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特許異議申立

2025-700276

造粒物及び造粒物の製造方法

審判番号
2025-700276
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-183267
登録番号
7549926
請求日
2025年03月07日
審決日
2026年01月30日
公報発行日
2026年03月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社東洋新薬
  • 【権利者代理人】弁理士法人翔和国際特許事務所
  • 【異議申立人】松崎 隆
  • 【異議申立人】大村 豊
  • 【異議申立人】伊澤 武登
審判長/審判官
  • 審判長 柴田 昌弘
  • 審判官 水野 明梨
  • 審判官 加藤 友也
分類
P1651.537-Y (A23L) / P1651.113-Y (A23L) / P1651.121-Y (A23L) / P1651.536-Y (A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条4項1号特許法113条4号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7549926号発明「造粒物及び造粒物の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7549926号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7549926号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、令和5年10月25日(優先権主張 令和4年11月22日)の出願であって、令和6年9月4日にその特許権の設定登録(請求項の数3)がされ、同年同月12日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和7年3月7日に特許異議申立人 松崎 隆(以下、「特許異議申立人A」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし3)がされ、同年同月11日に特許異議申立人 大村 豊(以下、「特許異議申立人B」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし3)がされ、同年同月12日に特許異議申立人 伊澤 武登(以下、「特許異議申立人C」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし3)がされ、同年4月17日付けで特許異議申立人Cに対し通知がされ、同年4月30日に特許異議申立人Bから手続補正書(方式)が提出され、同年同月30日付け(受付日:同年5月1日)で特許異議申立人Cから手続補正書(方式)が提出され、同年5月2日に特許異議申立人Aから手続補正書(方式)が提出され、同年6月2日付けで取消理由が通知され、同年7月31日に特許権者 株式会社東洋新薬(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出され、同年8月15日付けで特許異議申立人AないしCに対し審尋がされ、同年9月8日に特許異議申立人Cから回答書が提出され、同年同月10日に特許異議申立人Aから回答書が提出され、同年同月25日、同年10月2日及び同年同月9日に特許異議申立人Aから手続補正書(方式)がそれぞれ提出されたものである。なお、特許異議申立人Bからは審尋に対する応答がなかった。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし3に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 タンパク質と、糖類と、グリセリン脂肪酸エステルとを含有する造粒物であって、 粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、安息角が、54°以下である造粒物。 【請求項2】 タンパク質と、糖類と、グリセリン脂肪酸エステルとを含有する造粒物であって、 粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、スパチュラ角が73°未満である造粒物。 【請求項3】 タンパク質と、糖類と、グリセリン脂肪酸エステルとを含有する造粒物であって、 粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、崩壊角が36.8°以下である造粒物。」 第3 特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由の概要及び特許権者が提出した証拠方法等 1 特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由の概要等 令和7年5月2日に特許異議申立人Aが提出した手続補正書(方式)により補正された同年3月7日に特許異議申立人Aが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書A」という。)に記載された特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 (1)申立理由A1(甲第A1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第A1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由A2(甲第A2号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第A2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由A3(甲第A3号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第A3号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由A4(甲第A4号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第A4号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由A5(甲第A5号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第A5号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (6)申立理由A6(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 甲第A5号証に記載の水易溶解性高たんぱく粉末栄養組成物(例えば、実施例3)は、 本件特許発明1ないし3の要件を全て満たす。 しかしながら一方で、 甲第A5号証に記載の水易溶解性高たんぱく粉末栄養組成物(実施例3)の溶解性評価は、「6」(水なじみが悪く撹拌すると匙に粉が付着しダマになる)という結果となった。 すなわち、特許権者が本件特許の審査の過程において主張するように、「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり」という粒度分布を有する、タンパク質と糖類とグリセリン脂肪酸エステルとを含有する造粒物において、「水分量」を4.55質量%以下とすることに加えて、「安息角」、「スパチュラ角」、または、「崩壊角」を満たすように調製したとしても、流動性と溶解性の両立を達成することができないことを示す。 このように、本件特許発明1ないし3は、その範囲内に特許権者が主張する優れた効果を奏しないものを含む。 したがって、本件特許発明1ないし3は、流動性と溶解性の両立を達成することができない形態を含むものであり、本件特許明細書等および出願時の技術常識を参酌しても、本件特許発明1ないし3を実施しようとした場合に、どのように実施すれば流動性と溶解性との両立の効果を達成できるのかを理解することができない。 (7)申立理由A7(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 上記(6)のとおり、本件特許発明1ないし3は、流動性と溶解性の両立を達成することができない形態を含むものであり、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものである。 (8)証拠方法 甲第A1号証:特開平6-113755号公報 甲第A2号証:特開2005-21016号公報 甲第A3号証:特開2016-116494号公報 甲第A4号証:国際公開第2007/123113号 甲第A5号証:特開2009-242308号公報 甲第A6号証:特開2015-171352号公報 甲第A7号証:理研ビタミン株式会社ウェブサイト「モノグリセライド」 甲第A8号証:「日本界面活性剤工業会 界面活性剤等製品WEB検索」ウェブサイト、および、「ポエムTR-FB」の検索結果を示すウェブサイト 甲第A9号証:岩瀬コスファ株式会社運営ウェブサイト「化粧品・原料データベース Iwase Cosfa 原料 ポエムDO-100V」 甲第A10号証の1:株式会社パウレックウェブサイト「製品情報:FD-MP-01」 甲第A10号証の2:FD-MP-01 の納入仕様書の抜粋(表紙および第1頁) 甲第A11号証:有限会社久光工房運営ウェブサイト:Cosmetic-Info.jp「製品情報:サンソフト Q-12S-C」 甲第A12号証:特開2002-218964号公報 甲第A13号証:特開2006-36644号公報 甲第A14号証:特開2015-91762号公報 甲第A15号証:特表2014-518082号公報 甲第A16号証:実験成績証明書、令和7年3月7日、山田歩 甲第A17号証:製造例4-2,4-6粒度分布測定結果、令和7年2月7日、株式会社セイシン企業 甲第A18号証:製造例4-4,4-8,4-9粒度分布測定結果、令和7年2月20日、株式会社セイシン企業 甲第A19号証:製造例4-7粒度分布測定結果、令和7年2月26日、株式会社セイシン企業 甲第A20号証:宣誓供述書、令和7年9月4日、山田歩 甲第A21号証:セミナー・研修受講証拠資料、令和7年9月5日、山田歩 甲第A22号証:実験成績証明書2、令和7年9月9日、山田歩、柳沢希実佳、安田光穂 甲第A23号証:溶解性試験1の動画、令和7年9月9日、山田歩 甲第A24号証:溶解性試験2の動画、令和7年9月9日、山田歩 甲第A23ないし24号証は令和7年9月25日、同年10月2日及び同年同月9日に特許異議申立人Aから提出された手続補正書(方式)により補正された同年9月10日に提出された回答書に添付されたものである。証拠の表記は、特許異議申立書A並びに上記回答書の記載におおむね従った。以下、順に「甲A1」のようにいう。なお、甲A7ないし甲A9、甲A10の1及び甲A11は電気通信回線(インターネット)を通じて公衆に利用可能となったものであるが、URLの摘記は省略した。 2 特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由の概要等 令和7年4月30日に特許異議申立人Bが提出した手続補正書(方式)により補正された同年3月11日に特許異議申立人Bが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書B」という。)に記載された特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 (1)申立理由B1(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 本件特許発明の課題は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性を両立することにあるものと認められる(段落【0006】及び【0008】)。 そして、本件特許明細書の実施例では、特定の成分で構成された極めて限定された造粒物を用いて、段落【0067】及び【0068】に記載の方法にて、溶解性及び流動性を評価することで、当該課題を解決したとする結果が示されているものの、どのような合理的理由・メカニズムによるものか本件特許明細書を見ても全く定かではなく、本件特許発明で規定する構成要件(発明特定事項)を充足しさえすれば、当該課題を解決できると認められるような本件特許出願時の技術常識も存在しない。 なお、本件特許発明では、特定の成分(タンパク質、糖類、及びグリセリン脂肪酸エステル)以外に、「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下」であること、かつ「水分含量が4.55質量%以下』であること(請求項1~3)と、『安息角が54゜以下」であること(請求項1)、「スパチュラ角が73°未満』であること(請求項2)、又は『崩壊角が36.8°以下」であること(請求項3)が規定されている。 しかし、タンパク質、糖類及びグリセリン脂肪酸エステルを含有する造粒物において、これらの物性値を充足することで、本件特許発明でいう(本件特許発明において解決すべきものとして要求されるレベルで)易溶解性と流動性を両立できるという課題を解決できることはおろか、易溶解性や流動性をそれぞれ単独で実現できることさえ認識できる技術常識はないし、本件特許明細書からも、もちろん当該課題を解決できるものと認識することはできない。 それどころか、本件特許明細書の段落【0016】や、これらの物性値を充足しても課題を解決できなかったとされる比較例(特に、特定の粒度分布、水分含量、安息角、スパチュラ角、崩壊角のいずれも充足する比較例7)の結果はこれらの物性値の充足により、本件特許発明の課題を解決できるわけではないことを如実に示すものである。 このように、本件特許発明で規定する物性値(特定の粒度分布、水分含量、安息角、スパチュラ角、崩壊角)の充足は、課題の解決手段とはなりえない。 従って、広範な成分を規定したにすぎない本件特許発明の造粒物の全体においてまで(拡張して)、当該課題を解決できるものとは認められず、ひいては、本件特許発明1ないし3は、いわゆるサポート要件を充足するものとは認められない。 (2)申立理由B2(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 上記(1)において説明したように、本件特許出願時の技術常識に照らせば、本件特許発明の課題の解決を実現しうる、グリセリン脂肪酸エステルおよび糖類(さらにはこれらの組み合わせ)として、本件特許明細書の実施例・比較例において具体的に使用しているもの以外を探索・見出すことは困難であり、当業者といえども過度の試行錯誤を要するものである。 (3)申立理由B3(明確性要件) 本件特許の請求項2及び3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア スパチュラ角について 本件特許発明2では、スパチュラ角を規定するが、本件特許明細書に記載のスパチュラ角の測定方法では、一義的にスパチュラ角を確定することができない。 すなわち、本件特許明細書には「【0030】・・・装置に備えられた錘を落下位置まで移動した後に落下させ、一度だけスパチュラに衝撃を加える。」、「【0066】・・・付属の錘で1回衝撃を加えた」との記載があるが、錘の種類や落下位置等により衝撃力は大きく変動し、そうすると、スパチュラ角も大きく変動する。 そのため、本件特許明細書に記載のスパチュラ角の測定方法では、測定条件によりスパチュラ角が変動し、スパチュラ角を一義的に確定できない。 イ 崩壊角について 本件発特許発明3では、崩壊角を規定するが、本件特許明細書に記載の崩壊角の測定方法では、一義的に崩壊角を確定することができない。 すなわち、本件特許明細書には「【0063】・・・ 安息角を測定した円錐状堆積物を、測定用テーブルに一定の衝撃を3回加えることで崩壊させた後に円錐状堆積物の直径及び高さから底角を算出し、この底角を崩壊角とする。 ここで一定の衝撃とは使用した測定装置において、採用されている衝撃であり、装置固有かつ一定のものである。崩壊角の測定には、ホソカワミクロン社製パウダテスタPTXを使用した。」との記載があるが、「一定の衝撃」の程度により、崩壊角は変動する。 そのため、本件特許明細書に記載の崩壊角の測定方法では、測定条件により崩壊角が変動し、崩壊角を一義的に確定できない。 (4)申立理由B4(甲第B1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第B1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由B5(甲第B2号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第B2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (6)申立理由B6(甲第B3号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第B3号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (7)申立理由B7(甲第B4号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第B4号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (8)証拠方法 甲第B1号証:特開2016-116494号公報 甲第B2号証:特開2020-145936号公報 甲第B3号証:国際公開第2007/123113号 甲第B4号証:特開平6-113755号公報 甲第B5号証:国際公開第2021/054452号 甲第B6号証:国際公開第2021/054454号 甲第B7号証:日本食品工業学会誌第33巻 第9号 P.691、昭和61(1986)年9月、社団法人 日本食品科学工学会 甲第B8号証:Gypsum & Lime No.172 粉体の付着力(中)P.114-118、昭和56(1981)年5月、石膏石灰学会 甲第B9号証:特開平9-215486号公報 甲第B10号証:造粒ハンドブック第4章 食品工業における造粒 P.567-571および奥付、平成3(1991)年3月10日、オーム社 甲第B11号証:特表2014-518082号公報 証拠の表記は、特許異議申立書Bの記載におおむね従った。