特許異議申立
2025-700693
容器
- 審判番号
- 2025-700693
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-209301
- 登録番号
- 7650949
- 請求日
- 2025年07月04日
- 審決日
- 2026年05月01日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社TBM
- 【権利者代理人】新山 雄一
- 【権利者代理人】濱野 愛
- 【権利者代理人】滝口 尚良
- 【異議申立人】山本 美智子
- 審判長/審判官
- 審判長 田口 傑
- 審判官 一ノ瀬 薫
- 審判官 長谷川 一郎
- 分類
- P1651.121-Y (B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7650949号発明「容器」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7650949号の請求項1~12に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 本件特許の出願から特許掲載公報の発行までの手続の経緯
特許第7650949号(以下「本件特許」という。)について、出願から特許掲載公報の発行までの手続の経緯の概略は、以下のとおりである。
令和5年12月12日 :特許出願(特願2023-207066号を原出願とする分割出願、原出願日 令和5年12月7日)
令和7年 3月14日 :特許権の設定登録
同年 3月25日 :特許掲載公報の発行
2 本件特許異議申立ての手続の経緯
本件特許異議申立ての手続の経緯は、以下のとおりである。
令和7年 7月 4日 :特許異議申立人山本美智子(以下「申立人」という。)による請求項1~12に係る特許に対する本件特許異議の申立て
令和8年 2月 3日付け:取消理由通知書
同年 3月19日 :特許権者による意見書の提出
第2 本件発明
本件特許の請求項1~12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」等といい、総称して「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
容器であって、
前記容器が、開口部を有する容器本体と、前記開口部を閉じる蓋と、からなり、
前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、
前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え、
前記第1の螺合部、及び前記第2の螺合部が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み、
前記無機物質粉末の含有量が、同一組成からなる前記容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、
前記無機物質粉末の含有量が、同一組成からなる前記蓋の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、
前記無機物質粉末が、下記の要件を全て満たす、容器。
(要件1)前記無機物質粉末1g当たりの鉛の含有量が20μg以下である。
(要件2)前記無機物質粉末を100質量%とした場合、アルカリ金属及びマグネシウムの総量が1.0質量%以下である。
【請求項2】
容器であって、
前記容器が、開口部を有する容器本体と、前記開口部を閉じる蓋と、からなり、
前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、
前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え、
前記第1の螺合部、及び前記第2の螺合部が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み、
前記無機物質粉末の含有量が、前記容器全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、
前記容器本体の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、
前記蓋の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、
前記無機物質粉末が、下記の要件を全て満たす、容器。
(要件1)前記無機物質粉末1g当たりの鉛の含有量が20μg以下である。
(要件2)前記無機物質粉末を100質量%とした場合、アルカリ金属及びマグネシウムの総量が1.0質量%以下である。
【請求項3】
前記無機物質粉末が、炭酸カルシウムを含む、請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
前記炭酸カルシウムが、重質炭酸カルシウムを含む、請求項3に記載の容器。
【請求項5】
前記無機物質粉末が、更に下記の要件を満たす、請求項1又は2に記載の容器。
(要件3)前記無機物質粉末1g当たりのヒ素の含有量が3μg以下である。
【請求項6】
前記重質炭酸カルシウムが、JIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が0.7μm以上6.0μm以下の重質炭酸カルシウムを含む、請求項4に記載の容器。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン系樹脂及び/又はポリエチレン系樹脂を含む、請求項1又は2に記載の容器。
【請求項8】
前記ポリエチレン系樹脂が、高密度ポリエチレン及び/又は直鎖状低密度ポリエチレンを含む、請求項7に記載の容器。
【請求項9】
前記ポリプロピレン系樹脂が、ポリプロピレンホモポリマー及び/又はポリプロピレンブロックポリマーを含む、請求項7に記載の容器。
【請求項10】
前記容器が、射出成形、又は圧縮成形によって得られた容器である、請求項1又は2に記載の容器。
【請求項11】
前記容器が、医薬品用容器である、請求項1又は2に記載の容器。
【請求項12】
前記容器が、化粧品用容器である、請求項1又は2に記載の容器。」
第3 取消理由通知の概要
本件請求項1~12に係る特許に対して、当審において令和8年2月3日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は次のとおりである。
取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)(特許異議申立理由と同旨)
本件特許の請求項1~12に係る発明は、下記の甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~12に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものである。
また、本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、公然知られた発明、公然実施をされた発明、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明に基いて、本件特許の原出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由2(甲4に基づく進歩性)(特許異議申立理由と同旨)
本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、公然知られた発明、公然実施をされた発明、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲4に記載された発明に基いて、本件特許の原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
取消理由3(甲5に基づく進歩性)(特許異議申立理由と同旨)
本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、公然知られた発明、公然実施をされた発明、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲5に記載された発明に基いて、本件特許の原出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~12に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
1 引用文献等一覧
以下、申立人が提出した「甲第○号証」は、「甲○」という。
甲1 :株式会社アースクリエイト、「可燃ごみで処理できる樹脂成形品「Stone-Sheet○R(当審注:「〇R」は丸囲みRを意味する。以下同じ。)」を販売展開」、平成25年度ものづくり補助金成果事例集、p.6-7、[online]、[取得日:令和7年6月9日]、取得先
<https://www.maido.or.jp/mono_hojokin/mono_seika_H25/01.pdf」>
甲2 :「★平成25年度ものづくり補助金成果事例一覧(あいうえお順)」のウェブページ、[online]、[取得日:令和7年6月9日]、取得先
<https://www.maido.or.jp/mono_hojokin/mono_seika_H25/>
甲3 :「★平成25年度ものづくり補助金成果事例一覧(あいうえお順)」のウェブページのInternet Archive、[online]、2020年6月2日、[取得日:令和7年6月9日]、取得先
