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特許異議申立

2026-700436

ラミネート型電池、電池モジュール、およびラミネート型電池の製造方法

審判番号
2026-700436
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-180636
登録番号
7771928
請求日
2026年05月15日
審決日
2026年07月08日
公報発行日
2026年08月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】トヨタ自動車株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人太陽国際特許事務所
  • 【異議申立人】松山 徳子
審判長/審判官
  • 審判長 ▲高▼橋 真之
  • 審判官 久々宇 篤志
  • 審判官 涌井 智則
分類
P1652.113-Y (H01M) / P1652.121-Y (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
データ出所
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特許第7771928号発明「ラミネート型電池、電池モジュール、およびラミネート型電池の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7771928号の請求項1~3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7771928号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願(特願2022-180636号)は、2022年(令和4年)11月10日に出願され、令和7年11月10日にその特許権の設定登録がされ、同年同月18日に特許掲載公報が発行されたものである。 そして、本件特許について、令和8年5月15日に特許異議申立人 松山 徳子(以下「申立人」という。)から請求項1~3に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~3に係る発明(以下、請求項に付す番号を使って、それぞれ、「本件特許発明1」などといい、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 電池要素と 前記電池要素を封入するラミネート外装体と、を有するラミネート型電池であって、 前記ラミネート外装体は、少なくとも樹脂層と金属層とが積層されてなり、 前記電池要素は、角度が80°以上100°以下である略直角形状部と、水平形状である水平部と、を含み、 前記電池要素の前記略直角形状部と対向する前記ラミネート外装体の前記金属層のうち、80%以上の箇所の前記金属層において、該金属層の厚みT1が、前記電池要素の前記水平部と対向する前記ラミネート外装体の前記金属層の厚みT2に対し、下記式の関係を満たし、 |T1-T2|/T2×100(%)≦10% 式 前記ラミネート外装体における、前記電池要素の前記水平部と対向する位置であって、且つ前記電池要素の前記略直角形状部と対向する位置から1mmの位置での前記金属層の厚みT3と、前記電池要素の前記水平部と対向する前記ラミネート外装体の前記金属層の厚みT2と、の差の比率(|T3-T2|/T2×100(%))が10%以内である、 ラミネート型電池。 【請求項2】 前記ラミネート外装体は、前記電池要素の前記略直角形状部と対向する位置において、山折り状の折り曲げ部を3か所有し、且つ谷折り状の折り曲げ部を1カ所有する、請求項1に記載のラミネート型電池。 【請求項3】 厚さ方向に積層された複数のラミネート型電池を有する電池モジュールであって、 前記ラミネート型電池は、請求項1に記載のラミネート型電池である、電池モジュール。」 第3 申立人が提出した証拠方法及び申立理由 1 申立人が提出した証拠方法 申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)とともに証拠として、以下に示す甲第1号証を提出した。 甲第1号証:特開2022-126646号公報(以下「甲1」という。) 2 申立理由の概要 申立人は、概略、下記(1)~(2)の特許異議申立理由を主張している。申立理由の番号は当合議体が付与したものである。 (1)申立理由1(新規性欠如) 本件特許発明1~3は、甲1発明に該当するから特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。 (2)申立理由2(進歩性欠如) 本件特許発明1~3は、甲1発明に基づき、当業者が容易に想到できたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 第4 当合議体の判断 1 甲1の記載事項及び甲1発明 甲1には、図面とともに、以下の記載がある(下線は、合議体が付与した。