特許異議申立
2025-700852
冷凍牡蠣集合体、冷凍牡蠣集合体の切断物、牡蠣フライ食品、および牡蠣フライ食品の製造方法
- 審判番号
- 2025-700852
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-091579
- 登録番号
- 7638495
- 請求日
- 2025年08月27日
- 審決日
- 2026年05月13日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ニッスイ
- 【権利者代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【権利者代理人】前川 純一
- 【権利者代理人】上島 類
- 【権利者代理人】伊藤 潤
- 【権利者】クニヒロ株式会社
- 【権利者代理人】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
- 【権利者代理人】前川 純一
- 【権利者代理人】上島 類
- 【権利者代理人】伊藤 潤
- 【異議申立人】河野 哲也
- 【異議申立人】野村 恭子
- 審判長/審判官
- 審判長 植前 充司
- 審判官 松田 成正
- 審判官 宮久保 博幸
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7638495号発明「冷凍牡蠣集合体、冷凍牡蠣集合体の切断物、牡蠣フライ食品、および牡蠣フライ食品の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7638495号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔9-11〕について訂正することを認める。
特許第7638495号の請求項1ないし17に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7638495号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和6年4月12日に出願された特願2024-64938号の一部を、令和6年6月5日に新たな特許出願としたものであって、令和7年2月21日にその特許権の設定登録(請求項の数17)がされ、同年3月4日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、同年8月27日に特許異議申立人 河野 哲也(以下、「申立人A」という。)により、特許異議の申立て(対象請求項:5、7ないし10、12、13及び15ないし17)がされ、同年同月28日に特許異議申立人 野村 恭子(以下、「申立人B」という。)により、特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年10月6日に申立人Aより特許異議申立書に対する証拠説明書が提出され、同年同月23日に申立人Aより特許異議申立書に対する手続補正書(方式)が提出され、同年12月22日付けで取消理由が通知され、令和8年2月18日に特許権者 株式会社ニッスイ及びクニヒロ株式会社(以下、「特許権者」という。)より訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)がなされるとともに意見書の提出がされたものである。
なお、当審から申立人A及び申立人Bに対して、令和8年2月27日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)を行ったものの、いずれの申立人からも応答がなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 請求の趣旨
本件訂正請求の趣旨は、「特許第7638495号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項9~11について訂正することを求める。」というものである。
2 訂正の内容等
本件訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の(1)及び(2)のとおりである。(下線は、訂正箇所について合議体が付したものである。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項9に
「2つ以上の牡蠣の個体を含み、少なくとも1つの牡蠣の個体は切断された断片である、牡蠣フライ食品。」
と記載されているのを、
「2つ以上の牡蠣の個体を含み、少なくとも1つの牡蠣の個体は切断された断片であり、
1つ以上の牡蠣の個体のむき身全体を含む、牡蠣フライ食品。」
に訂正する(請求項9の記載を引用する請求項10も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項11に
「ペースト状の牡蠣を含む、請求項9または10に記載の牡蠣フライ食品。」
と記載されているのを、
「2つ以上の牡蠣の個体を含み、少なくとも1つの牡蠣の個体は切断された断片であり、ペースト状の牡蠣を含む、牡蠣フライ食品。」
に訂正する。
(3)一群の請求項について
訂正前の請求項9ないし11について、請求項10及び11は請求項9を直接または間接的に引用して特定するものであるから、訂正前の請求項9ないし11に対応する訂正後の請求項9ないし11は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項9の訂正は、牡蠣フライ食品につき「1つ以上の牡蠣の個体のむき身全体を含む、」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1に係る請求項9の訂正は、本件特許の明細書の【0049】の記載からみて、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
請求項9の記載を引用する請求項10についても同様である。
(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項11の訂正は、訂正前の請求項11が請求項9又は10を引用するものであったところ、訂正前の請求項9を引用する請求項11を独立形式の請求項に書き改めるものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするとともに、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項2に係る請求項11の訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。
4 独立特許要件について
本件においては、訂正前のすべての請求項1ないし17に対して特許異議の申立てがされているので、上記訂正事項に係る訂正については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
5 訂正についてのまとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔9-11〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、訂正後の請求項〔9-11〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし17に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明17」という。また、総称して「本件発明」という。)は、令和8年2月18日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし17に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
複数の牡蠣が一体となって平板状に凍結された冷凍牡蠣集合体であって、
牡蠣フライ食品用であり、
ペースト状の牡蠣を含む、冷凍牡蠣集合体。
【請求項2】
メチルセルロースを含む、請求項1に記載の冷凍牡蠣集合体。
【請求項3】
α化澱粉および/または油脂加工澱粉を含む、請求項1または2に記載の冷凍牡蠣集合体。
【請求項4】
互いに平行または略平行な2つの面を有する、請求項1または2に記載の冷凍牡蠣集合体。
【請求項5】
複数の牡蠣が一体となって平板状に凍結された冷凍牡蠣集合体の切断物であって、牡蠣フライ食品用である、切断物。
【請求項6】
ペースト状の牡蠣を含む、請求項5に記載の冷凍牡蠣集合体の切断物。
【請求項7】
切断された牡蠣の断片を含む、請求項5または6に記載の冷凍牡蠣集合体の切断物。
【請求項8】
直方体または略直方体である、請求項5または6に記載の冷凍牡蠣集合体の切断物。
【請求項9】
2つ以上の牡蠣の個体を含み、少なくとも1つの牡蠣の個体は切断された断片であり、
1つ以上の牡蠣の個体のむき身全体を含む、牡蠣フライ食品。
【請求項10】
メチルセルロース、α化澱粉、および油脂加工澱粉からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項9に記載の牡蠣フライ食品。
【請求項11】
2つ以上の牡蠣の個体を含み、少なくとも1つの牡蠣の個体は切断された断片であり、ペースト状の牡蠣を含む、牡蠣フライ食品。
【請求項12】
複数の牡蠣を寄せ集めて凍結し冷凍牡蠣集合体とする凍結工程と、
前記冷凍牡蠣集合体を凍ったまま切断する切断工程と、
を有する牡蠣フライ食品の製造方法。
【請求項13】
前記凍結工程の前に、つなぎと牡蠣とを混合する混合工程を有する、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記つなぎがペースト状の牡蠣を含有する、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記つなぎが、メチルセルロース、α化澱粉、および油脂加工澱粉からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項13または14に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項12または13に記載の製造方法により得られる牡蠣フライ食品。
【請求項17】
2つ以上の牡蠣の個体を含み、少なくとも1つの牡蠣の個体は切断された断片である、請求項16に記載の牡蠣フライ食品。」
第4 特許異議申立理由の要旨
1 申立人Aが申し立てた特許異議申立理由の要旨
令和7年8月27日に申立人Aが提出し、同年10月23日に提出した手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書(以下、「特許異議申立書A」という。)に記載した請求項5、7ないし10、12、13及び15ないし17に係る特許に対する特許異議申立理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
