特許異議申立
2022-700538
薬品秤量装置、薬品秤量システム、薬品秤量プログラム、記録媒体
- 審判番号
- 2022-700538
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-214852外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 登録番号
- 6984099
- 請求日
- 2022年06月17日
- 審決日
- 2024年03月28日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P1651.121-YAA(A61J) / P1651.537-YAA(A61J) / P1651.55 -YAA(A61J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6984099号発明「薬品秤量装置、薬品秤量システム、薬品秤量プログラム、記録媒体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6984099号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。
特許第6984099号の請求項1、2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6984099号(以下「本件特許」という。)の請求項1、2に係る特許についての出願は、平成25年 4月15日(優先権主張 平成24年 4月13日)を国際出願日とする特願2014-510222号の一部を平成29年11月 7日に新たな特許出願としたものであって、令和 3年11月29日にその特許権の設定登録がされた(特許掲載公報 令和 3年12月17日発行)。その請求項1、2に係る特許について、令和 4年 6月17日に特許異議申立人中谷浩美(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたところ、その後の経緯は以下のとおりである。
令和 4年 8月18日付け 取消理由通知
令和 4年10月19日提出 特許権者による訂正請求書及び意見書
令和 4年12月13日提出 申立人による意見書
令和 5年 3月23日付け 取消理由通知(決定の予告)
令和 5年 5月24日提出 特許権者による訂正請求書及び意見書
令和 5年 7月26日提出 申立人による意見書
第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
令和 5年 5月24日提出の訂正請求書による訂正の請求の趣旨は、「特許第6984099号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の通り訂正後の請求項1、2について訂正することを求める。」というものであり、その訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)請求項1に係る訂正事項1
ア 訂正事項1(a)
(a)特許請求の範囲の請求項1に「秤量手段による秤量値が適正量であるかを監査し、前記秤量手段による秤量が完了した場合に当該処方箋情報及び秤量結果を特定可能な特定情報を出力する」と記載されているのを、「秤量手段による秤量値が予め定められた常用量の範囲内であるかを判断する監査処理が終了し、且つ前記秤量手段による秤量が完了した場合に当該処方箋情報と秤量結果とを特定するための特定情報及び前記秤量結果を出力する」に訂正する。
イ 訂正事項1(b)
(b)特許請求の範囲の請求項1に「包装装置と通信可能な情報処理装置」と記載されているのを、「包装装置を制御する情報処理装置」に訂正する。
ウ 訂正事項1(c)
(c)特許請求の範囲の請求項1に「処方箋情報及び秤量結果を特定可能な前記特定情報」と記載されているのを、「処方箋情報と秤量結果とを特定するための前記特定情報」に訂正する。
エ 訂正事項1(d)
(d)特許請求の範囲の請求項1に「管理する複数の処方箋情報」を、「記憶部に記載されている複数の処方箋情報」に訂正する。
(2)請求項2に係る訂正事項2
ア 訂正事項2(a)
(a)特許請求の範囲の請求項2に「包装装置と通信可能な情報処理装置」と記載されているのを、「包装装置を制御する情報処理装置」に訂正する。
イ 訂正事項2(b)
(b)特許請求の範囲の請求項2に「処方箋情報に含まれる薬品についての秤量手段による秤量値が適正量であるかを監査する」と記載されているのを、「処方箋情報に含まれる薬品についての秤量手段による秤量値が予め定められた常用量の範囲内であるかを判断する監査処理を実行する」に訂正する。
