2021-701013
包装材、ケースおよび蓄電デバイス
- 審判番号
- 2021-701013
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-199410外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6862084
- 請求日
- 2021年10月20日
- 審決日
- 2023年05月11日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社レゾナック・パッケージング
- 【権利者代理人】清水 義仁
- 【権利者代理人】清水 久義
- 【権利者代理人】高田 健市
- 【異議申立人】下河 あい
- 分類
- P1651.121-YAA(B65D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 12項目
第1 手続の経緯
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特許第6862084号の請求項1~15に係る特許についての出願は、平成27年10月7日に出願され、令和3年4月2日にその特許権の設定登録がされ、同年4月21日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
同年 6月 2日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
同年 7月26日 :申立人による意見書の提出
同年 9月29日付け:取消理由通知書(決定の予告)
同年12月 9日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、令和4年6月2日の訂正請求書による訂正は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和4年12月9日の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)により、特許権者は、特許請求の範囲及び明細書を、以下の事項により特定されるとおりに訂正することを請求する。下線は訂正箇所である。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「前記ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオールのいずれかであることを特徴とする包装材。」
と記載されているのを、
「前記ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオールのいずれかであり、前記耐熱性樹脂層と前記外側接着剤層との間に易接着層が配置され、前記易接着層は、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含有してなる構成であり、ウレタン樹脂/エポキシ樹脂の含有質量比は98/2~40/60の範囲であり、前記ウレタン接着剤の硬化膜のヤング率が90MPa~400MPaであることを特徴とする包装材。」
に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項3~12も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に
「前記脂肪族化合物の数平均分子量は、前記ポリオールの数平均分子量より小さいことを特徴とする包装材。」
と記載されているのを、
「前記脂肪族化合物の数平均分子量は、前記ポリオールの数平均分子量より小さく、前記耐熱性樹脂層と前記外側接着剤層との間に易接着層が配置され、前記易接着層は、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含有してなる構成であり、ウレタン樹脂/エポキシ樹脂の含有質量比は98/2~40/60の範囲であり、前記ウレタン接着剤の硬化膜のヤング率が90MPa~400MPaであることを特徴とする包装材。」
に訂正する(請求項2の記載を引用する請求項3~12も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項9を削除する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項10に
「請求項1~9のいずれか1項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1~6のいずれか1項に記載の」
に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項11に
「請求項1~9のいずれか1項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1~6のいずれか1項に記載の」
に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項12に
「請求項1~9のいずれか1項に記載の」
と記載されているのを、
「請求項1~6のいずれか1項に記載の」
に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項13を削除する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項14を削除する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項15を削除する。
(12)訂正事項12
願書に添付した明細書の段落【0115】~【0123】、段落【0132】、【0133】に記載された「実施例11」~「実施例19」を「参考例11」~「参考例19」に訂正する。
