特許異議申立
2022-700894
酢酸含有組成物
- 審判番号
- 2022-700894
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-120742外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7033814
- 請求日
- 2022年09月12日
- 審決日
- 2023年08月21日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社Mizkan Holdings
- 【権利者代理人】弁理士法人平木国際特許事務所
- 【異議申立人】森田 弘潤
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7033814号発明「酢酸含有組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7033814号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3、5及び7〕、4、6、〔10及び12〕並びに13について訂正することを認める。
特許第7033814号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7033814号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、令和3年7月21日の出願であって、令和4年3月3日にその特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、同年同月11日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年9月12日に特許異議申立人 森田 弘潤(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし12)がされ、同年12月8日付けで取消理由が通知され、令和5年2月8日に特許権者 株式会社Mizkan Holdingsから意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年同月20日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年3月29日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年4月28日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年7月3日に特許権者から意見書が提出されるとともに訂正請求がされたものである。
なお、令和5年2月8日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、すでに特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられており、下記第2 1のとおり、令和5年7月3日にされた訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第6及び7のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となるものであって、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときと判断されるから、特許異議申立人に再度の意見書の提出の機会を与えていない。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和5年7月3日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、訂正要件についての判断の便宜上、当審において令和5年7月3日に提出された訂正請求書における訂正事項を請求項ごとに整理して認定し直した。また、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1における「上記酢酸含有組成物。」という記載を「上記酢酸含有組成物(ただし、トマト2個(約300g)、米酢1/2カップ、水1/2カップを材料とする酢トマト及びこれと同じ比率でトマト、米酢、水を材料とする酢トマト;スイカ100g、砂糖小さじ1、お酢大さじ1、氷3個を材料とするスイカとお酢のジュース及びこれと同じ比率でスイカ、砂糖、お酢、氷を材料とするスイカとお酢のジュース;冷凍マンゴー150g、砂糖150g、酢150mlを材料とするマンゴービネガードリンク及びこれと同じ比率で冷凍マンゴー、砂糖、酢を材料とするマンゴービネガードリンク;赤ワイン200ml、リンゴ100%ジュース100ml、酢大1を材料とするリンゴ酢ワイン及びこれと同じ比率で赤ワイン、リンゴ100%ジュース、酢を材料とするリンゴ酢ワイン;穀物酢小さじ1(約7g)、はちみつ大さじ1(約20g)、100%リンゴジュース小さじ4(約28g)、ミネラルウォーター150g、天然塩1つまみを材料とする林檎のビネガーウォーター及びこれと同じ比率で穀物酢、はちみつ、100%リンゴジュース、ミネラルウォーター、天然塩を材料とする林檎のビネガーウォーター;トマト2個、白ワイン50cc、お酢50cc、はちみつ大さじ1を材料とするトマトマリネ及びこれと同じ比率でトマト、白ワイン、お酢、はちみつを材料とするトマトマリネ;りんご酢(酸度5%)40kg、リンゴ酸10kg、黒糖30kg、はちみつ30kg、りんご果汁100kgを配合し、酢酸0.20w/v%、酢酸エチル5ppm、アセトアルデヒド1ppm、2-ブタノン5ppb、3-メチルブタナール5ppb、プロピオン酸ブチル300ppb、酢酸イソアミル400ppbとなるように調整されたアップルビネガードリンク及びこれと同じ比率でりんご酢(酸度5%)、リンゴ酸、黒糖、はちみつ、りんご果汁を材料とするアップルビネガードリンク;醸造酢(酸度15%)10kg、ぶどう酢(酸度5%)10kg、クエン酸2kg、リンゴ酸1kg、L-アスコルビン酸30kg、乳酸1kg、酒石酸1kg、果糖ぶどう糖液糖10kg、はちみつ5kg、スクラロース0.2kg、ミントエキス0.5kg、ローズマリーエキス0.1kg、食物繊維10kg、食塩7kgを配合し、酢酸0.2w/v%、酢酸エチル50ppm、アセトアルデヒド50ppm、2-ブタノン2,000ppb、3-メチルブタナール1,000ppb、プロピオン酸ブチル50,000ppb、酢酸イソアミル10,000ppbとなるように調整されたビネガーウォーター(無果汁)及びこれと同じ比率で醸造酢(酸度15%)、ぶどう酢(酸度5%)、クエン酸、リンゴ酸、Lーアスコルビン酸、乳酸、酒石酸、果糖ぶどう糖液糖、はちみつ、スクラロース、ミントエキス、ローズマリーエキス、食物繊維、食塩を材料とするビネガーウォーター(無果汁);を除く)。」に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4における「前記酢酸含有組成物中の(B)(+)ローズオキシドの含有量が、0.001ppb以上1000ppb以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の酢酸含有組成物。」という記載を「0.02(w/v%)以上の酢酸と、(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドより選択される少なくとも1種の成分を含む、酢酸含有組成物であって、
該酢酸の含有量に対する(A)2-オクテナールの含有量の比率(2-オクテナール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500であり、(B)(+)ローズオキシドの含有量の比率(ローズオキシド(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500であり、
該酢酸含有組成物中の(B)(+)ローズオキシドの含有量が、0.001ppb以上1000ppb以下であり、かつ
果実酒を含まない、上記酢酸含有組成物。」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項5において、「前記酢酸含有組成物中の(C)1,8-シネオールの含有量が、0.001ppb以上1000ppb以下である、請求項2~4のいずれか1項に記載の酢酸含有組成物。」とあるのを、「前記酢酸含有組成物中の(C)1,8-シネオールの含有量が、0.001ppb以上1000ppb以下である、請求項2又は3に記載の酢酸含有組成物。」に訂正する。
併せて、請求項5を引用する請求項7についても請求項5を訂正したことに伴う訂正をする。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6における「前記酢酸含有組成物が、飲食品である、請求項1~5のいずれか1項に記載の酢酸含有組成物。」という記載を「0.02(w/v%)以上の酢酸と、(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドより選択される少なくとも1種の成分を含む、酢酸含有組成物であって、
該酢酸の含有量に対する(A)2-オクテナールの含有量の比率(2-オクテナール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500であり、(B)(+)ローズオキシドの含有量の比率(ローズオキシド(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500であり、
該酢酸含有組成物が、飲食品であり、かつ
該(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドがハーブ類(ただしローズマリーを除く)の抽出物に由来する、上記酢酸含有組成物。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項7において、「前記酢酸含有組成物が、洗浄剤組成物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の酢酸含有組成物。」とあるのを、「前記酢酸含有組成物が、洗浄剤組成物である、請求項1~3、又は5のいずれか1項に記載の酢酸含有組成物。」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項10における「上記方法。」という記載を「上記方法(ただし、トマト2個(約300g)、米酢1/2カップ、水1/2カップを材料とする酢トマトの製造方法及びこれと同じ比率でトマト、米酢、水を材料とする酢トマトの製造方法;スイカ100g、砂糖小さじ1、お酢大さじ1、氷3個を材料とするスイカとお酢のジュースの製造方法及びこれと同じ比率でスイカ、砂糖、お酢、氷を材料とするスイカとお酢のジュースの製造方法;冷凍マンゴー150g、砂糖150g、酢150mlを材料とするマンゴービネガードリンクの製造方法及びこれと同じ比率で冷凍マンゴー、砂糖、酢を材料とするマンゴービネガードリンクの製造方法;赤ワイン200ml、リンゴ100%ジュース100ml、酢大1を材料とするリンゴ酢ワインの製造方法及びこれと同じ比率で赤ワイン、リンゴ100%ジュース、酢を材料とするリンゴ酢ワインの製造方法;穀物酢小さじ1(約7g)、はちみつ大さじ1(約20g)、100%リンゴジュース小さじ4(約28g)、ミネラルウォーター150g、天然塩1つまみを材料とする林檎のビネガーウォーターの製造方法及びこれと同じ比率で穀物酢、はちみつ、100%リンゴジュース、ミネラルウォーター、天然塩を材料とする林檎のビネガーウォーターの製造方法;トマト2個、白ワイン50cc、お酢50cc、はちみつ大さじ1を材料とするトマトマリネの製造方法及びこれと同じ比率でトマト、白ワイン、お酢、はちみつを材料とするトマトマリネの製造方法;りんご酢(酸度5%)40kg、リンゴ酸10kg、黒糖30kg、はちみつ30kg、りんご果汁100kgを配合し、酢酸0.20w/v%、酢酸エチル5ppm、アセトアルデヒド1ppm、2-ブタノン5ppb、3-メチルブタナール5ppb、プロピオン酸ブチル300ppb、酢酸イソアミル400ppbとなるように調整されたアップルビネガードリンクの製造方法及びこれと同じ比率でりんご酢(酸度5%)、リンゴ酸、黒糖、はちみつ、りんご果汁を材料とするアップルビネガードリンクの製造方法;醸造酢(酸度15%)10kg、ぶどう酢(酸度5%)10kg、クエン酸2kg、リンゴ酸1kg、L-アスコルビン酸30kg、乳酸1kg、酒石酸1kg、果糖ぶどう糖液糖10kg、はちみつ5kg、スクラロース0.2kg、ミントエキス0.5kg、ローズマリーエキス0.1kg、食物繊維10kg、食塩7kgを配合し、酢酸0.2w/v%、酢酸エチル50ppm、アセトアルデヒド50ppm、2-ブタノン2,000ppb、3-メチルブタナール1,000ppb、プロピオン酸ブチル50,000ppb、酢酸イソアミル10,000ppbとなるように調整されたビネガーウォーター(無果汁)の製造方法及びこれと同じ比率で醸造酢(酸度15%)、ぶどう酢(酸度5%)、クエン酸、リンゴ酸、Lーアスコルビン酸、乳酸、酒石酸、果糖ぶどう糖液糖、はちみつ、スクラロース、ミントエキス、ローズマリーエキス、食物繊維、食塩を材料とするビネガーウォーター(無果汁)の製造方法;を除く)。」に訂正する。
併せて、請求項10を引用する請求項12についても請求項10を訂正したことに伴う訂正をする。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項12において、「前記成分が、(A)2-オクテナールと(B)(+)ローズオキシドである場合、さらに(C)1,8-シネオールを添加し、酢酸の含有量に対する(C)1,8-シネオールの含有量の比率(1,8-シネオール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500となるように添加する、請求項10又は11に記載の方法。」とあるのを、「前記成分が、(A)2-オクテナールと(B)(+)ローズオキシドである場合、さらに(C)1,8-シネオールを添加し、酢酸の含有量に対する(C)1,8-シネオールの含有量の比率(1,8-シネオール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500となるように添加する、請求項10に記載の方法。」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項13として、「0.02(w/v%)以上の酢酸と、(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドより選択される少なくとも1種の成分を含む、酢酸含有組成物であって、
該酢酸の含有量に対する(A)2-オクテナールの含有量の比率(2-オクテナール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500であり、(B)(+)ローズオキシドの含有量の比率(ローズオキシド(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500であり、
該酢酸含有組成物中の(B)(+)ローズオキシドの含有量が、0.001ppb以上1000ppb以下であり、
