2025-700125
セルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法及び装置
- 審判番号
- 2025-700125
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-009313外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7524370
- 請求日
- 2025年01月28日
- 審決日
- 2025年05月12日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ユルチョン ケミカル カンパニー,リミティド
- 【権利者代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 【異議申立人】松山 徳子
- 分類
- P1651.121-Y (B29C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第113条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続等の経緯
特許第7524370号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願(特願2023-9313号)は、令和5年1月25日の出願であって、令和6年7月19日にその特許権の設定登録がされ、令和6年7月29日に特許掲載公報が発行された。
本件特許について、特許掲載公報の発行の日から6月以内である令和7年1月28日に特許異議申立人 松山 徳子(以下「特許異議申立人」という。)から請求項1~10に対して特許異議の申立てがされた。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、請求項に付す番号を使って、それぞれ、「本件特許発明1」などという。)は、特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】熱加圧ラミネートステップの前に、ベースシートの一側面に接着剤を塗布する接着層形成ステップと、前記接着層を硬化させる接着層乾燥ステップと、前記硬化させた接着層の一側面に素材シートを熱加圧してラミネートする熱加圧ラミネートステップと、続きを表示(全48行)前記ラミネートされたものを無圧力状態で熱処理する無圧力熱処理ステップと、無圧力熱処理ステップの後に、前記熱処理されたラミネート物を冷却するラミネート物冷却ステップと、を含み、前記無圧力熱処理ステップは、少なくとも1つの誘導加熱ロールを用いて、ラミネート物の移送速度に対応する熱エネルギーを該ラミネート物に供給することを特徴とする、セルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法。【請求項2】前記無圧力熱処理ステップは、前記ラミネート物の移送速度に対応して誘導加熱ロールの個数を調節することを特徴とする、請求項1に記載のセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法。【請求項3】前記無圧力熱処理ステップは、前記誘導加熱ロールとラミネート物との接触面積を調節して、該ラミネート物に供給する熱エネルギーを調節することを特徴とする、請求項1に記載のセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法。【請求項4】前記無圧力熱処理ステップは、前記ラミネート物に供給するエネルギーを熱処理目標温度まで漸次上昇させる温度上昇過程と、前記ラミネート物の温度が熱処理目標温度まで上昇すると、前記ラミネート物に供給する熱エネルギーを熱処理目標温度から漸次下降させる温度下降過程と、を含む、請求項1に記載のセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法。【請求項5】前記無圧力熱処理ステップは、複数の誘導加熱ロールを用いて、前記ラミネート物に熱エネルギーを供給し、前記温度上昇過程に配置された誘導加熱ロールの温度は漸次上昇するように制御し、前記温度下降過程に配置された誘導加熱ロールの温度は漸次下降するように制御することを特徴とする、請求項4に記載のセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法。【請求項6】前記無圧力熱処理ステップは、前記誘導加熱ロールの位置を調節して、前記ラミネート物と誘導加熱ロールとの接触面積及びラミネート物の移送経路のうちの少なくとも一つを調節することを特徴とする、請求項5に記載のセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法。【請求項7】ベースシートと素材シートとを熱加圧方式で接着してラミネートする少なくとも一対のサーマルロール(Thermal roll)を有するラミネートモジュールと、前記ラミネートモジュールで接着されたラミネート物が流入すると、流入したラミネート物と無圧力方式で面接触して当該ラミネート物を熱処理する少なくとも1つの誘導加熱ロールを有する無圧力熱処理モジュールと、前記誘導加熱ロールのオン/オフ動作及び温度を制御する発熱制御部と、を含み、前記無圧力熱処理モジュールは、前記ラミネート物の移送速度、前記無圧力熱処理モジュールの内部に構成された誘導加熱ロールの個数及び配置、前記ラミネート物との接触面積のうちの少なくとも一つに基づいて、当該誘導加熱ロールのオン/オフ動作及び温度を制御する前記発熱制御部を含むことを特徴とする、セルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造装置。