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特許異議申立

2025-701093

ケト酸を含む細胞培養培地

審判番号
2025-701093
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-559723
登録番号
7684224
請求日
2025年11月25日
審決日
2026年05月14日
公報発行日
2026年06月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
  • 【権利者代理人】弁理士法人葛和国際特許事務所
  • 【異議申立人】黒田 泰
審判長/審判官
  • 審判長 植原 克典
  • 審判官 荒木 英則
  • 審判官 戸来 幸男
分類
P1651.113-Y (C12N) / P1651.121-Y (C12N)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第113条第1項第2号、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第114条第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7684224号発明「ケト酸を含む細胞培養培地」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7684224号の請求項1~4に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7684224号の請求項1~4に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和2年4月8日(優先権主張 2019年4月11日 (EP)欧州特許庁)を国際出願日とする出願であって、令和7年5月19日にその特許権の設定登録がされ、同年5月27日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和7年11月25日に、本件特許の請求項1~4に係る特許に対して、特許異議申立人である黒田 泰(以下「申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされた。 第2 本件発明 請求項1~4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明4」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 本件発明1 「-細胞および水性細胞培養培地をバイオリアクターに充填すること -バイオリアクター中で細胞をインキュベートすること -バイオリアクター中での細胞のインキュベーションの全時間にわたって連続的に、または前記インキュベーション時間内に1回または数回、液体フィード培地である細胞培養培地をバイオリアクターに添加すること による、バイオリアクター中で細胞を培養するためのフェドバッチプロセスであって、 ここで、フィード培地は、8.5未満のpHを有し、ならびに、4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、および/またはそれらの塩の群から選択される少なくとも1のケト酸を含み、および 細胞は、CHO細胞である、 前記フェドバッチプロセス。」 本件発明2 「フィード培地が、少なくとも4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、および/またはそれらの塩を12~600mmol/lの濃度で含む、請求項1に記載のフェドバッチプロセス。」 本件発明3 「フィード培地が、溶媒に溶解する50~400g/lの固体成分を含む、請求項1に記載のフェドバッチプロセス。」 本件発明4 「インキュベーションの間に連続的に、または前記時間内に1回または数回、バイオリアクターに添加されるフィード培地が、常に同じ組成を有する、請求項1に記載のフェドバッチプロセス。」 第3 特許異議申立ての理由概要と証拠方法 申立人が申し立てた特許異議申立の理由(以下「申立理由」という。)の概要及び証拠方法は以下のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性欠如) 本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であり、特許法29条第1項第3号に該当するから、特許法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(甲第1号証に基づく進歩性欠如) 本件発明1~4は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するから、特許法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 申立理由3(甲第2号証に基づく進歩性欠如) 本件発明1~4は、甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するから、特許法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。 