訂正前の請求項1及び3~12について、請求項3~12は、いずれも請求項1の記載を引用する関係にあり、訂正前の請求項2及び3~12について、請求項3~12は、いずれも請求項2の記載を引用する関係にあり、また、訂正前の請求項13及び15について、請求項15は請求項13を引用する関係にあり、訂正前の請求項14及び15について、請求項15は請求項14を引用する関係にあるから、特許請求の範囲に係る訂正は、一群の請求項〔1~12〕、〔13~15〕について請求されたものである。また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1~12〕、〔13~15〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、請求項1において、耐熱性樹脂層と外側接着剤層との間に易接着層が配置されていること、易接着層は、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含有してなる構成であり、ウレタン樹脂/エポキシ樹脂の含有質量比は98/2~40/60の範囲であること、及び、ウレタン接着剤の硬化膜のヤング率が90MPa~400MPaであることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、それらは、訂正前の請求項7、9及び段落【0059】、【0060】に記載されていた事項であって、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、請求項2において、耐熱性樹脂層と外側接着剤層との間に易接着層が配置されていること、易接着層は、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含有してなる構成であり、ウレタン樹脂/エポキシ樹脂の含有質量比は98/2~40/60の範囲であること、及び、ウレタン接着剤の硬化膜のヤング率が90MPa~400MPaであることを限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、それらは、訂正前の請求項7、9及び段落【0059】、【0060】に記載されていた事項であって、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)訂正事項3~5、9~11について
訂正事項3~5、9~11に係る訂正は、それぞれ請求項7~9、13~15を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(4)訂正事項6~8について
訂正事項6~8に係る訂正は、訂正事項3~5により請求項7~9が削除されたことに伴い、引用する請求項から請求項7~9を除き、請求項1~6のいずれか1項を引用するように改めるものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(5)訂正事項12について
訂正事項12に係る訂正は、訂正事項1及び2の訂正により、訂正前の実施例11~19が、特許請求の範囲外となったことに伴い、整合を図るため、参考例11~19に改めるものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
3 小括
以上のとおり、訂正事項1~12に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び同条第9項で準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕、〔13~15〕について訂正することを認める。
第3 取消理由(決定の予告)の概要
当審が令和4年9月29日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(進歩性)本件の下記の請求項に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、当該請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記
・請求項1~6、8、10~12に対して、甲第1~5号証
刊行物等一覧
(それぞれ、申立人が提出した甲第1~5号証であり、以下「甲1~5」という。)
第4 当審の判断
1 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められたので、本件特許の請求項1~6、10~12に係る発明(以下「本件発明1~6、10~12」という。)は、本件訂正により訂正された以下のとおりのものである。
「【請求項1】外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としての熱融着性樹脂層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む包装材において、前記耐熱性樹脂層は、熱水収縮率が1.5%~12%である耐熱性樹脂フィルムからなり、前記耐熱性樹脂層と前記金属箔層とが外側接着剤層を介して接着され、続きを表示(全36行)前記外側接着剤層は、ポリオールと、多官能イソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応し得る官能基を1分子中に複数個有する脂肪族化合物と、を含むウレタン接着剤で形成され、前記ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオールのいずれかであり、前記耐熱性樹脂層と前記外側接着剤層との間に易接着層が配置され、前記易接着層は、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含有してなる構成であり、ウレタン樹脂/エポキシ樹脂の含有質量比は98/2~40/60の範囲であり、前記ウレタン接着剤の硬化膜のヤング率が90MPa~400MPaであることを特徴とする包装材。