特許異議申立
2022-700221
酢酸含有飲食品
- 審判番号
- 2022-700221
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-105525
- 登録番号
- 6936455
- 請求日
- 2022年03月15日
- 審決日
- 2023年03月10日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社Mizkan Holdings
- 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 【権利者】株式会社Mizkan
- 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
- 【異議申立人】森田 弘潤
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 祥吾
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第3項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6936455号発明「酢酸含有飲食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6936455号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし8〕及び9について訂正することを認める。
特許第6936455号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6936455号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし11に係る特許についての出願は、令和2年6月18日の出願であって、令和3年8月31日にその特許権の設定登録(請求項の数11)がされ、同年9月15日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和4年3月15日に特許異議申立人 森田 弘潤(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし11)がされ、同年7月1日付けで取消理由が通知されると共に審尋がされ、同年9月5日に特許権者 株式会社Mizkan Holdings及び株式会社Mizkan(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされると共に意見書及び回答書が提出され、同年同月12日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年10月17日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年12月15日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、令和5年2月16日に訂正請求がされると共に意見書が提出されたものである。
なお、令和4年9月5日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、すでに特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられており、下記第2 1のとおり、令和5年2月16日にされた訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第6ないし8のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となるものであって、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときと判断されるから、特許異議申立人に再度の意見書の提出の機会を与えていない。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和5年2月16日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「酢酸を0.02w/v%以上含有し、
(A1成分)酢酸プロピル、
(A2成分)2メチル酪酸エチル、
(A3成分)酢酸ヘキシル、
(A4成分)酢酸メチル、及び
(A5成分)イソ酪酸エチル
からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.005ppb以上であり、
且つ前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び
(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす
、酢酸含有飲食品。」
と記載されているのを、
「酢酸を0.02w/v%以上含有し、
(A1成分)酢酸プロピル、
(A2成分)2メチル酪酸エチル、
(A3成分)酢酸ヘキシル、
(A4成分)酢酸メチル、及び
(A5成分)イソ酪酸エチル
からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.005ppb以上であり、
前記A2成分、及びA3成分を含有し、
前記A2成分の含有量が30ppb以上であり、
前記A3成分の含有量が100ppb以上であり、
且つ前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び
(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす
、酢酸含有飲食品。」
に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「(要件1a)前記A1成分の含有量が0.05~20000ppbであること、
(要件2a)前記A2成分の含有量が0.01~50000ppbであること、
(要件3a)前記A3成分の含有量が0.01~50000ppbであること、
(要件4a)前記A4成分の含有量が0.1~20000ppbであること、及び
(要件5a)前記A5成分の含有量が0.01~20000ppbであること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす、請求項1に記載の酢酸含有飲食品。」
と記載されているのを、
「酢酸を0.02w/v%以上含有し、
(A1成分)酢酸プロピル、
(A2成分)2メチル酪酸エチル、
(A3成分)酢酸ヘキシル、
(A4成分)酢酸メチル、及び
(A5成分)イソ酪酸エチル
からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.005ppb以上であり、
前記A2成分、及び前記A3成分を含有し、
前記A2成分の含有量が3ppb以上であり、
果汁含有率(ストレート果汁換算)が50質量%以下であり、
且つ前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び
(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たし、
さらに、(要件1a)前記A1成分の含有量が0.05~20000ppbであること、
(要件2a)前記A2成分の含有量が0.01~50000ppbであること、
(要件3a)前記A3成分の含有量が0.01~50000ppbであること、
(要件4a)前記A4成分の含有量が0.1~20000ppbであること、及び
(要件5a)前記A5成分の含有量が0.01~20000ppbであること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす、酢酸含有飲食品。」
に訂正する。併せて、請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3及び5ないし8についても同様に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に
「(要件1b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A1成分の濃度値(ppb)の比(A1成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.12~20000であること、
(要件2b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A2成分の濃度値(ppb)の比(A2成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~50000であること、及び
(要件3b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A3成分の濃度値(ppb)の比(A3成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~50000であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす、請求項1又は2に記載の酢酸含有飲食品。」
と記載されているのを、
「(要件1b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A1成分の濃度値(ppb)の比(A1成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.12~20000であること、
(要件2b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A2成分の濃度値(ppb)の比(A2成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~50000であること、及び
(要件3b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A3成分の濃度値(ppb)の比(A3成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~50000であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす、請求項2に記載の酢酸含有飲食品。」
に訂正する。併せて、請求項3を直接又は間接的に引用する請求項5ないし8についても同様に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に
「前記要件4a及び前記要件5aからなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす、請求項2に記載の酢酸含有飲食品。」
と記載されているのを、
「酢酸を0.02w/v%以上含有し、
(A1成分)酢酸プロピル、
(A2成分)2メチル酪酸エチル、
(A3成分)酢酸ヘキシル、
(A4成分)酢酸メチル、及び
(A5成分)イソ酪酸エチル
からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.005ppb以上であり、
前記A2成分、及び前記A3成分を含有し、
前記A2成分の含有量が3ppb以上であり、
且つ前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び
(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たし、
さらに、(要件1a)前記A1成分の含有量が0.05~20000ppbであること、
(要件2a)前記A2成分の含有量が0.01~50000ppbであること、
(要件3a)前記A3成分の含有量が0.01~50000ppbであること、
(要件4a)前記A4成分の含有量が0.1~20000ppbであること、及び
(要件5a)前記A5成分の含有量が0.01~20000ppbであること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たし、
前記要件4a及び前記要件5aからなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす、酢酸含有飲食品(但し、100%リンゴジュースを200ml容器の1/2、炭酸水を200ml容器の1/4、バルサミコ酢を小さじ 1~、を容器に入れ、混ぜて作られたシードル風ノンアルコール飲料、及び当該飲料と成分組成が同一であるシードル風ノンアルコール飲料、を除く。)。」
に訂正する。併せて、請求項4を直接又は間接的に引用する請求項5ないし8についても同様に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「果汁を含有する、請求項1~4のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。」
