特許異議申立
2024-701100
関節痛改善剤
- 審判番号
- 2024-701100
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-150450外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7485470
- 請求日
- 2024年11月13日
- 審決日
- 2025年03月31日
- 公報発行日
- 2025年05月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社ウェルヴィーナス
- 【権利者代理人】弁理士法人みなとみらい特許事務所
- 【異議申立人】小林 功
- 分類
- P1651.536-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L) / P1651.113-Y (A23L) / P1651.121-Y (A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7485470号発明「関節痛改善剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7485470号の請求項1~5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7485470号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、
平成28年12月 7日を出願日とする特願2016-237617号(以下、「原出願」という。)の一部を令和 3年 4月 9日を出願日とする特願2021-66214号の一部を令和 4年 9月21日に新たな特許出願としたものであって、
令和 6年 5月 8日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、
令和 6年 5月16日に特許掲載公報が発行され、
その後、その特許に対し、
令和 6年11月13日に特許異議申立人 小林 功から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~5)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
非変性プロテオグリカン及び非変性コラーゲンを有効成分として含む、関節痛改善剤であって、
非変性プロテオグリカンと非変性コラーゲンを3:10~7:10の質量比で含むことを特徴とし、
前記非変性プロテオグリカン及び前記非変性コラーゲンはサケ由来の軟骨組織から抽出されたものであり、
経口用であることを特徴とする、関節痛改善剤。
【請求項2】
前記非変性プロテオグリカンが、90万Da以上の平均分子量を有する、請求項1に記載の関節痛改善剤。
【請求項3】
前記非変性コラーゲンが非変性II型コラーゲンである、請求項1又は2に記載の関節痛改善剤。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項記載の関節痛改善剤を有効成分として含む、関節痛改善用経口組成物。
【請求項5】
食品組成物である請求項4に記載の関節痛改善用経口組成物。」
第3 特許異議申立書に記載した特許異議申立理由の概要
令和6年11月13日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。なお、申立理由の番号は、条文毎に当審が付与した。
1 申立理由1(実施可能要件)
本件特許の請求項1~5に係る特許は、以下のとおり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・本件特許の請求項1には「非変性プロテオグリカン及び非変性コラーゲンはサケ由来の軟骨組織から抽出された」ものであることが記載されているものの、本件特許の明細書には、段落0002及び0055に「アルカリ抽出溶媒」と書いているのみであり、アルカリ抽出溶媒(アルカリ溶液)について具体的記載がなく、「サケ由来の軟骨組織から抽出」する方法が不明であることから、当業者は本件特許を製造するにあたり、甲第1~6号証から理解できるような原出願時の技術常識を考慮しても、どのように作るのか理解できず、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤が要求される。
よって、本件特許発明1~5は実施可能要件違反である。
2 申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1~5に係る特許は、以下のとおり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・本件特許の請求項1の「前記非変性プロテオグリカン及び前記非変性コラーゲンはサケ由来の軟骨組織から抽出されたもの」という記載は、「あらゆる抽出方法で、サケ由来の軟骨組織から抽出された非変性プロテオグリカン及び前記非変性コラーゲン」を含むものと解される。
しかしながら、甲2号証によると、試料の抽出方法に応じて、プロテオグリカンとして抽出できるかどうかも異なると考えられるから、プロテオグリカン又はコラーゲンの活性についても、試料の抽出方法によって異なる可能性があると考えられる。
