特許異議申立
2023-700558
化粧シート及び化粧材
- 審判番号
- 2023-700558
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-090613
- 登録番号
- 7180811
- 請求日
- 2023年05月30日
- 審決日
- 2025年02月13日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】廣瀬 一
- 【権利者代理人】宮坂 徹
- 【権利者代理人】田中 秀▲てつ▼
- 【異議申立人】下河 あい
- 審判長/審判官
- 審判長 岩谷 一臣
- 審判官 神山 茂樹
- 審判官 藤井 眞吾
- 分類
- P1651.121-ZAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7180811号発明「化粧シート及び化粧材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7180811号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~8〕について訂正することを認める。
特許第7180811号の請求項1、3~8に係る特許を取り消す。
特許第7180811号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立を却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7180811号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和4年3月7日(優先権主張 令和3年3月24日)を出願日とする特願2022-34792号の一部を、令和4年6月3日に新たな特許出願としたものであって、令和4年11月21日にその特許権の設定登録がされ、令和4年11月30日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議の申立ての手続の経緯の概略は、次のとおりである。
令和5年 5月30日 :特許異議申立人下河あい(以下「申立人」という。)による請求項1~8に係る特許に対する特許異議の申立て
令和5年11月 7日付け:取消理由通知書
令和5年12月27日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 2月14日 :申立人による意見書の提出
令和6年 4月24日付け:取消理由通知書(決定の予告)
令和6年 7月 1日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和6年 9月12日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出
令和6年10月24日 :申立人による意見書の提出
なお、令和5年12月27日に提出された訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。
第2 訂正請求について
1.訂正の内容
令和6年9月12日提出の手続補正書(方式)により補正された令和6年7月1日提出の訂正請求書(以下、「本件訂正請求書」という。)による訂正の請求(以下、訂正自体を「本件訂正」という。)は、特許第7180811号の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~8について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は、次の訂正事項を含むものである。なお、下線は、当審が訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載の「着色基材層と、前記着色基材層の一方の面に積層された透明樹脂層と、を備え、前記着色基材層はバイオマス由来のポリオレフィンを含み、前記着色基材層の密度は、0.98g/cm3以上1.10g/cm3以下の範囲内であり、前記透明樹脂層の厚さをt1とし、前記着色基材層の厚さをt2とした場合、t2≦t1を満たし、且つt1/t2が1.1以上3以下の範囲内である化粧シート。」を、
「無機物を含む着色基材層と、
前記着色基材層の一方の面に積層された透明樹脂層と、を備え、
前記着色基材層はバイオマス由来のポリオレフィンを含み、
前記着色基材層の密度は、0.98g/cm3以上1.05g/cm3以下の範囲内であり、
前記透明樹脂層の密度は、0.95g/cm3を超えるとともに0.99g/cm3以下の範囲内であり、
前記透明樹脂層の厚さをt1とし、前記着色基材層の厚さをt2とした場合、t2≦t1を満たし、且つt1/t2が1.15以上3以下の範囲内であり、
前記無機物は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物のうちのいずれか一つ又は複数を含む化粧シート。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~8も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に「d2>d1を満たす請求項1又は請求項2に記載した化粧シート。」と記載されているのを、「d2>d1を満たす請求項1に記載した化粧シート。」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~8も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に「バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含む請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載した化粧シート。」