と記載されているのを、
「果汁を含有する、請求項2~4のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。」
に訂正する。併せて、請求項5を直接又は間接的に引用する請求項6ないし8についても同様に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項8に
「飲料又は該飲料の調製用組成物である、請求項1~7のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。」
と記載されているのを、
「飲料又は該飲料の調製用組成物である、請求項2~7のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。」
に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9に
「酢酸を含有量が0.02w/v%以上になるように配合すること、並びに(A1成分)酢酸プロピル、(A2成分)2メチル酪酸エチル、(A3成分)酢酸ヘキシル、(A4成分)酢酸メチル、及び(A5成分)イソ酪酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を合計含有量が0.005ppb以上になるように、且つ前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であることからなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たすように配合することを含む、酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減された酢酸含有飲食品の製造方法。」
と記載されているのを、
「酢酸を含有量が0.02w/v%以上になるように配合すること、並びに(A1成分)酢酸プロピル、(A2成分)2メチル酪酸エチル、(A3成分)酢酸ヘキシル、(A4成分)酢酸メチル、及び(A5成分)イソ酪酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を合計含有量が0.005ppb以上になるように、且つ前記A3成分の含有量が100ppb以上になるように、且つ前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であることからなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たすように配合することを含む、酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減された酢酸含有飲食品の製造方法(但し、100%リンゴジュースを200ml容器の1/2、炭酸水を200ml容器の1/4、バルサミコ酢を小さじ 1~、を容器に入れ、混ぜて作られたシードル風ノンアルコール飲料、及び当該飲料と成分組成が同一であるシードル風ノンアルコール飲料の製造方法、を除く。)。」
に訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「A2成分」及び「A3成分」を含有すること並びにそれらの含有量を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2についての訂正について
訂正事項2による請求項2についての訂正は、訂正前の請求項2が請求項1を引用していたのを、請求項1の記載を引用しない独立形式に書き下した上で、「A2成分」及び「A3成分」を含有することを特定し、「A2成分」の含有量を特定し、さらに「果汁含有率(ストレート果汁換算)」を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項2による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)請求項3についての訂正について
訂正事項2による請求項3についての訂正は、請求項2についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
訂正事項3による請求項3についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2及び3による請求項3についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)請求項4についての訂正について
訂正事項4による請求項4についての訂正は、訂正前の請求項4が請求項1を引用する請求項2を引用していたのを、請求項1及び2の記載を引用しない独立形式に書き下した上で、「A2成分」及び「A3成分」を含有することを特定し、「A2成分」の含有量を特定し、さらに特定のシードル風ノンアルコール飲料を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項4による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)請求項5についての訂正について
訂正事項2による請求項5についての訂正は、請求項2についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
訂正事項3による請求項5についての訂正は、請求項3についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4による請求項5についての訂正は、請求項4についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
訂正事項5による請求項5についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2ないし5による請求項5についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)請求項6及び7についての訂正について
訂正事項2による請求項6及び7についての訂正は、請求項2についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
訂正事項3による請求項6及び7についての訂正は、請求項3についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4による請求項6及び7についての訂正は、請求項4についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
訂正事項5による請求項6及び7についての訂正は、請求項5についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし5による請求項6及び7についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)請求項8についての訂正について
訂正事項2による請求項8についての訂正は、請求項2についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
訂正事項3による請求項8についての訂正は、請求項3についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項4による請求項8についての訂正は、請求項4についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
訂正事項5による請求項8についての訂正は、請求項5についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項6による請求項8についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1ないし6による請求項8についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)請求項9についての訂正について
訂正事項7による請求項9についての訂正は、「A3成分」の含有量が所定量となるように配合することを特定し、さらに特定のシードル風ノンアルコール飲料の製造方法を除くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項7による請求項9についての訂正は、願書に添付した明細又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし7による請求項1ないし9についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1又は4号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし7による請求項1ないし9についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし8は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項1ないし6による請求項1ないし8についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、訂正事項7による請求項9についての訂正は、請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第3項の規定に適合する。
さらに、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし11に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし8〕及び9について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
酢酸を0.02w/v%以上含有し、
(A1成分)酢酸プロピル、
(A2成分)2メチル酪酸エチル、
(A3成分)酢酸ヘキシル、
(A4成分)酢酸メチル、及び
(A5成分)イソ酪酸エチル
からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.005ppb以上であり、
前記A2成分、及び前記A3成分を含有し、
前記A2成分の含有量が30ppb以上であり、
前記A3成分の含有量が100ppb以上であり、
且つ前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び
(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす
、酢酸含有飲食品。
【請求項2】
酢酸を0.02w/v%以上含有し、
(A1成分)酢酸プロピル、
(A2成分)2メチル酪酸エチル、
(A3成分)酢酸ヘキシル、
(A4成分)酢酸メチル、及び
(A5成分)イソ酪酸エチル
からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.005ppb以上であり、
前記A2成分、及び前記A3成分を含有し、
前記A2成分の含有量が3ppb以上であり、
果汁含有率(ストレート果汁換算)が50質量%以下であり、
且つ前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び
(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たし、
さらに、(要件1a)前記A1成分の含有量が0.05~20000ppbであること、
(要件2a)前記A2成分の含有量が0.01~50000ppbであること、
(要件3a)前記A3成分の含有量が0.01~50000ppbであること、
(要件4a)前記A4成分の含有量が0.1~20000ppbであること、及び
(要件5a)前記A5成分の含有量が0.01~20000ppbであること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす、酢酸含有飲食品。
【請求項3】
(要件1b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A1成分の濃度値(ppb)の比(A1成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.12~20000であること、
(要件2b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A2成分の濃度値(ppb)の比(A2成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~50000であること、及び