【請求項2】外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としての熱融着性樹脂層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む包装材において、前記耐熱性樹脂層は、熱水収縮率が1.5%~12%である耐熱性樹脂フィルムからなり、前記耐熱性樹脂層と前記金属箔層とが外側接着剤層を介して接着され、前記外側接着剤層は、ポリオールと、多官能イソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応し得る官能基を1分子中に複数個有する脂肪族化合物と、を含むウレタン接着剤で形成され、前記ポリオールの数平均分子量は、8000~30000の範囲であり、前記脂肪族化合物の数平均分子量は、前記ポリオールの数平均分子量より小さく、前記耐熱性樹脂層と前記外側接着剤層との間に易接着層が配置され、前記易接着層は、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含有してなる構成であり、ウレタン樹脂/エポキシ樹脂の含有質量比は98/2~40/60の範囲であり、前記ウレタン接着剤の硬化膜のヤング率が90MPa~400MPaであることを特徴とする包装材。【請求項3】前記ポリオールは、ポリエステルポリオールである請求項1または2に記載の包装材。【請求項4】前記ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸成分を含み、前記ジカルボン酸成分は、芳香族ジカルボン酸を含有し、前記ジカルボン酸成分中の前記芳香族ジカルボン酸の含有率が40モル%~80モル%である請求項3に記載の包装材。【請求項5】前記脂肪族化合物は、多価アルコールである請求項1~4のいずれか1項に記載の包装材。【請求項6】前記外側接着剤層は、ウレタン結合、エステル結合、ウレア結合、アロファネート結合、ビュレット結合およびアミド結合からなる群より選ばれる少なくとも1種の結合を含む請求項1~5のいずれか1項に記載の包装材。【請求項10】請求項1~6のいずれか1項に記載の包装材の成形体からなるケース。【請求項11】請求項1~6のいずれか1項に記載の包装材を深絞り成形又は張り出し成形することを特徴とするケースの製造方法。【請求項12】蓄電デバイス本体部と、請求項1~6のいずれか1項に記載の包装材及び/又は請求項10に記載のケースからなる外装部材とを備え、前記蓄電デバイス本体部が、前記外装部材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。」
2 刊行物等の記載事項等
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(1)甲1
ア 記載事項
甲1には次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。以下同様。)。
・「【請求項1】
外層側樹脂フィルム層(11)、外層側接着剤層(12)、金属箔層(13)、内層側接着剤層(14)およびヒートシール層(15)が順次積層されてなる電池用包装材において、
前記外層側接着剤層(12)が、ポリオール成分(A)を含有する主剤と、ポリイソシアネート成分(B)を含有する硬化剤とを含有するポリウレタン接着剤から形成されたものであり、
前記ポリオール成分(A)が、ポリエステルポリオール(A1):85~99重量%、3官能以上のアルコール成分(A2):1~15重量%を含有し(但し、前記(A1)と(A2)の合計を100重量%とする)、
前記ポリエステルポリオール(A1)が、多塩基酸成分と多価アルコール成分とから構成される数平均分子量5000~50000ポリエステルポリオールであって、前記多塩基酸成分100モル%中、芳香族多塩基酸成分を45~95モル%含み、
前記主剤中に含まれるポリオール(A)由来のヒドロキシル基とカルボキシル基の合計に対する硬化剤中に含まれるイソシアネート基の当量比[NCO]/([OH]+[COOH])が0.5~10であることを特徴とする電池用包装材。
・・・
【請求項6】
外層側樹脂フィルム層(11)がポリアミドフィルムまたはポリエステルフィルムであり、ヒートシール層(15)がポリオレフィン系フィルムであることを特徴とする請求項1~5いずれか1項に記載の電池用包装材。」
・「【0005】
耐熱性延伸樹脂層、接着剤層、アルミニウム層及び熱可塑性無延伸樹脂層が順次積層された構造を有する電池ケース用包材において、接着剤層が-20~45℃のガラス転移温度を示すポリエステル樹脂とポリエステル樹脂100質量部に対し、10~70質量部のトルエンジイソシアネート系硬化剤とを含有する接着剤組成物の硬化処理物から構成されていることを特徴とする電池ケース用包材が開示されている。(特許文献4:特開2013-149562)」
・「【0020】
ポリエステルポリオール(A1)の数平均分子量は5000~50000であり、8000~30000であることが好ましい。・・・」
・「【0039】
本発明の電池用外装材を構成する内層側接着剤層(14)を形成する接着剤は特に限定されるものではないが、電池の電解液によって金属箔層(13)とヒートシール層(15)の接着強度が低下しないものが好ましく、公知の接着剤が使用できる。
例えば、ポリオレフィン樹脂と多官能イソシアネートの組み合わせた接着剤やポリオールと多官能イソシアネートとを組み合わせた接着剤をグラビアコーターなどにて金属箔層に塗布して、溶剤を乾燥させ、接着剤層にヒートシール層(15)を加熱加圧下に重ね合わせ、次いで常温もしくは加温下でエージングし金属箔層(13)とヒートシール層(15)とを貼り合せることができる。
あるいは、酸変性ポリプロピレンなどの接着剤をTダイ押出し機で金属箔層(13)上に溶融押出しして接着剤層を形成し、前記接着剤層上にヒートシール層(15)を重ね、金属箔層(13)とヒートシール層(15)とを貼り合せることができる。
外層側接着剤層(12)および内層側接着剤層(14)の両方がエージングを必要とする場合には、まとめてエージングすることができる。」
・段落【0069】の【表1】は次のとおりである。
[図:0001400409000001.jpg]
・図1は次のとおりである。
[図:0001400409000002.jpg]
・図2は次のとおりである。
[図:0001400409000003.jpg]
イ 甲1発明
上記アより、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認める。
