特許異議申立
2026-700004
二次電池パウチケースの製造方法、二次電池パウチフィルム及び二次電池パウチケース
- 審判番号
- 2026-700004
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-519125
- 登録番号
- 7723080
- 請求日
- 2025年12月24日
- 審決日
- 2026年06月08日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
- 【権利者代理人】飯田 雅人
- 【権利者代理人】実広 信哉
- 【異議申立人】松山 徳子
- 審判長/審判官
- 審判長 梶尾 誠哉
- 審判官 畑中 博幸
- 審判官 ▲高▼橋 真之
- 分類
- P1651.121-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7723080号発明「二次電池パウチケースの製造方法、二次電池パウチフィルム及び二次電池パウチケース」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7723080号の請求項1~15に係る特許を維持する。
理由
理 由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7723080号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~15に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)11月19日(優先権主張 2020年11月23日、韓国 2021年10月26日、韓国)を国際出願日とする出願であって、令和7年8月4日にその特許権の設定登録がなされ、同年8月13日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許の請求項1~15に係る特許に対し、令和7年12月24日に特許異議申立人松山 徳子(以下、「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~15に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明15」といい、併せて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~15に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
内部層の上部に金属層を積層し、前記金属層の上部に有色染料粒子が含まれた外部層を積層してパウチフィルムを製作する段階;
前記パウチフィルムを内部に電極組立体が収容され得るように立体的形状に成形する段階;及び、
前記外部層の色相を介して前記パウチフィルムの延伸率を測定する段階を含む、二次電池パウチケースの製造方法。
【請求項2】
前記延伸率を測定する段階は、
前記外部層の色相データを抽出する段階;
色相と延伸率が対応されたデータテーブルに前記色相データを入力する段階;及び、
前記入力された色相データに対応されるパウチフィルムの延伸率の値を出力する段階を含むことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池パウチケースの製造方法。
【請求項3】
前記延伸率を測定する段階の後に、
成形不良を判定する段階をさらに含み、
前記成形不良を判定する段階は、パウチフィルムの延伸率が40%以上である場合、不良として判定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の二次電池パウチケースの製造方法。
【請求項4】
前記パウチフィルムを製作する段階の前に、
前記外部層を製造する段階をさらに含み、
前記外部層を製造する段階は、
ナイロンの上部に有色染料が含まれたポリエチレンテレフタレートを積層して前記外部層を形成することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の二次電池パウチケースの製造方法。
【請求項5】
前記外部層を製造する段階は、
前記外部層の厚さを12μmから30μmに製造することを特徴とする、請求項4に記載の二次電池パウチケースの製造方法。
【請求項6】
前記パウチフィルムを製作する段階において、
前記内部層は、ポリプロピレンで形成することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の二次電池パウチケースの製造方法。
【請求項7】
前記パウチフィルムを製作する段階において、
前記金属層は、アルミニウムで形成することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の二次電池パウチケースの製造方法。
【請求項8】
内部層;
前記内部層の上部に積層される金属層;及び、
前記金属層の上部に積層され、有色染料粒子が混合した外部層で構成される、二次電池パウチフィルムであって、
前記外部層は、パウチフィルムの成形時、基準色相より明るくなる場合、危険延伸に到達したと判断可能であり、
前記基準色相は、延伸率が40%に到達した場合の外部層の色相であることを特徴とする、二次電池パウチフィルム。
【請求項9】
前記外部層は、パウチフィルムの成形時、前記外部層の色相を介して延伸率の測定ができることを特徴とする、請求項8に記載の二次電池パウチフィルム。
【請求項10】
前記外部層は、
ナイロンの上部にポリエチレンテレフタレートが積層されて形成されており、前記ポリエチレンテレフタレートに有色染料粒子が含まれていることを特徴とする、請求項8または9に記載の二次電池パウチフィルム。
【請求項11】
前記金属層は、アルミニウムで形成され、前記内部層は、ポリプロピレンで形成されることを特徴とする、請求項8~10のいずれか一項に記載の二次電池パウチフィルム。
【請求項12】
