特許異議申立
2022-700476
酢酸含有調味液
- 審判番号
- 2022-700476
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-545610
- 登録番号
- 6975436
- 請求日
- 2022年06月01日
- 審決日
- 2023年08月03日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社Mizkan Holdings
- 【権利者代理人】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
- 【権利者】株式会社Mizkan
- 【権利者代理人】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
- 【異議申立人】森田 弘潤
- 審判長/審判官
- 審判長 加藤 友也
- 審判官 中村 和正
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6975436号発明「酢酸含有調味液」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6975436号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6、8〕、7、〔9-13〕について訂正することを認める。
特許第6975436号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6975436号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)2月10日(優先権主張 平成31年2月28日)を国際出願日とする特願2020-545610号に係るものであって、令和3年11月10日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年12月1日に特許掲載公報が発行されたものであって、その後、その特許に対し、令和4年6月1日に特許異議申立人 森田 弘潤(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年9月8日付けで取消理由が通知され、同年11月8日に特許権者 株式会社Mizkan Holdings(外1名)(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年11月21日付けで手続補正指令が通知され、同年12月12日に訂正請求書の手続補正書及び上申書が提出され、同年12月26日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、令和5年2月10日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年4月28日付けで取消理由<決定の予告>が通知され、同年6月16日に特許権者から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年7月26日に特許異議申立人から、上申書が提出されたものである。
なお、令和4年11月8日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
また、令和5年6月16日にされた訂正請求については、すでに申立人に意見書の提出の機会が与えられている場合であって、後記のとおり、訂正の請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえてさらに審理を進めたとしても、特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断したため、申立人に対して改めて意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるものと判断したため、意見書提出の機会を与えないこととした。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和5年6月16日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0である、
酢酸含有調味液。」と記載されているのを、「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0である、
酢酸含有調味液
(ただし、
酢を100cc、みりんを50cc、砂糖を大さじ4、塩を小さじ1、鍋に入れて煮切って作られた甘酢調味液及びこれと同じ配合比の酢、みりん、砂糖、塩で作られた甘酢調味液、並びに
酢を大さじ5、砂糖を大さじ5、みりんを大さじ1、塩を大さじ1、耐熱容器に入れて1分程レンジで加熱し、砂糖を溶かして作られた寿司酢調味液及びこれと同じ比率の酢、砂糖、みりん、塩で作られた寿司酢調味液、並びに
酢をカップ1/4、レモン果汁を大さじ2、みりんを大さじ1、蜂蜜を小さじ2、鍋に入れて煮立て作られた蜂蜜レモン酢調味液及びこれと同じ比率の酢、レモン果汁、みりん、蜂蜜で作られた蜂蜜レモン酢調味液、並びに
はちみつを小さじ1、酢を小さじ1、塩を小さじ1/4弱、混ぜ合わせて作られたハチミツ甘酢調味液及びこれと同じ比率のはちみつ、酢、塩で作られたハチミツ甘酢調味液
を除く)。」に訂正する。
請求項1の記載を引用する請求項4ないし6及び8も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「pHが2.0~4.6である、請求項1に記載の酢酸含有調味液。」と記載されているのを、独立形式に改め、「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.72~4.6である、
酢酸含有調味液。」に訂正する。
請求項2の記載を引用する請求項4ないし6及び8も同様に訂正する。
(3)訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項3に「前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、請求項1又は2に記載の酢酸含有調味液。」
とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0であり、
前記酢酸含有調味液中に対するリジン含有量が0.012質量%以上、又はアルギニン含有量が0.013質量%以上、又はヒスチジン含有量が0.004質量%以上、又は前記酢酸含有調味液中における3種のアミノ酸の合計含有量が0.026質量%以上である、
酢酸含有調味液。」に訂正する。
請求項3の記載を引用する請求項4ないし6及び8も同様に訂正する。
(4)訂正事項3-2
特許請求の範囲の請求項3に「前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、請求項1又は2に記載の酢酸含有調味液。」とあるうち、請求項1及び請求項2を引用するものについて、独立形式に改め、「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0であり、
前記酢酸含有調味液中における全遊離アミノ酸含有量が0.3質量%以上であるか、若しくは、
酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.15~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
酢酸含有調味液。」と記載し、新たに請求項9とする。
(5)訂正事項3-3
訂正前の請求項1、請求項2及び請求項3の記載を引用する請求項4について、新たな請求項9に従属するように請求項10として「請求項9に記載の酢酸含有調味液が、生の状態のままか、或いは下拵えを施す場合には、下拵えを施す前の生の状態か、下拵えを施された状態のいずれかの状態の食品具材とその他原料の合計量に対して、又は、調理・加工された食品の全量に対して、それぞれに対する酢酸含有量が0.02~1.0質量%となるような状態で含有されている、具材入り調理済み食品。」とする。
(6)訂正事項3-4
訂正前の請求項1、請求項2及び請求項3の記載を引用する請求項5について、新たな請求項9に従属するように請求項11として「具材入り調理済み食品を製造するにあたり、
請求項9に記載の酢酸含有調味液を、
生の状態のままか、或いは下拵えを施す場合には、下拵えを施す前の生の状態か、下拵えを施された状態のいずれかの状態の食品具材とその他原料とに対して、又は、調理・加工された食品に対して、
それぞれに対する酢酸含有量が0.02~1.0質量%となるように添加し、必要に応じて調理することを特徴とする、具材入り調理済み食品の製造方法。」とする。
(7)訂正事項3-5
訂正前の請求項1、請求項2及び請求項3の記載を引用する請求項5の記載を引用する請求項6について、新たな請求項11に従属するように請求項12として「前記具材入り調理済み食品が、切り干し大根、筑前煮又はひじきの煮物である、請求項11に記載の調理済み食品の製造方法。」とする。
(8)訂正事項3-6
訂正前の請求項1、請求項2及び請求項3の記載を引用する請求項8について、新たな請求項9に従属するように請求項13として「具材入り調理済み食品について長時間保管中における具材からの離水及び/又は具材の色味の変化を抑制するにあたり、
生の状態のままか、或いは下拵えを施す場合には、下拵えを施す前の生の状態か、下拵えを施された状態のいずれかの状態の食品具材とその他原料とに対して、又は、調理・加工された食品に対して、
請求項9に記載の酢酸含有調味液を、
それぞれに対する酢酸含有量が0.02~1.0質量%となるように添加することを特徴とする、
具材入り調理済み食品について長時間保管中における具材からの離水及び/又は具材の色味の変化を抑制する方法。」とする。
(9)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項7に「酢酸含有調味液を製造するにあたり、
酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、その他調味原料とを、
前記酢酸含有量が0.1質量%以上、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70となり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30となり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%となり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上となり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0である、
ように混合し、均一な液状とした後、容器に充填することを特徴とする、酢酸含有調味液の製造方法。」と記載されているのを、「酢酸含有調味液を製造するにあたり、
酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、その他調味原料とを、
前記酢酸含有量が0.1質量%以上、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70となり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30となり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%となり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上となり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0である、ように混合し、均一な液状とした後、容器に充填することを特徴とする、酢酸含有調味液の製造方法
(ただし、
酢を100cc、みりんを50cc、砂糖を大さじ4、塩を小さじ1、鍋に入れて煮切って作られた甘酢調味液の製造方法及びこれと同じ配合比の酢、みりん、砂糖、塩で作られた甘酢調味液の製造方法、並びに
酢を大さじ5、砂糖を大さじ5、みりんを大さじ1、塩を大さじ1、耐熱容器に入れて1分程レンジで加熱し、砂糖を溶かして作られた寿司酢調味液の製造方法及びこれと同じ比率の酢、砂糖、みりん、塩で作られた寿司酢調味液の製造方法、
並びに
酢をカップ1/4、レモン果汁を大さじ2、みりんを大さじ1、蜂蜜を小さじ2、鍋に入れて煮立て作られた蜂蜜レモン酢調味液の製造方法及びこれと同じ比率の酢、レモン果汁、みりん、蜂蜜で作られた蜂蜜レモン酢調味液の製造方法、並びに
はちみつを小さじ1、酢を小さじ1、塩を小さじ1/4弱、混ぜ合わせて作られたハチミツ甘酢調味液の製造方法及びこれと同じ比率のはちみつ、酢、塩で作られたハチミツ甘酢調味液の製造方法
を除く)。」に訂正する。
(10)一群の請求項について
訂正前の請求項1ないし6及び8は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、訂正後の請求項1ないし6及び8ないし13は、特許法第120条の5第4項で規定するところの一群の請求項である。
なお、特許権者より、訂正が認められる場合には、訂正後の請求項9ないし13については、別の訂正単位とすることの求めがある。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1による請求項1、4ないし6及び8の訂正について
