2021-700810
散薬調剤業務支援システム
- 審判番号
- 2021-700810
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-139625外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6833184
- 請求日
- 2021年08月19日
- 審決日
- 2022年03月01日
- 公報発行日
- 2022年06月24日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.537-YAA(G16H) / P1651.55 -YAA(G16H) / P1651.536-YAA(G16H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 13項目
第1 手続の経緯
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特許第6833184号の請求項1~7に係る特許についての出願(特願2020-139625号)は、平成27年1月14日になされた特許出願(特願2015-5370号)の一部を同31年4月23日に新たな特許出願としたもの(特願2019-82015号)の一部をさらに令和2年8月20日に新たな特許出願としたものであり、令和3年2月5日にその特許権の設定登録がされ、同月24日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年8月19日に特許異議申立人中谷 浩美(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
当審より、同年12月2日に職権で取消理由を通知したのに対し、特許権者より令和4年2月2日に訂正請求書が提出され、訂正請求がなされた。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正請求による訂正の内容
(1)訂正事項1
請求項2を削除する。
(2)訂正事項2
請求項3の「請求項1又は2に」を「請求項1に」に訂正する。
(3)訂正事項3
請求項5を削除する。
(4)訂正事項4
請求項6の「請求項1乃至5に」を「請求項1、3又は4に」に訂正する。
(5)訂正事項5
請求項7の「請求項1乃至6に」を「請求項1、3、4又は6に」に訂正する。
なお、これらの訂正は、一群の請求項〔2、3、5~7〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1及び訂正事項3は請求項を削除するものであり、訂正事項2、訂正事項4及び訂正事項5は、削除された請求項を被引用請求項から除くものであることから、訂正事項1~5は、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当するとともに、新規事項を追加するものでなく、特許請求の範囲を実質的に拡張ないし変更するものでもない。
3 小括
以上のとおりであるから、訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6号の規定に適合する。
訂正前のすべての請求項1~7について特許異議の申立てがされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
したがって、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔2、3、5~7〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
特許第6833184号の請求項1、3~4、6~7の特許に係る発明は、それぞれ、訂正請求による訂正後の特許請求の範囲の請求項1、3~4、6~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】処方に関するデータであって患者に提供されるべき散薬の情報を含む処方データに基づいて複数台の調剤機器を制御する制御装置と、複数台の調剤機器に含まれる少なくとも自動散薬分包装置と、複数の散薬を収容する薬剤容器とを備え、前記自動散薬分包装置は、薬剤容器から排出された散薬を配分する分配ユニットと、薬剤包装装置とが内部に設けられており、前記自動散薬分包装置を用いて、処方データに基づき、薬剤容器から分配ユニットに散薬を排出する動作と、排出する散薬を計量する動作と、分配ユニットに排出された散薬を所定の数に分割する動作と、薬剤包装装置によって分割した散薬を個別に包装する分包動作とを含む完全自動分包動作と、続きを表示(全18行)複数台の調剤機器の内の少なくとも一つを用いて、処方データに基づき、予め手動で秤量された薬剤を前記薬剤容器に充填し、前記充填した薬剤容器を用いて分包する手動分包動作とが実行可能であって、前記制御装置と前記自動散薬分包装置の少なくともいずれかが、前記患者に提供されるべき散薬が複数種類であって、前記複数種類の散薬を混合して分包する場合であって、前記混合する散薬の数が所定数を超えると判断する場合、前記手動分包動作を実施することを特徴とする散薬調剤業務支援システム。