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特許異議申立

2025-701014

紙コップ用原紙

審判番号
2025-701014
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-217555
登録番号
7667847
請求日
2025年10月21日
審決日
2026年06月26日
公報発行日
2026年07月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】北越コーポレーション株式会社
  • 【権利者代理人】江崎 光史
  • 【権利者代理人】鍛冶澤 實
  • 【権利者代理人】上西 克礼
  • 【権利者代理人】虎山 一郎
  • 【権利者代理人】石田 大成
  • 【異議申立人】平松 由紀子
  • 【異議申立人】佐々木 香織
審判長/審判官
  • 審判長 岩間 直純
  • 審判官 篠塚 隆
  • 審判官 田中 秀樹
分類
P1651.121-Y (D21H) / P1651.537-Y (D21H)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
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特許第7667847号発明「紙コップ用原紙」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7667847号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7667847号の請求項1~5に係る特許についての出願は、令和元年9月20日を出願日とする特願2019-171154号の一部を、令和5年12月25日に新たな特許出願(特願2023-217555号)としたものであって、令和7年4月15日に特許権の設定登録がされ、令和7年4月23日に特許掲載公報が発行された。 その後の特許異議申立てに関する手続の概要は、以下のとおりである。 令和 7年10月21日 :特許異議申立人(以下「申立人」という。)平松由紀子による請求項1~5に係る特許に対する特許異議の申立て 同月22日 :特許異議申立人佐々木香織による請求項1~5に係る特許に対する特許異議の申立て 令和 8年 3月24日付け:取消理由通知書 同年 5月22日 :特許権者による意見書の提出 同年 6月11日 :申立人佐々木香織による上申書の提出 第2 本件発明 本件請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 紙基材の少なくとも一方の面に少なくとも1層以上のヒートシール層を有する紙コップ用原紙であって、前記紙基材がパルプを主成分とし、当該パルプの叩解度がカナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、200~700mlCSFであり、前記ヒートシール層がアイオノマーを含み、前記ヒートシール層の乾燥塗工量が全層で2~10g/m2であり、前記紙コップ用原紙の坪量が80g/m2~400g/m2であり、前記紙コップ用原紙の横方向のテーバー曲げ抵抗(JIS P-8125-2)が1mN・m~10mN・mであり、前記紙コップ用原紙の水分が3%~10%であることを特徴とする前記紙コップ用原紙。 【請求項2】 前記紙コップ用原紙の比容が0.8~1.8cm3/gであることを特徴とする、請求項1に記載の紙コップ用原紙。 【請求項3】 前記紙コップ用原紙の縦方向の引張り破断伸び率(JIS P-8113)が1%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の紙コップ用原紙。 【請求項4】 前記紙基材がパルプを主成分とし、当該パルプの叩解度がカナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、250~520mlCSFであることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一つに記載の紙コップ用原紙。 【請求項5】 前記紙基材がパルプを主成分とし、パルプとして針葉樹パルプのみを含むか、または、全パルプ中、針葉樹パルプを50~95質量部および広葉樹パルプを5~50質量部含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一つに記載の紙コップ用原紙。」 第3 取消理由の概要 取消理由通知で通知した取消理由は、概略、以下のとおりである。 (進歩性)本件特許の請求項1~5に係る特許は、下記刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消されるべきものである。 