4 申立理由4(甲第3号証を主引例とする進歩性欠如) 本件発明1~4は、甲第3号証並びに甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するから、特許法第113条第1項第2号に該当し、取り消されるべきものである。 5 証拠方法 甲第1号証:Naylor S.L. et al., Somatic Cell Genet., 1976, vol.2, no.2, pp.93-111 甲第2号証:特表平6-501611号公報 甲第3号証:Eagle H., Science, 1959, vol.130, no.3373, pp.432-437 第4 当審の判断 上記第3の1~4の各申立理由についての当審の判断は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性欠如)について (1)甲第1号証について 甲第1号証には、以下のア~クが記載されている(なお、英語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。下線は当審が付した。)。 ア 「要旨-培養哺乳類細胞の必須アミノ酸要求量は、19種類のアミノ酸誘導体によって満たされることが明らかになった。この発見は、(a)動物栄養研究の結果を裏付けるとともに、(b)19種類の必須アミノ酸誘導体を同定し、新たな栄養要求性変異株の単離を可能にするものである。本調査では、5つの自然発生的な栄養要求性マーカーが検出された。すなわち、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞におけるシスタチオニンおよびシトルリンの利用不能、HTC+肝癌細胞におけるシトルリンの代謝不能、そしてKB細胞がメチオニンまたはシスチンの代わりにホモシスチンを、L-シスチンの代わりにD-シスチンを利用できるというEagleらの観察結果の確認である。」(第93頁要旨) イ 「必須アミノ酸欠乏培地の調製。 本稿で述べる研究では、Dulbecco-Vogt培地(Zn2+及びCu2+を含むように改変)を用いた。培地成分の欠乏実験を行うため、Dulbecco-Vogt培地を8種類のストック溶液に分割した(表1)。培地の有機成分は全てSigma Chemical Co.(ミズーリ州セントルイス)から入手したものであり、無機成分は試薬グレードであった。これらのストック溶液は-20℃で少なくとも6ヶ月間安定である。培地の調製は、表2に示すようにストック溶液を混合して行う。」(第95頁第17行~25行) ウ 「 [図:0001436207000001.jpg] 」 (表2 ストック溶液からの培地の調製) エ 「哺乳類細胞株。 RAG腎細胞、マウスSVeye細胞(本研究室で樹立)、HTC肝細胞、C5グリア細胞、B16メラノーマ細胞、MMT乳腺細胞、マウスL-細胞、ヒトKB細胞、およびCHO細胞株について、適切な必須アミノ酸前駆体および代謝産物を添加した培地で、必須アミノ酸欠乏条件下での増殖能を調査した。上記の細胞株のほとんどは、米国培養細胞コレクション(ATCC)から入手した。HTC+及び変異株6TG-11はG. Tomkins博士から、CHO(LA株)はS. Barranco博士から、LM(TK-)はS. Kit博士から入手した。」(第97頁第5行~第13行) オ 「細胞維持。 細胞は、ペニシリン及びストレプトマイシンを含む10%ウシ胎児血清添加Dulbecco培地で培養した。細胞は36.5℃の空気中10%CO2雰囲気下で培養した。CHO細胞は天然のプロリン要求性であるため、CHO細胞の培養培地には1mMのプロリンを添加した(17)」(第97頁第14行~第18行) カ 「必須アミノ酸代替物質の細胞培養試験。 いくつかの分化細胞株を用いて、以下に述べる方法で必須アミノ酸誘導体の利用能を試験した。アミノ酸ストック溶液(AA)(表1)は、特定の必須アミノ酸を個別に除去することで改変した。アミノ酸欠乏培地は表2に示すように調製した。アミノ酸誘導体は、Dulbecco-Vogt培地(表1)中の必須アミノ酸と同じモル濃度で、適切なアミノ酸欠乏培地に添加し、増殖促進効果を試験した。 増殖試験は、60mm Luxペトリ皿(Flow Laboratories)に5mlの試験培地を入れ、2×105個の細胞を播種して行った。増殖反応は、5日目に電子細胞カウンター(Particle Data, Inc.、イリノイ州シカゴ)を用いて細胞数を計測することで評価した。試験培地における増殖反応を、完全培地における増殖、および特定のアミノ酸を欠乏させた培地における増殖と比較した。得られた結果は、個々の実験の平均値として表される。」(第97頁第24行~第38行) キ 「必須アミノ酸の前駆体、分解産物及びペプチド(必須アミノ酸を含む)63種類について、細胞増殖に必要な必須アミノ酸を代替する能力を試験した(表4)。必須アミノ酸代替のための細胞培養試験及び試薬純度のための微生物学的試験に用いた手法については、「方法」の項で説明した。表4は、本研究の結果を示している。アミノ酸誘導体は、親化合物とグループ化されている。表4には、研究対象とした各誘導体について、いくつかの哺乳類細胞株の増殖反応と、化合物の純度を決定するために使用した試験が示されている。 ・・・ 表4から明らかなように、多くのアミノ酸誘導体は哺乳類細胞に必要な必須アミノ酸を代替できる。多くの場合、必須アミノ酸のα-ケト酸が必須アミノ酸の必要量を満たす。