ウ 訂正事項2(c)
(c)特許請求の範囲の請求項2に「前記秤量手段による秤量が完了した場合に前記処方隻情報及び秤量結果を特定可能な特定情報を出力する」と記載されているのを、「前記監査手段による監査処理が終了し、且つ前記秤量手段による秤量が完了した場合に前記処方箋情報と秤量結果とを特定するための特定情報を出力する」に訂正する。
エ 訂正事項2(d)
(d)特許請求の範囲の請求項2に「処方箋情報及び秤量結果を特定可能な前記特定情報」と記載されているのを、「処方箋情報と秤量結果とを特定するための前記特定情報」に訂正する。
オ 訂正事項2(e)
(e)特許請求の範囲の請求項2に「管理する複数の処方箋情報」と記載されているのを、「記憶部に記載されている複数の処方箋情報」に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1に係る訂正事項1(a)~(d)
ア 訂正の目的
(ア)訂正事項1(a)は、
訂正前の請求項1における「秤量手段による秤量値が適正量であるかを監査し」が、「適正量」がどのような値であるか不明確であり、「監査」とは通常薬剤師が行い多岐にわたるものであるところ装置として何を行うのかが不明確であったものを、「秤量手段による秤量値が予め定められた常用量の範囲内であるかを判断する監査処理が終了し」と明確にし、
訂正前の請求項1における「監査し、前記秤量手段による秤量が完了した場合に当該処方箋情報及び秤量結果を特定可能な特定情報を出力する」が、「監査処理」、「秤量手段による秤量」、及び「特定情報及び前記秤量結果」の「出力」の関係について不明確であったのを、「監査処理が終了し、且つ前記秤量手段による秤量が完了した場合に当該処方箋情報と秤量結果とを特定するための特定情報及び前記秤量結果を出力する」と明確にする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)訂正事項1(b)は、訂正前の請求項1における「包装装置と通信可能な情報処理装置」を「包装装置を制御する情報処理装置」と限定する訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(ウ)訂正事項1(c)は、訂正前の請求項1における「処方箋情報及び秤量結果を特定可能な前記特定情報」を訂正事項1(a)の訂正に整合させる訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(エ)訂正事項1(d)は、訂正前の請求項1における「管理する複数の処方箋情報」が、「管理する手段」とどのような関係であるのかが明確でない記載であったのを、「記憶部に記憶されている複数の処方箋情報」と明確にする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)「監査処理」が、秤量手段による「秤量値」が予め定められた「常用量の範囲内」であるかを判断することは、本件特許明細書の段落【0025】の「前記制御部11により薬品の秤量値が薬品ごとに予め設定された常用量(1日または1回服用する適正量)の範囲内であるか否かの監査を行う」との記載及び段落【0029】の「前記常用量は、薬品ごとに対応して予め定められた1日又は1回に服用する適正量である。・・・前記常用量及び前記同時服用禁止情報は、前記制御部11が前記監査プログラムに従って実行する監査処理で用いられる。具体的に、前記制御部11は、前記天秤ユニット12により秤量された秤量値が薬品ごとに予め設定された適正量の範囲内であるか否かの監査を前記データ記憶部15に記憶された前記常用量に基づいて行う。」との記載に基づくものである。
監査が終了し、且つ秤量手段による秤量が完了した場合に処方箋情報と秤量結果とを特定するための特定情報及び秤量結果を出力することは、
(i)段落【0025】の「前記薬品秤量プログラムには、前記制御部11により薬品の秤量値が薬品ごとに予め設定された常用量(1日または1回服用する適正量)の範囲内であるか否かの監査を行う監査プログラムも含まれている。そのため、前記薬品秤量装置10は、・・・薬品の秤量及び常用量の監査を共に行うことができる。」との記載、【0029】の「・・・前記常用量・・・は、前記制御部11が前記監査プログラムに従って実行する監査処理で用いられる。」との記載、及び【0030】の「そして、前記秤量値が前記常用量の範囲外である場合、・・・、前記制御部11は、その旨の警告を前記タッチパネル13などに表示させることが考えられる。・・・これにより、前記常用量を超える量の薬品の処方・・・を、前記薬品秤量装置10における薬品の秤量段階で防止することができる。」との記載に基づき、に基づき、秤量段階で監査処理が実行されることと、