引用文献 甲2-1:特表2016-520671号公報 甲2-4:桜井広明ほか3名、「PEラミネート系加工紙の接着性評価-PEと紙との熱圧接着-」紙パ技協誌、紙パルプ技術協会発行、1994年7月、第48巻、第7号、P.899-907 甲2-6:特開2000-51043号公報 甲2-3:特開平9-158089号公報 甲2-5:特開2012-219381号公報(技術水準を示す文献) 甲2-12:上村達明ほか2名、「紙コップの現状と展望」、日本包装学会誌、Vol.26、No.1、2017年、P.21-28 甲2-13:「JISハンドブック 紙・パルプ」、財団法人日本規格協会発行、1994年4月20日、P.235-236(技術水準を示す文献) 甲2-1、甲2-4、甲2-6、甲2-3、甲2-5、甲2-12及び甲2-13は、それぞれ申立人佐々木香織が提出した甲第1号証、甲第4号証、甲第6号証、甲第3号証、甲第5号証、甲第12号証及び甲第13号証である。そして、甲2-1、甲2-6及び甲2-5については、それぞれ申立人平松由紀子が提出した甲第2号証、甲第7号証及び甲第6号証でもある。 第4 当審における判断 当審合議体は、以下のとおり、上記取消理由によっては、本件発明1~5は取り消されるべきものではないと判断する。 1 引用文献の記載事項等について (1)甲2-1について ア 甲2-1の記載事項 甲2-1には、以下の記載がある。なお、下線は当審において付与した。 ・「【特許請求の範囲】 【請求項1】 エチレン-アクリル酸またはエチレン-メタアクリル酸共重合体のそれぞれ、あるいはこれらの重合体の混合物にアミン類、アルカリ金属水酸化物、及びアンモニア水を混合使用し、これを水性媒体中で中和することで製造された水性分散液の製造方法。」 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は、エチレン-アクリル酸またはエチレン-メタアクリル酸共重合体のそれぞれ、あるいはこれらの重合体の混合物にアルカリ金属水酸化物、アミン類、アンモニア水などを混合使用し、これを中和することで製造された水分散した樹脂液に、米国でFDA認証された消光剤、スリップ剤、消泡剤などを混合して製造された水分散コーティング液を紙類にコーティングして作られるもので、耐水性、耐油性、熱接着性、アルカリ水解離性などに優れた食品包装用の環境にやさしい紙成形物の製造に関する。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0017】 本発明は、上記の問題点を解決し、上記の必要性に応じて案出されたもので、本発明の目的は、天然パルプを使用する板紙に耐水、耐油性機能を付与し、成形を必要とする後加工において、熱接着が可能であり、ロールブロッキングがなく、現在の紙容器の製作工程で使用しているポリエチレンと同一の効果を有し、また、リサイクル可能な水分散性樹脂を製造し、これを利用して食品包装用途に適合した環境にやさしい紙コーティング剤を提供する。」 ・「【0083】 食品包装用の紙成形物の用途は、水、炭酸飲料、コーヒー、ビールなどの用途で使用される紙コップと、カップ麺、チキンボックス、弁当容器などの耐水性、耐油性、熱接着性などを必要とする全ての食品包装容器に適用可能である。」 ・「【0087】 使用された原料は、以下の通りである。 DMEA:Dimethylethanolamine、KOH:Potassium hydroxide(純度85%)、アンモニア水:アンモニア濃度28%の水溶液 NUCREL 2806,960(Dupont)、PRIMACOR 5980i(Dow) DSC(示差走査熱量測定法):Differential Scanning Calorimetry 【0088】 実施例1 1500mlのオートクレーブに、PRIMACOR 5980i(アクリル酸含量:20.5質量%、MFR=300g/10分)240gと、イオン交換水728.48gと、KOH5.07g、アンモニア水26.45gを加え、温度100℃、撹拌速度1200rpmで2時間撹拌した。この時、(KOH+アンモニア水)の中和度(エチレン-アクリル酸系共重合体のカルボキシル基のモル数に対する中和の割合)は75モル%であり、KOH/アンモニア水のモル%比は15/85であった。その後、50℃以下に冷却した後、包装して水性分散液を得た。得られた水性分散液の固形分濃度は24質量%であり、粘度は400cps/25℃である。」 ・「【0103】 また、実施例1~8で製造した水分散性樹脂に、消光剤、スリップ剤、消泡剤などを添加して、環境にやさしい紙コップの製造に適合するようにコーティング液を以下のように2次製造した。 【0104】 1)紙面に吸湿防止用バリアコーティング溶液 実施例で製造された水性分散液100.00(単位kg) 酸化デンプン:0.3-1.0(分散液固形分の1wt%使用) シリコーン系消泡剤:0.10 水:30~50%を加えて製造 【0105】 2)熱接着、耐水、耐油、撥水、耐ブロッキングコーティング溶液 実施例で製造された水性分散液:100.00(単位kg) シリカ系消光剤:1.25(分散液固形分の5wt%使用) ポリエーテルシロキサンスリップ剤:0.30(分散液固形分の1.2wt%使用) シリコーン系消泡剤:0.10 シロキサン系撥水剤:0.05 水:10~30%を加えて製造 【0106】 3)スリップ、カール(防止)、印刷適性の向上、結露防止用のコーティング溶液 実施例で製造された水性分散液:100.00(単位kg) シリカ系消光剤:2.50(分散液固形分の10wt%使用) ポリエーテルシロキサンスリップ剤:0.30(分散液固形分の1.2wt%使用) シリコーン系結露防止剤:0.01 水:50~70%を加えて製造 【0107】 上記の配合液を均一に混合して分散(温度摂氏40~50度、RPM500~1500、2~3時間)した後、このような水相分散コーティング液を天然パルプ紙に塗布することができるように作った後、天然パルプ紙(160g/m2-360g/m2)の全面に上記1)及び2)コーティング液を、そして後面に上記3)コーティング液を同時にコーティング乾燥されるコーティング装置を使用してコーティング液を塗布、熱風乾燥した後、用紙を裁断、コップの型にあわせて裁断、成形加工を順に実施して紙容器の一種である紙コップを製造した。」 ・「【0112】 上記方法でコーティングされた紙の塗工量及び物性を表2に示した。 【0113】 【表2】 [図:0001437404000001.jpg] 」 ・「【図1】 [図:0001437404000002.jpg] 」 イ 甲2-1の記載に基づく認定事項 (ア)甲2-1の【0017】、【0103】に記載された「水分散性樹脂」は請求項1に記載された「水性分散液」を意味するものと認められる。 (イ)甲2-1の【0105】、【0107】、【図1】の記載からみて、【図1】の「耐水、耐油撥水、耐ブロッキング性の熱接着機能のトップコーティング」は、【0105】の「2)熱接着、耐水、耐油、撥水、耐ブロッキングコーティング溶液」により、「天然パルプ紙」の一方の面のみに設けられたものと認められる。なお、【0107】の「天然パルプ紙(160g/m2-360g/m2)の全面に上記1)及び2)コーティング液を、」は、「天然パルプ紙(160g/m2-360g/m2)の前面に上記1)及び2)コーティング液を、」の誤記と認められる。 (ウ)甲2-1の【0107】に記載された天然パルプ紙は、160g/m2-360g/m2とされているが、【表2】の資料1に着目すれば、具体的には、資料1の原紙の坪量は、170g/m2であると認められる。 (エ)甲2-1の【0107】の「天然パルプ紙(160g/m2-360g/m2)の前面に上記1)及び2)コーティング液を、そして後面に上記3)コーティング液を同時にコーティング乾燥されるコーティング装置を使用してコーティング液を塗布、熱風乾燥した後、用紙を裁断、コップの型にあわせて裁断、成形加工を順に実施して紙容器の一種である紙コップを製造した。」との記載と、【図1】の記載とから、【表2】の資料1の塗工量について、Top(1次)、Top(2次)、Back(3次)は、それぞれ、【0103】~【0107】における、1)の溶液の塗工量、2)の溶液の塗工量、3)の溶液の塗工量であることは明らかである。 ウ 甲2-1に記載の発明 上記ア及びイからみて、特に【表2】の試料1に着目すると、甲2-1には以下の発明(以下「甲2-1発明」という。)が記載されていると認める。なお、括弧は、理解促進のために付したものである。 <甲2-1発明> 「エチレン-アクリル酸またはエチレン-メタアクリル酸共重合体のそれぞれ、あるいはこれらの重合体の混合物にアミン類、アルカリ金属水酸化物、及びアンモニア水を混合使用し、これを水性媒体中で中和することで水性分散液を製造し(【請求項1】)、 前記水性分散液に消光剤、スリップ剤、消泡剤等を添加して、1)吸湿防止用バリアコーティング溶液、2)熱接着、耐水、耐油、撥水、耐ブロッキングコーティング溶液、3)スリップ、カール(防止)、印刷適性の向上、結露防止用のコーティング溶液を作成し(【0103】~【0106】)、 170g/m2の天然パルプ紙に上記1)及び2)の溶液を前面に、上記3)の溶液を後面に塗布し、熱風乾燥した後、裁断、成形加工して製造された紙コップであって(【表2】の試料1、【0107】)、 上記1)の溶液の塗工量をTop(1次)として1.5g/m2、上記2)の溶液の塗工量をTop(2次)として2.5g/m2、上記3)の溶液の塗工量をBack(3次)として1.5g/m2とした紙コップ(【表2】の試料1)。」 (2)甲2-4について 甲2-4の第900ページ、「2.試験材料と試験方法」の欄には、以下の記載がある。 「 [図:0001437404000003.jpg] 」 (3)甲2-5について 甲2-5には、以下の記載がある。 ・「【0001】 紙カップ製罐時におけるトップカール適性に優れ、手に把持した際に潰れにくい紙カップを製罐できる紙カップ用原紙とその製造方法、また、自動販売機の切り離し結合カムに係合する適切な口径を有し、手に把持した際にも潰れにくい紙カップに関する。」 ・「【0013】 本発明の紙カップ用原紙のJIS P 8125により測定するテーバーこわさは、縦方向で5.0mN・m以上、かつ横方向で2.5mN・m以上であることが好ましい。縦方向のテーバーこわさが5.0mN・m未満、または横方向のテーバーこわさが2.5mN・m未満であると、こわさが低く、カップを把持した際にカップが潰れやすくなる。また、縦方向の上限値は25mN・mで、この値を超えると、トップカール加工時に内側の面にかかる圧縮応力が大きくなり座屈や割れが発生しやすくなる。横方向の上限値は30mN・mで、この値を超えると、紙カップの胴部を筒状にして貼り合わせる工程において貼合部がはがれやすくなるため。」 2 本件発明1について (1)一致点 以下、本件発明1と甲2-1発明とを対比する。 