請求項3について、請求項1を引用しない独立形式に書き下すとともに「油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上」から除く対象を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)請求項4についての訂正について 訂正事項3による請求項4についての訂正は、請求項3についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)請求項5についての訂正について 訂正事項5による請求項5についての訂正は、訂正前の請求項5が請求項1乃至4のいずれか1項を引用していたのを、請求項2乃至4のいずれか1項を引用する請求項5を削除し、請求項1だけを引用する請求項5について、請求項1を引用しない独立形式に書き下すとともに「油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上」から除く対象を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)請求項6についての訂正について 訂正事項6による請求項6についての訂正は、訂正前の請求項6が請求項1乃至5のいずれか1項を引用していたのを、請求項2乃至5のいずれか1項を引用する請求項6を削除し、請求項1だけを引用する請求項6について、請求項1を引用しない独立形式に書き下すとともに「油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上」から除く対象を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7)請求項7についての訂正について 訂正事項7による請求項7についての訂正は、訂正前の請求項7が請求項1乃至5のいずれか1項を引用していたのを、請求項2乃至5のいずれか1項を引用する請求項7を削除し、請求項1だけを引用する請求項7について、請求項1を引用しない独立形式に書き下すとともに「油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上」から除く対象を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (8)請求項8についての訂正について 訂正事項8による請求項8についての訂正は、訂正前の請求項8が請求項1乃至5のいずれか1項を引用していたのを、請求項2乃至5のいずれか1項を引用する請求項8を削除し、請求項1だけを引用する請求項8について、請求項1を引用しない独立形式に書き下すとともに「油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上」から除く対象を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (9)請求項9についての訂正について 訂正事項9による請求項9についての訂正は、訂正前の請求項9が請求項1乃至5のいずれか一項を引用する請求項8を引用していたのを、請求項2乃至5のいずれか一項を引用する請求項8を引用する請求項9を削除し、請求項1だけを引用する請求項8を引用する請求項9について、請求項1及び8を引用しない独立形式に書き下すとともに「油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上」から除く対象を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (10)請求項10についての訂正について 訂正事項10による請求項10についての訂正は、訂正前の請求項10が請求項1乃至5のいずれか1項を引用する請求項8を引用する請求項9を引用していたのを、請求項2乃至5のいずれか1項を引用する請求項8を引用する請求項9を引用する請求項10を削除し、請求項1だけを引用する請求項8を引用する請求項9を引用する請求項10について、請求項1、8及び9を引用しない独立形式に書き下すとともに「油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上」から除く対象を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (11)請求項11についての訂正について 訂正事項11による請求項11についての訂正は、訂正前の請求項11が請求項1乃至5のいずれか1項を引用する請求項8を引用していたのを、請求項2乃至5のいずれか1項を引用する請求項8を引用する請求項11を削除し、請求項1だけを引用する請求項8を引用する請求項11について、請求項1及び8を引用しない独立形式に書き下すとともに「油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上」から除く対象を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (12)請求項12についての訂正について 訂正事項12による請求項12についての訂正は、訂正前の請求項12が請求項1乃至5のいずれか1項を引用する請求項8を引用する請求項11を引用していたのを、請求項2乃至5のいずれか1項を引用する請求項8を引用する請求項11を引用する請求項12を削除し、請求項1だけを引用する請求項8を引用する請求項11を引用する請求項12について、請求項1、8及び11を引用しない独立形式に書き下すとともに「油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上」から除く対象を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (13)請求項13についての訂正について 訂正事項13による請求項13についての訂正は、訂正前の請求項13が請求項1乃至5のいずれか1項を引用する請求項8を引用していたのを、請求項2乃至5のいずれか1項を引用する請求項8を引用する請求項13を削除し、請求項1だけを引用する請求項8を引用する請求項13について、請求項1及び8を引用しない独立形式に書き下すとともに「油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上」から除く対象を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、上記訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 独立特許要件について 特許異議申立人からの特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし3及び5ないし13に対してされ、訂正前の請求項4に対してはされていないので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は請求項1ないし3及び5ないし13に対しては課されないものの、請求項4に対しては課される。 そして、下記第9のとおり、本件訂正後の請求項4に係る発明は、独立特許要件を否定されるものではなく、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 4 むすび 以上のとおり、訂正事項1ないし3及び5ないし13による請求項1ないし13についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1及び4号に掲げる事項を目的とするものである。 また、訂正事項1ないし3及び5ないし13による請求項1ないし13についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項1ないし13は一群の請求項に該当するものである。 そして、訂正事項1ないし3及び5ないし13による請求項1ないし13についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 また、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件については、上記3のとおりである。 したがって、本件訂正は適法なものである。 そして、特許権者から、訂正後の請求項2ないし13について、請求項1とは別途訂正することの求めがされているところ、訂正後の請求項4は請求項3を引用しており、訂正後の請求項3及び4は依然として一群の請求項である。 よって、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、〔3及び4〕、5、6、7、8、9、10、11、12及び13について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 なお、下記第9において本件訂正後の請求項4に係る発明の独立特許要件を判断する都合上、本件特許の請求項4に記載された事項も摘記している。 「【請求項1】 油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含むことを特徴とする油脂組成物の製造方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。) 【請求項2】 油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法であって、 前記油糧原料は、コーンジャーム、大豆、菜種(但し、種の状態のものを除く。)