(ii)図5に、S7の「秤量完了」がYESの場合、S9の「RFIDタグに情報記録」に進むフローチャートが記載され、段落【0068】、【0074】、【0077】に、秤量が完了した場合に処方箋情報及び秤量結果と対応付けられた固定情報(情報の識別番号など)をRFIDタグに記録させ、薬品包装装置に前記固定情報に対応する秤量結果を送信することが記載されていることと、
(iii)段落【0172】の「前記薬品包装装置20は、・・・データ記憶部26・・・を備える。・・・前記制御部11は、前記処方箋情報及び前記秤量結果を前記トレイ番号に対応付けて前記データ記憶部26に記憶させる。」との記載、【0234】の「前記制御部11による前記データ記憶部25への前記レシピ情報及び前記トレイ番号の対応関係の記録のタイミングは、前記RFIDリーダライタ14により前記RFIDタグ31に前記トレイ番号を記録させるタイミングであってもよい。」(当審注:「データ記憶部25」は「データ記憶部26」の誤記である。以下同じ。)との記載、【0239】の「前記薬品秤量処理の前記ステップS9(図5参照)に相当する処理では、前記制御部11は、前記トレイ番号、前記号機番号、及び前記ホッパー番号を前記RFIDリーダライタ14により前記RFIDタグ31に書き込む。」との記載より、制御部11が、トレイ番号をRFIDタグ31に記録させるタイミングで、データ記憶部26に処方箋情報及び秤量結果をトレイ番号に対応付けて記憶させることが記載されていることと、
に基づくものである。
したがって、訂正事項1(a)は、本件特許明細書の【0025】、【0029】-【0030】、【0068】、【0074】、【0077】、【0172】、【0234】、【0239】、図5の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(イ)訂正事項1(b)は、本件特許明細書の【0045】-【0046】、図1、【0114】-【0131】、【0172】、図17、【0239】、【0241】-【0245】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)訂正事項1(c)は、本件特許明細書の【0074】-【0077】、【0172】、【0239】、【0241】-【0245】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(エ)訂正事項1(d)は、本件特許明細書の【0241】、【0243】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1(a)~(d)は、いずれも上記アのとおりであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
(2)請求項2に係る訂正事項2(a)~(e)
ア 訂正の目的
(ア)訂正事項2(a)は、訂正前の請求項2における「包装装置と通信可能な情報処理装置」を「包装装置を制御する情報処理装置」と限定する訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)訂正事項2(b)は、訂正前の請求項2における「秤量手段による秤量値が適正量であるかを監査する」が、「適正量」がどのような値であるか不明確であり、「監査」とは通常薬剤師が行い多岐にわたるものであるところ装置として何を行うのかが不明確であったものを、「秤量手段による秤量値が予め定められた常用量の範囲内であるかを判断する監査処理を実行する」と明確にする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(ウ)訂正事項2(c)は、訂正前の請求項2における「前記秤量手段による秤量が完了した場合に前記処方隻情報及び秤量結果を特定可能な特定情報を出力する」が、「監査処理」、「秤量手段による秤量」、及び「特定情報及び前記秤量結果」の「出力」の関係について不明確であったのを、「前記監査手段による監査処理が終了し、且つ前記秤量手段による秤量が完了した場合に前記処方箋情報と秤量結果とを特定するための特定情報を出力する」と明確にする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(エ)訂正事項2(d)は、訂正前の請求項2における「処方箋情報及び秤量結果を特定可能な前記特定情報」を訂正事項2(c)の訂正に整合させる訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(オ)訂正事項2(e)は、訂正前の請求項2における「管理する複数の処方箋情報」が、「管理する手段」とどのような関係であるのかが明確でない記載であったのを、「記憶部に記憶されている複数の処方箋情報」と明確にする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