訂正事項1による請求項1の訂正は、特定の調味液が除かれた酢酸含有調味液に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1の訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項4ないし6及び8の訂正についても同様である。
(2)訂正事項2による請求項2、4ないし6及び8の訂正について
訂正事項2による請求項2の訂正は、訂正前の請求項2が請求項1に従属する請求項であるところ、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改め、さらに、pHについて、その数値範囲の下限である「2.0」を「2.72」として減縮するものであり、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項2による請求項2の訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項4ないし6及び8の訂正についても同様である。
(3)訂正事項3-1による請求項3、4ないし6及び8の訂正について
訂正事項3-1による請求項3の訂正は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであったところ、請求項2を引用しないものとした上で、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改め、さらに訂正前の請求項3の「前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、」について、「前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0であり、前記酢酸含有調味液中に対するリジン含有量が0.012質量%以上、又はアルギニン含有量が0.013質量%以上、又はヒスチジン含有量が0.004質量%以上、又は前記酢酸含有調味液中における3種のアミノ酸の合計含有量が0.026質量%以上である、」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項3-1による請求項3の訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4ないし6及び8の訂正についても同様である。
(4)訂正事項3-2による請求項3の訂正について
訂正事項3-2による請求項3の訂正は、訂正前の請求項3が請求項1又は2の記載を引用するものであったところ、請求項1及び2を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改めて新たな請求項9とした上で、訂正前の請求項3の「前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、」について、「前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン 1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0であり、前記酢酸含有調味液中における全遊離アミノ酸含有量が0.3質量%以上であるか、若しくは、酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、前記酢酸を0.1質量%以上含有し、全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.15~0.60質量%であり、前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、pHが2.0~4.6であり、前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、」と限定するものであり、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。
そして、訂正事項3-2による請求項3の訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
請求項9の記載を引用する請求項10ないし13の訂正についても同様である。
(5)訂正事項3-3による請求項4の訂正について
訂正事項3-3による請求項4の訂正は、訂正前の請求項4が請求項1~3の記載を引用するものであったところ、訂正事項3-1及び訂正事項3-2により、訂正後の請求項4が、請求項1のみを引用するものとなったので、訂正前に存在していた請求項1及び2を引用する請求項3を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改めてさらに減縮している新たな請求項9を引用する形式として、新たな請求項10とするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3-3による請求項4の訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)訂正事項3-4による請求項5の訂正について
訂正事項3-4による請求項5の訂正は、訂正前の請求項5が請求項1~3の記載を引用するものであったところ、訂正事項3-1及び訂正事項3-2により、訂正後の請求項3が、請求項1のみを引用するものとなったので、訂正前に存在していた請求項1及び2を引用する請求項3を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改めてさらに減縮している新たな請求項9を引用する形式として、新たな請求項11とするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3-4による請求項5の訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)訂正事項3-5による請求項6の訂正について
訂正事項3-5による請求項6の訂正は、訂正前の請求項6が請求項1~3の記載を引用するものであったところ、訂正事項3-1及び訂正事項3-2により、訂正後の請求項3が、請求項1のみを引用するものとなったので、訂正前に存在していた請求項1及び2を引用する請求項3を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改めてさらに減縮している新たな請求項9を引用する形式として、新たな請求項12とするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3-5による請求項6の訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)訂正事項3-6について
訂正事項3-6による請求項8の訂正は、訂正前の請求項8が請求項1~3の記載を引用するものであったところ、訂正事項3-1及び訂正事項3-2により、訂正後の請求項8が、請求項1のみを引用するものとなったので、訂正前に存在していた請求項1及び2を引用する請求項3を引用するものについて、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項に改めてさらに減縮している新たな請求項9を引用する形式として、新たな請求項13とするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3-6による請求項8の訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(9)訂正事項4について
訂正事項4による請求項7の訂正は、特定の調味液の製造方法が除かれた酢酸含有調味液の製造方法に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項4による請求項7の訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(10)特許異議申立人の主張について
ア 特許異議申立人は、令和5年2月10日に提出した意見書において、本件訂正について、以下の4点の主張を行っている。
(ア)訂正後の請求項1及び7の除くクレームは、新規事項の追加で認められない。特許権者が当該訂正された請求項1及び7の追加された構成(除くクレーム部分)に基づき進歩性があることを主張しているから、追加された構成部分(除くクレーム部分)が新たな技術的事項を追加するものではないとの判断はできない。
(イ)請求項3の訂正事項3-1及び訂正事項3-2について、特許権者の主張する補正の根拠は、試験品6、9、11及び14であるが、当該試験品はマルトトリオースを含むものでなく、本件訂正発明の実施例には該当しないため、そもそも本件訂正発明の補正の根拠となり得ない。また、試験品のそれぞれの含有量に技術的な意味は見いだせないから、新たな技術的事項を追加するものといわざる得ない。
(ウ)請求項9に対する訂正における「全アミノ酸合計量0.300質量%」及び「9種類のアミノ酸の合計量0.08質量%」とする訂正についても、上記(イ)と同様に新たな技術的事項を追加するものである。
(エ)訂正請求書の補正は、訂正の趣旨を逸脱したものであるから、当該補正は却下されるべきである。
イ 特許異議申立人の主張の検討
(ア)について
請求項1に追加された構成である、除くクレーム部分は、それぞれ、取消理由における甲1発明、甲2発明、甲3発明及び甲4発明を除くことを意図していることは明らかであり、本件特許の願書に添付された明細書又は特許請求の範囲の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるとはいえないから、本件特許の発明の詳細な説明に記載されていないことをもって、新規事項との判断はできない。よって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(イ)について
請求項3の訂正事項3-1ないし3-5において限定している数値範囲は、訂正前の請求項3に含有されている遊離アミノ酸等の数値範囲を減縮するものであって、これは、特許請求される発明の範囲を単に狭くするものともいえ、本件特許の願書に添付された明細書又は特許請求の範囲の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるとはいえないから、訂正事項3-1ないし3-5による訂正は、新規事項の追加に該当するものであるとはいえない。よって、特許異議申立人の主張は採用できない。
(ウ)について
上記「(イ)について」と同様に、特許異議申立人の主張は採用できない。
(エ)について
訂正請求書の手続補正前の訂正請求の内容と、手続補正書により補正された訂正請求の内容は、補正前に訂正前の請求項と訂正後の請求項との間で項ずれが発生していたものを、項ずれすることのない状態としただけであって、訂正事項の内容として実質的に同じであるから、特許異議申立人の主張は採用できない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし4による請求項1ないし8についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1又は4号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし4による請求項1ないし8についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正事項1ないし3-6は、訂正前の請求項1ないし6及び8という一群の請求項について訂正するものであり、訂正事項4は、請求項7という請求項ごとに訂正するものであるから、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし8に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-6、8〕、7、〔9-13〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0である、
酢酸含有調味液
(ただし、
酢を100cc、みりんを50cc、砂糖を大さじ4、塩を小さじ1、鍋に入れて煮切って作られた甘酢調味液及びこれと同じ配合比の酢、みりん、砂糖、塩で作られた甘酢調味液、並びに
酢を大さじ5、砂糖を大さじ5、みりんを大さじ1、塩を大さじ1、耐熱容器に入れて1分程レンジで加熱し、砂糖を溶かして作られた寿司酢調味液及びこれと同じ比率の酢、砂糖、みりん、塩で作られた寿司酢調味液、並びに
酢をカップ1/4、レモン果汁を大さじ2、みりんを大さじ1、蜂蜜を小さじ2、鍋に入れて煮立て作られた蜂蜜レモン酢調味液及びこれと同じ比率の酢、レモン果汁、みりん、蜂蜜で作られた蜂蜜レモン酢調味液、並びに
はちみつを小さじ1、酢を小さじ1、塩を小さじ1/4弱、混ぜ合わせて作られたハチミツ甘酢調味液及びこれと同じ比率のはちみつ、酢、塩で作られたハチミツ甘酢調味液
を除く)。
【請求項2】
酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.72~4.6である、
酢酸含有調味液。
【請求項3】
酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0であり、