(1)申立理由A1-1(甲第A1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項5、7、9、10、12、13及び15ないし17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A1号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由A1-2(甲第A2号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項5、7ないし10、12、16及び17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A2号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)申立理由A1-3(甲第A3号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項5、7ないし10、12、16及び17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A3号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(4)申立理由A1-4(甲第A4号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項9及び10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第A4号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(5)証拠方法
・甲第A1号証:「端材を利用した商品~結着剤で成形肉~」、株式会社フードケアリ 開発ブログ、令和4年12月22日(掲載日)、<URL: http://fcar.net/blog/2022-12-22.html>
・甲第A2号証:「あのロングセラー商品が、25年ぶりにリニューアル! ~おいしさをさらに追求!キーワードは「2→1」~ 「フィレオフィッシュ」 10月31日(木)までに全店舗で切り替え」日本マクドナルド株式会社 ニュースリリース、令和1年10月28日(掲載日)、<URL: https://www.mcdonalds.co.jp/company/news/2019/1028a/>
・甲第A3号証:「SタラスティックPBO (皮なし小骨とり)15x15x120mm」、業務用食材卸売市場 Mマート、<URL: https://www.m-mart.co.jp/rep/item/detail/vcap/35?type=buybuys&no=number>
・甲第A4号証:「ロスなく使える“形を揃えた”白身の高級魚」、素材のちから、平成30年3月31日(掲載日)<URL: https://www.sozainochikara.jp/post/2XgJZbbh>
・甲第A5号証:特開2023-54441号公報
・甲第A6号証:特開2017-42098号公報
・甲第A7号証:国際公開第2024/048176号
なお、証拠の表記については、特許異議申立書Aにおける記載におおむね従った。また、システム上使用できない文字は他の文字で代用した。以下、順に「甲A1」のようにいう。
2 申立人Bが申し立てた特許異議申立理由の要旨
令和7年8月28日に申立人Bが提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書B」という。)に記載した請求項1ないし17に係る特許に対する特許異議申立理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
(1)申立理由B1-1(甲第B2号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1及び9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)申立理由B1-2(甲第B3号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)申立理由B1-3(甲第B4号証を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、その特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(4)申立理由B2-1(甲第B2号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B2号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(5)申立理由B2-2(甲第B3号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B3号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(6)申立理由B2-3(甲第B4号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし17に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第B4号証に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(7)申立理由B3(明確性)
本件特許の請求項1ないし4、6ないし8、11及び14ないし17に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
申立理由B3の具体的理由は次のとおりである。
ア 本件発明1ないし4、6ないし8、11、14及び15
本件発明1、6、11及び14における「ペースト状の牡蠣」の用語について、その意味は一義的に定義されていない。本件特許の明細書の段落【0023】には、以下の記載がある。
「冷凍牡蠣集合体は、ペースト状の牡蠣を含んでいてもよい。ペースト状の牡蠣は、牡蠣の可食部(内臓、貝柱、およびえら)の一部または全部を、フードプロセッサー等を用いて粉砕混合してペースト状としたものであってもよい。」
つまり、ペースト状の牡蠣は、牡蠣の可食部をフードプロセッサー等を用いて粉砕混合してペースト状としたもの、すなわち、人為的に調製したペーストのみでなく、他のペースト状の牡蠣も包含される。牡蠣について、身が柔らかく崩れやすいこと(甲9)、体表に粘液を有すること(甲10)は、本件特許の出願日前より当分野の技術常識である。そのため、ペースト状の牡蠣には、フードプロセッサー等を用いて人為的に調製されることなく、牡蠣がペースト状となったものも存在する。本件発明1の「ペースト状の牡蠣」にこのようなペースト状の牡蠣が含まれるか否かが不明確である。したがって、本件発明1、6、11及び14並びにこれらを引用する本件発明2ないし4、7、8及び15は不明確である(特許異議申立書Bの50~51頁)。
イ 本件発明16及び17
本件発明16は、請求項12または13に記載の製造方法により得られる牡蠣フライ食品であり、すなわち、物の発明についての請求項にその物の製造方法が記載されている場合に該当するが、その物を構造、機能等で特定することが不可能、あるいはおよそ実際的ではない事情(以下、「不可能・非実際的事情」という。)があるとはいえないため、不明確である。本件発明16を引用する本件発明17についても同様である(特許異議申立書Bの51頁)。
(8)証拠方法
・甲第B1号証:特許第7638495号公報
・甲第B2号証:特開2015-146782号公報
・甲第B3号証:「かきフライ レシピ 七條 清孝さん」、みんなのきょうの料理、2007年11月13日(掲載日)、<URL: https://www.kyounoryouri.jp/recipe/7755_かきフライ.html>
・甲第B4号証:特開平4-88967号公報
・甲第B5号証:特開2017-42098号公報
・甲第B6号証:国際公開第2024/048176号
・甲第B7号証:特開昭56-5072号公報
・甲第B8号証:特開昭59-120059号公報
・甲第B9号証:「下ごしらえ・保存の基本 魚介の切り方・下ごしらえ 牡蠣の下処理」、cotogoto、<URL: https://www.cotogoto.jp/blog/2018/12/kihon_kaki_shitashori.html>
・甲第B10号証:「牡蠣の摂餌と鰓換水」、平田水産ブログ、2023年7月1日(掲載日)、<URL: https://hirata.isv.earth/wordpress/index.php/2023/07/01/post-116/>
・甲第B11号証:「カキ小屋の手作りジャンボフライ(カキ)」、ARISE GIFT、<URL: https://www.arise-gift.jp/goods/154582436/>
・甲第B12号証:Thais 'R' Us Oriental Grocersによる投稿、Facebook、2014年12月6日、<URL: https://www.facebook.com/100067031716960/posts/745382092204072/>
なお、証拠の表記については、特許異議申立書Bにおける記載におおむね従った。以下、順に「甲B1」のようにいう。
第5 令和7年12月22日付けで特許権者に通知した取消理由について
令和7年12月22日付けで特許権者に通知した取消理由は、次のとおりである。
なお、取消理由には、上記第4の特許異議申立理由のうち、申立理由B1-1及び申立理由B2-1の請求項9及び10に係る部分が包含される。
1 取消理由1(甲B2を主たる証拠とする新規性)
本件特許の請求項9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲B2に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 取消理由2(甲B2を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項9及び10に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲B2に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
第6 当審の判断
以下で検討するとおり、当審は、令和7年12月22日付けで特許権者に通知した取消理由及び申立人A及びBがそれぞれ特許異議申立書A及びBで主張する申立理由では、本件特許発明1ないし17に係る特許を取り消すことはできないものと判断する。
なお、新規性及び進歩性に係る理由については、主たる証拠毎にまとめて検討する。
1 取消理由1、取消理由2、申立理由B1-1及び申立理由B2-1(甲B2を主たる証拠とする新規性、進歩性)について
(1)甲B2の記載事項等
ア 甲B2の記載事項
甲B2には「牡蛎の調理方法」に関し、次の記載がある。下線は当審で付したものである。
・「【請求項1】