(ア)訂正事項2(a)は、本件特許明細書の【0045】-【0046】、図1、【0114】-【0131】、【0172】、図17、【0239】、【0241】-【0245】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(イ)訂正事項2(b)は、本件特許明細書の【0025】、【0029】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)訂正事項2(c)は、本件特許明細書の【0025】、【0029】-【0030】、【0068】-【0075】、【0077】、【0172】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(エ)訂正事項2(d)は、本件特許明細書の【0074】-【0077】、【0172】、【0239】、【0241】-【0245】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(オ)訂正事項2(e)は、本件特許明細書の【0241】、【0243】の記載に基づく訂正であるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項2(a)~(e)は、いずれも上記アのとおりであるから、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
3 むすび
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1、2に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」、「本件発明2」という。)は、令和 5年 5月24日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
処方箋情報に含まれる薬品についての秤量手段による秤量値が予め定められた常用量の範囲内であるかを判断する監査処理が終了し、且つ前記秤量手段による秤量が完了した場合に当該処方箋情報と秤量結果とを特定するための特定情報及び前記秤量結果を出力する監査装置と、
薬品を包装する包装装置を制御する情報処理装置と、
を含むシステムにおける前記情報処理装置であって、
処方箋情報と秤量結果とを特定するための前記特定情報を当該処方箋情報及び秤量結果に対応付けて管理する手段と、
記憶部に記憶されている複数の処方箋情報の中から、前記包装装置により包装する処方箋情報の指定を受け付ける手段と、
前記監査装置から出力された前記特定情報を取得する手段と、
指定を受け付けた処方箋情報に対応する前記特定情報で特定される前記秤量結果を取得していることを条件に、当該処方箋情報の薬品を包装するように前記包装装置に指示し、指定を受け付けた処方箋情報に対応する前記特定情報で特定される前記秤量結果を取得していないことを条件に、当該処方箋情報の薬品を包装する前記指示を前記包装装置に対して行わない手段と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
監査装置と、薬品を包装する包装装置を制御する情報処理装置とを含むシステムであって、
前記監査装置は、
処方箋情報に含まれる薬品についての秤量手段による秤量値が予め定められた常用量の範囲内であるかを判断する監査処理を実行する監査手段と、
前記監査手段による監査処理が終了し、且つ前記秤量手段による秤量が完了した場合に前記処方箋情報と秤量結果とを特定するための特定情報を出力する手段とを備え、
前記情報処理装置は、
処方箋情報と秤量結果とを特定するための前記特定情報を当該処方箋情報及び秤量結果に対応付けて管理する手段と、
前記監査装置から出力された前記特定情報を取得する手段と、
記憶部に記憶されている複数の処方箋情報の中から、取得した前記特定情報に対応する処方箋情報を包装対象として選択する手段と、
選択した処方箋情報の薬品を包装するように前記包装装置に指示する手段と、
を備えるシステム。」
第4 取消理由通知の概要と当審の判断
1 令和 5年 3月23日付け取消理由通知(決定の予告)について