、綿実、ごま、オリーブ、ひまわり、えごま、及び亜麻仁からなる群より選ばれた1種又は2種以上であり、前記加工物は破砕物及び絞り粕より選ばれた1種又は2種以上である、該油脂組成物の製造方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。) 【請求項3】 油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法であって、 前記加熱工程の後に固形分を除去する除去工程を含む、該油脂組成物の製造方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。) 【請求項4】 前記除去工程の後に脱臭する脱臭工程を含む、請求項3に記載の油脂組成物の製造方法。 【請求項5】 油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法であって、 前記油脂の質量に対して、前記油糧原料及び前記油糧原料の加工物の質量が0.05倍以上1倍以下となるように、前記油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上を添加する、該油脂組成物の製造方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。) 【請求項6】 油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法により得られた前記油脂組成物を有効成分とすることを特徴とする油っぽさ低減剤。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。) 【請求項7】 油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法により得られた前記油脂組成物を有効成分とすることを特徴とする加熱臭抑制剤。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。) 【請求項8】 油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法により得られた前記油脂組成物を食用油脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下添加することを特徴とする調理用食用油脂の製造方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。) 【請求項9】 油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法により得られた前記油脂組成物を食用油脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下添加することにより調理用食用油脂を得、 得られた前記調理用食用油脂を用いて食品を調理することを特徴とする油っぽさ低減方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。) 【請求項10】 油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法により得られた前記油脂組成物を食用油脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下添加することにより調理用食用油脂を得、 得られた前記調理用食用油脂を用いて食品を調理する油っぽさ低減方法であって、前記調理が油ちょうである、該油っぽさ低減方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。) 【請求項11】 油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法により得られた前記油脂組成物を食用油脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下添加することにより調理用食用油脂を得、 得られた前記調理用食用油脂を用いて食品を調理することを特徴とする加熱臭抑制方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。) 【請求項12】 油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法により得られた前記油脂組成物を食用油脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下添加することにより調理用食用油脂を得、 得られた前記調理用食用油脂を用いて食品を調理する加熱臭抑制方法であって、前記調理が油ちょうである、該加熱臭抑制方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。) 【請求項13】 油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法により得られた前記油脂組成物を食用油脂100質量部に対して0.01質量部以上10質量部以下添加することにより調理用食用油脂を得、 得られた前記調理用食用油脂を用いて食品を製造することを特徴とする食品の製造方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」 第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要等 令和6年3月25日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし3、5及び6は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許発明7ないし13は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし13に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1、3及び5は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、本件特許発明8及び13は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、5、8及び13に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由3(甲第3号証に基づく新規性) 本件特許発明1、2、8及び13は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、8及び13に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 申立理由4(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし3及び5ないし13に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (1)請求項1ないし3及び5ないし13について 本件特許発明1には、油糧原料についての規定はなく、また本件特許発明2には、油糧原料として菜種を含む。本件特許発明の課題は、本件特許明細書段落【0008】に記載の通り、「油脂を用いて調理される食品に付与される油っぽさを低減することができ、また、加熱調理時に発生する油脂の加熱臭を抑制することができる油脂組成物であって、種々の食用油脂に適用可能で汎用性のあるものを提供すること」である。しかしながら、本件特許明細書段落【0055】、【表1】に記載の通り、菜種(種の状態)、カボチャの種、アーモンド、落花生については、油っぽさが強いかまたは普通であり、油っぽさの低減はなされていない。 したがって、本件特許発明1及び2は、本件特許発明の課題を解決できない範囲を含むものであり、本件特許明細書に記載された発明ではない。本件特許発明3及び5ないし13も同様である。 (2)請求項1ないし3及び6ないし13について 本件特許発明1には、油糧原料の添加量についての規定はない。本件特許発明の課題は、本件特許明細書段落【0008】に記載の通り、「油脂を用いて調理される食品に付与される油っぽさを低減することができ、また、加熱調理時に発生する油脂の加熱臭を抑制することができる油脂組成物であって、種々の食用油脂に適用可能で汎用性のあるものを提供すること」である。しかしながら、例えば、ごく少量の油糧原料を添加したものについて、油っぽさの低減や加熱臭の抑制効果が発揮されるとは合理的に推認できない。 したがって、本件特許発明1は、本件特許発明の課題を解決できない範囲を含むものであり、本件特許明細書に記載された発明ではない。本件特許発明2、3及び6ないし13も同様である。 5 証拠方法 甲第1号証:特開平1-218549号公報 甲第2号証:国際公開第2017/077749号 甲第3号証:特開2016-67354号公報 甲第4号証:特開2000-282080号公報 甲第5号証:特開2018-68272号公報 甲第6号証:特開2018-99134号公報 証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第5 取消理由の概要 令和6年5月17日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。 1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし3及び5ないし7に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし13に係る発明は、甲1に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし13に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由1は申立理由1を包含する。 