2024-700080
蓄電デバイス用外装材および蓄電デバイス
- 審判番号
- 2024-700080
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-526054外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 7319484
- 請求日
- 2024年02月01日
- 審決日
- 2024年05月09日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社レゾナック・パッケージング
- 【権利者代理人】清水 義仁
- 【権利者代理人】清水 久義
- 【権利者代理人】高田 健市
- 【異議申立人】下河 あい
- 分類
- P1651.121-Y (H01M) / P1651.536-Y (H01M) / P1651.537-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 15項目
第1 手続の経緯
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特許第7319484号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、2022年(令和4年)10月26日(優先権主張 令和3年11月11日)を国際出願日とする出願であって、令和5年7月24日にその特許権の設定登録がされ、同年8月1日に特許掲載公報が発行された。
その後、その特許に対し、令和6年2月1日に特許異議申立人下河あい(以下、「特許異議申立人」という。)により本件の請求項1~7に係る特許に対する特許異議の申立てがなされ、甲第1号証~甲第4号証が提出された。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1~7の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」~「本件特許発明7」といい、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】(本件特許発明1)
金属箔層と、その金属箔層の外面側に設けられた樹脂製の基材層と、前記金属箔層の内面側に設けられた接着層と、その接着層の内面側に設けられた熱融着樹脂製の熱融着層とを含む蓄電デバイス用外装材であって、
前記熱融着層が、前記接着層に接着される金属箔側層部と、最内面に配置されるシール層部とを含み、
平均粒径が0.05μm以上で5μm未満の粒子を「微粒子」とし、平均粒径が5μm以上で20μm以下の粒子を「粗粒子」として、
前記シール層部は、微粒子および粗粒子を含む層によって構成され、
前記金属箔側層部は、微粒子を含み、かつ実際の粒径が5μm以上の粒子を含まない層によって構成されていることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】(本件特許発明2)
前記シール層部は、厚さが5μm以上である請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項3】(本件特許発明3)
前記シール層部は、粗粒子の含有量が200ppm~5000ppmであり、微粒子の含有量が500ppm~3500ppmである請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項4】(本件特許発明4)
前記金属箔側層部は、微粒子の含有量が500ppm~3500ppmである請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項5】(本件特許発明5)
前記シール層部に滑剤が含有されている請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項6】(本件特許発明6)
前記粗粒子は、樹脂ビーズによって構成されるとともに、前記微粒子は、Si酸化物、Al酸化物、Ti酸化物のいずれか1種以上の酸化物によって構成されている請求項1または2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【請求項7】(本件特許発明7)
蓄電デバイス本体部と、
請求項1または2に記載の外装材と、を備え、
前記蓄電デバイス本体部が、前記外装材で外装されていることを特徴とする蓄電デバイス。
第3 特許異議の申立ての理由の概要
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特許異議申立人が申し立てた理由は、概略以下のとおりである。
理由A 特許法第29条第2項(主引例は、甲第1号証)
請求項1~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載の発明と、甲第2号証及び甲第3号証に記載の技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
理由B 特許法第29条第2項(主引例は、甲第3号証)
請求項1~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第3号証に記載の発明と、甲第1号証及び甲第2号証に記載の技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~7に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
理由C 特許法第36条第4項第1号
請求項1~7に係る特許は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第1項第4号に該当しその特許は取り消されるべきである。
理由D 特許法第36条第6項第1号
請求項1~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
理由E 特許法第36条第6項第2号
請求項1~7に係る特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
第4 各甲号証の記載
1 甲第1号証
甲第1号証の発行日は、令和4年1月12日であり、本件の優先日である令和3年11月11日より前に頒布されたものではない。
しかし、甲第1号証の公開特許公報である特開2018-73649号公報(以下、「引用文献1」という。)は、本件の優先日である令和3年11月11日より前に頒布されたものであって、甲第1号証と同様の内容が記載されていることから、以下、引用文献1を利用して検討を行う。
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、以下の記載がある。なお、下線は、当審で付したものである。
【0036】
図1~3に示す蓄電デバイス用外装材1は、いずれも、金属箔層4の一方の面(上面)に第2接着剤層(外側接着剤層)5を介して耐熱性樹脂層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の他方の面(下面)に第1接着剤層(内側接着剤層)6を介してシーラント層(内側層)3が積層一体化された構成である。
【0038】
また、図2に示す蓄電デバイス用外装材1では、前記シーラント層(内側層)3が、前記最内層7と、該最内層7における前記金属箔層4側の面に積層された第1中間層8と、該第1中間層8における前記金属箔層4側の面に積層された第2中間層9とからなる。即ち、前記金属箔層4の他方の面(下面)に第1接着剤層(内側接着剤層)6を介して前記第2中間層9が積層され、該第2中間層9の表面(下面)に前記第1中間層8が積層され、該第1中間層8の表面(下面)に前記最内層7が積層されている。前記最内層7が外装材1の内側の表面に露出している(図2参照)。
【0041】
本発明では、前記シーラント層3の最内層7は、共重合成分としてプロピレン及びプロピレンを除く他の共重合成分を含有するランダム共重合体と、粗面化材と、滑剤と、を含有する構成である。
【0044】
前記粗面化材としては、特に限定されるものではないが、例えば、熱可塑性樹脂含有ペレット、熱可塑性樹脂含有パウダー等が使用される。これらの中でも、分散性の点で、熱可塑性樹脂含有パウダーが好適である。前記粗面化材を構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、エチレン-オレフィン(エチレンを除くオレフィン)共重合樹脂、エチレン-ビニルエステル共重合樹脂、ポリスチレン系樹脂等が挙げられる。中でも、前記粗面化材としては、高密度ポリエチレン樹脂を含有してなる粗面化材を用いるのが好ましく、この場合にはヒートシール性を損なうことなく、シーラント層の最内層7の表面7aを効果的に粗面化できて滑り性をより向上させることができる。
