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特許異議申立

2022-700323

電解質組成物、電解質膜、電極、電池及び電解質組成物の評価方法

審判番号
2022-700323
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-526827外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6952777
請求日
2022年04月19日
審決日
2022年11月17日
公報発行日
2023年03月31日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1652.113-YAA(H01M) / P1652.121-YAA(H01M) / P1652.536-YAA(H01M) / P1652.537-YAA(H01M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6952777号発明「電解質組成物、電解質膜、電極、電池及び電解質組成物の評価方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第6952777号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。
特許第6952777号の請求項1、3ないし5、7ないし11に係る特許を維持する。
特許第6952777号の請求項2、6に係る特許についての特許異議申立を却下する。

理由

目次 ▾ 18項目
理 由

第1 手続の経緯

折りたたみ中(クリックで表示)

特許第6952777号の請求項1ないし12に係る発明についての出願は、2018年6月19日(優先権主張 平成29年6月27日)を国際出願日とする出願であって、令和3年9月30日にその特許権が設定登録され、令和3年10月20日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立てでの経緯は、次のとおりである。

令和4年4月19日 :特許異議申立人 吉川雅也による請求項1ないし11に係る特許に対する特許異議の申立て
令和4年6月23日付け:取消理由通知
令和4年8月26日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和4年10月14日 :特許異議申立人による意見書の提出

第2 訂正の適否

1 訂正の内容

令和4年8月26日の訂正請求の趣旨は、特許第6952777号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである。

(1)訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1に「該組成物は、更にポリエーテル系重合体、(メタ)アクリル系重合体、ニトリル系重合体、フッ素系重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体と、イオン解離促進剤とを含み、該アルカリ金属塩濃度が1.8mol/kg以上であり、該アルカリ金属塩がLiN(FSO2)2を含む」とあるのを「該組成物は、更にエチレンオキシド由来の構造単位を有するポリエーテル系重合体と、イオン解離促進剤とを含み、該アルカリ金属塩濃度が2.5mol/kg以上4.6mol/kg以下であり、該アルカリ金属塩がLiN(FSO2)2を含み、該重合体の含有量が電解質組成物100質量%に対して5~30質量%であり、該イオン解離促進剤の含有量が電解質組成物100質量%に対して5~30質量%である」に訂正する。(請求項1を引用する請求項3ないし5、7ないし11も同様に訂正する。)

(2)訂正事項2

特許請求の範囲の請求項2を削除する。

(3)訂正事項3

特許請求の範囲の請求項3に「請求項1又は2に記載の電解質組成物。」とあるのを「請求項1に記載の電解質組成物。」に訂正する。(請求項3を引用する請求項4、7ないし11も同様に訂正する。)

(4)訂正事項4

特許請求の範囲の請求項5に「請求項1又は2に記載の電解質組成物。」とあるのを「請求項1に記載の電解質組成物。」に訂正する。(請求項5を引用する請求項7ないし11も同様に訂正する。)

(5)訂正事項5

特許請求の範囲の請求項6を削除する。

(6)訂正事項6

特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれかに記載の電解質組成物」とあるのを「請求項1及び3~5のいずれかに記載の電解質組成物」に訂正する。(請求項7を引用する請求項8、9、11も同様に訂正する。)

(7)訂正事項7

特許請求の範囲の請求項10に「請求項1~6のいずれかに記載の電解質組成物」とあるのを「請求項1及び3~5のいずれかに記載の電解質組成物」に訂正する。(請求項10を引用する請求項11も同様に訂正する。)

(8)一群の請求項について

本件訂正前の請求項2ないし11は、訂正の対象となる請求項1を引用しているものであるから、請求項1ないし11は一群の請求項を構成する。

本件訂正請求は、一群の請求項〔1-11〕に対して請求されたものである。

2 訂正の適否についての判断

訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的

訂正事項1は、「重合体」が「ポリエーテル系重合体、(メタ)アクリル系重合体、ニトリル系重合体、フッ素系重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体」であったのを「エチレンオキシド由来の構造単位を有するポリエーテル系重合体」に限定し、

「アルカリ金属塩濃度」が「1.8mol/kg以上」であったのを「2.5mol/kg以上4.6mol/kg以下」に限定し、

更に、「重合体」及び「イオン解離促進剤」の含有量をそれぞれ、「電解質組成物100質量%に対して5~30質量%」及び「電解質組成物100質量%に対して5~30質量%」に限定するものである。

したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否

訂正前の請求項2には「前記重合体は、エチレンオキシド由来の構造単位を有するポリエーテル系重合体」と記載されており、願書に添付した明細書の段落【0020】には「上記アルカリ金属塩濃度は、・・・特に好ましくは2.5mol/kg以上である。また、上記アルカリ金属塩濃度は、・・・更に好ましくは4.6mol/kg以下である。」と記載されており、願書に添付した明細書の段落【0022】には「上記電解質組成物におけるポリエーテル系重合体、(メタ)アクリル系重合体、ニトリル系重合体、フッ素系重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体の含有量は、特に制限されないが、電解質組成物100質量%に対して、・・・特に好ましくは5~30質量%である。」と記載されており、願書に添付した明細書の段落【0023】には「上記電解質組成物におけるイオン解離促進剤の含有量は、特に制限されないが、電解質組成物100質量%に対して、・・・特に好ましくは5~30質量%である。」と記載されているので、訂正事項1は、新規事項の追加に該当しない。

また、訂正事項1は、請求項1の記載を限定するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2について

訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(3)訂正事項3について

訂正事項3は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用していたものを、訂正事項2に伴って請求項2の引用を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(4)訂正事項4について

訂正事項4は、訂正前の請求項5が請求項1又は2を引用していたものを、訂正事項2に伴って請求項2の引用を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(5)訂正事項5について

訂正事項5は、請求項6を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(6)訂正事項6について

訂正事項6は、訂正前の請求項7が請求項1~6を引用していたものを、訂正事項2及び訂正事項5に伴って請求項2及び請求項6の引用を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(7)訂正事項7について

訂正事項7は、訂正前の請求項10が請求項1~6を引用していたものを、訂正事項2及び訂正事項5に伴って請求項2及び請求項6の引用を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(8)まとめ

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項および第6項の規定に適合する。

したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-11〕について訂正することを認める。

第3 本件発明

本件訂正請求により訂正された請求項1ないし12に係る発明(以下「本件発明1ないし12」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】
アルカリ金属塩を含む電解質組成物であって、
該組成物は、更にエチレンオキシド由来の構造単位を有するポリエーテル系重合体と、イオン解離促進剤とを含み、
該アルカリ金属塩濃度が2.5mol/kg以上4.6mol/kg以下であり、
続きを表示(全33行)
該アルカリ金属塩がLiN(FSO2)2を含み、
該重合体の含有量が電解質組成物100質量%に対して5~30質量%であり、
該イオン解離促進剤の含有量が電解質組成物100質量%に対して5~30質量%であることを特徴とする電解質組成物。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
前記イオン解離促進剤は、ニトリル化合物及び/又はスルホニル化合物を含むことを特徴とする請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項4】
前記ニトリル化合物は、下記式(2);
【化1】
[図:0001395216000001.jpg]
(式中、R3は、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数6~10のアリール基を表す。)で表されるジニトリル化合物であることを特徴とする請求項3に記載の電解質組成物。
【請求項5】
前記イオン解離促進剤は、エチレンカーボネートであることを特徴とする請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
請求項1及び3~5のいずれかに記載の電解質組成物を含むことを特徴とする電解質膜。
【請求項8】
前記電解質膜が、セパレーターを含むことを特徴とする請求項7に記載の電解質膜。
【請求項9】
前記セパレーターが、セルロース不織布、PET不織布、ガラス不織布、ポリオレフィン不織布、ポリオレフィン微多孔膜及びポリイミド多孔膜からなる群より選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項8に記載の電解質膜。
【請求項10】
請求項1及び3~5のいずれかに記載の電解質組成物を含むことを特徴とする電極。
【請求項11】
請求項7~9のいずれかに記載の電解質膜及び/又は請求項10に記載の電極を用いて構成されることを特徴とするアルカリ金属電池。
【請求項12】
アルカリ金属塩を含む電解質組成物を評価する方法であって、
該評価方法は、電解質組成物を2つのアルカリ金属で挟み、直流電流を印加したときの電圧上昇値と電流値から抵抗値を算出することを特徴とする電解質組成物の評価方法。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について

1 取消理由の概要

訂正前の請求項1ないし11に係る特許に対して、当審が令和4年6月23日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