該(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドがハーブ類の抽出物に由来し、かつ
該酢酸含有組成物が、飲食品である、上記酢酸含有組成物。」という記載を追加する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、令和5年4月28日付けで通知された取消理由(決定の予告)において証拠から認定された発明を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2及び3についての訂正について
訂正事項1による請求項2及び3についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項2及び3についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)請求項4についての訂正について
訂正事項2による請求項4についての訂正は、訂正前の請求項1を直接引用する請求項4を請求項1を引用しない独立形式に書き下した上で、「果実酒を含まない」という限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項2による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)請求項5についての訂正について
訂正事項1による請求項5についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3による請求項5についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1及び3による請求項5についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)請求項6についての訂正について
訂正事項4による請求項6についての訂正は、訂正前の請求項1を直接引用する請求項6を、請求項1を引用しない独立形式に書き下した上で、「該(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドがハーブ類(ただしローズマリーを除く)の抽出物に由来する」という限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項4による請求項6についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)請求項7についての訂正について
訂正事項1による請求項7についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項3による請求項7についての訂正は、請求項5についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項5による請求項7についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1、3及び5による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)請求項10についての訂正について
訂正事項6による請求項10についての訂正は、令和5年4月28日付けで通知された取消理由(決定の予告)において証拠から認定された発明を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項6による請求項10についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)請求項12についての訂正について
訂正事項6による請求項12についての訂正は、請求項10についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項7による請求項12についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項6及び7による請求項12についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(9)請求項13についての訂正について
訂正事項8による請求項13についての訂正は、訂正前の請求項1を直接引用する請求項4を直接引用する請求項6を、請求項1及び4を引用しない独立形式に書き下した上で、「該(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドがハーブ類の抽出物に由来し」という限定を加えて、新たな請求項13とするものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項8による請求項13についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(10)特許異議申立人の主張について
本件訂正は、令和5年2月8日にされた訂正請求による訂正を含むところ、特許異議申立人は、同年3月29日に提出された意見書において、下記アのとおり、同年2月8日にされた訂正請求による訂正は訂正要件を充足するものではない旨主張している。
そこで、上記主張について検討する。
ア 特許異議申立人の主張の概要
(ア)請求項1及び10に係る訂正は新規事項の追加に該当する。
(イ)請求項4、6及び13に係る訂正は新規事項の追加に該当する。
(ウ)請求項6及び13に係る訂正は特許請求の範囲の減縮に該当しない。
イ 上記主張について検討する。
(ア)上記(ア)の点について
請求項1及び10に係る訂正は、令和5年4月28日付けで通知された取消理由(決定の予告)において証拠から認定された発明を除くものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。
したがって、上記訂正は、新規事項の追加に該当するものではない。
(イ)上記(イ)の点について
請求項4に係る訂正は、「最終組成物」が「果実酒を含まない」ものであると限定することで、また、請求項6及び13に係る訂正は、「(A)2-オクテナール」及び「(B)(+)ローズオキシド」の由来を限定することで、令和5年4月28日付けで通知された取消理由(決定の予告)において証拠から認定された発明が含まれなくするものであり、いずれも、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないことは明らかである。
したがって、上記訂正は、新規事項の追加に該当するものではない。
(ウ)上記(ウ)の点について
請求項6及び13に係る訂正は、「(A)2-オクテナール」及び「(B)(+)ローズオキシド」の由来を限定するものであり、令和5年4月28日付けで通知された取消理由(決定の予告)において証拠から認定された発明が含まれないものとすることは明らかである。
したがって、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
ウ まとめ
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし8による請求項1ないし7、10、12及び13についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1又は4号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし8による請求項1ないし7、10、12及び13についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし7は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項1ないし5及び8による請求項1ないし7及び13についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、訂正前の請求項10及び12は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項6及び7による請求項10及び12についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
さらに、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし12に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
また、訂正後の請求項4、6及び13については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがある。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし3、5及び7〕、4、6、〔10及び12〕並びに13について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
0.02(w/v%)以上の酢酸と、(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドより選択される少なくとも1種の成分を含む、酢酸含有組成物であって、該酢酸の含有量に対する(A)2-オクテナールの含有量の比率(2-オクテナール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500であり、(B)(+)ローズオキシドの含有量の比率(ローズオキシド(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500である、上記酢酸含有組成物(ただし、トマト2個(約300g)、米酢1/2カップ、水1/2カップを材料とする酢トマト及びこれと同じ比率でトマト、米酢、水を材料とする酢トマト;スイカ100g、砂糖小さじ1、お酢大さじ1、氷3個を材料とするスイカとお酢のジュース及びこれと同じ比率でスイカ、砂糖、お酢、氷を材料とするスイカとお酢のジュース;冷凍マンゴー150g、砂糖150g、酢150mlを材料とするマンゴービネガードリンク及びこれと同じ比率で冷凍マンゴー、砂糖、酢を材料とするマンゴービネガードリンク;赤ワイン200ml、リンゴ100%ジュース100ml、酢大1を材料とするリンゴ酢ワイン及びこれと同じ比率で赤ワイン、リンゴ100%ジュース、酢を材料とするリンゴ酢ワイン;穀物酢小さじ1(約7g)、はちみつ大さじ1(約20g)、100%リンゴジュース小さじ4(約28g)、ミネラルウォーター150g、天然塩1つまみを材料とする林檎のビネガーウォーター及びこれと同じ比率で穀物酢、はちみつ、100%リンゴジュース、ミネラルウォーター、天然塩を材料とする林檎のビネガーウォーター;トマト2個、白ワイン50cc、お酢50cc、はちみつ大さじ1を材料とするトマトマリネ及びこれと同じ比率でトマト、白ワイン、お酢、はちみつを材料とするトマトマリネ;りんご酢(酸度5%)40kg、リンゴ酸10kg、黒糖30kg、はちみつ30kg、りんご果汁100kgを配合し、酢酸0.20w/v%、酢酸エチル5ppm、アセトアルデヒド1ppm、2-ブタノン5ppb、3-メチルブタナール5ppb、プロピオン酸ブチル300ppb、酢酸イソアミル400ppbとなるように調整されたアップルビネガードリンク及びこれと同じ比率でりんご酢(酸度5%)、リンゴ酸、黒糖、はちみつ、りんご果汁を材料とするアップルビネガードリンク;醸造酢(酸度15%)10kg、ぶどう酢(酸度5%)10kg、クエン酸2kg、リンゴ酸1kg、L-アスコルビン酸30kg、乳酸1kg、酒石酸1kg、果糖ぶどう糖液糖10kg、はちみつ5kg、スクラロース0.2kg、ミントエキス0.5kg、ローズマリーエキス0.1kg、食物繊維10kg、食塩7kgを配合し、酢酸0.2w/v%、酢酸エチル50ppm、アセトアルデヒド50ppm、2-ブタノン2,000ppb、3-メチルブタナール1,000ppb、プロピオン酸ブチル50,000ppb、酢酸イソアミル10,000ppbとなるように調整されたビネガーウォーター(無果汁)及びこれと同じ比率で醸造酢(酸度15%)、ぶどう酢(酸度5%)、クエン酸、リンゴ酸、Lーアスコルビン酸、乳酸、酒石酸、果糖ぶどう糖液糖、はちみつ、スクラロース、ミントエキス、ローズマリーエキス、食物繊維、食塩を材料とするビネガーウォーター(無果汁);を除く)。
【請求項2】
前記成分が、(A)2-オクテナールと(B)(+)ローズオキシドである場合、さらに(C)1,8-シネオールを含み、酢酸の含有量に対する(C)1,8-シネオールの含有量の比率(1,8-シネオール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500である、請求項1に記載の酢酸含有組成物。
【請求項3】
前記酢酸含有組成物中の(A)2-オクテナールの含有量が、0.001ppb以上1000ppb以下である、請求項1又は2に記載の酢酸含有組成物。
【請求項4】
0.02(w/v%)以上の酢酸と、(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドより選択される少なくとも1種の成分を含む、酢酸含有組成物であって、
該酢酸の含有量に対する(A)2-オクテナールの含有量の比率(2-オクテナール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500であり、(B)(+)ローズオキシドの含有量の比率(ローズオキシド(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500であり、
該酢酸含有組成物中の(B)(+)ローズオキシドの含有量が、0.001ppb以上1000ppb以下であり、かつ
果実酒を含まない、上記酢酸含有組成物。
【請求項5】
前記酢酸含有組成物中の(C)1,8-シネオールの含有量が、0.001ppb以上1000ppb以下である、請求項2又は3に記載の酢酸含有組成物。
【請求項6】
0.02(w/v%)以上の酢酸と、(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドより選択される少なくとも1種の成分を含む、酢酸含有組成物であって、
該酢酸の含有量に対する(A)2-オクテナールの含有量の比率(2-オクテナール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500であり、(B)(+)ローズオキシドの含有量の比率(ローズオキシド(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500であり、
該酢酸含有組成物が、飲食品であり、かつ
該(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドがハーブ類(ただしローズマリーを除く)の抽出物に由来する、上記酢酸含有組成物。
【請求項7】
前記酢酸含有組成物が、洗浄剤組成物である、請求項1~3、又は5のいずれか1項に記載の酢酸含有組成物。
【請求項8】
(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドより選択される少なくとも1種の成分を含む、酢酸臭マスキング剤。
【請求項9】
前記成分が、(A)2-オクテナールと(B)(+)ローズオキシドである場合、さらに(C)1,8-シネオールを含む、請求項8に記載の酢酸臭マスキング剤。