【請求項3】前記所定数は、前記薬剤容器を保持する容器保持台の総数と等しい数であることを特徴とする請求項1に記載の散薬調剤業務支援システム。【請求項4】処方に関するデータであって患者に提供されるべき散薬の情報を含む処方データに基づいて複数台の調剤機器を制御する制御装置と、複数台の調剤機器に含まれる少なくとも自動散薬分包装置と、複数の散薬を収容する薬剤容器とを備え、前記自動散薬分包装置は、薬剤容器から排出された散薬を配分する分配ユニットと、薬剤包装装置とが内部に設けられており、前記自動散薬分包装置を用いて、処方データに基づき、薬剤容器から分配ユニットに散薬を排出する動作と、排出する散薬を計量する動作と、分配ユニットに排出された散薬を所定の数に分割する動作と、薬剤包装装置によって分割した散薬を個別に包装する分包動作とを含む完全自動分包動作と、複数台の調剤機器の内の少なくとも一つを用いて、処方データに基づき、予め手動で秤量された薬剤を前記薬剤容器に充填し、前記充填した薬剤容器を用いて分包する手動分包動作とが実行可能であって、前記制御装置と前記自動散薬分包装置の少なくともいずれかが、前記患者に提供されるべき散薬が1種類又は複数種類であり、前記1種類又は複数種類の散薬の各々の総量がいずれも所定量未満と判断する場合、前記手動分包動作を実施することを特徴とする散薬調剤業務支援システム。【請求項6】前記手動分包動作における複数台の調剤機器の内の少なくとも一つは、薬剤秤量装置であることを特徴とする請求項1、3又は4に記載の散薬調剤業務支援システム。【請求項7】前記散薬は、錠剤等の固形の薬剤をすり潰して粉末状にした薬剤を含むことを特徴とする請求項1、3、4又は6に記載の散薬調剤業務支援システム。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
当審より職権で通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
請求項2及び請求項5の記載からみて、これらの請求項が引用する請求項1と請求項4の「手動分包動作」は、そのうちの「分包」を「自動散薬分包装置」ではなく「複数台の調剤機器の内の少なくとも一つである薬剤包装装置」が行うものを含むことになるのに対し、発明の詳細な説明における「手動分包動作」は「自動散薬分包装置」の動作として記載されており、「薬剤包装装置」が行うものを含んでいないから、この点において、請求項1~7の特許は、特許法第36条第6項第1号の要件を満たしていない特許出願についてなされたものである。
2 当審の判断
上記第2に示したとおり、訂正によって請求項2及び請求項5は削除され、請求項1と請求項4の「手動分包動作」は、「分包」を「複数台の調剤機器の内の少なくとも一つである薬剤包装装置」が行うものを含まないものであることから、請求項1及び請求項4に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
よって、上記1の取消理由は解消している。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
(1)理由1
請求項1~7の特許は、特許請求の範囲の記載において、「完全自動分包動作」では、散薬の排出する前段階で、薬剤容器に予め手動で秤量された薬剤を充填することを含み、「手動分包動作」では、秤量された薬剤を充填した薬剤容器を用いて分包する際に、自動散薬分包装置を用いて、排出、計量、分割、分包(完全自動分包動作の動き)をすることが含まれており、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(2)理由2
請求項1~7の特許は、特許請求の範囲の記載において、「少なくとも一つの調剤機器を用いて、秤量された薬剤を薬剤容器に充填し、分包する」と特定されて、手動分包動作が一つの調剤機器で秤量、充填、分包の全てを行うことが含まれるものに拡張ないし一般化されており、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。(以下「理由2の1」という。)
また、この特許請求の範囲の記載事項に関する補正(令和2年9月18日提出の手続補正書による補正)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、請求項1~7の特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してなされたものである。(同「理由2の2」という。)