【請求項8】前記無圧力熱処理モジュールは、複数の誘導加熱ロールがラミネート物と面接触するように配置され、前記発熱制御部は、複数の誘導加熱ロールを少なくとも2つの区域に区分し、各区域別に当該誘導加熱ロールの温度を制御することを特徴とする、請求項7に記載のセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造装置。【請求項9】前記発熱制御部は、前記ラミネート物が流入する流入側に隣接する少なくとも一部の誘導加熱ロールは流入側から順次温度が上昇するように制御し、前記ラミネート物が排出される排出側に隣接する少なくとも他の一部の誘導加熱ロールは排出側に向かって順次温度が下降するように制御することを特徴とする、請求項8に記載のセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造装置。【請求項10】前記無圧力熱処理モジュールは、位置が一定に固定されるように構成された少なくとも1つの固定式誘導加熱ロールと、往復移動可能に構成された少なくとも1つの移動式誘導加熱ロールと、を含み、前記発熱制御部は、前記移動式誘導加熱ロールの位置を制御して、前記ラミネート物と面接触する誘導加熱ロールの個数及び前記ラミネート物の移送距離のうちの少なくとも一つを調節することを特徴とする、請求項7に記載のセルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造装置。」
第3 申立理由の概要及び証拠方法
特許異議申立人が主張する特許異議の申立理由、及び、特許異議申立人が提出した証拠方法は、概略以下のとおりである。
1 特許異議の申立理由
(進歩性欠如)本件特許発明1~10は、下記甲第1号証~甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1~10に係る特許は、特許法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 特許異議申立人が提出した証拠方法
第4 当合議体の判断
1 甲1に記載された発明
(1)甲1には、以下の電池用包装材料の製造方法の発明(甲1の【0070】~【0077】を参照のこと。以下「甲1製造方法発明」という。)が記載されていると認められる。
「金属層3を構成する金属箔に接着層2を構成する接着剤を溶融押し出し又は溶液コーティングにより積層して乾燥させた後、接着層2を構成する接着剤の融点以上の温度で焼付けることにより形成された、金属層3と接着層2とが積層された多層フィルムを予め用意し、加熱した金属層3と接着層2に基材層1を重ね合わせて基材層1と金属層3で接着層2を加熱ロールにより挟持しながら熱圧着して、サーマルラミネート法により、基材層1、接着層2、金属層3が順に積層された積層体Aを形成し、次いで、積層体Aの金属層3上に、シーラント層4を積層し、さらに、接着層2の接着性を強固にするために、150~250℃で1~10時間の加熱条件で、熱ロール接触、熱風、近又は遠赤外線照射、誘電加熱、熱抵抗加熱等の加熱処理を行う、パウチ型電池用包装材料の製造方法。」
(2)また、甲1には、「甲1製造方法発明でパウチ型電池用包装材料を製造するための製造装置。」の発明(以下「甲1製造装置発明」という。)も記載されていると認められる。
2 本件特許発明1について
(1)対比・一致点・相違点
本件特許発明1と甲1製造方法発明を対比すると、両者は、下記アの点において一致し、また、下記イの点で相違する。
ア 一致点
「熱加圧ラミネートステップの前に、ベースシートの一側面に接着剤を塗布する接着層形成ステップと、前記接着層を硬化させる接着層乾燥ステップと、前記硬化させた接着層の一側面に素材シートを熱加圧してラミネートする熱加圧ラミネートステップと、を含む、セルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造方法。」
イ 相違点
(相違点1)
本件特許発明1は、「前記ラミネートされたものを無圧力状態で熱処理する無圧力熱処理ステップ」を含み、「前記無圧力熱処理ステップは、少なくとも1つの誘導加熱ロールを用いて、ラミネート物の移送速度に対応する熱エネルギーを該ラミネート物に供給する」のに対し、甲1製造方法発明は、そのような構成を有していない点。
なお、特許異議申立人は、特許異議申立書の20頁(ii)欄において「甲1発明は、積層体を熱ロール接触や誘導加熱による加熱処理に供してもよいことが記載されている」と主張するが、甲1製造方法発明は「接着層2の接着性を強固にするために、150~250℃で1~10時間の加熱条件で、熱ロール接触、熱風、近又は遠赤外線照射、誘電加熱、熱抵抗加熱等の加熱処理を行う」(下線部は当合議体が付した。以下同じ。)という構成を備えるものであるところ、「熱ロール」は必ずしも「誘導加熱ロール」ではなく、また、「誘電加熱」は「誘導加熱」ではないから、「少なくとも1つの誘導加熱ロールを用いて」の点も相違点となる。
(相違点2)
本件特許発明1は、「無圧力熱処理ステップの後に、前記熱処理されたラミネート物を冷却するラミネート物冷却ステップ」を含むのに対し、甲1発明は、そのような構成を有していない点。
(2)判断
事案に鑑み、上記相違点1について検討する。