<https://web.archive.org/web/20200602202158/https://www.maido.or.jp/mono_hojokin/mono_seika_H25/>
甲4 :西宮 祥行、「可燃ごみとして扱える炭酸カルシウム配合樹脂製品の実用化と普及」、LCA日本フォーラムニュース、67号、p.3-6、[online]、平成27年3月、[取得日 令和7年6月9日]、取得先
<https://lca-forum.org/topics/pdf/JLCA_NL_67.pdf>
甲5 :「株式会社 アースクリエイト 環境にやさしい新素材開発で地球温暖化防止に貢献」、令和2年度「J-Startup KANSAI企業」に対する成長支援のあり方に関する調査事業報告書、p.7-8、経済産業省近畿経済産業局、令和3年2月、[online]、[取得日 令和7年6月9日]、取得先
<https://www.kansai.meti.go.jp/3-3shinki/jsk_report.pdf>
甲8 :第9版 食品添加物公定書 2018、厚生労働省 消費者庁、[online]、[取得日:令和7年6月10日]、取得先
<https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuten/kouteisho9e.html>、p748、749
甲9 :特開2021-11529号公報
甲10:特開2017-221160号公報
甲11:特開2021-8310号公報
甲12:特開2022-181839号公報
甲14:LCA日本フォーラムの過去の更新情報を表すウェブページ、[online]、2015年4月27日、[取得日:令和7年6月9日]、取得先
<https://lca-forum.org/news/2015.html>
甲15:「令和2年度「J-Startup KANSAI企業」に対する成長支援のあり方に関する調査事業報告書」のウェブページのInternet Archive、[online]、2022年3月3日、[取得日:令和7年6月10日]、取得先
<https://web.archive.org/web/20220303131732/https://www.kansai.meti.go.jp/3-3shinki/jsk_report.pdf>
第4 当審の判断
当審合議体は、以下のとおり、上記取消理由で通知した理由によっては、請求項1~12に係る特許は取り消されるべきものではないと判断する。
1 甲号証について
(1) 甲1
ア 甲1の記載
甲2及び甲3から、少なくとも令和2年6月2日に公知となったことが明らかな、甲1には、以下の記載がある。下線は当審において付した。「・・・」は摘記の省略を示す。以下同様。
「事業内容 焼却時のCO2を大幅削減し「環境と経済」の両立を実現
・・・大阪大学との共同研究により樹脂に無機物の炭酸カルシウム(炭カル)を50%以上含む環境にやさしい樹脂成形品「Stone-Sheet○R」の開発に成功。」(第6ページ左欄第1~7行)
「具体的成果 高度な混練技術でCO2削減容器の開発に成功
現状、プラスチック容器に関して無機物を30%程度含んだ樹脂成形品は存在するが、50%以上含まれた製品開発は進んでいない。無機物含有量が増えることでマスターバッチの成形時流動性が大幅に低下することが主因とされる。この課題解決に「Stone-Sheet○R」の開発技術を応用。原材料の樹脂ペレットに炭カルを50%以上混合した複合材料のマスターバッチを製作し、射出成形や押出成形など多様な抽出成形技術を開発しCO2低減容器の製品化に臨んだ。
西宮社長は、製造への技術課題として「高品質な樹脂材料と炭カルを均一に分散させる混錬および制御技術。さらに成形技術に合わせた樹脂の選定などが重要なカギを握った」と振り返る。大阪大学と同社で小スケールの混錬作業と開発内容を検証。実機レベルの成形用マスターバッチの生産は協力企業に委託した。ポリエチレンおよびポリプロピレンと炭カルをベースにしたマスターバッチの評価分析を経て、容器の試作をスタート。平成28年春、化粧品用樹脂容器として均一に着色され表面に印刷を施した容器が完成した。・・・」(第7ページ左欄第1~23行)
「今後の戦略 食品関連・果樹・農産物の容器・包装資材を展開
・・・また、同社では含有する炭酸カルシウムを不純物の少ない国産材料に限定。可燃ごみとして出せる樹脂製品の特性とともに、食品添加剤に認められるほど安全な材料を使用していることをアピールする。
・・・元来、炭酸カルシウムはpH9の強アルカリ性を有し、樹脂製品に50%含有してもpH8の強アルカリ性は維持する。結果、「Stone-Sheet○R」はかびの発生を抑制し抗菌効果も実証している。」(第7ページ右欄第1~18行)
イ 甲1の第7ページの左上に下記の写真及び写真の下に「CO2発生を抑える各色の容器」が記載されている。
「
[図:0001436199000001.jpg]
」
ウ 上記イから看取できる事項
上記イの写真及び記載から、「CO2発生を抑えられる各色の容器として、均一に着色された容器であって、表面に印刷が施された容器本体と蓋からなり、容器本体は、容器本体の上端開口部の外側に凹凸部を備えること」が看取できる。
エ 甲1に記載された発明
甲1に記載された上記ア~ウの事項から、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1発明>
「ポリエチレンおよびポリプロピレンと炭酸カルシウムをベースにしたCO2発生を抑えられる容器として、均一に着色された化粧品用樹脂容器であって、表面に印刷が施された容器本体と蓋からなり、前記容器が樹脂に無機物の炭酸カルシウムを50%以上含む環境にやさしい樹脂成形品「Stone-Sheet○R」であり、含有する炭酸カルシウムは、不純物の少ない国産材料に限定し、食品添加剤に認められるほど安全な材料である、化粧品用樹脂容器。」
(2)甲4
ア 甲4の記載
甲14から、少なくとも2015年(平成27年)4月27日に公知となったことが明らかな、甲4には、以下の記載がある。
「可燃ごみとして扱える炭酸カルシウム配合樹脂製品の実用化と普及」(第3ページ第1、2行)
「1.はじめに
・・・。Stone-Sheetは安価な無機物である石灰(炭酸カルシウム)を50%以上含む樹脂複合材料であり、・・・。」(第3ページ第4~8行)
「2.Stone-Sheetの開発
・・・高品質の国産Stone-Sheet製品の商品化に向けて、マスターバッチ(樹脂と炭酸カルシウムを混合したペレット、炭酸カルシウム含有率:70~80%)及びStone-Sheetに適した成形技術の開発に取組むことにしました。
・・・弊社では炭酸カルシウムの採掘場や粉体化工場を視察することで、Stone-Sheetに適した炭酸カルシウムを選定しています。樹脂についても、大手樹脂製造メーカーの協力の元、製品に適した汎用樹脂(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン)を用いています。
・・・製品開発に向けて薄手シートにはインフレーション成形、厚手シートには押出成形、ボトルには射出成形を採用し、各々を専門とする成形メーカーと協力して製品開発に取組んできました。・・・。しかし、マスターバッチの改良と成形メーカーと連携した試作を繰り返し実施し、さらに弊社の技術顧問である大阪大学宇山浩教授の助言を得ることでこれらの課題を解決し、今ではStone-Sheetを様々な製品に適用できるところまで技術を高めることに成功しています。」(第3ページ第17行~第4ページ第19行)
「3.Stone-Sheetの特徴
・・・プラスチック含有量が50%未満の製品は・・・可燃ごみとして処分することができます。」(第4ページ第20行~第4ページ第24行)
イ 甲4の第5ページ下方に下記の写真が記載されている。
「
[図:0001436199000002.jpg]
」
ウ 上記イから看取できる事項
上記イの写真から、「Stone-Sheet製品の形状に関して、容器本体と蓋からなる全体が白色の容器、及び、容器本体の上端開口部の外側に凹凸部を備える全体が白色の容器本体」が看取できる。
エ 甲4に記載された発明
甲4に記載された上記ア~ウの事項から、甲4には、以下の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認める。
<甲4発明>
「安価な無機物である石灰(炭酸カルシウム)を50%以上含む樹脂複合材料であるStone-Sheet製品である、容器本体と蓋からなる全体が白色の容器であって、容器に用いる樹脂は汎用樹脂(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン)であり、Stone-Sheet製品である容器。」
(3)甲5
ア 甲5の記載
甲15から、少なくとも令和4年3月3日に公知となったことが明らかな、甲5には、以下の記載がある。
「◆起業に至る経緯
・・・株式会社アースクリエイトを設立した。・・・国産高純度の炭酸カルシウムを主原料とした樹脂複合材料「Stone-Sheet○R」を開発した。」(第7ページ左欄第2~12行)
「◆強み・アピールポイント
・・・「Stone-Sheet」を利用した製品例としては、フィルム・シート資材に加え、容器・包装資材、各種袋類等がある。」(第7ページ右欄第9~24行)
「◆提供サービスにおけるPR事項
・・・原材料の国産炭酸カルシウムは高純度の食品添加剤に準ずるものを利用しており、不純物による製品品質不良を防いでいる。」(第8ページ右欄第15~21行)
イ 甲5の第7ページ左欄下方に下記の写真が記載されている。
「
[図:0001436199000003.jpg]
」
ウ 上記イから看取できる事項