(3)理由3
請求項1~7の特許は、特許請求の範囲の記載において、排出動作と計量動作とが並列記載されており、すなわち、薬剤容器からの排出分を予め計量した後に排出を実行する手順を含むものとなっており、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(4)理由4
請求項1~7の特許は、特許請求の範囲の記載において、同一の薬剤容器を用いて完全自動分包動作と手動分包動作とを行うことを含むものとなっており、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(5)理由5
請求項1~7の記載は、共通の薬剤容器を用いて完全自動分包動作と手動分包動作とを行うことを含むのに対して、発明の詳細な説明の記載は、完全自動分包動作、準自動分包動作、手動分包動作及び薬剤分包機4での分包動作を実施する各ステップで専用の薬剤容器を用いており、薬剤容器が共通の薬剤容器である場合まで拡張ないし一般化することができない。
よって、請求項1~7の特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(6)理由6
請求項1~7の特許は、特許請求の範囲の記載において、完全自動分包動作と手動分包動作が同一動作(秤量と計量)を含むことになり、システムという物の発明におけるどのような構成が特定されるのか不明であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(7)理由7
請求項1~7の特許は、特許請求の範囲の記載において、特許請求の範囲の記載において、完全自動分包動作と手動分包動作が同一動作(秤量と計量)を含むことから、手動分包動作を実施することの技術的意義が不明であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(8)理由8
発明の詳細な説明には、請求項1に対応する記載において、混合する散薬の数よりも少ない数の容器保持台69を有する完全自動散薬分包機5を用いて、どのようにして容器保持台69の数よりも多い数の散薬を混合するのかが記載されていないから、請求項1及び請求項1を引用する請求項2、3、6、7は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(9)理由9
発明の詳細な説明には、請求項4に対応する記載において、条件2において少なすぎると判断された散薬について、どのようにして完全自動散薬分包機5を用いて供給(分包)するのかが記載されていないから、請求項4及び請求項4を引用する請求項5~7は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
(10)理由10
発明の詳細な説明には、請求項1に対応する記載において、どのようなシステム構成・情報処理によって、処方箋に複数種類の散薬が含まれている場合に、これらの散薬を、それぞれ個別に分包するのか、或いは、いくつかを混合して分包するのか、を判別することができるかが記載されていないから、請求項1及び請求項1を引用する請求項2、3、6、7は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものである。
2 当審の判断
(1)理由1について
ア「秤量」について
請求項1、3~4、6~7の記載における「秤量」について、発明の詳細な説明には、「ところで、この手動分包動作では、上記した完全自動分包動作とは異なり、薬剤の供給量を測定する動作を実施せず、手動式薬剤容器47に収容された薬剤を全て分配ユニット68に供給する。すなわち、使用者が予め手動で秤量を実施し、手動式薬剤容器47に規定量(最終的に供給する量)だけ薬剤を充填しておく必要がある。」(段落【0097】)の記載がある。この記載は、手動分包動作が手動式薬剤容器に収容された薬剤全てを分配ユニットに供給するものであることを示すとともに、この手動分包動作に関連して、処方された薬剤の一つについて手動式薬剤容器に充填されて供給される薬剤の規定量の計量を意味する用語として「秤量」を用いているものである。また、発明の詳細な説明の「完全自動分包動作実施される場合と、準自動分包動作を実施される場合のいずれにしても、処方データに含まれる処方で提供される薬剤が完全自動散薬分包機5のみで分包されることとなる。すなわち、他機(本実施形態では薬剤秤量装置3)による秤量を実行することなく、分包が可能となる。」(段落【0125】)の記載においても、「秤量」を処方で提供される薬剤の分包のための計量を意味する用語として「秤量」を用いている。このように、「秤量」とは、処方された薬剤の一つについて分包されるべく供給される薬剤の規定量を計量することである。発明の詳細な説明における「計量(秤量)」との記載(段落【0014】等)も、「秤量」の意味が上記のとおりであることから「秤量」が「計量」の下位概念となることを踏まえたものであり、「計量」と「秤量」と同義である趣旨を示しているのではない。