と記載されているのを、「バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含む請求項1又は請求項3に記載した化粧シート。」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~8も同様に訂正する)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「100:0~20:80の範囲内でブレントされたポリエチレンを含む請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載した化粧シート。」と記載されているのを、「100:0~20:80の範囲内でブレントされたポリエチレンを含む請求項1、請求項3、請求項4のうちいずれか1項に記載した化粧シート。」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~8も同様に訂正する)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に「バイオマス度が10%以上90%以下の範囲内である請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載した化粧シート。」と記載されているのを、「バイオマス度が10%以上90%以下の範囲内である請求項1、請求項3から請求項5のうちいずれか1項に記載した化粧シート。」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7、8も同様に訂正する)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に「前記着色基材層の他方の面に積層されたプライマー層を備える請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載した化粧シート。」と記載されているのを、「前記着色基材層の他方の面に積層されたプライマー層を備える請求項1、請求項3から請求項6のうちいずれか1項に記載した化粧シート。」に訂正する(請求項7の記載を引用する請求項8も同様に訂正する)。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に「前記基材の少なくとも一方の面に積層された請求項1から請求項7のうちいずれか1項に記載した化粧シートと、を備える化粧材。」と記載されているのを、「前記基材の少なくとも一方の面に積層された請求項1、請求項3から請求項7のうちいずれか1項に記載した化粧シートと、を備える化粧材。」に訂正する。
(9)一群の請求項
本件訂正前の請求項1~8は、請求項2~8が、本件訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~8〕について請求されている。
2.訂正の適否
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1の「無機物を含む着色基材層」及び「前記無機物は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物のうちのいずれか一つ又は複数を含む」とする訂正は、着色基材層の含有成分について特定されていなかったものを「無機物を含む」とし、さらに無機物について「前記無機物は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物のうちのいずれか一つ又は複数を含む」と、着色基材層が含む無機物をより具体的に特定するものである。
また、着色基材層の密度について、「0.98g/cm3以上1.10g/cm3以下の範囲内」を「0.98g/cm3以上1.05g/cm3以下の範囲内」に、透明樹脂層と着色基材層の厚さの比について、「t1/t2が1.1以上3以下の範囲内」を「t1/t2が1.15以上3以下の範囲内」に、それぞれ、範囲を狭めて限定するものである。
さらに、透明樹脂層の密度について特定されていなかったものを「0.95g/cm3を超えるとともに0.99g/cm3以下の範囲内」と特定するものである。
したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 願書に添付した明細書の段落【0492】には、「着色基材層2は無機物を含み、着色基材層2の比重は0.97以上1.5以下である。無機物としては、例えば、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物、及びその他酸化物等のうちのいずれか一つ又は複数を適用することができる。」と記載されており、訂正事項1の「無機物を含む着色基材層」及び「前記無機物は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物のうちのいずれか一つ又は複数を含む」とする訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
また、願書に添付した明細書の段落【0108】には、「着色基材層2は、0.92[g/cm3]以上1.12[g/cm3]以下の範囲内、好ましくは0.98[g/cm3]以上1.10[g/cm3]以下の範囲内の密度を有するものである。」と記載されており、訂正事項1の「前記着色基材層の密度は、0.98g/cm3以上1.05g/cm3以下の範囲内」とする訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