・・・」(第97頁第40行~第99頁第28行) ク 「 [図:0001436207000002.jpg] [図:0001436207000003.jpg] [図:0001436207000004.jpg] [図:0001436207000005.jpg] 」 (表4 哺乳類細胞による必須アミノ酸誘導体の利用) 上記ア~クからみて、甲第1号証には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「Dulbecco-Vogt培地を5ml分注した60mm Luxペトリ皿(Flow Laboratories)に、2×105個のCHO細胞を播種すること、 ペトリ皿上でCHO細胞をインキュベートすること、及び α-ケトメチル吉草酸又はα-ケトイソカプロン酸がCHO細胞の増殖に必要な必須アミノ酸を代替する能力を有するか否かを試験すること を含む、CHO細胞の培養方法であって、 ここで、Dulbecco-Vogt培地はα-ケトメチル吉草酸又はα-ケトイソカプロン酸を必須アミノ酸代替物質として含む 前記培養方法。」 (2)対比 本件発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明の「Dulbecco-Vogt培地」は、本件発明1の「水性細胞培養培地」に相当する。 また、甲1発明の「α-ケトメチル吉草酸」及び「α-ケトイソカプロン酸」は、本件発明1の「3-メチル-2-オキソペンタン酸」及び「4-メチル-2-オキソペンタン酸」にそれぞれ相当する。 そして、「バイオリアクター」とは、細胞培養に基づく有用物質生産技術に用いられる培養容器を指すことが技術常識であるところ、甲1発明の「ペトリ皿」は、α-ケトメチル吉草酸又はα-ケトイソカプロン酸がCHO細胞の増殖に必要な必須アミノ酸を代替する能力を有するか否かを試験するために用いられる培養容器であって、CHO細胞培養に基づく有用物質生産技術に用いられる培養容器であるとはいえないことから、「バイオリアクター」に該当しない。 したがって、甲1発明の「ペトリ皿」は、本件発明1の「バイオリアクター」と、細胞培養に用いられる「培養容器」である限りにおいて一致する。 さらに、「フェドバッチプロセス」とは、細胞培養系外から連続的又は逐次的に基質(原料)を含む新たな液体フィード培地をバイオリアクター内に許容液量に達するまで添加し、生物反応を行わせる細胞培養操作を指すことが技術常識であるところ、甲1発明の「CHO細胞の培養方法」は、Dulbecco-Vogt培地を培養容器に5ml分注した後は、CHO細胞の培養の途中で液体フィード培地を培養容器に添加していないことから、「フェドバッチプロセス」には該当しない。 したがって、甲1発明の「CHO細胞の培養方法」は、本件発明1の「4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、および/またはそれらの塩の群から選択される少なくとも1のケト酸を含み、8.5未満のpHを有する液体フィード培地である細胞培養培地をバイオリアクターに添加することによる、バイオリアクター中でCHO細胞を培養するためのフェドバッチプロセス」と、「CHO細胞の培養方法」である限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲1発明は、 「水性細胞培養培地を含む培養容器にCHO細胞を播種すること、及び 培養容器中でCHO細胞をインキュベートすること を含む、CHO細胞の培養方法であって、 ここで、水性細胞培養培地は3-メチル-2-オキソペンタン酸又は4-メチル-2-オキソペンタン酸を含む 前記培養方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1)本件発明1はCHO細胞及び水性細胞培養培地を「バイオリアクター」に充填しているのに対し、甲1発明は水性細胞培養培地を分注した「60mm Luxペトリ皿(Flow Laboratories)」にCHO細胞を播種している点。 (相違点2)本件発明1はCHO細胞の培養に「4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、および/またはそれらの塩の群から選択される少なくとも1のケト酸を含み、8.5未満のpHを有する液体フィード培地である細胞培養培地をバイオリアクターに添加することによる、バイオリアクター中でCHO細胞を培養するためのフェドバッチプロセス」を用いているのに対し、甲1発明はCHO細胞の培養にそのようなフェドバッチプロセスを用いていない点。 (3)判断 上記(1)~(2)のとおり、甲第1号証には、CHO細胞及び水性細胞培養培地を「バイオリアクター」に充填することは記載されていない。 また、同様に、甲第1号証には、CHO細胞の培養に「4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、および/またはそれらの塩の群から選択される少なくとも1のケト酸を含み、8.5未満のpHを有する液体フィード培地である細胞培養培地をバイオリアクターに添加することによる、バイオリアクター中でCHO細胞を培養するためのフェドバッチプロセス」を用いることは記載されていない。 (4)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書の3(4)イ(i)(g)において、甲第1号証には、「バイオリアクター中で細胞を培養するためのフェドバッチプロセス」との直接の記載はないものの、甲第1号証に記載されているプロセスは、「バイオリアクター中で細胞を培養するためのフェドバッチプロセス」に他ならないと主張している。 しかしながら、甲第1号証には、Dulbecco-Vogt培地を調製したこと(上記(1)イ~ウ)、CHO細胞の維持培養を行ったこと(上記(1)オ)及び哺乳類細胞の必須アミノ酸誘導体の利用能力を試験するために細胞培養を行ったこと(上記(1)カ~ク)は記載されているものの、CHO細胞培養に基づく有用物質生産技術などに用いられる培養容器を使用したと解される記載はなく、Dulbecco-Vogt培地を培養容器に5ml分注した後は、CHO細胞の培養の途中で液体フィード培地を培養容器に添加したと解される記載もないため、申立人が主張する「バイオリアクター中で細胞を培養するためのフェドバッチプロセス」は記載されていない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 (5)小括 以上からみて、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明とはいえない。 よって、申立理由1には理由がない。 2 申立理由2(甲第1号証に基づく進歩性欠如)について (1)甲第1号証について 上記1(1)のとおりである。 (2)対比 上記1(2)のとおりである。 (3)判断 ア 相違点1について 上記1(1)のとおり、甲第1号証は、哺乳類細胞が必須アミノ酸誘導体を必須アミノ酸代替物質として利用する能力を有するか否かを試験した結果を報告するものであり、その試験系を構成する細胞培養方法の一態様として甲1発明が記載されているものの、甲1発明の細胞培養方法で用いられているペトリ皿を「バイオリアクター」で置換することは、甲第1号証には記載も示唆もされていない。 また、甲第1号証の記載及び本件優先日当時の技術常識を考慮しても、哺乳類細胞の必須アミノ酸誘導体の利用能力を試験するために甲1発明の細胞培養方法で用いられているペトリ皿を、細胞培養に基づく有用物質生産技術という、細胞培養試験とは異なる技術分野及び目的で用いられる培養容器である「バイオリアクター」で置換する動機付けがあるとはいえない。 イ 相違点2について 上記1(1)のとおり、甲第1号証は、哺乳類細胞が必須アミノ酸誘導体を必須アミノ酸代替物質として利用する能力を有するか否かを試験した結果を報告するものであり、その試験系を構成する細胞培養方法の一態様として甲1発明が記載されているものの、甲1発明の細胞培養方法で用いる培養技術として「フェドバッチプロセス」を採用することは、甲第1号証には記載も示唆もされていない。 また、甲第1号証の記載及び本件優先日当時の技術常識を考慮しても、哺乳類細胞の必須アミノ酸誘導体の利用能力を試験するために甲1発明の細胞培養方法で用いる培養技術として、細胞培養に基づく有用物質生産技術という、細胞培養試験とは異なる技術分野及び目的で用いられる培養技術である「フェドバッチプロセス」を採用する動機付けがあるとはいえない。 (4)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書の3(4)ウ(I)において、本件発明1~4は、甲第1号証の記載に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであると主張している。 しかし、上記(3)のとおり、哺乳類細胞の必須アミノ酸誘導体の利用能力を試験するために甲1発明の細胞培養方法で用いる培養容器及び培養技術として、細胞培養に基づく有用物質生産技術という、細胞培養試験とは異なる技術分野及び目的で用いられる「バイオリアクター」及び「フェドバッチプロセス」をそれぞれ採用する動機付けがあるとはいえない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 (5)小括 以上からみて、本件発明1は、甲第1号証の記載に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 本件発明1を直接的に引用し、かつ本件発明をさらに限定するというべき本件発明2~4についても同様である。 よって、申立理由2には理由がない。 3 申立理由3(甲第2号証に基づく進歩性欠如)について (1)甲第2号証について 甲第2号証には、以下のア~コが記載されている(下線は当審が付した。)。 ア 「請求の範囲 1.少なくとも1種の栄養素の前駆体、上記栄養素前駆体と上記老廃物間の反応の触媒が可能である第1の酵素、再循環補因子、および上記補因子の再生が可能である第2の酵素を細胞培養系に加えることを含む細胞培養系で少なくとも1種の老廃物の濃度を制御する方法。 2.上記老廃物がアンモニアであり、上記栄養素前駆体がアミノ酸前駆体である請求の範囲第1項記載の方法。 3.上記アミノ酸前駆体がα-ケトイソカプロエート、α-ケトイソバレレートおよびα-ケト-β-メチルバレレートを含む群から選択され、上記第1酵素がロイシンデヒドロゲナーゼである請求の範囲第2項記載の方法。」(請求の範囲) イ 「培養細胞は、炭素源、アミノ酸およびビタミンを含むある種の栄養素を異化する。細胞は細胞分裂を経て、モノクローナル抗体のような有用な細胞物質並びにアンモニアおよび乳酸のような不要物を産生する。