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特許異議申立

2022-700654

免疫賦活用組成物、風邪様症状予防剤、及びウイルス感染予防剤

審判番号
2022-700654
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-110217外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6999061
請求日
2022年07月15日
審決日
2023年05月16日
公報発行日
2023年08月25日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法114条4項
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第114条第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6999061号発明「免疫賦活用組成物、風邪様症状予防剤、及びウイルス感染予防剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論
特許第6999061号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1、2〕、3、4について訂正することを認める。
特許第6999061号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

目次 ▾ 16項目
理 由

第1 手続の経緯

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特許第6999061号の請求項1~4に係る特許(以下「本件特許」ということがある。)についての出願は、令和3年7月1日に出願され、同年12月23日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月18日に特許掲載公報が発行された。その後の手続は以下のとおりである。

令和4年 7月15日 特許異議申立人 山本新(以下「申立人」と

いう。)より特許異議の申立て

同年11月11日付け 取消理由通知

令和5年 1月16日 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出

(受付日:同年1月17日)

同年 2月24日差出 申立人による意見書の提出

第2 訂正請求について

1 訂正請求の趣旨及び訂正の内容

令和5年1月16日提出の訂正請求書により特許権者が請求する訂正(以下「本件訂正」ともいう。)は、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4について訂正することを求めるものである。

その請求の内容は、請求項1及び2からなる一群の請求項、並びに、請求項3及び4に係る訂正であって、以下のとおりのものである。

訂正事項1

特許請求の範囲の請求項1、3、及び4に、「20μg/mLの前記エンテロコッカス・フェカリス菌と5×105個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養すること」と記載されているのを、「終濃度が20μg/mLの前記エンテロコッカス・フェカリス菌の乾燥物と、マウスの骨髄から回収して100ng/mL Flt3-Lを含む細胞培養培地で7日間培養して得られる、プラズマサイトイド樹状細胞を含む、終濃度が5×105個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを48時間共培養すること」に訂正する。

請求項1を引用する請求項2についても、同様に訂正する。

訂正事項2

特許請求の範囲の請求項1、3、及び4に、「50pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能」と記載されているのを、「250pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能」に訂正する。

請求項1を引用する請求項2についても、同様に訂正する。

訂正事項3

特許請求の範囲の請求項1に、「免疫賦活用組成物」と記載されているのを、「プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生による免疫賦活用組成物」に訂正する。

請求項1を引用する請求項2についても、同様に訂正する。

訂正事項4

特許請求の範囲の請求項3に、「風邪様症状予防剤」と記載されているのを、「プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生による風邪様症状予防剤」に訂正する。

訂正事項5

特許請求の範囲の請求項4に、「ウイルス感染予防剤」と記載されているのを、「プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生によるウイルス感染予防剤」に訂正する。

2 訂正の適否の判断

本件特許異議申立事件においては、訂正前の全ての請求項である請求項1~4に対し特許異議の申立てがされているから、訂正事項1~5による訂正について、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。

(1)訂正事項1について

ア 訂正の目的について

訂正事項1による訂正は、訂正前の請求項1、3及び4におけるエンテロコッカス・フェカリス菌と骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することに関し、共培養におけるエンテロコッカス・フェカリス菌が乾燥物であること、20μg/mLという濃度が前記エンテロコッカス・フェカリス菌の乾燥物の共培養における終濃度であることを特定するものであり、また、共培養における骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞が、マウスの骨髄から回収して100ng/mL Flt3-Lを含む細胞培養培地で7日間培養して得られるものであること、5×105個/mLという濃度が前記骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞の共培養における終濃度であることを特定するものであり、さらに、共培養は48時間行われることを特定するものであって、特許請求の範囲を減縮するものであり、また、訂正前の共培養に用いるエンテロコッカス・フェカリス菌及び骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞、並びに、訂正前の共培養の条件について、これらを明確にするものでもある。

したがって、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、同ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の追加の有無について

本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」ともいう。下線は訂正の適否の判断に関係する事項について当審が付した。以下同様。)の【0034】には、本件特許の発明に用いるエンテロコッカス・フェカリス菌の形態に関し、「本発明におけるエンテロコッカス・フェカリス菌の形態は特に限定されず、培養物、培養濃縮物、乾燥物等であり得る。」と記載されており、また、【0059】には、プラズマサイトイド樹状細胞との共培養に使用した乳酸菌の形態について、「殺菌した菌体を凍結乾燥することで菌末を得た。」と記載されており、そして、【0061】には、骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞との共培養に使用した乳酸菌の濃度について、「培養開始から8日目に、細胞培養培地に懸濁した各菌末を添加し、骨髄細胞の終濃度を5×105個/mLに調整し、かつ乳酸菌の終濃度を20μg/mLに調整した。」と記載されている。

また、同【0061】には、乳酸菌との共培養に使用した骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞、及び、共培養の条件について、「マウス(C57BL/6JJmsSlc)の大腿骨から、常法に従って骨髄細胞を回収し、・・・得られた骨髄細胞を、細胞培養培地中に、1×106個/mLとなるように懸濁し、CO2インキュベーターで、5%CO2、37℃の培養条件で培養した。・・・培養開始から8日目に、細胞培養培地に懸濁した各菌末を添加し、骨髄細胞の終濃度を5×105個/mLに調整し、かつ乳酸菌の終濃度を20μg/mLに調整した。さらに、5%CO2、37℃で48時間培養後、培養上清を回収した。」と記載されており、また、【0062】には、「なお、細胞培養培地としては、RPMI-1640培地(Sigma-Aldrich)に、10% FCS(ウシ胎児血清、biowest)、10mM HEPES(Thermo Fisher SCIENTIFIC)、5,000IU/μg ペニシリン・ストレプトマイシン(Sigma-Aldrich)、50μM β-メルカプトエタノール(富士フイルム和光純薬株式会社)、及び、100ng/mL Flt3-L(Escherichia coliを用いた合成物、Miltenyi Biotec)を添加したものを使用した。」と記載されている。

以上によれば、訂正事項1に係る訂正は、本件明細書から導き出される事項である。

したがって、訂正事項1に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

訂正事項1は、上記のとおり、共培養に用いるエンテロコッカス・フェカリス菌及び骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞、並びに、共培養の条件を特定してより限定するものであり、請求項1、3及び4に記載された事項を限定するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(2)訂正事項2について

ア 訂正の目的について

訂正事項2による訂正は、訂正前の請求項1、3及び4におけるIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能の下限値について「50pg/mL以上の」とあったのを、「250pg/mL以上の」にさらに限定するものである。

したがって、訂正事項2による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の追加の有無について

本件明細書の【0023】には、エンテロコッカス・フェカリス菌と骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することによるIFN-αの産生量について、「20μg/mLのエンテロコッカス・フェカリス菌と5×105個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを共培養することによるIFN-αの産生量は高いほど好ましく、例えば、100pg/mL以上、150pg/mL以上、200pg/mL以上、250pg/mL以上、300pg/mL以上であってもよい。」と記載されており、訂正事項2に係る訂正は、本件明細書から導き出される事項である。

したがって、訂正事項2に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

訂正事項2は、上記のとおり、IFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能の下限値をより限定するものであり、請求項1、3及び4に記載された事項を限定するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

(3)訂正事項3~5について

ア 訂正の目的について

訂正事項3~5は、特許請求の範囲の請求項1、3及び4に記載の組成物又は剤の各用途である、免疫賦活、風邪様症状予防、ウイルス感染予防が、いずれも「プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生による」ものであること、すなわち、組成物又は剤がこれとは別の作用機序によりもたらされる免疫賦活等の用途のものではないことを特定するものである。

したがって、訂正事項3~5による訂正はいずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

イ 新規事項の追加の有無について

本件明細書の【0017】には、「本発明の免疫賦活用組成物は、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生によって免疫賦活作用をもたらす。」と記載されており、また、【0046】には、「本発明は、良好な免疫賦活効果を有するため、投与対象に免疫機能の改善をもたらし得る。例えば、本発明の免疫賦活用組成物は、風邪様症状予防剤や、ウイルス感染予防剤として機能し得るため、健康な体調の維持に役立てることができる。」と記載されており、訂正事項3~5に係る訂正はいずれも、本件明細書から導き出される事項である。

したがって、訂正事項3~5に係る訂正はいずれも、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について

訂正事項3~5はいずれも、上記のとおり、請求項1、3及び4に記載の組成物又は剤の各用途をより限定するものであり、請求項1、3及び4に記載された事項を限定するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

3 訂正請求についての結論

以上のとおり、本件訂正における訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするもの、及び、同ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。

また、本件訂正における訂正事項2~5による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

そして、本件訂正における訂正事項1~5はいずれも、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。

よって、本件特許の特許請求の範囲を、令和5年1月16日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3、4について訂正することを認める。

第3 本件訂正後の本件特許に係る発明

特許第6999061号の請求項1~4の特許に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(下線は本件訂正による訂正箇所を示すものである。)。

(以下、訂正前と訂正後のものと区別するために、訂正前の発明については請求項の番号の順に「本件発明1」等といい、また、これらをまとめて「本件発明」という場合があり、そして、訂正後の発明については、本件訂正による訂正後の請求項の番号の順に「本件訂正発明1」等といい、また、これらをまとめて「本件訂正発明」ということがある。)

「【請求項1】
エンテロコッカス・フェカリス菌であって、終濃度が20μg/mLの前記エンテロコッカス・フェカリス菌の乾燥物と、マウスの骨髄から回収して100ng/mL Flt3-Lを含む細胞培養培地で7日間培養して得られる、プラズマサイトイド樹状細胞を含む、終濃度が5×105個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを48時間共培養することで250pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するエンテロコッカス・フェカリス菌を含む、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生による免疫賦活用組成物(ただし、魚介類用のNBRC 3989発酵物含有免疫賦活剤を除く。)。
【請求項2】
分泌型IgAの産生促進用である、請求項1に記載の免疫賦活用組成物。
【請求項3】
エンテロコッカス・フェカリス菌であって、終濃度が20μg/mLの前記エンテロコッカス・フェカリス菌の乾燥物と、マウスの骨髄から回収して100ng/mL Flt3-Lを含む細胞培養培地で7日間培養して得られる、プラズマサイトイド樹状細胞を含む、終濃度が5×105個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを48時間共培養することで250pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するエンテロコッカス・フェカリス菌を含む、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生による風邪様症状予防剤。
【請求項4】
エンテロコッカス・フェカリス菌であって、終濃度が20μg/mLの前記エンテロコッカス・フェカリス菌の乾燥物と、マウスの骨髄から回収して100ng/mL Flt3-Lを含む細胞培養培地で7日間培養して得られる、プラズマサイトイド樹状細胞を含む、終濃度が5×105個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを48時間共培養することで250pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するエンテロコッカス・フェカリス菌を含む、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生によるウイルス感染予防剤(ただし、魚介類用のNBRC 3989発酵物含有免疫賦活剤を除く。)。」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について

訂正前の請求項1~4に係る特許に対して、当審が特許権者に令和4年11月11日付けで通知した取消理由の要旨は、以下のとおりである。

「1.(新規性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
2.(進歩性) 本件特許の下記の請求項に係る発明は、本件特許の出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
3.(明確性) 下記の請求項に係る本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。
<引用文献等一覧>
続きを表示(全17行)
1.特開平8-92112号公報
2.特開2004-41099号公報
3.特開2016-5452号公報(異議申立人の甲第1号証)
4.特許第6598824号公報(異議申立人の甲第13号証)
5.特開2013-193996号公報(異議申立人の甲第10号証)
6.特開2003-113114号公報(異議申立人の甲第11号証)
7.Poult. Sci., 2006, Vol.85, pp.273-277(異議申立人の甲第12号証)
8.J. Immun., 2003, Vol.171, pp.6466-6477(異議申立人の甲第2号証)
9.J. Exp. Med., 2013, Vol.210, No.11, pp.2151-2159(異議申立人の甲第3号証)
10.岩波 生化学辞典 第5版(2013年2月26日発行),第1037頁(異議申立人の甲第4号証)
11.ウイルス,2006,第56巻,第1号,pp.1-8(異議申立人の甲第5号証)
12.Annu. Rev. Immunol., 2011, Vol.29, pp.163-183(異議申立人の甲6第号証に対応するもの)
13.特開2018-16580号公報(異議申立人の甲第15号証)」

(以下、上記の引用文献について上記の番号の順に「引用文献1」等という。)

第5 取消理由についての当審の判断

当審は、令和4年11月11日付け取消理由通知書の取消理由1~3は理由がないと判断する。

1 取消理由3(明確性)について

事案に鑑み、まず、記載不備に係る取消理由3について検討する。

(1) 具体的な理由

以下のア~ウのとおり、請求項1、3及び4における記載では、組成物に含まれるエンテロコッカス・フェカリス菌を特定するために必要な、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を表す指標が明確でない。その結果、エンテロコッカス・フェカリス菌のうちのいずれが該当し又は該当しないのかを決定することができないから、本件の請求項1、3及び4に係る発明はいずれも明確でない。同様に、請求項1を引用する請求項2に係る発明も明確でない。

ア 「20μg/mLの前記エンテロコッカス・フェカリス菌」について:

請求項1、3及び4に記載されている「20μg/mL」というエンテロコッカス・フェカリス菌に係る上記の濃度について、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌してその用語の意義を解釈しようとしても、本件明細書の【0033】~【0035】に記載されているいずれのものに基づいて定まる濃度であるのか、当業者は理解することができない。

イ 「5×105個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞」について:

請求項1、3及び4には、「5×105個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞」との記載について、まず、「5×105個/mL」とは、プラズマサイトイド樹状細胞を含めた「骨髄細胞の濃度」を意味しているのか、それとも、骨髄細胞のうちに含まれている「プラズマサイトイド樹状細胞の濃度」を意味しているのか、当該記載からは直ちには把握することができない。

また、「骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞」について、プラズマサイトイド樹状細胞は骨髄細胞から産生誘導されてくるのであるから、細胞を骨髄から回収してから共培養を開始するまでの培養時間が異なれば、含まれるプラズマサイトイド樹状細胞の量(濃度)が異なること、また、特に、骨髄から回収した細胞の培養に使用する上記Flt3-Lは、プラズマサイトイド樹状細胞を誘導するためのサイトカインであるから、培養に用いるその濃度の違いで、骨髄細胞から産生誘導されるプラズマサイトイド樹状細胞の量(濃度)に差が生じることも、当業者の技術常識であるから、本件明細書の発明の詳細な説明に照らして、請求項1、3及び4における上記「5×105個/mL」との記載は、共培養におけるプラズマサイトイド樹状細胞を含む「骨髄細胞の終濃度」が「5×105個/mL」であることを意味しており、これをふまえて、請求項1、3及び4における上記「5×105個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞」との記載は、「終濃度が5×105個/mLである骨髄細胞であって、そのうちに含まれるプラズマサイトイド樹状細胞」を意味していると、一応解することができたとしても、共培養において使用される「プラズマサイトイド樹状細胞の量(濃度)」は、請求項1、3及び4における記載では、本件明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌しても、依然として定まらない。

ウ 「50pg/mL以上のIFN-αを産生する指標」について:

