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特許異議申立

2023-700011

印刷用紙

審判番号
2023-700011
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2018-070543外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7102193
請求日
2023年01月06日
審決日
2024年06月21日
公報発行日
2024年11月29日
結論
請求成立(取消)
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-ZAA(D21H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7102193号発明「印刷用紙」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7102193号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。 特許第7102193号の請求項1~4に係る特許を取り消す。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7102193号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、平成30年4月2日の出願であって、令和4年7月8日にその特許権の設定登録(特許掲載公報令和4年7月19日発行)がされ、その後、その特許について、令和5年1月6日に特許異議申立人渋谷都(以下「申立人1」という。)により、同じく1月16日に特許異議申立人石井悠太(以下「申立人2」という。)により、特許異議の申立てがされ、令和5年6月28日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和5年8月22日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求がされ、令和5年9月22日に手続補正書(訂正請求書の補正)が提出され、この訂正の請求について、令和5年10月31日に申立人1より、同じく11月2日に申立人2より、意見書が提出され、その後、令和6年1月10日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である令和6年3月14日に特許権者から意見書の提出及び訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、その訂正自体を「本件訂正」という。)がされ、この本件訂正請求について、令和6年4月24日に申立人1より、同じく4月30日に申立人2より、意見書が提出されたものである。 なお、令和5年8月22日にされた訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の請求について 1.訂正の内容 本件訂正請求は、本件訂正請求書に添付した訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は、訂正箇所を示したものである。 (1)訂正事項1 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「基紙の少なくとも片面に、白色顔料とバインダーを含有する塗工層を2層以上有する印刷用紙において、少なくとも前記基紙に最も近接している塗工層(アンダー層)が、前記バインダーとして、架橋剤変性澱粉を含有し」と記載されているのを、「基紙の少なくとも片面に、白色顔料とバインダーを含有する塗工層を2層以上有する印刷用紙において、少なくとも前記基紙に最も近接している塗工層(アンダー層)が、前記バインダーとして、水分散性のバイオポリマーである架橋剤変性澱粉を含有し」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。) (2)訂正事項2 本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に「アンダー層の上に設けられる塗工層(トップ層)が前記架橋剤変性澱粉を含有しないか、含有しても全顔料100質量部に対して1~5質量部であることを特徴とする前記印刷用紙。」と記載されているのを、「アンダー層の上に設けられる塗工層(トップ層)が前記架橋剤変性澱粉を含有しないことを特徴とする前記印刷用紙。」に訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項2~4も同様に訂正する。) (3)訂正事項3 本件訂正前の明細書の【0037】の「(実施例7)」、【0044】の「実施例7」、及び【0045】の「実施例1~7」との記載を、それぞれ、「(参考例7)」、「参考例7」「実施例1~6、参考例7」に訂正する。 (4)一群の請求項について 訂正前の請求項2~4は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであり、本件訂正請求は、一群の請求項ごとにされたものである。 また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1~4〕について請求されたものである。 2.訂正の適否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、「架橋剤変性澱粉」について「水分散性のバイオポリマーである」ことを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、「架橋剤変性澱粉」について、明細書の【0003】に「バイオポリマーである」ことが記載されている。同じく【0030】に「架橋剤変性澱粉の水分散物を調製」した点が記載されていることから「架橋剤変性澱粉」が「水分散性」であることが分かる。したがって、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてするものである。 さらに、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (2)訂正事項2について 訂正事項2は、アンダー層の上に設けられる塗工層(トップ層)が架橋剤変性澱粉を「含有しない」か、「含有しても全顔料100質量部に対して1~5質量部である」のいずれかとされていたものを、「含有しても全顔料100質量部に対して1~5質量部である」の選択肢を削除して、「含有しない」もののみとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 また、訂正事項2は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 (3)訂正事項3について 訂正事項3は、訂正事項2により本件特許の明細書の「実施例7」が、訂正後の請求項1の「アンダー層の上に設けられる塗工層(トップ層)が前記架橋剤変性澱粉を含有しないこと」に該当しないものとなったため、「参考例7」とするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。 また、訂正事項3は、本件特許明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 さらに、訂正事項3は、一群の請求項1~4に関係する訂正である。 