すると、本件特許発明1は、本件特許の課題である「関節痛の痛みの緩和に極めて効果の高い関節痛改善剤、関節痛改善用組成物あるいは食品を提供する」ことが出来ない発明を含むものである。
よって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明において発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものになり、サポート要件違反である。また、請求項1に従属する本件特許発明2~5も同様にサポート要件違反である。
3 申立理由3及び4(甲第7号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、4、5は、本件特許の原出願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1~5は、甲第7号証に記載された発明に基づいて、その原出願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 証拠方法
・甲第1号証:特許第4219974号公報
・甲第2号証:特願2008-500470号の平成20年7月 2日付け拒絶理由通知書
・甲第3号証:特願2008-500470号の平成20年8月27日に提出された手続補正書
・甲第4号証:特願2008-500470号の平成20年8月27日に提出された意見書
・甲第5号証:特願2008-500470号の平成20年8月29日に提出された手続補足書
・甲第6号証:甲第5号証に係る参考資料
・甲第7号証:特許第4914594号公報
・甲第8号証:工藤重光他、プロテオグリカンを主成分とするサケ鼻軟骨粉末の安全性評価、日本食品科学工学会誌、Vol.58 No.11(2011)、第542~547頁
・甲第9号証:Ikuo Kakizaki他、Identification of proteoglycan from salmon nasal cartilage、 Archives of Biochemistry and Biophysics、Volume 506、Issue 1、2011年2月1日、第58~65頁
・甲第10号証:鮭鼻軟骨抽出物(非変性II型コラーゲンならびに非変性プロテオグリカン含有)摂取の膝関節痛に対する効果 -単施設無作為化比較二重盲検試験-、新薬と臨床、2016年11月、Vol.65、第1507~1521頁
・甲第11号証:アグリカンとバーシカン、糖質科学のことば、GlycoForum記事、1998年3月15日、<URL:https://www.glycoforum.gr.jp/glycoword/proteoglycan/PGA03J.html>
証拠の表記は、おおむね特許異議申立書及び証拠説明書の記載に従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第4 当審の判断
当審は以下に述べるように、申立理由1~4によっては、本件特許を取り消すことはできないと判断する。
1 申立理由1(実施可能要件)
(1)実施可能要件の判断基準
上記第2のとおり、本件特許発明1~5は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用をすることができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件発明の詳細な説明の【0021】~【0031】には、本件明細書における「非変性プロテオグリカン」について、その起源となる生物中のプロテオグリカンの分子量の組成と同じ特徴を有していること、抽出又は製剤化の過程で変性処理に施されていないプロテオグリカンであることが記載され、起源については魚類、鳥類、哺乳動物由来の軟骨組織が挙げられ、軟骨組織から非変性プロテオグリカンを抽出、調整する方法についても記載されている。また、同【0032】~【0043】には、本件明細書における「非変性コラーゲン」について、その起源となる生物中のコラーゲンの分子量の組成と同じ特徴を有していること、抽出又は製剤化の過程で変性処理に施されていないコラーゲンであることが記載され、起源については魚類、鳥類、哺乳動物由来の軟骨組織が挙げられている。
そして、同【0044】には、本発明の関節痛改善剤は非変性プロテオグリカンと非変性コラーゲンとの質量比が記載され、同【0045】~【0047】には、本発明の関節痛改善剤の形態が記載されており、同【0052】~【0064】には、具体的な実施例の記載もある。
そうすると、当業者であれば明細書の記載及び原出願の出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤なく、「非変性プロテオグリカン及び非変性コラーゲンを有効成分として含む、関節痛改善剤であって、非変性プロテオグリカンと非変性コラーゲンを3:10~7:10の質量比で含み、前記非変性プロテオグリカン及び前記非変性コラーゲンはサケ由来の軟骨組織から抽出されたものであり、経口用である、関節痛改善剤。」を生産し、使用することができることが示されているものと認められる。請求項1を直接又は間接的に引用して特定する本件特許発明2~5も同様である。
