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特許異議申立

2022-700296

特定の香気成分を含有する食品およびその製造方法

審判番号
2022-700296
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-009537
登録番号
6949339
請求日
2022年04月11日
審決日
2023年03月23日
公報発行日
2023年06月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】株式会社Mizkan Holdings
  • 【権利者代理人】青木 篤
  • 【権利者代理人】三橋 真二
  • 【権利者代理人】中島 勝
  • 【権利者代理人】渡辺 陽一
  • 【権利者代理人】関根 宣夫
  • 【権利者】株式会社Mizkan
  • 【権利者代理人】青木 篤
  • 【権利者代理人】三橋 真二
  • 【権利者代理人】中島 勝
  • 【権利者代理人】渡辺 陽一
  • 【権利者代理人】関根 宣夫
  • 【権利者代理人】上原 路子
  • 【異議申立人】伊野口 誠
  • 【異議申立人】森田 弘潤
審判長/審判官
  • 審判長 大島 祥吾
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 植前 充司
分類
P1651.111-YAA(A23L) / P1651.112-YAA(A23L) / P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項第1号、特許法第2条第3項第1号、特許法第120条の8第1項
データ出所
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特許第6949339号発明「特定の香気成分を含有する食品およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6949339号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5、7、8、10-12〕及び9について訂正することを認める。 特許第6949339号の請求項1ないし6及び9ないし12に係る特許を維持する。 特許第6949339号の請求項7、8に係る特許についての特許異議の申立を却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6949339号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし8に係る特許についての出願は、令和3年1月25日を出願日とする特許出願であって、同年9月27日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年10月13日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対して、令和4年4月11日に特許異議申立人 伊野口 誠(以下、「特許異議申立人A」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年同月13日に特許異議申立人 森田 弘潤(以下、「特許異議申立人B」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年8月4日付で取消理由が通知されたところ、同年10月11日に特許権者 株式会社Mizkan Holdings及び株式会社Mizkan(以下、まとめて「特許権者」という。)より訂正の請求がなされるとともに意見書の提出がされ、同年11月10日に特許権者より訂正請求書に対する手続補正書が提出され(以下、手続補正書により補正された訂正請求書による訂正の請求を「本件訂正請求」という。)、同年11月22日付けで特許法第120条の5第5項に基づく訂正請求があった旨の通知を行ったところ、同年12月27日に特許異議申立人Aより意見書が提出され、同年同月28日に特許異議申立人Bより意見書が提出されたものである。 第2 本件訂正請求について 1 訂正の適否についての判断 (1) 訂正の内容 本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。) ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1における 「醸造産物を含む調味料(但し酒類を除く)であって、 2-フェニル-2-ブテナールを0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲で含有し; フェネチルアルコールを0.05質量ppm以上300質量ppm以下の範囲で含有し ;かつ、 アセトインを0.05質量ppm以上200質量ppm以下の範囲で含有する; 調味料。」 との記載を、 「醸造産物を含む液体調味料(但し酒類を除く)であって、 2-フェニル-2-ブテナールを0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲で含有し; フェネチルアルコールを31.33質量ppm以上300質量ppm以下の範囲で含有し;かつ、 アセトインを1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲で含有する; 液体調味料。」 に訂正する。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する他の請求項についても同様である。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2における 「更に、ジアセチルを0.001質量ppm以上25質量ppm以下の範囲で含有する、請求項1に記載の調味料。」 との記載について独立形式に改め、 「醸造産物を含む調味料(但し酒類を除く)であって、 2-フェニル-2-ブテナールを0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲で含有し; フェネチルアルコールを3.70質量ppm以上300質量ppm以下の範囲で含有し; アセトインを1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲で含有し; 更に、ジアセチルを0.001質量ppm以上25質量ppm以下の範囲で含有する、 液体調味料。」 に訂正する。 請求項2の記載を直接又は間接的に引用して特定する他の請求項についても同様である。 ウ 訂正事項3 (ア) 訂正事項3-1 特許請求の範囲の請求項3における 「液体調味料である、請求項1又は2に記載の調味料。」 との記載のうち、請求項1を引用するものについて独立形式に改め、 「小麦、コーン、大麦、及び大豆から選択される1種又は2種以上を含む素材を用いた、醸造産物を含む液体調味料(但し酒類を除く)であって、 2-フェニル-2-ブテナールを0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲で含有し; フェネチルアルコールを3.70質量ppm以上300質量ppm以下の範囲で含有し;かつ、 アセトインを1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲で含有する; 液体調味料。」 に訂正する。 請求項3の記載を直接又は間接的に引用して特定する他の請求項についても同様である。 (イ) 訂正事項3-2 特許請求の範囲の請求項3における 「液体調味料である、請求項1又は2に記載の調味料。」 との記載のうち、請求項2を引用するものについて独立形式に改め、 「醸造産物を含む液体調味料(但し酒類及び米黒酢を除く)であって、 2-フェニル-2-ブテナールを0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲で含有し; フェネチルアルコールを3.70質量ppm以上300質量ppm以下の範囲で含有し;かつ、 アセトインを1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲で含有し; 更に、ジアセチルを0.001質量ppm以上25質量ppm以下の範囲で含有する、 液体調味料。」 との記載とし、新たに請求項9とする。 エ 訂正事項4 (ア) 訂正事項4-1 特許請求の範囲の請求項4における 「請求項1~3のいずれか一項に記載の調味料(但し酒類を除く)を製造する方法であって、 調味料中の2-フェニル-2-ブテナールの含有量を0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲に調節する工程; 調味料中のフェネチルアルコールの含有量を0.05質量ppm以上300質量ppm以下の範囲に調節する工程;並びに、 調味料中のアセトインの含有量を0.05質量ppm以上200質量ppm以下の範囲に調節する工程; を含む方法。」 との記載のうち、請求項1を引用するものについて、 「請求項1に記載の液体調味料(但し酒類を除く)を製造する方法であって、 液体調味料中の2-フェニル-2-ブテナールの含有量を0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲に調節する工程; 液体調味料中のフェネチルアルコールの含有量を31.33質量ppm以上300質量ppm以下の範囲に調節する工程;並びに、 液体調味料中のアセトインの含有量を1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲に調節する工程; を含む方法。」 に訂正する。 請求項4の記載を直接又は間接的に引用して特定する他の請求項についても同様である。 (イ) 訂正事項4-2 特許請求の範囲の請求項4における 「請求項1~3のいずれか一項に記載の調味料(但し酒類を除く)を製造する方法であって、 調味料中の2-フェニル-2-ブテナールの含有量を0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲に調節する工程; 調味料中のフェネチルアルコールの含有量を0.05質量ppm以上300質量ppm以下の範囲に調節する工程;並びに、 調味料中のアセトインの含有量を0.05質量ppm以上200質量ppm以下の範囲に調節する工程; を含む方法。」 との記載のうち、請求項3(請求項1を引用するもの)を引用するものについて、 「請求項3に記載の液体調味料(但し酒類を除く)を製造する方法であって、 小麦、コーン、大麦、及び大豆から選択される1種又は2種以上を含む素材を用い 液体調味料中の2-フェニル-2-ブテナールの含有量を0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲に調整する工程; 液体調味料中のフェネチルアルコールの含有量を3.70質量ppm以上300質量ppm以下の範囲に調整する工程;並びに、 液体調味料中のアセトインの含有量を1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲に調整する工程; を含む方法。」 との記載とし、新たに請求項10とする。 請求項10の記載を直接又は間接的に引用して特定する他の請求項についても同様である。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5における 「更に、調味料中のジアセチルの含有量を0.001質量ppm以上25質量ppm以下の範囲に調節する工程を含む、請求項4に記載の方法。」 との記載のうち、請求項4(請求項2を引用するもの)を引用するものについて、 「請求項2に記載の液体調味料(但し酒類を除く)を製造する方法であって、 液体調味料中の2-フェニル-2-ブテナールの含有量を0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲に調整する工程; 液体調味料中のフェネチルアルコールの含有量を3.70質量ppm以上300質量ppm以下の範囲に調整する工程; 液体調味料中のアセトインの含有量を0.05質量ppm以上200質量ppm以下の範囲に調整する工程;並びに、 液体調味料中のジアセチルの含有量を0.001質量ppm以上25質量ppm以下の範囲に調節する工程: を含む方法。」 