ア 甲2-1発明の「天然パルプ紙」は、本件発明1の「紙基材」に相当し、本件発明1の「前記紙基材がパルプを主成分とし」を満たしている。 イ 甲2-1発明の「2)熱接着、耐水、耐油、撥水、耐ブロッキングコーティング溶液」は、「熱接着」、すなわちヒートシールに供されるものであるところ、「天然パルプ紙」の前面に塗布、乾燥されるものであるから、これにより得られた層は、本件発明1の「紙基材の少なくとも一方の面に少なくとも1層以上」設けられた「ヒートシール層」に相当する。 ウ 甲2-1発明の「2)熱接着、耐水、耐油、撥水、耐ブロッキングコーティング溶液」は、「エチレン-アクリル酸またはエチレン-メタアクリル酸共重合体のそれぞれ、あるいはこれらの重合体の混合物にアミン類、アルカリ金属水酸化物、及びアンモニア水を混合使用し、これを水性媒体中で中和することで製造された水性分散液を用い」ているものであるところ、少なくとも「アルカリ金属水酸化物」を用い中和を行っているから、アイオノマーを含むものに外ならない。そうすると、上記イと合わせれば、本件発明1の「前記ヒートシール層がアイオノマーを含み」を満たしている。 エ 甲2-1発明では、各溶液を「天然パルプ紙」に塗工し、熱風乾燥した後、紙コップとして成形しているものであるから、「2)の溶液の塗工量をTop(2次)として2.5g/m2」とは、乾燥塗工量にほかならない。そうすると、上記イとあわせて、本件発明1の「ヒートシール層の乾燥塗工量が全層で2~10g/m2であり」を満たしている。 オ 甲2-1発明では、「170g/m2の天然パルプ紙」に1)~3)の溶液を塗布、乾燥させたものを裁断、成形加工して紙コップを製造しているところ、当該各溶液を塗布、乾燥させたものは、本件発明1の「紙コップ用原紙」に相当する。また、1)~3)の溶液の乾燥塗工量は、合計5.5g/m2であるから、甲2-1発明における紙コップの原紙の坪量は、175.5g/m2(=170+5.5)である。してみれば、本件発明1の「紙コップ原紙の坪量が80g/m2~400g/m2である」を満たしている。 そうすると、本件発明1と甲2-1発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「紙基材の少なくとも一方の面に少なくとも1層以上のヒートシール層を有する紙コップ用原紙であって、前記紙基材がパルプを主成分とし、前記ヒートシール層がアイオノマーを含み、前記ヒートシール層の乾燥塗工量が全層で2~10g/m2であり、前記紙コップ用原紙の坪量が80g/m2~400g/m2である、前記紙コップ用原紙。」 (2)相違点 一方、両発明は、以下の点で相違している。 <相違点1> 紙基材のパルプに関して、本件発明1は、「叩解度がカナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、200~700mlCSFである」と特定するのに対し、甲2-1発明は、パルプの叩解度が不明である点。 <相違点2> 紙コップ用原紙に関して、本件発明1は、「横方向のテーバー曲げ抵抗(JIS P-8125-2)が1mN・m~10mN・mであ」ると特定するのに対し、甲2-1発明は、横方向のテーバー曲げ抵抗が不明である点。 <相違点3> 同様、本件発明1は、「水分が3%~10%である」と特定するのに対し、甲2-1発明は、水分含有率が不明である点。 (3)相違点に対する判断 ア 相違点2について 事案に鑑みて、相違点2について検討する。上記のとおり、甲2-4には、坪量が296.2~324.1g/m2の紙コップ用原紙について、JIS P 8125による横方向のテーバー曲げ抵抗(以下、単に「横方向のテーバー曲げ抵抗」という。)が49.7~51.6gf・cm、すなわち当該相違点2に係る本件発明1の数値範囲内である4.87~5.06mN・mであることが示されている。 甲2-1発明の紙カップ原紙の坪量が175.5g/m2であり、甲2-4の紙コップ用原紙の横方向のテーバー曲げ抵抗が、相違点2に係る本件発明1の数値範囲内であるからといって、甲2-1発明の紙カップ原紙の横方向のテーバー曲げ抵抗が、当該相違点2に係る本件発明1の数値範囲内の数値となっている保証はなく、そして、甲2-4はPEラミネート系加工紙の特性を示したものにすぎないから、アイオノマーをヒートシール層に導入した紙コップ用原紙である甲2-1発明に、甲2-4のPEラミネート系の紙コップ用原紙の数値を参考にしようとする動機付けも存在しない。 また、上記甲2-5のとおり、紙カップ製罐時におけるトップカール適性、及び手に把持した際に潰れにくい紙カップを得るためには、紙カップ用原紙の横方向のテーバー曲げ抵抗を2.5mN・m以上、30mN・m以下で調整することが知られているからといって、甲2-5はラミネートを施した紙カップ用原紙の特性が記載されているに過ぎないから、環境にやさしい紙成形物を提供することを発明の解決課題として、紙コップ用原紙にアイオノマーをヒートシール層に導入した紙コップ用原紙である甲2-1発明の横方向のテーバー曲げ抵抗に対して、甲2-5のラミネートを施した紙カップ用原紙の特性を参酌しようとする動機付けも存在しない。