「ポリアミドフィルムまたはポリエステルフィルムである外層側樹脂フィルム層(11)、外層側接着剤層(12)、金属箔層(13)、内層側接着剤層(14)およびポリオレフィン系フィルムであるヒートシール層(15)が順次積層されてなる電池用包装材において、前記外層側接着剤層(12)が、ポリオール成分(A)を含有する主剤と、ポリイソシアネート成分(B)を含有する硬化剤とを含有するポリウレタン接着剤から形成されたものであり、前記ポリオール成分(A)が、ポリエステルポリオール(A1):85~99重量%、3官能以上のアルコール成分(A2):1~15重量%を含有し(但し、前記(A1)と(A2)の合計を100重量%とする)、前記ポリエステルポリオール(A1)が、多塩基酸成分と多価アルコール成分とから構成される数平均分子量8000~30000であるポリエステルポリオールであって、前記多塩基酸成分100モル%中、芳香族多塩基酸成分を45~95モル%含み、前記主剤中に含まれるポリオール(A)由来のヒドロキシル基とカルボキシル基の合計に対する硬化剤中に含まれるイソシアネート基の当量比[NCO]/([OH]+[COOH])が0.5~10である電池用包装材。」
(2)甲2
甲2には次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
外側層としての耐熱性樹脂延伸フィルム層と、内側層としての熱可塑性樹脂層と、これら両層間に配設された金属箔層と、該金属箔層と前記耐熱性樹脂延伸フィルム層との間に配設された着色インキ層とを含む包装材であって、
前記耐熱性樹脂延伸フィルムとして、熱水収縮率が2%~20%の耐熱性樹脂延伸フィルムを用い、
前記耐熱性樹脂延伸フィルム層と前記着色インキ層とが易接着層を介して積層一体化されていることを特徴とする包装材。
【請求項2】
前記易接着層は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタアクリル酸エステル樹脂及びポリエチレンイミン樹脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の樹脂を含有してなる請求項1に記載の包装材。
【請求項3】
前記易接着層は、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含有してなる請求項1に記載の包装材。
【請求項4】
前記易接着層において、前記ウレタン樹脂/前記エポキシ樹脂の含有質量比が98/2~40/60の範囲である請求項3に記載の包装材。
・・・
【請求項9】
前記耐熱性樹脂延伸フィルムの熱水収縮率が2.5%~10%である請求項1~8のいずれか1項に記載の包装材。」
・「【0001】
本発明は、例えば、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型の二次電池(リチウムイオン二次電池)のケースとして好適に用いられ、また食品の包装材、医薬品の包装材として好適に用いられる包装材及び成形ケースに関する。」
・「【0009】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、成形時及びシール時において、また高温多湿等のやや苛酷な環境下で使用された時であっても、着色インキ層が耐熱性樹脂延伸フィルム層から剥離することのない包装材を提供することを目的とする。」
・「【0026】
[3]の発明では、易接着層は、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含有してなる構成であるから、成形時、シール時、高温多湿等のやや苛酷な環境下での使用時等において、着色インキ層が耐熱性樹脂延伸フィルム層から剥離することをより十分に防止できる。
【0027】
[4]の発明では、ウレタン樹脂/エポキシ樹脂の含有質量比が98/2~40/60の範囲であるから、成形時、シール時、高温多湿等のやや苛酷な環境下での使用時等において、着色インキ層が耐熱性樹脂延伸フィルム層から剥離することをより一層十分に防止できる。」
・「【0032】
[9]の発明では、耐熱性樹脂延伸フィルムの熱水収縮率が2.5%~10%であるから、成形時、シール時、高温多湿等のやや苛酷な環境下での使用時等において、着色インキ層が耐熱性樹脂延伸フィルム層から剥離することをより十分に防止できる。」
・「【0039】
前記包装材1は、金属箔層4の上面に第1接着剤層5を介して耐熱性樹脂延伸フィルム層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の下面に第2接着剤層6を介して熱可塑性樹脂層(内側層)3が積層一体化された構成からなる。前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2の下面には易接着層30が積層され、該易接着層30の下面に着色インキ層10が積層され、該着色インキ層10と前記金属箔層4とが第1接着剤層5を介して接着一体化されている(図1参照)。即ち、前記金属箔層4と前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2との間に着色インキ層10が配置されている。本実施形態では、前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2の下面にグラビアコート法により易接着層30が積層され、該易接着層30の下面に印刷により前記着色インキ層10が積層されている。また、前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2の上面(外面)にマットコート層20が積層されている。」
(3)甲3
甲3には次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
外側層としての耐熱性樹脂延伸フィルム層と、内側層としての熱可塑性樹脂層と、これら両層間に配設された金属箔層と、該金属箔層と前記耐熱性樹脂延伸フィルム層との間に配設された黒インキ層とを含む成形用包装材であって、
前記耐熱性樹脂延伸フィルムとして、熱水収縮率が2%~20%の耐熱性樹脂延伸フィルムを用い、