請求項1、3及び4には、「50pg/mL以上のIFN-αを産生する指標」との記載があるが、上記(1)及び(2)のとおり、当該指標に係る共培養において使用する、エンテロコッカス・フェカリス菌の濃度、及び、プラズマサイトイド樹状細胞の濃度が明確でない。

さらに、エンテロコッカス・フェカリス菌との共培養によって活性化されたプラズマサイトイド樹状細胞から産生される、共培養の培地に含まれるIFN-αの量は、共培養の初期では少なく、共培養の時間が経過すれば多くなることは当業者の技術常識であるところ、「50pg/mL以上」というIFN-αの濃度は、共培養のどの時点において測定されるものなのかも、請求項1、3及び4における記載からは不明である。

(2) 本件訂正発明1~4についての判断

令和5年1月16日提出の本件訂正により訂正された請求項1、3及び4における記載によって、組成物に含まれるエンテロコッカス・フェカリス菌を特定するために必要な、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を表す指標が明確となったので、訂正後の請求項1、3及び4に係る発明はいずれも明確となり、また同様に、訂正後の請求項1を引用する請求項2に係る発明も明確となったため、取消理由3は解消した。

(3) 小括

よって、本件訂正発明1~4に係る特許は、取消理由3によって取り消すべきものではない。

2 取消理由1(新規性)、取消理由2(進歩性)について

(1) 具体的な理由

ア 引用文献1を主引例とする場合

(ア) 本件発明1は引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性))

(イ) 本件発明2は、引用文献1に記載された発明に加え、引用文献1及び引用文献5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(取消理由2(進歩性))

(ウ) 本件発明3は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(取消理由2(進歩性))

(エ) 本件発明4は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(取消理由2(進歩性))

イ 引用文献2を主引例とする場合

(ア) 本件発明1は引用文献2に記載された発明であるか、引用文献2に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性))

(イ) 本件発明2は、引用文献2に記載された発明に加え、引用文献2及び引用文献5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(取消理由2(進歩性))

(ウ) 本件発明3は、引用文献2に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(取消理由2(進歩性))

(エ) 本件発明4は、引用文献2に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(取消理由2(進歩性))

ウ 引用文献3を主引例とする場合

(ア) 本件発明1は引用文献3に記載された発明であるか、引用文献3に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性))

(イ) 本件発明2は、引用文献3に記載された発明に加え、引用文献3及び引用文献5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(取消理由2(進歩性))

(ウ) 本件発明3は、引用文献3に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(取消理由2(進歩性))

(エ) 本件発明4は、引用文献3に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(取消理由2(進歩性))

エ 引用文献4を主引例とする場合

(ア) 本件発明1は、引用文献4に記載された発明に加え、引用文献4、3及び13に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性))

(イ) 本件発明2は、引用文献4に記載された発明に加え、引用文献4、3、5~7及び13に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(取消理由2(進歩性))

(ウ) 本件発明3も、本件発明1と同様に、引用文献4に記載された発明に加え、引用文献4、3及び13に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(取消理由2(進歩性))

(エ) 本件発明4も、本件発明1と同様に、引用文献4に記載された発明に加え、引用文献4、3及び13に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。(取消理由2(進歩性))

(2) 引用文献の記載事項

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引用文献1~13には以下の記載がある(下線は、各文献において元から付されていたものは削除した上で、当審があらためて付した。)。

ア 引用文献1(特開平8-92112号公報)の記載事項

(引1ア) 特許請求の範囲

「【特許請求の範囲】
【請求項1】 ・・・
【請求項2】 乳酸菌またはビフィドバクテリウム菌の菌体を細胞壁溶解酵素製剤・アクロモペプチダーゼ(登録商標)で処理して得られる多糖-グリカン複合体を有効成分とするサイトカイン産生促進剤。」

(引1イ) 【0003】~【0006】

「【0003】サイトカインのうち、TNFは単球やマクロファージから放出されるものであって、Meth A肉腫の出血性壊死を引き起こす因子であり、また、in vitroにおいて細胞増殖作用や抗ウイルス活性を示すことが知られている。
【0004】インターロイキン類としてはIL-1~IL-12の存在が知られている。そのうちIL-1は、感染、炎症、種々の免疫反応等に伴い、主として単球やマクロファージから産生される分子量17500のペプチドホルモンである。繊維芽細胞やアストロサイトあるいはメサンギウム細胞の増殖因子として作用するほか、滑膜細胞や血管内皮細胞からプロスタグランジンE 2(PGE2)の産生やコラゲナーゼの産生を誘導することによって炎症の進展にかかわっていることが知られている。また、ある種の腫瘍細胞の増殖を抑制したり、グラム陰性細菌の感染防御効果、放線菌に対する防御効果などが報告されている。
【0005】インターフェロン(INF)は、INF-α、INF-β、INF-γの三つが知られている。INF-γは分子量が約20,000の糖蛋白質であって、抗ウイルス作用等、幾つかの生物活性を有するが、中でも、生体免疫応答系に対する効果が顕著であり、マクロファージの活性化、ナチュラルキラー細胞の活性化、細胞障害性T細胞の分化誘導、B細胞の分化への影響など、主な免疫担当細胞のいずれもがINFに反応することから、INFの免疫調節因子としての重要性が認識されるようになった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、体内におけるTNF、インターロイキン、インターフェロン等、サイトカインの産生を促進し、その作用を増強させることによって、腫瘍や各種感染症の予防と治療を行う新規な手段を提供することにある。」

(引1ウ) 【0010】

「【0010】原料のグラム陽性菌としては、各種乳酸菌、ビフィドバクテリウム菌等、飲食物製造に使用されているものが、安全性と入手容易性の点で、最も適当である。その好ましい具体例としては、乳酸菌ではS.フェカリス、S.フェシウム、S.サーモフィラス、S.ラクチス、S.クレモリス等のストレプトコッカス属乳酸菌;L.ラクチス、L.ブルガリクス、L.ヘルベチクス、L.アシドフィルス、L.サリバリウス、L.カゼイ、L.ファーメンタム等のラクトバチルス属乳酸菌があり、ビフィドバクテリウム菌ではB.ロンガム、B.ビフィダム、B.ブレーベ、B.インファンティス、B.アドレセンティス、B.サーモフィラム等がある(注:S.はストレプトコッカス、Lはラクトバチルス、Bはビフィドバクテリウム)。」

(引1エ) 【0016】~【0020】

「【0016】
【実施例】
製造実施例
乳酸桿菌ラクトバチルス・カゼイ YIT-9018(FERM BP-665)の加熱死菌体1.5gを150mlの10mMトリス塩酸緩衝液(pH8.0)に懸濁させ、そこにアクロモペプチダーゼ(TBL-1)10万単位を加えて37℃で48時間インキュベートした。その後、1万回転で60分間遠心分離し、上清を採取してそれに10mgのデオキシリボヌクレアーゼおよびリボヌクレアーゼを加え、37℃で一夜インキュベートした。次いでエバポレーターを用いて濃縮し、得られた濃縮液を4℃で24時間、蒸留水にて透析後、透析内液を凍結乾燥することにより、目的とする多糖-グリカン複合体を得た。その多糖部分の分子量は約10万であった。
【0017】同様にして、ラクトバチルス・ファーメンタム YIT 0159(FERMBP-4748)、ビフィドバクテリウム・ブレーベ YIT4008(FERM BP-4538)およびストレプトコッカス・フェーカリス YIT2031(ATCC19433)の3菌体からも多糖-グリカン複合体を調製した。
【0018】試験例
上記製造実施例による多糖-グリカン複合体について、サイトカイン(TNF,IL-1,INF-γ)の産生促進作用を次の方法で試験した。
【0019】試験法:7週齢の雄性BALB/cマウス(1群6匹)の尾静脈より250μg/マウスの多糖-グリカン複合体を投与後、経時的に血清を採取し、Genzyme 社製測定キットを用い Enzyme-linked Immunosorbent Assay(ELISA)法により血清中のTNF-α、IL-1およびINF-γを定量する。多糖-グリカン複合体を投与しない正常BALB/cマウスの血清についても同様の分析を行い、そのときの定量値をnormal値とする。
【0020】試験結果を図1~図3に示す。3成分とも多糖-グリカン複合体を投与後ただちに産生量が増し、TNFは1時間後をピークとしてその後は徐々に減少した。IL-1の濃度は投与後3時間に、またINF-γの濃度は投与後6時間に、それぞれ最大になった。」

イ 引用文献2(特開2004-41099号公報)の記載事項

(引2ア) 特許請求の範囲

「【請求項1】
乳酸菌を、コーンスティープリカーとカゼインの加水分解物とを含有する培地を用いて培養することを特徴とする免疫賦活効果を有する乳酸菌の製造法。
・・・
【請求項6】
前記乳酸菌が乳酸球菌(Enterococcus faecalis)である、請求項1~5のいずれか一つに記載の免疫賦活効果を有する乳酸菌の製造法。
・・・
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の方法で得られた乳酸菌を有効成分として含有することを特徴とする免疫賦活剤。
・・・」

(引2イ) 【0025】、【0026】

「【0025】
本発明の培養方法において用いられる乳酸菌としては、例えば、Enterococcusfaecalis、Enterococcus faecium、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus casei、Lactobacillus lactis、Bifidobacterium Longum、Bifidobacterium breve、Streptococcus thermophilus等が好ましく挙げられるが、より強い免疫賦活効果を有するEnterococcus faecalis(ATCC 19433、ATCC 14508、ATCC 23655、IFO 16803等)が特に好ましい。
【0026】
本発明においては、乳酸菌の培養終了後、得られた培養物から乳酸菌の菌体を例えばろ過、遠心分離等の方法によって採取し、この菌体を加熱殺菌することが好ましい。これによって、食品や医薬品の原料として、より安全性の高い乳酸菌を提供することができ、しかも加熱殺菌により死菌体としても、免疫賦活効果が低下することはない。なお、殺菌した菌体は、乾燥、粉末化して食品や医薬品の原料として製品化することが好ましい。」

(引2ウ) 【0031】~【0047】

「【0031】
実施例
カゼイン200gを水2Lに懸濁し、苛性ソーダでpH10に調整した後、サモアーゼ(商品名、大成化成製)を1.0g添加して、70℃で4時間反応させた。その後、塩酸で反応液のpHを7.0に調整した後、パンチターゼNP-2(商品名、ヤクルト薬品工業製)を1.0g添加して、50℃で4時間反応させた。得られた反応液を加熱処理して酵素を失活させて、カゼイン加水分解液を得た。
【0032】
続きを表示(全40行)
20質量%CSL溶液0.25Lに対し、上記カゼイン加水分解液を0~0.75L(カゼイン加水分解物0~75g)加え、更に全量が1Lとなるようにイオン交換水を添加して、pH7.0に調整した後、オートクレーブ滅菌してカゼインの加水分解物の濃度の異なる培地をそれぞれ調製した。
【0033】
各培地に、乳酸菌(Enterococcus faecalis ATCC 19433)の前培養液を適量添加し、pHスタットを用いて、培養液のpHを7.0±0.1に苛性ソーダで調整しながら37℃で24時間培養を行なった。
【0034】
培養終了後、培養液を遠心して菌体を回収して水洗した後、水に懸濁し、80~115℃、30分~3秒間加熱処理し、凍結乾燥して加熱処理菌体を得た。
【0035】
そして、得られた各乳酸菌の加熱処理菌体を用いて、以下の方法により免疫賦活効果の測定を行なった。なお、免疫賦活効果は、IL-12の産生誘導能を指標にした。
【0036】
(1)マクロファージの調製
4~8週齢のICR系マウス(雄)の腹腔内に、1g/100mL濃度のグリセリン溶液を0.4mL/マウス注射して1晩飼育した後、頚椎脱臼によりマウスを屠殺し、腹腔内に冷却したPBSを5mL/マウス注射して腹部をよくもんだ後、腹腔内液(約4mL)を注射器で取り出し、シリコンコートしたスピッツ管に入れて冷却遠心機で1200rpm、5分間遠心した。
【0037】
そして、上清及び壁面の赤血球を除去した後、冷PBSを加えてピペッティングし、800rpm、5分間遠心分離して上清及び壁面の赤血球を除去した。この操作をさらに1回繰り返して、最後に1%FCS加ET-RPMI1640 Mediumu(インビトロジィエン社製、以下同じ)を1mL/マウス加えて細胞を懸濁した。この細胞懸濁液50μLにチェルク染色液50μLを加えて混合し、赤血球計算板にて生細胞数を数えた。そして、計算した生細胞数に基いて、細胞懸濁液に1%FCS加ET-RPMI1640 Mediumuを加えて細胞数が1×106/mLとなるように調整してマクロファージ液を得た。
【0038】
そして、96穴平底プレートに、上記マクロファージ液を200μL/穴ずつ入れ、1.5~5時間CO2インキュベーターで培養した。
【0039】
試薬
PBS:NaCl 80g、Na2HPO4・12H2O 29g、KCl 2g、KH2PO4 2gを蒸留水に溶解して1Lとし、オートクレーブで滅菌する。
【0040】
FCS(Fetal Calf Serum):冷凍保存してあるFCSを56℃ウォーターバスバスに40分間入れ非働化して、氷冷した後、70μmセルストレーナーに通し、滅菌容器に入れて冷蔵保存する。
【0041】
ET-RPMI1640 Mediumu:RPMI1640 31.2g、NaHCO3 3.75g、ペニシリンG-K(商品名、万有製薬製、100万単位) 0.18g、カナマイシン0.18gを、注射用水3Lに溶解して、CO2ガスを吹き込んだ後、0.45μmのフィルターで濾過する。
【0042】
チュルク染色液:0.01%ゲンチアナバイオレット水溶液:酢酸:水=1:1:98で混合し、冷蔵保存する。
【0043】
(2)菌体分散液の調製
各加熱処理菌体を1mg/mLとなるように5%FCS加ET-RPMI1640 Mediumuで調製した後、超音波処理を行い、菌体を分散させて菌体分散液を得た。この菌体分散液を5%FCS加ET-RPMI1640 Mediumuで100倍に希釈し、96穴U型プレートに250μL/穴入れ、CO2インキュベーターで1時間保温した。
【0044】
(3)IL-12の誘導
上記(1)のプレインキュベートした96穴平底プレートから上清を除去して、37℃に保温したPBSで2回洗浄した後、上記(2)のプレインキュベートした菌体分散液を200μL加えてCO2インキュベーターで正確に2時間培養してIL-12を誘導した。
【0045】
IL-12の測定は、マウスIL-12測定キット(商品名「Cytocreen」、BIO SOURCE INTERNATIONAL社製)を用いて行なった。その結果を表1に示す。
【0046】
【表1】
[図:0001400456000001.jpg]
【0047】
表1から、カゼイン加水分解物を含まないCSL培地で培養して得られた乳酸菌に比べて、カゼイン加水分解物を含むCSL培地で培養して得られた乳酸菌は、IL-12産生誘導能が非常に高いことが分かる。」

