2022-701319
プライマー層組成物、これを用いた二次電池パウチフィルム、及びその製造方法
- 審判番号
- 2022-701319
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-181990外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7092846
- 請求日
- 2022年12月27日
- 審決日
- 2023年10月23日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ユルチョン ケミカル カンパニー,リミティド
- 【権利者代理人】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
- 【異議申立人】松山 徳子
- 分類
- P1651.113-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M) / P1651.536-YAA(H01M) / P1651.537-YAA(H01M)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 20項目
第1 手続の経緯
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特許7092846号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし14に係る発明についての出願は、令和2年10月30日(パリ条約による優先権主張 2020年9月4日、韓国)の出願であって、令和4年6月20日にその特許権が設定登録され、令和4年6月28日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立での経緯は、次のとおりである。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和5年7月12日の訂正請求の趣旨は、特許第7092846号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「硬化開始温度が150℃以下であり」とあるのを「硬化開始温度が135℃~150℃であり」に、「乾燥工程温度が150℃以下であり」とあるのを「乾燥工程温度が135℃~150℃であり」にそれぞれ訂正する。(請求項1の記載を引用する請求項4ないし9も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2ないし9は、訂正の対象となる請求項1を引用しているものであるから、請求項1ないし9は一群の請求項を構成する。
本件訂正請求は、一群の請求項〔1-9〕に対して請求されたものである。
2 訂正の適否についての判断
訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
ア 訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「硬化開始温度」について、「150℃以下」から「135℃~150℃」にその範囲を限定し、「乾燥工程温度」について、「150℃以下」から「135℃~150℃」にその範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正前の請求項2には「前記硬化開始温度が135℃~150℃である」、同請求項3には「前記乾燥工程温度が135℃~150℃である」とそれぞれ記載され、更に願書に添付した明細書の段落【0011】には「硬化開始温度が150℃以下、好ましくは、135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が150℃以下、好ましくは、135℃~150℃であり」と記載されているので、訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。
また、訂正事項1は、特許請求の範囲を減縮するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2、3
訂正事項2、3は、それぞれ請求項2、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項および第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-9〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1ないし14に係る発明(以下「本件発明1ないし14」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】少なくとも外層、金属層、プライマー層、シーラント層、又は少なくとも外層、金属層、プライマー層、溶融押出樹脂層、シーラント層をこれらの順に含む二次電池パウチフィルムの製造方法であって、金属層上にプライマー層組成物を塗布し加熱してプライマー層組成物を乾燥及び少なくとも一部を硬化させる乾燥工程を含み、前記プライマー層組成物として有機溶剤型エマルジョン組成物を用い、続きを表示(全50行)前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含んでなり、硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃であり、当該製造方法は、シーラント層の貼り合わせの際に熱ラミネート工程を施さないことを特徴とする、二次電池パウチフィルムの製造方法。【請求項2】(削除)【請求項3】(削除)【請求項4】前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、2液硬化型タイプであることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池パウチフィルムの製造方法。【請求項5】前記2液硬化型タイプの有機溶剤型エマルジョン組成物の硬化剤は、エポキシ系硬化剤であることを特徴とする、請求項4に記載の二次電池パウチフィルムの製造方法。【請求項6】前記2液硬化型タイプの有機溶剤型エマルジョン組成物は、主剤パートとして酸変性ポリプロピレンを含み、硬化剤パートとしてエポキシ硬化剤及びエーテル重合体を含むことを特徴とする、請求項5に記載の二次電池パウチフィルムの製造方法。【請求項7】前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、硬化開始温度を調節するための触媒を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池パウチフィルムの製造方法。【請求項8】前記乾燥工程の際に乾燥工程の区域を複数の区域に分け、最初の区域の設定温度及び最後の区域の設定温度よりも最初の区域と最後の区域との間の区域の設定温度を高く設定することを特徴とする、請求項1に記載の二次電池パウチフィルムの製造方法。【請求項9】当該製造方法は、シーラント層の貼り合わせの際に常温におけるエージング工程を経ることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池パウチフィルムの製造方法。【請求項10】少なくとも外層、金属層、プライマー層、シーラント層、又は少なくとも外層、金属層、プライマー層、溶融押出樹脂層、シーラント層をこれらの順に含む二次電池パウチフィルムの成形性向上方法であって、金属層上にプライマー層組成物を塗布し加熱してプライマー層組成物を乾燥及び少なくとも一部を硬化させる乾燥工程を含み、前記プライマー層組成物として2液硬化型タイプの有機溶剤型エマルジョン組成物を用い、前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含んでなり、硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃であり、当該方法は、前記シーラント層の貼り合わせの際に熱ラミネート工程を施さず、当該方法は、シーラント層の貼り合わせの際に常温におけるエージング工程を経ることを特徴とする、二次電池パウチフィルムの成形性向上方法。【請求項11】金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含み、成形性が6.5mm以上であり、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であり、耐電解液強度が初期剥離強度の90%以上であることを特徴とする、二次電池パウチフィルム。【請求項12】前記二次電池パウチフィルムは、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、耐電解液強度が14.0N/15mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であり、突刺し強度が21.0N以上であることを特徴とする、請求項11に記載の二次電池パウチフィルム。【請求項13】前記二次電池パウチフィルムは、成形性が6.5~6.8mmであり、初期剥離強度が14.0~15.0N/15mmであり、耐電解液強度が14.0~14.5N/15mmであり、耐フッ酸強度が6.0~6.4N/15mmであり、突刺し強度が21.0~23.0Nであることを特徴とする、請求項12に記載の二次電池パウチフィルム。【請求項14】前記二次電池パウチフィルムは、基材層、金属層、前記金属層の少なくとも一方側に形成される腐食防止層、前記金属層の内側に形成されるプライマー層、溶融押出樹脂層であるポリプロピレン押出層、シーラント層である無延伸ポリプロピレン(CPP)層から構成され、前記基材層は、ポリエステルフィルム及びポリイミドフィルムの1種以上からなり、前記金属層は、アルミニウムからなることを特徴とする、請求項11に記載の二次電池パウチフィルム。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1、2、4ないし9に係る特許に対して、当審が令和5年4月13日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(サポート要件)本件特許は,特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
・請求項1、2、4ないし9
発明の詳細な説明によると、本件発明の課題を解決するための手段は、有機溶剤型エマルジョン組成物の硬化開始温度を135℃~150℃にして、且つ乾燥工程温度を135℃~150℃にすることであると認められる。
一方、請求項1には「前記有機溶剤型エマルジョン組成物は・・・硬化開始温度が150℃以下であり、且つ乾燥工程温度が150℃以下であり」と記載されているものの硬化開始温度の下限及び乾燥工程温度の下限については何ら特定されていない。
そうすると、請求項1に係る発明の二次電池パウチフィルムの製造方法は、有機溶剤型エマルジョン組成物の硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃であることを満たさないものも含まれることになるが、そのようなものにあっても上記の課題を解決できるとまでは認識することができない。
したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載された課題を解決する手段が適切に反映されていない。
よって、請求項1に係る発明、及び請求項1を引用する請求項2、4ないし9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
2 当審の判断
令和5年7月12日の訂正請求により、請求項1を「硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃であり」に訂正することにより、請求項1、4ないし9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとなった。
なお、当該訂正請求により請求項2は削除されたので、上記取消理由の対象でなくなった。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 訂正前の請求項1ないし14に係る特許に対する特許異議申立理由のうち、取消理由通知において採用しなかった申立理由の概要は、以下のとおりである。
(1)申立理由A(第36条第4項第1号)
請求項1ないし14に係る発明について、発明の詳細な説明の記載が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものでないため、請求項1ないし14に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2)申立理由B(第36条第6項第1号)
請求項1ないし14に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないため、請求項1ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)申立理由C(甲第1号証を主引例とする第29条第1項、第29条第2項)
ア 第29条第1項
請求項1ないし7、11ないし13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、請求項1ないし7、11ないし13に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1ないし7、11ないし13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
イ 第29条第2項
請求項1ないし7、11ないし13に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、
請求項8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術に基づいて、
請求項9,10に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基づいて、