前記酢酸含有調味液中に対するリジン含有量が0.012質量%以上、又はアルギニン含有量が0.013質量%以上、又はヒスチジン含有量が0.004質量%以上、又は前記酢酸含有調味液中における3種のアミノ酸の合計含有量が0.026質量%以上である、
酢酸含有調味液。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の酢酸含有調味液が、生の状態のままか、或いは下拵えを施す場合には、下拵えを施す前の生の状態か、下拵えを施された状態のいずれかの状態の食品具材とその他原料の合計量に対して、又は、調理・加工された食品の全量に対して、それぞれに対する酢酸含有量が0.02~1.0質量%となるような状態で含有されている、具材入り調理済み食品。
【請求項5】
具材入り調理済み食品を製造するにあたり、
請求項1~3のいずれかに記載の酢酸含有調味液を、
生の状態のままか、或いは下拵えを施す場合には、下拵えを施す前の生の状態か、下拵えを施された状態のいずれかの状態の食品具材とその他原料とに対して、又は、調理・加工された食品に対して、
それぞれに対する酢酸含有量が0.02~1.0質量%となるように添加し、必要に応じて調理することを特徴とする、具材入り調理済み食品の製造方法。
【請求項6】
前記具材入り調理済み食品が、切り干し大根、筑前煮又はひじきの煮物である、請求項5に記載の調理済み食品の製造方法。
【請求項7】
酢酸含有調味液を製造するにあたり、
酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、その他調味原料とを、
前記酢酸含有量が0.1質量%以上、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70となり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30となり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%となり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上となり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0である、
ように混合し、均一な液状とした後、容器に充填することを特徴とする、酢酸含有調味液の製造方法
(ただし、
酢を100cc、みりんを50cc、砂糖を大さじ4、塩を小さじ1、鍋に入れて煮切って作られた甘酢調味液の製造方法及びこれと同じ配合比の酢、みりん、砂糖、塩で作られた甘酢調味液の製造方法、並びに
酢を大さじ5、砂糖を大さじ5、みりんを大さじ1、塩を大さじ1、耐熱容器に入れて1分程レンジで加熱し、砂糖を溶かして作られた寿司酢調味液の製造方法及びこれと同じ比率の酢、砂糖、みりん、塩で作られた寿司酢調味液の製造方法、並びに
酢をカップ1/4、レモン果汁を大さじ2、みりんを大さじ1、蜂蜜を小さじ2、鍋に入れて煮立て作られた蜂蜜レモン酢調味液の製造方法及びこれと同じ比率の酢、レモン果汁、みりん、蜂蜜で作られた蜂蜜レモン酢調味液の製造方法、並びに
はちみつを小さじ1、酢を小さじ1、塩を小さじ1/4弱、混ぜ合わせて作られたハチミツ甘酢調味液の製造方法及びこれと同じ比率のはちみつ、酢、塩で作られたハチミツ甘酢調味液の製造方法
を除く)。
【請求項8】
具材入り調理済み食品について長時間保管中における具材からの離水及び/又は具材の色味の変化を抑制するにあたり、
生の状態のままか、或いは下拵えを施す場合には、下拵えを施す前の生の状態か、下拵えを施された状態のいずれかの状態の食品具材とその他原料とに対して、又は、調理・加工された食品に対して、
請求項1~3のいずれかに記載の酢酸含有調味液を、
それぞれに対する酢酸含有量が0.02~1.0質量%となるように添加することを特徴とする、
具材入り調理済み食品について長時間保管中における具材からの離水及び/又は具材の色味の変化を抑制する方法。
【請求項9】
酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0であり、
前記酢酸含有調味液中における全遊離アミノ酸含有量が0.3質量%以上であるか、若しくは、
酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.15~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
酢酸含有調味液。
【請求項10】
請求項9に記載の酢酸含有調味液が、生の状態のままか、或いは下拵えを施す場合には、下拵えを施す前の生の状態か、下拵えを施された状態のいずれかの状態の食品具材とその他原料の合計量に対して、又は、調理・加工された食品の全量に対して、それぞれに対する酢酸含有量が0.02~1.0質量%となるような状態で含有されている、具材入り調理済み食品。
【請求項11】
具材入り調理済み食品を製造するにあたり、
請求項9に記載の酢酸含有調味液を、
生の状態のままか、或いは下拵えを施す場合には、下拵えを施す前の生の状態か、下拵えを施された状態のいずれかの状態の食品具材とその他原料とに対して、又は、調理・加工された食品に対して、
それぞれに対する酢酸含有量が0.02~1.0質量%となるように添加し、必要に応じて調理することを特徴とする、具材入り調理済み食品の製造方法。
【請求項12】
前記具材入り調理済み食品が、切り干し大根、筑前煮又はひじきの煮物である、請求項11に記載の調理済み食品の製造方法。
【請求項13】
具材入り調理済み食品について長時間保管中における具材からの離水及び/又は具材の色味の変化を抑制するにあたり、
生の状態のままか、或いは下拵えを施す場合には、下拵えを施す前の生の状態か、下拵えを施された状態のいずれかの状態の食品具材とその他原料とに対して、又は、調理・加工された食品に対して、
請求項9に記載の酢酸含有調味液を、
それぞれに対する酢酸含有量が0.02~1.0質量%となるように添加することを特徴とする、
具材入り調理済み食品について長時間保管中における具材からの離水及び/又は具材の色味の変化を抑制する方法。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和4年6月1日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(明確性)
本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対して特許されたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)「(酢酸含有)調味液」という規定について(申立書45頁~52頁)
本件発明の「(酢酸含有)調味液」という用語の示す範囲が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であり、本件特許は明確性要件違反として取消を免れない。
2 申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対して特許されたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件明細書に本件発明の構成を充足する実施例が存在しないことについて(申立書54頁~59頁)
(2)本件明細書に記載の実施例・比較例が本件発明のサポートとなり得ないことについて(申立書59頁~70頁)
(3)本件発明のパラメータに基づいてその技術的課題を解決できると認識し得ないことについて(申立書70頁~79頁)
(4)本件発明においてpHがその構成として適切に規定されていないことについて(申立書79頁~80頁)
3 申立理由3(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)「調味液」の規定について(申立書80頁~81頁)
具体的にどこまでが本件発明に言う「調味液」の括りに含まれるのか、その基準が極めて曖昧であるから、その実施において過度な試行錯誤を要することは明らかである。また、具体的にどのように調味液を調整することで、本件発明の課題のいずれが解決できるのか明らかではなく、この意味においてもその実施において過度な試行錯誤を要することは明らかである。
4 申立理由4-1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由4-2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
6 申立理由4-3(甲第3号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
7 申立理由4-4(甲第4号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲第4号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
8 証拠方法
甲第1号証:Rakutenレシピ「万能!作り置き甘酢 レシピ・作り方」https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1500000457/
甲第1号証の2:Rakutenレシピ「大根と水菜のサラダ レシピ・作り方」https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1500000458/
甲第1号証の3:Rakutenレシピ「セロリの葉と卜マトのサラダ レシピ・作り方」https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1500000557/
甲第1号証の4:Rakutenレシピ「大根とツナのマリネ レシピ・作り方」https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1500000604/
甲第1号証の5:Rakutenレシピ「きゅうりともずくの酢の物 レシピ・作り方」https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1500000761/
甲第2号証:クックパッド「簡単にお寿司屋さんの酢飯☆寿司酢」https://cookpad.com/recipe/1028078
甲第3号証:Rakutenレシピ「蜂蜜レモン酢れんこん レシピ・作り方」https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1460011529/
甲第4号証:レシピサイトNadia「きゅうりと人参のハチミツ甘酢漬け」https://oceans-nadia.com/user/22107/recipe/l34681
甲第5号証:「みんなの知識 ちょっと便利帳 計量スプーン・計量カップによる重量表」https://www.benricho.org/doryoko_cup_spoon/
甲第6号証:醸造物の成分、財団法人日本醸造協会、1999年12月、p.146-147,163-165,458-459,468-471,519-521,524-525,529-531
甲第6号証の2:醸造物の成分、財団法人日本醸造協会、1999年12月、p.62-73
甲第6号証の3:醸造物の成分、財団法人日本醸造協会、1999年12月、p.509
甲第7号証:酢lOOcc(100ml)は何グラム(何g)か?酢50cc(50ml)は何グラムか?酢20cc(20ml)は何グラムか?【酢の比重(密度)】https://life-freedom888.com/sulOOcc-g/
甲第8号証:「レモン汁大さじ1の重さは何グラム?小さじは?カロリーはあるの?」https://cojicaji.jp/cooking/cookingtips/2483
甲第9号証: Determination of oligosaccharides in Brazilian honeys of different botanical origin,Food Chemistry,70(2000)93-98
甲第10号証:研究ノート「産地および蜜源植物の異なる蜂蜜のアミノ酸分析」、栄養と食糧、Vol.35 No.4 297-303 1982
甲第11号証:「食品の遊離アミノ 酸含量表」及び果実類の遊離アミノ酸に関するエクセルシー卜、https://www.jsnfs.or.jp/database/database_aminoacid.html
甲第12号証:きゅうり1本の重さはどのくらい?カロリーと栄養価を解説!https://tokubai.co.jp/news/articles/33313#:~:text=ふつうサイズのきゅうりなら1本が大体100g。
甲第13号証:「塩百科」のホームページ、「浸透圧・脱水作用」https://www.shiojigyo.com/siohyakka/about/data/permeation.html
甲第14号証:「食品の浸透圧の測定結果について」、栄養学雑誌31巻、5号,p.214-215(1973-09)
甲第15号証:ウィキペディアの「アミノ酸」のページ、https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%8E%E9%85%B8
甲第16号証:特開2015-181417号公報
甲第17号証:特開2018-121559号公報
甲第18号証:特開2014-226074号公報