上記イの写真(特に上段の左から2番目、4番目)から、「STONE-SHEET製品の形状として、開口部を有する全体が単色の容器本体であり、容器本体は、容器本体の上端開口部の外側に凹凸部を備えること」が看取できる。
エ 甲5に記載された発明
甲5に記載された上記ア~ウの事項から、甲5には、以下の発明(以下、「甲5発明」という。)が記載されていると認める。
<甲5発明>
「国産高純度の炭酸カルシウムを主原料とした樹脂複合材料「Stone-Sheet○R」を利用した容器であって、開口部を有する全体が単色の容器本体を備えている、容器。」
2 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「表面に印刷が施された容器本体と蓋からな」る「化粧品用樹脂容器」は、本件発明1の「容器であって、前記容器が、開口部を有する容器本体と、前記開口部を閉じる蓋」からなる「容器」に相当する。
甲1発明の「炭酸カルシウム」は、無機物質であり、樹脂に分散させる炭酸カルシウムは通常粉末状の形態である技術常識を踏まえると、本件発明1の「無機物質粉末」に相当する。
甲1発明の「ポリエチレンおよびポリプロピレンと炭酸カルシウムをベースにしたCO2発生を抑えられる容器」は、「樹脂に無機物の炭酸カルシウムを50%以上含む環境にやさしい樹脂成形品「Stone-Sheet○R」であ」り、「ポリエチレンおよびポリプロピレン」、「炭酸カルシウム」がそれぞれ「熱可塑性樹脂」、「無機物質粉末」であるから、本件発明1の「前記第1の螺合部、及び前記第2の螺合部が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み、」と、「容器が、」「無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含」む限りにおいて一致する。
そして、甲1発明の「樹脂に無機物の炭酸カルシウムを50%以上含む」は、本件発明1の「前記無機物質粉末の含有量が、同一組成からなる前記容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、前記無機物質粉末の含有量が、同一組成からなる前記蓋の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、」と、「前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超」である限りの点で相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「容器であって、
前記容器が、開口部を有する容器本体と、前記開口部を閉じる蓋と、からなり、
前記容器が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み、
前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超である、
容器。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1-1>
容器本体と蓋との係合構造に関し、本件発明1は、容器本体の「前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え」と特定するのに対し、甲1発明は、その形状は不明であり、容器本体の「前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え」るか不明である点
<相違点1-2>
容器本体と蓋の成形材料について、本件発明1は、「前記第1の螺合部、及び前記第2の螺合部が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み」と特定するとともに、前記容器本体の組成は、「同一組成からな」り、「前記無機物質粉末の含有量が」「容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、」また、前記蓋の組成は、「同一組成からな」り、「前記無機物質粉末の含有量が」「前記蓋の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であ」ると特定するのに対し、甲1発明は、そのような特定がなされていない点
<相違点1-3>
本件発明1は、「前記無機物質粉末が、下記の要件を全て満たす、
(要件1)前記無機物質粉末1g当たりの鉛の含有量が20μg以下である。
(要件2)前記無機物質粉末を100質量%とした場合、アルカリ金属及びマグネシウムの総量が1.0質量%以下である。」と特定するのに対し、甲1発明の炭酸カルシウム(無機物質粉末)は、「不純物の少ない国産材料に限定し、食品添加剤に認められるほど安全な材料である」点
イ 判断
(ア) 事案に鑑み、まず、相違点1-2について検討する。
a 甲1には、上記1(1)アのとおり、製品コストや容器・包装リサイクル法の観点から、樹脂成形品「Stone-Sheet○R」が50%以上の炭カルを含むこと、並びに、ポリエチレンおよびポリプロピレンと炭カルをベースにしたマスターバッチの評価分析を経て、容器の試作をスタートし、化粧品用樹脂容器として均一に着色された容器を完成したことは記載されている。
しかしながら、甲1には、甲1発明の容器本体の全体が同一組成からなること、及び、蓋の全体が同一組成からなることについて記載はなく、また、甲1発明の容器が一種類のマスターバッチのみを用いて成形されたことが明らかとまではいえない。
そうすると、甲1発明の容器について、容器本体の全体が同一組成からなり、また、蓋の全体が同一組成からなることは、理解できない。
すなわち、甲1には、化粧品用樹脂容器において、炭酸カルシウムの含有量が「同一組成からなる前記容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり」、かつ、「同一組成からなる前記蓋の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であ」ることは記載されていない。
よって、甲1発明は、容器が樹脂に無機物の炭酸カルシウムを50%以上含む樹脂成形品である、化粧品用樹脂容器において、炭酸カルシウムの含有量が「同一組成からなる前記容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり」、かつ、「同一組成からなる前記蓋の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であ」るとはいえず、相違点1-2は、実質的な相違点である。
b 一方、当審において新たに示す特開2016-198998号公報(公開日:2016年12月1日、特許権者が提出した乙第1号証(以下「乙1」という。))、当審において新たに示す特許第6857428号公報(発行日:2021年4月14日、特許権者が提出した乙第2号証(以下「乙2」という。))において、無機充填剤の含有量が50重量%超の樹脂成形品(容器)について、最表面に多量の無機充填剤を含有する場合、その最表面から無機充填剤が脱落すること(乙1の【0002】、【0005】等参照。)や、耐酸性が低いこと(乙2の【0007】、【0008】、【0018】等参照。)等の技術課題があること、この課題解決の観点から、樹脂成形品を積層構造とし、最外層は無機充填剤の含有量が50重量%以下の少ない層あるいは無機充填剤を含まない層とすることが開示されている(乙1の【特許請求の範囲】の【請求項1】、【0009】、【0025】、【0038】等、乙2の【特許請求の範囲】の【請求項1】、【0047】等参照。)。
c 上記bのとおり、甲1発明のように無機充填剤の含有量が50質量%超の樹脂成形品の場合、技術的課題が存在し、樹脂成形品を積層構造とし、最外層は無機充填剤の含有量が50重量%以下の少ない層あるいは無機充填剤を含まない層とすることも知られているところ、甲1には、甲1発明に係る化粧品用樹脂容器において、炭酸カルシウムの含有量が「同一組成からなる前記容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり」、かつ、「同一組成からなる前記蓋の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であ」る構成とする動機付けはなく、また、相違点1-2に係る構成が、本件特許に係る出願前における周知技術であると認めるに足る証拠は提出されていないことを踏まえると、当該構成が周知技術であるともいえない。
したがって、甲1発明において、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。
(イ) 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において概略以下のとおり主張する(申立書第22ページ第20行~第25ページ第8行)。
a 甲1の「具体的成果」の項には、「CO2低減容器」(明らかに、「CO2発生を抑える各色の容器」と同一のもの)を、「ポリエチレンおよびポリプロピレンと炭カルをベースにしたマスターバッチ」を用いて「成形」により製造したことが記載されている。このように製造された「CO2低減容器」の全体(第1の螺合部、第2の螺合部を含む)が炭酸カルシウムと、ポリエチレンおよびポリプロピレンを含むことは自明である。
b 甲1の「具体的成果」の項における「この課題解決に「Stone-Sheet○R」の開発技術を応用。原材料の樹脂ペレットに炭カル50%以上混合した複合材料のマスターバッチを製作し」との記載から、「ポリエチレンおよびポリプロピレンと炭カルをベースにしたマスターバッチ」における「炭カル」の含有量が50質量%以上であることは明らかである。