3.訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、本件訂正後の請求項〔1~4〕について訂正を認める。 第3 本件特許発明 上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 基紙の少なくとも片面に、白色顔料とバインダーを含有する塗工層を2層以上有する印刷用紙において、少なくとも前記基紙に最も近接している塗工層(アンダー層)が、前記バインダーとして、水分散性のバイオポリマーである架橋剤変性澱粉を含有し、前記架橋剤がジアルデヒド、ポリアルデヒド、酸無水物および混合酸無水物から成る群から選択され、アンダー層の上に設けられる塗工層(トップ層)が前記架橋剤変性澱粉を含有しないことを特徴とする前記印刷用紙。 【請求項2】 前記アンダー層が、前記バインダーとして、前記架橋剤変性澱粉(A)とブタジエン系共重合ラテックス(B)を含有し、前記アンダー層中の配合質量比が(A):(B)=10:90~90:10であることを特徴とする請求項1に記載の印刷用紙。 【請求項3】 前記架橋剤がグルタルアルデヒドまたはグリオキサールであることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷用紙。 【請求項4】 前記架橋剤がグリオキサールであることを特徴とする請求項3に記載の印刷用紙。」 第4 取消理由(決定の予告)の概要 令和6年1月10日付けで通知した取消理由(決定の予告)の概要は、以下のとおりである。 本件特許の請求項1~4に係る発明は、出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1-1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 《引用文献等一覧》 甲1-1:特開2009-174113号公報 甲1-3:特開2011-224477号公報 甲2-2:特開2015-172260号公報 なお、「甲1-1」、「甲1-3」は、申立人1が提出した甲第1号証、甲第3号証であり、「甲2-2」は、申立人2が提出した甲第2号証である。 第5 当審の判断 1.引用文献の記載事項等 (1)甲1-1の記載事項、甲1-1に記載された発明 ア「【特許請求の範囲】 【請求項1】 紙状基材と、その少なくとも一面上に、少なくとも2層の塗工層とを設けてなる塗工紙において、前記紙状基材に隣接する内側塗工層中には、針状結晶、紡錘状結晶、柱状結晶および米粒状結晶のいずれか一種の結晶構造を有する顔料を含有し、かつ前記内側塗工層上に形成された最外側塗工層中には、ガラス転移温度20~150℃の熱可塑性有機微粒子を含有することを特徴とする塗工紙。 ・・・ 【請求項9】 前記最外側塗工層表面の、JIS Z 8741に基づく入射・受光角75度の白紙光沢度が45~85%であり、かつJAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.5-2:2000に基づく王研式透気度が8000秒以下である請求項1~8のいずれか一項に記載の塗工紙。」 イ「【技術分野】 【0001】 本発明は、塗工紙に関し、特に透気性に優れ、印刷時のブリスターの発生を効果的に抑制することができ、かつ印刷仕上がりの良好な塗工紙に関するものである。 【背景技術】 【0002】 商用印刷に用いられる一形態であるオフセット輪転印刷(以下、「オフ輪印刷」とも称す。)は、印刷用紙が巻き取りにて給紙され、用紙上にインキが転移された後、乾燥機でインキが乾燥され、再び巻き取られる。さらに折り機で折り状態となる。いずれの場合にも、乾燥機を出た用紙表面のインキが完全に乾いていないと、塗工紙表面や印刷機上に汚れを生じたりするために、極めて高温条件に設定された乾燥機が用いられるが、その際に用紙にブリスターと呼ばれる欠陥が生ずる場合がある。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0012】 本発明は、透気性に優れ、オフ輪印刷、および電子写真方式での印刷時において、ブリスターの発生を生じない塗工紙の提供を目的とする。且つ、オフ輪ジワが発生し難く、折れ割れ適性に優れた塗工紙の提供を目的とする。」 ウ「【発明を実施するための形態】 【0017】 本発明者等は、オフセット印刷時におけるブリスターの抑制、さらには電子写真方式におけるブリスターの抑制について鋭意研究を重ねた結果、塗工紙は少なくとも2層の塗工層とを設けてなり、紙状基材に隣接する内側塗工層中には、特定の結晶構造を有する顔料を含有し、かつ前記内側塗工層上に形成された最外側塗工層中には、特定のガラス転移温度を有する熱可塑性有機微粒子を含有することによって、他の適性を損なうことなく改善できることを見出した。 【0018】 本発明において得られる塗工紙が、ブリスターの発生抑制に極めて効果的である理由は、以下のように考えられる。すなわち、最外側塗工層表面にクラックが存在し、このクラックは、一般の塗工紙製造で発生するクラックとは異なり、最外側塗工層中に特定のガラス転移温度を有する熱可塑性有機微粒子を含有することによって、そのサイズが大きく、かつその数も多いため、水蒸気や空気が効率的に散逸し、オフ輪印刷や電子写真による印画の際のブリスター発生を大幅に抑制出来るものと考えられる。 【0019】 一方、前記内側塗工層には、針状結晶、紡錘状結晶、柱状結晶および米粒状結晶のいずれか一種の結晶構造を有する顔料が、塗工紙に耐折り割れ性を付与し、透気性を有する塗工層が得られやすく、好ましく用いられる。・・・」 エ「【0022】 本発明の塗工層の成分は、所期のクラックが得られるものであれば、特に限定されるものではないが、好ましい材料としては熱可塑性有機微粒子を挙げることが出来る。中でも、塗工乾燥条件下で表面或いは全体が軟化状態になる熱可塑性有機微粒子が好ましく、さらに、一般的に塗工紙の接着剤して用いられるラテックスよりも成膜温度の高い、Tg(ガラス転移点)20~150℃の範囲の樹脂からなる熱可塑性有機微粒子が、クラック発生の点で優れており、より好ましい。中でも、所望のクラック発生効果と印刷強度のバランス上、Tgが20~80℃の範囲ものが好ましく、30~80℃の範囲のものが特に好ましい。Tgが20℃未満の場合、所期のレベルから見てクラックの発生が少なめで透気性の劣るものとなり、ブリスター発生の抑制効果が劣る。Tgが150℃を超えると、通常の乾燥条件では印刷強度の低下を招くことがあり、あまり好ましくない。 ・・・ 【0024】 前記熱可塑性有機微粒子としては、例えばポリイソプレン、ポリネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリアルケン類、ビニルハライド、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系重合体や共重合体類、スチレン-ブタジエン系、メチルメタクリレート-ブタジエン系等の合成ゴムラテックス、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン-無水マレイン酸系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等が挙げられる。これらの中から1種あるいは2種以上が適宜選択して用いられる。 ・・・ 【0026】 本発明の塗工液には、上記の熱可塑性有機微粒子以外に、必要に応じて顔料を配合することが出来る。前記顔料としては、公知の無機顔料及び前記熱可塑性有機微粒子以外の有機顔料を挙げることが出来る。・・・ 【0027】 前記無機顔料の塗工液への配合量としては、塗工層100質量部(乾燥)に対して、40~90質量部の範囲が好ましい。配合量が40質量部未満であると、クラックの発生を促進することができず、透気度の高いものとなり、ブリスター発生の抑制効果がかなり劣るものとなる。また、配合量が90質量部を超える場合には、表面強度が劣り安定した印刷が出来ない。 中でも、40~90質量部の範囲の無機顔料と、5~60質量部の範囲の熱可塑性有機微粒子の組成からなる塗工液を使用した場合、特に良好なクラックが得られるので、好ましい。 【0028】 本発明に用いられる塗工液には、必要に応じて、さらに、接着剤、クラック形成促進粒子が添加される。接着剤は、塗工層の表面強度を高め、良好な印刷適性を付与するために用いられる。またクラック形成促進粒子は、クラックの形成が所期のレベルに達しない場合に配合される。 【0029】 接着剤としては、水溶性或いは水分散性の高分子化合物を用いることができ、例えばカチオン性澱粉、両性澱粉、酸化澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉等の澱粉類、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、ゼラチン、カゼイン、大豆蛋白、天然ゴム等の天然あるいは半合成高分子化合物、ポリビニルアルコール、ポリイソプレン、ポリネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリアルケン類、ビニルハライド、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系重合体や共重合体類、スチレン-ブタジエン系、メチルメタクリレート-ブタジエン系等の合成ゴムラテックス、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、オレフィン-無水マレイン酸系樹脂、メラミン系樹脂等の合成高分子化合物等を挙げることができる。接着剤は、必要に応じて1種あるいは2種以上が適宜選択される。接着剤の中でも、Tgが20℃以下の接着剤が好ましく、特に好ましくは0℃以下である。接着剤の塗工液への配合量としては、塗工層100質量部(乾燥)に対して、15質量部以下が好ましい。配合量が15質量部を超えると、クラックの発生が阻害され、本発明の所望の効果が得難くなる。なお接着剤としては、コア/シェル構造を持つラテックスも使用でき、この場合、成膜に寄与するシェル部分のTgが20℃以下のものが好ましい。接着剤として、澱粉類などの水溶性高分子化合物を用いる場合、使用量が多くなると、所期の透気性が得られなくなるので、塗工液への配合量としては、5質量部以下、さらに2質量部以下であることが好ましい。」 オ「【0038】 本発明の内側塗工層は、無機顔料と水溶性接着剤を成分として含有する水性系塗工液を紙状基材に塗工して形成されるが、無機顔料としては、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等が挙げられ、これらの中から適宜選択され、1種あるいは2種以上併用して用いられる。 ・・・ 【0041】 内側塗工層中の接着剤としては、例えば澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エ-テル化澱粉、カチオン化澱粉、両性澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉などの澱粉類、・・・などの水溶性接着剤が挙げられ、これらの中から適宜選択され、1種あるいは2種以上を併用して用いられる。水溶性接着剤の中でも、澱粉類は、剛度が付与し易く、また低廉なので特に好ましい。 【0042】 内側塗工層中の接着剤としては、他に水分散性接着剤を配合してよい。かかる水分散性接着剤としては、スチレン-ブタジエンラテックス、アクリルニトリル-ブタジエンラテックス、メチルメタクリレート-ブタジエンラテックスなどの共役ジエン系共重合ラテックス、・・・などが挙げられ、これらの中から適宜選択され、1種あるいは2種以上を併用して用いられる。 【0043】 水溶性接着剤の内側塗工層用塗工液への配合量としては、塗工層100質量部(乾燥)に対して、2~25質量部の範囲が好ましい。配合量が2質量部未満の場合、層間強度の劣ったものになり易く、剛度が小さいものになり易い。また配合量が25質量部を超える場合には、透気度の高いものになり易い。水分散性接着剤の内側塗工層用塗工液への配合量としては、塗工層100質量部(乾燥)に対して、20質量部以下が好ましい。20質量部を超える場合には、透気度の高いものになり易い。」 カ「【0057】 実施例1 [紙状基材の作成] LBKP(フリーネス(CSF)=450ml)90部、NBKP(フリーネス(CSF)=450ml)10部のパルプスラリーに、軽質炭酸カルシウム(PC:白石カルシウム社製)5部、澱粉1.5部、アルケニル無水コハク酸0.1部、および硫酸バンド0.6部を添加して紙料を調製した。続いて、この紙料を用いて長網抄紙機で抄紙し、その抄紙工程でサイズプレス装置を用いて乾燥重量が1g/m2となるように澱粉を塗布し、その後にマシンキャレンダでベック平滑度30秒になるように平滑化処理し、坪量65g/m2の紙状基材を得た。 【0058】 [内側塗工層用塗工液の調製] 針状軽質炭酸カルシウム(商品名;TPX121、奥多摩工業社製)100部に、水溶性接着剤である酸化デンプン(商品名;エースA、王子コンスターチ社製)10部を加え、さらに水を加えて固形濃度が45%の塗工液を調整した。 [内側塗工層の形成] 上記塗工液を、片面当たりの乾燥塗工量が1.0g/m2となるように、ゲートロールコーターを用いて塗工速度500m/minで上記紙状基材の両面に塗工して、内側塗工層形成紙を得た。 [最外側塗工層用塗工液の調製] 水に、カオリン(商品名;ミラグロス91、エンゲルハード社製)5部、分散剤(商品名;アロンA-9、東亞合成社製)0.01部を加え、コーレス分散機で分散して、固形分濃度72%のカオリン分散液を得た。この分散液に、固形分濃度75%の重質炭酸カルシウム(商品名;FMT-97、ファイマテック社製)を固形分で65部加え、顔料スラリーを調製した。この顔料スラリーに、カルボキシメチルセルロース(商品名;AGガムHE No.2、第一工業製薬社製)0.3部、スチレン-ブタジエン系共重合体からなるTg35℃の熱可塑性有機微粒子(商品名;P0T-7092、日本ゼオン社製)30部を添加・撹拌し、さらに水を加えて、固形分濃度が55%の塗工液を調製した。 【0059】 [積層塗工紙の作成] 上記最外塗工層用塗工液を、片面当たりの乾燥塗工量が8.5g/m2となるように、ブレードコーターを用いて塗工速度500m/minで上記内側塗工層形成紙の両面に塗工し、その後に、金属ロールと弾性ロールで構成された加圧ニップで処理して、白紙光沢が70%で坪量が84g/m2の塗工紙を得た。」 キ 甲1-1には、特に実施例1の記載からみて、次の「甲1-1発明」が記載されていると認められる。 