【0045】
前記最内層7を構成する前記ランダム共重合体のマトリックス中に該マトリックスに対して相溶性が低い前記粗面化材粒子が分散された状態で前記最内層7の表面7aに前記粗面化材粒子が一部露出(突出)した状態になっていることにより表面7aに凹凸が形成される(表面が粗面化される)。例えば、前記ランダム共重合体のペレットまたはパウダーに、粗面化材としての熱可塑性樹脂ペレットまたは熱可塑性樹脂パウダーを混合し、この混合物を押出機等で溶融混練して微細に分散させた後、冷却固化することによって前記最内層7の表面7aに凹凸が形成されたもの(表面が粗面化されたもの)が得られる。
【0046】
前記粗面化材の分散状態での平均粒径は、0.05μm~10μmの範囲であるのが好ましく、この場合には滑り性をさらに向上させることができる。
【0080】
本発明の外装材1を用いて構成された蓄電デバイス30の一実施形態を図4に示す。この蓄電デバイス30は、リチウムイオン2次電池である。本実施形態では、図4、5に示すように、外装材1を成形して得られたケース10と、成形に供されなかった平面状の外装材1とにより、外装部材15が構成されている。しかして、本発明の外装材1を成形して得られた外装ケース10の収容凹部内に、略直方体形状の蓄電デバイス本体部(電気化学素子等)31が収容され、該蓄電デバイス本体部31の上に、本発明の外装材1が成形されることなくその内側層3側を内方(下側)にして配置され、該平面状外装材1の内側層3の周縁部と、前記外装ケース10のフランジ部(封止用周縁部)29の内側層3とがヒートシールによりシール接合されて封止されることによって、本発明の蓄電デバイス30が構成されている(図4、5参照)。なお、前記外装ケース10の収容凹部の内側の表面は、内側層(シーラント層)3になっており、収容凹部の外面が外側層(耐熱性樹脂層)2になっている(図5参照)。
【0086】
<実施例1>
(以下略)
【0088】
次に、エチレン-プロピレンランダム共重合体、500ppmのエルカ酸アミドを含有してなる厚さ6μmの第2中間層フィルム(第2中間層)9、エラストマー変性オレフィン系樹脂(ブロックPP)、500ppmのエルカ酸アミドを含有してなる厚さ28μmの第1中間層フィルム(第1中間層)8、エチレン-プロピレンランダム共重合体、1.0質量%の高密度ポリエチレン樹脂パウダー(粗面化材)および500ppmのエルカ酸アミドを含有してなる厚さ6μmの最内層フィルム(最内層)7がこの順で3層積層されるようにTダイを用いて共押出することにより、これら3層が積層されてなる厚さ40μmのシーラントフィルム(第2中間層フィルム9/第1中間層フィルム8/最内層フィルム7)3を得た後、該シーラントフィルム3の第2中間層フィルム9面を、2液硬化型のマレイン酸変性ポリプロピレン接着剤6を介して、前記ドライラミネート後のアルミニウム箔4の他方の面に重ね合わせて、ゴムニップロールと、100℃に加熱されたラミネートロールとの間に挟み込んで圧着することによりドライラミネートし、しかる後、40℃で10日間エージングする(加熱する)ことによって、図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。得られた蓄電デバイス用外装材1のシーラント層3の最内層7の表面7aの中心線平均粗さRaは0.13μmであった。
【0091】
<実施例2>
最内層フィルム(最内層)7中の高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)の含有率1.0質量%を5.0質量%に変更した以外は、実施例1と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0092】
<実施例3>
第2中間層フィルム9、第1中間層フィルム8および最内層フィルム7に含有せしめる滑剤として、エルカ酸アミドに代えて、ベヘン酸アミドを用いた以外は、実施例2と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0099】
<実施例10>
最内層フィルム(最内層)7中にさらにアンチブロッキング剤(AB剤)としてアクリルビーズを2500ppm含有せしめた以外は、実施例3と同様にして図2に示す構成の蓄電デバイス用外装材1を得た。
【0113】
【表2】
[図:0001411357000001.jpg]
【0128】
1…蓄電デバイス用外装材
2…耐熱性樹脂層(外側層)
3…シーラント層(内側層)
4…金属箔層
5…第2接着剤層(外側接着剤層)
6…第1接着剤層(内側接着剤層)
7…最内層
7a…シーラント層の最内層の表面
8…第1中間層
9…第2中間層
10…蓄電デバイス用外装ケース(成形体)
15…外装部材
30…蓄電デバイス
31…蓄電デバイス本体部
[図:0001411357000002.jpg]
[図:0001411357000003.jpg]
[図:0001411357000004.jpg]
(2)引用文献1に記載された発明
【0036】、【0128】、【図2】より、引用文献1の蓄電デバイス用外装材は、金属箔層の一方の面(上面)に第2接着剤層(外側接着剤層)を介して耐熱性樹脂層(外側層)が積層一体化されると共に、金属箔層の他方の面(下面)に第1接着剤層(内側接着剤層)を介してシーラント層(内側層)が積層一体化された構成である。
【0038】、【0128】、【図2】より、引用文献1のシーラント層(内側層)は、金属箔層の他方の面(下面)に第1接着剤層(内側接着剤層)を介して第2中間層が積層され、該第2中間層の表面(下面)に第1中間層が積層され、該第1中間層の表面(下面)に最内層が積層され、最内層が外装材の内側の表面に露出している構成である。
【0086】~【0092】、【0099】には、実施例1~3、10について記載されている。
【0086】、【0088】より、実施例1の蓄電デバイス用外装材のシーラントフィルムは、厚さ6μmの第2中間層フィルム(第2中間層)、厚さ28μmの第1中間層フィルム(第1中間層)、厚さ6μmの最内層フィルム(最内層)がこの順で3層積層されてなる厚さ40μmのシーラントフィルム(第2中間層フィルム/第1中間層フィルム/最内層フィルム)である。
【0091】より、実施例2の蓄電デバイス用外装材は、最内層フィルム(最内層)中の高密度ポリエチレン樹脂(粗面化材)の含有率を変更した以外は、実施例1と同様の構成である。
【0092】より、実施例3の蓄電デバイス用外装材は、第2中間層フィルム、第1中間層フィルムおよび最内層フィルムに含有せしめる滑剤を変更した以外は、実施例2と同様の構成である。すなわち、蓄電デバイス用外装材は、第2中間層フィルム、第1中間層フィルムおよび最内層フィルムに滑剤を含有するものである。
【0099】より、実施例10の蓄電デバイス用外装材は、最内層フィルム(最内層)中にさらにアンチブロッキング剤(AB剤)としてアクリルビーズを2500ppm含有せしめた以外は、実施例3と同様の構成である。ここで、【0041】の記載を考慮すると、最内層フィルム(最内層)は、ランダム共重合体と、粗面化材と、滑剤とを含有し、更に、アンチブロッキング剤(AB剤)としてアクリルビーズを2500ppm含有するものといえる。
【0113】の【表2】より、実施例10のシーラント層の最内層の表面の中心線平均粗さRaは0.18μmである。
以上の記載より、実施例10の蓄電デバイス用外装材のシーラント層は、
厚さ6μmの第2中間層フィルム(第2中間層)、厚さ28μmの第1中間層フィルム(第1中間層)、厚さ6μmの最内層フィルム(最内層)がこの順で3層積層されてなる厚さ40μmのシーラントフィルムであり、
シーラント層の最内層の表面の中心線平均粗さRaは0.18μmであり、
第2中間層フィルム、第1中間層フィルムおよび最内層フィルムに滑剤を含有し、
最内層フィルム(最内層)は、ランダム共重合体と、粗面化材と、滑剤とを含有し、更に、アンチブロッキング剤(AB剤)としてアクリルビーズを2500ppm含有するものである。
【0044】、【0046】より、粗面化材としては、熱可塑性樹脂含有ペレット、熱可塑性樹脂含有パウダーが使用され、分散状態での平均粒径は、0.05μm~10μmの範囲である。
【0045】より、最内層を構成するランダム共重合体のマトリックス中に該マトリックスに対して相溶性が低い粗面化材粒子が分散された状態で最内層の表面に粗面化材粒子が一部露出(突出)した状態になっていることにより表面に凹凸が形成される(表面が粗面化される)ものである。