牡蛎の剥き身を貝から剥き出して、剥き身の表面に塩水が付着した状態で剥き身を細片に裁断し、塩分を含む内臓部分の細片と他の身の部分の細片とが混合された細片混合物を加工する刻み込み工程と、
対をなす電極の間に前記細片混合物を搬送しながら、塩分を含む内臓部分が分散された前記細片混合物を通電してジュール熱により殺菌処理する殺菌処理工程と、
殺菌処理された前記細片混合物を、最終の牡蛎食品素材の形状に成形する成形工程と、
を有する牡蛎の調理方法。
【請求項2】
請求項1記載の牡蛎の調理方法において、剥き身を貝から剥き出す際に剥き出し傷が付いた剥き身、および剥き出し時に生じた剥き身の小片を含めて、前記細片混合物を加工する、牡蛎の調理方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の牡蛎の調理方法において、成形された前記牡蛎食品素材を、調理加熱して食品に供するようにした、牡蛎の調理方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の牡蛎の調理方法において、前記牡蛎食品素材を、剥き身を貝から剥き出したときの剥き身形状に成形する、牡蛎の調理方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の牡蛎の調理方法において、前記殺菌処理工程は、複数のローラ電極が平行となった配置されたローラ電極群と、前記ローラ電極群に配置され、前記細片混合物を搬送する透水性の搬送ベルトとを有し、ジュール熱で前記細片混合物を通電して加熱するようにした、牡蛎の調理方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の牡蛎の調理方法において、成形された前記牡蛎食品素材を用いて牡蛎フライを調理するようにした、牡蛎の調理方法。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載される加熱装置は、透水性の搬送ベルトが装着されたローラ電極群を有し、ローラ電極を回転させて練り製品を搬送しながら通電加熱するようにしている。特許文献2に記載された加熱装置は、上下に配置されて練り製品を搬送しながら通電加熱する2つのローラ電極群を有している。特許文献3に記載される加熱装置は、それぞれ回転ローラに掛け渡された2つの電極ベルトを有し、電極ベルトの間に練り製品を挟み込んで搬送しながら通電加熱するようにしている。このように、蒲鉾等の魚肉の練り製品を連続的に通電加熱する場合には、練り製品の導電性を調整するために、魚肉に塩水を加えて練り製品素材を調合する必要がある。
【0008】
これに対し、牡蛎の剥き身を、貝から剥き出したままの状態で、同様に通電加熱するために、上述した従来の加熱装置を用いてジュール熱により剥き身を加熱する試みがなされた。しかしながら、剥き身をジュール加熱すると、内蔵の部分がその外側の他の身の部分よりも先に温度が高くなった。牡蛎の内蔵部分は、塩分を多く含むとともにその容積が他の部分に比して比較的大きいからであると考えられる。したがって、牡蛎を通電加熱すると、内臓部分が先に通電加熱され、温度が高くなった内蔵部分からその外側の身の部分に熱が伝達されて全体が殺菌加熱されることになるため、剥き身全体を均一に加熱することができないという問題点がある。このため、ジュール熱により殺菌加熱した後の剥き身を用いた牡蛎フライは、貝から取り出した直後の剥き身を用いた牡蛎フライとは、相違した食感となることが判明した。
【0009】
本発明の目的は、調理処理する前に剥き身を殺菌加熱するようにした牡蛎の調理方法を提供することにある。」
「【発明の効果】
【0011】
牡蛎の剥き身を細片化して細片混合物を加工するようにしたので、貝から剥き身を取り出す際に剥き身に傷が付いたブロークン剥き身を含めて、細片混合物を加工することができる。これにより、従来では製品化することができなかった剥き身を、牡蛎料理の素材として利用することができ、牡蛎料理の素材を低コストで製造することができる。
【0012】
牡蛎の剥き身に含まれる内臓部分には、塩分を含むエキス成分が多く含まれており、剥き身を細片化すると、エキス成分を含む内臓部分と他の身の部分とが分散された細片混合物となるので、通電抵抗を調整することなく、エキス成分を利用して、そのままの状態でジュール加熱することができる。細片混合物をジュール加熱すると、従来のように、剥き身をボイル加熱したり、蒸し加熱したりした場合に比して、加熱処理の歩留まりを大幅に向上することができる。さらに、処理後の牡蛎料理は、貝から取り出された直後の剥き身を調理した場合と同様の味と風味となった。」
「【0014】
以下、本発明の調理方法の一実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1に示されるように、この調理方法は、剥き身工程1を有し、剥き身工程1により牡蛎の貝内部から身の部分が剥き取られて剥き身が製造される。剥き身の製造は、牡蛎の産地において行うようにしても良く、産地から貝付きで輸送された牡蛎を加工工場において行うようにしても良い。所定量の剥き身をブロック状として、冷凍工程2において冷凍される。冷凍保存することにより、多数のブロック状に冷凍されてストックされた多量の剥き身を、後の工程において連続的に処理することができる。
【0015】
牡蛎の産地または牡蛎の加工工場において、剥き身を直接製品化するために、貝から身を剥き出す際に、傷が付いた剥き身が発生したり、剥き身の小片が発生したりすることがある。これらの剥き身は、傷ものないしブロークンと言われ、製品化することができなかったが、このようなブロークンも含めて剥き身を製造することができる。
【0016】
剥き身は、冷凍処理された剥き身を、刻み込み工程3において解凍しながら、表面に塩水が付着した状態のもとで細片に裁断される。ただし、冷凍工程2を省略し、冷凍処理することなく、剥き身を生のままで細片に裁断するようにしても良い。この刻み込み工程3においては、ニーダやカッタにより、剥き身の表面に塩水が付着した状態で、内臓部分と他の身の部分とが裁断される。これにより、内臓部分に多量に含まれる塩分が含まれた状態の内臓部分の細片と、他の身の部分の細片とが混合されて細片混合物が加工される。細片混合物としては、上述した傷ものつまりブロークンをも含めることができる。細片混合物は、内臓部分の細片に含まれる塩水が他の身の部分の細片を覆うようにして、内部に塩分が分散されて混合された状態となる。この刻み込み工程3において冷凍保存された剥き身を細片混合物に処理する際には、解凍しながら行うことになり、多量のストック品を連続的に処理することができる。
【0017】
細片混合物は、殺菌処理工程4において連続的に搬送しながら殺菌処理される。この殺菌処理は、細片混合物に電流を流すことによりジュール熱を細片混合物に発生させることによって行われる。この通電加熱処理を行うときには、塩分を含む内臓部分が分散した状態となっているので、細片混合物の電気抵抗値を調整することなく、内臓部分に含まれる塩水をそのまま利用して、通電処理することができる。しかも、通電加熱処理を行うと、細片混合物を短時間で所定の殺菌温度まで加熱することができるので、剥き身の容積が減少することなく、歩留まり良く殺菌処理を行うことができる。
【0018】
細片混合物は、成形工程5において最終の牡蛎食品素材の形状に成形される。その牡蛎食品素材は、最終的な調理工程6において調理加熱されて食用に供される。成形される牡蛎食品素材の形状としては、その全体形状を、貝から剥き身を剥き出したときの剥き身形状に近似した形状に成形するようにしても良い。その場合には、そのままの形状でパン粉を付けて油で揚げて調理加熱すると牡蛎フライを調理することができる。このような調理方法により調理した牡蛎フライは、内臓と他の身の部分とが混合された状態となっているが、貝から剥き出した剥き身をそのまま油で揚げて調理した牡蛎フライとほぼ同様の味と食感となることが判明した。特に、通電加熱により殺菌処理を行ったので、剥き身に含まれるエキス成分を残すことができ、貝から取り出した直後の剥き身を調理加熱した場合とほぼ同様の味となった。
【0019】
牡蛎フライのみならず、鍋料理の素材として、細片混合物を使用することにより、だし汁には牡蛎エキスの味を加えることができる。最終の牡蛎食品素材の形状としては、種々の形状とすることができ、平板状としても良く、ブロック状としても良く、種々の食品に混合させることができる。これにより、牡蛎食品の調理方法を格段に拡大させることができる。」
イ 甲B2に記載された発明
上記アの記載を、特に、【0014】~【0019】に記載された調理方法により製造される牡蛎フライに着目して整理すると、甲B2には次の発明が記載されていると認める。
「牡蛎の貝内部から身の部分を剥き取り剥き身を製造する剥き身工程1と、
所定量の剥き身をブロック状として冷凍する冷凍工程2と、
多数のブロック状に冷凍されてストックされた多量の剥き身を、解凍しながら表面に塩水が付着した状態のもとで細片に裁断し、細片混合物に加工する刻み込み工程3と、
細片混合物を連続的に搬送しながら電流を流すことにより殺菌処理する殺菌処理工程4と、
殺菌処理された細片混合物を、貝から剥き身を剥き出したときの剥き身形状に近似した形状に成形する成形工程5と、
成形された牡蛎食品素材をそのままの形状でパン粉を付けて油で揚げて調理加熱する調理工程6とからなる、
牡蛎の調理方法により得られる牡蛎フライ。」(以下、「甲B2フライ発明」という。)
また、甲B2には当該牡蛎フライの材料となる細片混合物を製造すること、及び、牡蛎フライの製造方法も記載されているから、甲B2には次の発明も記載されている。
「牡蛎の貝内部から身の部分を剥き取り剥き身を製造する剥き身工程1と、
所定量の剥き身をブロック状として冷凍する冷凍工程2と、
多数のブロック状に冷凍されてストックされた多量の剥き身を、解凍しながら表面に塩水が付着した状態のもとで細片に裁断し、細片混合物に加工する刻み込み工程3と、
細片混合物を連続的に搬送しながら電流を流すことにより殺菌処理する殺菌処理工程4と、
殺菌処理された細片混合物を、貝から剥き身を剥き出したときの剥き身形状に近似した形状に成形する成形工程5とからなる、
牡蛎の調理方法により得られる、牡蛎フライ用に成形された細片混合物。」(以下、「甲B2混合物発明」という。)
「牡蛎の貝内部から身の部分を剥き取り剥き身を製造する剥き身工程1と、
所定量の剥き身をブロック状として冷凍する冷凍工程2と、
多数のブロック状に冷凍されてストックされた多量の剥き身を、解凍しながら表面に塩水が付着した状態のもとで細片に裁断し、細片混合物に加工する刻み込み工程3と、
細片混合物を連続的に搬送しながら電流を流すことにより殺菌処理する殺菌処理工程4と、
殺菌処理された細片混合物を、貝から剥き身を剥き出したときの剥き身形状に近似した形状に成形する成形工程5と、
成形された牡蛎食品素材をそのままの形状でパン粉を付けて油で揚げて調理加熱する調理工程6とからなる、
牡蛎フライの製造方法。」(以下、「甲B2フライ製法発明」という。)
(2)本件発明9について