【請求項10】
0.02(w/v%)以上の酢酸を含有する酢酸含有組成物に、(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドより選択される少なくとも1種の成分を添加する工程を含む、酢酸臭が抑制された酢酸含有組成物の製造方法であって、該酢酸の含有量に対する(A)2-オクテナールの含有量の比率(2-オクテナール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500となるように、(B)(+)ローズオキシドの含有量の比率(2-オクテナール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500となるように添加する、上記方法(ただし、トマト2個(約300g)、米酢1/2カップ、水1/2カップを材料とする酢トマトの製造方法及びこれと同じ比率でトマト、米酢、水を材料とする酢トマトの製造方法;スイカ100g、砂糖小さじ1、お酢大さじ1、氷3個を材料とするスイカとお酢のジュースの製造方法及びこれと同じ比率でスイカ、砂糖、お酢、氷を材料とするスイカとお酢のジュースの製造方法;冷凍マンゴー150g、砂糖150g、酢150mlを材料とするマンゴービネガードリンクの製造方法及びこれと同じ比率で冷凍マンゴー、砂糖、酢を材料とするマンゴービネガードリンクの製造方法;赤ワイン200ml、リンゴ100%ジュース100ml、酢大1を材料とするリンゴ酢ワインの製造方法及びこれと同じ比率で赤ワイン、リンゴ100%ジュース、酢を材料とするリンゴ酢ワインの製造方法;穀物酢小さじ1(約7g)、はちみつ大さじ1(約20g)、100%リンゴジュース小さじ4(約28g)、ミネラルウォーター150g、天然塩1つまみを材料とする林檎のビネガーウォーターの製造方法及びこれと同じ比率で穀物酢、はちみつ、100%リンゴジュース、ミネラルウォーター、天然塩を材料とする林檎のビネガーウォーターの製造方法;トマト2個、白ワイン50cc、お酢50cc、はちみつ大さじ1を材料とするトマトマリネの製造方法及びこれと同じ比率でトマト、白ワイン、お酢、はちみつを材料とするトマトマリネの製造方法;りんご酢(酸度5%)40kg、リンゴ酸10kg、黒糖30kg、はちみつ30kg、りんご果汁100kgを配合し、酢酸0.20w/v%、酢酸エチル5ppm、アセトアルデヒド1ppm、2-ブタノン5ppb、3-メチルブタナール5ppb、プロピオン酸ブチル300ppb、酢酸イソアミル400ppbとなるように調整されたアップルビネガードリンクの製造方法及びこれと同じ比率でりんご酢(酸度5%)、リンゴ酸、黒糖、はちみつ、りんご果汁を材料とするアップルビネガードリンクの製造方法;醸造酢(酸度15%)10kg、ぶどう酢(酸度5%)10kg、クエン酸2kg、リンゴ酸1kg、L-アスコルビン酸30kg、乳酸1kg、酒石酸1kg、果糖ぶどう糖液糖10kg、はちみつ5kg、スクラロース0.2kg、ミントエキス0.5kg、ローズマリーエキス0.1kg、食物繊維10kg、食塩7kgを配合し、酢酸0.2w/v%、酢酸エチル50ppm、アセトアルデヒド50ppm、2-ブタノン2,000ppb、3-メチルブタナール1,000ppb、プロピオン酸ブチル50,000ppb、酢酸イソアミル10,000ppbとなるように調整されたビネガーウォーター(無果汁)の製造方法及びこれと同じ比率で醸造酢(酸度15%)、ぶどう酢(酸度5%)、クエン酸、リンゴ酸、Lーアスコルビン酸、乳酸、酒石酸、果糖ぶどう糖液糖、はちみつ、スクラロース、ミントエキス、ローズマリーエキス、食物繊維、食塩を材料とするビネガーウォーター(無果汁)の製造方法;を除く)。
【請求項11】
0.02(w/v%)以上の酢酸を含有する酢酸含有組成物に、(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドより選択される少なくとも1種の成分を添加する工程を含む、酢酸含有組成物の酢酸臭を抑制する方法であって、該酢酸の含有量に対する(A)2-オクテナールの含有量の比率(2-オクテナール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500となるように、(B)(+)ローズオキシドの含有量の比率(2-オクテナール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500となるように添加する、上記方法。
【請求項12】
前記成分が、(A)2-オクテナールと(B)(+)ローズオキシドである場合、さらに(C)1,8-シネオールを添加し、酢酸の含有量に対する(C)1,8-シネオールの含有量の比率(1,8-シネオール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500となるように添加する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
0.02(w/v%)以上の酢酸と、(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドより選択される少なくとも1種の成分を含む、酢酸含有組成物であって、
該酢酸の含有量に対する(A)2-オクテナールの含有量の比率(2-オクテナール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500であり、(B)(+)ローズオキシドの含有量の比率(ローズオキシド(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500であり、
該酢酸含有組成物中の(B)(+)ローズオキシドの含有量が、0.001ppb以上1000ppb以下であり、
該(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドがハーブ類の抽出物に由来し、かつ
該酢酸含有組成物が、飲食品である、上記酢酸含有組成物。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和4年9月12日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許発明1、3ないし7、10及び11における(A)成分、(B)成分の関係が不明確である点について
本件特許発明1の規定は、前半と後半で相互に明らかな矛盾を来たしており、例えば後半部分の規定を、(A)成分を含む場合には2-オクテナール(ppb)/酢酸(w/v%)が0.0005~500、(B)成分を含む場合にはローズオキシド(ppb)/酢酸(w/v%)が0.0005~500という趣旨のように解釈すれば矛盾はないが、その文言上やや無理のある読み方であり、このような解釈が自明とは認められない。
そして上記のことは、本件特許発明1を引用する本件特許発明3ないし7、並びに本件特許発明1と同様の矛盾を含む規定がなされている本件特許発明10及び11においても当て嵌まる。
(2)(B)成分におけるシス・トランス異性体の区別が不明確である点について
本件特許発明に関し、(B)成分としてどのような異性体化合物を用いた場合に、これらの特許に抵触するか否か判断が出来ず、過度な抑止効果を生むことになるから、(B)成分に係る構成に関しても。第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であり、明確性要件違反として取消を免れない。
2 申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許明細書に記載の実施例が本件発明のサポートとなり得ないことについて
本件特許明細書の実施例は官能評価の手法は、知財高裁平28(行ケ)第10147号(伊藤園トマトジュース事件)判決の趣旨に照らし明らかに不適切であり、また、その評価結果も、一貫性がなく信憑性の乏しいものであるから、このような不適切な官能試験により、本件特許発明がサポート要件を充足すると言えないことは明らかである。
(2)酢酸濃度に関して本件特許発明の数値範囲にまでその作用効果を一般化・抽象化出来ないこと
本件特許明細書においては、表1ないし3において、酢酸を4(w/v)%の割合で含有する酢酸含有組成物についての試験並びにその酢酸臭抑制効果に関する試験結果がそれぞれ記載されているのみで、酢酸濃度0.02%以上の他の態様において何ら検証がされていない。
本件特許明細書で香気成分による酢酸臭抑制効果の実験データが示されているのは、あくまでも酢酸濃度が4(w/v)%の場合のみであるから、酢酸濃度がそれ以外の場合には、仮にA~C成分によって酢酸臭の抑制が可能であるとしても、その酢酸濃度によって適当なA~C成分の濃度範囲(香気成分と酢酸の比率)は大きく違ってくることが容易に想像できることから、この場合において「(A)2-オクテナールの含有量の比率(2-オクテナール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500」「(B)(+)ローズオキシドの含有量の比率(ローズオキシド(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500」「(C)1,8-シネオールの含有量の比率(1,8-シネオール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500」というパラメータが、その課題解決手段としての技術的意味を有するとは到底考えられない。
以上より、酢酸濃度並びに各香気成分と酢酸濃度との比率に関し、(仮に、本件特許明細書により、酢酸濃度が4(w/v)%の場合にその効果が認められるとしても)本件特許発明の範囲にまでその効果を一般化・抽象化することは出来ず、それらの数式が示す範囲と得られる効果との関係の技術的な意味が、具体例の開示がなくとも当業者に理解できる程度に記載されているとも、当該数式が示す範囲内であれば、所望の効果が得られると当業者において認識できる程度に具体例を開示して記載されているとも認められない。
(3)本件特許明細書の実施例においてエタノールを含まない態様について検証されていないこと
甲第14号証(特開2020-000184号公報)には、酸臭の低減された水中油型乳化酸性調味料について記載があり(【0001】)、エタノールを特定量含有することにより、酸臭(刺激臭)が低減される旨について記載があり、エタノールを食品に特定量含むことで酸臭が低減されることは公知技術と言える。そうである以上、これらの実施例において無視できない量(香気成分の995倍)、各香気成分の量に比例して含まれているエタノールが、酢酸臭の抑制に寄与していることが合理的に予測され、少なくとも本件特許明細書においてエタノールを含まない実施例が存在しない以上、ここで示されている酢酸臭の抑制効果が、各香気成分によって示されているのか、エタノールによって示されているのか全く不明という他ない。
仮に、本件特許明細書により、その効果が認められるとしても、エタノールを必須の解決手段として規定していない本件特許発明の範囲にまで、その効果を一般化・抽象化することは出来ず、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとも認められない。
(4)A成分とB成分との関係について
本件特許発明1、3ないし7、10及び11におけるA成分、B成分の関係に関し、A成分、B成分のいずれか一方を含んでいれば良いと解した場合には、その技術的課題を解決できると認識できない態様を明らかに含むことになる。
3 申立理由3(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・上記1及び2で指摘したのと同様の点。
4 申立理由4(甲第1号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、3、6、8、10及び11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、6、8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(甲第2号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、3、6、8、10及び11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、6、8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 申立理由6(甲第3号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、3、6、8、10及び11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、6、8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
7 申立理由7(甲第4号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、3、6、8、10及び11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第4号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、6、8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
8 申立理由8(甲第5号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、3、4、6、8、10及び11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第5号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、4、6、8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
9 申立理由9(甲第6号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、3、4、6、8、10及び11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第6号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、4、6、8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
10 申立理由10(甲第7号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、3、5、6、8、10及び11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第7号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、5、6、8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
