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特許異議申立

2026-700111

固体酸化物形電気化学セル及びその利用

審判番号
2026-700111
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-106029
登録番号
7719638
請求日
2026年02月06日
審決日
2026年06月22日
公報発行日
2026年07月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】一般財団法人ファインセラミックスセンター
  • 【権利者代理人】弁理士法人 快友国際特許事務所
  • 【権利者】東芝エネルギーシステムズ株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人 快友国際特許事務所
  • 【異議申立人】林 尚子
審判長/審判官
  • 審判長 木村 貴俊
  • 審判官 畑中 博幸
  • 審判官 涌井 智則
分類
P1651.113-Y (H01M) / P1651.121-Y (H01M) / P1651.536-Y (H01M) / P1651.537-Y (H01M) / P1651.55 -Y (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第17条の2第3項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7719638号発明「固体酸化物形電気化学セル及びその利用」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7719638号の請求項1~13に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7719638号の請求項1~13に係る特許(以下、「本件特許1」~「本件特許13」といい、併せて「本件特許」という。)についての出願は、令和3年6月25日に出願され、令和7年7月29日にその特許権が設定登録され、令和7年8月6日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和8年2月6日に特許異議申立人 林 尚子(以下、「異議申立人」という。)により、請求項1~13に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~13に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明13」といい、まとめて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 固体酸化物形電気化学セルであって、 酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極と、 ジルコニウム酸化物を含む固体電解質と、 水素極と、 前記固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層と、 を備え、 前記酸素極は、前記酸化チタンを、前記酸素極において前記ストロンチウム含有複合酸化物のSrの熱拡散を抑制し高抵抗相の形成を抑制可能に備え、 前記ストロンチウム含有複合酸化物は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物(Aは、少なくともSrを含み、La及びCaから選択される一種以上の元素を表し、BはMn,Co,Fe及びNiから選択される一種以上の元素を表す。)であり、前記酸化チタンを前記ストロンチウム含有複合酸化物の全量に対して0.5質量%以上8質量%以下含有する、セル。 【請求項2】 前記酸化チタンを前記ストロンチウム含有複合酸化物の全量に対して1.0質量%以上5.0質量%以下含有する、請求項1に記載のセル。 【請求項3】 前記固体電解質及び/又は前記中間層へのSrの拡散が抑制されている、及び/又は、前記酸素極においてSrTiO3が形成されている、請求項1又は2に記載のセル。 【請求項4】 前記酸素極は、前記酸素極の厚み方向において前記固体電解質に対向する面とは反対側の面寄りにより高濃度に酸化チタンが分布しているものが除かれる、請求項1~3のいずれかに記載のセル。 【請求項5】 前記ストロンチウム含有複合酸化物は、La1-xSrxCoyFe1-yO3-σ(0.2≦x≦0.8、0.05≦y≦0.65であり、σは、電荷中性条件を満たすように定まる値である。)である、請求項1~4のいずれかに記載のセル。 【請求項6】 前記固体電解質の前記ジルコニウム酸化物は、希土類添加酸化ジルコニウムである、請求項1~5のいずれかに記載のセル。 【請求項7】 前記中間層の希土類添加酸化セリウムは、ガドリニウム添加酸化セリウム、ランタン添加酸化セリウム、サマリウム添加酸化セリウム及びイットリウム添加酸化セリウムからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~6のいずれかに記載のセル。 【請求項8】 前記固体電解質の前記ジルコニウム酸化物は、希土類添加酸化ジルコニウムであり、前記中間層の希土類添加セリウム酸化物は、ガドリニウム添加酸化セリウムである、請求項1~7のいずれかに記載のセル。 【請求項9】 請求項1~8のいずれかに記載のセルを備える、固体酸化物形電気化学デバイス。 【請求項10】 固体酸化物形燃料電池及び/又は固体酸化物形電解セルである、請求項9に記載の固体酸化物形電気化学デバイス。 【請求項11】 固体酸化物形電気化学セルの製造方法であって、 酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極と、ジルコニウム酸化物を含む固体電解質と、水素極と、前記固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層と、をこの順序で備える前記固体酸化物形電気化学セルを取得する工程を備え、 前記ストロンチウム含有複合酸化物は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物(Aは、少なくともSrを含み、La及びCaから選択される一種以上の元素を表し、BはMn,Co,Fe及びNiから選択される一種以上の元素を表す。)であり、 前記固体酸化物形電気化学セルを取得する工程は、前記ストロンチウム含有複合酸化物中のSrの前記固体電解質及び/又は前記中間層への熱拡散を抑制するように焼成することを含む、方法。 【請求項12】 前記固体酸化物形電気化学セルを取得する工程は、前記酸素極においてSrTiO3を形成することを含む、請求項11に記載の方法。 【請求項13】 固体酸化物形電気化学セルにおける高抵抗相の生成抑制方法であって、 前記固体酸化物形電気化学セルは、酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極と、ジルコニウム酸化物を含む固体電解質と、水素極と、前記固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層と、をこの順序で備え、 前記ストロンチウム含有複合酸化物は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物(Aは、少なくともSrを含み、La及びCaから選択される一種以上の元素を表し、BはMn,Co,Fe及びNiから選択される一種以上の元素を表す。)であり、 前記中間層及び/又は前記固体電解質へのSrの熱拡散を抑制する、及び/又は、前記酸素極においてSrTiO3を形成するように焼成することを含む、方法。」 第3 申立理由の概要 1 特許異議の申立理由 異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由は、次のとおりである。 (1)申立理由1(進歩性) 本件発明1~13は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基いて、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件の請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(新規性) 本件発明1~4、6~13は、甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件の請求項1~4、6~13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由3(サポート要件) 本件発明4~10は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件の請求項4~10に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 (4)申立理由4(実施可能要件) 発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明4~10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、本件の請求項4~10に係る特許は、発明の詳細な説明が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 (5)申立理由5(明確性) 本件発明1~13は、明確でないから、本件の請求項1~13に係る特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 (6)申立理由6(新規事項) 令和7年6月20日提出の手続補正書による補正は、新規事項の追加を含むものであるから、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 異議申立人の提出した証拠 異議申立人が提出した証拠は次のとおりである。 甲第1号証:特開2016-126984号公報 甲第2号証:Weixing Liu、Zhe Zhao、Baofeng Tu、Daan Cui、Dingrong Ou、Mojie Cheng、TiO2-modified La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δcathode for intermediate temperature solid oxide fuel cells、Chinese Journal of Catalysis、Volume36、Issue4、April 2015、Pages 502-508 甲第3号証:特開2016-207539号公報 甲第4号証:特開2018-166078号公報 甲第5号証:令和7年6月20日に提出された意見書 第4 異議申立人が提出した証拠の記載 1 甲第1号証 (1)甲第1号証には、次の記載がある(下線は当審において付与した。以下同じ。) 「【0012】 上記燃料電池単セルは、複数の結晶粒子と該結晶粒子の間に形成された粒界相とを有する中間層を有しており、粒界相がSrTiO3を含有している。つまり、上記燃料電池単セルは、カソードの組成に由来し、固体電解質層側へ拡散したSrが、SrTiO3の形で中間層に捕捉されている。そのため、上記燃料電池単セルは、上記拡散したSrに起因して固体電解質層と中間層との間の界面にSrZrO3が生成するのを抑制することができる。 ・・・(中略)・・・。 【0017】 上記燃料電池単セルは、電解質として固体電解質を利用する固体電解質型の燃料電池単セルである。固体電解質層を構成する固体電解質には、酸素イオン導電性を示す固体酸化物セラミックス等を用いることができる。なお、固体電解質として固体酸化物セラミックスを用いる燃料電池は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)と称される。 ・・・(中略)・・・。 【0019】 上記燃料電池単セルにおいて、アノードは、単層から構成されていてもよいし、複数層から構成されていてもよい。アノードが複数層から構成される場合、アノードは、具体的には、例えば、固体電解質層側に配置される活性層と、活性層における固体電解質層側と反対側に配置される拡散層とを備える構成等とすることができる。なお、活性層は、主に、アノード側における電気化学的反応を高めるための層である。また、拡散層は、供給される燃料ガスを拡散させることが可能な層である。拡散層は、1層または2層以上から構成することができる 「【0027】 上記燃料電池単セルにおいて、中間層は、粒界相にSrTiO3を含有している。粒界相は、SrTiO3以外にも、例えば、TiO2を含有することができる。この場合には、燃料電池単セルの運転時に、カソードから中間層に拡散してくるSrとTiO2とからSrTiO3を生成させることができる。そのため、この場合には、燃料電池単セルの運転時においても、固体電解質層と中間層との間の界面に生成するSrZrO3を確実に抑制可能な燃料電池単セルが得られる。また、後述のようにカソードがSr以外にLaを含有する場合、SrTiO3は、SrTiO3におけるSrの一部がLaに置換された(Sr,La)TiO3とされていてもよい。」 「【0050】 (実施例1) 実施例1の燃料電池単セルについて、図1~図7を用いて説明する。図1、図2に示されるように、本例の燃料電池単セル1は、ジルコニア系の固体電解質層10と、固体電解質層10の第1の面側に設けられたアノード11と、固体電解質層10における第1の面と反対側の第2の面側に設けられ、Srを含有するカソード12と、固体電解質層10とカソード12との間に設けられた中間層13とを有している。 ・・・(中略)・・・。 【0053】 本例において、固体電解質層10を構成する固体電解質は、具体的には、酸化ジルコニウム系酸化物であり、より具体的には、8mol%のY2O3を含むイットリア安定化ジルコニア(以下、8YSZ)である。固体電解質層10の厚みは10μmである。 ・・・(中略)・・・。 【0055】 本例において、カソード12は、具体的には、Srを含有するペロブスカイト型酸化物と固体電解質とを含む混合物より層状に形成されている。カソード12を構成するペロブスカイト型酸化物は、具体的には、La1-xSrxCo1-yFeyO3(x=0.4、y=0.8、以下、LSCF)である。また、カソード12を構成する固体電解質は、具体的には、酸化セリウム系酸化物であり、より具体的には、10mol%のGdがドープされたセリア(以下、10GDC)である。カソードの厚みは50μmである。 【0056】 本例において、中間層13を構成する結晶粒子131は、具体的には、セリア、または、セリアに希土類元素がドープされたセリア系固溶体からなる。中間層13を構成する結晶粒子131は、より具体的には、10GDCからなる。複数の結晶粒子131は、中間層13の面内方向に広がっている。粒界相132は、結晶粒子131間に存在し、結晶粒子131を取り囲んでいる。本例では、粒界相132の厚みは、100nm以下とされている。」 「【0065】 (実施例2) 実施例2の燃料電池単セルの製造方法について、図1を用いて説明する。本例の燃料電池単セルの製造方法は、実施例1の燃料電池単セル1を製造する方法であって、第1工程と、第2工程と、第3工程とを有している。 【0066】 第1工程では、中間層前駆体が形成される。中間層前駆体は、複数の結晶粒子と結晶粒子の間に形成された粒界相とを有しており、その膜厚が結晶粒子の平均粒子径以下であり、粒界相中にTiO2を含有している。 【0067】 本例では、第1工程において、アノード11、固体電解質層10、および、中間層前駆体がこの順に積層された第1積層体が形成される。第1積層体は、次のように準備される。焼成によりアノード11になる未焼成のシート状のアノード形成用材料、焼成により固体電解質層10になる未焼成のシート状の固体電解質層形成用材料をこの順に積層して圧着し、大気雰囲気中、1400℃にて120分間程度焼成し、焼成体を形成する。次いで、この焼成体における固体電解質層10の表面に、未焼成のペースト状の中間層前駆体形成用材料を層状に形成し、大気雰囲気中、1200℃にて120分間程度焼成する。これにより、第1積層体が準備される。第1積層体における中間層前駆体の厚みは10μmである。 ・・・(中略)・・・。 【0070】 次に、第2工程では、Srを含んでおり、焼成によりカソード12になるカソード形成用材料が中間層前駆体の表面に層状に形成される。 ・・・(中略)・・・。 【0072】 次に、第3工程では、焼成により、中間層前駆体から中間層13が形成されるとともに、カソード形成用材料からカソード12が形成される。この焼成時に、中間層前駆体内では、粒界相内のTiO2の少なくとも一部とカソード形成用材料に由来するSrとからSrTiO3が生成する。なお、生成したSrTiO3は、中間層13の粒界相132中に存在することになる。 ・・・(中略)・・・。 【0074】 上記各工程を経ることにより、燃料電池単セル1が得られる。 ・・・(中略)・・・。 【0076】 本例の燃料電池単セルの製造方法は、第3工程により、カソード形成用材料から中間層前駆体中に拡散してくるSrがTiO2により捕捉されてSrTiO3が生成し、SrTiO3を含有する中間層13が形成される。この際、中間層前駆体の膜厚は結晶粒子の平均粒子径以下とされているので、中間層13の面内方向に広がってSrTiO3が形成され難い。また、本例の燃料電池単セルの製造方法は、従来技術のようにSrの拡散抑制のために中間層13の気孔率の制御が不要である。また、粒界相に存在するTiO2は、焼結助剤として機能する。そのため、形成される中間層13が緻密化され、中間層13の膜強度の向上にも寄与できる。それ故、本例の燃料電池単セルの製造方法は、上記燃料電池単セル1を好適に得ることができる。」 「【図1】 [図:0001437415000001.jpg] 」 (2)上記(1)によれば、次のことがいえる。 ア 段落【0050】によれば、甲第1号証には、実施例1として、ジルコニア系の固体電解質層10と、固体電解質層10の第1の面側に設けられたアノード11と、固体電解質層10における第1の面と反対側の第2の面側に設けられ、Srを含有するカソード12と、固体電解質層10とカソード12との間に設けられた中間層13とを有する燃料電池単セル1が記載されている。 ここで、段落【0053】によれば、固体電解質層10は酸化ジルコニウム系酸化物から構成される。 また、段落【0055】によれば、カソード12は、Srを含有するペロブスカイト型酸化物と固体電解質とを含む混合物より形成される。 そして、段落【0056】によれば、中間層13は、セリアに希土類元素がドープされたセリア系固溶体からなる。 さらに、段落【0019】によれば、アノードは、供給される燃料ガスを拡散させることが可能な拡散層を備える。 そうすると、甲第1号証には、酸化ジルコニウム系酸化物から構成される固体電解質層10と、固体電解質層10の第1の面側に設けられ、供給される燃料ガスを拡散させることが可能な拡散層を備えたアノード11と、固体電解質層10における第1の面と反対側の第2の面側に設けられ、Srを含有するペロブスカイト型酸化物と固体電解質とを含む混合物より形成されるカソード12と、固体電解質層10とカソード12との間に設けられ、セリアに希土類元素がドープされたセリア系固溶体からなる中間層13とを有する燃料電池単セル1が記載されている。 イ 段落【0055】によれば、カソード12を構成するペロブスカイト型酸化物は、La1-xSrxCo1-yFeyO3(x=0.4、y=0.8、以下、LSCF)である。 ウ 段落【0027】によれば、中間層は、粒界相にTiO2を含有し、カソードから中間層に拡散してくるSrとTiO2とからSrTiO3を生成させ、固体電解質層と中間層との間の界面に生成するSrZrO3を抑制するといえる。 (3)上記(2)によれば、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「酸化ジルコニウム系酸化物から構成される固体電解質層10と、固体電解質層10の第1の面側に設けられ、供給される燃料ガスを拡散させることが可能な拡散層を備えたアノード11と、固体電解質層10における第1の面と反対側の第2の面側に設けられ、Srを含有するペロブスカイト型酸化物と固体電解質とを含む混合物より形成されるカソード12と、固体電解質層10とカソード12との間に設けられ、セリアに希土類元素がドープされたセリア系固溶体からなる中間層13とを有する燃料電池単セル1であって、 カソード12を構成するペロブスカイト型酸化物は、La1-xSrxCo1-yFeyO3(x=0.4、y=0.8、以下、LSCF)であり、 中間層は、粒界相にTiO2を含有し、カソードから中間層に拡散してくるSrとTiO2とからSrTiO3を生成させ、固体電解質層と中間層との間の界面に生成するSrZrO3を抑制する、 燃料電池単セル1。」 (4)上記(1)によれば、次のこともいえる。 ア 段落【0065】によれば、甲第1号証には、実施例2として、実施例1の燃料電池単セル1の製造方法が記載されている。 そうすると、上記(2)アも踏まえれば、甲第1号証には、酸化ジルコニウム系酸化物から構成される固体電解質層10と、固体電解質層10の第1の面側に設けられ、供給される燃料ガスを拡散させることが可能な拡散層を備えたアノード11と、固体電解質層10における第1の面と反対側の第2の面側に設けられ、Srを含有するペロブスカイト型酸化物と固体電解質とを含む混合物より形成されるカソード12と、固体電解質層10とカソード12との間に設けられ、セリアに希土類元素がドープされたセリア系固溶体からなる中間層13とを有する燃料電池単セル1の製造方法が記載されているといえる。 イ 段落【0065】によれば、燃料電池単セル1の製造方法は、第1工程と、第2工程と、第3工程とを有する。 