「紙状基材の両面に、針状軽質炭酸カルシウム(商品名;TPX121、奥多摩工業社製)100部に、水溶性接着剤である酸化デンプン(商品名;エースA、王子コンスターチ社製)10部を加え、さらに水を加えて調整した塗工液を塗工して内側塗工層を形成し、 水に、カオリン(商品名;ミラグロス91、エンゲルハード社製)5部、分散剤(商品名;アロンA-9、東亞合成社製)0.01部を加えた分散液に、固形分濃度75%の重質炭酸カルシウム(商品名;FMT-97、ファイマテック社製)を固形分で65部加え、顔料スラリーを調製し、この顔料スラリーに、カルボキシメチルセルロース(商品名;AGガムHE No.2、第一工業製薬社製)0.3部、スチレン-ブタジエン系共重合体からなるTg35℃の熱可塑性有機微粒子(商品名;P0T-7092、日本ゼオン社製)30部を添加・撹拌し、さらに水を加えて調整した塗工液を、上記紙状基材の内側塗工層の上に塗工して最外側塗工層を形成した、塗工紙。」 (2)甲1-3の記載事項 ア「【特許請求の範囲】 【請求項1】 バイオポリマーナノ粒子の水分散液の調製方法であって、 アルカリ性物質を添加した60℃以下の水中で、バイオポリマーナノ粒子凝集体を、メカニカルミキサーによって、動的光散乱法で測定した平均粒子径が400~1000nmになるまで攪拌すること、 さらに3分以上攪拌を継続して、バイオポリマーナノ粒子の動的光散乱法で測定した平均粒子径が50~400nmである分散液を得ること、 を含む、上記方法。 ・・・ 【請求項5】 バイオポリマーナノ粒子の凝集粉体が、架橋剤の存在下でせん断力をかけることによって、澱粉または澱粉誘導体または少なくとも50重量%の澱粉を含有するポリマー混合物を可塑化して製造された生体高分子である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。 【請求項6】 請求項1~5のいずれかの方法で調製されたバイオポリマーナノ粒子分散液を含有する、顔料を主成分とする塗工液を、木材繊維を主成分とする原紙上に塗工した塗工紙。」 イ「【技術分野】 【0001】 本発明は、バイオポリマーナノ粒子の凝集粉体を、メカニカルミキサーによって、水に効率良くかつ完全に分散する方法、および、その分散液を配合した顔料を主成分とする塗工液を塗工した印刷用塗工紙に関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明の課題は、バイオポリマーナノ粒子の凝集体の形態であるバイオポリマーナノ粒子粉体を、標準的な混合装置によって、効率良くかつ完全に水中に分散する方法を提供することであり、これは、紙塗工用バイオラテックスバインダーとして好適である。また、本発明の課題は、上記分散液を塗工することにより優れた印刷適性を備えた印刷用塗工紙を提供することにある。」 「【発明の効果】 【0011】 本発明により、バイオポリマーナノ粒子の凝集粉体を効率良くかつ完全に水中に分散させることができる。また、本発明により、表面強度および曲げこわさ、オフ輪印刷時の耐ブリスター性が優れた塗工紙を得ることができる。」 ウ「【発明を実施するための形態】 【0012】 本発明者は、驚くべきことに、バイオポリマーナノ粒子の凝集粉体(例えば、国際公開WO00/69916に記載の澱粉ナノ粒子)を特定の方法で分散することによって、効率よく水性分散液を調製できることを見出し、さらに、このバイオポリマーナノ粒子の分散液が、塗工紙の顔料塗工層に用いる接着剤(バインダー)として極めて好適であることを見出した。 【0013】 一般に塗工紙の製造においては、木材繊維から主に構成される原紙上に、顔料塗工液を塗工して顔料塗工層を設ける。この際、顔料塗工液には、顔料と接着剤が配合される。塗工紙の塗工層に用いる接着剤には、ある程度の強度としなやかさ、さらには塗工液に配合した際に塗工に適した液体特性となることが要求される。そして、このような接着剤として現在では、石油系原料が合成されたラテックスが塗工紙の顔料塗工用接着剤として広く用いられている。 【0014】 バイオポリマーナノ粒子 本発明で用いるバイオポリマーは、デンプンなどの植物性高分子を原料とするものであって、後述するように、架橋剤の存在下で剪断力(シェア)をかけて得られるものである。このようなバイオポリマーは、ナノレベルの粒径を有しており(バイオポリマーナノ粒子)、それらは、その粒径分布、分散特性、薄膜形成特性、および乾燥挙動にもよるが、塗工紙の顔料塗工用接着剤として好適なラテックス特性を有する。 【0015】 様々なバイオポリマーが、様々な理由から注目されている。これらのバイオポリマーは直ちに使用でき、長期的な安定性が高い。また、バイオポリマーは、石油系の原料ではなく、再生可能な資源を原料とするため、環境的にも有利である。さらに、バイオポリマーは、通常のデンプン接着剤と比べて、その粘度が低く、ハンドリングが容易で現場での作業性に優れる。したがって、バイオポリマーナノ粒子を塗工紙用バインダーとして用いると、エネルギー節約にも貢献し得る。そして、バイオポリマーは、多くの接着剤用途に用いられる石油系合成ラテックスの代わりに使用できるバイオ型代用物として考えることができる。 【0016】 このようなバイオポリマーは、ナノサイズの粒子であるが、製品としては、ナノ粒子が凝集した粉体の形態で流通されることがある。バイオポリマーナノ粒子は、典型的にはナノメートルのサイズ範囲にあるが、マイクロメートルのサイズ範囲にあることもまた可能である。バイオポリマーの分散液は粘度が比較的低いため、高い固形物含有量で調製することができ、分散液は安定で、乾燥が早く、そして溶媒を使用することなく、環境に優しい媒体(水)を使用して調製されるので注目されている。 【0017】 一般に、澱粉などの天然高分子は、貯蔵安定性が非常に悪いために、使用が制限されてきた。水性バイオポリマー分散物の貯蔵安定が短い理由には2つある。(1)澱粉接着剤の溶液およびペーストはゲル化または劣化する傾向が強く、数時間または数日しか安定に存在しないこと;そして、(2)水におけるデンプン接着剤は、菌類および細菌に対して良好な増殖培地となってしまうこと、である。そのため、学校の工作などで用いられるのり(学校用接着剤)としては、乾燥が早く、6ヶ月を越える貯蔵安定性を有する白色のポリ酢酸ビニルラテックスが慣用されている。 【0018】 本発明者は、バイオポリマーナノ粒子(例えば、特許文献1および国際公開WO00/40617に記載の方法で調製されるようなバイオポリマーラテックス)が、石油資源を原料とする合成接着剤よりも優れた接着剤特性を有することを発見した。しかし、上記の2つの課題が具体的に解決されていないならば、これらのバイオポリマーの安定性は依然として数日または数週間に制限され、その応用範囲が限定されてしまう。しかし、例えば、特許文献1に示されるように、高アミロペクチン型デンプン(95%を越えるアミロペクチン、5%未満のアミロース)を原料として架橋処理を行ってナノ粒子を形成させると、長期間にわたって安定なバイオポリマーを得ることができる。なお、澱粉の種類はトウモロコシ澱粉(コーンスターチ)が好ましい。また、菌類または細菌の生育を防止するためには、好適な非毒性の殺生物剤配合物を添加することも有効である。」 「【0020】 本発明のバイオポリマーナノ粒子の凝集粉体は、特許文献1に記載されているように製造することができる。例えば、デンプンおよび他の多糖類(セルロース、ヘミセルロースおよびゴムなど)ならびにタンパク質(例えば、ゼラチン、ホエータンパク質)などのバイオポリマーに対し、架橋剤の存在下で剪断力(シェア)をかけてバイオポリマーを処理することによって、ナノ粒子を得ることができる。