(要件3b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A3成分の濃度値(ppb)の比(A3成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~50000であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす、請求項2に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項4】
酢酸を0.02w/v%以上含有し、
(A1成分)酢酸プロピル、
(A2成分)2メチル酪酸エチル、
(A3成分)酢酸ヘキシル、
(A4成分)酢酸メチル、及び
(A5成分)イソ酪酸エチル
からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.005ppb以上であり、
前記A2成分、及び前記A3成分を含有し、
前記A2成分の含有量が3ppb以上であり、
且つ前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び
(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たし、
さらに、(要件1a)前記A1成分の含有量が0.05~20000ppbであること、
(要件2a)前記A2成分の含有量が0.01~50000ppbであること、
(要件3a)前記A3成分の含有量が0.01~50000ppbであること、
(要件4a)前記A4成分の含有量が0.1~20000ppbであること、及び
(要件5a)前記A5成分の含有量が0.01~20000ppbであること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たし、
前記要件4a及び前記要件5aからなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす、酢酸含有飲食品(但し、100%リンゴジュースを200ml容器の1/2、炭酸水を200ml容器の1/4、バルサミコ酢を小さじ 1~、を容器に入れ、混ぜて作られたシードル風ノンアルコール飲料、及び当該飲料と成分組成が同一であるシードル風ノンアルコール飲料、を除く。)。
【請求項5】
果汁を含有する、請求項2~4のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。
【請求項6】
果汁含有率(ストレート果汁換算)が0.1質量%以上700質量%以下である、請求項5に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項7】
前記果汁がリンゴ果汁、ブルーベリー果汁、柑橘果汁、イチゴ果汁、ザクロ果汁、ブドウ果汁、モモ果汁、ウメ果汁、マンゴー果汁、パイナップル果汁、バナナ果汁、及びライチ果汁からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5又は6に記載の酢酸含有飲食品。
【請求項8】
飲料又は該飲料の調製用組成物である、請求項2~7のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。
【請求項9】
酢酸を含有量が0.02w/v%以上になるように配合すること、並びに(A1成分)酢酸プロピル、(A2成分)2メチル酪酸エチル、(A3成分)酢酸ヘキシル、(A4成分)酢酸メチル、及び(A5成分)イソ酪酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を合計含有量が0.005ppb以上になるように、且つ前記A3成分の含有量が100ppb以上になるように、且つ前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であることからなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たすように配合することを含む、酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減された酢酸含有飲食品の製造方法(但し、100%リンゴジュースを200ml容器の1/2、炭酸水を200ml容器の1/4、バルサミコ酢を小さじ 1~、を容器に入れ、混ぜて作られたシードル風ノンアルコール飲料、及び当該飲料と成分組成が同一であるシードル風ノンアルコール飲料の製造方法、を除く。)。
【請求項10】
(A1成分)酢酸プロピル、(A2成分)2メチル酪酸エチル、(A3成分)酢酸ヘキシル、(A4成分)酢酸メチル、及び(A5成分)イソ酪酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を合計含有量が0.005ppb以上になるように、且つ前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であることからなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たすように配合することを含む、酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種を抑制する方法。
【請求項11】
(A1成分)酢酸プロピル、(A2成分)2メチル酪酸エチル、(A3成分)酢酸ヘキシル、(A4成分)酢酸メチル、及び(A5成分)イソ酪酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、酢酸含有飲食品中の前記香気成分の合計含有量が0.005ppb以上になるように、且つ酢酸含有飲食品において(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であることからなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たすように用いるための、酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種の抑制剤。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和4年3月15日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許発明においては、香気成分(A1~A5成分)について、「含有し」(【請求項1】及び【請求項11】)、「含有量」(【請求項1】、【請求項2】、【請求項10】及び【請求項11】)、「含有率」(【請求項6】)及び「濃度値」(【請求項1】、【請求項2】、【請求項9】、【請求項10】及び【請求項11】)といった規定が存在するところ、これらの規定は、酢酸含有飲食品中の香気成分の最終含有量(ないしこれに基づいて算出された値)であるのか、添加量(ないしこれに基づいて算出された値)であるのか、理解することができない。
(2)本件特許発明9、10は、所定の含有量ないし濃度値比率になるように、各成分を「配合すること」といった規定が存在するところ、「配合する」について、酢酸含有飲食品の原料食品に由来する成分を含有していることを指すのか、そうではなく、原料食品以外の各成分に係る化合物を添加することを指すのか理解することができない。
2 申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件明細書に記載の実施例・比較例が本件特許発明のサポートとなり得ない。
本件明細書における官能試験では、酢酸臭、刺激臭、ムレ臭の3項目ないし酢酸臭、刺激臭、ムレ臭、果実臭、フレッシュな香り、甘い香りに関して、評価対象成分を含まない以外は実施例と同配合のコントロール(対照試験液)と比較に基づき、専門パネラー10名の平均により評価されていることが読み取れるが、具体的にどのようなレベルの人がパネラーとなっているのか、その訓練の度合いがどの程度か、全く記載されておらず、その信憑性の程は全く定かではない。その上、これら段階の加点及び減点の基準を共通にするなどの手順が踏まれているような形跡は存在しないし、パネラー間で評価が異なった場合に何を基準として評価結果を決定するのかも全く定かではない。すなわち、「非常に強い」、「強い」、「わずかに強い」、「わずかに弱い」、「弱い」及び「非常に弱い」などその使用に関して、そもそも明確な基準が存在せず、パネラーによって区々になっていることが容易に推測される。従って、本件明細書の官能試験は、伊藤園トマトジュース事件判決の規範に照らし、上記官能評価試験において適切な手続が踏まれていたとは到底認められないものであって、著しく信憑性に欠けるものという他ない。
さらに言うなれば、本件特許発明は、「酢酸含有飲食品には、酢酸(特に醸造酢)に由来する酸臭(酢酸臭)、刺激臭(セメダインやシンナー様の臭い)、及びムレ臭(むれた足や、脱いだ靴下の臭い)が感じられることがあり、これらが酢酸含有飲食品の摂取の妨げになり得る。特に、上記有用作用を期待する場合は、酢酸含有飲食品を日常的に摂取することが重要であるので、この問題の解決が特に重要となる」という従来の背景技術に鑑み(【0003】)、「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭が抑制された酢酸含有飲食品を提供すること」ないし「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭が抑制され、且つ果汁感が向上した果汁入り酢酸含有飲食品を提供する」ということを目的とするものである(【0007】)。すなわち、本件特許発明の技術的課題が解決されたというためには、酢酸(特に醸造酢)に由来する酸臭(酢酸臭)、刺激臭(セメダインやシンナー様の臭い)、及びムレ臭(むれた足や、脱いだ靴下の臭い)が、酢酸含有飲食品の摂取の妨げにならないと言える程度に抑制されていることが求められることは言うまでもない。
しかるところ、本件明細書の官能評価は、ただ単に「わずかに弱い」、「弱い」及び「非常に弱い」など評価基準が不明な指標を用いて評価対象成分を含まないコントロールと比較しているのみであって、その程度が酢酸含有飲食品の摂取の妨げにならないと言える程度に抑制されていると言えるか否かの検証がなされている形跡は一切見当たらない。そもそも、香気成分はどのようなものであれ、それ自体一定の香気を有しているのであるから、それを加えることにより未添加のものと比較して、酢酸臭、刺激臭、ムレ臭など、酢酸含有飲食品の臭気が一定程度希釈化され緩和されるのは当然のことである。しかるところ、上記官能試験では、 評価対象成分の香気成分との比較は一切なされていない上、その評価指標と本件特許発明の技術的課題との関係が不明であることから、技術常識から予測し得る当然の効果以上の効果が得られていると認識し得る根拠とはなり得ない。
さらに、本件明細書の実施例では、実施例31、実施例41、実施例99に代表されるように、本件特許発明の実施態様でありながら、酢酸臭、刺激臭、ムレ臭の平均点が0.5に満たないものが含まれている。この点、「官能検査員歴10年以上の熟練のパネラー」が評価していながら、何故にこれほどの評価結果のぶれが生ずるのか、その理由は定かでないが、少なくともこれらに関しては、官能検査員歴10年以上の熟練のパネラー10名のうち、半数以上がコントロールとの差がないということ(ないし、むしろ実施例の方がコントロールよりも評価が劣ると評価した官能検査員歴10年以上の熟練のパネラーが存在したこと)を意味するものである。従って、その評価基準が適切であるか否かの問題をさて置くとしても、これらに関しては、コントロールと比較して有意な差がないと評価するのが適切であり、その意味においても本件特許発明の技術的課題が解決できることが示されているとは到底認識し得ない。
以上のことから、本件特許発明がいずれもサポート要件に違反することは明らかと言える。
(2)本件特許発明に規定する各パラメータの範囲内であれば、所望の効果が得られると認識できない。
実施例で示されているのはいずれもA4成分単独ないしA5成分単独であるから、これらによって 「前記香気成分(A1成分ないしA5成分)の合計含有量が0.005ppb以上である」という場合について、一般化・抽象化し得るとは到底認められない。
実施例31では、要件4bに係る(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が2.5であり、本件特許発明に規定する「0.3~20000」の下限値である0.3よりも8倍以上高い値であり、実施例41では、要件5b に係る(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.25であり、同じく、本件特許発明に規定する「0.03~20000」の下限値である0.03よりも8倍以上高い値である。従って、要件4bないし要件5bの範囲内で酢酸の濃度を相対的に8倍程度大きくした場合も含まれることになるが、(実施例31、41でさえその有意差が見出せないにも拘わらず)これらについて、本件特許発明の技術的課題を解決できると認識し得るとは到底認められない。