また、「CO2低減容器」は、「マスターバッチ」から「成形」により製造されたのであるから、「CO2低減容器」の全体が同一組成であり、その組成が「マスターバッチ」の組成(すなわち炭カルの含有量が50%以上である組成)と一致することは明らかである。
よって、「CO2低減容器」の全体(容器本体、及び蓋を含む)は同一組成から成り、「CO2低減容器」のどの部分でも、「炭カル」の含有量は50%質量以上である。また、「炭カル」の含有量は、容器全体に対して、50質量%以上である。
c 相違点1-2の構成について、甲4、甲6は、それぞれ、「Stone-Sheet」の内容を説明する文献であり、「Stone-Sheet」は、甲1発明の製造に用いられる素材である。甲4の「2.Stone-Sheetの開発」の項に、「Stone-Sheet」において「炭酸カルシウム含有率:70~80%」とすることが記載されて、甲6の「今後の普及展開について」の項に、「Stone-Sheet」の元となる「マスターバッチ」の組成を、「(炭酸カルシウム70%、プラスチック30%)」とすることが記載されている。
よって、甲1発明の素材である「Stone-Sheet」における炭酸カルシウム含有率は、「70~80%」又は「70%」であるから、甲1発明において、炭酸カルシウムの含有量は、容器本体及び蓋のいずれに対しても、「70~80%」又は「70%」である。
そのため、相違点1-2の構成は、実質的な相違点ではない。
d 仮に、甲1発明の素材である「Stone-Sheet」と、甲4、甲6に記載の「Stone-Sheet」とが完全には一致しないとしても、「Stone-Sheet」に関する甲4、甲6の記載に基づき、甲1発明の素材である「Stone-Sheet」での炭酸カルシウム含有率を「50.0質量%超80.0質量%以下」とし、相違点1-2の構成に想到することは当業者にとって容易である。
(ウ) 申立人の主張の検討
上記(ア)aのとおりであり、甲1には、甲1発明の容器本体の全体が同一組成からなること、及び、蓋の全体が同一組成からなることについて記載はなく、また、甲1発明の容器が一種類のマスターバッチのみを用いて成形されたことが明らかとまではいえない。
そうすると、上記(ア)b、cのとおりであり、甲4、甲6を参酌しても、甲1発明において、相違点1-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
(2) 本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲1発明とを対比すると、上記(1)アと同様に対比される。
また、甲1発明の「樹脂に無機物の炭酸カルシウムを50%以上含む」は、本件発明2の「前記無機物質粉末の含有量が、前記容器全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、前記容器本体の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、前記蓋の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、」と、「前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超」である限りで相当する。
そうすると、本件発明2と甲1発明とは、
「容器であって、
前記容器が、開口部を有する容器本体と、前記開口部を閉じる蓋と、からなり、
前記容器が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み、
前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超である、
容器。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1-4>
容器本体と蓋との係合構造に関し、本件発明2は、容器本体の「前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え」と特定するのに対し、甲1発明は、容器本体と蓋との係合構造は不明であり、容器本体の「前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え」るか不明である点
<相違点1-5>
容器本体と蓋の成形材料について、本件発明2は、「前記第1の螺合部、及び前記第2の螺合部が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み」と特定するとともに、「前記無機物質粉末の含有量が」「容器全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、」また、「前記容器本体の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、前記蓋の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であ」ると特定するのに対し、甲1発明は、そのような特定がなされていない点
<相違点1-6>
本件発明2は、「前記無機物質粉末が、下記の要件を全て満たす、
(要件1)前記無機物質粉末1g当たりの鉛の含有量が20μg以下である。
(要件2)前記無機物質粉末を100質量%とした場合、アルカリ金属及びマグネシウムの総量が1.0質量%以下である。」と特定するのに対し、甲1発明の炭酸カルシウム(無機物質粉末)は、「不純物の少ない国産材料に限定し、食品添加剤に認められるほど安全な材料である」点
イ 判断
(ア) 事案に鑑み、相違点1-5について検討する。
a 甲1には、1(1)アのとおり、製品コストや容器・包装リサイクル法の観点から、樹脂成形品「Stone-Sheet○R」が50%以上の炭カルを含むこと、並びに、ポリエチレンおよびポリプロピレンと炭カルをベースにしたマスターバッチの評価分析を経て、容器の試作をスタートし、化粧品用樹脂容器として均一に着色された容器を完成したことは記載されている。
しかしながら、甲1には、甲1発明の容器に螺合部が存在する場合に、容器本体の螺合部や、蓋の螺合部の樹脂組成についての開示はなく、また、甲1発明の容器が一種類のマスターバッチのみを用いて成形されたことが明らかとまではいえないから、容器本体の螺合部や蓋の螺合部における炭酸カルシウムの含有量は特定できない。
よって、甲1発明は、樹脂に無機物の炭酸カルシウムを50%以上含む樹脂成形品である、化粧品用樹脂容器において、容器本体及び蓋に螺合部が存在する場合に、「前記容器本体の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、前記蓋の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であ」るとはいえず、相違点1-5は、実質的な相違点である。
b 上記(1)イ(ア)bに示したとおり、甲1発明のように無機充填剤の含有量が50質量%超の樹脂成形品の場合、技術的課題が存在し、容器本体及び蓋の表面に形成されることとなる螺合部の無機充填剤の含有量を50重量%より少なくすることが選好されることも知られているところ、甲1には、化粧品用樹脂容器において、「前記容器本体の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、前記蓋の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であ」る構成とする動機付けはなく、また、当該構成が周知技術であるともいえない。
さらに、相違点1-5に係る構成は、本件特許に係る出願前における周知技術であると認めるに足る証拠は提出されていない。
したがって、甲1発明において、相違点1-5に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。
(イ) 申立人の主張
申立人は、申立書において概略以下のとおり主張する(申立書第26ページ第26行~第27ページ第11行)。
a 相違点1-5の構成について、甲4、甲6には、甲1発明の素材である「Stone-Sheet」における炭酸カルシウム含有率は、「70~80%」又は「70%」であることが記載されている。この記載から明らかなように、甲1発明において、炭酸カルシウムの含有量は、容器全体、容器本体の螺合部、及び蓋の螺合部のいずれに対しても、「70~80%」又は「70%」である。そのため、相違点1-5の構成は、実質的な相違点ではない。
b 仮に、甲1発明の素材である「Stone-Sheet」と、甲4、甲6に記載の「Stone-Sheet」とが完全には一致しないとしても、「Stone-Sheet」に関する甲4、甲6の記載に基づき、甲1発明の素材である「Stone-Sheet」での炭酸カルシウム含有率を「50.0質量%超80.0質量%以下」とし、相違点1-5の構成に想到することは当業者にとって容易である。
(ウ) 申立人の主張の検討
上記(ア)aのとおりであり、甲1には、甲1発明の容器本体の螺合部及び蓋の螺合部における、炭酸カルシウムの含有量を特定する記載はなく、また、甲1発明の容器が一種類のマスターバッチのみを用いて成形されたことが明らかとまではいえない。
そうすると、上記(ア)bのとおりであり、甲4、甲6を参酌しても、相違点1-5に係る本件発明2の構成とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
(3) 本件発明3~12について