1.(進歩性)下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

2.(サポート要件)本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

記

引用文献1:特開2017-10924号公報(甲第1号証)
引用文献2:国際公開第2016/071798号(甲第3号証)

●理由1(進歩性)について

・請求項 1ないし4、6ないし11

・引用文献 1

・請求項 1ないし3、5ないし8、10ないし11

・引用文献 2

●理由2(サポート要件)について

・請求項 1ないし11

請求項1に「ポリエーテル系重合体、(メタ)アクリル系重合体、ニトリル系重合体、フッ素系重合体からなる群より選択される少なくとも1種の重合体」と記載されているが、本件特許明細書の段落【0090】ないし【0111】には、「重合体」として「ポリエーテル系重合体」(ポリエチレンオキシド重合体、ポリアルキレンオキシド重合体、架橋基含有ポリアルキレンオキシド重合体)を用いた実施例しか記載されていない。

したがって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明において課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えているものである。

また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし11についても同様のことがいえる。

2 引用文献等の記載事項、引用発明

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(1)引用文献1

ア 引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与したものである。以下同様。)。

「【請求項1】
一般式(1)で表されるフルオロスルホニルイミド化合物(式(1)中、Mはアルカリ金属イオンを表し、Xはフッ素原子または炭素数1~6のフルオロアルキル基を表す)と、一般式(2)で表されるジニトリル化合物(Rは有機基を表す)を含むことを特徴とする非水電解液。
【化1】
(略)
【化2】
(略)」
「【0017】
本発明の非水電解液は、一般式(1)で表されるフルオロスルホニルイミド化合物(式(1)中、Mはアルカリ金属イオンを表し、Xは、フッ素原子または炭素数1~6のフルオロアルキル基を表す)と、一般式(2)であらわされるジニトリル化合物(Rは有機基を表す)を含むところに特徴を有する。一般式(2)であらわされるジニトリル化合物のRは直鎖状もしくは分岐状の2価の脂肪族アルキル基を表すことが好ましい。一般式(1)で表されるフルオロスルホニルイミド化合物はLiTFSI等のイミド化合物と比較して分子サイズが小さく、形成されるコンタクトイオンペアのサイズも小さくなると考えられる。またジニトリル化合物はアルカリ金属に配位する部位を一分子に二か所有するため、通常リチウムイオン電池に用いられる溶媒とは異なる配位状態をとると考えられる。このようにフルオロスルホニルイミド化合物(1)をジニトリル化合物(2)とを含む非水電解液中では、アルカリ金属イオンは他のイミド化合物や溶媒の使用時とは異なる配位状態にあると考えられる。一方、炭素系負極へのアルカリ金属イオン挿入時には配位している溶媒やアニオンが脱離するが、通常の電解質塩を用いた場合は、炭素系負極へのアルカリ金属イオンの挿入時に溶媒が脱離せず、共挿入が起こり、炭素系負極の破壊が生じると言われている。そのため、炭素系負極を用いる際には、エチレンカーボネート等の環状カーボネートのSEIを形成する溶媒を併用し、溶媒やアニオンの共挿入を抑制することによって、アルカリ金属イオンの脱挿入を可能としている。本発明の非水電解液は、アルカリ金属イオンが通常のイミド化合物や溶媒とは異なる配位状態にあるため、エチレンカーボネートを必要とすることなく、アルカリ金属イオンを炭素系負極に対して良好に脱挿入でき、良好な容量およびサイクル特性を示すと考えられる。以下、本発明の非水電解液について詳細に説明する。」
「【0022】
具体的なフルオロスルホニルイミド化合物(1)としては、例えば、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、リチウム(フルオロスルホニル)(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミド等のフルオロスルホニルイミドのリチウム塩;ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ナトリウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ナトリウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、ナトリウム(フルオロスルホニル)(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミド等のフルオロスルホニルイミドのナトリウム塩;カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、カリウム(フルオロスルホニル)(ペンタフルオロエチルスルホニル)イミド、カリウム(フルオロスルホニル)(ヘプタフルオロプロピルスルホニル)イミド等のフルオロスルホニルイミドのカリウム塩;等が挙げられる。好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ナトリウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミドであり、より好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、リチウム(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホニル)イミドである。」
「【0024】
非水電解液中のフルオロスルホニルイミド化合物(1)の濃度は0.1mol/L以上であるのが好ましく、より好ましくは0.15mol/L以上であり、さらに好ましくは0.2mol/L以上であり、飽和濃度以下であるのが好ましく、より好ましくは10mol/L以下であり、さらに好ましくは8mol/L以下である。非水電解液中のフルオロスルホニルイミド化合物(1)の濃度は0.1mol/kg以上であるのが好ましく、より好ましくは0.15mol/kg以上であり、さらに好ましくは0.2mol/kg以上であり、飽和濃度以下であるのが好ましく、より好ましくは18mol/kg以下であり、さらに好ましくは16mol/kg以下である。フルオロスルホニルイミド化合物(1)の濃度が高すぎると電解液の粘度が上昇し電池性能を低下させるおそれがあり、一方フルオロスルホニルイミド化合物(1)の濃度が低すぎるとリチウムイオン電池中のリチウムイオン濃度が不足し、電池の性能を低下させるおそれがある。」

「【0034】

ジニトリル化合物(2)の具体例としては、直鎖状のジニトリル化合物としては、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1、5-ジシアノペンタン、1、6-ジシアノヘキサン、1、7-ジシアノヘプタン、1、8-ジシアノオクタン、1、9-ジシアノノナン、1、10-ジシアノデカン、1、12-ジシアノドデカンなどが挙げられる。また、分岐状のジニトリル化合物として、テトラメチルスクシノニトリル、2-メチルグルタロニトリル、2、4-ジメチルグルタロニトリル、1、4-ジシアノペンタン、1、5-ジシアノヘプタン、1、7-ジシアノオクタン、1、8-ジシアノノナンなどが挙げられる。好ましくは、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1、5-ジシアノペンタン、1、6-ジシアノヘキサン、2-メチルグルタロニトリルであり、より好ましくは、マロノニトリル、スクシノニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、1、5-ジシアノペンタン、1、6-ジシアノヘキサン、2-メチルグルタロニトリル、さらに好ましくは、スクシノニトリル、グルタロニトリル、1、5-ジシアノペンタン、2-メチルグルタロニトリルである。これらは、一種、もしくは2種以上併用して用いることができる。

「【0037】
1-4.溶媒
本発明の非水電解液は、フルオロスルホニルイミド化合物(1)、ジニトリル化合物(2)の他に溶媒を含んでいてもよい。本発明の非水電解液に用いることのできる溶媒としては、電解質塩(フルオロスルホニルイミド化合物(1)、他の電解質塩)、及び後述する任意で用いられる添加剤を溶解、分散させられるものであれば特に限定されず、有機溶媒に代えて用いられるポリマー、ポリマーゲル等の媒体等、非水電解液二次電池、リチウムイオン二次電池に用いられる従来公知の溶媒はいずれも使用できる。
【0038】
有機溶媒としては、誘電率が大きく、電解質塩、及び任意で用いられる添加剤の溶解性が高く、沸点が60℃以上であり、且つ、電気化学的安定範囲が広い溶媒が好適である。より好ましくは、含有水分量が低い有機溶媒(非水系溶媒)である。このような有機溶媒としては、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート等の鎖状カーボネート類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、2、3-ジメチルエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート類;フルオロエチレンカーボネート、1、2-ジフルオロエチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネート等のフッ素を含有する環状カーボネート類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、2、6-ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、クラウンエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエ-テル、1、4-ジオキサン、1、3-ジオキソラン等のエーテル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族カルボン酸エステル類;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン等のラクトン類;リン酸トリメチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリトリル、リン酸トリス(2、2、2-トリフルオロエチル)等のリン酸エステル類;ヘキサメトキシホスファゼン 、ヘキサキス(2、2-ジフルオロエトキシ)ホスファゼン 、ヘキサキス(2、2、3、3-テトラフルオロプロポキシ)ホスファゼン等のホスファゼン類;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、バレロニトリル、ブチロニトリル、イソブチロニトリル等のモノニトリル類;ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3-メチルスルホラン、2、4-ジメチルスルホラン等の硫黄化合物類;ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類;ニトロメタン、1、3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、1、3-ジメチル-3、4、5、6-テトラヒドロ-2(1H)-ピリミジノン、3-メチル-2-オキサゾリジノン等を挙げることができる。
【0039】
これらの中でも、鎖状カーボネート類、環状カーボネート類等の炭酸エステル類、フッ素を含有する環状カーボネート類、ラクトン類、エーテル類が好ましく、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等がより好ましく、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート等のカーボネート系溶媒がさらに好ましい。上記有機溶媒は1種を単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。」