実施例99に関しては、評価結果がコントロールと有意差なく、そもそも本件特許発明の技術的課題を解決できると認識し得るものでない上、【0006】の「適量の果汁の添加は、酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭を和らげることがある」という記載からも明らかなとおり、ここで含まれているりんご果汁(ストレート果汁換算)5.0w/v%の効果によって酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭を和らげられていると考えるのが合理的である(りんごのような甘い果汁が加わることにより酢酸に由来する臭気が一定程度緩和されることは技術常識からも明らかである)。そのため、実施例99は、その評価結果如何に拘わらずこれを必須の構成として規定していない本件特許発明のサポートとはなり得ない。
(3)酢酸の含有割合に関する上限値、ないし香気成分の配合量と酢酸の配合量の規定が存在しない。
酢酸の濃度が大きくなればなるほど、本件特許発明の技術的課題である、酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭が抑制された酢酸含有飲食品を提供することが難しくなるのは当然と言える。しかしながら、本件特許発明においては、「酢酸を0.02w/v%以上含有し」とその下限値しか規定されていないのであるから、酢酸濃度が本件明細書の【0015】に記載された範囲は勿論、それよりも大きい場合も当然に含まれることになる。しかしそのような場合においても、本件特許発明に規定する「前記香気成分の合計含有量が0.005ppb以上配合する」ことで上記課題が解決できることは何ら示されておらず、また、技術常識からそのようなことが認識できると言えないことも明らかである。
また、本件特許発明の技術的課題に対応する酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭等が酢酸に由来することが明らかであり、また、それを抑制するためにA1成分乃至A5成分の香気成分が配合されている以上、酢酸と香気成分とがどのような比率で配合されているかがその課題解決において極めて重要であることは言うまでもない。従って、少なくともその比率について何ら規定することなく、本件特許発明のように単にそれぞれの配合量を規定するのみで、その課題を解決できると認識し得ないことは当然と言える。
本件特許発明において解決手段とされているA1成分乃至A5成分の香気成分のうち、一部の成分について選択的に酢酸濃度値との関係を規定するのみで、他の成分やそれらの合計濃度と酢酸との関係について何ら規定することなく、酢酸由来の臭気を改善するという技術的課題を解決できると言えないことは、技術常識から明らかである。
本件特許発明1の要件4b及び5b自体も本件特許発明の技術的課題を解決できると認識し得る範囲と比較して、広範な数値範囲を規定するものであるから、これらの規定によって酢酸の含有割合に関する上限値、ないし香気成分と酢酸の配合割合が十分に規定されていると言えないことは明らかである。
3 申立理由3(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・「含有し」、「含有量」、「含有率」、「濃度値」という用語が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であり、また、本件特許発明9、10に関しては、各成分をどのタイミングでどのように加えればよいのか不明確であり、過度な試行錯誤を要することなく本件特許発明を実施し得ないことは明らかである。特に前者に関しては、各香気成分ないし酢酸の配合量が(ある者にとっては)既知である場合に、添加量と最終含有量を測定する方法のどちらを選択すべきか、客観的かつ一義的に選択し決めることができないのであるから、如何にして本件特許発明を実施するか過度な試行錯誤を要することは明らかと言える。
4 申立理由4(甲第1号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(甲第2号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 申立理由6(甲第3号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
7 申立理由7(甲第4号証を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし11に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第4号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
8 証拠方法
甲第1号証: Defining the Typical Aroma of Sherry Vinegar : Sensory and Chemical Approach (J. Agric. Food Chem. 2008,56, 8086-8095)
甲第2号証:Discrimination of Chinese Vinegars Based on Headspace Solid-Phase Microextraction-Gas Chromatography Mass Spectrometry of Volatile Compounds and Multivariate Analysis (Journal of Food Science. 2011, Vol.76, Nr. 8 C1125-C1135)
甲第3号証:クックパッド「簡単!手作り!シードル風ノンアル♪」https://cookpad.com/recipe/6165327
甲第4号証:クックパッド「手作り☆りんご酢」https://cookpad.com/recipe/1508551
甲第5号証:「酢100cc(100ml)は 何グラム(何g)か?酢50cc(50ml)は何グラムか?酢20cc(20ml)は何グラムか?【酢の比重(密度)】」https://life-freedom888.com/sul00cc-g/
甲第6号証:レシピサイト「A beautiful PLATE」https://www.abeautifulplate.com/strawberry-shrub-cocktail/
甲第7号証:「レモンバルサミコ酢ドリンクレシピ・作り方」https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1550006326/
甲第8号証:クックパッド「簡単 果実酢(フルーツビネガー)の作り方」https://cookpad.com/recipe/5709477
甲第8号証の2:クックパッド「簡単 果実酢(フルーツビネガー)の作り方」(https:/cookpad.com)のインターネットアーカイブ(https://web.archive.org/web/20201102014259/https://cookpad.com/recipe/5709477)
甲第9号証:リンゴジュースのカロリー概要https://calorie.slisrn.jp/107149/
甲第10号証:The Neutral Volatile Components of Cider Apple Juices (Food Chemistry Vol.6, Issue 2, December 1980, 139-151)
甲第11号証:Regeneration of Volatile Compounds in Fuji Apples Following Ultra Low Oxygen Atmosphere Storage and Its Effect on Sensory Acceptability (J.Agric.Food Chem.2008,56,8490-8497)
甲第12号証:富士フイルム和光純薬株式会社のウェブページ「詳細情報酢酸メチル」https://labchem-wako.fujifilm.eom/jp/product/detail/W01W0113-0175.html
甲第13号証:特許第6382461号公報
甲第14号証:「レモン汁大さじ1の重さは何グラム?小さじは?カロリーはあるの?」https://cojicaji.jp/cooking/cooking-tips/2483
甲第15号証:「みんなの知識ちょっと便利帳 計量スプーン・計量カップによる重量表」 https://www.benricho.org/doryoko_cup_spoon/
甲第16号証:「バルサミコ酢大さじ1は何グラムか?バルサミコ酢小さじ1は何グラム?バルサミコ酢大さじ2は何グラムか?【バルサミコ酢の密度(比重)】」https://life-freedom888.com/barusamiko-00saji-g/
甲第17号証:「FENAROLI’S HANDBOOK OF Flavor Ingredients SIXTH EDITION」(Taylor and Francis Group, LLC 2010年、CRC Press)
甲第18号証:再表2020/022229号公報
甲第19号証:特開2017-35003号公報
甲第20号証:特許権者ホームページ「お酢ドリンク」ラインナップ、https://www.mizkan.co.jp/product/series/index.html?sid=03
甲第21号証:特許権者ホームページ「りんご黒酢」、 https://www.mizkan.co.jp/product/group/index.html?gid=03008
甲第22号証:特許権者ニュースリリース「2015年春 ミツカン新製品のご案内「アサイー黒酢」https://www.mizkan.co.jp/company/news/detail/l50122-01.html
甲第23号証:機能性表示食品の届出情報検索(消費者庁ホームページ)(https://www.fid.caa.go.jp/caaks/csscO1/searchの「届出番号」欄に「B242」を入力して検索した結果)
甲第24号証:「りんご黒酢」(機能性表示食品届出番号B242)の届出の様式VI :「表示見本」https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc07/hyouji_mihon?hyoujimihonFile=B242%255CB242_hyouji_mihon.pdf
甲第25号証:「七訂食品成分表2017(本表編)」(214-215頁)
甲第26号証:リンゴジュース酢ドリンク https://cookpad.com/recipe/3983698
甲第27号証:混ぜるだけ!簡単☆リンゴ酢ドリンク https://cookpad.com/recipe/4129339
甲第28号証:超簡単☆りんごジュースでりんご酢ドリンク レシピ・作り方 https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1840001301/
甲第29号証:美味しく健康に♪さっぱり黒酢ドリンク☆レシピ・作り方 https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1870004212/
甲第30号証:赤しそハチミツりんご酢ジュース https://recipe-blog.jp/profile/10989/recipe/590507
甲第31号証:バルサミコ・ドリンク★ダイエット https://cookpad.com/recipe/1383730
なお、甲第26ないし31号証は、令和4年10月17日に提出された意見書に添付されたものである。また、証拠の表記は、特許異議申立書及び上記意見書の記載におおむね従った。ただし、絵文字はスペースで代用したものもある。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由(決定の予告)の概要
令和4年12月15日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。
・(甲3を主引用例とする新規性・進歩性)
本件特許の請求項1に係る発明並びに本件特許の請求項3及び5ないし9に係る発明のうち請求項2又は4を直接又は間接的に引用しないで特定される発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲3に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3及び5ないし9に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第6 取消理由(決定の予告)についての当審の判断
1 甲3に記載された事項等
(1)甲3に記載された事項
甲3にはおおむね次の事項が記載されている。
・「ただのリンゴの炭酸ジュースではなく、シードル特有の発酵した風味に近づきます!