本件発明3~12は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものであるから、上記(1)イ及び上記(2)イと同様の理由により、甲1発明ではなく、また、甲1発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
(4) 取消理由1についてのまとめ
取消理由1からは請求項1~12に係る特許が特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえないから、取消理由1によっては、請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。
3 取消理由2(甲4に基づく進歩性)について
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「Stone-Sheet製品である、容器本体と蓋からなる全体が白色の容器」は、本件発明1の「容器であって、前記容器が、開口部を有する容器本体と、前記開口部を閉じる蓋」からなる容器に相当する。
甲4発明の「汎用樹脂(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン)」は、本件発明1の「熱可塑性樹脂」に相当する。
甲4発明の「石灰(炭酸カルシウム)」及び「炭酸カルシウム」は、無機物質であり、無機物質を樹脂に混合する際は通常粉末状の形態である技術常識を踏まえると、本件発明1の「無機物質粉末」に相当する。
そして、甲4発明の「安価な無機物である石灰(炭酸カルシウム)を50%以上含む樹脂複合材料であるStone-Sheet製品である」は、本件発明1の「前記無機物質粉末の含有量が、同一組成からなる前記容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、前記無機物質粉末の含有量が、同一組成からなる前記蓋の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、」と、「前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超」である限りで相当する。
そうすると、本件発明1と甲4発明とは、
「容器であって、
前記容器が、開口部を有する容器本体と、前記開口部を閉じる蓋と、からなり、
容器が、無機物質粉末及び熱可塑性樹脂を含み、
前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超である、
容器。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点4-1>
容器本体と蓋との係合構造に関し、本件発明1は、容器本体の「前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え」と特定するのに対し、甲4発明は、「容器本体は、容器本体の上端開口部の外側に凹凸部を備え」るものの、その他の形状は不明である点
<相違点4-2>
容器本体と蓋の成形材料について、本件発明1は、「前記第1の螺合部、及び前記第2の螺合部が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み」と特定するとともに、前記容器本体の組成は、「同一組成からな」り、「前記無機物質粉末の含有量が」「容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、」また、前記蓋の組成は、「同一組成からな」り、「前記無機物質粉末の含有量が」「前記蓋の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であ」ると特定するのに対し、甲4発明は、そのような特定がなされていない点
<相違点4-3>
本件発明1は、「前記無機物質粉末が、下記の要件を全て満たす、
(要件1)前記無機物質粉末1g当たりの鉛の含有量が20μg以下である。
(要件2)前記無機物質粉末を100質量%とした場合、アルカリ金属及びマグネシウムの総量が1.0質量%以下である。」と特定するのに対し、甲4発明は、このような特定はない点
イ 判断
(ア) 事案に鑑み、まず、相違点4-2について検討する。
a 甲4には、上記1(2)アのとおり、Stone-Sheetは安価な無機物である石灰(炭酸カルシウム)を50%以上含む樹脂複合材料であることは記載されている。
しかしながら、甲4には、甲4発明の容器本体の全体が同一組成からなること、及び、蓋の全体が同一組成からなることについて記載はない。
そうすると、甲4発明の容器について、容器本体の全体が同一組成からなり、また、蓋の全体が同一組成からなることは、理解できない。
すなわち、甲4には、容器において、石灰(炭酸カルシウム)の含有量が「同一組成からなる前記容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり」、かつ、「同一組成からなる前記蓋の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であ」ることは記載されていない。
よって、甲4発明は、石灰(炭酸カルシウム)を50%以上含む樹脂複合材料である容器において、石灰(炭酸カルシウム)の含有量が「同一組成からなる前記容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり」、かつ、「同一組成からなる前記蓋の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であ」るとはいえず、相違点4-2は、実質的な相違点である。
b 上記2(1)イ(ア)bのとおり、甲4発明のように無機充填剤の含有量が50質量%超の樹脂成形品の場合、技術的課題が存在し、樹脂成形品を積層構造とし、最外層は無機充填剤の含有量が50重量%以下の少ない層あるいは無機充填剤を含まない層とすることも知られているところ、甲4には、容器において、石灰(炭酸カルシウム)の含有量が「同一組成からなる前記容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり」、かつ、「同一組成からなる前記蓋の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であ」る構成とする動機付けはなく、また、当該構成が周知技術であるともいえない。
加えて、相違点4-2に係る構成は、本件特許に係る出願前における周知技術であると認めるに足る証拠は提出されていない。
したがって、甲4発明において、相違点4-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。
(イ) 申立人の主張
申立人は、申立書において概略以下のとおり主張する(申立書第31ページ第21行~第34ページ第14行)。
a 甲4の「1.はじめに」の項に、「Stone-Sheetは安価な無機物である石灰(炭酸カルシウム)を50%以上含む樹脂複合材料であり」との記載がある。
また、「2.Stone-Sheetの開発」の項に、「マスターバッチ(樹脂と炭酸カルシウムとを混合したペレット、炭酸カルシウム含有率:70~80%)」との記載、及び、「樹脂についても、大手樹脂製造メーカーの協力の元、製品に適した汎用樹脂(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン)を用いています。」との記載がある。
よって、「Stone-Sheet」は、70~80%の炭酸カルシウムと、汎用樹脂(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン)とからなる樹脂複合材料である。
b 甲4の「2.Stone-Sheetの開発」の項に、「製品開発に向けて薄手シートにはインフレーション成形、厚手シートには押出成形、ボトルには射出成形を採用し、各々を専門とする成形メーカーと協力して製品開発に取組んできました。(中略)。しかし、マスターバッチの改良と成形メーカーと連携した試作を繰り返し実施し、さらに弊社の技術顧問である大阪大学宇山浩教授の助言を得ることでこれらの課題を解決し、今ではStone-Sheetを様々な製品に適用できるところまで技術を高めることに成功しています。」との記載がある。
この記載から、「図2 Stone-Sheet製品」に示された製品が、「Stone-Sheet」を用いて「成形」により製造されたことは自明である。このように製造された「Stone-Sheet製品」の全体(容器本体、及び蓋を含む)が炭酸カルシウムと、汎用樹脂(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン)とを含むことは自明である。
c 前記aのとおり、「Stone-Sheet」は、70~80%の炭酸カルシウムと、汎用樹脂(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン)とからなる樹脂複合材料であり、また、前記bのとおり、「Stone-Sheet製品」は「Stone-Sheet」を用いて「成形」により製造されたものであるから、「Stone-Sheet製品」の全体(容器本体、及び蓋を含む)は同一組成から成り、「Stone-Sheet製品」のどの部分でも、炭酸カルシウムの含有量は70~80%であり、「Stone-Sheet製品」において、炭酸カルシウムの含有量は、容器全体に対して、70~80%である。
d 相違点4-2の構成について、容器本体と蓋の係合部に螺合部を備える構成は周知・慣用技術であり、甲4発明に螺合部の構成を適用したときに必然的に生じる構成に過ぎない。
(ウ) 申立人の主張の検討
