特許異議申立
2025-700972
蓄電装置用外装材及びそれを用いた蓄電装置
- 審判番号
- 2025-700972
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-113617
- 登録番号
- 7658398
- 請求日
- 2025年10月08日
- 審決日
- 2025年12月04日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】鈴木 洋平
- 【異議申立人】中村 絵美
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 須原 宏光
- 審判官 畑中 博幸
- 分類
- P1651.113-Y (H01M) / P1651.121-Y (H01M) / P1651.536-Y (H01M) / P1651.537-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7658398号発明「蓄電装置用外装材及びそれを用いた蓄電装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7658398号の請求項1ないし6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7658398号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし6に係る特許についての出願は、平成29年1月6日に出願した特願2017-974号の一部を、令和3年11月12日に新たな特許出願とした特願2021-184842号の一部を、令和5年7月11日に新たな特許出願としたものであって、令和7年3月31日に特許権の設定登録がされ、令和7年4月8日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対して、令和7年10月8日に特許異議申立人 中村絵美により請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし6に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明6」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有し、
前記基材層がポリエステルフィルムからなる層であり、
前記ポリエステルフィルムは、突刺し強度が0.6N/μm以上であるとともに、160℃に保たれた熱間中で30分間加熱された後において破断伸度が60%超であり且つ50%伸長時応力値が75MPa以上であり、
前記破断伸度及び前記50%伸長時応力値はいずれも、チャック間距離75mm、標点間距離25mm及び試験速度50mm/分の条件で実施する引張試験によって測定される前記ポリエステルフィルムの4方向の測定値の平均値であり、
前記引張試験に供される試料はJIS K7127に規定される5号型ダンベル状の試料であって前記ポリエステルフィルムからなり、
前記4方向は前記ポリエステルフィルムのMD方向及びTD方向の2方向、並びに、前記MD方向及びTD方向からそれぞれ45°回転した2方向である、蓄電装置用外装材。
【請求項2】
前記基材層は、200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が75MPa以上であるポリエステルフィルムからなる層である、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項3】
前記基材層と前記接着層との間に設けられた易接着処理層を更に備える、請求項1又は2に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項4】
前記金属箔層の両面に設けられた腐食防止処理層を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項5】
前記シーラント層は、静摩擦係数が0.10~0.30である表面を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項6】
電極を含む電池要素と、前記電極から延在するリードと、前記リードを挟持し且つ前記電池要素を収容する容器とを備え、
前記容器は請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材から、前記シーラント層が内側となるように形成されている、蓄電装置。」
第3 申立理由の概要
申立理由1
請求項1-6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1-6に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
申立理由2
請求項1-4、6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1-6に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
申立理由3
請求項1-6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないため、請求項1-6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
申立理由4
請求項1-6に係る発明について、発明の詳細な説明の記載が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものでないめ、請求項1-6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