ぶどうジュースでも美味しいです♪
材料(200mlコップ一杯)
100%りんごジュース コップの1/2
炭酸水 コップの1/4
バルサミコ酢 小さじ1~」(上段右)
・「作り方
1
グラスに全ての材料を入れ、よくかき混ぜて完成♪」(中段左)
・「このレシピの生い立ち
授乳中に食事に合うノンアルが飲みたい、、と思い、色々試行錯誤してシンプルな材料に落ち着きました♪」(中段右)
(2)甲3に記載された発明
甲3に記載された事項を整理すると、甲3には次の発明(以下、順に「甲3発明」及び「甲3製造方法発明」という。)が記載されていると認める。
<甲3発明>
「100%りんごジュースを200mlコップの1/2、炭酸水を200mlコップの1/4、バルサミコ酢を小さじ1~、をグラスに入れ、よくかき混ぜて作られたシードル風ノンアルコール飲料。」
<甲3製造方法発明>
「100%りんごジュースを200mlコップの1/2、炭酸水を200mlコップの1/4、バルサミコ酢を小さじ1~、をグラスに入れ、よくかき混ぜて作られたシードル風ノンアルコール飲料の製造方法。」
2 本件特許発明1について
甲9に記載された事項(りんごジュースの密度)、甲16に記載された事項(バルサミコ酢の密度)、甲1に記載された事項(バルサミコ酢の酢酸度及び各香気成分の含有量)及び甲10に記載された事項(りんごジュース中に含まれる各香気成分の含有量)から、甲3発明の酢酸度(本件特許発明における「酢酸濃度値」に相当する。)、各香気成分(本件特許発明におけるA1成分、A2成分、A3成分、A4成分及びA5成分)の含有量及び酢酸度に対する各香気成分含有量の比は次のとおり計算される。
[図:0001398242000001.jpg]
これを踏まえて、本件特許発明1と甲3発明を対比すると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酢酸を0.02w/v%以上含有し、
(A1成分)酢酸プロピル、
(A2成分)2メチル酪酸エチル、
(A3成分)酢酸ヘキシル、
(A4成分)酢酸メチル、及び
(A5成分)イソ酪酸エチル
からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.005ppb以上であり、
前記A2成分、及び前記A3成分を含有し、
前記A3成分の含有量が100ppb以上であり、
且つ前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び
(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす
、酢酸含有飲食品。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点3-1>
本件特許発明1においては、「前記A2成分の含有量が30ppb以上であり」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。
そこで、相違点3-1について検討する。
甲3発明は、「A2成分の含有量」は「0.62~24.9ppb」と計算されるから、相違点3-1は実質的な相違点である。
また、甲3及び他の証拠には、甲3発明において、「A2成分の含有量」を「30ppb以上」とする動機付けとなる記載はない。
したがって、甲3発明において、甲3及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点3-1に係る発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。
そして、本件特許発明1は「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭が抑制された酢酸含有飲食品を提供することができる」(本件特許の発明の詳細な説明の【0009】)という甲3発明並びに甲3及び他の証拠から当業者が予測することのできる範囲を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は甲3発明であるとはいえないし、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
3 本件特許発明3及び5ないし8について
取消理由(決定の予告)は、本件特許発明3及び5ないし8のうち、請求項2又は4を直接又は間接的に引用しないで特定される発明を対象とするものであるところ、本件訂正により、本件特許発明3及び5ないし8から請求項2又は4を直接又は間接的に引用しないで特定される発明は削除された。
4 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲3製造方法発明を対比するに、上記2と同様に判断される。
すなわち、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酢酸を含有量が0.02w/v%以上になるように配合すること、並びに(A1成分)酢酸プロピル、(A2成分)2メチル酪酸エチル、(A3成分)酢酸ヘキシル、(A4成分)酢酸メチル、及び(A5成分)イソ酪酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を合計含有量が0.005ppb以上になるように、且つ前記A3成分の含有量が100ppb以上になるように、且つ前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であることからなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たすように配合することを含む、酢酸含有飲食品の製造方法。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点3-9a>
本件特許発明9においては、「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種が低減された」と特定されているのに対し、甲3製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3-9b>
本件特許発明9においては、「(但し、100%リンゴジュースを200ml容器の1/2、炭酸水を200ml容器の1/4、バルサミコ酢を小さじ 1~、を容器に入れ、混ぜて作られたシードル風ノンアルコール飲料、及び当該飲料と成分組成が同一であるシードル風ノンアルコール飲料の製造方法、を除く。)」と特定されているのに対し、甲3製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。
事案に鑑み、相違点3-9bについて検討する。
相違点3-9bは、甲3製造方法発明を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。
また、相違点3-9bが、甲3製造方法発明を除くことを特定するものである以上、甲3製造方法発明において、甲3及び他の証拠に記載された事項をみても、相違点3-9bに係る本件特許発明9の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。
そして、本件特許発明9は、「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭が抑制された酢酸含有飲食品を提供することができる」という甲3製造方法発明並びに甲3及び他の証拠から当業者が予測することのできる範囲を超える顕著な効果を奏するものである。
したがって、本件特許発明9は甲3製造方法発明であるとはいえないし、甲3製造方法発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
5 取消理由(決定の予告)についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び9は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1及び9に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、取消理由(決定の予告)によっては、取り消すことはできない。
また、本件特許発明3及び5ないし8は、請求項2又は4を直接又は間接的に引用する発明となったから、取消理由(決定の予告)の対象ではない。
第7 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由について
取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は、申立理由1(明確性要件)、申立理由2(サポート要件)、申立理由3(実施可能要件)、申立理由4(甲1を主引用例とする新規性・進歩性)、申立理由5(甲2を主引用例とする新規性・進歩性)、申立理由6(甲3を主引用例とする新規性・進歩性)のうち本件特許の請求項2ないし8、10及び11に対する理由及び申立理由7(甲4を主引用例とする新規性・進歩性)である。
そこで、順に検討する。
1 申立理由1(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
(3)明確性要件の判断
本件特許の特許請求の範囲の記載は、それ自体不明確な記載ではないし、明細書の記載とも整合する。
したがって、本件特許発明1ないし11に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
よって、本件特許発明1ないし11は明確である。
(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 1の主張について検討するに、いずれも次のとおりであり、採用できない。
ア 上記第4 1(1)の主張について
本件特許の特許請求の範囲の各請求項に記載された「含有し」、「含有量」及び「含有率」という記載が、酢酸含有飲食品の最終的な「含有」を想定した記載であることは、特許請求の範囲の各請求項の記載自体から明らかであるし、そのように解することは明細書の記載とも整合する。
イ 上記第4 1(2)の主張について
本件特許の特許請求の範囲の請求項9及び10の「配合すること」という記載が、酢酸含有食品の原料食品に由来する成分として配合すること及び原料食品以外の成分として配合することのいずれでも又両方でもよいことは、特許請求の範囲の請求項9及び10の記載自体から明らかであるし、そのように解することは明細書の記載とも整合する。
(5)申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由1によっては取り消すことはできない。
2 申立理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
(3)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0002】ないし【0007】によると、本件特許発明1ないし8の解決しようとする課題は「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択された少なくとも1種が抑制された酢酸含有飲食品を提供すること」であり、本件特許発明9の解決しようとする課題は「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択された少なくとも1種が低減された酢酸含有飲食品の製造方法を提供すること」であり、本件特許発明10の解決しようとする課題は「酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択された少なくとも1種を抑制する方法を提供すること」であり、本件特許発明11の解決しようとする課題は「酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択された少なくとも1種の抑制剤を提供すること」である(以下、総称して「発明の課題」という。)。