当審が令和 5年 3月23日付けで通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
取消理由1.(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(1)請求項1の「処方箋情報に含まれる薬品についての秤量手段による秤量値が予め定められた常用量の範囲内であるかを監査し」及び請求項2の「処方箋情報に含まれる薬品についての秤量手段による秤量値が予め定められた常用量の範囲内であるかを監査する監査手段」は、「監査」とは通常薬剤師が行なうものであって多岐にわたるものであるところ、装置として何を行っているのかがわからない。
(2)請求項1において、「処方箋情報に含まれる薬品についての秤量手段による秤量値が予め定められた常用量の範囲内であるか」の「監査」と、「秤量手段による秤量」の「完了」と、「特定情報」及び「秤量結果」の「出力」との関係が明確でない。
請求項2において、「処方箋情報に含まれる薬品についての秤量手段による秤量値が予め定められた常用量の範囲内であるか」の「監査」と、「秤量手段による秤量」の「完了」と、「特定情報」の「出力」との関係が明確でない。
(3)請求項1に「処方箋情報と前記薬品の薬品名を含む秤量結果とを特定するための前記特定情報を当該処方箋情報及び秤量結果に対応付けて管理する手段と、管理する複数の処方箋情報の中から、前記包装装置により包装する処方箋情報の指定を受け付ける手段と、前記監査装置から出力された前記特定情報を取得する手段と」と記載され、請求項2に「処方箋情報と前記薬品の薬品名を含む秤量結果とを特定するための前記特定情報を当該処方箋情報及び秤量結果に対応付けて管理する手段と、前記監査装置から出力された前記特定情報を取得する手段と、管理する複数の処方箋情報の中から、取得した前記特定情報に対応する処方箋情報を包装対象として選択する手段」と記載されているが、明確でない。「管理する手段」と「管理する複数の処方箋情報」との関係が明確でない。
(4)請求項1の「指定を受け付けた処方箋情報に対応する前記特定情報で特定され、前記監査装置から出力された前記秤量結果に含まれる前記薬品の薬品名を取得していることを条件に、当該処方箋情報の薬品を包装するように前記包装装置に指示し、指定を受け付けた処方箋情報に対応する前記特定情報で特定され、前記監査装置から出力された前記秤量結果に含まれる前記薬品の薬品名を取得していないことを条件に、当該処方箋情報の薬品を包装する前記指示を前記包装装置に対して行わない手段」の記載は「指定を受け付けた処方箋情報に対応する前記特定情報で特定され」と「前記秤量結果」の関係が明確でない。
2 令和 5年 3月23日付け取消理由通知(決定の予告)についての当審の判断
<明確性について>
(1)本件訂正により、本件発明1及び本件発明2の「監査装置」が行う「監査処理」が明確となった。
(2)本件訂正により、本件発明1及び本件発明2において、「監査処理」と「秤量手段による秤量」の「完了」と「特定情報」の「出力」の関係が明確となった。
(3)本件訂正により、本件発明1及び本件発明2の「複数の処方箋情報」が「記憶部に記憶されている」ことが明確となった。
(4)本件訂正の請求により、令和 4年10月19日に提出された訂正請求書による訂正は取下げられたものとみなされるから取消理由1の上記(4)の記載不備はなくなった。
3 令和 4年 8月18日付け取消理由通知について
訂正前の請求項1、2に係る特許に対して、当審が令和 4年 8月18日付けで特許権者に通知したサポート要件に係る取消理由の概要は、次のとおりである。
(サポート要件)本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
記
(1)請求項1の「指定を受け付けた処方箋情報に対応する前記特定情報で特定される前記秤量結果を取得していることを条件に、当該処方箋情報の薬品を包装するように前記包装装置に指示し、指定を受け付けた処方箋情報に対応する前記特定情報で特定される前記秤量結果を取得していないことを条件に、当該処方箋情報の薬品を包装する前記指示を前記包装装置に対して行わない手段」は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。
よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(2)発明の詳細な説明には、請求項1に係る発明における「薬品を包装する包装装置と通信可能な情報処理装置」であって、「処方箋情報及び秤量結果を特定可能な特定情報」を管理したり取得したりする発明特定事項を備え、かつ「管理する複数の処方箋情報の中から、前記包装装置により包装する処方箋情報の指定を受け付ける手段」を備える「情報処理装置」が、記載されていない。
よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(3)請求項1に係る発明、請求項2に係る発明は、それぞれが解決しようとする課題が何であるのか、及び、当該課題を解決する手段が何であるのかが明確でなく、この点でもいわゆるサポート要件を満足していない。
よって、請求項1、2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
(4)発明の詳細な説明には、請求項1、2に係る発明における「情報処理装置」に関する特定をすべて満足する情報処理装置が記載されていない。
よって、請求項1、2に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
4 令和 4年 8月18日付け取消理由通知(サポート要件)についての当審の判断
(1)について
本件特許明細書の段落【0234】の「前記制御部11による前記データ記憶部25への前記レシピ情報及び前記トレイ番号の対応関係の記録のタイミングは、前記RFIDリーダライタ14により前記RFIDタグ31に前記トレイ番号を記録させるタイミングであってもよい。」との記載、
段落【0239】の「前記薬品秤量処理の前記ステップS9(図5参照)に相当する処理では、前記制御部11は、前記トレイ番号、前記号機番号、及び前記ホッパー番号を前記RFIDリーダライタ14により前記RFIDタグ31に書き込む。」との記載、
段落【0241】の「前記薬品包装装置20では、前記制御部21により、前記薬剤シート30の前記RFIDタグ31から前記トレイ番号を読み取り、前記トレイ番号に対応する前記レシピ情報及び前記秤量結果を分包対象のデータとして入力する分包入力処理が実行される。」との記載、
図11のS36の「処方箋情報及び秤量結果に基づいて薬品分包動作制御」との記載より、
トレイ番号(特定情報)で特定される秤量結果を取得していることを条件に、上記S36の薬品分包動作制御を行い、
トレイ番号(特定情報)で特定される秤量結果を取得していないことを条件に、S36の薬品分包動作制御を行わない、
ことが、記載されている。
よって、請求項1の「指定を受け付けた処方箋情報に対応する前記特定情報で特定される前記秤量結果を取得していることを条件に、当該処方箋情報の薬品を包装するように前記包装装置に指示し、指定を受け付けた処方箋情報に対応する前記特定情報で特定される前記秤量結果を取得していないことを条件に、当該処方箋情報の薬品を包装する前記指示を前記包装装置に対して行わない手段」は、発明の詳細な説明の記載の範囲内である。
(2)及び(4)について
本件訂正が認められたことにより、(2)及び(4)についての不備は解消した。
(3)について
本件発明1及び本件発明2の課題は、「秤量値が常用量の範囲内であるかを判断する監査装置による監査処理が行われていない薬品の包装が包装装置で行われることが防止される」ことである。
そして、これらは、本件特許明細書の発明の詳細な説明の
段落【0025】の「前記薬品秤量プログラムには、前記制御部11により薬品の秤量値が薬品ごとに予め設定された常用量(1日または1回服用する適正量)の範囲内であるか否かの監査を行う監査プログラムも含まれている。そのため、前記薬品秤量装置10は、・・・薬品の秤量及び常用量の監査を共に行うことができる。」との記載、
図5のS7の「秤量完了」がYESの場合、S9の「RFIDタグに情報記録」に進むフローチャートの記載、
段落【0172】の「前記薬品包装装置20は、・・・データ記憶部26・・・を備える。・・・前記薬品秤量装置10各々では、前記制御部11が、前記データ記憶部26の前記共有フォルダに、前記処方箋情報、前記秤量結果、及び前記調剤シート30に割り当てられる後述のトレイ番号などの情報を記憶させることが可能である。このとき、前記制御部11は、前記処方箋情報及び前記秤量結果を前記トレイ番号に対応付けて前記データ記憶部26に記憶させる。これにより、前記制御部21は、例えば前記薬剤シート30の前記RFIDタグ31から前記トレイ番号を読み取り、前記トレイ番号に基づいて前記薬剤シート30に対応する前記処方箋情報及び前記秤量結果を前記データ記憶部26から読み出すことが可能である。」との記載、
段落【0234】の「前記制御部11による前記データ記憶部25への前記レシピ情報及び前記トレイ番号の対応関係の記録のタイミングは、前記RFIDリーダライタ14により前記RFIDタグ31に前記トレイ番号を記録させるタイミングであってもよい。」との記載、