以上より、特に実施例10に係る構成に着目し、上記記載及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。
(引用発明1)
金属箔層の一方の面(上面)に第2接着剤層(外側接着剤層)を介して耐熱性樹脂層(外側層)が積層一体化されると共に、前記金属箔層の他方の面(下面)に第1接着剤層(内側接着剤層)を介してシーラント層(内側層)が積層一体化され、
シーラント層(内側層)は、
金属箔層の他方の面(下面)に第1接着剤層(内側接着剤層)を介して第2中間層が積層され、該第2中間層の表面(下面)に第1中間層が積層され、該第1中間層の表面(下面)に最内層が積層され、最内層が外装材の内側の表面に露出し、
厚さ6μmの第2中間層フィルム(第2中間層)、厚さ28μmの第1中間層フィルム(第1中間層)、厚さ6μmの最内層フィルム(最内層)がこの順で3層積層されてなる厚さ40μmのシーラントフィルムであり、
シーラント層の最内層の表面の中心線平均粗さRaは0.18μmであり、
第2中間層フィルム、第1中間層フィルムおよび最内層フィルムに滑剤を含有し、
最内層フィルム(最内層)は、ランダム共重合体と、粗面化材と、滑剤とを含有し、更に、アンチブロッキング剤(AB剤)としてアクリルビーズを2500ppm含有するものであって、
粗面化材としては、熱可塑性樹脂含有ペレット、熱可塑性樹脂含有パウダーが使用され、分散状態での平均粒径は、0.05μm~10μmの範囲であって、
最内層を構成するランダム共重合体のマトリックス中に該マトリックスに対して相溶性が低い粗面化材粒子が分散された状態で最内層の表面に粗面化材粒子が一部露出(突出)した状態になっていることにより表面に凹凸が形成される(表面が粗面化される)ものである
蓄電デバイス用外装材。
2 甲第2号証(以下、「引用文献2」という。)
(1)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の記載がある。なお、下線は、当審で付したものである。
【請求項1】 ポリエチレン系樹脂を主体とする層が、順にA層/B層/C層と構成される積層フィルムにおいて、A層はポリエチレン系樹脂100重量部に対し、不飽和脂肪酸アミド0.02~0.07重量部及び微粒子0.05~1.00重量部を含有し、C層はポリエチレン系樹脂100重量部に対し、不飽和脂肪酸アミド0.02~0.07重量部、不飽和脂肪酸ビスアミド0.01~0.20重量部、並びに、平均粒径が11~20μm、分解開始温度が250℃以上であるポリマー微粒子0.30~2.00重量部を含有するポリエチレン系多層フィルム。
【0002】
【従来の技術】現在、食品包装分野においては比較的ガスバリアー性、防湿性があり、強度の大きい二軸延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルム等を使用しているが、これらのフィルムは比較的融点が高く、また二軸延伸してあるため、ヒートシール性に劣っている。従ってヒートシール性を持たせるために、高圧法低密度ポリエチレン、エチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂フィルム等をシーラント材として積層し使用されている。上記シーラントフィルムには、透明性、シール強度、耐油性、低温シール性、ホットタック性、スリップ性、開口性、耐衝撃性、ラミネート適性などさまざまな機能が要求されるが、一般に、シーラントフィルムに使用される樹脂および樹脂に添加される添加剤により性能が大きく異なり、中でもスリップ性、開口性、ラミネート適性などは添加剤により大きく変化することが知られている。又、添加剤としてはアンチブロッキング剤とスリップ剤があり、アンチブロッキング剤としてはシリカ、珪藻土などの微粒子が、スリップ剤としては脂肪酸アミドなどが通常使用される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、積層用シーラントフィルムにおいて、基材フィルムと例えばドライラミネートした場合、特にポリエーテル系接着剤を用いた場合でも良好なスリップ性、袋の開口性を有し、ラミネートロールへのスリップ剤の付着性を改善し、更にシーラントフィルムどうしの耐擦傷性をも改善した透明性の良いポリエチレン系フィルムを提供するものである。
【0009】上記A層は、ポリエチレン系樹脂、不飽和脂肪酸アミド及び微粒子を含有することを必須とする。前記不飽和脂肪酸アミドは、製膜直後のフィルムにスリップ性を付与し、更に基材とのドライラミネートさせる際接着剤等に悪影響を及ぼさなければよく、例えばエルカ酸アミド、オレイン酸アミド等が挙げられる。添加量としては、ポリエチレン系樹脂100重量部に対し0.02~0.07重量部であり、0.02重量部未満の場合、製膜時の巻き取り部でシワが入りやすく巻き取りが困難となり、0.07重量部を超える場合、ドライラミネート時のラミネートロールへのスリップ剤付着量が多くなり好ましくない。又、前記微粒子としては、フィルム巻き取りにおいてシワが入らない程度に微粒子の種類および添加量を選べば良く、例えば、平均粒径3~5μmのものが好ましく、具体的には珪藻土、シリカ、ゼオライト等が挙げられる。添加量としては、ポリエチレン系樹脂100重量部に対し0.05~1.00重量部であり、前記微粒子0.05重量部未満の場合フィルム製造工程又はドライラミネート工程においてスリップ性が不十分であり、1.00重量部を超える場合、透明性が低下する。
【0011】上記C層は、ポリエチレン系樹脂、不飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸ビスアミド及びポリマー微粒子を含有することを必須とする。前記不飽和脂肪酸アミドとしてはA層と同様のものを用いることができ、添加量としては、ポリエチレン系樹脂100重量部に対し0.02~0.07重量部であり、0.02重量部未満の場合、製膜時の巻き取り部でシワが入りやすく巻き取りが困難となり、0.07重量部を超える場合、ドライラミネート時のラミネートロールへのスリップ剤付着量が多くなり好ましくない。又、前記不飽和脂肪酸ビスアミドとしては、特にポリエーテル系接着剤を用いたドライラミネートフィルムのスリップ性、製袋品の開口性を改善することができるもので、例えば、不飽和脂肪酸ビスアミドとしては、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド等が挙げられる。添加量としては、ポリエチレン系樹脂100重量部に対し0.01~0.20重量部であり、0.01重量部未満の場合、添加の効果がなく、0.20重量部を超える場合、スリップ剤のロール付着量が多くなるため好ましくない。本発明で使用される不飽和脂肪酸ビスアミドは不飽和脂肪酸アミドよりも比較的フィルム表面へのブリード速度が遅いため、単独での使用を試みた場合、製膜直後のフィルムのスリップ性が不十分でフィルムどうしのスリップ性が悪く、巻き取りが困難となやすく、添加量0.25重量部以上が必要となる。しかし、この場合もスリップ剤がラミネートロールへ付着・堆積する現象が見られるため、不飽和脂肪酸ビスアミドの単独使用は行わない。本発明において、不飽和脂肪酸ビスアミドをC層やA層に使用する場合は、必ず不飽和脂肪酸アミド等との併用を行い添加量を抑える考慮が必要である。
