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特許異議申立

2022-700097

酢酸含有飲食品

審判番号
2022-700097
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-150887
登録番号
6912784
請求日
2022年02月04日
審決日
2023年06月08日
公報発行日
2023年09月29日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社Mizkan Holdings
  • 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
  • 【権利者】株式会社Mizkan
  • 【権利者代理人】弁理士法人三枝国際特許事務所
  • 【異議申立人】森田 弘潤
審判長/審判官
  • 審判長 加藤 友也
  • 審判官 平塚 政宏
  • 審判官 植前 充司
分類
P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6912784号発明「酢酸含有飲食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6912784号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求のとおり、訂正後の請求項〔1、6〕、2、〔3、10〕、4、5、7、8、9、11、12、13について訂正することを認める。 特許第6912784号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6912784号(以下「本件特許」という。)の請求項1ないし13に係る特許についての出願は、令和 2年 9月 8日を出願日とする特許出願であって、令和 3年 7月13日にその特許権の設定登録(請求項の数13)がされ、同年 8月 4日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和 4年 2月 4日に特許異議申立人 森田 弘潤(以下「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし13)がされ、同年 5月12日付けで取消理由が通知され、同年 7月19日に特許権者 株式会社Mizkan Holdings及び株式会社Mizkan(以下、まとめて「特許権者」という。)から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年 7月28日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年 9月1日に申立人から意見書が提出され、同年11月14日付けで取消理由<決定の予告>が通知され、令和 5年 1月12日に特許権者から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年 3月16日付けで、再度取消理由<決定の予告>が通知され、同年 5月17日に特許権者から訂正請求がされるとともに意見書が提出されたものである。 なお、令和 4年 7月19日にされた訂正請求、及び令和 5年 1月12日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 また、令和 5年 5月17日にされた訂正請求については、すでに申立人に意見書の提出の機会が与えられている場合であって、後記のとおり、訂正の請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえてさらに審理を進めたとしても、特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断したため、申立人に対して改めて意見書を提出する機会を与える必要がないと認められる特別の事情があるものとした。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和 5年 5月17日にされた訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりであって、一群の請求項である請求項1ないし10、並びに、請求項11、請求項12及び請求項13について訂正するものである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 なお、半角英数字及び記号は便宜上全て全角で表記した。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「酢酸を0.02w/v%以上含有し、(Al成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb以上含有し、且つ(A2成分)3-メチル-1-ブタノール、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)l-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有する、酢酸含有飲食品。」 と記載されているのを、 「酢酸を0.02w/v%以上含有し、(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb~2000ppb含有し、(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、ヘキサナールを0.001~50ppb含有し、且つ酢酸濃度値(w/v%)に対するヘキサナールの濃度値(ppb)の比(ヘキサナールの濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.01以上である、酢酸含有飲食品。」 に訂正する。 請求項1の記載を引用する請求項6についても同様に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「前記A1成分の含有量が0.005~1000ppbである、請求項1に記載の酢酸含有飲食品。」 と記載されているのを、 「酢酸を0.02w/v%以上含有し、(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.005~10ppb含有し、且つ(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有する、酢酸含有飲食品。」 に訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に 「ヘキサナールを含有し、且つ酢酸濃度値(w/v%)に対するヘキサナールの濃度値(ppb)の比(ヘキサナールの濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.01以上である、請求項1又は2に記載の酢酸含有飲食品。」 と記載されているのを、 「酢酸を0.02w/v%以上含有し、(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb~2000ppb含有し、(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、ヘキサナールを3000~20000ppb含有し、且つ酢酸濃度値(w/v%)に対するヘキサナールの濃度値(ppb)の比(ヘキサナールの濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.01以上である、酢酸含有飲食品。」 に訂正する。 請求項3の記載を引用する請求項10についても同様に訂正する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に 「前記比(ヘキサナールの濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.05~100000である、請求項3に記載の酢酸含有飲食品。」 と記載されているのを、 「酢酸を0.02w/v%以上含有し、(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb~2000ppb含有し、(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、ヘキサナールを300~1000ppb含有し、且つ酢酸濃度値(w/v%)に対するヘキサナールの濃度値(ppb)の比(ヘキサナールの濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.05~100000である、酢酸含有飲食品。」 に訂正する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に 「前記香気成分の合計含有量が0.01ppb以上である、請求項1~4のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。」 と記載されているのを、 「酢酸を0.02w/v%以上含有し、(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb~2000ppb含有し、(A2成分)3-メチル-1-ブタノール、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、且つ前記香気成分の合計含有量が0.01ppb以上である、酢酸含有飲食品(ただし、100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)からなるジュース調整用組成物及びそれと同じ配合比のジュース用組成物; 100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)と、ガス入りミネラルウオーター50ccからなるジュース及びそれと同じ配合比であるジュース; トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュース; 酢酸濃度が8.75w/v%であり、A1成分を2.04ppb、A2成分を73.92ppb含有するトマトビネガー; 酸度8%の食酢を1.5%、トマトペーストを5.0%、レモン果汁を5.0%含有する乳化タイプドレッシング; 及び酸度10%の食酢を10%、トマトペーストを4.0%、レモン果汁を3.0%含有するサウザンアイランドドレッシング; を除く。)。」 に訂正する。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6に 「(要件2a)前記A2成分の含有量が0.5ppb以上であること、 (要件3a)前記A3成分の含有量が0.01ppb以上であること、 (要件4a)前記A4成分の含有量が0.01ppb以上であること、及び (要件5a)前記A5成分の含有量が0.01ppb以上であること からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす、請求項1~5のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。」 と記載されているのを、 「(要件2a)前記A2成分の含有量が500ppb以上であること、 (要件3a)前記A3成分の含有量が0.01ppb以上であること、 (要件4a)前記A4成分の含有量が0.01ppb以上であること、及び (要件5a)前記A5成分の含有量が0.01ppb以上であること からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす、請求項1に記載の酢酸含有飲食品。」 に訂正する。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項7に 「果汁を含有する、請求項1~6のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。」 と記載されているのを、 「酢酸を0.02w/v%以上含有し、(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb~2000ppb含有し、(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、且つブルーベリー、ブドウ、ラズベリー、イチゴ、ザクロ、カシス、モモ、ウメ、メロン、マンゴー、パイナップル、及びライチからなる群より選択される少なくとも1種の果実由来の果汁を含有する、酢酸含有飲食品。」 に訂正する。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項8に 「果汁含有率(ストレート果汁換算)が0.1質量%以上700質量%以下である、請求項7に記載の酢酸含有飲食品。」 と記載されているのを、 「酢酸を0.02w/v%以上含有し、(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb~2000ppb含有し、(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、果汁を含有し、且つ果汁含有率(ストレー卜果汁換算)が0.1質量%以上50質量%以下である、酢酸含有飲食品(ただし、トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュース を除く。)。」 に訂正する。 (9) 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項9に 「前記果汁がブルーベリー果汁、イチゴ果汁、ザクロ果汁、ブドウ果汁、ラズベリー果汁、カシス果汁、柑橘果汁、リンゴ果汁、メロン果汁、ウメ果汁、モモ果汁である、請求項7又は8に記載の酢酸含有飲食品。」 と記載されているのを、 「酢酸を0.02w/v%以上含有し、(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb~2000ppb含有し、(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、果汁を含有し、且つ前記果汁が柑橘果汁である、酢酸含有飲食品(ただし、トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のシュース を除く。)。」 に訂正する。 (10) 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10に 「飲料又は該飲料の調製用組成物である、請求項1~9のいずれかに記載の酢酸含有飲食品。」 と記載されているのを、 「飲料又は該飲料の調製用組成物である、請求項3に記載の酢酸含有飲食品。」 に訂正する。 (11) 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11に 「酢酸を含有量が0.02w/v%以上になるように配合すること、(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを含有量が0.001ppb以上になるように配合すること、並びに(A2成分)3-メチル-1-ブタノール、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を配合することを含む、保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とが抑制された酢酸含有飲食品の製造方法。」 