また、願書に添付した明細書の段落【0125】には、「なお、透明樹脂層5の厚さt1と着色基材層2の厚さt2との比(t1/t2)が、1.1以上3以下の範囲内であれば好ましく、1.1以上2以下の範囲内であればより好ましく、1.1以上1.5以下の範囲内であればさらに好ましい。」と記載されており、訂正事項1の「前記透明樹脂層の厚さをt1とし、前記着色基材層の厚さをt2とした場合、t2≦t1を満たし、且つt1/t2が1.15以上3以下の範囲内」とする訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
そして、願書に添付した明細書の段落【0119】には、「透明樹脂層5の密度は、0.92[g/cm3]以上0.99[g/cm3]以下の範囲内、好ましくは0.94[g/cm3]以上0.98[g/cm3]以下の範囲内、より好ましくは0.95[g/cm3]以上0.97[g/cm3]以下の範囲内の密度を有するものである。」と記載されており、訂正事項1の「前記透明樹脂層の密度は、0.95g/cm3を超えるとともに0.99g/cm3以下の範囲内」とする訂正は、本件特許明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
よって、訂正事項1は、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものである。
ウ また、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2について
訂正事項2は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的するものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(3)訂正事項3~8について
訂正事項3~8は、訂正事項2によって請求項2が削除されたことに伴い、引用する請求項の数を減少させ、また、削除された請求項2を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
3.本件訂正請求についてのまとめ
したがって、訂正事項1~8は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、本件訂正後の請求項〔1~8〕について訂正を認める。
第3 本件発明
上記のとおり、本件訂正請求が認められるから、本件特許の請求項1、3~8に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、それぞれ、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、3~8に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
無機物を含む着色基材層と、
前記着色基材層の一方の面に積層された透明樹脂層と、を備え、
前記着色基材層はバイオマス由来のポリオレフィンを含み、
前記着色基材層の密度は、0.98g/cm3以上1.05g/cm3以下の範囲内であり、
前記透明樹脂層の密度は、0.95g/cm3を超えるとともに0.99g/cm3以下の範囲内であり、
前記透明樹脂層の厚さをt1とし、前記着色基材層の厚さをt2とした場合、t2≦t1を満たし、且つt1/t2が1.15以上3以下の範囲内であり、
前記無機物は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物のうちのいずれか一つ又は複数を含む化粧シート。
【請求項3】
前記透明樹脂層の密度をd1とし、前記着色基材層の密度をd2とした場合、d2>d1を満たす請求項1に記載した化粧シート。
【請求項4】
前記透明樹脂層及び前記着色基材層の少なくとも一方の層は、前記バイオマス由来のポリオレフィンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含む請求項1又は請求項3に記載した化粧シート。
【請求項5】
前記透明樹脂層は、前記バイオマス由来のポリオレフィンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを、100:0~20:80の範囲内でブレントされたポリエチレンを含む請求項1、請求項3、請求項4のうちいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項6】
前記着色基材層は、前記バイオマス由来のポリオレフィンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを含み、且つ、バイオマス度が10%以上90%以下の範囲内である請求項1、請求項3から請求項5のうちいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項7】
前記着色基材層の他方の面に積層されたプライマー層を備える請求項1、請求項3から請求項6のうちいずれか1項に記載した化粧シート。
【請求項8】
基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に積層された請求項1、請求項3から請求項7のうちいずれか1項に記載した化粧シートと、を備える化粧材。」
第4 取消理由通知書(決定の予告)に記載した取消理由について
当審が取消理由通知書(決定の予告)により特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