凹形状のコップ部が形成される下部ケース;及び、
前記下部ケースの上部を上方からカバーする上部ケースを含み、
前記下部ケースと前記上部ケースは、パウチフィルムが成形されて製造されたものであり、
前記パウチフィルムは、
内部層;
前記内部層の上部に積層される金属層;及び、
前記金属層の上部に積層され、有色染料又は顔料粒子が含まれた外部層で構成される、二次電池パウチケースであって、
前記外部層は、パウチフィルムの成形時、基準色相より明るくなる場合、危険延伸に到達したと判断可能であり、
前記基準色相は、延伸率が40%に到達した場合の外部層の色相であることを特徴とする、二次電池パウチケース。
【請求項13】
前記コップ部は、
1つの底面と4つの側面を有するように形成され、
前記底面と前記側面は、
各面の周囲領域と中央領域の色相が互いに異なるように形成されることを特徴とする、請求項12に記載の二次電池パウチケース。
【請求項14】
前記底面と前記側面は、
各面の周囲領域が中央領域より明るく形成されることを特徴とする、請求項13に記載の二次電池パウチケース。
【請求項15】
前記底面と前記側面は、
各面の周囲領域が中央領域より有色染料又は顔料の濃度が低く分布されることを特徴とする、請求項13又は14に記載の二次電池パウチケース。」
第3 特許異議の申立理由、異議申立人の提出した証拠
1 特許異議の申立理由
異議申立人の主張する特許異議の申立理由(進歩性)の概要は、次のとおりである。
本件発明1~15は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 異議申立人の提出した証拠
異議申立人が提出した証拠(甲号証)は次のとおりである。
甲第1号証:特開2016-171078号公報
甲第2号証:特表2003-506698号公報
甲第3号証:特開2013-154387号公報
甲第4号証:米国特許出願公開第2012/0156551号明細書
甲第5号証:特開2017-212074号公報
甲第6号証:特表2019-531929号公報
甲第7号証:特開2012-33393号公報
第4 主な甲号証の記載
1 甲第1号証について
(1)甲第1号証には、次の記載がある。
「【0002】
従来、様々なタイプの電池が開発されているが、あらゆる電池において、電極や電解質等の電池素子を封止するために包装材料が不可欠な部材になっている。従来、電池用包装として金属製の包装材料が多用されていたが、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話等の高性能化に伴い、電池には、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の電池用包装材料では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
【0003】
そこで、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る電池用包装材料として、基材層/金属層/熱溶着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の積層体が提案されている。このようなフィルム状の電池用包装材料では、熱溶着性樹脂層同士を対向させて周縁部をヒートシールにて熱溶着させることにより電池素子を封止できるように形成されている。
・・・(中略)・・・。
【0006】
上記のようなフィルム状の電池用包装材料としては、成形によって凹部が形成され、当該凹部によって形成された空間に、電池素子を収容されるものがある。このような電池用包装材料において、成形時に、樹脂により形成されている最外層に白化が生じることがあり、特に、成形によって形成されるコーナー部分においては、樹脂が大きく引き延ばされるため、白化が生じやすい。さらに、最外層に位置する層を熱硬化性樹脂などによって形成した場合には、熱可塑性樹脂よりも成形性に劣るため、成形時の白化が特に生じやすいという問題がある。
【0007】
本発明の主な目的は、少なくとも、表面被覆層、基材層、金属層、及び熱溶着性樹脂層が順次積層された積層体からなり、表面被覆層が、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により形成されている電池用包装材料において、成形時の白化を抑制し、優れた成形性を付与する技術を提供することにある。
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、少なくとも、表面被覆層、基材層、金属層、及び熱溶着性樹脂層が順次積層された積層体からなり、表面被覆層が、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により形成された電池用包装材料において、前記表面被覆層の表面のインデンテーション法により負荷荷重1mNで測定されたマルテンス硬度が、15N/mm2以上であることにより、成形時の白化が抑制され、優れた成形性を備えることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。」
「【0013】
1.電池用包装材料の積層構造
本発明の電池用包装材料は、図1に示すように、少なくとも、表面被覆層1、基材層2、金属層4、及び熱溶着性樹脂層5が順次積層された積層体からなる。本発明の電池用包装材料において、表面被覆層1が最外層になり、熱溶着性樹脂層5は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置する熱溶着性樹脂層5同士が熱溶着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。」
「【0041】
(顔料・染料)