以下、順に「甲B1」のようにいう。なお、甲B1、甲B3及び甲B4は、それぞれ甲A3、甲A4及び甲A1と同じものである。 3 特許異議申立人Cが提出した特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由の概要等 令和7年4月30日付け(受付日:同年5月1日)で特許異議申立人Cが提出した手続補正書(方式)により補正された同年3月12日に特許異議申立人Cが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書C」という。)に記載された特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 (1)申立理由C1(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア 「糖類」は単糖類と二糖類を意味するが、実施例はオリゴ糖など糖質に関するものでサポート要件を満たしていない。 イ 粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下という上限と下限について、比較例が存在せず、サポート要件を満たさない。 ウ タンパク質がホエイタンパク質分離物(WPI)と大豆タンパクしか行われておらず、あらゆるタンパク質に適用できるか不明でサポート要件を満たさない。 エ 本件特許の実施例から観て、造粒にはバインダーが必須不可欠であるところ、特許請求の範囲にはバインダーとして何が使われたのか限定されておらず、請求項1ないし3において「タンパク質と、糖類と、グリセリン脂肪酸エステルとを含有する造粒物」としか規定されていない。 よって、請求項1ないし3の「タンパク質と、糖類と、グリセリン脂肪酸エステルとを含有する造粒物であって」はサポート要件を満たさない。 (2)申立理由C2(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 グリセリン脂肪酸エステルについて、具体的に使用したグリセリン脂肪酸エステルが明細書に記載されておらず、再現できない。 (3)申立理由C3(甲第C1号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第C1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由C4(甲第C2号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第C2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)申立理由C5(甲第C3号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第C3号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (6)申立理由C6(甲第C10号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第C10号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (7)申立理由C7(甲第C16号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第C16号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (8)申立理由C8(甲第C17号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし3は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第C17号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (9)証拠方法 甲第C1号証:特開2015-171352号公報 甲第C2号証:国際公開第2022/085440号 甲第C3号証:特開2021-106571号公報 甲第C4号証:粉体機器・装置ハンドブック 粉体機器・装置ハンドブック編集委員会 編、p.411-419、1995年5月30日、日刊工業新聞社 甲第C5号証:日本機械学会 講演論文集51巻(2013)粒子層の流動性に与える含水率の影響に関する研究 甲第C5号証の1:加藤 泰生ほか、粒子層の流動性に与える含水率の影響に関する研究、JSTAGE 「中国四国支部総会・講演会 講演論文集」2013.51巻(2013) 甲第C6号証:第39回(2019年)農薬製剤・施用法シンポジウムでの講演題目「顆粒水和剤における含水率/乾燥条件と水中崩壊性の関係」要旨 甲第C6号証の1:日本農薬学会講演要旨データベース検索画面「発表年度2019年~2019年」、「講演学会名:農薬製剤・施用法シンポジウム講演要旨」、第l~4頁(特に第3頁) 甲第C7号証:メッシュ換算表 甲第C8号証:カゴメ株式会社、栄養成分表示の「糖類」とは何ですか?、1/4~4/4頁 甲第C9号証:本件特許令和6年5月7日付意見書 甲第C10号証:国際公開第2021/054452号 甲第C11号証:フロイント産業HP FLOW-COATER(フローコーター)、WEBアーカイブ、2022/05/27 甲第C12号証:フロイント産業FLOW-COATER(フローコーター)カタログ(2007/10日本で印刷) 甲第C13号証:フロイント産業FLOW-COATER multi Labo(フローコーターマルチラボ)カタログ(2013/07 日本で印刷) 甲第C14号証:特開平11-130663号公報 甲第C15号証:浦安市議会議員 吉村啓治 ブログ(2013/03/20)_流動層造粒コーティング装置『フローコーター』 甲第C16号証:国際公開第2021/054454号 甲第C17号証:特開2016-116494号公報 甲第C18号証:本件特許令和6年1月5日付け拒絶理由通知書 甲第C19号証:筒井理化学、「Hints 使用上のヒント」【基礎知識】流動性に関連する5つの測定 甲第C20号証:甲第C3号証実施例の「安息角×スパチュラ角」相関関係から甲第C1号証・甲第C2号証のスパチュラ角を推定するための資料 参考資料C1:アイアール 技術者教育研究所、【医薬品製剤入門】造粒とは?造粒の目的、造粒方法、主な造粒機の種類などを解説 参考試料C2:(テクニカルノート)マイナーチェンジしたパウダテスタ「PT-X型」の技術的特徴、ホソカワミクロン株式会社、The Micromeritics No.60(2017) 76-80 参考試料C3:ケツト科学研究所のHP 参考試料C4:ザルトリウス社製赤外線水分計MA35 取扱説明書 参考資料C1ないし4は令和7年9月8日に特許異議申立人Cから提出された回答書に添付されたものである。証拠の表記は、特許異議申立書C及び令和7年9月8日に提出された回答書の記載におおむね従った。以下、順に「甲C1」及び「参C1」のようにいう。なお、甲C5ないし8、甲C11ないし13、甲C15、甲C19及び参C1ないし4は電気通信回線(インターネット)を通じて公衆に利用可能となったものであるが、URLの摘記は省略した。また、甲C10、甲C16及び甲C17は、それぞれ甲B5、甲B6及び甲A3(甲B1)と同じものである。 4 特許権者が提出した証拠方法 特許権者は令和7年7月31日に提出した意見書に添付して次の証拠方法を提出した。 参考資料1:パウダテスタ PT-X型 オペレーションマニュアルp17-p30、ホソカワミクロン株式会社、2017年3月17日 参考資料1A:パウダテスタ PT-X型を株式会社東洋新薬が購入した際の2017年3月17日付けの納入仕様書(株式会社東洋新薬が参考資料1のマニュアルを入手した日付を示す証拠) 参考資料2:明細書にて崩壊角、差角又はスパチュラ角の測定にパウダテスタPTXを用いたことを記載しているが衝撃力や錘の重さ、落下位置を明記せず、特許請求の範囲にて崩壊角、差角又はスパチュラ角を規定した特許出願の登録例(株式会社東洋新薬作成) 実験成績証明書:令和7年7月18日、株式会社東洋新薬、鈴木太士 証拠の表記は、上記意見書の記載におおむね従った。 第4 取消理由の概要 令和7年6月2日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。 1 取消理由1(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由1は申立理由A7とおおむね同旨である。 特許異議申立人Aが特許異議申立書Aに添付して提出した甲A16によると、本件特許発明1ないし3において特定される発明特定事項の条件を全て満たす試験例4-9(甲A5の実施例3)の造粒物の溶解性評価が「6(水なじみが悪く攪拌すると匙に粉が付着しダマになる)」となっており、試験例4-9の造粒物は「水に溶かしたときの易溶解性及び流動性を両立するタンパク質含有造粒物」であるとはいえない。 そうすると、本件特許発明1ないし3において特定される発明特定事項の条件を全て満たす造粒物であれば発明の課題を解決できると当業者は理解することはできない。 したがって、本件特許発明1ないし3は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえない。 よって、本件特許発明1ないし3に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合するものであるとはいえない。 2 取消理由2(明確性要件) 本件特許の請求項2及び3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由2は申立理由B3とおおむね同旨である。 (1)本件特許発明2について 発明の詳細な説明の記載では、一義的にスパチュラ角を確定することができるとはいえない。 そうすると、「スパチュラ角が73°未満である」という発明特定事項を有する本件特許発明2に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。 よって、本件特許発明2は明確であるとはいえない。 (2)本件特許発明3について 発明の詳細な説明の記載では、一義的に崩壊角を確定することができるとはいえない。 そうすると、「崩壊角が36.8°以下である」という発明特定事項を有する本件特許発明3に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。 よって、本件特許発明3は明確であるとはいえない。 第5 取消理由についての当審の判断 1 取消理由1(サポート要件)、申立理由B1(サポート要件)及び申立理由C1(サポート要件)について 取消理由1(サポート要件)、申立理由B1(サポート要件)及び申立理由C1(サポート要件)は同じサポート要件の理由なので、併せて検討する。 (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)サポート要件の判断 本件特許の特許請求の範囲(以下、「特許請求の範囲」という。)の記載は上記第2のとおりである。 本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)の【0001】ないし【0006】によると、本件特許発明1ないし3の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は「水に溶かしたときの易溶解性及び流動性を両立するタンパク質含有造粒物」を提供することである。 また、発明の詳細な説明の【0007】には「本発明は以下〔1〕~〔13〕を提供する。 〔1〕 タンパク質と、糖類と、グリセリン脂肪酸エステルとを含有する造粒物であって、粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下である、造粒物。 〔2〕 水分量が5質量%以下である、〔1〕に記載の造粒物。 〔3〕 スパチュラ角(衝撃前と衝撃後の平均値)が73°未満である、〔1〕又は〔2〕に記載の造粒物。 〔4〕 安息角が、54.0°以下である、〔1〕~〔3〕の何れかに記載の造粒物。」と記載され、同【0009】には「本発明の造粒物は、タンパク質と、糖類と、グリセリン脂肪酸エステルとを含有する造粒物であって、粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒度が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒度が50質量%以下である。」と記載され、同【0030】には「造粒物は、スパチュラ角が所定以下であることで、飲料として用いた場合に流動性及び溶解性を効果的に両立させることができる。これにより、例えば本発明では、水入りのコップに容器から造粒物を投入する際に容器から速やかに水中に造粒物を投入でき、利便性が高く、且つ容易に溶解する点で好ましい。この観点から、本発明の造粒物は、スパチュラ角は73°未満が好ましく、70°以下が更に一層好ましく、最も好ましくは67.3°以下である。」と記載され、同【0031】には「本発明の造粒物は、安息角が所定以下であることが、飲料として用いた場合に流動性及び溶解性を効果的に両立させることができる点で好ましい。例えば水入りのコップに容器から造粒物を投入する際に容器から速やかに水中に投入できて利便性が高く、且つ容易に溶解する点で好ましい。この観点から、安息角は54.0°以下が好ましく、50.4°以下が最も好ましい。」と記載され、同【0034】には「上記安息角及び差角が容易に得られる点から造粒物の崩壊角は13°以上60°以下が好ましく、15°以上55°以下がより好ましく、16°以上53°以下が特に好ましく、16°以上37°以下が特に好ましい。」と記載され、同【0040】には「本発明の造粒物は、保存性の点で、水分量が10質量%以下であってもよく、8質量%以下であってもよいが、5質量%以下であることが、流動性、溶解性を特に向上させやすい点で好ましく、4.55質量%以下であることが特に好ましい。」と記載され、同【0069】の【表1】には実施例9の崩壊角が「36.8°」であることが記載されている。すなわち、発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし3に対応する記載がある。 さらに、発明の詳細な説明の【0057】ないし【0075】には「タンパク質と、糖類と、グリセリン脂肪酸エステルとを含有する造粒物であって、粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、水分含量が4.55質量%以下であり、安息角が、54°以下、スパチュラ角が73°未満又は崩壊角が36.8°以下である造粒物」という条件を満たす実施例が上記条件を満たさない比較例と比べて溶解性及び流動性に優れていることを確認する記載がある。 そうすると、発明の詳細な説明の記載により当業者は、「タンパク質と、糖類と、グリセリン脂肪酸エステルとを含有する造粒物であって、粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、水分含量が4.55質量%以下であり、安息角が、54°以下、スパチュラ角が73°未満又は崩壊角が36.8°以下である造粒物」は発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明1ないし3は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「造粒物」である。 したがって、本件特許発明1ないし3は発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 よって、本件特許発明1ないし3に関し、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 (3)取消理由1について 取消理由1は、特許異議申立人Aが特許異議申立書Aに添付して提出した甲A16における試験例4-9(甲A5の実施例3)が本件特許発明1ないし3において特定される発明特定事項の条件を全て満たすことを前提とする理由であるところ、甲A16においては、以下の条件が本件特許発明1ないし3の製造条件と同じかどうか不明であることから、試験例4-9(甲A5の実施例3)が本件特許発明1ないし3において特定される発明特定事項の条件を全て満たすかどうかは不明であるといわざるを得ない。 ・安息角及び崩壊角を求める際に使用するロートのロート径 ・スパチュラ角及び崩壊角を求める際に使用する装置が本件特許発明1ないし3のスパチュラ角及び崩壊角を求める際に使用した「ホソカワミクロン社製パウダテスタPTX」とは異なる装置である「セイシン企業社製マルチテスターMT-02」を使用しており、該装置のスパチュラ角及び崩壊角を求める際の錘の種類、錘の落下位置及び「一定の衝撃」。 ・安息角、スパチュラ角及び崩壊角を測定した際の温湿度 ・水分量を測定する際の温度と時間 したがって、取消理由1はその前提が誤りであり、取消理由1により本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。 (4)特許異議申立人Bの申立理由B1における主張及び特許異議申立人Cの申立理由C1における主張について 上記(2)のとおり、当業者は、「タンパク質と、糖類と、グリセリン脂肪酸エステルとを含有する造粒物であって、粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、水分含量が4.55質量%以下であり、安息角が、54°以下、スパチュラ角が73°未満又は崩壊角が36.8°以下である造粒物」は発明の課題を解決できると認識できる。 