このようなバイオポリマーは、例えば、カチオン性基、カルボキシメチル基で、アシル化、リン酸化、ヒドロキシアルキル化、酸化などによって予め修飾してもよい。デンプン、デンプンと他の(バイオ)ポリマーとの混合物(少なくとも50%のデンプンを含有する)が好ましい。特に好ましいものは、高アミロペクチンデンプン(すなわち、低アミロースデンプン)、すなわち、75%以上、特に90%以上のアミロペクチン含量を有するデンプンであり、例えば、ワキシーデンプンなどである。バイオポリマーは、好ましくは、乾燥物質含有量が、処理の開始時に50重量%以上、特に60重量%以上である。」 「【0022】 バイオポリマーラテックスを製造するプロセスにおける重要な工程は、機械的処理の際の架橋である。架橋は、好ましくは可逆的である。すなわち、架橋は、機械的な処理の工程の後で一部またはすべてが切断される。好適な可逆的架橋剤として、低い水分濃度で化学結合を形成し、より大きい水分濃度の存在下で解離または加水分解する架橋剤が挙げられる。この種の架橋により、処理の際に一時的に高粘度となるものの、処理後に粘度が低下する。可逆的架橋剤の例としては、ヘミアセタールを可逆的に形成するジアルデヒドおよびポリアルデヒド、そして酸無水物および混合無水物などがある。好適なジアルデヒドおよびポリアルデヒドには、グルタルアルデヒド、グリオキサール、過ヨウ素酸で酸化された炭水化物類などがある。グリオキサールが、ラテックス粒子を製造するための特に好適な架橋剤である。そのような架橋剤は、単独で、または可逆的架橋剤の混合物として、または可逆的架橋剤と非可逆的架橋剤との混合物として使用することができる。従って、エピクロロヒドリンおよび他のエポキシド類、トリホスフェート類、ジビニルスルホンなどの従来の架橋剤を、多糖バイオポリマーに対する非可逆的架橋剤として使用することができ、これに対して、ジアルデヒド類、チオール試薬類などをタンパク質性バイオポリマーに対して使用することができる。架橋反応は酸または塩基で触媒処理され得る。架橋剤の量は、好都合にはバイオポリマーに関して0.1~10重量%である。架橋剤は、機械的な処理の開始時に既に存在してもよいが、顆粒状デンプンなどの予めゼラチン化しなかったバイオポリマーの場合、架橋剤は、後で、すなわち、機械的処理の際に加えることが好ましい。」 エ「【実施例】 ・・・ 【0034】 <評価方法> (1)バイオポリマーナノ粒子の平均粒子径:動的光散乱法装置(Malvern社製ゼータサイザーナノゼータサイザー3000HSA)を用いて粒子の体積粒径分布を測定した。測定はナノ粒子分散液(0.5固形分%)を用いて行った。粒径は、体積累積分布が50容積%となるときに平均粒子径とした。 (2)耐ブリスター性:東芝社製オフセット輪転印刷機B2T600を使用し、印刷途中にドライヤー乾燥温度をブリスターが発生するまで上昇させ、ブリスターが発生した時の紙面温度をブリスター発生温度とした。また、得られた印刷物の表面状態を以下の基準により外観検査した。◎:極めて良好、○:良好、△:並、×:劣る (3)ISO曲げこわさ:L&Wベンディングテスター(Lorentzen&Wettre社製)を用いて、ISO2493に基づいて15°の曲げ抵抗値から曲げこわさを算出した。 (4)表面強度:ローランドオフセット平判印刷機(2色)に平判印刷用インキ(東洋インキ製造株式会社製ハイユニティーネオM)を用いて、A3サイズの版で印刷速度8000枚/時間にて印刷用塗工紙に印刷した。以下の基準に基づいて得られた印刷物の表面のピッキング強度を外観から評価した。◎:極めて良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る 実施例1 バイオポリマー(BP)ナノ粒子凝集粉体(ECOSPHERE(登録商標)92202、ECOSYNTHETIX社製)を、0.5重量%(バイオポリマーナノ粒子の重量基準)の水酸化ナトリウムを溶解した50℃の水に、濃度30%となるように投入し、タービンミキサー(3枚羽を上下2段に有するインペラー式撹拌機、攪拌層:3m3)を使用し、220rpmで30分間攪拌した。30分間攪拌後、目視でダマ等は確認できず、動的光散乱法で測定した平均粒子径は400nmであった。この状態からさらに220rpmで15分攪拌を続けた。攪拌後に動的光散乱法で測定した平均粒子径は250nmであった。得られたバイオポリマーナノ粒子の分散液のpHは、8.5であった。 ・・・」 「【0040】 実施例5 バイオポリマーナノ粒子分散液を11部配合する代わりに、接着剤としてバイオポリマーナノ粒子を5.5部、平均粒子径100nmのスチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(JSR社製、NP-100B)を5.5部配合した塗工液を用いた以外は実施例1と同様に行い、印刷用塗工紙を得た。」 「【0048】 比較例4 バイオポリマーナノ粒子分散液の代わりに、接着剤として平均粒子径100nmのスチレン・ブタジエン共重合体ラテックス(JSR社製、NP-100B)を11部配合した塗工液を用いた以外は実施例1と同様に行い、印刷用塗工紙を得た。 【0049】 比較例5 バイオポリマーナノ粒子分散液の代わりに、接着剤としてヒドロキシエチルエーテル化澱粉(HES:Ethylex2005、Tate&Lyle社製)を11部配合した塗工液を用いた以外は実施例1と同様に行い、印刷用塗工紙を得た。」 オ 【0052】の【表1-2】から、バイオポリマーナノ粒子を用いた実施例1と、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉(HES:Ethylex2005、Tate&Lyle社製)を用いた比較例5の対比から、バイオポリマーナノ粒子を用いた実施例1のものの方が、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉(HES:Ethylex2005、Tate&Lyle社製)を用いた比較例5のものよりも、耐ブリスター性が優れていることが把握できる。 カ 上記イ(【0001】、【0006】、【0011】)より、バイオポリマーナノ粒子は、水中に分散させることができるものであり、水分散性を有することが把握できる。 キ 上記ア(【請求項5】)及びウ(【0018】、【0020】、【0022】)より、バイオポリマーナノ粒子は、澱粉を架橋剤変性して製造され、用いられる架橋剤は、ジアルデヒドおよびポリアルデヒド、そして酸無水物および混合無水物などであり、好適なジアルデヒドおよびポリアルデヒドには、グルタルアルデヒド、グリオキサールなどがあり、グリオキサールが、ラテックス粒子を製造するための特に好適な架橋剤であることが把握できる。 (3)甲2-2の記載事項 「【0038】 本実施形態に係る白板紙において、基紙の表面又は基紙に必要に応じて表面サイズ処理を施した表面に、顔料及び接着剤を主体とした塗工層を設ける。塗工層は、基紙の表面層の表面だけに設けるか、又は表面層及び裏面層の両方の表面に設けてもよい。塗工層に用いる顔料は、例えば、カオリン、重質炭酸カルシウム(粉砕炭酸カルシウム)などの精製した天然鉱物顔料、軽質炭酸カルシウム、有機顔料であることが好ましい。これらは単独で使用するか、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。