しかしながら、不要物の蓄積および栄養素の減少は細胞培養の機能的寿命を限定する。バッチ培養では、細胞の死は最小レベルの栄養素が枯渇および/または不要物の過度レベルが蓄積した後に起こる。不要物の増加および栄養素の減少に対する様々な解決が試みられている。 培養の連続成長は、培養部分の除去および一定間隔で新しい培地に置き換えることにより達成することができる。このことは、不要物を除去し、必要な栄養素を補充するのに役立つ。本方法では、細胞および培地を含む流体を、細胞培地容器から連続的に取り除き、新しい培地に置き換える。別法として、かん流系では、新しい培地が加えられる間に培地のみが取り出されるように、細胞が細胞培養管に監禁することができる。 しかしながら、細胞培養系の成分は一様に減少しない。すなわち、かん流培地は3または4種の栄養素が減少することがあり得るが、他の成分の適当な量を含むことができる。かん流によるこれらの有用な成分の除去は不経済である。 これらの様々な系では、栄養素および不要物のレベルは「使いきった」培地を回収し、新しい培地に置き換えることで維持される。しかしながら、特に大規模/高い密度の培養では、栄養素のかん流は製造者から培養設備、バイオリアクター、および最終的な物質単離設備までへの大きな体積の培地の高価な転移が必要となる。大きな体積の培地を移動する価格および不都合さを小さくする1つの方法は、組織培養培地の濃縮物を使用することである。しかしながら、濃縮物は培地に添加する前に水で再構成する必要があり、大きな体積の使いきった培地が生じる。 かん流は他の不利に関連する。例えば、かん流系は使いきった培地から分離するべき細胞による押し出しを受け易い。流体の莫大な量、時には1日あたり1培養体積以上を交換しなければならないので、このことは高密度培養物にとって顕著な関心事である。さらに、細胞物質は生じた大きな体積の使いきった培地から単離しなければならず、物質を単離した後、大きな体積の使いきった培地を廃棄する必要がある。 ・・・ すなわち、栄養素および不要物が大きな体積の培地のかん流の必要なしで所望のレベル内で維持することができる場合、細胞培養の実施に明らかに有利となる。」(第2頁右下欄第7行~第3頁左上欄第21行) ウ 「本発明によると、複合酵素系は、細胞培養系におけるアミノ酸のような栄養素の合成およびアンモニアおよび乳酸のような不要物の減少を可能にする。好ましい態様としては、乳酸デヒドロゲナーゼは補因子であるNAD+の存在下で乳酸をピルビン酸へ転換する。ロイシンデヒドロゲナーゼは、乳酸デヒドロゲナーゼ反応により生じるNADHの存在下でα-ケト酸を対応アミノ酸へ転換する。補因子は適当なレベルの基質の存在下で連続的に再循環する。本発明は、有害な不要物をそのままでは細胞培養系中に欠乏する栄養素に転換する機構を提供する。それは、培養中における細胞の連続的な成長に必要なアミノ酸および他の成分のレベルを維持するための系に適用することができる。結果としては、培養した細胞の産生寿命が延長される。」(第3頁左上欄第23行~右上欄第7行) エ 「「細胞培養系」の語は、培養管中でインビトロで成長する細胞の系を意味する。系は具体的な培養管配置または細胞型に限定されないが、好ましい態様では哺乳類細胞が液体培地で成長する。」(第3頁右上欄第14行~第16行) オ 「代表的な複合酵素系は第1図に示される。この系は細胞培養系で使用される上記で列挙した必要条件に従う。 好ましい態様では、系は乳酸デヒドロゲナーゼおよびロイシンデヒドロゲナーゼの2つの酵素、および再循環補因子(NAD+/NADH)を使用する。乳酸デヒドロゲナーゼはNAD+の存在下で乳酸をピルビン酸に変換する。ロイシンデヒドロゲナーゼは、乳酸デヒドロゲナーゼ反応で生じるNADHの存在下で、α-ケト酸(α-ケトイソカプロエート、α-ケトイソ吉草酸およびα-ケト-β-メチル吉草酸)を対応アミノ酸(それぞれロイシン、バリンおよびイソロイシン)に変換する。補因子は、適当なレベルの乳酸、アンモニアおよびアミノ酸前駆体が存在する限り、連続的に再循環する。 細胞培養では、複合酵素系は不要物であるアンモニアおよび乳酸を同時に減少しながらアミノ酸の合成を達成する。」(第3頁右下欄第21行~第4頁左上欄第5行) カ 「実施例1 一般的方法 次の酵素および補因子は次に示した順番で細胞培養系に加える。 A.乳酸デヒドロゲナーゼを組織培地に加える。 B.ロイシンデヒドロゲナーゼと「A」で再構成する。 C.NAD+を「B」に加える。 D.ADPを「C」に加える。 E.KCIを「D」に加える。 F.α-ケトイソカプロエート、α-ケトイソ吉草酸およびα-ケト-β-メチル吉草酸を「E」に加える。 G.「E」を0.22μ非バイロジェンデュロポール膜(ミリポア・コーポレイション、ベッドフォード、マサチューセッツ01730)で濾過する。 H.別に使用するまで2-4℃で貯蔵する。 上記試薬を使用する組織培地に直接加えるかまたは、細胞培地の濃縮物としてこれを製剤化し、適応最終濃度を提供するためにその後組織培地に溶解することが可能である。(このことは、数種の型の細胞または条件が同時に試験される場合に望ましい。)細胞型、培養栄養素の減少の所望な割合および不要物の発生の割合により反応物の濃度を調整することもできる。」(第4頁右上欄第16行~第4頁左下欄第5行) キ 「実施例3 細胞培養説明書 酵素再生技術の用途は、不要物が増加して、アンモニアおよび乳酸の濃度を生み出す場合に、高細胞密度で最も適切で有用性を有する。