理由
本件特許の請求項1~8に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用刊行物
甲第1号証:特開2010-162748号公報
甲第2号証:特開2008-80703号公報
甲第3号証:特開2010-52305号公報
甲第4号証:特開2008-238780号公報
以下、甲第1号証を「甲1」という。他も同様。
第5 当審の判断
1.引用文献の記載及び引用発明、並びに周知技術
(1)甲1
ア「【請求項1】
着色フィルム上に少なくとも絵柄層、透明フィルムを積層してなる化粧シートにおいて、前記着色フィルムは層厚が50~100μmで植物原料由来のポリエチレンを70重量%以上含み、前記透明フィルムは層厚が20~100μmで植物原料由来のポリエチレンを80重量%以上含むことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記透明フィルムのヘイズ値が0.1~30.0%であり、且つ密度が0.94~0.97であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。」
イ「【技術分野】
【0001】
本発明は建築内装材、建具の表面、家電品の表面材等に用いられる化粧シートに関するものであって、木質ボード類、無機系ボード類、金属板等に貼り合わせて化粧板として用いられるものである。
【背景技術】
【0002】
近年、塩化ビニル製化粧シートに替わる化粧シートとしてオレフィン系樹脂を使用した化粧シートが数多く提案されている。塩化ビニル樹脂を使用しないことにより、焼却時の有毒ガス等の発生は無くなる。しかしながら、これらオレフィン 系樹脂を使用した化粧シートであっても、使用する樹脂は石油由来の原料により重合されているため、二酸化炭素排出量は塩化ビニル製化粧シートに対して同等なレベルであり、近年注目されている地球温暖化に対する抑制効果は期待できなかった。
【0003】
そこで最近、石油由来の原料ではなく植物由来の原料からなる樹脂としてポリエステル系樹脂、特にポリ乳酸を使用した化粧シートが開発されている。しかしながら、植物由来のポリエステル系樹脂は、耐加水分解性が悪く、高温多湿下での使用も想定される化粧シートにおいては用途が著しく限定されてしまい、普及には至っていない。
【0004】
一方、サトウキビ由来のバイオエタノールからポリエチレンを重合していく研究が始められている。しかしながら現在はまだ商業ベースでの生産は行われていない。オレフィン系樹脂を使用した化粧シートで用いられている樹脂はポリプロピレンが主でり、ポリエチレンはアイデアはあったものの、ある程度の硬度を必要とする表面側に用いる透明フィルムとして使用するには透明性が足りず、また透明性を優先させると耐傷付き性など、剛性が影響する物性が著しく低下する問題があり、使用することができなかった。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこれらの問題点を解決する為になされたものであり、その課題とするところは、植物由来度が高く、環境に優しい化粧シートであって、表面の透明性や耐傷付き性を有する化粧シートを提供することにある。」
ウ「【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこの課題を解決したものであり、すなわちその請求項1記載の発明は着色フィルム上に少なくとも絵柄層、透明フィルムを積層してなる化粧シートにおいて、前記着色フィルムは層厚が50~100μmで植物原料由来のポリエチレンを70重量%以上含み、前記透明フィルムは層厚が20~100μmで植物原料由来のポリエチレンを80重量%以上含むことを特徴とする化粧シートである。
【0008】
またその請求項2記載の発明は前記透明フィルムのヘイズ値が0.1~30.0%であり、且つ密度が0.94~0.97であることを特徴とする請求項1に記載の化粧シートである。」
「【発明の効果】
【0011】
本発明はその着色フィルムの植物原料由来ポリエチレンを70重量%以上として厚みを50~100μmとすることで、植物原料由来を高めつつも印刷適性、隠蔽性、加工適性を維持することが可能となる。また、透明フィルムの植物原料由来のポリエチレンを80重量%以上として厚みを20~100μmとすることで、植物原料由来を維持しつつ、意匠性と化粧シート表面の各種耐性を有するものとすることが可能となる。」
エ「【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図面に基づき詳細に説明する。
本発明における着色フィルム1は、層厚が50~100μmで植物原料由来のポリエチレンを70重量%以上を主材とし、着色剤としての顔料および/または染料を添加し、必要に応じて適宜無機フィラー、熱安定剤、酸中和剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、難燃剤、ブロッキング防止剤等を加えたものが用いられる。二酸化炭素削減の趣旨に鑑みて植物原料由来度は70重量%以上とされる。着色剤を添加するため植物原料由来度は後述する透明フィルムより低い。厚みが50μmより薄いと隠蔽性に劣るものとなり、100μmより厚いと製造適性、加工適性に劣るものとなる。植物原料由来のポリエチレンは印刷適性が良好であれば特に制約を受けるものではないが、通常は耐熱性において有利な密度0.94~0.97の高密度ポリエチレンが使われる。着色剤についても公知の材料が使用できる。特によく用いられる顔料には酸化チタン、酸化鉄等の無機顔料が多く用いられる。」
「【0019】