請求項14に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証及び甲第5号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(4)申立理由D(甲第2号証を主引例とする第29条第1項、第29条第2項)
ア 第29条第1項
請求項1、2、4ないし7、9、10に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、請求項1、2、4ないし7、9、10に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1、2、4ないし7、9、10に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
イ 第29条第2項
請求項1、2、4ないし7、9、10に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、
請求項3、11ないし13に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された技術に基づいて、
請求項8に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術に基づいて、
請求項14に係る発明は、甲第2号証に記載された発明、甲第1号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(5)申立理由E(甲第7号証を主引例とする第29条第1項、第29条第2項)
ア 第29条第1項
請求項1、4ないし6、11ないし13に係る発明は、甲第7号証に記載された発明であるから、請求項1、4ないし6、11ないし13に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1、4ないし6、11ないし13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
イ 第29条第2項
請求項1、4ないし6、11ないし13に係る発明は、甲第7号証に記載された発明に基づいて、
請求項2、3に係る発明は、甲第7号証に記載された発明及び甲第1号証に記載された技術に基づいて、
請求項7,9に係る発明は、甲第7号証に記載された発明及び甲第8号証に記載された技術に基づいて、
請求項8に係る発明は、甲第7号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術に基づいて、
請求項10、14に係る発明は、甲第7号証に記載された発明、甲第1号証及び甲第8号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし14に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(6)申立理由F(甲第8号証を主引例とする第29条第1項、第29条第2項)
ア 第29条第1項
請求項11ないし13に係る発明は、甲第8号証に記載された発明であるから、請求項11ないし13に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項11ないし13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
イ 第29条第2項
請求項11ないし13に係る発明は、甲第8号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第8号証に記載された発明及び甲第14号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項11ないし13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(7)申立理由G(甲第9号証を主引例とする第29条第1項、第29条第2項)
ア 第29条第1項
請求項11ないし13に係る発明は、甲第9号証に記載された発明であるから、請求11ないし13に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項11ないし13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
イ 第29条第2項
請求項11に係る発明は、甲第9号証に記載された発明及び甲第14号証に記載された技術に基いて、又は、甲第9号証に記載された発明及び甲第10号証ないし甲第14号証に記載された技術に基いて、
請求項12,13に係る発明は、甲第9号証に記載された発明、甲第14号証及び甲第15号証に記載された技術に基いて、又は、甲第9号証に記載された発明及び甲第10号証ないし甲第15号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項11ないし13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(8)申立理由H(甲第14号証を主引例とする第29条第1項、第29条第2項)
ア 第29条第1項
請求項11ないし13に係る発明は、甲第14号証に記載された発明であるから、請求11ないし13に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項11ないし13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
イ 第29条第2項
請求項11に係る発明は、甲第14号証に記載された発明に基いて、又は、甲第14号証に記載された発明及び甲第10号証ないし甲第13号証に記載された技術に基いて、
請求項12,13に係る発明は、甲第14号証に記載された発明及び甲第15号証に記載された技術に基いて、又は、甲第14号証に記載された発明、甲第10号証ないし甲第13号証及び甲第15号証に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項11ないし13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
証拠方法
2 各号証の記載
(1)甲第1号証
ア 甲第1号には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は、当審で付したものである。以下同様。)
「【請求項1】基材層、バリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる電池用外装体であって、前記接着層が、プロピレン成分を70質量%以上含有すると共に酸成分を0.1~10質量%含有する酸変性ポリプロピレン樹脂と、オキサゾリン化合物及びエポキシ化合物の少なくとも一方を含む架橋剤とを含有し、前記酸変性ポリプロピレン樹脂100質量部に対し前記架橋剤を0.1~40質量部の割合で含有し、さらに、シーラント層がポリプロピレン樹脂からなることを特徴とする電池用外装体。」
「【請求項4】基材層上に形成したバリア層の表面に、酸変性ポリプロピレン樹脂と、架橋剤とを含有する水性コート剤を塗布し、乾燥して接着層を形成し、次いで、接着層の表面にシーラント樹脂を積層することを特徴とする請求項1又は2記載の電池用外装体の製造方法。」
「【0047】なお、コート剤としては、環境上の観点から、塗剤の媒体に水性媒体を適用した水性コート剤が好ましく採用される。」
「【0064】(6)耐電解液性作製した外装体を100×15mmの寸法に裁断して試験片とした。この試験片を、電解液を充填した容器中に挿入して密栓し、85℃又は100℃で24時間保管後、さらに水中に1昼夜浸漬した後の試験片の剥離状況を目視で観察した。剥離が認められなかったものを○、剥離が認められたものを×とした。なお、電解液は、エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(質量比)の溶液にLiPF6が1.5Mになるように調整した液を用いた。」
「【0087】実施例1基材層として厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(ユニチカ社製「エンブレットPET-12」)を使用し、基材層のコロナ処理面に、二液硬化型のポリウレタン系接着剤(東洋モートン社製)をグラビアコートし、乾燥して目付量5g/m2のプライマー層を形成した。そして、プライマー層の表面に、両面を酸脱脂した厚さ40μmの軟質アルミニウム箔(8079材、東洋アルミニウム社製、商品名:CE)を貼り合わせバリア層を形成した。」
「【0089】次いで、バリア層の表面に、水性コート剤J-1を塗布し、150℃で2分間乾燥して目付量0.7g/m2の接着層を形成した。【0090】その後、押出機を備えたラミネート装置を用いて、接着層表面にシーラント樹脂としてポリプロピレン樹脂(日本ポリプロ社製「ノバテックPP FL02A」)を溶融押出(押出ラミネート)して、35μmのポリプロピレン樹脂からなるシーラント層を形成させて外装体を得た。」
イ 引用発明1
特許異議申立人の引用した実施例1に着目すると、甲第1号証には、電池用外装体の製造方法に関して、次の事項が記載されている。
・請求項1及び請求項4によれば、甲第1号証には、基材層、バリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる電池用外装体の製造方法であって、基材層上に形成したバリア層の表面に、酸変性ポリプロピレン樹脂と、架橋剤とを含有する水性コート剤を塗布し、乾燥して接着層を形成し、次いで、接着層の表面にシーラント樹脂を積層する、電池用外装体の製造方法が記載されている。
・バリア層は、アルミニウム箔である(【0087】)。
・バリア層の表面に、水性コート剤を塗布し、150℃で乾燥して接着層を形成した(【0089】)。
・接着層の表面にシーラント樹脂を溶融押出してシーラント層を形成した(【0090】)。
以上のことより、甲第1号証には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
「基材層、バリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる電池用外装体の製造方法であって、基材層上に形成したアルミニウム箔からなるバリア層の表面に、酸変性ポリプロピレン樹脂と、架橋剤とを含有する水性コート剤を塗布し、150℃で乾燥して接着層を形成し、次いで、接着層の表面にシーラント樹脂を溶融押出して積層する、電池用外装体の製造方法。」
ウ 引用発明1a
甲第1号証には、電池用外装体に関して、次の事項が記載されている。
・請求項1によれば、甲第1号証には、基材層、バリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる電池用外装体が記載されている。
・バリア層は、アルミニウム箔である(【0087】)。
・【0064】によれば、外装体を電解液に85℃又は100℃で24時間浸漬しても、剥離が認められなかった。
以上のことより、甲第1号証には次の発明(以下、「引用発明1a」という。)が記載されている。
「基材層、アルミニウム箔からなるバリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる電池用外装体であって、外装体を電解液に85℃又は100℃で24時間浸漬した後に剥離が認められなかった、電池用外装体。」
(2)甲第2号証
ア 甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【0050】<接着剤組成物>本発明にかかる接着剤組成物は、前記酸変性ポリオレフィン(A)、硬化剤(B)および有機溶剤(C)の混合物であり、再溶解性の観点から酸変性ポリオレフィン(A)、硬化剤(B)は、有機溶剤(C)に溶解していることが好ましい。」
「【0055】<積層体>本発明の積層体は、ポリオレフィン樹脂基材と金属基材を本発明にかかる接着剤組成物で積層したものである。【0056】積層する方法としては、従来公知のラミネート製造技術を利用することができる。例えば、特に限定されないが、金属基材の表面に接着剤組成物をロールコータやバーコータ等の適当な塗布手段を用いて塗布し、乾燥させる。乾燥後、金属基材表面に形成された接着剤組成物の層(接着剤層)が溶融状態にある間に、その塗布面にポリオレフィン樹脂基材を積層接着(ラミ接着)して積層体を得ることができる。前記接着剤組成物により形成される接着剤層の厚みは、特に限定されないが、0.5~10μmにすることが好ましく、0.8~9.5μmにすることがより好ましく、1~9μmにすることがさらに好ましい。」
「【0060】<酸変性ポリオレフィン(A)の製造例>製造例11Lオートクレーブに、プロピレン-ブテン共重合体(Tm:80℃)100質量部、トルエン233質量部及び無水マレイン酸20質量部、ジ-tert-ブチルパーオキサイド5質量部を加え、140℃まで昇温した後、更に1時間撹拌した(ここで、1時間「反応」したという)。その後、得られた反応液を100℃まで冷却後、予め40℃に加温したトルエン717質量部とメチルエチルケトン950質量部が入った容器に攪拌しながら注ぎ、40℃まで冷却し、更に30分間攪拌し、更に25℃まで冷却することで樹脂を析出させた(ここで、反応液をメチルエチルケトンなどの溶剤に攪拌しながら注ぎ込み、冷却することで樹脂を析出させる操作を「再沈」という)。その後、当該樹脂を含有するスラリー液を遠心分離することで無水マレイン酸がグラフト重合した酸変性プロピレン-ブテン共重合体と(ポリ)無水マレイン酸および低分子量物とを分離した。更に、遠心分離して取り出した酸変性プロピレン-ブテン共重合体を、予め25℃に保温した新たな2000質量部のメチルエチルケトンが入った容器に攪拌しながら投入し、1時間攪拌を続けた。その後、スラリー液を遠心分離することで、更に酸変性プロピレン-ブテン共重合体と(ポリ)無水マレイン酸および低分子量物とを分離した。当該操作を2回繰り返すことで、精製した(ここで、遠心分離して取り出した酸変性プロピレン-ブテン共重合体をメチルエチルケトンに攪拌しながら投入し、再度遠心分離することで、精製を強化する操作を「リスラリー」とする)。精製後、減圧下70℃で5時間乾燥させることにより、酸変性ポリオレフィンである無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体(PO-1、酸価25mgKOH/g-resin、重量平均分子量60,000、Tm80℃)を得た。」