と記載されているのを、 「酢酸を含有量が0.02w/v%以上になるように配合すること、(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを含有量が0.001ppb~2000ppbになるように配合すること、並びに(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を配合することを含む、保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とが抑制された酢酸含有飲食品の製造方法(ただし、100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)からなるジュース調整用組成物及びそれと同じ配合比のジュース調整用組成物の製造方法; 100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)と、ガス入りミネラルウオーター50ccからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュースの製造方法; トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュースの製造方法; を除く。)。」に訂正する。 (12) 訂正事項12 明細書の段落【0112】に「なお、評価においては、青臭さ、ムレ臭、刺激臭、及び酢酸臭について、「非常に強い」を「+3」、「非常に弱い」を「-3」、とした7段階の評点を付けてもらい、その平均点を算出した。」と記載されているのを、「なお、評価においては、青臭さ、ムレ臭、刺激臭、及び酢酸臭について、「非常に弱い」を「+3」、「非常に強い」を「-3」、とした7段階の評点を付けてもらい、その平均点を算出した。」に訂正する。 (13) 訂正事項13 明細書の段落【0118】に「なお、評価においては、青臭さ、ムレ臭、刺激臭、及び酢酸臭について、「非常に強い」を「+3」、「非常に弱い」を「-3」、とした7段階の評点を付けてもらい、その平均点を算出した。」と記載されているのを、「なお、評価においては、青臭さ、ムレ臭、刺激臭、及び酢酸臭について、「非常に弱い」を「+3」、「非常に強い」を「-3」、とした7段階の評点を付けてもらい、その平均点を算出した。」に訂正する。 (14) 特許権者から、訂正後の請求項2、3及び10、4、5、7、8並びに9について、訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがあった。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1による請求項1及び6の訂正について 訂正事項1による請求項1の訂正は、A1成分の含有量を限定し、A2成分の含有量を具体的に特定し、ヘキサナールを一定量含有することを特定し、さらに酢酸濃度値(w/v%)に対するヘキサナールの濃度値(ppb)の比が一定以上であることを特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による請求項1の訂正は、明細書の段落【0018】、【0019】、【0021】及び【0024】の記載からみて、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項1の記載を引用して特定する請求項6の訂正についても同様である。 (2) 訂正事項2による請求項2の訂正について 訂正事項2による請求項2の訂正は、訂正前の請求項2が請求項1に従属する請求項であるところ、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改め、A1成分の含有量を限定し、さらにA2成分の含有量を具体的に特定するものであり、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項2による請求項2の訂正は、明細書の段落【0021】及び【0024】の記載からみて、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3) 訂正事項3による請求項3の訂正について 訂正事項3による請求項3の訂正は、訂正前の請求項3が請求項1又は2に従属する請求項であるところ、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改め、A1成分の含有量を限定し、A2成分の含有量を具体的に特定し、さらにヘキサナールの含有量を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項3による請求項3の訂正は、明細書の段落【0018】、【0021】及び【0024】の記載からみて、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項3の記載を引用して特定する請求項10の訂正についても同様である。 (4) 訂正事項4による請求項4の訂正について 訂正事項4による請求項4の訂正は、訂正前の請求項4が請求項3に従属する請求項であるところ、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改め、A1成分の含有量を限定し、A2成分の含有量を具体的に特定し、さらにヘキサナールの含有量を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項4による請求項4の訂正は、明細書の段落【0018】、【0021】及び【0024】の記載からみて、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5) 訂正事項5による請求項5の訂正について 訂正事項5による請求項5の訂正は、訂正前の請求項5が請求項1~4のいずれかに従属する請求項であるところ、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改め、A1成分の含有量の範囲を限定し、さらに特定の飲食品が除かれた飲食品に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項5による請求項5の訂正は、明細書の段落【0021】の記載及びいわゆる「除くクレーム」であることからからみて、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6) 訂正事項6による請求項6の訂正について 訂正事項6による請求項6の訂正は、訂正前の請求項6が請求項1~5のいずれかに従属する請求項であるところ、請求項2~5を引用しないものとし、さらにA2成分の含有量を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項6による請求項6の訂正は、明細書の段落【0024】の記載からからみて、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7) 訂正事項7による請求項7の訂正について 訂正事項7による請求項7の訂正は、訂正前の請求項7が請求項1~6のいずれかに従属する請求項であるところ、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改め、A1成分の含有量を限定し、A2成分の含有量を具体的に特定し、さらに果汁の種類を限定するものであり、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項7による請求項7の訂正は、明細書の段落【0021】、【0024】、【0056】及び【0061】の記載からみて、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (8) 訂正事項8による請求項8の訂正について 訂正事項8による請求項8の訂正は、訂正前の請求項8が請求項7に従属する請求項であるところ、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改め、A1成分の含有量を限定し、A2成分の含有量を具体的に特定し、果汁含有率を限定し、さらに特定の飲食品が除かれた飲食品に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項8による請求項8の訂正は、明細書の段落【0021】、【0024】及び【0057】の記載、並びに、いわゆる「除くクレーム」であることからみて、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (9) 訂正事項9による請求項9の訂正について 訂正事項9による請求項9の訂正は、訂正前の請求項9が請求項7又は8に従属する請求項であるところ、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改め、A1成分の含有量を限定し、A2成分の含有量を具体的に特定し、果汁の種類を限定し、さらに特定の飲食品が除かれた飲食品に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮、及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項9による請求項9の訂正は、明細書の段落【0021】、【0024】、【0056】及び【0061】の記載、並びに、いわゆる「除くクレーム」であることからみて、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (10) 訂正事項10による請求項10の訂正について 訂正事項10による請求項10の訂正は、訂正前の請求項10が請求項1~9のいずれかに従属する請求項であるところ、請求項1~2及び4~9を引用しないものとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項10による請求項10の訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (11) 訂正事項11による請求項11の訂正について 訂正事項11による請求項11の訂正は、訂正前の請求項11におけるA1成分の含有量を限定し、A2成分の含有量を具体的に特定し、さらに特定の飲食品の製造方法が除かれた製造方法に限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項11による請求項11の訂正は、明細書の段落【0021】及び【0024】の記載、並びに、いわゆる「除くクレーム」であることからみて、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (12) 訂正事項12について 明細書の段落【0112】に「なお、評価においては、青臭さ、ムレ臭、刺激臭、及び酢酸臭について、「非常に強い」を「+3」、「非常に弱い」を「-3」、とした7段階の評点を付けてもらい、その平均点を算出した。」と記載されているのを、「なお、評価においては、青臭さ、ムレ臭、剌激臭、及び酢酸臭について、「非常に弱い」を「+3」、「非常に強い」を「-3」、とした7段階の評点を付けてもらい、その平均点を算出した。」に訂正することは、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 そして、「「非常に強い」を「+3」、「非常に弱い」を「-3」」との記載が、「「非常に弱い」を「+3」、「非常に強い」を「-3」」の誤記であることは、明細書及び特許請求の範囲の記載から明らかであって、当該記載を正したとしても、正す前と後とで、当業者が認識できる技術的事項に変わりはないから、訂正前の記載が当然に訂正後の記載と同一の意味を表示するものと客観的に認められる。 そうすると、訂正事項12の訂正は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 なお、明細書の訂正である訂正事項12は、請求項1ないし13に係る訂正である。 (13) 訂正事項13について 明細書の段落【0118】に「なお、評価においては、青臭さ、ムレ臭、刺激臭、及び酢酸臭について、「非常に強い」を「+3」、「非常に弱い」を「-3」、とした7段階の評点を付けてもらい、その平均点を算出した。」と記載されているのを、「なお、評価においては、青臭さ、ムレ臭、剌激臭、及び酢酸臭について、「非常に弱い」を「+3」、「非常に強い」を「-3」、とした7段階の評点を付けてもらい、その平均点を算出した。」に訂正することは、誤記又は誤訳の訂正を目的とするものである。 そして、「「非常に強い」を「+3」、「非常に弱い」を「-3」」との記載が、「「非常に弱い」を「+3」、「非常に強い」を「-3」」の誤記であることは、上記訂正事項12と同様に、明細書及び特許請求の範囲の記載から明らかであって、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 なお、明細書の訂正である訂正事項13は、請求項1ないし13に係る訂正である。 3 むすび 以上のとおり、訂正事項1ないし13による請求項1ないし13についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第4号に掲げる事項を目的とするものである。 また、訂正事項1ない13による請求項1ないし13についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4ないし6項の規定に適合する。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1、6〕、2、〔3、10〕、4、5、7、8、9、11、12、13について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、本件特許発明1ないし13を総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】 酢酸を0.02w/v%以上含有し、(Al成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb~2000ppb含有し、(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、ヘキサナールを0.001~50ppb含有し、且つ酢酸濃度値(w/v%)に対するヘサナールの濃度値(ppb)の比(ヘキサナールの濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.01以上である、酢酸含有飲食品。 【請求項2】 酢酸を0.02w/v%以上含有し、(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.005~10ppb含有し、且つ(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有する、酢酸含有飲食品。 【請求項3】 酢酸を0.02w/v%以上含有し、(Al成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb~2000ppb含有し、(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、ヘキサナールを3000~20000ppb含有し、且つ酢酸濃度値(w/v%)に対するヘキサナールの濃度値(ppb)の比(ヘキサナールの濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.01以上である、酢酸含有飲食品。 【請求項4】 酢酸を0.02w/v%以上含有し、(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb~2000ppb含有し、(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、ヘキサナールを300~1000ppb含有し、且つ酢酸濃度値(w/v%)に対するヘキサナールの濃度値(ppb)の比(ヘキサナールの濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.05~100000である、酢酸含有飲食品。 