「【0042】

ポリマーやポリマーゲルを有機溶媒に代えて用いる場合は次の方法を採用すればよい。すなわち、従来公知の方法で成膜したポリマーに、上述の非水系溶媒に電解質塩等を溶解させた溶液を滴下して、電解質塩並びに非水系溶媒を含浸、担持させる方法;ポリマーの融点以上の温度でポリマーと電解質塩等とを溶融、混合した後、成膜し、ここに非水系溶媒を含浸させる方法;モノマー、電解液及び重合開始剤を混合した溶液を用いて電池を作成後、熱によりモノマー重合する方法、モノマー、電解液、光重合開始剤を混合した溶液を電極シート上に塗工し、UV硬化する方法;(以上、ゲル電解質)、予め電解質塩等を有機溶媒に溶解させた非水電解液とポリマーとを混合した後、これをキャスト法やコーティング法により成膜し、有機溶媒を揮発させる方法;ポリマーの融点以上の温度でポリマーと電解質塩等とを溶融し、混合して成形する方法(真性ポリマー電解質);等が挙げられる。

【0043】

有機溶媒に代えて用いられるポリマーとしては、エポキシ化合物(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、アリルグリシジルエーテル等)の単独重合体又は共重合体であるポリアルキレンオキシド、ポリプロピレンオキシド等のポリエーテル系ポリマー、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の(メタ)アクリル系ポリマー、ポリアクリロニトリル(PAN)等のニトリル系ポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素系ポリマー、及びこれらの共重合体等が挙げられる。またこれらのポリマーは架橋剤によって架橋し、ゲル状であることも好ましい形態の一つである。)

「【0047】
2.非水電解液二次電池
2-1.非水電解液二次電池
本発明の非水電解液を用いる非水電解液二次電池は、正極、負極、セパレーター、電解液、外装材等から構成される。また非水二次電解液電池は本発明の非水電解液を用いる二次電池である。好ましくはリチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、非水電解液を用いる金属空気二次電池等であり、より好ましくはリチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、さらに好ましくはリチウムイオン二次電池である。」
「【0064】
(電解液1)
LiFSI(リチウムビススルホニルイミド、日本触媒製)9.35gに60℃で溶解させたスクシノニトリル(Aldrich社製)を加え、1mol/LのLiFSIのスクシノニトリル溶液(電解液1)を作製した。」
「【0066】
(電解液3)
電解液1(1mol/LのLiFSI/スクシノニトリル溶液) 1.0gにビニレンカーボネート(VC、キシダ化学社製)22.1mgを添加した。(VC濃度 2wt%)
(サイクリックボルタンメトリー評価)
北斗電工社製オートマチック ポラリゼーションシステムHSV-110を用いてサイクリックボルタンメトリーを測定した。測定には三極セル用い、作用極には市販の天然黒鉛負極、対極及び参照極にはLiを用いた。開始電圧はセルのOCVから開始し、掃引速度10mV/minとし負方向に掃引し、0.05Vに到達すると正方向に2Vまで掃引した。このように0.05Vと2Vの間で2回電位の掃引を行い、リチウムイオンの黒鉛負極への脱挿入試験を行った。」

イ 引用文献1の前記記載事項によれば、次のことがいえる。

(ア)段落【0017】によれば、「非水電解液」は、「フルオロスルホニルイミド化合物」と、「ジニトリル化合物」を含むものである。

さらに段落【0037】によれば、「非水電解液」は、「フルオロスルホニルイミド化合物(1)、ジニトリル化合物(2)の他に溶媒を含んでいてもよい」ものであり、「溶媒」は「有機溶媒に代えて用いられるポリマー」である。

そして、段落【0042】によれば、「ポリマー」を「有機溶媒に代えて用いる場合」には、「モノマー、電解液、光重合開始剤を混合した溶液を電極シート上に塗工し、UV硬化し」、「ゲル電解質」となるものである。

ここで、「モノマー、電解液、光重合開始剤を混合した溶液」を「UV硬化」したものは、技術常識を鑑みれば、光である「UV」によってモノマーが重合されて「ポリマー」となるから、「モノマー」が重合した「ポリマー」を含むものといえる。

してみると、引用文献1には、「フルオロスルホニルイミド化合物」と、有機溶媒に代えて用いられる「ポリマー」と、「ジニトリル化合物」と、を含む「ゲル電解質」が記載されているといえる。

(イ)段落【0034】によれば、「ジニトリル化合物」は「2-メチルグルタノニトリル」又は「スクシノニトリル」を含むものである。

(ウ)段落【0043】によれば、「有機溶媒に代えて用いられるポリマー」は、「エチレンオキシド」の「単独重合体又は共重合体である」「ポリエーテル系ポリマー」である。

(エ)段落【0022】によれば、「フルオロスルホニルイミド化合物」は「LiFSI」である。

ウ したがって、前記「イ」によれば、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「フルオロスルホニルイミド化合物と、
エチレンオキシドの単独重合体又は共重合体であるポリエーテル系ポリマーと、
2-メチルグルタノニトリル又はスクシノニトリルであるジニトリル化合物と、を含み、
フルオロスルホニルイミド化合物はLiFSIである、
ゲル電解質。」

(2)引用文献2

ア 引用文献2には、次の事項が記載されている。

「[0029]
セル100は、正極集電体111と、正極集電体111上に設けられた正極活物質層112と、負極集電体115と、負極集電体115上に設けられた負極活物質層116を有する。正極活物質層112は正極活物質を有する。また負極活物質層116は負極活物質を有する。また、セル100は、正極活物質層112と負極活物質層116の間に、スペーサ113を有する電解液114を有する。」
「[0031]
電解液114が有するスペーサ113は、正極活物質層112と負極活物質層116の間の距離を一定以上に保つ機能を有する。換言すれば、セル100ではスペーサ113がセパレータとして機能している。
[0032]
電解液114は、ポリマー、電解質および溶媒を有する。ポリマーにより、電解液114をゲル化することができる。ゲル化することで、電解液114をシート状に形成できるため、セル100の作製工程を大幅に簡略化することができる。なお本明細書等において、ゲルは、化学ゲルと物理ゲルを含む。またゲル化とは、ポリマーが架橋することをいう。
[0033]
電解液114が有するポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキシド系、ポリアクリロニトリル系、ポリフッ化ビニリデン系、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系ポリマーを用いることができる。また、常温(例えば25℃)で電解液114をゲル化できるポリマーを用いることが好ましい。なお本明細書等において、例えばポリフッ化ビニリデン系ポリマーとは、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含むポリマーを意味し、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン)共重合体等を含む。」
「[0035]
また電解液114が有する電解質としては、キャリアイオンが移動可能な材料を用いる。キャリアイオンとしてリチウムイオンを用いる場合、電解質の代表例としては、LiPF6、LiClO4、LiAsF6、LiBF4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)2N、Li(SO2F)2N等のリチウム塩がある。これらの電解質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。
[0036]
また、電解液114が有する溶媒としては、キャリアイオンが移動可能な材料を用いる。電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好ましい。非プロトン性有機溶媒の代表例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、γーブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等があり、これらの一つまたは複数を用いることができる。また、電解液の溶媒として、難燃性及び難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を一つまたは複数用いることで、蓄電池の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇しても、蓄電池の破裂や発火などを防ぐことができる。なお、イオン液体は、流動状態にある塩であり、イオン移動度(伝導度)が高い。また、イオン液体は、カチオンとアニオンとを含む。イオン液体としては、エチルメチルイミダゾリウム(EMI)カチオンを含むイオン液体、またはN-メチル-N-プロピルピペリジニウム(PP13)カチオンを含むイオン液体などがある。」
「[0038]
スペーサ113には、絶縁体の粒子を用いる。材料としては、例えば酸化アルミニウム、酸化ケイ素、ガラス、およびフッ素樹脂、ナイロン、ABS、フェノール樹脂、アクリル、エポキシ樹脂をはじめとする樹脂を用いることができる。スペーサ113の形状としては、粒径が10μm以上100μm以下の粒子が好ましく、粒径が17μm以上20μm以下の粒子であるとより好ましい。形状は球形の他、楕円球形、角柱等であってもよい。なお本明細書等において、電解液114がスペーサ113を有するとは、電解液114にスペーサ113が混合されている状態を含むこととする。また本明細書等において、スペーサ113の粒径は、粒子の幾何学的平均粒子径を指すこととする。幾何学的平均粒子径は、例えばSEMやTEMによる顕微鏡法で求めることができる。」
「[請求項1]
正極集電体と、前記正極集電体上の正極活物質層と、負極集電体と、前記負極集電体上の負極活物質層と、電解液と、外装体と、を有する二次電池であって、
前記外装体は、前記正極集電体、前記正極活物質層、前記負極集電体、前記負極活物質層および前記電解液を覆い、
前記電解液は、スペーサと、ポリマーと、電解質と、溶媒と、を有し、
前記スペーサは、前記正極活物質層と、前記負極活物質層の間の距離を一定以上に保つ機能を有し、
前記ポリマーは、前記電解液をゲル化する機能を有する二次電池。」
「[請求項3]
請求項1または請求項2において、
前記電解液が有する前記ポリマーは、PVDFを有し、
前記電解質は、Li(SO2F)2Nを有し、
前記溶媒は、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートを有することを特徴とする二次電池。」

