特許異議申立
2023-700599
光学フィルム、これを用いた表示装置、光学フィルムの製造に用いる着色層形成用組成物
- 審判番号
- 2023-700599
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-006475
- 登録番号
- 7186249
- 請求日
- 2023年06月08日
- 審決日
- 2024年03月29日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人小笠原特許事務所
- 【権利者】株式会社トッパンTOMOEGAWAオプティカルフィルム
- 【権利者代理人】弁理士法人小笠原特許事務所
- 【異議申立人】山本 新
- 審判長/審判官
- 審判長 里村 利光
- 審判官 河原 正
- 審判官 関根 洋之
- 分類
- P1651.121-YAA(G02B) / P1651.537-YAA(G02B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7186249号発明「光学フィルム、これを用いた表示装置、光学フィルムの製造に用いる着色層形成用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7186249号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕、12について訂正することを認める。
特許第7186249号の請求項1~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続等の経緯
特許第7186249号の請求項1~12に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2021-6475号)は、令和3年1月19日を出願日とする特許出願であって、令和4年11月30日にその特許権の設定の登録がされ、令和4年12月8日に特許掲載公報が発行された。その特許についての本件特許異議申立ての経緯は、以下のとおりである。
令和5年 6月 8日 :特許異議申立人(以下「異議申立人」という。)による請求項1~12に係る特許に対する特許異議の申立て(異議申立人が証拠として提出した甲第1号証を「甲1」と略し、甲第2号証等も同様とする。)
令和5年 9月15日付け:取消理由通知書
令和5年11月17日 :訂正請求書の提出(この訂正請求書による訂正の請求を、以下「本件訂正請求」という。)
令和5年11月17日 :意見書(特許権者)の提出
令和6年 2月16日 :意見書(異議申立人)の提出
第2 本件訂正請求について
1 請求の趣旨及び訂正の内容
(1)請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、特許第7186249号の明細書、特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~11及び請求項12について訂正することを求める、というものである。
(2)訂正の内容
本件訂正請求において特許権者が求める訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は、訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
請求項1に、「前記着色層が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有し」と記載されているのを、「前記第1の色材がピロメテンコバルト錯体染料であり、前記着色層が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~11も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項2
請求項3に、「前記着色層が、過酸化物分解剤、一重項酸素クエンチャーの少なくとも1種類以上を含有することを特徴とする」と記載されているのを、「前記着色層が、過酸化物分解剤を含有することを特徴とする」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求6~11も同様に訂正する。)。
ウ 訂正事項3
請求項5に、「請求項3に記載の光学フィルム」と記載されているのを、「請求項1に記載の光学フィルム」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~11も同様に訂正する。)。
エ 訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0010】に、「着色層が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有し」と記載されているのを、「第1の色材がピロメテンコバルト錯体染料であり、着色層が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し」に訂正する。
オ 訂正事項5
請求項12に、「前記添加剤が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有し」と記載されているのを、「前記第1の色材がピロメテンコバルト錯体染料であり、前記添加剤が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し」に訂正する。
カ 訂正事項6
請求項12に、「着色活性エネルギー線硬化性樹脂」と記載されているのを、「活性エネルギー線硬化性樹脂」に訂正する。
キ 訂正事項7
願書に添付した明細書の段落【0012】に、「添加剤が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有し」と記載されているのを、「第1の色材がピロメテンコバルト錯体染料であり、添加剤が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し」に訂正する。
2 一群の請求項について