甲第19号証:群栄化学工業株式会社HPのインターネットアーカイブhttps://web.archive.org/web/20180829234806/https://www.gunei-chemical.co.jp/puretose.html
甲第20号証:三菱化学フーズ株式会社HPのインターネットアーカイブhttps://web.archive.org/web/20130612122917/https://www.mfc.co.jp/product/tourui/origo/list.html
甲第21号証:昭和産業株式会社HP、https://www.showa-sangyo.co.jp/pro/carbohydrate/product02/
甲第22号証:AJINOMOTO PARKたべる楽しさを、もっと。https://park.ajinomoto.co.jp/recipe/basic/ingredients_bunryou/
甲第23号証:タイガー魔法瓶(株)HP「お米一合は何g?何cc?何kcal?」https://www.tiger.jp/feature/ricecooker/takitate50/16.html
甲第24号証:日本食品標準成分表2020年版(八訂)アミノ酸成分表編 https://www.mext.go.jp/content/20201225-mxt_kasei-mext_01110_021.pdf
甲第25号証:S&B社のウェブサイト https://web.archive.org/web/20180412001734/https://www.sbcurry.com/recipe/standard01/
甲第26号証:METTLER TOLEDO社のウェブサイト https://www.mt.com/jp/ja/home/library/tips-and-tricks/lab-analytical-instruments/comparison-pH-buffer-accuracy.html
甲第27号証:いちばんやさしい、医療統計と題するウェブサイト、「大数の法則を例題を使いながら簡単にわかりやすく解説!」 https://best-biostatistics.com/hypo_test/taisuu.html
甲第28号証:鹿児島県工業技術センター研究報告「福山米酢の品質について」、1990年、No.4、p.21~23
甲第29号証:鹿児島県工業技術センター研究報告「市販米酢の品質について(第3報)」、1988年、No.2、p.27~33
甲第30号証:東京バイオテクノロジー専門学校のホームページ https://www.bio.ac.jp/archives/5950
甲第31号証:被申立人のホームページ https://faq.mizkan.co.jp/faq/show/4936?category_id=168&site_domain=default
なお、甲第6号証の2及び甲第24ないし29号証は、令和5年2月10日に提出された意見書に添付されたものであり、甲第6号証の3、甲第30号証及び甲第31号証は、同年7月26日に提出された上申書に添付されたものである。証拠の表記は、おおむね特許異議申立書、上記意見書及び上記上申書の記載に従った。
以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由通知<決定の予告>における取消理由の概要
当審が令和5年4月28日付けで特許権者に通知した取消理由通知<決定の予告>における取消理由の概要は、次のとおりである。
1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、3ないし13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 取消理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、4ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 取消理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)
本件特許の請求項1、4ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲3に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 取消理由4(甲4に基づく進歩性)
本件特許の請求項1、4ないし8に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許の優先日前に当業者が甲4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第6 当審の判断
以下に述べるように、当審が令和5年4月28日付けで特許権者に通知した取消理由通知<決定の予告>における取消理由1ないし4、並びに、申立書に記載した申立理由1ないし4-4には、いずれも理由がないと判断する。
なお、取消理由1ないし4は、各々、申立理由4-1ないし4-4の一部であるという事情に鑑み、まず、取消理由1及び申立理由4-1(甲1に基づく新規性・進歩性)、取消理由2及び申立理由4-2(甲2に基づく新規性・進歩性)、取消理由3及び申立理由4-3(甲3に基づく新規性・進歩性)、並びに、取消理由4及び申立理由4-4(甲4に基づく新規性・進歩性)について検討し、次いで、申立理由1(明確性)、申立理由2(サポート要件)及び申立理由3(実施可能要件)について、順次検討する。
1 取消理由1及び申立理由4-1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1には、おおむね次の事項が記載されている。
・「材料(?人分)
酢 100cc
みりん 50cc
砂糖 大さじ4
塩 小さじ1」
・「作り方
1 材料をすべて鍋に入れて煮きる。
2 冷めたら容器に入れて冷蔵庫で保存。
3 ★アレンジレシピ1○(当審注:丸囲み1を表す。以下同じ)★
レシピ ID:1500000458
『大根と水菜のサラダ』
レシピ ID:1500000557
『セロリの葉とトマトのサラダ』
4 ★アレンジレシピ2○(当審注:丸囲み2を表す。以下同じ)★
レシピ ID:1500000604
『大根とツナのマリネ』
レシピ ID:1500000761
『きゅうりともずくの酢の物』」
イ 甲1に記載された発明
甲1の「作り置き甘酢」は、アレンジレシピ1○、2○(甲1の2ないし甲1の5)に用いられるものであり、「調味液」にあたることは明らかである。
そうすると、甲1には、以下のとおりの発明(以下、順に「甲1発明」、「甲1製法発明」という。)を認定することができる。
<甲1発明>
「酢を100cc、みりんを50cc、砂糖を大さじ4、塩を小さじ1、鍋に入れて煮切って作られた甘酢調味液及びこれと同じ配合比の酢、みりん、砂糖、塩で作られた甘酢調味液。」
<甲1製法発明>
「甲1発明の製造方法。」
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1発明を対比する。
甲5によると、酢の比重は1.0であり、みりんの比重は1.15、砂糖大さじ1が9g、食塩小さじ1が6gであるから、甲1発明の配合は以下のとおりとなる。
[図:0001403623000001.jpg]
次に、酢酸の配合割合について検討するに、甲6(醸造物の成分)の524頁の第1表によると、穀物酢の酢酸含有量は4g/100gである(甲7のとおり、一般的な酢の密度は1g/mlであることから、第1表の「g/100mL」は、そのままg/100gに対応する。)。
次に遊離アミノ酸について検討するに、甲6の529頁の第2表によると、穀物酢に含有する各アミノ酸の含有量(mg%)は、本件特許発明1の規定の3種(リジン、アルギニン、ヒスチジン)及び9種(バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニン)に着目して示すと、以下のとおりである。また、これら以外のアミノ酸含有量について合計したものを、その他の合計として算出した(以下において同じ)。
[図:0001403623000002.jpg]
なお、同164頁の第4表によると、みりんに含有する各遊離アミノ酸の含有量(mg/100ml)が記載されており、それを重量割合(mg/100g)で換算すると、上記3種並びに9種の遊離アミノ酸の濃度は、以下のとおりとなる。
[図:0001403623000003.jpg]
また、甲6の146頁に記載のみりん中の糖類の含有割合(43~50w/v%の中間値446.5w/v%≒40.43質量%)及び第1表から算出される市販のみりんの糖組成に占めるマルトトリオースの含有割合(平均値で2.067%)から算出されるみりん中のマルトトリオース濃度は、0.8358g/100gである。
以上を踏まえ、甲1発明における、酢酸、各アミノ酸成分、マルトトリオースの含有量について検討すると、以下のとおり算出される(酢酸、マルトトリオースについてはg/100g、アミノ酸についてはmg/100g)を示す)。
[図:0001403623000004.jpg]
[図:0001403623000005.jpg]
そうすると、甲1発明においての、酢酸の含有量は2.01質量%、全遊離アミノ酸に対する9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比は0.52、酢酸に対する全遊離アミノ酸の含有質量比は0.076、酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比は0.08、9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対するこのうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計の含有質量比は27.63、酢酸に対するマルトトリオースの含有質量比は0.12である。
以上を基に、本件特許発明1と甲1発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、
マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0である、
酢酸含有調味液」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点1-1>
本件特許発明1は、「(ただし、
酢を100cc、みりんを50cc、砂糖を大さじ4、塩を小さじ1、鍋に入れて煮切って作られた甘酢調味液及びこれと同じ配合比の酢、みりん、砂糖、塩で作られた甘酢調味液、並びに
酢を大さじ5、砂糖を大さじ5、みりんを大さじ1、塩を大さじ1、耐熱容器に入れて1分程レンジで加熱し、砂糖を溶かして作られた寿司酢調味液及びこれと同じ比率の酢、砂糖、みりん、塩で作られた寿司酢調味液、並びに
酢をカップ1/4、レモン果汁を大さじ2、みりんを大さじ1、蜂蜜を小さじ2、鍋に入れて煮立て作られた蜂蜜レモン酢調味液及びこれと同じ比率の酢、レモン果汁、みりん、蜂蜜で作られた蜂蜜レモン酢調味液、並びに
はちみつを小さじ1、酢を小さじ1、塩を小さじ1/4弱、混ぜ合わせて作られたハチミツ甘酢調味液及びこれと同じ比率のはちみつ、酢、塩で作られたハチミツ甘酢調味液
を除く)。」と特定するのに対し、甲1発明は、このような特定はない点
以下、相違点1-1について検討する。
相違点1-1は、甲1発明を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。
また、相違点1-1が、甲1発明を除くことを特定するものである以上、甲1発明において、その余の各証拠をみても、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。
よって、本件特許発明1は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件特許発明2について
甲1発明の酢酸の濃度2.01質量%(モル濃度換算で0.335mol/Lを基に、酢酸のpKa=47.6を踏まえ、他にpHに大きな影響を与える要素がないことを踏まえて、甲1発明のpHを計算すると、10-4.76〔酢酸イオン濃度〕〔水素イオン濃度〕/〔酢酸濃度〕となり、〔酢酸イオン濃度〕≒〔水素イオン濃度〕、〔酢酸イオン濃度〕+〔酢酸濃度〕=0.335であるから、この式に当てはめて二次方程式を解くと、〔水素イオン濃度〕≒10-2.62となりpHは2.62程度と算出される。
以上を基に、本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、
マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0である、
酢酸含有調味液。」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点1-2>
本件特許発明2は、「pHが2.72~4.6である」と特定するのに対し、甲1発明は、このような特定はない点
以下、相違点1-2について検討する。
まず、甲1発明のpHは2.62程度であるから、相違点1-2は実質的な相違点であり、本件特許発明2は甲1発明ではない。
そして、甲1がレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲1発明において、pHを相違点1-2のように変えようとする動機はない。