【請求項5】 酢酸を0.02w/v%以上含有し、(Al成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb~2000ppb含有し、(A2成分)3-メチル-1-ブタノール、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、且つ前記香気成分の合計含有量が0.01ppb以上である、酢酸含有飲食品(ただし、100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)からなるジュース調整用組成物及びそれと同じ配合比のジュース調整用組成物; 100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)と、ガス入りミネラルウオーター50ccからなるジュース及びそれと同じ配合比であるジュース; トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュース; 酢酸濃度が8.75w/v%であり、A1成分を2.04ppb、A2成分を73.92ppb含有するトマトビネガー; 酸度8%の食酢を1.5%、トマトペーストを5.0%、レモン果汁を5.0%含有する乳化タイプドレッシング; 及び酸度10%の食酢を10%、トマトペーストを4.0%、レモン果汁を3.0%含有するサウザンアイランドドレッシング; を除く。)。 【請求項6】 (要件2a)前記A2成分の含有量が500ppb以上であること、 (要件3a)前記A3成分の含有量が0.01ppb以上であること、 (要件4a)前記A4成分の含有量が0.01ppb以上であること、及び (要件5a)前記A5成分の含有量が0.01ppb以上であること からなる群より選択される少なくとも1種の要件を満たす、請求項1に記載の酢酸含有飲食品。 【請求項7】 酢酸を0.02w/v%以上含有し、(Al成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb~2000ppb含有し、(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、且つブルーベリー、ブドウ、ラズベリー、イチゴ、ザクロ、カシス、モモ、ウメ、メロン、マンゴー、パイナップル、及びライチからなる群より選択される少なくとも1種の果実由来の果汁を含有する、酢酸含有飲食品。 【請求項8】 酢酸を0.02w/v%以上含有し、(Al成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb~2000ppb含有し、(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、果汁を含有し、且つ果汁含有率(ストレート果汁換算)が0.1質量%以上50質量%以下である、酢酸含有飲食品(ただし、トマトジュース300m1と、トマトビネガー14.79m1と、マスタード4.93m1と、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュース を除く。)。 【請求項9】 酢酸を0.02w/v%以上含有し、(Al成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb~2000ppb含有し、(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、果汁を含有し、且つ前記果汁が柑橘果汁である、酢酸含有飲食品(ただし、トマトジュース300m1と、トマトビネガー14.79m1と、マスタード4.93m1と、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュース を除く。)。 【請求項10】 飲料又は該飲料の調製用組成物である、請求項3に記載の酢酸含有飲食品。 【請求項11】 酢酸を含有量が0.02w/v%以上になるように配合すること、(Al成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを含有量が0.001ppb~2000ppbになるように配合すること、並びに(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を配合することを含む、保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とが抑制された酢酸含有飲食品の製造方法(ただし、100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)からなるジュース調整用組成物及びそれと同じ配合比のジュース調整用組成物の製造方法; 100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)と、ガス入りミネラルウオーター50ccからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュースの製造方法; トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュースの製造方法; を除く。)。 【請求項12】 (A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを含有量が0.001ppb以上になるように配合すること、並びに(A2成分)3-メチル-1-ブタノール、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を配合することを含む、酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とを抑制する方法。 【請求項13】 (A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを含有し、(A2成分)3-メチル-1-ブタノール、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を含有し、且つ酢酸含有飲食品中の前記A1成分の濃度が0.001ppb以上になるように用いるための、酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種との抑制剤。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和4年2月4日に申立人が提出した特許異議申立書(以下「申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 1 申立理由1(明確性) 本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (1)「含有し」、「含有する」、「含有量」、「濃度値」、「濃度」という規定について(申立書47頁~52頁) 本件特許発明においては、香気成分について、「含有し」(請求項1、3、13)、「含有する」(請求項1)、「含有量」(請求項2、5、6、11、12)、「濃度値」(請求項3、4)、「濃度」(請求項13)といった規定が存在するところ、これらの規定は、酢酸含有飲食品中の香気成分の最終含有量(ないしこれに基づいて算出された値)であるのか、添加量(ないしこれに基づいて算出された値)であるのか、理解することができない。 (2)「配合する」という規定について(申立書52頁~53頁) 本件特許発明11及び12は、例えば「(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを含有量が0.001ppb以上になるように配合すること」といった規定が存在するところ、「配合する」について、酢酸含有飲食品の原料食品に由来する成分を含有していることを指すのか、そうではなく、原料食品以外の各成分に係る化合物を添加することを指すのか理解することができない。 2 申立理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (1) 本件明細書に記載の実施例・比較例が本件発明のサポートとなり得ないことについて(申立書56頁~61頁) (2) 本件特許の発明の課題の前提として、果汁ないしへキサナールを含有することが必須の構成であること(申立書61頁~63頁)、及び、果汁ないしヘキサナールの含有割合に関する上限値、ないし香気成分との配合比率の規定が存在しないこと(申立書63頁~64頁) (3) 酢酸の含有割合に関する上限値、ないし香気成分の配合量と酢酸の配合量の規定が存在しないこと(申立書64頁~68頁) (4) A1成分の含有量の規定について(申立書68頁~71頁) 3 申立理由3(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (1)「含有し」、「含有する」、「含有量」、「濃度値」、「濃度」及び「配合する」という規定について(申立書72頁) 本件特許発明においては、上記1において指摘した用語が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるから、過度な試行錯誤を要することなく本件特許発明を実施し得ないことは明らかである。 4 申立理由4(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が、下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 5 申立理由5(甲第2号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、その出願前に当業者が下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 6 申立理由6(甲第3号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、その出願前に当業者が下記の甲第3号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 7 申立理由7(甲第4号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、その出願前に当業者が、下記の甲第4号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 8 申立理由8(甲第5号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、その出願前に当業者が下記の甲第5号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであって、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 9 証拠方法 甲第1号証:クックパッド「黒酢アップルジュース」 https://cookpad.com/recipe/2572920 甲第2号証:レシピサイト「fuss free flavours」の「Recipe: Virgin Mary with Maille Tomato Vinegar」(マイユトマトビネガーのヴァージンメリー)https://fussfreeflavours.com/recipe-virgin-mary-maille-tomato-vinegar/ 甲第3号証:「Volatile Compounds,Polyphenols and Sensory Qualitity in the Production of Tomato Vinegar」(Journal of Food and Nutrition Research. 2017,5(6),391-398) 甲第4号証:特開2001-309761号公報 甲第5号証:特開2010-143866号公報 甲第6号証:特許第6792251号公報 甲第7号証:特許第6792252号公報 甲第8号証:「FENAROLI'S HANDBOOK OF Flavor Ingredients SIXTH EDITION」(Taylor and Francis Group,LLC 2010年、CRC Press) 甲第9号証:「高圧処理による色調に優れた加工食品の開発」-長野県工業技術総合センター研究報告、2018年10月 https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010926450.pdf 甲第10号証:特開2019-15611号公報 甲第11号証:「七訂 食品成分表2017(本表編)」 甲第12号証:再公表2020/022229号 甲第13号証:特開2017-35003号公報 甲第14号証:特許権者ホームページ「お酢ドリンク」ラインナップ、https://www.mizkan.co.jp/product/series/index.html?sid=03 甲第15号証:特許権者ホームページ「りんご黒酢」、 https://www.mizkan.co.jp/product/group/index.html?gid=03008 甲第16号証:特許権者ニュースリリース(2015年1月22日付)https://www.mizkan.co.jp/company/news/detai1/150122-01.html 甲第17号証:機能性表示食品の届出情報検索(消費者庁ホームページ)(https://www. fld.caa.go.jp/caaks/csscOl/の「届出番号」欄に「B242」を入力して検索した結果) 甲第18号証:「りんご黒酢」(機能性表示食品 届出番号 B242)の届出の様式VI:「表示見本」 https://www.fld.caa.go.jp/caaks/cssc07/hyouji_mihon?hyoujimihonFile=B242%255CB242_hyouji_mihon.pdf 甲第19号証:Characterization of Odor-Active Volatiles in Apples:Influence of Cultivars and maturity Stage(J. Agric. Food Chem. 2006, 54, 7, 2678-2687) 甲第20号証:「カロリーSlism リンゴジュース(林檎ジュース)」(https://calorie.slism.jp/107149/) 甲第21号証:「みんなの知識 ちょっと便利帳 計量スプーン・計量カップによる重量表」 https://www.benricho.org/doryoko_cup_spoon/ 甲第22号証:「アメリカの計量カップ g グラム換算 レシピ・作り方」 https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1530002892/ 甲第23号証:クックパッド「レモン1個分のレモン汁は何ml(cc)」 https://cookpad.com/cooking_basics/20644 甲第24号証:「Quantitative and Sensory Studies on Tomato Paste Volatiles」(Journal of agricultural and Food Chemistry.1990,38,1,336-340) 甲第25号証:「トマト加工品の表示に関する公正競争規約」 (https://www.jfftc.org/rule_kiyaku/pdf_kiyaku_hyouji/tomato.pdf) 甲第26号証:「トマトジュース大さじ1は何グラムか?トマトジュース 1カップは何グラム?トマトジュース1缶は何ccで何グラムか?【トマトジュースの密度(比重)】」 https://life-freedom888.com/tomato-oosaji-g/ 甲第27号証:「マスタード大さじ1は何グラムか?