前記耐熱性樹脂延伸フィルム層と前記黒インキ層とが易接着層を介して積層一体化されていることを特徴とする成形用包装材。
【請求項2】
前記易接着層は、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタアクリル酸エステル樹脂及びポリエチレンイミン樹脂からなる群より選ばれる1種または2種以上の樹脂を含有してなる請求項1に記載の成形用包装材。
【請求項3】
前記易接着層は、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含有してなる請求項1に記載の成形用包装材。
【請求項4】
前記易接着層において、前記ウレタン樹脂/前記エポキシ樹脂の含有質量比が98/2~40/60の範囲である請求項3に記載の成形用包装材。
・・・
【請求項9】
前記耐熱性樹脂延伸フィルムの熱水収縮率が2.5%~10%である請求項1~8のいずれか1項に記載の成形用包装材。」
・「【0001】
本発明は、例えば、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型の二次電池(リチウムイオン二次電池)のケースとして好適に用いられ、また食品の包装材、医薬品の包装材として好適に用いられる成形用包装材及び成形ケースに関する。」
・「【0009】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、成形時及びシール時において、また高温多湿等のやや苛酷な環境下で使用された時であっても、黒インキ層が部分的に割れて剥離することのない成形用包装材を提供することを目的とする。」
・「【0026】
[3]の発明では、易接着層は、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含有してなる構成であるから、成形時、シール時、高温多湿等のやや苛酷な環境下での使用時等において、黒インキ層が部分的に割れて剥離することをより十分に防止できる。
【0027】
[4]の発明では、ウレタン樹脂/エポキシ樹脂の含有質量比が98/2~40/60の範囲であるから、成形時、シール時、高温多湿等のやや苛酷な環境下での使用時等において、黒インキ層が部分的に割れて剥離することをより一層十分に防止できる。」
・「【0032】
[9]の発明では、耐熱性樹脂延伸フィルムの熱水収縮率が2.5%~10%であるから、成形時、シール時、高温多湿等のやや苛酷な環境下での使用時等において、黒インキ層が部分的に割れて剥離することをより十分に防止できる。」
・「【0039】
前記成形用包装材1は、金属箔層4の上面に第1接着剤層5を介して耐熱性樹脂延伸フィルム層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の下面に第2接着剤層6を介して熱可塑性樹脂層(内側層)3が積層一体化された構成からなる。前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2の下面には易接着層30が積層され、該易接着層30の下面に黒インキ層10が積層され、該黒インキ層10と前記金属箔層4とが第1接着剤層5を介して接着一体化されている(図1参照)。即ち、前記金属箔層4と前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2との間に黒インキ層10が配置されている。本実施形態では、前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2の下面にグラビアコート法により易接着層30が積層され、該易接着層30の下面に印刷により前記黒インキ層10が積層されている。また、前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2の上面(外面)にマットコート層20が積層されている。」
(4)甲4
甲4には次の事項が記載されている。
「【請求項1】外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としての熱可塑性樹脂層と、これら両層間に配設された金属箔層と、前記金属箔層と耐熱性樹脂層との間に配設された第1接着剤層と、前記金属箔層と熱可塑性樹脂層との間に配設された第2接着剤層とを含む成形用包装材であって、前記第1接着剤層は、着色顔料と、主剤としてのポリエステル樹脂と硬化剤としての多官能イソシアネート化合物とによる二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂を含む接着剤とを含む着色接着剤組成物からなり、前記ポリエステル樹脂は、数平均分子量(Mn)が8,000~25,000、重量平均分子量(Mw)が15,000~50,000であり、これらの比率(Mw/Mn)が1.3~2.5であり、前記多官能イソシアネート化合物は50モル%以上の芳香族系イソシアネートを含んでいることを特徴とする成形用包装材。」
・「【0001】
本発明は、例えば、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型の二次電池(リチウムイオン二次電池)のケースとして好適に用いられ、また食品の包装材、医薬品の包装材として好適に用いられる成形用包装材および成形ケースに関する。」
・「【0047】
前記二液硬化型ポリエステルウレタン樹脂は、反応後の硬化膜が以下の物性を有していることが好ましい。前記硬化膜は、成形用包装材1の良好な成形性と層間の接合強度とを確保するために、引張試験(JIS K7162)によるヤング率が70~400MPaであることが好ましい。特に好ましいヤング率は100~300MPaである。・・・」
(5)甲5
甲5には次の事項が記載されている。
・「【請求項1】
少なくとも、基材層、易接着層、接着層、金属層、及びシーラント層が順次積層された積層体からなり、
前記易接着層が、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、及びメラミン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を架橋反応させた架橋樹脂により形成されており、且つ