に訂正する。 請求項5の記載を直接又は間接的に引用して特定する他の請求項についても同様である。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7における 「前記調味料の呈味全体の後味の余韻を持続・延長する、請求項4又は5に記載の方法。」 との記載について、 「前記液体調味料の呈味全体の後味の余韻を持続・延長する、請求項4、5、又は10に記載の方法。」 に訂正し、新たに請求項11とする。 請求項11の記載を引用して特定する請求項12についても同様である。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8における 「前記調味料が液体調味料である、請求項4~7いずれか一項に記載の方法。」 との記載について、 「前記液体調味料がみりん類、味噌類、又はしょうゆ類である、請求項4、5、10、又は11に記載の方法。」 に訂正し、新たに請求項12とする。 ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 ケ 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 コ 一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし5、7及び8について、請求項2ないし5、7及び8は請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであるから、請求項1ないし5、7及び8は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 なお、特許権者は、訂正後の請求項1ないし5及び9ないし12について、当該請求項についての訂正が認められる場合には、別の訂正単位とすることを求めている。 (2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1について 訂正事項1に係る請求項1の訂正は、調味料が「液体」であることを特定するとともに、フェネチルアルコール及びアセトインの下限をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1に係る請求項1の訂正は、本件特許の明細書の【0012】、【0018】、【0075】の【表3】、【0115】の【表23】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する他の請求項についても同様である。 イ 訂正事項2について 訂正事項2に係る請求項2の訂正は、訂正前の請求項1の記載を引用して特定する形式の請求項2を独立形式に書き改めるとともに、調味料が「液体」であること、フェネチルアルコール及びアセトインの下限をさらに限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするとともに、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2に係る請求項2の訂正は、本件特許の明細書の【0012】、【0018】、【0075】の【表3】、【0115】の【表23】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 請求項2の記載を直接又は間接的に引用して特定する他の請求項についても同様である。 ウ 訂正事項3について (ア) 訂正事項3-1について 訂正事項3-1に係る請求項3の訂正は、訂正前の請求項1の記載を引用して特定する形式の請求項3を独立形式に書き改めるとともに、液体調味料が「小麦、コーン、大麦、及び大豆から選択される1種又は2種以上を含む素材を用いた、醸造産物を含む調味料(但し酒類を除く)」であること、フェネチルアルコール及びアセトインの下限をさらに限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするとともに、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項3-1に係る請求項3の訂正は、本件特許の明細書の【0017】、【0075】の【表3】、【0115】の【表23】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 請求項3の記載を直接又は間接的に引用して特定する他の請求項についても同様である。 (イ) 訂正事項3-2について 訂正事項3-2に係る請求項9の訂正は、訂正前の請求項2の記載を引用して特定する形式の請求項3を独立形式に書き改めるとともに、液体調味料(但し酒類を除く)から「米黒酢」を除外し、フェネチルアルコール及びアセトインの下限をさらに限定するものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするとともに、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項3-2に係る請求項9の訂正は、本件特許の明細書の【0075】の【表3】、【0115】の【表23】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 エ 訂正事項4について (ア) 訂正事項4-1について 訂正事項4-1に係る請求項4の訂正は、訂正前の請求項1の記載を引用して特定する請求項4において、調味料が「液体」であること、フェネチルアルコール及びアセトインの下限をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項4-1に係る請求項4の訂正は、本件特許の明細書の【0012】、【0018】、【0075】の【表3】、【0115】の【表23】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 請求項4の記載を直接又は間接的に引用して特定する他の請求項についても同様である。 (イ) 訂正事項4-2について 訂正事項4-2に係る請求項10の訂正は、訂正前の請求項3(請求項1を引用するもの)の記載を引用して特定する形式の請求項4について、液体調味料が「小麦、コーン、大麦、及び大豆から選択される1種又は2種以上を含む素材を用い」るものであることと、フェネチルアルコール及びアセトインの下限をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項4-2に係る請求項10の訂正は、本件特許の明細書の【0017】、【0075】の【表3】、【0115】の【表23】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 請求項10の記載を直接又は間接的に引用して特定する他の請求項についても同様である。 オ 訂正事項5について 訂正事項5に係る請求項5の訂正は、訂正前の請求項2を引用する請求項5において、調味料が「液体」であること、フェネチルアルコール及びアセトインの下限をさらに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項5に係る請求項5の訂正は、本件特許の明細書の【0012】、【0018】、【0075】の【表3】、【0115】の【表23】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 請求項5の記載を直接又は間接的に引用して特定する他の請求項についても同様である。 カ 訂正事項6について 訂正事項6に係る請求項11についての訂正は、訂正前の請求項7が請求項4又は5を引用していたのに対し、訂正事項4及び5に伴い、訂正前の請求項4又は5の一部に対応する訂正後の請求項4、5又は10を引用するもの、すなわち、従属関係を限定し、整理するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項6に係る請求項11についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 キ 訂正事項7について 訂正事項7に係る請求項12についての訂正は、訂正前の請求項8が請求項4~7の何れか一項を引用していたのに対し、訂正事項4ないし6に伴い、訂正前の請求項4、5又は7の一部に対応する訂正後の請求項4、5、10又は11を引用するもの、すなわち、従属関係を限定し、整理するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 そして、訂正事項7に係る請求項12についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 ク 訂正事項8について 訂正事項8は、請求項7を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 ケ 訂正事項9について 訂正事項9は、請求項8を削除するものであるから、特許請求の範囲を減縮することを目的とするものであって、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。 2 訂正についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5、7、8、10-12〕及び9について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-5、7、8、10-12〕及び9について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明12」という。また、総称して「本件特許発明」という。)は、令和4年10月11日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 醸造産物を含む液体調味料(但し酒類を除く)であって、 2-フェニル-2-ブテナールを0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲で含有し; フェネチルアルコールを31.33質量ppm以上300質量ppm以下の範囲で含有し;かつ、 アセトインを1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲で含有する; 液体調味料。 【請求項2】 醸造産物を含む調味料(但し酒類を除く)であって、 2-フェニル-2-ブテナールを0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲で含有し; フェネチルアルコールを3.70質量ppm以上300質量ppm以下の範囲で含有し; アセトインを1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲で含有し; 更に、ジアセチルを0.001質量ppm以上25質量ppm以下の範囲で含有する、 液体調味料。 【請求項3】 小麦、コーン、大麦、及び大豆から選択される1種又は2種以上を含む素材を用いた、醸造産物を含む液体調味料(但し酒類を除く)であって、 2-フェニル-2-ブテナールを0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲で含有し; フェネチルアルコールを3.70質量ppm以上300質量ppm以下の範囲で含有し;かつ、 アセトインを1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲で含有する; 液体調味料。 【請求項4】 請求項1に記載の液体調味料(但し酒類を除く)を製造する方法であって、 液体調味料中の2-フェニル-2-ブテナールの含有量を0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲に調節する工程; 液体調味料中のフェネチルアルコールの含有量を31.33質量ppm以上300質量ppm以下の範囲に調節する工程;並びに、 液体調味料中のアセトインの含有量を1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲に調節する工程; を含む方法。 