本発明における透明フィルム3は、植物原料由来のポリエチレンを80重量%以上含み、厚さ20μm~100μmとする。二酸化炭素削減の趣旨に鑑みて植物原料由来度は80重量%以上とする。着色剤が添加されないため、植物原料由来度は着色フィルムより高い。厚みが20μmより薄くなると絵柄層を保護する役割を果たせなくなり、また100μmより厚くなると化粧シートの加工性が低下する。
【0020】
化粧シートとして意匠的に優れており、かつ耐傷付き性を十分に確保するためにはヘイズ値が0.1~30.0%であり、且つ密度が0.94~0.97であることが好ましい。ヘイズ値が30.0%を超えると絵柄層が見づらくなり意匠性が低下し、また密度が0.94より低くなると擦り傷、ひっかき傷などに対する耐性が低下し、化粧シート表面を保護する透明フィルム3の役割を果たせなくなる。また密度が0.97より高くなると化粧シートの加工性が著しく低下する。」
「【0030】
以下、本発明を実施例に基づき説明する。まず、使用する樹脂組成などを以下に示す。
<ポリエチレンA>
エチレン(サトウキビ原料)97重量%
1-ヘキセン(石化原料)3重量%
重合触媒:チグラー触媒
(MFR:5 密度:0.96 植物由来度:0.96)
【0031】
<ポリエチレンB>
エチレン(サトウキビ原料)94重量%
1-ヘキセン(石油原料)6重量%
重合触媒:メタロセン触媒
(MFR:4 密度:0.93 植物由来度:0.93)
・・・
【0036】
<着色フィルムA>
ポリエチレンA:97重量%
酸化チタン:3重量%
(製膜方法:Tダイキャスト法 厚み:70μm 植物由来度:0.93)
・・・
【0038】
<透明フィルムA>
配合比率:ポリエチレンA/ポリエチレンB/核剤A=50/49/1
(厚み:50μm 密度:0.95 ヘイズ:20% 球晶サイズ:1μm 植物由来度:0.93)
・・・
【実施例1】
【0046】
前記着色フィルムAにコロナ処理を施し、絵柄層2を印刷した。一方、前記透明フィルムAの両面にコロナ処理を施した。そして、前記透明フィルムAの下側面と、前記着色フィルムAの前記絵柄層2を印刷した面とを、ドライラミネートにて貼り合わせた。その後、前記透明フィルムAの上側面にトップコート層5をコーティングして、化粧シートを作成した。」
オ「
[図:0001424542000001.jpg]
」
カ 引用発明
上記ア、ウ、エより、甲1には、次の「引用発明」が記載されていると認められる。
「着色フィルム上に少なくとも絵柄層、透明フィルムを積層してなる化粧シートにおいて、
前記着色フィルムは層厚が50~100μmで植物原料由来のポリエチレンを70重量%以上含み、着色剤としての顔料および/または染料を添加し、顔料には酸化チタンが無機顔料として用いられ、
前記透明フィルムは層厚が20~100μmで植物原料由来のポリエチレンを80重量%以上含み、密度は、0.94~0.97g/cm3である化粧シート。」
(2)甲2
ア 甲2には、次の記載がある。
「【0056】
<実施例2の化粧シートの層構成>
熱可塑性樹脂シート基材:ポリプロピレン 70μm
絵柄インキ層:印刷インキ:ウレタン系2液硬化型 0~1μm
アンカーコート層:アンカーコート剤:ウレタン系2液硬化型 1μm
接着性樹脂層:接着性樹脂:マレイン酸グラフト変性オレフィン系樹脂 12μm
透明熱可塑性樹脂層:ポリ乳酸樹脂+ポリブチレンサクシネート樹脂 100μm
表面保護層:ウレタン系コート剤 6μm」
イ 上記実施例2において、熱可塑性樹脂シート基材(70μm)は透明熱可塑性樹脂層(100μm)よりも薄く、その比は「1.43」である。
(3)甲3
ア 甲3には、次の記載がある。
「【0047】
本発明の化粧シートは、従来の化粧シートと同様、例えば合板やパーティクルボード等の木質系基材や、珪酸カルシウム板、木毛セメント板等の無機質系基材、FRP(繊維強化プラスチック)等の合成樹脂系基材等の各種の基材の表面に貼付して使用するものであり、一般的には該貼付の際には例えばウレタン系や酢酸ビニル系等の適宜の接着剤が使用されるが、基材シート4を構成する樹脂の種類によっては、係る汎用のラミネート用接着剤との接着性が不十分である場合もある。係る場合に備えて、基材シート4の裏面に、上記した汎用の接着剤との接着性に優れた樹脂からなるプライマー層(図示せず)を設けておくことが好ましい。・・・」
「【実施例1】
・・・
【0051】
<化粧シートの作製>
結晶性ポリ乳酸樹脂を結晶性ポリ乳酸樹脂フィルム1に、非結晶性ポリ乳酸樹脂を低結晶性もしくは非結晶性ポリ乳酸樹脂層2,3にし、共押出機を使用して結晶性ポリ乳酸樹脂フィルム1(160μm)、低結晶性もしくは非結晶性ポリ乳酸樹脂層2,3(各20μm)構成の総厚200μmの未延伸積層フィルムを押出成膜した。
次に、連続して65℃の加熱ロール間で長手方向に2倍延伸して、しかる後にテンター方式の延伸装置により70℃で幅方向に設定倍率2倍で延伸した後、緊張下で150℃で熱処理して基材シート4として巻き取った。得られた基材シート4の厚さは50μmであった。
【0052】
得られた基材シート4の非結晶性ポリ乳酸樹脂層2を印刷面とし、2液硬化型ウレタン樹脂系グラビアインキ(東洋インキ製造(株)製:「ラミスター」)で木目柄をグラビア印刷機により印刷して絵柄模様層6を設けた。
【0053】
その後、前記絵柄模様層6上に接着剤層7としてポリエステルポリオールを主剤としイソホロンジイソシアネートを硬化剤とする2液ウレタン樹脂系接着剤を用い、乾燥後の塗布量が2g/m2になるように塗工し、その上に透明熱可塑性樹脂層8として、透明ポリプロピレン樹脂と接着性樹脂(マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂)とを、透明ポリプロピレン樹脂の厚みが80μm、接着性樹脂の厚みが20μmとなり、接着性樹脂が絵柄模様層6側になるように共押出ラミネートした。」