【0012】又、C層に用いるポリマー微粒子は、シーラントフィルムどうしの耐擦傷性を改善しスリップ性を良好にするものであり、通常のTダイ法の押出・製膜における溶融樹脂温度が230℃程度であるため、分解開始温度が250℃以上であり、且つ押出・製膜時の条件(せん断応力、温度)においても実質的に変形しないポリマーからなり、例えば、乳化重合又は懸濁重合等より得られる、ポリメチルメタアクリレート、ポリスチレン及びポリアミド等が挙げられる。分解開始温度及び軟化開始温度が250℃より低い場合は押出・製膜時に分解臭が発生し安全衛生上好ましくなく、又粒子が押出・製膜時に変形してしまうと、耐ブロッキング性、透明性の良好なフィルムは得られない。ポリマー微粒子の形状としては、実質的に球形の、好ましくは粒子の短径/長径の比が0.8以上のものであり、平均粒径11~20μm、好ましくは12μm以上のものが適用される。微粒子が球形でないとフィルム表面に有効な突起を形成しにくくなり、耐ブロッキング性が低下するだけでなく、透明性が悪化する。又、平均粒径が11μm未満の場合、製袋品とした時添加量に対する開口性効果が小さい。更に透明性に悪影響を及ぼす。20μmを超える場合、ヒートシール性が低下する。上記ポリマー粒子の添加量としては、ポリエチレン系樹脂100重量部に対し、0.30~2.00重量部であり、0.30重量部未満の場合、袋の開口性が不十分であり、2.00重量部を超える場合、ヒートシール性及び透明性が悪化するため好ましくない。又、平均粒径が大きくなると添加量はこの範囲で少なくする事ができる。本発明において、C層には更に平均粒径4μm以下の無機微粒子0.20~1.00重量部を添加し、耐ブロッキング性、スリップ性を更に改善することができる。無機微粒子のみでは良好な耐ブロッキング性は得られないが、ポリマー微粒子との組合せにより、耐ブロッキング性、スリップ性を改善し、ポリマー微粒子及びスリップ剤の配合量を低減することができる。上記無機微粒子としては特に制限はなく、珪藻土、ゼオライト等が挙げられ、平均粒径が4μm以下のものが使用される。平均粒径が4μmを越えると耐擦傷性に悪影響をおよぼすばかりでなく、透明性を低下させる。無機微粒子はポリエチレン系樹脂100重量部に対して0.20~1.00重量部添加される。0.20重量部未満の場合は耐ブロッキング性、スリップ性の改善効果が少なく、また1.00重量部を越えると、添加量に対する改善効果も少なく、ヒートシール性、透明性が悪化するため好ましくない。その他、本発明を構成する各層に、本発明の効果を阻害しない範囲で、通常用いられる酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、着色剤等を添加することを妨げない。
【0016】実施例2
A層、B層、C層の添加剤処方を以下のように変更した以外は実施例1と同様に実施することにより積層フィルムを得た。評価結果を表1に示す。
C層:ポリエチレン系樹脂100重量部に対し、オレイン酸アミド0.03重量部、エチレンビスエルカ酸アミド0.03重量部、平均粒径13μmの球状のポリメチルメタアクリレート微粒子(エポスターMA1013:日本触媒(株)製)0.7重量部(熱天秤(TG)による分解開始温度は270℃であった。)および平均粒径3.5μmの珪藻土0.5重量部
(2)引用文献2に記載された技術
【0002】の【従来の技術】及び【0006】の【発明が解決しようとする課題】の記載より、引用文献2の積層フィルムは、食品包装分野に使用される積層フィルムであって、良好なスリップ性、袋の開口性を有し、ラミネートロールへのスリップ剤の付着性を改善し、更にシーラントフィルムどうしの耐擦傷性をも改善した透明性の良いポリエチレン系フィルムを提供するものである。
【請求項1】より、引用文献2の積層フィルムは、ポリエチレン系樹脂を主体とする層が、順にA層/B層/C層と構成されるものである。
【0009】より、A層は、ポリエチレン系樹脂、不飽和脂肪酸アミド及び微粒子を含有することを必須とし、微粒子としては、フィルム巻き取りにおいてシワが入らない程度に微粒子の種類を選べば良く、珪藻土が挙げられる。
【0011】、【0012】より、C層は、ポリエチレン系樹脂、不飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸ビスアミド及びポリマー微粒子を含有することを必須とし、更に無機微粒子を添加するものであり、ポリマー微粒子は、シーラントフィルムどうしの耐擦傷性を改善しスリップ性を良好にするものであり、平均粒径が11μm未満の場合、製袋品とした時添加量に対する開口性効果が小さく、更に透明性に悪影響を及ぼし、20μmを超える場合、ヒートシール性が低下するものであって、無機微粒子としては珪藻土が挙げられ、平均粒径が4μmを越えると耐擦傷性に悪影響をおよぼすばかりでなく、透明性を低下させるものである。
【0016】より、引用文献2の実施例2の積層フィルムは、A層がポリエチレン系樹脂100重量部に対し珪藻土0.5重量部を含み、C層がポリエチレン系樹脂100重量部に対し平均粒径13μmの球状のポリメチルメタアクリレート微粒子0.7重量部および平均粒径3.5μmの珪藻土0.5重量部である。
以上より、特に実施例2に係る構成に着目し、上記記載及び図面を総合勘案すると、引用文献2には、次の技術(以下、「引用技術2」という。)が記載されている。
食品包装分野に使用される積層フィルムであって、良好なスリップ性、袋の開口性を有し、ラミネートロールへのスリップ剤の付着性を改善し、更にシーラントフィルムどうしの耐擦傷性をも改善した透明性の良いポリエチレン系フィルムを提供するものであり、
ポリエチレン系樹脂を主体とする層が、順にA層/B層/C層と構成され、
A層は、ポリエチレン系樹脂、不飽和脂肪酸アミド及び微粒子を含有することを必須とし、微粒子としては、フィルム巻き取りにおいてシワが入らない程度に微粒子の種類を選べば良く、珪藻土が挙げられ、
C層は、ポリエチレン系樹脂、不飽和脂肪酸アミド、不飽和脂肪酸ビスアミド及びポリマー微粒子を含有することを必須とし、更に無機微粒子を添加するものであり、ポリマー微粒子は、シーラントフィルムどうしの耐擦傷性を改善しスリップ性を良好にするものであり、平均粒径が11μm未満の場合、製袋品とした時添加量に対する開口性効果が小さく、更に透明性に悪影響を及ぼし、20μmを超える場合、ヒートシール性が低下するものであって、無機微粒子としては珪藻土が挙げられ、平均粒径が4μmを越えると耐擦傷性に悪影響をおよぼすばかりでなく、透明性を低下させるものであり、
A層がポリエチレン系樹脂100重量部に対し珪藻土0.5重量部を含み、C層がポリエチレン系樹脂100重量部に対し平均粒径13μmの球状のポリメチルメタアクリレート微粒子0.7重量部および平均粒径3.5μmの珪藻土0.5重量部であるという技術。
3 甲第3号証(以下、「引用文献3」という。)
(1)引用文献3に記載された事項
引用文献3には、以下の記載がある。なお、下線は、当審で付したものである。
【0028】
電池用外装材1は、バリア層としての金属箔層10の一方の面に第1接着剤層11を介してシーラントフィルム20が積層され、前記金属箔層10の他方の面に第2接着剤層12を介して耐熱性樹脂層30が積層されたラミネート材である。前記シーラントフィルム20は本発明の電池の外装材用シーラントフィルムの一実施形態である。以下の説明において「電池の外装材用シーラントフィルム」を略して「シーラントフィルム」と称することがある。
【0029】
前記シーラントフィルム20は、第1無延伸フィルム層21、第2無延伸フィルム層22および第3無延伸フィルム層23が順次積層された3層材であり、第3無延伸フィルム層23が接着剤層11によって金属箔層10に接合されている。従って、前記第1無延伸フィルム層21が電池用外装材1の最内層であり、第2無延伸フィルム層22とは反対側の面が露出して電池用外装材1の表面となっている。
【0054】
前記外装体2は、立体形状の本体40とフラットな蓋板45とからなる。前記本体40は、平面視角形の凹部41とこの凹部41の開口縁から外方に延びるフランジ42を有している。前記蓋板45は本体40のフランジ42の外回り寸法と同寸である。そして、前記凹部40と蓋板45によって囲まれた空間がベアセル50の収納用空間を形成している。
【0055】
前記外装体2の本体40は、フラットシートの電池用外装材1に対し、張り出し成形、深絞り成形等の塑性変形加工を施して、凹部41を形成し、凹部41の周囲の未変形部分をフランジ42の外回り寸法にトリミングしたものである。前記凹部41の形成に際しては、電池用外装材1のシーラントフィルム20が凹部41の内面となり、耐熱性樹脂層30が凹部41の外面となるように塑性変形加工を施す。前記シーラントフィルム20は強度が高くかつ表面に析出した滑剤の作用により滑り性が良いので、塑性変形加工によって深い凹部41を形成することができる。前記蓋板45はフラットシートの電池用外装材1を所要寸法に裁断したものである。
【0070】
実施例1~14および比較例1、2のシーラントフィルムの3つの層に共通する材料は以下のとおりである。
【0074】
アンチブロッキング剤としてとして平均粒径0.5μmのシリカ粒子を用いた。
【0075】
また、実施例1~14および比較例1、2のシーラントフィルム20の総厚および3つの層の厚さは共通であり、総厚が40μmであり、第1無延伸フィルム層21が6μm、第2無延伸フィルム層22が28μm、第3無延伸フィルム層23が6μmである。
[シーラントフィルムおよび電池用外装材の作製]