してみれば、甲1発明において、pHを相違点1-2に係る本件特許発明2の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許発明2は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3と甲1発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、
マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
酢酸含有調味液。」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点1-3>
本件特許発明3は、「前記酢酸含有調味液中に対するリジン含有量が0.012質量%以上、又はアルギニン含有量が0.013質量%以上、又はヒスチジン含有量が0.004質量%以上、又は前記酢酸含有調味液中における3種のアミノ酸の合計含有量が0.026質量%以上である」と特定するのに対し、甲1発明は、このような特定はない点
以下、相違点1-3について検討する。
まず、相違点1-3は実質的な相違点であるから、本件特許発明3は甲1発明ではない。
そして、甲1がレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲1発明において、リジン含有量、アルギニン含有量、ヒスチジン含有量又は3種のアミノ酸の合計含有量を相違点1-3のように変えようとする動機はない。
してみれば、甲1発明において、リジン含有量、アルギニン含有量、ヒスチジン含有量又は3種のアミノ酸の合計含有量を相違点1-3に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許発明3は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 本件特許発明4ないし6及び8について
本件特許発明4ないし6及び8は、請求項1ないし3の記載をそれぞれ、直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1ないし3の各発明特定事項を全て有してさらに限定するものであるから、本件特許発明1ないし3と同様に、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
オ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲1製法発明を対比すると、上記アと同様なことがいえるから、本件特許発明7は、甲1製法発明であるとはいえないし、甲1製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
カ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲1発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
若しくは、
酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
酢酸含有調味液。」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点1-4>
本件特許発明9は、「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、酢酸含有調味液」において、「前記酢酸含有調味液中における全遊離アミノ酸含有量が0.3質量%以上である」と特定するか、
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
酢酸含有調味液」において、「前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.15~0.60質量%であり」と特定するのに対し、甲1発明は、このような特定はない点
以下、相違点1-4について検討する。
まず、相違点1-4は実質的な相違点であるから、本件特許発明9は甲1発明ではない。
そして、甲1がレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲1発明において、酢酸含有調味液中における、全遊離アミノ酸含有量又は9種の遊離アミノ酸群の合計含有量を相違点1-4のように変えようとする動機はない。
してみれば、甲1発明において、酢酸含有調味液中における、全遊離アミノ酸含有量又は9種の遊離アミノ酸群の合計含有量を相違点1-4に係る本件特許発明9の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許発明9は、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
キ 本件特許発明10ないし13について
本件特許発明10ないし13は、請求項9の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明9の発明特定事項を全て有してさらに限定するものであるから、本件特許発明9と同様に、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ク 取消理由1及び申立理由4-1(甲1に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、取消理由1及び申立理由4-1によって本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。
2 取消理由2及び申立理由4-2(甲2に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
・「材料(3合分)
お米 3合
酢 大さじ5
砂糖 大さじ5
みりん 大さじ1
塩 大さじ1」
・「作り方
2 耐熱容器に、酢、砂糖、みりん、塩を入れ、1分程レンジで加熱します。加熱後、しっかり混ぜ砂糖を溶かします。
3 ご飯が炊きあがったら、(2)のすし酢を少しずつ入れ混ぜ、冷ましたら、美味しい酢飯の出来上がり♪」
イ 甲2に記載された発明
上記アの「(2)のすし酢を少しずつ入れ混ぜ、冷ましたら、美味しい酢飯の出来上がり♪」という記載によれば、「簡単にお寿司屋さんの酢飯☆寿司酢」は調味液として用いられるものであることは明らかであるから、甲2には、以下のとおりの発明(以下、順に「甲2発明」、「甲2製法発明」という。)を認定することができる。
<甲2発明>
「酢を大さじ5、砂糖を大さじ5、みりんを大さじ1、塩を大さじ1、耐熱容器に入れて1分程レンジで加熱し、砂糖を溶かして作られた寿司酢調味液及びこれと同じ比率の酢、砂糖、みりん、塩で作られた寿司酢調味液。」
<甲2製法発明>
「甲2発明の製造方法。」
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲2発明を対比する。
甲5によると、酢大さじ1は15gであり、砂糖大さじ1は9gであり、みりん大さじ1は18gであり、塩大さじ1は18gであるから、甲2発明の配合は以下のとおりとなる。
[図:0001403623000006.jpg]
また、上記第6 1(2)において示した酢(穀物酢)の酢酸濃度及びアミノ酸組成、並びにみりんのアミノ酸組成及びマルトトリオースの含有割合を基に甲2発明の酢酸、各アミノ酸成分、マルトトリオースの含有量について検討すると、以下のとおり算出される (酢酸、マルトトリオースについてはg/100g、アミノ酸についてはmg/100gを示す)。
[図:0001403623000007.jpg]
[図:0001403623000008.jpg]
そうすると、甲2発明においての、酢酸の含有量は1.92質量%、全遊離アミノ酸に対する9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比は0.54、酢酸に対する全遊離アミノ酸の含有質量比は0.06、酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比は0.06、9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対するこのうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計の含有質量比は27.76、酢酸に対するマルトトリオースの含有質量比は0.05である。
以上を基に、本件特許発明1と甲2発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、
マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0である、
酢酸含有調味液」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点2-1>
本件特許発明1は、「(ただし、
酢を100cc、みりんを50cc、砂糖を大さじ4、塩を小さじ1、鍋に入れて煮切って作られた甘酢調味液及びこれと同じ配合比の酢、みりん、砂糖、塩で作られた甘酢調味液、並びに
酢を大さじ5、砂糖を大さじ5、みりんを大さじ1、塩を大さじ1、耐熱容器に入れて1分程レンジで加熱し、砂糖を溶かして作られた寿司酢調味液及びこれと同じ比率の酢、砂糖、みりん、塩で作られた寿司酢調味液、並びに
酢をカップ1/4、レモン果汁を大さじ2、みりんを大さじ1、蜂蜜を小さじ2、鍋に入れて煮立て作られた蜂蜜レモン酢調味液及びこれと同じ比率の酢、レモン果汁、みりん、蜂蜜で作られた蜂蜜レモン酢調味液、並びに
はちみつを小さじ1、酢を小さじ1、塩を小さじ1/4弱、混ぜ合わせて作られたハチミツ甘酢調味液及びこれと同じ比率のはちみつ、酢、塩で作られたハチミツ甘酢調味液
を除く)。」と特定するのに対し、甲2発明は、このような特定はない点
以下、相違点2-1について検討する。
相違点2-1は、甲2発明を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。
また、相違点2-1が、甲2発明を除くことを特定するものである以上、甲2発明において、その余の各証拠をみても、相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。
よって、本件特許発明1は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件特許発明2について
甲2発明の酢酸の濃度1.92質量%(モル濃度換算で0.320mol/Lを基に、酢酸のpKa=47.6を踏まえ、他にpHに大きな影響を与える要素がないことを踏まえて、甲2発明のpHを計算するとpHは2.63程度と算出される。
以上を基に、本件特許発明2と甲2発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、
マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0である、
酢酸含有調味液。」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点2-2>
本件特許発明2は、「pHが2.72~4.6である」と特定するのに対し、甲2発明は、このような特定はない点
以下、相違点2-2について検討する。
まず、甲2発明のpHは2.63程度であるから、相違点2-2は実質的な相違点であり、本件特許発明2は甲2発明ではない。
そして、甲2がレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲2発明において、pHを相違点2-2のように変えようとする動機はない。
してみれば、甲2発明において、pHを相違点2-2に係る本件特許発明2の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許発明2は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3と甲2発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、
マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
酢酸含有調味液。」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点2-3>
本件特許発明3は、「前記酢酸含有調味液中に対するリジン含有量が0.012質量%以上、又はアルギニン含有量が0.013質量%以上、又はヒスチジン含有量が0.004質量%以上、又は前記酢酸含有調味液中における3種のアミノ酸の合計含有量が0.026質量%以上である」と特定するのに対し、甲2発明は、このような特定はない点
以下、相違点2-3について検討する。
まず、相違点2-3は実質的な相違点であるから、本件特許発明3は甲2発明ではない。
そして、甲2がレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲2発明において、リジン含有量、アルギニン含有量、ヒスチジン含有量又は3種のアミノ酸の合計含有量を相違点2-3のように変えようとする動機はない。
してみれば、甲2発明において、リジン含有量、アルギニン含有量、ヒスチジン含有量又は3種のアミノ酸の合計含有量を相違点2-3に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許発明3は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 本件特許発明4ないし6及び8について