以下、同様。)。 「【請求項2】 電極体と、 前記電極体を封止する外装体とを備え、 前記外装体は、開口部を有するように前記電極体に巻き付けられるフィルム状の外装部材、及び、前記開口部に嵌め込まれる蓋体を含み、 前記外装体は、前記外装部材が前記電極体に巻き付けられた状態で互いに向き合う面同士が接合することによって封止された第1封止部を含み、 前記第1封止部の付け根部分は、前記外装体において、第1面と第2面との境界に形成されており、 前記第1面の面積は、前記第2面の面積よりも大きく、 前記第1封止部は、平面視において、前記第1面と重なっておらず、 前記蓋体は、板状の部材である、蓄電デバイス。」 「【0005】 本発明は、このような問題を解決するためになされたものであって、その目的は、複数の蓄電デバイスを重ねた場合に隣接する蓄電デバイスに掛かる圧力の分布のムラを抑制可能な蓄電デバイス及び該蓄電デバイスの製造方法を提供することである。 【0006】 本発明のある局面に従う蓄電デバイスは、電極体と、外装体とを備える。外装体は、電極体を封止する。外装体は、フィルム状の外装部材によって構成されている。外装体は、外装部材が電極体に巻き付けられた状態で互いに向き合う面同士が接合することによって封止された第1封止部を含む。第1封止部の付け根部分は、外装体において、第1面と第2面との境界に形成されている。第1面の面積は、第2面の面積よりも大きい。第1封止部は、平面視において、前記第1面と重なっていない。 【0007】 この蓄電デバイスにおいては、第1封止部が、平面視において、面積の大きい第1面と重なっていない。すなわち、面積の大きい第1面上には第1封止部が存在しない。したがって、第1面に他の蓄電デバイスが上又は横に並べて配置されたとしても該他の蓄電デバイスは傾かない。その結果、この蓄電デバイスによれば、複数の蓄電デバイスを重ねた場合に隣接する蓄電デバイスに掛かる圧力の分布のムラを抑制することができる。また、この蓄電デバイスにおいては、第1封止部の付け根部分が外装体の第1面と第2面との境界上にある。したがって、この蓄電デバイスによれば、第1封止部を第2面上に納まらせる場合に、第1封止部の付け根部分が第2面上にあるときと比較して、第1封止部における接合幅を広く確保することができる。」 「【0031】 図1、図2及び図3を参照して、蓄電デバイス10は、電極体200と、外装体100と、複数(2つ)の電極端子300とを含んでいる。電極体200は、リチウムイオン電池、キャパシタ又は全固体電池等の蓄電部材を構成する電極(正極及び負極)及びセパレータ等を含む。電極体200の形状は、略直方体である。なお、「略直方体」は、完全な直方体の他に、たとえば、外面の一部の形状を修正することによって直方体とみなせるような立体を含む意味である。」 「【0034】 外装体100は、フィルム状の外装部材101(図4等)で構成されており、電極体200を封止する。蓄電デバイス10においては、外装部材101を電極体200に巻き付け、開放部分を封止することによって、外装体100が形成されている。 【0035】 たとえば、冷間成形を通じて外装部材101に電極体200を収容する収容部(窪み)を形成する方法がある。しかしながら、このような方法によって深い収容部を形成することは必ずしも容易ではない。冷間成形によって収納部(窪み)を深く(たとえば成形深さ15mm)形成しようとすると外装部材にピンホールやクラックが発生し電池性能の低下を招く可能性が高くなる。一方、外装体100は、外装部材101を電極体200に巻き付けることによって電極体200を封止しているため、電極体200の厚みに拘わらず容易に電極体200を封止することができる。なお、蓄電デバイス10の体積エネルギー密度を向上させるべく電極体200と外装部材101との間のデッドスペースを削減するためには、外装部材101が電極体200の外表面に接するように巻き付けられた状態が好ましい。また、全固体電池においては、電池性能を発揮させるために高い圧力を電池外面から均一に掛けることが必要とされている観点からも電極体200と外装部材101との間の空間を無くすことが必要とされるため、外装部材101が電極体200の外表面に接するように巻き付けられた状態が好ましい。 【0036】 外装部材101は、たとえば、基材層、バリア層及び熱融着性樹脂層をこの順に有する積層体(ラミネートフィルム)である。なお、外装部材101には、これらの層がすべて含まれている必要はなく、たとえば、バリア層が含まれていなくてもよい。すなわち、外装部材101は、フレキシブル性を有し曲げやすい材料で構成されていればよく、たとえば、樹脂フィルムで構成されていてもよい。なお、外装部材101は、ヒートシール可能であることが好ましい。 【0037】 外装部材101に含まれる基材層は、耐熱性を外装部材101に付与し、加工又は流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制するための層である。基材層は、たとえば、延伸ポリエステル樹脂層及び延伸ポリアミド樹脂層の少なくとも一層を含んで構成される。