本件訂正請求は、一群の請求項〔1~11〕及び12に対して請求されたものである。
3 訂正の要件の判断
(1)一群の請求項1~11について
ア 訂正事項1について
(ア) 訂正の目的
訂正事項1に係る訂正は、「第1の色材」が、「ピロメテンコバルト錯体染料」であるものに限定し、「着色層」が、「分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有」するものであったものを、「分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有」するものに限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ) 新規事項追加の有無
「第1の色材」を「ピロメテンコバルト錯体染料」とすること、及び、「着色層」を「分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有」するものとすることは、本件特許明細書の【0072】~【0073】(第1色材、添加剤)、【0076】(着色層3、着色層6)に記載されている。
そうすると、訂正事項1に係る訂正は、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。したがって、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項1に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。したがって、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。
(エ) 請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~11も同様である。
(オ) 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1に係る訂正は、訂正要件を満たす。
イ 訂正事項2について
(ア) 訂正の目的
訂正事項2に係る訂正は、訂正事項1による訂正に伴い、請求項1の「一重項酸素クエンチャー」と重複する「一重項酸素クエンチャー」を、請求項3から削除してその記載を整合させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ) 新規事項追加の有無
上記(ア)に照らせば、訂正事項2に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項2に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。したがって、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。
(エ) 請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求6~11も同様である。
(オ) 小括
以上のとおりであるから、訂正事項2に係る訂正は、訂正要件を満たす。
ウ 訂正事項3について
(ア) 訂正の目的
訂正事項3に係る訂正は、訂正事項1による訂正に伴い、請求項5において、引用する請求項を請求項1としてその記載を整合させる訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ) 新規事項追加の有無
上記(ア)に照らせば、訂正事項3に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項3に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項3に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。したがって、訂正事項3に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。
(エ) 請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~11も同様である。
(オ) 小括
以上のとおりであるから、訂正事項3に係る訂正は、訂正要件を満たす。
エ 訂正事項4について
(ア) 訂正の目的
訂正事項4に係る訂正は、訂正事項1により請求項1の記載が訂正されたことに対応して、明細書の【0010】の記載を請求項1の記載に整合させる訂正である。そうすると、訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ) 新規事項追加の有無
上記ア(イ)及び上記(ア)に照らせば、訂正事項4に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項4に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項4に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。したがって、訂正事項4に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。
(エ) 小括
以上のとおりであるから、訂正事項4に係る訂正は、訂正要件を満たす。
(2)一群の請求項12について
ア 訂正事項5について
(ア) 訂正の目的
訂正事項5に係る訂正は、「第1の色材」が、「ピロメテンコバルト錯体染料」であるものに限定し、「添加剤」が、「分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を含有」するものであったものを、「分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有」するものに限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ) 新規事項追加の有無