したがって、本件発明の詳細な説明には、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、本件特許発明1~5を生産及び使用をすることができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明1~5に関して、発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項第1号に規定する要件を充足する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第3 1における主張について検討する。
上記1(1)及び(2)において記載した事項を踏まえると、本件明細書の記載に接した当業者は、サケ由来の軟骨組織から非変性プロテオグリカンと非変性コラーゲンを抽出することができるといえる。
また、本件特許発明は「物の発明」であって、その物を生産し、使用をすることができる程度の記載があることで実施可能要件を充足するものであることは、上述のとおりである。一方、特許異議申立人は、甲1~6を提示しつつ上記3 1の主張をするが、上記(2)の判断には、何ら影響しない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(4)申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由1によっては取り消すことはできない。
2 申立理由2(サポート要件)
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲の記載は上記第2のとおりである。
(3)サポート要件の判断
本件発明の詳細な説明の【0011】によると、本件特許発明1~5の解決しようとする課題は「本発明は、プロテオグリカンと他の関節痛を改善する作用を有する物質の相互作用による有用性を見出すこと」と、「加えて、その配合比を検討することで、関節痛の痛みの緩和に極めて効果の高い関節痛改善剤、関節痛改善用組成物あるいは食品を提供すること」であり(以下、「本件発明の課題」という。)、発明の詳細な説明の【0013】~【0017】には、本件特許発明1~5に対応する記載がある。
また、本件発明の詳細な説明の【0012】には、「本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究に励んだ結果、非変性プロテオグリカンと非変性コラーゲンを特定の質量比で含む関節痛改善用剤が高い関節痛改善効果を有することを見出し、本発明を完成させた。」と記載され、同【0013】には、「本発明の関節痛改善剤は非変性プロテオグリカン及び非変性コラーゲンを特定の質量比で含むため、高い関節痛改善効果を奏する。」と記載されている。
さらに、上記1(2)であげた記載に加え、同【0021】~【0031】には、本件明細書における「非変性プロテオグリカン」について、サケ由来の軟骨組織から抽出されたものが好ましいことが記載され、同【0032】~【0043】には、本件明細書における「非変性コラーゲン」について、サケ由来の軟骨組織から抽出されたものが好ましいことが記載されている。
そして、同【0044】には、本発明の関節痛改善剤は非変性プロテオグリカンと非変性コラーゲンを好ましくは3:10~7:10の質量比で含むことが好ましいことが記載されており、同【0045】~【0047】には、本発明の関節痛改善剤は経口用とすることが好ましいことが記載され、これらの記載は具体的な実施例による検証もなされているものである。
そうすると、これらの記載に接した当業者であれば、「非変性プロテオグリカンと非変性コラーゲンを3:10~7:10の質量比で含み、前記非変性プロテオグリカン及び前記非変性コラーゲンはサケ由来の軟骨組織から抽出されたものであり、経口用である、関節痛改善剤。」とすれば、本件発明の課題が解決できると認識でき、本件特許発明1~5は、いずれも上記課題を解決できると認識できる特定事項の全てを有し、さらに特定するものであるから、発明の課題を解決できると認識できる。
よって、本件特許発明1~5は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を充足する。
(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第3 2における主張について検討するも、特許異議申立人は、本件特許発明の範囲に課題が解決できないものが含まれているとする具体的な証拠を示すものではない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(5)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。
3 申立理由3及び4(甲7に基づく新規性・進歩性)
(1)甲7に記載された事項等
ア 甲7に記載された事項
甲7には、「関節痛改善用食品組成物」について、おおむね次の事項が記載されている。