2 取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、3及び5に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1、3、5、8及び13に係る発明は、甲2に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、5、8及び13に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由2は申立理由2を包含する。 3 取消理由3(甲3に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1、2及び13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、また、本件特許の請求項1、2、8及び13に係る発明は、甲3に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、2、8及び13に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由3は申立理由3のうちの請求項1、2及び13に対する理由を包含する。 4 取消理由4(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし3及び5ないし13に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由4は申立理由4のうちの(1)と重複する。 発明の詳細な説明の【0055】の【表1】によると、「油糧原料」として「菜種(種の状態)」又は「アーモンド」が添加された実施例は、「油っぽさ」が「1点:強い」と評価されており、「油糧原料」として「菜種(種の状態)」又は「アーモンド」を添加した場合には、油っぽさを低減することができず、発明の課題を解決することができない。 そうすると、発明の詳細な説明の記載から、当業者は、「油糧原料」として「菜種(種の状態)」又は「アーモンド」を添加する場合は発明の課題を解決できるとは認識できない。 そして、本件特許発明1ないし3及び5ないし13は、「油糧原料」として「菜種(種の状態)」又は「アーモンド」を添加する場合を含むものである。 したがって、本件特許発明1ないし3及び5ないし13は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえず、本件特許発明1ないし3及び5ないし13に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するものであるとはいえない。 第6 取消理由についての当審の判断 1 主な証拠に記載された事項等 (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1には、「風味油及びその製造法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。下線は当審で付したものである。他の証拠についても同様。 ・「一方、このような香味油又は呈味油とは別に、前記した如く、常法により精製された一般の食用油脂は殆ど無味無臭であるとはいうものの、実際には各々油脂固有の油味を有しており、例えば液体油は一般に独特の油っぽさがあり、またパーム油は独特の粉っぽさがあるというように、好ましくない油味を有し、かかる不快な油味は経時的に増加するという欠点を有する。」(第2ページ左上欄第15行ないし右上欄第2行) ・「(発明の解決課題:目的) 本発明は、上記する如く、従来の香味油または呈味油が各々固有の風味を有し用途的に限定されるという難点、及び一般の食用油脂が有する好ましくない油味及びかかる不快な油味が経時的に増加するという欠点の解決を指向したものであり、加えてこめ油の有資源性に鑑み、こめ油に由来する優れたこく味を有する油脂の増産を目的とするものである。 (発明の解決手段;構成) 本発明は、叙上の課題を解決すべく鋭意研究した結果、本発明を完成するに至ったものであって、こめ油を除く油脂であって、該油脂中に米糠の風味成分等を含有して成る風味油、及び油脂中に米糠を浸漬し、真空度60mmHg(60Torr)以下の減圧下で140~180℃に加熱処理した後、固形分を除去することを特徴とする、風味油の製造法、である。」(第2ページ右上欄第19行ないし左下欄第16行) ・「本発明において、風味付けする対象の油脂としては例えば、ナタネ油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、コーン油、サフラワー油、カポック油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、ヤシ油、パーム核油等のこめ油を除く植物性油脂並びに牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂が例示でき、上記油脂類の単独又は混合油或いはそれらの硬化、分別、エステル交換等を施した加工油脂又は合成油脂であってもよく、液体油から融点の高い油脂に至るまで幅広い油脂が適応できる。これらの油脂は、特に精製された油脂であるのが好ましい。」(第2ページ左下欄第17行ないし右下欄第8行) ・「以上の米糠の使用量は、油脂に対して3重量%以上の添加量で有効な結果が得られる場合が多い。また、風味を強調する場合には油脂に対して5%以上の添加が一般的であるが、10重量%以上を加えて濃縮風味を作り、これを使用時に一般の油脂で適当に希釈することもできる。」(第3ページ左上欄第4ないし9行) ・「また、加熱は140~180℃で行う必要があり、下限未満では生臭味が感じられ、逆に上限を越えると焦げ臭を感じるようになる。なお、加熱時間は通常2時間程度でよいが、時間の長短はそれ程影響を与えるものではない。」(第3ページ左上欄第14ないし18行) ・「次いで、加熱攪拌処理を終了した反応物を冷却し、濾過、遠心分離、デカンテーション等、従来公知の分離手段にて油脂と固型分とに分離することによって、本発明の風味油を得る。 本発明によれば、米糠中に含まれる風味成分以外に例えばトコフェロール類やγ-オリザノール等の抗酸化性物質も油脂中に溶出されるので、未処理の油脂に比較して酸化安定性が一段と向上する。特に、風味付けする対象の油脂がパーム油、パームオレイン或いは硬化大豆油、硬化ナタネ油を使用したものは、こめ油と同等のこく味を有していながら、こめ油に比較して遙かに酸化安定性に優れたものが得られる。 以上の如く、本発明によって得られる風味油は、特定の食品用に限定されることなく、油脂自体の旨さの根源であるコク味を呈した汎用性のある呈味を有するものであって、フライ用、スプレー用、マーガリン用、ショートニング用、練り込み用、クリーム用等、各種食品の用途に適した油脂として使用し得るものである。」(第3ページ右上欄第3行ないし左下欄第2行) ・「(実施例) 以下に実施例及び比較例を例示して本発明効果をより一層明瞭にするが、これらは例示であって本発明の精神がこれらの例示に限定されるものではない。なお、例中部及び%は何れも重量基準を意味する。 実施例1 硬化大豆油20部(沃素価:80.2)に対して生の米糠(脂肪中の遊離脂肪酸4.1%)1部を加え、約60mmHgの減圧下に攪拌しながら160℃に2時間加熱処理した。次いで60℃まで冷却した後、油脂と固型分を濾別して風味油を得た。 この風味油と硬化大豆油、米油の3種の油脂を使用してポテトチップスをフライし、20名のパネラ-による官能評価を行ったところ、こめ油を良いと答えた者10名、風味油を良いと答えた者9名、硬化大豆油を良いと答えた者1名であり、本例によって得られた風味油がこめ油と同様に良好な風味を有するという結果が得られ、原料である硬化大豆油より優れた油脂であった。」(第3ページ左下欄第7行ないし右下欄第6行) ・「実施例2 実施例1と同様の方法で、精製パームオレインを使用して風味油を得、ポテトチップスをフライしたところ、実施例1と同様、本例の風味油によってフライしたものは良好な風味を示した。 また、油脂の酸化安定性をランシマットによる方法によって測定したところ、本例によって得た風味油は11.9時間であり、パームオレインは11、1時間であったのに対し、こめ油は4.7時間であった。この結果により、本例によって得た風味油は母体となる油脂の酸化安定性を保持し、こめ油に比較し良好な安定性を有していた。」(第3ページ右下欄第15行ないし第4ページ左上欄第6行) ・「実施例2及び本例で得られた風味油と精製パームオレイン、こめ油とを用い、粳米センベイをフライし、パネラ-20名により官能評価したところ、実施例2の風味油を用いたものを良いと答えた者7名、本例の風味油を用いたものを良いとした者6名、こめ油をもちいたものを良いと答えた者7名であって、未処理のパームオレインを用いたものを良いと答えた者は一人もいなかった。」(第4ページ右上欄第3ないし10行) イ 甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「油脂中に米糠を浸漬し、真空度60mmHg(60Torr)以下の減圧下、加熱時間2時間程度で140~180℃に加熱処理した後、固形分を除去する、風味油の製造法。」 (2)甲2に記載された事項等 ア 甲2に記載された事項 甲2には、「油脂への風味付与方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「[0006] 本発明者が検討を行ったところ、従来は好ましくないとされていた加熱処理を経ないコーヒー豆(以下、コーヒー生豆という)を油脂に浸漬し、加熱することで、チョコレートに使用した場合にその風味を引き立てる、好ましい油脂が得られることを見出し、本発明を完成させた。 なお、ここで言うところの「チョコレート」とは特に断らない場合でも、全国チョコレート業公正取引協議会が規定するところの純チョコレートや「チョコレート」、「準チョコレート」から、ココアバター以外の油脂とカカオ固形分以外の可食物よりなる「チョコレート様食品」を含むものを総称するものとする。」 ・「[0009] 本発明で言うコーヒー生豆とは、ロースト処理(焙煎ともいう)されていないコーヒー豆のことを言う。本発明では、ロースト処理していないコーヒー生豆を使用することに特長がある。コーヒー生豆を使用することで、コーヒー独特の風味や香りを得ることは難しいものの、チョコレート用の油脂として使用する場合に、好ましい風味を付与できることを見出し、本発明は完成された。 [0010] 本発明のコーヒー生豆は、適宜粉砕され使用される。粉砕の程度は適宜選択できるが、概ねドリップコーヒーとして使用する程度の粉砕を行う。適当な粉砕を行うことにより、チョコレート用の油脂として好ましい風味を付与することが出来る。」 ・「[0012] 本発明においては、コーヒー生豆を油脂へ浸漬した後、加熱を行う。加熱温度は130~170℃であり、より望ましくは140~165℃であり、さらに望ましくは145~160℃である。また、加熱時間は、60~180分間であり、より望ましくは80~160分間であり、さらに望ましくは100~140分間である。 また、加熱に際しては、減圧を行う。減圧条件としては、1~20mmHgであり、より望ましくは、2~10mmHgであり、さらに望ましくは3~8mmHgである。 適当な加熱条件とすることにより、適切な風味を付与することが出来る。 [0013] 本発明においては、上記加熱工程の後、沈殿物を除去する。その方法としてはろ過が簡便で好ましいが、特に限定されない。沈殿物を除去することにより、口当たりの良いチョコレートを得ることが出来るようになる。」 ・「[0015] 本発明に係る、風味づけされた油脂は、チョコレート様食品中に、望ましくは5~20重量%含有させることで、好ましい風味のチョコレート様食品を得ることが出来る。この量は、より望ましくは6~18重量%であり、さらに望ましくは7~15重量%である。 なお、本発明において「チョコレート用」とは、チョコレートに使用した場合に、その風味改善効果等を示し、チョコレートに使用することが好ましいと言えるものである。特に、油脂単体で評価した場合には不味な場合でも、チョコレートに使用した場合に風味改善効果がみられるような場合、「チョコレート用」との表現が適する。」 ・「実施例 [0016]検討1 油脂への風味づけ 表1の配合に従い検討を行った。 それぞれ三口フラスコへすべての原料を投入し、それぞれの加熱条件に従い加熱を行った。 なお、コーヒー生豆はタンザニア産「キリマンジャロ」をミクロンパウダー(WEST社製)にて1mmに粉砕して使用した。 加熱後、品温を60℃まで下げ、No.5ろ紙にてろ過し、検討油脂を得た。 油脂サンプルは、「○油脂の官能評価法」に従い採点した。結果を表2に示した。 [0017]表1 配合 [図:0001422422000001.jpg] ・油脂には不二製油株式会社製「メラノNew SS7」を使用した。本品はテンパリングタイプハードバターであり、カカオバターと任意に置き換え可能なCBE(Cocoa Butter equivalent)であった。」 ・「[0021]検討2 チョコレートの調製 検討1で得られた油脂サンプルについて、チョコレートを調製し評価した。 配合は表3に、また調製は「○チョコレートの調整法」に従った。また、評価法は「○チョコレートの風味評価法」に従った。結果を表4に示した。 [0022]表3 チョコレートの配合 [図:0001422422000002.jpg] 」 イ 甲2に記載された発明 甲2に記載された事項を整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認める。 <甲2発明> 「コーヒー生豆を油脂へ浸漬した後、加熱温度は130~170℃、加熱時間は60~180分間で加熱を行い、その後、沈殿物を除去する、チョコレート用油脂の製造方法。」 (3)甲3に記載された事項等 ア 甲3に記載された事項 甲3には、「油脂の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 このように、魚類等の水産動物の魚臭等、大豆タンパク質のタンパク臭、静菌剤などに由来する酸臭等あるいはレトルト食品のレトルト臭等の異風味は食品の価値を貶める。そこで、本発明では、食品の異風味の抑制、または、食品の甘味の増強、をする油脂の製造方法を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者らは、鋭意研究の結果、レシチン含有油脂を加熱処理することにより得られる油脂が食品の異風味を抑制でき、また、食品の甘味を増強できることを見出した。 【0009】 すなわち、本発明は、レシチン含有油脂を加熱して得られる油脂の製造方法であって、レシチン含有油脂を70℃以上160℃以下の温度で加熱処理する加熱工程を含む前記製造方法である。 【0010】 さらに、前記加熱工程の加熱処理する時間が、0.5時間以上240時間以下であることが好ましい。」 ・「【0012】 さらに、前記レシチン含有油脂のレシチン含有量が0.01質量%以上20質量%以下であることが好ましい。 【0013】 さらに、食用油脂にレシチンを添加し、レシチン含有油脂を調製する工程を含むことが好ましい。 【0014】 また、本発明は、レシチン含有油脂を70℃以上160℃以下の温度で加熱処理する加熱工程を含む製造方法で得られた油脂を食用油脂に添加する工程を含む、油脂組成物の製造方法である。 【0015】 さらに、加熱処理前のレシチンが0.01質量%以上20質量%以下になるように前記油脂を添加することが好ましい。 【0016】 また、本発明は、レシチン含有油脂を70℃以上160℃以下の温度で加熱処理する加熱工程を含む製造方法で得られた油脂を食品に添加する工程を含む、食品の製造方法である。 【0017】 さらに、加熱処理前のレシチンが0.01ppm以上5000ppm以下になるように前記油脂を食品に添加することが好ましく、0.05ppm以上4000ppm以下がより好ましい。」 ・「【発明を実施するための形態】 【0022】 本発明において用いられるレシチンとしては、食品または食品添加物の分野で慣用的に用いられているレシチンを総称するものであって、大豆、菜種、コーン、ヒマワリ、パーム、落花生、米糠などを原料とした植物油精製時の副産物(例えば、脱ガム工程で発生する水和物)や卵黄などの粗原料から調製したペースト状レシチンや、この粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、さらにこの粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンなど、リン脂質を主成分とした混合物からなるレシチンである。好ましくはペースト状レシチンおよび分別レシチンから選ばれる1種または2種であり、より好ましくはペースト状レシチンである。 また、原料は特に問わないが、好ましくは大豆または米糠由来のレシチンであり、より好ましくは大豆由来のレシチンである。 また、レシチンの酸価は10以上40以下が好ましく、10以上35以下がより好ましく、10以上30以下がさらに好ましい。ここでいう酸価は、社団法人日本油化学会制定・基準油脂分析試験法(2.3.1-1996 酸価)に準じて測定されたものである。」 ・「【0025】 また、レシチン含有油脂は、食用油脂にレシチンを添加した油脂でもよく、レシチンが残存するように精製した油脂でもよい。レシチンの含有量の調整のしやすさの点で、好ましくは食用油脂にレシチンを添加したものがよい。レシチンの含有量は0.01質量%以上20質量%以下が好ましく、0.05質量%以上12質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上10質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以上10質量%以下が特に好ましい。 【0026】 レシチン含有油脂の加熱処理の温度は70℃以上160℃以下であり、好ましくは80℃以上140℃以下であり、より好ましくは90℃以上140℃以下であり、さらに好ましくは105℃以上140℃以下である。 また、加熱処理の時間は、好ましくは0.5時間以上240時間以下であり、より好ましくは2.5時間以上120時間以下であり、さらに好ましくは4時間以上80時間以下であり、最も好ましくは4.5時間以上50時間以下である。」 ・「【0030】 本発明の油脂組成物の油脂含有量は、特に限定されないが、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。特に上限はないが、レシチンと油脂の合計が100質量%以下である。前記油脂組成物は、レシチン含有油脂を加熱処理して得られる油脂を含有するが、レシチン含有油脂を加熱処理して得られる前記油脂の含有量は特に限定されず、100質量%であってもよい。 