他方、本件特許の発明の詳細な説明の【0008】には、「本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、酢酸を0.02w/v%以上含有し、(A1成分)酢酸プロピル、(A2成分)2メチル酪酸エチル、(A3成分)酢酸ヘキシル、(A4成分)酢酸メチル、及び(A5成分)イソ酪酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有する、酢酸含有飲食品、であれば、上記課題を解決できることを見出した。」と記載され、さらに、本件特許発明1ないし11に対応する事項が記載されている。
また、本件特許の発明の詳細な説明の【0013】ないし【0015】には、「酢酸」とその含有量の技術的意味について記載され、同【0017】ないし【0019】には、「A1成分」とその含有量の技術的意味について記載され、同【0020】ないし【0022】には、「A2成分」とその含有量の技術的意味について記載され、同【0023】ないし【0025】には、「A3成分」とその含有量の技術的意味について記載され、同【0026】ないし【0028】には、「A4成分」とその含有量の技術的意味について記載され、同【0029】ないし【0031】には、「A5成分」とその含有量の技術的意味について記載されている。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0088】ないし【0137】において、「酢酸」を「0.02w/v%以上」含有し、「A1成分」ないし「A5成分」からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有する実施例は、「A1成分」ないし「A5成分」からなる群より選択される香気成分を含有しないコントロールよりも、酢酸臭、刺激臭及びムレ臭のいずれもが抑制されていることを確認している。
そうすると、当業者は、「酢酸を0.02w/v%以上含有し、(A1成分)酢酸プロピル、(A2成分)2メチル酪酸エチル、(A3成分)酢酸ヘキシル、(A4成分)酢酸メチル、及び(A5成分)イソ酪酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有する、酢酸含有飲食品」、その「製造方法」、「(A1成分)酢酸プロピル、(A2成分)2メチル酪酸エチル、(A3成分)酢酸ヘキシル、(A4成分)酢酸メチル、及び(A5成分)イソ酪酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を配合する方法」及び「(A1成分)酢酸プロピル、(A2成分)2メチル酪酸エチル、(A3成分)酢酸ヘキシル、(A4成分)酢酸メチル、及び(A5成分)イソ酪酸エチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有する剤」は発明の課題を解決できると認識できる。
したがって、本件特許発明1ないし11は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし11に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 2の主張について検討するに、いずれも上記(3)のサポート要件の判断を左右するものではなく、採用できない。
(5)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。
3 申立理由3(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明1ないし8及び11は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明9は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法を使用し、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明10は方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし11の各発明特定事項について具体的に記載され、実施例についてもその製造方法を含め具体的に記載されている。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし8及び11を生産し、使用することができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明9を使用し、本件特許発明9により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明10を使用することができる程度の記載があるといえる。
したがって、本件特許発明1ないし11に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 3の主張について検討するに、次のとおりであり、採用できない。
上記1のとおり、本件特許発明1ないし11に関して、特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
また、本件特許発明9及び10に関して、各成分を加えるタイミングはいつでもよいことは当業者に明らかである。
したがって、本件特許発明1ないし11を実施するのに当業者に過度の試行錯誤を要するとの主張は採用できない。
(4)申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由3によっては取り消すことはできない。
4 申立理由4(甲1を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)甲1に記載された発明
甲1の標題、第8086ページ概要欄、第8087ページ左欄上、第8087ページ左欄下及び第8088ページに記載された事項を整理すると、甲1には、酢酸度(本件特許発明における「酢酸濃度値」に相当する。)及び各香気成分(本件特許発明におけるA1成分、A2成分、A3成分、A4成分及びA5成分)の含有量が、次のとおりである「6ヶ月熟成したシェリー酢」(以下、「甲1―VJ発明」という。)、「24ヶ月熟成したシェリー酢」(以下、「甲1―VR発明」という。)、「10年熟成したシェリー酢」(以下、「甲1―GR発明」という。)、「赤ワイン酢」(以下、「甲1―VT発明」という。)及び「バルサミコ酢」(以下、「甲1―VB発明」という。)が記載されていると認める。
・酢酸度(W/V%)
VJ・・・7
VR・・・7~9
GR・・・7~10
VT・・・6
VB・・・6
・各香気成分(ppb)
[図:0001398242000002.jpg]
(2)本件特許発明1について
甲1―VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明及び甲1―VB発明の酢酸濃度値に対する各香気成分含有量の比は次のとおり計算される。
[図:0001398242000003.jpg]
[図:0001398242000004.jpg]
これを踏まえて、本件特許発明1と甲1―VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酢酸を0.02w/v%以上含有し、
(A1成分)酢酸プロピル、
(A2成分)2メチル酪酸エチル、
(A3成分)酢酸ヘキシル、
(A4成分)酢酸メチル、及び
(A5成分)イソ酪酸エチル
からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.005ppb以上であり、
前記A2成分の含有量が30ppb以上であり、
且つ前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び
(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす
、酢酸含有飲食品。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-1a>
本件特許発明1においては「前記A2成分、及び前記A3成分を含有し」と特定されているのに対し、甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1-1b>
本件特許発明1においては「前記A3成分の含有量が100ppb以上であり」と特定されているのに対し、甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明においては、そのようには特定されていない点。
したがって、本件特許発明1は甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明であるとはいえない。
相違点1-1aについて検討する。
甲1及び他の証拠には、甲1―VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明において、相違点1-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、本件特許発明1は甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭が抑制された酢酸含有飲食品を提供することができる」という甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2について
本件特許発明2と甲1―VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明を対比する。
両者は少なくとも次の点で相違するから、本件特許発明2は甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明であるとはいえない。
<相違点1-2>
本件特許発明2においては「前記A2成分、及び前記A3成分を含有し」と特定されているのに対し、甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明においては、そのようには特定されていない点。
相違点1-2について検討するに、相違点1-2は相違点1-1aと同じであるから、同様に判断される。
すなわち、本件特許発明1は甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明4について
本件特許発明4と甲1―VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明を対比する。
両者は、少なくとも次の点で相違するから、本件特許発明4は甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明であるとはいえない。
<相違点1-4>
本件特許発明4においては「前記A2成分、及び前記A3成分を含有し」と特定されているのに対し、甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明においては、そのようには特定されていない点。
相違点1-4について検討するに、相違点1-4は相違点1-1aと同じであるから、同様に判断される。
すなわち、本件特許発明4は甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件特許発明3及び5ないし8について
本件特許発明3及び5ないし8は、請求項2又は4を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2又は4の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明2又は4と同様に、甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明であるとはいえないし、甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)本件特許発明9について
甲1に、甲1―VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明が記載されている以上、甲1には、それらを製造する方法の発明が記載されていることは明らかである。