ウ 段落【0067】によれば、第1工程において、アノード11、固体電解質層10、および、中間層前駆体がこの順に積層された第1積層体が形成される。 エ 段落【0070】によれば、第2工程では、Srを含んでおり、焼成によりカソード12になるカソード形成用材料が中間層前駆体の表面に層状に形成される。 オ 段落【0072】、【0076】によれば、第3工程では、焼成により、中間層前駆体から中間層13が形成されるとともに、カソード形成用材料からカソード12が形成され、この焼成時に、カソード形成用材料から中間層前駆体中に拡散してくるSrが粒界相内のTiO2により捕捉されてSrTiO3が生成される。 カ 段落【0074】によれば、第1工程、第2工程、及び、第3工程の各工程を経ることにより、燃料電池単セル1が得られる。 (5)上記(4)によれば、上記(3)も踏まえると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明A」という。)が記載されているといえる。 「酸化ジルコニウム系酸化物から構成される固体電解質層10と、固体電解質層10の第1の面側に設けられ、供給される燃料ガスを拡散させることが可能な拡散層を備えたアノード11と、固体電解質層10における第1の面と反対側の第2の面側に設けられ、Srを含有するペロブスカイト型酸化物と固体電解質とを含む混合物より形成されるカソード12と、固体電解質層10とカソード12との間に設けられ、セリアに希土類元素がドープされたセリア系固溶体からなる中間層13とを有する燃料電池単セル1の製造方法であって、 アノード11、固体電解質層10、および、中間層前駆体がこの順に積層された第1積層体が形成される第1工程と、 Srを含んでおり、焼成によりカソード12になるカソード形成用材料が中間層前駆体の表面に層状に形成される第2工程と、 焼成により、中間層前駆体から中間層13が形成されるとともに、カソード形成用材料からカソード12が形成され、この焼成時に、カソード形成用材料から中間層前駆体中に拡散してくるSrが粒界相内のTiO2により捕捉されてSrTiO3が生成される第3工程と、を有し、 各工程を経ることにより、燃料電池単セル1が得られ、 カソード12を構成するペロブスカイト型酸化物は、La1-xSrxCo1-yFeyO3(x=0.4、y=0.8、以下、LSCF)である、 燃料電池単セル1の製造方法。」 2 甲第2号証 (1)甲第2号証には、次の記載がある。なお、翻訳は、異議申立人が提出した「甲第2号証の訳文」に基づくものである。 ア 「 ABSTRACT A La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ (LSCF) cathode modified using nanosized TiO2 was direct prepared on the yttria stabilized zirconia (YSZ) electrolyte in an intermediate temperature solid oxide fuel cell. TiO2 prevents reaction between LSCF and YSZ, which would have formed a SrZrO3 phase. The cell with a LSCF-0.25 wt% TiO2 cathode exhibited a current density that was 1.6 times larger than that with a pure LSCF cathode at 0.7 V and 600 °C. Electrochemical impedance spectra showed the accelerated incorporation of oxygen anions into the YSZ electrolyte with the TiO2-modified LSCF cathode. The improvement was attributed to the suppressed formation of a non-conductive SrZrO3 layer at the cathode/electrolyte interface.」 (502頁「ABSTRACT」欄) (翻訳: 要約 中間温度の固体酸化物形燃料電池において、ナノサイズのTiO2を用いて改質したLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ(LSCF)カソードをイットリア安定化ジルコニア(YSZ)電解質上に直接作製した。TiO2はLSCFとYSZの反応を防止し、これによりSrZrO3相の形成が回避された。0.25wt%のTiO2を添加したLSCFカソードを有するセルは、0.7V、600℃において純LSCFカソード比1.6倍の電流密度を示した。電気化学インピーダンス分光法により、TiO2を添加したLSCFではYSZ電解質への酸素陰イオンの取り込みが促進されることが確認された。この改善はカソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成が抑制されたことに起因すると考えられる。) イ 「1. Introduction Solid oxide fuel cells (SOFCs) directly convert chemical energy stored in fuels to electrical energy [1]. The traditional SOFC has the components Ni-YSZ (YSZ = yttria stabilized zirconia) anode, YSZ electrolyte, and (La,Sr)MnO3-YSZ cathode and operates in the 800-1000 °C range [2,3]. To reduce the operating temperature of SOFCs, La1-xSrxCoyFe1-yO3-δ (LSCF) materials with a high electronic and ionic conductivity (MIEC) and excellent catalytic activity for oxygen reduction are extensively studied as the SOFC cathode [4]. However, unlike (La,Sr)MnO3 materials, (La,Sr)(Co,Fe)O3 suffers significant Sr surface segregation and easily reacts with YSZ to form non-conductive phases of SrZrO3 and/or La2Z2O7 even at 700 °C [5]. This leads to very large interfacial losses when the LSCF cathode is directly prepared on the YSZ electrolyte. Much effort has been devoted to preventing the formation of the non-conductive phases, such as adding Gd-doped CeO2 (GDC) as an interlayer to avoid direct contact between the cathode and YSZ electrolyte [6-8] or infiltrating the cathode material (such as La1-xSrxCoyFe1-yO3-δ) into the YSZ scaffold and sintering at low temperature to avoid the unwanted interfacial reaction [9]. However, these methods add to the cost and complexity of the cell fabrication and introduce new interfacial losses between the GDC interlayer and YSZ electrolyte. Therefore, it is useful to develop a new method for the direct application of an LSCF cathode on the ZrO2-based (such as YSZ) electrolyte. The interface between different phases can be changed by adding a proper modifier. For example, Co3O4 has been studied as a sintering aid to modify the microstructure of a Co-containing perovskite cathode and the interface of the cathode/electrolyte [10]. TiO2 has been widely used as a photocatalyst because of its high stability, non-toxicity, and relatively low cost [11,12]. In the field of SOFC glass sealing materials, TiO2 has been used to tune the crystallization temperature and microstructure of glass materials, and TiO2-modified Bi2\O3-BaO-SiO2-RxOy (R = K, Ca, etc.) shows a good match of the thermal properties and firm adherence to the electrolyte and connector [13]. TiO2 has been added to a CeO2-based electrolyte to reduce the sintering temperature and improve the grain boundary conduction [14]. The addition of TiO2 into an LSCF can prevent the reaction of LSCF with YSZ by the interaction between LSCF and TiO2 and modify the interface of the cathode/electrolyte. In this study, nanosized TiO2 particles were added into an LSCF cathode by an ultrasound-assisted blending process. The TTiO2-modified LSCF cathode was directly applied on the YSZ electrolyte. The interaction of the LSCF, TiO2, and YSZ oxides were studied by X-ray diffraction (XRD). The effects of TiO2 addition on cell performance were studied by electrochemical analysis and scanning electron microscopy (SEM). 」(502頁左欄1行~503頁左欄23行) (翻訳: 1.緒論 固体酸化物形燃料電池(SOFC)は、燃料に蓄えられた化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する[1]。従来のSOFCは、Ni-YSZ(YSZ=イットリア安定化ジルコニア)アノード、YSZ電解質、(La,Sr)MnO3-YSZカソードで構成され、800-1000℃の範囲で動作する[2,3]。SOFCの動作温度を低下させるため、高い電子・イオン伝導性(MIEC)と優れた酸素還元触媒活性とを有するLa1-xSrxCoyFe1-yO3-δ(LSCF)材料がSOFCカソードとして広く研究されている[4]。しかし、(La,Sr)MnO3材料とは異なり、(La,Sr)(Co,Fe)O3は著しいSr表面偏析を起こし、700℃でもYSZと容易に反応して非導電性相であるSrZrO3及び/又はLa2Zr2O7を形成する[5]。このため、LSCFカソードをYSZ電解質上に直接形成すると、非常に大きな界面損失が生じる。非導電性相の形成を防ぐために多くの努力が払われてきた。例えば、Gd添加CeO2(GDC)を中間層としてカソードとYSZ電解質との直接接触を回避する方法[6-8]や、カソード材料(例えばLa1-xSrxCoyFe1-yO3-δ)をYSZ骨格に浸透させ低温焼成することで不要な界面反応を回避する方法[9]が提案されている。しかし、これらの方法はセル製造のコストと複雑さを増やし、GDC中間層とYSZ電解質との間に新たな界面損失をもたらす。従ってZrO2系(YSZ等)電解質上にLSCFカソードを直接適用する新たな方法の開発が有用である。 異なる相間の界面は、適切な修飾剤を添加して変化させることができる。例えばCo3O4はCo含有ペロブスカイト系カソードの微細構造およびカソード/電解質界面を改質する焼結助剤として研究されてきた[10]。TiO2はその高い安定性、無毒性および比較的低コストから、光触媒として広く利用されている[11,12]。SOFCのガラス封止材料の分野では、TiO2がガラス材料の結晶化温度と微細構造の調整に用いられており、TiO2改質Bi2O3-BaO-SiO2-RxOy(R=K,Ca等)は優れた熱特性と電解質・コネクタへの強固な密着性を示す[13]。TiO2は焼結温度の低減と粒界伝導性の向上を目的としてCeO2系電解質に添加されている[14]。LSCFへのTiO2添加は、LSCFとTiO2の相互作用によりLSCFとYSZの反応を防止し、カソード/電解質界面を改質する。 本研究では、超音波補助混合プロセスによりナノサイズのTiO2粒子をLSCFカソードに添加した。TiO2改質LSCFカソードはYSZ電解質上に直接塗布された。LSCF、TiO2、YSZ酸化物間の相互作用はX線回折(XRD)により調査された。TiO2添加がセル性能に及ぼす影響は、電気化学分析および走査型電子顕微鏡(SEM)により検討された。) ウ 「2. Experimental Anode-supported single cells with a thin film YSZ (10 μm) were fabricated by the tape casting method. The anode-electrolyte bilayer assemblies were sintered at 1295 °C for 3 h. The homemade La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ (LSCF) powder was synthesized by a citric acid ammonium-assisted Pechini-type method [15] and sintered at 1050 °C for 3 h. The TiO2-modified LSCF cathode was made by the ultrasound assisted process as follows. Commercial TiO2 (Zhenjiang, China) nanoparticles were added into deionized water with a TiO2 concentration of 0.25 mol/L. The LSCF powder was blended with various amounts of TiO2 nanoparticles using an ultrasonic bath with a frequency of 25 kHz and a nominal power of 600 W for 30 min. The cathode slurry consisting of dried LSCF-TiO2 composite oxides, organic binders, and solvent was coated on the YSZ electrolyte and sintered at 850 °C for 2 h. The thickness of the cathode was 35 μm. The single cells were tested in the homemade electrochemical device. Humidified H2 (3% H2O) and pure O2 flow were supplied as fuel and oxidant, respectively. The current-voltage curves and corresponding power density (I-V-P) of single cells were measured using the two-electrode four-wire method at 600-750 °C. Electrochemical impedance spectra were measured under open circuit condition using a Solartron 1260 frequency response analyzer with a Solartron 1287 electrochemical interface. The frequency ranged from 1 × 106 to 0.08 Hz with an amplitude of 10 mV. Powder XRD patterns were collected in the 2θ range of 20°-80° on a Rigaku D/Max-2500/PC X-ray diffractometer operated at 40 kV and 200 mA using Cu Kα (λ = 0.15406 nm) radiation. The average crystallite size of the cubic phase was calculated from the Scherrer equation, where the Scherrer constant (particle shape factor) was taken as 0.89. The SEM photographs of the TiO2-modified LSCF cathode were taken with a JSM7800F microscope equipped with a field emission gun at 5 kV. 」(502頁左欄24行~右欄4行) (翻訳: 2.実験 テープキャスティング法により薄膜YSZ(10μm)を有するアノード支持単セルを製造した。アノード-電解質2層構造体は1295℃で3時間焼成した。自家製La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ(LSCF)粉末はクエン酸アンモニウムを用いたペチーニ法[15]により合成され、1050℃で3時間焼成した。TiO2改質LSCFカソードは以下の超音波補助混合プロセスにより製造した。TiO2濃度が0.25mol/Lとなるように市販のTiO2(中国・鎮江)ナノ粒子を脱イオン水に加えた。周波数25kHz・公称出力600Wの超音波槽を用いて様々な量のTiO2ナノ粒子とLSCF粉末とを30分間混合した。乾燥LSCF-TiO2複合酸化物、有機バインダー、溶剤からなるカソードスラリーをYSZ電解質上に塗布し、850℃で2時間焼成した。カソードの厚さは35μmであった。 セルは自作の電気化学装置で試験した。燃料として加湿H2(3%H2O)、酸化剤として純O2をそれぞれ供給した。セルの電流-電圧曲線および対応する出力密度(I-V-P)は、600-750℃において2電極4線法を用いて測定した。電気化学インピーダンス分光法は、Solartron1260周波数応答分析装置とSolartron1287電気化学インターフェースを用いて開回路条件下で測定した。測定周波数範囲は1×106-0.08Hz、振幅は10mVであった。 粉末XRDパターンは、CuKα線(λ=0.15406nm)を用い40kV・200mAで動作するリガクD/max-2500/PC X線回折装置により20°-80°の2θ範囲において取得した。立方相の平均結晶子サイズはシェラー式から算出した。シェラー定数(粒子形状因子)は0.89とした。