表面被覆層1は、必要に応じて、顔料及び染料の少なくとも一方が含まれてもよい。表面被覆層1が、顔料及び染料の少なくとも一方を含む場合、成形時の白化をより効果的に抑制することができ、さらに、耐摩耗性を向上させることもできる。また、表面被覆層1が、顔料及び染料の少なくとも一方を含むことにより、電池用包装材料に識別性を付与(顔料及び染料の少なくとも一方によって呈色)でき、電池用包装材料の表面にマットな意匠を付与したり、さらに電池用包装材料の熱伝導率を高めて放熱性を向上させることが可能になる。」
「【0058】
<表面被覆層1の硬さ>
本発明の電池用包装材料においては、熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により形成された前記表面被覆層の表面は、インデンテーション法により負荷荷重1mNで測定されたマルテンス硬度が、15N/mm2以上であることを特徴とする。本発明の電池用包装材料においては、表面被覆層1がこのような特定の硬度を有していることにより、表面被覆層1が熱硬化性樹脂を含む樹脂組成物の硬化物により形成されているにも拘わらず、成形時の白化が効果的に抑制され、優れた成形性を有している。成形時の白化をさらに効果的に抑制する観点から、当該硬度としては、好ましくは18N以上、より好ましくは20N以上が挙げられる。なお、当該硬度としては、好ましくは18N/mm2以上、より好ましくは20N/mm2以上が挙げられる。なお、当該マルテンス硬度の上限値としては、25N/mm2程度である。
・・・(中略)・・・。
【0061】
<表面被覆層1の厚み>
表面被覆層1の厚みとしては、例えば、0.5~10μm程度、好ましくは1~9μm程度が挙げられる。
・・・(中略)・・・。
【0064】
基材層2の厚みについては、基材層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、10~50μm程度、好ましくは15~25μm程度が挙げられる。
・・・(中略)・・・。
【0070】
金属層4の厚みは、金属層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、10μm~50μm程度、好ましくは20μm~40μm程度とすることができる。
・・・(中略)・・・。
【0089】
また、熱溶着性樹脂層5の厚みとしては、熱溶着性樹脂層としての機能を発揮すれば特に制限されないが、例えば、10~100μm程度、好ましくは15~50μm程度が挙げられる。」
「【0101】
本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。」
「【0103】
実施例1-3及び比較例1-2
<電池用包装材料の製造>
基材層2/接着層3/金属層4が順に積層された積層体に対して、サーマルラミネート法で熱溶着性樹脂層5を積層させることにより、基材層2/接着層3/金属層4/熱溶着性樹脂層5が順に積層された積層体を得た。次に、基材層2の表面に表面被覆層を形成して、表面被覆層1/基材層2/接着層3/金属層4/熱溶着性樹脂層5が順に積層された積層体からなる電池用包装材料を製造した。電池用包装材料の具体的な製造条件は、以下に示す通りである。
【0104】
まず、基材層2/接着層3/金属層4が順に積層された積層体を作製した。具体的には、基材層2の一方面に、ポリエステル系の主剤とイソシア系硬化剤の2液型ウレタン接着剤からなる接着層3を3μmとなるように形成し、金属層4の化成処理面と加圧加熱貼合(サーマルラミネーション)し基材層2/接着層3/金属層4が順に積層された積層体を作製した。
【0105】
基材層2としては、厚み15μmの2軸延伸ナイロンフィルム、金属層4としては、厚み35μmのアルミニウム箔からなる金属層4を用いた、アルミニウム箔は、それぞれ、フェノール樹脂、フッ化クロム化合物(三価)、及びリン酸からなる処理液をロールコート法により金属層の両面にそれぞれ10mg/m2塗布し、皮膜温度が180℃以上となる条件で20秒間焼付けすることにより化成処理した。
【0106】
また、別途、層共押出しフィルムからなる熱溶着性樹脂層5を準備した。それぞれの熱溶着性樹脂層5は、金属層側を構成する樹脂層(不飽和カルボン酸でグラフト変性した不飽和カルボン酸グラフト変性ランダムポリプロピレン、厚み20μm)と、最内層側を構成する樹脂層(ポリプロピレン(ランダムコポリマー)、厚み15μm)とを共押出することにより2層共押出しフィルムとした。
【0107】
次いで、前記で作製した基材層2/接着層3/金属層4からなる積層体の金属層に、前記で作製した2層共押出しフィルムの金属層側を構成する樹脂層が接するように重ねあわせ、金属層4が120℃となるように加熱してサーマルラミネーションを行うことにより、基材層2/接着層3/金属層4/熱溶着性樹脂層5が順に積層された積層体を得た。得られた積層体を一旦冷却した後に、180℃になるまで加熱し、1分間その温度を保持して熱処理を施した。
【0108】
次に、活性水素を有する多官能アクリレートとポリイソシアネートとを反応させることにより得られた多官能ウレタンアクリレートを前記積層体の基材層2の表面に塗布し、45℃で3日間加熱して、厚みが3μmの表面被覆層1を形成し、表面被覆層1/基材層2/接着層3/金属層4/熱溶着性樹脂層5が順に積層された積層体からなる電池用包装材料を得た。
【0109】
<表面被覆層の硬度の測定評価>
上記で得られた各電池用包装材料の表面被覆層1の表面のマルテンス硬度を、フィッシャーインストルメンツ社製、ピコデンター HM-500を用いたインデンテーション法により測定した。当該マルテンス硬度は、表面被覆層1の表面に対して、5回測定した平均値とした。測定条件の詳細は、以下の通りである。結果を表1に示す。
<測定条件>
・負荷荷重1mN
・荷重速度 1mN/10秒
・保持時間 10秒
・荷重除荷速度 1mN/10秒
・圧子 ビッカース(四角錐の先端部分の対面角 136°)
・測定温度 25℃
・相対湿度 50%
【0110】
<成形性の評価>