11 申立理由11(甲第8号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、3、5、6、8、10及び11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第8号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第8号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、5、6、8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
12 申立理由12(甲第9号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし6及び8ないし12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第9号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第9号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし6及び8ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
13 申立理由13(甲第10号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、3、5、6、8、10及び11は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第10号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第10号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、5、6、8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
14 証拠方法
甲第1号証:クックパッド「酢トマト」、https://cookpad.com/recipe/5727258、2019年10月25日(公開日)、2020年8月31日(更新)
甲第2号証:Rakutenレシピ「スイカとお酢のジュース」、https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1930014633/、2018年8月23日(公開日)
甲第3号証:クックパッド「すもも酢」、https://cookpad.com/recipe/5716411、2019年7月9日(公開日・更新日)
甲第4号証:朝時間.jp 「マンゴービネガードリンク」、https://asajikan.jp/article/169754、2019年7月30日(公開日)
甲第5号証:レシピプログ「お酢でさっぱり☆トマトのコンポート」、https://www.recipe-blog.jp/profile/9783/recipe/4695、2019年11月5日(レシピ公開日)
甲第6号証:Rakutenレシピ「リンゴ酢ワイン」、https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1280007696/、2016年7月17日(レシピ公開日)
甲第7号証:Rakutenレシピ「フルーツビネガー★ミニトマト」、https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1550006574/、2013年6月11日(レシピ公開日)
甲第8号証:クックパッド「ごくごく飲める リンゴのビネガーウォーター」、https://cookpad.com/recipe/5154445、2018年7月5日(レシピ公開日・更新日)
甲第9号証:クックパッド「 ワインで大人のトマトマリネ 」、https://cookpad.com/recipe/693822、2008年12月4日(レシピ公開日・更新日)
甲第10号証:特許第6792251号公報
甲第11-1号証:CAS Common Chemistry、https://commonchemistry.cas.org/detail?cas_rn=16409-43-1&search=rose%20oxide、2022年9月9日(出力日)
甲第11-2号証:東京化成工業株式会社のホームページ、https://www.tcichemicals.com/JP/ja/p/M2363、2022年9月9日(出力日)
甲第12号証:2018年7月1日時点でのウィキペディアでの「やや」の意味、https://ja.wiktionary.org/w/index.php?title=%E3%82%84%E3%82%84&oldid=1178023、2018年7月1日(最終更新日)
甲第13号証:エコニュース「感覚量と刺激量」、http://www.econixe.co.jp/econews/detai1.php?id=325、2019年9月1日(公開日)
甲第14号証:特開2020-184号公報
甲第15号証:「軽量スプーン・軽量カップによる重量表」、https://www.benricho.org/doryoko_cup_spoon/、2022年9月9日(出力日)
甲第16号証:株式会社ミツカン社のホームページ、「お酢の種類」、https://www.mizkan.co.jp/osu-information/osu/kind.html、2022年9月9日(出力日)
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甲第19号証:特開2019-129806号公報
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甲第24号証:「The impact of vertilation during postharvest ripening on the development of flavor compounds and sensory quality of mangos」(Mangifera indica L.)cv.Kent」(Thomas B. Lehner,2020,6,1-10)、2020年3月13日(オンライン掲載日)
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甲第26号証:「Analysis of terpenes in white wines using SPE-SPME-GC/MS approach」 Analytica Chimica Acta (Mariusz Dziadas,Henryk H.Jelen.2010,677,7,43-49)、2010年7月3日(オンライン掲載日)
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甲第28号証:「Effects of supercritical CO2 and N2O pasteurisation on the quality of fresh apple juice」(Flavia Gasperi. Food Chem,115(2009)129-136)、2008年11月25日(オンライン掲載日)
甲第29号証:「Aroma composition of Red Wines by Different Extraction Methods and Gas Chromatography-SIM/Mass Spectrometry Analysis」(Annali Di Chimica,ACADEMICA2005,95,383-394)、2005年
甲第30号証:「Characterization of the most aroma-active compounds in cherry tomato by application of the aroma extract dilution analysis」(Serkan Selli, Food Chem,165(2014)540-546)、2014年6月4日(オンライン掲載日)
甲第31号証:「Evaluation of three headspace sorptive extraction coatings for the determination of volatile terpenes in honey using gas chromatography-mass spectrometry」(J.I.Cacho.Journal of Chromatography A,1399(2015)、2015年4月28日(オンライン掲載日)
甲第32号証:https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB2853653.htm、2022年9月9日(出力日)
甲第33号証:「塩少々」は何グラム?「ひとつまみ」は何グラム?、https://saruwakakun.com/life/food/syosyo-hitotumami、2018年5月9日(掲載日)
甲第34号証:「Phytochemical Profiling of Flavonoids,Phenolic Acids,Terpenoids, and Volatile Fraction of a Rosemary(Rosmarinus Officinalis L.)Extract」,Molecules,2016年,21(11),1-15)、2016年11月19日(発行日)
甲第35号証:2021年6月6日当時のウィキペディアにおける「果実酒」のウェブページ(https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E6%9E%9C%E5%AE%9F%E9%85%92&oldid=83900168)
甲第36号証:「食環境におけるキラリティー」(https://www3.chubu.ac.jp/faculty/yamamoto_atsushi/column/chirality/)
甲第37号証:「天然香料成分のキラリティーとその成り立ち」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/54/11/54_KJ00007744865/_pdf/-char/ja)
甲第37号証の2:甲第37号証の発行年月日に関するJ-STAGEのウェブページ(https://www.jstage.jst.go.jp/article/kakyoshi/54/11/54_KJ00007744865/_article/-char/ja)
甲第38号証:日本香料工学会ホームページ「香料の化学」(アーカイブ)(https://web.archive.org/web/20191129014651/https://www.jffma-jp.org/about/science.html)
甲第39号証:「飲み物を割る時の黄金比いろいろ」(アーカイブ)(https://web.archive.org/web/20111006190943/http://tuitui.jp/2011/08/c05-ougonhi.html)
甲第40号証:S&B社のウェブページ(アーカイブ)(https://web.archive.org/web/20170520082112/https://www.sbcurry.com/recipe/standard01/)
甲第41号証:「料理レシピが「少々」「適量」とあいまいに書くのはなぜ?実際の分量は?」(アーカイブ)(https://web.archive.org/web/20200927074126/https://otonanswer.jp/post/67237/)
なお、甲第35ないし41号証は、令和5年3月29日に提出された意見書に添付されたものである。
証拠の表記は、特許異議申立書及び上記意見書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。また、摘記に際し、ハートマークや音符記号等はスペースで代用した。
第5 取消理由(決定の予告)の概要
令和5年4月28日付けで通知された取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要はおおむね次のとおりである。
1 取消理由2(甲1を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、3及び10は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由2は、申立理由4のうち本件特許発明1、3及び10に対する理由とおおむね同旨である。
2 取消理由3(甲2を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、3及び10は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由3は、申立理由5のうち本件特許発明1、3及び10に対する理由とおおむね同旨である。
3 取消理由4(甲4を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、3及び10は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲4に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由4は、申立理由7のうち本件特許発明1、3及び10に対する理由とおおむね同旨である。
4 取消理由5(甲6を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、3及び10は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲6に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲6に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由5は、申立理由9のうち本件特許発明1、3及び10に対する理由とおおむね同旨である。
5 取消理由6(甲8を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、3、5及び10は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲8に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲8に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、5及び10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由6は、申立理由11のうち本件特許発明1、3、5及び10に対する理由とおおむね同旨である。
6 取消理由7(甲9を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1ないし3、5、10及び12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲9に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲9に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3、5、10及び12に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由7は、申立理由12のうち本件特許発明1ないし3、5、10及び12に対する理由とおおむね同旨である。