ア 対比
本件発明9と甲B2フライ発明とを対比する。
甲B2フライ発明の「牡蛎フライ」は、本件発明9の「牡蠣フライ食品」に相当する。
甲B2フライ発明の「牡蛎フライ」の材料である牡蛎食品素材は、刻み込み工程3により牡蛎の多量の剥き身を細片に裁断した細片混合物を、成形工程5により剥き身形状に近似した形状に成形したものであるから、牡蛎の切断された断片を含むものであり、かつ、1個の牡蛎食品素材中に当然に2つ以上の牡蛎の個体を含むものである。よって、甲B2フライ発明は、本件発明9の「2つ以上の牡蠣の個体を含み、少なくとも1つの牡蠣の個体は切断された断片である、」との特定事項を満たす。
してみると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「2つ以上の牡蠣の個体を含み、少なくとも1つの牡蠣の個体は切断された断片である、牡蠣フライ食品。」
(相違点)
・相違点B2-9
本件発明9は「1つ以上の牡蠣の個体のむき身全体を含む、」と特定するのに対し、甲B2フライ発明にはそのように特定されていない点。
イ 判断
相違点B2-9について検討する。
甲B2フライ発明は、ブロック状に冷凍された牡蛎の剥き身を細片に裁断した細片混合物を材料として製造されるものであって、牡蠣の個体のむき身全体を含まないから、相違点B2-9は実質的な相違点である。
また、甲B2フライ発明は、貝から剥き出したままの状態で牡蛎の剥き身を通電加熱すると剥き身全体を均一に加熱することができないことを課題(甲B2の【0008】)とし、その解決手段として細片混合物をジュール加熱する(甲B2の【0012】)ものであるから、甲B2フライ発明において牡蠣の個体のむき身全体を含むものとすることには阻害要因があるといえる。よって、甲B2フライ発明において、相違点B2-9に係る本件発明9の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
(3)本件発明10について
本件発明10は、請求項9を引用し、本件発明9の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(2)と同様の理由により、本件発明10は、甲B2フライ発明ではなく、甲B2フライ発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(4)本件発明11について
ア 対比
本件発明11と甲B2フライ発明とを対比すると、上記(2)アと同様の相当関係がいえるから、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「2つ以上の牡蠣の個体を含み、少なくとも1つの牡蠣の個体は切断された断片である、牡蠣フライ食品。」
(相違点)
・相違点B2-11
本件発明11は「ペースト状の牡蠣を含む、」と特定するのに対し、甲B2フライ発明にはそのように特定されていない点。
イ 判断
相違点B2-11について検討する。
甲B2フライ発明は材料としてペースト状の牡蠣を用いておらず、相違点B2-11は実質的な相違点である。また、甲B2には、甲B2フライ発明においてペースト状の牡蠣を含むものとすることを動機付ける記載はなく、他の証拠にもない。よって、甲B2フライ発明において、相違点B2-11に係る本件発明11の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 申立人の主張について
相違点B2-11に関して、申立人Bは、牡蠣について、身が柔らかく崩れやすいこと(甲B9)及び体表に粘液を有すること(甲B10)が技術常識であるから、甲B2フライ発明において崩れた身又は粘液からなるペースト状の牡蠣が含まれる蓋然性は極めて高い旨主張する(特許異議申立書Bの42~43頁)。
そこで、検討する。ペースト状に加工された牡蠣(牡蠣ペースト)は食材として広く知られており、当該技術常識を参酌すれば、本件発明11における「ペースト状の牡蠣」とは、牡蠣の身をペースト状に加工した材料を意味しており、牡蠣の体表の粘液や、崩れた牡蠣の身から生じるペースト状成分が「ペースト状の牡蠣」に該当しないことは明らかである。そうすると、甲B2フライ発明がペースト状の牡蠣を含むとはいえず、申立人Bの主張は採用できない。
エ 本件発明11についてのまとめ
以上まとめると、相違点B2-11は実質的な相違点であり、相違点B2-11に係る本件発明11の発明特定事項は、甲B2及び他の全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。よって、本件発明11は甲B2フライ発明ではなく、甲B2フライ発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(5)本件発明1について
本件発明1と甲B2混合物発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点B2-1
本件発明1は「ペースト状の牡蠣を含む、」と特定するのに対し、甲B2混合物発明にはそのように特定されていない点。
上記相違点B2-1について検討すると、相違点B2-1は実質的に相違点B2-11と同じ内容の相違点であり、上記(4)イ~ウと同様に判断される。
よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲B2混合物発明ではなく、甲B2混合物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(6)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、請求項1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(5)と同様の理由により、本件発明2ないし4は、甲B2混合物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(7)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と甲B2混合物発明とを対比する。
甲B2混合物発明における「成形された細片混合物」は、多量の牡蛎の剥き身を細片に裁断したものを成形したものであるから、本件発明5と甲B2混合物発明とは、「複数の牡蠣が一体となった牡蠣集合体」であって、「牡蠣フライ食品用である」という限りにおいて一致する。
してみると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「複数の牡蠣が一体となった牡蠣集合体であって、牡蠣フライ食品用である、牡蠣集合体。」
(相違点)
・相違点B2-5
牡蠣集合体について、本件発明5は「平板状に凍結された冷凍牡蠣集合体の切断物」であることを特定するのに対し、甲B2混合物発明にはそのように特定されていない点。
イ 判断
相違点B2-5について検討する。
甲B2混合物発明は「冷凍工程2」及び「刻み込み工程3」を経て得た細片混合物を成形したものであるところ、甲B2には、甲B2混合物発明をさらに平板状に凍結してから切断することを動機付ける記載はなく、他の証拠にもない。よって、甲B2混合物発明において、相違点B2-5に係る本件発明5の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 申立人の主張について
相違点B2-5に関して、申立人Bは、牡蠣食品素材を加熱工程前に凍結することが技術常識であった(甲B11、甲B12)こと、及び、凍結物を切断する技術が公知(甲B7、甲B8)であったことを挙げ、甲B2混合物発明において相違点B2-5に係る本件発明5の特定事項を満たすものとすることは当業者が容易になし得た旨を主張する(特許異議申立書Bの34~35頁)。
そこで、検討する。甲B2には、「冷凍工程2」及び「刻み込み工程3」を経た甲B2混合物発明をさらに凍結することについて何ら記載されておらず、牡蠣食品素材を加熱工程前に凍結する技術が知られていたからといって、甲B2混合物発明を凍結することが動機付けられるとはいえない。また、仮に、申立人Bが挙げる技術常識に基づき甲B2混合物発明を凍結することが動機付けられるとしても、甲B2混合物発明は細片混合物であって任意の形状に成形できるものであるから、1個の牡蠣の形状に成形したものを凍結すればよく、わざわざ平板状に成形し凍結させてから切断することが動機付けられるとはいえない。よって、申立人Bの主張は採用できない。
エ 本件発明5についてのまとめ
以上まとめると、相違点B2-5に係る本件発明5の発明特定事項は、甲B2及び他の全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。よって、本件発明5は甲B2混合物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(8)本件発明6ないし8について
本件発明6ないし8は、請求項5を引用し、本件発明5の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(6)と同様の理由により、本件発明6ないし8は、甲B2混合物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(9)本件発明12ないし15について
本件発明12と甲B2フライ製法発明とを対比する。
甲B2フライ製法発明は、多量の牡蛎の剥き身を細片に裁断したものを成形し、牡蛎フライの製造する方法であるから、本件発明12と甲B2フライ製法発明とは、「複数の牡蠣を寄せ集める工程を有する、牡蠣フライ食品の製造方法。」との点で共通する。
してみると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「複数の牡蠣を寄せ集める工程を有する、牡蠣フライ食品の製造方法。」
(相違点)
・相違点B2-12
複数の牡蠣を寄せ集めたものについて、本件発明12は「凍結し冷凍牡蠣集合体とする凍結工程と、」「前記冷凍牡蠣集合体を凍ったまま切断する切断工程と、」を有することを特定するのに対し、甲B2フライ製法発明にはそのように特定されていない点。
上記相違点B2-12について検討すると、相違点B2-12は実質的に相違点B2-5と同じ内容の相違点であり、上記(6)イ~エと同様に判断される。
よって、本件発明12は甲B2フライ製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。請求項12を引用し本件発明12の発明特定事項を全て備える本件発明13ないし15についても同様である。
(10)本件発明16及び17について
本件発明16と甲B2フライ発明とを対比すると、上記(8)アと概略同様の相当関係をとることができ、両者は相違点B2-12と同様の相違点を有する。そして、当該相違点については上記(8)と同様に判断される。
よって、本件発明16は、甲B2フライ発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。請求項16を引用し本件発明16の発明特定事項を全て備える本件発明17についても同様である。