イ 引用文献2の前記記載事項によれば、次のことがいえる。

(ア)段落[0032]によれば、「電解液114は、ポリマー、電解質および溶媒を有する」ものであり、「電解液114をシート状に形成できる」ものである。

してみると、引用文献2には、「電解質」と、「ポリマー」と、「溶媒」とを有する、「シート状」の「電解液114」が記載されている。

(イ)段落[0035]によれば、「電解液114が有する電解質」は、例えば「Li(SO2F)2N」からなる「リチウム塩」である。

(ウ)段落[0033]によれば、「電解液114が有するポリマー」は、「ポリエチレンオキシド系」である。

(エ)段落[0036]によれば、「電解液114が有する溶媒」は「アセトニトリル」又は「エチレンカーボネート」である。

(オ)段落[0031]によれば、「電解液114」は、「セパレータとして機能している」「スペーサ113」を有するものである。

ウ したがって、前記「イ」によれば、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「Li(SO2F)2Nからなるリチウム塩である電解質と、
ポリエチレンオキシド系であるポリマーと、
アセトニトリル又はエチレンカーボネートである溶媒と、
セパレータとして機能しているスペーサと、
を有する、シート状の電解液。」

(3)甲第4号証

特許異議申立人が証拠として提出した甲第4号証(国際公開第2016/130484号)には、次の事項が記載されている(翻訳は、特許異議申立人によるものである。)。

「CLAIMS
1. A rechargeable battery, comprising:
a cathode;
a lithium metal anode; and
a liquid electrolyte comprising a lithium imide salt with a fluorosulfonyl (FS02) group,
wherein the electrolyte is an organic solvent with lithium imide salt concentration of at least 2 moles per liter of the organic solvent.」

(翻訳:【請求項1】

充電式バッテリーであって、

カソードと、

リチウム金属アノードと、

フルオロスルホニル(FSO2)基を有するリチウムイミド塩を含む液体電解質と、を備え、

前記電解質は、有機溶媒1リットル当たり少なくとも2モルのリチウムイミド塩濃度を有する有機溶媒である、充電式バッテリ。)

「6. The battery of any one of claims 1-4, wherein the electrolyte contains a cyclic carbonate selected from ethylene carbonate or propylene carbonate, their derivatives, and any combinations or mixtures thereof, as the organic solvent.」

(翻訳:【請求項6】

前記電解質は、前記有機溶媒として、エチレンカーボネートまたは、プロピレンカーボネート、これらの誘導体、およびこれらの任意の組合せおよび混合物から選択される環状カーボネートを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のバッテリ。)

「[0020] In certain aspects, the present disclosure relates to rechargeable lithium batteries offering high energy, power, and coulombic efficiency and long cycle life. In certain aspects, the rechargeable batteries include a cathode, a lithium metal anode, and a liquid electrolyte, wherein the electrolyte is an organic solvent with high lithium salt concentration. In certainaspects, the rechargeable lithium batteries exhibit high lithium coulombic efficiency (e.g., above 95%, above 97%, above 99%).」

(翻訳:【0020】

所定の態様において、本開示は、高いエネルギー、電力およびクーロン効率および長いサイクル寿命を提供する充電式リチウム電池に関する。所定の態様において、充電式バッテリは、カソードと、リチウム金属アノードと、液体電解質とを含み、電解質は、リチウム塩濃度が高い有機溶媒である。所定の態様において、充電式リチウム電池は、高いリチウムクーロン効率(例えば、95%超、97%超、99%超)を示す。)

(4)甲第5号証

特許異議申立人が証拠として提出した甲第5号証(特開2014-241198号公報)には、次の事項が記載されている。

「【請求項1】
アセトニトリルとLiN(SO2F)2を含むリチウム二次電池用電解液であって、当該電解液中における前記LiN(SO2F)2の体積モル濃度が3.0mol/L以上であることを特徴とする、電解液。」
「【0010】
本発明によれば、高濃度のリチウム塩を含むことによって、アセトニトリルの還元耐性を向上させ、従来はアセトニトリル電解液中では困難であった負極炭素材料へのリチウムイオンの可逆的な挿入脱離反応が可能となる。加えて、カーボネート系溶媒や添加剤を使用しないにもかかわらず、極めて良好な充放電サイクル特性が得られ、及びこれまでの商用電解液を大幅に上回るレート特性が得られるという優れた効果を奏する。」

(5)甲第6号証

特許異議申立人が証拠として提出した甲第6号証(国際公開第2016/147811号)には、次の事項が記載されている。

「[0044]
リチウム塩としては、Li[(FSO2)2N](以下、LiFSI)を含む。また、LiFSIは単独で用いても良いし、他のリチウム塩をさらに混合して用いても良い。LiFSIのほかに用いることができるリチウム塩として、例えばLiPF6、LiClO4、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2(以下「LiTFSI」)、LiN(C2F5SO2)2(以下「LiBETI」)、Li(CF3SO2)3C、Li(C2F5SO2)3C等の通常の電解質材料を用いることができる。リチウム塩中、LiFSIは50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上であり、特にLiFSIを単独(100質量%)で用いることが最適である。リチウム塩の濃度としては、溶解性とイオン伝導度の観点から、0.5mol/L~8mol/Lが好ましく、1.5mol/L~6mol/Lがより好ましい。また、二次電池中に含まれるニトロキシルカチオン部分構造及びニトロキシルラジカル部分構造のモル数に対して、リチウム塩のモル濃度が、1倍以上であることが好ましく、リチウム塩の欠乏を防ぐ観点から1.5倍以上がより好ましく、2倍以上であることがさらに好ましい。」
「【請求項1】
酸化状態において下記式(1)で示されるニトロキシルカチオン部分構造をとり、還元状態において下記式(2)で示されるニトロキシルラジカル部分構造をとるニトロキシル化合物を含む正極と、リチウムイオンを可逆的に挿入・脱離可能な活物質材料を含む負極と、リチウム塩と非プロトン性有機溶媒を含む電解液を備え、前記リチウム塩として、Li[(FSO2)2N]を含むことを特徴とする蓄電デバイス。
【化1】
(略)
【請求項2】
前記電解液中に含有されるリチウム塩の濃度が、1.0mol/L~8.0mol/Lであることをを特徴とする、請求項1に記載の蓄電デバイス。」