ウ 引用文献3(特開2016-5452号公報(異議申立人の甲第1号証))の記載事項

(引3ア) 特許請求の範囲

「【請求項1】
免疫賦活作用を有する乳酸菌及び多価アルコールと飽和脂肪酸のエステル結合物を有効成分として含む乳酸菌免疫賦活作用増強組成物を含む組成物。
・・・
【請求項9】
免疫賦活作用を有する乳酸菌がLactococcus garvieae(ラクトコッカス・ガルビエアエ)、Lactococcus lactis subsp.cremoris(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス)、Lactococcus lactis subsp.lactis(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス)、Lactococcus lactis subsp.hordniae (ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエ)、Leuconostoc lactis(ロイコノストック・ラクティス)、Pediococcus damnosus(ぺディオコッカス・ダムノーサス)、Streptococcus thermophilus(ストレプトコッカス・サーモフィラス)、Lactobacillus brevis subsp. coagulans(ラクトバチルス・ブレービス・サブスピーシーズ・コアギュランス)及びEnterococcus faecalis(エンテロコッカス・フェカリス)からなる群から選択される請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
・・・」

(引3イ) 【0028】

「【0028】
本発明の乳酸菌免疫賦活作用増強組成物により免疫賦活作用を増強される乳酸菌は、本発明の組成物が存在しない状態でも元々免疫賦活作用を有している乳酸菌である。ここで、免疫賦活作用を有しているとは、乳酸菌がin vitro及びin vivoで、インターフェロン産生細胞である免疫担当細胞に作用しインターフェロン産生を促進する活性を有していることをいう。免疫賦活作用をインターフェロン産生誘導作用と呼ぶこともある。免疫担当細胞としては、脾臓細胞や骨髄細胞が挙げられる。また、免疫担当細胞の中でも、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC: plasmacytoid dendrtic cell))が挙げられる。」

(引3ウ) 【0031】~【0035】

「【0031】
インターフェロン産生能を有する乳酸菌として、・・・Enterococcus属に属する乳酸球菌が挙げられる。
【0032】
これらの乳酸菌中には、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC: plasmacytoid dendritic cell)のインターフェロン産生を促進し得る乳酸菌が含まれるがこれには限定されない。
・・・
【0035】
また、Lactobacillus属に属する乳酸菌として、Lactobacillus brevis subsp. coagulans(ラクトバチルス・ブレービス・サブスピーシーズ・コアギュランス)(特開平6-206826号公報)が挙げられ、具体的な株としてLactobacillus brevis subsp. Coagulans KB290が挙げられる。また、Enterococcus属に属する乳酸菌として、Enterococcus faecalis(エンテロコッカス・フェカリス)が挙げられ、具体的な株としてEnterococcus faecalis NF-1011、Enterococcus faecalis FK-23、Enterococcus faecalis NTなどが挙げられる。」

(引3エ) 【0039】

「【0039】

本発明の乳酸菌免疫賦活作用増強組成物は、例えば、乳酸菌濃度1に対して、0.5~50の濃度で用いればよい。ここで乳酸菌濃度は乳酸菌重量(乾燥重量)/乳酸菌を含む液体の体積(w/v)で表し、乳酸菌の重量は乳酸菌懸濁液を遠心し、乳酸菌を沈殿後乾燥させた状態で測定すればよい。・・・)

(引3オ) 【0042】

「【0042】
免疫賦活作用が増強された乳酸菌は、腸管細胞、骨髄細胞や脾臓細胞等に含まれるINF産生細胞である免疫担当細胞に作用し、該細胞のインターフェロン産生を促進する。・・・その中でも特にType I インターフェロンその中でもとりわけインターフェロン-αの産生が促進される。・・・インターフェロン産生を促進することにより生体の免疫活性が上昇する。・・・さらに、本発明の乳酸菌免疫賦活作用増強組成物は、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC: plasmacytoid dendrtic cell)を活性化し得る。プラズマサイトイド樹状細胞が活性化されると、活性化樹状細胞の特徴である細胞突起が出現し、Type I インターフェロン及びType III インターフェロンを産生する。」

(引3カ) 【0047】、【0048】

「【0047】
また、本発明の乳酸菌免疫賦活作用増強組成物により免疫賦活作用が増強された乳酸菌は、飲食品に含ませて用いることもでき、飲食品に含ませることによってその飲食品をインターフェロン産生誘導用飲食品、免疫増強用飲食品、免疫賦活用飲食品、ウイルス感染防御用飲食品等として用いることができる。対象となる飲食品として、乳・乳製品;飲料;調味料;酒類;農産・林産加工食品;菓子・パン類;穀粉・麺類;水産加工品;畜産加工品;油脂・油脂加工品;調理冷凍食品;レトルト食品;インスタント食品;食品素材などが挙げられる。この中でも、ヨーグルト、チーズ等の発酵乳製品や乳酸菌飲料に用いることができる。発酵飲食品として用いる場合、免疫賦活作用を有する乳酸菌を発酵飲食品に死菌として所要量添加するほか、乳酸菌スターターとして用いて発酵飲食品を製造することもできる。
【0048】
本発明の飲食品は、健康飲食品、特定保健用飲食品、栄養機能飲食品、健康補助飲食品等を含む。ここで、特定保健用飲食品とは、食生活において特定の保健の目的で摂取をし、その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をする飲食品をいう。これらの飲食品には、例えば、体の免疫機能を増強する、体の免疫機能を賦活する、風邪をひきにくくする、インフルエンザウイルス、ノロウイルスあるいはロタウイルス等のウイルスに感染しにくくする、発がん予防に効果を有する等の表示が付されていてもよい。」

(引3キ) 【0053】、【0054】 (実施例1)

「【0053】
実施例1 免疫賦活作用増強剤のスクリーニング
<方法>
雌129/SVマウスの脾臓細胞を常法に従って回収し赤血球除去処理を行った。得られた脾臓細胞を10%FBS、50μM β-メルカプトエタノールを含有するRPMI培地(SIGMA社製)に、4×106個/mlとなるように懸濁した。得られた細胞懸濁液500μlに乳酸菌(JCM5805株)と図1に記載のサンプル(素材)の混合物を各5μlずつ添加しCO2インキュベータ内で37℃、5%CO2にて培養した。乳酸菌と図に記載の各サンプルの混合物は、乳酸菌0.1(w/v)%と各サンプル0.25(w/v)%を含む。24時間後に培養上清を回収しインターフェロン-α測定キット(PBL社製)にてインターフェロン-α濃度を測定した。
【0054】
<結果>
図1に結果を示す。JCM5805単独でインターフェロン-α誘導活性を示し、このインターフェロン-α誘導活性は乳化剤として用いられる多価アルコールと脂肪酸のエステル結合物を含む組成物であるポエムTRP-97RF(トリグリセリンモノパルミチン酸)、リョートーシュガーエステルP1670(ショ糖パルミチン酸エステル)及びポエムBS-20(コハク酸脂肪酸モノグリセリド)によって相乗的に高められた。一方、多糖類(GENUペクチン、ペクチンAYD30T、ユニペクチンAYD5110SB)では、インターフェロン-α誘導活性は高められなかった。この結果より、JCM5805株の免疫賦活作用が乳化剤として用いられる多価アルコールと脂肪酸のエステル結合物により高められることが分かった。」

(引3ク) 図1

「
[図:0001400456000002.jpg]
」

(引3ケ) 【0064】~【0066】 (実施例5)

「【0064】
実施例5 多価アルコールと脂肪酸のエステル結合物の種類の検証2
乳酸菌の免疫賦活作用を高めるエステル結合物を詳細に検証するために、単一成分であるショ糖パルミチン酸エステルを用いて多価アルコールと脂肪酸のエステル結合物の評価を行った。
【0065】
<方法>
雌129/SVマウスの骨髄細胞を常法に従って回収し赤血球除去処理を行った。得られた骨髄細胞を10%FBS、50μM β-メルカプトエタノール、100ng/ml Flt-3Lを含有するRPMI培地(SIGMA社製)に、5×105個/mlとなるように懸濁した。得られた細胞懸濁液を1mlずつ播種し、CO2インキュベータ内で37℃、5%CO2にて1週間培養して樹状細胞を誘導した。1週間培養後、播種された1ml細胞培養液中に乳酸菌(JCM5805株)と図5に記載のサンプルの混合物を各10μlずつ添加した。乳酸菌と図5に記載の各サンプルの混合物は、乳酸菌0.1(w/v)%と各サンプル0.25(w/v)%を含む。サンプルは乳酸菌のみ、ショ糖パルミチン酸エステル及びリョートーシュガーエステルP1670(主にショ糖パルミチン酸エステルを含む)(三菱化学フーズ株式会社)であった。24時間後に培養上清を回収しインターフェロン-α測定キット(PBL社製)にてインターフェロン-α濃度を測定した。
【0066】
<結果>
図5に結果を示す。0.1% JCM5805単独でインターフェロン-α誘導活性を示し、更にショ糖パルミチン酸エステルではリョートーシュガーエステルP1670と同程度までインターフェロン-α誘導活性が高められた。すなわち、エステル結合物として親水性部分がショ糖であり疎水性部分が飽和脂肪酸である単一成分でも乳酸菌の免疫賦活作用を高めることが示された。」

(引3コ) 図5

「
[図:0001400456000003.jpg]
」

(引3サ) 【0076】、【0077】 (実施例9)

「【0076】
実施例9 JCM5805株以外の乳酸菌に対する効果の検証
<方法>
実施例1に記載の方法により作製した細胞懸濁液500μlに乳酸菌と図10に記載のサンプルを各5μlずつ添加しCO2インキュベータ内で37℃、5% CO2にて培養した。24時間後に培養上清を回収しインターフェロン-α測定キット(PBL社製)にてインターフェロン-α濃度を測定した。すなわち、乳酸菌としてEnterococcus faecalis及びLactobacillus brevis subsp. coagulansに対するエステル結合物(リョートーシュガーエステルP1670(ショ糖パルミチン酸エステル)(三菱化学フーズ株式会社))の影響について検証した。
【0077】
<結果>
図10に結果を示す。Enterococcus faecalis及びLactobacillus brevis subsp. coagulansそれぞれ単独でインターフェロン-α誘導活性を示し(図10B及びD)、リョートーシュガーエステルP1670によってインターフェロン-α誘導活性が高められた(図10C及びE)。これより、多価アルコールと脂肪酸のエステル結合物によって免疫賦活作用が高められる乳酸菌として、JCM5805株に限定されないことが示された。」

(引3シ) 図10

「
[図:0001400456000004.jpg]
」

エ 引用文献4(特許第6598824号公報(異議申立人の甲第13号証))の記載事項

(引4ア) 特許請求の範囲

「【請求項1】
プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を活性化し、IFN-α産生を誘導し得る乳酸菌であり、10μg/mlで骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)培養に添加した場合に50pg/mL以上のIFN-α産生を誘導するLactococcus Lactis subsp. Lactisに分類される球菌である乳酸菌、又は核酸を含むその培養物若しくは処理物を有効成分として含む免疫賦活用食品組成物(基質にアルギニンとパラ・ニトロアニリド複合体(Arg-p-NA)を用いて細胞抽出液酵素活性測定に供したとき、活性が100(nmol p-NA released/min/mg protein)以上である、L-アルギニン遊離活性を有する微生物を含む場合を除く)。
【請求項2】
プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を活性化し、IFN-α産生を誘導し得る乳酸菌であり、10μg/mlで骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)培養に添加した場合に50pg/mL以上のIFN-α産生を誘導するLactococcus Lactis subsp. Lactisに分類される球菌である乳酸菌、又は核酸を含むその培養物若しくは処理物を有効成分として含むウイルス感染予防用食品組成物。
【請求項3】
プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)を活性化し、IFN-α産生を誘導し得る乳酸菌であり、10μg/mlで骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)培養に添加した場合に50pg/mL以上のIFN-α産生を誘導するLactococcus Lactis subsp. Lactisに分類される球菌である乳酸菌、又は核酸を含むその培養物若しくは処理物を有効成分として含むかぜ症状予防用食品組成物。
・・・」

(引4イ) 【0006】~【0007】

「【0006】
本発明は、乳酸菌を有効成分として含むIFN産生を誘導し得るIFN誘導剤、該誘導剤を含む免疫増強剤あるいはウイルス感染防御剤、該誘導剤を含むIFN誘導活性、免疫増強活性若しくはウイルス感染防御活性を有する飲食品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、pDCを活性化させることを指標として、アッセイ系を構築し、摂取することによりウイルス感染防御を増強する乳酸菌を選抜した。
【0008】
その結果、一部の乳酸球菌がpDCを活性化させ、該pDCからのインターフェロン産生を誘導することを見出した、さらに、一部の乳酸菌は経口投与しても生体内で効果を発揮し得ることを見出した。本発明者は、前記乳酸菌をIFN産生誘導剤として、さらに生体の免疫賦活作用によりウイルス感染成防御等に用い得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。」

(引4ウ) 【0025】

「【0025】
本願実施例に示すように、本願の特定の乳酸菌株を有効成分として含むIFN産生誘導剤は、in vitro及びin vivoにおいてpDCを活性化し、INF-α等のインターフェロンの産生を誘導し得る。生体内でインターフェロン産生を誘導する結果、生体の免疫を賦活し、ウイルス等の感染を防御し、ウイルス感染症を治療し得る。上記の乳酸菌を有効成分として含むIFN誘導剤は、免疫を賦活し、ウイルス感染症の予防又は治療に用い得る医薬として用いることができ、さらに免疫を賦活し、ウイルス感染の予防に有用な飲食品の成分として用いることができる。」

(引4エ) 【0029】~【0031】

「【0029】
本発明でIFN産生誘導剤として用い得る乳酸菌は、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC:plasmacytoid dendrtic cell)を活性化し、pDCのIFN産生を促進し得る乳酸菌である。・・・候補乳酸菌がこのような性質を有しているかどうかは、例えば、候補乳酸菌をマウス等の哺乳類の骨髄細胞の共存下で培養した場合に、pDCが活性化されて、IFNα、IFNβ等のIFNの産生が誘導されるかどうかを測定すればよい。IFNの測定は、例えば、培養液中のIFN濃度をELISA等により測定すればよい。本発明でIFN誘導剤として用い得る乳酸菌は、例えば、赤血球除去したマウス骨髄細胞を10%FCS、2μM β-メルカプトエタノールを含有するRPMI培地(SIGMA社製)に、5×105個/mLになるように縣濁し、得られた細胞懸濁液に、pDC誘導サイトカインとしてFlt-3Lを終濃度100ng/mlで添加し、CO2インキュベータ内で37℃、5%CO2にて培養し、7日後に乳酸菌株を10μg/mlで添加し、48時間後に培養上清を回収して、培養上清中のIFN-αをIFN-α測定キット(PBL社製)を用いてELISA法にて測定したときのIFN-α濃度が好ましくは50pg/ml以上、好ましくは100pg/ml以上である乳酸菌株である。
【0030】
プラズマサイトイド樹状細胞(pDC: plasmacytoid dendrtic cell))を活性化し、pDCのIFN産生を促進し得る乳酸菌として、好ましくは乳酸球菌が挙げられ、さらに好ましくは、Lactococcus(ラクトコッカス)属、Leuconostoc(ロイコノストック)属、Pediococcus(ぺディオコッカス)属、Streptococcus(ストレプトコッカス)属に属する乳酸球菌が挙げられる。特に、Lactococcus garvieae(ラクトコッカス・ガルビエアエ)、Lactococcus lactis subsp.cremoris(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス)、Lactococcus lactis subsp.lactis(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズラクティス)、Lactococcus lactis subsp.hordniae (ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ホールドニアエ)、Leuconostoc lactis(ロイコノストック・ラクティス)、Pediococcus damnosus(ぺディオコッカス・ダムノーサス)、Streptococcus thermophilus(ストレプトコッカス・サーモフィラス)が好ましい。
【0031】
このような、乳酸菌株として具体的には、Lactococcus garvieae NBRC100934、Lactococcus lactis subsp.cremoris JCM16167、Lactococcus lactis subsp.cremoris NBRC10066、Lactococcus lactis subsp.hordniae JCM1180、Lactococcus lactis subsp.hordniaeJCM11040、Lactococcus lactis subsp.lactis NBRC12007、Lactococcus lactis subsp.lactis NRIC1150、Lactococcus lactis subsp.lactis JCM5805、Lactococcus lactis subsp.lactis JCM20101、Leuconostoc lactis NBRC12455、Leuconostoc lactis NRIC1540、Pediococcus damnosus JCM5886、Streptococcus thermophilus TA-45が挙げられ、この中でも特にIFN-α産生誘導能が高いLactococcus lactis subsp.lactis JCM5805及びLactococcus lactis subsp.lactis JCM20101、特にLactococcus lactis JCM5805を好適に用いることができる。」