<証拠方法>
甲第1号証:特開2016-162622号公報
甲第2号証:国際公開第2015/156327号
甲第3号証:特開2011-204674号公報
第4 甲号証の記載事項、引用発明
1 甲第1号証
(1)甲第1号証には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。
「【請求項1】
少なくとも基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層、及び、シーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、
前記基材層が、95℃熱水収縮率が5%未満であり且つ180℃熱間収縮率が10~25%であるポリエステルフィルムからなる層である、蓄電装置用外装材。」
「【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層、及び、シーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、上記基材層が、95℃熱水収縮率が5%未満であり且つ180℃熱間収縮率が10~25%であるポリエステルフィルムからなる層である、蓄電装置用外装材を提供する。
【0012】
上記蓄電装置用外装材によれば、95℃熱水収縮率及び180℃熱間収縮率の双方が上記特定の範囲内であるポリエステルフィルムからなる基材層を備えることにより、深絞り成型性を向上させつつ、電池の製造時及び使用時において基材層と金属箔層との間の密着性を維持することができる。そのため、上記蓄電装置用外装材によれば、接着層及び金属箔層の破断を生じることなく成型深度を向上させることができるとともに、熱(高温、温水及び高温高湿)及び/又は電解液にさらされた場合であっても基材層と金属箔層との間で剥離が生じることを長期間にわたって抑制することができる。」
(2)甲1発明
上記【請求項1】及び【0011】の記載より、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「少なくとも基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層、及び、シーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、
前記基材層が、95℃熱水収縮率が5%未満であり且つ180℃熱間収縮率が10~25%であるポリエステルフィルムからなる層である、蓄電装置用外装材。」
2 甲第2号証
甲第2号証には、以下の事項が記載されている。
「[0023] また、外装材10の基材層側の表面及びシーラント層側の表面の少なくとも一方の(望ましくは、両方の)静摩擦係数は、0.1以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。外装材10の基材層側表面及び/又はシーラント層側表面の静摩擦係数が0.1以上であることにより、成型加工時の外装材10の凹部以外の部分(蓋部又はブランク部)の押さえが効いて、シワの発生を抑制できる。外装材10の基材層側の表面及びシーラント層側の表面の静摩擦係数は、0.4以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましい。外装材10の基材層側表面及びシーラント層側表面の静摩擦係数が0.4以下であることにより、外装材10の成型加工エリア(凹部22)への流れ込み量が増加し、より良好な成型性が得られる。」
第5 当審の判断
1 申立理由1(第29条第1項第3号)、申立理由2(第29条第2項)について
(1)本件特許発明1
ア 対比
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、次のことがいえる。
(ア)甲1発明の「少なくとも基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層、及び、シーラント層がこの順で積層された構造」は、本件特許発明1の「少なくとも基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層及びシーラント層がこの順で積層された構造」に相当する。
(イ)甲1発明の「前記基材層が」「ポリエステルフィルムからなる層」は、本件特許発明1の「前記基材層がポリエステルフィルムからなる層」に相当する。
但し、ポリエステルフィルムについて、本件特許発明1は「突刺し強度が0.6N/μm以上であるとともに、160℃に保たれた熱間中で30分間加熱された後において破断伸度が60%超であり且つ50%伸長時応力値が75MPa以上であり、前記破断伸度及び前記50%伸長時応力値はいずれも、チャック間距離75mm、標点間距離25mm及び試験速度50mm/分の条件で実施する引張試験によって測定される前記ポリエステルフィルムの4方向の測定値の平均値であり、前記引張試験に供される試料はJIS K7127に規定される5号型ダンベル状の試料であって前記ポリエステルフィルムからなり、前記4方向は前記ポリエステルフィルムのMD方向及びTD方向の2方向、並びに、前記MD方向及びTD方向からそれぞれ45°回転した2方向である」のに対して、甲1発明はそのような特定がない点で相違する。
以上によれば、本件特許発明1と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「少なくとも基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有し、