そして、本件特許発明9と甲1―VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明を製造する方法の発明を対比するに、両者の間には少なくとも相違点1-1aと同じ相違点があるから、本件特許発明9は甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明を製造する方法の発明であるとはいえないし、甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明を製造する方法の発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(7)本件特許発明10及び11について
甲1には、「酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種を抑制する」という技術的思想は記載されていないから、甲1に記載された事項から、本件特許発明10の「酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種を抑制する方法」及び本件特許発明11の「酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種の抑制剤」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明10及び11は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(8)申立理由4についてのまとめ
したがって、本件特許発明1ないし11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由4によっては取り消すことはできない。
5 申立理由5(甲2を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)甲2に記載された発明
甲2の標題、要約欄、第1126ページ左上、第1126ページ右欄下、第1128ページ及び第1129ページに記載された事項を整理すると、甲2には、酸度(本件特許発明における「酢酸濃度値」に相当する。)及び各香気成分(本件特許発明におけるA1成分及びA4成分)の含有量が、次のとおりである「香酢1」(以下、「甲2―香酢1発明」という。)、「香酢2」(以下、「甲2―香酢2発明」という。)、「香酢3」(以下、「甲2―香酢3発明」という。)、「老酢1」(以下、「甲2―老酢1発明」という。)、「老酢2」(以下、「甲2―老酢2発明」という。)及び「米酢」(以下、「甲2―米酢発明」という。)が記載されていると認める。
・酸度(w/v%)並びにA1成分及びA4成分の含有量(ppb)
[図:0001398242000005.jpg]
(2)本件特許発明1について
甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明及び甲2―米酢発明の酢酸濃度値に対する各香気成分含有量の比は次のとおり計算される。
[図:0001398242000006.jpg]
これを踏まえて、本件特許発明1と甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酢酸を0.02w/v%以上含有し、
(A1成分)酢酸プロピル、
(A2成分)2メチル酪酸エチル、
(A3成分)酢酸ヘキシル、
(A4成分)酢酸メチル、及び
(A5成分)イソ酪酸エチル
からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.005ppb以上であり、
且つ前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び
(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす
、酢酸含有飲食品。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2-1a>
本件特許発明1においては「前記A2成分、及び前記A3成分を含有し」と特定されているのに対し、甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2-1b>
本件特許発明1においては「前記A2成分の含有量が30ppb以上であり」と特定されているのに対し、甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2-1c>
本件特許発明1においては「前記A3成分の含有量が30ppb以上であり」と特定されているのに対し、甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明においては、そのようには特定されていない点。
したがって、本件特許発明1は甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明であるとはいえない。
相違点2-1aについて検討する。
甲2及び他の証拠には、甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明において、相違点2-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、本件特許発明1は甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭が抑制された酢酸含有飲食品を提供することができる」という甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2について
本件特許発明2と甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明を対比する。
両者は少なくとも次の点で相違するから、本件特許発明2は甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明であるとはいえない。
<相違点2-2>
本件特許発明2においては「前記A2成分、及び前記A3成分を含有し」と特定されているのに対し、甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明においては、そのようには特定されていない点。
相違点2-2について検討するに、相違2-2は相違点2-1aと同じであるから、同様に判断される。
すなわち、本件特許発明1は甲1-VJ発明、甲1―VR発明、甲1―GR発明、甲1―VT発明又は甲1―VB発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明4について
本件特許発明4と甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明を対比する。
両者は少なくとも次の点で相違するから、本件特許発明4は甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明であるとはいえない。
<相違点2-4>
本件特許発明4においては「前記A2成分、及び前記A3成分を含有し」と特定されているのに対し、甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明においては、そのようには特定されていない点。
相違点2-4について検討するに、相違点2-4は相違点2-1aと同じであるから、同様に判断される。
すなわち、本件特許発明4は甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件特許発明3及び5ないし8について
本件特許発明3及び5ないし8は、請求項2又は4を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2又は4の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明2又は4と同様に、甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明であるとはいえないし、甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)本件特許発明9について
甲2に、甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明が記載されている以上、甲2には、それらを製造する方法の発明が記載されていることは明らかである。
そして、本件特許発明9と甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明を製造する方法の発明を対比するに、両者の間には少なくとも相違点2-1aと同じ相違点があるから、本件特許発明9は甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明を製造する方法の発明であるとはいえないし、甲2―香酢1発明、甲2―香酢2発明、甲2―香酢3発明、甲2―老酢1発明、甲2―老酢2発明又は甲2―米酢発明を製造する方法の発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(7)本件特許発明10及び11について
甲2には、「酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種を抑制する」という技術的思想は記載されていないから、甲2に記載された事項から、本件特許発明10の「酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種を抑制する方法」及び本件特許発明11の「酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種の抑制剤」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明10及び11は、甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(8)申立理由5についてのまとめ
したがって、本件特許発明1ないし11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由5によっては取り消すことはできない。
6 申立理由6(甲3を主引用例とする新規性・進歩性)のうち請求項2ないし8、10及び11に対する理由について
(1)甲3に記載された発明
甲3には、上記第6 1(2)のとおりの甲3発明が記載されていると認める。
(2)本件特許発明2について
本件特許発明2と甲3発明を対比する。
両者は、少なくとも次の点で相違するから、本件特許発明2は甲3発明であるとはいえない。
<相違点3-2>
本件特許発明2においては「果汁含有率(ストレート果汁換算)が50質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。
相違点3-2について検討する。
甲3及び他の証拠には、甲3発明において、相違点3-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、本件特許発明2は甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明2は「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭が抑制された酢酸含有飲食品を提供することができる」という甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明2は甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明4について
本件特許発明4と甲3発明を対比する。
両者は、少なくとも次の点で相違するから、本件特許発明4は甲3発明であるとはいえない。
<相違点3-4>