・「【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来品よりも効果の大きい関節痛改善用の食品組成物を提供することを第1の課題とする。また本発明は、従来品よりも短期間で関節痛改善効果を示すことができる食品組成物を提供することを第2の課題とする。さらに本発明は、摂取を中止しても、関節痛が再発しにくい食品組成物を提供することを第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の諸課題を解決するための本発明のうち、特許請求の範囲・請求項1に記載する発明は、クレアチン類とグルコサミン類とグリコサミノグリカン類とを有効成分として含有する関節痛改善用食品組成物である。」
・「【0022】
本発明において、グルコサミン類とは、グルコサミン又はグルコサミン塩酸塩、グルコサミン硫酸塩、N-アセチルグルコサミンなどのグルコサミンの誘導体もしくはこれらの塩のことである。グルコサミン類は天然物であることが好ましいが、本発明では合成品でも使用可能である。グルコサミン類は、体内でグルコースから作られるアミノ酸の一種で動物の体内では糖タンパク質の成分として、軟骨・腱・靱帯などの結合組織に分布して、その代表的なものはプロテオグリカンである。本発明ではグルコサミン類も市販品を用いて差し支えない。
【0023】
グルコサミンは、変形性関節症の治療にも利用されている。グルコサミンは、糖のヒドロキシル基がアミノ基に置換されたもので、天然には動物、植物、微生物の多糖、ムコ多糖、糖タンパク質、糖脂質、細菌細胞壁ペプチドグリカン、リポ多糖に含まれ、化学系統名としては2-アミノ-2-デオキシグルコースと言われている。グルコサミンは、工業的には、例えばキチンを原料として、これを加水分解することにより得られる。グルコサミンやその分解物、コンドロイチン硫酸及びその分解物は、関節の中で軟骨の再生に寄与しているが、高齢者においてはその代謝は若年者と比べて遅くなる傾向がある。
【0024】
本発明において用いるグリコサミノグリカン類とは、コンドロイチンないしコンドロイチン酸又はヒアルロン酸もしくはこれらの塩もしくはこれらの分解物のことである。すなわち、グリコサミノグリカン類は、グルコサミンを含む一連のムコ多糖類又は酸性ムコ多糖類のことである。グリコサミノグリカン類の代表例であるコンドロイチン酸やヒアルロン酸又はこれらの塩は、動物の軟骨又はコラーゲンなどの天然物から得ることができ、市販品を利用することもできる。また、精製したコンドロイチンだけでなく、コンドロイチン又はその塩を含有する動物の軟骨の粉末やエキス抽出物を使用することができる。塩類としては塩酸塩、硫酸塩など生理学的に許容できる塩であればよい。精製したコンドロイチン又はコンドロイチン酸もしくはこれらの塩は、安全性の面から好ましいが、吸収性の面から言えば、その分解物の方が好ましい。本発明では、グリコサミノグリカン類も市販品を用いて差し支えない。
【0025】
コンドロイチン又はその塩は、動物の軟骨又はコラーゲンなどの天然物から得ることができ、市販品を利用することもできる。本発明では精製したコンドロイチンだけでなく、コンドロイチン又はその塩を含有する動物の軟骨の粉末やエキス抽出物を使用することができる。塩類としては塩酸塩、硫酸塩など生理学的に許容できる塩であればよい。精製したコンドロイチン又はコンドロイチン硫酸もしくはこれらの塩は、安全性の面から好ましいが、吸収性の面から言えば、その分解物の方が好ましい。
【0026】
本発明に係る関節痛改善用食品組成物は、クレアチン類とグルコサミン類とグリコサミノグリカン類に加えて、さらに、コラーゲン、緑貽貝(ムール貝)、亜麻仁、MSM(メチルスルフォニルメタン)、S-アデノシルメチオニン及びキャッツクローから選択される1種以上のものを添加すると、関節痛の改善予防効果がさらに大きくなる。
【0027】
コラーゲンは、皮膚、血管、腱、歯などの組織に存在する繊維状のタンパク質で、身体を構成する全タンパク質の約30%を占めている。コラーゲンは健康食品として「骨・関節疾患に伴う症状の緩和に適している」などと言われている。コラーゲンを多く含む食品として、鶏の手羽やフカヒレ、牛すじ、鶏皮などがある。」
・「【実施例7】
【0053】
<ごま豆腐の製造例>
(1)配合組成(重量割合):ペースト状のごま11.0%、くず粉6.0%、ゲル化剤1.5%、食塩0.3%、クレアチン粉末3.0%、コラーゲン1.5%、グルコサミン1.2%、コンドロイチン硫酸0.5%、香料0.1%、水74.9%
(2)製法:まず、くず粉とゲル化剤を混合し、その後水に分散させる。次に食塩を添加して加熱溶解する。さらに、コラーゲン、グルコサミン、コンドロイチン硫酸を攪拌混合したものにクレアチンとペースト状のごまを添加し、香料を加えた後、均質化、容器に充填した後加熱殺菌して製了する。」
・「【産業上の利用可能性】
【0054】
以上詳しく説明したとおり、本発明に係る食品組成物は、従来品よりも関節痛の改善予防効果が大きく、また、従来品よりも短期間で関節痛の症状を改善できる上、摂取を中止しても関節痛が再発しにくいなどきわめてすぐれた効能を有するものであるから、本発明は、各種関節痛に悩んでいる方々にとって大いに有用である。」
イ 甲7に記載された発明
上記アに記載された内容のうち、特に実施例7を中心に整理すると、甲7には次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されていると認める。
<甲7発明>