7 取消理由8(甲10を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許発明1、3、5及び10は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲10に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲10に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、5及び10に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
なお、該取消理由8は、申立理由13のうち本件特許発明1、3、5及び10に対する理由とおおむね同旨である。
第6 当審の判断
まず、取消理由(決定の予告)で指摘した取消理由について判断し、その後、取消理由(決定の予告)で採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について判断する。なお、取消理由(決定の予告)で指摘した取消理由と同じ証拠を主引用例とする申立理由については、該取消理由と併せて判断する。また、本件特許発明13は、本件訂正前の請求項1を直接引用する請求項4に係る発明をさらに減縮した発明に相当するから、本件特許発明4に対する申立ての理由を判断する際に併せて判断する。
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1にはおおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001403647000001.jpg]
」(第1ページ)
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲1発明1>
「トマト2個(約300g)、米酢1/2カップ、水1/2カップを材料とする酢トマト又はこれと同じ比率でトマト、米酢、水を材料とする酢トマト。」
<甲1発明2>
「トマト2個(約300g)、米酢1/2カップ、水1/2カップを材料とする酢トマト又はこれと同じ比率でトマト、米酢、水を材料とする酢トマトの製造方法。」
(2)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2にはおおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001403647000002.jpg]
[図:0001403647000003.jpg]
」(第1及び2ページ)
イ 甲2に記載された発明
甲2に記載された事項を整理すると、甲2には次の発明(以下、順に「甲2発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲2発明1>
「スイカ100g、砂糖小さじ1、お酢大さじ1、氷3個を材料とするスイカとお酢のジュース又はこれと同じ比率でスイカ、砂糖、お酢、氷を材料とするスイカとお酢のジュース。」
<甲2発明2>
「スイカ100g、砂糖小さじ1、お酢大さじ1、氷3個を材料とするスイカとお酢のジュース又はこれと同じ比率でスイカ、砂糖、お酢、氷を材料とするスイカとお酢のジュースの製造方法。」
(3)甲4に記載された事項等
ア 甲4に記載された事項
甲4にはおおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001403647000004.jpg]
[図:0001403647000005.jpg]
」(第2及び3ページ)
イ 甲4に記載された発明
甲4に記載された事項を整理すると、甲4には次の発明(以下、順に「甲4発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲4発明1>
「冷凍マンゴー150g、砂糖150g、酢150mlを材料とするマンゴービネガードリンク又はこれと同じ比率で冷凍マンゴー、砂糖、酢を材料とするマンゴービネガードリンク。」
<甲4発明2>
「冷凍マンゴー150g、砂糖150g、酢150mlを材料とするマンゴービネガードリンク又はこれと同じ比率で冷凍マンゴー、砂糖、酢を材料とするマンゴービネガードリンクの製造方法。」
(4)甲6に記載された事項等
ア 甲6に記載された事項
甲6にはおおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001403647000006.jpg]
」(第1ページ)
イ 甲6に記載された発明
甲6に記載された事項を整理すると、甲6には次の発明(以下、順に「甲6発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲6発明1>
「赤ワイン200ml、リンゴ100%ジュース100ml、酢大1を材料とするリンゴ酢ワイン又はこれと同じ比率で赤ワイン、リンゴ100%ジュース、酢を材料とするリンゴ酢ワイン。」
<甲6発明2>
「赤ワイン200ml、リンゴ100%ジュース100ml、酢大1を材料とするリンゴ酢ワイン又はこれと同じ比率で赤ワイン、リンゴ100%ジュース、酢を材料とするリンゴ酢ワインの製造方法。」
(5)甲8に記載された事項等
ア 甲8に記載された事項
甲8にはおおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001403647000007.jpg]
」(第1ページ)
イ 甲8に記載された発明
甲8に記載された事項を整理すると、甲8には次の発明(以下、順に「甲8発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲8発明1>
「穀物酢小さじ1(約7g)、はちみつ大さじ1(約20g)、100%リンゴジュース小さじ4(約28g)、ミネラルウォーター150g、天然塩1つまみを材料とする林檎のビネガーウォーター又はこれと同じ比率で穀物酢、はちみつ、100%リンゴジュース、ミネラルウォーター、天然塩を材料とする林檎のビネガーウォーター。」
<甲8発明2>
「穀物酢小さじ1(約7g)、はちみつ大さじ1(約20g)、100%リンゴジュース小さじ4(約28g)、ミネラルウォーター150g、天然塩1つまみを材料とする林檎のビネガーウォーター又はこれと同じ比率で穀物酢、はちみつ、100%リンゴジュース、ミネラルウォーター、天然塩を材料とする林檎のビネガーウォーターの製造方法。」
(6)甲9に記載された事項等
ア 甲9に記載された事項
甲9にはおおむね次の事項が記載されている。
・「
[図:0001403647000008.jpg]
」(第1ページ)
イ 甲9に記載された発明
甲9に記載された事項を整理すると、甲9には次の発明(以下、順に「甲9発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲9発明1>
「トマト2個、白ワイン50cc、お酢50cc、はちみつ大さじ1を材料とするトマトマリネ又はこれと同じ比率でトマト、白ワイン、お酢、はちみつを材料とするトマトマリネ。」
<甲9発明2>
「トマト2個、白ワイン50cc、お酢50cc、はちみつ大さじ1を材料とするトマトマリネ又はこれと同じ比率でトマト、白ワイン、お酢、はちみつを材料とするトマトマリネの製造方法。」
(7)甲10に記載された事項等
ア 甲10に記載された事項
甲10には、「酢酸含有飲食品」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸含有飲食品等に関する。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、酢酸臭及び/又は刺激臭(好ましくはその両方)が抑制された酢酸含有飲食品を提供することを課題とする。」
・「【0096】
試験例2.風味評価試験2
表7~8に示す組成に従って原料を配合し、酢酸、酢酸エチル、アセトアルデヒド、及びA~D成分(試験例1と同じものを使用した。)を表9~10に記載の含有量となるように適宜添加して、飲料(比較例1及び実施例58~71)を調製した。なお、実施例67の野菜938kgの内訳は次の通りである:トマトジュース400、ニンジン300、セロリ55、キャベツ50、パプリカ50、かぼちゃ40、ビーツ20、枝豆10、大根5、ショウガ4、及びネギ4。
・・・(略)・・・
【0105】
飲料の酢酸臭、刺激臭(酢酸エチル臭、アセトアルデヒド臭)、及びボディ感(水っぽさが弱く、味の厚みやコクが感じられること)を、試験例1同様、味や香りに関する判定能力が一定の試験により担保された専門パネラー10名に評価させた。各飲料について、下記評価基準に従って評点を付けてもらい、その平均点を算出した。
【0106】
なお、評価は具体的には次のようにして行った。中身色が見えないよう着色された官能検査用のグラスに飲料を10ml入れたものに、シャーレなどでフタをした。この状態でグラスを数回回してからフタをあけて臭いをかぎ、酢酸臭及び刺激臭を評価し、また、飲料を口に含み、ボディ感を評価した。鼻腔から香りが消えたら次のサンプル評価を行った。また、飲料を口に含んだ後は、水を口に含み、口内における風味を十分に消した後、次のサンプル評価を行った
【0107】
酢酸臭評価基準
1:酢酸臭を強く感じる。
2:酢酸臭をやや強く感じる。
3:酢酸臭を感じる。
4:酢酸臭をやや感じる。
5:酢酸臭が感じられない。
【0108】
刺激臭評価基準
1:刺激臭を強く感じる。
2:刺激臭をやや強く感じる。
3:刺激臭を感じる。
4:刺激臭をやや感じる。
5:刺激臭が感じられない。
【0109】
ボディ感評価基準
1:ボディ感が弱く、水っぽさを非常に強く感じる。
2:ボディ感がやや弱く、水っぽさを強く感じる。
3:ボディ感はあるが、水っぽさを感じる。
4:ボディ感が強く、水っぽさをほとんど感じない。
5:ボディ感が非常に強く、水っぽさを感じない。
さらに、上記評価項目の平均値に基づいて、下記評価基準に従って総合評価した:
【0110】
総合評価
◎:全項目の平均値が4.5以上。
○:全項目の平均値が4以上4.5未満。
△:全項目の平均値が3以上4未満。
×:全項目の平均値が3未満。
【0111】
結果を表9~10に示す。
【表7】
[図:0001403647000009.jpg]
【表8】
[図:0001403647000010.jpg]
【表9】
[図:0001403647000011.jpg]
【表10】
[図:0001403647000012.jpg]
」
イ 甲10に記載された発明
甲10に記載された事項を、特に実施例59及び70に関して整理すると、甲10には次の発明(以下、順に「甲10実施例59発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲10実施例59発明1>
「【表7】及び【表9】において、実施例59として記載されたアップルビネガードリンク又はこれと同じ比率でりんご酢(酸度5%)、リンゴ酸、黒糖、はちみつ、りんご果汁を材料とするアップルビネガードリンク。」(当審注:【表7】、【表9】及び実施例59については、上記ア参照。以下、同様。)
<甲10実施例59発明2>
「【表7】及び【表9】において、実施例59として記載されたアップルビネガードリンク又はこれと同じ比率でりんご酢(酸度5%)、リンゴ酸、黒糖、はちみつ、りんご果汁を材料とするアップルビネガードリンクの製造方法。」
<甲10実施例70発明1>
「【表8】及び【表10】において、実施例70として記載されたビネガーウォーター(無果汁)又はこれと同じ比率で醸造酢(酸度15%)、ぶどう酢(酸度5%)、クエン酸、リンゴ酸、L-アスコルビン酸、乳酸、酒石酸、果糖ぶどう糖液糖、はちみつ、スクラロース、ミントエキス、ローズマリーエキス、食物繊維、食塩を材料とするビネガーウォーター(無果汁)。」(当審注:【表8】、【表10】及び実施例70については、上記ア参照。以下、同様。)
<甲10実施例70発明2>
「【表8】及び【表10】において、実施例70として記載されたビネガーウォーター(無果汁)又はこれと同じ比率で醸造酢(酸度15%)、ぶどう酢(酸度5%)、クエン酸、リンゴ酸、L-アスコルビン酸、乳酸、酒石酸、果糖ぶどう糖液糖、はちみつ、スクラロース、ミントエキス、ローズマリーエキス、食物繊維、食塩を材料とするビネガーウォーター(無果汁)の製造方法。」
2 取消理由2(甲1を主引用例とする新規性・進歩性)及び申立理由4(甲1を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明1を対比する。
本件特許発明1から甲1発明1は除かれているから、本件特許発明1は甲1発明1であるとはいえない。
また、甲1及び他の証拠には、甲1発明1において、甲1発明1以外のものとする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明1の奏する「酢酸を含有する飲食品や洗浄剤などの酢酸含有組成物における酢酸臭を抑制することができる。」(本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0009】)という効果(以下、「本件特許発明1の効果」という。)を予測させる記載もないから、本件特許発明1は甲1発明1並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、本件特許発明3は甲1発明1であるとはいえないし、甲1発明1並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲1発明1を対比する。
「(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシド」(以下、「成分(A)及び(B)」ということがある。)の由来が、本件特許発明6においては「ハーブ類(ただしローズマリーを除く)」と特定されているのに対して、甲1発明1においては「トマト」である点で少なくとも両者は相違する。
したがって、本件特許発明6は甲1発明1であるとはいえない。
また、甲1及び他の証拠には、甲1発明1において、「成分(A)及び(B)」の由来を「ハーブ類(ただしローズマリーを除く)」とする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明6の奏する「酢酸を含有する飲食品や洗浄剤などの酢酸含有組成物における酢酸臭を抑制することができる。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0009】)という効果(以下、「本件特許発明6の効果」という。)を予測させる記載もないから、本件特許発明6は甲1発明1並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明10について
本件特許発明10と甲1発明2を対比する。
本件特許発明10から甲1発明2は除かれているから、本件特許発明10は甲1発明2であるとはいえない。