また、本件特許発明1ないし3で特定される発明特定事項を有するだけでは発明の課題を解決できないことの具体的な証拠を特許異議申立人B及びCが示している訳でもない。 したがって、特許異議申立人Bの申立理由B1における主張及び特許異議申立人Cの申立理由C1における主張はいずれも採用できない。 (5)取消理由1、申立理由B1及び申立理由C1についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、取消理由1、申立理由B1及び申立理由C1によっては取り消すことはできない。 2 取消理由2(明確性要件)について (1)明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 (2)明確性要件の判断 ア 本件特許発明2について 特許請求の範囲の請求項2の記載は上記第2のとおりであり、本件特許発明2は「スパチュラ角が73°未満である」という発明特定事項を有するものである。 スパチュラ角の測定方法に関して、特許請求の範囲の請求項2に記載はなく、発明の詳細な説明の【0030】には「なおスパチュラ角は、粉体特性評価装置(パウダテスタ、ホソカワミクロン株式会社製パウダテスタ)を用い、パウダテスタの取扱説明書中の記載手順にしたがって行ったものである。 スパチュラと接した状態に設置したバット上に50gの造粒物を投入する。バット上の造粒物が均一な高さであることを確認した後、静かにバットを下方に移動させ、スパチュラ上に造粒物が堆積した状態を作る。この状態でのスパチュラ上の粉体の稜線とスパチュラ底面との角度を測定する(衝撃前)。この後、装置に備えられた錘を落下位置まで移動した後に落下させ、一度だけスパチュラに衝撃を加える。この状態でのスパチュラ上の粉体の稜線とスパチュラ底面との角度を測定する(衝撃後)。この2回の測定を3度行い、この平均値をスパチュラ角とする。」と記載され、同【0066】には「ホソカワミクロン社製パウダテスタPTXを用いて行なった。バット上に静置したヘラの上に造粒物の山を盛ってから、ヘラを静かに持ち上げた後、ヘラ上の粉の稜線とヘラとがなす角度(A)及びその後付属の錘で1回衝撃を加えた後の角度(B)の間の値(A+B)/2を求め、その平均値をスパチュラ角とした。」と記載されている。 発明の詳細な説明には、「粉体特性評価装置(パウダテスタ、ホソカワミクロン株式会社製パウダテスタ)」における錘の種類や落下位置等について具体的には記載されていないが、錘の種類や落下位置等は、測定する装置に固有の数値であり、測定する装置が定まれば必然的に一定となる数値であるから、スパチュラ角を測定する装置が「粉体特性評価装置(パウダテスタ、ホソカワミクロン株式会社製パウダテスタ)」と特定された時点で錘の種類や落下位置等は特定され、一義的にスパチュラ角を確定することができるといえる。 また、他に、本件特許の請求項2にそれ自体不明確な記載や、発明の詳細な説明の記載と整合しない記載はない。 そうすると、「スパチュラ角が73°未満である」という発明特定事項を有する本件特許発明2に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 よって、本件特許発明2は明確である。 イ 本件特許発明3について 特許請求の範囲の請求項3の記載は上記第2のとおりであり、本件特許発明3は「崩壊角が36.8°以下である」という発明特定事項を有するものである。 崩壊角の測定方法に関して、特許請求の範囲の請求項3に記載はなく、発明の詳細な説明の【0063】には「安息角を測定した円錐状堆積物を、測定用テーブルに一定の衝撃を3回加えることで崩壊させた後に円錐状堆積物の直径及び高さから底角を算出し、この底角を崩壊角とする。 ここで一定の衝撃とは使用した測定装置において、採用されている衝撃であり、装置固有かつ一定のものである。崩壊角の測定には、ホソカワミクロン社製パウダテスタPTXを使用した。」と記載されている。 発明の詳細な説明には、「ホソカワミクロン社製パウダテスタPTX」で採用されている「一定の衝撃」について具体的には記載されていないが、「一定の衝撃」とは造粒物の山を盛ったヘラに、付属の錘を落下させることによる衝撃であり、錘の種類や落下位置等は、測定する装置に固有のものであり、測定する装置が定まれば必然的に一定となるものであるから、崩壊角を測定する装置が「ホソカワミクロン株式会社製パウダテスタPTX」と特定された時点で錘の種類や落下位置等は特定され、一義的に崩壊角を確定することができるといえる。 また、他に、本件特許の請求項3にそれ自体不明確な記載や、発明の詳細な説明の記載と整合しない記載はない。 そうすると、「崩壊角が36.8°以下である」という発明特定事項を有する本件特許発明3に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 よって、本件特許発明3は明確である。 (3)取消理由2についてのむすび したがって、本件特許の請求項2及び3に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、取消理由2によっては取り消すことはできない。 第6 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由について 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載された特許異議申立の理由は次のとおりである。 ・申立理由A1(甲A1に基づく新規性・進歩性) ・申立理由A2(甲A2に基づく新規性・進歩性) ・申立理由A3(甲A3に基づく新規性・進歩性) ・申立理由A4(甲A4に基づく新規性・進歩性) ・申立理由A5(甲A5に基づく新規性・進歩性) ・申立理由A6(実施可能要件) ・申立理由B1(サポート要件) ・申立理由B2(実施可能要件) ・申立理由B4(甲B1に基づく新規性・進歩性) ・申立理由B5(甲B2に基づく新規性・進歩性) ・申立理由B6(甲B3に基づく新規性・進歩性) ・申立理由B7(甲B4に基づく新規性・進歩性) ・申立理由C1(サポート要件) ・申立理由C2(実施可能要件) ・申立理由C3(甲C1に基づく進歩性) ・申立理由C4(甲C2に基づく進歩性) ・申立理由C5(甲C3に基づく進歩性) ・申立理由C6(甲C10に基づく進歩性) ・申立理由C7(甲C16に基づく進歩性) ・申立理由C8(甲C17に基づく進歩性) 申立理由B1(サポート要件)及び申立理由C1(サポート要件)については上記第5 1(4)で検討したとおりである。 以下、新規性又は進歩性の理由から順に検討し、次いで実施可能要件の理由を検討する。 1 申立理由A1(甲A1に基づく新規性・進歩性)及び申立理由B7(甲B4に基づく新規性・進歩性)について 甲A1と甲B4は同じ証拠方法なので併せて検討する。 (1)甲A1に記載された事項等 ア 甲A1に記載された事項 甲A1には、「水易溶解性粉末食品およびその製造方法」に関しておおむね次の事項が記載されている。 ・「【特許請求の範囲】 【請求項1】水に対する分散性の低い食用粉末に、炭素数8~14の脂肪酸と重合度4~10のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸エステルを配合してなることを特徴とする水易溶解性粉末食品。 【請求項2】水に対する分散性の低い食用粉末を流動もしくは揺動させながら、これに炭素数8~14の脂肪酸と重合度4~10のポリグリセリンからなるポリグリセリン脂肪酸エステルの溶液を噴霧してから、該粉末を造粒後乾燥することを特徴とする水易溶解性粉末食品の製造方法。」 ・「【0007】 【実施例】次に、本発明を実施例および比較例により詳細に説明する。 実施例1 下記に示す原材料処方の割合の原材料を混合して得た粉末を、流動造粒乾燥機を用い、入口温度60℃、排風温度30℃、造粒時間20分間の条件下で0.04重量%テトラグリセリンモノカプリレート溶液500gを使用して造粒し、その後10分間乾燥処理を行って粉末食品を得た。 原材料処方 デキストリン[パインデックス#3;松谷工業(株)] 1170.4g カゼインナトリウム[ハプロS;日本新薬(株)] 800g ミルクフレーバー 20g ビタミン 6.8g 人工甘味料(ステビア) 2.8g 得られた調製品10gを水40mlに入れ、ガラス棒で15秒間撹拌した後、80メッシュの篩で不溶解物をろ過し、105℃で1時間乾燥した残物の重量を不溶解物量として測定した結果、0.1g以下の微量であった。 【0008】比較例1 実施例1において、0.04重量%テトラグリセリンモノカプリレート溶液500gを、0.04重量%モノグリセリンモノカプリレート溶液500gに代えて、実施例1に準じて粉末食品を得て、これについて実施例1と同様の試験を行った。不溶解物量は1.3gであった。」 イ 甲A1に記載された発明 甲A1に記載された事項を、特に実施例1又は比較例1に関して整理すると、甲A1には次の発明(以下、「甲A1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A1発明> 「【0007】又は【0008】に記載された粉末食品。」(当審注:【0007】又は【0008】については上記ア参照。) (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A1発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A1-1> 本件特許発明1においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、安息角が、54°以下である」と特定されているのに対し、甲A1発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A1-1について検討する。 甲A1には、甲A1発明における粒度分布、水分含量及び安息角に関する記載はなく、甲A1発明における粒度分布、水分含量及び安息角が本件特許発明1で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点A1-1は実質的な相違点である。 そして、甲A1を含めいずれの証拠にも、甲A1発明における粒度分布、水分含量及び安息角を本件特許発明1で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲A1発明において、相違点A1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」(発明の詳細な説明の【0008】)という本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲A1発明であるとはいえないし、甲A1発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と甲A1発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A1-2> 本件特許発明2においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、スパチュラ角が、73°未満である」と特定されているのに対し、甲A1発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A1-2について検討する。 甲A1には、甲A1発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角に関する記載はなく、甲A1発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角が本件特許発明2で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点A1-2は実質的な相違点である。 そして、甲A1を含めいずれの証拠にも、甲A1発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角を本件特許発明2で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲A1発明において、相違点A1-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明2の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明2は甲A1発明であるとはいえないし、甲A1発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明3について ア 対比 本件特許発明3と甲A1発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A1-3> 本件特許発明3においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、崩壊角が36.8°以下である」と特定されているのに対し、甲A1発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A1-3について検討する。 甲A1には、甲A1発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角に関する記載はなく、甲A1発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角が本件特許発明3で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点A1-3は実質的な相違点である。 そして、甲A1を含めいずれの証拠にも、甲A1発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角を本件特許発明3で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲A1発明において、相違点A1-3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明3は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明3の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明3は甲A1発明であるとはいえないし、甲A1発明並びに甲A1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)特許異議申立人の主張について ア 特許異議申立人Aの主張について 特許異議申立人Aの特許異議申立書Aにおける主張は要するに、甲A1発明において、甲A6に記載された条件を採用し、さらに水分含量に関する技術常識を考慮すれば、甲A1発明における粒度分布、水分含量、安息角、スパチュラ角及び崩壊角は甲A16(実験成績証明書)で示された値になるから、本件特許発明1ないし3は甲A1発明であるか、甲A1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものであるが、甲A1発明において、甲A6に記載された条件及び水分含量に関する技術常識を採用していること又は採用できることの根拠が示されていないから、該主張は採用できない。 イ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bの特許異議申立書Bにおける主張は要するに、甲A1発明における粒度分布、水分含量、安息角、スパチュラ角及び崩壊角は他の証拠(甲B1、甲B5、甲B6、甲B3及び甲B9ないし11)に記載された事項を考慮すれば本件特許発明1ないし3で特定された条件を充足する蓋然性が高いから、本件特許発明1ないし3は甲A1発明であるか、甲A1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものであるが、甲A1発明において他の証拠に記載された事項を考慮できることの根拠が示されていないから、該主張は採用できない。 (6)申立理由A1及びB7についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A1及びB7によっては取り消すことはできない。 2 申立理由A2(甲A2に基づく新規性・進歩性)について (1)甲A2に記載された事項等 ア 甲A2に記載された事項 甲A2には、「水易溶性の粉末・顆粒状食品」に関しておおむね次の事項が記載されている。 ・「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、水、牛乳、豆乳等の液体、特に水に易溶性の粉末状或いは顆粒状食品に関し、さらに詳しくはトリグリセリンベヘン酸エステルを含有することを特徴とする粉末状或いは顆粒状の食品及びその製造法に関する。」 ・「【0006】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、従来方法の欠点を克服し、水、温水或いは熱湯に分散又は溶解する際、「ままこ(ダマ)」を生じにくい、粉末状或いは顆粒状の食品を提供することを目的とする。」 ・「【0028】 [実施例1] 顆粒状のコーンポタージュスープを作製し、その分散性を試験した。スープの配合を表2に、用いた乳化剤を表3に示す。 【0029】 【表2】 [図:0001433090000001.jpg] 【0030】 【表3】 [図:0001433090000002.jpg] 【0031】 [顆粒状のコーンポタージュスープの作製] 表2に示す原料(全量:1kg)のうち、乳化剤以外の原料をミキサーで混合し、次に表3に示す乳化剤をそれぞれ添加し、混合した。この混合物を、流動造粒乾燥機(型式:WSG-5;大川原製作所社)を用い、下記の条件で10分間造粒後、水を止め、5分間乾燥処理を行い、顆粒状のコーンポタージュスープ(試料1~6)を得た。一方、対照として、乳化剤無添加の顆粒状のコーンポタージュスープを同様に作製した。 