「【0077】金属基材とポリオレフィン樹脂基材との積層体の作製金属基材にはアルミニウム箔(住軽アルミ箔社製、8079-0、厚さ40μm)を使用し、ポリオレフィン樹脂基材には無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡社製パイレン(登録商標)フィルムCT、厚さ40μm)(以下、CPPともいう。)を使用した。実施例1~22および比較例1~4で得られた接着剤組成物を金属基材にバーコータを用いて乾燥後の接着剤層の膜厚が3μmになるように調整して塗布した。塗布面を温風乾燥機を用いて100℃雰囲気で5分間乾燥させ、膜厚3μmの接着剤層が積層された金属基材を得た。前記接着剤層表面にポリオレフィン樹脂基材を重ね合わせ、テスター産業社製の小型卓上テストラミネーター(SA-1010-S)を用いて、ラミネート温度80℃で、0.3MPa、1m/分にて貼り合わせ、25℃、50%RHにて36時間養生することで積層体を得た。」
「【0079】接着性の評価前記積層体を100mm×15mm大きさに切断し、T型剥離試験により接着性を以下の基準により評価した。評価結果を表2に示す。【0080】<T型剥離試験>ASTM-D1876-61の試験法に準拠し、オリエンテックコーポレーション社製のテンシロンRTM-100を用いて、25℃環境下で、引張速度50mm/分における剥離強度を測定した。金属基材/ポリオレフィン樹脂基材間の剥離強度(N/cm)は5回の試験値の平均値とした。」
「【0082】耐薬品性の評価LiBの包装材としての利用性を検討するため電解液試験による耐薬品性(以下、耐電解液性ともいう)の評価を行った。前記積層体を、100mm×15mm大きさに切断し、電解液[エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(容積比)100gに6フッ化リン酸リチウムを13g添加したもの]に85℃で1日間浸漬させた。その後、積層体を取り出しイオン交換水で洗浄、ペーパーワイパーで水を拭き取り、十分に水分を乾燥させ、100mm×15mm大きさに切断し、T型剥離試験により耐薬品性を以下の基準により評価した。評価結果を表2に示す。」
「【0084】本発明にかかる接着剤組成物は、酸変性ポリオレフィン、硬化剤および有機溶剤を含有し、ロングラン生産においても配合液が固化し析出することなく、良好なポットライフ性を維持し、かつ金属基材とポリオレフィン樹脂基材との良好な接着性、耐電解液性を両立させることができる。そのため、本発明の接着剤組成物から形成されるポリオレフィン樹脂基材と金属基材との積層体は、家電外板、家具用素材、建築内装用部材などの分野のみならず、パソコン、携帯電話、ビデオカメラなどに用いられるリチウム電池の包装材(パウチ形態)としても幅広く利用し得るものである。」
表2によると、実施例4は、接着性が7.9N/15mmであり、耐電解液性が7.7N/15mmであることが読み取れる。
イ 引用発明2
甲第2号証には、積層体の製造方法に関して、次の事項が記載されている。
・【0077】によれば、金属基材とポリオレフィン樹脂基材との積層体の製造方法は、接着剤組成物を金属基材に塗布し、100℃で乾燥させ、接着剤層が積層された金属基材を得て、接着剤層表面にポリオレフィン樹脂基材を重ね合わせ、ラミネート温度80℃で貼り合わせて、積層体を得ている。
・接着剤組成物は、酸変性ポリオレフィン、硬化剤および有機溶剤の混合物である(【0050】)。
・酸変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体である(【0060】)。
・乾燥後、接着剤層が溶融状態にある間に、ポリオレフィン樹脂基材を積層接着する(【0056】)。
・ポリオレフィン樹脂基材と金属基材との積層体は、リチウム電池の包装材(パウチ形態)としても幅広く利用し得る(【0084】)。
以上のことより、甲第2号証には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。
「リチウム電池の包装材(パウチ形態)としても幅広く利用し得る、金属基材とポリオレフィン樹脂基材との積層体の製造方法であって、無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体、硬化剤および有機溶剤の混合物である接着剤組成物を金属基材に塗布し、100℃で乾燥させ、溶融状態にある接着剤層が積層された金属基材を得て、溶融状態にある接着剤層表面にポリオレフィン樹脂基材を重ね合わせ、ラミネート温度80℃で貼り合わせる、積層体の製造方法。」
ウ 引用発明2a
接着性と耐電解液性が、優れた値を示す実施例4に着目すると、甲第2号証には、積層体に関して、次の事項が記載されている。
・積層体は、ポリオレフィン樹脂基材と金属基材を接着剤組成物で積層したものである(【0055】)。
・ポリオレフィン樹脂基材と金属基材との積層体は、リチウム電池の包装材(パウチ形態)としても幅広く利用し得る(【0084】)。
・【0079】、【0082】及び表2によると、実施例4の積層体は、接着性が7.9N/15mmであり、耐電解液性が7.7N/15mmである。
以上のことより、甲第2号証には次の発明(以下、「引用発明2a」という。)が記載されている。
「リチウム電池の包装材(パウチ形態)としても幅広く利用し得る、ポリオレフィン樹脂基材と金属基材を接着剤組成物で積層した積層体であって、接着性が7.9N/15mmであり、耐電解液性が7.7N/15mmである、積層体。」
(3)甲第7号証
ア 甲第7号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【請求項10】外側から順に、外層側樹脂フィルム、外層側接着剤層、金属箔、内層側接着剤層、熱融着樹脂フィルムを必須とする蓄電デバイス用包装材において、前記内層側接着剤層が、請求項1~6いずれかに記載の接着剤組成物から形成されることを特徴とする蓄電デバイス用包装材。」
「【0078】<熱融着樹脂フィルム>熱融着樹脂フィルム(15)は特に限定されるものではないが、ポリオレフィン系フィルムであることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系共重合体、これらの酸変性物およびアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種類の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムであることが好ましい。熱融着樹脂フィルムの厚さは特に限定されるものではないが、20~150μmであることが好ましい。」
「【0088】<ポリオレフィン樹脂(A)の調製><製造例1>ポリオレフィン重合反応として、窒素置換した内容積500mLのガラス製オートクレーブに精製トルエン250mL、メチルアルミノキサンをAl原子換算で0.5mg、ジメチルシリル-ビス-(4,5,6,7,8-ペンタヒドロアズレン-2-イル)ジルコニウムジクロライドをZr原子換算で1.25μg原子を投入し、20℃に昇温した。続いてプロピレンを、100L/hrの一定速度で供給しながら、20℃で1.32MPaの一定圧力を維持するように1-ブテンモノマーを連続供給し、重合を開始した。20℃、8時間、重合を行った後、イソプロパノールを添加して重合を停止した。得られたポリマー溶液を、多量のメタノールに添加し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過、乾燥することにより、プロピレン/1-ブテン=72/28(モル比)で共重合されたポリオレフィンを得た。ポリオレフィンへのモノマーグラフト反応として、内容積2Lのガラス製反応容器に得られたポリオレフィン380gと、トルエン600gと、グラフトモノマーとして無水マレイン酸16gを仕込み、窒素気流下、加熱溶解させ、溶液温度を100℃にした。1時間攪拌した後に、tert-ブチルパーオキシ(2-エチルヘキサノエート)4gを添加して4時間その温度で反応を続けた。こうして得られたポリマー溶液を多量のメタノール中に攪拌しながら添加し、ポリマーを析出させた。析出したポリマーをろ過した後に数回メタノールで洗浄し、乾燥させることによりポリオレフィン樹脂(A1)を得た。得られたポリオレフィン樹脂(A1)について、GPC測定からポリオレフィン樹脂(A1)以外の成分が除去できていることを確認した。ポリオレフィン樹脂(A1)のMw、酸価P、融点、ΔEは、それぞれ186000、0.018mmol/g、76℃、30mJ/mgであった。」
「【0104】<主剤の調製>ガラス容器にポリオレフィン樹脂(A)と重合体(B)の和100重量%に対する重合体(B)の含有率が表1記載の値となるようにポリオレフィン樹脂(A)と重合体(B)を計20g配合し、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン=7/3(重量比)の混合溶媒80gで溶解させることで固形分濃度20%の樹脂溶液を調製し、これを主剤溶液として用いた。」
「【0113】<実施例1~23、比較例1~4>表2に示すZ/(P*i+Z*j)の値となるように、各種主剤溶液と硬化剤溶液を配合し、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトン=7/3(重量比)の混合溶媒で希釈して固形分濃度15%に調整して接着剤組成物を作製した。但し、実施例23については固形分濃度15%では粘度が高かったため、固形分10%に調整して接着剤組成物を作製した。後述する方法に従って、表2記載の金属箔と未延伸ポリプロピレンフィルムの積層体を作製し、初期接着強度、電解質溶液浸漬後の接着強度、電解質溶液浸漬後の成形部外観変化の有無について評価した。」
「【0117】<性能試験>(ナイロン/処理アルミラミネートフィルムの作製)処理アルミの非処理面に対して、ウレタン系ドライラミネート接着剤(東洋モートン株式会社製「AD502/CAT10」を乾燥塗布量4g/m2となるように塗工し、100℃で1分間乾燥した後、厚さ25μmの二軸延伸ナイロンフィルムを貼りあわせた。その後、得られた積層体を60℃で7日間の硬化(エージング)を行い、接着剤を充分に硬化させた。こうして得られたナイロン/処理アルミラミネートフィルムを、以下「ONY/AL積層フィルム」と呼ぶ。【0118】(ナイロン/処理アルミ/未延伸ポリプロピレンラミネートフィルムの作製)ONY/AL積層フィルムのアルミ処理面に対して、実施例および比較例の各接着剤を乾燥塗布量2g/m2となるように塗工し、100℃で1分間乾燥した後、厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)を貼りあわせた。その後、得られた積層体を40℃で7日間のエージングを行い、接着剤を充分に硬化させた。こうして得られたナイロン/処理アルミ/CPPラミネートフィルムを、以下「ONY/AL/CPP積層フィルム」と呼ぶ。」
「【0120】[初期接着強度(電解質溶液浸漬前)]前記Al/CPP積層フィルムを、25℃、湿度65%の環境下で6時間静置後、それぞれ200mm×15mmの大きさに切断し、ASTM-D1876-61の試験法に準じ、引張り試験機を用いて、25℃、湿度65%の環境下で、荷重速度100mm/分でT型剥離試験をおこなった。アルミニウム箔/CPP間の剥離強度(N/15mm巾)を5個の試験片の平均値で示す。結果を以下の基準にて判定した。◎:実用上優れる:7N以上続きを表示(全14行)〇:実用域:5N以上7N未満×:実用不可:5N未満【0121】[電解質溶液浸漬後の接着強度]初期接着強度試験に用いた同様の試験片を、電解質溶液[6フッ化リン酸リチウムをエチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(容積比)に溶解し、1mol/lの6フッ化リン酸リチウム溶液としたもの]に85℃で7日間浸漬させた。その後、試験片を取り出し約10分程度流水で洗浄し、ペーパーワイパーで水を充分に拭き取った後に試験片の接着強度を、浸漬試験前の接着強度と同様にして測定した。測定結果を以下の基準にて判定した。◎:実用上優れる:7N以上〇:実用域:5N以上7N未満×:実用不可:5N未満」
表3から、実施例13~20で、初期接着強度及び電解質溶液浸漬後の接着強度が、ともに◎であることが読み取れる。
イ 引用発明7
甲第7号証には、蓄電デバイス用包装材の製造方法に関して、次の事項が記載されている。
・製造方法の対象となる蓄電デバイス用包装材は、外側から順に、外層側樹脂フィルム、外層側接着剤層、金属箔、内層側接着剤層、熱融着樹脂フィルムを必須とする蓄電デバイス用包装材である(請求項10)。
・ポリオレフィン樹脂(A)と重合体(B)をメチルシクロヘキサン/メチルエチルケトンで溶解させた主剤溶液と、硬化剤溶液を配合し、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトンで希釈して接着剤組成物を作製した(【0104】、【0113】)。
・【0088】によれば、ポリオレフィン樹脂(A)は、無水マレイン酸変性したプロピレン-ブテン共重合体であることが読み取れる。
・処理アルミにウレタン系ドライラミネート接着剤を塗工し、二軸延伸ナイロンフィルムを貼りあわせナイロン/処理アルミラミネートフィルムを得て(【0117】)、ナイロン/処理アルミラミネートフィルムのアルミに接着剤組成物を塗工し、100℃で乾燥し、未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)を貼りあわせるている(【0118】)。
・【0078】によれば、未延伸ポリプロピレンフィルムは熱融着樹脂フィルムであることが読み取れる。
以上のことより、甲第7号証には次の発明(以下、「引用発明7」という。)が記載されている。