【請求項5】 請求項2に記載の液体調味料(但し酒類を除く)を製造する方法であって、 液体調味料中の2-フェニル-2-ブテナールの含有量を0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲に調整する工程; 液体調味料中のフェネチルアルコールの含有量を3.70質量ppm以上300質量ppm以下の範囲に調整する工程; 液体調味料中のアセトインの含有量を1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲に調整する工程;並びに、 液体調味料中のジアセチルの含有量を0.001質量ppm以上25質量ppm以下の範囲に調節する工程: を含む方法。 【請求項6】 醸造産物を含む調味料のうま味の後味の余韻を持続・延長する方法であって、調味料中の2-フェニル-2-ブテナールの含有量を0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲に調節することを含む方法。 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 (削除) 【請求項9】 醸造産物を含む液体調味料(但し酒類及び米黒酢を除く)であって、 2-フェニル-2-ブテナールを0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲で含有し; フェネチルアルコールを3.70質量ppm以上300質量ppm以下の範囲で含有し;かつ、 アセトインを1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲で含有し; 更に、ジアセチルを0.001質量ppm以上25質量ppm以下の範囲で含有する、 液体調味料。 【請求項10】 請求項3に記載の液体調味料(但し酒類を除く)を製造する方法であって、 小麦、コーン、大麦、及び大豆から選択される1種又は2種以上を含む素材を用い、 液体調味料中の2-フェニル-2-ブテナールの含有量を0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲に調整する工程; 液体調味料中のフェネチルアルコールの含有量を3.70質量ppm以上300質量ppm以下の範囲に調整する工程;並びに、 液体調味料中のアセトインの含有量を1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲に調整する工程; を含む方法。 【請求項11】 前記液体調味料の呈味全体の後味の余韻を持続・延長する、請求項4、5、又は10に記載の方法。 【請求項12】 前記液体調味料がみりん類、味噌類、又はしょうゆ類である、請求項4、5、10、又は11に記載の方法。」 第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について 特許異議申立人A及びBがそれぞれ特許異議申立書において、本件特許の請求項1ないし8に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、次の1及び2のとおりである。 1 特許異議申立人Aが申し立てた異議申立理由について 特許異議申立人Aが特許異議申立書において、本件特許の請求項1ないし8に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨((1)ないし(6))は、次のとおりである。 (1) 申立理由A1-1(新規性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A4号証ないし甲第A6号証及び甲第A9号証にそれぞれ記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (2) 申立理由A1-2(新規性) 本件特許の請求項1、3及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A7号証あるいは甲第A8号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (3) 申立理由A2-1(進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A4号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (4) 申立理由A2-2(進歩性) 本件特許の請求項1ないし5、7及び8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A5号証、甲第A6号証及び甲第A9号証にそれぞれ記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (5) 申立理由A2-3(進歩性) 本件特許の請求項1、3、5、7及び8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A7号証あるいは甲第A8号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (6) 申立理由A2-4(進歩性) 本件特許の請求項6ないし8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A10号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (7) 証拠方法 ・甲第A1号証:におい・かおり環境学会誌 44巻5号(2013)、p.298-306 ・甲第A2号証:醸造協会誌 第111巻第5号(2016)、p.278-285 ・甲第A3号証:FFI Journal,vol.212,No.11(2007),p.919-928 ・甲第A4号証:醸造物の成分、財団法人日本醸造協会、平成11年12月10日発行、433-440頁、味噌編第VI章 香気成分 ・甲第A5号証:醸造協会誌第82巻第8号(1987)、p.547-553 ・甲第A6号証:醸造物の成分、財団法人日本醸造協会、平成11年12月10日発行、476-501頁、味噌編第VI章 香気成分 ・甲第A7号証:Biosci.Biotechnol.Biochem,77(11)(2013)、p.2192-2200 ・甲第A8号証:LWT-Food Science and Technology,112(2019)108264、p.1-11 ・甲第A9号証:特表2018-537992号公報 ・甲第A10号証:日本食品工業学会誌第39巻第9号(1992)、p.1098-1104 ・甲第A11号証:BUNSEKI KAGAKU vol39(1990)、p.405-409 ・甲第A12号証:醸造協会誌第96巻第1号、p.33-42 ・甲第A13号証:「発酵食品学」(2012年)、小泉武夫編著、講談社、191頁 証拠の表記は、概ね特許異議申立書の記載にしたがった。 2 特許異議申立人Bが申し立てた異議申立理由について 特許異議申立人Bが特許異議申立書において、本件特許の請求項1ないし8に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨((1)ないし(5))は、次のとおりである。 (1) 申立理由B1(明確性要件) 本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立理由B1の理由の概略は次のとおりである。 本件特許発明は醸造産物を含む調味料に関するものであるが、本件特許の明細書の記載からも技術常識からも、その用語によって示される範囲が一義的に明確であるとは認められない。 (2) 申立理由B2(サポート要件) 本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立理由B2の理由の概略は次のとおりである。 ア 申立理由B2-1(官能評価について) 本件特許の明細書の段落【0060】~【0065】には、官能試験についての記載があるが、その評価項目である、呈味の後味の余韻の持続・維持の有無と、有する場合の後味の余韻の好ましさ、及び、自然で雑味や異質な風味のない好ましい呈味を有するか否かなどは如何様にも解釈が可能であるし、呈味の後味の余韻の持続・維持などは、具体的にどのような余韻がどの程度の時間持続するなど、その内容や基準自体がそもそも不明であるし、その評価についても「小数点以下は四捨五入した」平均値が示されているにとどまり、各パネラーの個々の評価の記載もないから、パネラー感の評価のブレが生じているのか否かの検証もできない。 してみれば、本件特許の明細書の記載は、極めて不適切な実験手法並びに評価によるものであるから、これらの記載に基づいて、本件特許発明の技術的課題が解決できると当業者が認識することはできない。 イ 申立理由B2-2(各香気成分の種類並びにそれらの配合割合について) 本件特許発明は、本件特許の明細書の段落【0010】において「呈味全体やうま味といった好ましい味について後味の余韻自体を持続・延長させる飲食品が求められている」と記載されていることからも明らかなとおり、元々は調味料ではなくそのまま飲食のように供される飲食品を念頭に置いた発明である。しかるところ、飲食品での呈味全体やうま味といった好ましい味について後味の余韻自体を持続・延長させるという効果と、それを調味料として他の飲食品に適用することによって同様の効果を得る場合では、その課題解決のための解決手段が異なるのは当然である。そして、本件特許の明細書の段落【0109】において、「試験4、5、6において、各種香気成分の純品の添加により、本発明の所望の効果を有する食品を調製できることを示したが、各種香気成分の純品の添加による品質の調整には、膨大な手間やコストがかかり、現実的でない場合もある。そこで試験7では、本発明の効果を奏する食品を使用して、本発明の所望の効果が奏される食品が調製できることを実証した」と記載されており、試験4、5、6の結果は食品に対する効果を示すものであって、調味料に関しそのサポートとなり得るのは、試験7のみであることが明示されている。 しかるところ、試験7の表23から一見して明らかなとおり、比較例・実施例の間で条件が揃えられたものではない。また、試験7の結果や、甲第B6号証ないし甲第B8号証に示される技術事項を考慮すると、ジアセチルの有無やその濃度は、「呈味全体やうま味といった好ましい味について後味の余韻自体を持続・延長させる(飲食品を提供する)」という、本件特許発明の技術的課題ないし作用効果に関し大きく影響を与える要素に該当することは明らかである。 よって、少なくともジアセチルを解決手段として規定していない本件特許発明(本件特許発明2及び5以外)に関しては、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に照らしても、当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認識することができない。 また、本件特許発明において必須とされている各香気成分の濃度に関しても、それぞれ実施例に比して、広範な数値範囲が規定されているものであり、実施例により具体的に検討されている範囲以外の部分については、当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると認識することができない。 ウ 申立理由B2-3(「醸造産物を含む調味料」について) 本件特許の明細書の段落【0019】には、「醸造産物」についての記載があるものの、実施例で用いられているのは、「特定の香気成分を有する本発明の食品(実施例4の食品)」(特定の酵母エキス)のみである。 しかしながら、醸造産物の種類によって含まれる成分(呈味全体やうま味に影響する成分の種類やそれらの含有量)は大きく異なるのであり、実施例(実施例116ないし119)において用いた特定の酵母エキスにおいて得られた効果が、他の醸造産物を用いた場合でも同様の効果が得られると認識できるとは到底認められないし、ましてや、その効果を酵母エキス全般、あるいは酵母エキス以外の醸造産物について一般化・抽象化できるとは到底認められない。 (3) 申立理由B3(実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし8に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 なお、申立理由B3の理由の概略は次のとおりである。 本件特許発明は、醸造産物を含む調味料のうま味の後味の余韻を持続・延長することを課題とするものであるところ、申立理由B2で主張するとおり、醸造産物や調味料の種類によって、本件特許発明の課題を解決しうるか否かが異なり、単に本件特許発明の規定のとおりに各香気成分を配合することによってそのような効果が得られるとは限らない。また、本件特許発明に規定する各香気成分の数値範囲においても、そもそもジアセチルを含むことなくその課題を解決できるか否か明らかではないし、各香気成分の数値範囲に関しても、その範囲全般において調味料のうま味の後味の余韻を持続・延長するという効果が得られるとはいえないことは明らかであり、さらに、そのような配合を調整するにも過度の試行錯誤を要することは明らかである。 (4) 申立理由B4(新規性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B1-1号証及び甲第B2号証ないし甲第B4号証にそれぞれ記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (5) 申立理由B5(進歩性) 本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B1-1号証及び甲第B2号証ないし甲第B4号証にそれぞれ記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 (6) 証拠方法 ・甲第B1-1号証:被申立人のホームページ「mizkan純玄米黒酢」、<URL:https://www.mizkan.co.jp/product/group/index.html?gid=01007>、<出力日2022年3月17日> ・甲第B1-2号証:アマゾンにおける「純玄米黒酢」の紹介ページ、<URL:https://www.amazon.co.jp/%E3%83%9F%E3%83%84%E3%82%AB%E3%83%B3%E7%B4%94%E7%8E%84%E7%B1%B3%E9%BB%92%E9%85%A2-500ml/dp/B000FQNWBS>、<出力日2022年4月12日> ・甲第B1-3号証:試験結果報告書、2022年4月12日 ・甲第B2号証:Characterization of volatile compounds in three commercial Chinese vinegars by SPME-GC-MS and GC-O (LWT-Food Science and Technology,112(2019)108264)、LWT-Food Science and Technology、2019年9月 ・甲第B3号証:クックパッド「プリプリ水餃子の黒酢サラダ」、クックパッド株式会社(レシピ公開者:亜細亜食堂)、2010年1月4日(公開日)、2010年1月10日(更新日)、<URL:https://cookpad.com/recipe/1002508> ・甲第B4号証:特開2004-135522号公報 ・甲第B5号証:酢100cc(100ml)は何グラム(何g)か?酢50cc(50ml)は何グラム(何g)か?【酢の比重(密度)】、<URL:https://life-freedom888.com/su100cc-g/>、<出力日2022年3月15日> ・甲第B6号証:「食品とジアセチル」、井上喬、2004年5月15日、<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jbrewsocjapan1988/99/5/99_5_315/_pdf/-char/ja> ・甲第B7号証:Wikipedia「ジアセチル」(2019年1月1日改定前のもの)、Wikipedia、2019年1月1日、<URL:https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E3%82%B8%E3%82%A2%E3%82%BB%E3%83%81%E3%83%AB&diff=71150781&oldid=67800201> ・甲第B8号証:「飲料中ジアセチルの定量」、一般財団法人材料科学技術振興財団、2018年11月26日、<URL:https://www.mst.or.jp/Portals/0/case/pdf/c0535.pdf> ・甲第B9号証:楽天市場シエロ エクストラバージンオリーブオイル商品ページ、<URL:https://item.rakuten.co.jp/rakuten24/8697463153828>、<出力日2022年4月12日> ・甲第B10号証:「みんなの知識 ちょっと便利帳 計量スプーン・計量カップによる重量表」、<URL:https://www.benricho.org/doryouko_cup_spoon>、<出力日2022年3月15日> ・甲第B11号証:「レモン汁大さじ1の重さは何グラム?小さじは?カロリーはあるの?」、<URL:https://cojicaji.jp/cooking-tips/2483>、<出力日2022年3月15日> ・甲第B12号証:「生活知恵袋りんごの重さは1個、1/2個、1/4個で何グラム、りんご3個分のキティちゃんの重さは?」、<URL:https://www.seikatu-cb.com/omosa/apple.html>、<出力日2022年3月29日> ・甲第B13号証:Characteristic aroma profiles of unifloral honeys obtained with a dynamic headspace GC-MS system (Journal of Apicultural Research, 31(2):96-109(1992)、Journal of Apicultural Research、2015年3月24日・甲第B14号証:コトバンク「調味料」のウェブページ、朝日新聞社、2021年1月12日(インターネットアーカイブ)、<URL:https://web.archive.org/web/20210112133254/https://kotobank.jp/word/%E8%AA%BF%E5%91%B3%E6%96%99-98200>(2021年1月12日改訂前のもの) ・甲第B15号証:国際公開第2020/158563号 ・甲第B16号証:特開2012-105674号公報 ・甲第B17号証:特開2007-89577号公報 ・甲第B18号証:特開2006-94747号公報 ・甲第B19号証:アサヒグループ食品のホームページ(トップ>商品情報>食品原料>酵母エキス調味料(2021年1月18日時点のもの)、2021年1月18日(インターネットアーカイブ)、<URL:https://web.archive.org/web/20210118111903/https://www.asahi-gf.co.jp/products_feature/yeast-extract> ・甲第B20号証:「お酢の効果でやわらか~!お肉のさっぱり煮のレシピ」、Nadia株式会社(レシピ作者:楠みどり)、2018年6月3日、<URL:https://oceans-nadia.com/user/10254/article/1735> ・甲第B21号証:味噌用酵母MY-8株の選抜と特性について、福井県農業試験場研究報告、福井県農業試験場、2000年3月 ・甲第B22号証:Wikipedia「3-ヒドロキシ-2-ブタノン(アセイトン)」(2019年5月7日改訂前のもの)、Wikipedia、2019年5月7日、<URL:https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=3-%E3%83%92%E3%83%89%E3%83%AD%E3%82%AD%E3%82%B72-%E3%83%96%E3%82%BF%E3%83%8E%E3%83%B3&diff=72663159&oldid=64966205> なお、証拠方法の表記については、おおむね特許異議申立書の記載にしたがった。 また、特許異議申立人Bは、令和4年12月28日提出の意見書に添付して次の証拠を提出している。 ・甲第B23号証:隆花RYUUKAのウェブサイト、(https://ryuuka.co.jp/products/black-vinegar) ・甲第B24号証:東京都福祉保健局のウェブサイト、(https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kenkou/anzen/food_faq/hyoji/hyoji04.htrn1) ・甲第B25号証:50周年記念誌「分析機器年表」、(https://www.jaima.or.jp/resource/jp/outline/pdf/chronologicaltable_50th.pdf) ・甲第B26号証:「アジレントクロマトグラフィーセミナー」の案内、(https://www.chem-agilent.com/cimg/0906_kyusyu.pdf) ・甲第B27号証:Agilent 7820A ガスクロマトグラフ操作ガイド、(https://www.chem-agilent.com/pdf/G4350-96012.pdf) ・甲第B28号証:「醸造酢と合成酢の鑑別(第3報)」 なお、証拠の表記については、おおむね意見書の記載にしたがった。 第5 令和4年8月4日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の概要 請求項1ないし5、7及び8に係る特許に対して、当審が令和4年8月18日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。なお、取消理由には、申立理由のうち次の部分が包含される。 ・申立理由A1-1のうち、甲第A9号証を主たる証拠とするものであって、請求項1、2、4及び5に係る部分 ・申立理由A1-2のうち、甲第A8号証を主たる証拠とするものであって、請求項1及び3に係る部分 ・申立理由A2-2のうち、甲第A9号証を主たる証拠とするものであって、請求項1、2、4、5、7及び8に係る部分 ・申立理由A2-3のうち、甲第A8号証を主たる証拠とするものであって、請求項1、3、7及び8に係る部分 ・申立理由B4のうち、甲第B2号証を主たる証拠とするものであって、請求項1、3、4、7及び8に係る部分 ・申立理由B4のうち、甲第B3号証を主たる証拠とするものであって、請求項1ないし5、7及び8に係る部分 ・申立理由B5うち、甲第B1証を主たる証拠とするものであって、請求項1ないし5、7及び8に係る部分 ・申立理由B5うち、甲第B2号証を主たる証拠とするものであって、請求項1、3、4、7及び8に係る部分 ・申立理由B5うち、甲第B3号証を主たる証拠とするものであって、請求項1ないし5、7及び8に係る部分 1 取消理由1-1(甲第A8号証(甲第B2号証)を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1、3、4、7及び8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第A8号証(甲第B2号証)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 取消理由1-2(甲第A9号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1、2、4、5、7及び8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第A9号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 取消理由1-3(甲第B1-1号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし5、7及び8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、公然知られた発明または公然実施された発明であり、特許法第29条第1項第1号または第2号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 