(引4オ) 【0034】

「【0034】
本発明のIFN産生誘導剤により、Type I IFN(I型インターフェロン)、Type II IFN(II型インターフェロン)、Type III IFN(III型インターフェロン)のいずれのIFNも誘導され得る。Type I IFNはウイルス感染に有効とされるサイトカインをいい、IFN-α(1、2、4、5、6、7、8、10、13、14、16、17、21)、IFN-β等が含まれる。・・・本発明のIFN産生誘導剤は、プラズマサイトイド樹状細胞(pDC: plasmacytoid dendrtic cell)を活性化する。プラズマサイトイド樹状細胞が活性化されると、活性化樹状細胞の特徴である細胞突起が出現し、Type I IFN及びType III IFNを産生する。この際、本発明のIFN産生誘導剤の有効成分である乳酸菌がpDCに取り込まれる。本発明のIFN産生誘導剤は、特に、Type I IFN及び Type III IFNの産生誘導能、その中でもとりわけType I IFNであるIFN-αの産生誘導能が大きい。・・・」

(引4カ) 【0040】

「【0040】
本発明のIFN産生誘導剤の有効成分として用い得る乳酸菌のIFN産生誘導活性は、候補菌株を培養し、その培養物の存在下でIFN産生細胞を培養し、IFN産生細胞のIFN産生量が上昇するかどうかを検定することにより、測定することができる。典型的には菌体を凍結乾燥したものを用いる。凍結乾燥物を菌体重量が0.1~5mg/mLになるように調製し、例えば、骨髄細胞と培養する。骨髄細胞の由来は問わないが、ヒト由来骨髄細胞、マウス等の非ヒト動物由来の骨髄細胞を用いることができる。用いた骨髄細胞において、pDCが活性化され、IFN産生が誘導された場合に、用いた乳酸菌株は本発明のIFN産生誘導剤の有効成分として用いることができると決定することができる。pDCの活性化は、例えばpDCの活性化マーカーを測定すればよく、活性化マーカーとして、CD80、CD86、MHC class IIが挙げられる。これらの活性化マーカーはこれらのマーカーに対する抗体を用いて細胞染色やフローサイトメーターを用いて測定することができる。また、IFNとしては、IFN-α、IFN-β等のType I IFN、IFN-γ等のType II IFN、IFN-λ等のType III IFNが挙げられるが、この中でもType I IFN、 Type III IFNが望ましく、さらにType I IFNが望ましく、特にIFN-αが望ましい。IFNの産生誘導は、上記培養系において培地中のIFN量を例えばELISAにより測定すればよい。」

(引4キ) 【0049】 (実施例1)

「【0049】
[実施例1]
試験乳酸菌株の調製
<実験方法>
図1A及び図1B、図1Cに記載された乳酸菌株の加熱死菌体を調製した。・・・乳酸菌株はMRS培地もしくはGAM培地もしくはLM17培地で30℃もしくは37℃で24~48時間、静置培養した。集菌後、滅菌水で3回洗浄し、100℃・30分オートクレーブすることにより、殺菌した。その後、菌体を凍結乾燥し、1mg/mlになるようにPBS(TAKARA BIO社製)で濃度を調整した。」

(引4ク) 【0050】~【0055】 (実施例2)

「【0050】
[実施例2]
IFN-α産生誘導能を有する乳酸菌株のスクリーニング
実施例1で調製した乳酸菌株のpDC活性化によるIFN-α産生誘導能を評価した。
続きを表示(全14行)
【0051】
<実験方法>
C57BL/6マウス骨髄細胞を大腿骨から常法に従って回収し、赤血球除去処理を行った。次に得られた骨髄細胞を、10%FCS、2μM β-メルカプトエタノールを含有するRPMI培地(SIGMA社製)に、5×105個/mLになるように縣濁した。得られた細胞懸濁液に、pDC誘導サイトカインとしてFlt-3L(R&D systems社製)を終濃度100ng/mlで添加し、CO2インキュベータ内で37℃、5%CO2にて培養した。7日後に各種乳酸菌株を10μg/mlで添加し、48時間後に培養上清を回収した。培養上清は、IFN-α測定キット(PBL社製)を用いてELISA法にて測定した。
【0052】
<結果>
ELISAでの確実なIFN-α産生があると見なすことのできる50pg/ml以上の誘導があった株を図2に示す。調べ125株のうち、わずか13株 (・・・)にしか活性は認められなかった。100pg/mlをクリアする株に至っては3株( ・・・ )しか存在しなかった。pDCに対するIFN-α産生誘導能は大半の菌株には存在せず、乳酸菌普遍的な活性ではないことが示された。
・・・
【0054】
また、以後の解析では特にIFN-α産生誘導能が顕著であったLactococcus lactis JCM5805、JCM20101及びネガティブコントロールとして桿菌であるLactobacillus rhamnosus ATCC53103の3株について行っていくこととした。
・・・」

(引4ケ) 【0059】~【0062】 (実施例4)

「【0059】
[実施例4]
IFN産生誘導能における乳酸菌の活性
IFN-α産生誘導能を有する乳酸菌の他のサイトカイン産生能についても検討を行った。
続きを表示(全11行)
【0060】
<実験方法>
Lactococcus lactis JCM5805、JCM20101及びLactobacillus rhamnosus ATCC53103死菌凍結乾燥菌体を10μg/ml、ポジティブコントロールとして既知TLRLであるPam3CSK4(=TLR2L:InvivoGen社製, 1μg/ml)、LPS(=TLR4L:SIGMA-ALDRICH社製, 5ng/ml)、CpG DNA(=TLR9L:InvivoGen社製, 0.1μM)を実施例2に記載のpDC/mDC培養系に添加し、48時間後の培養上清を回収した。培養上清は、IFN-α測定キット(PBL社製)、IFN-β測定キット(PBL社製)、IFN-γ測定キット(BD Pharmingen社製)、IL-28/IFN-λ測定キット(eBiosciencs社製)を用いてELISA法にて測定した。
【0061】
<結果>
結果を図5A~Dに示す。図5A、B、C及びDは、それぞれIFN-α、IFN-β、IFN-γ及びIFN-λの結果を示す。実施例2に記載の通り、IFN-α産生能はLactococcus lactis JCM5805、JCM20101で見られ、その力価はTLR9LであるCpG DNA (ODN 1585) 0.1μMと同程度であった。同じType I IFNであるIFN-βについてはLactococcus lactis JCM5805、JCM20101でのみ見られた。Type II IFNであるIFN-γについてはどの菌株でも程度の多少こそあれ産生誘導能が見られた。Type III IFNであるIFN-λについてはLactococcus lactis JCM5805、JCM20101でのみ誘導が起こった。
・・・」

(引4コ) 図5A

「
[図:0001400456000005.jpg]
」

(引4サ) 【0113】~【0133】 (実施例14)

「【0113】
[実施例14]
Lactococcus lactis JCM5805ヨーグルトのヒトにおける抗ウイルス活性に及ぼす影響の検討試験
これまでの実施例よりLactococcus lactis JCM5805のマウス及びヒトの細胞に対するinvitroでの効果、またマウスに摂食させた際の効果を確認できており、これらの結果をふまえてヒトに摂取させた際の効果の検証を行った。
続きを表示(全41行)
【0114】
<試験概要>
・試験食品
試験食品として以下の2種類を用いた。
【0115】
(1)被験食品:Lactococcus lactis JCM5805ヨーグルト飲料
(2)プラセボ:乳酸菌非含有ヨーグルト様飲料
・目的 本試験は、健康な勤労者成人男女にLactococcus lactis JCM5805ヨーグルト飲料を約4週間連続摂取させた際の、抗ウイルス活性に関する血液バイオマーカー、及び体調アンケートによる主観的評価に及ぼす影響について、プラセボである乳酸菌非含有ヨーグルト様飲料を対照として検討することを目的として行った。
【0116】
・試験対象 試験対象は、重篤な持病や乳アレルギー等が無く、所定のウイルス検査で問題の無い被験者、試験食品摂取期間中のヨーグルト及びチーズの摂取を制限できる被験者、及びステロイド系の薬品を服用(内服・外用)されていない被験者であった。
【0117】
・被験者数 38名(各グループ19名ずつ)の被験者を用いた。
【0118】
・試験デザイン ランダム化プラセボ対照二重盲検並行群間比較試験を行った。
【0119】
・関与成分の一日の摂取量 Lactococcus lactis JCM5805株を目安として約1×1011cfuを1日の摂取量とした。
【0120】
・摂取方法
試験食品の摂取量は1日1本(100ml)とし、食前食後問わず午前中に摂取した。
【0121】
・試験スケジュール
試験食品摂取期間は約4週間とした。採血は、グループ分けのための事前検査(摂取開始1ヶ月前)、0週検査(摂取開始前日)、4週検査(摂取終了翌日)の3度実施した。被験者は体調アンケートに摂取期間中毎日記載した。
【0122】
・評価項目
血中pDC活性(pDC表面マーカー:MHC classII、CD86)、血中IFN-α遺伝子発現、末梢血単核球(PBMC)をCpG DNA刺激した際のIFN-α産生能を測定し、体調アンケートによる風邪症状の主観的評価を行った。
・・・
【0128】
体調アンケートについて、風邪の主な症状(鼻水、鼻づまり、くしゃみ、のどの痛み・いがいが感、咳、頭痛、熱っぽさ)7項目について5段階(1:症状なし<5:重症)の評価を毎日行い、7項目の平均値を風邪の症状の程度を表す指標とした。
・・・
【0131】
pDC活性低値における血中pDCにCpG DNA刺激を与えた際のIFN-α産生能の結果を図22
に示す。・・・
すなわち、本試験の結果より、CpG DNA刺激によって誘発されるpDC活性化がLactococcuslactis JCM5805株摂取グループで強化されることは、ウイルス感染時のレスポンスが向上することが示唆された。
【0132】
体調アンケートの結果を図23に示す。・・・すなわち、Lactococcus lactis JCM5805を4週間連続で摂取したことにより被験者が風邪をひきにくくなったことが示された。
【0133】
以上の結果、Lactococcus lactis JCM5805をヒトにおいて摂取することで血中pDCが活性化されIFN-α産生能が上昇し、ウイルス罹患時の反応性が向上し、その結果風邪をひきにくくなることが示唆された。特に、これらの効果は抗ウイルス感染に関わる免疫力(pDC活性)が低く風邪をひくリスクが高い方において、顕著に認められた。」

(引4シ) 図22

「
[図:0001400456000006.jpg]
」

(引4ス) 図23

「
[図:0001400456000007.jpg]
」

オ 引用文献5(特開2013-193996号公報(異議申立人の甲第10号証))の記載事項

(引5ア) 特許請求の範囲

「【請求項1】
・・・
【請求項3】
あじなれずし、ぶりなれずし、さばなれずし、かぶらずし、大根ずし、山廃酒母、いか麹漬け、いか黒造り、及びうり糠漬けからなる群より選択される少なくとも1種の発酵食品より分離した1種又は2種以上の乳酸菌又はその培養物を有効成分とすることを特徴とする腸管免疫賦活剤。
・・・
【請求項6】
乳酸菌が、ラクトバチラス・ブレビス(Lactobacillus brevis) AN3-5(受託番号:NITE P-1256)、ラクトバチラス・サケイ(Lactobacillus sakei) KP7-11(受託番号:NITE P-1125)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis) SB103(受託番号:NITE P-1127)及びペディオコッカス・エタノリデュランス(Pediococcus ethanolidurans) SB108(受託番号:NITE P-1228)からなる群より選択される少なくとも1種の乳酸菌であり、その培養物が腸管免疫グロブリン(IgA)誘導作用を有することを特徴とする請求項3に記載の腸管免疫賦活剤。」

カ 引用文献6(特開2003-113114号公報(異議申立人の甲第11号証))の記載事項

(引6ア) 【0047】

「【0049】 具体的には、本発明の免疫賦活素材は、エンテロコッカス属に属する乳酸菌および麹菌を液体培養によって培養された菌体を有効成分としており、しかもエンテロコッカス属からなる乳酸菌としては、エンテロコッカス・フェシウムおよびエンテロコッカス・フェカリスの少なくとも1種としたり、このエンテロコッカス属からなる乳酸菌として生菌体および/または死菌体を用いているものであるために、優れた免疫賦活機能を保有することとなり、更に、脊椎動物の消化器官から体内に吸収されると、免疫賦活機能を発揮することにより、当該脊椎動物の免疫性を向上させて、健康の維持、促進、病気の予防等を良好に行なわせることができる。具体的には、本発明の免疫賦活素材をストレスを付加した状態で育成したマウスに付与すると、脾臓の性状(NK活性、IFN-γ)およびパイエル板の性状(IgA抗体)がそれぞれ向上し、全身免疫および局所免疫系の免疫賦活機能が向上し、本発明の免疫賦活素材にきわめて優れた作用効果のあることがわかった。・・・」

キ 引用文献7(Poult. Sci., 2006, Vol.85, pp.273-277(異議申立人の甲第12号証))の記載事項

引用文献7は外国語で記載されているので、当審による訳文で示す。

(引7ア) 273頁の要約

「要約 ブロイラーにおける抗菌薬使用は、vancomycin耐性腸球菌(VRE)出現の一因と考えられている。VREの侵入は、その原因が何であれ、自然・獲得にかかわらず、腸球菌の多剤耐性により腸管からの排出が困難である。本研究では、実験的にVREに感染させた孵化直後のブロイラーに、Enterococcus faecalis EC-12株(EC-12)の細胞壁製剤を給与し、VRE定着の予防を検討した。対照群およびLactobacillus sp.投与群には、EC-12粉末を0.05%添加した基本飼料を15日間給与した。VREチャレンジは2日齢(d 0)に経口投与した。その結果,EC-12は3日目から14日目まで腸内のVREコロニー形成を抑制した。EC-12投与群では、d 14に糞便消化物中の総IgAおよび血清中の総IgGが高値となった。しかし、血清中のVRE特異的抗体およびEC-12特異的抗体は影響を受けなかった。したがって、EC-12は腸管免疫系を刺激し、VREチャレンジに対する免疫反応を強化し、ニワトリ腸管からの排泄を促進させたと思われる。」