イ「完全自動分包動作」について
請求項1及び請求項4には、「完全自動分包動作」について、「前記自動散薬分包装置を用いて、処方データに基づき、薬剤容器から分配ユニットに散薬を排出する動作と、排出する散薬を計量する動作と、分配ユニットに排出された散薬を所定の数に分割する動作と、薬剤包装装置によって分割した散薬を個別に包装する分包動作とを含む完全自動分包動作と、・・・手動分包動作とが実行可能であって、」と記載されている。
これらの記載によれば、まず、「完全自動分包動作」は、「自動散薬分包装置」を用いて「処方データ」に基づいて実行可能となっている動作であり、さらに、「薬剤容器から分配ユニットに散薬を排出する動作」、「排出する散薬を計量する動作」、「分配ユニットに排出された散薬を所定の数に分割する動作」及び「薬剤包装装置によって分割した散薬を個別に包装する分包動作」を含む動作として特定されている。
なお、請求項3、6~7は、請求項1又は請求項4を引用する請求項であり、これらの請求項の「完全自動分包動作」は、被引用請求項の「完全自動分包動作」となる。また、発明の詳細な説明においては、段落【0078】~【0088】に完全自動分包動作について記載されている。
ウ「手動分包動作」について
請求項1及び請求項4には、「手動分包動作」について、「前記自動散薬分包装置を用いて、処方データに基づき、・・・完全自動分包動作と、複数台の調剤機器の内の少なくとも一つを用いて、処方データに基づき、予め手動で秤量された薬剤を前記薬剤容器に充填し、前記充填した薬剤容器を用いて分包する手動分包動作とが実行可能であって、」と記載されている。
この記載においては、「手動分包動作」は、「自動散薬分包装置」を用いて「処方データ」に基づいて実行可能となっている動作であり、さらに、「予め手動で秤量された薬剤」を「充填」した「薬剤容器」を用いて分包する動作であること、その際の「手動」での「秤量」は、「複数台の調剤機器の内の少なくとも一つ」を用いて「処方データ」に基づいて行われることが特定されている。
請求項3、6~7に記載された「手動分包動作」は、請求項1及び請求項4の「手動分包動作」と同じである。
なお、発明の詳細な説明においては、上記アに示した段落【0097】を含め、段落【0093】~【0097】に手動分包動作について記載されている。
エ 申立人の主張について
(ア)請求項1~7の「完全自動分包動作」では「散薬を排出する前段階で、薬剤容器に予め手動で秤量された薬剤を充填することも含まれて」いると主張している。
しかし、上記イに示した「完全自動分包動作」についての記載によれば、「処方データ」に従って「分包」される「散薬」は、「薬剤容器」から「排出された」ものとなっており、この「散薬」の「薬剤容器」からの「排出」にあたって「処方データ」に基づいて「排出する散薬を計量」する旨が特定されている。このことを踏まえれば、「完全自動分包動作」について、散薬を排出する前段階で手動での秤量のような処方データに基づく計量を行わない旨の明示的な記載がなくとも、「完全自動分包動作」が散薬を排出する前段階で手動での秤量のような処方データに基づく計量を伴うものでないこと、すなわち、そのような前段階での手動での秤量を行うものを含まないことは、明らかである。
(イ)申立人は、さらに、請求項1~7の「手動分包動作」では、秤量された薬剤を充填した薬剤容器を用いて分包する際に、自動散薬分包装置を用いた「計量」をすることが含まれているとも主張している。
しかしながら、上記ウに示したとおり、請求項1、3~4、6~7における「手動分包動作」について「予め手動で秤量された薬剤」を「充填」した「薬剤容器」を用いて分包する動作であることが明示されており、「手動分包動作」が自動散薬分包装置を用いた「計量」を行わないことは明らかである。このことは、上記アに示した発明の詳細な説明の記載と整合している。請求項1、3~4、6~7において自動散薬分包装置を用いた「計量」をしない明示をしないことが、発明の詳細な説明に開示された内容を超えたものとはいえない。
オ よって、請求項1、3~4、6~7に係る発明は、「完全自動分包動作」において、薬剤容器に予め手動で秤量された薬剤を充填することを含まず、「手動分包動作」において、秤量された薬剤を充填した薬剤容器を用いて分包する際に、自動散薬分包装置を用いて、完全自動分包動作の動きは含まないことが明らかであるから、請求項1、3~4、6~7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