(6)甲第7号証

特許異議申立人が証拠として提出した甲第7号証(特開2015-168754号公報)には、次の事項が記載されている。

「【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリマー。
【化1】
(略)
(前記一般式(1)において、Rは、水素原子またはメチル基であり、RXは、下記一般式(2)で表される基を3つ含んでいる基である。)
【化2】
(略)
(前記一般式(2)において、RYは、アルキレン基またはアリーレン基であり、RZは、アルキレン基であり、RYとRZとは、互いに同一でも異なっていてもよく、前記RXが有する複数のRYは、互いに同一でも異なっていてもよく、複数のRzは、互いに同一でも異なっていてもよい。)」
「【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載のポリマーと、金属塩とを含む固体電解質。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、溶媒を含まない高分子電解質は、非水系電解液と比べてイオン伝導度が低いという問題があり、実用化に至っていない。ポリエチレンオキシド系のポリマーを用いた高分子固体電解質では、金属塩の量を増やすと結晶化してしまい、イオン伝導度の向上が難しいという課題がある。また、特許文献3~5に記載されたオキセタン誘導体を重合させて得たポリマーは、分子量が低く、自立膜を得ることができない。」
「【0024】
本発明の一態様に係る固体電解質において、前記固体電解質中の前記ポリマーの質量Mpに対する前記金属塩の質量Msの比(Ms/Mp)は、1以上9以下であることが好ましい。
【0025】
本発明の一態様に係る固体電解質において、前記金属塩は、リチウム塩であることが好ましい。」
「【0058】
本実施形態に係る固体電解質において、固体電解質中のポリマーの質量Mpに対する金属塩の質量Msの比(Ms/Mp)は、特に限定されないが、0.01以上10以下であることが好ましく、1以上9以下であることがより好ましく、2以上7以下がさらに好ましく、3以上5以下がさらに好ましい。本実施形態において、固体電解質中の本実施形態に係るポリマーの質量よりも、金属塩の質量の方が大きいことが好ましい。
【0059】
本実施形態に係る固体電解質において、金属塩は、アルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩のうちの少なくとも1種であることが好ましい。アルカリ金属塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩あるいはカリウム塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、例えば、マグネシウム塩やカルシウム塩が挙げられる。
本実施形態において、金属塩は、リチウム塩であることが好ましい。リチウム塩としては、特に限定されないが、LiClO4、LiBF4、LiI、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3COO、LiNO3、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、LiCl、LiBr、LiB(C2H5)4、LiCH3SO3、LiC4F9SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(C2F5SO2)N、Li[(CO2)2]2Bなどのリチウム塩が挙げられる。本実施形態に係る固体電解質において、本実施形態に係るポリマーとリチウム塩との質量比は、1:9~1:1の範囲にあることが好ましい。
固体電解質中で金属塩は、アルカリ金属等の陽イオンおよび当該陽イオンの対イオンとして存在し得る。金属塩がリチウム塩であれば、リチウムイオンがポリマーを介して輸送される。」
「【0065】
本実施形態に係るポリマーにおいて、アクリルが主鎖であり、その側鎖にシアノ基が少なくとも3つ含まれている。そのため、本実施形態に係るポリマーを含む固体電解質は、金属塩を多量に溶解させて、キャリア密度を増加させることができる。ゆえに、本実施形態に係るポリマーによれば、イオン伝導度を向上させることができる。従来のポリエチレンオキシド系のポリマーは、金属塩を溶解させることのできる量が、本実施形態に係るポリマーより少なく、イオン伝導度を向上させようとして金属塩の量を増やすと結晶化してしまい、イオン伝導度が低下してしまう。
また、本実施形態に係るポリマーは、主鎖がアクリルであるため、重合が容易であり、また、オキセタン骨格よりも分子量を大きくすることができる。それゆえ、本実施形態に係るポリマーを用いることで、自立性を有する固体電解質膜として得ることができる。
さらに、本実施形態に係るポリマーが側鎖に(ポリ)エチレンオキシド基を有していれば、ポリマーの柔軟性が増すため、金属塩を多量に溶解させても結晶化し難い。それゆえ、金属塩の量を増やしてイオン伝導度を向上させることができる。」

3 当審の判断

(1)理由1(進歩性)について

ア 引用文献1を主引用例とする場合について

(ア)本件発明1

a 対比

本件発明1と引用発明1を対比すると、次のことがいえる。

(a)本件発明1の「アルカリ金属塩」が含む「LiN(FSO2)2」は、本願明細書の段落【0095】に記載されているように、「LiFSI」と称されるものである。

よって、引用発明1の「LiFSI」は、本件発明1の「アルカリ金属塩」であって「前記アルカリ金属塩がLiN(FSO2)2を含む」ことに相当する。

また、引用発明1の「ゲル電解質」は、「LiFSI」を含むから、本件発明1の「アルカリ金属塩を含む電解質組成物」に相当する。

但し、本件発明1は「該アルカリ金属塩濃度が2.5mol/kg以上4.6mol/kg以下」であるのに対して、引用発明1はそのような特定がない点で相違する。

(b)引用発明1の「エチレンオキシドの単独重合体又は共重合体であるポリエーテル系ポリマー」は、本件発明1の「エチレンオキシド由来の構造単位を有するポリエーテル系重合体」に相当する。

(c)本件発明1の「イオン解離促進剤」は、本願明細書の段落【0051】及び【0053】によれば、ジニトリル化合物を含むものである。

よって、引用発明1の「2-メチルグルタノニトリル又はスクシノニトリルであるジニトリル化合物」は、本件発明1の「イオン解離促進剤」に相当する。

(d)本件発明1は「該重合体の含有量が電解質組成物100質量%に対して5~30質量%であり、該イオン解離促進剤の含有量が電解質組成物100質量%に対して5~30質量%である」のに対して、引用発明1はそのような特定がない点で相違する。

上記(a)ないし(d)によれば、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点及び相違点を有する。

(一致点)

「アルカリ金属塩を含む電解質組成物であって、
該組成物は、更にエチレンオキシド由来の構造単位を有するポリエーテル系重合体と、イオン解離促進剤とを含み、
該アルカリ金属塩がLiN(FSO2)2を含む、電解質組成物。」

(相違点1)

本件発明1は「該アルカリ金属塩濃度が2.5mol/kg以上4.6mol/kg以下」であるのに対して、引用発明1はそのような特定がない点。

(相違点2)

本件発明1は「該重合体の含有量が電解質組成物100質量%に対して5~30質量%であり、該イオン解離促進剤の含有量が電解質組成物100質量%に対して5~30質量%である」のに対して、引用発明1はそのような特定がない点。

b 判断

相違点1について検討する。

引用文献1には、非水電解液中のフルオロスルホニルイミド化合物の濃度は0.2mol/kg以上16mol/kg以下であることが記載されている(段落【0024】)。

しかしながら、上記記載は非水電解液を用いた場合について述べたものであり、有機溶媒に代えて、エチレンオキシドの単独重合体又は共重合体であるポリエーテル系ポリマーを用いてゲル電解質(本件発明1における「ポリエーテル系重合体」を含む「電解質組成物」に対応する電解質)とした場合における、フルオロスルホニルイミド化合物の濃度については、引用文献1に記載も示唆もない。

更に、特許異議申立人が証拠として提出した、甲第4号証ないし甲第6号証には非水電解液におけるアルカリ金属塩濃度について、甲第7号証(段落【0065】)にはアクリルが主鎖であるポリマーを含む固体電解質に金属塩を多量に溶解させることが記載されているが、甲第4号証ないし甲第7号証の記載は、ポリエーテル系ポリマーを用いたゲル電解質中のLiFSIの濃度に関するものではない。

そうすると、甲第4号証ないし甲第7号証に記載された技術を、引用発明1のLiFSIとポリエーテル系ポリマーとジニトリル化合物とを含む「ゲル電解質」に適用する動機はない。

したがって、上記相違点1に係る構成は、引用発明1に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。

よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

なお、上述のように、本件発明1は、相違点2について検討するまでもなく、当業者が容易に発明をすることができたものでないが、一応相違点2についても検討しておく。

引用文献1には、有機溶媒に代えて、エチレンオキシドの単独重合体又は共重合体であるポリエーテル系ポリマーを用いてゲル電解質とした場合における、ポリエーテル系ポリマーと、ジニトリル化合物の含有量について何ら記載されていない。

また、ポリエーテル系ポリマーの含有量がゲル電解質100質量%に対して5~30質量%であり、ジニトリル化合物の含有量がゲル電解質100質量%に対して5~30質量%であるゲル電解質について記載されている証拠もない。

そうすると、引用発明1において、フルオロスルホニルイミド化合物の濃度に加えて、ポリエーテル系ポリマーと、ジニトリル化合物の含有量を上記相違点2のように特定することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

(イ)本件発明3、4、7ないし11

本件発明3、4、7ないし11は、本件発明1に係る全ての構成を備え、さらに構成を付加したものであるから、本件発明1と同様な理由により、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

イ 引用文献2を主引用例とする場合について

について

(ア)本件発明1

a 対比

本件発明1と引用発明2を対比すると、次のことがいえる。

(a)引用発明2の「リチウム塩」は、本件発明1の「アルカリ金属塩」に相当する。

また、引用発明2の「Li(SO2F)2N」は、本件発明1の「LiN(FSO2)2」に相当する。

よって、引用発明2の「Li(SO2F)2Nからなるリチウム塩である電解質」「を有する」「電解液」は、本件発明1の「アルカリ金属塩を含む電解質組成物」であって、「該アルカリ金属塩がLiN(FSO2)2を含む」ことに相当する。