入風温度:60℃ 排風温度:30℃ 噴霧水圧:270kPa 水 流速:140ml/min」 イ 甲A2に記載された発明 甲A2に記載された事項を、特に実施例1のNo.1又はNo.2に関して整理すると、甲A2には次の発明(以下、「甲A2発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A2発明> 「【表2】に示す原料及び【表3】のNo.1又はNo.2の乳化剤を用いた【0031】に記載された顆粒状のコーンポタージュスープ。」(当審注:【表2】、【表3】及び【0031】については上記ア参照。) (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A2発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A2-1> 本件特許発明1においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、安息角が、54°以下である」と特定されているのに対し、甲A2発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A2-1について検討する。 甲A2には、甲A2発明における粒度分布、水分含量及び安息角に関する記載はなく、甲A2発明における粒度分布、水分含量及び安息角が本件特許発明1で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点A2-1は実質的な相違点である。 そして、甲A2を含めいずれの証拠にも、甲A2発明における粒度分布、水分含量及び安息角を本件特許発明1で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲A2発明において、相違点A2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲A2発明であるとはいえないし、甲A2発明並びに甲A2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と甲A2発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A2-2> 本件特許発明2においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、スパチュラ角が、73°未満である」と特定されているのに対し、甲A2発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A2-2について検討する。 甲A2には、甲A2発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角に関する記載はなく、甲A2発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角が本件特許発明2で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点A2-2は実質的な相違点である。 そして、甲A2を含めいずれの証拠にも、甲A2発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角を本件特許発明2で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲A2発明において、相違点A2-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明2の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明2は甲A2発明であるとはいえないし、甲A2発明並びに甲A2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明3について ア 対比 本件特許発明3と甲A2に記載された発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A2-3> 本件特許発明3においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、崩壊角が36.8°以下である」と特定されているのに対し、甲A2発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A2-3について検討する。 甲A2には、甲A2発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角に関する記載はなく、甲A2発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角が本件特許発明3で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点A2-3は実質的な相違点である。 そして、甲A2を含めいずれの証拠にも、甲A2発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角を本件特許発明3で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲A2発明において、相違点A2-3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明3は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明3の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明3は甲A2発明であるとはいえないし、甲A2発明並びに甲A2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)特許異議申立人Aの主張について 特許異議申立人Aの特許異議申立書Aにおける主張は要するに、甲A2発明において、甲A6に記載された条件を採用し、さらに水分含量に関する技術常識を考慮すれば、甲A2発明における粒度分布、水分含量、安息角、スパチュラ角及び崩壊角は甲A16で示された値になるから、本件特許発明1ないし3は甲A2発明であるか、甲A2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものであるが、甲A2発明において、甲A6に記載された条件及び水分含量に関する技術常識を採用していること又は採用できることの根拠が示されていないから、該主張は採用できない。 (6)申立理由A2についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A2によっては取り消すことはできない。 3 申立理由A3(甲A3に基づく新規性・進歩性)、申立理由B4(甲B1に基づく新規性・進歩性)及び申立理由C8(甲C17に基づく進歩性)について 甲A3、甲B1及び甲C17は同じ証拠方法なので併せて検討する。 (1)甲A3に記載された事項等 ア 甲A3に記載された事項 甲A3には、「易溶解性高タンパク含有粉末の製造方法及び易溶解性高タンパク含有粉末」に関しておおむね次の事項が記載されている。 ・「【請求項1】 タンパク含有粉末と糖類とを含み、タンパク質を65質量%以上含む高タンパク含有粉末組成物に、ジグリセリン脂肪酸エステルを含む水溶液を加えて造粒する工程を含む、易溶解性高タンパク含有粉末の製造方法。」 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0013】 本発明は、水やその他の液体に湿潤、沈降しやすく、沈降後も液体中で速やかに崩壊して、人手による撹拌によって良好な分散性を示す易溶解性高タンパク含有粉末の製造方法及びその製造方法により得られた易溶解性高タンパク含有粉末を提供することを課題とする。」 ・「【0056】 (実施例1~4) 下記表1に示す配合(配合の数値は質量部である)で、原料の合計量が3000gとなるように原料を流動層造粒機(大川原製作所社製)に投入し、入口温度95℃±5℃、排風温度50℃±10℃の条件で混合して高タンパク含有粉末組成物とし、混合した高タンパク含有粉末組成物の流動層にジグリセリン脂肪酸エステルを含む溶液2000gを噴霧しながら造粒し、易溶解性高タンパク含有粉末を造粒した。造粒された易溶解性高タンパク含有粉末について、平均粒子径、溶解性評価を行った。結果を表1に示す。」 ・「【0058】 【表1】 [図:0001433090000003.jpg] 」 イ 甲A3に記載された発明 甲A3に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、甲A3には次の発明(以下、「甲A3発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A3発明> 「【表1】の実施例1に示す配合の原料を用いる【0056】に記載された易溶解性高タンパク含有粉末。」(当審注:【表1】及び【0056】については上記ア参照。) (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A3発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A3-1> 本件特許発明1においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、安息角が、54°以下である」と特定されているのに対し、甲A3発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A3-1について検討する。 甲A3には、甲A3発明における粒度分布、水分含量及び安息角に関する記載はなく、甲A3発明における粒度分布、水分含量及び安息角が本件特許発明1で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点A3-1は実質的な相違点である。 そして、甲A3を含めいずれの証拠にも、甲A3発明における粒度分布、水分含量及び安息角を本件特許発明1で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲A3発明において、相違点A3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲A3発明であるとはいえないし、甲A3発明並びに甲A3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と甲A3発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A3-2> 本件特許発明2においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、スパチュラ角が、73°未満である」と特定されているのに対し、甲A3発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A3-2について検討する。 甲A3には、甲A3発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角に関する記載はなく、甲A3発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角が本件特許発明2で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点A3-2は実質的な相違点である。 そして、甲A3を含めいずれの証拠にも、甲A3発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角を本件特許発明2で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲A3発明において、相違点A3-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明2の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明2は甲A3発明であるとはいえないし、甲A3発明並びに甲A3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明3について ア 対比 本件特許発明3と甲A3発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A3-3> 本件特許発明3においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、崩壊角が36.8°以下である」と特定されているのに対し、甲A3発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A3-3について検討する。 甲A3には、甲A1発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角に関する記載はなく、甲A3発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角が本件特許発明3で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点A3-3は実質的な相違点である。 そして、甲A3を含めいずれの証拠にも、甲A3発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角を本件特許発明3で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲A3発明において、相違点A3-3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明3は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明3の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明3は甲A3発明であるとはいえないし、甲A3発明並びに甲A3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)特許異議申立人の主張について ア 特許異議申立人Aの主張について 特許異議申立人Aの特許異議申立書Aにおける主張は要するに、甲A3発明において、甲A6に記載された条件を採用し、さらに水分含量に関する技術常識を考慮すれば、甲A3発明における粒度分布、水分含量、安息角、スパチュラ角及び崩壊角は甲A16(実験成績証明書)で示された値になるから、本件特許発明1ないし3は甲A3発明であるか、甲A3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものであるが、甲A3発明において、甲A6に記載された条件及び水分含量に関する技術常識を採用していること又は採用できることの根拠が示されていないから、該主張は採用できない。 イ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bの特許異議申立書Bにおける主張は要するに、甲A3発明における粒度分布、水分含量、安息角、スパチュラ角及び崩壊角は他の証拠(甲B1、甲B5、甲B6、甲B3及び甲B9ないし11)に記載された事項を考慮すれば本件特許発明1ないし3で特定された条件を充足する蓋然性が高いから、本件特許発明1ないし3は甲A3発明であるか、甲A3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものであるが、甲A3発明において他の証拠に記載された事項を考慮できることの根拠が示されていないから、該主張は採用できない。 ウ 特許異議申立人Cの主張について 特許異議申立人Cの特許異議申立書Cにおける主張は要するに、拒絶理由通知(甲C18)に対する意見書(甲C9)の主張が無効であるから、本件特許発明1ないし3は甲A3発明であるか、甲A3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものであり、他に具体的な主張を伴うものではない。 そして、意見書の主張が無効かどうかで新規性・進歩性の判断は左右されるものではないし、他に具体的な主張がされていないから、該主張は採用できない。 (6)申立理由A3、B4及びC8についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A3、B4及びC8によっては取り消すことはできない。 4 申立理由A4(甲A4に基づく新規性・進歩性)及び申立理由B6(甲B3に基づく新規性・進歩性)について 甲A4と甲B3は同じ証拠方法なので併せて検討する。 (1)甲A4に記載された事項等 ア 甲A4に記載された事項 甲A4には、「ホエープロテイン含有顆粒およびその製造方法」に関しておおむね次の事項が記載されている。 ・「[0027] 試験例 ホエープロテイン75重量部、乳糖14. 9重量部、クエン酸8.7重量部を流動層造粒機に入れて65℃にて混合しながら、プルラン5重量0 /0、スクラロース1重量%を水に溶解したバインダー液10重量部を噴霧して造粒を行った。噴霧終了後、85℃にて水分が3重量%になるまで乾燥し、常温まで冷却して顆粒を得た。この顆粒に、表1の各種乳化剤を水と等重量混合したスプレー液1.6重量部(比較例9については、全量水)をそれぞれ噴霧して最終製品としてのホエープロテイン含有顆粒を得た。得られたホエープロテイン含有顆粒10gを25℃、200gの水に加えて、スパーテルで15秒間均一に攪拌して溶解したときのだまの発生について調べた。また、分光光度計(株式会社島津製作所製:UV-2400PC)を用いて、得られた水溶液の波長800nmの光の透過率を測定した。なお、各水溶液はpH3.3であった。結果は表1に示されるとおりであった。 [0028][表1] [図:0001433090000004.jpg] 」 イ 甲A4に記載された発明 甲A4に記載された事項を、特に実施例1に関して整理すると、甲A4には次の発明(以下、「甲A4発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A4発明> 「[0027]及び[0028]に実施例1として記載されたホエープロテイン含有顆粒。」(当審注:[0027]、[0028]及び実施例1については上記ア参照。) (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A4発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A4-1> 本件特許発明1においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、安息角が、54°以下である」と特定されているのに対し、甲A4発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A4-1について検討する。 甲A4には、甲A4発明における粒度分布、水分含量及び安息角に関する記載はなく、甲A4発明における粒度分布、水分含量及び安息角が本件特許発明1で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点A4-1は実質的な相違点である。 そして、甲A4を含めいずれの証拠にも、甲A4発明における粒度分布、水分含量及び安息角を本件特許発明1で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲A4発明において、相違点A4-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲A4発明であるとはいえないし、甲A4発明並びに甲A4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と甲A4発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A4-2> 本件特許発明2においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、スパチュラ角が、73°未満である」と特定されているのに対し、甲A4発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A4-2について検討する。 甲A4には、甲A4発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラに関する記載はなく、甲A4発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角が本件特許発明2で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点A4-2は実質的な相違点である。 そして、甲A4を含めいずれの証拠にも、甲A4発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角を本件特許発明2で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲A4発明において、相違点A4-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明2の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明2は甲A4発明であるとはいえないし、甲A4発明並びに甲A4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明3について ア 対比 本件特許発明3と甲A4発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A4-3> 本件特許発明3においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、崩壊角が36.8°以下である」と特定されているのに対し、甲A4発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A4-3について検討する。 甲A4には、甲A4発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角に関する記載はなく、甲A4発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角が本件特許発明3で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点A4-3は実質的な相違点である。 そして、甲A4を含めいずれの証拠にも、甲A4発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角を本件特許発明3で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲A4発明において、相違点A4-3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明3は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明3の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明3は甲A4発明であるとはいえないし、甲A4発明並びに甲A4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)特許異議申立人の主張について ア 特許異議申立人Aの主張について 特許異議申立人Aの特許異議申立書Aにおける主張は要するに、甲A4発明において、甲A6に記載された条件を採用すれば、甲A4発明における粒度分布、水分含量、安息角、スパチュラ角及び崩壊角は甲A16(実験成績証明書)で示された値になるから、本件特許発明1ないし3は甲A4発明であるか、甲A4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものであるが、甲A4発明において、甲A6に記載された条件を採用していること又は採用できることの根拠が示されていないから、該主張は採用できない。 イ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bの特許異議申立書Bにおける主張は要するに、甲A4発明における粒度分布、水分含量、安息角、スパチュラ角及び崩壊角は他の証拠(甲B1、甲B5、甲B6、甲B3及び甲B9ないし11)に記載された事項を考慮すれば本件特許発明1ないし3で特定された条件を充足する蓋然性が高いから、本件特許発明1ないし3は甲A4発明であるか、甲A4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものであるが、甲A4発明において他の証拠に記載された事項を考慮できることの根拠が示されていないから、該主張は採用できない。 (6)申立理由A4及びB6についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A4及びB6によっては取り消すことはできない。 5 申立理由A5(甲A5に基づく新規性・進歩性)について (1)甲A5に記載された事項等 ア 甲A5に記載された事項 甲A5には、「水易溶解性たんぱく粉末栄養組成物およびその製造方法」に関しておおむね次の事項が記載されている。 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明の目的は、上述の状況を鑑みてなされたもので、水に難溶解性の乳清たんぱくに、特定のポリグリセリン脂肪酸エステルを添加することにより、水に容易に、かつ、透明に溶解することを可能とし、経口的な栄養補給を必要とする外科手術患者や高齢者あるいは低栄養状態の患者などが摂取しやすくした水易溶解性高たんぱく粉末栄養組成物およびその製造方法を提供するものである。」 ・「【0023】 (実施例3) 乳清たんぱく(たんぱく質含量:94重量%)10.6kgおよび表1に示す配合でミネラルミックス98gを流動造粒乾燥機にいれ、入口温度70℃、排風温度60℃、造粒時間5分間の条件下で、粉体を流動させる。この流動層にデカグリセリンモノラウレート50gとシアノコバラミン(デキストリンによる1000倍散)0.8gを水1500gに溶解したバインダー液をノズル噴霧し、粉体表面に均一に界面活性剤液を付着させ、凝集粒をつくり、これを25分間乾燥処理を行った。その後、表2に示すビタミンミックス120.4gを流動造粒乾燥機にいれ、5分間混合処理を行って水易溶解性高たんぱく粉末栄養組成物を得た。 なお、下記評価法1~3では、この水易溶解性高たんぱく粉末栄養組成物10.82gを水300mLに添加し、500rpmで30秒間攪拌することにより、容易に溶解し、そのときの透過率は57%であった。また、この水易溶解性高たんぱく粉末栄養組成物をスープに溶解した際の風味試験の評価は4.8であり、ほとんどの被験者は、界面活性剤の臭味がせず、おいしく食べられた。 【0024】 【表1】 [図:0001433090000005.jpg] 【0025】 【表2】 [図:0001433090000006.jpg] 」 ・「【0026】 (評価法1:溶解性試験) 実施例3~6の水易溶解性高たんぱく粉末栄養組成物および比較例3~12の高たんぱく粉末栄養組成物10.82gを水300mLに添加し、500rpmで30秒間攪拌した後の溶解性を評価した。結果を表3に示す。 ○:溶解した。 △:わずかに不溶解物が残った。 ×:溶解しなかった。 (評価法2:透明性試験) 実施例3~6の水易溶解性高たんぱく粉末栄養組成物および比較例3~12の高たんぱく粉末栄養組成物10.82gを水300mLに溶解したときの透過率を吸光分光光度計により測定した。結果を表3に示す。 (評価法3:風味試験) 実施例3~6の水易溶解性高たんぱく粉末栄養組成物および比較例3~12の高たんぱく粉末栄養組成物10.82gをスープ粉末(クノール食品(株)、チキンコンソメ)10.2gとともに70℃のお湯150mLに溶解し、10名の被験者に食してもらい、風味を官能評価した。評価は次に示す5点で行い、平均点を算出した。結果を表3に示す。 5点:界面活性剤の臭味がせず、おいしく食べられる。 4点:界面活性剤の臭味があまりせず、食べられる。 3点:どちらともいえない。 2点:界面活性剤の臭味がわずかにあり、あまり食べられない。 1点:界面活性剤の臭味があり、食べられない。 【0027】 【表3】 [図:0001433090000007.jpg] 」 イ 甲A5に記載された発明 甲A5に記載された事項を、特に実施例3に関して整理すると、甲A5には次の発明(以下、「甲A5発明」という。)が記載されていると認める。 <甲A5発明> 「【0023】に実施例3として記載された水易溶解性高たんぱく粉末状栄養組成物。」(当審注:【0023】及び実施例3については上記ア参照。) (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲A5発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A5-1> 本件特許発明1においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、安息角が、54°以下である」と特定されているのに対し、甲A5発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A5-1について検討する。 甲A5には、甲A5発明における粒度分布、水分含量及び安息角に関する記載はなく、甲A5発明における粒度分布、水分含量及び安息角が本件特許発明1で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点A5-1は実質的な相違点である。 そして、甲A5を含めいずれの証拠にも、甲A5発明における粒度分布、水分含量及び安息角を本件特許発明1で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲A5発明において、相違点A5-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲A5発明であるとはいえないし、甲A5発明並びに甲A5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と甲A5発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A5-2> 本件特許発明2においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、スパチュラ角が、73°未満である」と特定されているのに対し、甲A5発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A5-2について検討する。 甲A5には、甲A5発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角に関する記載はなく、甲A5発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角が本件特許発明2で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点A5-2は実質的な相違点である。 そして、甲A5を含めいずれの証拠にも、甲A5発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角を本件特許発明2で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲A5発明において、相違点A5-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明2の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明2は甲A5発明であるとはいえないし、甲A5発明並びに甲A5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明3について ア 対比 本件特許発明3と甲A5発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点A5-3> 本件特許発明3においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、崩壊角が36.8°未満である」と特定されているのに対し、甲A5発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点A5-3について検討する。 甲A5には、甲A5発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角に関する記載はなく、甲A5発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角が本件特許発明3で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点A5-3は実質的な相違点である。 そして、甲A5を含めいずれの証拠にも、甲A5発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角を本件特許発明3で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲A5発明において、相違点A5-3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明3は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明3の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明3は甲A5発明であるとはいえないし、甲A5発明並びに甲A5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)特許異議申立人の主張について 特許異議申立人Aの特許異議申立書Aにおける主張は要するに、甲A5発明において、甲A6に記載された条件を採用すれば、甲A5発明における粒度分布、水分含量、安息角、スパチュラ角及び崩壊角は甲A16(実験成績証明書)で示された値になるから、本件特許発明1ないし3は甲A5発明であるか、甲A5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものであるが、甲A5発明において、甲A6に記載された条件を採用していること又は採用できることの根拠が示されていないから、該主張は採用できない。 (6)申立理由A5についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由A5によっては取り消すことはできない。 6 申立理由B5(甲B2に基づく新規性・進歩性)について (1)甲B2に記載された事項等 ア 甲B2に記載された事項 甲B2には、「タンパク質含有粉末の水分散性改良剤」に関しておおむね次の事項が記載されている。 ・「【0006】 本発明は、タンパク質含有粉末に添加することにより、該粉末の水分散性を向上させることのできるタンパク質含有粉末の水分散性改良剤を提供することを目的とする。」 ・「【実施例】 【0032】 [水分散性改良剤の調製] (1)原材料 <(a)成分> 1)ジグリセリンラウリン酸エステル(商品名:ポエムDL-100;モノエステル体含有量約75質量%;理研ビタミン社製) 2)ジグリセリンミリスチン酸エステル(商品名:ポエムDM-100;モノエステル体含有量約80質量%;理研ビタミン社製) 3)ジグリセリンパルミチン酸エステル(商品名:ポエムDP-95RF;モノエステル体含有量約80質量%;理研ビタミン社製) <(b)成分> 4)ペンタグリセリンオレイン酸エステル(商品名:サンソフトA-171E;太陽化学社製) 5)ヘキサグリセリンオレイン酸エステル(商品名:SYグリスターMO-5S;阪本薬品工業社製) 6)デカグリセリンオレイン酸エステル(商品名:ポエムJ-0381V;理研ビタミン社製) <(c)成分> 7)果糖ブドウ糖液糖(商品名:ハイフラクトM-75;日本コーンスターチ社製) 8)水(上水) 【0033】 (2)原材料の配合 前記原材料を用いて調製した水分散性改良剤1~12の配合組成を表1に示した。