(11)取消理由1、取消理由2、申立理由B1-1及び申立理由B2-1(甲B2を主たる証拠とする新規性、進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1及び9は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件発明1ないし17は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし17に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
よって、取消理由1、取消理由2、申立理由B1-1及び申立理由B2-1によって本件特許の請求項1ないし17に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由A1-1(甲A1を主たる証拠とする進歩性)について
(1)甲A1の記載事項等
ア 甲A1の記載事項
甲A1には食品の結着剤に関して、次の記載がある。
・「
[図:0001439217000001.jpg]
」(2頁)
・「
[図:0001439217000002.jpg]
」(3頁)
・「
[図:0001439217000003.jpg]
」(4頁)
・「
[図:0001439217000004.jpg]
」(5頁)
・「
[図:0001439217000005.jpg]
」(6頁)
・「
[図:0001439217000006.jpg]
」(6頁)
イ 甲A1に記載された発明
上記アの記載を、特に、アルギン酸製剤を用いて結着したレバーに着目して整理すると、甲A1には次の発明が記載されていると認める。
「細断したレバーにアルギン酸製剤溶液を混合し、型に充填し冷蔵してレバーを結着させ、凍結し、カットして得た、結着レバー。」(以下、「甲A1レバー発明」という。)
また、甲A1には甲A1レバー発明を焼成した食品と、その製造方法も記載されているから、甲A1には次の発明も記載されている。
「細断したレバーにアルギン酸製剤溶液を混合し、型に充填し冷蔵してレバーを結着させ、凍結し、カットして得た、結着レバーを焼成して製造した、食品。」(以下、「甲A1食品発明」という。)
「細断したレバーにアルギン酸製剤溶液を混合し、型に充填し冷蔵してレバーを結着させる工程と、
結着させたレバーを凍結する工程と、
冷凍したレバーをカットする工程と、
カットした結着レバーを焼成する工程とを有する、食品の製造方法。」(以下、「甲A1製法発明」という。)
(2)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と甲A1レバー発明とを対比する。
本件発明5における「複数の牡蠣」と、甲A1レバー発明における「細断したレバー」とは、「複数の食品素材」との点で共通する。そして、上記(1)アの5頁の写真からみて、甲A1レバー発明における型に充填されて結着されたレバーは平板状であり、甲A1レバー発明は当該平板状の凍結物をカットしたものであるから、本件発明5の「平板状に凍結された」「集合体の切断物」との特定事項を満たす。
してみると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「複数の食品素材が一体となって平板状に凍結された冷凍食品素材集合体の切断物。」
(相違点)
・相違点A1-5
本件発明5は、食品素材が「牡蠣」であり、用途が「牡蠣フライ食品用」であることを特定するのに対し、甲A1レバー発明は、食品素材が「細断したレバー」であり、用途が特定されていない点。
イ 判断
相違点A1-5について検討する。
甲A1には、甲A1レバー発明において食品素材を牡蠣とし、さらに用途を牡蠣フライとすることを動機付ける記載はなく、他の証拠にもない。よって、甲A1レバー発明において、相違点A1-5に係る本件発明5の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 申立人の主張について
申立人Aは、特許異議申立書Aの16~17頁において、相違点A1-5を相違点1(食品素材が「牡蠣」である点)と、相違点2(用途が「牡蠣フライ食品用」である点)に分けて認定し、各相違点について概略以下のとおり主張している。
(ア)相違点1について
平板状に凍結する複数の食材を、レバーやえびとするか、牡蠣とするかは当業者が通常の創作能力の発揮によって行えることである。特に、甲A1に記載の「冷凍えび集合体」について、えびは、牡蠣と同様に個体自体に凹凸があり関連性が高く、動機づけとなりうる。また、複数個の牡蠣を板状に冷凍する技術も公知である(本件特許発明の審査時の引用文献1)。更に、甲A5に記載のように、牡蠣の個体を冷凍して切断することも公知であり、牡蠣の個体を切断することに困難性はない。
(イ)相違点2について
えびフライやえびカツはありふれた日常の食品であり、切断物をフライ食品にすることは、当業者が通常の創作能力の発揮によって行えることである。
エ 申立人の主張についての検討
そこで、検討する。
(ア)相違点1に係る主張について
甲A1には、「幅広い素材を結着できます」(6頁)との記載があるものの、結着する食品素材は最終的な食品の形態に応じて選択されるものであり、最終的な食品の形態を考慮せずに甲A1レバー発明を任意の食品素材に適用することが当業者にとって容易ということはできない。そして、甲A1には、加工された食品としてエビ・ホタテパテ、結着ステーキ等が例示されているが、牡蠣を用いた食品は示されておらず、甲A1レバー発明において食品素材を牡蠣とすることを動機付ける記載はない。また、申立人Aは、審査時の引用文献1及び甲A5を公知文献として引用しているが、審査時の引用文献1は単に複数の牡蠣がまとめて冷凍されたものであり、甲A5は牡蠣ミンチを製造するために牡蠣を冷凍し切断する技術であって、いずれも食材の結着とは関係がなく、甲A1レバー発明において食品素材を牡蠣とすることを動機付けるものとはいえない。
(イ)相違点2に係る主張について
上記(ア)で検討したとおり、甲A1レバー発明において食品素材を牡蠣とすることが当業者にとって容易ということはできないから、甲A1レバー発明を牡蠣フライ用とすることも、当業者にとって容易とはいえない。さらに、申立人Aが指摘するようにえびフライ等は周知の食品であるが、牡蠣フライは牡蠣の個体を切断せずに調理することが技術常識であり、フライ食品が周知であるからといって甲A1レバー発明のような冷凍切断物を牡蠣フライ用とすることが動機付けられるとはいえない。
以上検討したとおり、申立人Aの主張はいずれも採用できない。
オ 本件発明5についてのまとめ
以上まとめると、相違点A1-5に係る本件発明5の発明特定事項は、甲A1及び他の全ての証拠の記載に基づいて当業者が容易に想到することができたものではない。よって、本件発明5は甲A1レバー発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明7について
本件発明7は、請求項5を引用し、本件発明5の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(2)と同様の理由により、本件発明7は、甲A1レバー発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明9及び10について
本件発明9と甲A1食品発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点A1-9
本件発明9は、「牡蠣フライ食品」であり、「牡蠣」を含むことを特定するのに対し、甲A1食品発明は、焼成したレバーであり、「細断したレバー」を含むものである点。
相違点A1-9について検討すると、相違点A1-9は実質的に相違点A1-5と同じ内容の相違点であり、上記(2)イ~エと同様に判断される。
よって、本件発明9は甲A1食品発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。請求項9を引用し本件発明9の発明特定事項を全て備える本件発明10についても同様である。
(5)本件発明12、13及び15について
本件発明12と甲A1製法発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点A1-12
本件発明12は、「牡蠣フライ食品の製造方法」であり、「複数の牡蠣」を材料とすることを特定するのに対し、甲A1製法発明は、焼成したレバーの製造方法であり、「細断したレバー」を材料とするものである点。
相違点A1-12について検討すると、相違点A1-12は実質的に相違点A1-5と同じ内容の相違点であり、上記(2)イ~エと同様に判断される。
よって、本件発明12は甲A1製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。請求項12を引用し本件発明12の発明特定事項を全て備える本件発明13及び15についても同様である。
(6)本件発明16及び17について
本件発明16と甲A1食品発明とを対比すると、両者は少なくとも相違点A1-9と同様の点で相違し、当該相違点については上記(4)と同様に判断される。
よって、本件発明16は甲A1食品発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。請求項16を引用し本件発明16の発明特定事項を全て備える本件発明17についても同様である。
(7)申立理由A1-1(甲A1を主たる証拠とする進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明5、7、9、10、12、13及び15ないし17は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項5、7、9、10、12、13及び15ないし17に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由A1-1によって本件特許の請求項5、7、9、10、12、13及び15ないし17に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由A1-2(甲A2を主たる証拠とする進歩性)について
(1)甲A2の記載事項等
ア 甲A2の記載事項
甲A2はマクドナルド株式会社がリニューアルするフィッシュフライバーガーである「フィレオフィッシュ」について、次の記載がある。
・「
[図:0001439217000007.jpg]
」(1頁)
・「
[図:0001439217000008.jpg]
」(1頁)
・「
[図:0001439217000009.jpg]
」(2頁)
イ 甲A2に記載された発明
上記アの記載を整理すると、甲A2には次の発明が記載されていると認める。
「スケソウダラの切り身を型枠に並べてブロック状に成形・冷凍して、四角形状にカットした、フライ用のフィッシュポーション。」(以下、「甲A2ポーション発明」という。)