「配合組成(重量割合)が、ペースト状のごま11.0%、くず粉6.0%、ゲル化剤1.5%、食塩0.3%、クレアチン粉末3.0%、コラーゲン1.5%、グルコサミン1.2%、コンドロイチン硫酸0.5%、香料0.1%、水74.9%であるごま豆腐からなる関節痛改善用食品組成物。」
(2)検討
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲7発明を対比する。
甲7発明は、「コラーゲン」を含む「関節痛改善用食品」であるから、本件特許発明1の「非変性プロテオグリカン及び非変性コラーゲン」のうちの「コラーゲン」を「含む」「関節痛改善剤」に相当し、また、甲7発明は「食品組成物」であるから、本件特許発明1の「経口用である」という要件を満たす。
そうすると、本件特許発明1と甲7発明との間には、以下の一致点及び相違点を有する。
<一致点>
「コラーゲンを含む関節痛改善剤であって、経口用である、関節痛改善剤。」
<相違点1>
本件特許発明1の関節痛改善剤は、「非変性プロテオグリカン及び非変性コラーゲンを有効成分として含」み、「非変性プロテオグリカン及び前記非変性コラーゲンはサケ由来の軟骨組織から抽出されたもの」であることが特定されているのに対し、甲7発明にはそのようには特定されていない点
<相違点2>
本件特許発明1の関節痛改善剤は、「非変性プロテオグリカンと非変性コラーゲンを3:10~7:10の質量比で含む」ことが特定されているのに対し、甲7発明にはそのようには特定されていない点
相違点1について検討する。
甲7には、甲7発明において、「非変性プロテオグリカン及び非変性コラーゲンを有効成分として含」み、「非変性プロテオグリカン及び前記非変性コラーゲンはサケ由来の軟骨組織から抽出されたもの」であることについて何ら記載も示唆もされていないから、上記相違点1は実質的な相違点である。
よって、本件特許発明1は、甲7発明ではない。
また、甲7及び他の全ての証拠の記載を見ても、甲7発明における「コンドロイチン硫酸」を「非変性プロテオグリカン」とする動機付けがあるとはいえず、同様に、「サケ由来の軟骨組織から抽出されたもの」を採用することの動機付けもない。
よって、甲7発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲7発明並びに甲7及び他の証拠に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、特許異議申立人は特許異議申立書において、上記相違点1について、甲8、9より、甲7発明のコンドロイチン硫酸は、プロテオグリカンと同視できるものと考えられるため、本件特許発明1のプロテオグリカンは甲7に記載されたものであると主張している。
しかしながら、コンドロイチン硫酸は、糖であってタンパクを含むものではないから、糖とタンパクとの複合体であるプロテオグリカンと同視できるものではないことは当業者にとって技術常識である。
したがって、当該主張は採用できない。
イ 本件特許発明2、3について
本件特許発明2、3は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件特許発明2、3と甲7発明を対比すると、両者の間には、少なくとも上記相違点1がある。
そして、上記アの判断と同様に、甲7発明並びに甲7及び他の証拠をみても、甲7発明において、相違点1に係る本件特許発明2、3の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件特許発明2、3は、甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
ウ 本件特許発明4、5について
本件特許発明4、5は、請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件特許発明4、5と甲7発明を対比すると、両者の間には、少なくとも上記相違点1があるから、本件特許発明4、5は、甲7発明ではない。
また、上記アの判断と同様に、甲7発明並びに甲7及び他の証拠をみても、甲7発明において、相違点1に係る本件特許発明4、5の構成を備えたものとすることは、当業者といえども容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、本件特許発明4、5は、甲7発明ではないし、甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)申立理由3及び4のまとめ
上記のとおり、本件特許発明1、4、5は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1~5は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1~5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消すことはできない。
第5 結語
以上のとおり、本件発明1~5についての特許は、上記のいずれの特許異議申立理由によっても取り消すことはできない。
また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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