前記基材層がポリエステルフィルムからなる層である、蓄電装置用外装材。」
(相違点)
ポリエステルフィルムについて、本件特許発明1は「突刺し強度が0.6N/μm以上であるとともに、160℃に保たれた熱間中で30分間加熱された後において破断伸度が60%超であり且つ50%伸長時応力値が75MPa以上であり、前記破断伸度及び前記50%伸長時応力値はいずれも、チャック間距離75mm、標点間距離25mm及び試験速度50mm/分の条件で実施する引張試験によって測定される前記ポリエステルフィルムの4方向の測定値の平均値であり、前記引張試験に供される試料はJIS K7127に規定される5号型ダンベル状の試料であって前記ポリエステルフィルムからなり、前記4方向は前記ポリエステルフィルムのMD方向及びTD方向の2方向、並びに、前記MD方向及びTD方向からそれぞれ45°回転した2方向である」のに対して、甲1発明はそのような特定がない点。
イ 判断
(ア)第29条第1項第3号について
本件特許発明1と甲1発明とは上記相違点を有しているので、本件特許発明1は甲第1号証に記載された発明でない。
ここで、特許異議申立人は上記相違点について、概略、次のような主張をしている。
甲第1号証に記載された発明は、本件特許の課題(【0006】)と同じく、蓄電装置用外装材の深絞り成型性を向上させることを課題としており、甲第1号証の実施例2-6の蓄電装置用外装材は、本件特許の実施例と同等の積層構成を備えており、同等の深絞り成型性を備えている。
さらに、本件明細書の実施例には、基材層に使用されたポリエステルフィルムの準備について、ポリエステルフィルムが表1の特性を備えるために特殊な調整手段が採用されたとの事情も存在しない。
そうすると、甲第1号証の実施例2-6の蓄電装置用外装材に使用されている基材層(ポリエステルフィルム)は、本件特許発明1に記載された特性を満たす蓋然性が高い。(特許異議申立書第25頁)
上記主張に対する当審の判断は、以下のとおりである。
甲第1号証には、深絞り成型性を向上させつつ、電池の製造時及び使用時において基材層と金属箔層との間の密着性を維持するために、ポリエステルフィルムの95℃熱水収縮率を5%未満にし、且つ180℃熱間収縮率を10~25%にすることが記載されているものの(【0011】、【0012】)、ポリエステルフィルムの突刺し強度、加熱された後の破断伸度及び50%伸長時応力値について、何ら記載されていない。
一方、特許異議申立人は、甲第1号証の実施例2-6の蓄電装置用外装材が、本件特許の実施例と同等の積層構成を備えており、同等の深絞り成型性を備えていると主張するが、各層を構成する材料の特性は不明である。そして、95℃熱水収縮率が5%未満であり且つ180℃熱間収縮率が10~25%であるポリエステルフィルムが、本件特許発明1と同様な、突刺し強度、加熱された後の破断伸度及び50%伸長時応力値を示すことの具体的な証拠や合理的な理由は何ら示されておらず、甲第1号証の実施例2-6の蓄電装置用外装材に使用されている基材層(ポリエステルフィルム)が、本件特許発明1に記載された特性を満たす蓋然性が高いとまでは認められない。
また、特許異議申立人は、本件明細書の実施例には、ポリエステルフィルムが表1の特性を備えるために特殊な調整手段が採用されたとの事情も存在しないと主張するが、特殊な調整手段を採用しないことと、甲第1号証に記載のポリエステルフィルムの特性とは関係ないことである。
したがって、特許異議申立人の主張を採用することができない。
(イ)第29条第2項について
上記相違点について検討する。
甲第1号証には、深絞り成型性を向上させつつ、電池の製造時及び使用時において基材層と金属箔層との間の密着性を維持するために、ポリエステルフィルムの95℃熱水収縮率を5%未満にし、且つ180℃熱間収縮率を10~25%にすることが記載されているものの(【0011】、【0012】)、ポリエステルフィルムの突刺し強度、加熱された後の破断伸度及び50%伸長時応力値について、何ら記載されていない。
そうすると、甲1発明の「ポリエステルフィルム」において、あえて突刺し強度、160℃に保たれた熱間中で30分間加熱された後の破断伸度及び50%伸長時応力値に着目して、上記相違点に係る構成を得るべき動機がない。
よって、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明2~4、6
本件特許発明2~4、6は、本件特許発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件特許発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明でない。また、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件特許発明5
本件特許発明5は、本件特許発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件特許発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明でない。
また、甲第2号証には、外装材10のシーラント層側の表面の静摩擦係数は、0.1以上0.4以下であることが記載されているにすぎず(上記「第4 2」)、上記相違点1に係る構成は記載されていない。
したがって、本件特許発明5は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 申立理由3(第36条第6項第1号)について
(1)特許異議申立人の主張