マスタード小さじ1は何グラム?粒マスタード1gは大さじ何杯分か?【マスタードの密度(比重)】」 https://life-freedom888.com/masterd-oosaji-g/ 甲第28号証:「レモン汁大さじ1は何グラムか?レモン汁小さじ1は何グラム?レモン汁大さじ2は何グラムか?【レモン汁の密度(比重)】」 https://life-freedom888.com/lemon-oosaji-g/ 甲第29号証:特開2010-124696号公報 甲第30号証:特開平1-265878号公報 甲第31号証:特開2008-11711号公報 甲第32号証:クックパッド「ブラッディメアリー」 https://cookpad.com/recipe/1359313 甲第33号証:「ウオッカに意外と合う日本の調味料とは」 https://nikkan-spa.jp/2428 甲第34号証:クックパッド「お酢♪シークワーサーのドリンク☆夏バテに」 https://cookpad.com/recipe/1931949 なお、証拠の表記は、申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第5 取消理由通知<決定の予告>における取消理由の概要 当審が令和5年3月16日付けで特許権者に通知した取消理由通知<決定の予告>における取消理由の概要は、次のとおりである。 1 取消理由2(甲1に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項5及び11に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、その出願前に当業者が甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項5及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 取消理由3(甲2に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項5及び11に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、その出願前に当業者が甲2に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項5及び11に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第6 当審の判断 以下に述べるように、当審が令和5年 3月16日付けで特許権者に通知した取消理由通知<決定の予告>における取消理由2及び3、並びに、申立書に記載した申立理由1ないし8には、いずれも理由がないと判断する。 なお、取消理由2及び3は、各々、申立理由4及び5の一部であるという事情に鑑み、まず、取消理由2及び申立理由4(甲1に基づく新規性・進歩性)、並びに、取消理由3及び申立理由5(甲2に基づく新規性・進歩性)について検討し、次いで、申立理由1(明確性)、申立理由2(サポート要件)、申立理由3(実施可能要件)、申立理由6(甲3に基づく新規性・進歩性)、申立理由7(甲4に基づく新規性・進歩性)及び申立理由8(甲5に基づく新規性・進歩性)について、順次検討する。 1 取消理由2及び申立理由4(甲1に基づく新規性・進歩性)について (1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明 ア 甲1に記載された事項 甲1の「黒酢アップルジュース」は、レシピサイト「クックパッド」にて公開されており(https://cookpad.com/recipe/2572920)、その公開日は本件特許の出願前の2014年 4月 5日、更新日は2015年 8月30日である。 そして、甲1には、具体的に、以下のような記載がある。 「材料 100%りんごジュース 100cc 黒酢 大さじ1~2 ガス入りミネラルウォーター(炭酸水でも) 50cc」 「作り方 1 全部混ぜる」 イ 甲1に記載された発明 甲1には、絶対量のレシピが記載されているが、当該記載から、当業者は、そのレシピと同じ比率で作られたレシピについても認識できるから、以下の発明が記載されていると認める。 <甲1発明-1> 「100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)からなるジュース調整用組成物及びそれと同じ配合比のジュース調整用組成物。」 <甲1発明-2> 「100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)と、ガス入りミネラルウオーター50ccからなるジュース及びそれと同じ配合比であるジュース。」 <甲1製法発明-1> 「100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)からなるジュース調整用組成物及びそれと同じ配合比のジュース調整用組成物の製造方法。」 <甲1製法発明-2> 「100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)と、ガス入りミネラルウオーター50ccからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュースの製造方法。」 (1) 本件特許発明1及び6について ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1発明-1及び甲1発明-2とを対比する。 甲19には、ゴールデンデリシャス、ふじ、ブレーバーンの3品種のリンゴ中の香気成分の測定結果が記載されている。 [図:0001401599000001.jpg] 上記の表によると、リンゴ果汁中には本件特許発明1のA1~A5成分及びヘキサナールが以下のとおり含まれている。 [図:0001401599000002.jpg] 甲1発明-1の材料の質量について、リンゴジュース100ccは105g(甲20参照)、酢大さじ2杯は30g(甲21参照)であり、その結果、全体の質量は、105g(りんごジュース)+30g(黒酢)=135gとなる。 [図:0001401599000003.jpg] また、甲1発明-2(ジュース)については、全体の質量は、105g(りんごジュース)+30g(黒酢)+50g(ミネラルウオーター)=185gとなる。 酢の酢酸濃度は、一般的に4~5w/v%であり(甲11参照)、これに30(cc)/130(cc)を乗じて甲1発明-1中の酢酸濃度に換算すると、概ね0.9~1.2w/v%程度となる。また、30(cc)/180(cc)を乗じて甲1発明-2中の酢酸濃度に換算すると、概ね0.7~0.8w/v%程度となる。 そして、甲1発明-1(ジュース調整用組成物)中及び甲1発明-2(ジュース)中のりんごジュース由来の各香気性成分の濃度を、それぞれ調整用組成物中及びジュース中の濃度に換算して計算すると、以下のとおりとなる。 [図:0001401599000004.jpg] [図:0001401599000005.jpg] そうすると、本件特許発明1と甲1発明1又は甲1発明2とは、以下の点で相違する。 <相違点1-1> ヘキサナールの含有量に関し、本件特許発明1は「0.001~50ppb含有し、且つ酢酸濃度値(w/v%)に対するヘサナールの濃度値(ppb)の比(ヘキサナールの濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.01以上である」と特定するのに対し、甲1発明-1又は甲1発明-2は、56.8ppb又は108.9ppb含有するものであり、また、酢酸濃度値に対するヘキサナールの濃度値の比は不明である点 以下、相違点1-1について検討する。 まず、相違点1-1は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲1発明-1又は甲1発明-2ではない。 そして、甲1が黒酢アップルジュースのレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲1発明-1及び甲1発明-2において、ヘキサナールの含有量を相違点1-1のように変えようとする動機はない。 してみれば、甲1発明-1又は甲1発明-2において、ヘキサナールの含有量を相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件特許発明1は、甲1発明-1又は甲1発明-2であるとはいえないし、甲1発明-1又は甲1発明-2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件特許発明6について 本件特許発明6は、請求項1を直接引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て有してさらに限定するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明-1又は甲1発明-2であるとはいえないし、甲1発明-1又は甲1発明-2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2) 本件特許発明2について 本件特許発明2と甲1発明-1又は甲1発明-2とを対比すると、甲1発明-1又は甲1発明-2は上記(1)での検討のとおりの成分を含有しているから、以下の点で相違する。 <相違点1-2> 前記A1成分の含有量に関し、本件特許発明2は「0.005~10ppb」と特定するのに対し、甲1発明-1又は甲1発明-2は、最小でも23.3ppb又は17.0ppbである点 以下、相違点1-2について検討する。 まず、相違点1-2は実質的な相違点であるから、本件特許発明2は甲1発明-1又は甲1発明-2ではない。 そして、甲1が黒酢アップルジュースのレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲1発明-1及び甲1発明-2において、A1成分の配合量を相違点1-2のように変えようとする動機はない。 してみれば、甲1発明-1又は甲1発明-2において、A1成分の配合量を相違点1-2に係る本件特許発明2の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件特許発明2は、甲1発明-1又は甲1発明-2であるとはいえないし、甲1発明-1又は甲1発明-2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3) 本件特許発明3及び10について ア 本件特許発明3について 本件特許発明3と甲1発明-1又は甲1発明-2とを対比すると、甲1発明-1又は甲1発明-2は上記(1)での検討のとおりの成分を含有しているから、以下の点で相違する。 <相違点1-3> ヘキサナールの含有量に関し、本件特許発明3は「3000~20000ppb含有し、且つ酢酸濃度値(w/v%)に対するヘキサナールの濃度値(ppb)の比(ヘキサナールの濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%)が0.01以上である」と特定するのに対し、甲1発明-1又は甲1発明-2は、最大でも108.9ppb又は79.5ppb含有するものであり、また、酢酸濃度値に対するヘキサナールの濃度値の比は不明である点 以下、相違点1-3について検討する。 まず、相違点1-3は実質的な相違点であるから、本件特許発明3は甲1発明-1又は甲1発明-2ではない。 そして、甲1が黒酢アップルジュースのレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲1発明-1及び甲1発明-2において、ヘキサナールの含有量を相違点1-3のように変えようとする動機はない。 してみれば、甲1発明-1又は甲1発明-2において、ヘキサナールの含有量を相違点1-3に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件特許発明3は、甲1発明-1又は甲1発明-2であるとはいえないし、甲1発明-1又は甲1発明-2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件特許発明10について 本件特許発明10は、請求項3を直接引用して特定するものであって、本件特許発明3の発明特定事項を全て有してさらに限定するものであるから、本件特許発明3と同様に、甲1発明-1又は甲1発明-2であるとはいえないし、甲1発明-1又は甲1発明-2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4) 本件特許発明4について 本件特許発明4と甲1発明-1又は甲1発明-2とを対比すると、甲1発明-1又は甲1発明-2は上記(1)での検討のとおりの成分を含有しているから、以下の点で相違する。 <相違点1-4> ヘキサナールの含有量に関し、本件特許発明4は「300~1000ppb含有し、且つ酢酸濃度値(w/v%)に対するヘキサナールの濃度値(ppb)の比(ヘキサナールの濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.05~100000である」と特定するのに対し、甲1発明-1又は甲1発明-2は、最大でも108.9ppb又は79.5ppb含有するものであり、また、酢酸濃度値に対するヘキサナールの濃度値の比は不明である点 以下、相違点1-4について検討する。 まず、相違点1-4は実質的な相違点であるから、本件特許発明4は甲1発明-1又は甲1発明-2ではない。 そして、甲1が黒酢アップルジュースのレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、ヘキサナールの含有量を相違点1-4のように変えようとする動機はない。 してみれば、甲1発明-1又は甲1発明-2において、ヘキサナールの含有量を相違点1-4に係る本件特許発明4の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件特許発明4は、甲1発明-1又は甲1発明-2であるとはいえないし、甲1発明-1又は甲1発明-2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5) 本件特許発明5について 本件特許発明5と甲1発明-1又は甲1発明-2とを対比すると、甲1発明-1又は甲1発明-2は上記(1)での検討のとおりの成分を含有しているから、以下の点で相違する。 <相違点1-5> 本件特許発明5は、「(ただし、100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)からなるジュース調整用組成物及びそれと同じ配合比のジュース調整用組成物; 100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)と、ガス入りミネラルウオーター50ccからなるジュース及びそれと同じ配合比であるジュース; トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュース; 酢酸濃度が8.75w/v%であり、A1成分を2.04ppb、A2成分を73.92ppb含有するトマトビネガー; 酸度8%の食酢を1.5%、トマトペーストを5.0%、レモン果汁を5.0%含有する乳化タイプドレッシング; 及び酸度10%の食酢を10%、トマトペーストを4.0%、レモン果汁を3.0%含有するサウザンアイランドドレッシング; を除く。)」と特定するのに対し、甲1発明-1又は甲1発明-2は、このような特定はない点 以下、相違点1-5について検討する。 相違点1-5は、甲1発明-1又は甲1発明-2を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。 