そのほかの資材としては、特に限定されるものではなく、例えば、タルク、サチンホワイト、リトポン、二酸化チタン、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸マグネシウム、焼成カオリンの少なくとも1種を混合してもかまわない。また、塗工層を表面層及び裏面層の両方の表面に設ける場合は、表面層の表面に設ける塗工層と裏面層の表面に設ける塗工層とは、同一の組成とするか、又は異なる組成としてもよい。 【0039】 また、塗工層に用いる接着剤としては、スチレン-ブタジエン系、アクリル系、ポリ酢酸ビニル若しくはエチレン-酢酸ビニルなどの各種共重合体ラテックス、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ユリア若しくはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン若しくはポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物などが挙げられる。さらには、天然植物から精製した澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、燐酸エステル化澱粉、酵素変性澱粉又はそれらをフラッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉、デキストリン、マンナン、キトサン、アラビノガラクタン、グリコーゲン、イヌリン、ペクチン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどの天然多糖類又はそのオリゴマー又はその変性体である。また、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、コラーゲンなどの天然タンパク質又はその変性体、ポリ乳酸、ペプチドなどの合成高分子又はオリゴマーが挙げられる。これらは単独で使用するか、又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。特に塗工層強度の向上に優れ、また組成の観点からも伸びやすい、スチレン-ブタジエン系共重合体ラテックス(SBR)が好ましく使用される。塗工層中の接着剤の配合量は、顔料100質量部に対して11~25質量部が好ましく、より好ましくは13~22質量部、更に好ましくは15~20質量部である。また、澱粉系の接着剤を用いると塗工層が割れやすくなる傾向があるため、最表層となるインク受理層への澱粉系接着剤の使用は最小限に留めるのが好ましい。具体的には最表層となるインク受理層の澱粉系接着剤の含有量は、顔料100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましく、0質量部(不使用)であることがより好ましい。インク受理層を2層以上設ける場合、最表層以外のインク受理層への澱粉系接着剤の含有量は、特に限定されないが、5質量部以下とすることが好ましく、3質量部以下とすることがより好ましく、0質量部(不使用)とすることが更に好ましい。この範囲とすることで、罫線割れをより抑制することができる。」 2.本件発明1について (1)対比 ア 甲1-1発明の「紙状基材」は、本件発明1の「基紙」に相当する。 甲1-1発明の「塗工紙」に塗工される塗工液中の「針状軽質炭酸カルシウム(商品名;TPX121、奥多摩工業社製)」及び「重質炭酸カルシウム(商品名;FMT-97、ファイマテック社製)」は、「塗工紙」が「用紙上にインキが転移され」(甲1-1の【0002】)るものであり「白紙光沢度が45~85%」(同【請求項9】)であるため、白色の無機顔料であるといえるから、本件発明1の「白色顔料」に相当する。 甲1-1発明の「水溶性接着剤である酸化デンプン(商品名;エースA、王子コンスターチ社製)」、「カルボキシメチルセルロース(商品名;AGガムHE No.2、第一工業製薬社製)」及び「スチレン-ブタジエン系共重合体からなるTg35℃の熱可塑性有機微粒子(商品名;P0T-7092、日本ゼオン社製)」は、いずれも無機顔料とともに塗工層を構成するものであり、本件発明1の「バインダー」に相当する。 甲1-1発明の「内側塗工層」は、「針状軽質炭酸カルシウム(商品名;TPX121、奥多摩工業社製)」と、「水溶性接着剤である酸化デンプン(商品名;エースA、王子コンスターチ社製)」を含有する塗工液を、紙状基材の両面に塗工して形成したものであるから、本件発明1の、白色顔料とバインダーを含有する、「基紙に最も近接している塗工層(アンダー層)」に相当する。 甲1-1発明の「最外側塗工層」は、「カオリン(商品名;ミラグロス91、エンゲルハード社製)」と「重質炭酸カルシウム(商品名;FMT-97、ファイマテック社製)」と、「カルボキシメチルセルロース(商品名;AGガムHE No.2、第一工業製薬社製)」と「スチレン-ブタジエン系共重合体からなるTg35℃の熱可塑性有機微粒子(商品名;P0T-7092、日本ゼオン社製)」を含有する塗工液を、「内側塗工層」の上に塗工して形成したものであるから、本件発明1の、白色顔料とバインダーを含有する、「アンダー層の上に設けられる塗工層(トップ層)」に相当する。 また、甲1-1発明の「塗工紙」は、「紙状基材」の両面に「内側塗工層」と「最外側塗工層」を有するものであり、「印刷仕上がりの良好な塗工紙に関するもの」(同【0001】)であるから、本件発明1の「基紙の少なくとも片面に、白色顔料とバインダーを含有する塗工層を2層以上有する」「印刷用紙」に相当する。 イ そうすると、本件発明1と甲1-1発明の一致点及び相違点は、次のとおりである。 《一致点1》 基紙の少なくとも片面に、白色顔料とバインダーを含有する塗工層を2層以上有する印刷用紙において、基紙に最も近接している塗工層(アンダー層)と、アンダー層の上に設けられる塗工層(トップ層)を有する印刷用紙。 《相違点1》 「基紙に最も近接している塗工層(アンダー層)」に関して、本件発明1では「少なくとも」「前記バインダーとして、水分散性のバイオポリマーである架橋剤変性澱粉を含有し、前記架橋剤がジアルデヒド、ポリアルデヒド、酸無水物および混合酸無水物から成る群から選択され」るのに対し、甲1-1発明では、「水溶性接着剤である酸化デンプン(商品名;エースA、王子コンスターチ社製)」を含有する点。 《相違点2》 「アンダー層の上に設けられる塗工層(トップ層)」に関して、本件発明1では、「前記架橋剤変性澱粉を含有しない」のに対し、甲1-1発明では、「カルボキシメチルセルロース(商品名;AGガムHE No.2、第一工業製薬社製)」と「スチレン-ブタジエン系共重合体からなるTg35℃の熱可塑性有機微粒子(商品名;P0T-7092、日本ゼオン社製)」を含有する点。 (2)判断 ア 上記相違点1について検討する。 (ア)甲1-1発明は、「透気性に優れ、オフ輪印刷、および電子写真方式での印刷時において、ブリスターの発生を生じない塗工紙の提供」と「オフ輪ジワが発生し難く、折れ割れ適性に優れた塗工紙の提供」を目的として(甲1-1の【0012】)、「最外側塗工層中に特定のガラス転移温度を有する熱可塑性有機微粒子を含有することによって、そのサイズが大きく、かつその数も多いため、水蒸気や空気が効率的に散逸し、オフ輪印刷や電子写真による印画の際のブリスター発生を大幅に抑制出来る」(同【0018】)ようにし、「内側塗工層には、針状結晶、紡錘状結晶、柱状結晶および米粒状結晶のいずれか一種の結晶構造を有する顔料が、塗工紙に耐折り割れ性を付与」(同【0019】)するようにしたものである。