上記(ア)aのとおりであり、甲4には、甲4発明の容器本体の全体が同一組成からなること、及び、蓋の全体が同一組成からなることについて記載はなく、また、甲4発明の容器が一種類のマスターバッチのみを用いて成形されたことが明らかとまではいえない。
そうすると、上記(ア)b、cのとおりであり、甲4発明において相違点4-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
(2) 本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲4発明とを対比すると、上記(1)アと同様に対比される。
また、甲4発明の「安価な無機物である石灰(炭酸カルシウム)を50%以上含む樹脂複合材料であるStone-Sheet製品である」は、本件発明2の「前記無機物質粉末の含有量が、前記容器全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、前記容器本体の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、前記蓋の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、」と、「前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超」である限りで相当する。
そうすると、本件発明2と甲4発明とは、
「容器であって、
前記容器が、開口部を有する容器本体と、前記開口部を閉じる蓋と、からなり、
無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み、
前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超である
容器。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点4-4>
容器本体と蓋との係合構造に関し、本件発明2は、容器本体の「前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え」と特定するのに対し、甲4発明は、容器本体と蓋との係合構造は不明である点
<相違点4-5>
容器本体と蓋の構成材料について、本件発明2は、「前記第1の螺合部、及び前記第2の螺合部が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み」と特定するとともに、「前記無機物質粉末の含有量が」「容器全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、」また、「前記容器本体の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、前記蓋の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であ」ると特定するのに対し、甲4発明は、そのような特定がなされていない点
<相違点4-6>
本件発明2は、「前記無機物質粉末が、下記の要件を全て満たす、
(要件1)前記無機物質粉末1g当たりの鉛の含有量が20μg以下である。
(要件2)前記無機物質粉末を100質量%とした場合、アルカリ金属及びマグネシウムの総量が1.0質量%以下である。」と特定するのに対し、甲4発明は、このような特定はない点
イ 判断
(ア) 事案に鑑み、相違点4-5について検討する。
a 甲4には、上記1(2)アのとおり、Stone-Sheetは安価な無機物である石灰(炭酸カルシウム)を50%以上含む樹脂複合材料であることは記載されている。
しかしながら、甲4には、甲4発明の容器に螺合部が存在する場合に、容器本体の螺合部や蓋の螺合部の樹脂組成物についての記載はない。
そうすると、甲4発明の容器について、「前記第1の螺合部、及び前記第2の螺合部」に相当する螺合部が存在する場合に、当該螺合部が「無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含」み、無機物質粉末(炭酸カルシウム)の含有量が「容器全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、」「前記容器本体の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、前記蓋の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であ」るとは、理解できない。
よって、甲4発明は、容器において、容器本体及び蓋に螺合部が存在する場合に、「前記容器本体の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、前記蓋の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であ」るとはいえず、相違点4-5は、実質的な相違点である。
b 上記2(1)イ(ア)bのとおり、甲4発明のように無機充填剤の含有量が50質量%超の樹脂成形品の場合、技術的課題が存在し、容器本体及び蓋の表面に形成されることとなる螺合部の無機充填剤の含有量を50重量%より少なくすることが選好されることも知られているところ、甲4には、容器について、「前記容器本体の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、前記蓋の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であ」る構成とする動機付けはなく、また、当該構成が周知技術であるともいえない。
さらに、相違点4-5に係る構成は、本件特許に係る出願前における周知技術であると認めるに足る証拠は提出されていない。
したがって、甲4発明において、相違点4-5に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。
(イ) 申立人の主張
申立人は、申立書において概略以下のとおり主張する(申立書第35ページ第12行~第36ページ第3行)。
a 相違点4-5の構成について、甲4発明では、容器本体及び蓋は同一の組成からなり、炭酸カルシウム、及び、汎用樹脂(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン)を含むから、甲4発明に容器本体及び蓋に螺合部を備える構成を適用すると、容器本体の一部である「第1の螺合部」、及び、蓋の一部である「第2の螺合部」も、必然的に、炭酸カルシウム、及び、汎用樹脂(高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン)を含むことになる。
よって、相違点4-5は、容器本体と蓋の係合部に螺合部を備える構成は周知・慣用技術であり、甲4発明に周知の螺合部の構成を適用したときに必然的に生じる構成に過ぎない。
(ウ) 申立人の主張の検討
上記(ア)aのとおりであり、甲4には、甲4発明の容器本体の螺合部及び蓋の螺合部における、石灰(炭酸カルシウム)の含有量を特定する記載はなく、また、甲4発明の容器が一種類のマスターバッチのみを用いて成形されたことが明らかとまではいえない。
そうすると、上記(ア)bのとおりであり、甲4発明において、相違点4-5に係る本件発明2の構成とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲4発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
(3) 本件発明3~12について
本件発明3~12は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものであるから、上記(1)イ及び上記(2)イと同様の理由により、甲4発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
(4) 取消理由2についてのまとめ
取消理由2からは請求項1~12に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえないから、取消理由2によっては、請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。
4 取消理由3(甲5に基づく進歩性)について
(1) 本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲5発明とを対比する。
甲5発明の「Stone-Sheet○R」を利用した容器」は、本件発明1の「容器であって、」「前記容器が、開口部を有する容器本体」に相当する。
甲5発明の「容器であって、開口部を有する全体が単色の容器本体は、容器本体の上端開口部の外側に凹凸部を備えている、容器」は、本件発明1の「容器が、開口部を有する容器本体と、前記開口部を閉じる蓋と、からなり」と、「容器が、開口部を有する容器本体を有する点に限り一致する。
甲5発明の「樹脂複合材料」は、本件発明1の「熱可塑性樹脂」と樹脂の限りにおいて一致する。
甲5発明の「炭酸カルシウム」は、無機物質であり、樹脂に混合する炭酸カルシウムは通常粉末状の形態である技術常識を踏まえると、本件発明1の「無機物質粉末」に相当する。
甲5発明の「国産高純度の炭酸カルシウムを主原料とした樹脂複合材料「Stone-Sheet○R」を利用した容器であって、開口部を有する全体が単色の容器本体は、容器本体の上端開口部の外側に凹凸部を備えている」は、本件発明1の「前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え、前記第1の螺合部、及び前記第2の螺合部が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み」と、容器が、無機物質粉末、及び樹脂を含む限りにおいて一致する。