TiO2改質LSCFカソードのSEM写真は、5kVの電界放出型ガンを備えたJSM7800F顕微鏡を用いて撮影した。) エ 「3. Results and discussion 3.1. XRD characterization The interaction between LSCF and TiO2 was investigated by powder reaction. LSCF powder and TiO2 powder were mixed in a mass ratio of 4:1 and then calcined at various temperatures for 2 h. Figure 1 shows the XRD patterns of the LSCF-TiO2 composite oxide calcined at 750-1050 °C. For the LSCF-TiO2 composite oxide calcined at 750-800 °C, the characteristic peaks can be assigned to the perovskite LSCF phase and anatase phase of TiO2. For the LSCF-TiO2 composite oxide calcined at 850-1050 °C, the characteristic peaks of SrTi21O38 and CoFe2O4 started to appear in addition to the diffraction peaks of LSCF and TiO2. These results suggested that the LSCF started to react with TiO2 at 850 °C. The average size of nano-crystallite TiO2, SrTi21O38, and CoFe2O4 from the LSCF-TiO2 mixture that was sintered at 850 °C was calculated by the Scherrer equation to be 35, 28, and 33 nm, respectively. In addition, SrTiO3 can be formed from the reaction between LSCF and TiO2. Surface strontium enrichment on the LSCF, in the form of SrO or Sr(OH)2, is well known [16-20]. Sr-enriched LSCF can react with TiO2 to SrTiO3. However, the SrTiO3 phase cannot be detected by XRD in the presence of the LSCF phase because of the same peak position of the perovskite LSCF phase and SrTiO3 phase. In order to show SrTiO3 formation, TiO2 was blended with Sr(NO3)2 and calcined at 850 °C for 2 h. Figure 2 shows the XRD patterns of the TiO2-Sr(NO3)2 composite with different molar ratio of Ti:Sr after calcination. For the molar ratios of Ti:Sr = 1:1, the diffraction peaks of the SrTiO3 and Sr2TiO4 phases can be identified, indicating that SrTiO3 can be easily formed by the reaction of TiO2 with SrO. A similar conclusion was given for the reaction of Sr oxalate with TiO2 at 800 °C [21]. When the molar ratio of Ti:Sr was increased to 4:1, Sr2Ti6O13 phases were also identified besides the SrTiO3 and Sr2TiO4 phases. These observations indicated that SrTiO3 could be formed at 850 °C by the reaction of LSCF with TiO2. The reaction of LSCF with YSZ was characterized by XRD. LSCF powder and YSZ powder were mixed at a mass ratio of 2:1 and then calcined at various temperatures for 2 h. Figure 3 shows the XRD patterns of the LSCF-YSZ composite oxides calcined at 800-900 °C for 2 h. When the LSCF-YSZ composite oxide was calcined at 800 °C, all the peaks can be assigned to the perovskite LSCF phase and fluorite YSZ phase. With an increase of the calcination temperature, besides the characteristic peaks of LSCF and YSZ, diffraction peaks of SrZrO3 and CoFe2O4 were also found with the LSCF-YSZ composite oxide calcined at 850 and 900 °C, indicating that LSCF started to react with YSZ at 850 °C. LSCF, TiO2, and YSZ powder were mixed in a mass ratio of 4:1:2.5 and then calcined at various temperatures for 2 h. Figure 4 shows the XRD patterns of the LSCF-YSZ-TiO2 composite oxide calcined at 800-900 °C for 2 h. When the LSCF-YSZ-TiO2 composite oxide was calcined at 800 and 850°C, the peaks can be assigned to the perovskite LSCF, fluorite YSZ, anatase TiO2, and SrTi21O38 phases, respectively, indicating that TiO2 effectively prevented the formation of SrZrO3 from the reaction between LSCF and YSZ. When the calcination temperature was increased to 900 °C, besides the peaks of the LSCF, YSZ, TiO2 and SrTi21O38 phases, small peaks of SrZrO3 were also found, but the intensity was obviously smaller than that of the SrZrO3 from the LSCF-YSZ composite calcined at 900 °C. These results showed that TiO2 could prevent or suppress the reaction between LSCF and YSZ to form the SrZrO3 phase. 」(502頁右欄4行~503頁右欄4行) (翻訳; 3.結果と考察 3.1.XRDの評価 LSCFとTiO2の相互作用を粉末反応により調査した。LSCF粉末とTiO2粉末を質量比4:1で混合した後、様々な温度で2時間焼成した。図1は750-800℃で焼成したLSCF-TiO2複合酸化物のXRDパターンを示す。750-800℃で焼成したLSCF-TiO2複合酸化物では、特徴的なピークは、ペロブスカイト相のLSCFとTiO2のアナターゼ相に帰属できる。850-1050℃で焼成したLSCF-TiO2複合酸化物では、LSCF及びTiO2回折ピークに加え、SrTi21O38とCoFe2O4の回折ピークが出現し始めた。これらの結果から、LSCFは850℃でTiO2と反応を開始したことが示唆された。850℃で焼成したLSCF-TiO2混合物由来のナノ結晶TiO2、SrTi2O3、CoFe2O4の平均粒径は、シェラー式によりそれぞれ35nm、28nm、33nmと算出された。さらに、LSCFとTiO2の反応によりSrTiO3が生成し得る。LSCF表面におけるSrO又はSr(OH)2の形態のSr濃縮は既知である[16-20]。Srが濃縮されたLSCFはTiO2と反応してSrTiO3を生成する。しかし、ペロブスカイト型LSCF相とSrTiO3相の回折ピークの位置が同一であるため、LSCF相の存在下ではXRDでSrTiO3相を検出できない。SrTiO3の生成を示すため、TiO2にSr(NO3 )2を混合し850℃で2時間焼成した。図2は焼成後のTi:Srモル比が異なるTiO2-Sr(NO3)2複合体のXRDパターンを示す。Ti:Srモル比1:1の場合、SrTiO3相とSr2TiO4相の回折ピークが識別可能であり、TiO2とSrOの反応によりSrTiO3が容易に形成されることを示している。800℃におけるシュウ酸ストロンチウムとTiO2の反応についても同様の結論が得られた[21]。Ti:Srのモル比を4:2に増加させた場合、SrTiO3及びSr2TiO4相に加え、Sr2Ti6O13相も同定された。これらの結果はLSCFとTiO2の反応により850℃でSrTiO3が生成され得ることを示唆した。 LSCFとYSZの反応はXRDにより評価した。LSCF粉末とYSZ粉末を質量比2:1で混合し、その後様々な温度で2時間焼成した。図3は800-900℃で2時間焼成したLSCF-YSZ複合酸化物のXRDパターンを示す。800℃で焼成した場合、全てのピークはペロブスカイト相LSCFと蛍石相YSZに帰属できる。焼成温度の上昇に伴い、LSCFとYSZの回折ピークに加え、850℃及び900℃で焼成したLSCF-YSZ複合酸化物ではSrZrO3とCoFe2O4の回折ピークも検出された。これは850℃でLSCFがYSZと反応を開始したことを示している。 LSCF、TiO2、YSZ粉末を質量比4:1:2.5で混合し、様々な温度で2時間焼成した。図4は800-900℃で2時間焼成したLSCF-YSZ-TiO2複合酸化物のXRDパターンを示す。800℃及び850℃で焼成したLSCF-YSZ-TiO2複合酸化物は、回折ピークがそれぞれペロブスカイト相LSCF、蛍石相YSZ、アナターゼ相TiO2及びSrTi21O38相に帰属でき、TiO2がLSCFとYSZの反応によるSrZrO3の生成を効果的に抑制したことを示している。焼成温度を900℃に上昇させた場合、LSCF、YSZ、TiO2、SrTi21O38相のピークに加え、SrZrO3の微小なピークも検出されたが、その強度は900℃で焼成したLSCF-YSZ複合体由来のSrZrO3よりも明らかに小さかった。これらの結果はLSCFとYSZの反応をTiO2が防止または抑制し、SrZrO3相の形成を阻害することを示した。) オ 「3.3. Cell performance Figure 6 shows the current-voltage curves and corresponding power density of single cells with LSCF, LSCF-0.25 wt% TiO2, LSCF-0.5 wt% TiO2, LSCF-1 wt% TiO2, and LSCF-2 wt% TiO2 composite cathode at 600-750 °C. The current density of the cells with the LSCF cathode was 0.14 A/cm2 at 0.7 V and 600 °C. The cell with the TiO2-modified LSCF cathode showed better performance. The current density of the cells with LSCF-0.25 wt% TiO2, LSCF-0.5 wt% TiO2, and LSCF-1 wt% TiO2 were 0.23, 0.21, and 0.18 A/cm2 at 0.7 V and 600 °C, respectively. The significant segregation of Sr on the surface of LSCF in the form of SrO or Sr(OH)2 is well known [16-20]. Sr-enriched LSCF easily reacts with YSZ electrolyte to SrZrO3 and/or La2Zr2O7. As a result, the cell with LSCF on YSZ gave very poor performance. For the TiO2-modified LSCF cathode, TiO2 can react with Sr-enriched LSCF to give SrTiO3 and Sr2TiO4, which prevents or suppresses the formation of the non-conductive SrZrO3 layer at the cathode/electrolyte interface. Unlike SrZrO3, SrTiO3 and Sr2TiO4 improved the LSCF/YSZ interface due to good conductivity and improved cell performance [22]. With a further increase of TiO2 amount up to 2 wt% in the cathode, the current density of the cells with LSCF-2 wt% TiO2 was 0.12 A/cm2 at 0.7 V and 600 °C, which was lower than that of the cell with the LSCF cathode. When the content of TiO2 was too high, TiO2 reacted with LSCF to SrTi21O38 as shown by the XRD results, which led to the drop of cell performance. 」(505頁左欄1行~506頁右欄3行) (翻訳: 3.3 セルの性能 図6は600-750℃におけるLSCF、LSCF-0.25wt%TiO2、LSCF-0.5wt%TiO2、LSCF-1wt%TiO2、LSCF-2wt%TiO2複合カソードを有するセルの電流-電圧曲線および対応する電力密度を示す。LSCFカソードを有するセルの電流密度は、600℃、0.7Vにおいて0.14A/cm2であった。TiO2改質LSCFカソードを有するセルはより優れた性能を示した。LSCF-0.25wt%TiO2、LSCF-0.5wt%TiO2、LSCF-1wt%TiO2を有するセルの電流密度は、600℃、0.7Vにおいて、それぞれ0.23、0.21、0.18A/cm2であった。LSCF表面におけるSrO又はSr(OH)2形態でのSrの顕著な偏析は既知である[16-20]。Srが濃縮したLSCFはYSZ電解質と容易に反応し、SrZrO3及び/又はLa2Zr2O7を生成する。その結果、YSZ上にLSCFを用いたセルは非常に低い性能を示した。TiO2改質LSCFカソードでは、TiO2がSr濃縮LSCFと反応してSrTiO3及びSrTiO4を生成し、これによりカソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の生成を防止または抑制する。SrZrO3相とは異なり、SrTiO3及びSr2TiO4は優れた導電性によりLSCF/YSZ界面を改善し、セル性能を向上させた[22]。カソード中のTiO2量をさらに2wt%まで増加させた場合、LSCF-2wt%TiO2を用いたセルの電流密度は600℃、0.7Vで0.12A/cm2となり、LSCFカソードを用いたセルの電流密度を下回った。TiO2の含有量が高すぎると、XRDの結果が示すように、TiO2はLSCFと反応してSrTi21O38を生成し、セルの性能の低下につながった。) カ 「3.4. Electrochemical impedance analysis Figure 7 shows electrochemical impedance spectra (EIS) of the cells with LSCF, LSCF-0.25 wt% TiO2, LSCF-0.5 wt% TiO2, LSCF-1 wt% TiO2, and LSCF-2 wt% TiO2 cathodes at 600-750 °C. The ohmic resistance of cell showed very small differences, but the cell polarization resistance significantly varied with cathode composition. The polarization resistance (Rp) of the cells with the LSCF cathode was 9.5285 Ω cm2 at 600 °C. The Rp of the cells with LSCF-0.25 wt% TiO2, LSCF-0.5 wt% TiO2, and LSCF-1 wt% TiO2 were 5.1342, 7.1998, and 7.8421 Ω cm2, respectively, which decreased by 44%, 24%, and 18% compared with that of the cell with the LSCF cathode at 600 °C (Table 1). With a further increase of TiO2 to 2 wt% in the cathode, the Rp of the cell with LSCF-2 wt% TiO2 was 12.0989 Ω cm2 at 600 °C, which was larger than that of the cell with the LSCF cathode. The EIS results are also further shown in the form of Bode plots (Fig. 8). The impedance spectra of the cell with the LSCF and TiO2-modified LSCF cathode consisted of three arcs: a high frequency arc (summit frequency fsummit > 1000Hz), intermediate frequency arc (fsummit = 100 Hz), and low frequency arc (fsummit = 2.5Hz), reflecting at least three rate determining steps in the electrochemical reaction. The electrochemical impedance spectra at 600 °C were fitted by an equivalent circuit as shown in Fig. 9, which consisted of a high frequency arc RH, intermediate frequency arc RI, and low frequency arc RL. It can be seen that RH dramatically decreased with TiO2 addition, indicating that the corresponding process was accelerated by TiO2. RI increased with TiO2 addition. RL was unchanged with cathode composition. On the basis of the frequency of the impedance arcs and reported results [15,23,24], the corresponding processes of the cell with the LSCF cathode in the impedance spectra were identified. The high frequency arcs RH was related to the incorporation of oxygen anions into the electrolyte across the cathode/electrolyte interface. The intermediate frequency arc RI correlated with the dissociative adsorption of oxygen. The low frequency arc RL showed very little change with temperature and oxygen partial pressure and was due to gas diffusion with a very low activation energy in the anode. TiO2 mainly caused the change in the high frequency arc and affected the incorporation of oxygen anions into the electrolyte across the cathode/electrolyte interface. TiO2 suppressed the formation of the inactive SrZrO3 layer at the interface of the cathode/electrolyte and decreased interfacial losses. 