甲1には、甲1製造方法発明において上記相違点1に係る構成を採用することを動機付けるような記載又は示唆はない。また、甲2には、上記相違点1に係る構成は記載されていない。甲2の【0103】には「他の工程としては、例えば、第2工程後の積層体IIを、第2基材の融点以上に加熱したラミネートロールに加圧せずに接触させ、第2基材とその他の層との接着性を向上させる工程等が挙げられる」と記載されているものの、「少なくとも1つの誘導加熱ロールを用いて、ラミネート物の移送速度に対応する熱エネルギーを該ラミネート物に供給する」ことは記載されていない。さらに、甲2に記載の「積層体II」は、フレキシブルプリント基板用の積層体であって(甲2の【0001】等参照。)、接着層を有していない(甲2の【請求項1】、【請求項2】等参照。)から、甲2の【0103】に記載された技術事項を、甲1に記載された、接着層を有する、パウチ型電池用包装材料の製造方法の発明に適用することは想定されないというべきである。
したがって、甲1製造方法発明において、相違点1に係る本件特許発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
(3)小括
本件特許発明1は、甲1及び甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件特許発明2~6について
本件特許の特許請求の範囲の請求項2~6は、いずれも、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであって、本件特許発明2~6は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。そうすると、上記2のとおり、本件特許発明1が、甲1及び甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明2~6も、甲1及び甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
4 本件特許発明7について
(1)対比・一致点・相違点
本件特許発明7と甲1製造装置発明を対比すると、両者は、下記アの点において一致し、また、下記イの点で相違する。
ア 一致点
「ベースシートと素材シートとを熱加圧方式で接着してラミネートする少なくとも一対のサーマルロール(Thermal roll)を有するラミネートモジュールを含む、セルタイプバッテリーパウチ用ラミネートフィルムの製造装置。」
イ 相違点
(相違点3)
本件特許発明7は、「前記ラミネートモジュールで接着されたラミネート物が流入すると、流入したラミネート物と無圧力方式で面接触して当該ラミネート物を熱処理する少なくとも1つの誘導加熱ロールを有する無圧力熱処理モジュールと、前記誘導加熱ロールのオン/オフ動作及び温度を制御する発熱制御部と、を含み、前記無圧力熱処理モジュールは、前記ラミネート物の移送速度、前記無圧力熱処理モジュールの内部に構成された誘導加熱ロールの個数及び配置、前記ラミネート物との接触面積のうちの少なくとも一つに基づいて、当該誘導加熱ロールのオン/オフ動作及び温度を制御する前記発熱制御部を含む」のに対し、甲1製造装置発明は、そのような構成を有していない点。
(2)判断
上記相違点3について検討する。
甲1には、甲1製造装置発明において上記相違点3に係る構成を採用することを動機付けるような記載又は示唆はない。また、甲2には、上記相違点3に係る構成は記載されていない。甲2の【0103】には「他の工程としては、例えば、第2工程後の積層体IIを、第2基材の融点以上に加熱したラミネートロールに加圧せずに接触させ、第2基材とその他の層との接着性を向上させる工程等が挙げられる」と記載されているものの、「無圧力熱処理モジュールは、ラミネート物の移送速度、無圧力熱処理モジュールの内部に構成された誘導加熱ロールの個数及び配置、ラミネート物との接触面積のうちの少なくとも一つに基づいて、当該誘導加熱ロールのオン/オフ動作及び温度を制御する発熱制御部を含む」ことは記載されていない。さらに、甲2に記載の「積層体II」には接着層がなく(甲2の【請求項1】、【請求項2】等参照。)、また、フレキシブルプリント基板用の積層体である(甲2の【0001】等参照。)から、甲2の【0103】に記載された技術事項を、甲1に記載された、接着層を有する、パウチ型電池用包装材料の製造装置の発明に適用することは想定されないというべきである。
したがって、甲1製造装置発明において、相違点3に係る本件特許発明7の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
(3)小括
本件特許発明7は、甲1及び甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 本件特許発明8~10について
本件特許の特許請求の範囲の請求項8~10は、いずれも、請求項7を直接的又は間接的に引用するものであって、本件特許発明8~10は、本件特許発明7の構成を全て具備し、これに限定を加えたものに該当する。そうすると、上記4のとおり、本件特許発明7が、甲1及び甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない以上、本件特許発明8~10も、甲1及び甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
6 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1~10に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものではない。
第5 むすび
請求項1~10に係る特許は、いずれも、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び証拠によっては取り消すことはできない。
また、他に請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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