申立人の主張は、請求項1、3~4、6~7に記載された事項についての誤った理解によるものであり、採用することができない。
(2)理由2(理由2の1、理由2の2)について
ア 理由2の1について
(ア)請求項1~7の記載について
上記(1)ウに示したとおり、請求項1、3~4、6~7の「手動分包動作」は、「予め手動で秤量された薬剤」を「充填」した「薬剤容器」を用いて分包する動作であり、その際「手動」での「秤量」が「複数台の調剤機器の内の少なくとも一つ」を用いて「処方データ」に基づいて行われることが特定されている。また、「秤量」とは、上記(1)アに示したとおり、処方された薬剤の一つについて分包されるべく供給される薬剤の規定量を計量することであって、「計量」と同義ではない。
(イ)これに対し、発明の詳細な説明の「手動分包動作」(段落【0093】~【0097】)も、「予め手動で秤量された薬剤」を「充填」した「薬剤容器」を用いて分包する動作であるといえる。そして、発明の詳細な説明の段落【0126】~【0136】等には、「手動」による「秤量」を「薬剤秤量装置3」を用いて行うことが記載されているものの、段落【0157】には、「公知の天秤等の機器」を用いて行うことが記載されており、「薬剤秤量装置3」以外の「調剤機器」を用いることが可能であることが示されている。
この点、発明の詳細な説明には、上記(1)アに示した段落【0097】及び【0125】の記載があり、完全自動分包動作について「この手動分包動作では、上記した完全自動分包動作とは異なり、薬剤の供給量を測定する動作を実施せず」、「完全自動分包動作実施される場合・・処方データに含まれる処方で提供される薬剤が完全自動散薬分包機5のみで分包されることとなる。すなわち、他機(本実施形態では薬剤秤量装置3)による秤量を実行することなく、分包が可能」であると記載されているが、これらの記載は、完全自動分包動作における「薬剤の供給量を測定する動作」としての計量動作は「秤量」に該当する動作であり、そのような計量動作を「完全自動分包動作」においては「他機」によって実行する必要がない旨を示す記載であるといえるが、「手動分包動作」において「秤量」を「他機」で実行する必要がある旨を示す記載ではない。
(ウ)以上を踏まえれば、請求項1、3~4、6~7において、「手動」での「秤量」が「複数台の調剤機器の内の少なくとも一つ」を用いて行われうることは、発明の詳細な説明に記載したものである。
イ 理由2の2について
令和2年9月18日提出の手続補正書による補正後の請求項1、3~4、6~7の記載事項は、上記ア(ア)に示したとおりであり、他方、願書に最初に添付した明細書の発明の詳細な説明に記載した事項は、上記ア(イ)に示したとおりである。これらを踏まえれば、上記補正により、請求項1、3~4、6~7に「手動」での「秤量」が「複数台の調剤機器の内の少なくとも一つ」を用いて行われうる旨を含む「手動分包動作」についての記載を追加したことは、願書に最初に添付した明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、新たな技術的事項を導入したものではない。
よって、上記補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしている。
(3)理由3について
請求項1及び請求項4の記載によれば、「完全自動分包動作」について、排出動作と計量動作とが並列記載されており、予め手動による秤量を行わない旨は、明示的には記載されていない。
しかしながら、上記(1)エに示したとおり、「完全自動分包動作」が散薬を排出する前段階で手動での秤量のような処方データに基づく計量を伴うものでなく、明示的な記載がなくとも、このような秤量を行うものが含まれないことは、明らかである。
また、このことは、請求項1を引用する請求項3、請求項1及び請求項4を引用する請求項6~7においても同様である。
よって、請求項1、3~4、6~7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(4)理由4について
ア 請求項1、3~4、6~7における「前記薬剤容器」は、「複数の散薬を収容する薬剤容器とを備え、」の記載における「薬剤容器」を受けて「前記」と記載されているものであって、薬剤容器が「散薬調剤業務支援システム」が備える「複数の散薬を収容する薬剤容器」である旨を示している。そして、上記(1)ウ及び(1)エに示したとおり、請求項1、3~4、6~7の記載によれば、「完全自動分包動作」は、散薬を排出する前段階での手動での秤量を行うものを含んでおらず、「予め手動で秤量された薬剤」を「充填」したものではない「薬剤容器」を用いた動作であり、他方、「手動分包動作」は、「予め手動で秤量された薬剤」を「充填」した「薬剤容器」を用いた動作であるから、「完全自動分包動作」と「手動分包動作」は、どのように「薬剤容器」が用いられるかという観点において明確に区別されているといえる。