そうすると、本件発明1と甲5発明とは、
「容器であって、
前記容器が、無機物質粉末、及び樹脂を含み、開口部を有する容器本体を有する、
容器。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点5-1>
容器本体と蓋との係合構造に関し、本件発明1は、容器本体の「前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え」と特定するのに対し、甲5発明は、「国産高純度の炭酸カルシウムを主原料とした樹脂複合材料「Stone-Sheet○R」を利用した容器であって、開口部を有する全体が単色の容器本体は、容器本体の上端開口部の外側に凹凸部を備えている」ものの、その他の形状は不明である点
<相違点5-2>
容器本体と蓋の構成材料に関し、本件発明1は、「前記第1の螺合部、及び前記第2の螺合部が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み」と特定するとともに、前記容器本体の組成は、「同一組成からな」り、「前記無機物質粉末の含有量が」「容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、」また、前記蓋の組成は、「同一組成からな」り、「前記無機物質粉末の含有量が」「前記蓋の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であ」ると特定するのに対し、甲5発明は、そのような特定がなされていない点
<相違点5-3>
本件発明1は、「前記無機物質粉末が、下記の要件を全て満たす、
(要件1)前記無機物質粉末1g当たりの鉛の含有量が20μg以下である。
(要件2)前記無機物質粉末を100質量%とした場合、アルカリ金属及びマグネシウムの総量が1.0質量%以下である。」と特定するのに対し、甲5発明は、このような特定はない点
イ 判断
(ア) 事案に鑑み、まず、相違点5-2について検討する。
a 甲5には、上記1(3)アのとおり、「国産高純度の炭酸カルシウムを主原料とした樹脂複合材料「Stone-Sheet○R」を利用した容器」は記載されている。
しかしながら、甲5には、甲5発明の容器本体の全体が同一組成からなることについて記載はない。また、甲5発明において「蓋」は特定されておらず、「蓋」が存在する場合に、蓋の全体が同一組成からなることについても記載はない。
そうすると、甲5発明の容器について、容器本体の全体が同一組成からなり、また、蓋の全体が同一組成からなることは、理解できない。
すなわち、甲5には、容器において、炭酸カルシウムの含有量が「同一組成からなる前記容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり」、かつ、「同一組成からなる前記蓋の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であ」ることは記載されていない。
よって、甲5発明は、「国産高純度の炭酸カルシウムを主原料とした樹脂複合材料「Stone-Sheet○R」を利用した容器」において、炭酸カルシウムの含有量が「同一組成からなる前記容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり」、かつ、「同一組成からなる前記蓋の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であ」るとはいえず、相違点5-2は、実質的な相違点である。
b 上記2(1)イ(ア)bのとおり、甲5発明のように無機充填剤の含有量が50質量%超の樹脂成形品の場合、技術的課題が存在し、樹脂成形品を積層構造とし、最外層は無機充填剤の含有量が50重量%以下の少ない層あるいは無機充填剤を含まない層とすることも知られているところ、甲5には、容器において、炭酸カルシウムの含有量が「同一組成からなる前記容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり」、かつ、「同一組成からなる前記蓋の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であ」る構成とする動機付けはなく、また、当該構成が周知技術であるともいえない。
さらに、相違点5-2に係る構成は、本件特許に係る出願前における周知技術であると認めるに足る証拠は提出されていない。
したがって、甲5発明において、相違点5-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。
(イ) 申立人の主張
申立人は、申立書において概略以下のとおり主張する(申立書第40ページ第10行~第43ページ第19行)。
a 甲5の第7ページ左下の写真に、「LCA日本フォーラム表彰受賞製品」が示されている。そのうちの上段で左から1番目の写真は、容器本体と蓋とからなる容器を示している。甲5記載の容器において、容器本体が開口部を有し、蓋が開口部を閉じることは自明である。
なお、甲5の上段での左から2番目、4番目の写真は、それぞれ、容器を構成する容器本体を示している。これらの容器本体は、開口部を備えている。開口部は、ネジ山が形成された第1の螺合部を備えている。容器本体と組み合わせて蓋が使用されること、その蓋が第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備えることは自明である。
よって、甲5には、開口部を有する容器本体と、その開口部を閉じる蓋と、からなる甲5記載の容器が記載されている。
b 甲5の「起業に至る経緯」の項に、「国産高純度の炭酸カルシウムを主原料とした樹脂複合材料「Stone-Sheet○R」」を開発した。」との記載がある(第7ページ左欄第10~12行)。また、「強味・アピールポイント」の項に、「「Stone-Sheet」を利用した製品例としては、フィルム・シート資材に加え、容器・包装資材、各種袋類等がある。」との記載がある(第同ページ右欄第22~24行)。
c 甲5は、「Stone-Sheet」を主題とする文献であり、また、「「Stone-Sheet」を利用した製品例としては、フィルム・シート資材に加え、容器・包装資材、各種袋類等がある。」との記載があるから、甲5記載の容器が、「Stone-Sheet」を利用した製品であることは自明である。
よって、甲5記載の容器の全体は、「Stone-Sheet」と同一組成からなり、「国産高純度の炭酸カルシウムを主原料とした樹脂複合材料」からなる。
d 甲5発明では、容器本体及び蓋は同一の組成からなり、炭酸カルシウムを主原料とした樹脂複合材料からなる。甲5発明に周知・慣用技術である「前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、 前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え」る構成を適用すると、容器本体の一部である「第1の螺合部」、及び、蓋の一部である「第2の螺合部」も、必然的に、炭酸カルシウムを主原料とした樹脂複合材料からなるようになり、炭酸カルシウムと樹脂とを含む。
よって、「前記第1の螺合部、及び前記第2の螺合部が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含」む構成は、「前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え」る構成を甲5発明に適用したときに必然的に生じる構成に過ぎない。
e 甲4、甲6には、甲5発明の素材である「Stone-Sheet」における炭酸カルシウム含有率は、「70~80%」又は「70%」であることが記載されている。この記載から明らかなように、甲5発明において、炭酸カルシウムの含有量は、容器本体及び蓋のいずれに対しても、「70~80%」又は「70%」である。f 仮に、甲5発明の素材である「Stone-Sheet」と、甲4、甲6に記載の「Stone-Sheet」とが完全には一致しないとしても、「Stone-Sheet」に関する甲4、甲6の記載に基づき、甲5発明の素材である「Stone-Sheet」での炭酸カルシウム含有率を「50.0質量%超80.0質量%以下」とし、「前記無機物質粉末の含有量が、同一組成からなる前記容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下」で、「前記無機物質粉末の含有量が、同一組成からなる前記蓋の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下」である構成に想到することは当業者にとって容易である。
(ウ) 申立人の主張の検討
上記(ア)aのとおりであり、甲5発明において相違点5-2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲5発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
(2) 本件発明2について
ア 対比
本件発明2と甲5発明とを対比すると、上記(1)アと同様に対比される。
そうすると、本件発明2と甲5発明とは、
「容器であって、
前記容器が、無機物質粉末、及び樹脂を含み、開口部を有する容器本体を有する、
容器。」
である点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点5-4>