ク 引用文献8(J. Immun., 2003, Vol.171, pp.6466-6477(異議申立人の甲第2号証))の記載事項

引用文献8は外国語で記載されているので、当審による訳文で示す。

(引8ア) 6473頁の図8C及びその説明文

「
[図:0001400456000008.jpg]
図8 ・・・C,示された器官からの全細胞を単離し、材料および方法に記載されるように染色した。プラズマサイトイドDC(CD19-CD3ε-CD11clow120G8-)の全細胞中の平均割合(±SEM)を、少なくとも6匹のマウスで示す(2つの独立した実験は同様の結果を与える)。C57BL/6マウスとの比較で、*,p<0.05;**,p<0.01。」

ケ 引用文献9(J. Exp. Med., 2013, Vol.210, No.11, pp.2151-2159(異議申立人の甲第3号証))の記載事項

引用文献9は外国語で記載されているので、当審による訳文で示す。

(引9ア) 2151頁の要約

「形質細胞様樹状細胞(pDC)は、ウイルスに応答してタイプIインターフェロン(IFN-I)を迅速に産生し、抗ウイルス免疫反応に不可欠である。pDCは、その発生や発現プロファイルにおいて古典的DC(cDC)と関連しているものの、多くの異なる特徴を持っている。cDCとは異なり、pDCは骨髄(BM)で発生し、完全に分化した細胞として末梢リンパ系臓器や組織に出現する。・・・」

(引9イ) 2152頁左欄2~5行

「成熟したLy49Q+pDCはBMを出て、求心性リンパ管を通って移動するcDCとは異なり、血液を通して末梢リンパ系器官へ帰巣する。」

コ 引用文献10(岩波 生化学辞典 第5版(2013年2月26日発行)、第1037頁(異議申立人の甲第4号証))の記載事項

(引10ア) 1037頁左欄の「二次リンパ組織」の項

「二次リンパ組織 [secondary lymphoid tissue]
〔同〕末梢性リンパ組織(peripheral lymphoid tissue).
成熟したリンパ球やその他の免疫細胞が組織化されて集積し,*獲得免疫応答が誘導される組織.*リンパ節,*脾臓,および各種の粘膜付属リンパ組織などが含まれる.・・・」

サ 引用文献11(ウイルス,2006,第56巻,第1号,pp.1-8(異議申立人の甲第5号証))の記載事項

(引11ア) 4頁左欄1~10行

「全ての細胞はウイルス感染に際してI型IFNを産生する能力が備わっているが,産生するI型IFNの量は細胞の種類によって異なっている.ヒトの末梢血の単核細胞をウイルスで刺激するとある特殊な細胞集団が大量のI型IFNを誘導することが知られており,IFN producing cells(IPC)と呼ばれていた.これらの細胞は,成熟し,樹状細胞の形態を有し,抗原提示を行い,T細胞を活性化する能力があることからpDCと呼ばれるようになった.マウス脾臓樹状細胞はCD11c強陽性B220陰性細胞とCD11c弱陽性B220陽性細胞とに大別される.後者の分画に,pDCが含まれる6).」

シ 引用文献12(Annu. Rev. Immunol., 2011, Vol.29, pp.163-183(異議申立人の甲6第号証に対応するもの))の記載事項

引用文献12は外国語で記載されているので、当審による訳文で示す。

(引12ア) 165頁左欄1~23行(異議申立人の甲第6号証における3頁下から3行~4頁9行に対応)

「pDCは、エンドソームの核酸を感知するToll様受容体(TLR)TLR7とTLR9を発現し、それぞれのリガンド、一本鎖RNA、非メチル化CpG含有DNA(CpG)に反応する。これらの刺激に対するpDCの最も特徴的な反応は、迅速かつ豊富なIFNの分泌であり、他の細胞種に比べて最大で1,000倍も強力にIFNが分泌される(1)。実際、抗体媒介(31)、遺伝子破壊(32)、IFNレポーター株解析(33)により示唆されるように、in vivoでのCpGチャレンジに対するIFN-α分泌は、pDCのみによって媒介されている。TLRによるpDCの活性化の他の結果としては、TNF-αや(マウスでは)IL-12などのサイトカインの分泌や抗原提示能力の獲得が挙げられる。総じて、pDCのこれらの強力な免疫賦活機能は、ほぼすべての免疫細胞タイプ[例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞(34)および形質細胞(35)]の動員および/または活性化に寄与し、pDCが自然免疫と適応免疫をつなぐ重要な存在であることを立証するものである。」

ス 引用文献13(特開2018-16580号公報(異議申立人の甲第15号証))の記載事項

(引13ア) 特許請求の範囲

「【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸菌培養物と、乳酸菌加熱殺菌菌体とを含有することを特徴とする免疫賦活組成物。
【請求項2】
前記乳酸菌加熱殺菌菌体の菌種がEnterococcus faecalisであり、前記酢酸菌培養物の質量(m1)と、前記Enterococcus faecalisの質量(m2)との比(m1/m2)が0.0001~100である請求項1に記載の免疫賦活組成物。
・・・」

(引13イ) 【0023】

「【0023】
乳酸菌の種類も特に限定されず、各種の乳酸菌を用いることができる。この乳酸菌としては、Enterococcus faecalis、Enterococcus faecium、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus casei、Lactobacillus lactis、Lactobacillus acidophilus、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve、Streptococcus thermophilus等が好ましく挙げられる。また、より強い免疫賦活効果を有するEnterococcus faecalis(ATCC 19433、ATCC 14508、ATCC 23655、IFO 16803等)が特に好ましい。」

(3) 引用文献に記載された発明

ア 引用文献1に記載された発明

上記引1ア~エの記載からみて、引用文献1には、以下の発明が記載されているといえる。

「乳酸菌であるストレプトコッカス・フェーカリス YIT2031(ATCC19433)の菌体を、細胞壁溶解酵素製剤・アクロモペプチダーゼ(登録商標)で処理して得られる多糖-グリカン複合体を有効成分とする、体内におけるサイトカインであるTNF、IL-1及びINF-γの産生を促進し、その作用を増強させることによって、腫瘍や各種感染症の予防と治療を行うための組成物」

(以下「引用発明1」という。)

イ 引用文献2に記載された発明

上記引2ア~ウの記載からみて、引用文献2には、以下の発明が記載されているといえる。

「乳酸菌(Enterococcus faecalis ATCC 19433)の菌体を加熱処理し、凍結乾燥した加熱処理菌体を有効成分として含有する、IL-12産生誘導能を有する免疫賦活剤」

(以下「引用発明2」という。)

ウ 引用文献3に記載された発明

免疫賦活作用を有する乳酸菌を含む組成物について記載する引用文献3の実施例1には、雌129/SVマウスの脾臓から得た細胞を4×106個/mLとなるように培地に懸濁して得られる、脾臓細胞の懸濁液が記載されており(引3キ)、そして、実施例9には、当該脾臓細胞懸濁液500μLに乳酸菌として0.1%の濃度のEnterococcus faecalisを5μL添加し、24時間の共培養後に培養上清のインターフェロン-α(IFNα)の濃度を測定したところ、乳酸菌を添加しない場合では0pg/mLの濃度であったの(図10のA)のに対し、約130pg/mLの濃度であったこと(図10のD)が記載されている(引3サ、引3シ)。

ここで、引用文献3には、乳酸菌濃度は乳酸菌重量(乾燥重量)/乳酸菌を含む液体の体積(w/v)で表すこと、また、乳酸菌の重量は乳酸菌懸濁液を遠心し、乳酸菌を沈殿後乾燥させた状態で測定することが記載されている(引3エ)ことをふまえると、Enterococcus faecalisの濃度「0.1%(0.1質量%)」とは「1mg/mL(1000μg/mL)」であり、そして、その5μlが500μlに添加された場合におけるEnterococcus faecalisの濃度は「(5μL×1000μg/mL)/(5μL+500μL)」の計算によって算出することができる。そうすると、実施例9において、Enterococcus faecalisの共培養時の培地中の濃度、すなわち終濃度はEnterococcus faecalisの乾燥重量、すなわち乾燥菌末で換算して「9.9μg/mL」となり、また、脾臓細胞懸濁液における脾臓細胞の終濃度は「4×106個/ml」である。

そして、IFNαは細胞より産生され、その産生量はIFNαを産生し得る細胞の活性化の状態を反映するもの、すなわち細胞の活性化の指標となり得ることは当業者に広く知られている。

さらに、引用文献3には、免疫賦活作用を有する乳酸菌を含む組成物を、免疫賦活用飲食品などの免疫の賦活のための組成物とすることについても記載されている(引3カ)。

そうすると、引用文献3には、特に、実施例9の記載をふまえると、以下の発明が記載されているといえる。

「エンテロコッカス・フェカリス菌であって、終濃度が乾燥菌末で換算して9.9μg/mLの前記エンテロコッカス・フェカリス菌と、マウスの脾臓から回収して得られる、終濃度が4×106個/mLの脾臓細胞とを24時間共培養することで約130pg/mLのIFNαを産生する指標で表される細胞の活性化能を有するエンテロコッカス・フェカリス菌を含む、IFNαの産生を促す免疫賦活用組成物」

(以下「引用発明3」という。)

エ 引用文献4に記載された発明

引用文献4には、骨髄から回収した骨髄細胞にはIFN-α等の産生能を有するpDCが含まれることが記載されており(引4カ)、そして、引用文献4の特に実施例2には、マウス大腿骨の骨髄から回収して得られた5×105個/mLの骨髄細胞の懸濁液に、pDC誘導サイトカインとしてFlt-3Lを終濃度100ng/mLで添加して培養し、培養7日後に実施例1で調製した乳酸菌の死菌凍結乾燥菌体を10μg/mLで添加して共培養し、IFN-αの産生について調べたところ、Lactococcus lactis subsp.lactis(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス)の菌株であるJCM5805株は48時間後の培養上清中に約160pg/mLのIFN-α産生誘導能が、また、JCM20101株は、48時間後の培養上清中に約250pg/mLのIFN-α産生誘導能があったことが記載されている(引4ケ、引4コ)。

さらに、引用文献4における特定の乳酸菌株はpDCを活性化してIFN-αの産生を誘導する結果、生体の免疫を賦活し、ウイルス等の感染を防御し、ウイルス感染症を治療し得ること(引4ウ)、また、上記の50pg/mL以上のIFN-α産生誘導能が確認された菌株を摂取した者において、ウイルス感染時のレスポンスが向上することが示唆されるとともに、風邪を引きにくくなったことも記載されており(引4サ~ス)、これをふまえて、免疫賦活用、ウイルス感染予防用又は風邪症状予防用の食品組成物を提供することも記載されている(引4ア~ウ)。

そうすると、引用文献4には、以下の発明が記載されているといえる。

「ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌であって、終濃度が10μg/mLの前記ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌の凍結乾燥菌末と、マウスの骨髄から回収して100ng/mL Flt-3Lを含む細胞培養培地で7日間培養して得られる、プラズマサイトイド樹状細胞を含む、終濃度が5×105個/mLの骨髄細胞とを48時間共培養することで約160~250pg/mLのIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌を含む、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生による免疫賦活用食品組成物」

(以下「引用発明4a」という。)

「ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌であって、終濃度が10μg/mLの前記ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌の凍結乾燥菌末と、マウスの骨髄から回収して100ng/mL Flt-3Lを含む細胞培養培地で7日間培養して得られる、プラズマサイトイド樹状細胞を含む、終濃度が5×105個/mLの骨髄細胞とを48時間共培養することで約160~250pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌を含む、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生による風邪症状予防用食品組成物」

(以下「引用発明4b」という。)

「ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌であって、終濃度が10μg/mLの前記ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌の凍結乾燥菌末と、マウスの骨髄から回収して100ng/mL Flt-3Lを含む細胞培養培地で7日間培養して得られる、プラズマサイトイド樹状細胞を含む、終濃度が5×105個/mLの骨髄細胞とを48時間共培養することで約160~250pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有するラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌を含む、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生によるウイルス感染予防用食品組成物」

(以下「引用発明4c」という。)

(4) 本件訂正発明1~4と引用発明1についての対比・判断

ア 本件訂正発明1と引用発明1との対比・判断

(ア) 対比

引用発明1の「乳酸菌であるストレプトコッカス・フェーカリス YIT2031(ATCC19433)」は、その括弧書きにおける記載のとおり、微生物の寄託機関の一つであるアメリカン・タイプ・. カルチャー・コレクション(ATCC)に登録番号「ATCC19433」として寄託されている微生物の一種であるところ、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)のバイオテクノロジーセンター(NBRC)が提供する検索サイト「NBRC オンラインカタログ(https://www.nite.go.jp/nbrc/catalogue/)」で確認できるとおり、上記登録番号「ATCC19433」の菌株は、登録番号「NBRC100480」の菌株と同一のものと認められる(要すれば、異議申立人の甲第16号証も参照。)。そして、当該菌株は、本件明細書の実施例等における「エンテロコッカス・フェカリス菌(NBRC100480株)」のpDCの活性化能についての記載によれば、本件訂正発明1におけるpDCの活性化能の指標である、「終濃度が20μ/mLのエンテロコッカス・フェカリス菌の乾燥物と、マウスの骨髄から回収して100ng/mL Flt3-Lを含む細胞培養培地で7日間培養して得られる、プラズマサイトイド樹状細胞を含む、終濃度が5×105個/mLの骨髄細胞由来のプラズマサイトイド樹状細胞とを48時間共培養すること」(以下「本件訂正発明における共培養」と省略することがある。)による「217pg/mL」のIFN-αを産生する、エンテロコッカス・フェカリス菌の菌株であると解される。

また、引用発明1の「体内におけるサイトカインであるTNF、IL-1及びINF-γの産生を促進し、その作用を増強させることによって、腫瘍や各種感染症の予防と治療を行うための組成物」は、サイトカインの産生を促す免疫を賦活するためのものといえるから、本件訂正発明1の「免疫賦活用組成物」に相当する。

そして、本件訂正発明1における「(ただし、魚介類用のNBRC 3989発酵物含有免疫賦活剤を除く。)」という点については、そのような特定の免疫賦活剤を除いたものは、引用発明1にも含まれる。

そうすると、本件訂正発明1と引用発明1とは、

「エンテロコッカス・フェカリス菌を含む、免疫賦活用組成物(ただし、魚介類用のNBRC 3989発酵物含有免疫賦活剤を除く。)。」

の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>

エンテロコッカス・フェカリス菌が、本件訂正発明1では、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のものであるのに対し、引用発明1では、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「217pg/mL」のものである点。

<相違点2>

組成物の用途である免疫賦活について、本件訂正発明1では、「プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生による」との特定がなされているのに対し、引用発明1ではそのような特定はなされていない点。