前記接着層が熱溶融型接着樹脂により形成されている、
ことを特徴とする、電池用包装材料。」
・「【0028】
[易接着層2]
本発明の電池用包装材料において、易接着層2は、基材層1と接着層3の間に設けられる層であり、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、及びメラミン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を架橋反応させた架橋樹脂により形成されている。
【0029】
易接着層2として架橋樹脂を使用することにより、基材層1との密着性が向上し、また後述する接着層3との密着性も向上させることが可能になる。そのため、電池用包装材料の成形時にピンホールの発生を抑制することができる。また、電池素子を密封するためのヒートシール処理が施された場合でも成形により延伸状態にある基材層1と接着層3の間のデラミネーションを抑制でき、更には、電池素子の密封後に、湿度変化や温度変化がある状態で長期保管された場合でも、これらの層間でのデラミネーションが抑制可能になる。」
・「【0049】
[接着層3]
本発明の電池用包装材料において、接着層3は、易接着層2と金属層4との間に、設けられる樹脂層であり、熱溶融型接着樹脂により形成されている。このように、基材層1と金属層4との間に、特定の易接着層2と特定の接着層3を介在させることによって、本発明の電池用包装材料は、優れた耐久性を備え、且つデラミネーションやピンホールの発生を効果的に抑制させることが可能になっている。」
3 対比・判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)後者の「ポリアミドフィルムまたはポリエステルフィルムである外層側樹脂フィルム層(11)」は、外側層を構成する樹脂フィルム層であって、甲1の背景技術を説明する段落【0005】の記載等を踏まえると耐熱性を有しているといえるので、前者の「外側層としての耐熱性樹脂層」に相当する。同様に、後者の「ポリアミドフィルムまたはポリエステルフィルム」は、前者の「耐熱性樹脂フィルム」に相当する。
(イ)後者の「ポリオレフィン系フィルムであるヒートシール層(15)」は、内側の層を構成しているので、前者の「内側層としての熱融着性樹脂層」に相当する。
(ウ)後者の「金属箔層(13)」は前者の「金属箔層」に、以下同様に、「電池用包装材」は「包装材」に、「外層側接着剤層(12)」は「外側接着剤層」に、それぞれ相当する。
(エ)後者の「ポリエステルポリオール(A1)」は、前者の「ポリオール」ないし「ポリエステルポリオール」に相当する。
(オ)後者の「ポリイソシアネート成分(B)」は、前者の「多官能イソシアネート化合物」に相当する。
(カ)後者の「3官能以上のアルコール成分(A2)」は、「ポリイソシアネート成分(B)を含有する硬化剤」と反応するものであるから、前者の「イソシアネート基と反応し得る官能基を1分子中に複数個有する脂肪族化合物」に相当する。
(キ)後者の「ポリウレタン接着剤」は、前者の「ウレタン接着剤」に相当する。
(ク)以上のことを踏まえると、後者の「ポリアミドフィルムまたはポリエステルフィルムである外層側樹脂フィルム層(11)、外層側接着剤層(12)、金属箔層(13)、内層側接着剤層(14)およびポリオレフィン系フィルムであるヒートシール層(15)が順次積層されてなる電池用包装材」は、前者の「外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としての熱融着性樹脂層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む包装材」に相当する。
(ケ)また、後者の「ポリアミドフィルムまたはポリエステルフィルムである外層側樹脂フィルム層(11)」と、前者の「前記耐熱性樹脂層は、熱水収縮率が1.5%~12%である耐熱性樹脂フィルムからなり」ということとは、「前記耐熱性樹脂層は、耐熱性樹脂フィルムからなり」ということにおいて共通する。
(コ)また、後者の「ポリアミドフィルムまたはポリエステルフィルムである外層側樹脂フィルム層(11)、外層側接着剤層(12)、金属箔層(13)、内層側接着剤層(14)およびポリオレフィン系フィルムであるヒートシール層(15)が順次積層されてなる」ということは、「外層側樹脂フィルム層(11)」と「金属箔層(13)」とが「外層側接着剤層(12)」を介して接着されていることになるので、前者の「前記耐熱性樹脂層と前記金属箔層とが外側接着剤層を介して接着され」ることに相当する。
(サ)また、後者の「前記外層側接着剤層(12)が、ポリオール成分(A)を含有する主剤と、ポリイソシアネート成分(B)を含有する硬化剤とを含有するポリウレタン接着剤から形成されたものであり、前記ポリオール成分(A)が、ポリエステルポリオール(A1):85~99重量%、3官能以上のアルコール成分(A2):1~15重量%を含有し(但し、前記(A1)と(A2)の合計を100重量%とする)」ということは、前者の「前記外側接着剤層は、ポリオールと、多官能イソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応し得る官能基を1分子中に複数個有する脂肪族化合物と、を含むウレタン接着剤で形成され、前記ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオールのいずれかである」ことに相当する。
(シ)したがって、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点1〕
「外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としての熱融着性樹脂層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む包装材において、前記耐熱性樹脂層は、耐熱性樹脂フィルムからなり、前記耐熱性樹脂層と前記金属箔層とが外側接着剤層を介して接着され、前記外側接着剤層は、ポリオールと、多官能イソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応し得る官能基を1分子中に複数個有する脂肪族化合物と、を含むウレタン接着剤で形成され、前記ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオールのいずれかである包装材。」