上記で得られた電池用包装材料を裁断して、120×80mmの短冊片を作製し、これを試験サンプルとした。30×50mmの矩形状の雄型とこの雄型とのクリアランスが0.5mmの雌型からなるストレート金型を用い、雄型側に熱接着性樹脂層側が位置するように雌型上に上記試験サンプルを載置し、それぞれ、成形深さ6~8mmとなるように当該試験サンプルを0.1MPaの押え圧(面圧)で押えて、冷間成形(引き込み1段成形)した。成形された電池用包装材料のコーナー部のピンホールの有無と白化が生じているか否かを目視で確認した。結果を表1に示す。
【0111】
【表1】
[図:0001437409000001.jpg]
」
「【図1】
[図:0001437409000002.jpg]
」
(2)上記(1)によれば、次のことがいえる。
ア 段落【0103】によれば、甲第1号証には、実施例1として、基材層2/接着層3/金属層4が順に積層された積層体に対して、サーマルラミネート法で熱溶着性樹脂層5を積層させることにより、基材層2/接着層3/金属層4/熱溶着性樹脂層5が順に積層された積層体を得て、次に、基材層2の表面に表面被覆層を形成して、表面被覆層1/基材層2/接着層3/金属層4/熱溶着性樹脂層5が順に積層された積層体からなる電池用包装材料を製造する方法が記載されているといえる。
また、段落【0101】によれば、電池用包装材料は二次電池用であるといえる。
イ 段落【0104】によれば、接着層3は3μmとなるように形成され、同【0105】によれば、基材層2は、厚み15μmの2軸延伸ナイロンフィルム、金属層4は、厚み35μmのアルミニウム箔が用いられる。
ウ 段落【0106】によれば、熱溶着性樹脂層5は、金属層側を構成する厚さ20μmの樹脂層と最内層側を構成する厚み15μmの樹脂層とを共押出された2層共押出しフィルムが用いられる。
エ 段落【0108】によれば、表面被覆層1は、多官能ウレタンアクリレートからなる厚さ3μmの層が形成されたものである。
オ 段落【0109】、【0111】の【表1】によれば、実施例1Aの表面被覆層1の表面のマルテンス硬度は15N/mm2である。
カ 段落【0110】によれば、得られた電池用包装材料を裁断して、短冊片を作製し、これを試験サンプルとし、ストレート金型を用い、雄型側に熱接着性樹脂層側が位置するように雌型上に試験サンプルを載置し、成形深さ6~8mmとなるように当該試験サンプルを0.1MPaの押え圧(面圧)で押えて、冷間成形(引き込み1段成形)する工程が記載されているといえ、「成形された電池用包装材料」との記載も考慮すると、当該工程から、電池用包装材料を用いた成形体が得られることは明らかである。
そうすると、上記アも踏まえれば、甲第1号証には、上記アの二次電池用包装材料を製造する方法と上記冷間成形(引き込み1段成形)する工程とを有する、二次電池用包装材料を用いた成形体の製造方法が記載されているといえる。
(3)甲1発明
上記(2)によれば、甲第1号証には、製造方法に関する次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
「基材層2/接着層3/金属層4が順に積層された積層体に対して、サーマルラミネート法で熱溶着性樹脂層5を積層させることにより、基材層2/接着層3/金属層4/熱溶着性樹脂層5が順に積層された積層体を得て、次に、基材層2の表面に表面被覆層を形成して、表面被覆層1/基材層2/接着層3/金属層4/熱溶着性樹脂層5が順に積層された積層体からなる電池用包装材料を製造する工程と、
得られた電池用包装材料を裁断して、短冊片を作製し、これを試験サンプルとし、ストレート金型を用い、雄型側に熱接着性樹脂層側が位置するように雌型上に試験サンプルを載置し、成形深さ6~8mmとなるように当該試験サンプルを0.1MPaの押え圧(面圧)で押えて、冷間成形(引き込み1段成形)する工程と、を有する、
二次電池用包装材料を用いた成形体の製造方法であって、
接着層3は3μmとなるように形成され、基材層2は、厚み15μmの2軸延伸ナイロンフィルム、金属層4は、厚み35μmのアルミニウム箔が用いられ、
熱溶着性樹脂層5は、金属層側を構成する厚さ20μmの樹脂層と最内層側を構成する厚み15μmの樹脂層とを共押出された2層共押出しフィルムが用いられ、
表面被覆層1は、多官能ウレタンアクリレートからなる厚さ3μmの層が形成されたものであり、その表面のマルテンス硬度が15N/mm2である、
二次電池用包装材料を用いた成形体の製造方法。」
(4)また、上記(1)によれば、次のこともいえる。
ア 段落【0013】によれば、甲第1号証には、電池用包装材料が記載されているといえ、段落【0101】によれば、電池用包装材料は、二次電池用であるといえる。
イ 段落【0013】によれば、電池用包装材料は、表面被覆層1、基材層2、金属層4、及び熱溶着性樹脂層5が順次積層された積層体からなり、表面被覆層1が最外層になり、熱溶着性樹脂層5は最内層になる。
ウ 段落【0041】によれば、表面被覆層1は、電池用包装材料に呈色できる染料が含まれる。
エ 段落【0061】、【0064】、【0070】及び【0089】によれば、表面被覆層1の厚みは、0.5~10μm程度、基材層2の厚みは、10~50μm程度、金属層4の厚みは、10μm~50μm程度、熱溶着性樹脂層5の厚みは、10~100μm程度である。
オ 段落【0008】、【0058】によれば、表面被覆層1の表面のマルテンス硬度は、15N/mm2以上である。
(5)甲1発明A
上記(4)によれば、甲第1号証には、物に関する次の発明(以下、「甲1発明A」という。)が記載されているといえる。
「二次電池用包装材料であって、
表面被覆層1、基材層2、金属層4、及び熱溶着性樹脂層5が順次積層された積層体からなり、表面被覆層1が最外層になり、熱溶着性樹脂層5は最内層になり、
表面被覆層1は、電池用包装材料に呈色できる染料が含まれ、
表面被覆層1の厚みは、0.5~10μm程度、基材層2の厚みは、10~50μm程度、金属層4の厚みは、10μm~50μm程度、熱溶着性樹脂層5の厚みは、10~100μm程度であり、
表面被覆層1の表面は、マルテンス硬度が15N/mm2以上である、
電池用包装材料。」
2 甲第2号証について