本件特許発明1には、「前記ポリエステルフィルムは、突刺し強度が0.6N/μm以上であるとともに、160℃に保たれた熱間中で30分間加熱された後において破断伸度が60%超であり且つ50%伸長時応力値が75MPa以上であり、」との記載がある。
当該記載において、「突刺し強度が0.6N/μm以上」、「破断伸度が60%超」及び「50%伸長時応力値が75MPa以上」には、それぞれ、上限が記載されていない。
例えば、甲第3号証(特開2011-204674号公報)には、PETフィルムの突き刺し荷重が15Nを超えると、所定の形に成型できない場合があると記載されている。(【0027】)
また、前記破断伸度及び50%伸長時応力が大きければ大きい程、成型性が向上するといった技術常識も存在しない。
そうすると、基材層の物性について上限が定められていない本件請求項1に係る発明は、十分な深絞り成型性を有する蓄電装置用外装材を提供するという、本件特許の課題を解決できるとはいえない。
従って、本件特許発明1及び及びこれを引用する本件特許発明2-6は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものではなく、サポート要件を満たしていない。(特許異議申立書第31頁)
(2)当審の判断
発明の詳細な説明の「上述のとおり、多層フィルムからなる蓄電装置用外装材に対しては所望の深さの凹部を形成できる十分な深絞り成型性が求められている。本発明は、十分な深絞り成型性を有する蓄電装置用外装材及びそれを用いた蓄電装置を提供することを目的とする。」(【0006】)の記載からすると、本件特許の課題は、十分な深絞り成型性を有する蓄電装置用外装材を提供することである。
そして、発明の詳細な説明には「本発明に係る外装材によれば、特定の積層構造を有し且つこれに含まれる基材層の突刺し強度が0.6N/μm以上であることにより、十分な深絞り成型性が達成される。」(【0009】と記載されている。また、基材層のポリエルテルフィルムの突刺し強度が0.6N/μm以上の実施例1-12は、突刺し強度が0.6N/μm以下の比較例1-5よりも、深絞り成型性を示す成型限界が優れていることが記載されている(表1、表2)。
そうすると、発明の詳細な説明には、基材層のポリエルテルフィルムの突刺し強度が0.6N/μm以上にすることにより、上記課題を解決できることが記載されているといえる。
したがって、「前記基材層がポリエステルフィルムからなる層であり、前記ポリエステルフィルムは、突刺し強度が0.6N/μm以上である」と特定される本件特許発明1は、上記課題を解決するための手段が反映されているといえる。
また、突刺し強度の上限については「なお、基材層11の突刺し強度の上限は、特に限定されるものではないが、基材層11として使用するポリエステルフィルムの入手容易性の点から1.5N/μm程度である。」(【0022】)と記載されているように、上記課題と関係のない基材層の物性である。さらに、「破断伸度」、「50%伸長時応力値」の上限についても、「突刺し強度」の上限と同様に、上記課題と関係のない基材層の物性である。
よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内のものであり、発明の詳細な説明に記載したものであるといえる。
よって、上記主張を採用することができない。
3 申立理由4(第36条第4項第1号)について
(1)特許異議申立人の主張
本件特許発明1には、「前記ポリエステルフィルムは、突刺し強度が0.6N/μm以上であるとともに、160℃に保たれた熱間中で,30分間加熱された後において破断伸度が60%超であり且つ50%伸長時応力値が75MPa以上であり、」との記載があるが、当該記載において、「突刺し強度が0.6N/μm以上」、「破断伸度が60%超」及び「50%伸長時応力値が75MPa以上」には、それぞれ、上限が記載されていない。ポリエチレンテレフタレートフィルムとして、これらの物性に上限のないポリエチレンテレフタレートフィルムを用意することは不可能であり、当業者は本件発明を実施することができない。
従って、本件発明1及び及びこれを引用する本件発明2-6は、実施可能要件を満たしていない。(特許異議申立書第31-32頁)
(2)当審の判断
本件特許発明1は「前記ポリエステルフィルムは、突刺し強度が0.6N/μm以上であるとともに、160℃に保たれた熱間中で,30分間加熱された後において破断伸度が60%超であり且つ50%伸長時応力値が75MPa以上であり」と特定されており、上限の特定はない。そうすると、本件特許発明1に適合する「ポリエルテルフィルム」は、すくなくとも「突刺し強度が0.6N/μm以上」、「破断伸度が60%超」及び「50%伸長時応力値が75MPa以上」の条件を満たせば良いのである。
そして、上記条件を満たす「ポリエステルフィルム」は、実施例1-12として示されているところであり(表1)、本件特許発明1及びこれを引用する本件特許発明2-5について、発明の詳細な説明の記載は当業者であれは実施(製造)できる程度に明確かつ十分に記載されたものといえる。
よって、上記主張を採用することができない。
4 まとめ
以上のとおりであるから、請求項1-6に係る特許は、特許法第29条第1項及び特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるということができず、同法第113条第2号により取り消すことができない。
また、請求項1-6に係る特許は、特許法第36条第4項第1号及び特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるということができず、同法第113条第4号により取り消すことができない。
第6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-700972