4 取消理由1-4(甲第B3号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許発明1ないし5、7及び8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第B3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 5 取消理由2-1 (甲第A8号証(甲第B2号証)を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1、3、4、7及び8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第A8号証(甲第B2号証)に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 6 取消理由2-2 (甲第A9号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1、2、4、5、7及び8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第A9号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 7 取消理由2-3 (甲第B1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし5、7及び8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第B1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 8 取消理由2-4 (甲第B3号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許発明1ないし5、7及び8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第B3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第6 当審の判断 1 令和4年8月4日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由についての判断 以下に述べるように、令和4年8月4日付け取消理由通知で特許権者に通知した取消理由は、何れもその理由がないものと判断する。 なお、第2で記載のとおり、本件特許発明9は訂正前の請求項3、本件特許発明10は訂正前の請求項4、本件特許発明11は訂正前の請求項7、本件特許発明12は訂正前の請求項8に対応するものである。 (1) 取消理由1-1及び2-1(甲第A8号証(甲第B2号証)を主たる証拠とする新規性・進歩性)について 甲第A8号証と甲第B2号証は同じ証拠である。以下、単に「甲第A8号証」として検討する。 ア 甲第A8号証の記載事項等 (ア) 甲第A8号証の記載事項 甲第A8号証には、「SPME-GC-MSおよびGC-Oによる3種類の市販中国酢の揮発性化合物の特性評価」に関し、次の記載がある。なお、外国文献であるため、表3を除き訳文のみ摘記する。 「2.材料と方法 2.1. お酢のサンプル 鎮江香酢(ZAV)は江蘇恒順酢工業有限公司で製造されたもので、中国北京の地元スーパーから購入し、正隆米酢(ZRV)は正隆食品有限会社(中国河北省)で製造されたもので、龍門燻酢(LSV)は、北京二商龍和食品有限会社(中国北京市)で製造されたもので、北京食品科学研究院から供給されたものである。」 「 [図:0001398247000001.jpg] 」 (イ) 甲第A8号証に記載された発明 上記(ア)の記載、特に3種類の酢の成分に着目すると、甲第A8号証には、次の発明が記載されていると認める。 「2-フェニル-2-ブテナールを211.41μg/L、 2-フェニルエタノールを1456.12μg/L、 3-ヒドロキシ-2-ブタノンを227.81μg/L、 含有する鎮江香酢。」(以下、「甲A8鎮江香酢発明」という。) 「2-フェニル-2-ブテナールを5.39μg/L、 2-フェニルエタノールを126.98μg/L、 3-ヒドロキシ-2-ブタノンを68.15μg/L、 含有する正隆米酢。」(以下、「甲A8正隆米酢発明」という。) 「2-フェニル-2-ブテナールを2.09μg/L、 2-フェニルエタノールを468.81μg/L、 3-ヒドロキシ-2-ブタノンを61.31μg/L、 含有する龍門燻酢。」(以下、「甲A8龍門燻酢発明」という。) イ 対比・判断 (ア) 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲A8鎮江香酢発明とを対比すると、甲A8鎮江香酢発明の「2-フェニルエタノール」、「3-ヒドロキシ-2-ブタノン」はそれぞれ、本件特許発明1の「フェネチルアルコール」、「アセトイン」に相当する。 そして、酢の比重が概ね1g/mlであることから、甲A8鎮江香酢発明の各成分含有割合は次のように換算される。 ・2-フェニル-2-ブテナール 0.21141質量ppm ・2-フェニルエタノール(フェネチルアルコール) 1.45612質量ppm ・3-ヒドロキシ-2-ブタノン(アセトイン) 0.22781質量ppm してみると、両者は、 「醸造産物を含む液体調味料(但し酒類を除く)であって、 2-フェニル-2-ブテナールを0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲で含有する; 液体調味料。」 で一致し、次の点で一応相違する。 ・相違点A8-1 液体調味料におけるフェネチルアルコールの含有量について、本件特許発明1は「31.33質量ppm以上300質量ppm以下の範囲で含有し」と特定されるのに対し、甲A8鎮江香酢発明は「1.45612質量ppm」である点。 ・相違点A8-2 液体調味料におけるアセトインの含有量について、本件特許発明1は「1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲で含有する」と特定されるのに対し、甲A8鎮江香酢発明は「0.22781質量ppm」である点。 上記相違点について検討する。 ・相違点A8-1について フェネチルアルコールの含有量に関する相違点A8-1は、実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A8鎮江香酢発明ではない。 また、甲A8鎮江香酢発明(すなわち、甲第A8号証の鎮江香酢(ZAV))は江蘇恒順酢工業有限公司で製造された商品であることから、その組成を変更する動機付けがあるとはいえない。 よって、甲A8鎮江香酢発明において、相違点A8-1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 この点について、特許異議申立人A及びBはそれぞれ意見書において、フェネチルアルコールの下限値の内外において効果の差異が認められないことをあげつつ、その数値を変更することは容易である旨主張するが、上述のとおり、甲A8鎮江香酢発明(甲第A8号証の鎮江香酢(ZAV))は上市品であるから、その組成を変更する動機付けはなく、特許異議申立人A及びBの上記主張は採用できない。 したがって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A8鎮江香酢発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 甲A8正隆米酢発明、甲A8龍門燻酢発明についても同様に判断される。 以下、「甲A8鎮江香酢発明」、「甲A8正隆米酢発明」、「甲A8龍門燻酢発明」を総称し、「甲A8発明」として検討する。 (イ) 本件特許発明3及び9について 本件特許発明3及び9と甲A8発明とを対比すると、両者は少なくともフェネチルアルコールの含有割合とアセトインの含有割合の点で相違するものであり、上記(ア)の場合と同様に判断される。 よって、本件特許発明3及び9は、甲A8発明ではなく、また、甲A8発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ) 本件特許発明4及び10ないし12について 本件特許発明4及び10ないし12はいずれも、本件特許発明1及び3のいずれかの全ての特定事項を有するものである。 そして、本件特許発明1及び3は、甲A8発明ではなく、また、甲A8発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1及び3のいずれかの全ての特定事項を有するものである本件特許発明4及び10ないし12も、甲A8発明ではなく、また、甲A8発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 取消理由1-1及び2-1についてのまとめ 上記イのとおりであるから、取消理由1-1及び2-1は、その理由がない。 (2) 取消理由1-2及び2-2(甲第A9号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について ア 甲第A9号証の記載事項等 (ア) 甲第A9号証の記載事項 甲第A9号証には、「風味を付けた乳製品」に関し、次の記載がある。 「【0125】 本発明の方法により製造された発酵乳製品には、食品製品中及び食品製品製造中の用途があり得る。例えば、本発明によってもたらされる風味を付けた乳製品を用い、別の食品又は飲料に、チョコレートの風味及び/又は香気を付与することができる。」 「【0128】 本明細書に記載の風味を付けた乳製品又は食品製品は、液体又は固体、好ましくは固体、より好ましくは粉末の形態であり得る。」 「【実施例】 【0132】 次に、本発明の様々な好ましい特徴及び実施形態を、非限定的な実施例によって記載する。 【0133】 実施例1 全乳粉末を35%の濃度に再構成し、乳原料を準備した。アミノ酸L-ロイシン、L-イソロイシン、L-バリン及びL-フェニルアラニンを、乳原料に、下記の表1に示した濃度で添加した。 【0134】 アミノ酸補充乳原料を80℃で予熱した後、アミノ酸補充乳原料を140℃の温度に4秒間加熱することを含むUHT処理を実施した。 【0135】 UHT処理に次いで、細菌CNCM I-1962の培養物を、アミノ酸補充乳原料に、下記の表1に示したように、1%の濃度で添加した。 【0136】 【表1】 [図:0001398247000002.jpg] 【0137】 発酵は、30℃で、好気条件下において約10時間実施した。 【0138】 ウレアーゼ酵素を添加した。ウレアーゼ酵素の良好な活性のためのpHを得るため、pHを約7に調整した(例えば、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム等の塩基を用いる)。 【0139】 発酵乳原料を冷やし、噴霧乾燥して粉末を生成させた。 【0140】 化学分析により、2,3,5,6-テトラメチルピラジンの存在を確認した。 【0141】 訓練されたパネルによる官能評価により、得られた発酵乳製品がチョコレート風味を呈することが明らかとなった。 【0142】 実施例2 アミノ酸補充乳を、乳酸菌CNCM I-4404で発酵させた。発酵に次いで、アンモニアを用いて乳を中和した後、乾燥した。 【0143】 乾燥時間がより長いと、2,3,5,6-テトラメチルピラジンの生成が有意に増加することが見出された。 【0144】 図4は、2つの実施例の粉末を示す。粉末2093.05は、粉末2093.06よりも長い乾燥を受け、2,3,5,6-テトラメチルピラジンの濃度(グラフの右側の最後の棒から2番目に示す)が有意に高い。 【0145】 また、訓練されたパネルによる官能評価により、粉末2093.05は、有意に強いチョコレート風味を特徴とすることが明らかとなった。」 「【図4】 [図:0001398247000003.jpg] 」 (イ) 甲第A9号証に記載された発明 上記(ア)の記載であって、図4に示される各成分濃度を読み取ると、甲B9号証には次の発明が記載されていると認める。 