たとえば、基材層が延伸ポリエステル樹脂層及び延伸ポリアミド樹脂層の少なくとも一層を含むことにより、外装部材101の加工時にバリア層を保護し、外装部材101の破断を抑制することができる。また、外装部材101の引張伸びを大きくする観点から、延伸ポリエステル樹脂層は二軸延伸ポリエステル樹脂層であることが好ましく、延伸ポリアミド樹脂層は二軸延伸ポリアミド樹脂層であることが好ましい。さらに、突刺強度又は衝撃強度に優れる点から、延伸ポリエステル樹脂層は二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであることがより好ましく、延伸ポリアミド樹脂層は二軸延伸ナイロン(ONy)フィルムであることがより好ましい。なお、基材層は、延伸ポリエステル樹脂層及び延伸ポリアミド樹脂層の両層を含んで構成されていてもよい。基材層の厚さは、フィルム強度の点から、たとえば5~300μmであることが好ましく、20~150μmであることがより好ましい。 【0038】 また、外装部材101に含まれるバリア層は、防湿性、延展性等の加工性及びコストの面から、たとえばアルミニウム箔から構成される。アルミニウム箔は、電極体200を包装する際の包装適性及び耐ピンホール性の観点から、鉄を含むことが好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量としては、0.5~5.0質量%であることが好ましく、0.7~2.0質量%であることがより好ましい。鉄の含有量が0.5質量%以上であることにより、外装部材101の包装適性、優れた耐ピンホール性及び延展性が得られる。また、鉄の含有量が5.0質量%以下であることにより、外装部材101の優れた柔軟性が得られる。」 「【0067】 図9、図10及び図11を参照して、外装体100Xは、電極体200に巻き付けられた外装部材101の両端の開口部の各々に蓋体400を嵌め込むことによって構成されている。蓋体400が嵌め込まれた状態で、外装部材101と蓋体400とをヒートシールすることによって第2封止部120Xが形成されている。」 「【0075】 製造装置は、電極体200へ外装部材101を巻き付ける(ステップS200)。製造装置は、外装部材101の互いに向き合う面(熱融着性樹脂層)同士をヒートシールすることによって第1封止部110を形成する(ステップS210)。これにより、図4、図5に示される未完成品が出来上がる。」 「【0077】 <2-3.特徴> 本実施の形態2に従う蓄電デバイス10Xにおいても、面積の小さい第2面140側に第1封止部110が折り曲げられている。したがって、蓄電デバイス10Xによれば、複数の蓄電デバイス10Xを積み重ねた場合に下方の蓄電デバイス10Xに掛かる圧力の分布のムラを抑制することができる。」 「【図4】 [図:0001438324000001.jpg] 」 上記記載より、以下のことがいえる。 (1) 段落【0031】より、蓄電デバイス10は、電極体200と、外装体100とを含むものである。 (2) 段落【0031】より、電極体200は、リチウムイオン電池や全固体電池等の蓄電部材を構成する電極(正極及び負極)等を含み、電極体200の形状は、略直方体である。 (3) 段落【0034】及び【0035】より、外装体100は、フィルム状の外装部材101を電極体200に巻き付けて開放部分を封止することによって形成され、外装部材101を電極体200に巻き付けることによって電極体200を封止する。 (4) 段落【0036】より、外装部材101は、ラミネートフィルムである。 (5) 段落【0034】及び【0036】~【0038】より、外装体100は、基材層、バリア層及び熱融着性樹脂層を有する積層体である外装部材101で構成されており、基材層は、延伸ポリエステル樹脂層及び延伸ポリアミド樹脂層の少なくとも一層を含んで構成され、バリア層は、アルミニウム箔から構成されるものである。 そして、上記記載及び図4を総合勘案すると、甲1には、次の「蓄電デバイス10」の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 [甲1発明] 電極体200と、外装体100とを含む蓄電デバイス10であって、 電極体200は、リチウムイオン電池や全固体電池等の蓄電部材を構成する電極(正極及び負極)等を含み、略直方体の形状であり、 外装体100は、フィルム状の外装部材101を電極体200に巻き付けて開放部分を封止することによって形成され、外装部材101を電極体200に巻き付けることによって電極体200を封止し、 外装体100は、ラミネートフィルムであり、基材層、バリア層及び熱融着性樹脂層を有する積層体である外装部材101で構成されており、 基材層は、延伸ポリエステル樹脂層及び延伸ポリアミド樹脂層の少なくとも一層を含んで構成され、 バリア層は、アルミニウム箔から構成されるものである、 蓄電デバイス10。 2 本件特許発明1について (1) 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 ア 本件特許明細書の段落【0034】には、「本開示における電池要素は、例えば電極体を有する。」