(イ) 判断

a 取消理由1(新規性)について

上記のように、本件訂正発明1と引用発明1は相違点1及び2の、特に相違点1が存在するから、本件訂正発明1は引用文献1に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないとの理由は、その理由がない。

b 取消理由2(進歩性)について

上記相違点1について検討する。

引用文献1には、各種乳酸菌が使用できることは記載されているものの(引1ウ)、エンテロコッカス・フェカリス菌として、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のものを用いることについての記載や示唆はなく、また、本件明細書の表1において、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」であることが示されている菌株である「NBRC3989株」や「NBRC12964株」を用いることについての記載や示唆もないから、当業者は引用発明1において、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用し得ない。

一方、本件明細書の表1には、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌として、IFN-α産生量が252pg/mLである試料名「NBRC 3989」、及び、IFN-α産生量が464pg/mLである試料名「NBRC 12964」という菌株が実際に存在することが具体的に示されている。

したがって、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用するという、上記相違点1に係る本件訂正発明1の構成を想到することを当業者は容易になし得ないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとの理由は、その理由がない。

イ 本件訂正発明2~4と引用発明1との対比・判断

本件訂正発明2は、本件訂正発明1の組成物が「分泌型IgAの産生促進用」であることを、さらに特定するものである。

また、本件訂正発明3は、要するに、本件訂正発明1が含むものと同じエンテロコッカス・フェカリス菌を含む「プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生による風邪様症状予防剤」である。

そして、本件訂正発明4は、要するに、本件訂正発明1及び本件訂正発明3が含むものと同じエンテロコッカス・フェカリス菌を含む「プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生によるウイルス感染予防剤」であって、かつ、「(ただし、魚介類用のNBRC 3989発酵物含有免疫賦活剤を除く。)」というものである。

そうすると、本件訂正発明2~4は本件訂正発明1と同様に、引用発明1に対して上記相違点1の点で少なくとも相違している。

そして、上記ア(イ)bにおいて記載したとおり、引用文献1に記載された技術的事項に基いて、当業者は引用発明1において、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用し得ない。

また、引用文献5~7は、上記引5ア~引7アのとおり、エンテロコッカス・フェカリス菌をはじめとするエンテロコッカス属の乳酸菌やその培養物にIgAの誘導作用を示すものがあるという技術的事項が、本件特許の出願前に既に知られていたことを開示するにとどまるものであるから、これら引用文献5~7に記載された技術的事項を参酌しても、当業者は引用発明1において、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用し得ない。

したがって、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用するという、上記相違点1に係る本件訂正発明2~4の構成を想到することを当業者は容易になし得ないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明2~4は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1に記載された技術的事項に基いて、又は、引用文献1に記載された発明及び引用文献1、5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとの理由は、その理由がない。

(5) 本件訂正発明1~4と引用発明2についての対比・判断

ア 本件訂正発明1と引用発明2との対比・判断

(ア) 対比

引用発明2の「乳酸菌(Enterococcus faecalis ATCC 19433)」は、本件明細書の実施例の表1に記載されている「エンテロコッカス・フェカリス菌(NBRC100480株)」に相当し、本件訂正発明における共培養による「217pg/mL」のIFN-αを産生する菌株であると解されることは、上記(4)ア(ア)で述べたのと同様である。

また、引用発明2の「IL-12産生誘導能を有する免疫賦活剤」は、本件訂正発明1の「免疫賦活用組成物」に相当する。

そして、本件訂正発明1における「(ただし、魚介類用のNBRC 3989発酵物含有免疫賦活剤を除く。)」という点については、そのような特定の免疫賦活剤を除いたものは、引用発明2にも含まれる。

そうすると、本件訂正発明1と引用発明2とは、

「エンテロコッカス・フェカリス菌を含む、免疫賦活用組成物(ただし、魚介類用のNBRC 3989発酵物含有免疫賦活剤を除く。)。」

の点で一致し、そして本件訂正発明1と引用発明1とを対比した場合と同様に、上記(4)ア(ア)に記載した相違点1及び2の点で相違する。

(イ) 判断

a 取消理由1(新規性)について

上記のように、本件訂正発明1と引用発明2は相違点1及び2の、特に相違点1が存在するから、本件訂正発明1は引用文献2に記載された発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないとの理由は、その理由がない。

b 取消理由2(進歩性)について

上記相違点1について検討する。

引用文献2には、「より強い免疫賦活効果を有するEnterococcus faecalis(ATCC 19433、ATCC 14508、ATCC 23655、IFO 16803等)が特に好ましい。」との記載のとおり(引2イ)、特に好ましい乳酸菌の菌株として上記NBRC100480株(Enterococcus faecalis ATCC 19433)に加え、同じエンテロコッカス・フェカリス菌であるEnterococcus faecalis ATCC 14508、Enterococcus faecalis ATCC 23655、及び、Enterococcus faecalis IFO 16803の3つの菌株も具体的に挙げられており、このうち、「Enterococcus faecalis ATCC 23655」は、本件明細書の表1において、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が252pg/mLであるとして記載されている、「NBRC3989株」に相当する菌株である。

しかしながら、引用文献2には免疫賦活用組成物において、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」であることを特定し、そのように特定されたエンテロコッカス・フェカリス菌を用いることについての記載はない。また、上記NBRC3989株(Enterococcus faecalis ATCC 23655)は、引用文献2においては上記のとおり、本件明細書の表1で本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が217pg/mLであることが示されているNBRC100480株(Enterococcus faecalis ATCC 19433)や、他の2つの菌株(Enterococcus faecalis ATCC 14508、Enterococcus faecalis IFO 16803)と共に、それらがより強い免疫賦活効果を有する特に好ましいものとして挙げられているにとどまり、引用文献2は、これら具体的な4つの菌株のうちでも、NBRC3989株(Enterococcus faecalis ATCC 23655)が特に他の3つの菌株よりも強い免疫賦活効果を有し、当該菌株が免疫賦活の点で最も優れるといった技術的事項を記載するものでは何らない。

一方、本件明細書の表1には、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌として、IFN-α産生量が252pg/mLである試料名「NBRC 3989」、及び、IFN-α産生量が464pg/mLである試料名「NBRC 12964」という菌株が該当すること、NBRC3989株及びNBRC12964株は、上記引2ウのとおり、引用文献2の実施例において免疫賦活に係るIL-12産生誘導能の確認に唯一用いられているNBRC100480株(Enterococcus faecalis ATCC 19433)よりも、pDC活性化によるIFN-α産生誘導能に優れていることが具体的に示されている。

したがって、本件訂正発明1は、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用するという、上記相違点1に係る本件訂正発明の構成を採用することで、引用文献2の記載からは当業者が予測できない顕著な効果を奏するものといえるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用文献2に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとの理由は、その理由がない。

イ 本件訂正発明2~4と引用発明2との対比・判断

本件訂正発明2は、本件訂正発明1の組成物が「分泌型IgAの産生促進用」であることを、さらに特定するものである。

また、本件訂正発明3は、要するに、本件訂正発明1が含むものと同じエンテロコッカス・フェカリス菌を含む「プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生による風邪様症状予防剤」である。

そして、本件訂正発明4は、要するに、本件訂正発明1及び本件訂正発明3が含むものと同じエンテロコッカス・フェカリス菌を含む「プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生によるウイルス感染予防剤」であって、かつ、「(ただし、魚介類用のNBRC 3989発酵物含有免疫賦活剤を除く。)」というものである。

そうすると、本件訂正発明2~4は本件訂正発明1と同様に、引用発明2に対して上記相違点1の点で少なくとも相違している。

そして、上記ア(イ)bに記載したのと同様に、本件訂正発明2~4も、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用するという、上記相違点1に係る本件訂正発明の構成を採用することで、引用文献2の記載からは当業者が予測できない顕著な効果を奏するものといえるから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明2~4は、引用文献2に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて、又は、引用文献2に記載された発明及び引用文献2、5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとの理由は、その理由がない。

(6) 本件訂正発明1~4と引用発明3についての対比・判断

ア 本件訂正発明1と引用発明3との対比・判断

(ア) 対比

本件訂正発明1における「(ただし、魚介類用のNBRC 3989発酵物含有免疫賦活剤を除く。)」という点については、そのような特定の免疫賦活剤を除いたものは、引用発明3にも含まれる。

そうすると、本件訂正発明1と引用発明3とは、

「エンテロコッカス・フェカリス菌を含む免疫賦活用組成物(ただし、魚介類用のNBRC 3989発酵物含有免疫賦活剤を除く。)」

である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点3>

エンテロコッカス・フェカリス菌が、本件訂正発明1では「終濃度が20μg/mLの前記エンテロコッカス・フェカリス菌の乾燥物と、マウスの骨髄から回収して100ng/mL Flt3-Lを含む細胞培養培地で7日間培養して得られる、プラズマサイトイド樹状細胞を含む、終濃度が5×105個/mLの骨髄細胞とを48時間共培養することで250pg/mL以上のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有する」ものであるのに対し、引用発明3では「終濃度が乾燥菌末で換算して9.9μg/mLの前記エンテロコッカス・フェカリス菌と、マウスの脾臓から回収して得られる、終濃度が4×106個/mLの脾臓細胞とを24時間共培養することで約130pg/mLのIFNαを産生する指標で表される細胞の活性化能を有する」ものである点。

<相違点4>

組成物の用途である免疫賦活について、本件訂正発明1では、「プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生による」との特定がなされているのに対し、引用発明3ではそのような特定はなされていない点。

(イ) 判断

a 上記相違点3について検討する。

引用文献3において、乳酸菌は、骨髄細胞や脾臓細胞に含まれるINF(インターフェロン、IFN)産生細胞である免疫担当細胞に作用し、該細胞のIFN産生を促進すること(引3オ)、免疫担当細胞として脾臓細胞や骨髄細胞が挙げられ、その中でもpDCが挙げられること(引3イ)についての記載があるところ、引用文献3の実施例9で乳酸菌との共培養によるIFN-αの誘導活性を確認するために用いている129/SVマウスの脾臓細胞が、上記pDCを含むことは、引用文献8における記載のとおり本件特許の出願前に既に知られていた(引8ア)。

さらに、引用文献9~12における記載のとおり、脾臓細胞、pDC及びIFN産生誘導に関しては、本件特許の出願前において以下の技術的事項も既に知られていた。

・「pDC」は骨髄で発生し、完全に分化した細胞として末梢血リンパ器官及び組織に出現すること、また、「成熟したpDC」は骨髄を出て、血液を通して末梢リンパ系器官へ帰巣すること(引9ア及びイ)

・成熟したリンパ球やその他の免疫細胞が組織化されて集積する、二次リンパ組織とも称される末梢性リンパ組織には「脾臓」も含まれること(引10ア)

・ヒトの末梢血の単核細胞をウイルスで刺激するとある特殊な細胞集団が大量のI型IFNを誘導することが知られており、IFN産生細胞(IPC)と呼ばれていた細胞は、後にpDCと呼ばれるようになり、マウス脾臓樹状細胞には当該pDCが含まれること(引11ア)

・pDCのIFN産生能は、他の細胞種に比べて最大で1,000倍もあること(引12ア)

これらの技術的事項を勘案すると、マウスの脾臓にはIFN-α産生細胞として知られるマクロファージが多少は存在しているとしても、引用文献3の実施例9において、乳酸菌との共培養によるIFN-αの誘導活性を確認するために用いている129/SVマウス由来の脾臓細胞群にはpDCが含まれ、そして、脾臓細胞群におけるIFN-α産生は、乳酸菌との共培養により活性化されるpDCが主に担っていることを、当業者は理解するといえる。そうすると、上記2(3)ウのとおり、引用文献3の特に実施例9の記載をふまえて上記のとおり認定した引用発明3において、共培養によるIFNαを産生する指標で表されるものである上記「細胞の活性化能」とは、マウスの脾臓から回収して得られる、終濃度が4×106個/mLの脾臓細胞に含まれる「pDCの活性化能」を意味していると理解される。

b 引用文献3において、乳酸菌としてエンテロコッカス・フェカリス菌を用いた実施例9における共培養によるIFN-α誘導活性についての試験条件(菌の終濃度、細胞の由来、細胞の終濃度、培養条件等)は、乳酸菌JCM5805株を用いた実施例1における試験条件と同じであるところ(引3キ、引3サ)、実施例1にはJCM5805株との共培養により、培養上清中に「約70pg/mL」のIFN-α濃度が確認されたことが記載されている(引3キ、引3ク)。

また、引用文献3の実施例5には、実施例1で使用したものと同じJCM5805株との共培養により、培養上清中に「約70pg/mL」のIFN-α濃度が確認されたことが記載されており(引3ケ、引3コ)、当該IFN-α濃度は実施例1と同程度であることが把握できる。

そうすると、引用文献3の実施例9及び実施例1と実施例5とで、共培養に用いる細胞の由来や細胞濃度など、その試験条件の一部が異なってはいるものの、引用文献3の実施例9及び実施例1における試験条件で確認されるIFN-α濃度と、実施例5の試験条件で確認されるIFN-α濃度は、そのどちらが指標であっても、共培養によりIFN-αを産生する細胞を活性化する機能を有する乳酸菌について、同じ菌株が特定されることになると理解される。

c JCM5805株を用いた引用文献3の実施例5における、共培養によるIFN-α誘導活性についての試験条件をみてみると、まず、共培養の際のJCM5805株の濃度は、実施例9について算出した上記2(3)ウに記載した換算手法にならえば、乾燥菌末で換算して「19.6μg/mL」((10μL×1000μg/mL)/(10μL+500μL))となり、凍結乾燥のような菌の乾燥物を用いて「約20μg/mL」となる濃度であることが理解される。

また、実施例5では乳酸菌との共培養に、マウスの骨髄から回収して、プラズマサイトイド樹状細胞を誘導するためのサイトカインとして知られるFlt-3L(Flt3-L)を100ng/mLを含む細胞培養培地で1週間、すなわち 7日間培養して得られる骨髄細胞を用い、そして、その終濃度を5×105個/mLとし、24時間共培養を行っている(引3ケ、引3コ)。実施例3の脾臓細胞と同様に、実施例5の骨髄細胞にもpDCが含まれること、及び、実施例5で確認されたIFN-αの産生も、乳酸菌との共培養により活性化される当該pDCが主に担っていることは、上記aに記載した技術的事項から当業者であれば把握できる。

d また、引用文献3の実施例5における共培養の際の乳酸菌の上記「約20μg/mL」という濃度は、終濃度が20μg/mLの菌の乾燥物を用いる本件訂正発明1におけるものと遜色ない。

e ここで、引用文献3の実施例5の試験条件は、共培養期間が「24時間」であること以外は、本件訂正発明1と同じ培養骨髄細胞や細胞濃度である。上記「24時間」は、本件訂正発明1にある48時間の半分の共培養期間であって、IFN-α産生に係るpDCの活性化が十分でない可能性、すなわち共培養の24時間後と48時間後とでは共培養の培養上清に含まれるIFN-α濃度に多少の差が生じる可能性はあるものの、引用文献3の実施例5において24時間という共培養期間で確認されたJCM5805株についての「約70pg/mL」というIFN-α産生量が、本件訂正発明1におけるpDCの活性化能の指標である、本件訂正発明における共培養による「250pg/mL以上」というIFN-α産生量に相当するといえる技術的根拠を見出すことはできないから、JCM5805株のような引用文献3の実施例5で示される上記のpDCの活性化能を有する菌は、「250pg/mL以上のIFN-αを産生する」という本件訂正発明1における指標を満たすものではない。また、そもそもJCM5805株は、引用文献4における記載のとおり、「Lactococcus lactis subsp.lactis(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス)」の菌株であって(引4エ)、「エンテロコッカス・フェカリス菌」に相当するものではない。

f また、引用文献3の実施例9で用いられているエンテロコッカス・フェカリス菌は、実施例9における24時間の共培養によってIFN-α産生量が「約130pg/ml」であることが示されていることから、当該菌は上記JCM5805株よりも活性化pDCにおけるIFN-α産生の誘導活性が高いことは理解できるものの、上記bに記載したとおり、引用文献3の実施例9及び実施例1における試験条件で確認されるIFN-α濃度と、実施例5の試験条件で確認されるIFN-α濃度は、そのどちらが指標であっても、共培養によりIFN-αを産生する細胞を活性化する機能を有する乳酸菌について、同じ菌株が特定されることになると理解される。