」(506頁右欄4行~507頁下から9行) (翻訳: 3.4 電気化学インピーダンス解析 図7は600-750℃におけるLSCF、LSCF-0.25wt%TiO2、LSCF-0.5wt%TiO2、LSCF-1wt%TiO2、LSCF-2wt%TiO2カソードを有するセルの電気化学インピーダンス分光法(EIS)スペクトルを示す。セルのオーム抵抗はわずかな差異しかなかったが、セルの分極抵抗はカソード組成によって大きく変化した。LSCFカソードを用いたセルの分極抵抗(Rp)は600℃で9.5285Ωcm2であった。LSCF-0.25wt%TiO2、LSCF-0.5wt%TiO2、LSCF-1wt%TiO2を含むセルのRpはそれぞれ5.1342、7.1998、7.8421Ωcm2であり、それぞれ600℃におけるLSCFカソードを含むセルと比較して44%、24%、18%減少した(表1)。さらにTiO2を2wt%に増加させたLSCF-2wt%TiO2を用いたセルのRpは600℃で12.0989Ωcm2となり、LSCFカソードを用いたセルの値よりも大きかった。 EISの結果はさらにボード線図の形で示される(図8)。LSCF及びTiO2修飾LSCFカソードを有するセルのインピーダンススペクトルは、高周波弧(頂点周波数>1000Hz)、中間周波数弧(頂点周波数=100Hz)、低周波弧(頂点周波数=2.5Hz)の3つの弧で構成され、電気化学反応における少なくとも3つの速度決定段階を反映している。600℃における電気化学インピーダンススペクトルは、図9に示す等価回路でフィッティングされた。これは高周波弧RH、中間周波数弧RI、低周波弧RLで構成される。TiO2の添加に伴いRHが劇的に減少したことから、対応するプロセスがTiO2によって促進されたことが示唆される。RIはTiO2の添加に伴い増加した。RLはカソード組成に依存せず変化しなかった。インピーダンスアークの周波数と既報の結果[15,23,24]に基づき、インピーダンススペクトルにおけるLSCFカソードを有するセルの対応するプロセスを同定した。高周波弧RHは、カソード/電解質界面を越えた電解質への酸素陰イオンの取り込みに関連していた。中間周波数弧RIは酸素の解離吸着と相関していた。低周波数弧RLは温度や酸素分圧による変化が極めて小さく、アノードにおける活性化エネルギーが非常に低いガス拡散に起因する。TiO2は主に高周波数弧の変化を引き起こし、カソード/電解質界面を越えた電解質への酸素陰イオンの取り込みに影響した。TiO2はカソード/電解質界面における不活性なSrZrO3相の形成を抑制し、界面損失を減少させた。) (2)上記(1)によれば、次のことがいえる。 ア 上記(1)アによれば、甲第2号証には、固体酸化物形燃料電池セルが記載されているといえる。 イ 上記(1)ウによれば、セルは、TiO2とLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ(LSCF)が混合されたLSCF-TiO2複合酸化物を含むカソードスラリーを、アノード-電解質2層構造体のYSZ電解質上に塗布し、850℃で2時間焼成して製造されるといえる。 ウ 上記(1)アの「TiO2はLSCFとYSZの反応を防止し、これによりSrZrO3相の形成が回避された。・・・。この改善はカソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成が抑制されたことに起因する」、同エの「LSCFは850℃でTiO2と反応を開始し・・・、LSCFとTiO2の反応によりSrTiO3が生成し得る。・・・。これらの結果はLSCFとTiO2の反応により850℃でSrTiO3が生成され得ることを示唆した。・・・、TiO2がLSCFとYSZの反応によるSrZrO3の生成を効果的に抑制したことを示している。・・・。これらの結果はLSCFとYSZの反応をTiO2が防止または抑制し、SrZrO3相の形成を阻害することを示した。」、同オの「TiO2改質LSCFカソードでは、TiO2がSr濃縮LSCFと反応してSrTiO3・・・を生成し、これによりカソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の生成を防止または抑制する。」、の各記載から、TiO2は、850℃でLSCFと反応してSrTiO3を生成して、LSCFとYSZの反応によるSrZrO3の生成を抑制し、カソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成を抑制するといえる。 エ 上記(1)アの「0.25wt%のTiO2を添加したLSCFカソード」、上記(1)オの「LSCF-0.5wt%TiO2、LSCF-1wt%TiO2、LSCF-2wt%TiO2複合カソードを有するセル」、同「LSCF-0.5wt%TiO2、LSCF-1wt%TiO2を有するセル」、の各記載によれば、カソードには、LSCFに対して0.5wt%、1wt%、又は、2wt%のTiO2が添加されているといえる。 オ 上記(1)ウによれば、セルには、燃料として加湿H2(3%H2O)、酸化剤として純O2が供給される。 また、上記(1)アの「TiO2を添加したLSCFではYSZ電解質への酸素陰イオンの取り込みが促進される」、上記(1)カの「カソード/電解質界面を越えた電解質への酸素陰イオンの取り込み」、との各記載によれば、カソードでは酸素陰イオンが取り込まれるといえる。 (3)上記(2)によれば、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 「固体酸化物形燃料電池セルであって、 セルは、TiO2とLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ(LSCF)が混合されたLSCF-TiO2複合酸化物を含むカソードスラリーを、アノード-電解質2層構造体のYSZ電解質上に塗布し、850℃で2時間焼成して製造され、 TiO2は、850℃でLSCFと反応してSrTiO3を生成して、LSCFとYSZの反応によるSrZrO3の生成を抑制し、カソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成を抑制し、 カソードには、LSCFに対して0.5wt%、1wt%、又は、2wt%のTiO2が添加され、 セルには、燃料として加湿H2(3%H2O)、酸化剤として純O2が供給され、カソードでは酸素陰イオンが取り込まれる、 固体酸化物形燃料電池セル。」 (4)上記(1)によれば、次のこともいえる 上記(1)アの「固体酸化物形燃料電池・・・TiO2を添加したLSCFカソードを有するセル」、同ウの「セルを製造した。アノード-電解質2層構造体・・・。La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ(LSCF)粉末・・・。・・・TiO2・・・とLSCF・・とを・・混合した。乾燥LSCF-TiO2複合酸化物・・・カソードスラリーをYSZ電解質上に塗布し、850℃で2時間焼成した。カソードの厚さは35μmであった。」との記載によれば、甲第2号証には、TiO2とLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ(LSCF)とを混合したLSCF-TiO2複合酸化物を含むカソードスラリーを、アノード-電解質2層構造体のYSZ電解質上に塗布し、850℃で2時間焼成する固体酸化物形燃料電池セルの製造方法が記載されているといえる。 (5)上記(4)によれば、上記(2)、(3)も踏まえると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明A」という。)が記載されているといえる。 「TiO2とLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ(LSCF)とを混合したLSCF-TiO2複合酸化物を含むカソードスラリーを、アノード-電解質2層構造体のYSZ電解質上に塗布し、850℃で2時間焼成する固体酸化物形燃料電池セルの製造方法であって、 TiO2は、850℃でLSCFと反応してSrTiO3を生成して、LSCFとYSZの反応によるSrZrO3の生成を抑制し、カソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成を抑制し、 セルには、燃料として加湿H2(3%H2O)、酸化剤として純O2が供給され、カソードでは酸素陰イオンが取り込まれる、 固体酸化物形燃料電池セルの製造方法。」 3 甲第3号証 (1)甲第3号証には、次の記載がある。 「【0002】 近年、次世代エネルギーとして、燃料ガス(水素含有ガス)と酸素含有ガス(通常、空気である)とを用いて電力を得ることができる燃料電池セルが開発されている。燃料電池セル(以下、セルということがある。)は、固体電解質層を燃料極層と酸素極層とで挟んだ構造を有している。セルは、燃料極層に燃料ガスを、酸素極層に酸素含有ガスを流し、セルを1000~1050℃に加温することによって発電する(例えば特許文献1参照)。 【0003】 また、特許文献1においては、酸素極層と固体電解質層との間には中間層が設けられる。この酸素極層を構成するLSCF(La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3)粉末の粒径は1μm以下であることが開示されている。 【0004】 また、特許文献2においては、酸素極層と固体電解質層との間にはCeO2系の中間層が設けられることが開示されている。」 「【0007】 本発明の目的は、出力密度の低下を抑制し、長期信頼性の向上したセル、セルスタック装置、モジュール、およびモジュール収容装置を提供することである。」 「【0015】 このセル1は、いわゆる中空平板型の燃料電池セルである。セル1は、導電性支持体(以下、単に支持体と略す。)2、燃料極層8、固体電解質層9(以下、単に電解質層と略す。)、中間層12、および酸素極層10を備える。」 「【0032】 電解質層9は、燃料極層8、酸素極層10間の電子の橋渡しをする電解質としての機能を有していると同時に、燃料ガスと酸素含有ガスとのリークを防止するためにガス遮断性を有することが必要とされる。本実施態様では、3~15モル%のY、Sc、Yb等の希土類元素の酸化物を含有した部分安定化あるいは安定化ZrO2からなるセラミックス(固体酸化物)が用いられている。また、希土類元素としては、安価であるという点からYが用いられている。電解質層9は、例えば、LaGaO3系の材質であっても良く、上記特性を有する限りにおいては、他の材料であってもよいことは勿論である。本実施態様において、電解質層9の厚みは10~40μmである。特に、電解質層9におけるガス透過を抑制するため、電解質層の厚みは20~40μmである。 ・・・(中略)・・・。 【0036】 中間層12は、酸素極層10と電解質層9との間に、両者間の反応を防止する目的で設けられる。本実施態様では、CeO2の焼結体の他、Ce以外の他の希土類元素の酸化物を含有するCeO2系焼結体を含むものとする。Ce以外の他の希土類元素の酸化物を含有するCeO2系焼結体としては、例えば、(CeO2)1-x(REO1.5)x(式中、REはSm、Y、Yb、Gdの少なくとも1種であり、xは0<x≦0.3を満足する数)で表される組成からなる。さらには、電気抵抗を低減するという点から、REとしてSmやGdを用いられ、例えば10~20モル%のSmO1.5またはGdO1.5が固溶したCeO2からなる。 【0037】 酸素極層10は、Laを含有してなるペロブスカイト型複合酸化物の粒子を含んでいる。かかるペロブスカイト型複合酸化物として、遷移金属ペロブスカイト型酸化物が好ましい。遷移金属ペロブスカイト型酸化物は、例えば、AサイトにSrとLaが共存する複合酸化物が好ましい。このような複合酸化物の例としては、LaxSr1-xCoyFe1-yO3、LaxSr1-xMnO3、LaxSr1-xFeO3、LaxSr1-xCoO3等が挙げられる。なお、xは0<x<1、yは0<y<1である。」 「【図1】 [図:0001437415000002.jpg] 」 (2)上記(1)によれば、次のことがいえる。 ア 段落【0015】によれば、甲第3号証には、燃料極層8、固体電解質層9、中間層12、および酸素極層10を備える燃料電池セルが記載されている。 また、図1(a)によれば、燃料極層8、固体電解質層9、中間層12、および酸素極層10がこの順に積層されていることが見て取れる。 イ 段落【0032】によれば、電解質層9は、希土類元素の酸化物を含有した部分安定化あるいは安定化ZrO2からなるセラミックス(固体酸化物)が用いられている。 ウ 段落【0036】によれば、中間層12は、酸素極層10と電解質層9との間に、両者間の反応を防止する目的で設けられ、(CeO2)1-x(REO1.5)x(式中、REはSm、Y、Yb、Gdの少なくとも1種であり、xは0<x≦0.3を満足する数)で表される組成からなる。 エ 段落【0037】によれば、酸素極層10は、LaxSr1-xCoyFe1-yO3等のペロブスカイト型複合酸化物を含む。 (3)上記(2)によれば、甲第3号証には、次の技術(以下、「甲第3号証に記載された技術」という。)が記載されているといえる。 「燃料極層8、固体電解質層9、中間層12、および酸素極層10がこの順に積層されている燃料電池セルであって、電解質層9は、希土類元素の酸化物を含有した部分安定化あるいは安定化ZrO2からなるセラミックス(固体酸化物)が用いられ、中間層12は、酸素極層10と電解質層9との間に、両者間の反応を防止する目的で設けられ、(CeO2)1-x(REO1.5)x(式中、REはSm、Y、Yb、Gdの少なくとも1種であり、xは0<x≦0.3を満足する数)で表される組成からなり、酸素極層10は、LaxSr1-xCoyFe1-yO3等のペロブスカイト型複合酸化物を含むこと。」 4 甲第4号証 (1)甲第4号証には、次の記載がある。 「【0001】 本発明は、固体酸化物形燃料電池用カソード、固体酸化物形燃料電池単セル、および、固体酸化物形燃料電池に関する。 「【0016】 カソード1は、導電性酸化物11と捕集材12とを含んでいる。導電性酸化物11は、カソード骨格を形成するためのものである。導電性酸化物11としては、例えば、遷移金属ペロブスカイト型酸化物などを例示することができる。導電性酸化物11としては、具体的には、La、Sr、Sm、Co、Fe、Ni、Mn、および、Caからなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む酸化物などを例示することができる。この構成によれば、高いカソード活性を有することにより、発電性能を良好に保つのに有利なカソード1が得られる。」 「【0019】 捕集材12は、供給される酸化剤ガスAに含まれて導電性酸化物11を被毒する被毒物質を捕集するためのものである。なお、捕集層12による被毒物質の捕集には、被毒物質との化学反応が含まれる。被毒物質は、具体的には、S元素を含むことができる。この場合、被毒物質には、S元素単体のみならず、S元素を含有する化合物なども含まれる(以下、S元素単体およびS元素を含有する化合物をまとめてS成分ということがある。)。カソード1に用いられる導電性酸化物11は、S元素を含む被毒物質により被毒されやすい。そのため、上記構成によれば、供給される酸化剤ガスAに含まれるS元素を含む被毒物質を、カソード表層部10で捕集材12が先に捕集することによって、カソード1の本体をなすカソード本体部13に含まれるカソード反応部130へのS元素を含む被毒物質の到達を長時間遅延させることが可能なカソード1が得られる。なお、酸化剤ガスAは、カソード面内方向に沿って供給することができる。S元素を含む被毒物質としては、具体的には、例えば、S、SOx、COS、H2S、CS2、CH3SHなどを例示することができる。これらは1種または2種以上の組み合わせであってもよい。 【0020】 捕集材12は、カソード表層部10に存在している。カソード表層部10は、供給される酸化剤ガスAがカソード1内に最初に入り込むカソード外表面、および、当該カソード外表面よりもカソード内方の領域でカソード外表面寄りの部分を含む。したがって、固体電解質層3側とは反対側のカソード面寄りの部分は、カソード表層部10に含まれる。また、カソード1の厚み方向に沿う端面寄りの部分は、カソード表層部10に含まれる。なお、固体電解質層3側のカソード面は、後述する固体電解質層3または中間層4に接合される面であり、当該面寄りの部分は、カソード表層部10ではなく、発電時にカソード反応が生じるカソード反応部130を含む部分である。本実施形態では、図2に例示されるように、固体電解質層3側とは反対側のカソード面寄り部分に、捕集材12が存在している例が示されている。このように、捕集材12は、カソード表層部10に偏在しているといえる。捕集材12は、少なくともカソード表層部10に存在しておれば、カソード表層部10に加え、カソード本体部13にも一部含まれていてもよい。なお、カソード1における捕集材12の存在および分布は、イオンミリング法等を用いて断面加工されたカソード1の面内方向に垂直な断面を、走査型電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いて定量分析を実施することにより、確認することができる。」 「【0041】 本実施形態では、単セル5は、具体的には、アノード2と固体電解質層3とカソード1とを有している。単セル5は、図3に例示されるように、固体電解質層3とカソード1との間に中間層4をさらに備えることができる。中間層4は、主に、固体電解質層材料とカソード材料との反応を抑制するための層である。本実施形態では、単セル5は、具体的には、アノード2、固体電解質層3、中間層4、および、カソード1がこの順に積層され、互いに接合されている。単セル5は、平板形、円筒形のいずれの電池構造であってもよい。本実施形態では、図3に例示されるように、単セル5が、平板形の電池構造を有する例が示されている。より具体的には、単セル5は、電極であるアノード2を支持体として機能させるアノード支持型とされている。平板形の電池構造を有する単セル5は、発電性能が高い等の利点がある。なお、図示はしないが、円筒形の電池構造を有する単セル5とした場合には、最外周にカソード1を配置することで、カソード1に対して径方向から可視光を当てやすくなる。そのため、この場合には、捕集材12がTiO2を含む場合に、上述したTiS2による光触媒効果を発揮させやすくなる利点がある。 【0042】 単セル5において、酸化剤ガスAは、外部からカソード面内方向に沿って供給される。一方、燃料ガス(不図示)は、外部からアノード面内方向に沿って供給される。酸化剤ガスAとしては、例えば、空気や酸素等を例示することができる。燃料ガスとしては、例えば、水素ガス等を例示することができる。」 「【0063】 (実験例1) <材料準備> NiO粉末(平均粒子径:1.0μm)と、8mol%のY2O3を含むイットリア安定化ジルコニア(以下、8YSZ)粉末(平均粒子径:0.8μm)と、カーボン(造孔剤)と、ポリビニルブチラール(バインダー)と、酢酸イソアミル、2-ブタノールおよびエタノール(混合溶媒)とをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。NiO粉末と8YSZ粉末との質量比は、60:40とした。上記スラリーを、ドクターブレード法を用いて、樹脂シート上に層状に塗工し、乾燥させた後、樹脂シートを剥離することにより、アノードの拡散層形成用シートを準備した。なお、上記平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定した体積基準の累積度数分布が50%を示すときの粒子径(直径)d50である(以下、同様)。 【0064】 NiO粉末(平均粒子径:1.0μm)と、8YSZ粉末(平均粒子径:0.8μm)と、カーボンと、ポリビニルブチラールと、酢酸イソアミルおよび1-ブタノールとをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。NiO粉末と8YSZ粉末の質量比は、60:40である。以降は、拡散層形成用シートの作製と同様にして、アノードの活性層形成用シートを準備した。なお、上記拡散層形成用シートにおけるカーボン(造孔剤)量は、上記活性層形成用シートにおけるカーボン量と比較して多量とされている。 【0065】 8YSZ粉末(平均粒子径:0.8μm)と、ポリビニルブチラールと、酢酸イソアミル、2-ブタノールおよびエタノールとをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。以降は、拡散層形成用シートの作製と同様にして、固体電解質層形成用シートを準備した。 【0066】 10mol%のGdがドープされたCeO2(以下、10GDC)粉末(平均粒子径:0.8μm)と、ポリビニルブチラールと、酢酸イソアミル、2-ブタノールおよびエタノールとをボールミルにて混合することによりスラリーを調製した。以降は、拡散層形成用シートの作製と同様にして、中間層形成用シートを準備した。 