甲1-1の特許請求の範囲の請求項1においても、「紙状基材と、その少なくとも一面上に、少なくとも2層の塗工層とを設けてなる塗工紙において、前記紙状基材に隣接する内側塗工層中には、針状結晶、紡錘状結晶、柱状結晶および米粒状結晶のいずれか一種の結晶構造を有する顔料を含有し、かつ前記内側塗工層上に形成された最外側塗工層中には、ガラス転移温度20~150℃の熱可塑性有機微粒子を含有することを特徴とする塗工紙。」と記載されている。 これらのことから、甲1-1発明において、最外側塗工層中に含有する「特定のガラス転移温度を有する熱可塑性有機微粒子」である、「スチレン-ブタジエン系共重合体からなるTg35℃の熱可塑性有機微粒子(商品名;P0T-7092、日本ゼオン社製)」は、発明の課題を解決するための必須の成分である一方、内側塗工層が含有する、水溶性接着剤である「酸化デンプン(商品名;エースA、王子コンスターチ社製)」は、「内側塗工層中の接着剤としては、例えば澱粉、酸化澱粉、エステル化澱粉、エーテル化澱粉、カチオン化澱粉、両性澱粉、酵素変性澱粉、熱化学変性澱粉などの澱粉類、・・・などの水溶性接着剤が挙げられ、これらの中から適宜選択され、1種あるいは2種以上を併用して用いられる。水溶性接着剤の中でも、澱粉類は、剛度が付与し易く、また低廉なので特に好ましい。」(同【0041】)とされるもので、変更し得る任意の成分であるといえる。 (イ)甲1-1発明は、上記のとおり、「ブリスターの発生を生じない塗工紙の提供」を目的とするものである。ここで、甲1-3の記載事項(上記2.(2)オ、カ、キ)によれば、澱粉を架橋剤変性した水分散性のバイオポリマーナノ粒子を用いることにより、澱粉に官能基を導入した澱粉類である、ヒドロキシエチルエーテル化澱粉(HES:Ethylex2005、Tate&Lyle社製)を用いるものよりも、耐ブリスター性を改善することが把握できる。このことから、甲1-1発明の塗工紙において、耐ブリスター性を向上させるために、内側塗工層が含有する、澱粉に官能基を導入した澱粉類の「水溶性接着剤である酸化デンプン(商品名;エースA、王子コンスターチ社製)」に換えて、甲1-3の澱粉を架橋剤変性した水分散性のバイオポリマーナノ粒子を用いることは、当業者が容易になし得たものである。 また、甲1-3の澱粉を架橋剤変性した水分散性のバイオポリマーナノ粒子は、架橋剤が「ヘミアセタールを可逆的に形成するジアルデヒドおよびポリアルデヒド、そして酸無水物および混合無水物など」(甲1-3の【0022】)が挙げられている。 (ウ)よって、相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1-1発明及び甲1-3の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。 イ 上記相違点2について検討する。 (ア)甲1-1発明の最外側塗工層は、「カルボキシメチルセルロース(商品名;AGガムHENo.2、第一工業製薬社製)」と「スチレン-ブタジエン系共重合体からなるTg35℃の熱可塑性有機微粒子(商品名;P0T-7092、日本ゼオン社製)」を含有するが、「架橋剤変性澱粉は含有しない」ものであり、相違点2は実質的なものではない。 (イ)仮に、甲1-1発明に「架橋剤変性澱粉は含有しない」ことが特定されていないことで、実質的に相違するとした場合について、以下に検討する。 (ウ)まず、上記ア(ア)で述べたように、甲1-1発明において、最外側塗工層中に含有する「特定のガラス転移温度を有する熱可塑性有機微粒子」である、「スチレン-ブタジエン系共重合体からなるTg35℃の熱可塑性有機微粒子(商品名;P0T-7092、日本ゼオン社製)」により、ブリスター発生を抑制するものであるから、当業者は、この「スチレン-ブタジエン系共重合体からなるTg35℃の熱可塑性有機微粒子(商品名;P0T-7092、日本ゼオン社製)」を、他の成分に換えようとする動機付けはない。 (エ)他方で、甲1-1発明の最外側塗工層は、「カルボキシメチルセルロース(商品名;AGガムHENo.2、第一工業製薬社製)」も含有する。 この点について、甲1-1には、最外側塗工層に、特定のガラス転移温度の熱可塑性有機微粒子と顔料のほか、「必要に応じて、さらに、接着剤、クラック形成促進粒子が添加される。接着剤は、塗工層の表面強度を高め、良好な印刷適性を付与するために用いられる。またクラック形成促進粒子は、クラックの形成が所期のレベルに達しない場合に配合される。」(【0028】)、「接着剤としては、水溶性或いは水分散性の高分子化合物を用いることができ、・・・カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、・・・を挙げることができる。」(【0029】)と記載され、「カルボキシメチルセルロース(商品名;AGガムHE No.2、第一工業製薬社製)」は、接着剤として含有されるものと解される。しかし、セルロース誘導体よりも、甲1-3の澱粉を架橋剤変性した水分散性のバイオポリマーナノ粒子を顔料とともに含有させた方が、耐ブリスター性等の性能が向上することを示す証拠はなく、甲1-1の最外側塗工層中の「カルボキシメチルセルロース(商品名;AGガムHE No.2、第一工業製薬社製)」に換えて、甲1-3の澱粉を架橋剤変性した水分散性のバイオポリマーナノ粒子を用いる理由はない。 (オ)しかも、甲1-1の【0029】には、「接着剤として、澱粉類などの水溶性高分子化合物を用いる場合、使用量が多くなると、所期の透気性が得られなくなるので、塗工液への配合量としては、5質量部以下、さらに2質量部以下であることが好ましい。」と記載され、熱可塑性有機微粒子と顔料を含有する最外側塗工層において、澱粉類の使用が好ましいとはされていないものといえる。 さらに、甲2-2には、「澱粉系の接着剤を用いると塗工層が割れやすくなる傾向があるため、最表層となるインク受理層への澱粉系接着剤の使用は最小限に留めるのが好ましい。具体的には最表層となるインク受理層の澱粉系接着剤の含有量は、顔料100質量部に対して、1質量部以下であることが好ましく、0質量部(不使用)であることがより好ましい。」(【0039】)と記載され、塗工層のうち最表層が割れないようにするために、澱粉系の接着剤の使用は避けようとされるものであったといえる。 そうすると、甲1-1発明の最外側塗工層に、澱粉を変性したものである甲1-3の澱粉を架橋剤変性した水分散性のバイオポリマーナノ粒子を、敢えて添加して、架橋剤変性した澱粉を含有するものとする理由はない。 (カ)よって、上記相違点2は実質的なものではない。 仮に実質的な相違点であるとしても、相違点2に係る本件発明1の構成は、甲1-1発明、甲1-3の記載事項及び甲2-2の記載事項に基いて、当業者が容易に想到し得たものである。 ウ 特許権者は、令和6年3月14日の意見書で、「当業者であれば、上記の技術常識、すなわち、バインダーとしては澱粉などの水溶性高分子とラテックスとを使い分けることを認識しているところ、本件特許発明の構成を想到するに際し、甲第1-1号証に記載の発明に加え、甲第1-3号証を参照しバイオラテックスを使用するとなれば、甲第1-1号証に記載の発明においてラテックス系のバインダーに代えてバイオラテックスを使用する構成とするのが当業者であれば通常の選択です。」と、また、「本件特許発明は、本件特許の明細書中段落0008に「更に、バイオ系材料を使用することにより、石油系材料の使用を低減することができ、環境にも優しい印刷用塗工紙を製造すること」と記載されていますように、石油系材料の使用を低減することも課題の一つとなっています。