「甲A2ポーション発明に衣とパン粉を付けてフライして得られる、フライされたフィッシュポーション。」(以下、「甲A2フライ発明」という。)
「甲A2フライ発明の製造方法。」(以下、「甲A2製法発明」という。)
(2)本件発明5について
ア 対比
本件発明5と甲A2ポーション発明とを対比する。
本件発明5の「複数の牡蠣が一体となって平板状に凍結された冷凍牡蠣集合体の切断物」と、甲A2ポーション発明の「スケソウダラの切り身を型枠に並べてブロック状に成形・冷凍して、四角形状にカットした、フィッシュポーション」とは、「複数の食品素材が一体となって平板状に凍結された冷凍食品素材集合体の切断物」との点で共通する。
してみると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「複数の食品素材が一体となって平板状に凍結された冷凍食品素材集合体の切断物。」
(相違点)
・相違点A2-5
本件発明5は、食品素材が「牡蠣」であり、用途が「牡蠣フライ食品用」であることを特定するのに対し、甲A2ポーション発明は、食品素材が「スケソウダラの切り身」であり、用途が「フライ用」である点。
イ 判断
相違点A2-5について検討する。
甲A2には、甲A2ポーション発明において食品素材を牡蠣とし、さらに用途を牡蠣フライとすることを動機付ける記載はなく、他の証拠にもない。
よって、甲A2ポーション発明において、相違点A2-5に係る本件発明5の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 申立人の主張について
申立人Aは、特許異議申立書Aの17~18頁において、相違点A2-5を相違点3(食品素材が「牡蠣」である点)と、相違点4(用途が「牡蠣フライ食品用」である点)に分けて認定し、各相違点について概略以下のとおり主張している。
相違点3について、平板状に凍結する複数の食材を、スケソウダラとするか、牡蠣とするかは当業者が通常の創作能力の発揮によって行えることである。また、牡蠣を複数並べて板状に冷凍する技術も公知である(本件特許発明の審査時の引用文献1)。更に、甲A5に記載のように、牡蠣の個体を冷凍して切断し、切断した牡蠣の断片を食材として用いることも公知であり、牡蠣の個体を切断することに対して、何ら困難性はない。
相違点4について、切断物は何れもフライ食品であり、牡蠣フライ食品とするか、フィッシュフライ食品とするかは、当業者が通常の創作能力の発揮によって行えることである。言うまでもなく、牡蠣フライやフィッシュフライは何れもありふれた日常の食品である。
エ 申立人の主張についての検討
そこで、検討する。
甲A2は、スケソウダラを用いたフィッシュポーションを用いた商品を紹介する文献であって、食品素材を変更することを動機付ける記載はない。申立人Aは、審査時の引用文献1及び甲A5を公知文献として引用しているが、審査時の引用文献1は単に複数の牡蠣がまとめて冷凍されたものであり、甲A5は牡蠣ミンチを製造するために牡蠣を冷凍し切断する技術であって、いずれも牡蠣の集合体を食品素材として用いるものではなく、甲A2ポーション発明において食品素材を牡蠣とすることを動機付けるものとはいえない。
さらに、牡蠣フライは牡蠣の個体を切断せずに調理することが技術常識であるから、フライ食品が周知であるからといって、冷凍切断物である甲A2ポーション発明を牡蠣フライ用とすることが動機付けられるとはいえない。
よって、申立人Aの主張は採用できない。
オ 本件発明5についてのまとめ
以上まとめると、相違点A2-5に係る本件発明5の発明特定事項は、甲A2及び他の全ての証拠の記載に基づいて当業者が容易に想到することができたものではない。よって、本件発明5は甲A2ポーション発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明7及び8について
本件発明7及び8は、請求項5を引用し、本件発明5の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(2)と同様の理由により、本件発明7及び8は、甲A2ポーション発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明9及び10について
本件発明9と甲A2フライ発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点A2-9
本件発明9は、「牡蠣フライ食品」であり、「牡蠣」を含むことを特定するのに対し、甲A2フライ発明は、「フライされたフィッシュポーション」であり、「スケソウダラの切り身」を含むものである点。
相違点A2-9について検討すると、相違点A2-9は実質的に相違点A2-5と同じ内容の相違点であり、上記(2)イ~エと同様に判断される。
よって、本件発明9は甲A2フライ発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。請求項9を引用し本件発明9の発明特定事項を全て備える本件発明10についても同様である。
(5)本件発明12について
本件発明12と甲A2製法発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点A2-12
本件発明12は、「牡蠣フライ食品の製造方法」であり、「複数の牡蠣」を材料とすることを特定するのに対し、甲A2製法発明は、「フライされたフィッシュポーション」の製造方法であり、「スケソウダラの切り身」を材料とするものである点。
相違点A2-12について検討すると、相違点A2-12は実質的に相違点A2-5と同じ内容の相違点であり、上記(2)イ~エと同様に判断される。
よって、本件発明12は甲A2製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(6)本件発明16について
本件発明16と甲A2フライ発明とを対比すると、両者は少なくとも相違点A2-9と同様の点で相違し、当該相違点については上記(4)と同様に判断される。
よって、本件発明16は甲A2フライ発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。請求項16を引用し本件発明16の発明特定事項を全て備える本件発明17についても同様である。
(7)申立理由A1-2(甲A2を主たる証拠とする進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明5、7ないし10、12、16及び17は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項5、7ないし10、12、16及び17に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由A1-2によって本件特許の請求項5、7ないし10、12、16及び17に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由A1-3(甲A3を主たる証拠とする進歩性)について
(1)甲A3の記載事項等
ア 甲A3の記載事項
甲A3は白身魚のスティックフライ等に使用できる助宗タラの凍結品について、次の記載がある。
・「
[図:0001439217000010.jpg]
」(1頁)
・「
[図:0001439217000011.jpg]
」(1頁)
イ 甲A3に記載された発明
上記アの記載を整理すると、甲A3には次の発明が記載されていると認める。
「助宗タラの身をブロック状に冷凍して、スティック状にカットした、フライ用のタラスティック。」(以下、「甲A3スティック発明」という。)
「甲A3スティック発明から得られる、フィッシュフライ。」(以下、「甲A3フライ発明」という。)
「甲A3フライ発明の製造方法。」(以下、「甲A3製法発明」という。)
(2)本件発明5、7ないし10、12、16及び17について
甲A3スティック発明、甲A3フライ発明及び甲A3製法発明は、それぞれ甲A2ポーション発明、甲A2フライ発明及び甲A2製法発明と概略同じ内容の発明である。
そうすると、本件発明5、7ないし10、12、16及び17と、甲A3スティック発明、甲A3フライ発明及び甲A3製法発明とを対比すると、両者は上記3(2)~(6)に記載したのと同様の一致点、相違点を有し、当該相違点については上記3(2)~(6)と同様に判断される。
よって、本件発明5、7ないし10、12、16及び17は、甲A3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)申立理由A1-3(甲A3を主たる証拠とする進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明5、7ないし10、12、16及び17は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項5、7ないし10、12、16及び17に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由A1-3によって本件特許の請求項5、7ないし10、12、16及び17に係る特許を取り消すことはできない。
5 申立理由A1-4(甲A4を主たる証拠とする進歩性)について
(1)甲A4の記載事項等
ア 甲A4の記載事項
甲A4は白身魚の冷凍商品である「冷凍魚ポーションシリーズ」について、次の記載がある。
・「
[図:0001439217000012.jpg]
」(1頁)
・「
[図:0001439217000013.jpg]
」(2頁)
・「
[図:0001439217000014.jpg]
」(3頁)
・「
[図:0001439217000015.jpg]
」(4頁)
・「
[図:0001439217000016.jpg]
」
イ 甲A4に記載された発明
上記アの記載を整理すると、甲A4には次の発明が記載されていると認める。
「ノドグロ、舌平目、イトヨリ鯛等の白身魚のフィレを、形を揃えて成形し、冷凍して得たポーションを用いて製造した、食品。」(以下、「甲A4発明」という。)
(2)本件発明9及び10について
本件発明9と甲A4発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点A4-9
本件発明9は「牡蠣フライ食品」であり、「牡蠣」を含むことを特定するのに対し、甲A4発明は食品の種類が特定されておらず、「ノドグロ、舌平目、イトヨリ鯛等の白身魚のフィレ」を含むものである点。
相違点A4-9について検討すると、相違点A4-9は実質的に相違点A2-9と同じ内容の相違点であり、上記3(4)と同様に判断される。
よって、本件発明9は甲A4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。請求項9を引用し本件発明9の発明特定事項を全て備える本件発明10についても同様である。