(b)引用発明2の「ポリエチレンオキシド系であるポリマー」は、本件発明1の「エチレンオキシド由来の構造単位を有するポリエーテル系重合体」に相当する。

(c)本件発明1の「イオン解離促進剤」は、本願明細書の段落【0051】及び【0058】によれば、「ニトリル化合物」、「エチレンカーボネート」である。

してみると、引用発明2の「アセトニトリル又はエチレンカーボネートである溶媒」は、「アセトニトリル」がニトリル化合物であるから、本件発明1の「イオン解離促進剤」に相当する。

(d)本件発明1は「該アルカリ金属塩濃度が2.5mol/kg以上4.6mol/kg以下であ」るのに対して、引用発明2はそのような特定がされていない点で相違する。

(e)本件発明1は「該重合体の含有量が電解質組成物100質量%に対して5~30質量%であり、該イオン解離促進剤の含有量が電解質組成物100質量%に対して5~30質量%である」のに対して、引用発明2はそのような特定はされていない点で相違する。

上記(a)ないし(e)によれば、本件発明1と引用発明2とは、次の一致点及び相違点を有する。

(一致点)

「アルカリ金属塩を含む電解質組成物であって、
該組成物は、更にエチレンオキシド由来の構造単位を有するポリエーテル系重合体と、イオン解離促進剤とを含み、
該アルカリ金属塩がLiN(FSO2)2を含む電解質組成物。」

(相違点3)

本件発明1は「該アルカリ金属塩濃度が2.5mol/kg以上4.6mol/kg以下」であるのに対して、引用発明2はそのような特定はされていない点。

(相違点4)

本件発明1は「該重合体の含有量が電解質組成物100質量%に対して5~30質量%であり、該イオン解離促進剤の含有量が電解質組成物100質量%に対して5~30質量%である」のに対して、引用発明2はそのような特定はされていない点。

b 判断

上記相違点3について検討する。

引用文献2には、Li(SO2F)2Nの濃度について、具体的な数値が記載されていないばかりでなく、濃度を高めることの示唆も記載されていない。

また、取消理由通知に於いて例示した引用文献1には、非水電解液中のフルオロスルホニルイミド化合物の濃度は0.2mol/kg以上16mol/kg以下であることが記載されているが(段落【0024】)、ポリエーテル系ポリマーを用いたゲル電解質における、フルオロスルホニルイミド化合物の濃度については記載も示唆もない(上記「ア(ア)b」)。

更に、特許異議申立人が証拠として提出した、甲第4号証ないし甲第6号証には非水電解液におけるアルカリ金属塩濃度について、甲第7号証(段落【0065】)にはアクリルが主鎖であるポリマーを含む固体電解質に金属塩を多量に溶解させることが記載されているが、甲第4号証ないし甲第7号証の記載は、ポリエチレンオキシド系であるポリマーを有するシート状の電解液中のLi(SO2F)2Nの濃度に関するものではない。

そうすると、甲第4号証ないし甲第7号証に記載された技術を、引用発明2のLi(SO2F)2Nと、ポリエチレンオキシド系であるポリマーと、アセトニトリル又はエチレンカーボネートである溶媒とを有する「シート状の電解液」に適用する動機はない。

したがって、上記相違点3に係る構成は、引用発明2に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(イ)本件発明3、5、7、8、10及び11

本件発明3、5、7、8、10及び11は、本件発明1に係る全ての構成を備え、さらに構成を付加したものであるから、本件発明1と同様な理由により、引用文献2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

(2)理由2(サポート要件)について

本件訂正により、本件発明1の「重合体」は「エチレンオキシド由来の構造単位を有するポリエーテル系重合体」となった。

そして、本件明細書の段落【0090】ないし【0111】には、「ポリエチレンオキシド重合体」、並びに、「エチレンオキシド」を含むアルキレンオキシドから得られた「ポリアルキレンオキシド重合体」及び「架橋基含有ポリアルキレンオキシド重合体」を用いた実施例が記載されている。

したがって、取消理由通知で指摘したサポート要件に関する記載不備は解消し、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載されたものである。

また、本件発明1を直接又は間接的に引用する本件発明3ないし5、7ないし11についても同様のことがいえる。

(3)まとめ

以上のことより、当該取消理由通知書に記載した取消理由により、本件発明1、3ないし5、7ないし11に係る特許を取り消すことはできない。

また、請求項2、6に係る特許は、訂正により削除されたため、本件発明2、6に係る取消理由は、対象が存在しないものとなった。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

1 訂正前の請求項1、3ないし5、7ないし11に係る特許に対する特許異議申立理由のうち、取消理由通知において採用しなかった申立理由の概要は、以下のとおりである。

(1)申立理由1

請求項1、3ないし4、7ないし11に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、

請求項1、5、7ないし11に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であり、

請求項1、5、7ないし11に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるから、請求項1、3ないし5、7ないし11に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、請求項1、3ないし5、7ないし11に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。

(2)申立理由2

請求項1、3ないし5、7ないし11に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項に1、3ないし5、7ないし11係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

(3)申立理由3

請求項1、3ないし5、7ないし11に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないため、請求項1、3ないし5、7ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(4)申立理由4

請求項1、3ないし5、7ないし11に係る発明について、発明の詳細な説明の記載が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものでないめ、請求項1、3ないし5、7ないし11に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

(5)申立理由5

請求項1、3ないし5、7ないし11に係る発明は明確でないため、請求項1、3ないし5、7ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。

証拠方法

甲第1号証:特開2017-10924号公報
甲第2号証:特表2015-537352号公報
甲第3号証:国際公開第2016/71798号
甲第4号証:国際公開第2016/130484号
甲第5号証:特開2014-241198号公報
甲第6号証:国際公開第2016/147811号
甲第7号証:特開2015-168754号公報

2 各号証の記載

(1)甲第1号証及び甲第3号証はそれぞれ、前記「第4」に記載した引用文献1及び引用文献2である。

そして、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第7号証に記載された事項は、前記「第4 2」に記載したとおりのものである。

(2)甲第2号証

ア 甲第2号証には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「【請求項1】
重合性モノマー、重合開始剤、電解質塩及び電解質溶媒を含むゲルポリマー電解質用組成物を重合してゲル化させることにより製造されたゲルポリマー電解質であって、
前記電解質塩はイミド塩であるゲルポリマー電解質。
【請求項2】
続きを表示(全13行)
前記イミド塩は、下記化学式(1)の化合物である請求項1に記載のゲルポリマー電解質。
【化1】
(略)
前記化学式(1)で、
R1及びR2は、それぞれ独立的にフルオリン(F)またはペルフルオロアルキルである。
【請求項3】
前記化学式(1)の化合物は、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド及びリチウムビス(ペルフルオロエタンスルホニル)イミドのうち選択される一つ以上である請求項2に記載のゲルポリマー電解質。
【請求項4】
前記重合性モノマーは、アクリレート系化合物である請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のゲルポリマー電解質。」
「【請求項16】
前記電解質塩は、前記ゲルポリマー電解質用組成物に対して0.5M~2.0M濃度となるように含まれる請求項1から請求項15のいずれか1項に記載のゲルポリマー電解質。
【請求項17】
正極、負極及び請求項1から請求項16のいずれか1項のゲルポリマー電解質を含む二次電池。
【請求項18】
前記正極は、正極集電体;前記正極集電体から突出された正極タブ;及び前記正極タブ上に保護フィルムを含む請求項17に記載の二次電池。」
「【請求項24】
前記正極は、絶縁層をさらに含む請求項18から請求項23のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項25】
前記絶縁層は、前記正極タブと前記保護フィルムとの間、または前記保護フィルム上に含まれる請求項24に記載の二次電池。
【請求項26】
前記絶縁層は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリイミド、アセテート、ガラス織物、ポリフルオロ化ビニリデン、フルオロ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、エポキシ系樹脂及びポリアミド系樹脂のうち選択される一つ以上を含む請求項24または請求項25に記載の二次電池。」
「【0017】
本発明の電解質に用いられる電解質塩として、前記化学式(1)のイミド塩以外のリチウム塩をさらに含むことができ、前記電解質塩はゲルポリマー電解質用組成物に対して0.5M~2.0M濃度となるように含まれてよい。」
「【0019】
一方、前記重合性モノマーはアクリレート系化合物を含むことが好ましいが、アクリレート系化合物のみに限られるものではない。
【0020】
具体的に、前記重合性モノマーは、2-シアノエチルアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1、4-ブタンジオールジアクリレート、1、6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプロパンプロポキシレートトリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールエトキシレートテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、1、5-ヘキサジエンジエポキシド、グリセロールプロポキシレートトリグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシド、1、2、7、8-ジエポキシオクタン、4-ビニルシクロヘキセンジオキシド、ブチルグリシジルエーテル、ジグリシジル 1、2-シクロヘキサンジカルボキシレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテルまたはグリシジルメタクリレートなどの化合物を単独でまたは混合して重合するときモノマーとして用いることができる。」
「【0059】
実施例1.
<ゲルポリマー電解質用組成物の製造>
エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=1:2(体積比)の組成を有する非水電解液溶媒にリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を1M濃度となるように溶解して電解液を準備した。前記電解液100重量部に対して重合性モノマー5重量部(2-シアノエチルアクリレート2.5重量%及びジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを混用)、及び重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート0.25重量部を添加してゲルポリマー電解質用組成物を製造した。」
「【0063】
電池の製造
前記正極、負極及びポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン(PP/PE/PP)の3層からなるセパレーターを利用して電池を組み立て、組み立てられた電池に前記製造されたゲルポリマー電解質用組成物を注入した後、窒素雰囲気下で80℃で2~30分間加熱してコイン型二次電池を製造した。
【0064】
このようにゲルポリマー電解質用組成物を注入したあと加熱すれば、ゲルポリマー電解質用組成物が重合(ゲル化)されながら、電池内にゲルポリマー電解質が形成されるのである。図3は、本発明の電解質用組成物がゲル化された状態を示す写真である。」
「【0070】
実施例7.
2-シアノエチルアクリレート2.5重量%及びジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを混用した重合性モノマーの代わりに、プロピレンオキシドを重合性モノマーとして用いたことを除いては、実施例1と同様にゲルポリマー電解質用組成物を製造し、これを利用してコイン型二次電池を製造した。」
「【0085】
また、電解質用組成物の重合性モノマーとしてアクリレート系モノマーを用いた場合(実施例1~6)が、プロピレンオキシド系モノマーを用いた場合(実施例7)に比べて腐食抑制及び充放電性能に優れた傾向を示すことも確認することができた。」