と記載されているから、甲1発明の「電極体200」は、本件特許発明1の「電池要素」に相当する。 イ 甲1発明の「外装体100」は、ラミネートフィルムである外装部材101を電極体200に巻き付けて開放部分を封止することによって形成され、外装部材101を電極体200に巻き付けることによって電極体200を封止するものである。ここで、外装部材101を電極体200に巻き付けて開放部分が封止されるから、電極体200は、外装体100の内部に「封入」されているといえる。よって、甲1発明の「外装体100」は、本件特許発明1の「前記電池要素を封入するラミネート外装体」に相当する。 ウ 甲1発明の「蓄電デバイス10」は、ラミネートフィルムである外装部材101から構成される外装体100と、リチウムイオン電池や全固体電池等の蓄電部材を構成する電極(正極及び負極)等を含む電極体200とを含むから、本件特許発明1の「ラミネート型電池」に相当する。 エ 甲1発明の「外装体100」を構成する「外装部材101」は、「基材層、バリア層及び熱融着性樹脂層を有する積層体であ」り、「基材層は、延伸ポリエステル樹脂層及び延伸ポリアミド樹脂層の少なくとも一層を含」み、また、「バリア層は、アルミニウム箔から構成され」る。そして、甲1発明の「基材層」及び「熱融着性樹脂層」は本件特許発明1の「樹脂層」に相当し、甲1発明の「バリア層」は、本件特許発明1の「金属層」に相当する。 したがって、甲1発明の「外装体100は、ラミネートフィルムであり、基材層、バリア層及び熱融着性樹脂層を有する積層体である外装部材101で構成されており」は、本件特許発明1の「ラミネート外装体は、少なくとも樹脂層と金属層とが積層されてなり」に相当する。 オ 本件特許発明1の「電池要素」は、「角度が80°以上100°以下である略直角形状部と、水平形状である水平部と」を含むのに対し、甲1発明の「電極体200」は、「略直方体の形状」であるものの、「角度が80°以上100°以下である略直角形状部」及び「水平形状である水平部」のいずれについても特定されていない点で相違する。 カ 本件特許発明1は、金属層の厚みに関して、「電池要素の前記略直角形状部と対向する前記ラミネート外装体の前記金属層のうち、80%以上の箇所の前記金属層において、該金属層の厚みT1が、前記電池要素の前記水平部と対向する前記ラミネート外装体の前記金属層の厚みT2に対し、下記式の関係を満たし、 |T1-T2|/T2×100(%)≦10% 式 前記ラミネート外装体における、前記電池要素の前記水平部と対向する位置であって、且つ前記電池要素の前記略直角形状部と対向する位置から1mmの位置での前記金属層の厚みT3と、前記電池要素の前記水平部と対向する前記ラミネート外装体の前記金属層の厚みT2と、の差の比率(|T3-T2|/T2×100(%))が10%以内である」ことを特定するのに対し、甲1発明は、 「バリア」層の厚みの差の比率に関して何ら特定されていない点で相違する。 してみると、本件特許発明1と甲1発明とは、 「電池要素と 前記電池要素を封入するラミネート外装体と、を有するラミネート型電池であって、 前記ラミネート外装体は、少なくとも樹脂層と金属層とが積層されてなる、 ラミネート型電池。」である点で一致し、以下の点で、相違する。 <相違点1> 本件特許発明1の「電池要素」は、「角度が80°以上100°以下である略直角形状部と、水平形状である水平部と」を含むのに対し、甲1発明の「電極体200」は、「略直方体の形状」であるものの、「角度が80°以上100°以下である略直角形状部」及び「水平形状である水平部」のいずれについても特定されていない点。 <相違点2> 本件特許発明1は、金属層の厚みに関して、「電池要素の前記略直角形状部と対向する前記ラミネート外装体の前記金属層のうち、80%以上の箇所の前記金属層において、該金属層の厚みT1が、前記電池要素の前記水平部と対向する前記ラミネート外装体の前記金属層の厚みT2に対し、下記式の関係を満たし、 |T1-T2|/T2×100(%)≦10% 式 前記ラミネート外装体における、前記電池要素の前記水平部と対向する位置であって、且つ前記電池要素の前記略直角形状部と対向する位置から1mmの位置での前記金属層の厚みT3と、前記電池要素の前記水平部と対向する前記ラミネート外装体の前記金属層の厚みT2と、の差の比率(|T3-T2|/T2×100(%))が10%以内である」ことを特定するのに対し、甲1発明は、「バリア層」の厚みの差の比率に関して何ら特定されていない点。 (2) 判断 ア 申立理由1(新規性欠如)について (ア) 検討 事案に鑑み、まず上記相違点2について検討する。 甲1の段落【0035】に「蓄電デバイス10の体積エネルギー密度を向上させるべく電極体200と外装部材101との間のデッドスペースを削減するためには、外装部材101が電極体200の外表面に接するように巻き付けられた状態が好ましい。