また、前記油脂組成物は、加熱処理前のレシチンが0.01質量%以上20質量%以下になるようにレシチン含有油脂を加熱処理して得られる前記油脂を含有することが好ましく、0.05質量%以上12質量%以下がより好ましく、0.05質量%以上8質量%以下がさらに好ましく、0.5質量%以上5質量%以下が特に好ましい。」 ・「【0036】 <レシチン> AY:レシチンAY(株式会社J-オイルミルズ社製;ペースト状レシチン、大豆由来、酸価 19.8)」 ・「【0043】 <加熱処理の方法> レシチン含有油脂を三口フラスコに加え、撹拌しながらオイルバスによる加熱をおこなった。所定温度になるまで加熱した後一定時間保温した。保温後、冷却して加熱処理レシチン含有油脂を得た。」 ・「【0045】 (加熱時間1) 表1に示す濃度になるようレシチンAYを大豆油に添加し、レシチン含有油脂を調製した。各レシチン含有油脂を表1に示す条件で加熱し、加熱処理レシチン含有油脂を得た。表1に示すレシチン濃度となるように、加熱処理レシチン含有油脂を必要に応じて菜種油で希釈した油脂組成物を用いて、異風味の抑制効果の評価をした。また、異臭の確認をおこなった。なお、油脂組成物のレシチン濃度とは、加熱処理前のレシチンを基準とした(以下同じ)。その結果を表1に示す。また、実施例1-4のレシチン含有油脂の加熱処理後の吸光度(400nm)から加熱処理前の吸光度(400nm)を引いた値は0.952であった。 【0046】 【表1】 [図:0001422422000003.jpg] 」 ・「【0076】 実施例18:マヨネーズ 下記に示した配合で自家製マヨネーズを作成した。対照として、実施例1-4の油脂組成物の代わりに菜種油を添加したものを作成した。得られたマヨネーズを食して、酸味、酸臭の抑制効果を評価したところ、菜種油と比較して実施例1-4の油脂組成物は酸味、酸臭を抑制することが確認できた。 (自家製マヨネーズの配合) 菜種油 195g 実施例1-4の油脂組成物 5g 穀物酢 15g 塩 1.5g グルタミン酸ナトリウム 0.08g」 イ 甲3に記載された発明 甲3に記載された事項を、特に実施例1-1ないし1-3に関して整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認める。 <甲3発明> 「配合量が0,5質量%の濃度になるようレシチンAYを大豆油に添加し、レシチン含有油脂を調製し、各レシチン含有油脂を加熱温度120℃、加熱時間1時間、2時間又は3時間の条件で加熱し、加熱処理レシチン含有油脂を得る方法。」 (4)甲4に記載された事項 甲4には、「配合食用油およびその利用」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【0006】 さらに、従来の菜種油にあっては、菜種油を高温に加熱し、そこに揚げ種(食材)を投入して加熱調理(フライ調理)する場合、熱や水分、揚げ種の構成成分等の影響によって、菜種油に様々な劣化現象が引き起こされる。 これにより、トリグリセリドから脂肪酸が遊離する加水分解反応のみならず、酸化反応の二次生成物である様々なケトンやアルデヒド等の化合物が、異臭(加熱臭)の原因物質となって空気中に揮散し、喫食者の食欲減退などを招くのである。」 (5)甲5に記載された事項 甲5には、「油溶性物質含有液状食品用安定剤」に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「【0019】 植物性脂肪としては、植物に由来する脂肪であれば特に制限されず、例えば、豆乳、大豆油、カカオバター、ココナッツ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、ヒマワリ油、米油、菜種油、綿実油、ゴマ油、落花生油、サフラワー油、椿油、オリーブ油、キャノーラ油、コーヒーオイル、シソ油、エレミ樹脂、マスティック樹脂等が挙げられる。」 2 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料としてコーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点1a> 本件特許発明1においては、「油糧原料として米糠」「を除く」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点1b> 本件特許発明1においては、「更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点(当審注:「下記式(1)」については、上記第3の請求項1を参照。以下、同様。)。 イ 判断 相違点1aについて検討する。 甲1発明は「油脂中に米糠を浸漬」するものであるから、相違点1aが実質的な相違点であることは当業者に明らかである。 また、甲1には、「米糠」を用いることを前提とする甲1発明において、「米糠」に代えて、他の原料を用いる動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 そして、本件特許発明1は「油脂を用いて調理される食品の油っぽさを低減することができ、また、加熱調理時に発生する油脂の加熱臭を抑制することができる油脂組成物を提供できる。」(本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0024】)という、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ 特許異議申立人の主張について (ア)特許異議申立人の主張の概要 特許異議申立人は、令和6年8月30日に提出された意見書において次のとおり主張する。 a 「2)-1:甲第1号証からの進歩性 訂正されている請求項1は、少なくとも甲第1号証(特開平1-218549号公報)に対して進歩性を欠いている。 ・・・(略)・・・ しかし、本件特許の訂正されている請求項1の発明は、油糧原料から「米糠」が除かれることのみをもって甲第1号証の発明と区別されたに過ぎず、本件特許の訂正された請求項1の発明は、甲第1号証の発明と技術的思想としては顕著に異なる発明ではなく、甲第1号証の発明から進歩性を欠くものである。 ・・・(略)・・・ このように、本件特許の請求項1の発明と甲第1号証の発明とは、 油糧原料における「米糠」の有無の点のみで相違しているが、その相違は、技術分野の共通性、解決課題の共通性、および作用効果の共通性を基礎として、甲第1号証自身の記載内容から論理付けすることができる。 そして、本件特許の明細書、特許請求の範囲または図面の記載からは、甲第1号証の発明と比較した有利な効果を明確に把握することはできない。 したがって、本件特許の請求項1の発明は、甲第1号証の発明から容易に想到できる発明であり、進歩性を欠くものである。」(上記意見書第2ないし4ページ) b 「訂正されている請求項1は、甲第1号証(特開平1-218549号公報)、または甲第2号証(国際公開第2017/07749号)に対して進歩性を欠いている。 ・・・(略)・・・ しかし、本件特許の訂正された請求項1の発明は、油糧原料から「米糠」および「コーヒー豆」が除かれることのみをもって甲第1号証または甲第2号証の発明と区別されたに過ぎず、本件特許の訂正された請求項1の発明は、甲第1号証または甲第2号証の発明と技術的思想としては顕著に異なる発明ではなく、甲第1号証または甲第2号証の発明から進歩性を欠くものである。 ・・・(略)・・・ これはすなわち、本件特許の請求項1の発明は、甲第1号証との対比において、甲第1号証に記載されている「米糠」を、「米糠」以外 の特定の「油糧原料及び前記油糧原料の加工物」へ変更したに過ぎない。同じく、本件特許発明の請求項1の発明は、甲第2号証との対比において、甲第2号証に記載されている「コーヒー豆」を、「コーヒー豆」以外の特定の「油糧原料及び前記油糧原料の加工物」へ変更したに過ぎない。 これら請求項1に係る発明と甲第1号証または甲第2号証との相違は、少なくとも、「一定の課題を解決するための公知材料の中からの 最適材料の選択」または「一定の課題を解決するための技術の具体的 適用に伴う設計変更や設計的事項の採用」に該当し、いわゆる「設計変更」に相当するものであり、甲各号証記載の発明から出発して当業者がその相違点に対応する発明特定事項に到達し得ると言える。すなわち、これらは、いずれも当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。 そして、本件特許の明細書、特許請求の範囲または図面の記載からは、引用発明と比較した有利な効果を明確に把握することはできない。 したがって、本件特許の請求項1の発明は、甲第1号証または甲第2号証の発明から容易に想到できる発明であり、進歩性を欠くものである。」(上記意見書第4及び5ページ) (イ)判断 そこで、検討する。 上記主張a及びbはいずれも、「米糠」を用いることを前提とする甲1発明において、「米糠」に代えて、他の原料を用いる動機付けがあることの論理又は証拠を具体的に示すものではないし、「コーヒー生豆」を用いることを前提とする甲2発明において、「コーヒー生豆」に代えて、「コーヒー豆」以外の他の原料を用いる動機付けがあることの論理又は証拠を具体的に示すものではない(なお、甲2発明に基づく進歩性についての当審の判断は下記3(1)ア、イ及びエのとおりである。)。 したがって、上記主張a及びbはいずれも採用できない。 エ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件特許発明2、3及び5について 本件特許発明2、3及び5のいずれかと甲1発明を対比する。 両者の間には、相違点1a及び1bと同じ相違点があり、相違点1aと同じ相違点についての判断は相違点1aと同じである。 