「外側から順に、外層側樹脂フィルム、外層側接着剤層、金属箔、内層側接着剤層、熱融着樹脂フィルムを必須とする蓄電デバイス用包装材の製造方法であって、無水マレイン酸変性したプロピレン-ブテン共重合体であるポリオレフィン樹脂(A)と重合体(B)をメチルシクロヘキサン/メチルエチルケトンで溶解させた主剤溶液と、硬化剤溶液を配合し、メチルシクロヘキサン/メチルエチルケトンで希釈して接着剤組成物を作製し、処理アルミにウレタン系ドライラミネート接着剤を塗工し、二軸延伸ナイロンフィルムを貼りあわせナイロン/処理アルミラミネートフィルムを得て、ナイロン/処理アルミラミネートフィルムのアルミに接着剤組成物を塗工し、100℃で乾燥し、未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)である熱融着樹脂フィルムを貼りあわせる、蓄電デバイス用包装材の製造方法。」
ウ 引用発明7a
甲第7号証には、蓄電デバイス用包装材に関して、次の事項が記載されている。
・外側から順に、外層側樹脂フィルム、外層側接着剤層、金属箔、内層側接着剤層、熱融着樹脂フィルムを必須とする蓄電デバイス用包装材である(請求項10)。
・【0120】、【0121】及び表3によると、実施例13ないし20に基づく蓄電デバイス用包装材は、初期接着強度が7N/15mm以上で実用上優れており、電解質溶液浸漬後の接着強度が7N/15mm以上で実用上優れている。
以上のことより、甲第7号証には次の発明(以下、「引用発明7a」という。)が記載されている。
「外側から順に、外層側樹脂フィルム、外層側接着剤層、金属箔、内層側接着剤層、熱融着樹脂フィルムを必須とする蓄電デバイス用包装材であって、初期接着強度が7N/15mm以上で実用上優れており、電解質溶液浸漬後の接着強度が7N/15mm以上で実用上優れている、蓄電デバイス用包装材。」
(4)甲第8号証
ア 甲第8号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「[0052]<積層体>本発明の積層体は、ポリオレフィン樹脂基材と金属基材を本発明にかかる接着剤組成物で積層したものである。」
「[0072]<初期接着性の評価>積層体を100mm×15mm大きさに切断し、T型剥離試験により接着性を以下の基準により評価した。T型剥離試験はASTM-D1876-61の試験法に準拠し、オリエンテックコーポレーション社製のテンシロンRTM-100を用いて、25℃環境下で、引張速度50mm/分における剥離強度を測定した。金属基材/ポリオレフィン樹脂基材間の剥離強度(N/cm)は5回の試験値の平均値とした。続きを表示(全28行)評価基準は以下のとおりとした。☆(実用上極めて優れる): 8.0N/cm以上◎(実用上特に優れる): 7.5N/cm以上8.0N/cm未満○(実用上優れる): 7.0N/cm以上7.5N/cm未満△(実用可能): 6.5N/cm以上7.0N/cm未満×(実用不可能): 6.5N/cm未満[0073]<85℃耐電解液性の評価>リチウムイオン電池の包装材としての利用性を検討するため耐電解液性の評価を行った。積層体を、100mm×15mm大きさに切断し、電解液[エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート/ジメチルカーボネート=1/1/1(容積比)100gに6フッ化リン酸リチウムを13g添加したもの]に85℃で1日間浸漬させた。その後、積層体を取り出しイオン交換水で洗浄、ペーパーワイパーで水を拭き取り、十分に水分を乾燥させ、T型剥離試験により耐電解液性を以下の基準により評価した。☆(実用上極めて優れる): 8.0N/cm以上◎(実用上特に優れる): 7.5N/cm以上8.0N/cm未満○(実用上優れる): 7.0N/cm以上7.5N/cm未満△(実用可能): 6.5N/cm以上7.0N/cm未満×(実用不可能): 6.5N/cm未満[0074]<成形性の評価>成形性は作製した積層体の限界成形深さ(深絞り性)により評価した。限界成形深さは、以下の方法で実施した。積層体を80×120mm大きさに切断し、冷間成形を行った。具体的には、株式会社アマダ製の張り出し成形機(品番:TP-25C-X2)と、55mm×35mmの口径を有する形成金型(雌型)と、これに対応した成形金型(雄型)を用いて、押え圧0.4MPaで0.5mmの成形深さから0.5mm単位で成形深さを変えて、それぞれ10個のサンプル(積層体)について冷間成形を行った。冷間成形後のサンプルについて、皺やアルミニウム箔にピンホール、クラックが10個のサンプル全てにおいて発生しない最も深い成形深さを、そのサンプルの限界成形深さとした。この限界成形深さから、以下の基準により電池用包装材料の成形性を評価した。評価結果を表1および表2に示す。<評価基準>☆(実用上極めて優れる): 限界成形深さ6.0mm以上◎(実用上特に優れる): 限界成形深さ4.0mm以上6.0mm未満○(実用上優れる): 限界成形深さ3.0mm以上4.0mm未満△(実用可能): 限界成形深さ2.0mm以上3.0mm未満×(実用不可能): 限界成形深さ2.0mm未満」
「[0079]本発明にかかる接着剤組成物は、互いに融点の異なる変性ポリオレフィン、熱可塑性樹脂および硬化剤を含有し、基材との顕著な追従性を示すため、深絞り性などの加工特性に優れる。また、低温での貼り合わせ条件下でもポリオレフィン樹脂基材と金属基材との良好な接着性および耐薬品性を発現することができ、かつ硬化後は優れた耐熱性および耐久性を有する。そのため、本発明の接着剤組成物から形成されるポリオレフィン樹脂基材と金属基材との積層体は、家電外板、家具用素材、建築内装用部材などの分野のみならず、パソコン、携帯電話、ビデオカメラなどに用いられるリチウムイオン電池の包装材(パウチ形態)としても幅広く利用し得るものである。」
表1から、実施例3は、深絞り性、初期接着性及び85℃耐電解液性が、ともに☆であることが読み取れる。
イ 引用発明8
深絞り性、初期接着性及び85℃耐電解液性が、優れた値を示す実施例3に着目すると、甲第8号証には積層体に関して、次の事項が記載されている。
・積層体は、ポリオレフィン樹脂基材と金属基材を接着剤組成物で積層したものである([0052])。
・ポリオレフィン樹脂基材と金属基材との積層体は、リチウム電池の包装材(パウチ形態)としても幅広く利用し得る([0079])。
・[0072]ないし[0074]、表1によると、実施例3の積層体は、限界成形深さが6.0mm以上で実用上極めて優れており、初期接着性が剥離強度で8.0N/cm以上で実用上極めて優れており、耐電解液性が剥離強度で8.0N/cm以上で実用上極めて優れている。
以上のことより、甲第8号証には次の発明(以下、「引用発明8」という。)が記載されている。
「リチウム電池の包装材(パウチ形態)としても幅広く利用し得る、ポリオレフィン樹脂基材と金属基材を接着剤組成物で積層した積層体であって、限界成形深さが6.0mm以上で実用上極めて優れており、初期接着性が剥離強度で8.0N/cm以上で実用上極めて優れており、耐電解液性が剥離強度で8.0N/cm以上で実用上極めて優れている、積層体。」
(5)甲第9号証
ア 甲第9号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「【請求項1】耐熱性樹脂フィルムからなる外層とアルミニウム箔層が積層し、該アルミニウム箔層の外層側とは異なるもう一方の面に熱可塑性樹脂フィルムからなる内層が積層した積層体において、少なくともアルミニウム箔層と内層との間に、カルボキシル基、アミノ基、及び水酸基からなる群より選ばれる、少なくとも1つの反応性官能基を有する反応性官能基含有スチレン系エラストマーと、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する化合物との反応物を含有してなる接着剤層が介在する電池外装用積層体。」
「【0019】(内層の熱可塑性樹脂フィルム)内層の樹脂フィルムとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン-アクリレート共重合体またはアイオノマー樹脂などのフィルムが使用される。これらの樹脂は、ヒートシール性を有し、腐食性の強いリチウム二次電池の電解液等に対する耐薬品性を向上させる役割を担うものである。これらのフィルム厚さとしては、9~100μm程度の厚さが必要である。内層の樹脂フィルムの厚さが9μm未満の場合、ヒートシール強度が低く、電解液等に対する耐食性が低下する可能性がある。一方、100μmを超える厚さのフィルムを使用しても、ヒートシール性及び耐薬品性が向上するわけではなく、体積エネルギーを低下させるため、好ましくない。内層の樹脂フィルムは、一般的に20~80μm程度の厚さのものが使用され、40~80μmの厚さのものを使用することが好ましい。」
「【0055】(1)常態T字剥離強度試験片を長さ150mm×幅15mmに切断し、23℃×50%RH雰囲気下において、テンシロン(株式会社オリエンテック製)を用いて、剥離速度100mm/minでアルミニウム箔層と未延伸ポリプロピレンフィルム層間の90°剥離強度を測定した。」
「【0058】(4)成形性各実施例及び比較例の電池ケース包装材料を110mm×180mmのブランク形状にし、成形高さフリーのストレート金型にて張出して1段成形を行い、各包装材料の成形高さにより、成形性を比較した。使用した金型のポンチ形状は、長辺60mm、短辺45mm、コーナーR=1~2mm、ポンチ肩R=1mm、ダイス肩R=1mmである。【0059】成形高さの評価基準は以下の通りである。◎:5mm以上○:3~5mm△:2~3mm×:2mm未満」
表1から、実施例4は、成形性が◎であり、常態T字剥離強度が15.8N/15mmであり、電解液溶媒浸漬後のT字剥離強度が14.3N/15mmであることが読み取れる。
イ 引用発明9
甲第9号証には電池外装用積層体に関して、次の事項が記載されている。
・外層とアルミニウム箔層が積層し、該アルミニウム箔層の外層側とは異なるもう一方の面に熱可塑性樹脂フィルムからなる内層が積層した積層体において、アルミニウム箔層と内層との間に接着剤層が介在する電池外装用積層体である(請求項1)。
・【0055】、【0058】、【0059】及び表1によると、実施例4の電池外装用積層体は、成形性が5mm以上で評価が◎であり、常態T字剥離強度が15.8N/15mmであり、電解液溶媒浸漬後のT字剥離強度が14.3N/15mmである。
以上のことより、甲第9号証には次の発明(以下、「引用発明9」という。)が記載されている。
「外層とアルミニウム箔層が積層し、該アルミニウム箔層の外層側とは異なるもう一方の面に熱可塑性樹脂フィルムからなる内層が積層した積層体において、アルミニウム箔層と内層との間に接着剤層が介在する電池外装用積層体であって、成形性が5mm以上で評価が◎であり、常態T字剥離強度が15.8N/15mmであり、電解液溶媒浸漬後のT字剥離強度が14.3N/15mmである、電池外装用積層体。」
(6)甲第14号証
ア 甲第14号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。
「[0030]・・・さらには予め数千ppmに相当する水を滴下した電解液に85℃で浸漬処理を行い、過剰のフッ酸が発生している状況下で評価する促進試験も行われるようになってきた。」
「[0296]以下、本発明の第4実施形態に係るリチウムイオン電池用外装材の一例を示して詳細に説明する。本実施形態のリチウムイオン電池用外装材10c(以下、「外装材10c」という。)は、後述する基材層(SB)11cの第1面(一方の面側)に、後述する接着剤層(AD)12c、アルミニウム箔層(AL)13c、腐食防止処理層(CL)14c、熱可塑性樹脂層(TPR)15cが順次積層されており、これらの積層体を熱処理することで得られる外装材である。熱可塑性樹脂層(TPR)15cは、基材層(SB)11c側から、接着性樹脂層(AR)16cとシーラント層(SL)17cが積層されている。すなわち、外装材10cの最内層がシーラント層(SL)17cである。」
「[0368][評価方法](成型白化評価)長辺60mm、短辺40mmからなるダイを用いて、絞り深さ5mmにて深絞り成型を行った後、熱可塑性樹脂層(TPR)の白化現象の有無を評価した。エアシリンダーによる型閉め圧を0.5~0.8MPa、ストローク速度を5mm/秒とした。判定基準は以下の通りとし、△以上を合格とした。続きを表示(全14行)○:白化なし。△:極薄く白化が確認される。×:成型歪部全体に顕著に白化が確認される。[0369](電解液耐性評価)各例で得た外装材シートを100mm×15mmの短冊状に切り出して試験片とした。エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート/ジエチルカーボネート=1/1/1(質量比)に対しLiPF6(六フッ化リン酸リチウム)を1.5Mになるように配合し、さらに1500質量ppm相当の水を配合した電解液に、前記試験片をどぶ付け浸漬し、初期、1週間、2週間、4週間、8週間保存した時の試験片のラミネート強度を測定して評価した。判定基準は以下の通りとし、△以上を合格とした。○:8週間保存時のラミネート強度が初期強度に対して50%以上である。△:8週間保存時のラミネート強度が初期強度に対して20%~50%である。×:8週間保存時のラミネート強度が初期強度に対して20%未満である。」
表7より、実施例4-1では、成型白化が○であり、初期のラミネート強度が15.2N/15mmであり、電解液に2週間浸漬した後のラミネート強度が14.1N/15mmであることが読み取れる。
イ 引用発明14
第4実施形態に着目すると、甲第14号証にはリチウムイオン電池用外装材に関して、次の事項が記載されている。
・アルミニウム箔層、腐食防止処理層、接着性樹脂層とシーラント層が順次積層されたリチウムイオン電池用外装材である([0296])。
・[0368]、[0369]及び表7によると、実施例4-1のリチウムイオン電池用外装材は、絞り深さ5mmにて深絞り成型を行った後に白化がなく、初期のラミネート強度が15.2N/15mmであり、電解液に2週間浸漬した後のラミネート強度が14.1N/15mmである。
以上のことより、甲第14号証には次の発明(以下、「引用発明14」という。)が記載されている。
「アルミニウム箔層、腐食防止処理層、接着性樹脂層とシーラント層が順次積層されたリチウムイオン電池用外装材であって、絞り深さ5mmにて深絞り成型を行った後に白化がなく、初期のラミネート強度が15.2N/15mmであり、電解液に2週間浸漬した後のラミネート強度が14.1N/15mmである、リチウムイオン電池用外装材。」
3 当審の判断