(3)申立理由A1-4(甲A4を主たる証拠とする進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明9及び10は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項9及び10に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由A1-4によって本件特許の請求項9及び10に係る特許を取り消すことはできない。
6 申立理由B1-2及び申立理由B2-2(甲B3を主たる証拠とする新規性、進歩性)について
(1)甲B3の記載事項等
ア 甲B3の記載事項
甲B3には、かきフライのレシピに関して、次の記載がある。
・「
[図:0001439217000017.jpg]
」
・「
[図:0001439217000018.jpg]
[図:0001439217000019.jpg]
」(1~2頁)
・「
[図:0001439217000020.jpg]
[図:0001439217000021.jpg]
」(1~2頁)
イ 甲B3に記載された発明
上記アの記載を、2つのかきにパン粉を付けた状態のものに着目して整理すると、甲B3には次の発明が記載されていると認める。
「ボウルに卵と水を入れて溶きほぐし、小麦粉を加えてまぜた衣に、かきを入れてからめ、バットにパン粉を広げ、前記かきを2つ重ねてのせ、上からパン粉をかぶせて手で握るようにして2つのかきをしっかりとつけた、かきフライ用のかき。」(以下、「甲B3発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
甲B3発明は、2つのかきがしっかりとつけられて一体となったものであるから、本件発明1と甲B3発明とは、「複数の牡蠣が一体となった冷凍牡蠣集合体」という限りにおいて一致する。
甲B3発明は、かきフライ用のかきであるから、本件発明1の「牡蠣フライ食品用であり、」との特定事項を満たす。
してみると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「複数の牡蠣が一体となった牡蠣集合体であって、
牡蠣フライ食品用である、
牡蠣集合体。」
(相違点)
・相違点B3-1-1
牡蠣集合体について、本件発明1は「平板状に凍結された冷凍牡蠣集合体であって、」「冷凍牡蠣集合体」と特定するのに対し、甲B3発明はそのように特定されていない点。
・相違点B3-1-2
本件発明1は「ペースト状の牡蠣を含む、」ことを特定するのに対し、甲B3発明はそのように特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点B3-1-2について検討する。
甲B3発明は、その材料からみてペースト状の牡蠣を含んでおらず、相違点B3-1-2は実質的な相違点である。また、甲B3には、甲B3発明においてペースト状の牡蠣を含むことを動機付ける記載はなく、他の証拠にもない。よって、甲B3発明において、相違点B3-1-2に係る本件発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 申立人の主張について
相違点B3-1-2に関して、申立人Bは、牡蠣について、身が柔らかく崩れやすいこと(甲B9)及び体表に粘液を有すること(甲B10)が技術常識であるから、甲B3発明において牡蠣集合体に崩れた身又は粘液からなるペースト状の牡蠣が含まれる蓋然性は極めて高い旨主張する(特許異議申立書Bの30頁)。
そこで、検討する。ペースト状に加工された牡蠣(牡蠣ペースト)は食材として広く知られており、当該技術常識を参酌すれば、本件発明1における「ペースト状の牡蠣」とは、牡蠣の身をペースト状に加工した材料を意味しており、牡蠣の体表の粘液や、崩れた牡蠣の身から生じるペースト状成分が「ペースト状の牡蠣」に該当しないことは明らかである。そうすると、甲B3発明がペースト状の牡蠣を含むとはいえず、申立人Bの主張は採用できない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上まとめると、相違点B3-1-2は実質的な相違点であり、相違点B3-1-2に係る本件発明1の発明特定事項は、甲B3及び他の全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。よって、本件発明1は甲B3発明ではなく、甲B3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(2)と同様の理由により、本件発明2ないし4は、甲B3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)申立理由B1-2及び申立理由B2-2(甲B3を主たる証拠とする新規性、進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件発明1ないし4は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし4に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由B1-2及び申立理由B2-2によって本件特許の請求項1ないし4に係る特許を取り消すことはできない。
7 申立理由B1-3及び申立理由B2-3(甲B4を主たる証拠とする新規性、進歩性)について
(1)甲B4の記載事項等
ア 甲B4の記載事項
甲B4には「魚介類等のブロック肉の製造方法」に関し、次の記載がある。
・「2.特許請求の範囲
1. 魚介類等の肉をそのまま、又は結着剤を介在させてリティナーに詰める工程と、リティナーに詰めた肉を加圧状態で急速冷凍する工程と、凍結させた肉をリティナーから取り出して真空包装する工程とを含むことを特徴とする魚介類等のブロック肉の製造方法。」
・「〔産業上の利用分野〕
本発明は、肉質の均一性を維持しつつ所定の大きさ、厚さをもつ切り身が得られるマグロ、ヒラメ等の魚肉、アワビ、ホタテ等の貝肉、エビ、カニ等の甲殻類等の魚介類等のブロック肉を製造する方法に関する。」(1頁左下欄11~16行)
・「〔実施例]
以下、本発明をその実施例を示す図面に基づき具体的に説明する。
第1図は本発明に係る魚介類等のブロック肉の製造方法の主要手順を示すフローチャートである。なお肉の材料としてはタイ、マグロ等の魚肉、アワビ、ホタテ等の貝肉、エビ、カニ等の甲殻類の肉を用いるものとする。以下、魚肉のブロックを製造する場合について具体的に説明する。先ず、タイ、ハマチ1フグ、サケ、ヒラメ等の魚を3枚におろして各片身肉の皮、血合肉、中骨を除去する(ステップSl)。各片身肉はこれに適宜に整形を施した後、結着剤として、例えばバールミート(千葉製粉(株)製)を塗着して金属製容器であるリティナーに隙間なく詰め、そのまま0~3℃前後の温度で30分程度放置する(ステップS2)。
第2図は片身肉をリティナーに詰めた状態の模式的平面図であり、例えばしゃぶしゃぶ用のブロック肉の場合は筋の方向が揃うように片身肉2をその尾側aと頭側bとの方向を揃えて交互に重ね、段差が生じないよう全体として均一に重ね合わせて詰める。またステーキ用ブロック肉の場合は筋の方向を揃えるよりも、むしろ筋の方向が交互に直交又は適宜交叉するようにしてリティナーに詰めるのが身割れの防止上望ましい。
なお、片身肉を凍結させた後、これをスクライブして小間切れ肉とし、これをそのままの状態で、又は結着剤を混合した状態でリティナーに詰めてもよい。同じリティナーに詰める魚肉は同じ種類の肉とするが、種々の魚肉を混ぜ合わせた状態で詰めてもよい。リティナーの形状については特に限定するものではなく、矩形、円柱形、楕円形等適宜のものを選択すればよい。
次に内部の空気を排出し、隙間が生じないようリティナーを加圧した状態で急速冷凍する(ステップS3)。急速冷凍はO℃~3℃から25分程度で-40℃~-45℃に冷凍することにより行う。
リティナーから凍結したブロック状の肉を取出し、これを真空包装して製品とする(ステップS4)。製品は冷凍庫等に保管し、必要に応じ出荷する(ステップS5)。
なお、上述の実施例は無用のブロック肉を製造する場合につい説明したが、例えばアワビ、ホタテ等の貝類、エビ、カニ等の甲殻類の肉を用いる場合もリティナーに詰める際の整形態様、筋の方向の揃え方に若干の差がある点を除けばその主製造過程は実質的に同じである。
〔効果〕
以上の如く、本発明方法にあっては、任意の大きさの魚介類等のブロック肉を容易に得ることが出来て、必要に応じてスライスしてしゃぶしゃぶ用材料に、また薄切りしてあらいの材料に、更に厚切りしてステーキ等の材料に利用出来る外、他の材料としても使える優れた効果を奏するものである。」(2頁左上欄12行~右下欄6行)
・「
[図:0001439217000022.jpg]
」
イ 甲B4に記載された発明
上記アの記載を、特に、特許請求の範囲に記載された製造方法により製造されるブロック肉に着目して整理すると、甲B4には次の発明が記載されていると認める。
「魚介類等の肉をそのまま又は結着剤を介在させてリティナーに詰め、加圧状態で急速冷凍し、真空包装して製造された、魚介類等のブロック肉。」(以下、「甲B4ブロック肉発明」という。)
また、甲B4には、ブロック肉を厚切り等の切断物とすること、及び、当該切断物をステーキ等の食品の材料として利用することが記載されているから、甲B4には次の発明も記載されている。
「甲B4ブロック肉発明の切断物。」(以下、「甲B4切断物発明」という。)
「甲B4切断物発明を用いて製造された食品。」(以下、「甲B4食品発明」という。)
「甲B4切断物発明を用いた食品の製造方法。」(以下、「甲B4製法発明」という。)
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲B4ブロック肉発明とを対比する。
本件発明1の「牡蠣」と、甲B4ブロック肉発明の「魚介類等の肉」とは、「魚介類の身」という限りにおいて一致する。そして、甲B4ブロック肉発明は、複数の魚介類等の肉がリティナーにおいて平板状に一体化され冷凍されたものであるから、本件発明1の「一体となって平板状に凍結された」「冷凍」「集合体」との特定事項を満たす。
してみると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「複数の魚介類の身が一体となって平板状に凍結された冷凍集合体。」
(相違点)
・相違点B4-1-1
魚介類の身について、本件発明1は「牡蠣」と特定するのに対し、甲B4ブロック肉発明では「魚介類等の肉」である点。
・相違点B4-1-2
用途について、本件発明1は「牡蠣フライ食品用であり、」と特定するのに対し、甲B4ブロック肉発明は用途が特定されていない点。
・相違点B4-1-3
本件発明1は「ペースト状の牡蠣を含む、」と特定するのに対し、甲B4ブロック肉発明はそのように特定されていない点。
イ 判断
相違点B4-1-1について検討する。
甲B4ブロック肉発明における「魚介類等の肉」について、甲B4には、「本発明は、肉質の均一性を維持しつつ所定の大きさ、厚さをもつ切り身が得られるマグロ、ヒラメ等の魚肉、アワビ、ホタテ等の貝肉、エビ、カニ等の甲殻類等の魚介類等のブロック肉を製造する方法に関する。」(1頁左下欄11~16行)との記載があり、牡蠣を含むものとはいえないから、相違点B4-1-1は実質的な相違点である。