すなわち、本件特許発明2、3及び5のいずれも甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明6について 甲1に記載された事項によると、甲1発明により製造された「風味油」は、「独特の油っぽさ」を解決したものであるといえるから、「油っぽさ低減剤」といえる。 これを踏まえて、本件特許発明6と甲1発明により製造された「風味油」を対比する。 両者の間には、相違点1a及び1bと同じ相違点があり、相違点1aと同じ相違点についての判断は相違点1aと同じである。 すなわち、本件特許発明6は甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明7について 甲1に記載された事項によると、甲1発明により製造された「風味油」は、「酸化安定性」に優れたものであるといえる。そして、甲4に記載された事項によると、「加熱」による「酸化反応」が起こらなければ「加熱臭」の原因物質が生成しないことから、甲1発明により製造された「風味油」は、「加熱臭抑制剤」といえる。 これを踏まえて、本件特許発明7と甲1発明により製造された「風味油」を対比する。 両者の間には、相違点1a及び1bと同じ相違点があり、相違点1aと同じ相違点についての判断は相違点1aと同じである。 すなわち、本件特許発明7は甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発明8ないし13について 甲1に記載された事項によると、甲1には甲1発明により製造された「風味油」を用いた「調理用食用油脂の製造方法」、「油っぽさ低減方法」、「加熱臭抑制方法」及び「食品の製造方法」に相当する発明が記載されているといえる。 これを踏まえて、本件特許発明8ないし13のいずれかと甲1に記載された発明を対比する。 両者の間には、相違点1a及び1bと同じ相違点があり、相違点1aと同じ相違点についての判断は相違点1aと同じである。 すなわち、本件特許発明8ないし13のいずれも甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (6)取消理由1についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3及び5ないし7は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、また、本件特許発明1ないし3及び5ないし13は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし13に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、取消理由1によっては取り消すことはできない。 3 取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 甲5に記載された事項によると、「コーヒー生豆」は植物性油脂の原料であり、「油糧原料」であるといえ、また、「液状油」でも「焙煎物」でもないことは当業者に明らかである。 これを踏まえて、本件特許発明1と甲2発明を対比する。 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物、又は植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物を除き、更に、油糧原料として米糠、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下である加熱工程を含む油脂組成物の製造方法。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点2a> 本件特許発明1においては、「油糧原料として」「コーヒー豆」「を除く」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点2b> 本件特許発明1においては、「更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点2aについて検討する。 甲2発明は「コーヒー生豆を油脂へ浸漬」するものであるから、相違点2aが実質的な相違点であることは当業者に明らかである。 また、甲2には、「コーヒー生豆」を用いることを前提とする甲2発明において、「コーヒー生豆」に代えて、「コーヒー豆」以外の他の原料を用いる動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 そして、本件特許発明1は「油脂を用いて調理される食品の油っぽさを低減することができ、また、加熱調理時に発生する油脂の加熱臭を抑制することができる油脂組成物を提供できる。」いう、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は、令和6年8月30日に提出された意見書において、上記2(1)ウ(ア)bのとおり主張する。 そして、それに対する判断は上記2(1)ウ(イ)のとおりであり、上記主張は採用できない。 エ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明であるとはいえないし、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件特許発明3及び5について 本件特許発明3及び5のいずれかと甲2発明を対比する。 両者の間には、相違点2a及び2bと同じ相違点があり、相違点2aと同じ相違点についての判断は相違点2aと同じである。 すなわち、本件特許発明3及び5のいずれも甲2発明であるとはいえないし、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明8について 甲2に記載された事項によると、甲2には甲2発明により製造された「チョコレート用の油脂」を用いた「調理用食用油脂の製造方法」に相当する発明が記載されているといえる。 これを踏まえて、本件特許発明8と甲2に記載された発明を対比する。 両者の間には、少なくとも相違点2a及び2bと同じ相違点があり、相違点2aと同じ相違点についての判断は相違点2aと同じである。 すなわち、本件特許発明8は甲2に記載された発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明13について 甲2に記載された事項によると、甲2には甲2発明により製造された「チョコレート用の油脂」を用いた「調理用食用油脂の製造方法」により製造された「調理用食用油脂」を用いた「食品の製造方法」に相当する発明が記載されているといえる。 これを踏まえて、本件特許発明13と甲2に記載された発明を対比する。 両者の間には、相違点2a及び2bと同じ相違点があり、相違点2aと同じ相違点についての判断は相違点2aと同じである。 すなわち、本件特許発明13は甲2に記載された発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)取消理由2についてのむすび したがって、本件特許発明1、3及び5は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、また、本件特許発明1、3、5、8及び13は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3、5、8及び13に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、取消理由2によっては取り消すことはできない。 4 取消理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)について (1)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲3発明を対比する。 甲3に記載された事項(【0022】及び【0036】)によると、甲3発明における「レシチン」は「植物油精製時の副産物」であり、「ペースト状」であるから、本件特許発明1における「油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物」「を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く)」に相当する。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物を除き、更に、油糧原料として米糠、コーヒー豆、菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法。」 そして、両者は次の点で一応相違する。 <相違点3a> 本件特許発明1においては、「植物油精製時の副産物や卵黄からなる粗原料から調製したペースト状レシチン、その粗原料を溶剤で分別して得た分別レシチン、その粗原料を酵素処理して得た酵素分解レシチンからなるレシチン含有物」を「除き」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点3b> 本件特許発明1においては、「更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点3aについて検討する。 甲3発明は「配合量が0,5質量%の濃度になるようレシチンAYを大豆油に添加し、レシチン含有油脂を調製」し、「加熱」し、「加熱処理レシチン含有油脂を得る」ものであるから、相違点3aが実質的な相違点であることは当業者に明らかである。 