(1)申立理由A(第36条第4項第1号)
ア 特許異議申立人の主張の概要
(ア)硬化開始温度が135℃~150℃で、乾燥温度が100或いは120℃である実施例1,2も、本件特許発明1、2、4~10に含まれる。
しかしながら、実施例1、2のプライマー層はゲル状態(未硬化)のままであり、実施例1、2に係る二次電池パウチフィルムは本件特許明細書に記載された課題が解決できない。
従って、本件特許明細書は、本件特許発明1、2、4~10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。(特許異議申立書95頁3行~96頁9行)
(イ)本件特許明細書には、プライマー層に適用された2液型タイプの有機溶剤型エマルジョンは、ビスフェノールA型エポキシタイプを基に作製されたと記載されているが、具体的なプライマー層の原料は不明である。また、硬化開始温度が135℃~150℃と幅があることと具体的な乾燥工程温度以外の製造条件の開示はない。よって、2液型タイプの有機溶剤型エマルジョンの組成やプラマー層の製造条件を設定するために、当業者に期待し得る程度を越える試行錯誤や複雑高度な実験が必要である。
したがって、発明の詳細な説明は、本件特許発明1~14に係る発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。(特許異議申立書96頁10行~98頁3行)
イ 当審の判断
(ア)の主張について
令和5年7月12日の訂正請求により、請求項1を「硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃であり」に訂正することにより、本件発明1、4ないし10は、実施例1,2を含まないものとなった。
よって、特許異議申立人の上記主張を採用することができない。
(イ)の主張について
発明の詳細な説明には実施例として、プライマー層に適用された2液型タイプの有機溶剤型エマルジョンは、第1溶液(主剤パート)として酸変性ポリプロピレン、第2溶液(硬化剤パート)としてエポキシ系硬化剤、即ちビスフェノールA型エポキシタイプ、触媒として三級アミンを用いることが記載されている(【0073】~【0075】)。
また、比較例として硬化開始温度が175~190℃で乾燥工程温度が100~200℃の条件でプライマー層を作製し、実施例として硬化開始温度が135~150℃で乾燥工程温度が100~200℃の条件でプライマー層を作製し、そのなかから、硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃である実施例3、4が優れた特性を示すことが記載されている(表2)。
したがって、本件発明1、4ないし14を実施する際に上記記載を参酌すれば、過度の試行錯誤や複雑高度な実験の必要性は認められず、発明の詳細な説明は、本件発明1、4ないし14に係る発明を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されており、特許異議申立人の上記主張を採用することができない。
(2)申立理由B(第36条第6項第1号)
ア 特許異議申立人の主張の概要
(ア)発明の詳細な説明には、プライマー層を構成する2液型タイプの有機溶剤型エマルジョンの具体的な組成及び硬化開始温度及び乾燥工程温度以外の具体的な製造条件は記載されていない。
すなわち、発明の詳細な説明の記載が不足しているため、本件特許1~14の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができるといえない。(特許異議申立書98頁5~23行)
(イ)発明の詳細な説明に記載された実施例1~4は、硬化開始温度が135℃~150℃、乾燥工程温度が100℃~150℃である。そうすると、硬化開始温度が135℃未満、乾燥工程温度が100℃未満で所定の効果を奏するか不明である。
よって、硬化開始温度が150℃以下、乾燥工程温度が150℃以下と規定した本件特許発明1の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化することができるとはいえない。(特許異議申立書98頁24行~99頁4行)
イ 当審の判断
(ア)の主張について
発明の詳細な発明によると、本件発明が解決しようとする課題は、初期剥離強度、耐フッ酸性、耐電解液性などとともに、成形性に優れるプライマー層組成物を得ることである(【0010】)。
そして、発明の詳細な説明には実施例として、プライマー層に適用される2液型タイプの有機溶剤型エマルジョンとして、第1溶液(主剤パート)として酸変性ポリプロピレン、第2溶液(硬化剤パート)としてエポキシ系硬化剤を用いることが記載されており(【0073】、【0074】)、さらに、比較例として硬化開始温度が175~190℃で乾燥工程温度が100~200℃の条件でプライマー層を作製し、実施例として硬化開始温度が135~150℃で乾燥工程温度が100~200℃の条件でプライマー層を作製し、そのなかから、硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃である実施例3、4が優れた特性(初期剥離強度、耐フッ酸性、耐電解液性及び成形性)を示すことが記載されている(表2)。
そうすると、上記記載からは、プライマー層組成物として有機溶剤型エマルジョン組成物を用い、当該有機溶剤型エマルジョン組成物が、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含むものであり硬化開始温度が135℃~150℃で、且つ乾燥工程温度を135℃~150℃にすることが、上記課題の解決に必要な手段と認められ、有機溶剤型エマルジョンの具体的な組成及び硬化開始温度及び乾燥工程温度以外の具体的な製造条件は課題を解決する手段とは直接関係しない事項である。
そして、本件発明1は「前記プライマー層組成物として有機溶剤型エマルジョン組成物を用い、前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含んでなり、硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃であり」と特定されているので、本件発明1には、上記課題の解決に必要な手段が反映されているといえ、有機溶剤型エマルジョンの具体的な組成及び硬化開始温度及び乾燥工程温度以外の具体的な製造条件が特定されていなくても、上記課題を解決できるものである。
よって、本件発明1、4ないし14は発明の詳細な説明に記載されており、特許異議申立人の上記主張を採用することができない。
(イ)の主張について
令和5年7月12日の訂正請求により、請求項1を「硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃であり」に訂正することにより、本件発明1は、硬化開始温度が135℃未満、乾燥工程温度が100℃未満を含まないものとなった。
よって、特許異議申立人の上記主張を採用することができない。
(3)申立理由C(甲第1号証を主引例とする第29条第1項、第29条第2項)
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明1を対比すると、次のことがいえる。
a 引用発明1の「基材層」、「アルミニウム箔からなるバリア層」、「接着層」は、それぞれ、本件発明1の「外層」、「金属層」、「プライマー層」に相当する。
したがって、引用発明1の「基材層、バリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる電池用外装体の製造方法」は、本件発明1の「少なくとも外層、金属層、プライマー層、シーラント層、又は少なくとも外層、金属層、プライマー層、溶融押出樹脂層、シーラント層をこれらの順に含む二次電池パウチフィルムの製造方法」に相当する。
b 引用発明1の「水性コート剤」は接着層を形成するものであから、本件発明1の「プライマー層組成物」に対応するものである。
そうすると、引用発明1の「アルミニウム箔からなるバリア層の表面に、」「水性コート剤を塗布し、150℃で乾燥して接着層を形成」すること本件発明1とは、「金属層上にプライマー層組成物を塗布し加熱してプライマー層組成物を乾燥させる乾燥工程」である点で共通する。
但し、乾燥工程において、本件発明1は「プライマー層組成物」の「少なくとも一部を硬化させる」のに対して、引用発明1は「水性コート剤」の少なくとも一部を硬化させることの特定がない点で相違する。
c プライマー層組成物が、本件発明1は「有機溶剤型エマルジョン組成物」であるのに対して、引用発明1は「水性コート剤」である点で相違する。
d 架橋剤は硬化剤のことであるから、引用発明1の「水性コート剤」は「酸変性ポリプロピレン樹脂と、架橋剤とを含有する」ことと本件発明1とは、「前記プライマー層組成物は、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含んでな」る点で共通する。
但し、プライマー層組成物が、本件発明1は「有機溶剤型エマルジョン組成物」であるのに対して、引用発明1は「水性コート剤」である点で相違することは、上述のとおりである。
また、本件発明1は「前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、」「硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃であ」るのに対して、引用発明1はそのような特定がない点で相違する。
e 引用発明1のシーラント層は、接着層の表面にシーラント樹脂を溶融押出して積層しているのであるから、シーラント層を接着層に貼り合わせていない。
そうすると、本件発明1は「シーラント層の貼り合わせの際に熱ラミネート工程を施さない」のに対して、引用発明1は「シーラント層」の貼り合わせを行っていない点で相違する。
上記aないしeによれば、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「少なくとも外層、金属層、プライマー層、シーラント層、又は少なくとも外層、金属層、プライマー層、溶融押出樹脂層、シーラント層をこれらの順に含む二次電池パウチフィルムの製造方法であって、金属層上にプライマー層組成物を塗布し加熱してプライマー層組成物を乾燥させる乾燥工程を含み、前記プライマー層組成物は、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含んでなる、二次電池パウチフィルムの製造方法。」
(相違点1C)
乾燥工程において、本件発明1は「プライマー層組成物」の「少なくとも一部を硬化させる」のに対して、引用発明1は「水性コート剤」の少なくとも一部を硬化させることの特定がない点。
(相違点2C)
プライマー層組成物が、本件発明1は「有機溶剤型エマルジョン組成物」であるのに対して、引用発明1は「水性コート剤」である点。
(相違点3C)
本件発明1は「前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、」「硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃であ」るのに対して、引用発明1はそのような特定がない点。
(相違点4C)
本件発明1は「シーラント層の貼り合わせの際に熱ラミネート工程を施さない」のに対して、引用発明1は「シーラント層」の貼り合わせを行っていない点。
(イ)第29条第1項について
上記のとおり、本件発明1と引用発明1とは、上記相違点1Cないし4Cを有するので、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明でない。
(ウ)第29条第2項について
まず、上記相違点2C及び3Cについて検討する。
甲第1号証には「コート剤としては、環境上の観点から、塗剤の媒体に水性媒体を適用した水性コート剤が好ましく採用される。」(【0047】)と記載されているが、水性コート剤に換えて、有機溶剤型エマルジョン組成物を使用することの記載も無ければ示唆もない。
そして、特許異議申立の証拠として提出された各甲号証(特に甲第2号証、甲第3号証)にも、有機溶剤型エマルジョン組成物の硬化開始温度が135℃~150℃であり、乾燥工程温度が135℃~150℃であることは記載も示唆もされていない。
そうすると、引用発明1において「水性コート剤」に換えて有機溶剤型エマルジョン組成物を使用し、かつ、有機溶剤型エマルジョン組成物の硬化開始温度を135℃~150℃にして、且つ乾燥工程温度を135℃~150℃にすること、すなわち、上記相違点2C及び3Cに係る構成を得ることは、引用発明1に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明4ないし7について
本件発明4ないし7は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明でない。
同様に、本件発明4ないし7は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明8、9について
本件発明8,9は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明1と同様の理由により、本件発明8は、甲第1号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術に基づいて、本件発明9は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明10について
本件発明10は、上記相違点2C及び3Cに係る構成を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件発明11について
(ア)対比
本件発明11と引用発明1aを対比すると、次のことがいえる。
a 引用発明1aの「アルミニウム箔からなるバリア層」、「接着層」は、それぞれ、本件発明11の「金属層」、「プライマー層」に相当する。
したがって、引用発明1aの「アルミニウム箔からなるバリア層、接着層及びシーラント層がこの順に積層されてなる電池用外装体」は、本件発明11の「金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含」む「二次電池パウチフィルム」に相当する。