よって、甲2-1発明において、甲2-5に記載の事項を参酌し、甲2-4に記載あるいは相違点2に係る本件発明1の横方向のテーバー曲げ抵抗の値に調整することが、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 イ 上申書について 申立人佐々木香織は、上申書において、相違点2について下記の点を主張する。 (ア)特許権者が「テーバー曲げ抵抗を適切な範囲とするためにカナダ標準ろ水度(フリーネス)を特定の範囲に限定した」と示唆するとおり、テーバー曲げ抵抗は、パルプの叩解度によっても変化し得る。紙コップ原紙を構成するパルプのフリーネスが200~700mlCSFが一般的な範囲であるから、特許権者は、テーバー曲げ抵抗が本件発明1の数値範囲内となることを自認しているといえる。 (イ)甲2-5の【0013】に記載されているように、紙コップ胴部の貼合部の接着性を確保するため、紙コップ原紙の横方向のテーバーこわさの調整が必要であることは周知であり、また、紙コップの胴部加工において、ヒートシール強度に対して原紙の曲げによる反発力が大きすぎると、胴部の貼合部が剥がれてしまうことは、当業者にとって自明である。してみると、ヒートシール剤を塗工してなる紙コップ原紙について、そのヒートシール性を考慮して、曲げ抵抗を適切な範囲に調整することは、単なる設計変更であり、格別の困難性はない。 (ウ)横方向のテーバーこわさを適切に調整することで、紙コップ加工時の接着性を改善するという技術思想は、周知(甲2-5)であり、その数値範囲も、原紙のヒートシール性を考慮して、適宜調整される事項にすぎない。 上記主張(ア)について検討すると、特許権者が、テーバー曲げ抵抗を適切な範囲とするためにカナダ標準ろ水度(フリーネス)を特定の範囲に限定したと示唆しているからといって、カナダ標準ろ水度(フリーネス)だけが、紙コップ用原紙の横方向のテーバー曲げ抵抗に影響するパラメータでないから、横方向のテーバー曲げ抵抗について、相違点2に係る本件発明1の数値範囲内となるとはいえない。 上記主張(イ)及び(ウ)について、ヒートシール性に関する事項であるから、まとめて検討すると、甲2-5は、既に述べたように、ラミネートを施した紙カップ用原紙の特性が記載されているに過ぎないから、紙コップ用原紙にアイオノマーをヒートシール層に導入した紙コップ用原紙である甲2-1発明の横方向のテーバー曲げ抵抗に対して、甲2-5のラミネートを施した紙カップ用原紙の特性を参酌しようとする動機付けは存在せず、甲2-1発明において、相違点2に係る本件発明1の横方向の曲げ抵抗の値に調整することが、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 よって、申立人佐々木香織の上記主張(ア)~(ウ)を採用することはできない。 (4)小括 以上のとおりであるから、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲2-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記2(3)と同様の理由により、甲2-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第5 取消理由通知で採用しなかった申立理由について 1 申立理由の概要 (1)申立人佐々木香織による申立理由1(甲2-2を主引例とする進歩性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲2-2に記載された発明、甲2-1、甲2-4~甲2-12に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~5は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 引用文献 甲2-1:特表2016-520671号公報(再掲) 甲2-2:特開平5-272090号公報 甲2-4:桜井広明ほか3名、「PEラミネート系加工紙の接着性評価-PEと紙との熱圧接着-」紙パ技協誌、紙パルプ技術協会発行、1994年7月、第48巻、第7号、P.899-907(再掲) 甲2-5:特開2012-219381号公報(再掲) 甲2-6:特開2000-51043号公報(再掲) 甲2-7:特開2003-336191号公報 甲2-8:特開昭55-40835号公報 甲2-9:特開2004-291566号公報 甲2-10:特開2001-98487号公報 甲2-11:Dharm Dutt, et al.,“Development of specialty papers is an art: Paper cups base paper from indigenous raw materials - Part XIV”, J Sci Ind Res, Vol. 64, June 2005, pp. 443-446 甲2-12:上村達明ほか2名、「紙コップの現状と展望」、日本包装学会誌、Vol.26、No.1、2017年、P.21-28(再掲) (2)申立人佐々木香織による申立理由2(サポート要件) 請求項1~5に係る特許は、以下の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない発明に対しされたものである。 ア 当該請求項に係る発明は、アイオノマーの含有量を規定していないから、課題を解決できない発明を包含している。 