〔相違点1-1〕
耐熱性樹脂フィルムについて、本件発明1は、「熱水収縮率が1.5%~12%である」のに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
〔相違点1-2〕
本件発明1は、「前記耐熱性樹脂層と前記外側接着剤層との間に易接着層が配置され、前記易接着層は、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含有してなる構成であり、ウレタン樹脂/エポキシ樹脂の含有質量比は98/2~40/60の範囲であ」るのに対し、甲1発明は、そのような易接着層を有していない点。
〔相違点1-3〕
ウレタン接着剤について、本件発明1は、「前記ウレタン接着剤の硬化膜のヤング率が90MPa~400MPaである」のに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点1-2について検討する。
甲5には、複数層を積層した電池用包装材料において、優れた耐久性を備え、且つデラミネーションやピンホールの抑制をするため、基材層1、易接着層2、接着層3、金属層4、及びシーラント層5を積層すること、及び、易接着層2として、ポリウレタン樹脂やエポキシ樹脂を含む群から選択される少なくとも1種の樹脂を架橋反応させた架橋樹脂により形成されることが記載されている(上記2(5)参照。)。
しかしながら、甲5には、易接着層2が、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含有し、かつ、ウレタン樹脂/エポキシ樹脂の含有質量比は98/2~40/60の範囲であることについては記載されていない。
したがって、甲1発明に甲5に記載された技術を適用したとしても、上記相違点1-2に係る本件発明1の事項を有するものには至らない。
また、甲2~甲4について検討しても、上記相違点1-2に係る事項を容易想到とする事項の開示ないし示唆はない(上記2(2)~(4)参照。)。
よって、甲1発明において、上記相違点1-2に係る事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得たことではない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、令和5年1月19日付けの意見書の5ページの「(主張1)について」において、上記相違点1-2に関して、甲1発明に甲2、甲3に記載された技術を適用することは容易である旨を主張する。
そこで、甲2、甲3について検討すると、それらには、複数層を積層した二次電池のケースに用いられる包装材において、耐熱性樹脂延伸フィルム層2、易接着層30、着色インキ層10ないし黒インキ層10、第1接着剤層5、金属箔層4、第2接着剤層6、熱可塑性樹脂層30を積層すること、及び、易接着層30が、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含有し、かつ、ウレタン樹脂/エポキシ樹脂の含有質量比は98/2~40/60の範囲であることが記載されている(上記2(2)、(3)参照。)。
しかしながら、易接着層30は、着色インキ層10ないし黒インキ層10が耐熱性延伸樹脂フィルム層2から剥離することを防止するために、それら層の間に設けられるものであって(上記2(2)の段落【0027】、同(3)の段落【0027】参照。)、着色インキ層ないし黒インキ層を有していない甲1発明にはそのような課題は存在しないため、甲1発明に甲2、甲3に記載された技術を適用する動機付けがあるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
なお、甲1の段落【0036】に「本発明の電池用外装材を構成する外層側樹脂フィルム層(11)は特に限定されるものではないが、・・・また、カーボンブラックや酸化チタンなどの顔料により着色されていても良い。また、外層側樹脂フィルム層(11)の非ラミ面に傷つき防止や耐電解液性を目的としたコート剤やスリップ剤、外層側樹脂フィルム層(11)の非ラミ面又はラミ面に意匠性を目的としたインキがコーティングされていても良い。」との記載があり、ラミ面にインキをコーティングした場合、最終的な生産物は、外側樹脂フィルム層11と外側接着剤層12との間にインキが存在することになるが、それにより外側樹脂フィルム層11とインキが剥離しやすくなるという課題の記載はなく、任意付加的事項の選択肢の中から、ラミ面にインキをコーティングすることを選定した上で、さらに、そこから甲2、甲3に記載された技術を適用することまで容易想到であるということはできない。
(イ)申立人は同意見書の6~7ページの「(主張3)について」において、上記相違点1-2に関して、甲5にエポキシ樹脂とポリウレタン樹脂とを使用する示唆があり、その含有質量比を98/2~40/60の範囲とすることは設計事項である旨と、当該含有質量比は甲2、甲3に示されるように周知技術である旨を主張する。
しかしながら、甲5には、易接着層2を、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、及びメラミン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を架橋反応させた架橋樹脂により形成することについて記載されているが(上記2(5)参照。)、その選択肢の中から、エポキシ樹脂とポリウレタン樹脂の2種類を選定することの記載はなく、エポキシ樹脂とポリウレタン樹脂を選定した上でさらに具体的な含有質量比は98/2~40/60の範囲とすることは記載も示唆もないから、本件発明1において含有質量比を特定した点が設計的事項であるということもできない。