「2-フェニルtrans-2-ブテナールを約1~2mg/kg、 2-フェニルエタノールを約2~4mg/kg、 アセトインを約1~13mg/kg ジアセチルを約2~4mg/kg、 含有する発酵乳製品粉末。」(以下、「甲A9発明」という。) イ 対比・判断 (ア) 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲A9発明とを対比すると、甲A9発明の「2-フェニルtrans-2-ブテナール」、「2-フェニルエタノール」はそれぞれ、本件特許発明1の「2-フェニル-2-ブテナール」、「フェネチルアルコール」に相当する。 また、甲A9発明の「1mg/kg」は、本件特許発明1の「1質量ppm」に相当する。 さらに、甲A9発明の「発酵乳製品」は、甲第A9号証の【0125】の記載からみて、本件特許発明1の「調味料」に相当するものといえる。 してみると、両者は、 「醸造産物を含む調味料(但し酒類を除く)であって、 2-フェニル-2-ブテナールを0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲で含有する; 調味料。」 で一致し、次の点で一応相違する。 ・相違点A9-1 調味料に関し、本件特許発明1は「液体」と特定されるのに対し、甲A9発明は粉末である点。 ・相違点A9-2 液体調味料におけるフェネチルアルコールの含有量について、本件特許発明1は「31.33質量ppm以上300質量ppm以下の範囲で含有し」と特定されるのに対し、甲A9発明は「約2~4mg/kg」(約2~4質量ppmに相当)である点。 ・相違点A9-3 液体調味料におけるアセトインの含有量について、本件特許発明1は「1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲で含有する」と特定されるのに対し、甲A9発明は「約1~13mg/kg」(約1~13質量ppmに相当)である点。 上記相違点について検討する。 ・相違点A9-1について 相違点A9-1は、実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲A9発明ではない。 また、甲第A9号証及び他の全ての証拠の記載をみても、甲A9発明において粉体を液体に変更する動機付けがあるともいえない。 よって、甲A9発明において、相違点A9-1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。 この点について、特許異議申立人A及びBは、おおむね、甲第A9号証の【0128】の記載を引用しつつ、甲第A9号証に記載の発酵乳製品は、液体も採用しうる旨主張する。 しかしながら、甲A9発明は、粉体として得られた実施例においてその成分を分析したものであり、甲第A9号証には液体の発酵乳製品に関する具体的な実施例の記載はない。そして、異なる形態の実施例である場合には、成分組成が異なるものとなるから、甲A9発明において、その形態を単に粉体から液体に変更することはできない。 したがって、本件特許発明1は、甲A9発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ) 本件特許発明2について 本件特許発明2と甲A9発明とを対比すると、両者は少なくとも液体か否か、及び、フェネチルアルコールの含有割合とアセトインの含有割合の点で相違するものであり、上記(ア)の場合と同様に判断される。 よって、本件特許発明3は、甲A9発明ではなく、また、甲A9発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ) 本件特許発明4、5、11及12について 本件特許発明4、5、11及12はいずれも、本件特許発明1及び2のいずれかの全ての特定事項を有するものである。 そして、本件特許発明1及び2は、甲A9発明ではなく、また、甲A9発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1及び2のいずれかの全ての特定事項を有するものである本件特許発明4、5、11及12も、甲A9発明ではなく、また、甲A9発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 取消理由1-2及び2-2についてのまとめ 上記イのとおりであるから、取消理由1-2及び2-2は、その理由がない。 (3) 取消理由1-3及び2-3(甲第B1-1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について ア 主な証拠の記載事項等 (ア) 甲第B1-1号証の記載事項 甲第B1-1号証であるミツカングループのホームページには、「純玄米黒酢」に関して、次の記載がある。 「 [図:0001398247000004.jpg] 」 (イ) 甲第B1-1号証により示される発明 上記(ア)の記載に基づき、甲第B1-1号証から次の発明を認める。 「純玄米黒酢」(以下、「甲B1-1発明」という。」 イ 対比・判断 (ア) 甲B1-1発明の公知・公然実施について 甲第B1-2号証によれば、甲B1-1発明である「純玄米黒酢」は、Amazon.co.jpにおいて、2006年7月22日より取り扱われていたことが示されている。 してみれば、甲B1-1発明である「純玄米黒酢」は、本件特許の出願日である令和3年(2021年)1月25日よりも前において既に販売されていたものであるといえるから、本件特許出願前において公然知られていたものであり、あるいは、公然実施されていたものであるといえる。 (イ) 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲B1-1発明とを対比すると、甲B1-1発明の「純玄米黒酢」は、本件特許発明1の「醸造産物を含む液体調味料(但し酒類を除く)」にあたる。 してみると、両者は、 「醸造産物を含む液体調味料(但し酒類を除く)。」 の点で一致し、次の点で一応相違する。 ・相違点B1-1 調味料に関し、本件特許発明1は「2-フェニル-2-ブテナールを0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲で含有し;フェネチルアルコールを31.33質量ppm以上300質量ppm以下の範囲で含有し;かつ、アセトインを1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲で含有する;」と特定するのに対し、甲B1-1発明にはそのような特定がない点。 上記相違点B1-1について検討する。 甲第B1-3号証によると、甲B1-1発明の「純玄米黒酢」には、次の割合で各成分を含有するものであることが示されている。 [図:0001398247000005.jpg] しかしながら、甲第B1-3号証の試験結果報告書には、試験者が誰か、どこで実施したのかが明記されていないから、この点で試験結果報告書の信憑性に疑義があるものといえる。 また仮に、試験結果そのものが正しいものであるとしても、試験に用いたとされる製品は、次に示すとおり、 「 [図:0001398247000006.jpg] 」であり、その残存量からみて、すでに開封された製品であって、測定日が賞味期限から大きく経過した(おおむね1年半)ものであって、当該試験品がどのような状態で保管されていたものであるのかも明らかではない。 通常、醸造物や香気成分なの揮発物を含む試験品の場合、時間の経過とともにその組成は変化するものであることを考慮するならば、甲第B1-3号証に示される試験結果が、甲第B1-1号証の組成を示すものであるとは直ちにはいえない。 してみると、甲B1-1発明が、相違点B1-1に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものであるとはいえないから、本件特許発明1は、甲B1-1発明ではないし、甲B1-1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。 なお、特許異議申立人Bは意見書において、賞味期限が切れたからといって、すぐに使えなくなるものではないこと(甲第B24号証)などをあげ、本件特許発明1は、甲B1-1発明であるから、そうではないとしても甲B1-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである旨主張するが、食品として使用できるかどうかと、その組成が変化しているかどうかは別の問題である。そして、組成については上記のとおり判断されるから、特許異議申立人Bの当該主張は採用しない。 (ウ) 本件特許発明2、3及び9について 本件特許発明2、3及び9と甲B1-1発明とを対比すると、いずれも、少なくとも2-フェニル-2-ブテナール、フェネチルアルコール、アセトインの含有割合の点で相違するものであり、上記(イ)の場合と同様に判断される。 よって、本件特許発明2、3及び9は、甲B1-1発明ではなく、また、甲B1-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (エ) 本件特許発明4、5及び10ないし12について 本件特許発明4、5及び10ないし12はいずれも、本件特許発明1ないし3のいずれかの全ての特定事項を有するものである。 そして、本件特許発明1ないし3は、いずれも甲B1-1発明ではなく、また、甲B1-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1ないし3のいずれかの全ての特定事項を有するものである本件特許発明4、5及び10ないし12も、甲B1-1発明ではなく、また、甲B1-1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 取消理由1-3及び2-3についてのまとめ 上記イのとおりであるから、取消理由1-3及び2-3は、その理由がない。 (4) 取消理由1-4及び2-4(甲第B3号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について ア 主な証拠の記載事項等 (ア) 甲第B3号証の記載事項 甲第B3号証には、「プリプリ水餃子の黒酢サラダ」に関し、次の記載がある。 「 [図:0001398247000007.jpg] 」 (イ) 甲第B3号証に記載された発明 上記(ア)の記載、特に「黒酢ドレッシング」の記載を中心にまとめると、甲第B3号証には次の発明が記載されていると認める。 「シエロエクストラバージンオイル 大さじ3、りんご(すりおろし) 1/2コ、鎮江香醋(黒酢) 大さじ3、濃口醤油 大さじ2、ハチミツ 小さじ2、レモン果汁 大さじ1、からなる黒酢ドレッシング。」(以下、「甲B3発明」という。) イ 対比・判断 (ア) 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲B3発明とを対比すると、甲B3発明の「黒酢ドレッシング」は、本件特許発明1の「醸造産物を含む液体調味料(但し酒類を除く)」にあたる。 してみると、両者は、 「醸造産物を含む液体調味料(但し酒類を除く)。」 の点で一致し、次の点で一応相違する。 (相違点B3) 調味料に関し、本件特許発明1は「2-フェニル-2-ブテナールを0.00001質量ppm以上10質量ppm以下の範囲で含有し;フェネチルアルコールを31.33質量ppm以上300質量ppm以下の範囲で含有し;かつ、アセトインを1.46質量ppm以上200質量ppm以下の範囲で含有する;」と特定するのに対し、甲B3発明にはそのような特定がない点。 上記相違点B3について検討する。 甲B3発明の黒酢ドレッシングについて、甲第B9号証ないし甲第B12号証にしたがい、レシピ中の原料の配合割合を計算すると、次のように算出される。 [図:0001398247000008.jpg] 次に、これらに含まれる各香気成分の含有量について計算する。 鎮江香酢は、甲第A8号証(甲第B2号証)の「鎮江香酢(ZAV)」の記載から、2-フェニル-2-ブテナールを0.21141ppm、フェネチルアルコールを1.45612ppm、アセトインを0.22781ppm含有する。 市販の醤油は、本件明細書の表23によると、フェネチルアルコールを19.07ppm、アセトインを9.24ppm含有する。 ハチミツは、甲第B13号証によると、ジアセチルが平均して0.238ppm含む。 