イ 当該請求項に係る発明は、アイオノマーがどのような重合体であるのか特定していないところ、実施例ではエチレン・メタクリル酸共重合体の金属塩のみであり、これをアイオノマーに拡張ないし一般化することはできない。 ウ 当該請求項に係る発明では、紙コップ用原紙のテーバー曲げ抵抗の上限を10mN・mと規定しているところ、比較例2の11mN・mがその値に近い。そうすると、本件発明は、その上限において効果を奏するか不明であるため、当該上限を10mN・mまで拡張できない。 エ 当該請求項に係る発明は、紙コップ用原紙の水分が3%~10%であると規定するが、実施例は5%、2.5%であり、当該数値範囲の上限近傍の実施例及び比較例が記載されていない。そうすると、当該水分の上限を10%まで拡張できない。 (3)申立人平松由紀子による申立理由(進歩性) 本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲1-1に記載された発明、甲1-2~甲1-10に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~5は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 引用文献 甲1-1:特開平5-272090号公報(甲2-2と同じ) 甲1-2:特表2016-520671号公報(甲2-1と同じ) 甲1-3:特開2003-336191号公報(甲2-7と同じ) 甲1-4:特開2004-59657号公報 甲1-5:本件の分割親出願である特願2019-171154号の審査段階において、権利者が令和5年5月31日付けで提出した意見書 甲1-6:特開2012-219381号公報(甲2-5と同じ) 甲1-7:特開2000-51043号公報(甲2-6と同じ) 甲1-8:特開2011-37478号公報 甲1-9:特開2016-16873号公報 甲1-10:特開2016-120948号公報 2 当審における判断 (1)申立人佐々木香織による申立理由1(甲2-2を主引例とする進歩性)について ア 各証拠に記載の事項、発明 (ア)甲2-2の記載事項 甲2-2には以下の記載がある。 ・「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、木材パルプを主成分とする紙コップ用原紙に関する。」 ・「【0009】 【0009】実施例1~3 濾水度400mlcsfのNBKPと濾水度350mlcsfのLBKPを、表1に示すように、NBKPとLBKPの配合量を変化させてたパルプスラリーに、内添剤を共通として、ロジンサイズ剤1.0%(対パルプ)、硫酸バンド1.5%(対パルプ)を内添し、長網、円網コンビネーションマシンにて、8層抄き合わせて原紙を抄造した。該原紙に、表面塗布液を共通として、ポリエチレンイミンを0.1g/m2、酸化澱粉を片面1.2g/m2ずつになるようにサイズプレスで表面塗工し、製品坪量225g/m2、厚さ0.27mmに合わせて原紙を仕上げた。ラミネート加工は原紙裏面に三井東圧ミラソン16Pを15μmエクストルージョン加工しコップ原反を作製した。該原反を常法にて打ち抜きブランクとし、成型速度380個/分で加工し得られたコップの品質を目視で確認し接着の程度を評価した。なお、熱電導率については、京都電子工業(株)製KEMTHERM 9TM-P3型にて測定した。ヒートシール不良率は10000個に対する個数を表わす。結果を表1に示す。 【0010】表1は、NBKPの配合量と熱伝導率および紙のコップ成型時のヒートシール不良のデータである。ここで、ヒートシール不良はゼロであることが本来望ましいが、ヒートシール不良が成型10000個の内3個以内であれば、成型機の調整によって、この問題は回避できるものである。実施例1~3は何れも本発明の条件であり、ヒートシール不良の発生率も0~2個/10000個と良好である。」 (イ)甲2-2の記載に基づく認定事項 甲2-2の【0009】には、「濾水度400mlcsfのNBKPと濾水度350mlcsfのLBKPを、表1に示すように、NBKPとLBKPの配合量を変化させてたパルプスラリー」は、「濾水度400mlcsfのNBKPと濾水度350mlcsfのLBKPを配合」していることを意味することは明らかである。 (ウ)上記(ア)及び(イ)からみて、特に【0009】に着目すると、甲2-2には、次の発明(以下「甲2-2発明」という。)が記載されていると認める。 「木材パルプを主原料とする紙コップ原紙において、 濾水度400mlcsfのNBKPと濾水度350mlcsfのLBKPを配合し、 製品坪量を225g/m2に原紙を仕上げ、 ラミネート加工は原紙裏面にしたコップ原反。」 (イ)甲2-4、甲2-5に記載の事項 甲2-4、甲2-5に記載・の事項は、上記第4 1(2)、(3)に示したとおりである。 イ 本件発明1について (ア)対比及び一致点 本件発明1と甲2-2発明とを対比すると、以下のとおりである。 a 甲2-2発明の「原紙」、「コップ原反」は、本件発明1の「紙基材」、「紙コップ用原紙」に相当する。 b 甲2-2発明の「ラミネート」は、「ヒートシール層」であることは明らかであるから、甲2-2発明の「ラミネート加工は原紙裏面にしたコップ原反」は、本件発明1の「紙基材の少なくとも一方の面に少なくとも1層以上のヒートシール層を有する紙コップ用原紙」に相当する。 