また、甲1及び他の証拠には、甲1発明2において、甲1発明2以外のものとする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明10の奏する「酢酸を含有する飲食品や洗浄剤などの酢酸含有組成物における酢酸臭を抑制することができる。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0009】)という効果(以下、「本件特許発明10の効果」という。)を予測させる記載もないから、本件特許発明10は甲1発明2並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明8及び11について
甲1には、酢酸臭をマスキングすることや酢酸臭を抑制することは記載されていないから、甲1に記載された事項から、本件特許発明8及び11と対比・判断可能な発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明8及び11は甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)取消理由2及び申立理由4についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3、6、8、10及び11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3、6、8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由2及び申立理由4によっては取り消すことはできない。
3 取消理由3(甲2を主引用例とする新規性・進歩性)及び申立理由5(甲2を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明1を対比する。
本件特許発明1から甲2発明1は除かれているから、本件特許発明1は甲2発明1であるとはいえない。
また、甲2及び他の証拠には、甲2発明1において、甲2発明1以外のものとする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明1の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明1は甲2発明1並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、本件特許発明3は甲2発明1であるとはいえないし、甲2発明1並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲2発明1を対比する。
「成分(A)及び(B)」の由来が、本件特許発明6においては「ハーブ類(ただしローズマリーを除く)」と特定されているのに対して、甲2発明1においては「スイカ」である点で少なくとも両者は相違する。
したがって、本件特許発明6は甲2発明1であるとはいえない。
また、甲2及び他の証拠には、甲2発明1において、成分(A)及び(B)の由来を「ハーブ類(ただしローズマリーを除く)」とする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明6の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明6は甲2発明1並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明10について
本件特許発明10と甲2発明2を対比する。
本件特許発明10から甲2発明2は除かれているから、本件特許発明10は甲2発明2であるとはいえない。
また、甲2及び他の証拠には、甲2発明2において、甲2発明2以外のものとする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明10の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明10は甲2発明2並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明8及び11について
甲2には、酢酸臭をマスキングすることや酢酸臭を抑制することは記載されていないから、甲2に記載された事項から、本件特許発明8及び11と対比・判断可能な発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明8及び11は甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)取消理由3及び申立理由5についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3、6、8、10及び11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3、6、8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由3及び申立理由5によっては取り消すことはできない。
4 取消理由4(甲4を主引用例とする新規性・進歩性)及び申立理由7(甲4を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4発明1を対比する。
本件特許発明1から甲4発明1は除かれているから、本件特許発明1は甲4発明1であるとはいえない。
また、甲4及び他の証拠には、甲4発明1において、甲4発明1以外のものとする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明1の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明1は甲4発明1並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、本件特許発明3は甲4発明1であるとはいえないし、甲4発明1並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲4発明1を対比する。
「成分(A)及び(B)」の由来が、本件特許発明6においては「ハーブ類(ただしローズマリーを除く)」と特定されているのに対して、甲4発明1においては「マンゴー」である点で少なくとも両者は相違する。
したがって、本件特許発明6は甲4発明1であるとはいえない。
また、甲4及び他の証拠には、甲4発明1において、「成分(A)及び(B)」の由来を「ハーブ類(ただしローズマリーを除く)」とする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明6の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明6は甲4発明1並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明10について
本件特許発明10と甲4発明2を対比する。
本件特許発明10から甲4発明2は除かれているから、本件特許発明10は甲4発明2であるとはいえない。
また、甲4及び他の証拠には、甲4発明2において、甲4発明2以外のものとする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明10の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明10は甲4発明2並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明8及び11について
甲4には、酢酸臭をマスキングすることや酢酸臭を抑制することは記載されていないから、甲4に記載された事項から、本件特許発明8及び11と対比・判断可能な発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明8及び11は、甲4に記載された発明であるとはいえないし、甲4に記載された発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)取消理由4及び申立理由7についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3、6、8、10及び11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3、6、8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由4及び申立理由7によっては取り消すことはできない。
5 取消理由5(甲6を主引用例とする新規性・進歩性)及び申立理由9(甲6を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲6発明1を対比する。
本件特許発明1から甲6発明1は除かれているから、本件特許発明1は甲6発明1であるとはいえない。
また、甲6及び他の証拠には、甲6発明1において、甲6発明1以外のものとする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明1の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明1は甲6発明1並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、本件特許発明3は甲6発明1であるとはいえないし、甲6発明1並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明4について
本件特許発明4と甲6発明1を対比する。
本件特許発明4においては「果実酒を含まない」と特定されているのに対して、甲6発明1においては「赤ワイン」を材料とすることが特定されている点で両者は相違する。
したがって、本件特許発明4は甲6発明1であるとはいえない。
また、甲6及び他の証拠には、甲6発明1において、「果実酒を含まない」ものとする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明4の奏する「酢酸を含有する飲食品や洗浄剤などの酢酸含有組成物における酢酸臭を抑制することができる。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0009】)という効果(以下、「本件特許発明4」の効果という。)を予測させる記載もないから、本件特許発明4は甲6発明1並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲6発明1を対比する。
「成分(A)及び(B)」の由来が、本件特許発明6においては「ハーブ類(ただしローズマリーを除く)」と特定されているのに対して、甲6発明1においては「赤ワイン」及び「リンゴ100%ジュース」である点で少なくとも両者は相違する。
したがって、本件特許発明6は甲6発明1であるとはいえない。
また、甲6及び他の証拠には、甲6発明1において、「成分(A)及び(B)」の由来を「ハーブ類(ただしローズマリーを除く)」とする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明6の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明6は甲6発明1並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明10について
本件特許発明10と甲6発明2を対比する。
本件特許発明10から甲6発明2は除かれているから、本件特許発明10は甲6発明2であるとはいえない。
また、甲6及び他の証拠には、甲6発明2において、甲6発明2以外のものとする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明10の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明10は甲6発明2並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)本件特許発明8及び11について
甲6には、酢酸臭をマスキングすることや酢酸臭を抑制することは記載されていないから、甲6に記載された事項から、本件特許発明8及び11と対比・判断可能な発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明8及び11は、甲6に記載された発明であるとはいえないし、甲6に記載された発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(7)本件特許発明13について
本件特許発明13と甲6発明1を対比する。
「成分(A)及び(B)」の由来が、本件特許発明13においては「ハーブ類」と特定されているのに対して、甲6発明1においては「赤ワイン」及び「リンゴ100%ジュース」である点で少なくとも両者は相違する。
したがって、本件特許発明13は甲6発明1であるとはいえない。
また、甲6及び他の証拠には、甲6発明1において、「成分(A)及び(B)」の由来を「ハーブ類」とする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明13の奏する「酢酸を含有する飲食品や洗浄剤などの酢酸含有組成物における酢酸臭を抑制することができる。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0009】)という効果(以下、「本件特許発明13の効果」という。)を予測させる記載もないから、本件特許発明13は甲6発明1並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(8)取消理由5及び申立理由9についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3、4、6、8、10、11及び13は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3、4、6、8、10、11及び13に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由5及び申立理由9によっては取り消すことはできない。
6 取消理由6(甲8を主引用例とする新規性・進歩性)及び申立理由11(甲8を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲8発明1を対比する。
本件特許発明1から甲8発明1は除かれているから、本件特許発明1は甲8発明1であるとはいえない。
また、甲8及び他の証拠には、甲8発明1において、甲8発明1以外のものとする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明1の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明1は甲8発明1並びに甲8及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明3及び5について
本件特許発明3及び5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、本件特許発明3及び5は甲8発明1であるとはいえないし、甲8発明1並びに甲8及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲8発明1を対比する。
「成分(A)及び(B)」の由来が、本件特許発明6においては「ハーブ類(ただしローズマリーを除く)」と特定されているのに対して、甲8発明1においては「リンゴジュース」である点で少なくとも両者は相違する。