b 引用発明1aは、外装体を電解液に85℃又は100℃で24時間浸漬した後に、剥離が認められなかったものの、剥離強度が特定されいるわけでない。
したがって、本件発明11の二次電池パウチフィルムは「成形性が6.5mm以上であり、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であり、耐電解液強度が初期剥離強度の90%以上である」のに対して、引用発明1aはそのような特定がない点で相違する。
上記a、bによれば、本件発明11と引用発明1aとは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含む、二次電池パウチフィルム」
(相違点5C)
本件発明11の二次電池パウチフィルムは「成形性が6.5mm以上であり、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であり、耐電解液強度が初期剥離強度の90%以上である」のに対して、引用発明1aはそのような特定がない点。
(イ)第29条第1項について
上記のとおり、本件発明11と引用発明1aとは、上記相違点5Cを有するので、本件発明11は、甲第1号証に記載された発明でない。
(ウ)第29条第2項について
上記相違点5Cについて検討する。
本件発明11の「プライマー層」は、有機溶剤型エマルジョン組成物を用いて形成されたものである。これに対して、引用発明1aの「接着層」は、水性コート剤を用いて形成されたものであることから、本件発明11と引用発明1aでは、そもそもプライマー層の原料が相違する。そうすると、引用発明1aの電池用外装体は、成形性が6.5mm以上、初期剥離強度が14.0N/15mm以上、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上、及び、耐電解液強度が初期剥離強度の90%以上である特性(上記相違点5Cの特性)を示すとは認められない。
そして、甲第1号証には、電池用外装体が、上記相違点5Cの特性を示すことの記載も示唆もない。
また、特許異議申立の証拠として提出された各甲号証(特に甲第4号証、甲第5号証)にも、上記相違点5Cの特性のうち、特に電池用外装体の耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であることについては記載がない。
したがって、上記相違点5Cに係る構成は、引用発明1aに基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件発明11は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 本件発明12、13について
本件発明12,13は、本件発明11の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明11と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明でない。
同様に、本件発明12,13は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
キ 本件発明14について
本件発明14は、本件発明11の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明11と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明、甲第4号証及び甲第5号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立理由D(甲第2号証を主引例とする第29条第1項、第29条第2項)
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明2を対比すると、次のことがいえる。
a 引用発明2の「積層体」は「リチウム電池の包装材(パウチ形態)としても幅広く利用し得る」のであるから、引用発明2の「積層体の製造方法」は、実質的に二次電池パウチフィルムの製造方法であるといえる。
したがって、引用発明2と本件発明1とは、「二次電池パウチフィルムの製造方法」である点で共通する。
但し、二次電池パウチフィルムについて、本件発明1は「少なくとも外層、金属層、プライマー層、シーラント層、又は少なくとも外層、金属層、プライマー層、溶融押出樹脂層、シーラント層をこれらの順に含む」のに対して、引用発明2は「金属基材とポリオレフィン樹脂基材との積層体」であるが、そのような特定がない点で相違する。
b 本件発明1の「プライマー層組成物」は、二次電池パウチフィルムの内側シーラント層と金属層との間に接着力を与えるので(【0038】)、接着剤組成物といえる。
したがって、引用発明2の「接着剤組成物を金属基材に塗布し、100℃で乾燥させ、溶融状態にある接着剤層」を「積層」することと本件発明1とは、「金属層上に接着剤組成物を塗布し加熱して接着剤組成物を乾燥させる乾燥工程」である点で通する。
但し、接着剤組成物が、本件発明1は「プライマー層組成物」であるのに対して、引用発明2はそのような特定がない点で相違する。
また、乾燥工程において、本件発明1は「プライマー層組成物」を「少なくとも一部を硬化させる」のに対して、引用発明2は「接着剤組成物」が「溶融状態」である点で相違する。
c 甲第2号証には「再溶解性の観点から酸変性ポリオレフィン(A)、硬化剤(B)は、有機溶剤(C)に溶解していることが好ましい。」(【0050】)と記載されているから、「無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体、硬化剤および有機溶剤の混合物である接着剤組成物」は、有機溶剤型エマルジョン組成物といえる。
したがって、引用発明2の「無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体、硬化剤および有機溶剤の混合物である接着剤組成物」と本件発明1とは、「前記接着剤組成物として有機溶剤型エマルジョン組成物を用い」る点で共通する。
但し、接着剤組成物が、本件発明1は「プライマー層組成物」であるのに対して、引用発明2はそのような特定がない点で相違することは、上述のとおりである。
d 引用発明2の「接着剤組成物」が「無水マレイン酸変性プロピレン-ブテン共重合体、硬化剤および有機溶剤の混合物である」ことは、本件発明1の「前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含んで」いることに相当する。
但し、本件発明1は「前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、」「硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃であ」るのに対して、引用発明2はそのような特定がない点で相違する。
e 引用発明2は、シーラント層について特定されていない。
したがって、本件発明1は「シーラント層の貼り合わせの際に熱ラミネート工程を施さない」と特定するが、引用発明2はそのような特定がない点で相違する。
上記aないしeによれば、本件発明1と引用発明2とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「二次電池パウチフィルムの製造方法であって、金属層上に接着剤層組成物を塗布し加熱して接着剤層組成物を乾燥させる乾燥工程を含み、前記接着剤組成物として有機溶剤型エマルジョン組成物を用い、前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含んでいる、二次電池パウチフィルムの製造方法。」
(相違点1D)
二次電池パウチフィルムについて、本件発明1は「少なくとも外層、金属層、プライマー層、シーラント層、又は少なくとも外層、金属層、プライマー層、溶融押出樹脂層、シーラント層をこれらの順に含む」のに対して、引用発明2は「金属基材とポリオレフィン樹脂基材との積層体」であるが、そのような特定がない点。
(相違点2D)
接着剤組成物が、本件発明1は「プライマー層組成物」であるのに対して、引用発明2はそのような特定がない点。
(相違点3D)
乾燥工程において、本件発明1は「プライマー層組成物」を「少なくとも一部を硬化させる」のに対して、引用発明2は「接着剤組成物」が「溶融状態」である点。
(相違点4D)
本件発明1は「前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、」「硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃であ」るのに対して、引用発明2はそのような特定がない点。
(相違点5D)
本件発明1は「シーラント層の貼り合わせの際に熱ラミネート工程を施さない」と特定するが、引用発明2はそのような特定がない点。
(イ)第29条第1項について
上記のとおり、本件発明1と引用発明2とは、上記相違点1Dないし5Dを有するので、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明でない。
(ウ)第29条第2項について
まず、上記相違点4Dについて検討する。
引用発明2は「接着剤組成物」を「100℃」で乾燥させている。しかしながら、甲第2号証には、接着剤組成物の硬化開始温度を135℃~150℃にして、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃にすることの記載も示唆もない。
また、特許異議申立の証拠として提出された各甲号証(特に甲第3号証)にも、有機溶剤型エマルジョン組成物の硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃であることは記載も示唆もされていない。
したがって、上記相違点4Dに係る構成は、引用発明2に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明4ないし7、9について
本件発明4ないし7、9は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明1と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明でない。
同様に、本件発明4ないし7、9は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明8について
本件発明8は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明1と同様の理由により、本件発明8は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明10について
本件発明10は、上記相違点4Dに係る構成を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明でない。
同様に、本件発明10は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件発明11について
(ア)対比
本件発明11と引用発明2aを対比すると、次のことがいえる。
a 引用発明2aの「積層体」は「リチウム電池の包装材(パウチ形態)としても幅広く利用し得る」のであるから、引用発明2aの「積層体」は、二次電池パウチフィルムともいえる。
ここで、引用発明2aの「ポリオレフィン樹脂基材」は溶融押出樹脂層ではなく、また、シーラント層であるとの特定もない。
そうすると、引用発明2aの「ポリオレフィン樹脂基材と金属基材を接着剤組成物で積層した積層体」と本件発明11とは、「金属層を含む、二次電池パウチフィルム」である点で共通するものの、二次電池パウチフィルムについて、本件発明11は「金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含」むのに対して、引用発明2aは「ポリオレフィン樹脂基材と金属基材を接着剤組成物で積層した積層体」であるが、そのような特定がない点で相違する。
b 甲第2号証の【0079】及び【0080】の記載を参酌すると、引用発明2aの「接着性」は、本件発明11の「初期剥離強度」に相当する。また、同【0082】の記載を参酌すると、引用発明2aの「耐電解液性」は、本件発明11の「耐電解液強度」に相当する。
そして、引用発明2aは「接着性が7.9N/15mm」であり、「耐電解液性が7.7N/15mm」であるから、「耐電解液性」(耐電解液強度)は「接着性」(初期剥離強度)の97%(7.7/7.9)である。
したがって、本件発明11と引用発明2aとは、「耐電解液強度が初期剥離強度の90%以上」である点で一致する。
但し、本件発明11の二次電池パウチフィルムは「成形性が6.5mm以上であり、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であ」るのに対して、引用発明2aはそのような特定がない点で相違する。
上記a、bによれば、本件発明11と引用発明2aとは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「金属層を含み、耐電解液強度が初期剥離強度の90%以上である、二次電池パウチフィルム。」
(相違点6D)
二次電池パウチフィルムについて、本件発明1は「金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含」むのに対して、引用発明2aは「ポリオレフィン樹脂基材と金属基材を接着剤組成物で積層した積層体」であるが、そのような特定がない点。
(相違点7D)
本件発明11の二次電池パウチフィルムは「成形性が6.5mm以上であり、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であ」るのに対して、引用発明2aはそのような特定がない点。
(イ)判断
上記相違点7Dについて検討する。
甲第2号証には積層体が、成形性が6.5mm以上であり、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上である特性(上記相違点7Dの特性)を示すことの記載も示唆もない。