(1)甲第2号証には、図面とともに次の記載がある。
「【請求項1】 基材に発光性コーティング剤を塗布する段階、
該コーティング剤を硬化させる段階、
該コーティング剤を励起照射によって照射する段階、および
基材のひずみを測定するために、該コーティング剤から発出する発光の一つまたは複数の特性を測定する段階を含む方法において、少なくとも部分的に、基材にかかるひずみの量と、該コーティングにおける亀裂の形状との間に関係があるために、該コーティング剤から発出する発光の一つまたは複数の特性が、基材にかかるひずみに相関している方法。
・・・(中略)・・・。
【請求項4】 基材がひずみを受けたときに、コーティングの中に亀裂が生じる、請求項1記載の方法。
・・・(中略)・・・。
【請求項11】 基材にかかるひずみが変化するにつれて、亀裂の形状が変化するために、亀裂の形状の変化によって、コーティング剤から発出する発光の一つまたは複数の特性に変化が生じ、コーティング剤から発出する発光の一つまたは複数の該特性が、基材にかかるひずみと相関するため、コーティング剤から発出する発光の一つまたは複数の該特性を計測することによって、基材にかかるひずみを測定することができる、請求項1記載の方法。
【請求項12】 亀裂の形状の変化が、亀裂の幾何的構造、亀裂の幅、亀裂の密度、亀裂の方向、亀裂の表面の肌理、亀裂の深さ、および亀裂の開口からなる群の一つまたは複数の変化を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】 コーティング剤から発出する発光の強度が、基材にかかるひずみの関数である、請求項11記載の方法。
【請求項14】 コーティング剤から発出する発光の強度が、基材にかかるひずみにほぼ直線的に相関している、請求項11記載の方法。
・・・(中略)・・・。
【請求項16】コーティングを較正することにより、下記のアルゴリズムを適用することによってひずみマップを作成できるように、コーティング剤に関する較正関数Kが得られる、請求項15記載の方法:
[ひずみマップ]=K*f([画像S]/[画像R])
ここで、[ひずみマップ]、[画像S]および[画像R]は、デジタル画像データを含むマトリクスであり、f(v)は、スムージング関数(smoothing function)であり、[画像R]は、基材にひずみを加えていない時にコーティング剤から発出する発光の一つまたは複数の該特性の画像に基づいており、且つ[画像S]は、基材にひずみを加えた時にコーティング剤から発出する発光の一つまたは複数の該特性の画像に基づいている。
・・・(中略)・・・。
【請求項28】 下記の手段を含むひずみ領域マッピングシステム:
基材上の発光性コーティング剤を照射するための手段において、少なくとも部分的に、基材にかかるひずみの量と、該コーティングにおける亀裂の形状との関係により、該コーティング剤によって放出される光の一つまたは複数の特性が基材にかかるひずみに相関している手段、および
該コーティング剤によって放出される光の一つまたは複数の特性を測定するための手段において、該コーティング剤よって放出される光の一つまたは複数の特性の測定値から、基材にかかるひずみに関する情報が提供される手段。
・・・(中略)・・・。
【請求項43】 少なくとも一つの発光性化合物が、複合有機色素(conjugated organic dye)、ポリ(フェニレンビニレン)、シアニン、1,5,15,20-テトラフェニルポルフィリン亜鉛(II)、トランス-4-[4-(ジメチルアミノ)スチリル]-1-ヨウ化メチルピリジニウム(trans-4-[4-(dimetylamino)styryl]-1-methylpyridinium iodide)、トランス,トランス-1,4,-[ビス-3,4,5-(トリメトキシスチリル)]ベンゼン、およびトリス-(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)-二塩化ルテニウム(II)(tris-(4,7-diphenyl-1,10-phenanthroline)-ruthenium (II) dichloride)からなる群より選択される、請求項41記載の発光性コーティング剤。
【請求項44】 コーティング剤が、約0.450 gのERL 4206エポキシ樹脂、約0.010 gのエポン826 (Epon 826)エポキシ樹脂、約0.540 gのHY 918硬化剤、約0.006 gの4-(ジメチルアミノ)ピリジン、および約0.003 gのペリレンを混合して製造される、請求項41記載の発光性コーティング剤。」
「【0001】
発明の背景
本発明は、ひずみ測定の分野に関する。本技術による恩恵を受けることのできる適用例は、複雑な幾何構造物にかかるひずみの工学的解析、設計解析、および構造物の非破壊試験などである。したがって、本発明は、自動車用、航空宇宙用、民生用の構造物、およびスポーツ用品などその他多くのものに利用することができる。
・・・(中略)・・・。
【0005】
したがって、複雑な形状を有する構造物にかかる全領域のひずみを容易かつ正確に測定できる方法およびシステムに対する需要がまだ存在している。リアルタイムで動的ひずみ測定を、さらに低いひずみレベルで行うことのできる方法およびシステムが一層好都合である。
・・・(中略)・・・。
【0008】
本コーティングは、一つまたは複数のさまざまな方法によって、基材に適用することができる。このような方法には、静電塗装による沈着、化学薬品の気化による沈着、塗装、スピンコーティング、および浸漬コーティングなどが含まれる。好ましくは、コーティング剤は、金属、ポリマー、セラミック、または合成物などの基材上に薄層を作り出すためのエアロゾル技術を用いて実施できるよう調合することができる。」
「【0024】