イ 上記実施例1において、基材シート4(50μm)は透明熱可塑性樹脂層8(80+20=100μm)よりも薄く、その比は「2.0」である。
(4)甲4
ア 甲4には、次の記載がある。
「【0062】
本発明の化粧シートは、既に説明した様に、従来の化粧シートと同様、例えば合板やパーティクルボード等の木質系基材や、珪酸カルシウム板、木毛セメント板等の無機質系基材、FRP(繊維強化プラスチック)等の合成樹脂系基材等の各種の基材の表面に貼付して使用するものであり、一般的には該貼付の際には例えばウレタン系や酢酸ビニル系等の適宜の接着剤が使用されるが、熱可塑性樹脂シート基材3を構成する樹脂の種類によっては、係る汎用のラミネート用接着剤との接着性が不十分である場合もある。係る場合に備えて、熱可塑性樹脂シート基材3の裏面に、上記した汎用の接着剤との接着性に優れた樹脂からなるプライマー層10を設けておくことが好ましい。」
「【0066】
実施例1
下記構成からなる木目調絵柄の化粧シートを作成した。透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1として、ガラス転移点が-32℃、融点が112℃、引っ張り弾性率が55MPa、引っ張り破断伸び率が450%の厚さ100μmのポリブチレンサクシネート樹脂の裏側から予めグラビア印刷により木目絵柄の印刷を行い絵柄インキ層2を設けた後に更に隠蔽層4としてのインキ層を設けた。これに熱可塑性樹脂シート基材3として木目柄の基調色に予め着色されたポリブチレンサクシネート樹脂を主体とする厚さ80μmの無延伸ポリエステルシートに、接着剤層5を介してドライラミネート法により貼合した。さらに、その透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1側にトップコート層9として紫外線吸収剤と光安定剤が添加されたウレタン系コート剤を乾燥硬化後の厚みが9μmとなるようグラビアコーティングにて塗工して化粧シートを作成した。さらにその後工程にて熱圧エンボス加工により表面加飾エンボス7を設け化粧シートを作成した。
【0067】
<実施例1の化粧シートの層構成>
トップコート層9:ウレタン系コート剤
9μm
透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層1:ポリブチレンサクシネート樹脂 100μm
ドライラミネート接着剤層5:ウレタン系2液硬化型
10μm
印刷インキ2,4:ウレタン系2液硬化型
0~2μm
熱可塑性樹脂シート基材3:ポリブチレンサクシネート系ポリエステル樹脂 80μm」
イ 上記実施例1において、熱可塑性樹脂シート基材(80μm)は透明熱可塑性ポリエステル系樹脂層(100μm)よりも薄く、その比は「1.25」である。
(5)周知技術
甲3の【0047】、甲4の【0062】より、以下の事項は周知の技術(以下「周知技術」という。)である。
「化粧シートの裏面にプライマー層を設けて、合板等の基材に貼り付けること。」
2.理由(引用発明に基づく進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明を対比する。
引用発明の「着色フィルム」、「透明フィルム」は、本件発明1の「着色基材層」、「透明樹脂層」に、それぞれ相当する。
引用発明の「着色フィルム」上に「絵柄層、透明フィルム」を積層した「化粧シート」は、本件発明1の「着色基材層と、前記着色基材層の一方の面に積層された透明樹脂層と、を備え」る「化粧シート」に相当する。
引用発明の「着色フィルム」が植物原料由来のポリエチレンを含むことは、本件発明1の「着色基材層」が「バイオマス由来のポリオレフィンを含」むことに相当する。
また、引用発明の「着色フィルム」が着色剤としての顔料を添加し、顔料には酸化チタンが無機顔料として用いられることは、本件発明1の「着色基材層」が「無機物を含む」こと及び「前記無機物は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物のうちのいずれか一つ又は複数を含む」ことに相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明との間の一致点及び相違点は次のとおりである。
《一致点》
無機物を含む着色基材層と、
前記着色基材層の一方の面に積層された透明樹脂層と、を備え、
前記着色基材層はバイオマス由来のポリオレフィンを含み、
前記無機物は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物のうちのいずれか一つ又は複数を含む化粧シート。
《相違点1》
本件発明1の「着色基材層の密度は、0.98g/cm3以上1.05g/cm3以下の範囲内であ」るのに対し、引用発明の着色フィルムの密度は特定されていない点。
《相違点2》
本件発明1の「透明樹脂層の厚さをt1とし、前記着色基材層の厚さをt2とした場合、t2≦t1を満たし、且つt1/t2が1.15以上3以下の範囲内である」のに対し、引用発明の着色フィルムは、層厚が50~100μm、透明フィルムは、層厚が20~100μmであるものの、大小関係及びそれらの比は特定されていない点。
《相違点3》
本件発明1の「透明樹脂層の密度は、0.95g/cm3を超えるとともに0.99g/cm3以下の範囲内であ」るのに対し、引用発明の「透明フィルム」の「密度は、0.94~0.97cm3」である点。
イ 判断
(ア)相違点1について