また、相違点1-5が、甲1発明-1又は甲1発明-2を除くことを特定するものである以上、甲1発明-1又は甲1発明-2において、その余の各証拠をみても、相違点1-5に係る本件特許発明5の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。 よって、本件特許発明5は、甲1発明-1又は甲1発明-2であるとはいえないし、甲1発明-1又は甲1発明-2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (6) 本件特許発明7について 本件特許発明7と甲1発明-1又は甲1発明-2とを対比すると、甲1発明-1又は甲1発明-2は上記(1)での検討のとおりの成分を含有しているから、以下の点で相違する。 <相違点1-6> 本件特許発明7は、「ブルーベリー、ブドウ、ラズベリー、イチゴ、ザクロ、カシス、モモ、ウメ、メロン、マンゴー、パイナップル、及びライチからなる群より選択される少なくとも1種の果実由来の果汁を含有する」と特定するのに対し、甲1発明-1又は甲1発明-2は、リンゴ果汁を含有するものである点 以下、相違点1-6について検討する。 相違点1-6は、実質的な相違点であるから、本件特許発明7は、甲1発明-1又は甲1発明-2でない。 そして、甲1発明-1又は甲1発明-2のリンゴをその他の果汁に変更する動機はない。 してみれば、甲1発明-1又は甲1発明-2において、相違点1-6に係る本件特許発明7の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件特許発明7は、甲1発明-1又は甲1発明-2であるとはいえないし、甲1発明-1又は甲1発明-2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (7) 本件特許発明8について 本件特許発明8と甲1発明-1又は甲1発明-2とを対比すると、甲1発明-1又は甲1発明-2は上記(1)での検討のとおりの成分を含有しているから、以下の点で相違する。 <相違点1-7> 果汁含有率(ストレート果汁換算)に関し、本件特許発明8は、「0.1質量%以上50質量%以下」と特定するのに対し、甲1発明-1又は甲1発明-2は、100%りんごジュースを56.76質量%又は77.78質量%含有するものである点 <相違点1-8> 本件特許発明8は、「(ただし、トマトジュース300m1と、トマトビネガー14.79m1と、マスタード4.93m1と、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュース を除く。)」と特定するのに対し、甲1発明-1又は甲1発明-2は、このような特定はない点 以下、相違点について検討する。 相違点1-7は、実質的な相違点であるから、本件特許発明8は、甲1発明-1又は甲1発明-2でない。 そして、甲1が黒酢アップルジュースのレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲1発明-1又は甲1発明-2の果汁含有率を変更する動機はない。 してみれば、甲1発明-1又は甲1発明-2において、相違点1-7に係る本件特許発明8の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件特許発明8は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明-1又は甲1発明-2であるとはいえないし、甲1発明-1又は甲1発明-2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (8) 本件特許発明9について 本件特許発明9と甲1発明-1又は甲1発明-2とを対比すると、甲1発明-1又は甲1発明-2は上記(1)での検討のとおりの成分を含有しているから、以下の点で相違する。 <相違点1-9> 本件特許発明9においては、「柑橘果汁を含有する」と特定するのに対し、甲1発明-1又は甲1発明-2では、リンゴ果汁を含有するものである点 <相違点1-10> 本件特許発明9は、「(ただし、トマトジュース300m1と、トマトビネガー14.79m1と、マスタード4.93m1と、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュース を除く。)」と特定するのに対し、甲1発明-1又は甲1発明-2ではこのような特定はない点 以下、相違点について検討する。 相違点1-9は、実質的な相違点であるから、本件特許発明9は、甲1発明-1又は甲1発明-2でない。 そして、甲1発明-1又は甲1発明-2のリンゴを柑橘果汁に変更する動機はない。 してみれば、甲1発明-1又は甲1発明-2において、相違点1-9に係る本件特許発明9の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件特許発明9は、他の相違点について検討するまでもなく、甲1発明-1又は甲1発明-2であるとはいえないし、甲1発明-1又は甲1発明-2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (9) 本件特許発明11について 本件特許発明11と甲1製法発明-1又は甲1製法発明-2とを対比すると、上記(1)で検討したとおりのことが成り立つから、両者は、 「酢酸を含有量が0.02w/v%以上になるように配合すること、(Al成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを含有量が0.001ppb~2000ppbになるように配合すること、並びに(A2成分)3-メチル-1-ブタノール100ppb以上、(A3成分)酪酸エチル、(A4成分)1-ヘキサノール、及び(A5成分)酢酸2-メチルブチルからなる群より選択される少なくとも1種の香気成分を配合することを含む、保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とが抑制された酢酸含有飲食品の製造方法。」 である点で一致し、以下の点で一応相違する。 <相違点1-11> 本件特許発明11は、「保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とが抑制された」と特定するのに対し、甲1製法発明-1又は甲1製法発明-2は、この点を特定しない点 <相違点1-12> 本件特許発明11は、「(ただし、100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)からなるジュース調整用組成物及びそれと同じ配合比のジュース調整用組成物の製造方法; 100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)と、ガス入りミネラルウオーター50ccからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュースの製造方法; トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュースの製造方法; を除く。)」と特定するのに対し、甲1製法発明-1又は甲1製法発明-2は、このような特定はない点 事案に鑑み、相違点1-12について検討する。 相違点1-12は、甲1製法発明-1又は甲1製法発明-2を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。 また、相違点1-12が、甲1製法発明-1又は甲1製法発明-2を除くことを特定するものである以上、甲1製法発明-1又は甲1製法発明-2において、その余の各証拠をみても、相違点1-12に係る本件特許発明11の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明11は、甲1製法発明-1又は甲1製法発明-2であるとはいえないし、甲1製法発明-1又は甲1製法発明-2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (10) 本件特許発明12及び13について 甲1には、「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とを抑制する」という技術的思想は記載されていないから、甲1に記載された事項から、本件特許発明12の「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とを抑制する方法」及び本件特許発明13の「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とを抑制する抑制剤」に対応する発明を認定することはできない。 したがって、本件特許発明12及び13は、甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (11) 取消理由2及び申立理由4(甲1に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ 以上のとおり、取消理由2及び申立理由4によって本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由3及び申立理由5(甲2に基づく新規性・進歩性)について (1) 甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明 ア 甲2に記載された事項 甲2は、レシピサイト「fuss free flavours」(https://fussfreeflavours.com/recipe-virgin-mary-maille-tomato-vinegar/)にて公開されており、その公開日は本件特許の出願前の2014年2月4日、最終更新日は2018年9月18日である。 そして、甲2には、具体的に、以下のような記載がある(外国語表記の証拠のため、訳文のみ示す。以下、他の外国語表記の証拠についても同様。)。 「材料 冷たいトマトジュース 300ml マイユトマトビネガー テーブルスプーン1 マイユスムースデイジョンマスタード ティースプーン1 レモン果汁 1/3個分 カイエンヌペッパーひとつまみ お好みで セロリソルトひとつまみ お好みで 挽いた黒コショウひとつまみ お好みで レモンスライスとセロリスティック 盛り付け用 「作り方 1 材料を撹拌又はシェイクし、味付けを確認し必要に応じて調整する。 2 マティーニグラス2脚に注ぎ入れレモンスライスとセロリスティックを添える。 3 直ちに味わう。」 イ 甲2に記載された発明 上記アの記載と、テーブルスプーン1杯は14.79ml、ティースプーン1杯は4.93ml(甲22参照)であること、また、一般的にレモン1個から約40~50mlのレモン果汁がとれること(甲23参照)から、平均的にレモン1個分の果汁を45mlとして、また、絶対量のレシピが記載されているが、当該記載から、当業者は、そのレシピと同じ比率で作られたレシピについても認識できるから、甲2には、以下の発明が記載されていると認める。 <甲2発明> 「トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュース。」 <甲2製造方法発明> 「トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュースの製造方法。」 (2) 本件特許発明1及び6について ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲2発明とを対比する。 甲3の393頁右欄には、トマトビネガーの酢酸濃度について8.75g/100ml(8.75w/v%)との記載がある。 また、甲3の394頁のTable2には、トマトビネガー中の香気成分の測定結果が下記のとおり記載されている。 [図:0001401599000006.jpg] 上記の表によると、トマトビネガー中には本件特許発明1のA1成分が2.04ppb、A2成分が73.92ppb含まれている。 甲24の338頁のTable1(下記)には、フレッシュトマト中の香気成分の測定結果が記載されている。 [図:0001401599000007.jpg] 上記の表によると、フレッシュトマト中には本件特許発明1のA1成分が130ppb、3-methylbutanolが380ppb含まれており、当該3-methylbutanolは甲24の340頁左欄2行目に「3-methylbutanol」のCAS番号が「123-51-3」と記載されているから、3-methyl-1-butanolをさすことは明らかであって、A2成分が380ppb含まれている。 また、ヘキサナールが3100ppb含まれている。 なお、「トマト加工品の表示に関する公正競争規約」(甲25)の第2条(定義)によれば、「トマトジュース」とは「トマトを破砕して搾汁し、又は裏ごしし、皮、種子等を除去したもの(以下「トマトの搾汁」という。)又はこれに食塩を加えたもの」とされているから、フレッシュトマト中の香気成分はそのままトマトジュースに含有されているものといえる。 甲2発明のジュースの材料の質量について、トマトジュースの比重は約1.0であり(甲26参照)、トマトジュース300mlは300gである。酢小さじ1杯は5g(甲21参照)(比重1.0)であるので、トマトビネガー14.79mlは14.79g、マスタードの比重は約1.2であるので(甲27参照)、4.93mlは5.916gである。レモン果汁について、レモン汁の比重は約1.0であるので(甲28参照)、15gである。その結果、全体の質量は、300g(トマトジュース)+14.79g(トマトビネガー)+5.916g(マスタード)+15g(レモン果汁)=335.706gとなる。 [図:0001401599000008.jpg] そして、甲2発明中の酢酸、トマトジュース及びトマトビネガー由来の各香気成分の濃度を、それぞれジュース中の濃度に換算して計算すると、以下のとおりとなる(甲2発明中の濃度に関しては、トマトジュースは300(g)/335.706(g)を乗じ、トマトビネガーは14.79(g)/335.706(g)を乗じて、ジュース中の濃度に換算している)。 [図:0001401599000009.jpg] 同様に、ヘキサナールについても換算すると、甲2発明には、2771ppb含有している。 そうすると、本件特許発明1と甲2発明とは、以下の点で相違する。 <相違点2-1> ヘキサナールの含有量に関し、本件特許発明1は「0.001~50ppb含有し、且つ酢酸濃度値(w/v%)に対するヘキサナールの濃度値(ppb)の比(ヘキサナールの濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.001以上である」と特定するのに対し、甲2発明は、2771ppb含有するものであり、また、酢酸濃度値に対するヘキサナールの濃度値の比は不明である点 以下、相違点2-1について検討する。 まず、相違点2-1は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲2発明ではない。 そして、甲2がトマトを含むジュースのレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲2発明において、ヘキサナールの含有量を相違点2-1のように変えようとする動機はない。 してみれば、甲2発明において、ヘキサナールの含有量を相違点2-1に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件特許発明1は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件特許発明6について 本件特許発明6は、請求項1を直接引用して特定するものであって、本件特許発明1の発明特定事項を全て有してさらに限定するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2) 本件特許発明2について 本件特許発明2と甲2発明とを対比すると、甲2発明は上記(1)での検討のとおりの成分を含有しているから、以下の点で相違する。 <相違点2-2> A1成分の含有量に関し、本件特許発明2は「0.005~10ppb」と特定するのに対し、甲2発明は、116ppbである点 以下、相違点2-2について検討する。 まず、相違点2-2は実質的な相違点であるから、本件特許発明2は甲2発明ではない。 そして、甲2がトマトを含むジュースのレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲2発明において、A1成分の含有量を相違点2-2のように変えようとする動機はない。 してみれば、甲2発明において、A1成分の配合量を相違点2-2に係る本件特許発明2の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件特許発明2は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3) 本件特許発明3及び10について ア 本件特許発明3について 本件特許発明3と甲2発明とを対比すると、甲2発明は上記(1)での検討のとおりの成分を含有しているから、以下の点で相違する。 <相違点2-3> ヘキサナールの含有量に関し、本件特許発明3は「3000~20000ppb含有し、且つ酢酸濃度値(w/v%)に対するヘキサナールの濃度値(ppb)の比(ヘキサナールの濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.01以上である」と特定するのに対し、甲2発明は、2771ppb含有するものであり、また、酢酸濃度値に対するヘキサナールの濃度値の比は不明である点 以下、相違点2-3について検討する。 まず、相違点2-3は実質的な相違点であるから、本件特許発明3は甲2発明ではない。 そして、甲2がトマトを含むジュースのレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲2発明において、ヘキサナールの配合量を相違点2-3のように変えようとする動機はない。 してみれば、甲2発明において、ヘキサナールの含有量を相違点2-3に係る本件特許発明3の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件特許発明3は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件特許発明10について 請求項3を直接引用して特定する本件特許発明10は、本件特許発明3の発明特定事項を全て有してさらに限定するものであるから、本件特許発明3と同様に、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4) 本件特許発明4について 本件特許発明4と甲2発明とを対比すると、甲2発明は上記(1)での検討のとおりの成分を含有しているから、以下の点で相違する。 <相違点2-4> ヘキサナールの含有量に関し、本件特許発明4は「300~1000ppb含有し、且つ酢酸濃度値(w/v%)に対するヘキサナールの濃度値(ppb)の比(ヘキサナールの濃度値(ppb)/酢酸濃度値(w/v%))が0.05~100000である」と特定するのに対し、甲2発明は、2771ppb含有するものであり、また、酢酸濃度値に対するヘキサナールの濃度値の比は不明である点 以下、相違点2-4について検討する。 まず、相違点2-4は実質的な相違点であるから、本件特許発明4は甲2発明ではない。 そして、甲2がトマトを含むジュースのレシピを示すものに過ぎず、また、その余の各証拠をみても、甲2発明において、ヘキサナールの配合量を相違点2-4のように変えようとする動機はない。 してみれば、甲2発明において、ヘキサナールの含有量を相違点2-4に係る本件特許発明4の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件特許発明4は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (5) 本件特許発明5について 本件特許発明5と甲2発明とを対比すると、甲2発明は上記(1)での検討のとおりの成分を含有しているから、以下の点で相違する。 <相違点2-5> 本件特許発明5は、「(ただし、100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)からなるジュース調整用組成物及びそれと同じ配合比のジュース調整用組成物; 100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)と、ガス入りミネラルウオーター50ccからなるジュース及びそれと同じ配合比であるジュース; トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュース; 酢酸濃度が8.75w/v%であり、A1成分を2.04ppb、A2成分を73.92ppb含有するトマトビネガー; 酸度8%の食酢を1.5%、トマトペーストを5.0%、レモン果汁を5.0%含有する乳化タイプドレッシング; 及び酸度10%の食酢を10%、トマトペーストを4.0%、レモン果汁を3.0%含有するサウザンアイランドドレッシング; を除く。)」と特定するのに対し、甲2発明は、このような特定はない点 以下、相違点2-5について検討する。 相違点2-5は、甲2発明を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。 また、相違点2-5が、甲2発明を除くことを特定するものである以上、甲2発明において、その余の各証拠をみても、相違点2-5に係る本件特許発明5の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。 よって、本件特許発明5は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (6) 本件特許発明7について 本件特許発明7と甲2発明とを対比すると、甲2発明は上記(1)での検討のとおりの成分を含有しているから、以下の点で相違する。 <相違点2-6> 本件特許発明7は、「ブルーベリー、ブドウ、ラズベリー、イチゴ、ザクロ、カシス、モモ、ウメ、メロン、マンゴー、パイナップル、及びライチからなる群より選択される少なくとも1種の果実由来の果汁を含有する」と特定するのに対し、甲2発明は、トマトジュースと、トマトビネガーと、レモン果汁を含有するものである点 以下、相違点2-6について検討する。 相違点2-6は、実質的な相違点であるから、本件特許発明7は、甲2発明でない。 そして、甲2発明のトマトとレモンの果汁を、そのほかの果汁に変更する動機はない。 してみれば、甲2発明において、相違点2-6に係る本件特許発明7の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件特許発明7は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (7) 本件特許発明8について 本件特許発明8と甲2発明とを対比すると、甲2発明は上記(1)での検討のとおりの成分を含有しているから、以下の点で相違する。 <相違点2-7> 果汁含有率(ストレート果汁換算)に関し、本件特許発明8は、「0.1質量%以上50質量%以下」と特定するのに対し、甲2発明は、果汁含有率は不明である点 <相違点2-8> 本件特許発明8は、「(ただし、トマトジュース300m1と、トマトビネガー14.79m1と、マスタード4.93m1と、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュース を除く。)」と特定するのに対し、甲2発明は、このような特定はない点 事案に鑑み、相違点2-8について検討する。 相違点2-8は、甲2発明を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。 また、相違点2-8が、甲2発明を除くことを特定するものである以上、甲2発明において、その余の各証拠をみても、相違点2-8に係る本件特許発明8の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。 よって、相違点2-7について検討するまでもなく、本件特許発明8は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (8) 本件特許発明9について 本件特許発明9と甲2発明とを対比すると、甲2発明は上記(1)での検討のとおりの成分を含有しているから、以下の点で相違する。 <相違点2-9> 本件特許発明9は、「(ただし、トマトジュース300m1と、トマトビネガー14.79m1と、マスタード4.93m1と、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュース を除く。)」と特定するのに対し、甲2発明は、このような特定はない点 以下、相違点2-9について検討する。 相違点2-9は、甲2発明を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。 また、相違点2-9が、甲2発明を除くことを特定するものである以上、甲2発明において、その余の各証拠をみても、相違点2-9に係る本件特許発明9の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。 よって、本件特許発明9は、甲2発明であるとはいえないし、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (9) 本件特許発明11について 本件特許発明11と甲2製法発明とを対比すると、上記(1)で検討したとおりのことが成り立つから、両者は、以下の点で相違する。 <相違点2-10> 本件特許発明11は、「保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、刺激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とが抑制された」と特定するのに対し、甲2製法発明は、この点を特定しない点 <相違点2-11> 本件特許発明11は、「(ただし、100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)からなるジュース調整用組成物及びそれと同じ配合比のジュース調整用組成物の製造方法; 100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)と、ガス入りミネラルウオーター50ccからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュースの製造方法; トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュースの製造方法; を除く。)」と特定するのに対し、甲2製法発明は、このような特定はない点 事案に鑑み、相違点2-11について検討する。 相違点2-11は、甲2製法発明を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。 また、相違点2-11が、甲2製法発明を除くことを特定するものである以上、甲2製法発明において、その余の各証拠をみても、相違点2-11に係る本件特許発明11の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明11は、甲2製法発明であるとはいえないし、甲2製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (10) 本件特許発明12及び13について 甲2には、「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とを抑制する」という技術的思想は記載されていないから、甲2に記載された事項から、本件特許発明12の「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とを抑制する方法」及び本件特許発明13の「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とを抑制する抑制剤」に対応する発明を認定することはできない。 したがって、本件特許発明12及び13は、甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (11) 取消理由3及び申立理由5(甲2に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ 以上のとおり、取消理由3及び申立理由5によって本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由1(明確性)について (1) 明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 (2) 特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 (3) 明確性要件の判断 本件特許の特許請求の範囲の記載は、それ自体不明確な記載ではないし、明細書の記載とも整合する。 したがって、本件特許発明1ないし13に関して、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 よって、本件特許発明1ないし11は明確である。 (4) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の上記第4 1の主張について検討するに、いずれも次のとおりであり、採用できない。 ア 上記第4 1(1)の主張について 本件特許の特許請求の範囲の各請求項に記載された「含有し」、「含有量」、「含有率」、「濃度値」及び「濃度」という記載が、酢酸含有飲食品の最終的な「含有」及び「濃度」を想定した記載であることは、特許請求の範囲の各請求項の記載自体から明らかであるし、そのように解することは明細書の記載とも整合する。 イ 上記第4 1(2)の主張について 本件特許の特許請求の範囲の請求項11及び12の「配合すること」という記載が、酢酸含有食品の原料食品に由来する成分として配合すること及び原料食品以外の成分として配合することのいずれでも又両方でもよいことは、特許請求の範囲の請求項11及び12の記載自体から明らかであるし、そのように解することは明細書の記載とも整合する。 (5) 申立理由1(明確性)についてのまとめ 以上のとおり、申立理由1によって本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由2(サポート要件)について (1) サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2) 特許請求の範囲の記載 本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。 (3) サポート要件の判断 本件特許の発明の詳細な説明の【0002】ないし【0007】によると、本件特許発明1ないし10の解決しようとする課題は「保存後の青臭さが抑制された酢酸含有飲食品を提供すること」であり、本件特許発明11の解決しようとする課題は「保存後の青臭さが抑制された酢酸含有飲食品の製造方法を提供すること」であり、本件特許発明12の解決しようとする課題は「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さが抑制する方法を提供すること」であり、本件特許発明13の解決しようとする課題は「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さが抑制された抑制剤を提供すること」である(以下、総称して「発明の課題」という。)