そして、実施例9の試験条件は、実施例5の試験条件と比べて、共培養で使用している菌の乾燥物の終濃度は約1/2程度であるものの(「9.9μg/mL」対「19.6μg/mL」)、共培養で使用しているpDCを含む細胞の終濃度は約10倍も高いこと(「4×106個/mL」対「5×105個/mL」)をふまえるに、実施例9で確認された「約130pg/mL」というIFN-α産生量についても、本件訂正発明1におけるpDCの活性化能の指標である、本件訂正発明における共培養による「250pg/mL以上」というIFN-α産生量に相当するといえる技術的根拠を見出すことはできないから、引用文献3の実施例9で示される上記のpDCの活性化能を有する菌も、「250pg/mL以上のIFN-αを産生する」という本件訂正発明1における指標を満たすものではない。

g 以上のとおり、引用文献3において、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」であるエンテロコッカス・フェカリス菌は、何ら具体的に開示されていない。また、引用文献3は、本件明細書の表1において、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」であることが示されている菌株である「NBRC3989株」や「NBRC12964株」のような、本件訂正発明1におけるpDCの活性化能を有するエンテロコッカス・フェカリス菌を記載するものでもない。よって、当業者は引用発明3において、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用し得ない。

一方、本件明細書の表1には、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌として、IFN-α産生量が252pg/mLである試料名「NBRC 3989」、及び、IFN-α産生量が464pg/mLである試料名「NBRC 12964」という菌株が実際に存在することが具体的に示されている。

h したがって、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用するという、上記相違点3に係る本件訂正発明1の構成を想到することを当業者は容易になし得ないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明1は、引用文献3に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとの理由は、その理由がない。

イ 本件訂正発明2~4と引用発明3との対比・判断

本件訂正発明2は、本件訂正発明1の組成物が「分泌型IgAの産生促進用」であることを、さらに特定するものである。

また、本件訂正発明3は、要するに、本件訂正発明1が含むものと同じエンテロコッカス・フェカリス菌を含む「プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生による風邪様症状予防剤」である。

そして、本件訂正発明4は、要するに、本件訂正発明1及び本件訂正発明3が含むものと同じエンテロコッカス・フェカリス菌を含む「プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生によるウイルス感染予防剤」であって、かつ、「(ただし、魚介類用のNBRC 3989発酵物含有免疫賦活剤を除く。)」というものである。

そうすると、本件訂正発明2~4は本件訂正発明1と同様に、引用発明3に対して上記相違点3の点で少なくとも相違している。

そして、上記ア(イ)に記載したとおり、引用文献3に記載された技術的事項に基いて、当業者は引用発明3において、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用し得ない。

また、引用文献5~7は、上記引5ア~引7アのとおり、エンテロコッカス・フェカリス菌をはじめとするエンテロコッカス属の乳酸菌やその培養物にIgAの誘導作用を示すものがあるという技術的事項が、本件特許の出願前に既に知られていたことを開示するにとどまるものであるから、これら引用文献5~7に記載された技術的事項を参酌しても、当業者は引用発明3において、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用し得ない。

したがって、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用するという、上記相違点3に係る本件訂正発明2~4の構成を想到することを当業者は容易になし得ないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明2~4は、引用文献3に記載された発明及び引用文献3に記載された技術的事項に基いて、又は、引用文献3に記載された発明及び引用文献3、5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとの理由は、その理由がない。

(7) 本件訂正発明1~4と引用発明4a~4cについての対比・判断

ア 本件訂正発明1と引用発明4aとの対比・判断

(ア) 対比

引用発明4aにおける「ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌」、及び、本件訂正発明1の「エンテロコッカス・フェカリス菌」は、いずれも「乳酸菌」の一種であり、pDCの活性化能の指標についての、引用発明4aにおける「約160~250pg/mL以上のIFN-αを産生」及び本件訂正発明1における「250pg/mL以上のIFN-αを産生」は、共に「所定の濃度のIFN-αを産生」という点で共通する。また、引用発明4aにおける「Flt-3L」は、本件訂正発明1における「Flt3-L」に相当し、引用発明4aの「免疫賦活用食品組成物」は、本件訂正発明1の「免疫賦活用組成物」の一種である。そして、本件訂正発明1における「(ただし、魚介類用のNBRC 3989発酵物含有免疫賦活剤を除く。)」という点については、そのような特定の免疫賦活剤を除いたものは、引用発明4aにも含まれる。

そうすると、本件訂正発明1と引用発明4aとは、

「乳酸菌であって、前記乳酸菌の乾燥物と、マウスの骨髄から回収して100ng/mL Flt3-Lを含む細胞培養培地で7日間培養して得られる、プラズマサイトイド樹状細胞を含む、終濃度が5×105個/mLの骨髄細胞とを48時間共培養することで所定の濃度のIFN-αを産生する指標で表されるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化能を有する乳酸菌を含む、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生による免疫賦活用組成物(ただし、魚介類用のNBRC 3989発酵物含有免疫賦活剤を除く。)」

である点で一致し、以下の点で相違している。

<相違点5>

乳酸菌が、本件訂正発明1では、pDCの活性化能に係るIFN-αを産生する指標を特定する上での共培養の際の乳酸菌の終濃度が「20μg/mL」の場合に、pDCの活性化能の指標であるIFN-α産生についての所定の濃度が「250pg/mL以上」である「エンテロコッカス・フェカリス菌」であるのに対し、引用発明4aでは、前記終濃度が「10μg/mL」の場合に、前記所定の濃度が「約160~250pg/mL以上」である「ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌」である点。

(イ) 判断

a 上記相違点5について検討する。

引用発明4a及び本件訂正発明1の共培養における乳酸菌は、骨髄細胞に含まれるpDCを活性化してIFN-αの産生を促すものであり、共培養におけるそのような乳酸菌の量が増えれば、通常はpDCがより強く活性化され、その結果より多くのIFN-αが産生されることになるとは解されるものの、引用文献4には、pDCの活性化能に係るIFN-αを産生する指標を特定する上での共培養の際の乳酸菌の終濃度が「10μg/mL」の場合に、pDCの活性化能の指標であるIFN-α産生についての所定の濃度が「約160~250pg/mL以上」であるエンテロコッカス・フェカリス菌はおろか、約160~250pg/mLの約1/3~1/5の濃度に相当する、引用文献4の特許請求の範囲に記載されている指標の「50pg/mL以上」であるエンテロコッカス・フェカリス菌さえも、それが実際に存在することについて全く開示がない。

さらに、引用文献4には、pDCを活性化し、IFN-α誘導活性を有する乳酸菌として、引用発明4aにおける「ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌」に加え、様々な菌種が挙げられてはいるものの(引4エ)、エンテロコッカス・フェカリス菌は明記されていない。

b ここで、引用文献3は、乳酸菌によるpDCの活性化能の指標となる、活性化されたpDCにおけるIFN-αの産生促進に関する技術的事項について記載するものであり、そして、引用文献3の実施例9に記載の「エンテロコッカス・フェカリス菌」は、引用発明4aにおける「ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌」と、pDCの活性化、IFN-αの産生促進の点で作用及び機能の共通性がある乳酸菌とはいえるものの、上記(6)ア(イ)で述べたように、引用文献3も、「250pg/mL以上のIFN-αを産生する」という本件訂正発明1における指標を満たすエンテロコッカス・フェカリス菌が実際に存在することを具体的に開示していない。

c また、本件明細書の実施例にも具体的に記載されているエンテロコッカス・フェカリス菌である「NBRC3989」や「NBRC100480」、すなわち「ATCC23655」や「ATCC19433」が強い免疫賦活効果を有する菌株であることは、引用文献13における記載のとおり本件特許の出願前に既に知られてはいたものの(引13ア、引13イ)、それらの菌株がpDCの活性化能やIFN-αの産生誘導能を有していることについては、引用文献13には全く記載がないから、引用文献13に記載のエンテロコッカス・フェカリス菌は、pDCの活性化、IFN-αの産生促進の点で、引用発明4aや引用文献3に記載のものと作用及び機能の共通性がある乳酸菌とはいえない。

d そうすると、エンテロコッカス・フェカリス菌について記載のない引用文献4における記載をふまえ、引用文献3及び13に記載された技術的事項に接したとしても、引用発明4aにおける「ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌」に代えて、それとは異なる菌種である「エンテロコッカス・フェカリス菌」であって、かつ、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のものを採用することを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

一方、本件明細書の表1において、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌には、IFN-α産生量が252pg/mLである試料名「NBRC 3989」、及び、IFN-α産生量が464pg/mLである試料名「NBRC 12964」という菌株が該当することが具体的に示されている。

e したがって、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用するという、上記相違点5に係る本件訂正発明1の構成を想到することを当業者は容易になし得ないから、本件訂正発明1は、引用文献4に記載された発明及び引用文献4、3及び13に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとの理由は、その理由がない。

イ 本件訂正発明2~4と引用発明4a~4cとの対比・判断

本件訂正発明2は、本件訂正発明1の組成物が「分泌型IgAの産生促進用」であることを、さらに特定するものである。

また、本件訂正発明3は、要するに、本件訂正発明1が含むものと同じエンテロコッカス・フェカリス菌を含む「プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生による風邪様症状予防剤」である。

そして、本件訂正発明4は、要するに、本件訂正発明1及び本件訂正発明3が含むものと同じエンテロコッカス・フェカリス菌を含む「プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及びIFN-αの産生によるウイルス感染予防剤」であって、かつ、「(ただし、魚介類用のNBRC 3989発酵物含有免疫賦活剤を除く。)」というものである。

そうすると、本件訂正発明2と引用発明4a、本件訂正発明3と引用発明4b、及び、本件訂正発明4と引用発明4cとは、いずれも、本件訂正発明1と同様に、上記相違点5の点で少なくとも相違している。

そして、上記ア(イ)に記載したとおり、引用文献4、3及び13に記載された技術的事項に基いて、当業者は引用発明4a~4cにおいて、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用し得ない。

また、引用文献5~7は、上記引5ア~引7アのとおり、エンテロコッカス・フェカリス菌をはじめとするエンテロコッカス属の乳酸菌やその培養物にIgAの誘導作用を示すものがあるという技術的事項が、本件特許の出願前に既に知られていたことを開示するにとどまるものであるから、これら引用文献5~7に記載された技術的事項を参酌しても、当業者は引用発明4a~4cにおいて、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用し得ない。

したがって、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用するという、上記相違点5に係る本件訂正発明2~4の構成を想到することを当業者は容易になし得ないから、その他の相違点について検討するまでもなく、本件訂正発明2~4は、引用文献4に記載された発明及び引用文献4、3、13に記載された技術的事項に基いて、又は、引用文献4に記載された発明及び引用文献4、3、13、5~7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明できたものではなく、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないとの理由は、その理由がない。

(8) 小括

よって、本件訂正発明1~4に係る特許は、取消理由1及び取消理由2によって取り消すべきものではない。

第6 取消理由通知で採用しなかった異議申立理由ついての当審の判断

1 申立人による申立ての理由の概要及び証拠

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申立人は、その特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、本件特許の請求項1~4に係る発明を取り消すべき理由として、以下の(1)に概要を示す申立ての理由(以下、「申立理由1」、「申立理由2」という。)を主張するとともに、証拠方法として、以下の(2)に示す甲第1号証~甲第16号証(以下、それぞれ番号順に「甲1」等ともいう。)を提出した。

(1) 申立人による申立ての理由の概要

申立理由1(新規性欠如)

本件発明1は、本件特許の出願日前の刊行物である甲第1号証に記載された発明と区別することができず、新規性を有しない発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきである。

申立理由2(進歩性欠如)

(a) 本件発明1は、本件特許の出願日前の刊行物である甲第1号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきである。

(b) 本件発明2は、本件特許の出願日前の刊行物である甲第1号証に記載された発明と、甲第10号証、甲第11号証および甲第12号証の記載事項とから当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきである。

(c) 本件発明3および本件発明4は、本件特許の出願日前の刊行物である甲第1号証に記載された発明と、甲第13号証の記載事項とから当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきである。

(d) 本件発明1は、本件特許の出願日前の刊行物である甲第13号証に記載された発明と、甲第1号証に記載された発明と、甲第14号証および甲第15号証の記載事項とから当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきである。

(e) 本件発明2は、本件特許の出願日前の刊行物である甲第13号証に記載された発明と、甲第1号証に記載された発明と、甲第10号証、甲第11号証、甲第12号証、甲第14号証および甲第15号証の記載事項とから当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきである。

(f) 本件発明3および本件発明4は、本件特許の出願日前の刊行物である甲第13号証に記載された発明と、甲第1号証に記載された発明と、甲第14号証および甲15号証の記載事項とから当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきである。

(g) 本件発明1は、本件特許の出願日前の刊行物である甲第13号証に記載された発明と、甲第15号証に記載された発明と、甲第14号証および甲第16号証の記載事項とから当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきである。

(h) 本件発明2は、本件特許の出願日前の刊行物である甲第13号証に記載された発明と、甲第15号証に記載された発明と、甲第10号証、甲第11号証、甲第12号証、甲第14号証および甲第16号証の記載事項とから当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきである。

(i) 本件発明3および本件発明4は、本件特許の出願日前の刊行物である甲第13号証に記載された発明と、甲第15号証に記載された発明と、甲第14号証および甲第16号証の記載事項とから当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は同法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきである。

(2) 申立人が提出した証拠(証拠方法)

甲第1号証: 特開2016-5452号公報

(甲1) (2016年1月14日発行)

甲第2号証: J. Immunol., 171, pp.6466-6477 (2003)

(甲2) (2003年発行)

甲第3号証: J. Exp. Med., 210(11) pp.2151-2159 (2013)

(甲3) (2013年発行)

甲第4号証: 岩波 生物学辞典 第5版、岩波書店、p.1037

(甲4) (2013年2月26日発行)

甲第5号証: ウイルス、56(1) pp.1-8 (2006)

(甲5) (2006年発行)

甲第6号証: 「Annu. Rev. Immunol., 29, pp.163-183 (2011)」に係るア

メリカ国立衛生研究所(NIH)のパブリックアクセスにおい

てAuthor Manuscript(著者原稿)として公開されている論

文

(甲6) (2014年9月11日掲載)