イ この点、申立人は、発明の詳細な説明においては、「完全自動分包動作」では「自動式薬剤容器46」が用いられ、「手動分包動作」では「手動式薬剤容器47」が用いられており、同一の薬剤容器を用いて、完全自動分包動作と手動分包動作とを実行することまで拡張ないし一般化することはできないと主張している。
しかし、請求項1、3~4、6~7の記載において「完全自動分包動作」と「手動分包動作」とは、「自動式薬剤容器46」と「手動式薬剤容器47」の構造上の違いを発明特定事項とするまでもなく、どのように「薬剤容器」が用いられるかという観点で区別されているといえる。そして、発明の詳細な説明に記載された「手動式薬剤容器47」は、手動で秤量された薬剤の充填のための「薬剤投入部」が「薬剤排出部」と別位置に設けられている点を除けば、「自動式薬剤容器46」と「略同じ構造」のものであるから(段落【0075】)、どのように「薬剤容器」が用いられるかという観点において「完全自動分包動作」と「手動分包動作」が区別されている以上、「略同じ構造」の「薬剤容器」について、「完全自動分包動作」と「手動分包動作」とにおける異同を特許請求の範囲において特定する必要はない。
ウ 以上を踏まえれば、特許請求の範囲の記載において、「完全自動分包動作」と「手動分包動作」における薬剤容器が同一のものでないことを明示していないことが、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化したものとはいえず、請求項1、3~4、6~7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(5)理由5について
申立人は、発明の詳細な説明においては、「完全自動分包動作」では「自動式薬剤容器46」のみが用いられ、「手動分包動作」では「手動式薬剤容器47」のみが用いられ、「薬剤分包機を使用した分包動作」では「薬剤分包機で使用する容器」のみが用いられており、「完全自動分包動作」では「自動式薬剤容器46」のみが用いられ、「手動分包動作」では「手動式薬剤容器47」のみが用いられ、「薬剤分包機を使用した分包動作」では「薬剤分包機で使用する容器」のみが用いられており、完全自動分包動作、準自動分包動作、手動分包動作及び薬剤分包機4での分包動作を実施する各ステップで専用の薬剤容器を用いていることから、薬剤容器が共通の薬剤容器である場合まで拡張ないし一般化することができない旨を主張している。
しかし、上記(4)に示したとおり、請求項1、3~4、6~7の記載において、「完全自動分包動作」は、散薬を排出する前段階での手動での秤量を行うものを含んでおらず、「予め手動で秤量された薬剤」を「充填」したものではない「薬剤容器」を用いた動作であり、他方、「手動分包動作」は、「予め手動で秤量された薬剤」を「充填」した「薬剤容器」を用いた動作であるから、「薬剤容器」が同じものでないことは明らかであるといえる。
また、発明の詳細な説明における「薬剤分包機を使用した分包動作」は、請求項1、3~4、6~7の「手動分包動作」ではないから、これで用いる「薬剤分包機で使用する容器」が「手動分包動作」における薬剤容器との構造の異同を特許請求の範囲において特定する必要はなく、特許請求の範囲の請求項1、3~4、6~7の記載において、「薬剤容器」が共通のものではないと特定していないことが、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化したものとはいえず、請求項1、3~4、6~7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものである。
(6)理由6、理由7について
申立人は、請求項1~7の特許は、特許請求の範囲の記載において、完全自動分包動作と手動分包動作が同一動作(秤量と計量)を含むことを前提として、明確性要件違反を主張している。
しかし、上記(1)に示したとおり、請求項1、3~4、6~7の記載において、「完全自動分包動作」は、散薬を排出する前段階で手動での秤量のような処方データに基づく計量を伴うものでなく、他方、「手動分包動作」は、「予め手動で秤量された薬剤」を「充填」した「薬剤容器」を用いて分包する動作であるから、両者の動作が異なることは明確であるから、請求項1、3~4、6~7に係る発明は明確であって、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項2号に規定する要件を満たしている。
(7)理由8について