上記(1)ア(イ)に照らせば、訂正事項5に係る訂正は、当業者によって、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。したがって、訂正事項5に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項5に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項5に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。したがって、訂正事項5に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。
(エ) 小括
以上のとおりであるから、訂正事項5に係る訂正は、訂正要件を満たす。
イ 訂正事項6について
(ア) 訂正の目的
訂正事項6に係る訂正は、訂正前の請求項12の「着色活性エネルギー線硬化性樹脂」との記載が、本来、明細書の【0012】及び【0054】に記載の「活性エネルギー線硬化性樹脂」とすべきところ、「着色」が誤って付されて記載されていたものを、誤記を正して「活性エネルギー線硬化性樹脂」とする訂正であるから、特許法120条の5第2項ただし書第2号に掲げる「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものである。
(イ) 新規事項の追加の有無
訂正事項6に係る訂正は、当業者によって、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。したがって、訂正事項6に係る訂正は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項6に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項6に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。したがって、訂正事項6に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。
(エ) 小括
以上のとおりであるから、訂正事項6に係る訂正は、訂正要件を満たす。
エ 訂正事項7について
(ア) 訂正の目的
訂正事項7に係る訂正は、訂正事項5により請求項12の記載が訂正されたことに対応して、明細書の【0012】の記載を請求項12の記載に整合させる訂正である。そうすると、訂正事項7に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
(イ) 新規事項追加の有無
上記(1)ア(イ)及び上記(ア)に照らせば、訂正事項7に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であるから、訂正事項7に係る訂正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記(ア)及び(イ)に照らせば、訂正事項7に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。したがって、訂正事項7に係る訂正は、特許法120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に適合する。
(エ) 小括
以上のとおりであるから、訂正事項7に係る訂正は、訂正要件を満たす。
4 まとめ
本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とし、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許第7186249号の明細書、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正明細書、訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~11〕、12について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
本件訂正は、上記第2のとおり認められたので、本件訂正後の請求項1~12に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件特許発明1」という。請求項2以降についても同様。また、総称して、「本件特許発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
透明基材と、
前記透明基材の一方面側に積層され、色素を含有する着色層と、
前記透明基材の他方面側に積層される機能層とを備え、
前記色素は、
極大吸収波長が470~530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15~45nmである第1の色材と、
極大吸収波長が560~620nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15~55nmである第2の色材とを含有し、
前記透明基材のJIS L 1925に準拠した紫外線遮薇率が85%以上であり、
前記第1の色材がピロメテンコバルト錯体染料であり、
前記着色層が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し、
温度45℃・湿度50%RH条件にて、波長300~400nmでの照度が60W/cm2のキセノンランプの光を120時間照射する耐光性試験の前後の色差である△Eabが3.3以下であることを特徴とする光学フィルム。
【請求項2】