【0067】 捕集材の原料であるTiO2粉末(平均粒子径:0.15μm、理論密度:3.9g/cm3)と、分散剤と、テルピネオール(溶媒)とを混合し、ボールミルにて解砕した。次いで、これに、導電性酸化物の原料であるLa0.6Sr0.4CoO3(以下、LSC)粉末(平均粒子径:2μm、理論密度:6.3g/cm3)と、カーボンと、エチルセルロース(バインダー)と、レベリング剤と、沈降防止剤とを加え、プラネタリーミキサーにて撹拌した後、さらに、三本ロールを用いて混練することにより、カソード形成用ペースト(1)を準備した。なお、LSC粉末とTiO2粉末の質量比は、96:4である。 【0068】 LSC粉末に加え、さらに10GDC粉末(平均粒子径:0.8μm)を添加した点以外は、カソード形成用ペースト(1)の調製と同様にして、カソード形成用ペースト(2)を準備した。なお、なお、LSC粉末と10GDC粉末とTiO2粉末の質量比は、68:30:2である。なお、各カソード形成用ペーストに用いたTiO2は、400℃以上の温度域である、550℃以上の温度域で硫化する電気絶縁性の材料である。 【0069】 <カソード、単セルの作製> 複数枚の拡散層形成用シート、活性層形成用シート、固体電解質層形成用シート、および、中間層形成用シートをこの順に積層し、静水圧プレス(WIP)成形法を用いて圧着することにより、圧着体を得た。圧着体は、圧着後に脱脂した。なお、WIP成形条件は、温度80℃、加圧力50MPa、加圧時間10分という条件とした。 【0070】 次いで、圧着体を1350℃で2時間焼成した。これにより、拡散層(厚み500μm)および活性層(厚み50μm)より構成されるアノード、固体電解質層(厚み10μm)、および、中間層(厚み10μm)がこの順に積層された焼結体を得た。 【0071】 次いで、上記焼結体における中間層の表面に、カソード形成用ペースト(1)をスクリーン印刷法により均一に塗布した。そして、この塗膜のレベリングのため、25℃にて30分間静置した。その後、このカソード形成用ペースト(1)による塗膜が形成された焼結体を60℃の恒温槽に入れ、塗膜を乾燥させた。恒温槽には、一方向へ温風が流れるように温風ヒーターが設置されている。また、上記塗膜の乾燥は、塗膜の膜面に温風が当たるように実施した。上記乾燥後の塗膜を、1000℃にて2時間焼き付けすることにより、カソード(厚み50μm)を形成した。以上により、試料1のカソードおよび単セルを得た。 ・・・(中略)・・・。 【0073】 また、カソード形成用ペースト(1)に代えてカソード形成用ペースト(2)を用いた以外は試料2と同様にして、試料3のカソードおよび単セルを得た。 【0074】 <カソードの詳細調査> 上述した方法を用いて、各試料のカソードにおける捕集材の分布、濃度を確認した。その結果、試料1のカソードでは、図1に示されるように、カソード表層部のうち、固体電解質層側とは反対側のカソード面寄りの部分に多くの捕集材が存在していた。また、試料2および試料3のカソードでは、図4に示されるように、カソード表層部のうち、固体電解質層側とは反対側のカソード面寄りの部分と、温風を当てたカソードの厚み方向に沿う端面寄りの部分に、多くの捕集材が存在していた。また、各試料のカソードでは、捕集材の濃度が、カソード内部からカソード外表面に向かって高くなっていることが確認された。また、カソード表層部における捕集材の濃度は、カソード反応部における捕集材の濃度よりも大きいことが確認された。 ・・・(中略)・・・。 【0079】 よって、上記各試料のカソード、単セルによれば、発電に寄与するカソード反応部への被毒物質の到達を長時間遅延させることができ、発電信頼性の向上に有利であることが確認された。また、本実験例で用いた捕集材のTiO2における格子酸素とS成分のS元素とが置き換わって生じたTiS2は、500~600nmの可視光が当たることで光触媒として機能する。そのため、上記各試料の単セルによれば、単セルを複数有する固体酸化物形燃料電池において、カソードに可視光が入射するように構成すれば、TiS2により、カソード周囲の酸化剤ガス中に含まれうるSOx等を分解することが可能となり、SOx被毒に対する耐性の向上に有利であることがわかる。」 「【図3】 [図:0001437415000003.jpg] 」 (2)上記(1)によれば、次のことがいえる。 ア 段落【0001】によれば、甲第4号証には、固体酸化物形燃料電池単セルが記載されている。 また、段落【0041】によれば、単セルは、アノード2、固体電解質層3、中間層4、および、カソード1がこの順に積層されている。 そして、段落【0042】によれば、カソードに空気や酸素等の酸化剤ガスが供給され、アノードに水素ガスが供給される。 さらに、段落【0016】、【0019】、【0020】によれば、カソード1は、導電性酸化物11と、カソード表層部10に存在し供給される酸化剤ガスに含まれて導電性酸化物11を被毒する被毒物質を捕集するための捕集材12とを含む。 イ 段落【0063】~【0073】によれば、実験例1における試料1又は試料3の単セルにおいて、固体電解質は、Y2O3を含むイットリア安定化ジルコニア(8YSZ)を含み(段落【0063】、【0065】)、中間層は、GdがドープされたCeO2(10GDC)を含み(段落【0066】)、カソードは、導電性酸化物であるLa0.6Sr0.4CoO3(LSC)と捕集材であるTiO2とを質量比96:4で含むか、又は、LSCと10GDCとTiO2とを質量比68:30:2で含む(段落【0067】、【0068】)。 ウ 段落【0074】によれば、試料1又は試料3の単セルでは、カソード表層部のうち、固体電解質層側とは反対側のカソード面寄りの部分に多くの捕集材が存在する。 (3)上記(2)によれば、甲第4号証には、実験例1における試料1又は試料3の単セルに基づく次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されているといえる。 「水素ガスが供給されるアノード2、固体電解質層3、中間層4、および、空気又は酸素等の酸化剤ガスが供給されるカソード1がこの順に積層され、カソード1は、導電性酸化物11と、カソード表層部10に存在し供給される酸化剤ガスに含まれて導電性酸化物11を被毒する被毒物質を捕集するための捕集材12とを含む、固体酸化物形燃料電池単セルであって、 固体電解質は、Y2O3を含むイットリア安定化ジルコニア(8YSZ)を含み、中間層は、GdがドープされたCeO2(10GDC)を含み、カソードは、導電性酸化物であるLa0.6Sr0.4CoO3(LSC)と捕集材であるTiO2とを質量比96:4で含むか、又は、LSCと10GDCとTiO2とを質量比68:30:2で含み、 カソード表層部のうち、固体電解質層側とは反対側のカソード面寄りの部分に多くの捕集材が存在する、 固体酸化物形燃料電池単セル。」 (4)上記(1)によれば、次のこともいえる。 ア 段落【0063】~【0073】によれば、実験例1における試料1の単セルの製造方法は、アノードの拡散層形成用シート(段落【0063】)、アノードの活性層形成用シート(段落【0064】)、Y2O3を含むイットリア安定化ジルコニア(8YSZ)を含む固体電解質層形成用シート(段落【0065】)、GdがドープされたCeO2(10GDC)を含む中間層形成用シート(段落【0066】)、捕集材であるTiO2と導電性酸化物であるLa0.6Sr0.4CoO3(LSC)とを含むカソード形成用ペースト(段落【0067】)を準備する工程と、アノードの拡散層形成用シート、アノードの活性層形成用シート、固体電解質層形成用シート、および、中間層形成用シートをこの順に積層して圧着し、次いで、1350℃で2時間焼成してアノード、固体電解質層、および、中間層がこの順に積層された焼結体を得る工程(段落【0069】、【0070】)と、焼結体における中間層の表面に、カソード形成用ペーストを塗布し乾燥させ、乾燥後1000℃にて2時間焼き付け、カソードを形成して単セルを得る工程(段落【0071】)とを備えるといえる。 また、段落【0079】によれば、試料1、3の単セルは固体酸化物形燃料電池の単セルであるといえる。 イ 段落【0042】によれば、カソードに空気や酸素等の酸化剤ガスが供給され、アノードに水素ガスが供給される。 ウ 段落【0019】によれば、捕集材12は、供給される酸化剤ガスに含まれて導電性酸化物11を被毒する被毒物質を捕集するためのものであり、段落【0074】によれば、試料1の単セルでは、カソード表層部のうち、固体電解質層側とは反対側のカソード面寄りの部分に多くの捕集材が存在する。 (5)上記(4)によれば、甲第4号証には、実験例1における試料1の単セルの製造方法に基づく次の発明(以下、「甲4発明A」という。)が記載されているといえる。 「固体酸化物形燃料電池単セルの製造方法であって、 アノードの拡散層形成用シート、アノードの活性層形成用シート、Y2O3を含むイットリア安定化ジルコニア(8YSZ)を含む固体電解質層形成用シート、GdがドープされたCeO2(10GDC)を含む中間層形成用シート、捕集材であるTiO2と導電性酸化物であるLa0.6Sr0.4CoO3(LSC)とを含むカソード形成用ペーストを準備する工程と、 アノードの拡散層形成用シート、アノードの活性層形成用シート、固体電解質層形成用シート、および、中間層形成用シートをこの順に積層して圧着し、次いで、1350℃で2時間焼成してアノード、固体電解質層、および、中間層がこの順に積層された焼結体を得る工程と、 焼結体における中間層の表面に、カソード形成用ペーストを塗布し乾燥させ、乾燥後1000℃にて2時間焼き付け、カソードを形成して単セルを得る工程とを備え、 カソードに空気や酸素等の酸化剤ガスが供給され、アノードに水素ガスが供給され、 捕集材12は、供給される酸化剤ガスに含まれて導電性酸化物11を被毒する被毒物質を捕集するためのものであり、カソード表層部のうち、固体電解質層側とは反対側のカソード面寄りの部分に多くの捕集材が存在する、 固体酸化物形燃料電池単セルの製造方法。」 第5 申立理由に対する当審の判断 1 申立理由1(進歩性)について (1)甲第1号証を主引例とした進歩性について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 a 甲第1号証の段落【0017】に「固体電解質として固体酸化物セラミックスを用いる燃料電池は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)と称される。」と記載されているところ、甲1発明の「酸化ジルコニウム系酸化物」は固体酸化物セラミックスであることから、甲1発明の「酸化ジルコニウム系酸化物から構成される固体電解質層10」を有する「燃料電池単セル1」は、固体酸化物形燃料電池セルといえる。 そうすると、甲1発明の「酸化ジルコニウム系酸化物から構成される固体電解質層10」を有する「燃料電池単セル1」は、本件発明1の「固体酸化物形電気化学セル」に相当する。 b 一般に、固体酸化物形燃料電池のアノードに供給される燃料ガスとして水素を用いることは文献を挙げるまでもなく技術常識であり、甲1発明の「燃料ガス」として水素を用いることは当然想定されていることであるから、甲1発明の「燃料ガス」が「供給される」「アノード11」は、本件発明1の「水素極」に相当する。 c 固体酸化物形燃料電池のアノードの対極であるカソードに供給されるガスとして酸素や空気等を用いることも文献を挙げるまでもなく技術常識であり、甲1発明の「カソード」に酸素や空気等を供給することも当然想定されていることであるから、甲1発明の「カソード12」は、本件発明1の「酸素極」に相当する。 また、甲1発明の「Srを含有するペロブスカイト型酸化物」は、本件発明1の「ストロンチウム含有複合酸化物」に相当する。 そうすると、甲1発明の「Srを含有するペロブスカイト型酸化物」を含む「カソード12」と本件発明1の「酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極」とは、「ストロンチウム含有複合酸化物を含む酸素極」である点で共通する。 d 甲1発明の「酸化ジルコニウム系酸化物から構成される固体電解質層10」は、本件発明1の「ジルコニウム酸化物を含む固体電解質」に相当する。 e 甲1発明の「セリアに希土類元素がドープされたセリア系固溶体」は、本件発明1の「希土類添加酸化セリウム」に相当する。 そうすると、甲1発明の「固体電解質層10とカソード12との間に設けられ、セリアに希土類元素がドープされたセリア系固溶体からなる中間層13」は、上記c、dも踏まえると、本件発明1の「固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層」に相当する。 f 甲1発明の「ペロブスカイト型酸化物は、La1-xSrxCo1-yFeyO3(x=0.4、y=0.8、以下、LSCF)であ」ることは、本件発明1の「ストロンチウム含有複合酸化物は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物(Aは、少なくともSrを含み、La及びCaから選択される一種以上の元素を表し、BはMn,Co,Fe及びNiから選択される一種以上の元素を表す。)であ」ることに相当する。 g 上記a~fによれば、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「固体酸化物形電気化学セルであって、 ストロンチウム含有複合酸化物を含む酸素極と、 ジルコニウム酸化物を含む固体電解質と、 水素極と、 前記固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層と、 を備え、 前記ストロンチウム含有複合酸化物は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物(Aは、少なくともSrを含み、La及びCaから選択される一種以上の元素を表し、BはMn,Co,Fe及びNiから選択される一種以上の元素を表す。)である、セル。」 (相違点1) 酸素極に関し、本件発明1は「酸化チタン」を含み、「前記酸化チタンを、前記酸素極において前記ストロンチウム含有複合酸化物のSrの熱拡散を抑制し高抵抗相の形成を抑制可能に備え」るのに対し、甲1発明の「カソード」は酸化チタンを含まない点。 (相違点2) 本件発明1は「酸化チタンを前記ストロンチウム含有複合酸化物の全量に対して0.5質量%以上8.0質量%以下含有する」のに対し、甲1発明はその旨特定されていない。 (イ)判断 相違点1について検討する。 a 甲第2号証(上記第4の2(3)を参照。)には、「TiO2」と「LSCF」を含む「カソード」を有し、「TiO2は、850℃でLSCFと反応してSrTiO3を生成して、LSCFとYSZの反応によるSrZrO3の生成を抑制し、カソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成を抑制」する「固体酸化物形燃料電池セル」に係る甲2発明が記載されている。 b しかしながら、甲第2号証に「例えば、Gd添加CeO2(GDC)を中間層としてカソードとYSZ電解質との直接接触を回避する方法[6-8]や、カソード材料(例えばLa1-xSrxCoyFe1-yO3-δ)をYSZ骨格に浸透させ低温焼成することで不要な界面反応を回避する方法[9]が提案されている。しかし、これらの方法はセル製造のコストと複雑さを増やし、GDC中間層とYSZ電解質との間に新たな界面損失をもたらす。従ってZrO2系(YSZ等)電解質上にLSCFカソードを直接適用する新たな方法の開発が有用である。」(上記第4の2(1)イ参照。)と記載されているとおり、そもそも甲2発明は「中間層」を形成するものではない。 そして、甲1発明は、「中間層」の「粒界相」に「TiO2」を含有させるものであって、甲第1号証には、「TiO2」を「中間層」以外の他の層に含有させる記載や示唆はなく、甲1発明の「カソード」に「TiO2」を含有させる理由もない。 そうすると、甲第1号証に接した当業者は、甲1発明に甲2発明を適用することを容易に想到し得ない。 c そして、甲第1号証によれば、甲1発明は、固体電解質層と中間層との間の界面に生成するSrZrO3を抑制することができ、かつ、耐久性の向上に有利な燃料電池単セルを提供するという課題(段落【0009】を参照。なお、下線は当審で付与。)を解決するために成されたものであるところ、甲第1号証の段落【0012】、【0013】、【0063】及び【0064】によれば、カソードの組成に由来し、固体電解質層側へ拡散したSrが中間層で捕捉され形成されたSrTiO3は、熱膨張係数が11.1×10-6/℃程度であり、固体電解質の熱膨張係数との差が小さいため、中間層と固体電解質層との間の熱膨張差に起因する層間剥離や亀裂等の構造欠陥が生じ難く、燃料電池単セルは耐久性の向上に有利であることが記載されている。 そうすると、仮に、甲1発明における「TiO2」を「中間層」の「粒界相」ではなく「カソード」に含有させた場合、「耐久性の向上」させるという課題を解決できないことは明らかであるから、「TiO2」を「中間層」の「粒界相」ではなく「カソード」に含有させることには、むしろ阻害要因があるといえる。 d よって、上記b、cによれば、当業者は、甲1発明に甲2発明を適用することを容易に想到し得ない。 (ウ)異議申立人の主張について a 異議申立人は、異議申立書において、甲2発明は、甲1発明と同様に固体酸化物形燃料電池の技術分野に関するものであり、LSCFとYSZとの反応をTiO2が防止し、酸素極/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成を抑制するものであって、甲2発明が燃料電池の性能を向上させる機序は甲1発明と同じであるため、中間層にTiO2を添加する代わりに、LSCFにTiO2を0.5wt%又は1wt%添加した甲2発明の酸素極を、甲1発明の酸素極に適用する動機付けはある(35頁下から7~2行)。また、甲2発明が中間層を省いていることは、固体電解質と酸素極との間に中間層が設けられた燃料電池単セル(甲1発明)に甲2発明を適用することを阻害する事情に該当しない(35頁末行~36頁5行)旨主張する。 b 異議申立人の上記主張について検討する。 上記(イ)bのとおり、甲第1号証に接した当業者は、甲1発明に甲2発明を適用することは容易に想到し得ない。また、上記(イ)cのとおり、「TiO2」を「中間層」の「粒界相」ではなく「カソード」に含有させることには阻害要因があるといえる。 よって、異議申立人の上記主張は採用できない。 (エ)小括 以上によれば、上記相違点2について検討するまでもなく、甲1発明において、上記相違点1に係る構成を適用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明1は、甲1発明及び甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~10について 上記第2のとおり、本件発明2~10は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アと同様の理由により、本件発明2~10は、甲1発明及び甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明11について (ア)対比 本件発明11と甲1発明Aとを対比する。 a 甲第1号証の段落【0017】に「固体電解質として固体酸化物セラミックスを用いる燃料電池は、固体酸化物形燃料電池(SOFC)と称される。」と記載されているところ、甲1発明Aの「酸化ジルコニウム系酸化物」は固体酸化物セラミックスであることから、甲1発明Aの「酸化ジルコニウム系酸化物から構成される固体電解質層10」を有する「燃料電池単セル1の製造方法」は、固体酸化物形燃料電池セルの製造方法といえる。 そうすると、甲1発明Aの「酸化ジルコニウム系酸化物から構成される固体電解質層10」を有する「燃料電池単セル1の製造方法」は、本件発明11の「固体酸化物形電気化学セルの製造方法」に相当する。 b 甲1発明Aの「酸化ジルコニウム系酸化物から構成される固体電解質層10」は、本件発明11の「ジルコニウム酸化物を含む固体電解質」に相当する。 c 一般に、固体酸化物形燃料電池のアノードに供給される燃料ガスとして水素を用いることは文献を挙げるまでもなく技術常識であり、甲1発明の「燃料ガス」として水素を用いることは当然想定されていることであるから、甲1発明の「燃料ガス」が「供給される」「アノード11」は、本件発明11の「水素極」に相当する。 d 固体酸化物形燃料電池のアノードの対極であるカソードに供給されるガスとして酸素や空気等を用いることも文献を挙げるまでもなく技術常識であり、甲1発明Aの「カソード12」に酸素や空気等を供給することも当然想定されていることであるから、甲1発明Aの「カソード12」は、本件発明11の「酸素極」に相当する。 また、甲1発明Aの「Srを含有するペロブスカイト型酸化物」は、本件発明11の「ストロンチウム含有複合酸化物」に相当する。 そうすると、甲1発明Aの「Srを含有するペロブスカイト型酸化物」を含む「カソード12」と本件発明11の「酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極」とは、「ストロンチウム含有複合酸化物を含む酸素極」である点で共通する。 e 甲1発明Aの「セリアに希土類元素がドープされたセリア系固溶体」は、本件発明11の「希土類添加酸化セリウム」に相当する。 そうすると、甲1発明Aの「固体電解質層10とカソード12との間に設けられ、セリアに希土類元素がドープされたセリア系固溶体からなる中間層13」は、上記b、dを踏まえると、本件発明11の「固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層」に相当する。 