細胞密度がより高ければ、与えられるユニット/ml濃度に必要な酵素は少なくなる。ハイブリドーマ細胞では、よい結果が107/mlで塗布した細胞で観察される。この濃度では、撹拌が凝集から細胞を保護および適当な酸化を確実にするために必要である。細胞はインペラーデザインのバイオリアクター(酸素、pH制御)または12ウエルトレーで培養することができる。 1)細胞は90%以上の生存率を有し、遅延対数相にある。遅延相細胞を避けることが好ましい。 2)細胞計数を実施し、107細胞/mlを含む体積に調整する。 3)グルタミン不足を避けるために、3倍(6mM)濃度(総合で8mM)で基礎培地にグルタミンを補充することが好ましい。 4)第1表により、NAD+、α-ケト酸、ADPおよびKClを製造する。 5)実施例1の段階A-Hに従って、組織培地の酵素を製造する。 6)細胞を遠心し、組織培地で再けんだくする。最終濃度が1×107細胞/mlにするために、酵素混合物の添加時の希釈を考慮することが重要である(段階8)。 7)培養管またはトレーに細胞を加える。 8)酵素混合物、NAD+、α-ケト酸、ADPおよびKClを直ちに加える。アルカリ性条件を避けることが好ましい。 9)5-10% CO2/90%-95%空気を含む湿度室内の培養管またはトレーに置く。この室はおよそ150RPMの回転子の上に置くことができる。 10)37℃でインキュベートする。 11)グルコース、乳酸、アンモニア、生存度、アミノ酸含量および産生能力の決定するための毎日のサンプル(例えばモノクローナル抗体)を実施するべきである。 結果 ・・・ 第3および4表は、溶液中で遊離した酵素(第3表)およびマイクロカプセル化した酵素(第4表)を用い高細胞密度においてpHおよび酸素制御バイオリアクターで製造された合成アミノ酸の製造レベルを示す。両方の試験は、アミノ酸レベルが細胞培養物中で酵素的手段により増加することおよび、マイクロカプセル化が細胞環境から酵素を隔てるための利用できる別法であることを示す。」(第5頁左上欄第9行~第5頁右上欄第17行) ク 「 [図:0001436207000006.jpg] 」 (第1表) ケ 「 [図:0001436207000007.jpg] 」 (第3表~第4表) コ 「 [図:0001436207000008.jpg] 」 (第1図) 上記ア~コからみて、甲第2号証には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「ハイブリドーマ細胞及び液体培地をバイオリアクターに充填すること、 バイオリアクター中でハイブリドーマ細胞をインキュベートすること、及び バイオリアクター中のロイシン及び/又はイソロイシン並びに乳酸の量を所望の範囲内で維持すること を含む、ハイブリドーマ細胞の培養方法であって、 ここで、液体培地はアミノ酸前駆体であるα-ケトイソカプロエート及び/又はα-ケト-β-メチル吉草酸、当該アミノ酸前駆体と乳酸の間の反応を触媒可能であるロイシンデヒドロゲナーゼ、再循環補因子であるNAD+/NADH、並びに当該補因子の再生が可能である乳酸デヒドロゲナーゼを含む 前記培養方法。」 (2)対比 本件発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明の「液体培地」は、本件発明1の「水性細胞培養培地」に相当する。 また、甲2発明の「α-ケトイソカプロエート」及び「α-ケト-β-メチル吉草酸」は、本件発明1の「4-メチル-2-オキソペンタン酸」及び「3-メチル-2-オキソペンタン酸」にそれぞれ相当する。 そして、「フェドバッチプロセス」とは、細胞培養系外から連続的又は逐次的に基質(原料)を含む新たな液体フィード培地をバイオリアクター内に許容液量に達するまで添加し、生物反応を行わせる細胞培養操作を指すことが技術常識であるところ、甲2発明の「ハイブリドーマ細胞の培養方法」は、液体培地をバイオリアクターに充填した後は、ハイブリドーマ細胞の培養の途中で液体フィード培地をバイオリアクターに添加していないことから、「フェドバッチプロセス」には該当しない。 したがって、甲2発明の「ハイブリドーマ細胞の培養方法」は、本件発明1の「4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、および/またはそれらの塩の群から選択される少なくとも1のケト酸を含み、8.5未満のpHを有する液体フィード培地である細胞培養培地をバイオリアクターに添加することによる、バイオリアクター中でCHO細胞を培養するためのフェドバッチプロセス」と、「哺乳類細胞の培養方法」である限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲2発明は、 「哺乳類細胞及び水性細胞培養培地をバイオリアクターに充填すること、及び バイオリアクター中で哺乳類細胞をインキュベートすること を含む、哺乳類細胞の培養方法であって、 ここで、水性細胞培養培地は4-メチル-2-オキソペンタン酸及び/又は3-メチル-2-オキソペンタン酸を含む 前記培養方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1)本件発明1は哺乳類細胞の培養に「4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、および/またはそれらの塩の群から選択される少なくとも1のケト酸を含み、8.5未満のpHを有する液体フィード培地である細胞培養培地をバイオリアクターに添加することによる、バイオリアクター中でCHO細胞を培養するためのフェドバッチプロセス」を用いているのに対し、甲2発明は哺乳類細胞の培養にそのようなフェドバッチプロセスを用いていない点。 (相違点2)本件発明1は哺乳類細胞として「CHO細胞」を用いているのに対し、甲2発明は哺乳類細胞としてハイブリドーマ細胞を用いている点。 (3)判断 ア 相違点1について 甲第2号証は、連続培養方法やかん流培養方法に基づき細胞を培養するに際して、バイオリアクターに含まれる液体培地を連続的に置換することにより生じる不経済性などの問題を解決するために、複合酵素系を用いて液体培地中に含まれる栄養素及び老廃物の量を所望の範囲内で維持することにより、液体培地の連続的な置換を行うことなく、高効率かつ経済的な細胞培養を可能とする技術を報告するものであり、「フェドバッチプロセス」のように細胞培養系外から連続的又は逐次的に基質(原料)を含む新たな液体フィード培地をバイオリアクター内に添加する細胞培養方法を採用することは、甲第2号証においては想定されていない。 また、甲第2号証の記載及び本件優先日当時の技術常識を考慮しても、甲2発明の細胞培養方法で用いる培養技術として、細胞培養系外から連続的又は逐次的に基質(原料)を含む新たな液体フィード培地をバイオリアクター内に添加する「フェドバッチプロセス」を採用する動機付けがあるとはいえない。 (4)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書の3(4)ウの(II)において、本件発明1~4は、甲第2号証の記載に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであると主張している。 しかし、上記(3)のとおり、甲2発明の細胞培養方法で用いる培養技術として「フェドバッチプロセス」を採用する動機付けがあるとはいえない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 (5)小括 以上からみて、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第2号証の記載に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 本件発明1を直接的に引用し、かつ本件発明をさらに限定するというべき本件発明2~4についても同様である。 よって、申立理由3には理由がない。 4 申立理由4(甲第3号証を主引例とする進歩性欠如)について (1)甲第3号証について 甲第3号証には、以下のア~エが記載されている(なお、英語で記載されているので、当審による翻訳文で示す。下線は当審が付した。)。 ア 「哺乳類細胞培養におけるアミノ酸代謝」(第432頁題名) イ 「本稿は、これらの培養細胞のアミノ酸代謝に関するものであり、総説というよりは進捗報告であり、大部分は単一の研究室で行われた研究をまとめたものである。細菌培養におけるアミノ酸代謝に関する膨大な情報(5、6)は、本稿で報告する研究の刺激と原型となった。細菌系における関連研究結果については、比較生化学における重要な研究が本稿の範囲を超えるため、詳細には言及していない。」(第432頁中欄第8行~第21行) ウ 「多数のケト酸及びその他のアミノ酸同族体について、対応するアミノ酸を置換する能力に関して試験が行われた(11)。いくつかのヒト及び動物細胞株を用いた結果を表2にまとめる。これらの細胞には多種多様なトランスアミナーゼが含まれており(12)、ラットを用いた摂食実験(5)で確認されたように、これらのケト酸のほとんどは実際に対応するアミノ酸を置換する。」(第432頁右欄第30行~第40行) エ 「 [図:0001436207000009.jpg] 」 (表2 必須アミノ酸のケト酸アナログおよび関連化合物に対する培養細胞の増殖反応(11)) 上記ア~エからみて、甲第3号証には、次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。 「培地に哺乳類細胞を播種すること、 培地中で哺乳類細胞をインキュベートすること、及び α-ケト-β-メチル吉草酸又はα-ケトイソカプロン酸が対応する必須アミノ酸をそれぞれ置換する能力を有するか否かを試験すること を含む、哺乳類細胞の培養方法であって、 ここで、培地はα-ケト-β-メチル吉草酸又はα-ケトイソカプロン酸を必須アミノ酸のケト酸アナログとして含む 前記培養方法。」 (2)甲第1号証について 上記1(1)のとおりである。 (3)甲第2号証について 上記3(1)のとおりである。 (4)対比 本件発明1と甲3発明を対比する。 甲3発明の「α-ケト-β-メチル吉草酸」及び「α-ケトイソカプロン酸」は、本件発明1の「3-メチル-2-オキソペンタン酸」及び「4-メチル-2-オキソペンタン酸」にそれぞれ相当する。 そして、「フェドバッチプロセス」とは、細胞培養系外から連続的又は逐次的に基質(原料)を含む新たな液体フィード培地をバイオリアクター内に許容液量に達するまで添加し、生物反応を行わせる細胞培養操作を指すことが技術常識であるところ、甲3発明の「哺乳類細胞の培養方法」は、哺乳類細胞の培養の途中で液体フィード培地を培地に添加していないことから、「フェドバッチプロセス」には該当しない。 