このうち、水分散性改良剤1~6は本発明の実施例であり、水分散性改良剤7~12はそれらに対する比較例である。 【0034】 【表1】 [図:0001433090000008.jpg] 【0035】 (3)水分散性改良剤の調製方法 表1に示した配合割合に従い、前記原材料を500mL容のガラス製ビーカーに入れ、70℃に加温しながら攪拌混合した後、室温まで放冷し、水分散性改良剤1~12を各200g得た。 【0036】 [ホエータンパク質含有粉末による評価] (1)水分散性改良剤の添加 前記水分散性改良剤1~12を水で希釈し、水分散性改良剤7.5%水溶液1~12を得た。なお、水分散性改良剤9のみ水への溶解性が不十分であったため40℃の温水を使用し、その他の水分散性改良剤については常温(20℃)の水を使用した。流動層乾燥機(商品名:フローコーター;型式:FL-MINI;フロイント産業社製)にホエータンパク質含有粉末(商品名:PROGEL 800;Friesland Campina社製)150gを仕込み、排気温度が35~40℃となるように調整しながら温風で流動させ、ここに前記水分散性改良剤7.5%水溶液1~12各20gを噴霧して混合した。噴霧完了後、さらに5分間同条件で流動させて乾燥し、ホエータンパク質含有粉末1~12を得た。 【0037】 (2)牛乳への分散試験 200mL容のガラス製ビーカーに5℃の牛乳140mLを入れ、ここに前記ホエータンパク質含有粉末1~12を各7g加えた。スパチュラで30秒間攪拌して混合した後、これを14mesh(目開き1.18mm)のステンレス製篩を通しながらボウルに流し入れたところ、篩を通過しなかった粗大な「ままこ」が一定量篩上に残った。その後、さらに水100mLを該篩にかけ、篩及び「ままこ」に付着した牛乳を洗い流した。「ままこ」が付着した篩を5分間静置して余分な水分を切った後、該篩の質量を測定し、その質量から篩自体の質量を差し引いて、篩上に残った粗大な「ままこ」の質量を算出した。また、対照として前記(1)の処理を行っていないホエータンパク質含有粉末(未処理品)についても同様の試験を行った。 【0038】 (3)水分散改良効果の評価 各ホエータンパク質含有粉末について前記分散試験を5回ずつ実施し、「ままこ」の質量の平均値を求めた。この平均値に基づき、下記の基準に従って水分散性改良効果の評価を記号化した。結果を表2に示す。 〔記号化基準〕 ◎:極めて良好 平均値3.5未満 ○:良好 平均値3.5以上、4.0未満 △:やや悪い 平均値4.0以上、5.0未満 ×:悪い 平均値5.0以上 【0039】 【表2】 [図:0001433090000009.jpg] 」 イ 甲B2に記載された発明 甲B2に記載された事項を、特に実施例1ないし6に関して整理すると、甲B2には次の発明(以下、「甲B2発明」という。)が記載されていると認める。 <甲B2発明> 「実施例1ないし6として記載されたホエータンパク質含有粉末。」(当審注:実施例1ないし6については上記ア参照。) (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲B2発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点B2-1> 本件特許発明1においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、安息角が、54°以下である」と特定されているのに対し、甲B2発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点B2-1について検討する。 甲B2には、甲B2発明における粒度分布、水分含量及び安息角に関する記載はなく、甲B2発明における粒度分布、水分含量及び安息角が本件特許発明1で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点B2-1は実質的な相違点である。 そして、甲B2を含めいずれの証拠にも、甲B2発明における粒度分布、水分含量及び安息角を本件特許発明1で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲B2発明において、相違点B2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲B2発明であるとはいえないし、甲B2発明並びに甲B2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と甲B2発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点B2-2> 本件特許発明1においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、スパチュラ角が、73°未満である」と特定されているのに対し、甲B2発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点B2-2について検討する。 甲B2には、甲B2発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角に関する記載はなく、甲B2発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角が本件特許発明2で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点B2-2は実質的な相違点である。 そして、甲B2を含めいずれの証拠にも、甲B2発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角を本件特許発明2で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲B2発明において、相違点B2-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明2の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明2は甲B2発明であるとはいえないし、甲B2発明並びに甲B2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明3について ア 対比 本件特許発明3と甲B2発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違又は一応相違する。 <相違点B2-3> 本件特許発明3においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、崩壊角が36.8°未満である」と特定されているのに対し、甲B2発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点B2-3について検討する。 甲B2には、甲B2発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角に関する記載はなく、甲B2発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角が本件特許発明3で特定された値になるという当業者の技術常識がある訳でもないから、相違点B2-3は実質的な相違点である。 そして、甲B2を含めいずれの証拠にも、甲B2発明における粒度分布、水分含量及び崩壊角を本件特許発明3で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲B2発明において、相違点B2-3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明3は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明3の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明3は甲B2発明であるとはいえないし、甲B2発明並びに甲B2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bの特許異議申立書Bにおける主張は要するに、甲B2発明における粒度分布、水分含量、安息角、スパチュラ角及び崩壊角は他の証拠(甲B1、甲B5、甲B6、甲B3、甲B9ないし11及び甲B8)に記載された事項を考慮すれば本件特許発明1ないし3で特定された条件を充足する蓋然性が高いから、本件特許発明1ないし3は甲B2発明であるか、甲B2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものであるが、甲B2発明において他の証拠に記載された事項を考慮できることの根拠が示されていないから、該主張は採用できない。 (6)申立理由B5についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないので、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由B5によっては取り消すことはできない。 7 申立理由C3(甲C1に基づく進歩性)について (1)甲C1に記載された事項等 ア 甲C1に記載された事項 甲C1には、「澱粉を含有する顆粒状スープ類の製造方法」に関しておおむね次の事項が記載されている。 ・「【0008】 本発明は、風香味が良く且つ溶解性も良好な澱粉含有顆粒状スープ類を製造する方法、及び、該製造方法により製造される風香味及び溶解性が好適な澱粉含有顆粒状スープ類等を提供することを目的とする。」 ・「【実施例1】 【0025】 (澱粉含有顆粒状スープ類の溶解性確認試験I) 各種条件で製造した顆粒状コーンスープの溶解性を比較確認するため、以下の試験を実施した。 【0026】 下記表1に記載の配合で顆粒状コーンスープを各種製造した。具体的には、まず、原料中の澱粉とデキストリンを流動層造粒により造粒した。この造粒の条件は、結合剤として3%α化澱粉水溶液を用い、風量0.4m3、噴霧速度6ml/分、給気温度90℃とした。次に、この造粒した澱粉及びデキストリンと、下記表2に示すように調製(粉体混合又は流動層造粒)した他の原料を混合した(試験区分I~III)。そして、試験区分I及びIIIについては、混合物を最終加工工程として攪拌造粒を行った。このようにして得られた各試験区分の顆粒について、それぞれ300mlビーカーに20g投入し、羽付き攪拌機を200rpmに回転させながら熱湯を200ml注ぎ、30秒間攪拌し続け、その後60秒間静置してから熱湯を捨て、溶け残った重量を測定することにより、溶解性の確認を行った。なお、溶解性の確認は、各試験区分について上記測定を3回行い、その平均値を算出した。 【0027】 【表1】 [図:0001433090000010.jpg] 【0028】 【表2】 [図:0001433090000011.jpg] 」 ・「【0031】 また、試験区分I~IIIの顆粒について、粉体物性値の確認を行った。具体的には、JIS規格にそった標準篩にて粉を落としきるまで振り、各メッシュ上に残る重量から粒度分布を測定し、また、パウダーテスター(ホソカワミクロン製)により、安息角、崩潰角、差角、嵩比重(ゆるめ嵩比重)、固め嵩比重、圧縮率の各項目を測定した。 【0032】 この結果を表4(粒度分布測定値)、表5(パウダーテスター測定値)、及び図1(粒度分布グラフ)に示した。この結果が示すとおり、試験区分IIIは嵩比重が非常に軽く且つ粒子もかなり大きく、個包装の量が多くなりすぎるという欠点が散見されることが明らかとなった。逆に、本発明に係る方法で製造した試験区分Iは、溶解性が良好であり且つ粉体物性も個包装に適したものであることが示された。 【0033】 【表4】 [図:0001433090000012.jpg] 【0034】 【表5】 [図:0001433090000013.jpg] 」 イ 甲C1に記載された発明 甲C1に記載された事項を、特に実施例1の試験区分Iに関して整理すると、甲C1には次の発明(以下、「甲C1発明」という。)が記載されていると認める。 <甲C1発明> 「実施例1の試験区分Iとして記載された顆粒状コーンスープ。」(当審注:実施例1の試験区分Iについては上記ア参照。) (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲C1発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点C1-1> 本件特許発明1においては「グリセリン脂肪酸エステルとを含有する」及び「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲C1発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点C1-1について検討する。 甲C1を含めいずれの証拠にも、甲C1発明においてグリセリン脂肪酸エステルを含有させる動機付け並びに甲C1発明における粒度分布及び水分含量を本件特許発明1で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲C1発明において、相違点C1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲C1発明並びに甲C1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と甲C1発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点C1-2> 本件特許発明2においては「グリセリン脂肪酸エステルとを含有する」及び「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、スパチュラ角が、73°未満である」と特定されているのに対し、甲C1発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点C1-2について検討する。 甲C1を含めいずれの証拠にも、甲C1発明においてグリセリン脂肪酸エステルを含有させる動機付け並びに甲C1発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角を本件特許発明2で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲C1発明において、相違点C1-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明2の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明2は甲C1発明並びに甲C1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明3について ア 対比 本件特許発明3と甲C1発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点C1-3> 本件特許発明3においては「グリセリン脂肪酸エステルとを含有する」及び「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲C1発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点C1-3について検討する。 甲C1を含めいずれの証拠にも、甲C1発明においてグリセリン脂肪酸エステルを含有させる動機付け並びに甲C1発明における粒度分布及び水分含量を本件特許発明3で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲C1発明において、相違点C1-3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明3は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明3の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明3は甲C1発明並びに甲C1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)特許異議申立人Cの主張について 特許異議申立人Cの特許異議申立書Cにおける主張は要するに、甲C1発明において、甲C2、甲C3及び甲C6に記載された事項を考慮すれば本件特許発明1ないし3は容易に発明をすることができたものであるというものであるが、甲C1発明において他の証拠に記載された事項を考慮できることの根拠が示されていないから、該主張は採用できない。 (5)申立理由C3についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないので、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由C3によっては取り消すことはできない。 8 申立理由C4(甲C2に基づく進歩性)について (1)甲C2に記載された事項等 ア 甲C2に記載された事項 甲C2には、「顆粒状食品及びその製造方法」に関しておおむね次の事項が記載されている。 ・「実施例 [0084] 以下の実施例において、本開示の具体的な実施態様を例示するが、本発明はこれに限定されるものではない。表も含めて部及びパーセントは全て、特に明記しない限り質量による。 [0085]〈原料〉 本実施例で使用した原料は以下のとおりである。 [0086](A)脂肪酸エステル ・脂肪酸エステルAp(モノグリセリンベヘン酸エステル及びオクタグリセリンステアリン酸エステルの混合物) ・脂肪酸エステルBp(モノグリセリンステアリン酸エステル、ペンタグリセリンパルミチン酸エステル、及びペンタグリセリンステアリン酸エステルの混合物) ・脂肪酸エステルCp(モノグリセリンステアリン酸エステル及びジグリセリンステアリン酸エステルの混合物) ・・・(略)・・・ [0089](D)食品原料 ・S1(醤油系粉末スープ)(結晶物:41.6質量%、粉末原料:58.4質量%)」 ・「[0104]例1 顆粒状スープを以下の手順で調製した。 [0105]《プレミックス調製》 (D)食品原料としてS1(醤油系粉末スープ)、及び(A)脂肪酸エステルApを、コニカルブレンダー(ダブルコーンミキサーWM-20、株式会社セイワ技研製)に投入し、混合して、プレミックスを調製した。(D)食品原料の結晶物は解砕機で予め粉状にした。S1と脂肪酸エステル-Apの配合比は、99.16:0.84(質量比)であった。 [0106]《流動層造粒》 プレミックスを流動層コーティング装置(フローコーター、株式会社大川原製作所製)の目皿に投入した。吸気(給気)温度を60℃、ダンパー開度を0.03MPa、噴霧空気圧を0.18MPaに設定し、プレミックスを浮遊させながら、増粘剤(グアーガム、オルノーSY-1、オルガノフードテック株式会社製)の0.3質量%水溶液をノズルからプレミックスに噴霧することにより粉末を液体架橋させて造粒物を形成した。造粒物には、プレミックス100質量部に対して増粘剤(固形分)0.04~0.05質量部が含まれていた。その後、吸気(給気)温度を70℃に設定し、4~6分間造粒物を乾燥し、室温まで冷却した。冷却後、ふるい(TESTING SIEVE(目開き2mm、線径0.9mm)、東京スクリーン株式会社製)を用いて粒径の大きい造粒物を除去した。圧縮率16%以上の場合は、得られた造粒物を円錐型リボン混合乾燥装置(リボコーンRM-10D、株式会社大川原製作所製)に投入し、温度を60~65℃に設定し、10分間撹拌して更に水分除去することで、造粒物の圧縮率を低下させた。 [0107]《ポリオール分散油吹付け》 造粒物を流動層コーティング装置(フローコーター、株式会社大川原製作所製)の目皿に投入した。(C)油脂として醤油系調味油中に(B)ポリオールとしてグリセリンを添加し、トルネード撹拌機(品名:TORNADO、タービン型T-125、撹拌シャフト50cm、アズワン株式会社製)を用いて、回転数400~450rpm、撹拌時間10分で撹拌して、ポリオール分散油(グリセリン濃度9~10質量%)を調製した。撹拌は、撹拌羽根をタンク中央でタンク底面から5~10mmの高さに固定し、泡が立たないように回転数400~450rpmで10分以上行った。その後、チューブ式ローラー送液定量ポンプを用いて、ポリオール分散油調製後20分以内(早いもので5分以内)にポリオール分散油を造粒物に吹き付けた。送液速度は12mL/分(ボリューム10)、吸気温度は60℃、ダンパー開度は0.03~0.05MPa、噴霧空気圧は0.01~0.02MPaであった。グリセリンと油脂は互いに相溶性を有さないことから、ポリオール分散油中のポリオールは油脂から経時で分離するため、撹拌は吹付け終了まで継続した。 ・・・(略)・・・ [0110]例2~例5及び比較例3~比較例5 表2に記載のとおり脂肪酸エステルを変更した以外は例1と同様の手順により顆粒状スープを調製した。 [0111] 例1~例5及び比較例1~比較例5の顆粒状スープの詳細及び特性を表2に示す。 [0112] [表2-1] [図:0001433090000014.jpg] [表2-2] [図:0001433090000015.jpg] 」 イ 甲C2に記載された発明 甲C2に記載された事項を、特に例1又は3に関して整理すると、甲C2には次の発明(以下、「甲C2発明」という。)が記載されていると認める。 <甲C2発明> 「例1又は3として記載された顆粒状スープ。」(当審注:例1又は3については上記ア参照。) (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲C2発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点C2-1> 本件特許発明1においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲C2発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点C2-1について検討する。 甲C2を含めいずれの証拠にも、甲C2発明における粒度分布及び水分含量を本件特許発明1で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲C2発明において、相違点C2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲C2発明並びに甲C2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と甲C2発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点C2-2> 本件特許発明2においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、スパチュラ角が、73°未満である」と特定されているのに対し、甲C2発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点C2-2について検討する。 甲C2を含めいずれの証拠にも、甲C2発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角を本件特許発明2で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲C2発明において、相違点C2-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明2の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明2は甲C2発明並びに甲C2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明3について ア 対比 本件特許発明3と甲C2発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点C2-3> 本件特許発明3においては「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲C2発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点C2-3について検討する。 甲C2を含めいずれの証拠にも、甲C2発明における粒度分布及び水分含量を本件特許発明3で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲C2発明において、相違点C2-3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明3は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明3の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明3は甲C2発明並びに甲C2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 なお、特許異議申立人Cは、甲C2の他の例から認定した発明から容易である旨の主張もしているが、甲C2の他の例から甲C2発明を認定した場合についても同様に判断される。 (4)特許異議申立人Cの主張について 特許異議申立人Cの特許異議申立書Cにおける主張は要するに、甲C2発明において、甲C1、甲C3及び甲C6に記載された事項を考慮すれば本件特許発明1ないし3は容易に発明をすることができたものであるというものであるが、甲C2発明において他の証拠に記載された事項を考慮できることの根拠が示されていないから、該主張は採用できない。 (5)申立理由C4についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないので、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由C4によっては取り消すことはできない。 9 申立理由C5(甲C3に基づく進歩性)について (1)甲C3に記載された事項等 ア 甲C3に記載された事項 甲C3には、「顆粒の製造方法及び顆粒」に関しておおむね次の事項が記載されている。 ・「【0061】 <実施例1> 水にイソマルツロース酵素反応液(三井製糖株式会社製)を加え、湯せんで80℃に加温しながら溶解し、溶液全量基準で65質量%のイソマルツロース溶液(糖液)を5kg得た。このイソマルツロース溶液5kgを金属製容器に入れて、糖液を30℃になるまで急冷した後、高圧ホモゲナイザー(株式会社イズミフードマシナリ製、「HV-0A1-1.5S」)で、20MPaの圧力下、60Hzで2時間処理した。処理後の溶液(糖懸濁液Aともいう)についてデジタルマイクロスコープ(斉藤光学株式会社製、「SKM-S31B-PC」、倍率:500倍)で観察したところ、粒径が20~80μmのイソマルツロースの結晶が糖懸濁液A中に含まれていた。糖懸濁液Aのデジタルマイクロスコープによる観察結果を、図1(a)に示す。糖懸濁液Aの晶出率は40%であった。 【0062】 糖懸濁液Aに、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)(オリエンタル酵母株式会社製、「酵母由来アルコールデヒドロゲナーゼ」、酵母由来、分子量:141~151kDa)と、牛血清アルブミン(BSA)(富士フィルム和光純薬株式会社製、「ウシ血清アルブミン」)とを、固形分全量基準で0.1質量%となる量で添加することにより、混合懸濁液(混合懸濁液Aともいう)を得た。このとき、ADHとBSAの質量比を、ADH:BSA=1:2とした。 【0063】 <実施例2> 水にイソマルツロース(三井製糖株式会社製)を加え、湯せんで80℃に加温しながら溶解し、溶液全量基準で57.5質量%のイソマルツロース溶液(糖液)を5kg得た。このイソマルツロース溶液5kgを金属製容器に入れて、糖液が30℃になるまで急冷した。35℃以下の温度を維持しながら、高圧ホモゲナイザーを用いて、実施例1と同様の条件で処理した。処理後の溶液(糖懸濁液Bともいう)についてデジタルマイクロスコープ(倍率:500倍)で観察したところ、20~80μmのイソマルツロースの結晶が糖懸濁液B中に含まれていた。糖懸濁液Bのデジタルマイクロスコープによる観察結果を、図1(b)に示す。糖懸濁液Bの晶出率は40%であった。 【0064】 糖懸濁液Bに、糖懸濁液Bの固形分量とトレハロースの含有量の合計を基準として5質量%となる量のトレハロース(株式会社林原製、「結晶トレハロース」)を加えて溶解させた。さらに、ADH及びBSAを実施例1と同様の添加量で添加して、混合懸濁液(混合懸濁液Bともいう)を得た。 【0065】 <実施例3> 実施例2において、トレハロースの添加量を10質量%になる量に変更した以外は、実施例2と同様の方法により混合懸濁液(混合懸濁液Cともいう)を得た。 【0066】 [噴霧乾燥] 混合懸濁液A、B及びCを、噴霧乾燥機(大川原化工機株式会社製、「OC-16」)を用いて、表1に示す条件によりそれぞれ噴霧乾燥した。60分間の噴霧後、噴霧乾燥機の缶壁の半面に付着した顆粒を採取した。その後、混合懸濁液B及び混合懸濁液Cに関しては、更に30~40分間送風を行い、噴霧乾燥機の缶壁の他の半面に付着した顆粒を採取した。以下、60分間の噴霧直後に採取した顆粒を「一次乾燥顆粒」と呼び、送風後に採取した顆粒を「二次乾燥顆粒」と呼ぶ。 【0067】 ・・・(略)・・・ 【0069】 [顆粒の水分量] 各顆粒に含まれる自由水を、近赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所製、「NIR moisture meter KJT-230」)を用いて測定した。 また、各顆粒に含まれる全水分量を次の方法で測定した。顆粒約5gを電子天秤(METTLER TOLEDO製、「ME204」)を用いて測定し、更に全体が約25gになるまで蒸留水を加え、その時の重量を測定した。顆粒を完全に溶解した後、レフブリックス計(株式会社アタゴ製、「RX-5000α」)を用いて測定した屈折率から、顆粒溶液中の総固形分を算出した。初めに測定した顆粒重量と、顆粒溶液の総固形分の重量差を、顆粒に含まれる全水分量として算出した。結果を表2に示す。 【0070】 【表2】 [図:0001433090000016.jpg] 【0071】 [流動性の評価] 各実施例に係る一次乾燥顆粒について、目視及び手確認により顆粒の流動性を評価した。評価基準については下記のとおりとした。その結果、実施例1~3の全ての顆粒において、流動性の評価が〇であった。 〇:さらさらしている △:さらさらだが押すと固まる ×:べたつく、又は固まりがある 【0072】 さらに、各実施例に係る一次乾燥顆粒については、R.L.Carrにより提案された「流動性指数」及び「噴流性指数」を算出した(Carr,R.L.「Evaluating flow properties of solids.」Chem.Eng.(1965)72(163-168))。各実施例の一次乾燥顆粒について、多機能型粉体物性測定器(株式会社セイシン企業製、「マルチテスターMT-02」)を用いて、顆粒の安息角(°)、スパチュラ角(°)を求めた。実施例3の一次乾燥顆粒については、更に圧縮度(%)及び均一度(-)を求め、Carrの理論に基づき、各測定値に対応する指数を得た。各測定値の指数を合算することにより、流動性指数を得、表3に記載のCarrの評価基準に基づき、流動性を評価した。以上の結果を表4に示す。 【0073】 また、上記装置を用いて、各実施例に係る一次乾燥顆粒の崩壊角(°)及び差角(°)を求めた。実施例3の一次乾燥顆粒については、更に分散度(%)を求め、Carrの理論に基づき得られた各測定値に対応する指数と、流動性指数に基づく指数を足し合わせることにより、噴流性指数を得た。表3に記載のCarrの評価基準に基づき、実施例3に係る一次乾燥顆粒の噴流性を評価した。以上の結果を表4に示す。 【0074】 【表3】 [図:0001433090000017.jpg] 【0075】 【表4】 [図:0001433090000018.jpg] 」 イ 甲C3に記載された発明 甲C3に記載された事項を、特に実施例1ないし3に関して整理すると、甲C3には次の発明(以下、「甲C3発明」という。)が記載されていると認める。 <甲C3発明> 「実施例1ないし3のいずれかとして記載された乾燥顆粒。」(当審注:実施例1なし3のいずれかについては上記ア参照。) (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲C3発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点C3-1> 本件特許発明1においては「グリセリン脂肪酸エステルとを含有する」及び「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲C3発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点C3-1について検討する。 甲C3を含めいずれの証拠にも、甲C3発明においてグリセリン脂肪酸エステルを含有させる動機付け並びに甲C3発明における粒度分布及び水分含量を本件特許発明1で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲C3発明において、相違点C3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲C3発明並びに甲C3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と甲C3発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点C3-2> 本件特許発明2においては「グリセリン脂肪酸エステルとを含有する」及び「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり、スパチュラ角が、73°未満である」と特定されているのに対し、甲C3発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点C3-2について検討する。 甲C3を含めいずれの証拠にも、甲C3発明においてグリセリン脂肪酸エステルを含有させる動機付け並びに甲C3発明における粒度分布、水分含量及びスパチュラ角を本件特許発明2で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲C3発明において、相違点C3-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明2の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明2は甲C3発明並びに甲C3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明3について ア 対比 本件特許発明3と甲C3発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点C3-3> 本件特許発明3においては「グリセリン脂肪酸エステルとを含有する」及び「粒度分布において、粒径106μm以上500μm未満の粒子が3質量%以上100質量%以下であり、粒径106μm未満の粒子が50質量%以下であり、且つ、 水分含量が4.55質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲C3発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点C3-3について検討する。 