イ 前記記載事項から次のことがいえる。

(ア)段落【0059】によれば、「エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=1:2(体積比)の組成を有する非水電解液溶媒にリチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)を1M濃度となるように溶解し」た「電解液100重量部に対して重合性モノマー5重量部(2-シアノエチルアクリレート2.5重量%及びジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを混用)、及び重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート0.25重量部を添加し」た「ゲルポリマー電解質用組成物」である。

(イ)段落【0064】によれば、「ゲルポリマー電解質用組成物を」「加熱すれば、」「重合(ゲル化)されながら」「ゲルポリマー電解質が形成される」ものであって、すなわち「ゲルポリマー電解質用組成物」を加熱して重合された「ゲルポリマー電解質」が記載されている。

ウ したがって、前記「イ」より、甲第2号証には次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されている。

「エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の組成を有する非水電解液溶媒にLiFSIを1M濃度となるように溶解した電解液100重量部に対して、重合性モノマー5重量部(2-シアノエチルアクリレート2.5重量%及びジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを混用)、及び重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート0.25重量部を添加したゲルポリマー電解質用組成物を加熱して重合された、ゲルポリマー電解質。」

3 当審の判断

(1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号)について

ア 甲第1号証を主引用例とする申立理由について

(ア)本件発明1について

本件発明1と甲第1号証に記載された引用発明1とが相違点1及び相違点2において相違することは、前記「第4 3(1)ア (ア)a」のとおりである。

したがって、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明でない。

(イ)本件発明3ないし4、7ないし11について

本件発明3ないし4、7ないし11は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明でない。

イ 甲第2号証を主引用例とする申立理由について

(ア)本件発明1について

a 対比

本件発明1と甲2発明を対比すると、次のことがいえる。

(a)本件発明1の「アルカリ金属塩」が含む「LiN(FSO2)2」は、本願明細書の段落【0095】に記載されているように、「LiFSI」と称されるものである。

してみると、甲2発明の「LiFSI」は、本件発明1の「アルカリ金属塩」であって、「該アルカリ金属塩がLiN(FSO2)2を含む」ことに相当する。

(b)甲2発明の「重合性モノマー5重量部(2-シアノエチルアクリレート2.5重量%及びジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを混用)、及び重合開始剤としてt-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート0.25重量部を加熱して重合された」「ゲルポリマー」は、本件発明1の「重合体」に相当する。

但し、「重合体」について、本件発明1は「エチレンオキシド由来の構造単位を有するポリエーテル系重合体」であるのに対して、甲2発明は「アクリレート」の「モノマー」の重合体であるアクリル系の重合体である点で相違する。

(c)本件発明1の「イオン解離促進剤」は、段落【0051】及び【0058】によれば「エチレンカーボネート」及び「エチルメチルカーボネート」が含まれるものである。

してみると、甲2発明の「エチレンカーボネート」及び「エチルメチルカーボネート」は、本件発明1の「イオン解離促進剤」に相当する。

(d)前記(a)ないし(c)の点より、甲2発明の「ゲルポリマー電解質」は、本件発明1の「アルカリ金属塩」、「重合体」及び「イオン解離促進剤」に相当する構成を有するから、本件発明1の「電解質組成物」に相当する。

(e)本件発明1は「電解質組成物」における「該アルカリ金属塩濃度が2.5mol/kg以上4.6mol/kg以下」であるのに対して、甲2発明は「電解質組成物」における「該アルカリ金属塩濃度」は特定されていない点で相違する。

(f)本件発明1は「該重合体の含有量が電解質組成物100質量%に対して5~30質量%であり、該イオン解離促進剤の含有量が電解質組成物100質量%に対して5~30質量%である」のに対して、甲2発明はそのような特定はされていない点で相違する。

上記(a)ないし(f)によれば、本件発明1と甲2発明とは、次の一致点及び相違点を有する。

(一致点)

「アルカリ金属塩を含む電解質組成物であって、
該組成物は、更に重合体と、イオン解離促進剤とを含み、
該アルカリ金属塩がLiN(FSO2)2を含む電解質組成物。」

(相違点5)

本件発明1は「エチレンオキシド由来の構造単位を有するポリエーテル系重合体」であるのに対して、甲2発明はアクリル系の重合体である点。

(相違点6)

本件発明1は「該アルカリ金属塩濃度が2.5mol/kg以上4.6mol/kg以下」であるのに対して、甲2発明は「電解質組成物」における「該アルカリ金属塩濃度」は特定されていない点。

(相違点7)

本件発明1は「該重合体の含有量が電解質組成物100質量%に対して5~30質量%であり、該イオン解離促進剤の含有量が電解質組成物100質量%に対して5~30質量%である」のに対して、甲2発明はそのような特定はされていない点。

b 判断

以上のとおり、本件発明1と甲2発明とは相違点5ないし相違点7を有する。

したがって、本件発明1は甲第2号証に記載された発明でない。

(イ)本件発明5、7ないし11について

本件発明5、7ないし11は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明1と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明でない。

ウ 甲第3号証を主引用例とする申立理由について

(ア)本件発明1について

本件発明1と甲第3号証に記載された引用発明2とが相違点3及び相違点4において相違することは、前記「第4 3(1)イ (ア)a」のとおりである。

したがって、本件発明1は、甲第3号証に記載された発明でない。

(イ)本件発明5、7ないし11について

本件発明5、7ないし11は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから本件発明1と同様の理由により、甲第3号証に記載された発明でない。

(2)申立理由2(特許法第29条第2項)について

(ア)本件発明1について

a 対比

本件発明1と甲2発明を対比すると、相違点5ないし相違点7において相違し、その余の点で一致することは、前記「(1)イ (ア)a」のとおりである。

b 判断

上記相違点5について検討する。

甲第2号証には、重合性モノマーはアクリレート系化合物のみに限られるものではないことが記載され(段落【0019】)、重合性モノマーの具体例が示されているが(段落【0020】)、「エチレンオキシド」は記載されていない。

また、2-シアノエチルアクリレート2.5重量%及びジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを混用した重合性モノマーの代わりに、プロピレンオキシドを重合性モノマーとして用いた実施例7(段落【0070】)は、重合性モノマーとしてアクリレート系モノマーを用いた場合に比べて、腐食抑制及び充放電性能が劣ることが記載されているので(段落【0085】)、甲2発明において「重合性モノマー」を「2-シアノエチルアクリレート2.5重量%及びジトリメチロールプロパンテトラアクリレート」に代えて、あえてエチレンオキシドにする理由はない。