したがって、本件特許発明6は甲8発明1であるとはいえない。
また、甲8及び他の証拠には、甲8発明1において、「成分(A)及び(B)」の由来を「ハーブ類(ただしローズマリーを除く)」とする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明6の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明6は甲8発明1並びに甲8及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明10について
本件特許発明10と甲8発明2を対比する。
本件特許発明10から甲8発明2は除かれているから、本件特許発明10は甲8発明2であるとはいえない。
また、甲8及び他の証拠には、甲8発明2において、甲8発明2以外のものとする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明10の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明10は甲8発明2並びに甲8及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明8及び11について
甲8には、酢酸臭をマスキングすることや酢酸臭を抑制することは記載されていないから、甲8に記載された事項から、本件特許発明8及び11と対比・判断可能な発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明8及び11は甲8に記載された発明であるとはいえないし、甲8に記載された発明並びに甲8及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)取消理由6及び申立理由11についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3、5、6、8、10及び11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3、5、6、8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由6及び申立理由11によっては取り消すことはできない。
7 取消理由7(甲9を主引用例とする新規性・進歩性)及び申立理由12(甲9を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲9発明1を対比する。
本件特許発明1から甲9発明1は除かれているから、本件特許発明1は甲9発明1であるとはいえない。
また、甲9及び他の証拠には、甲9発明1において、甲9発明1以外のものとする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明1の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明1は甲9発明1並びに甲9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明2、3及び5について
本件特許発明2、3及び5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、本件特許発明2、3及び5は甲9発明1であるとはいえないし、甲9発明1並びに甲9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明4について
本件特許発明4と甲9発明1を対比する。
本件特許発明4においては「果実酒を含まない」と特定されているのに対して、甲9発明1においては「白ワイン」を材料とすることが特定されている点で少なくとも両者は相違する。
したがって、本件特許発明4は甲9発明1であるとはいえない。
また、甲9及び他の証拠には、甲9発明1において、「果実酒を含まない」ものとする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明4の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明4は甲9発明1並びに甲9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲9発明1を対比する。
「成分(A)及び(B)」の由来が、本件特許発明6においては「ハーブ類(ただしローズマリーを除く)」と特定されているのに対して、甲9発明1においては「トマト」及び「白ワイン」である点で少なくとも両者は相違する。
したがって、本件特許発明6は甲9発明1であるとはいえない。
また、甲9及び他の証拠には、甲9発明1において、「成分(A)及び(B)」の由来をハーブ類(ただしローズマリーを除く)とする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明6の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明6は甲9発明1並びに甲9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明10について
本件特許発明10と甲9発明2を対比する。
本件特許発明10から甲9発明2は除かれているから、本件特許発明10は甲9発明2であるとはいえない。
また、甲9及び他の証拠には、甲9発明2において、甲9発明2以外のものとする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明10の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明10は甲9発明2並びに甲9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)本件特許発明8、9及び11について
甲9には、酢酸臭をマスキングすることや酢酸臭を抑制することは記載されていないから、甲9に記載された事項から、本件特許発明8、9及び11と対比・判断可能な発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明8、9及び11は、甲9に記載された発明であるとはいえないし、甲9に記載された発明並びに甲9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(7)本件特許発明12について
本件特許発明12は、請求項10を引用して特定するものであり、本件特許発明10の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明10と同様に、本件特許発明12は甲9発明2であるとはいえないし、甲9発明2並びに甲9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(8)本件特許発明13について
本件特許発明13と甲9発明1を対比する。
成分(A)及び(B)の由来が、本件特許発明12においては「ハーブ類」と特定されているのに対して、甲9発明1においては「トマト」及び「白ワイン」である点で少なくとも両者は相違する。
したがって、本件特許発明13は甲9発明1であるとはいえない。
また、甲6及び他の証拠には、甲9発明1において、成分(A)及び(B)の由来を「ハーブ類」とする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明13の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明13は甲9発明1並びに甲9及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(9)取消理由7及び申立理由12についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし6及び8ないし13は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし6及び8ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由7及び申立理由12によっては取り消すことはできない。
8 取消理由8(甲10を主引用例とする新規性・進歩性)及び申立理由13(甲10を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
本件特許発明1と甲10実施例59発明1又は甲10実施例70発明1を対比する。
本件特許発明1から甲10実施例59発明1又は甲10実施例70発明1は除かれているから、本件特許発明1は甲10実施例59発明1又は甲10実施例70発明1であるとはいえない。
また、甲10及び他の証拠には、甲10実施例59発明1又は甲10実施例70発明1において、甲10実施例59発明1又は甲10実施例70発明1以外のものとする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明1の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明1は甲10実施例59発明1又は甲10実施例70発明1並びに甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)本件特許発明3及び5について
本件特許発明3及び5は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、本件特許発明3及び5は甲10実施例59発明1又は甲10実施例70発明1であるとはいえないし、甲10実施例59発明1又は甲10実施例70発明1並びに甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明6について
本件特許発明6と甲10実施例59発明1又は甲10実施例70発明1を対比する。
「成分(A)及び(B)」の由来が、本件特許発明6においては「ハーブ類(ただしローズマリーを除く)」と特定されているのに対して、甲10実施例59発明1又は甲10実施例70発明1においては「りんご果汁」又は「ローズマリーエキス」である点で少なくとも両者は相違する。
したがって、本件特許発明6は甲10実施例59発明1又は甲10実施例70発明1であるとはいえない。
また、甲10及び他の証拠には、甲10実施例59発明1又は甲10実施例70発明1において、「成分(A)及び(B)」の由来を「ハーブ類(ただしローズマリーを除く)」とする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明6の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明6は甲10実施例59発明1又は甲10実施例70発明1並びに甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4)本件特許発明10について
本件特許発明10と甲10実施例59発明2又は甲10実施例70発明2を対比する。
本件特許発明10から甲10実施例59発明2又は甲10実施例70発明2は除かれているから、本件特許発明10は甲10実施例59発明2又は甲10実施例70発明2であるとはいえない。
また、甲10及び他の証拠には、甲10実施例59発明2又は甲10実施例70発明2において、甲10実施例59発明2又は甲10実施例70発明2以外のものとする動機付けとなる記載はなく、本件特許発明10の効果を予測させる記載もないから、本件特許発明10は甲10実施例59発明2又は甲10実施例70発明2並びに甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明8及び11について
甲10には、酢酸臭をマスキングすることや酢酸臭を抑制することは記載されていないから、甲10に記載された事項から、本件特許発明8及び11と対比・判断可能な発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明8及び11は甲10に記載された発明であるとはいえないし、甲10に記載された発明並びに甲10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)取消理由8及び申立理由13についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3、5、6、8、10及び11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3、5、6、8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由8及び申立理由13によっては取り消すことはできない。
9 申立理由1(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
本件特許の請求項1ないし13の記載は、上記第3のとおりであり、それ自体に不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明の記載とも整合している。
したがって、本件特許発明1ないし13に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の申立理由1における主張について検討するに、次のとおり採用できない。
ア 申立理由1の(1)について
本件特許発明1には、「0.02(w/v%)以上の酢酸と、(A)2-オクテナール及び(B)(+)ローズオキシドより選択される少なくとも1種の成分を含む、酢酸含有組成物」という前半の規定と「該酢酸の含有量に対する(A)2-オクテナールの含有量の比率(2-オクテナール(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500であり、(B)(+)ローズオキシドの含有量の比率(ローズオキシド(ppb)/酢酸(w/v%))が0.0005~500である」という後半の規定があるが、当業者であれば、後半の規定は、(A)成分を含む場合には2-オクテナール(ppb)/酢酸(w/v%)が0.0005~500、(B)成分を含む場合にはローズオキシド(ppb)/酢酸(w/v%)が0.0005~500という趣旨に当然解釈する。
したがって、本件特許発明1の規定は、何ら矛盾を来しているものではなく、特許異議申立人の申立理由1の(1)の主張は採用できない。
イ 申立理由1の(2)について
本件特許発明1における「(B)(+)ローズオキシド」が、(+)で表される旋光性を有する化合物であること、すなわち、4種類の光学異性体のラセミ体のことではなく、4種類の光学異性体のうちの(+)シスローズオキシド又は(+)トランスローズオキシドを含むものであることは、本件特許の発明の詳細な説明の【0017】並びに特許権者が令和5年2月8日に提出した意見書に添付された乙第1号証(https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/product/sial/83915,(+)-ローズオキシド analytical standard |Sigma-Aldrich)、乙第2号証(https://www.sigmaaldrich.com/JP/ja/product/sial/83917,(-)-ローズオキシド analytical standard |Sigma-Aldrich)及び乙第3号証((+)ローズオキシド(シグマアルドリッチ社製:カタログ番号83915-1ML)の分析証明書)から明らかである。