f 甲1発明Aでは、「アノード11、固体電解質層10、および、中間層前駆体がこの順に積層された第1積層体が形成される第1工程」と、「カソード形成用材料が中間層前駆体の表面に層状に形成される第2工程」と、「焼成により、中間層前駆体から中間層13が形成されるとともに、カソード形成用材料からカソード12が形成される第3工程」と、を経て、「燃料電池単セル1が得られ」ることから、カソードの位置を基準として捉えれば、甲1発明Aも、「カソード12」と、「固体電解質10」と、「アノード11」と、「固体電解質層10とカソード12との間」に配置される「中間層13」とを、この順で有する「燃料電池単セル1」を取得する工程を備えていると理解できる。 そうすると、上記a~eを踏まえれば、甲1発明Aにおいて、「Srを含有するペロブスカイト型酸化物と固体電解質とを含む混合物より形成されるカソード12」と、「酸化ジルコニウム系酸化物から構成される固体電解質層10」と、「供給される燃料ガスを拡散させることが可能な拡散層を備えたアノード11」と、「固体電解質層10とカソード12との間に設けられ、セリアに希土類元素がドープされたセリア系固溶体からなる中間層13」とを、この順で有する「燃料電池単セル1」を取得する工程と本件発明11とは、「ストロンチウム含有複合酸化物を含む酸素極と、ジルコニウム酸化物を含む固体電解質と、水素極と、前記固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層と、をこの順序で備える前記固体酸化物形電気化学セルを取得する工程」である点で共通する。 g 甲1発明Aの「カソード12を構成するペロブスカイト型酸化物は、La1-xSrxCo1-yFeyO3(x=0.4、y=0.8、以下、LSCF)である」ことは、本件発明11の「前記ストロンチウム含有複合酸化物は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物(Aは、少なくともSrを含み、La及びCaから選択される一種以上の元素を表し、BはMn,Co,Fe及びNiから選択される一種以上の元素を表す。)であ」ることに相当する。 h 甲1発明Aの「第3工程」では、「焼成により、中間層前駆体から中間層13が形成されるとともに、カソード形成用材料からカソード12が形成され、この焼成時に、カソード形成用材料から中間層前駆体中に拡散してくるSrが粒界相内のTiO2により捕捉されてSrTiO3が生成される」ところ、甲第1号証(上記第4の1(1)の段落【0063】を参照。)の「燃料電池単セル1は、カソード12の組成に由来し、固体電解質層10側へ拡散したSrが、SrTiO3の形で中間層13に捕捉されている。そのため、燃料電池単セル1は、上記拡散したSrに起因して固体電解質層10と中間層13との間の界面にSrZrO3が生成するのを抑制することができる」との記載も踏まえれば、「第3工程」では、「カソード12の組成に由来」する「Sr」が「固体電解質層10」への「拡散」を「抑制する」ように「焼成」しているといえる。 そうすると、上記fも踏まえれば、甲1発明の「燃料電池単セル1」を得る工程において、「カソード12の組成に由来」する「Sr」が「固体電解質層10」への「拡散」を「抑制する」ように「焼成」することは、本件発明11の「固体酸化物形電気化学セルを取得する工程は、前記ストロンチウム含有複合酸化物中のSrの前記固体電解質への熱拡散を抑制するように焼成すること」に相当する。 i 上記a~hによれば、本件発明11と甲1発明Aとの一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「固体酸化物形電気化学セルの製造方法であって、 ストロンチウム含有複合酸化物を含む酸素極と、ジルコニウム酸化物を含む固体電解質と、水素極と、前記固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層と、をこの順序で備える前記固体酸化物形電気化学セルを取得する工程を備え、 前記ストロンチウム含有複合酸化物は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物(Aは、少なくともSrを含み、La及びCaから選択される一種以上の元素を表し、BはMn,Co,Fe及びNiから選択される一種以上の元素を表す。)であり、 前記固体酸化物形電気化学セルを取得する工程は、前記ストロンチウム含有複合酸化物中のSrの前記固体電解質への熱拡散を抑制するように焼成することを含む、方法。」 (相違点3) 酸素極に関し、本件発明11の「酸素極」は「酸化チタン」を含むのに対し、甲1発明Aの「カソード」は酸化チタンを含まない点。 (イ)判断 上記相違点3について検討する。 甲第2号証(上記第4の2(3)を参照。)には、甲2発明が記載されているものの、上記ア(イ)bで検討したように、甲第1号証に接した当業者は、甲1発明Aに甲2発明を適用することは容易に想到し得ず、上記ア(イ)cで検討したように、甲1発明Aにおける「TiO2」を「中間層」の「粒界相」ではなく「カソード」に含有させることには、むしろ阻害要因があるといえる。 よって、当業者は、甲1発明Aに甲2発明を適用することを容易に想到し得ない。 (ウ)小括 以上によれば、甲1発明Aにおいて、上記相違点3に係る構成を適用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明11は、甲1発明A及び甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件発明12について 上記第2のとおり、本件発明12は、本件発明11の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記ウと同様の理由により、本件発明12は、甲1発明A及び甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 本件発明13について 本件発明13は、上記ウで認定した相違点3に係る「酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極」との構成を有するから、本件発明13と、甲第1号証に記載された発明とを対比すると、少なくとも相違点3に係る上記構成で相違することになる。 そして、上記ウ(イ)のとおり、甲第1号証に接した当業者は、甲1発明Aに甲2発明を適用することは容易に想到し得ず、また、甲1発明における「TiO2」を「中間層」の「粒界相」ではなく「カソード」に含有させることには、むしろ阻害要因があるといえる。 そうすると、本件発明13は、甲第1号証に記載された発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)甲第2号証を主引例とした進歩性について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 a 甲2発明の「固体酸化物形燃料電池セル」は、本件発明1の「固体酸化物形電気化学セル」に相当する。 b 甲2発明では、「セルは、TiO2とLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ(LSCF)が混合されたLSCF-TiO2複合酸化物を含むカソードスラリーを、アノード-電解質2層構造体のYSZ電解質上に塗布し、850℃で2時間焼成して製造され」ることから、「カソード」は「TiO2とLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ」とを含む。 また、甲2発明の「カソードでは酸素陰イオンが取り込まれ」ることから、該「カソード」は本件発明1の「酸素極」に相当する。 そうすると、甲2発明の「TiO2とLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ」とを含む「カソード」は、本件発明1の「酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極」に相当する。 c 本件発明1の「ジルコニウム酸化物」に関し、本件明細書の段落【0029】に「セルの典型的な態様は、例えば、・・・、固体電解質がYSZなどの希土類添加酸化ジルコニウムであり」と記載されていることから、該「ジルコニウム酸化物」はYSZを含むといえる。 そうすると、甲2発明の「YSZ電解質」は、本件発明1の「ジルコニウム酸化物を含む固体電解質」に相当する。 d 甲2発明の「セルには、燃料として加湿H2(3%H2O)、酸化剤として純O2が供給され、カソードでは酸素陰イオンが取り込まれる」ことから、甲2発明の「アノード」には「燃料として加湿H2」が供給されることは明らかである。 そうすると、甲2発明の「アノード」は、本件発明1の「水素極」に相当する。 e 甲2発明では「TiO2は、850℃でLSCFと反応してSrTiO3を生成して、LSCFとYSZの反応によるSrZrO3の生成を抑制し、カソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成を抑制」することから、技術常識も踏まえれば、「TiO2」は「LSCFと反応してSrTiO3を形成して」、「LSCF」に含まれるSrの拡散を抑制し、「カソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成を抑制」していると理解できる。 そうすると、甲2発明において、「カソード」が、「LSCFと反応してSrTiO3を形成して」、「LSCF」に含まれるSrの拡散を抑制し、「カソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成を抑制」する「TiO2」を含むことは、本件発明1の「酸素極は、前記酸化チタンを、前記酸素極において前記ストロンチウム含有複合酸化物のSrの熱拡散を抑制し高抵抗相の形成を抑制可能に備え」ることに相当する。 f 本件発明1の「一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物」に関し、本件明細書の段落【0017】に「ストロンチウム含有複合酸化物としては、・・・、例えば、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物が挙げられる。・・・。より具体的には、La(ランタン)・Sr(ストロンチウム)・Co(コバルト)・Fe(鉄)を含む(La,Sr)(Co,Fe)O3系複合酸化物(以下、「LSCF」と記すことがある。)、・・・を挙げることができる。これらは、一種又は二種以上を混合して用いることができる。」と、段落【0018】に「これらのなかでも、例えば、(La,Sr)(Co,Fe)O3系複合酸化物であり、より具体的には、La1-xSrxCoyFe1-yO3-σ(0<x<1、0<y≦1であり、σは、電荷中性条件を満たすように定まる値である。)を用いることができる。」と記載されていることから、本件発明1の「一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物」は、La1-xSrxCoyFe1-yO3-σ(0<x<1、0<y≦1)を含む。 そうすると、甲2発明の「La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ(LSCF)」は、本件発明1の「一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物(Aは、少なくともSrを含み、La及びCaから選択される一種以上の元素を表し、BはMn,Co,Fe及びNiから選択される一種以上の元素を表す。)であ」る「ストロンチウム含有複合酸化物」に相当する。 g 甲2発明の「カソードには、LSCFに対して0.5wt%、1wt%、又は、2wt%のTiO2が添加され」ることは、本件発明1の「酸化チタンを前記ストロンチウム含有複合酸化物の全量に対して0.5質量%以上8質量%以下含有する」ことに相当する。 h 上記a~gによれば、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「固体酸化物形電気化学セルであって、 酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極と、 ジルコニウム酸化物を含む固体電解質と、 水素極と、 を備え、 前記酸素極は、前記酸化チタンを、前記酸素極において前記ストロンチウム含有複合酸化物のSrの熱拡散を抑制し高抵抗相の形成を抑制可能に備え、 前記ストロンチウム含有複合酸化物は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物(Aは、少なくともSrを含み、La及びCaから選択される一種以上の元素を表し、BはMn,Co,Fe及びNiから選択される一種以上の元素を表す。)であり、前記酸化チタンを前記ストロンチウム含有複合酸化物の全量に対して0.5質量%以上8質量%以下含有する、セル。」 (相違点4) 本件発明1は「固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層」を備えているのに対し、甲2発明は「中間層」を備えていない点。 (イ)判断 a 甲第3号証(上記第4の3(3)を参照。)には、「燃料極層8、固体電解質層9、中間層12、および酸素極層10がこの順に積層されている燃料電池セル」において、「中間層12は、酸素極層10と電解質層9との間に、両者間の反応を防止する目的で設けられ、(CeO2)1-x(REO1.5)x(式中、REはSm、Y、Yb、Gdの少なくとも1種であり、xは0<x≦0.3を満足する数)で表される組成からなる」ことに係る甲第3号証に記載された技術が記載されている。 b ここで、甲第2号証(上記第4の2(1)イを参照。)には「このため、LSCFカソードをYSZ電解質上に直接形成すると、非常に大きな界面損失が生じる。非導電性相の形成を防ぐために多くの努力が払われてきた。例えば、Gd添加CeO2(GDC)を中間層としてカソードとYSZ電解質との直接接触を回避する方法[6-8]・・・が提案されている。しかし、これらの方法はセル製造のコストと複雑さを増やし、GDC中間層とYSZ電解質との間に新たな界面損失をもたらす。従ってZrO2系(YSZ等)電解質上にLSCFカソードを直接適用する新たな方法の開発が有用である。」と記載され、甲2発明の「セル」は「LSCF-TiO2複合酸化物を含むカソードスラリーを、アノード-電解質2層構造体のYSZ電解質上に塗布し、850℃で2時間焼成して製造され」るものである。 そうすると、甲2発明において、「カソード」と「YSZ電解質」との間に「中間層」を配置することには阻害要因があるといえる。 c よって、甲第2号証に接した当業者は、甲2発明に甲第3号証に記載された技術を適用することを容易に想到し得ない。 (ウ)異議申立人の主張について 異議申立人は、異議申立書において、中間層を省くことはコストの低減や界面が減る点で有利だが、甲2発明に中間層を適用しても甲2発明が機能しなくなることはないし、中間層の適用を甲2発明が排斥しているということもない。中間層を甲2発明に適用することを阻害する特段の事情はないため、本件特許発明1は甲2発明に甲3記載事項を適用して容易に発明をすることができたものである(45頁2~6行)旨主張する。 しかし、甲第2号証(上記第4の2(1)イを参照。)の記載によれば、「中間層」の適用を排斥していると理解できることから、異議申立人の上記主張は前提を欠き採用できない。 (エ)小括 以上によれば、甲2発明において、上記相違点4に係る構成を適用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明1は、甲2発明及び甲第3号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~10について 上記第2のとおり、本件発明2~10は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アと同様の理由により、本件発明2~10は、甲2発明及び甲第3号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明11について (ア)対比 本件発明11と甲2発明Aとを対比する。 a 甲2発明Aの「固体酸化物形燃料電池セルの製造方法」は、本件発明11の「固体酸化物形電気化学セルの製造方法」に相当する。 b 甲2発明Aでは、「TiO2とLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ(LSCF)とを混合したLSCF-TiO2複合酸化物を含むカソードスラリーを、アノード-電解質2層構造体のYSZ電解質上に塗布し、850℃で2時間焼成」されることから、「カソード」は「TiO2とLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ(LSCF)」とを含む。 また、甲2発明Aの「カソードでは酸素陰イオンが取り込まれ」ることから、該「カソード」は本件発明11の「酸素極」に相当する。 そうすると、甲2発明Aの「TiO2とLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ(LSCF)」とを含む「カソード」は、本件発明11の「酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極」に相当する。 c 本件発明1の「ジルコニウム酸化物」に関し、本件明細書の段落【0029】に「セルの典型的な態様は、例えば、・・・、固体電解質がYSZなどの希土類添加酸化ジルコニウムであり」と記載されていることから、該「ジルコニウム酸化物」はYSZを含むといえる。 そうすると、甲2発明Aの「YSZ電解質」は、本件発明11の「ジルコニウム酸化物を含む固体電解質」に相当する。 d 甲2発明Aの「セルには、燃料として加湿H2(3%H2O)、酸化剤として純O2が供給され、カソードでは酸素陰イオンが取り込まれる」ことから、甲2発明Aの「アノード」には「燃料として加湿H2」が供給されることは明らかである。 そうすると、甲2発明Aの「アノード」は、本件発明11の「水素極」に相当する。 e 甲2発明Aでは、「TiO2とLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ(LSCF)とを混合したLSCF-TiO2複合酸化物を含むカソードスラリーを、アノード-電解質2層構造体のYSZ電解質上に塗布し、850℃で2時間焼成」して「固体酸化物形燃料電池セル」が得られることから、カソードの位置を基準として捉えれば、甲2発明Aも、「カソード」と、「YSZ電解質」と、「アノード」をこの順で有する「固体酸化物形燃料電池セル」を取得する工程を備えていると理解できる。 そうすると、上記b~dも踏まえれば、甲2発明Aにおいて、「TiO2とLa0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ(LSCF)」とを含む「カソード」と、「YSZ電解質」と、「アノード」をこの順で有する「固体酸化物形燃料電池セル」を取得する工程と本件発明11とは、「酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極と、ジルコニウム酸化物を含む固体電解質と、水素極と、をこの順序で備える前記固体酸化物形電気化学セルを取得する工程」である点で共通する。 f 本件発明11の「一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物」に関し、本件明細書の段落【0017】に「ストロンチウム含有複合酸化物としては、・・・、例えば、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物が挙げられる。・・・。より具体的には、La(ランタン)・Sr(ストロンチウム)・Co(コバルト)・Fe(鉄)を含む(La,Sr)(Co,Fe)O3系複合酸化物(以下、「LSCF」と記すことがある。)、・・・を挙げることができる。これらは、一種又は二種以上を混合して用いることができる。」と、段落【0018】に「これらのなかでも、例えば、(La,Sr)(Co,Fe)O3系複合酸化物であり、より具体的には、La1-xSrxCoyFe1-yO3-σ(0<x<1、0<y≦1であり、σは、電荷中性条件を満たすように定まる値である。)を用いることができる。」と記載されていることから、本件発明11の「一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物」は、La1-xSrxCoyFe1-yO3-σ(0<x<1、0<y≦1)を含む。 そうすると、甲2発明Aの「La0.6Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ(LSCF)」は、本件発明11の「一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物(Aは、少なくともSrを含み、La及びCaから選択される一種以上の元素を表し、BはMn,Co,Fe及びNiから選択される一種以上の元素を表す。)であ」る「ストロンチウム含有複合酸化物」に相当する。 g 甲2発明Aでは、「TiO2は、850℃でLSCFと反応してSrTiO3を生成して、LSCFとYSZの反応によるSrZrO3の生成を抑制し、カソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成を抑制」することから、技術常識も踏まえれば、甲2発明Aにおいても、「TiO2」は「LSCFと反応してSrTiO3を生成して」、「LSCF」に含まれるSrの「YSZ電解質」への拡散を「抑制」するように「850℃で2時間焼成」していると理解できる。 