また、甲B4には、甲B4ブロック肉発明において、「魚介類等の肉」に代えて牡蠣を用いることを動機付ける記載はなく、他の証拠にもない。よって、甲B4ブロック肉発明において、相違点B4-1-1に係る本件発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 申立人の主張について
相違点B4-1-1に関して、申立人Bは以下のとおり主張している。
甲B4には、「魚介類」として貝肉を使用できることが記載され、これにより、魚介類等の肉の種類及び大、小の如何にかかわらず、任意の大きさ、厚さを有する均質な肉質のブロック肉が得られることも記載されている。したがって、甲B4に記載の発明は、「複数の牡蠣が一体となって平板状に凍結された冷凍牡蠣集合体であって、」との特定事項を満たす(特許異議申立書Bの30頁)。
そこで、検討する。甲B4ブロック肉発明における「魚介類等の肉」について、甲B4には、「アワビ、ホタテ等の貝肉」との記載はあるものの、牡蠣については記載されていない。さらに、甲B4には、以下の記載がある。
「例えばしゃぶしゃぶ用のブロック肉の場合は筋の方向が揃うように片身肉2をその尾側aと頭側bとの方向を揃えて交互に重ね、段差が生じないよう全体として均一に重ね合わせて詰める。またステーキ用ブロック肉の場合は筋の方向を揃えるよりも、むしろ筋の方向が交互に直交又は適宜交叉するようにしてリティナーに詰めるのが身割れの防止上望ましい。」(2頁右上欄9~16行)
「例えばアワビ、ホタテ等の貝類、エビ、カニ等の甲殻類の肉を用いる場合もリティナーに詰める際の整形態様、筋の方向の揃え方に若干の差がある点を除けばその主製造過程は実質的に同じである。」(2頁左下欄下から7~3行)
これらの記載を参酌すれば、甲B4において「肉」との語は、所定の方向の筋を有する「筋肉」を意味することは明らかである。これに対し、牡蠣の身は大部分が内臓からなり、甲B4における「アワビ、ホタテ等の貝肉」に牡蠣の身が含まれるとはいえない。
よって、相違点B4-1-1は実質的な相違点であり、申立人Bの主張は採用できない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上まとめると、相違点B4-1-1は実質的な相違点であり、相違点B4-1-1に係る本件発明1の発明特定事項は、甲B4及び他の全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到することができたものではない。よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲B4ブロック肉発明ではなく、甲B4ブロック肉発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
(3)本件発明2ないし4について
本件発明2ないし4は、請求項1を引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(2)と同様の理由により、本件発明2ないし4は、甲B4ブロック肉発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明5ないし8について
本件発明5と甲B4切断物発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点B4-5
魚介類の身について、本件発明5は「牡蠣」と特定するのに対し、甲B4切断物発明はそのように特定されていない点。
相違点B4-5について検討すると、相違点B4-5は相違点B4-1-1と同じ内容の相違点であり、上記(2)イ~ウと同様に判断される。
よって、本件発明5は甲B4切断物発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。請求項5を引用し本件発明5の発明特定事項を全て備える本件発明6ないし8についても同様である。
(5)本件発明9ないし11について
本件発明9と甲B4食品発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点B4-9
魚介類の身について、本件発明9は「牡蠣」と特定するのに対し、甲B4食品発明はそのように特定されていない点。
相違点B4-9について検討すると、相違点B4-9は相違点B4-1-1と同じ内容の相違点であり、上記(2)イ~ウと同様に判断される。
よって、本件発明9は甲B4食品発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。請求項9を引用し本件発明9の発明特定事項を全て備える本件発明10及び11についても同様である。
(6)本件発明12ないし15について
本件発明12と甲B4製法発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点B4-12
用いる魚介類の身について、本件発明12は「牡蠣」と特定するのに対し、甲B4製法発明はそのように特定されていない点。
相違点B4-12について検討すると、相違点B4-12は実質的に相違点B4-1-1と同じ内容の相違点であり、上記(2)イ~ウと同様に判断される。
よって、本件発明12は甲B4製法発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。請求項12を引用し本件発明12の発明特定事項を全て備える本件発明13ないし15についても同様である。
(7)本件発明16及び17について
本件発明16と甲B4食品発明とを対比すると、両者は少なくとも以下の点で相違する。
・相違点B4-16
魚介類の身について、本件発明12は「牡蠣」と特定するのに対し、甲B4食品発明はそのように特定されていない点。
相違点B4-16について検討すると、相違点B4-16は相違点B4-1-1と同じ内容の相違点であり、上記(2)イ~ウと同様に判断される。
よって、本件発明16は甲B4食品発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。請求項16を引用し本件発明16の発明特定事項を全て備える本件発明17についても同様である。
(3)申立理由B1-3及び申立理由B2-3(甲B4を主たる証拠とする新規性、進歩性)についてのまとめ
以上のとおり、本件発明1は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえず、本件発明1ないし17は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし17に係る特許は、同法第113条第2号に該当しない。
よって、申立理由B1-3及び申立理由B2-3によって本件特許の請求項1ないし17に係る特許を取り消すことはできない。
8 申立理由B3(明確性)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(2)特許請求の範囲の記載
上記第3のとおりである。
(3)明確性要件についての判断
請求項1ないし4、6ないし8、11及び14ないし17の記載は、いずれも明確であって、本件特許明細書の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)における記載とも整合する。
したがって、本件発明1ないし4、6ないし8、11及び14ないし17に関して、特許請求の範囲の記載は、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(4)申立人の主張について
申立人Bは、特許異議申立書Bにおいて、上記第4 2(7)ア及びイのとおり主張しているので、以下、検討する。
ア 第4 2(7)アの主張について
本件発明における「ペースト状の牡蠣」との用語について、発明の詳細な説明には定義は記載されていないものの、その例示として【0023】には「牡蠣の可食部(内臓、貝柱、およびえら)の一部または全部を、フードプロセッサー等を用いて粉砕混合してペースト状としたものであってもよい。」との記載があり、さらにペースト状に加工された牡蠣(牡蠣ペースト)は食材として広く知られている。上記発明の詳細な説明の記載及び技術常識を参酌すれば、特許請求の範囲における「ペースト状の牡蠣」とは、牡蠣の身をペースト状に加工した材料を意味することは明らかである。
申立人Bは、人為的に調製したペースト以外の、牡蠣の体表の粘液や、崩れた牡蠣の身から生じるペースト状のものが「ペースト状の牡蠣」に含まれるか否かが不明確である旨を主張しているが、それらは「牡蠣から生じたペースト状成分」というべきものであり、本件発明における「ペースト状の牡蠣」に該当しないことは明らかである。
よって、上記第4 2(7)アにおける申立人Bの主張は、採用できない。
イ 第4 2(7)イの主張について
本件特許の請求項16は、「請求項12または13に記載の製造方法により得られる牡蠣フライ食品。」であり、請求項16が引用する請求項12には、「複数の牡蠣を寄せ集めて凍結し冷凍牡蠣集合体とする凍結工程と、」「前記冷凍牡蠣集合体を凍ったまま切断する切断工程と、」「を有する牡蠣フライ食品の製造方法」であることが特定され、さらに請求項13には、「前記凍結工程の前に、つなぎと牡蠣とを混合する混合工程を有する」ことが特定されている。そして、発明の詳細な説明には、冷凍牡蠣集合体、冷凍牡蠣集合体の切断物及び牡蠣フライ食品についてそれぞれの形態と製造方法(【0008】~【0087】)が記載され、さらに実施例として具体的な材料と製造手順(【0088】~【0097】)が記載されている。また、牡蠣の身の性状がどのようなものであるのかは本件特許の出願時における技術常識である。
上記発明の詳細な説明の記載及び技術常識を考慮すれば、当業者は、請求項12、13及び16の記載から、本件発明16で特定される「牡蠣フライ食品」がどのような構造を有するものであるのか理解することができる。そうすると、請求項16の記載は「その物の製造方法が記載されている場合」には該当せず、不可能・非実際的事情の存在について検討するまでもなく、本件発明16は明確である。請求項16の記載を引用する本件発明17についても同様である。
よって、上記第4 2(7)イにおける申立人Bの主張は、採用できない。
(5)申立理由B3(明確性)についてのまとめ
以上のとおり、本件特許の請求項1ないし4、6ないし8、11及び14ないし17に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当しない。
よって、申立理由B3によって本件特許の請求項1ないし4、6ないし8、11及び14ないし17に係る特許を取り消すことはできない。
第7 むすび
上記第6のとおり、本件特許の請求項1ないし17に係る特許は、取消理由並びに特許異議申立書A及びBに記載した特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし17に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700852