本件特許発明4ないし6及び8は、請求項1ないし3の記載をそれぞれ、直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1ないし3の各発明特定事項を全て有してさらに限定するものであるから、本件特許発明1ないし3と同様に、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
オ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲2製法発明を対比すると、上記アと同様なことがいえるから、本件特許発明7は、甲2製法発明であるとはいえないし、甲2製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
カ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲2発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
若しくは、
酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
酢酸含有調味液。」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点2-4>
本件特許発明9は、「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、酢酸含有調味液」において、「前記酢酸含有調味液中における全遊離アミノ酸含有量が0.3質量%以上である」と特定するか、
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
酢酸含有調味液」において、「前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.15~0.60質量%であり」と特定するのに対し、甲2発明は、このような特定はない点
以下、相違点2-4について検討する。
まず、相違点2-4は実質的な相違点であるから、本件特許発明9は甲2発明ではない。
そして、甲2がレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲2発明において、酢酸含有調味液中における、全遊離アミノ酸含有量又は9種の遊離アミノ酸群の合計含有量を相違点2-4のように変えようとする動機はない。
してみれば、甲2発明において、酢酸含有調味液中における、全遊離アミノ酸含有量又は9種の遊離アミノ酸群の合計含有量を相違点2-4に係る本件特許発明9の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許発明9は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
キ 本件特許発明10ないし13について
本件特許発明10ないし13は、請求項9の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明9の発明特定事項を全て有してさらに限定するものであるから、本件特許発明9と同様に、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ク 取消理由2及び申立理由4-2(甲2に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、取消理由2及び申立理由4-2によって本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。
3 取消理由3及び申立理由4-3(甲3に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲3に記載された事項等
ア 甲3に記載された事項
・「材料(作りやすい人分)
れんこん 小2節
☆酢 カップ1/4
☆レモン 果汁大さじ2
☆みりん 大さじ1
☆蜂蜜 小さじ2」
・「作り方
1 れんこんはピーラーで皮を剥き、薄切りして水にさらし水気を切る。
2 鍋に☆を煮立て、1を食えて1分煮たら、火を止め、容器に入れてそのまま冷まして味をなじませる。
3 半日から1日以上おいたほうが美味しいです。」
イ 甲3に記載された発明
上記アの「鍋に☆を煮立て、1を食えて1分煮たら、火を止め、容器に入れてそのまま冷まして味をなじませる」という記載によれば、上記「蜂蜜レモン酢れんこん」のれんこんを除いた部分(☆が付された部分)は調味液として用いられるものであることは明らかであるから、甲3には、以下のとおりの発明(以下、順に「甲3発明」、「甲3製法発明」という。)を認定することができる。
<甲3発明>
「酢をカップ1/4、レモン果汁を大さじ2、みりんを大さじ1、蜂蜜を小さじ2、鍋に入れて煮立て作られた蜂蜜レモン酢調味液及びこれと同じ比率の酢、レモン果汁、みりん、蜂蜜で作られた蜂蜜レモン酢調味液。」
<甲3製法発明>
「甲3発明の製造方法。」
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲3発明を対比する。
甲5によると、酢カップ1は200gであり、みりん大さじ1は18gであり、蜂蜜小さじ1は7gである。また、甲8によると、レモン果汁大さじ1は15gであるから、甲3発明の配合は以下のとおりとなる。
[図:0001403623000009.jpg]
このうち、酢(穀物酢)における酢酸の配合割合、遊離アミノ酸、並びにみり んに含有する各遊離アミノ酸及びマルトトリオース濃度は、上記第6 1(2)において述べたことがそのまま当て嵌まる。また、甲9のとおり、はちみつ中に含まれるマルトトリオースの含有量は、0.6875g/100g(1.03、0.69、0.24、 0.79の平均値)である。
また、はちみつ中のアミノ酸組成に関し、甲10のTable3に記載の各アミノ酸組成(日本のハチミツ)の平均値とその合計量(39.677mg/100g)から算出される各アミノ酸の濃度は以下のとおりとなる。
[図:0001403623000010.jpg]
そして、これらのアミノ酸組成を本件特許発明1の構成に即して示すと以下のとおりとなる。
[図:0001403623000011.jpg]
さらに、甲11によればレモン果汁由来中のアミノ酸濃度(mg%)は以下のとおりである。
[図:0001403623000012.jpg]
以上を踏まえ、甲3発明における酢酸、各アミノ酸成分、マルトトリオースの含有量について検討すると、以下のとおり算出される(酢酸、マルトトリオースについてはg/100g、アミノ酸についてはmg/100gを示す)。
[図:0001403623000013.jpg]
[図:0001403623000014.jpg]
そうすると、甲3発明においての、酢酸の含有量は1.79質量%、全遊離アミノ酸に対する9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比は0.4、酢酸に対する全遊離アミノ酸の含有質量比は0.093、酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比は0.07、9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対するこのうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計の含有質量比は28.91、酢酸に対するマルトトリオースの含有質量比は0.123である。
以上を基に、本件特許発明1と甲3発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、
マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0である、
酢酸含有調味液」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点3-1>
本件特許発明1は、「(ただし、
酢を100cc、みりんを50cc、砂糖を大さじ4、塩を小さじ1、鍋に入れて煮切って作られた甘酢調味液及びこれと同じ配合比の酢、みりん、砂糖、塩で作られた甘酢調味液、並びに
酢を大さじ5、砂糖を大さじ5、みりんを大さじ1、塩を大さじ1、耐熱容器に入れて1分程レンジで加熱し、砂糖を溶かして作られた寿司酢調味液及びこれと同じ比率の酢、砂糖、みりん、塩で作られた寿司酢調味液、並びに
酢をカップ1/4、レモン果汁を大さじ2、みりんを大さじ1、蜂蜜を小さじ2、鍋に入れて煮立て作られた蜂蜜レモン酢調味液及びこれと同じ比率の酢、レモン果汁、みりん、蜂蜜で作られた蜂蜜レモン酢調味液、並びに
はちみつを小さじ1、酢を小さじ1、塩を小さじ1/4弱、混ぜ合わせて作られたハチミツ甘酢調味液及びこれと同じ比率のはちみつ、酢、塩で作られたハチミツ甘酢調味液
を除く)。」と特定するのに対し、甲3発明は、このような特定はない点
以下、相違点3-1について検討する。
相違点3-1は、甲3発明を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。
また、相違点3-1が、甲3発明を除くことを特定するものである以上、甲3発明において、その余の各証拠をみても、相違点3-1に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。
よって、本件特許発明1は、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件特許発明2について
甲3発明の酢酸の濃度1.79質量%(モル濃度換算で0.298mol/Lを基に、酢酸のpKa=4.76を踏まえ、他にpHに大きな影響を与える要素がないことを踏まえて、甲3発明のpHを計算するとpHは2.64程度と算出される。
以上を基に、本件特許発明2と甲3発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、
マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0である、
酢酸含有調味液。」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点3-2>
本件特許発明2は、「pHが2.72~4.6である」と特定するのに対し、甲3発明は、このような特定はない点
以下、相違点3-2について検討する。
まず、甲3発明のpHは2.64程度であるから、相違点3-2は実質的な相違点であり、本件特許発明2は甲3発明ではない。
そして、甲3がレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲3発明において、pHを相違点3-2のように変えようとする動機はない。
してみれば、甲3発明において、pHを相違点3-2に係る本件特許発明2の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許発明2は、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3と甲3発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、
マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
酢酸含有調味液。」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点3-3>
本件特許発明3は、「前記酢酸含有調味液中に対するリジン含有量が0.012質量%以上、又はアルギニン含有量が0.013質量%以上、又はヒスチジン含有量が0.004質量%以上、又は前記酢酸含有調味液中における3種のアミノ酸の合計含有量が0.026質量%以上である」と特定するのに対し、甲3発明は、このような特定はない点
以下、相違点3-3について検討する。
まず、相違点3-3は実質的な相違点であるから、本件特許発明3は甲3発明ではない。
そして、甲3がレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲3発明において、リジン含有量、アルギニン含有量、ヒスチジン含有量又は3種のアミノ酸の合計含有量を相違点3-3のように変えようとする動機はない。
してみれば、甲3発明において、リジン含有量、アルギニン含有量、ヒスチジン含有量又は3種のアミノ酸の合計含有量を相違点3-3に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許発明3は、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 本件特許発明4ないし6及び8について
本件特許発明4ないし6及び8は、請求項1ないし3の記載をそれぞれ、直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1ないし3の各発明特定事項を全て有してさらに限定するものであるから、本件特許発明1ないし3と同様に、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
オ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲3製法発明を対比すると、上記アと同様なことがいえるから、本件特許発明7は、甲3製法発明であるとはいえないし、甲3製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