また、全固体電池においては、電池性能を発揮させるために高い圧力を電池外面から均一に掛けることが必要とされている観点からも電極体200と外装部材101との間の空間を無くすことが必要とされるため、外装部材101が電極体200の外表面に接するように巻き付けられた状態が好ましい。」との記載があり、同段落【0038】に「また、外装部材101に含まれるバリア層は、防湿性、延展性等の加工性及びコストの面から、たとえばアルミニウム箔から構成される。アルミニウム箔は、電極体200を包装する際の包装適性及び耐ピンホール性の観点から、鉄を含むことが好ましい。アルミニウム箔中の鉄の含有量としては、0.5~5.0質量%であることが好ましく、0.7~2.0質量%であることがより好ましい。鉄の含有量が0.5質量%以上であることにより、外装部材101の包装適性、優れた耐ピンホール性及び延展性が得られる。また、鉄の含有量が5.0質量%以下であることにより、外装部材101の優れた柔軟性が得られる。」との記載があるところ、甲1における外装部材のバリア層は、延展性及び柔軟性の優れた部材であって、かつ、電極体200と外装部材101との間の空間を無くすように巻き付けられることが好ましいものであると認められる。 他方、甲1の他の記載箇所を参酌しても、電極体200と外装部材101との間の空間を無くすように巻き付けられた場合に、優れた延展性及び柔軟性を有する部材が好適である「バリア層」にどの程度の応力が生じ、バリア層がどの程度延展し、その厚みがどのように変化するのか不明であって、「バリア層」の厚みの差の比率がいかなる値となるのか特定することはできない。 また、甲1が解決しようとする課題は、「複数の蓄電デバイスを重ねた場合に隣接する蓄電デバイスに掛かる圧力の分布のムラを抑制可能な蓄電デバイス及び該蓄電デバイスの製造方法を提供すること」であり、当該課題を解決すべく「外装部材が電極体に巻き付けられた状態で互いに向き合う面同士が接合することによって封止された第1封止部」について、「第1封止部が、平面視において、面積の大きい第1面と重なっていない。すなわち、面積の大きい第1面上には第1封止部が存在しない。」構成を採用すること(甲1の段落【0005】~【0007】)を発明の主目的とするものであって、甲1の記載を参酌しても、甲1において、電極体に巻き付けられる外装部材の「バリア層」の厚みの差の比率を調整するという技術的思想が存在するとは認められない。 してみれば、甲1発明において、電極体200に巻き付けられる外装部材101の「バリア層」の厚みの差の比率がいかなる値となるかは不明であって特定することができないから、甲1発明が相違点2に係る構成を備えているといえない。 (イ) 申立人の主張について 申立人は、申立書の第14ページにて、「本件特許発明は、本件特許明細書【0005】に記載のように、解決しようとする課題は「電池要素の略直角形状部と対向する位置のラミネート外装体における金属層での破損を抑制し、ラミネート外装体による電池要素の高い密閉性を実現したラミネート型電池」を提供することである。 当該課題は、本件特許明細書【0004】に記載されているように、「ラミネート型電池におけるラミネート外装体として、電池要素に相当する電極体の形状に合わせて予めエンボス加工を施したラミネートフィルム」を用いた場合に生じるものであり、このことは、本件特許明細書【0064】に記載の比較例1が実施例1と同じラミネートフィルムを用いてエンボス加工を施したものであり、当該比較例1が唯一の比較例として記載されていることからも明らかである。 このような本件特許発明に対し、甲1発明は、【請求項2】等に記載のように外装部材にエンボス加工は施されておらず、電極体に巻き付けられるものであるから、本件特許発明の構成D、すなわち、『|T1-T2|/T2×100(%)≦10%』及び『|T3-T2|/T2×100(%)が10%以内』を充足する蓋然性が高」いと主張している。 しかしながら、甲1発明の外装部材が、エンボス加工が施されておらず、電極体に巻き付けられるということをもって、甲1発明が本件特許発明1の「|T1-T2|/T2×100(%)≦10%」及び「|T3-T2|/T2×100(%)が10%以内」との構成を充足する蓋然性が高いと認めるに足る根拠を見いだせない。 上述のとおり、甲1には、そもそも「バリア層」の厚みの差の比率を調整するという技術的思想が存在すると認められず、甲1発明において、電極体200に巻き付けられる外装部材101の「バリア層」の厚みの差の比率がいかなる値となるかは不明であって、これを特定することはできないから、本件特許発明1の「|T1-T2|/T2×100(%)≦10%」及び「|T3-T2|/T2×100(%)が10%以内」との構成を充足する蓋然性が高いといえない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (ウ) 小括 以上のとおりであるから、他の相違点については判断するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明ではない。 