甲1の着色フィルムAにおいては、ポリエチレン97重量%に対して、白色顔料である酸化チタンを3重量%含有させている(【0036】)。ここで、含有するポリエチレンの密度は0.96g/cm3(【0030】)であり、また、酸化チタンの密度は結晶構造により異なるが(ルチル型4.23g/cm3、アナターゼ型3.78g/cm3)、ルチル型の結晶構造であるとすると、着色フィルムAの密度は1.0581g/cm3(=0.96×0.97+4.23×0.03)となる。
しかし、着色フィルムの密度は、求められる着色の度合いに応じて顔料の量を調節することにより、当業者が適宜なし得るものである。
一方、酸化チタンとしてアナターゼ型の結晶構造を採用したとすると、着色フィルムAの密度は1.0446g/cm3(=0.96×0.97+3.78×0.03)となり、相違点1に係る本件発明1の数値範囲を満たす。
そうすると、引用発明において、酸化チタンの含有割合を調整したり、密度の低いものを採用したりすることにより、本件発明1の「着色基材層の密度は、0.98g/cm3以上1.05g/cm3以下の範囲内」とすることは、当業者が適宜なし得たものである。
そして本件発明1において、「着色基材層の密度は、0.98g/cm3以上1.05g/cm3以下の範囲内」とすることで、その範囲外と比べて格別な効果があるともいえない。
(イ)相違点2について
甲1には、着色フィルムの層厚について「厚みが50μmより薄いと隠蔽性に劣るものとなり、100μmより厚いと製造適性、加工適性に劣るものとなる。」(【0016】)と、透明フィルムの層厚について「厚みが20μmより薄くなると絵柄層を保護する役割を果たせなくなり、また100μmより厚くなると化粧シートの加工性が低下する。」(【0019】)と記載されていることからすれば、引用発明の着色フィルムAと透明フィルムAの厚みは、それぞれ50μm以上100μm以下、20μm以上100μm以下の範囲で、適宜、変更し得るものといえる。
その際、基材と透明樹脂層との厚みの比について、上記1.(2)イ、(3)イ、(3)イに示したように、甲2では「1.43」、甲3では「2.0」、甲4では「1.25」とすることが示されており、これらを参考に本件発明1の「透明樹脂層の厚さをt1とし、前記着色基材層の厚さをt2とした場合、t2≦t1を満たし、且つt1/t2が1.15以上3以下の範囲内」とすることは、当業者が容易に当業者が容易になし得たものである。
(ウ)相違点3について
引用発明の透明フィルムの密度と本件発明1の透明樹脂層の密度は、「0.95g/cm3を超えるとともに0.97g/cm3以下」の範囲内で重複する。そして、引用発明で特定する「0.94~0.97」の範囲内において、擦り傷、ひっかき傷などに対する耐性や加工性を考慮して「0.95g/cm3を超えるとともに0.97g/cm3以下」の範囲内に属する値を選択することに格別の困難は認められない。
ウ 効果について
上記相違点を総合的に勘案しても、本件発明1の奏する作用効果は、引用発明、甲1~甲4に記載された技術事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
エ 特許権者の主張について
特許権者は、令和6年7月1日提出の意見書において、本件発明1は、以下の構成(a)及び(b)を必須要件とする化粧シートであるので、(a)及び(b)を有していない甲1に記載の発明と比較して、「透明樹脂層の剛性を高めることが可能となる」という特有の効果を奏することが可能である旨主張している。
(a)前記透明樹脂層の密度は、0.95g/cm3を超えるとともに0.99g/cm3以下の範囲内である。
(b)前記無機物は、炭酸カルシウム、酸化チタン、カーボンブラック、シリカ、クロム、アンチモン、チタン複合物のうちのいずれか一つ又は複数を含む。
しかしながら、上記(a)については上記イ(ウ)で、上記(b)については上記アでそれそれ説示したとおりであるところ、密度を一定以上に高めれば剛性が上がることは当業者にとって当然に理解されるものであり、本件発明1において格別の又は異質な効果を有しているとは認められない。
よって、特許権者の上記主張は採用できない。
オ 小括
以上より、本件発明1は、引用発明、甲1~甲4に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と引用発明を対比すると、上記一致点で一致し、相違点1~3に加えて、以下の点において相違する。
《相違点4》
本件発明3においては、「透明樹脂層の密度をd1とし、前記着色基材層の密度をd2とした場合、d2>d1を満たす」のに対して、引用発明ではそのような構成を有するか不明な点。
イ 判断
相違点1~3については、(1)イを参照。
相違点4について、(1)イ(ア)で説示したように、甲1には、着色フィルムAの密度が、酸化チタンが全量ルチル型であるとすると「1.0581g/cm3」であり、全量アナターゼ型であるとすると「1.0446g/cm3」であるところ、透明フィルムAの密度は0.95g/cm3であり、いずれにしても着色フィルムの方が密度が大きい、すなわち、d2>d1を満たす化粧シートが記載されている。そうすると、引用発明において、当該甲1に記載された技術的事項を適用し、着色フィルムを透明フィルムよりも密度を大きいもの(d2>d1)とすることは、当業者が容易に想到し得たものである。
ウ 小括
以上より、本件発明3は、引用発明、甲1~甲4に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明4、5について
ア 対比
本件発明4を引用する本件発明5と引用発明を対比すると、上記一致点で一致し、相違点1~4に加えて、以下の点において相違する。
《相違点5》