基板にかかるひずみ領域を変化させると、コーティングの亀裂の形状に変化が起きて、コーティングから発出する照射光の割合に直接影響することがある。その結果、コーティングから発出する光の照射強度が、その下にある基材にかかる機械的なひずみと相関することになる。具体的な態様において、本コーティング剤から放出される発光強度は、構造物に機械的なひずみが加わるにつれて増加するようにすることもできる。例えば、可視光強度が、基材の表面にかかかる機械的なひずみにほぼ直線的に比例するようにもできる。このように、発光強度分布を用いて、下にある基板上の機械的なひずみ領域マップを作成することができる。」
(2)甲第2号証に記載された技術
上記(1)によれば、甲第2号証には、次の技術(以下、「甲第2号証に記載された技術」という。)が記載されているといえる。
「基材に発光性コーティング剤を塗布する段階、該コーティング剤を硬化させる段階、該コーティング剤を励起照射によって照射する段階、および基材のひずみを測定するために、該コーティング剤から発出する発光の一つまたは複数の特性を測定する段階を含む方法において、コーティング剤から発出する発光の一つまたは複数の該特性が、基材にかかるひずみと相関するため、コーティング剤から発出する発光の一つまたは複数の該特性を計測することによって、基材にかかるひずみを測定することができること。」
第5 申立理由(進歩性)に対する当審の判断
1 本件発明1について
(1)本件発明1と甲1発明との対比
ア 「パウチフィルムを製作する段階」について
(ア)甲1発明の「電池用包装材料」は、「表面被覆層1/基材層2/接着層3/金属層4/熱溶着性樹脂層5が順に積層された積層体からなる」ところ、「金属層4」は、本件発明1の「金属層」に相当する。
そして、甲1発明の「表面被覆層1」は、表面を被覆する層であって、「金属層4」の位置を基準として捉えれば、外部の層であるといえ、本件発明1の「外部層」に相当する。
また、甲1発明の「熱溶着性樹脂層5」は、「表面被覆層1」と「金属層4」の位置を基準として捉えれば、内部の層であるといえ、本件発明1の「内部層」に相当する。
(イ)甲1発明の「電池用包装材料を製造する工程」では、「基材層2/接着層3/金属層4が順に積層された積層体」の「金属層4」側に「熱溶着性樹脂層5を積層させ」、「次に、基材層2の表面に表面被覆層を形成」するところ、「熱溶着性樹脂層5」の位置を基準として捉えれば、甲1発明の「電池用包装材料を製造する工程」においても、「熱溶着性樹脂層5」の上側に「金属層4」を積層し、「金属層4」の上側に「表面被覆層1」を積層して「電池用包装材料を製造」しているといえる。
(ウ)甲1発明において、「接着層3は3μmであり、基材層2は、厚み15μmの2軸延伸ナイロンフィルム、金属層4は、厚み35μmのアルミニウム箔からなり、熱溶着性樹脂層5は、金属層側を構成する厚さ20μmの樹脂層と最内層側を構成する厚み15μmの樹脂層とを共押出された2層共押出しフィルムであり、表面被覆層1は、多官能ウレタンアクリレートからなる厚さ3μmの層であ」るところ、甲第1号証(上記第4の1(1)の段落【0003】、【0006】を参照)の「電池用包装材料として、基材層/金属層/熱溶着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の積層体」及び「フィルム状の電池用包装材料」との記載も踏まえれば、甲1発明の「電池用包装材料」は、「フィルム状」であるといえる。
(エ)以上によれば、甲1発明における、「熱溶着性樹脂層5」の上側に「金属層4」を積層し、「金属層4」の上側に「表面被覆層1」を積層してフィルム状の「電池用包装材料を製造する工程」と、本件発明1の「内部層の上部に金属層を積層し、前記金属層の上部に有色染料粒子が含まれた外部層を積層してパウチフィルムを製作する段階」とは、「内部層の上部に金属層を積層し、前記金属層の上部に外部層を積層してフィルムを製作する段階」である点で共通する。
イ 「立体的形状に成形する段階」について
甲1発明の「冷間成形(引き込み1段成形)する工程」では、「得られた電池用包装材料を裁断して、短冊片を作製し、これを試験サンプルとし、ストレート金型を用い、雄型側に熱接着性樹脂層側が位置するように雌型上に試験サンプルを載置し、成形深さ6~8mmとなるように当該試験サンプルを0.1MPaの押え圧(面圧)で押え」ている。
そして、甲第1号証には、「成形された電池用包装材料のコーナー部のピンホールの有無と白化が生じているか否かを目視で確認した」ことが記載され(上記第4の1(1)の段落【0110】)、また、成形によって凹部が形成され、当該凹部によって形成された空間に、電池素子を収容されるような電池用包装材料において、成形によって形成されるコーナー部分においては、白化が生じやすいことも記載されており(上記第4の1(1)の段落【0006】)、これらの記載を踏まえれば、甲1発明の「冷間成形(引き込み1段成形)する工程」においても、フィルム状の「電池用包装材料」を立体的形状に成形していると理解できる。
そうすると、上記アも踏まえれば、甲1発明におけるフィルム状の「電池用包装材料」を立体的形状に成形する「冷間成形(引き込み1段成形)する工程」と、本件発明1の「パウチフィルムを内部に電極組立体が収容され得るように立体的形状に成形する段階」とは、「フィルムを立体的形状に成形する段階」である点で共通する。
ウ 「二次電池パウチケースの製造方法」について
甲1発明の「二次電池用包装材料を用いた成形体の製造方法」と、本件発明1の「二次電池パウチケースの製造方法」とは、「二次電池用成形体の製造方法」である点で共通する。
エ 以上によれば、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「内部層の上部に金属層を積層し、前記金属層の上部に外部層を積層してフィルムを製作する段階;
前記フィルムを立体的形状に成形する段階;
を含む、二次電池用成形体の製造方法。」
(相違点1)
外層部に関し、本件発明1は「有色染料粒子が含まれた」と特定されているのに対し、甲1発明はその旨特定されていない点。
(相違点2)
フィルムに関し、本件発明1は「パウチ」フィルムであるのに対し、甲1発明はフィルム状の「電池用包装材料」であり、「パウチ」について特定されていない点。