そうすると、上記eも踏まえれば、甲2発明Aにおける、「固体酸化物形燃料電池セル」を取得する工程において、「TiO2」は「LSCFと反応してSrTiO3を生成して」、「LSCF」に含まれるSrの「YSZ電解質」への拡散を「抑制」するように「850℃で2時間焼成」することは、本件発明11の「固体酸化物形電気化学セルを取得する工程は、前記ストロンチウム含有複合酸化物中のSrの前記固体電解質及び/又は前記中間層への熱拡散を抑制するように焼成すること」に相当する。 h 上記a~gによれば、本件発明11と甲2発明Aとの一致点及び相違点は、次のとおりである。 「固体酸化物形電気化学セルの製造方法であって、 酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極と、ジルコニウム酸化物を含む固体電解質と、水素極と、をこの順序で備える前記固体酸化物形電気化学セルを取得する工程を備え、 前記ストロンチウム含有複合酸化物は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物(Aは、少なくともSrを含み、La及びCaから選択される一種以上の元素を表し、BはMn,Co,Fe及びNiから選択される一種以上の元素を表す。)であり、 前記固体酸化物形電気化学セルを取得する工程は、前記ストロンチウム含有複合酸化物中のSrの前記固体電解質及び/又は前記中間層への熱拡散を抑制するように焼成することを含む、方法。」 (相違点5) 本件発明11は、「固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層」を備えているのに対し、甲2発明Aは「中間層」を備えていない点。 (イ)判断 上記相違点5は、上記相違点4と同じである。 そして、上記ア(イ)で検討したように、甲2発明Aにおいても、「カソード」と「YSZ電解質」との間に「中間層」を配置することには阻害要因があるといえるから、当業者は、甲2発明Aに甲第3号証に記載された技術を適用することを容易に想到し得ない。 (ウ)小括 よって、甲2発明Aにおいて、上記相違点5に係る構成を適用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明11は、甲2発明A及び甲3号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件発明12について 上記第2のとおり、本件発明12は、本件発明11の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記ウと同様の理由により、本件発明12は、甲2発明A及び甲第3号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 本件発明13について 本件発明13は、上記ウで認定した相違点5に係る「固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層」との構成を有するから、本件発明13と、甲第2号証に記載された発明とを対比すると、相違点5に係る上記構成で相違することになる。 そして、上記ウ(イ)で検討したように、甲第2号証に記載された発明においても、「カソード」と「YSZ電解質」との間に「中間層」を配置することには阻害要因があるといえるから、当業者は、甲第2号証に記載された発明に甲第3号証に記載された技術を適用することを容易に想到し得ない。 よって、本件発明13は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)甲第4号証を主引例とした進歩性について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲4発明とを対比する。 a 甲4発明の「固体酸化物形燃料電池単セル」は、本件発明1の「固体酸化物形電気化学セル」に相当する。 b 甲4発明の「カソード1」は「空気又は酸素等の酸化剤ガスが供給される」ことから、本件発明1の「酸素極」に相当する。 そうすると、甲4発明の「La0.6Sr0.4CoO3(LSC)」と「TiO2」を含む「カソード1」は、本件発明1の「酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極」に相当する。 c 本件発明1の「固体電解質」に関し、本件明細書の段落【0029】に「セルの典型的な態様は、例えば、・・・、固体電解質がYSZなどの希土類添加酸化ジルコニウムであり」と記載されていることから、本件発明1の「固体電解質」は、「YSZなどの希土類添加酸化ジルコニウム」を含む。 そうすると、甲4発明の「Y2O3を含むイットリア安定化ジルコニア(8YSZ)」を含む「固体電解質層3」は、本件発明1の「ジルコニウム酸化物を含む固体電解質」に相当する。 d 甲4発明の「アノード2」は、「水素ガスが供給される」ことから、本件発明1の「水素極」に相当する。 e 甲4発明では「アノード2、固体電解質層3、中間層4、および、」「カソード1がこの順に積層され」ることから、「中間層4」は「固体電解質層3」と「カソード1」との間に配置されているといえる。 そうすると、甲4発明の「固体電解質層3」と「カソード1」との間に配置され、「GdがドープされたCeO2(10GDC)を含」む「中間層4」は、本件発明1の「固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層」に相当する。 f 本件発明1の「一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物」に関し、本件明細書の段落【0017】に「セルにおける酸素極は、酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含んでいる。ストロンチウム含有複合酸化物としては、・・・、例えば、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物が挙げられる。・・・。より具体的には、・・・、La・Sr・Coを含む(La,Sr)CoO3系複合酸化物(以下、「LSC」と記すことがある。)、・・・を挙げることができる。」と、段落【0029】に「セルの典型的な態様は、例えば、酸素極が・・・、LSC、・・・などであり」と記載されていることから、本件発明1の「一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物」は、「La・Sr・Coを含む(La,Sr)CoO3系複合酸化物」を含む。 そうすると、甲4発明の「カソード」に含まれる「La0.6Sr0.4CoO3(LSC)」は、本件発明1の「一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物(Aは、少なくともSrを含み、La及びCaから選択される一種以上の元素を表し、BはMn,Co,Fe及びNiから選択される一種以上の元素を表す。)であ」る「ストロンチウム含有複合酸化物」に相当する。 g 上記a~fによれば、本件発明1と甲4発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「固体酸化物形電気化学セルであって、 酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極と、 ジルコニウム酸化物を含む固体電解質と、 水素極と、 前記固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層と、 を備え、 前記ストロンチウム含有複合酸化物は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物(Aは、少なくともSrを含み、La及びCaから選択される一種以上の元素を表し、BはMn,Co,Fe及びNiから選択される一種以上の元素を表す。)である、セル。」 (相違点6) 本件発明1は「酸素極は、前記酸化チタンを、前記酸素極において前記ストロンチウム含有複合酸化物のSrの熱拡散を抑制し高抵抗相の形成を抑制可能に備え」ているのに対し、甲4発明は「カソード1」は「捕集材12であるTiO2」を含む点。 (相違点7) 本件発明1は「酸化チタンを前記ストロンチウム含有複合酸化物の全量に対して0.5質量%以上8質量%以下含有する」のに対し、甲4発明は「La0.6Sr0.4CoO3(LSC)」と「TiO2とを質量比96:4で含むか、又は、LSCと10GDCとTiO2とを質量比68:30:2で含」む点。 (イ)判断 相違点6について検討する。 甲4発明の「カソード」は「TiO2」を含むものの、該「TiO2」は「供給される酸化剤ガスに含まれて導電性酸化物11を被毒する被毒物質を捕集するための捕集材12」として用いられている。 そして、甲第4号証には、「TiO2」が、「La0.6Sr0.4CoO3(LSC)」に含まれるSrの熱拡散を抑制することは一切記載されておらず、また、該「TiO2」をSrの熱拡散を抑制するための材料として「カソード」に含ませる理由もない。 そうすると、甲4発明から、上記相違点6に係る「酸素極は、前記酸化チタンを、前記酸素極において前記ストロンチウム含有複合酸化物のSrの熱拡散を抑制し高抵抗相の形成を抑制可能に備え」るとの構成を導き出すことはできない。 したがって、甲4発明において、上記相違点6に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明1は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)異議申立人の主張について a 異議申立人は、異議申立書において、本件発明1の「前記酸素極は、前記酸化チタンを、前記酸素極において前記ストロンチウム含有複合酸化物のSrの熱拡散を抑制し高抵抗相の形成を抑制可能に備え」ている点は、適量のTiO2が添加されたLSCFを含むカソードではTiO2とLSCFが反応してSrTiO3を生成し、カソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成を抑制することが甲2に記載されているように技術常識であるため、実質的な相違点ではない(51頁1~7行)旨主張する。 b 異議申立人の上記主張について検討する。 異議申立人は、甲第2号証を技術常識として、甲4発明においても、カソードではTiO2とLSCFが反応してSrTiO3を生成し、カソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成を抑制する旨主張するものの、異議申立人は、甲第4号証に記載された発明が、カソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成を抑制するという効果を奏することを何等実証していない。 また、甲4発明の「捕集材であるTiO2」は、カソード表層部のうち、固体電解質層側とは反対側のカソード面寄りの部分に偏在していることからすれば、「TiO2」によって、Srの熱拡散を抑制し高抵抗相の抑制ができるとは必ずしもいえない。 よって、異議申立人の上記主張は採用できない。 (エ)小括 以上によれば、上記相違点7について検討するまでもなく、甲4発明において、上記相違点6に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明1は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件発明2~10について 上記第2のとおり、本件発明2~10は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アと同様の理由により、本件発明2~10は、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 本件発明11について (ア)対比 本件発明11と甲4発明Aとを対比する。 a 甲4発明Aの「固体酸化物形燃料電池単セルの製造方法」は、本件発明11の「固体酸化物形電気化学セルの製造方法」に相当する。 b 甲4発明Aの「カソード」は「空気や酸素等の酸化剤ガスが供給され」ることから、本件発明11の「酸素極」に相当する。 そうすると、甲4発明Aの「TiO2」と「La0.6Sr0.4CoO3(LSC)」とを含む「カソード」は、本件発明11の「酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極」に相当する。 c 本件発明11の「固体電解質」に関し、本件明細書の段落【0029】に「セルの典型的な態様は、例えば、・・・、固体電解質がYSZなどの希土類添加酸化ジルコニウムであり」と記載されていることから、本件発明1の「固体電解質」は、「YSZなどの希土類添加酸化ジルコニウム」を含む。 そうすると、甲4発明Aの「Y2O3を含むイットリア安定化ジルコニア(8YSZ)」を含む「固体電解質層」は、本件発明11の「ジルコニウム酸化物を含む固体電解質」に相当する。 d 甲4発明Aの「アノード」は、「水素ガスが供給され」ることから、本件発明11の「水素極」に相当する。 e 甲4発明Aの「GdがドープされたCeO2(10GDC)」を含む「中間層」は、本件発明11の「希土類添加酸化セリウムを含む中間層」に相当する。 f 甲4発明Aの「単セルを得る工程」は、「アノード、固体電解質層、および、中間層がこの順に積層された」「焼結体における中間層の表面に、カソード形成用ペーストを塗布し乾燥させ、」「焼き付け、カソードを形成」していることから、カソードを基準として捉えると、該「単セルを得る工程」においても、「カソード」と、「固体電解質層」と、「アノード」と、「固体電解質」と「カソード」との間に配置される「中間層」とがこの順に積層されるといえる。 そうすると、上記b~eも踏まえれば、甲4発明Aにおいて、「TiO2」と「La0.6Sr0.4CoO3(LSC)」とを含む「カソード」と、「Y2O3を含むイットリア安定化ジルコニア(8YSZ)」を含む「固体電解質層」と、「アノード」と、「固体電解質」と「カソード」との間に配置され、「GdがドープされたCeO2(10GDC)」を含む「中間層」とがこの順に積層される「単セルを得る工程」は、本件発明11の「酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極と、ジルコニウム酸化物を含む固体電解質と、水素極と、前記固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層と、をこの順序で備える前記固体酸化物形電気化学セルを取得する工程」に相当する。 g 本件発明11の「一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物」に関し、本件明細書の段落【0017】に「セルにおける酸素極は、酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含んでいる。ストロンチウム含有複合酸化物としては、・・・、例えば、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物が挙げられる。・・・。より具体的には、・・・、La・Sr・Coを含む(La,Sr)CoO3系複合酸化物(以下、「LSC」と記すことがある。)、・・・を挙げることができる。」と、段落【0029】に「セルの典型的な態様は、例えば、酸素極が・・・、LSC、・・・などであり」と記載されていることから、本件発明11の「一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物」は、「La・Sr・Coを含む(La,Sr)CoO3系複合酸化物」を含む。 そうすると、甲4発明Aの「カソード」に含まれる「La0.6Sr0.4CoO3(LSC)」は、本件発明11の「一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物(Aは、少なくともSrを含み、La及びCaから選択される一種以上の元素を表し、BはMn,Co,Fe及びNiから選択される一種以上の元素を表す。)であ」る「ストロンチウム含有複合酸化物」に相当する。 h 上記a~gによれば、本件発明11と甲4発明Aとの一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「固体酸化物形電気化学セルの製造方法であって、 酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極と、ジルコニウム酸化物を含む固体電解質と、水素極と、前記固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層と、をこの順序で備える前記固体酸化物形電気化学セルを取得する工程を備え、 前記ストロンチウム含有複合酸化物は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物(Aは、少なくともSrを含み、La及びCaから選択される一種以上の元素を表し、BはMn,Co,Fe及びNiから選択される一種以上の元素を表す。)である、方法。」 (相違点8) 本件発明11は「前記固体酸化物形電気化学セルを取得する工程は、前記ストロンチウム含有複合酸化物中のSrの前記固体電解質及び/又は前記中間層への熱拡散を抑制するように焼成する」のに対し、甲4発明Aはその旨特定されていない点で相違する。 (イ)判断 甲4発明Aは、「カソード」に「捕集材であるTiO2」を含ませ、「供給される酸化剤ガスに含まれて導電性酸化物11を被毒する被毒物質を捕集する」ものである。 しかしながら、甲第4号証には、「La0.6Sr0.4CoO3(LSC)」に含まれるSrの固体電解質層や中間層への熱拡散について一切記載されておらず、また、該Srの固体電解質層や中間層への熱拡散を抑制するように焼成する理由もない。 そうすると、甲4発明Aから、上記相違点8に係る「前記ストロンチウム含有複合酸化物中のSrの前記固体電解質及び/又は前記中間層への熱拡散を抑制するように焼成する」ことを導き出すことはできない。 したがって、甲4発明Aにおいて、上記相違点8に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明11は、甲4発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)異議申立人の主張について a 異議申立人は、異議申立書において、本件特許発明11の「前記固体酸化物形電気化学セルを取得する工程は、前記ストロンチウム含有複合酸化物中のSrの前記固体電解質及び/又は前記中間層への熱拡散を抑制するように焼成することを含む」点は、適量のTiO2が添加されたLSCFを含むカソードではTiO2とLSCFが反応してSrTiO3を生成し、カソード/電解質界面における非導電性SrTiO3相の形成を抑制することが甲2に記載されているように技術常識であるため、実質的な相違点ではない(55頁5~12行)旨主張する。 b 異議申立人の上記主張について検討する。 上記ア(ウ)bのとおり、異議申立人は、甲第4号証に記載された発明が、カソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成を抑制するという効果を奏することを何等実証しておらず、また、甲4発明Aの「捕集材であるTiO2」は、カソード表層部のうち、固体電解質層側とは反対側のカソード面寄りの部分に偏在していることからすれば、「TiO2」によって、Srの熱拡散を抑制し高抵抗相の抑制ができるとは必ずしもいえない。 よって、異議申立人の上記主張は採用できない。 (エ)小括 以上によれば、甲4発明Aにおいて、上記相違点8に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明11は、甲4発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 エ 本件発明12について 上記第2のとおり、本件発明12は、本件発明11の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記アと同様の理由により、本件発明12は、甲4発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 オ 本件発明13について (ア)対比 本件発明11と甲4発明Aとを対比する。 a 甲4発明Aの「固体酸化物形燃料電池単セルの製造方法」と本件発明13の「固体酸化物形電気化学セルにおける高抵抗相の生成抑制方法」とは、「固体酸化物形電気化学セルにおける方法」である点で共通する。 b そして、上記ウ(ア)も踏まえれば、本件発明13と甲4発明Aとの一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「固体酸化物形電気化学セルにおける方法であって、 前記固体酸化物形電気化学セルは、酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極と、ジルコニウム酸化物を含む固体電解質と、水素極と、前記固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層と、をこの順序で備え、 前記ストロンチウム含有複合酸化物は、一般式ABO3で示されるペロブスカイト型構造を有する化合物(Aは、少なくともSrを含み、La及びCaから選択される一種以上の元素を表し、BはMn,Co,Fe及びNiから選択される一種以上の元素を表す。)である、方法。」 (相違点9) 方法に関し、本件発明13は「高抵抗相の生成抑制方法」であるのに対し、甲4発明Aはその旨特定されていない点。 (相違点10) 本件発明13は「前記中間層及び/又は前記固体電解質へのSrの熱拡散を抑制する、及び/又は、前記酸素極においてSrTiO3を形成するように焼成すること」を含むのに対し、甲4発明Aはその旨特定されていない点。 (イ)判断 相違点9及び相違点10をまとめて検討する。 