表面の500g荷重での鉛筆硬度がH以上であることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記着色層が、過酸化物分解剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記耐光性試験の前後の色差ΔEabが2.0~3.3であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記着色層に含まれる、一重項酸素クエンチャーがジアルキルホスフェイト、ジアルキルジチオカルバネートまたはベンゼンジチオールあるいはその類似ジチオールの遷移金属錯体であることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記着色層が、前記色素として、極大吸収波長が650~800nmの範囲内にある第3の色材を更に含有することを特徴とする、請求項1~5のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記着色層に含まれる色素が、ポルフィリン構造、メロシアニン構造、フタロシアニン構造、アゾ構造、シアニン構造、スクアリリウム構造、クマリン構造、ポリエン構造、キノン構造、テトラジポルフィリン構造、ピロメテン構造及びインジゴ構造のいずれかを有する化合物及びその金属錯体からなる群から選択される1以上の化合物を含むことを特徴とする、諸求項1~6のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記透明基材と前記着色層との間、または、前記透明基材の前記他方面側に、酸素透過度が10cc/m2・day・atm以下の酸素バリア層を更に備えることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記機能層が、高屈折率層及び低屈折率層を含む反射防止層、または、防眩層を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項10】
帯電防止層または防汚層を更に含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の光学フィルムを備える表示装置。
【請求項12】
透明基材の一方面側に着色層が積層された光学フィルムを形成するために用いられ、活性エネルギー線硬化性樹脂と、光重合開始剤と、色素と、添加剤と、溶剤とを含有する着色層形成用組成物であって、
前記色素が、
極大吸収波長が470~530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15~45nmである第1の色材と、
極大吸収波長が560~620nmの範囲肉にあり、吸光スペクトルの半値幅が15~55nmである第2の色材とを含有し、
前記第1の色材がビロメテンコバルト錯体染料であり、
前記添加剤が、分子量2000以上のダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し、
温度45℃・湿度50%RH条件にて、波長300~400nmでの照度が60W/cm2のキセノンランプの光を前記光学フィルムに対して120時間照射する、耐光性試験の前後の色差であるΔEabが3.3以下であることを特徴とする、着色層形成用組成物。」
第4 取消理由通知書に記載した取消しの理由
特許請求の範囲の請求項1~12に係る特許に対して、令和5年9月15日付けの取消理由通知書において特許権者に通知した取消しの理由の概要は、次のとおりである。
「●理由1(進歩性)
本件特許の請求項1~12に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(引用例等一覧)
甲1:特開2019-56865号公報
甲2:特開2013-75978号公報
甲3:特開2019-191507号公報
甲4:特開2017-138534号公報
甲5:「Tinuvin944」,[online],ChemBK,1-6葉,インターネット<URL:https://www.chembk.com/en/chem/Tinuvin%20944>
甲6:「Technical Information Plastic Additives」,「Chimassorb(R)944」(当合議体注:登録商標であることを示す丸付きRを、括弧付きの(R)で代用して表記している。以下同様。),2019年8月,BASF,p.1-3
甲7:「Technical Information Plastic Additives」,「Tinuvin(R)622」,2011年3月,BASF,p.1-2
甲8:「プラスチック用添加剤 アデカスタブ 製品一覧」,株式会社ADEKA,1-3葉(特に、第2葉)(「プラスチック用添加剤 アデカスタブ 製品一覧」,[online],作成日2017/07/04,更新日2018/06/01,株式会社ADEKA,1-16頁(特に、10頁の「アデカスタブ ヒンダードアミン系光安定剤」)[2023年8月16日検索],インターネット<URL:https://www.adeka.co.jp/chemical/catalog/pdf/J05-0617B%20No.10-9.pdf>としても同内容のものが入手可能)
甲9:山下 賢治,「●総説特集 ゴム用劣化防止剤 光安定剤による高分子劣化制御」,日本ゴム協会誌,第91巻,第12号,2018,一般社団法人日本ゴム協会,p.454-459
甲10:国際公開第2018/164052号
甲11:特開2019-8294号公報
(当合議体注:甲1は、主引用例であり、甲2~甲9は、技術常識あるいは周知技術を示すための文献であり、甲10及び甲11は、副引用例である。)
●理由2(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。」
第5 当合議体の判断
1 理由1(進歩性)についての合議体の判断
(1) 甲1に記載された発明
ア 甲1の請求項1、【0001】、【0013】、【0025】、【0062】~【0063】、【0077】~【0078】及び【0087】等の記載によれば、甲1には、「ディスプレイ用光学フィルタ」に係る発明として、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「視認部最表面に設けられ、粘着層/透光性基材/光学機能層からなる構成を有するディスプレイ用光学フィルタであって、(【0025】、【0077】~【0078】、【0087】)
粘着層として、酸価が0mgKOH/g~20mgKOH/gである粘着性樹脂と、