容器本体と蓋との係合構造に関し、本件発明2は、容器本体の「前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え」と特定するのに対し、甲5発明は、「開口部を有する全体が単色の容器本体は、容器本体の上端開口部の外側に凹凸部を備えている」ものの、その他の形状は不明である点
<相違点5-5>
容器本体と蓋の構成材料について、本件発明2は、「前記第1の螺合部、及び前記第2の螺合部が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み」と特定するとともに、「前記無機物質粉末の含有量が」「容器全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、」また、「前記容器本体の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、前記蓋の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であ」ると特定するのに対し、甲5発明は、そのような特定がなされていない点
<相違点5-6>
本件発明2は、「前記無機物質粉末が、下記の要件を全て満たす、
(要件1)前記無機物質粉末1g当たりの鉛の含有量が20μg以下である。
(要件2)前記無機物質粉末を100質量%とした場合、アルカリ金属及びマグネシウムの総量が1.0質量%以下である。」と特定するのに対し、甲5発明は、このような特定はない点
イ 判断
(ア) 事案に鑑み、相違点5-5について検討する。
a 甲5には、上記1(3)アのとおり、「国産高純度の炭酸カルシウムを主原料とした樹脂複合材料「Stone-Sheet○R」を利用した容器」は記載されている。
しかしながら、甲5には、甲5発明の「前記無機物質粉末の含有量が」「容器全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であ」ることについて記載はない。また、甲5発明において「蓋」は特定されておらず、「蓋」が存在する場合に、容器本体の螺合部や蓋の螺合部における炭酸カルシウムの含有量についても記載はない。
そうすると、甲5発明の容器について、「前記第1の螺合部、及び前記第2の螺合部」に相当する螺合部が存在する場合に、当該螺合部が「無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含」み、炭酸カルシウムの含有量が「容器全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下であり、」「前記容器本体の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、前記蓋の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であ」るとは、理解できない。
よって、甲5発明は、容器において、容器本体及び蓋に螺合部が存在する場合に、「前記容器本体の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、前記蓋の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であ」るとはいえず、相違点5-5は、実質的な相違点である。
b 上記2(1)イ(ア)bのとおり、甲5発明のように無機充填剤の含有量が50質量%超の樹脂成形品の場合、技術的課題が存在し、容器本体及び蓋の表面に形成されることとなる螺合部の無機充填剤の含有量を50重量%より少なくすることが選好されることも知られているところ、甲5には、容器について、「前記容器本体の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、前記蓋の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であ」る構成とする動機付けはなく、また、当該構成が周知技術であるともいえない。
さらに、相違点5-5に係る構成は、本件特許に係る出願前における周知技術であると認めるに足る証拠は提出されていない。
したがって、甲5発明において、相違点5-5に係る本件発明2の構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものではない。
(イ) 申立人の主張
申立人は、申立書において概略以下のとおり主張する(申立書第44ページ第16行~第46ページ第5行)。
a 相違点5-5の構成について、甲5発明では、容器本体及び蓋は同一の組成からなり、炭酸カルシウムを主原料とした樹脂複合材料からなる。甲5発明に周知・慣用技術である「前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、 前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え」る構成を適用すると、容器本体の一部である「第1の螺合部」、及び、蓋の一部である「第2の螺合部」も、必然的に、炭酸カルシウムを主原料とした樹脂複合材料からなるようになり、炭酸カルシウムと樹脂とを含む。
よって、「前記第1の螺合部、及び前記第2の螺合部が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含」む構成は、「前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、 前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え」る構成を甲5発明に適用したときに必然的に生じる構成に過ぎない。
b 甲4、甲6には、甲5発明の素材である「Stone-Sheet」における炭酸カルシウム含有率は、「70~80%」又は「70%」であることが記載されている。この記載から明らかなように、甲5発明において、炭酸カルシウムの含有量は、容器全体に対しても、「70~80%」又は「70%」である。
c 仮に、甲5発明の素材である「Stone-Sheet」と、甲4、甲6に記載の「Stone-Sheet」とが完全には一致しないとしても、「Stone-Sheet」に関する甲4、甲6の記載に基づき、甲5発明の素材である「Stone-Sheet」での炭酸カルシウム含有率を「50.0質量%超80.0質量%以下」とし、「前記無機物質粉末の含有量が、前記容器本体の全体に対して、50.0質量%超80.0質量%以下」である構成に想到することは当業者にとって容易である。
d 甲5発明は「Stone-Sheet」からなるから、甲5発明の容器本体及び蓋は同一の組成からなり、その組成は「Stone-Sheet」の組成と一致する。
甲5発明に「前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、 前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え」る構成を適用し、甲5発明が「容器本体の螺合部」、及び、「蓋の螺合部」を備えるようになった場合、容器本体の一部である「容器本体の螺合部」、及び、蓋の一部である「蓋の螺合部」の組成は、「Stone-Sheet」の組成と一致し、炭酸カルシウム含有率は、「70~80%」又は「70%」となって、「前記容器本体の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、前記蓋の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であ」る構成に該当する。
よって、「前記容器本体の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であり、前記蓋の螺合部において、前記無機物質粉末の含有量が、50.0質量%超であ」る構成は、「前記開口部が、ネジ山が形成された第1の螺合部を備え、 前記蓋が、前記第1の螺合部と螺合される第2の螺合部を備え」る構成を甲5発明に適用したときに必然的に生じる構成に過ぎない。
(ウ) 申立人の主張の検討
上記(ア)aのとおりであり、甲5には、甲5発明の容器本体の螺合部及び蓋の螺合部における、炭酸カルシウムの含有量を特定する記載はなく、また、甲5発明の容器が一種類のマスターバッチのみを用いて成形されたことが明らかとまではいえない。
そうすると、上記(ア)bのとおりであり、甲5発明において、相違点5-5に係る本件発明2の構成とすることは、当業者にとって容易であるとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
ウ 小括
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明2は、甲5発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
(3) 本件発明3~12について
本件発明3~12は、本件発明1又は本件発明2の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものであるから、上記(1)イ及び上記(2)イと同様の理由により、甲5発明に基いて当業者が容易に想到し得るものではない。
(4) 取消理由3についてのまとめ
取消理由3からは請求項1~12に係る特許が特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえないから、取消理由3によっては、請求項1~12に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
したがって、請求項1~12に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-700693