。 他方、本件特許の発明の詳細な説明の【0008】には、「本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、酢酸を0.002w/v%以上含有し、且つ(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb以上含有する、酢酸含有飲食品、であれば、上記課題を解決できることを見出した。」と記載され、同【0009】には、本件特許発明1ないし13に対応する事項が記載されている。 また、本件特許の発明の詳細な説明の【0016】には、「酢酸」とその含有量の技術的意味について記載され、同【0020】ないし【0021】には、「A1成分」とその含有量の技術的意味について記載され、同【0023】ないし【0024】には、「A2成分」とその含有量の技術的意味について記載され、同【0025】ないし【0026】には、「A3成分」とその含有量の技術的意味について記載され、同【0027】ないし【0028】には、「A4成分」とその含有量の技術的意味について記載され、同【0029】ないし【0030】には、「A5成分」とその含有量の技術的意味について記載されている。 そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0086】ないし【0121】において、「酢酸を0.002w/v%以上」含有し、「(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb以上含有する」実施例は、「A1成分」を所定量含有しないコントロールよりも保存後の青臭さが抑制されていることを確認している。 そうすると、当業者は、「酢酸を0.002w/v%以上」含有し、「(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb以上含有する、酢酸含有飲食品」、その「製造方法」、「(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb以上配合する方法」及び「酢酸を0.002w/v%以上」含有し、「(A1成分)6-メチル-5-ヘプテン-2-オンを0.001ppb以上含有する剤」は発明の課題を解決できると認識できる。 したがって、本件特許発明1ないし13は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし13に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 (4) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の上記第4 2の主張について検討するに、いずれも上記(3)のサポート要件の判断を左右するものではなく、採用できない。 (5) 申立理由2(サポート要件)についてのまとめ 以上のとおり、申立理由2によって本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 5 申立理由3(実施可能要件)について (1) 実施可能要件の判断基準 上記第3のとおり、本件特許発明1ないし10及び13は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 本件特許発明11は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法を使用し、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。 本件特許発明12は方法の発明であるところ、方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その方法を使用することができる程度の記載があることを要する。 そこで、検討する。 (2) 実施可能要件の判断 本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明1ないし13の各発明特定事項について具体的に記載され、実施例についてもその製造方法を含め具体的に記載されている。 したがって、本件特許の発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明1ないし10及び13を生産し、使用することができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明11を使用し、本件特許発明11により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえるし、本件特許発明12を使用することができる程度の記載があるといえる。 したがって、本件特許発明1ないし13に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。 (3) 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人の上記第4 3の主張について検討するに、次のとおりであり、採用できない。 上記1のとおり、本件特許発明1ないし13に関して、特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 また、本件特許発明11及び12に関して、各成分を加えるタイミングはいつでもよいことは当業者に明らかである。 したがって、本件特許発明1ないし13を実施するのに当業者に過度の試行錯誤を要するとの主張は採用できない。 (4) 申立理由3(実施可能要件)についてのまとめ 以上のとおり、申立理由3によって本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 6 申立理由6(甲3に基づく新規性・進歩性)について (1) 甲3に記載された事項及び甲3に記載された発明 ア 甲3に記載された事項 甲3は、本件特許の出願前の2017年5月に公開された論文であり、393頁右欄には、トマトビネガーの酢酸濃度について8.75g/100ml(8.75w/v%)との記載があり、394頁のTable2(下記)には、トマトビネガー中の香気成分の測定結果が記載されている。 [図:0001401599000010.jpg] イ 甲3に記載された発明 上記アの記載によると、トマトビネガー中には本件発明のA1成分が2.04ppb、A2成分が73.92ppb含まれているから、以下の発明が認定できる。 <甲3発明> 「酢酸濃度が8.75w/v%であり、A1成分を2.04ppb、A2成分を73.92ppb含有するトマトビネガー。」 <甲3製造方法発明> 「酢酸濃度が8.75w/v%であり、A1成分を2.04ppb、A2成分を73.92ppb含有するトマトビネガーの製造方法。」 (2) 本件特許発明1ないし4及び6ないし10について 本件特許発明1ないし4及び6ないし10と甲3発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点3-1> A2成分の配合量について、本件特許発明1ないし4及び6ないし10は「100ppb以上」と特定するのに対し、甲3発明は、73.92ppbである点 以下、相違点3-1について検討する。 まず、相違点3-1は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は甲3発明ではない。 そして、甲3発明において、A2成分の配合量を相違点3-1に係る発明特定事項を満たすように変えようとする動機はない。 してみれば、甲3発明において、A2成分の含有量を相違点3-1に係る本件特許発明1ないし4及び6ないし10の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件特許発明1ないし4及び6ないし10は、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3) 本件特許発明5及び11について ア 本件特許発明5について 本件特許発明5と甲3発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点3-2> 本件特許発明5は、「(ただし、100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)からなるジュース調整用組成物及びそれと同じ配合比のジュース調整用組成物; 100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)と、ガス入りミネラルウオーター50ccからなるジュース及びそれと同じ配合比であるジュース; トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュース; 酢酸濃度が8.75w/v%であり、A1成分を2.04ppb、A2成分を73.92ppb含有するトマトビネガー; 酸度8%の食酢を1.5%、トマトペーストを5.0%、レモン果汁を5.0%含有する乳化タイプドレッシング; 及び酸度10%の食酢を10%、トマトペーストを4.0%、レモン果汁を3.0%含有するサウザンアイランドドレッシング; を除く。)」と特定するのに対し、甲3発明ではこのような特定はない点 以下、相違点3-2について検討する。 相違点3-2は、甲3発明を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。 また、相違点3-2が、甲3発明を除くことを特定するものである以上、甲3発明において、その他の提示された証拠に記載された事項をみても、相違点3-2に係る本件特許発明5の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。 よって、本件特許発明5は、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件特許発明11について 本件特許発明11と甲3製法発明とを対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点3-3> 本件特許発明11は、「(ただし、100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)からなるジュース調整用組成物及びそれと同じ配合比のジュース調整用組成物の製造方法; 100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)と、ガス入りミネラルウオーター50ccからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュースの製造方法; トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュースの製造方法; を除く。)」と特定するのに対し、甲3製法発明は、このような特定はない点 以下、相違点3-3について検討する。 相違点3-3は、甲3製法発明を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。 また、相違点3-3が、甲3製法発明を除くことを特定するものである以上、甲3製法発明において、その余の各証拠をみても、相違点3-3に係る本件特許発明11の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。 よって、本件特許発明11は、甲3製法発明であるとはいえないし、甲3製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4) 本件特許発明12及び13について 甲3には、「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とを抑制する」という技術的思想は記載されていないから、甲3に記載された事項から、本件特許発明12の「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とを抑制する方法」及び本件特許発明13の「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とを抑制する抑制剤」に対応する発明を認定することはできない。 したがって、本件特許発明12及び13は、甲3に記載された発明であるとはいえないし、甲3に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5) 申立理由6(甲3に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ 以上のとおり、申立理由6によって本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 7 申立理由7(甲4に基づく新規性・進歩性)について (1) 甲4に記載された事項及び甲4に記載された発明 ア 甲4に記載された事項 甲4は、本件特許の出願前である平成13年11月6日に公開された特開2001-309761号公報であり、その発明の名称を「乳化タイプドレッシング」とするものである。 そして、甲4には、以下の記載がある。 ・「長期間保存しても水分離のない野菜や果汁で風味付けした乳化タイプドレッシングに関するものであり(段落【0001】) ・「従来より、・・・・野菜や果汁で風味付した乳化タイプドレッシングが市販されている。しかしながら、これらの乳化タイプドレッシングは、好ましい風味を有する反面、風味付に多量の野菜や果汁を配合しているため、これを長期間保存すると水相分離が生じやすい」(段落【0002】) ・「長期間保存しても水相分離のない野菜や果汁で風味付けした乳化タイプドレッシングを提供すること」(段落【0003】) ・「【特許請求の範囲】 【請求項1】野菜及び/又は果汁で風味付けした乳化物であって、リゾ化卵黄とオクテニルコハク酸化α化澱粉を配合したことを特徴とする乳化タイプドレッシング。」 ・「【0013】以下、本発明を実施例及び試験例をもって説明する。 【実施例】実施例1 次の原料を用意した。 レモン果汁 5.0% トマトペースト 5.0% リゾ化卵黄(リゾ化率75%) 3.2% 酸度8%食酢 1.5% 食塩 2.5% コハク酸化澱粉 0.5% サラダ油 53.0% 清水 残余 ___________________ 計 100% そして上記原料のレモン果汁、トマトペースト、リゾ化卵黄、食酢、食塩、コハク酸化澱粉及び清水をミキサー内で混合攪拌してスラリーとし、このスラリーを攪拌しながらサラダ油を注加して粗乳化した。次いでコロイドミルに移して仕上げ乳化した。このようにして得られた乳化タイプドレッシングを200g入りプラスチック製チューブに充填・密封し製品とした。」 イ 甲4に記載された発明 甲4には、上記アの記載によると、実施例1として記載されている発明として、以下の発明が認定できる。 <甲4発明> 「酸度8%の食酢を1.5%、トマトペーストを5.0%、レモン果汁を5.0%含有する乳化タイプドレッシング。」 <甲4製法発明> 「酢酸度8%の食酢を1.5%、トマトペーストを5.0%、レモン果汁を5.0%含有する乳化タイプドレッシングの製造方法。」 (2) 本件特許発明1ないし4及び6ないし10について 本件特許発明1ないし4及び6ないし10と甲4発明とを対比する。 甲4発明中には酸度8%の食酢が1.5%含有されており、酢酸を0.12w/v%含有する。 トマトペースト中の香気成分に関し、甲3(「Volatile Compounds, Polyphenols and Sensory Quality in the Production of Tomato Vinegar」(Journal of Food and Nutrition Research. 