480nm~510nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素1と、
580nm~610nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素2とを少なくとも有する粘着層を備え、
該粘着層の、該色素1の吸収極大波長での吸光度の値を1としたとき、該粘着層の、該色素1の吸収極大波長での吸光度の値の1/2の値における2つの波長間距離である、半値全幅が、10nm~40nmであり、
該粘着層の、該色素2の吸収極大波長での吸光度の値を1としたとき、該粘着層の、該色素2の吸収極大波長での吸光度の値の1/2の値における2つの波長間距離である、半値全幅が、10nm~30nmであり、
該粘着層の、該色素1及び色素2の吸収極大波長のうち最大となる吸収極大波長での吸光度の値を1としたとき、550nm~570nmにおける吸光度が、0.25以下であり、(請求項1)
透光性基材が、紫外線吸収フィルムである、(【0063】)
ディスプレイ用光学フィルタ。」
(当合議体注:引用発明の認定根拠箇所を括弧により示す。)
イ 甲1の請求項1、【0025】、【0026】~【0028】、【0042】、【0061】、【0062】~【0063】、【0067】及び【0071】~【0072】等の記載によれば、甲1には、「塗工液」に係る発明として、次の発明(以下「引用塗工液発明」という。)が記載されていると認められる。
「粘着層/紫外線吸収フィルムからなる構成(【0025】、【0062】~【0063】、【0071】~【0072】)のディスプレイ用光学フィルタを形成するために用いられる、粘着層用粘着剤組成物と溶剤とを含有した塗工液であって、(【0061】、【0067】)
粘着層用粘着剤組成物は、酸価が0mgKOH/g~20mgKOH/gである粘着性樹脂と、480nm~510nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素1と、580nm~610nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素2とを少なくとも有し、(【0026】)
色素1の吸収極大波長での吸光度の値の1/2の値における2つの波長間距離である、半値全幅が、10nm~40nmであり、
色素2の吸収極大波長での吸光度の値を1としたとき、粘着層の、色素2の吸収極大波長での吸光度の値の1/2の値における2つの波長間距離である、半値全幅が、10nm~30nmであり、
色素1及び色素2の吸収極大波長のうち最大となる吸収極大波長での吸光度の値を1としたとき、550nm~570nmにおける吸光度は、少なくとも0.25以下である、(請求項1、【0027】~【0028】、【0042】)
塗工液。」
(当合議体注:「粘着層用粘着剤組成物」及び「粘着剤組成物」については、「粘着層用粘着剤組成物」に記載を統一した。引用塗工液発明の認定根拠箇所を括弧により示す。)
(2) 本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と、引用発明とを対比する。
(ア) 透明基材、機能層
引用発明の「透光性基材」及び「光学機能層」は、その文言からみて、本件特許発明1の「透明基材」及び「機能層」に相当する。
(イ) 第1の色材、第2の色材、色素及び着色層
a 引用発明の「粘着層」の「色素1」及び「色素2」は、ディスプレイからの白色光に対し、その吸収波長域の光を吸収し、色を変換するから、着色機能を有するといえる。
してみると、引用発明の「粘着層」は、本件特許発明1の「着色層」に相当する。
b 引用発明の「粘着層」は、「色素1」及び「色素2」を含有するから、本件特許発明1の「着色層」の、「色素を含有する」との要件を具備する。
c 引用発明の「粘着層」が有する「色素1」及び「色素2」の「極大吸収波長」及び「半値全幅」は、本件特許発明1の「極大吸収波長」及び「半値幅」に対応する。
引用発明の「色素1」の「極大吸収波長」及び「半値全幅」からみて、引用発明の「色素1」及び「色素2」は、それぞれ本件特許発明1の、「極大吸収波長が470~530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15~45nmである」とされる、「第1の色材」、及び、「極大吸収波長が560~620nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15~55nmである」とされる、「第2の色材」に相当する。
また、上記bより、引用発明は、本件特許発明1の、「前記色素は」、「第1の色材と」、「第2の色材とを含有し」との要件を具備する。
(ウ) 光学フィルム
a 上記(ア)と(イ)より、引用発明の「ディスプレイ用光学フィルタ」は、本件特許発明1の「光学フィルム」に相当する。
b 引用発明は、「粘着層/透光性基材/光学機能層からなる構成を有する」。
そうすると、引用発明の「ディスプレイ用光学フィルタ」は、本件特許発明1の「光学フィルム」の、「透明基材と」、「前記透明基材の一方面側に積層され、色素を含有する着色層と」、「前記透明基材の他方面側に積層される機能層とを備え」との要件を具備する。
イ 一致点及び相違点
本件特許発明1と、引用発明は、
「 透明基材と、
前記透明基材の一方面側に積層され、色素を含有する着色層と、
前記透明基材の他方面側に積層される機能層とを備え、
前記色素は、
極大吸収波長が470~530nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15~45nmである第1の色材と、
極大吸収波長が560~620nmの範囲内にあり、吸光スペクトルの半値幅が15~55nmである第2の色材とを含有する、光学フィルム。」である点において一致し、以下の点で相違、又は、一応相違する。
(相違点1-1)
本件特許発明1においては、「前記透明基材のJIS L 1925に準拠した紫外線遮蔽率が85%以上であ」るのに対して、引用発明においては、「紫外線吸収フィルム」の「JIS L 1925に準拠した紫外線遮蔽率」が明らかでない点。