したがって、甲3発明の「哺乳類細胞の培養方法」は、本件発明1の「4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、および/またはそれらの塩の群から選択される少なくとも1のケト酸を含み、8.5未満のpHを有する液体フィード培地である細胞培養培地をバイオリアクターに添加することによる、バイオリアクター中でCHO細胞を培養するためのフェドバッチプロセス」と、「哺乳類細胞の培養方法」である限りにおいて一致する。 そうすると、本件発明1と甲3発明は、 「培地に哺乳類細胞を播種すること、及び 培地中で哺乳類細胞をインキュベートすること を含む、哺乳類細胞の培養方法であって、 ここで、培地は3-メチル-2-オキソペンタン酸又は4-メチル-2-オキソペンタン酸を含む 前記培養方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1)本件発明1は哺乳類細胞及び培地を「バイオリアクター」に充填しているのに対し、甲3発明は培養容器についてそのような特定がない点。 (相違点2)本件発明1は哺乳類細胞の培養に「4-メチル-2-オキソペンタン酸、3-メチル-2-オキソペンタン酸、および/またはそれらの塩の群から選択される少なくとも1のケト酸を含み、8.5未満のpHを有する液体フィード培地である細胞培養培地をバイオリアクターに添加することによる、バイオリアクター中でCHO細胞を培養するためのフェドバッチプロセス」を用いているのに対し、甲3発明は哺乳類細胞の培養にそのようなフェドバッチプロセスを用いていない点。 (相違点3)本件発明1は哺乳類細胞の培養に「水性細胞培養培地」を用いているのに対し、甲3発明は培地についてそのような特定がない点。 (5)判断 ア 相違点1について 上記(1)のとおり、甲第3号証は、哺乳類細胞が必須アミノ酸のケト酸アナログを必須アミノ酸置換物質として利用する能力を有するか否かを試験した結果を報告するものであり、その試験系を構成する細胞培養方法の一態様として甲3発明が記載されているものの、当該細胞培養方法で用いる培養容器として「バイオリアクター」を採用することは、甲第3号証には記載も示唆もされていない。 また、甲第3号証の記載並びに甲第1号証の記載、甲第2号証の記載及び本件優先日当時の技術常識を考慮しても、哺乳類細胞の必須アミノ酸ケト酸アナログの利用能力を試験するために甲3発明の細胞培養方法で用いる培養容器として、細胞培養に基づく有用物質生産技術という、細胞培養試験とは異なる技術分野及び目的で用いられる培養容器である「バイオリアクター」を採用する動機付けがあるとはいえない。 イ 相違点2について 上記(1)のとおり、甲第3号証は、哺乳類細胞が必須アミノ酸のケト酸アナログを必須アミノ酸置換物質として利用する能力を有するか否かを試験した結果を報告するものであり、その試験系を構成する細胞培養方法の一態様として甲3発明が記載されているものの、当該細胞培養方法で用いる培養技術として「フェドバッチプロセス」を採用することは、甲第3号証には記載も示唆もされていない。 また、甲第3号証の記載並びに甲第1号証の記載、甲第2号証の記載及び本件優先日当時の技術常識を考慮しても、哺乳類細胞の必須アミノ酸ケト酸アナログの利用能力を試験するために甲3発明の細胞培養方法で用いる培養技術として、細胞培養に基づく有用物質生産技術という、細胞培養試験とは異なる技術分野及び目的で用いられる培養技術である「フェドバッチプロセス」を採用する動機付けがあるとはいえない。 (6)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書の3(4)ウの(III)において、本件発明1~4は、甲第3号証の記載並びに甲第1号証の記載及び甲第2号証の記載に基づいて、当業者が容易に想到することができたものであると主張している。 しかし、上記(5)のとおり、哺乳類細胞の必須アミノ酸ケト酸アナログの利用能力を試験するために甲3発明の細胞培養方法で用いる培養容器及び培養技術として、細胞培養試験とは異なる技術分野及び目的で用いられる「バイオリアクター」及び「フェドバッチプロセス」をそれぞれ採用する動機付けがあるとはいえない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 (7)小括 以上からみて、相違点3について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第3号証の記載並びに甲第1号証の記載及び甲第2号証の記載に基づいて、当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 本件発明1を直接的に引用し、かつ本件発明をさらに限定するというべき本件発明2~4についても同様である。 よって、申立理由4には理由がない。 5 まとめ 以上のとおり、申立理由1~4には理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、特許法第114条第4項の規定により、本件請求項1~4に係る発明について結論のとおり決定する。

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2025-701093

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