2017, 5(6), 391-398))の394頁のTable2には、トマトペースト中の香気成分の測定結果が記載されている。 [図:0001401599000011.jpg] 上記の表によると、トマトペースト中には本件発明のA1成分が237.8ppb、A2成分が3.27ppb含まれている。 甲4発明はトマトペーストを5%含有するので、A1成分は11.8900ppb、A2成分0.1635ppbは含有することとなる。 そうすると、本件特許発明1ないし4及び6ないし10と甲4発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点4-1> A2成分の配合量について、本件特許発明1ないし4及び6ないし10は「100ppb以上」と特定するのに対し、甲4発明は、0.1635ppbである点 以下、相違点4-1について検討する。 まず、相違点4-1は実質的な相違点であるから、本件特許発明1ないし4及び6ないし10は甲4発明ではない。 そして、甲4発明において、A2成分の配合量を相違点4-1に係る発明特定事項を満たすように変えようとする動機はない。 してみれば、甲4発明において、A2成分の含有量を相違点4-1に係る本件特許発明1ないし4及び6ないし10の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件特許発明1ないし4及び6ないし10は、甲4発明であるとはいえないし、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3) 本件特許発明5及び11について ア 本件特許発明5について 本件特許発明5と甲4発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点4-2> 本件特許発明5は、「(ただし、100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)からなるジュース調整用組成物及びそれと同じ配合比のジュース調整用組成物; 100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)と、ガス入りミネラルウオーター50ccからなるジュース及びそれと同じ配合比であるジュース; トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュース; 酢酸濃度が8.75w/v%であり、A1成分を2.04ppb、A2成分を73.92ppb含有するトマトビネガー; 酸度8%の食酢を1.5%、トマトペーストを5.0%、レモン果汁を5.0%含有する乳化タイプドレッシング; 及び酸度10%の食酢を10%、トマトペーストを4.0%、レモン果汁を3.0%含有するサウザンアイランドドレッシング; を除く。)」と特定するのに対し、甲4発明ではこのような特定はない点 以下、相違点4-2について検討する。 相違点4-2は、甲4発明を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。 また、相違点4-2が、甲4発明を除くことを特定するものである以上、甲4発明において、その他の提示された証拠に記載された事項をみても、相違点4-2に係る本件特許発明5の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。 よって、本件特許発明5は、甲4発明であるとはいえないし、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件特許発明11について 本件特許発明11と甲4製法発明とを対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点4-3> 本件特許発明11は、「(ただし、100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)からなるジュース調整用組成物及びそれと同じ配合比のジュース調整用組成物の製造方法; 100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)と、ガス入りミネラルウオーター50ccからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュースの製造方法; トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュースの製造方法; を除く。)」と特定するのに対し、甲4製法発明は、このような特定はない点 以下、相違点4-3について検討する。 相違点4-3は、甲4製法発明を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。 また、相違点4-3が、甲4製法発明を除くことを特定するものである以上、甲4製法発明において、その余の各証拠をみても、相違点4-3に係る本件特許発明11の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。 よって、本件特許発明11は、甲4製法発明であるとはいえないし、甲4製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4) 本件特許発明12及び13について 甲4には、「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とを抑制する」という技術的思想は記載されていないから、甲4に記載された事項から、本件特許発明12の「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とを抑制する方法」及び本件特許発明13の「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とを抑制する抑制剤」に対応する発明を認定することはできない。 したがって、本件特許発明12及び13は、甲4に記載された発明であるとはいえないし、甲4に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5) 申立理由7(甲4に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ 以上のとおり、申立理由7によって本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 8 申立理由8(甲5に基づく新規性・進歩性)について (1) 甲5に記載された事項及び甲5に記載された発明 ア 甲5に記載された事項 甲5は、本件特許の出願前である平成22年7月1日に公開された特開2010-143866号公報であり、その発明の名称を「新規チオラン化合物およびその用途」とするものである。 そして、甲5には、以下の記載がある。 ・「【発明が解決しようとする課題】 【0010】 本発明は、ネギ科植物の独特な香り(ネギ香)のうち、特にフレッシュ感を伴った香りを有する新規チオラン化合物を提供することを目的とする。また本発明は当該化合物を有効成分とする香料組成物、及び当該香料組成物を用いることによって調製されるネギ野菜風味を有する飲食品を提供することを目的とする。」 ・「【0121】 処方例3 ドレッシング(サウザンアイランドドレッシング) 実施例8で得られた香料組成物を、下記処方のドレッシングに添加し、常法によりドレッシングを調製し、官能評価を行った。 【0122】 <処方> 1 コーンサラダ油 35.0部 2 醸造酢(酸度10%) 10.0部 3 トマトペースト 4.0部 4 レモン透明果汁(ストレート) 3.0部 5 ウスターソース 0.35部 6 卵黄 4.0部 7 食塩 2.0部 8 甘味料(サンスイート※SU100*) 0.1部 9 調味料(サンライク※アミノベース*) 0.3部 10 オニオンパウダー 0.15部 11 ガーリックパウダー 0.1部 12.タマネギ香料(実施例8)(セパチオランの割合として) 0.1部 (最終製品中、セパチオランを5ppm含む) 13 増粘剤(サンエ-ス※*) 0.3部 14 ピクルス(みじん切り) 5.0部 15 水 35.6部 全量 100.0部。」 イ 甲5に記載された発明 甲5には、上記アの記載によると、処方例3として記載されている発明として、以下の発明が認定できる。 <甲5発明> 「酸度10%の食酢を10%、トマトペーストを4.0%、レモン果汁を3.0%含有するサウザンアイランドドレッシング。」 <甲5製法発明> 「酸度10%の食酢を10%、トマトペーストを4.0%、レモン果汁を3.0%含有するサウザンアイランドドレッシングの製造方法。」 (2) 本件特許発明1ないし4及び6ないし10について 本件特許発明1ないし4及び6ないし10と甲5発明とを対比する。 甲5発明中には酸度10%の食酢が10%含有されており、酢酸を1%含有する。そして、トマトペースト中の香気成分に関し、甲3(「Volatile Compounds, Polyphenols and Sensory Quality in the Production of Tomato Vinegar」(Journal of Food and NutritionResearch. 2017, 5(6), 391-398))によれば、上記5での対比と同様に、トマトペースト中には本件発明1のA1成分が237.8ppb、A2成分が3.27ppb含まれている。 甲5発明はトマトペーストを4.0%含有するので、A1成分は9.512ppb、A2成分0.1308ppb含有することとなる。 そうすると、本件特許発明1ないし4及び6ないし10と甲5発明とは、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点5-1> A2成分の配合量について、本件特許発明1ないし4及び6ないし10は「100ppb以上」と特定するのに対し、甲5発明は、0.1308ppbである点 以下、相違点5-1について検討する。 まず、相違点5-1は実質的な相違点であるから、本件特許発明1ないし4及び6ないし10は甲5発明ではない。 そして、甲5発明において、A2成分の配合量を相違点5-1に係る発明特定事項を満たすように変えようとする動機はない。 してみれば、甲5発明において、A2成分の含有量を相違点5-1に係る本件特許発明1ないし4及び6ないし10の発明特定事項とすることは、当業者においても容易に想到し得たこととはいえない。 よって、本件特許発明1ないし4及び6ないし10は、甲5発明であるとはいえないし、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3) 本件特許発明5及び11について ア 本件特許発明5について 本件特許発明5と甲5発明とを対比すると、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点5-2> 本件特許発明5は、「(ただし、100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)からなるジュース調整用組成物及びそれと同じ配合比のジュース調整用組成物; 100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)と、ガス入りミネラルウオーター50ccからなるジュース及びそれと同じ配合比であるジュース; トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュース; 酢酸濃度が8.75w/v%であり、A1成分を2.04ppb、A2成分を73.92ppb含有するトマトビネガー; 酸度8%の食酢を1.5%、トマトペーストを5.0%、レモン果汁を5.0%含有する乳化タイプドレッシング; 及び酸度10%の食酢を10%、トマトペーストを4.0%、レモン果汁を3.0%含有するサウザンアイランドドレッシング; を除く。)」と特定するのに対し、甲5発明ではこのような特定はない点 以下、相違点5-2について検討する。 相違点5-2は、甲5発明を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。 また、相違点5-2が、甲5発明を除くことを特定するものである以上、甲5発明において、その他の提示された証拠に記載された事項をみても、相違点5-2に係る本件特許発明5の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。 よって、本件特許発明5は、甲5発明であるとはいえないし、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件特許発明11について 本件特許発明11と甲5製法発明とを対比すると、両者は、少なくとも以下の点で相違する。 <相違点5-3> 本件特許発明11は、「(ただし、100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)からなるジュース調整用組成物及びそれと同じ配合比のジュース調整用組成物の製造方法; 100%りんごジュース100ccと、黒酢大さじ2杯(30cc)と、ガス入りミネラルウオーター50ccからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュースの製造方法; トマトジュース300mlと、トマトビネガー14.79mlと、マスタード4.93mlと、レモン果汁15mlからなるジュース及びそれと同じ配合比のジュースの製造方法; を除く。)」と特定するのに対し、甲5製法発明は、このような特定はない点 以下、相違点5-3について検討する。 相違点5-3は、甲4製法発明を除くことを特定するものであるから、実質的な相違点である。 また、相違点5-3が、甲5製法発明を除くことを特定するものである以上、甲5製法発明において、その余の各証拠をみても、相違点5-3に係る本件特許発明11の発明特定事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たことであるとは認められない。 よって、本件特許発明11は、甲5製法発明であるとはいえないし、甲5製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (4) 本件特許発明12及び13について 甲5には、「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とを抑制する」という技術的思想は記載されていないから、甲5に記載された事項から、本件特許発明12の「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とを抑制する方法」及び本件特許発明13の「酢酸含有飲食品の保存後の青臭さと、保存後の酢酸臭、剌激臭、及びムレ臭からなる群より選択される少なくとも1種とを抑制する抑制剤」に対応する発明を認定することはできない。 したがって、本件特許発明12及び13は、甲5に記載された発明であるとはいえないし、甲5に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5) 申立理由8(甲5に基づく新規性・進歩性)についてのまとめ 以上のとおり、申立理由8によって本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すことはできない。 第7 結語 以上のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、取消理由通知<決定の予告>における取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700097

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