したがって、上記相違点5に係る構成は、甲2発明に基づいて、当業者が容易に為し得たこととはいえない。

更に、上記相違点6について検討する。

上述のように、甲2発明において「重合性モノマー」を「2-シアノエチルアクリレート2.5重量%及びジトリメチロールプロパンテトラアクリレート」に代えて、あえてエチレンオキシドにする理由はないので、甲2発明において「重合性モノマー」をエチレンオキシドに換えたものに於いて、「LiFSI」の濃度を「2.5mol/kg以上4.6mol/kg以下」にする理由もない。

したがって、上記相違点6に係る構成は、甲2発明に基づいて、当業者が容易に為し得たこととはいえない。

よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(イ)本件発明3ないし5、7ないし11について

本件発明3ないし5、7ないし11は、本件発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(3)申立理由3(許法第36条第6項第1号)について

ア 特許異議申立人の主張は、次のとおりである。

請求項1に記載された「イオン解離促進剤」は、イオンへの解離を促進する機能によってのみ特定されており、化学構造が何ら限定されていない。

そして、一般に、化学構造の種類が異なれば、それを含む電解質組成物の機能・特性は予測不可能に変化しうるものであるから、実施例において開示された「サクシノニトリル」、「スルホラン」、及び「エチレンカーボネート」以外の「イオン解離促進剤」を用いた電解質組成物が、実施例と同等に充放電に優れることは推認できない。

したがって、実施例において開示された「サクシノニトリル」、「スルホラン」、及び「エチレンカーボネート」以外の「イオン解離促進剤」を含む請求項1に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に記載された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。(異議申立書第60頁第8-28行)

イ 当審の判断

本件明細書の段落【0020】によれば、「イオン解離促進剤」は「組成物中でアルカリ金属イオンとアニオンとを解離させる」ものといえる。

そして、本件明細書の段落【0111】ないし【0113】及び図1によれば、「サクシノニトリル」、「スルホラン」、及び「エチレンカーボネート」という、化学構造の種類が異なる複数の「イオン解離促進剤」を含む実施例1ないし11のいずれも、「イオン解離促進剤」を含まない比較例2ないし4に比較して高い直流イオン伝導度を有するものである。

してみると、化学構造の種類が異なるものであっても、「組成物中でアルカリ金属イオンとアニオンとを解離させる」機能を発揮するものである「イオン解離促進剤」であれば、高い直流イオン伝導度が得られ、電池に用いた際の充放電性能に優れる電解質組成物を提供するという課題(段落【0007】を参照)を解決し得るものといえる。

さらに、本件明細書の段落【0051】には、イオン解離促進剤として、スルホニル化合物、ニトリル化合物、カーボネート化合物、カルボン酸無水物、硫酸エステル化合物、チオエーテル化合物、亜硫酸エステル化合物、含窒素環状化合物等も例示されている。

そうすると、実施例において開示された「サクシノニトリル」、「スルホラン」、及び「エチレンカーボネート」以外の「イオン解離促進剤」であっても、本件発明の課題を解決できるといえる。

よって、特許異議申立人の主張を採用することができない。

(4)申立理由4(特許法第36条第4項第1号)について

ア 特許異議申立人の主張は、次のとおりである。

(ア)本件特許の発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明のうち、「ポリエーテル系重合体」を含まない「重合体」を含む発明を、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでない。

(イ)前記(3)と同様の理由により、本件特許の発明の詳細な説明は、請求項1に係る発明のうち、「サクシノニトリル」、「スルホラン」、及び「エチレンカーボネート」以外の「イオン解離促進剤」を含む発明についても、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものでない。(特許異議申立書第60頁第29行-第61頁第4行)

イ 当審の判断

(ア)の主張ついて

本件訂正によって、本件発明1の「重合体」は「エチレンオキシド由来の構造単位を有するポリエーテル系重合体」となったので、上記主張を採用することができない。

(イ)の主張について

前記「(3)」と同様の理由により、本件特許の発明の詳細な説明は、本件発明1のうち、「サクシノニトリル」、「スルホラン」、及び「エチレンカーボネート」以外の「イオン解離促進剤」を含む発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載したものといえる。

よって、特許異議申立人の主張を採用することができない。

(5)申立理由5(許法第36条第6項第2号)について

ア 特許異議申立人の主張は、次のとおりである。

「イオン解離促進剤」の用語を一義的に理解するためには、どのようなアルカリ金属塩に対してアルカリ金属イオンとアニオンとを解離させるものであるかを明確にする必要があるが、本件特許明細書の記載を参酌しても、アルカリ金属塩のイオンへの解離を促進する、という機能が特定されているのみであって、当該機能がどのようなものか不明確である。したがって、請求項1に記載された「イオン解離促進剤」の技術的意味を理解できない。(特許異議申立書第61頁第5-31行)

イ 当審の判断

本件明細書の段落【0020】によれば、「イオン解離促進剤」は「組成物中でアルカリ金属イオンとアニオンとを解離させる」ものといえるので、どのようなアルカリ金属塩に対しても、「組成物中でアルカリ金属イオンとアニオンとを解離させる」ものであれば、「イオン解離促進剤」に含まれることは一義的に明らかである。

よって、特許異議申立人の主張を採用することができない。

(6)まとめ

したがって、特許異議申立人の申立理由1ないし5にかかる主張は、採用することができない。

第6 むすび

以上のとおり、請求項1、3ないし5、7ないし11に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては取り消すことはできない。さらに、他に請求項1、3ないし5、7ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

また、請求項2、6に係る特許は、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人による特許異議の申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。

よって、結論のとおり決定する。

審決本文(J-PlatPat)

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2022-700323

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同じ当事者の審決192件(吉川 雅也、株式会社日本触媒)
  • 2023-700789異議申立 / 2024-06-06 / 訂正認容ナノセルロース含有樹脂組成物
    同じ当事者: 吉川 雅也、株式会社日本触媒
  • 2025-701040異議申立 / 2026-06-16 / 訂正認容組成物、硬化体及び有機EL表示装置
    同じ当事者: 吉川 雅也
  • 2025-700196異議申立 / 2025-12-18 / 訂正認容新規エマルション及びこのエマルションを用いた塗料用組成物
    同じ当事者: 株式会社日本触媒
  • 2024-701057異議申立 / 2025-11-14 / 訂正認容高吸水性樹脂およびその製造方法
    同じ当事者: 株式会社日本触媒
  • 2024-700797異議申立 / 2025-11-05 / 維持高吸水性樹脂の製造方法
    同じ当事者: 株式会社日本触媒
同じ根拠条文の審決2,126件(特許法120条の8第1項、特許法135条)
  • 2024-700691異議申立 / 2025-06-02 / 訂正認容正極、及びそれを含むリチウム電池
    共通の条文: 特許法120条の8第1項、特許法135条
  • 2022-700924異議申立 / 2023-12-18 / 訂正認容固体電解質及び全固体リチウムイオン二次電池
    共通の条文: 特許法120条の8第1項、特許法135条
  • 2022-701319異議申立 / 2023-10-23 / 訂正認容プライマー層組成物、これを用いた二次電池パウチフィルム、及びその製造方法
    共通の条文: 特許法120条の8第1項、特許法135条
  • 2022-700229異議申立 / 2022-12-15 / 訂正認容非水電解質二次電池用正極活物質及びそれを用いた非水電解質二次電池
    共通の条文: 特許法120条の8第1項、特許法135条
  • 2021-700289異議申立 / 2022-06-13 / 訂正認容金属端子用接着性フィルム、接着性フィルム付き金属端子、及び電池
    共通の条文: 特許法120条の8第1項、特許法135条
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,910件(113・H01M、121・H01M、536・H01M ほか)
  • 2026-700111異議申立 / 2026-06-22 / 維持固体酸化物形電気化学セル及びその利用
    共通の審決分類: 113・H01M、121・H01M、536・H01M、537・H01M
  • 2026-700141異議申立 / 2026-05-27 / 維持電気化学装置
    共通の審決分類: 113・H01M、121・H01M、536・H01M、537・H01M
  • 2025-700124異議申立 / 2026-03-25 / 訂正認容アルカリ金属二次電池とその用途
    共通の審決分類: 113・H01M、121・H01M、536・H01M、537・H01M
  • 2025-700972異議申立 / 2025-12-04 / 維持蓄電装置用外装材及びそれを用いた蓄電装置
    共通の審決分類: 113・H01M、121・H01M、536・H01M、537・H01M
  • 2024-701017異議申立 / 2025-09-10 / 維持電気化学素子の金属支持体、電気化学素子、電気化学モジュール、電気化学装置、エネル…
    共通の審決分類: 113・H01M、121・H01M、536・H01M、537・H01M

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