甲C3を含めいずれの証拠にも、甲C3発明においてグリセリン脂肪酸エステルを含有させる動機付け並びに甲C3発明における粒度分布及び水分含量を本件特許発明3で特定された値とする動機付けとなる記載はないから、甲C3発明において、相違点C3-3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明3は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明3の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明3は甲C3発明並びに甲C3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)特許異議申立人Cの主張について 特許異議申立人Cの特許異議申立書Cにおける主張は要するに、甲C3発明において、甲C1及び甲C2に記載された事項を考慮すれば本件特許発明1ないし3は容易に発明をすることができたものであるというものであるが、甲C3発明において他の証拠に記載された事項を考慮できることの根拠が示されていないから、該主張は採用できない。 (5)申立理由C5についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないので、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由C5によっては取り消すことはできない。 10 申立理由C6(甲C10に基づく進歩性)について (1)甲C10に記載された事項等 ア 甲C10に記載された事項 甲C10には、「ホエイタンパク質造粒物」に関しておおむね次の事項が記載されている。 ・「請求の範囲 [請求項1] ホエイタンパク質を主成分として含有するタンパク質造粒物であって、 下記測定方法により求められる平均粒子径が207~570μmであり、均一度Uが0.58以下であり、粒子径が500μm以上の粗大粉の含有比率(体積比)が22%以下であり、かつ、粒子径が150μm以下の微粉の含有比率(体積比)が31%以下である、タンパク質造粒物。 [平均粒子径、均一度U、粗大粉及び微粉の含有比率の測定方法] 1.造粒物についてレーザー回折・散乱式測定法により、横軸を粒子径、縦軸を粒子の含有比率としてプロットした体積基準粒度分布を得る 2.平均粒子径、粗大粉及び微粉の含有比率は、前記体積基準粒度分布より求める 3.均一度Uは、下記式(1)により求める ・・・(略)・・・」 イ 甲C10に記載された発明 甲C10に記載された事項を、特に請求項1に関して整理すると、甲C10には次の発明(以下、「甲C10発明」という。)が記載されていると認める。 <甲C10発明> 「請求項1に記載されたタンパク質造粒物。」(当審注:請求項1については上記ア参照。) (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲C10発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点C10-1> 本件特許発明1においては「水分含量が4.55質量%以下であり、安息角が、54°以下である」と特定されているのに対し、甲C10発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点C10-1について検討する。 甲C10を含めいずれの証拠にも、甲C10発明において水分含量を4.55質量%以下、安息角を54°以下とする動機付けとなる記載はないから、甲C10発明において、相違点C10-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲C10発明並びに甲C10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と甲C10発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点C10-2> 本件特許発明2においては「水分含量が4.55質量%以下であり、スパチュラ角が73°未満である」と特定されているのに対し、甲C10発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点C10-2について検討する。 甲C10を含めいずれの証拠にも、甲C10発明において水分含量を4.55質量%以下、スパチュラ角を73°未満とする動機付けとなる記載はないから、甲C10発明において、相違点C10-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明2の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明2は甲C10発明並びに甲C10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明3について ア 対比 本件特許発明3と甲C10発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点C10-3> 本件特許発明1においては「水分含量が4.55質量%以下であり、崩壊角が36.8°以下である」と特定されているのに対し、甲C10発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点C10-3について検討する。 甲C10を含めいずれの証拠にも、甲C10発明において水分含量を4.55質量%以下、崩壊角を36.8°以下とする動機付けとなる記載はないから、甲C10発明において、相違点C10-3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明3は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明3の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明3は甲C10発明並びに甲C10及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)特許異議申立人Cの主張について 特許異議申立人Cの特許異議申立書Cにおける主張は要するに、拒絶理由通知(甲C18)に対する意見書(甲C9)の主張が無効であるから、本件特許発明1ないし3は甲C10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものであり、他に具体的な主張を伴うものではない。 そして、意見書(甲C9)の主張が無効かどうかで進歩性の判断は左右されるものではないし、他に具体的な主張がされていないから、該主張は採用できない。 (5)申立理由C6についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないので、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由C6によっては取り消すことはできない。 11 申立理由C7(甲C16に基づく進歩性)について (1)甲C16に記載された事項等 ア 甲C16に記載された事項 甲C16には、「大豆タンパク質造粒物」に関しておおむね次の事項が記載されている。 ・「請求の範囲 [請求項1] 大豆タンパク質を主成分として含有するタンパク質造粒物であって、 下記測定方法により求められる平均粒子径が150~220μmであり、均一度Uが0.58以下であり、粒子径が300μm以上の粗大粉の含有比率(体積比)が27%以下であり、かつ、粒子径が100μm以下の微粉の含有比率(体積比)が30%以下である、タンパク質造粒物。 [平均粒子径、均一度U、粗大粉及び微粉の含有比率の測定方法] 1.造粒物についてレーザー回折・散乱式測定法により、横軸を粒子径、縦軸を粒子の含有比率としてプロットした体積基準粒度分布を得る 2.平均粒子径、粗大粉及び微粉の含有比率は、前記体積基準粒度分布より求める 3.均一度Uは、下記式(1)により求める ・・・(略)・・・」 イ 甲C16に記載された発明 甲C16に記載された事項を、特に請求項1に関して整理すると、甲C16には次の発明(以下、「甲C16発明」という。)が記載されていると認める。 <甲C16発明> 「請求項1に記載されたタンパク質造粒物。」(当審注:請求項1については上記ア参照。) (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲C16発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点C16-1> 本件特許発明1においては「水分含量が4.55質量%以下であり、安息角が、54°以下である」と特定されているのに対し、甲C16発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点C16-1について検討する。 甲C16を含めいずれの証拠にも、甲C16発明において水分含量を4.55質量%以下、安息角を54°以下とする動機付けとなる記載はないから、甲C16発明において、相違点C16-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明1は甲C16発明並びに甲C16及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と甲C16発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点C16-2> 本件特許発明2においては「水分含量が4.55質量%以下であり、スパチュラ角が73°未満である」と特定されているのに対し、甲C16発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点C16-2について検討する。 甲C16を含めいずれの証拠にも、甲C16発明において水分含量を4.55質量%以下、スパチュラ角を73°未満とする動機付けとなる記載はないから、甲C16発明において、相違点C16-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明2の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明2は甲C16発明並びに甲C16及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明3について ア 対比 本件特許発明3と甲C16発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点C16-3> 本件特許発明1においては「水分含量が4.55質量%以下であり、崩壊角が36.8°以下である」と特定されているのに対し、甲C16発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 相違点C16-3について検討する。 甲C16を含めいずれの証拠にも、甲C16発明において水分含量を4.55質量%以下、崩壊角を36.8°以下とする動機付けとなる記載はないから、甲C16発明において、相違点C16-3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明3は「本発明のタンパク質含有造粒物は、水に溶かしたときの易溶解性及び流動性に優れている。」という本件特許発明3の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著なものである。 ウ まとめ したがって、本件特許発明3は甲C16発明並びに甲C16及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)特許異議申立人Cの主張について 特許異議申立人Cの特許異議申立書Cにおける主張は要するに、拒絶理由通知(甲C18)に対する意見書(甲C9)の主張が無効であるから、本件特許発明1ないし3は甲C16発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるというものであり、他に具体的な主張を伴うものではない。 そして、意見書(甲C9)の主張が無効かどうかで進歩性の判断は左右されるものではないし、他に具体的な主張がされていないから、該主張は採用できない。 (5)申立理由C7についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし3は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないので、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないから、同法第113条第2号に該当せず、申立理由C7によっては取り消すことはできない。 12 申立理由A6(実施可能要件)、申立理由B2(実施可能要件)及び申立理由C2(実施可能要件)について 申立理由A6(実施可能要件)、申立理由B2(実施可能要件)及び申立理由C2(実施可能要件)は同じ実施可能要件の理由なので、併せて検討する。 (1)実施可能要件の判断基準 上記第2のとおり、本件特許発明1ないし3は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用をすることができる程度の記載があることを要する。 (2)実施可能要件の判断 発明の詳細な説明には本件特許発明1ないし3の各発明特定事項について具体的に記載され、本件特許発明1ないし3の実施例についても具体的に記載されている。 したがって、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし3を生産し、使用をすることができる程度の記載があるといえる。 よって、本件特許発明1ないし3に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。 (3)特許異議申立人Aの申立理由A6における主張について 特許異議申立人Aの申立理由A6における主張は、特許異議申立人Aが特許異議申立書Aに添付して提出した甲A16における試験例4-9(甲A5の実施例3)が本件特許発明1ないし3において特定される発明特定事項の条件を全て満たすことを前提とする理由であるところ、上記第5 1(3)のとおり、甲A16における試験例4-9(甲A5の実施例3)が本件特許発明1ないし3において特定される発明特定事項の条件を全て満たすかどうかは不明であるといわざるを得ない。 したがって、特許異議申立人Aの申立理由A6における主張はその前提が誤りであり、採用できない。 (4)特許異議申立人Bの申立理由B2における主張について 特許異議申立人Bの申立理由B2における主張は、特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合しないことを前提とする主張であるところ、上記第5 1のとおり、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 したがって、特許異議申立人Bの申立理由B2における主張は採用できない。 (5)特許異議申立人Cの申立理由C2における主張について 発明の詳細な説明において、実施例で具体的に使用したグリセリン脂肪酸エステルが記載されていないとしても、発明の詳細な説明には本件特許発明1ないし3の各発明特定事項について具体的に記載され、特に、発明の詳細な説明の【0016】ないし【0021】にグリセリン脂肪酸エステルについて詳細に記載されていることから、本件特許発明1ないし3が当業者に実施可能でないとはいえない。 したがって、特許異議申立人Cの申立理由C2における主張は採用できない。 (6)申立理由A6、申立理由B2及び申立理由C2についてのむすび したがって、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しないので、申立理由A6、申立理由B2及び申立理由C2によっては取り消すことはできない。 第7 特許異議申立人A及びCの回答書における主張について 1 特許異議申立人Aの回答書における主張について 特許異議申立人Aの回答書における主張は、要するに甲A16の実験者は、必要な知識・技能を有し、甲A16の実験は誠実かつ適切に実施されたものであるから、サポート要件違反は解消されないというものであるが、上記第5 1(3)のとおり、甲A16における試験例4-9(甲A5の実施例3)が本件特許発明1ないし3において特定される発明特定事項の条件を全て満たすかどうかは不明であるといわざるを得ない。 したがって、甲A16の実験者が必要な知識・技能を有するかどうか及び甲A16の実験は誠実かつ適切に実施されたものであるかどうかにかかわらず、特許異議申立人Aの回答書における主張は採用できない。 2 特許異議申立人Cの回答書における主張について 特許異議申立人Cの回答書における主張は、要するに甲A16は信頼に足るものであり(以下、「回答書主張1」という。)、また、本件特許明細書の実施例には不備があるから、サポート要件・実施可能要件を満たさない(以下、「回答書主張2」という。)というものである。 上記第5 1(3)のとおり、甲A16における試験例4-9(甲A5の実施例3)が本件特許発明1ないし3において特定される発明特定事項の条件を全て満たすかどうかは不明であるといわざるを得ないから、甲A16が信頼に足るかどうかにかかわらず、回答書主張1は採用できない。 また、回答書主張2は新たな主張であるところ、令和7年6月2日付けで通知された取消理由に対して何ら訂正はされておらず、訂正によって生じた理由ではないから、採用できない。 第8 結語 上記第5ないし7のとおり、本件特許の請求項1ないし3に係る特許は取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700276

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