また、特許異議申立の証拠として提出された甲第6号証を含む各甲号証にも、上記相違点7Dの特性のうち、特に電池用積層体の耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であることについては記載がない。
したがって、上記相違点7Dに係る構成は、引用発明2a及び甲第6号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件発明11は、甲第2号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 本件発明12、13について
本件発明12,13は、本件発明11の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明11と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明及び甲第6号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
キ 本件発明14について
本件発明14は、本件発明11の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明11と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明、甲第1号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)申立理由E(甲第7号証を主引例とする第29条第1項、第29条第2項)
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明7を対比すると、次のことがいえる。
a 引用発明7の「外層側樹脂フィルム」、「金属箔」、「内層側接着剤層」、「熱融着樹脂フィルム」は、それぞれ、本件発明1の「外層」、「金属層」、「プライマー層」、「シーラント層」に相当する。
したがって、引用発明7の「外側から順に、外層側樹脂フィルム、」「金属箔、内層側接着剤層、熱融着樹脂フィルムを必須とする蓄電デバイス用包装材の製造方法」は、本件発明1の「少なくとも外層、金属層、プライマー層、シーラント層、又は少なくとも外層、金属層、プライマー層、溶融押出樹脂層、シーラント層をこれらの順に含む二次電池パウチフィルムの製造方法」に相当する。
b 引用発明7の「接着剤組成物」は、「内層側接着剤層」を作成するためのものであるから、本件発明1の「プライマー層組成物」に相当する。
したがって、引用発明7の「アルミに接着剤組成物を塗工し、100℃で乾燥」すること本件発明1とは、「金属層上にプライマー層組成物を塗布し加熱してプライマー層組成物を乾燥させる乾燥工程」である点で共通する。
但し、乾燥工程において、本件発明1は「プライマー層組成物」の「少なくとも一部を硬化させる」のに対して、引用発明7は「接着剤組成物」の少なくとも一部を硬化させることの特定がない点で相違する。
c 引用発明7の「接着剤組成物」は、「無水マレイン酸変性したプロピレン-ブテン共重合体であるポリオレフィン樹脂(A)と重合体(B)をメチルシクロヘキサン/メチルエチルケトンで溶解させた」たものであるから、「主剤溶液」がエマルジョン化していることが明らかであり、有機溶剤型エマルジョン組成物といえる。
したがって、引用発明7の「接着剤組成物」は、本件発明1の「前記プライマー層組成物として有機溶剤型エマルジョン組成物を用い」ることに相当する。
d 引用発明7の「接着剤組成物」は、「無水マレイン酸変性したプロピレン-ブテン共重合体であるポリオレフィン樹脂(A)と」「硬化剤溶液を配合」していることは、本件発明1の「前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含んでな」ることに相当する。
但し、本件発明1は「前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、」「硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃であ」るのに対して、引用発明7はそのような特定がない点で相違する。
e 引用発明7は「ナイロン/処理アルミラミネートフィルムのアルミに接着剤組成物を塗工し、100℃で乾燥し、未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)である熱融着樹脂フィルムを貼りあわせ」ているので、熱融着樹脂フィルム(シーラント層)の貼り合わせの際に熱ラミネート工程を施していない。
したがって、本件発明1と引用発明7とは、「シーラント層の貼り合わせの際に熱ラミネート工程を施さない」ことで一致する。
上記aないしeによれば、本件発明1と引用発明7とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「少なくとも外層、金属層、プライマー層、シーラント層、又は少なくとも外層、金属層、プライマー層、溶融押出樹脂層、シーラント層をこれらの順に含む二次電池パウチフィルムの製造方法であって、金属層上にプライマー層組成物を塗布し加熱してプライマー層組成物を乾燥させる乾燥工程を含み、前記プライマー層組成物として有機溶剤型エマルジョン組成物を用い、前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、酸変性ポリプロピレン及び硬化剤を含んでなり、当該製造方法は、シーラント層の貼り合わせの際に熱ラミネート工程を施さない、二次電池パウチフィルムの製造方法。」
(相違点1E)
乾燥工程において、本件発明1は「プライマー層組成物」の「少なくとも一部を硬化させる」のに対して、引用発明7は「接着剤組成物」の少なくとも一部を硬化させることの特定がない点。
(相違点2E)
本件発明1は「前記有機溶剤型エマルジョン組成物は、」「硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃であ」るのに対して、引用発明7はそのような特定がない点。
(イ)第29条第1項について
上記のとおり、本件発明1と引用発明7とは、上記相違点1E、2Eを有するので、本件発明1は、甲第7号証に記載された発明でない。
(ウ)第29条第2項について
まず、上記相違点2Eについて検討する。
引用発明7は「接着剤組成物」を「100℃」で乾燥させている。しかしながら、甲第7号証には、接着剤組成物の硬化開始温度を135℃~150℃にして、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃にすることの記載も示唆もない。
また、特許異議申立の証拠として提出された各甲号証(特に甲第1号証、甲第3号証、甲第8号証)にも、有機溶剤型エマルジョン組成物の硬化開始温度が135℃~150℃であり、且つ乾燥工程温度が135℃~150℃であることは記載も示唆もされていない。
したがって、上記相違点2Eに係る構成は、引用発明7に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明4ないし6について
本件発明4ないし6は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明1と同様の理由により、甲第7号証に記載された発明でない。
同様に、本件発明4ないし6は、甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明7ないし9について
本件発明7ないし9は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明1と同様の理由により、本件発明7,9は、甲第7号証に記載された発明及び甲第8号証に記載された技術に基づいて、本件発明8は、甲第7号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明10について
本件発明10は、上記相違点2Eに係る構成を備えるものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲第7号証に記載された発明、甲第1号証及び甲第8号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件発明11について
(ア)対比
本件発明11と引用発明7aを対比すると、次のことがいえる。
a 引用発明7aの「金属箔」、「内層側接着剤層」、「熱融着樹脂フィルム」は、それぞれ、本件発明11の「金属層」、「プライマー層」、「シーラント層」に相当する。
したがって、引用発明7aの「外側から順に、外層側樹脂フィルム、外層側接着剤層、金属箔、内層側接着剤層、熱融着樹脂フィルムを必須とする蓄電デバイス用包装材」は、本件発明11の「金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含」む「二次電池パウチフィルム」に相当する。
b 引用発明7aの「初期接着強度」、「電解質溶液浸漬後の接着強度」は、それぞれ、本件発明11の「初期剥離強度」、「耐電解液強度」に相当する。
しかしながら、引用発明7aは「初期接着強度が7N/15mm以上で実用上優れて」いると特定するものの初期接着強度の値は具体的に示されていない。そうすると、引用発明7aは「初期接着強度が7N/15mm以上」と特定されているが、「初期接着強度」が14.0N/15mm以上である点は特定されていない。
同様に、引用発明7aは「電解質溶液浸漬後の接着強度が7N/15mm以上」と特定するものの電解質溶液浸漬後の接着強度の値は具体的に示されていない。そうすると、引用発明7aは「電解質溶液浸漬後の接着強度が7N/15mm以上」と特定されているが、「電解質溶液浸漬後の接着強度」が「初期接着強度」の何%であるかは特定できない。
したがって、本件発明11の二次電池パウチフィルムは「成形性が6.5mm以上であり、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であり、耐電解液強度が初期剥離強度の90%以上である」のに対して、引用発明7aはそのような特定がない点で相違する。
上記a、bによれば、本件発明11と引用発明7aとは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含む、二次電池パウチフィルム」
(相違点3E)
本件発明11の二次電池パウチフィルムは「成形性が6.5mm以上であり、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であり、耐電解液強度が初期剥離強度の90%以上である」のに対して、引用発明7aはそのような特定がない点。
(イ)第29条第1項について
上記のとおり、本件発明11と引用発明7aとは、上記相違点3Eを有するので、本件発明11は、甲第7号証に記載された発明でない。
(ウ)第29条第2項について
上記相違点3Eについて検討する。
甲第7号証には、蓄電デバイス用包装材が、上記相違点3Eの特性を示すことの記載も示唆もない。
また、特許異議申立の証拠として提出された各甲号証(特に甲第8号証)にも、上記相違点3Eの特性のうち、特に蓄電デバイス用包装材の耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であることについては記載がない。
したがって、上記相違点3Eに係る構成は、引用発明7aに基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件発明11は、甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 本件発明12、13について
本件発明12,13は、本件発明11の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明11と同様の理由により、甲第7号証に記載された発明でない。
同様に、本件発明12,13は、甲第7号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
キ 本件発明14について
本件発明14は、本件発明11の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明11と同様の理由により、甲第7号証に記載された発明、甲第1号証及び甲第8号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)申立理由F(甲第8号証を主引例とする第29条第1項、第29条第2項)
ア 本件発明11について
(ア)対比
本件発明11と引用発明8を対比すると、次のことがいえる。
a 引用発明8の「積層体」は「リチウム電池の包装材(パウチ形態)としても幅広く利用し得る」のであるから、引用発明8の「積層体」は、二次電池パウチフィルムともいえる。
ここで、引用発明8の「ポリオレフィン樹脂基材」は溶融押出樹脂層ではなく、また、シーラント層であるとの特定もない。
そうすると、引用発明8の「ポリオレフィン樹脂基材と金属基材を接着剤組成物で積層した積層体」と本件発明11とは、「金属層を含む、二次電池パウチフィルム」である点で共通するものの、二次電池パウチフィルムについて、本件発明11は「金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含」むのに対して、引用発明8は「ポリオレフィン樹脂基材と金属基材を接着剤組成物で積層した積層体」であるが、そのような特定がない点で相違する。
b 引用発明8の「限界成形深さ」、「初期接着性」、「耐電解液性」は、それぞれ、本件発明11の「成形性」、「初期剥離強度」、「耐電解液強度」に相当する。
しかしながら、引用発明8は「限界成形深さが6.0mm以上で実用上極めて優れて」いると特定するものの限界成形深さの値は具体的に示されていない。そうすると、引用発明8は「限界成形深さが6.0mm以上」と特定されているが、「限界成形深さ」が6.5mm以上である点は特定されていない。
同様に、引用発明8は「初期接着性が剥離強度で8.0N/cm以上で実用上極めて優れて」いると特定するものの剥離強度の値は具体的に示されていない。そうすると、引用発明8は「初期接着性が剥離強度で8.0N/cm以上」と特定されているが、「初期接着性が剥離強度」で14.0N/15mm以上である点は特定されていない。