c 甲2-2発明では、「製品坪量を225g/m2に原紙を仕上げ」ているから、本件発明1の「紙コップ用原紙の坪量が80g/m2~400g/m2である」を満たしている。 そうすると、本件発明1と甲2-2発明とは、以下の点で一致する。 <一致点> 「紙基材の少なくとも一方の面に少なくとも1層以上のヒートシール層を有する紙コップ用原紙であって、前記紙基材がパルプを主成分とし、前記紙コップ用原紙の坪量が80g/m2~400g/m2である、前記紙コップ用原紙。」 (イ)相違点 一方、両発明は、以下の点で相違している。 <相違点1> 紙基材のパルプに関して、本件発明1は、「叩解度がカナダ標準ろ水度(フリーネス)(JIS P 8121:1995「パルプのろ水度試験方法」)で、200~700mlCSFであ」ると特定するのに対し、甲2-2発明は、「濾水度400mlcsfのNBKPと濾水度350mlcsfのLBKPを配合し」ているものの、混合パルプ全体の叩解度が明記されていない点。 <相違点2> 本件発明1では、「前記ヒートシール層がアイオノマーを含」むのに対し、甲2-2発明では、アイオノマーは含まれていない点。 <相違点3> 本件発明1では、「前記ヒートシール層の乾燥塗工量が全層で2~10g/m2であ」ると特定するのに対し、甲2-2発明では、ヒートシール層の乾燥塗工量が明記されていない点。 <相違点4> 紙コップ用原紙に関して、本件発明1は、「横方向のテーバー曲げ抵抗(JIS P-8125-2)が1mN・m~10mN・mであ」ると特定するのに対し、甲2-2発明は、横方向のテーバー曲げ抵抗が不明である点。 <相違点5> 同様、本件発明1は、「水分が3%~10%である」と特定するのに対し、甲2-2発明は、水分含有量が不明である点。 (ウ)相違点4に対する判断 甲2-2発明は、ラミネート加工したコップ原反であり、ヒートシール層にアイオノマーを導入した場合の横方向のテーバー曲げ抵抗を1mN・m~10mN・mとすることは、他の証拠に記載ないし示唆はなく、技術常識であるといった事情もない。 してみれば、相違点4に係る本件発明1の発明特定事項を得ることは、当業者にとって容易に想到し得たものではない。 (エ)小括 以上のとおりであるから、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲2-2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記第4 2(3)と同様の理由により、甲2-2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)申立人平松由紀子による申立理由(進歩性)について ア 甲1-1に記載の発明 甲1-1は甲2-2と同じ文献であるから、甲1-1に記載の発明(以下「甲1-1発明」といい、「甲2-2発明」と同じ。)は、上記第5 2(1)ア(ウ)で示したとおりである。 イ 甲1-5に記載の事項 甲1-5の[3-2-3]の記載からみて、甲1-5には、次の事項が記載されていると認められる。 「広葉樹パルプと針葉樹パルプの比率をどのように変化させようとも、坪量を80g/m2~400g/m2の間で適宜調整することで、「横方向のテーバー曲げ抵抗(JIS P-8125-2)が1mN・m~10mN・m」の紙コップ用原紙を得ることができること。」 ウ 本件発明1について (ア) 本件発明1と甲1-1発明との一致点、相違点 本件発明1と甲1-1発明(甲2-2発明)との一致点、相違点1~5は、上記第5 2(1)イ(ア)、(イ)で検討したとおりである。 (イ)相違点4に対する判断 甲1-5に、坪量と横方向のテーバー曲げ抵抗は、一定の相関関係があることが示されているが、甲1-5は、本件発明の特性を説明する文献であって、そうでない甲1-1発明(甲2-2発明)の紙コップ用原紙の横方向のテーバー曲げ抵抗が、アイオノマーをヒートシール層に導入した場合においても、相違点4に係る本件発明1の数値範囲内の数値となっていることを示すものでないから、採用できない。 また、甲1-6は、甲2-5と同じ文献である。上記甲2-5(甲1-6)のとおり、紙カップ製罐時におけるトップカール適性、及び手に把持した際に潰れにくい紙カップを得るためには、紙カップ用原紙の横方向のテーバー曲げ抵抗を2.5mN・m以上、30mN・m以下で調整することが知られているからといって、甲2-5(甲1-6)はラミネートを施した紙カップ用原紙の特性が記載されているに過ぎないから、甲1-1発明(甲2-2発明)の紙コップ用原紙のヒートシール層に、アイオノマーを導入した場合においても、相違点4に係る本件発明1の数値範囲内の数値に調整することが、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 (ウ)小括 以上のとおりであるから、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記第5 2(1)ウ、すなわち、上記第4 2(3)と同様の理由により、甲1-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)申立人佐々木香織による申立理由2(サポート要件)について ア 発明の詳細な説明の記載事項 発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明の目的は、プラスチックの使用量を低減することができ、特に、ヒートシール性及びトップカール加工適性を有する紙コップ用原紙を提供することにある。」 ・「【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明においては、従来のプラスチックラミネート紙(以降、ポリラミ紙と略称する場合がある)のポリエチレンやポリプロピレンの使用量を低減するために、アイオノマーを使用する。すなわち、本発明による紙コップ用原紙は、紙基材の少なくとも一方の面に少なくとも一層以上のヒートシール層を有する紙コップ用原紙であって、前記ヒートシール層がアイオノマーを含み、前記ヒートシール層の塗工量が2~10g/m2であることを特徴とする。従来のポリラミ紙のヒートシール層に使用されているポリエチレンやポリプロピレンのラミネート量が20g/m2を超えることと比較すると、ヒートシール層用のプラスチックの使用量を従来の約10~50%にまで削減することができる。・・・。 【0008】 また、本発明においては、前記紙コップ用原紙の横方向のテーバー曲げ抵抗(JIS P-8125-2)が1mN・m~10mN・mである。アイオノマーのホットタックがポリエチレンより低いので、前記テーバー曲げ抵抗が10mN・mを超えると、ヒートシール時に接着不良が生じる(一旦接着しても紙の剛性で接着部が剥がれてしまう)。また1mN・m未満では、紙コップとして軟らかすぎる。 【0009】 また、坪量が80g/m2~400g/m2であることが好ましい。これにより、特に紙コップ(アイスクリーム用の紙カップも含む)の加工時のトップカール割れが生じにくくなる。」 ・「【発明の効果】 【0013】 本発明により、プラスチック使用量が低減された紙コップ用原紙を製造することが可能である。本発明の紙コップ用原紙であれば、仮に自然界にゴミとして不適切に放出された場合であっても、自然環境に与えるプラスチックゴミとしての悪影響を小さくすることが可能であり、プラスチックゴミ問題の解決の一助となる。・・・。」 イ サポート要件についての判断 上記アのとおり、発明の詳細な説明における記載に照らせば、本件発明は、プラスチックの使用量を低減しつつ、ヒートシール性及びトップカール加工適性を有する紙コップ用原紙を提供することを課題として、1)ヒートシール層を塗工量が2~10g/m2のアイオノマーとしてプラスチックの使用量を低減しつつ、2)当該紙コップ用原紙の横方向のテーバー曲げ抵抗(JIS P-8125-2)を1mN・m~10mN・m、坪量を80g/m2~400g/m2とすることで、紙コップとしての強度を保ち、また、加工時のトップカール割れが生じにくくしたものであることが理解できる。 そうすると、これらの事項を含む本件発明1~5は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。 ウ 申立人の主張について 申立人が主張する、アイオノマーの含有量及びどのような重合体であるかが本件発明1~5において特定されていない旨(上記1(3)ア、イ)について検討するに、本件発明の課題及び解決手段は、上記ア、イのとおりであって、アイオノマーの含有量やどのような重合体であるかは、本件発明の課題ないし解決手段を特段左右しない。してみれば、申立人の当該主張は、本件発明の課題及び解決手段を正解しないものである。 また、本件発明1では、紙コップ用原紙のテーバー曲げ抵抗の上限を10mN・mと規定しているところ、比較例2の11mN・mはその値に近く、本件発明1~5において当該上限を10mN・mまで拡張できない旨の主張(上記1(3)ウ)について検討するに、当該比較例2は、側面接着性が劣る(【表1】において「×」とされている。)ものと評価されており、【0008】の記載と整合するものである。すなわち、10mN・m程度においてしきい値が存在するものと理解され、当該数値が課題解決に寄与していることがむしろ理解できるものである。 さらに、本件発明1~5において紙コップ用原紙の水分が3%~10%であると規定する点(上記1(3)エ)について、当該数値範囲内である実施例は、いずれもトップカール割れ及び側面接着性が優れているものと評価されている。 以上により、申立人の主張は採用できない。 エ 小括 よって、請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない発明に対しされたものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求項1~5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由並びに申立人平松由紀子及び申立人佐々木香織が申し立てた理由及び証拠によっては取り消すことはできない。 また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-701014

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