イ 申立理由2(進歩性欠如)について (ア) 検討 上記ア(申立理由1(新規性欠如)について)と同様に、まず上記相違点2について検討する。 上記ア(申立理由1(新規性)について)にて述べたとおり、甲1発明において、電極体200に巻き付けられる外装部材101の「バリア層」の厚みの差の比率がいかなる値となるかは不明であって特定することができないから、甲1発明が相違点2に係る構成を備えているといえない。また、甲1には、電極体に巻き付けられる外装部材の「バリア層」の厚みの差の比率を調整するという技術的思想が存在するとも認められないから、甲1発明に基づいて、当業者が相違点2に係る構成を容易になし得たともいえない。 さらに、もし仮に、電極体に巻き付けられる外装部材の「バリア層」の厚みの差の比率を調整すること自体が本件特許の出願時に周知の技術的事項であったとしても、上記相違点2で特定される「|T1-T2|/T2×100(%)≦10%」かつ「(|T3-T2|/T2×100(%))が10%以内である」ように「バリア層」の厚みの差の比率を調整することが本件特許の出願時に周知の技術的事項であるとは認められず、甲1発明及び周知技術に基づいて、当業者が相違点2に係る構成を容易になし得たともいえない。 そして、上記相違点2に係る構成を有する本件特許発明1は、本件特許の明細書の段落【0007】に記載のように、「電池要素の略直角形状部と対向する位置のラミネート外装体における金属層での破損を抑制し、ラミネート外装体による電池要素の高い密閉性を実現したラミネート型電池」を提供するという効果を奏するものである。 (イ) 申立人の主張について 上記ア(申立理由1(新規性欠如)について)に記載した点に加え、申立人は、申立書の第14ページにて、「甲1発明は、【請求項2】等に記載のように外装部材にエンボス加工は施されておらず、電極体に巻き付けられるものであるから、本件特許発明の構成D、すなわち、『|T1-T2|/T2×100(%)≦10%』及び『|T3-T2|/T2×100(%)が10%以内』を充足する蓋然性が高く、そうでないとしても当業者であれば、甲第1号証に記載の発明において本件特許発明の構成Dを充足する構成とすることは容易に想到し得たものである。」と主張している。 しかしながら、上記ア(申立理由1(新規性欠如)について)にて述べたとおり、甲1には、そもそも「バリア層」の厚みの差の比率を調整するという技術的思想が存在すると認められず、甲1発明において、電極体200に巻き付けられる外装部材101の「バリア層」の厚みの差の比率がいかなる値となるかは不明であって、これを特定することはできないから、本件特許発明1の「|T1-T2|/T2×100(%)≦10%」及び「|T3-T2|/T2×100(%)が10%以内」との構成を充足する蓋然性が高いといえないし、また、当該構成を充足するように「バリア層」の厚みの差の比率を調整することは、本件特許の出願時に周知の技術的事項であると認められず、当業者が容易になし得たものともいえない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (ウ) 小括 以上のとおりであるから、他の相違点については判断するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件特許発明2及び3について (1)申立理由1(新規性欠如)について 本件特許発明2及び3は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものである。そうすると、上記のとおり、本件特許発明1が、甲第1号証に記載された発明ではない以上、本件特許発明2及び3も、甲第1号証に記載された発明ではない。 (2)申立理由2(進歩性欠如)について 本件特許発明2及び3は、本件特許発明1の構成を全て具備し、これに限定を加えたものであるから、上記のとおり、本件特許発明1が、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件特許発明2及び3も、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 4 申立理由1及び2についてのまとめ 上記のとおり、本件特許発明1~3は、特許法第29条の規定により特許を受けることができないものといえないから、本件特許の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものではなく、特許法第113条第2号に該当しない。 よって、本件特許の請求項1~3に係る特許は、申立理由1及び2によって取り消すことはできない。 第5 むすび 請求項1~3に係る特許は、いずれも、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び申立人が提出した証拠によっては取り消すことはできない。 また、他に請求項1~3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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