実施例1~14および比較例2のシーラントフィルムにおいて、第1無延伸フィルム層21を構成する樹脂組成物は、ランダム共重合体とホモ重合体を表1に記載した割合で含有し、さらに滑剤およびアンチブロッキング剤を表1に記載された濃度で含有している。また、比較例1のシーラントフィルムの第1無延伸フィルム層21を構成する樹脂組成物は、ランダム共重合体、滑剤およびアンチブロッキング剤からなる。第2無延伸フィルム層22を構成する樹脂組成物は、全ての例においてブロック共重合体と滑剤とからなり、各例の滑剤濃度は表1に示すとおりである。第3無延伸フィルム層23は、全ての例においてランダム共重合体、滑剤およびアンチブロッキング剤からなり、滑剤濃度およびアンチブロッキング剤濃度は表1に示すとおりである。
【0082】
【表1】
[図:0001411357000005.jpg]
【0084】
本発明にかかるシーラントフィルムを用いて製作された電池用外装材は、リチウム2次電池(リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池等)等の蓄電デバイス、リチウムイオンキャパシタ、電気2重層コンデンサ、全固体電池等の外装材として用いられる。
【0085】
1…電池用外装材
2…電池の外装体
10…金属箔層
11…第1接着剤層
12…第2接着剤層
20…シーラントフィルム(電池の外装材用シーラントフィルム)
21…第1無延伸フィルム層
22…第2無延伸フィルム層
23…第3無延伸フィルム層
30…耐熱性樹脂層
【図1】
[図:0001411357000006.jpg]
[図:0001411357000007.jpg]
(2)引用文献3に記載された発明
【0084】より、引用文献3の電池用外装材は、蓄電デバイスの外装材として用いられるものである。
【0028】、【0085】、【図1】より、引用文献3の電池用外装材(蓄電デバイスの外装材)は、バリア層としての金属箔層の一方の面に第1接着剤層を介してシーラントフィルムが積層され、金属箔層の他方の面に第2接着剤層を介して耐熱性樹脂層が積層された構成である。
【0029】、【0085】、【図1】より、引用文献3のシーラントフィルムは、第1無延伸フィルム層、第2無延伸フィルム層および第3無延伸フィルム層が順次積層された3層材であり、第3無延伸フィルム層が接着剤層によって金属箔層に接合され、第1無延伸フィルム層が電池用外装材(蓄電デバイスの外装材)の最内層であり、第2無延伸フィルム層とは反対側の面が露出して電池用外装材(蓄電デバイスの外装材)の表面となっている。
【0070】、【0074】、【0075】より、実施例のシーラントフィルムは、総厚が40μm、第1無延伸フィルム層が6μm、第2無延伸フィルム層が28μm、第3無延伸フィルム層が6μmであり、第1無延伸フィルム層を構成する樹脂組成物は、ランダム共重合体とホモ重合体を含有し、さらに滑剤およびアンチブロッキング剤を含有し、第3無延伸フィルム層23は、ランダム共重合体、滑剤およびアンチブロッキング剤からなり、アンチブロッキング剤として平均粒径0.5μmのシリカ粒子を用いている。
以上より、特に実施例に係る構成に着目し、上記記載及び図面を総合勘案すると、引用文献3には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されている。
バリア層としての金属箔層の一方の面に第1接着剤層を介してシーラントフィルムが積層され、金属箔層の他方の面に第2接着剤層を介して耐熱性樹脂層が積層された構成であって、
シーラントフィルムは、第1無延伸フィルム層、第2無延伸フィルム層および第3無延伸フィルム層が順次積層された3層材であり、第3無延伸フィルム層が接着剤層によって金属箔層に接合され、第1無延伸フィルム層が蓄電デバイスの外装材の最内層であり、第2無延伸フィルム層とは反対側の面が露出して蓄電デバイスの外装材の表面となっており、
シーラントフィルムの総厚が40μm、第1無延伸フィルム層が6μm、第2無延伸フィルム層が28μm、第3無延伸フィルム層が6μmであり、
第1無延伸フィルム層を構成する樹脂組成物は、ランダム共重合体とホモ重合体を含有し、さらに滑剤およびアンチブロッキング剤を含有し、
第3無延伸フィルム層は、ランダム共重合体、滑剤およびアンチブロッキング剤からなり、
アンチブロッキング剤として平均粒径0.5μmのシリカ粒子を用いている
蓄電デバイスの外装材。
4 甲第4号証(以下、「引用文献4」という。)
引用文献4には、以下の記載がある。
ケイソウ(珪藻)土・・・ケイ藻の殻から主になる軟質の岩石もしくは土壌。純粋なケイ藻殻は、およそSiO2=94%、H2O=6%の組成を有する・・・
ゼオライト・・・沸石ともいう。一般式は、M2/n-O・Al2O3・xSiO2・yH2O(M=Na、K、Ca、Ba、nは価数、x=2~10、y=2~7)・・・
第5 当審の判断
1 理由Aについて
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「耐熱性樹脂層(外側層)」は、金属箔層の上面に設けられ、「第1接着剤層(内側接着剤層)」は、金属箔層の下面に設けられ、「シーラント層(内側層)」は、第1接着剤層(内側接着剤層)の下面に設けられているといえる。
ここで、「耐熱性樹脂層(外側層)」は金属箔層の外側の層であり、「第1接着剤層(内側接着剤層)」は金属箔層の内側の層であり、「シーラント層(内側層)」は、第1接着剤層(内側接着剤層)の内側の層であるといえるので、金属箔層の上面、下面は、それぞれ、外面、内面であるといえる。
そうすると、引用発明1は、金属箔層と、その金属箔層の外面側に設けられた耐熱性樹脂層(外側層)と、前記金属箔層の内面側に設けられた第1接着剤層(内側接着剤層)と、その第1接着剤層(内側接着剤層)の内面側に設けられたシーラント層(内側層)とを含む蓄電デバイス用外装材であるといえる。
本件特許発明1の「樹脂製の基材層」、「熱融着樹脂製の熱融着層」は、本件特許明細書の【0027】に「外側層としての耐熱性樹脂製の基材層」、「内側層としての熱融着樹脂製の熱融着層(シーラント層)」と記載されていることから、引用発明1の「耐熱性樹脂層(外側層)」、「シーラント層(内側層)」は、それぞれ、本件特許発明1の「樹脂製の基材層」、「熱融着樹脂製の熱融着層」に相当する。
引用発明1の「金属箔層」、「第1接着剤層(内側接着剤層)」、「蓄電デバイス用外装材」は、それぞれ、本件特許発明1の「金属箔層」、「接着層」、「蓄電デバイス用外装材」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と引用発明1とは、「金属箔層と、その金属箔層の外面側に設けられた樹脂製の基材層と、前記金属箔層の内面側に設けられた接着層と、その接着層の内面側に設けられた熱融着樹脂製の熱融着層とを含む蓄電デバイス用外装材」である点で一致する。
(イ)引用発明1の「シーラント層(内側層)」は、「第2中間層」と「最内層」とを含むものであり、第2中間層は第1接着剤層(内側接着剤層)に接着されるものであるから、引用発明1の「第2中間層」は、本件特許発明1の「前記接着層に接着される金属箔側層部」に相当する。
また、引用文献1の【0080】には、外装材1を用いて構成された蓄電デバイス30に関して、「本発明の外装材1を成形して得られた外装ケース10の収容凹部内に、略直方体形状の蓄電デバイス本体部(電気化学素子等)31が収容され、該蓄電デバイス本体部31の上に、本発明の外装材1が成形されることなくその内側層3側を内方(下側)にして配置され、該平面状外装材1の内側層3の周縁部と、前記外装ケース10のフランジ部(封止用周縁部)29の内側層3とがヒートシールによりシール接合されて封止される」と記載されており、ヒートシールによりシール接合されるのは、【図2】、【図4】、【図5】より、内側層3の最内層7である。
そうすると、引用発明1の「最内層」は、ヒートシールによりシール接合される層であるから、本件特許発明1の「最内面に配置されるシール層部」に相当する。
よって、本件特許発明1と引用発明1とは、「前記熱融着層が、前記接着層に接着される金属箔側層部と、最内面に配置されるシール層部とを」含む点で一致する。
(ウ)引用発明1の「最内層」は、分散状態での平均粒径は、0.05μm~10μmの範囲である粗面化材と、滑剤と、アンチブロッキング剤(AB剤)としてアクリルビーズと、を含むものである。
ここで、粗面化材の平均粒径は、0.05μm~10μmの範囲であるとの記載のみであり、粗面化材が、本件特許発明1で定義される「微粒子(平均粒径が0.05μm以上で5μm未満の粒子)」のみで構成されるのか、「粗粒子(平均粒径が5μm以上で20μm以下の粒子)」のみで構成されるのか、両方を含む構成なのかは不明である。
また、滑剤と、アンチブロッキング剤(AB剤)としてアクリルビーズの平均粒径についても不明である。
更には、引用発明1の「第2中間層」についても、滑剤を含有するが、その平均粒径や実際の粒径が不明である。