さらに、引用発明8は「耐電解液性が剥離強度で8.0N/cm以上で実用上極めて優れている」と特定するものの剥離強度の値は具体的に示されていない。そうすると、引用発明8は「耐電解液性が剥離強度で8.0N/cm以上」と特定されているが、「耐電解液性」の「剥離強度」が、「初期接着性」の「剥離強度」の何%であるかは特定できない。
したがって、本件発明11の二次電池パウチフィルムは「成形性が6.5mm以上であり、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であり、耐電解液強度が初期剥離強度の90%以上である」のに対して、引用発明8はそのような特定がない点で相違する。
上記a、bによれば、本件発明11と引用発明8とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「金属層を含む、二次電池パウチフィルム。」
(相違点1F)
二次電池パウチフィルムについて、本件発明1は「金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含」むのに対して、引用発明8は「ポリオレフィン樹脂基材と金属基材を接着剤組成物で積層した積層体」であるが、そのような特定がない点。
(相違点2F)
本件発明11の二次電池パウチフィルムは「成形性が6.5mm以上であり、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であり、耐電解液強度が初期剥離強度の90%以上である」のに対して、引用発明8はそのような特定がない点。
(イ)第29条第1項について
上記のとおり、本件発明11と引用発明8とは、上記相違点1F、2Fを有するので、本件発明11は、甲第8号証に記載された発明でない。
(ウ)第29条第2項について
上記相違点2Fについて検討する。
甲第8号証には積層体が、上記相違点2Fの特性を示すことの記載も示唆もない。
そして、甲第14号証には、「さらには予め数千ppmに相当する水を滴下した電解液に85℃で浸漬処理を行い、過剰のフッ酸が発生している状況下で評価する促進試験も行われるようになってきた。」([0030])と記載されているものの、耐フッ酸強度について具体的に測定したことは記載されていない。
また、特許異議申立の証拠として提出された他の各甲号証にも、上記相違点2Fの特性のうち、特に電池用積層体の耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であることについては記載がない。
したがって、上記相違点2Fに係る構成は、引用発明8に基づいて、又は、引用発明8及び甲第14号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明11は、甲第8号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第8号証に記載された発明及び甲第14号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明12、13について
本件発明12,13は、本件発明11の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明11と同様の理由により、甲第8号証に記載された発明でない。
同様に、本件発明12,13は、甲第8号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第8号証に記載された発明及び甲第14号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)申立理由G(甲第9号証を主引例とする第29条第1項、第29条第2項)
ア 本件発明11について
(ア)対比
本件発明11と引用発明9を対比すると、次のことがいえる。
a 甲第9号証には、内層の樹脂フィルムはヒートシール性を有することが記載されているので(【0019】)、引用発明9の「熱可塑性樹脂フィルム」は、本件発明11の「シーラント層」に相当する。そうすると、引用発明9の「アルミニウム箔層」、「接着剤層」は、それぞれ、本件発明11の「金属層」、「プライマー層」に相当する。
したがって、引用発明9の「アルミニウム箔層の」「一方の面に熱可塑性樹脂フィルムからなる内層が積層した積層体において、アルミニウム箔層と内層との間に接着剤層が介在する電池外装用積層体」は、本件発明11の「金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含」む「二次電池パウチフィルム」に相当する。
b 引用発明9の「常態T字剥離強度」、「電解液溶媒浸漬後のT字剥離強度」は、それぞれ、本件発明11の「初期剥離強度」、「耐電解液強度」に相当する。
そうすると、引用発明9の「常態T字剥離強度が15.8N/15mm」であることは、本件発明11の「初期剥離強度が14.0N/15mm以上」であることに相当する。
また、引用発明9は「常態T字剥離強度が15.8N/cm」、「電解液溶媒浸漬後のT字剥離強度が14.3N/cm」であるから、「電解液溶媒浸漬後のT字剥離強度」が「常態T字剥離強度」の91%(14.3/15.8)である。このことは、本件発明11の「耐電解液強度が初期剥離強度の90%以上」であることに相当する。
ここで、引用発明9は「成形性が5mm以上で評価が◎であり」と特定するものの限界成形深さの値は具体的に示されていない。そうすると、引用発明9は「成形性が5mm以上」と特定されているが、「限界成形深さ」が6.5mm以上である点は特定されていない。
したがって、本件発明11の二次電池パウチフィルムは「成形性が6.5mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であ」るのに対して、引用発明9はそのような特定がない点で相違する。
上記a、bによれば、本件発明11と引用発明9とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含み、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、耐電解液強度が初期剥離強度の90%以上であることを特徴とする、二次電池パウチフィルム。」
(相違点1G)
本件発明11の二次電池パウチフィルムは「成形性が6.5mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であ」るのに対して、引用発明9はそのような特定がない点。
(イ)第29条第1項について
上記のとおり、本件発明11と引用発明9とは、上記相違点1Gを有するので、本件発明11は、甲第9号証に記載された発明でない。
(ウ)第29条第2項について
上記相違点1Gについて検討する。
甲第9号証には電池外装用積層体が、上記相違点1Gの特性を示すことの記載も示唆もない。
そして、甲第14号証には、「さらには予め数千ppmに相当する水を滴下した電解液に85℃で浸漬処理を行い、過剰のフッ酸が発生している状況下で評価する促進試験も行われるようになってきた。」([0030])と記載されているものの、耐フッ酸強度について具体的に測定したことは記載されていない。
また、特許異議申立の証拠として提出された他の各甲号証(特に甲第10号証ないし甲第13号証、甲第15号証)にも、上記相違点1Gの特性のうち、特に電池外装用積層体の耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であることについては記載がない。
したがって、上記相違点1Gに係る構成は、引用発明9及び甲第14号証に記載された技術に基づいて、又は、引用発明9及び甲第10号証ないし甲第14号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件発明11は、甲第9号証に記載された発明及び甲第14号証に記載された技術に基づいて、又は、甲第9号証に記載された発明及び甲第10号証ないし甲第14号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明12、13について
本件発明12,13は、本件発明11の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明11と同様の理由により、甲第9号証に記載された発明でない。
同様に、本件発明12,13は、甲第9号証に記載された発明、甲第14号証及び甲第15号証に記載された技術に基づいて、又は、甲第9号証に記載された発明及び甲第10号証ないし甲第15号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(8)申立理由H(甲第14号証を主引例とする第29条第1項、第29条第2項)
ア 本件発明11について
(ア)対比
本件発明11と引用発明14を対比すると、次のことがいえる。
a 引用発明14の「アルミニウム箔層」、「接着性樹脂層」は、それぞれ、本件発明11の「金属層」、「プライマー層」に相当する。
したがって、引用発明14の「アルミニウム箔層、腐食防止処理層、接着性樹脂層とシーラント層が順次積層されたリチウムイオン電池用外装材」は、本件発明11の「金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含」む「二次電池パウチフィルム」に相当する。
b 引用発明14の「初期のラミネート強度」、「電解液に2週間浸漬した後のラミネート強度」は、それぞれ、本件発明11の「初期剥離強度」、「耐電解液強度」に相当する。
そうすると、引用発明14の「初期のラミネート強度が15.2N/15mm」であることは、本件発明11の「初期剥離強度が14.0N/15mm以上」であることに相当する。
また、引用発明14は「初期のラミネート強度が15.2N/15mmであり」、「電解液に2週間浸漬した後のラミネート強度が14.1N/15mm」であるから、「電解液に2週間浸漬した後のラミネート強度」が「初期のラミネート強度」の94%(14.1/15.2)である。このことは、本件発明11の「耐電解液強度が初期剥離強度の90%以上」であることに相当する。
ここで、引用発明14は「絞り深さ5mmにて深絞り成型を行った後に白化がなく」と特定するものの絞り深さの限界値は具体的に示されていない。そうすると、引用発明14は「絞り深さ5mm」と特定されているが、「絞り深さ」が6.5mm以上である点は特定されていない。
したがって、本件発明11の二次電池パウチフィルムは「成形性が6.5mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であ」るのに対して、引用発明14はそのような特定がない点で相違する。
上記a、bによれば、本件発明11と引用発明14とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「金属層と溶融押出樹脂層又はシーラント層との間に挟まれるプライマー層を含み、初期剥離強度が14.0N/15mm以上であり、耐電解液強度が初期剥離強度の90%以上であることを特徴とする、二次電池パウチフィルム。」
(相違点1H)
本件発明11の二次電池パウチフィルムは「成形性が6.5mm以上であり、耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であ」るのに対して、引用発明14はそのような特定がない点。
(イ)第29条第1項について
上記のとおり、本件発明11と引用発明14とは、上記相違点1Hを有するので、本件発明11は、甲第9号証に記載された発明でない。
(ウ)第29条第2項について
上記相違点1Hについて検討する。
甲第14号証にはリチウムイオン電池用外装材が、上記相違点1Hの特性を示すことの記載も示唆もない。
そして、甲第14号証には、「さらには予め数千ppmに相当する水を滴下した電解液に85℃で浸漬処理を行い、過剰のフッ酸が発生している状況下で評価する促進試験も行われるようになってきた。」([0030])と記載されているものの、耐フッ酸強度について具体的に測定したことは記載されていない。
また、特許異議申立の証拠として提出された他の各甲号証(特に甲第10号証ないし甲第13号証、甲第15号証)にも、上記相違点1Hの特性のうち、特にリチウムイオン電池用外装体の耐フッ酸強度が5.0N/15mm以上であることについては記載がない。
したがって、上記相違点1Hに係る構成は、引用発明14に基づいて、又は、引用発明14及び甲第10号証ないし甲第13号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、本件発明11は、甲第14号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第14号証に記載された発明及び甲第10号証ないし甲第13号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明12、13について
本件発明12,13は、本件発明11の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明11と同様の理由により、甲第14号証に記載された発明でない。
同様に、本件発明12,13は、甲第14号証に記載された発明及び甲第15号証に記載された技術に基づいて、又は、甲第14号証に記載された発明、甲第10号証ないし甲第13号証及び甲第15号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(9)まとめ
したがって、特許異議申立人の申立理由AないしHにかかる主張は、採用することができない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては、請求項1、4ないし14に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に請求項1、4ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2及び3に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による、請求項2及び3に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701319