(相違点1-2)
「第1の色材」が、本件特許発明1においては、「ピロメテンコバルト錯体染料」であるのに対して、引用発明においては、材料が特定されていない点。
(相違点1-3)
本件特許発明1においては、「前記着色層が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤と一重項酸素クエンチャーとを含有し」ているのに対して、引用発明においては、「粘着層」(「着色層」)が、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤及び一重項酸素クエンチャーとを含有していない点。
(相違点1-4)
本件特許発明1においては、「温度45℃・湿度50%RH条件にて、波長300~400nmでの照度が60W/cm2のキセノンランプの光を120時間照射する耐光性試験の前後の色差であるΔEabが3.3以下である」のに対して、引用発明は、そのようなものであるかどうか不明である点。
ウ 進歩性についての判断
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
(ア) 甲1及びその他の証拠を検討しても、甲1発明において、「色素1」として、特定の染料である、相違点1-2に係る「ピロメテンコバルト錯体染料」を採用することの記載ないし示唆はない。より詳細には以下のとおりである。
a 甲1における発明が解決しようとする課題は、「本発明は、耐久性は勿論のこと、波長550nm~570nmにおける光吸収(吸光度)が低く、ディスプレイに用いた際の色再現性も良好なディスプレイ用光学フィルタを提供する」(【0011】)ことであるところ、
引用発明の「粘着層」は、「480nm~510nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素1」に加えて「580nm~610nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素2とを少なくとも有」し、「粘着層」の「色素1」の「480nm~510nm」の「吸収極大波長での吸光度の値を1としたとき」、「色素1の吸収極大波長での吸光度の」「半値全幅が10nm~40nmであり」、「粘着層」の「色素2」の「580nm~610nm」の「吸収極大波長での吸光度の値を1としたとき」、「色素2の吸収極大波長での吸光度の」「半値全幅が」「10nm~30nmであり」、「粘着層」の、「色素1及び色素2の吸収極大波長のうち最大となる吸収極大波長での吸光度の値を1としたとき、550nm~570nmにおける吸光度が」「0.25以下であ」るものである。
b 甲1には、引用発明の「色素1」について、「アゾ系化合物、シアニン系化合物、ピラゾールスクアリリウム系化合物、ポルフィリン系化合物、ジピロメテン金属キレート系化合物、ピロメテン系化合物、ローダミン系化合物等を用いることができるが、本発明においては、他の色素との組み合わせ、粘着層における色素の半値全幅、光吸収(吸光度)、耐久性等を考慮し、ポルフィリン系化合物を用いることが好ましい。」(【0043】)と記載されている(下線は合議体が付した。以下同じ。)。
c そして、甲1の【0102】~【0105】には、甲1の発明を具体化した、粘着層を備えたディスプレイ用光学フィルタの実施例として、ポリフィリン系化合物(【0105】【化2】)からなる色素1が具体的に開示されている。
d 甲1の上記a~cの記載に接した当業者であれば、引用発明の色素1を具体化するにあたり、他の色素との組み合わせ、粘着層における色素の半値全幅、光吸収(吸光度)、耐久性等の観点から好ましく(上記b参照)、かつ、実施例で具体的に開示されたポルフィリン系化合物を採用することをまず考える。
仮に、「480nm~510nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素1」として、ポルフィリン系化合物以外の材料の採用を検討するとしても、吸収極大波長条件だけでなく、上記aで述べたように、「580nm~610nmの波長領域に吸収極大波長を有する色素2」と共に用いられて、色素1の吸収極大波長での吸光度及び色素2の吸収極大波長での吸光度における所定の半値全幅となり、かつ、(色素1及び色素2の吸収極大波長のうち最大となる吸収極大波長での吸光度の値を1として)550nm~570nmにおける吸光度が0.25以下となる(条件(I))の色素1を、上記bで述べた、アゾ系化合物、シアニン系化合物、ピラゾールスクアリリウム系化合物、ポルフィリン系化合物、ジピロメテン金属キレート系化合物、ピロメテン系化合物、ローダミン系化合物の中から選択しなければならない(条件(II))ところ、甲1には、これらの条件を満足する色素1材料として、ピロメテンコバルト錯体染料は記載も示唆もされていない。
e また、上記の吸収極大波長条件、条件(I)及び(II)を満たす色素1材料として、ピロメテンコバルト錯体染料があることは、取消理由通知で引用した甲2~甲11のいずれにも記載も示唆もされておらず、さらに、本件特許出願時に周知技術であるとも、当業者の技術常識であるともいえない。
してみると、引用発明において、相違点1-2に係る本件特許発明1の構成とすることが、当業者に容易に想到し得たことであるということはできない。
(イ) 令和6年2月16日付け意見書における異議申立人の主張について
a 同意見書1頁下から5行~2頁17行において、異議申立人は、
新たに提出した甲12(特開2020-76046号公報)の【0115】~【0118】には、着色剤としてのジピロメテン金属錯体化合物が記載され、またこの錯体を形成可能な金属原子として、分光特性等の観点からCoが最も好ましい旨が記載され、さらに、甲12の【0119】には、ジピロメテン系染料が広く知られていることが記載されているから、甲1に記載されているジピロメテン金属キレート系化合物やピロメテン系化合物からピロメテンコバルト錯体染料を選択することに何ら困難性はなく、設計事項である旨と主張する。