したがって、本件特許発明1における「(B)(+)ローズオキシド」という規定は明確であり、特許異議申立人の申立理由1の(2)の主張は採用できない。
(4)申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由1によっては取り消すことはできない。
10 申立理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
他方、発明の詳細な説明の【0006】によると、本件特許発明1ないし7及び13の解決しようとする課題は「酢酸を含有する飲食品や洗浄剤などの酢酸含有組成物の酢酸臭を抑制する酢酸含有組成物」を提供することであり、本件特許発明8及び9の解決しようとする課題は「酢酸臭マスキング剤」を提供することであり、本件特許発明10及び12の解決しようとする課題は「酢酸を含有する飲食品や洗浄剤などの酢酸含有組成物の酢酸臭を抑制する酢酸含有組成物の製造方法」を提供することであり、本件特許発明11の解決しようとする課題は「酢酸含有組成物の酢酸臭を抑制する方法」を提供すること(以下、総称して「発明の課題」という。)である。
そして、発明の詳細な説明の【0008】、【0012】、【0016】、【0020】及び【0024】には、本件特許発明1ないし13に対応する記載がある。
また、発明の詳細な説明の【0007】には「本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究を進めた結果、(A)2-オクテナール、(B)(+)ローズオキシド、及び(C)1,8-シネオールからなる群より選択される1種又は2種以上の成分を酢酸含有組成物に配合することによって、酢酸含有組成物の酢酸臭を選択的に抑制(マスキング)できることを見出し、本発明を完成するに至った。」と記載されている。
さらに、発明の詳細な説明の【0057】ないし【0074】において、酢酸と、(A)2-オクテナール、(B)(+)ローズオキシド及び(C)1,8-シネオールからなる群より選択される1種又は2種以上の成分を含有する酢酸含有組成物の試験品において、(A)2-オクテナール、(B)(+)ローズオキシド及び(C)1,8-シネオールのいずれも含有しない酢酸含有組成物の試験品よりも酢酸臭が弱くなっていることを確認している。
そうすると、当業者は、「酢酸と、(A)2-オクテナール、(B)(+)ローズオキシド及び(C)1,8-シネオールからなる群より選択される1種又は2種以上の成分を含有する酢酸含有組成物」、「(A)2-オクテナール、(B)(+)ローズオキシド及び(C)1,8-シネオールからなる群より選択される1種又は2種以上の成分を含む、酢酸臭マスキング剤」、該「酢酸含有組成物」の「製造方法」及び「(A)2-オクテナール、(B)(+)ローズオキシド及び(C)1,8-シネオールからなる群より選択される1種又は2種以上の成分を添加する工程を含む、酢酸含有組成物の酢酸臭を抑制する方法」は、発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1ないし7及び13は、上記発明の課題を解決できると認識できる「酢酸含有組成物」をさらに限定したものであり、本件特許発明8及び9は、上記発明の課題を解決できると認識できる「酢酸臭マスキング剤」をさらに限定したものであり、本件特許発明10及び12は、上記発明の課題を解決できると認識できる「酢酸含有組成物」の「製造方法」をさらに限定したものであり、本件特許発明11は、上記発明の課題を解決できると認識できる「酢酸含有組成物の酢酸臭を抑制する方法」をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明1ないし13は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件特許発明1ないし13に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の申立理由2における主張について検討するに、次のとおり採用できない。
ア 申立理由2の(1)について
申立理由2の(1)の主張は、上記(2)の判断を左右するものではなく、採用できない。
イ 申立理由2の(2)について
酢酸濃度が4(w/v)%の場合に酢酸臭抑制効果を奏し、発明の課題を解決できることが確認されている以上、他の酢酸濃度においても、多少は酢酸臭抑制効果を奏し、発明の課題を解決できると当業者は認識する。
また、0.02(w/v%)以上で4(w/v)%以外の酢酸濃度において、発明の課題を解決できないとする証拠が示されている訳ではない。
したがって、特許異議申立人の申立理由2の(2)の主張は採用できない。
ウ 申立理由2の(3)について
エタノールの有無に関わらず、本件特許発明1ないし13が発明の課題を解決できると認識できることは、上記(2)のとおりである。
また、(A)2-オクテナール、(B)(+)ローズオキシド及び(C)1,8-シネオールのいずれか1種又は2種以上を含んでいても、エタノールを含まないものでは、発明の課題を解決できないとする証拠が示されている訳ではない。
したがって、特許異議申立人の申立理由2の(3)の主張は採用できない。
エ 申立理由2の(4)について
発明の課題を解決できると認識できる範囲は、上記(2)のとおりであるから、本件特許発明1、3ないし7、10及び11には、発明の課題を解決できると認識できない態様は含まれない。
したがって、特許異議申立人の申立理由2の(4)の主張は採用できない。
(4)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。
11 申立理由3(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明1ないし9及び13は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用をすることができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明10及び12は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、その方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明11は方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その使用をすることができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
発明の詳細な説明の【0010】ないし【0055】には、本件特許発明1ないし13の各発明特定事項について具体的に記載され、同【0057】ないし【0074】には、本件特許発明1ないし13の実施例について、その製造方法を含め具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明に、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし9及び13を生産し、使用をすることができる程度の記載があるといえ、本件特許発明10及び12の使用をし、それにより生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえ、また、本件特許発明11の使用をすることができる程度の記載があるといえ、本件特許発明1ないし13に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の申立理由3における主張について検討するに、次のとおり採用できない。
特許異議申立人の申立理由3における主張は、本件特許に明確性要件違反及びサポート要件違反があることを前提とするものであるところ、上記9及び10のとおり、本件特許に明確性要件違反及びサポート要件違反はない。
したがって、特許異議申立人の申立理由3における主張は、その前提から誤りであり、採用できない。
なお、本件特許発明1ないし13に関して、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を充足することは、上記(2)のとおりである。
(4)申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由3によっては取り消すことはできない。
12 申立理由6(甲3を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1、3、6、8、10及び11について
本件特許発明1、3、6、10及び11は、いずれも、「酢酸」の含有量に対する「(A)2-オクテナール」及び「(B)(+)ローズオキシド」の含有量の比率を特定する発明であるところ、甲3には、「酢酸」の含有量に対する「(A)2-オクテナール」及び「(B)(+)ローズオキシド」の含有量の比率に関する記載はない。
また、本件特許発明8は、酢酸臭をマスキングすることを特定する発明であるところ、甲3には、酢酸臭をマスキングすることは記載されていない。
したがって、本件特許発明1、3、6、8、10及び11は甲3に記載された発明であるとはいえないし、甲3に記載された発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、甲3に記載された発明は「すもも」を含んでおり、「すもも」の成分を換算すると、「酢酸」の含有量に対する「(A)2-オクテナール」の含有量の比率は、本件特許発明1、3、6、10及び11で特定される「酢酸」の含有量に対する「(A)2-オクテナール」の含有量の比率を満たす旨主張する(特許異議申立書第114ないし116ページ)が、甲3に記載されているのは、「すもも」の果肉を取り出して「すもも酢」としたものであるから、「すもも」の成分が「すもも酢」にどの程度含まれるのか明らかでなく、特許異議申立人の主張するような、「すもも」の成分の換算をすることはできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(3)申立理由6についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3、4、6、8、10及び11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3、4、6、8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由6によっては取り消すことはできない。
13 申立理由8(甲5を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1、3、4、6、8、10、11及び13について
本件特許発明1、3、4、6、10、11及び13は、いずれも、「酢酸」の含有量に対する「(A)2-オクテナール」及び「(B)(+)ローズオキシド」の含有量の比率を特定する発明であるところ、甲5には、「酢酸」の含有量に対する「(A)2-オクテナール」及び「(B)(+)ローズオキシド」の含有量の比率に関する記載はない。
また、本件特許発明8は、酢酸臭をマスキングすることを特定する発明であるところ、甲5には、酢酸臭をマスキングすることは記載されていない。
したがって、本件特許発明1、3、4、6、8、10、11及び13は甲5に記載された発明であるとはいえないし、甲5に記載された発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、甲5に記載された発明は「トマト」と「白ワイン」を含んでおり、それらの成分を換算すると、「酢酸」の含有量に対する「(A)2-オクテナール」及び「(B)(+)ローズオキシド」の含有量の比率は、本件特許発明1、3、4、6、10、11及び13で特定される「酢酸」の含有量に対する「(A)2-オクテナール」の含有量の比率を満たす旨主張する(特許異議申立書第124ないし126ページ)が、甲5に記載されているのは、「トマト」の湯むき並びに沸騰及び加熱を行って「トマトのコンポート」としたものであり、「トマト」や「白ワイン」の成分が「トマトのコンポート」にどの程度含まれるのか明らかでなく、特許異議申立人の主張するような、「トマト」と「白ワイン」の成分の換算をすることはできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(3)申立理由8についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3、4、6、8、10、11及び13は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3、4、6、8、10、11及び13に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由8によっては取り消すことはできない。
14 申立理由10(甲7を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1、3、5、6、8、10及び11について
本件特許発明1、3、5、6、10及び11は、いずれも、「酢酸」の含有量に対する「(A)2-オクテナール」及び「(B)(+)ローズオキシド」の含有量の比率を特定する発明であるところ、甲7には、「酢酸」の含有量に対する「(A)2-オクテナール」及び「(B)(+)ローズオキシド」の含有量の比率に関する記載はない。
また、本件特許発明8は、酢酸臭をマスキングすることを特定する発明であるところ、甲7には、酢酸臭をマスキングすることは記載されていない。
したがって、本件特許発明1、3、5、6、8、10及び11は甲7に記載された発明であるとはいえないし、甲7に記載された発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、甲7に記載された発明は「ミニトマト」を含んでおり、「ミニトマト」の成分を換算すると、「酢酸」の含有量に対する「(A)2-オクテナール」の含有量の比率は、本件特許発明1、3、5、6、10及び11で特定される「酢酸」の含有量に対する「(A)2-オクテナール」の含有量の比率を満たす旨主張する(特許異議申立書第136ないし138ページ)が、甲7に記載されているのは、「ミニトマト」の皮をむいてから沸騰を行って「フルーツビネガーミニトマト」としたものであり、「ミニトマト」の成分が「フルーツビネガーミニトマト」にどの程度含まれるのか明らかでなく、特許異議申立人の主張するような、「ミニトマト」の成分の換算をすることはできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(3)申立理由10についてのむすび
したがって、本件特許発明1、3、5、6、8、10及び11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3、5、6、8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由10によっては取り消すことはできない。
第7 結語
以上のとおり、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700894