よって、本件特許発明1は、「平均粒径が0.05μm以上で5μm未満の粒子を『微粒子』とし、平均粒径が5μm以上で20μm以下の粒子を『粗粒子』として、前記シール層部は、微粒子および粗粒子を含む層によって構成され、前記金属箔側層部は、微粒子を含み、かつ実際の粒径が5μm以上の粒子を含まない層によって構成されている」ことを特定するのに対し、引用発明1は、そのような特定を有していない点で相違する。
(エ)上記(ア)~(ウ)によれば、本件特許発明1と引用発明1とは、以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
金属箔層と、その金属箔層の外面側に設けられた樹脂製の基材層と、前記金属箔層の内面側に設けられた接着層と、その接着層の内面側に設けられた熱融着樹脂製の熱融着層とを含む蓄電デバイス用外装材であって、
前記熱融着層が、前記接着層に接着される金属箔側層部と、最内面に配置されるシール層部とを含む
蓄電デバイス用外装材。
(相違点)
本件特許発明1は、「平均粒径が0.05μm以上で5μm未満の粒子を『微粒子』とし、平均粒径が5μm以上で20μm以下の粒子を『粗粒子』として、
前記シール層部は、微粒子および粗粒子を含む層によって構成され、
前記金属箔側層部は、微粒子を含み、かつ実際の粒径が5μm以上の粒子を含まない層によって構成されている」ことを特定するのに対し、引用発明1は、そのような特定を有していない点。
イ 判断
そこで、上記相違点について検討する。
引用発明3は、蓄電デバイスの外装材に関する発明であり、第1無延伸フィルム層及び第3無延伸フィルム層(2(1)ア(イ)で後述するように、それぞれ、本件特許発明1の「シール層部」及び「金属箔側層部」に相当する。)には、アンチブロッキング剤として平均粒径0.5μmのシリカ粒子が含まれている。
そして、引用発明1と引用発明3は、いずれも、蓄電デバイス用外装材に関する発明であるから、引用発明1のアンチブロッキング剤として、引用発明3のような平均粒径0.5μmのシリカ粒子を用いることは、当業者が容易に想到しうるものである。
そうすると、引用発明3のアンチブロッキング剤は、本件特許発明1の「平均粒径が0.05μm以上で5μm未満の粒子」である「微粒子」に相当することから、引用発明3を参酌することにより、上記相違点のうち、「前記シール層部は、微粒子」「を含む層によって構成され、前記金属箔側層部は、微粒子を」含む構成については、当業者が容易に想到しうるものであるといえる。
しかしながら、「前記シール層部は、」「粗粒子を含む層によって構成され、前記金属箔側層部は、」「実際の粒径が5μm以上の粒子を含まない層によって構成されている」点で依然として相違するものであり、この点については、引用発明3を参酌しても、当業者が容易に想到しうるものであるとはいえない。
また、引用技術2は、そもそも「食品包装分野に使用される積層フィルムであって、良好なスリップ性、袋の開口性を有し、ラミネートロールへのスリップ剤の付着性を改善し、更にシーラントフィルムどうしの耐擦傷性をも改善した透明性の良いポリエチレン系フィルムを提供する」ことが前提となる技術であり、引用発明1のような蓄電デバイス用外装材に適用する動機付けがない。
よって、請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載の発明と、甲第2号証及び甲第3号証に記載の技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものでない。
なお、甲第4号証は、珪藻土やゼオライトについて説明した文献であって、上記相違点に係る構成に関係する文献ではない。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲1発明(引用発明1)の実施例10では、厚さ6μmの最内層フィルム(最内層)の表面に凹凸を形成する目的で粗面化材が入れられているため、当該粗面化材の平均粒径は6μmより大きいことを主張(特許異議申立書46頁4~6行)し、甲第2号証(引用文献2)に開示される技術に基づき、甲1発明(引用発明1)における第2中間フィルムに平均粒径3~5μmの微粒子を添加することは、当業者が容易になし得るものであることを主張(特許異議申立書48頁16~18行)し、甲第3号証(引用文献3)に開示される技術に基づき、甲1発明(引用発明1)における第2中間フィルムに平均粒径0.5μmのシリカ粒子を添加することは、当業者が容易になし得るものであることを主張(特許異議申立書49頁8~11行)している。
確かに、引用発明1は、「最内層を構成するランダム共重合体のマトリックス中に該マトリックスに対して相溶性が低い粗面化材粒子が分散された状態で最内層の表面に粗面化材粒子が一部露出(突出)した状態になっていることにより表面に凹凸が形成される(表面が粗面化される)ものである」から、厚さ6μmの最内層フィルム(最内層)の表面に凹凸を形成する目的で粗面化材が入れられているものといえるが、最内層フィルム(最内層)の厚さが6μmであることをもって、当該粗面化材の平均粒径は6μmより必ず大きくなるとはいえず、粗面化材の平均粒径は0.05μm~10μmの範囲であると限定されているのみである。
また、引用技術2を、引用発明1のような蓄電デバイス用外装材に適用する動機付けがないことは、先述したとおりである。
更には、引用発明3を参酌しても、先に検討したとおり、引用発明1のアンチブロッキング剤として、引用発明3のような平均粒径0.5μmのシリカ粒子を用いることは、容易に考え得るものであるとしても、「前記シール層部は、」「粗粒子を含む層によって構成され、前記金属箔側層部は、」「実際の粒径が5μm以上の粒子を含まない層によって構成されている」点で依然として相違するものであり、引用発明において、当該相違点に係る構成を導き出すことができない。
よって、特許異議申立人の主張を採用することはできない。
(2)本件特許発明2~7について
請求項2~7は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明2~7は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。
したがって、上記(1)と同様の理由により、請求項2~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第1号証に記載の発明と、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものでない。
2 理由Bについて
(1)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と引用発明3とを対比する。
(ア)引用発明3の「耐熱性樹脂層」は、金属箔層の他方の面に設けられ、「第1接着剤層」は、金属箔層の一方の面に設けられ、「シーラントフィルム」は、第1接着剤層の金属箔層が設けられた面の反対の面に設けられているといえる。
ここで、「耐熱性樹脂層」は金属箔層の外側の層であり、「第1接着剤層」は金属箔層の内側の層であり、「シーラントフィルム」は、第1接着剤層の内側の層であるといえるので、金属箔層の他方の面、一方の面は、それぞれ、外面、内面であるといえる。
そうすると、引用発明3は、金属箔層と、その金属箔層の外面側に設けられた耐熱性樹脂層と、前記金属箔層の内面側に設けられた第1接着剤層と、その第1接着剤層の内面側に設けられたシーラントフィルムとを含む蓄電デバイスの外装材であるといえる。
本件特許発明1の「樹脂製の基材層」、「熱融着樹脂製の熱融着層」は、本件特許掲載公報の【0027】に「外側層としての耐熱性樹脂製の基材層」、「内側層としての熱融着樹脂製の熱融着層(シーラント層)」と記載されていることから、引用発明3の「耐熱性樹脂層」、「シーラントフィルム」は、それぞれ、本件特許発明1の「樹脂製の基材層」、「熱融着樹脂製の熱融着層」に相当する。
引用発明3の「金属箔層」、「第1接着剤層」、「蓄電デバイスの外装材」は、それぞれ、本件特許発明1の「金属箔層」、「接着層」、「蓄電デバイス用外装材」に相当する。
そうすると、本件特許発明1と引用発明3とは、「金属箔層と、その金属箔層の外面側に設けられた樹脂製の基材層と、前記金属箔層の内面側に設けられた接着層と、その接着層の内面側に設けられた熱融着樹脂製の熱融着層とを含む蓄電デバイス用外装材」である点で一致する。
(イ)引用発明3の「シーラントフィルム」は、「第3無延伸フィルム層」と「第1無延伸フィルム層」とを含むものであり、第3無延伸フィルム層は第1接着剤層に接着されるものであるから、引用発明1の「第3無延伸フィルム層」は、本件特許発明1の「前記接着層に接着される金属箔側層部」に相当する。