b しかしながら、甲12に記載の発明が解決しようとする課題は、「粘度安定性に優れた着色組成物および感光性着色組成物の提供、また、それらを用いることにより、異物が少なく、さらには耐溶剤性に優れた高品質なカラーフィルタおよびカラー液晶表示装置を提供する」(甲12の【0012】)であり、また、同【0115】~【0120】に記載の「ジピロメテン系染料」は、甲12でいう本発明の着色組成物の必須の構成である着色剤(A)(請求項1、【0035】~【0063】)と、「色度を調整するため」、「カラーフィルタとして要求される光学特性を満たすため」に併用される染料(a)(同【0064】、【0086】)として、他の多数の染料とともに例示された染料のうちの1つにすぎない。
そうすると、引用発明の課題(上記(ア)a)と、甲12の記載の発明の上記課題は異なり、色素1と甲12の「ジピロメテン系染料」それぞれの作用、機能も異なる。
具体的には、甲12の「ジピロメテン系染料」は、「着色剤におけるジピロメテン系染料としては、カラーフィルタの明度およびコントラスト比を向上させる観点から、500~600nm付近に吸収極大を有するジピロメテン系染料が好ましく、525~575nm付近に吸収極大を有するジピロメテン系染料がより好ましく、540~560nm付近に吸収極大を有するジピロメテン系染料が特に好ましい。」(甲12の【0120】)とされるところ、引用発明の色素1には、波長550nm~570nmにおける光吸収(吸光度)が低いこと、480nm~510nmの波長領域に吸収極大波長を有することが求められるから、染料において求められる吸収特性が大きく異なる。
そうすると、甲1の記載に接した当業者が、引用発明の色素1の具体化にあたり、甲12を参考にしようとは考えない。
してみると、同意見書における異議委申立人の主張を採用することはできない。
エ 小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1に記載された発明及び甲2~12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(3) 本件特許発明2~11について
本件特許発明2~11は、本件特許発明1の構成を全て具備する発明であるから、上記(2)ウで述べた理由と同様な理由により、甲1に記載された発明及び甲2~甲12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
(4) 本件特許発明12について
本件特許発明12と引用塗工液発明とを対比すると、両者は、上記(2)イで抽出した相違点1-2と同じ点で少なくとも相違する。
そうすると、本件特許発明12は、上記(2)ウで述べた理由と同様な理由により、甲1に記載された発明及び甲2~甲12に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。
2 理由2(サポート要件)についての合議体の判断
(1) 異議申立人の主張
異議申立人は、特許異議申立書において、
本件特許明細書の実施例において、分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤として効果が確認されているのは、Chimasorb944のみであり、他の分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を用いた場合、あるいは分子量が3100を超えるヒンダードアミン系光安定剤を用いた場合について、本件特許発明の効果を奏するか不明であるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明における実施例からは、出願時の技術常識に照らしても、本件特許発明1~12まで拡張ないし一般化することはできるものではなく、本件特許発明1~12は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えたものである、
(2) サポート要件についての判断
本件特許明細書の【0055】の「ラジカル捕捉剤は、色素が酸化劣化する際のラジカルを捕捉し、自動酸化を抑制する働きを持ち、色素劣化(退色)を抑制する。ラジカル捕捉剤として、分子量が2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を用いると、高い退色抑制効果が得られる。ラジカル捕捉剤の分子量が低い場合、揮発しやすいため、着色層内へ留まる分子が少なく、十分な退色抑制効果を得ることが難しい。ラジカル捕捉剤として好適に用いられる材料としては、例えば、BASF社製Chimasorb2020FDL、Chimasorb944FDL、Tinuvin622、ADEKA社製LA-63Pなどが挙げられる。」との、ラジカル捕捉剤として、分子量が2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を用いることによって色素劣化(退色)を抑制できる作用・機序の説明や、【0067】~【0097】(特に、【0076】【表3】の着色層2、3、6、【0069】【表1】の実施例3~7、実施例9、【0096】【表6】の実施例3~7、実施例9の「着色層耐光性」)の記載から、ラジカル捕捉剤の分子量が高いほど、着色層内へ留まる分子が多く、退色抑制効果が得られことが理解でき、Chimasorb944FDL以外の他の分子量2000以上のヒンダードアミン系光安定剤を用いた場合、あるいは分子量が3100を超えるヒンダードアミン系光安定剤を用いた場合であっても、高い退色抑制効果(ΔEabが3.3以下)が得られると当業者は理解できる。
してみると、本件特許発明1~12は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えたものであるということはできない。
してみると、異議申立人の異議申立書における上記主張を採用することはできない。
第6 むすび
本件特許は、いずれも、取消理由通知書に記載した取消しの理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700599