発明の詳細な説明には、「手動分包動作」について、「作業者」が「予め薬剤を充填した手動式薬剤容器47を手動で容器保持台69に設置する」旨の記載があり(段落【0093】)、作業者が必要に応じて容器保持台69に手動式薬剤容器47を設置し直すことによって、容器保持台69の数よりも多い数の散薬を混合することが可能であることが明らかであるから、発明の詳細な説明は、当業者が請求項1に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである。
よって、請求項1及び請求項1を引用する請求項3、6、7について、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
(8)理由9について
発明の詳細な説明の段落【0113】【0114】には、次のとおり記載されている。
「【0113】次に、上記した条件2に関する判別動作について付言する。ここで、分配ユニット68に供給する散薬の種類によっては、供給量が少なすぎる場合、容器保持台69の振動動作による規定量の供給が困難となるものがある。例えば、散薬には、その粒の形状が薬剤容器から排出され難い形状のものがある。また、散薬には、粒同士が塊になり易いものがある。そして、前者の場合、振動動作を実施しても分配ユニット68に規定量の散薬が排出されない可能性がある。また、後者の場合、振動動作を実施することで分配ユニット68に塊状の散薬が供給されてしまい、規定量よりも多量に供給されてしまう可能性がある。つまり、散薬には、その性質により、極めて少量の排出が困難となってしまうものがある。【0114】そこで、本実施形態では、総量が所定量を下回る薬剤については自動式薬剤容器46から分配ユニット68への供給を実行しない構成としている。言い換えると、容器保持台69の振動動作によって確実に分配ユニット68への規定量の供給が可能であることを条件として、完全自動分包動作、又は準自動分包動作を実施する構成としている。」
これらの記載によれば、「粒の形状が薬剤容器から排出され難い形状」の散薬については、供給量が少ないと「容器保持台69の振動動作」による供給が難しいことから、「完全自動分包動作」と同様の「容器保持台69の振動動作」による供給を前提とした「手動分包動作」を実施できないものの、そのような形状でない散薬については、供給量が少ない場合でも「手動分包動作」を実施可能である。
また、「粒同士が塊になりやすい」散薬は、「振動動作を実施することで分配ユニット68に塊上の散薬が供給されてしまい、規定量よりも多量に供給してしまう可能性」があるために「極めて少量の排出が困難」であることから、供給量が少ないと「完全自動分包動作」を実施できないものの、「手動式薬剤容器47に収容された薬剤を全て分配ユニット68に供給する」(段落【0097】)ことができない理由はなく、「手動分包動作」を実施可能である。
よって、発明の詳細な説明には、散薬の粒の形状等によっては少量の排出が困難であることが記載されているが、そうでなければ、少量の排出が可能であることは当業者に明らかであるから、発明の詳細な説明の記載は、当業者が、請求項4及び請求項4を引用する請求項5~7に係る発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものである。
(9)理由10について
請求項1には、「前記自動散薬分包装置を用いて、処方データに基づき、・・・完全自動分包動作と、・・・手動分包動作とが実行可能であって、」と記載されているから、処方箋に複数種類の散薬が含まれている場合に、これらの散薬を、それぞれ個別に分包するのか、或いは、いくつかを混合して分包するのか、の判別は、「自動散薬分包装置」において「処方データ」に基づき行われることとなるが、この際のシステム構成や情報処理については、発明の詳細な説明に具体的な記載がなくとも、処方データに基づき自動散薬分包装置を動作させることにより、当業者が容易に実施できる程度のことであるから、発明の詳細な説明の記載は、請求項1及び請求項1を引用する請求項2、3、6、7に係る発明を当業者がその実施をできる程度に明確かつ十分に記載したものである。
よって、請求項1及び請求項1を引用する請求項2、3、6、7について、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしている。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議の申立ての理由によっては、請求項1、3~4、6~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1、3~4、6~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、請求項2と請求項5は、訂正請求による訂正により削除された。これにより、請求項2及び請求項5に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-700810