また、引用文献3の【0054】、【0055】には、「前記外装体2は、立体形状の本体40とフラットな蓋板45とからなる。」、「電池用外装材1のシーラントフィルム20が凹部41の内面となり、耐熱性樹脂層30が凹部41の外面となるように塑性変形加工を施す。」と記載されており、【図1】、【図2】より、シーラントフィルム20のうちの第1無延伸フィルム層21がヒートシールされることとなるといえる。
そうすると、引用発明3の「第1無延伸フィルム層」は、ヒートシールされる層であるから、本件特許発明1の「最内面に配置されるシール層部」に相当する。
よって、本件特許発明1と引用発明3とは、「前記熱融着層が、前記接着層に接着される金属箔側層部と、最内面に配置されるシール層部とを」含む点で一致する。
(ウ)引用発明3の第3無延伸フィルム層は、ランダム共重合体、滑剤およびアンチブロッキング剤からなり、アンチブロッキング剤として平均粒径0.5μmのシリカ粒子を用いている。また、第1無延伸フィルム層は、ランダム共重合体とホモ重合体を含有し、さらに滑剤およびアンチブロッキング剤を含有し、アンチブロッキング剤として平均粒径0.5μmのシリカ粒子を用いている。
ここで、平均粒径0.5μmのシリカ粒子は、本件特許発明1の「平均粒径が0.05μm以上で5μm未満の粒子」として定義された「微粒子」の範囲に含まれるものである。
そうすると、本件特許発明1と引用発明3とは、平均粒径が0.05μm以上で5μm未満の粒子を「微粒子」とし、平均粒径が5μm以上で20μm以下の粒子を「粗粒子」として、前記シール層部は、微粒子を含む層によって構成され、前記金属箔側層部は、微粒子を含んで構成されている点で共通する。
しかし、シール層部に関して、本件特許発明1は、粗粒子も含むことを特定するのに対し、引用発明3は、そのような特定がなく、また、金属箔側層部に関して、本件特許発明1は、「実際の粒径が5μm以上の粒子を含まない層によって構成されている」ことを特定するのに対し、引用発明3は、そのような特定がない点で相違する。
(エ)上記(ア)~(ウ)によれば、本件特許発明1と引用発明3とは、以下の点で一致ないし相違する。
(一致点)
金属箔層と、その金属箔層の外面側に設けられた樹脂製の基材層と、前記金属箔層の内面側に設けられた接着層と、その接着層の内面側に設けられた熱融着樹脂製の熱融着層とを含む蓄電デバイス用外装材であって、
前記熱融着層が、前記接着層に接着される金属箔側層部と、最内面に配置されるシール層部とを含み、
平均粒径が0.05μm以上で5μm未満の粒子を「微粒子」とし、平均粒径が5μm以上で20μm以下の粒子を「粗粒子」として、
前記シール層部は、微粒子を含む層によって構成され、
前記金属箔側層部は、微粒子を含んで構成されていることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
(相違点)
シール層部に関して、本件特許発明1は、粗粒子も含むことを特定するのに対し、引用発明3は、そのような特定がなく、また、金属箔側層部に関して、本件特許発明1は、実際の粒径が5μm以上の粒子を含まない層によって構成されていることを特定するのに対し、引用発明3は、そのような特定がない点。
イ 判断
そこで、上記相違点について検討する。
1(1)ア(ウ)で先述したように、引用発明1の最内層は、分散状態での平均粒径は、0.05μm~10μmの範囲である粗面化材と、滑剤と、アンチブロッキング剤(AB剤)としてアクリルビーズを含むものであるが、粗面化材が、本件特許発明1で定義される「微粒子(平均粒径が0.05μm以上で5μm未満の粒子)」のみで構成されるのか、「粗粒子(平均粒径が5μm以上で20μm以下の粒子)」のみで構成されるのか、両方を含む構成なのかは不明であるし、滑剤と、アンチブロッキング剤(AB剤)としてアクリルビーズの平均粒径についても不明である。
また、引用発明1の「第2中間層」についても、滑剤を含有するが、その実際の粒径が不明である。
更に、引用技術2は、そもそも「食品包装分野に使用される積層フィルムであって、良好なスリップ性、袋の開口性を有し、ラミネートロールへのスリップ剤の付着性を改善し、更にシーラントフィルムどうしの耐擦傷性をも改善した透明性の良いポリエチレン系フィルムを提供する」ことが前提となる技術であり、引用発明3のような蓄電デバイス用外装材に適用する動機付けがない。
よって、請求項1に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第3号証に記載の発明と、甲第1号証及び甲第2号証に記載の技術に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものでない。
なお、甲第4号証は、珪藻土やゼオライトについて説明した文献であって、上記相違点に係る構成に関係する文献ではない。
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書において、甲第1号証(引用文献1)に開示される周知技術に基づき、甲3発明(引用発明3)における第1無延伸フィルム層に平均粒径0.05μm~10μmの熱可塑性樹脂を含有する粒子からなる粗面化材を添加することは、当業者が容易になし得るものであることを主張(特許異議申立書54頁13~16行)し、甲第2号証に開示される周知技術に基づき、甲3発明における第1無延伸フィルム層に平均粒径が11~20μmのポリマー微粒子を添加することは、当業者が容易になし得るものであることを主張(特許異議申立書56頁6~12行)している。
引用文献1を参酌して、引用発明3における第1無延伸フィルム層に平均粒径0.05μm~10μmの熱可塑性樹脂を含有する粒子からなる粗面化材を添加することは、当業者が容易になし得るものであるとしても、上述したように、引用発明1の粗面化材が、本件特許発明1で定義される「微粒子(平均粒径が0.05μm以上で5μm未満の粒子)」のみで構成されるのか、「粗粒子(平均粒径が5μm以上で20μm以下の粒子)」のみで構成されるのか、両方を含む構成なのかは不明である以上、シール層部に関して、本件特許発明1のように、粗粒子を含む構成とすることが容易に想到しうるものではない。
また、引用技術2を、引用発明3のような蓄電デバイス用外装材に適用する動機付けがないことは、先述したとおりである。
よって、特許異議申立人の主張を採用することはできない。
(2)本件特許発明2~7について
請求項2~7は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明2~7は、本件特許発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。
したがって、上記(1)と同様の理由により、請求項2~7に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された甲第3号証に記載の発明と、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものでない。
3 理由Cについて
(1)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下のような実施可能要件違反に関する主張をしている。
「本件特許の発明の詳細な説明において、本件特許発明1における「微粒子」と「粗粒子」に関して、形状、平均粒径の意義、測定方法が記載も示唆もされていない。また、平均粒径を測定する場合の条件として、○1(当審注:原文は○の中に1、以下同様。) 1個の粒子の大きさをどのように表すか(代表径のとり方)、○2 粒子の大きさに分布がある粒子群をどのように表すか(粒度分布の表し方)、○3 粒子群を代表する平均的な大きさをどのように選ぶか(平均粒子径の選び方)についても、本件特許の発明の詳細な説明には何ら示されていない。そうすると、平均粒径の測定方法が複数ある中で、どのような測定方法を用いて平均粒径を特定すればよいのか当業者であっても全く不明である。また、平均粒径は、算定方法が複数あり、同じ代表径からでもその算出値が異なることが知られている。そうすると、平均粒径の定義が何ら記載も示唆もされていない本件特許発明において、どのようにして同一の粒子群に対し同一の平均粒径を導くことができるのか全く不明である。そうすると、当業者であっても、平均粒径の測定方法として、どのような測定方法を用い平均粒径を特定し、上記「微粒子」及び「粗粒子」の区別をつけるのか不明である。さらに、上記「微粒子」及び「粗粒子」に関し、発明の詳細な説明の実施例において、用いた粒子のメーカー名、商品名を明示することにより用いる粒子を特定することもしていない。そうすると、当業者はどのような「微粒子」、「粗粒子」を用いればよいか分からないため、本件特許明細書は、当業者が発明を実施できるよう明確に記載されていない。以上の通り、本件特許発明1は、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすとはいえない。また、本件特許発明1を引用する本件特許発明2~7についても同様に、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすとはいえない。」(特許異議申立書60頁下から6行~61頁20行)