カ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲3発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
若しくは、
酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
酢酸含有調味液。」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点3-4>
本件特許発明9は、「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、酢酸含有調味液」において、「前記酢酸含有調味液中における全遊離アミノ酸含有量が0.3質量%以上である」と特定するか、
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
酢酸含有調味液」において、「前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.15~0.60質量%であり」と特定するのに対し、甲3発明は、このような特定はない点
以下、相違点3-4について検討する。
まず、相違点3-4は実質的な相違点であるから、本件特許発明9は甲3発明ではない。
そして、甲3がレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲3発明において、酢酸含有調味液中における、全遊離アミノ酸含有量又は9種の遊離アミノ酸群の合計含有量を相違点3-4のように変えようとする動機はない。
してみれば、甲3発明において、酢酸含有調味液中における、全遊離アミノ酸含有量又は9種の遊離アミノ酸群の合計含有量を相違点3-4に係る本件特許発明9の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許発明9は、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
キ 本件特許発明10ないし13について
本件特許発明10ないし13は、請求項9の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明9の発明特定事項を全て有してさらに限定するものであるから、本件特許発明9と同様に、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ク 取消理由3及び申立理由4-3(甲3に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、取消理由3及び申立理由4-3によって本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。
4 取消理由4及び申立理由4-4(甲4に基づく新規性・進歩性)について
(1)甲4に記載された事項等
ア 甲4に記載された事項
・「材料(作り易い量)
きゅうり 1本
にんじん 50g
塩 小さじ1/4
A はちみつ 小さじ1
A 酢 小さじ1
A 塩 小さじ1/4弱」
・「作り方
1 きゅうりはヘタをとり、長さを半分にきったら太さを1/8にします。にんじんは皮をむいて7mm角のスティック状に切ります。
2 1に塩を振って10分程度置き、水気がでたらざるにあげます。
3 混ぜ合わせたAと2を容器やキッチン袋にいれて30分以上おきます。」
イ 甲4に記載された発明
上記アの「混ぜ合わせたAと2を容器やキッチン袋にいれて30分以上おきます。」という記載によれば、上記「きゅうりと人参のハチミツ甘酢漬け」のA部分は調味液として用いられるものであることは明らかであるから、甲4には、以下のとおりの発明(以下、順に「甲4発明」、「甲4製法発明」という。)を認定することができる。
<甲4発明>
「はちみつを小さじ1、酢を小さじ1、塩を小さじ1/4弱、混ぜ合わせて作られたハチミツ甘酢調味液及びこれと同じ比率のはちみつ、酢、塩で作られたハチミツ甘酢調味液。」
<甲4製法発明>
「甲4発明の製造方法。」
(2)対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲4発明を対比する。
甲5によると、はちみつ小さじ1は7gであり、酢小さじ1は5gであり、塩小さじ1は6gであるから、甲4発明の配合は以下のとおりとなる。
[図:0001403623000015.jpg]
また、上記第6 1(2)において示した酢(穀物酢)の酢酸濃度及びアミノ酸組成、並びに上記第6 2(2)に示したはちみつ中のアミノ酸組成及びマルトトリオースの割合を基に甲4発明における酢酸、各アミノ酸成分、マルトトリオースの含有量について検討すると、以下のとおり算出される(酢酸、マルトトリオースについてはg/100g、アミノ酸についてはmg/100gを示す)。
[図:0001403623000016.jpg]
[図:0001403623000017.jpg]
そうすると、甲4発明においての、酢酸の含有量は1.48質量%、全遊離アミノ酸に対する9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比は0.46、酢酸に対する全遊離アミノ酸の含有質量比は0.06、酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比は0.04、9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対するこのうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計の含有質量比は27.7、酢酸に対するマルトトリオースの含有質量比は0.241である。
以上を基に、本件特許発明1と甲4発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、
マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0である、
酢酸含有調味液」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点4-1>
本件特許発明1は、「(ただし、
酢を100cc、みりんを50cc、砂糖を大さじ4、塩を小さじ1、鍋に入れて煮切って作られた甘酢調味液及びこれと同じ配合比の酢、みりん、砂糖、塩で作られた甘酢調味液、並びに
酢を大さじ5、砂糖を大さじ5、みりんを大さじ1、塩を大さじ1、耐熱容器に入れて1分程レンジで加熱し、砂糖を溶かして作られた寿司酢調味液及びこれと同じ比率の酢、砂糖、みりん、塩で作られた寿司酢調味液、並びに
酢をカップ1/4、レモン果汁を大さじ2、みりんを大さじ1、蜂蜜を小さじ2、鍋に入れて煮立て作られた蜂蜜レモン酢調味液及びこれと同じ比率の酢、レモン果汁、みりん、蜂蜜で作られた蜂蜜レモン酢調味液、並びに
はちみつを小さじ1、酢を小さじ1、塩を小さじ1/4弱、混ぜ合わせて作られたハチミツ甘酢調味液及びこれと同じ比率のはちみつ、酢、塩で作られたハチミツ甘酢調味液
を除く)。」と特定するのに対し、甲4発明は、このような特定はない点
以下、相違点4-1について検討する。
相違点4-1は、甲4発明を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。
また、相違点4-1が、甲4発明を除くことを特定するものである以上、甲4発明において、その余の各証拠をみても、相違点4-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。
よって、本件特許発明1は、甲4発明であるとはいえないし、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
イ 本件特許発明2について
甲4発明の酢酸の濃度1.48質量%(モル濃度換算で0.246mol/Lを基に、酢酸のpKa=4.76を踏まえ、他にpHに大きな影響を与える要素がないことを踏まえて、甲4発明のpHを計算するとpHは2.69程度と算出される。
以上を基に、本件特許発明2と甲4発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、
マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0である、
酢酸含有調味液。」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点4-2>
本件特許発明2は、「pHが2.72~4.6である」と特定するのに対し、甲4発明は、このような特定はない点
以下、相違点4-2について検討する。
まず、甲4発明のpHは2.69程度であるから、相違点4-2は実質的な相違点であり、本件特許発明2は甲4発明ではない。
そして、甲4がレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲4発明において、pHを相違点4-2のように変えようとする動機はない。
してみれば、甲4発明において、pHを相違点4-2に係る本件特許発明2の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許発明2は、甲4発明であるとはいえないし、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ウ 本件特許発明3について
本件特許発明3と甲4発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、
マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
酢酸含有調味液。」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点4-3>
本件特許発明3は、「前記酢酸含有調味液中に対するリジン含有量が0.012質量%以上、又はアルギニン含有量が0.013質量%以上、又はヒスチジン含有量が0.004質量%以上、又は前記酢酸含有調味液中における3種のアミノ酸の合計含有量が0.026質量%以上である」と特定するのに対し、甲4発明は、このような特定はない点
以下、相違点4-3について検討する。
まず、相違点4-3は実質的な相違点であるから、本件特許発明3は甲4発明ではない。
そして、甲4がレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲4発明において、リジン含有量、アルギニン含有量、ヒスチジン含有量又は3種のアミノ酸の合計含有量を相違点4-3のように変えようとする動機はない。
してみれば、甲4発明において、リジン含有量、アルギニン含有量、ヒスチジン含有量又は3種のアミノ酸の合計含有量を相違点4-3に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許発明3は、甲4発明であるとはいえないし、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
エ 本件特許発明4ないし6及び8について
本件特許発明4ないし6及び8は、請求項1ないし3の記載をそれぞれ、直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明1ないし3の各発明特定事項を全て有してさらに限定するものであるから、本件特許発明1ないし3と同様に、甲4発明であるとはいえないし、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
オ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲4製法発明を対比すると、上記アと同様なことがいえるから、本件特許発明7は、甲4製法発明であるとはいえないし、甲4製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
カ 本件特許発明9について
本件特許発明9と甲4発明とを対比すると、両者は以下の点で一致する。
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
若しくは、
酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
酢酸含有調味液。」
そして、両者は以下の点で相違する。
<相違点4-4>
本件特許発明9は、「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.03~0.60質量%であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、酢酸含有調味液」において、「前記酢酸含有調味液中における全遊離アミノ酸含有量が0.3質量%以上である」と特定するか、
「酢酸と、バリン,メチオニン,イソロイシン,ロイシン,チロシン,フェニルアラニン,ヒスチジン,リジン及びアルギニンよりなる9種の遊離アミノ酸群から選択される少なくとも1種の遊離アミノ酸と、前記以外の遊離アミノ酸と、マルトトリオースと、を含有する酢酸含有調味液であって、
前記酢酸を0.1質量%以上含有し、
全遊離アミノ酸に対する、前記9種の遊離アミノ酸群の合計の含有質量比が、0.20~0.70であり、
前記酢酸に対する、全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30であり、