そして、本件発明1は、上記相違点1-2に係る事項を採用することにより、耐熱性樹脂層と金属箔層の間にデラミネーションが生じるのをより一層抑止し(本件明細書の段落【0059】参照。)、さらに、架橋度が不足して、耐溶剤性、接着力が十分に得られ難くなることや、架橋が完了するまでの時間がかかり過ぎることを防止し、耐熱性樹脂層と外側接着剤層との接着力をさらに向上させることができるという効果を奏するものである(本件明細書の段落【0060】参照。)。
また、仮に甲2、甲3に記載された技術が周知技術であったとしても、甲1発明に適用する動機付けがないことは、上記(ア)で説示したとおりである。
したがって、申立人の主張は採用できない。
エ 小括
以上のとおり、甲1発明において、上記相違点1-2に係る事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たことではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲5に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2について
ア 対比
本件発明2における本件発明1と重複する構成と甲1発明との対比については、上記(1)アのとおりである。
また、甲1発明の「前記ポリエステルポリオール(A1)が、多塩基酸成分と多価アルコール成分とから構成される数平均分子量8000~30000であるポリエステルポリオール」ということは、本件発明2の「前記ポリオールの数平均分子量は、8000~30000の範囲であ」ることに相当する。
そうすると、本件発明2と甲1発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点2〕
「外側層としての耐熱性樹脂層と、内側層としての熱融着性樹脂層と、これら両層間に配置された金属箔層と、を含む包装材において、前記耐熱性樹脂層は、耐熱性樹脂フィルムからなり、前記耐熱性樹脂層と前記金属箔層とが外側接着剤層を介して接着され、前記外側接着剤層は、ポリオールと、多官能イソシアネート化合物と、イソシアネート基と反応し得る官能基を1分子中に複数個有する脂肪族化合物と、を含むウレタン接着剤で形成され、前記ポリオールの数平均分子量は、8000~30000の範囲である包装材。」
〔相違点2-1〕
耐熱性樹脂フィルムについて、本件発明2は、「熱水収縮率が1.5%~12%である」のに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
〔相違点2-2〕
本件発明2は、「前記脂肪族化合物の数平均分子量は、前記ポリオールの数平均分子量より小さい」のに対し、甲1発明は、ポリエステルポリオール(A1)の数平均分子量と、3官能以上のアルコール成分(A2)の数平均分子量との大小関係の特定がない点。
〔相違点2-3〕
本件発明2は、「前記耐熱性樹脂層と前記外側接着剤層との間に易接着層が配置され、前記易接着層は、ウレタン樹脂及びエポキシ樹脂を含有してなる構成であり、ウレタン樹脂/エポキシ樹脂の含有質量比は98/2~40/60の範囲であ」るのに対し、甲1発明は、そのような易接着層を有していない点。
〔相違点2-4〕
ウレタン接着剤について、本件発明2は、「前記ウレタン接着剤の硬化膜のヤング率が90MPa~400MPaである」のに対し、甲1発明は、そのような特定がない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2-3について検討する。
相違点2-3は、上記(1)アの相違点1-2と同じであり、その判断についても上記(1)イで説示したことと同じことがいえる。
ウ 小括
以上のとおり、甲1発明において、上記相違点2-3に係る事項を有するものとすることは、当業者であっても容易になし得たことではないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明及び甲2~甲5に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)本件発明3~6、10~12について
本件発明3~6、10~12は、本件発明1又は2の事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、同様に、甲1発明及び甲2~甲5に記載された技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知(決定の予告)で採用しなかった異議申立理由について
申立人は、訂正前の請求項1~8、10~15に係る発明は、甲1に記載された発明に甲2、甲3に記載された技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができた旨、及び同請求項9に係る発明は、甲1に記載された発明に甲2~甲4に記載された技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができた旨を主張する。
しかしながら、甲1に記載された発明(甲1発明)に甲2、甲3に記載された技術を適用することが当業者であっても容易想到とはいえないことは、上記第4の3(1)ウ(ア)で説示したとおりであり、申立人の上記異議申立理由によっては、請求項1~6、10~12に係る特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1~6、10~12に係る特許は、取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由又は特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によって取り消すことができない。
また、他に請求項1~6、10~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項7~9、13~15に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項7~9、13~15に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-701013