甲第7号証: 特願2021-110217(本件特許の出願)に係る令和

3年10月8日付け意見書

(甲7)

甲第8号証: Eur. J. Immunol., 41(3) pp.657-668 (2011)

(甲8) (2011年発行)

甲第9号証: PLoS Pathog., e1000355 (2009)

(甲9) (2009年3月27日発行)

甲第10号証: 特開2013-193996号公報

(甲10) (2013年9月30日発行)

甲第11号証: 特開2003-113114号公報

(甲11) (2003年4月18日発行)

甲第12号証: Poult. Sci., 85(2) pp.273-277 (2006)

(甲12) (2006年発行)

甲第13号証: 特許第6598824号公報

(甲13) (2019年10月30日発行)

甲第14号証: 特開平8-259450号公報

(甲14) (1996年10月8日発行)

甲第15号証: 特開2018-16580号公報

(甲15) (2018年2月1日発行)

甲第16号証: 独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)のバイ

オテクノロジーセンター(NBRC)が提供する検索サイ

ト「NBRC オンラインカタログ(https://www.nite.g

o.jp/nbrc/catalogue/)」におけるNBRC番号「3989」及び

NBRC番号「100480」の検索結果

https://www.nite.go.jp/nbrc/catalogue/

(甲16)

2 取消理由通知で採用しなかった異議申立理由

上記1に記載した異議申立理由のうち、取消理由通知で採用しなかったものは、申立理由2の(c)~(i)である。

以下、これらの理由について検討する。

(1) 甲14及び甲16の記載事項

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申立理由2の(c)~(i)のうちの(d)~(i)において、主引例である甲13と組み合わせる副引例である証拠のうち、甲14及び甲16は取消理由通知では採用しなかったものであるところ、甲14及び16にはそれぞれ以下の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。

ア 甲14の記載事項

(甲14ア) 特許請求の範囲

「【請求項1】エンテロコッカス属に属する微生物の菌体又はその処理物を有効成分として含有するインターフェロン産生増強剤
【請求項2】エンテロコッカス属に属する微生物がエンテロコッカス・フェカリス又はエンテロコッカス・カセリフラブスである請求項1記載のインターフェロン産生増強剤
【請求項3】エンテロコッカス属に属する微生物がエンテロコッカス・フェカリスNF-1011又はエンテロコッカス・カセリフラブスNF-1004である請求項1記載のインターフェロン産生増強剤」

(甲14イ) 【0024】~【0026】

「【0024】実施例2.プレートウエル内での脾細胞からのIFN産生の増強
実験方法(1)に従って調製したマウス脾細胞を用いて、同(2)1(当審注:1は丸付き数字)に示した方法でIFN液を調製した。供試標品として、実施例1で調製したNF-1004菌体標品及びNF-1011菌体標品を用いた。
【0025】実験方法(3)に従って、IFNの力価を測定し、供試標品の持つ脾細胞からのIFN産生増強活性とした。結果は表1に示したように、供試標品は、対照としてのLPS又はPHA-Pと同等又はそれ以上の強い増強活性を示した。
【0026】
【表1】
[図:0001400456000009.jpg]
」

(甲14ウ) 【0027】~【0030】

「【0027】実施例3.生体内でのIFN産生の増強
(1)菌体標品の投与及び脾細胞の調製
C3H/He N系のマウス(雌性8週齢)にシクロホスファミド(200mg/kg体重)を腹腔内に投与し、次の日から3日間連続で、実施例1で調製したNF-1011菌体標品を経口投与の場合で2.4mg/g体重、腹腔内投与の場合で4.0μg/g体重になるように各々投与した。最終投与の2日後に実験方法(1)に従って、マウス脾細胞を調製した。
【0028】(2)IFN液の調製
続きを表示(全11行)
得られたマウス脾細胞を用いて、実験方法(2)2(当審注:2は丸付き数字)に準じて、IFN液を調製した。すなわち、供試菌体標品を投与したマウスの脾細胞懸濁液に、LPSを1μg/ml、又は、PHA-Pを10μg/mlになるように添加し、実験方法(2)1(当審注:1は丸付き数字)と同様にして、CO2インキュベーター内で20時間培養した。培養後得られた遠心上清をIFN液とした。
【0029】(3)IFNの力価測定
実験方法(3)に準じた。結果を表2に示した。NF-1011菌体標品を経口投与、又は、腹腔内投与することによって、IFN産生が著しく増強された。
【0030】
【表2】
[図:0001400456000010.jpg]
」

イ 甲16の記載事項

本件特許の出願日前において電気通信回線を通じて公衆に利用可能な、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)のバイオテクノロジーセンター(NBRC)が提供する検索サイト「NBRC オンラインカタログ(https://www.nite.go.jp/nbrc/catalogue/)」における検索結果を示す甲16には、以下の事項が記載されている。

・「NBRC3989」の菌株は、受理日が1963年2月13日であり、別の登録番号「ATCC 23655」を有していること

・「NBRC100480」の菌株は、受理日が2004年4月9日であり、別の登録番号「ATCC 19433」を有していること

(2) 申立理由2(c)についての判断

申立人は、本件発明3及び4が、甲1(取消理由通知における引用文献3に相当)に記載の発明と甲13(取消理由通知における引用文献4に相当)の記載事項から当業者が容易に発明をすることができたものであることについて、甲13はIFN-α産生を誘導し得る乳酸菌を有効成分とする免疫賦活用食品組成物に関する文献であるところ、請求項2にはウイルス感染予防用食品組成物が、また、請求項3にはかぜ症状予防用食品組成物が記載されており、実施例14では風邪を引きにくくなったことも確認され、ウイルス感染時のレスポンスが向上することを示唆するデータも開示されていることから、IFN-α産生能を有するエンテロコッカス・フェカリス菌により風邪様症状を予防できること、ウイルス感染を予防できることは当業者であれば容易に想到し得る程度のことであるため、甲1に記載の発明において、甲13の記載を参酌して、免疫賦活用組成物を風邪用症状予防剤、ウイルス感染予防剤とすることは当業者が容易になし得るものであり、格別の困難性はない、と説明する(申立書57、58頁)。

しかしながら、甲13に記載された、エンテロコッカス・フェカリス菌のIFN-α産生能と風邪様症状又はウイルス感染の予防に係るそのような技術的事項をふまえても依然として、上記第5の2(6)ア(イ)bで述べたとおり、甲1(取消理由通知における引用文献3に相当)に記載された発明について、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のエンテロコッカス・フェカリス菌を採用するという、上記相違点3に係る本件訂正発明1の構成を想到することを当業者は容易になし得ない。

よって、申立人の申立理由2(c)は採用できない。

(3) 申立理由2(d)~(f)についての判断

甲13(取消理由通知における引用文献4に相当)を主引例とする申立理由2(d)~(f)は、上記第5の2(7)において対比・判断を示したものと、関連するものである。

甲14には、NF-1011のようなエンテロコッカス・フェカリス菌にインターフェロン(IFN)産生増強作用があることが記載されてはいるものの(甲14ア~ウ)、IFNの主な種類としてα以外にβやγという他のものも存在することは技術常識であるところ、甲14の記載からは、エンテロコッカス・フェカリス菌がIFNのそれぞれにどの程度の産生増強作用があるのか全く不明であり、また、甲14には、具体的なエンテロコッカス・フェカリス菌として記載されているNF-1011が、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」の菌株に相当することが把握できるような記載も何らない。

そうすると、エンテロコッカス・フェカリス菌について記載のない甲13(取消理由通知における引用文献4に相当)における記載をふまえ、甲1(取消理由通知における引用文献3に相当)及び甲15(取消理由通知における引用文献13に相当)に記載された技術的事項に加え、さらに甲14に記載された技術的事項にも接したとしても、依然として、甲13に記載された発明における「ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌」に代えて、それとは異なる菌種である「エンテロコッカス・フェカリス菌」であって、かつ、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のものを採用することを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

よって、申立人の申立理由2(d)~(f)は採用できない。

(4) 申立理由2(g)~(i)についての判断

申立人は、主引例とする甲13(取消理由通知における引用文献4に相当)には、乳酸菌をIFN産生誘導剤として生体の免疫賦活作用によりウイルス感染防御等に用い得ることを見出したことや、生体内でIFN産生を誘導する結果、生体の免疫を賦活することなどが記載されていること、また、甲15(取消理由通知における引用文献13に相当)には、エンテロコッカス・フェカリス菌を含有する免疫賦活組成物が記載されており、より強い免疫賦活効果を有するエンテロコッカス・フェカリス菌の具体的な菌株として、ATCC 19433(甲16に照らすに本件明細書の表1に記載の菌株である「NBRC100480」に対応)、ATCC 14508、ATCC 23655(甲16に照らすに本件明細書の表1に記載の菌株である「NBRC3989」に対応)、IFO 16803が特に好ましいことも記載されていること、さらに、甲14には、エンテロコッカス・フェカリス菌を有効成分として含有するIFN産生増強剤が記載されており、甲14の実施例2及び3は、エンテロコッカス・フェカリス菌(NF-1004菌体、NF-1011菌体)による脾細胞からのIFN産生の増強活性が示されていることをふまえれば、より強い免疫賦活効果を有するエンテロコッカス・フェカリス菌は、IFN-α産生量が高いと当業者は考えるはずであり、甲15にはその具体的な菌株も開示されているから、甲13に接した当業者は、甲13に記載の発明と同様の効果が奏されることを期待して「ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌」に代えて「エンテロコッカス・フェカリス菌」を用いることは容易に想到し得ることであり、格別の困難性はなく、阻害要因となる事情もない、と説明する(申立書69、70頁)。

しかしながら、上記第5の2(7)ア(イ)で述べたように、甲15に記載の「NBRC3989」や「NBRC100480」、すなわち「ATCC23655」や「ATCC19433」が、pDCの活性化能やIFN-αの産生誘導能を有していることについては甲15には全く記載がないから、甲15に記載のエンテロコッカス・フェカリス菌は、pDCの活性化、IFN-αの産生促進の点で、甲13に記載のものと作用及び機能の共通性がある乳酸菌とはいえないし、また、上記(3)で述べたように、甲14の記載からは、NF-1011のようなエンテロコッカス・フェカリス菌が主なIFNのそれぞれ(α、β、γ)にどの程度の産生増強作用を有しているのか全く不明であるから、「より強い免疫賦活効果を有するエンテロコッカス・フェカリス菌は、IFN-α産生量が高いと当業者は考えるはず」との申立人の上記主張は、その根拠を欠くものである。

そして、エンテロコッカス・フェカリス菌について記載のない甲13における記載をふまえ、甲14~16に記載された技術的事項に接したとしても、甲13に記載された発明における「ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・ラクティス菌」に代えて、それとは異なる菌種である「エンテロコッカス・フェカリス菌」であって、かつ、pDCの活性化能の指標である本件訂正発明における共培養によるIFN-α産生量が「250pg/mL以上」のものを採用することを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。

よって、申立人の申立理由2(g)~(i)は採用できない。

第7 申立人の主張について

1 申立理由2(進歩性欠如)について

申立人は、訂正発明1では、エンテロコッカス・フェカリス菌のIFN-α産生量が「250pg/mL以上」に特定されたが、引用文献1及び2には具体的なエンテロコッカス・フェカリス菌としてATCC 19433(NBRC10048)が記載されており、そのIFN-α産生量は本件明細書の表1に照らすに「217pg/mL」であるところ、訂正発明1で特定されたIFN-α産生量の下限値「250pg/mL」と、エンテロコッカス・フェカリス菌であるATCC 19433(NBRC10048)菌株のIFN-α産生量である「217pg/mL」とは、わずかに「33pg/mL」の差異にすぎず、したがって、引用文献1及び2に記載のNBRC10048の存在から、IFN-α産生量が「250pg/mL」程度の菌株が存在することは当業者の予測し得る範囲であり、訂正発明1は引用発明と比較した格別顕著な効果を奏するものともいえない、と主張する(令和5年2月24日差出の意見書1頁)。

しかしながら、引用文献1及び2に記載のNBRC10048菌株のIFN-α産生量である「217pg/mL」という値は、本件訂正発明1、3及び4において「250pg/mL以上」と記載されている下限値である「250pg/mL」という値の約87%にとどまるものであって、IFN-α産生量について10%以上も劣るものであるから、引用文献1及び2に記載のNBRC10048の存在をふまえても、IFN-α産生量が「250pg/mL」の菌株が存在することについて、当業者は予測し得るものではない。

よって、申立人の上記主張は採用できない。

2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件違反)および特許法第36条第4項第1号(実施可能要件違反)に基づく取消理由について

申立人は、特許権者が行った訂正請求により、訂正発明1、3及び4の範囲にまで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるものではなく(サポート要件違反)、また、訂正発明1、3及び4は、当業者に過度の試行錯誤を要するものである(実施可能要件違反)という、新たな取消理由が生じている、と主張する(令和5年2月24日差出の意見書5頁)。

本件特許が、特許法第36条第6項第1号(サポート要件違反)および特許法第36条第4項第1号(実施可能要件違反)に基づく取消理由を有することについては、本件特許異議の申立ての理由として、申立書には記載されていない理由である。

ここで、申立人は、本件訂正発明1等の範囲にまで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるものではないことについて、乳酸菌は菌株によってその特性が異なることが技術常識であるが、本件明細書には、2種以外の菌株についてはIFN-α産生量が「250pg/mL以上」という具体的な実験データは開示されていない上、2種以外の菌株が同様の作用を有することについての記載もないことを理由としている。しかしながら、本件訂正前のIFN-α産生量が「50pg/mL以上」というものについても、本件明細書には、13種以外の菌株についてはIFN-α産生量が「50pg/mL以上」という具体的な実験データは開示されていない上、13種以外の菌株が同様の作用を有することについての記載もないところ、本件特許の発明に該当する具体的なものとして明細書に記載されているものが、13種であれば発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化でき、サポート要件違反の理由は存在しないが、2種であると発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できず、サポート要件違反の理由が存在することについて、申立人による根拠等の提示や合理的な説明は何らない。

また、同様に、本件特許の発明に該当する具体的なものとして明細書に記載されているものが、本件訂正前の13種であっても、それ以外のものについて所定のIFN-α産生量のエンテロコッカス・フェカリス菌を取得するためには、逐一そのエンテロコッカス・フェカリス菌の菌株とプラズマサイトイド樹状細胞を含む骨髄細胞とを共培養してそのIFN-α産生量を確認する必要があることに変わりはないにもかかわらず、13種であれば当業者に過度の試行錯誤を要せず、実施可能要件違反の理由は存在しないが、2種であると当業者に過度の試行錯誤を要し、実施可能要件違反の理由が存在することについても、申立人による根拠等の提示や合理的な説明は何らない。

よって、申立人の上記主張は、本件訂正の請求の内容に付随して生じた理由であるとはいえず、申立書に記載された特許異議の申立ての理由に対して実質的に新たな内容を含むものであるから、採用できない。

第8 むすび

以上のとおりであるから、本件特許についての訂正の請求は適法なものであり、これを認める。そして、取消理由通知に記載した取消理由、並びに、申立人による特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。

また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。

よって、特許法第114条第4項の規定により、本件請求項1~4に係る特許について、結論のとおり決定する。

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2022-700654

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