前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量に対する、このうちのリジンとアルギニンとヒスチジンの3種の遊離アミノ酸の合計含有量の割合が、11質量%以上であり、かつ、
前記酢酸に対する、マルトトリオースの含有質量比が、0.01~5.0であり、
pHが2.0~4.6であり、
前記3種の遊離アミノ酸の含有質量比が、リジン1に対して、アルギニンが0.10~3.0であり、かつ、ヒスチジンが0.05~1.0である、
酢酸含有調味液」において、「前記酢酸含有調味液中における前記9種の遊離アミノ酸群の合計含有量が、0.15~0.60質量%であり」と特定するのに対し、甲4発明は、このような特定はない点
以下、相違点4-4について検討する。
まず、相違点4-4は実質的な相違点であるから、本件特許発明9は甲4発明ではない。
そして、甲4がレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲4発明において、酢酸含有調味液中における、全遊離アミノ酸含有量又は9種の遊離アミノ酸群の合計含有量を相違点4-4のように変えようとする動機はない。
してみれば、甲4発明において、酢酸含有調味液中における、全遊離アミノ酸含有量又は9種の遊離アミノ酸群の合計含有量を相違点4-4に係る本件特許発明9の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。
よって、本件特許発明9は、甲4発明であるとはいえないし、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
キ 本件特許発明10ないし13について
本件特許発明10ないし13は、請求項9の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであって、本件特許発明9の発明特定事項を全て有してさらに限定するものであるから、本件特許発明9と同様に、甲4発明であるとはいえないし、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
ク 取消理由4及び申立理由4-4(甲4に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、取消理由4及び申立理由4-4によって本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由1(明確性)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
(3)明確性要件の判断
本件特許の特許請求の範囲の記載は、それ自体不明確な記載ではないし、明細書の記載とも整合する。
したがって、本件特許発明1ないし13に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
よって、本件特許発明1ないし13は明確である。
(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 1の主張について検討するに、本件特許発明1ないし13の「(酢酸含有)調味液」は、本件特許の発明の詳細な説明の【0017】より、「調理前の野菜や肉や魚といった生の食品具材や、半調理・加工された食品具材や、或いは調理・加工された食品に添加して用いられる流動性を有する調味料」を意味することは明らかであるから、特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえず、採用できない。
(5)申立理由1(明確性)についてのまとめ
以上のとおり、申立理由1によって本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。
6 申立理由2(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
(3)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0010】及び【0011】によると、本件特許発明1ないし3、7及び9の解決しようとする課題は「酢酸と特定のアミノ酸を所定量で含有する調味液であって、本調味液を添加して調理された食品が、以下の(A)~(D)((A)長時間にわたって、食品における具材の離水が低減される、(B)長時間にわたって、食品における具材の変色が抑制され、色味が鮮やかに保持される、(C)酢酸による酸味や酸臭、および「むせ」が抑えられ、酸味がまろやかである、(D)長期間保管した後でも、風味・食感・外観が損なわれず、出来立ての風味・食感・外観が保持される)のうち少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を満たす酢酸含有調味液を提供すること」であり、本件特許発明4ないし6及び10ないし12の解決しようとする課題は「酢酸と特定のアミノ酸を所定量で含有する調味液であって、本調味液を添加して調理された食品が、以下の(A)~(D)((A)長時間にわたって、食品における具材の離水が低減される、(B)長時間にわたって、食品における具材の変色が抑制され、色味が鮮やかに保持される、(C)酢酸による酸味や酸臭、および「むせ」が抑えられ、酸味がまろやかである、(D)長期間保管した後でも、風味・食感・外観が損なわれず、出来立ての風味・食感・外観が保持される)のうち少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を満たす酢酸含有調味液が含有されている具材入り調理済み食品を提供すること」であり、本件特許発明8及び13の解決しようとする課題は「酢酸と特定のアミノ酸を所定量で含有する調味液であって、本調味液を添加して調理された食品が、以下の(A)~(D)((A)長時間にわたって、食品における具材の離水が低減される、(B)長時間にわたって、食品における具材の変色が抑制され、色味が鮮やかに保持される、(C)酢酸による酸味や酸臭、および「むせ」が抑えられ、酸味がまろやかである、(D)長期間保管した後でも、風味・食感・外観が損なわれず、出来立ての風味・食感・外観が保持される)のうち少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を満たす酢酸含有調味液が含有されている具材入り調理済み食品について長時間保管中における具材からの離水及び/又は具材の色味の変化を抑制すること」である(以下、総称して「発明の課題」という。)。
他方、本件特許の発明の詳細な説明の【0011】には、「本発明者らは、前述した課題に鑑み鋭意研究を重ねた結果、酢酸を含有する調味液において、調味液中に含まれる酢酸の含有量と、全遊離アミノ酸に対する特定の遊離アミノ酸(バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、ヒスチジン、リジン、及びアルギニン)の含有質量比と、酢酸に対する全遊離アミノ酸の含有質量比とを調整することにより、本調味液を添加して調理された食品が、前記の(A)~(D)のうち少なくとも1つ、好ましくは2つ以上を満たす酢酸含有調味液が得られることを見出し、これらの知見に基づいて本開示を完成させるに至った。」と記載され、同【0012】には、本件特許発明1ないし13に対応する事項が記載されている。
また、本件特許の発明の詳細な説明の【0020】には、「酢酸」とその含有量の技術的意味について記載され、同【0021】及び【0022】には、「全遊離アミノ酸に対する9種の遊離アミノ酸の含有質量比」の技術的意味について記載され、同【0023】及び【0024】には、「9種のアミノ酸に対するリジン、アルギニン、ヒスチジン含有比率」の技術的意味について記載され、同【0025】及び【0026】には、「酢酸に対する全遊離アミノ酸の含有質量比」の技術的意味について記載され、同【0027】ないし【0029】には、「pH」の技術的意味について記載され、同【0030】には、「全遊離アミノ酸の含有量」の技術的意味について記載され、同【0031】には、「9種の遊離アミノ酸の含有量」の技術的意味について記載され、同【0032】には、「マルトトリオース」の技術的意味について記載され、同【0033】には、「酢酸に対するマルトトリオースの含有質量比」の技術的意味について記載されている。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0073】ないし【0123】において、「酢酸を0.1質量%以上」含有し、「全遊離アミノ酸に対する9種の遊離アミノ酸の含有質量比が0.20~0.70」であり、「酢酸に対する全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30」である実施例は、(A)長時間にわたって、食品における具材の離水が低減される、(B)長時間にわたって、食品における具材の変色が抑制され、色味が鮮やかに保持される、(C)酢酸による酸味や酸臭、および「むせ」が抑えられ、酸味がまろやかである、(D)長期間保管した後でも、風味・食感・外観が損なわれず、出来立ての風味・食感・外観が保持される、のうち少なくとも1つを満たすことを確認している。
そうすると、当業者は、「酢酸を0.1質量%以上」含有し、「全遊離アミノ酸に対する9種の遊離アミノ酸の含有質量比が0.20~0.70」であり、「酢酸に対する全遊離アミノ酸の含有質量比が0.01~0.30」である、「酢酸含有調味液」又は「具材入り調理済み食品」、及びそれらの「製造方法」は発明の課題を解決できると認識できる。
したがって、本件特許発明1ないし13は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし13に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
(4)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 2の主張について検討するに、いずれも上記(3)のサポート要件の判断を左右するものではなく、採用できない。なお、上記のとおり、本件特許発明1ないし13は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、具体的な実施例がないことをもって、サポート要件を満たさないとすることはできない。
(5)申立理由2(サポート要件)についてのまとめ
以上のとおり、申立理由2によって本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。
7 申立理由3(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明1ないし4、9及び10は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明5ないし7、11及び12は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法を使用し、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。
本件特許発明8及び13は方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし13の各発明特定事項について具体的に記載され、実施例についてもその製造方法を含め具体的に記載されている。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし4、9及び10を生産し、使用することができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明5ないし7、11及び12を使用し、本件特許発明5ないし7、11及び12により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明8及び13を使用することができる程度の記載があるといえる。
したがって、本件特許発明1ないし13に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 3の主張について検討するに、次のとおりであり、採用できない。
上記5のとおり、本件特許発明1ないし13に関して、特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
また、上記6のとおり、本件特許発明1ないし13は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるし、発明の詳細な説明に記載された実施例を参考にすることによって、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし13を実施することができるから、具体的な実施例がないことをもって、実施可能要件を満たさないとすることはできない。
したがって、本件特許発明1ないし13を実施するのに当業者に過度の試行錯誤を要するとの主張は採用できない。
(4)申立理由3(実施可能要件)についてのまとめ
以上のとおり、申立理由3によって本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。
第7 結語
以上のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、取消理由通知<決定の予告>における取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700476