本件発明5では、「前記透明樹脂層及び前記着色基材層の少なくとも一方の層は、前記バイオマス由来のポリオレフィンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを含」み、「前記透明樹脂層は、前記バイオマス由来のポリオレフィンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、バイオマス由来の低密度ポリエチレンとを、100:0~20:80の範囲内でブレントされたポリエチレンを含む」のに対して、引用発明ではそのような構成を有するか不明な点。
イ 判断
相違点1~4については、(1)イ、(2)イを参照。
相違点5について、甲1の【0016】には、「密度0.94~0.97の高密度ポリエチレン」と記載されていることから、【0030】に記載されている密度0.96g/cm3のポリエチレンAは高密度ポリエチレンである。一方、本件明細書の【0066】に「低密度ポリエチレンは、例えば、密度が0.94以下のポリエチレンである」と記載されていることに鑑みれば、甲1の【0031】に記載されている、密度0.93g/cm3のポリエチレンBは低密度ポリエチレンであるといえる。
また、甲1の【0030】、【0031】に記載されているように、ポリエチレンA及びポリエチレンBは、サトウキビを原料とするエチレンから製造されたものであるから、バイオマス由来のポリオレフィンである。
そして、甲1の透明フィルムAは、高密度ポリエチレンのポリエチレンAと、低密度ポリエチレンのポリエチレンBを、50:49の比で含有したものである(【0038】)。
してみれば、引用発明の透明フィルムについて、当該甲1に記載された技術的事項を適用し、当該相違点5に係る本件発明4の発明特定事項の範囲内において高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンを含有させることは、当業者が容易に想到し得たものである。
ウ 小括
以上より、本件発明4、5は、引用発明、甲1~甲4に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明6について
ア 対比
本件発明6と引用発明を対比すると、上記一致点で一致し、相違点1~5に加えて、以下の点において相違する。
《相違点6》
本件発明6では、「前記着色基材層は、前記バイオマス由来のポリオレフィンとして、バイオマス由来の高密度ポリエチレンと、低密度ポリエチレンとを含み、且つ、バイオマス度が10%以上90%以下の範囲内である」のに対して、引用発明ではそのような構成を有しているか不明な点。
イ 判断
相違点1~5については、(1)イ、(2)イ、(3)イを参照。
相違点6について、引用発明において、植物原料由来のポリエチレンを70重量%以上含む「着色フィルム」も、甲1の透明フィルムAと同様に高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンを含むものとすることは、当業者が容易になし得るものである。
ウ 小括
以上より、本件発明6は、引用発明、甲1~甲4に記載された技術的事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明7について
ア 対比
本件発明7と引用発明を対比すると、上記一致点で一致し、相違点1~6に加えて、以下の点において相違する。
《相違点7》
本件発明7では、「前記着色基材層の他方の面に積層されたプライマー層を備える」のに対して、引用発明ではそのような構成を有しているか不明な点。
イ 判断
相違点1~6については、(1)イ、(2)イ、(3)イ、(4)イを参照。
相違点7について、化粧シートの裏面にプライマー層を設けて、合板等の基材に貼り付けることは、上記1(5)で示したように周知技術である。
そうすると、引用発明に周知技術を適用して、相違点7に係る本件発明7の構成とすることは当業者が容易になし得たものである。
ウ 小括
以上より、本件発明7は、引用発明、甲1~甲4に記載された技術的事項及び周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本件発明8について
ア 対比
本件発明8と引用発明を対比すると、上記一致点で一致し、相違点1~7に加えて、以下の点において相違する。
《相違点8》
本件発明8では、「基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された」「化粧シートと、を備える化粧材。」であるのに対して、引用発明は化粧シートであって化粧材ではなく、仮に化粧材であったとしても基材を有するか不明である点。
イ 判断
相違点1~7については、(1)イ、(2)イ、(3)イ、(4)イ、(5)イを参照。
相違点8について、甲1の【0001】には、木質ボード類、無機系ボード類、金属板等に化粧シートを貼り付けて化粧材とすることが記載されている。
そうすると、引用発明の化粧シートをこれらボードや板等に貼り付けて化粧材とし、相違点8に係る本件発明8の構成とすることは当業者が容易に想到し得たものである。
ウ 小括
以上より、本件発明8は、引用発明、甲1~甲4に記載された技術的事項及び周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許の請求項1、3~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、請求項2に係る特許についての特許異議の申立ては、本件訂正により申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700558