また、甲3には、「レシチンAY」を添加することを前提とする甲3発明において、「レシチンAY」に代えて、他の原料を用いる動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 そして、本件特許発明1は「油脂を用いて調理される食品の油っぽさを低減することができ、また、加熱調理時に発生する油脂の加熱臭を抑制することができる油脂組成物を提供できる。」という、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3発明であるとはいえないし、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (2)本件特許発明2について 本件特許発明2と甲3発明を対比する。 両者の間には、相違点3a及び3bと同じ相違点があり、相違点3aと同じ相違点についての判断は相違点3aと同じである。 すなわち、本件特許発明2は甲3発明であるとはいえないし、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明8について 甲3に記載された事項によると、甲3には甲3発明により製造された「加熱処理レシチン含有油脂」を用いた「調理用食用油脂の製造方法」に相当する発明が記載されているといえる。 これを踏まえて、本件特許発明8と甲3に記載された発明を対比する。 両者の間には、少なくとも相違点3a及び3bと同じ相違点があり、相違点3aと同じ相違点についての判断は相違点3aと同じである。 すなわち、本件特許発明8は甲3に記載された発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明13について 甲3に記載された事項によると、甲3には甲3発明により製造された「加熱処理レシチン含有油脂」を用いた「調理用食用油脂の製造方法」により製造された「調理用食用油脂」を用いた「食品の製造方法」に相当する発明が記載されているといえる。 これを踏まえて、本件特許発明13と甲3に記載された発明を対比する。 両者の間には、相違点3a及び3bと同じ相違点があり、相違点3aと同じ相違点についての判断は相違点3aと同じである。 すなわち、本件特許発明13は甲3に記載された発明であるとはいえないし、甲3に記載された発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)取消理由3についてのむすび したがって、本件特許発明1、2及び13は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、また、本件特許発明1、2、8及び13は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、2、8及び13に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、取消理由3によっては取り消すことはできない。 5 取消理由4(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)サポート要件の判断 ア 特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 イ 判断 取消理由4は、本件訂正前の本件特許発明1ないし3及び5ないし13が「油糧原料」として「菜種の種」又は「アーモンド」を添加するものを含むことに起因するものであるところ、本件訂正により、本件特許発明1ないし3及び5ないし13は「油糧原料」として「菜種の種」又は「アーモンド」を添加するものを除くものとなったので、取消理由4は解消したといえる。 そこで、改めて検討する。 発明の詳細な説明の【0001】ないし【0008】によると、本件特許発明1ないし5の解決しようとする課題は「油脂を用いて調理される食品に付与される油っぽさを低減することができる油脂組成物であって、種々の食用油脂に適用可能で汎用性のある油脂組成物の製造方法」を提供することであり、本件特許発明6の解決しようとする課題は「油脂を用いて調理される食品に付与される油っぽさを低減することができる油っぽさ低減剤」を提供することであり、本件特許発明7の解決しようとする課題は「油脂を用いて調理される食品に付与される油っぽさを低減することができる加熱調理時に発生する油脂の加熱臭抑制剤」を提供することであり、本件特許発明8の解決しようとする課題は「油脂を用いて調理される食品に付与される油っぽさを低減することができる油脂組成物であって、種々の食用油脂に適用可能で汎用性のある油脂組成物を添加する調理用食用油脂の製造方法」を提供することであり、本件特許発明9及び10の解決しようとする課題は「油脂を用いて調理される食品に付与される油っぽさを低減することができる油っぽさ低減方法」を提供することであり、本件特許発明11及び12の解決しようとする課題は「油脂を用いて調理される食品に付与される油っぽさを低減することができる加熱調理時に発生する油脂の加熱臭抑制方法」を提供することであり、本件特許発明13の解決しようとする課題は「油脂を用いて調理される食品に付与される油っぽさを低減することができる油脂組成物であって、種々の食用油脂に適用可能で汎用性のある油脂組成物を添加する調理用食用油脂を用いた食品の製造方法」を提供することである(以下、総称して「発明の課題」という。)。 そして、発明の詳細な説明の【0009】には「本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、油糧原料やその加工物が添加された油脂を加熱して得た油脂組成物が、油脂を用いて調理される食品に付与される油っぽさを低減することができ、また、加熱調理時に発生する油脂の加熱臭を抑制することができることを見出し、本発明を完成するに至った。」と記載され、同【0010】ないし【0023】には、本件特許発明1ないし13に対応する記載がある。 また、発明の詳細な説明の【0041】には「油糧原料及び/又はその加工物が添加された油脂を加熱して得られた」「油脂組成物」を用いることの技術的意義が記載されている。 さらに、発明の詳細な説明の【0049】ないし【0107】において、「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物を除き、更に、油糧原料として菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」によって製造された「油脂組成物」を用いた実施例が上記製造方法によって製造された「油脂組成物」を用いていない対照と比べて、「油っぽさを低減することができる」ことを確認している。 そうすると、発明の詳細な説明の記載から、当業者は、「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物を除き、更に、油糧原料として菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」、該「製造方法」により得られた油脂組成物を有効成分とする「油っぽさ低減剤」、該「製造方法」により得られた油脂組成物を有効成分とする「加熱臭抑制剤」、該「製造方法」により得られた油脂組成物を食用油脂に添加する「調理用食用油脂の製造方法」、該「調理用食用油脂の製造方法」により得られた調理用油脂を用いた「油っぽさ低減方法」、該「調理用食用油脂の製造方法」により得られた調理用油脂を用いた「加熱臭抑制方法」及び該「調理用食用油脂の製造方法」により得られた調理用油脂を用いた「食品の製造方法」は発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1ないし3及び5ないし13は、上記発明の課題を解決できると認識できる上記「製造方法」、上記「油っぽさ低減剤」、上記「加熱臭抑制剤」、上記「調理用食用油脂の製造方法」、上記「油っぽさ低減方法」、上記「加熱臭抑制方法」及び上記「食品の製造方法」をさらに限定したものである。 したがって、本件特許発明1ないし3及び5ないし13は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし3及び5ないし13に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (3)取消理由4についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取消理由4によっては取り消すことはできない。 第7 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由についての当審の判断 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由は次のとおりである。 ・申立理由3(甲3に基づく新規性)のうちの請求項8に対する理由 ・申立理由4(サポート要件)のうちの(1)の一部及び(2)の理由 以下、順に検討する。 1 申立理由3(甲3に基づく新規性)のうちの請求項8に対する理由について (1)対比・判断 上記第6 4(3)のとおり、本件特許発明8と甲3に記載された発明の間には、少なくとも相違点3a及び3bと同じ相違点があり、それらの相違点についての判断も相違点3a及び3bと同じである。 すなわち、本件特許発明8は甲3に記載された発明であるとはいえない。 (2)申立理由3のうちの請求項8に対する理由についてのむすび したがって、本件特許発明8は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項8に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号に該当せず、申立理由3のうちの請求項8に対する理由によっては取り消すことはできない。 