甲第4号証には、「中間層及び/又は前記固体電解質へのSrの熱拡散を抑制する、及び/又は、前記酸素極においてSrTiO3を形成するように焼成」し、「固体酸化物形燃料電池単セルにおける高抵抗相の生成」を「抑制」することは一切記載されていない。 そして、甲4発明Aにおいて、中間層及び/又は固体電解質へのSrの熱拡散を抑制する、及び/又は、カソードにおいてSrTiO3を形成するように焼成し、高抵抗相の生成を抑制する理由もない。 そうすると、甲4発明Aから、上記相違点9及び相違点10に係る構成を導き出すことはできない。 したがって、甲4発明Aにおいて、上記相違点9及び相違点10に係る構成を採用することは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明13は、甲4発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)異議申立人の主張について a 異議申立人は、異議申立書において、本件特許発明13の「固体酸化物形燃料電池セルにおける高抵抗相の生成抑制方法」、「前記中間層及び/又は前記固体電解質へのSrの熱拡散を抑制する、及び/又は、前記酸素極においてSrTiO3を形成するように焼成することを含む」点は、適量のTiO2が添加されたLSCFを含むカソードではTiO2とLSCFが反応してSrTiO3を生成し、カソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成を抑制することが甲2に記載されているように技術常識であるため、実質的な相違点ではない(56頁13~20行)旨主張する。 b 異議申立人の上記主張について検討する。 上記ア(ウ)bのとおり、異議申立人は、甲第4号証に記載された発明が、カソード/電解質界面における非導電性SrZrO3相の形成を抑制するという効果を奏することを何等実証しておらず、また、甲4発明Aの「捕集材であるTiO2」は、カソード表層部のうち、固体電解質層側とは反対側のカソード面寄りの部分に偏在していることからすれば、「TiO2」によって、Srの熱拡散を抑制し高抵抗相の抑制ができるとは必ずしもいえない。 よって、異議申立人の上記主張は採用できない。 (4)申立理由1のまとめ 以上から、本件発明1~13は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された発明に基いて、甲第2号証に記載された発明及び甲第3号証に記載された事項に基いて、甲第4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 したがって、異議申立人が主張する申立理由1には理由がない。 2 申立理由2(甲第4号証に基づく新規性)について (1)本件発明1について 上記1(3)ア(ア)のとおり、本件発明1と甲4発明とは、上記相違点6及び相違点7を有するものであるから、本件発明1は、甲4発明ではない。 (2)本件発明2~4、6~10について 上記第2のとおり、本件発明2~4、6~10は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(1)と同様の理由により、本件発明2~4、6~10は、甲4発明ではない。 (3)本件発明11について 上記1(3)ウ(ア)のとおり、本件発明11と甲4発明Aとは、上記相違点8を有するものであるから、本件発明11は、甲4発明Aではない。 (4)本件発明12について 上記第2のとおり、本件発明12は、本件発明11の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記(3)と同様の理由により、本件発明12は、甲4発明Aではない。 (5)本件発明13について 上記1(3)オ(ア)のとおり、本件発明13と甲4発明Aとは、上記相違点9及び相違点10を有するものであるから、本件発明13は、甲4発明Aではない。 (6)申立理由2のまとめ 以上から、本件発明1~4、6~13は、甲第4号証に記載された発明ではないから、特許法第29条第1項第3号に該当せず、本件特許1~4、6~13は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものではない。 したがって、異議申立人の主張する申立理由2には理由がない。 3 申立理由3(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下に検討する。 (2)当審の判断 本件明細書の段落【0005】の記載によれば、本件発明の課題は、酸素極と電解質との界面での高抵抗相の生成をさらに抑制できる技術を提供するというものである。 そして、本件明細書には、固体酸化物形電気化学セルについて、本件発明で特定されているとおり、「酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極」(段落【0016】、【0017】を参照。)と、「ジルコニウム酸化物を含む固体電解質」(段落【0016】、【0023】を参照。)と、「水素極」(段落【0016】、【0025】を参照。)と、「固体電解質と前記酸素極との間に配置される、希土類添加酸化セリウムを含む中間層」(段落【0016】、【0028】を参照。)とを備え、「酸素極」は「酸化チタン」を含むことにより、酸素極の焼成や、酸素極と中間層と固体電解質との一体焼成などの加熱時に、酸素極のストロンチウムは、酸化チタン由来のチタンにゲッタリングされて、SrTiO3などの酸化物を形成し、ストロンチウムとしての熱拡散が抑制され、固体電解質と中間層との界面に高抵抗なSrZrO3の生成が抑制される、という効果(段落【0010】を参照。)を奏することで、発明の課題を解決するものであることが理解できる。 そうすると、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 したがって、本件発明は、サポート要件を満たしている。 (3)異議申立人の主張について ア 異議申立人は、異議申立書において、TiO2に注目すると、焼成前はほぼ均一にTiO2は分布しているが、焼成時のSrの熱拡散に伴うSrTiO3の生成により、酸素極のうち酸化剤ガス流路に近い部分のTiO2の濃度は、酸素極のうち固体電解質に近い部分のTiO2の濃度に比べて高くなり、酸素極は、酸素極の厚み方向において固体電解質に対向する面とは反対側の面寄りにより高濃度に酸化チタンが分布していることになる。これは請求項4に記載されている事項と相反する。従って請求項4に記載されている事項、及び、請求項4を引用する請求項5~10に記載されている事項は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載も示唆もされていない(57頁下から4行~58頁7行)旨主張する。 イ 異議申立人の上記主張について検討する。 異議申立人は、酸素極のうち酸化剤ガス流路に近い部分のTiO2の濃度は、酸素極のうち固体電解質に近い部分のTiO2の濃度に比べて高くなる旨主張する。 しかしながら、このようなTiO2の濃度分布になることを裏付ける技術的な根拠は見当たらず、異議申立人の当該主張は、単なる推測にすぎない。 よって、異議申立人の上記主張は採用できない。 (4)申立理由3のまとめ 以上によれば、本件発明4~10は、発明の詳細な説明に記載したものであって、本件特許4~10は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。 したがって、異議申立人の主張する申立理由3は理由がない。 4 申立理由4(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすというためには、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度の記載があることを要する。以下、検討する。 (2)当審の判断 本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0044】、【0045】には、固体電解質のディスク(8YSZ(ZrO2-8mol%Y2O3))の一方の面に対して、中間層用のGDCスラリーをスクリーン印刷し、他方の面に対して、水素極用スラリーをスクリーン印刷した後、大気中1400℃で2時間焼成し、焼成後の中間層に対してさらに、(La0.6Sr0.4)(Co0.2Fe0.8)O3-xに対して、TiO2を0質量%、0.5質量%、1質量%、2質量%、5質量%及び10質量%となるように混合したTiO2含有量の異なる複数の酸素極用スラリーをスクリーン印刷し、大気中1150℃で2時間焼成して、6種の製造例1~5の積層体を作製することが記載されている。 そして、同【0046】~【0048】によれば、各種積層体について、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて積層方向における断面を観察し、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を用いて前記断面における元素(Sr、Co、Zr、Ti)の分布を分析したところ、固体電解質(YSZ)と中間層との間に存在するSrZrO3が減少することがわかり、酸素極(LSCF)においてSrとTiとが反応してSrTiO3が形成されていることが強く示唆されたことが記載されている。 さらに、同【0049】、【0050】によれば、積層体を、SOFCの単セルとして用い、酸素極側に空気を50cm3/min、水素極側にH2-3%H2Oを50cm3/minの条件で、ガスを供給して、最大出力密度を測定したところ、製造例1~4では、TiO2を添加しない比較製造例1よりも最大出力密度が増大することがわかったことも記載されている。 そうすると、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明の固体酸化物形電気化学セルについて、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。 (3)異議申立人の主張 ア 異議申立人は、特許異議申立書において、Srの熱拡散に伴うSrTiO3の生成により、酸素極のうち酸化剤ガス流路に近い部分の酸化チタンの濃度は、酸素極のうち固体電解質に近い部分の酸化チタンの濃度に比べて高くなるはずであるから、酸素極は、酸素極の厚み方向において固体電解質に対向する面とは反対側の面寄りにより高濃度に酸化チタンが分布しているはずであり、これは請求項4に係る発明と相反する。当業者は、請求項4に係る発明を実施しようとした場合に、どのようにすれば「固体電解質に対向する面とは反対側の面寄りにより高濃度に酸化チタンが分布しているものが除かれる」ようにできるかを理解できない。従って発明の詳細な説明は、請求項4に係る発明、及び、請求項4を引用する請求項5~10に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない(58頁8~24行)旨主張する。 イ 異議申立人の上記主張を検討する。 上記3(3)で検討したように、酸素極のうち酸化剤ガス流路に近い部分のTiO2の濃度は、酸素極のうち固体電解質に近い部分のTiO2の濃度に比べて高くなることを裏付ける技術的な根拠は見当たらず、異議申立人の上記主張は、単なる推測にすぎない。 よって、異議申立人の上記主張は採用できない。 (4)申立理由4のまとめ 以上によれば、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明4~10を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであって、本件特許4~10は、特許法第36条第4項第1号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 したがって、異議申立人の主張する申立理由4は理由がない。 5 申立理由5(明確性)について (1)明確性の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。以下、検討する。 (2)当審の判断 本件発明1~13は前記第2のとおりであって、明確であり、格別、本件発明1~13に第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとすべき点は見当たらない。 (3)異議申立人の主張について ア 異議申立人は特許異議申立書において、概略次のように主張している。 (ア)請求項1に「前記酸素極は、前記酸化チタンを、前記酸素極において前記ストロンチウム含有複合酸化物のSrの熱拡散を抑制し高抵抗相の形成を抑制可能に備え」と記載されているところ、本件明細書の段落0006、0044-0045、0049によれば、TiO2(酸化チタン)は酸素極にただ存在しているだけなのに、酸化チタンを「Srの熱拡散を抑制し高抵抗相の形成を抑制可能に備え」るとは、どのようなことを意味しているのか不明確である。 また、請求項1、13に「高抵抗相」という記載があるが、「高抵抗」の比較の基準や程度が不明確なため、発明の範囲が不明確である。 従って請求項1に係る発明、請求項13に係る発明、及び、請求項1を引用する請求項2-10に係る発明は不明確である。(58頁末行~59頁13行) (イ)請求項3に「Srの拡散が抑制されている・・・セル。」と記載されている。 「抑制」は「おさえとどめること」を意味する(広辞苑第7版)。「Srの拡散がおさえとどめられている」というのは、セルがどのような状態にあることを意味しているのか不明確である。 従って請求項3に係る発明、及び、請求項3を引用する請求項4-10に係る発明は不明確である。(59頁下から9~4行) (ウ)請求項4に「前記酸素極は、前記酸素極の厚み方向において前記固体電解質に対向する面とは反対側の面寄りにより高濃度に酸化チタンが分布しているものが除かれる」と記載されている。 しかし、酸素極は、酸素極の厚み方向において固体電解質に対向する面とは反対側の面寄りにより高濃度に酸化チタンが分布しているはずであり、請求項4は発明特定事項の内容に技術的な欠陥があるため、発明が不明確となる。 従って請求項4に係る発明、及び、請求項4を引用する請求項5-10に係る発明は不明確である。(59頁下から2行~60頁6行) (エ)請求項11に「Srの前記固体電解質及び/又は前記中間層への熱拡散を抑制するように焼成する」と記載されているところ、発明の詳細な説明には、酸化チタンを混ぜた酸素極用スラリーを塗布したものを焼成してセルを取得することは記載されているが(段落0033、0045)どのようなことが「Srの熱拡散を抑制するように焼成する」ことを意味しているのか不明確である。 従って請求項11に係る発明、及び、請求項11を引用する請求項12に係る発明は不明確である。(60頁8~14行) (オ)請求項13に「前記酸素極においてSrTiO3を形成するように焼成する」と記載されているところ、発明の詳細な説明には、酸化チタンを混ぜた酸素極用スラリーを塗布したものを焼成してセルを取得することは記載されているが(段落0033、0045)どのようなことが「SrTiO3を形成するように焼成する」ことを意味しているのか不明確である。 従って請求項13に係る発明は不明確である。(60頁下から10~5行) イ 異議申立人の上記主張(ア)~(オ)について検討する。 (ア)主張(ア)について 請求項1の記載によれば、「前記酸素極は、前記酸化チタンを、前記酸素極において前記ストロンチウム含有複合酸化物のSrの熱拡散を抑制し高抵抗相の形成を抑制可能に備え」とは、酸素極に備えられた酸化チタンがストロンチウム含有複合酸化物のSrの熱拡散及び高抵抗相の形成を抑制する機能を有することを意味すると当業者であれば容易に理解できる。 また、本件明細書の段落【0002】の記載を踏まえれば、高抵抗とは、電気化学セルの性能に大きく影響する程度の抵抗であるといえ、「高抵抗相」との記載をもって、発明の範囲が不明確であるとまではいえない。 よって、異議申立人の上記主張(ア)は採用できない。 (イ)主張(イ)について 請求項3及び請求項3が引用する請求項1の記載によれば、「固体電解質及び/又は前記中間層へのSrの拡散」とは、酸素極に含まれるストロンチウム含有複合酸化物のSrが固体電解質及び/又は中間層へ移動することを意味していることは明らかである。 そうすると、「固体電解質及び/又は前記中間層へのSrの拡散が抑制されている」とは、酸素極から固体電解質及び又は中間層へのSrの移動が抑えられている状態であると当業者であれば容易に理解でき、不明確であるとまではいえない。 よって、異議申立人の上記主張(イ)は採用できない。 (ウ)主張(ウ)について 上記3(3)イのとおり、酸素極のうち酸化剤ガス流路に近い部分のTiO2の濃度は、酸素極のうち固体電解質に近い部分のTiO2の濃度に比べて高くなることを裏付ける技術的な根拠は見当たらないことから、「酸素極は、酸素極の厚み方向において固体電解質に対向する面とは反対側の面寄りにより高濃度に酸化チタンが分布しているはずであ」るとは必ずしもいえない。 よって、異議申立人の上記主張(ウ)は前提を欠き採用できない。 (エ)主張(エ)について 請求項11の記載及び本件明細書の段落【0010】の記載を踏まえれば、「Srの熱拡散を抑制するように焼成する」とは、酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極において、酸化チタンのTiがストロンチウム含有複合酸化物のSrをゲッタリングするよう焼成することを意味すると当業者であれば容易に理解でき、不明確であるとまではいえない。 よって、異議申立人の上記主張(エ)は採用できない。 (オ)主張(オ)について 請求項13の記載及び本件明細書の段落【0010】の記載を踏まえれば、「SrTiO3を形成するように焼成する」とは、酸化チタンとストロンチウム含有複合酸化物とを含む酸素極において、酸化チタンのTiとストロンチウム含有複合酸化物のSrによりSrTiO3が形成されるよう焼成することを意味すると当業者であれば容易に理解でき、不明確であるとまではいえない。 よって、異議申立人の上記主張(オ)は採用できない。 (4)申立理由5のまとめ 以上によれば、本件発明は、明確であって、本件特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。 したがって、異議申立人の主張する申立理由5は理由がない。 6 申立理由6(新規事項) (1)新規事項の判断基準 特許法第17条の2第3項に規定する、「明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項」とは、当業者によって、明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であり、補正が、このようにして導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、「明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内において」するものということができ、新規事項を追加するものではない。以下に検討する。 (2)当審の判断 令和7年6月20日提出の手続補正書の手続補正により、補正前の請求項4の記載を「前記酸素極は、前記酸素極の厚み方向において前記固体電解質に対向する面とは反対側の面寄りにより高濃度に酸化チタンが分布しているものが除かれる、請求項1~3のいずれかに記載のセル。」との記載に変更する補正がなされた。 そして「前記酸素極は、前記酸素極の厚み方向において前記固体電解質に対向する面とは反対側の面寄りにより高濃度に酸化チタンが分布しているものが除かれる」とは、「厚み方向において前記固体電解質に対向する面とは反対側の面寄りにより高濃度に酸化チタンが分布している」「酸素極」を本件発明の「酸素極」から除外することを特定しているにすぎず、当該特定事項が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しているとはいえない。 (3)異議申立人の主張について ア 異議申立人は異議申立書において、Srの熱拡散に伴うSrTiO3の生成により、酸素極のうち酸化剤ガス流路に近い部分の酸化チタンの濃度は、酸素極のうち固体電解質に近い部分の酸化チタンの濃度に比べて高くなるはずであり、酸素極は、酸素極の厚み方向において固体電解質に対向する面とは反対側の面寄りにより高濃度に酸化チタンが分布しているはずであって、これが当初明細書等に記載した事項である。しかし、補正により追加された事項は「・・・前記固体電解質に対向する面とは反対側の面寄りにより高濃度に酸化チタンが分布しているものが除かれる」というものであるため、当初明細書等に記載した事項に新たな技術的事項を導入するものである(61頁1~10行)旨主張する。 イ 異議申立人の上記主張を検討する。 上記3(3)で検討したように、酸素極のうち酸化剤ガス流路に近い部分のTiO2の濃度は、酸素極のうち固体電解質に近い部分のTiO2の濃度に比べて高くなることを裏付ける技術的な根拠は見当たらず、異議申立人の上記主張は、単なる推測にすぎない。 よって、異議申立人の上記主張は前提を欠き採用できない。 (4)申立理由6のまとめ 以上によれば、令和7年6月20日提出の手続補正書による補正は、新規事項の追加を含むものではなく、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものとはいえない。 したがって、異議申立人の主張する申立理由6は理由がない。 第6 むすび 以上の次第であるから、特許異議の申立ての理由及び異議申立人らの提出した証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2026-700111

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