本件特許発明4においては「(但し、100%リンゴジュースを200ml容器の1/2、炭酸水を200ml容器の1/4、バルサミコ酢を小さじ 1~、を容器に入れ、混ぜて作られたシードル風ノンアルコール飲料、及び当該飲料と成分組成が同一であるシードル風ノンアルコール飲料、を除く。)」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。
相違点3-4について検討する。
相違点3-4は、甲3発明を除くことを特定するものであるから、甲3発明において、甲3及び他の証拠に記載された事項をみても、相違点3-4に係る本件特許発明4の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明4は「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭が抑制された酢酸含有飲食品を提供することができる」という甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項からみて顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明4は甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明3及び5ないし8について
本件特許発明3及び5ないし8は、請求項2又は4を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2又は4の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明2又は4と同様に、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)本件特許発明10及び11について
甲3には、「酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種を抑制する」という技術的思想は記載されていないから、甲2に記載された事項から、本件特許発明10の「酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種を抑制する方法」及び本件特許発明11の「酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種の抑制剤」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明10及び11は、甲3に記載された発明であるとはいえないし、甲3に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)申立理由6のうち請求項2ないし8、10及び11に対する理由についてのまとめ
したがって、本件特許発明2ないし8、10及び11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項2ないし8、10及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由6のうち請求項2ないし8、10及び11に対する理由によっては取り消すことはできない。
7 申立理由7(甲4を主引用例とする新規性・進歩性)について
(1)甲4に記載された発明
甲4に記載された事項を整理すると、甲4には次の発明(以下、順に「甲4発明1」のようにいう。)が記載されていると認める。
<甲4発明1>
「すりおろしたりんごと純米酢を重量比1:1で配合しかき混ぜて作られたりんご酢。」
<甲4発明2>
「すりおろしたりんごと純米酢を重量比1:1で配合しかき混ぜて作られたりんご酢と水を1:1で配合した飲料。」
(2)本件特許発明1について
甲9に記載された事項(りんごジュースの密度)、甲5に記載された事項(米酢などの一般的な酢の密度)、甲2に記載された事項(米酢の酢酸度及び各香気成分の含有量)及び甲11に記載された事項(りんご中の各香気成分の含有量)から、甲4発明1及び甲4発明2の酢酸度(本件特許発明における「酢酸濃度値」に相当する。)、各香気成分(本件特許発明におけるA1成分、A2成分、A3成分及びA4成分)の含有量及び酢酸度に対する各香気成分含有量の比は次のとおり計算される。
[図:0001398242000007.jpg]
[図:0001398242000008.jpg]
これを踏まえて、本件特許発明1と甲4発明1又は甲4発明2を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酢酸を0.02w/v%以上含有し、
(A1成分)酢酸プロピル、
(A2成分)2メチル酪酸エチル、
(A3成分)酢酸ヘキシル、
(A4成分)酢酸メチル、及び
(A5成分)イソ酪酸エチル
からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
前記香気成分の合計含有量が0.005ppb以上であり、
前記A2成分、及び前記A3成分を含有し、
且つ前記A4成分及び前記A5成分からなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、
(要件4b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A4成分の濃度値(ppb)の比(A4成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.3~20000であること、及び
(要件5b)酢酸濃度値(w/v%)に対する前記A5成分の濃度値(ppb)の比(A5成分の濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.03~20000であること
からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす
、酢酸含有飲食品。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点4-1a>
本件特許発明1においては「前記A2成分の含有量が30ppb以上であり」と特定されているのに対し、甲4発明1又は甲4発明2においては、そのようには特定されていない点。
<相違点4-1b>
本件特許発明1においては「前記A3成分の含有量が100ppb以上であり」と特定されているのに対し、甲4発明1又は甲4発明2においては、そのようには特定されていない点。
したがって、本件特許発明1は甲4発明1又は甲4発明2であるとはいえない。
相違点4-1について検討する。
甲4及び他の証拠には、甲4発明1又は甲4発明2において、相違点4-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、本件特許発明1は甲4発明1又は甲4発明2並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭が抑制された酢酸含有飲食品を提供することができる」という甲4発明1又は甲4発明2並びに甲4及び他の証拠に記載された事項からから当業者が予測することのできる範囲を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲4発明1又は甲4発明2並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明2について
本件特許発明2と甲4発明1又は甲4発明2を対比する。
両者は、少なくとも次の点で相違するから、本件特許発明2は甲4発明1又は甲4発明2であるとはいえない。
<相違点4-2>
本件特許発明2においては「前記A2成分の含有量が3ppb以上であり」と特定されているのに対し、甲4発明1又は甲4発明2においては、そのようには特定されていない点。
相違点4-2について検討する。
甲4及び他の証拠には、甲4発明1又は甲4発明2において、相違点4-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、本件特許発明2は甲4発明1又は甲4発明2並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
そして、本件特許発明2は「酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭が抑制された酢酸含有飲食品を提供することができる」という甲4発明1又は甲4発明2並びに甲4及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することのできる範囲を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明2は甲4発明1又は甲4発明2並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明4について
本件特許発明4と甲4発明1又は甲4発明2を対比する。
両者は、少なくとも次の点で相違するから、本件特許発明4は甲4発明1又は甲4発明2であるとはいえない。
<相違点4-4>
本件特許発明4においては「前記A2成分の含有量が3ppb以上であり」と特定されているのに対し、甲4発明1又は甲4発明2においては、そのようには特定されていない点。
相違点4-4について検討するに、相違点4-4は相違点4-2と同じであるから、同様に判断される。
すなわち、本件特許発明4は甲4発明1又は甲4発明2並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件特許発明3及び5ないし8について
本件特許発明3及び5ないし8は、請求項2又は4を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2又は4の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明2又は4と同様に、甲4発明1又は甲4発明2であるとはいえないし、甲4発明1又は甲4発明2並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(6)本件特許発明9について
甲4に、甲4発明1又は甲4発明2が記載されている以上、甲4には、それらを製造する方法の発明が記載されていることは明らかである。
そして、本件特許発明9と甲4発明1又は甲4発明2を製造する方法の発明を対比するに、両者の間には少なくとも相違点4-1aと同じ相違点があるから、本件特許発明9は甲4発明1又は甲4発明2を製造する方法の発明であるとはいえないし、甲4発明1又は甲4発明2を製造する方法の発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(7)本件特許発明10及び11について
甲4には、「酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種を抑制する」という技術的思想は記載されていないから、甲4に記載された事項から、本件特許発明10の「酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種を抑制する方法」及び本件特許発明11の「酢酸含有飲食品の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種の抑制剤」に対応する発明を認定することはできない。
したがって、本件特許発明10及び11は、甲4に記載された発明であるとはいえないし、甲4に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(8)申立理由7についてのまとめ
したがって、本件特許発明1ないし11は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし11に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由7によっては取り消すことはできない。
第8 結語
以上のとおり、本件特許発明1ないし11に係る特許は、取消理由(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700221