当該課題を解決するために本件特許発明の構成を想到するに際し、甲第1-1号証に記載の発明に加え、甲第1-3号証を参照しバイオラテックスを使用するとなれば、当然に石油系材料の使用を低減するために、最外塗工層にある石油系材料であるラテックスを代替し置き換えるのは当然である一方で、当該代替であれば本件特許発明の構成に到達することはあり得ません。」(10~11頁)と主張する。 しかし、特許権者がいう甲1-1発明の石油系材料のラテックス系のバインダーとは、「スチレン-ブタジエン系共重合体からなるTg35℃の熱可塑性有機微粒子(商品名;P0T-7092、日本ゼオン社製)」をいうところ、上記イ(ウ)で述べたように、甲1-1発明において、ブリスター発生の抑制を、「スチレン-ブタジエン系共重合体からなるTg35℃の熱可塑性有機微粒子(商品名;P0T-7092、日本ゼオン社製)」により図るものであるから、この成分を他の成分に換えようとはしないはずである。 そのため、水溶性高分子とラテックスを使い分けることや、石油系材料の使用を低減するという課題の解決から、甲1-1発明の石油系材料のラテックス系のバインダーである、「スチレン-ブタジエン系共重合体からなるTg35℃の熱可塑性有機微粒子(商品名;P0T-7092、日本ゼオン社製)」を、甲1-3のバイオポリマーナノ粒子に置き換えるのが当然であるとする、特許権者の主張は採用できない。 エ また、特許権者は、令和6年3月14日の意見書で、「本件特許の発明の効果は、インク定着性(印刷適性)と内割れの防止に優れることです。」、「本件特許発明のインク定着性の効果については、甲1-1発明と甲1-3号証に記載の周知技術から当業者が予測可能なものではありません。」、「いずれの証拠にも、アンダー層にのみにバイオポリマーである架橋剤変性澱粉を含有し、トップ層が水分散性のバイオポリマーである架橋剤変性澱粉を含有しないことによる効果、特に「内割れ」に関する効果が一切、記載も示唆もされていないところ、本件特許発明1の上記効果は、いずれの証拠からも当業者が予測できない顕著で有利な効果であると言えます。」(15~18行)と、本件発明1の効果を主張する。 しかし、インク定着性(印刷適性)は、本件特許明細書等においては、「4色重色ベタ印刷部にセロテープ(商品名CT-12S:ニチバン社製)を貼り付け、剥がした後、目視でインキの取られ具合」(【0042】)を評価することにより行うところ、甲1-3において、架橋剤変性されたバイオポリマーナノ粒子を採用することにより、表面強度(「印刷物の表面のピッキング強度」(【0034】))が良好になるという効果が記載されていることからすれば、当業者であれば、甲1-1発明に甲1-3の架橋剤変性されたバイオポリマーナノ粒子を採用することで、インク定着性(印刷適性)に係る効果を予測し得るものといえる。 また、内割れの防止についても、甲1-1発明は「折れ割れ適性に優れた塗工紙の提供を目的」(甲1-1の【0012】)とするところ、その「折れ割れ適性」は「印刷された塗工紙をA4サイズに断裁して、温度20℃、湿度30%RHの環境で、紙折り機(ホリゾン社製)で2つ折りして、その屈曲部を拡大ルーペで観察」(同【0076】)して評価したものであり、甲1-1発明による内割れの防止に係る効果を予測し得るものといえる。 よって、本件発明1により奏される効果は、当業者が予測できない顕著で有利な効果ではなく、効果に係る上記主張は採用できない。 (3)まとめ 以上より、本件発明1は、甲1-1発明、甲1-3の記載事項及び甲2-2の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.本件発明2~4について (1)本件発明2について 本件発明2と甲1-1発明を対比すると、本件発明2と甲1-1発明は、上記一致点1で一致し、上記相違点1、2で相違する他、次の相違点3でも相違する。 《相違点3》 「アンダー層」に関して、本件発明2では、「前記バインダーとして、前記架橋剤変性澱粉(A)とブタジエン系共重合ラテックス(B)を含有し、前記アンダー層中の配合質量比が(A):(B)=10: 90~90:10である」のに対し、甲1-1発明では、そうではない点。 相違点1、2については、上記2.(2)ア、イで述べたとおりである。 次に、相違点3について検討する。 甲1-1の【0042】には、内側塗工層中の接着剤として2種以上を併用して用い得ることが記載されている。 また、甲1-3の実施例5には、架橋剤変性澱粉に相当するバイオポリマーナノ粒子とスチレン・ブタジエン共重合体ラテックスを1:1で配合しているものが記載されており、甲1-1発明において、無機顔料を保持するための接着剤(バインダー)である澱粉類としての架橋剤変性澱粉のほか、ブタジエン系共重合ラテックスを含有するようにし、前記アンダー層中の配合質量比を10:90~90:10であるようにすることは、当業者が適宜なし得たものである。 よって、本件発明2は、甲1-1発明、甲1-3に記載の技術事項及び甲2-2に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明3、4について 本件発明4は、本件発明3の「架橋剤がグルタルアルデヒドまたはグリオキサールであること」を、さらに「架橋剤がグリオキサールであること」と限定するものである。 まず、本件発明4と甲1-1発明を対比すると、本件発明4と甲1-1発明は、上記一致点1で一致し、上記相違点1~3で相違する他、次の相違点4でも相違する。 《相違点4》 本件発明4のバインダーの架橋剤変性澱粉の「前記架橋剤がグリオキサールである」のに対し、甲1-1発明には、そのような特定はない点。 相違点1~3については、上記2.(2)ア、イ、上記3.(1)で述べたとおりである。 次に、相違点4について検討する。 甲1-3には、架橋剤について、「ヘミアセタールを可逆的に形成するジアルデヒドおよびポリアルデヒド、そして酸無水物および混合無水物などがある。好適なジアルデヒドおよびポリアルデヒドには、グルタルアルデヒド、グリオキサール、過ヨウ素酸で酸化された炭水化物類などがある。」と記載される中、特に好適な例としてグリオキサールが例示されており(【0022】)、甲1-1発明の「酸化デンプン(商品名;エースA、王子コンスターチ社製)」を、甲1-3の澱粉を架橋剤変性した水分散性のバイオポリマーナノ粒子に置換する際、架橋剤変性の架橋剤としてグリオキサールを採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。 上述のとおり、相違点4に係る「架橋剤がグリオキサールである」との事項は、本件発明3の「架橋剤がグルタルアルデヒドまたはグリオキサールである」との事項を、さらに限定したものであるから、本件発明3の「架橋剤がグルタルアルデヒドまたはグリオキサールである」との事項も、当業者が容易に想到し得たものである。 よって、本件発明3、4は、甲1-1発明、甲1-3に記載の技術事項及び甲2-2に記載の技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上より、本件特許の請求項1~4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700011

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