これらの点を踏まえ、配合割合を乗じて算出すると、鎮江香酢、醤油はちみつ及びこれらの合計としての黒酢ドレッシング(下記表における「合計」欄)の各成分は次のとおり算出される。 [図:0001398247000009.jpg] すると、相違点B3は実質的な相違点であるから、本件特許発明1は、甲B3発明ではない。 また、甲B3発明において、フェネチルアルコールやアセトインの含有割合を変更する動機付けもないから、甲B3発明において、相違点B3に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは当業者が容易になし得たことではない。 なお、特許異議申立人Bは意見書において、訂正により各成分の数値が変更されても、明細書の好ましいとされる範囲内であるから、依然として進歩性を欠くものである旨主張するが、そもそも、甲B3発明において、各成分の割合を変更する動機付けそのものがないから、特許異議申立人Bの当該主張は採用しない。 したがって、本件特許発明1は、甲B3発明ではなく、また、甲B3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (イ) 本件特許発明2、3及び9について 本件特許発明2、3及び9と甲B3発明とを対比すると、いずれも、少なくともフェネチルアルコール、アセトインの含有割合の点で相違するものであり、上記(ア)の場合と同様に判断される。 よって、本件特許発明2、3及び9は、甲B3発明ではなく、また、甲B3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (ウ) 本件特許発明4、5及び10ないし12について 本件特許発明4、5及び10ないし12はいずれも、本件特許発明1ないし3のいずれかの全ての特定事項を有するものである。 そして、本件特許発明1ないし3は、いずれも甲B3発明ではなく、また、甲B3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明1ないし3のいずれかの全ての特定事項を有するものである本件特許発明4、5及び10ないし12も、甲B3発明ではなく、また、甲B3発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 取消理由1-4及び2-4についてのまとめ 上記イのとおりであるから、取消理由1-4及び2-4は、その理由がない。 2 令和4年8月4日付けの取消理由で採用しなかった特許異議申立理由についての判断 令和4年8月4日付けの取消理由で採用しなかった特許異議申立理由は次のとおりである。 ・申立理由A1-1のうち、甲第A4号証ないし甲第A6号証をそれぞれ主たる証拠とする理由 ・申立理由A1-1のうち、甲第A9号証を主たる証拠とする理由の請求項3に係る部分 ・申立理由A1-2のうち、甲第A7号証を主たる証拠とする理由 ・申立理由A1-2のうち、甲第A8号証を主たる証拠とする理由の請求項5に係る部分 ・申立理由A2-1 ・申立理由A2-2のうち、甲第A5号証及び甲第A6号証をそれぞれ主たる証拠とする理由 ・申立理由A2-2のうち、甲第A9号証を主たる証拠とする理由の請求項3に係る部分 ・申立理由A2-3のうち、甲第A7号証を主たる証拠とする理由 ・申立理由A2-3のうち、甲第A8号証を主たる証拠とする理由の請求項5に係る部分 ・申立理由A2-4 ・申立理由B1ないしB3 ・申立理由B4のうち、甲第B1-1号証を主たる証拠とする理由 ・申立理由B4のうち、甲第B2号証を主たる証拠とする理由の請求項2、5及び6に係る部分 ・申立理由B4のうち、甲第B3号証を主たる証拠とする理由の請求項6に係る部分 ・申立理由B4のうち、甲第B4号証を主たる証拠とする部分 ・申立理由B5のうち、甲第B1-1号証を主たる証拠とする理由 ・申立理由B5のうち、甲第B2号証を主たる証拠とする理由の請求項2、5及び6に係る部分 ・申立理由B5のうち、甲第B3号証を主たる証拠とする理由の請求項6に係る部分 ・申立理由B5のうち、甲第B4号証を主たる証拠とする部分 以下に述べるように、上記の特許異議申立理由は、何れもその理由がないものと判断する。 (1) 申立理由A1-1、申立理由A1-2、申立理由A2-1、申立理由A2-2及び申立理由A2-3のうち、甲第A4号証ないし甲第A7号証を主たる証拠とする新規性・進歩性について ア 本件特許発明1ないし5及び9ないし12について 甲第A4号証及び甲第A5号証は味噌に関するもの、甲第A6号証及び甲第A7号証は醤油に関するものであって、何れも2-フェニル-2-ブテナール、フェネチルアルコール、アセトインを含むことの記載はあるものの、少なくとも、2-フェニル-2-ブテナール、フェネチルアルコール、アセトインを本件特許発明1ないし5及び9ないし12において特定される割合で含む点についての記載はない。 よって、本件特許発明1ないし5、9及び10は、甲第A4号証ないし甲第A7号証の何れにも記載された発明ではない。 また、甲第A4号証ないし甲第A7号証には、これらの3成分について、本件特許発明1ないし5及び9ないし12において特定される割合に調整する動機付けもない。 そして、本件特許発明1ないし5及び9ないし12は、当該特定事項を満たすことにより、「食品の好ましい後味(呈味全体及び/又はうま味)の余韻自体を持続・延長し(味伸び)、より続けて、より満足感のあるものとして摂食できる、特定の香気成分を含有する食品及びその製造方法を提供」するとの格別の効果を有するものである。 よって、本件特許発明1ないし5及び9ないし12は、甲第A4号証ないし甲第A7号証にそれぞれ記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明6について 甲第A4号証及び甲第A5号証の何れからも、「醸造産物を含む旨味の後味の余韻を持続・延長する方法」に対応する発明を認定することができない。 よって、本件特許発明6は甲第A4号証あるいは甲第A5号証に記載された発明ではなく、甲第A4号証あるいは甲第A5号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができものでもない。 ウ 申立理由A1-1、申立理由A1-2、申立理由A2-1、申立理由A2-2及び申立理由A2-3のうち、甲第A4号証ないし甲第A7号証を主たる証拠とする新規性・進歩性についてのまとめ 上記ア及びイのとおりであるから、甲第A4号証ないし甲第A7号証を主たる証拠とする申立理由A1-1、申立理由A1-2、申立理由A2-1、申立理由A2-2及び申立理由A2-3は、その理由がない。 (2) 申立理由A1-1及び申立理由A2-2のうち、甲第A9号証を主たる証拠とするものであって、請求項3に係る部分に対する新規性・進歩性について ア 本件特許発明3について 本件特許発明3と甲A9発明とを対比すると、両者は少なくとも液体か否か、及び、フェネチルアルコールの含有割合とアセトインの含有割合の点で相違するものであり、上記1(2)イ(ア)の場合と同様に判断される。 よって、本件特許発明3は、甲A9発明ではなく、また、甲A9発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 申立理由A1-1及び申立理由A2-2のうち、甲第A9号証を主たる証拠とするものであって、請求項3に係る部分に対する新規性・進歩性についてのまとめ 上記アのとおりであるから、甲第A9号証を主たる証拠とするものであって、請求項3に係る部分に対する申立理由A1-1及び申立理由A2-2は、その理由がない。 (3) 申立理由A1-2、申立理由A2-3、申立理由B4及び申立理由B5のうち、甲第A8号証(甲第B2号証)を主たる証拠とするものであって、請求項2、5及び6に係る部分に対する新規性・進歩性について ア 本件特許発明2ついて 本件特許発明2と甲A8発明とを対比すると、両者は少なくともフェネチルアルコールの含有割合とアセトインの含有割合の点で相違するものであり、上記1(1)イ(ア)の場合と同様に判断される。 よって、本件特許発明2は、甲A8発明ではなく、また、甲A8発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件特許発明5について 本件特許発明5、本件特許発明2の全ての特定事項を有するものである。 そして、本件特許発明2は、甲A8発明ではなく、また、甲A8発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2の全ての特定事項を有するものである本件特許発明5も、甲A8発明ではなく、また、甲A8発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ 本件特許発明6について 甲第A8号証から、「醸造産物を含む旨味の後味の余韻を持続・延長する方法」に対応する発明を認定することができない。 よって、本件特許発明6は甲第A8号証に記載された発明ではなく、甲第A8号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができものでもない。 エ 申立理由A1-2、申立理由A2-3、申立理由B4及び申立理由B5のうち、甲第A8号証(甲第B2号証)を主たる証拠とするものであって、請求項2、5及び6に係る部分に対する新規性・進歩性についてのまとめ 上記アないしウのとおりであるから、甲第A8号証(甲第B2号証)を主たる証拠とするものであって、請求項2、5及び6に係る部分に対する申立理由A1-2、申立理由A2-3、申立理由B4及び申立理由B5は、その理由がない。 (4) 申立理由A2-4(甲第A10号証を主たる証拠とする進歩性)について ア 本件特許発明6について 甲第A10号証から、「醸造産物を含む旨味の後味の余韻を持続・延長する方法」に対応する発明を認定することができない。 よって、本件特許発明6は甲第A10号証に記載された発明ではなく、甲第A10号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができものでもない。 イ 申立理由A2-4についてのまとめ 上記アのとおりであるから、申立理由A2-4は、その理由がない。 (5) 申立理由B4及び申立理由B5のうち、甲第B1-1号証を主たる根拠とする新規性(文献公知)・進歩性について ア 甲第B1-1号証が特許法第29条第1項第3号で規定するところの公知の刊行物にあたるか否かについて 甲第B1-1号証は、2022年3月17日に出力されたものであり、本件特許の出願日(令和3年(2021年)1月25日)よりも後であるから、特許法第29条第1項第3号で規定するところの公知の刊行物にはあたらない。 よって、甲第B1-1号証が、特許法第29条第1項第3号で規定するところの公知の刊行物であることを前提とする申立理由B4さらには申立理由B5は、その根拠がない。 なお、甲第B1-1号証に示される製品が、本件特許の出願前において、公知あるいは公然実施されていたものであることを前提とする検討は、上記1(3)のとおりである。 イ 申立理由B4及び申立理由B5のうち、甲第B1-1号証を主たる根拠とする新規性(文献公知)・進歩性についてのまとめ 上記アのとおりであるから、甲第B1-1号証を主たる根拠とする申立理由B4及び申立理由B5は、その理由がない。 (7) 申立理由B4及び申立理由B5のうち、甲第B3号証を主たる証拠とするものであって、請求項6に係る部分に対する新規性・進歩性について ア 本件特許発明6について 甲第B3号証から、「醸造産物を含む旨味の後味の余韻を持続・延長する方法」に対応する発明を認定することができない。 よって、本件特許発明6は甲第B3号証に記載された発明ではなく、甲第B3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができものでもない。 イ 申立理由B4及び申立理由B5のうち、甲第B3号証を主たる証拠とするものであって、請求項6に係る部分に対する新規性・進歩性についてのまとめ 上記アのとおりであるから、甲第B3号証を主たる証拠とするものであって、請求項6に係る部分に対する申立理由B4及び申立理由B5は、その理由がない。 (8) 申立理由B4及び申立理由B5のうち、甲第B4号証を主たる証拠とする新規性・進歩性について ア 本件特許発明1ないし5及び9ないし12について 甲第B4号証は、「魚節フレーバー組成物および該フレーバー組成物を含有する食品類」に関するものであって、2-フェニル-2-ブテナール、フェネチルアルコールを含むことの記載はあるものの、アセトインを含むことは記載されておらず、さらに、2-フェニル-2-ブテナール、フェネチルアルコール、アセトインを本件特許発明1ないし5及び9ないし12において特定される割合で含む点についての記載がない点で、本件特許発明1ないし5及び9ないし12とは少なくとも相違する。 よって、本件特許発明1ないし5及び9ないし12は、甲第B4号証に記載された発明ではない。 また、甲第B4号証には、これらの3成分について、本件特許発明1ないし5及び9ないし12において特定される割合に調整する動機付けもない。 そして、本件特許発明1ないし5及び9ないし12は、当該特定事項を満たすことにより、「食品の好ましい後味(呈味全体及び/又はうま味)の余韻自体を持続・延長し(味伸び)、より続けて、より満足感のあるものとして摂食できる、特定の香気成分を含有する食品及びその製造方法を提供」するとの格別の効果を有するものである。 よって、本件特許発明1ないし5及び9ないし12は、甲第B4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明6について 甲第B4号証の記載から、「醸造産物を含む旨味の後味の余韻を持続・延長する方法」に対応する発明を認定することができない。 よって、本件特許発明6は甲第B4号証に記載された発明ではなく、甲第B4号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができものでもない。 ウ 申立理由B4及び申立理由B5のうち、甲第B4号証を主たる証拠とする新規性・進歩性についてのまとめ 上記ア及びイのとおりであるから、甲第B4号証を主たる証拠とする申立理由B4及び申立理由B5は、その理由がない。 (9) 申立理由B1(明確性)について ア 明確性の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 イ 明確性についての判断 本件特許の請求項1ないし6及び9ないし12は、第3に記載のとおりであって、その内容は明確である。 ウ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは、要するに、「調味料」の外縁が明確でない旨主張する。 しかしながら、「調味料」とは、調味に使う材料であることは明らかであり、広く一般に認識されているものであるから、「調味料」の外縁が明確でないとする特許異議申立人Bの主張は採用できない。 エ 申立理由B1についてのまとめ 上記イ及びウのとおりであるから、申立理由B1は、その理由がない。 (10) 申立理由B2(サポート要件)について ア サポート要件についての判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 イ サポート要件についての判断 本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、明細書の発明の詳細な説明の【0010】の記載からみて、「飲食品において、呈味全体やうま味といった好ましい味について後味の余韻自体を持続・延長させる」ことである。 そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、発酵調味料等の醸造産物に関し、本件特許発明の食品が酵母発酵産物であり、前記2-フェニル-2-ブテナールの含有量の調節が酵母発酵を介して実施される態様であることが好ましい旨の記載(【0019】)、「うま味」、「後味」、「余韻」についての記載(【0022】ないし【0025】)、「2-フェニル-2-ブテナール」の添加割合とその効果に関する記載(【0027】)、食品の製造方法に関する記載(【0043】ないし【0050】)、本件特許発明の効果を奏する条件に調製する方法に関する記載(【0051】)があり、具体的な実施例等の記載もある。 してみれば、これらの記載に接した当業者であれば、醸造産物を含む調味料において、「2-フェニル-2-ブテナール」の含有割合を特定の範囲とする、との特定事項を有することにより、発明の課題を解決できると認識できる。 そして、本件特許発明は、上記の発明の課題を解決できると認識できる全ての特定事項を有し、さらに限定するものであるから、当然に発明の課題を解決できると認識できる。 したがって、本件特許発明に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。 ウ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは、要するに、官能評価基準が曖昧であること、ジアセチルが必須であること、醸造産物の種類によって香気成分は大きく異なるものであり、特定成分だけでは発明の課題を解決できるとはいえないことなどを主張する。 しかしながら、本件特許発明が発明の課題を解決できると認識できるものであることは、上記イのとおりであり、特許異議申立人の当該主張は何れも上記判断には影響しない。 エ 申立理由B2についてのまとめ 上記イ及びウのとおりであるから、申立理由B2は、その理由がない。 (11) 申立理由B3(実施可能要件)について ア 実施可能要件についての判断基準 本件特許発明1ないし3及び9は、上記第3のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、例えば、発明の詳細な説明にその物を生産することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産することができるのであれば、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たすと言うことができる。 また、本件特許発明4、5及び10ないし12は、上記第3のとおり、「製造方法」あるいは「調整する工程を含む方法」の発明、すなわち、「物を生産する方法」の発明であるところ、物を生産する方法の発明における実施とは、その物を生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(同法同条同項第3号)、例えば、発明の詳細な説明にその物を生産する方法を使用することができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができるのであれば、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を満たすと言うことができる。 さらに、本件特許発明6は、上記第3のとおり「方法」の発明であるところ、方法の発明における実施とは、その方法の使用をする行為をいうから(同法同条同甲第2号)、方法の発明について、例えば、発明の詳細な説明にその方法を使用することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその方法を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。 イ 実施可能要件についての判断 本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、発酵調味料等の醸造産物に関し、本件特許発明の食品が酵母発酵産物であり、前記2-フェニル-2-ブテナールの含有量の調節が酵母発酵を介して実施される態様であることが好ましい旨の記載(【0019】)、「うま味」、「後味」、「余韻」についての記載(【0022】ないし【0025】)、「2-フェニル-2-ブテナール」、「フェネチルアセテート」、「アセトイン」及び「ジアセチル」の添加割合とその効果に関する記載(【0027】ないし【0030】)、食品の製造方法に関する記載(【0043】ないし【0050】)、本件特許発明の効果を奏する条件に調製する方法に関する記載(【0051】)があり、具体的な実施例等の記載もある。 してみれば、本件特許の明細書の発明の詳細な説明は、本件特許発明1ないし6及び9ないし12に関し、実施できる程度に記載されているものであり、実施可能要件を満たしている。 ウ 特許異議申立人Bの主張について 特許異議申立人Bは、醸造産物や調味料の種類、ジアセチルの有無などをあげつつ、効果の発現に影響があるものとし、実施可能要件を満たさない旨主張するが、実施可能要件は、本件特許発明が実施できる程度に記載しているか否かであり、特許異議申立人Bの上記主張はその判断に影響しない。 エ 申立理由B3についてのまとめ 上記イ及びウのとおりであるから、申立理由B3は、その理由がない。 第7 結語 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし6及び9ないし12に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし6及び9ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項7及び8に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、特許異議申立人A及びBによる特許異議の申立てについて、請求項7及び8に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2022-700296

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  • 2022-700476異議申立 / 2023-08-03 / 訂正認容酢酸含有調味液
    同じ当事者: 株式会社Mizkan、株式会社Mizkan Holdings、森田 弘潤
  • 2022-700097異議申立 / 2023-06-08 / 訂正認容酢酸含有飲食品
    同じ当事者: 株式会社Mizkan、株式会社Mizkan Holdings、森田 弘潤
  • 2022-700221異議申立 / 2023-03-10 / 訂正認容酢酸含有飲食品
    同じ当事者: 株式会社Mizkan、株式会社Mizkan Holdings、森田 弘潤
  • 2021-701192異議申立 / 2022-10-21 / 維持ごま含有液状調味料及びごま含有液状調味料のごま風味を向上させる方法
    同じ当事者: 株式会社Mizkan、株式会社Mizkan Holdings、森田 弘潤
  • 2021-700992異議申立 / 2022-06-10 / 維持酢酸含有飲食品
    同じ当事者: 株式会社Mizkan、株式会社Mizkan Holdings、森田 弘潤
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,160件(111・A23L、112・A23L、113・A23L ほか)
  • 2021-700650異議申立 / 2021-12-02 / 維持容器詰調味用組成物及びその使用並びに容器詰加工食品
    共通の審決分類: 112・A23L、113・A23L、121・A23L、536・A23L ほか1件
  • 2018-700945異議申立 / 2020-06-04 / 訂正認容具材入り液状調味料
    共通の審決分類: 112・A23L、113・A23L、121・A23L、536・A23L ほか1件
  • 2018-700905異議申立 / 2019-03-15 / 維持食物繊維
    共通の審決分類: 112・A23L、113・A23L、121・A23L、536・A23L ほか1件
  • 2017-701213異議申立 / 2018-06-01 / 維持柑橘類果実様飲料及びその製造方法
    共通の審決分類: 112・A23L、113・A23L、121・A23L、536・A23L ほか1件
  • 2017-700278異議申立 / 2017-12-15 / 訂正認容煮込料理用調味料、煮込調理方法、加熱料理用調味料
    共通の審決分類: 112・A23L、113・A23L、121・A23L、536・A23L ほか1件

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