(相違点3)
立体的形状に成形する段階において、本件発明1は「内部に電極組立体が収容され得るように」成形するのに対し、甲1発明はその旨特定されていない点。
(相違点4)
本件発明1は「外部層の色相を介して前記パウチフィルムの延伸率を測定する段階を含む」のに対し、甲1発明はその旨特定されていない点。
(相違点5)
二次電池用成形体に関し、本件発明1は「二次電池パウチケース」であるのに対し、甲1発明は「二次電池用包装材料を用いた成形体」であり、「パウチケース」について特定されていない点。
(2)相違点に対する判断
事案に鑑み、相違点4から検討する。
甲第2号証(上記第4の2(2)を参照)には、「基材に発光性コーティング剤を塗布」し、「コーティング剤を励起照射によって照射」し、「コーティング剤から発出する発光の一つまたは複数の該特性を計測することによって、基材にかかるひずみを測定すること」に係る甲第2号証に記載された技術が記載されている。
しかしながら、甲第2号証(上記第4の2(1)の段落【0001】を参照)には、ひずみ測定の分野に関して、自動車用、航空宇宙用、民生用の構造物、およびスポーツ用品などに利用することは記載されているものの、具体的にひずみ測定を電池の分野で利用することは記載されていないし、そもそも、外部層の色相を介してパウチフィルムの延伸率を測定することも記載も示唆もされていない。
また、甲第3~7号証のいずれにも、外部層の色相を介してパウチフィルムの延伸率を測定することは記載も示唆もされていない。
そうすると、仮に、甲1発明に甲第2号証に記載された技術及び甲第3~7号証に記載された事項を適用したとしても、上記相違点4に係る「外部層の色相を介して前記パウチフィルムの延伸率を測定する段階を含む」本件発明1の構成には至らない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明において、上記相違点4に係る構成を採用し、本件発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明1は、甲1発明、甲第2号証に記載された技術及び甲第3~7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)異議申立人の主張について
異議申立人は、異議申立書において、甲1発明、甲2発明は、いずれも自動車に用いられる積層体という点で技術分野が共通又は関連し、また、甲1発明の表面被覆層と甲2発明の発光性コーティング剤は、組成に共通する成分が多く、積層体用組成物という点でも技術分野が共通又は関連するから、甲2発明を参酌し、甲1発明の電池用包装材料の製造方法において、甲1発明の表面被覆層(外部層)として甲2発明の発光性コーティング剤を用いること、表面被覆層の色相を介して包装材料の延伸率(ひずみ量)を測定する工程を行うことは、当業者が容易に想到できるものであり(59頁1~下から3行)、甲3発明~甲6発明も参酌し、甲1発明の表面被覆層(外部層)として甲2発明の発光性コーティング剤を用いること、甲1発明の電池用包装材料の製造方法において、表面被覆層の色相を介して包装材料の延伸率(ひずみ量)を測定する工程を行うことは、当業者が容易に想到できる(63頁18~28行)旨主張する。
しかしながら、甲第2~7号証のいずれにも、外部層の色相を介してパウチフィルムの延伸率を測定することは記載も示唆もされておらず、仮に、甲1発明に甲第2号証に記載された技術及び甲第3~7号証に記載された事項を適用したとしても、上記相違点4に係る「外部層の色相を介して前記パウチフィルムの延伸率を測定する段階を含む」本件発明1の構成には至らないことは、上記(2)のとおりである。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。
2 本件発明2~7について
上記第2のとおり、本件発明2~7は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記1と同様の理由により、本件発明2~7は、甲1発明、甲第2号証に記載された技術、及び、甲第3~7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明8について
(1)本件発明8と甲1発明Aとの対比
ア 甲1発明Aの「最内層にな」る「熱溶着性樹脂層5」は、本件発明8の「内部層」に相当する。
イ 甲1発明Aでは、「金属層4、及び熱溶着性樹脂層5が順次積層され」、「熱溶着性樹脂層5は最内層にな」ることから、「金属層4」が「熱溶着性樹脂層5」の上部に積層されることは明らかである。
そうすると、上記アも踏まえれば、甲1発明Aにおいて「熱溶着性樹脂層5」の上部に積層される「金属層4」は、本件発明8の「内部層の上部に積層される金属層」に相当する。
ウ 甲1発明Aの「最外層にな」る「表面被覆層1」は、本件発明8の「外部層」に相当する。
そして、甲1発明Aでは、「表面被覆層1、基材層2、金属層4、及び熱溶着性樹脂層5が順次積層された積層体からなり、表面被覆層1が最外層になり、熱溶着性樹脂層5は最内層にな」ることから、「表面被覆層1」が「金属層4」の上部に積層されることは明らかである。
また、甲1発明Aの「表面被覆層1」において、「呈色できる染料が含まれ」る態様は、有色染料が混合されている態様であるということができる。
そうすると、甲1発明Aの「金属層4」の上部に積層され、「電池用包装材料に呈色できる染料が含まれ」る「表面被覆層1」と本件発明8の「金属層の上部に積層され、有色染料粒子が混合した外部層」とは、「金属層の上部に積層され、有色染料が混合した外部層」である点で共通する。
エ 甲1発明Aにおいて、「表面被覆層1の厚みは、0.5~10μm程度、基材層2の厚みは、10~50μm程度、金属層4の厚みは、10μm~50μm程度、熱溶着性樹脂層5の厚みは、10~100μm程度であ」るところ、甲第1号証(上記第4の1(1)の段落【0003】、【0006】を参照)の「電池用包装材料として、基材層/金属層/熱溶着性樹脂層が順次積層されたフィルム状の積層体」、「フィルム状の電池用包装材料」等の記載も踏まえれば、甲1発明Aの「電池用包装材料」は、フィルム状であるといえる。