(2)検討
確かに、平均粒径には種々の算出基準や測定方法が存在し、発明の詳細な説明には、「微粒子」及び「粗粒子」に関してどのような算出基準及び測定方法に基づいて平均粒径を求めたかについての記載や示唆はない。
しかし、レーザー回折法により得られたD50より、平均粒径を求めることが本件の出願当時における一般的な測定方法であり、当業者であれば、発明の詳細な説明に特段の記載が無い場合には、そのような方法で測定したものと考えるのが自然である。
よって、特許異議申立人の実施可能要件に関する主張を採用することはできず、発明の詳細な説明の記載は,当業者において,その記載及び出願時の技術常識に基づいて,過度の試行錯誤を要することなく,当該発明に係る物を作ることができる程度のものであり、物の発明について実施可能要件を満たすものといえるから、本件請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
4 理由Dについて
(1)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下のようなサポート要件違反に関する主張をしている。
「【0053】の・・・記載によれば、蓄電デバイス用外装材の熱融着層における内面側のシール層部の内表面に大小の凹凸部を形成するには、「粗粒子の平均粒径」がシール層厚みの半分程度である必要がある。「粗粒子の平均粒径」がシール層厚みの半分より大きいと、シール層から粗粒子が脱落しやすくなり粗面化効果が得られず、「粗粒子の平均粒径」がシール層厚みの半分より小さいと、シール層内に埋もれてしまい粗面化効果が得られないためである。・・・課題を解決するためには、「粗粒子の平均粒径がシール層厚みの半分程度である」必要がある。しかしながら、本件特許発明1~7のいずれにも、素粒子の平均粒径とシール層厚みとの関係についてなんら記載されていない。・・・よって、本件特許発明1~7は、・・・課題を解決するために必要とされる事項を充足しておらず、当業者が本件特許発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであると言えずサポート要件を具備しない。」(特許異議申立書62頁14行~63頁3行)
(2)検討
発明の詳細な説明の【0002】~【0004】、【0006】~【0009】、【0019】には、【背景技術】、【発明が解決しようとする課題】、【発明の効果】として、以下のように記載されている。
「【0002】・・・蓄電デバイス用外装材を形成するに際しては、前記積層体に対して張り出し成形や深絞り成形等の冷間成形が行われることによって、略直方体形状等の立体形状に成形される。このような立体形状に成形することにより、蓄電デバイス本体部を収容するための収容空間を確保することができる。従って高精度の収容空間を確保するには、成形性を向上させるのが好ましい。【0003】例えば下記特許文献1に示す蓄電デバイス用外装材は、内側層(熱融着層)の表出面に滑剤を添加して滑り性を向上させることにより、良好な成形性を確保するようにしている。【0004】また下記特許文献2に示す蓄電デバイス用外装材は、熱融着層の表出面を相分離させたり、表出面の層に微細な粒子を添加することによって、中心線平均粗さ(Ra)を適度に調整し、良好な成形性を確保するようにしている。」
「【0006】しかしながら、上記特許文献1に示す従来の蓄電デバイス用外装材においては、・・・滑り性にバラツキが生じ、安定した良好な成形性を得ることができない、という課題があった。・・・この点からも良好な成形性を得ることができなかった。【0007】また特許文献2に示す従来の蓄電デバイス用外装材においては、・・・全域においてバラツキのない滑り性を得ることができず、安定した良好な成形性を得ることができない、という課題があった。」
「【0009】この発明は、・・・安定した良好な成形性を得ることができる蓄電デバイス用外装材および蓄電デバイスを提供することを目的とする。」
「【0019】・・・熱融着層における内面側のシール層部に、粒径の異なる粗粒子および微粒子が添加されているため、内表面に大小の凹凸部が形成され、この大小の凹凸部の相乗効果によって、・・・安定した良好な成形性を得ることができる。・・・」
すなわち、シール層部に粒径の異なる粗粒子および微粒子が添加されることにより、大小の凹凸部が形成され、安定した良好な成形性を得ることができ、課題を解決できる構成になることが発明の詳細な説明に記載されているものである。
特許異議申立人の主張する「粗粒子の平均粒径がシール層厚みの半分程度である」構成に関して、【0053】には、「粗粒子Aの平均粒径は、シール層31の厚みの半分程度の好ましい。すなわちこの粒径が大き過ぎるとシール層31から脱落し易くなり、粗面化効果が得られない。逆に粒径が小さ過ぎるとシール層31内に埋もれてしまって粗面化効果が得られない。」と記載されているものの、当該構成は、粗面化効果を得るために限定された構成であって、安定した良好な成形性を得るという課題を解決するためには、請求項1の「前記シール層部は、微粒子および粗粒子を含む層」との限定があれば足りるものといえる。
よって、特許異議申立人のサポート要件に関する主張を採用することはできず、特許請求の範囲で特定された発明は、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、サポート要件を満たしているものといえるから、本件請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
5 理由Eについて
(1)特許異議申立人の主張
特許異議申立人は、特許異議申立書において、以下のような明確性要件違反に関する主張をしている。
「本件特許の発明の詳細な説明において、本件特許発明1における「微粒子」と「粗粒子」に関して、形状、平均粒径の意義、測定方法が記載も示唆もされていない。また、平均粒径を測定する場合の条件として、○1 1個の粒子の大きさをどのように表すか(代表径のとり方)、○2 粒子の大きさに分布がある粒子群をどのように表すか(粒度分布の表し方)、○3 粒子群を代表する平均的な大きさをどのように選ぶか(平均粒子径の選び方)についても、本件特許の発明の詳細な説明には何ら示されていない。そうすると、平均粒径の測定方法が複数ある中で、どのような測定方法を用いて平均粒径を特定すればよいのか当業者であっても全く不明である。また、平均粒径は、算定方法が複数あり、同じ代表径からでもその算出値が異なることが知られている。そうすると、平均粒径の定義が何ら記載も示唆もされていない本件特許発明において、どのようにして同一の粒子群に対し同一の平均粒径を導くことができるのか全く不明である。そうすると、当業者であっても、本件特許発明1に記載の「平均粒径」をどのようにして特定すればよいのか不明であり、本件特許発明1は明確性要件を満たしていない。また、本件特許発明1を引用する本件特許発明2~7についても同様に、明確性要件を満たすとはいえない。」(特許異議申立書63頁下から11行~64頁7行)
(2)検討
発明の詳細な説明には、「微粒子」及び「粗粒子」に関してどのような算出基準及び測定方法に基づいて平均粒径を求めたかについての記載や示唆はないものの、算出基準や測定方法についての限定がなくとも、「微粒子」及び「粗粒子」の平均粒径に関する数値範囲自体は明確であり、本件請求項1~7に係る特許に関する記載に不明確な点はない。
よって、特許異議申立人の明確性要件に関する主張を採用することはできず、本件特許明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえないから、本件請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
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