2 申立理由4(サポート要件)のうちの(1)の一部及び(2)の理由について (1)申立理由4のうちの(1)の一部の理由について 申立理由4のうちの(1)の一部の理由は、要するに、油糧原料としてカボチャの種又は落花生を添加したものについては、油っぽさが普通であり、油っぽさの低減はなされていないから、本件特許発明1ないし3及び5ないし13は、本件特許発明の課題を解決できない範囲を含むものであるというものである。 そこで、検討する。 発明の詳細な説明の【0050】ないし【0055】によると、油糧原料としてカボチャの種又は落花生を添加した場合に、油っぽさが普通であるとしても、油糧原料が無添加の場合や油糧原料として菜種(種の状態)及びアーモンドを添加した場合よりは油っぽさが低減されているといえる。 そうすると、油糧原料としてカボチャの種又は落花生を添加した場合でも発明の課題を解決していると当業者は理解する。 したがって、本件特許発明1ないし3及び5ないし13は、本件特許発明の課題を解決できない範囲を含むものであるとはいえない。 よって、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由4のうちの(1)の一部の理由によっては取り消すことはできない。 (2)申立理由4のうちの(2)の理由について 申立理由4のうちの(2)の理由は、要するに、ごく少量の油糧原料を添加したものについて、油っぽさの低減や加熱臭の抑制効果が発揮されるとは合理的に推認できないから、本件特許発明1ないし3及び5ないし13は、本件特許発明の課題を解決できない範囲を含むものであるというものである。 そこで、検討する。 発明の詳細な説明の【0050】ないし【0055】によると、油糧原料を添加した場合に、油糧原料が無添加の場合よりは油っぽさが低減されているといえる。 そうすると、ごく少量の油糧原料を添加した場合でも発明の課題を解決できると当業者は理解する。 すなわち、「ごく少量の油糧原料を添加したものについて、油っぽさの低減や加熱臭の抑制効果が発揮されるとは合理的に推認できない」とはいえない。 したがって、本件特許発明1ないし3及び5ないし13は、本件特許発明の課題を解決できない範囲を含むものであるとはいえない。 よって、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由4のうちの(2)の理由によっては取り消すことはできない。 第8 特許異議申立人の主張する新たな理由について 1 特許異議申立人の主張する新たな理由の概要 特許異議申立人は、令和6年8月30日に提出された意見書において、新たに次の理由を主張している。 (1)特許法第36条第6項第2号(明確性要件)(上記意見書第5ないし7ページ) 訂正されている請求項1は、「除くクレーム」において除かれた部分が多岐にわたることから、明確性を欠いている。 除かれている対象の意味内容が説明されておらず、明確性違反である。 他の請求項も同じである。 (2)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)及び同条第4項第1号(実施可能要件)(上記意見書第7及び8ページ) 本件特許明細書には、請求項1における油糧原料の全範囲は、サポートされておらず、実施可能な程度に記載されているとはいえない。他の請求項についても同様である。 2 判断 そこで、検討する。 (1)特許法第36条第6項第2号について 明確性要件の判断は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点からされるものであるところ、除かれた部分が多岐にわたるかどうかは、明確性要件の判断を左右するものではないし、本件特許の請求項1においては、除かれている対象の意味内容はその記載自体から当業者であれば理解できる。 そうすると、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 本件特許発明2、3及び5ないし13に関しても同様である。 したがって、特許異議申立人の(1)の理由によっては、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 (2)特許法第36条第6項第1号及び同条第4項第1号について 本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するといえるのは、上記第6 5(2)イ及び第7 2のとおりである。 また、物を生産する方法の発明についての実施可能要件の判断は、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるかどうかという観点からされるものであるところ、発明の詳細な説明には、本件特許発明1の各発明特定事項について具体的に記載され、実施例に関しても具体的な記載があることから、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1の使用をし、本件特許発明1により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえ、本件特許発明1に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 さらに、特許異議申立人の(2)の理由は、本件特許発明1の発明特定事項を有しているだけでは発明の課題を解決できないこと及び本件特許発明1を実施することができない場合があることについて具体的な証拠を伴うものではない。 本件特許発明2、3及び5ないし13に関しても同様である。 したがって、特許異議申立人の(2)の理由によっては、本件特許の請求項1ないし3及び5ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 なお、本件特許発明1は本件訂正前の請求項1に係る発明をいわゆる除くクレームにより限定したにすぎないから、特許異議申立人の(2)の理由は本件訂正前の請求項1に係る発明に対して主張可能なものであって、本件訂正に付随して生じた事項に対する理由ではないから、そもそも、特許異議申立人の(2)の理由は新たな理由として採用できないものでもある。 第9 本件訂正後の請求項4に係る発明の独立特許要件について 本件訂正後の請求項4に係る発明は、次の1及び2のとおり特許異議申立書に記載した特許異議申立の理由によっては、独立特許要件は否定されない。 また、特許異議申立人の主張する新たな理由も検討したが、本件訂正後の請求項4に係る発明の独立特許要件は否定されない。 さらに、他に本件訂正後の請求項4に係る発明の独立特許要件を否定する理由を発見しない。 したがって、本件訂正後の請求項4に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。 1 甲1ないし3いずれかに基づく新規性・進歩性 本件訂正後の請求項4に係る発明と甲1発明ないし甲3発明のいずれかを対比するに、両者の間には、少なくとも相違点1a、2a又は3aがある。 そして、相違点1a、2a又は3aについての判断は、上記第6 2(1)イ、第6 3(1)イ又は第6 4(1)イのとおりである。 すなわち、本件訂正後の請求項4に係る発明は甲1発明ないし甲3発明のいずれかであるとはいえないし、甲1発明ないし甲3発明のいずれか並びに甲1ないし3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 2 サポート要件 本件訂正後の請求項4に係る発明の解決しようとする課題は、上記第6 5(2)イにおいて発明の課題として示したとおりである。 発明の詳細な説明には、上記第6 5(2)イにおいて示したとおりの事項が記載されている。 そして、本件訂正後の請求項4に係る発明は当業者が発明の課題を解決できると認識できる「油脂に対して、油糧原料及び前記油糧原料の加工物から選ばれた1種又は2種以上(但し、液状油、焙煎物を除き、更に、油糧原料として菜種の種、又はアーモンドであるものを除く。)を添加する添加工程と、加熱温度100℃超220℃以下、加熱時間5分以上240分以下であって、更に下記式(1)を満たす条件で加熱する加熱工程を含む油脂組成物の製造方法。 85-6000÷(270-T)<t<240 …(1) (ただし、上記式(1)において、T:加熱温度(℃)、t:加熱時間(分)である。85-6000÷(270-T)が負の値となるときは「5」とする。)」をさらに限定したものである。 また、上記第4 4(1)及び(2)の理由については、上記第6 5(2)イ並びに上記第7 2(1)及び(2)と同様のことがいえる。 したがって、本件訂正後の請求項4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件訂正後の請求項4に係る発明に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 第10 結語 以上のとおり、本件特許発明1ないし3及び5ないし13に係る特許は、取消理由、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由及び特許異議申立人が主張する新たな理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし3及び5ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700267

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