そうすると、甲1発明Aのフィルム状の「二次電池用包装材料」と本件発明8の「二次電池パウチフィルム」とは、「二次電池フィルム」である点で共通する。
オ 以上によれば、本件発明8と甲1発明Aとの一致点及び相違点は、次のとおりである。
(一致点)
「内部層;
前記内部層の上部に積層される金属層;及び、
前記金属層の上部に積層され、有色染料が混合した外部層で構成される、二次電池フィルム。」
(相違点6)
有色染料に関し、本件発明8は有色染料「粒子」であるのに対し、甲1発明Aはその旨特定されていない点。
(相違点7)
二次電池フィルムに関し、本件発明8は二次電池「パウチ」フィルムであるのに対し、甲1発明Aはその旨特定されていない点。
(相違点8)
本件発明8は、「外部層は、パウチフィルムの成形時、基準色相より明るくなる場合、危険延伸に到達したと判断可能であり、前記基準色相は、延伸率が40%に到達した場合の外部層の色相である」のに対し、甲1発明Aはその旨特定されていない点。
(2)相違点に対する判断
事案に鑑み、相違点8から検討する。
相違点8は、「延伸率が40%に到達した場合の外部層の色相である」「基準色相」と、「パウチフィルムの成形時」の色相を比較することにより、「外部層」が「危険延伸に到達したと判断可能」とするものであるから、外部層の色相を介してパウチフィルムの延伸率を測定することを前提とするものである。
そうすると、上記1(2)のとおり、甲第2~7号証には、外部層の色相を介してパウチフィルムの延伸率を測定することは記載も示唆もされていないのであるから、仮に、甲1発明Aに甲第2号証に記載された技術及び甲第3~7号証に記載された事項を適用したとしても、上記相違点8に係る「外部層は、パウチフィルムの成形時、基準色相より明るくなる場合、危険延伸に到達したと判断可能であり、前記基準色相は、延伸率が40%に到達した場合の外部層の色相である」という本件発明8の構成には至らない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明Aにおいて、上記相違点8に係る構成を採用し、本件発明8の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえないから、本件発明8は、甲1発明A、甲第2号証に記載された技術及び甲第3~7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)異議申立人の主張について
異議申立人は、異議申立書において、甲2発明に加えて、甲7発明を参酌し、甲1発明の電池用包装材料において、基準色相を、包装材料のひずみ量(延伸率)が所定(40%など)に到達した際の表面被覆層(外部層)の色相とすることは当業者が容易に想到でき、また、甲2発明を参酌し、甲1発明の電池用包装材料において、包装材料の成形時、基準色相より明るくなった時に危険延伸に到達したと判断することは、当業者が容易に想到できる(68頁19行~69頁7行)旨主張する。
しかしながら、甲第2~7号証のいずれにも、外部層の色相を介してパウチフィルムの延伸率を測定することは記載も示唆もされておらず、仮に、甲1発明Aに甲第2号証に記載された技術及び甲第3~7号証に記載された事項を適用したとしても、上記相違点8に係る「外部層は、パウチフィルムの成形時、基準色相より明るくなる場合、危険延伸に到達したと判断可能であり、前記基準色相は、延伸率が40%に到達した場合の外部層の色相である」という本件発明8の構成には至らないことは、上記(2)のとおりである。
したがって、異議申立人の上記主張は採用できない。
4 本件発明9~11について
上記第2のとおり、本件発明9~11は、本件発明8の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記3と同様の理由により、本件発明9~11は、甲1発明A、甲第2号証に記載された技術、及び、甲第3~7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
5 本件発明12について
上記第2のとおり、本件発明12は、上記3(1)オで認定した相違点8と同じ構成を有するから、本件発明12と、甲第1号証に記載された発明とを対比すると、上記相違点8に係る構成で相違することになる。
そうすると、上記3と同様の理由により、本件発明12は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された技術及び甲第3~7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
6 本件発明13~15について
上記第2のとおり、本件発明13~15は、本件発明12の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記5と同様の理由により、本件発明13~15は、甲第1号証に記載された発明、引用文献2に記載された技術、及び、甲第3~7号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
7 申立理由のまとめ
以上のとおり、本件発明1~15は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~7号証に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許の請求項1~15に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上の次第であるから、特許異議の申立ての理由及び異議申立人らの提出した証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2026-700004