段落【0239】の「前記薬品秤量処理の前記ステップS9(図5参照)に相当する処理では、前記制御部11は、前記トレイ番号、前記号機番号、及び前記ホッパー番号を前記RFIDリーダライタ14により前記RFIDタグ31に書き込む。」との記載、
段落【0241】の「[分包入力処理]である「前記薬品包装装置20では、前記制御部21により、前記薬剤シート30の前記RFIDタグ31から前記トレイ番号を読み取り、前記トレイ番号に対応する前記レシピ情報及び前記秤量結果を分包対象のデータとして入力する分包入力処理が実行される。」との記載、
段落【0243】の「前記分包入力処理において、前記制御部21は、前記RFIDリーダライタ24により前記RFIDタグ31から読み取られる前記トレイ番号に基づいて前記データ記憶部26から前記トレイ番号に対応する前記レシピ情報を読み出す。」との記載、
及び図11のS36の「処方箋情報及び秤量結果に基づいて薬品分包動作制御」との記載からすると、
本件発明1は、「監査装置」が「処方箋情報に含まれる薬品についての秤量手段による秤量値が予め定められた常用量の範囲内であるかを判断する監査処理が終了し、且つ前記秤量手段による秤量が完了した場合に当該処方箋情報と秤量結果とを特定するための特定情報及び前記秤量結果を出力」し、「薬品を包装する包装装置を制御する情報処理装置」が「前記監査装置から出力された前記特定情報を取得」して、「指定を受け付けた処方箋情報に対応する前記特定情報で特定される前記秤量結果を取得していることを条件に、当該処方箋情報の薬品を包装するように前記包装装置に指示」し、「指定を受け付けた処方箋情報に対応する前記特定情報で特定される前記秤量結果を取得していないことを条件に、当該処方箋情報の薬品を包装する前記指示を前記包装装置に対して行わない」ことにより、上記課題を解決し、
本件発明2は、「監査装置」が「処方箋情報に含まれる薬品についての秤量手段による秤量値が予め定められた常用量の範囲内であるかを判断する監査処理を実行する監査手段と、前記監査手段による監査処理が終了し、且つ前記秤量手段による秤量が完了した場合に前記処方箋情報と秤量結果とを特定するための特定情報を出力する手段とを備え」、「情報処理装置」が「前記監査装置から出力された前記特定情報を取得する手段と、記憶部に記憶されている複数の処方箋情報の中から、取得した前記特定情報に対応する処方箋情報を包装対象として選択する手段と、選択した処方箋情報の薬品を包装するように前記包装装置に指示する手段と、を備える」ことにより、上記課題を解決するものである。
したがって、本件発明1及び本件発明2は、発明の詳細な説明及び図面の記載の範囲内である。
第5 取消理由に採用しなかった申立人が申立てた理由の概要と当審の判断
1 異議申立理由
理由4 特許法第29条第2項(進歩性)について
ア 請求項1に係る発明は、甲第1号証(特開昭63-55001号公報)に記載された発明及び甲第2号証(特開平3-12159号公報)の記載事項から、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2号証の記載事項から、当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、令和 5年 7月26日提出の意見書に添付して以下が提出されている。
甲第5号証:特開2002-282341号公報
甲第6号証:特開2006-280916号公報
甲第7号証:特開2002-85523号公報
2 甲各号証の記載事項
(1)甲第1号証の記載事項、甲1発明1、甲1発明2
ア 甲第1号証には、次の記載がある(下線は、当審で付した。)。
(ア)「第1図はこの発明の一実施例を示し、1は所定量の散剤を所定包数に分割して包装する分割包装装置2を具えた散剤分包機、3は多数の装置びん4、4…が置かれた棚5、5…の手前において所定高さの台6上に秤7が設置された調剤台である。調剤台3には、秤7で計量された散剤を一旦収容する容器8が複数個用意されていて、各容器8にはバーコードからなる容器の識別情報9が設けられている。調剤台3にはまた、図示しない適宜の入力端末装置から転送される調剤すべき散剤の薬品名および、果粒、細果粒、粉末等による流動性状、指定量、分割包数等からなる調剤情報を表示する適宜の表示部材10と、バーコードリーダ11とが設けられている。散剤分包機1には、調剤台3のバーコードリーダ11によって読取られた容器8の識別情報9と、この容器8に収容された散剤の表示部材10に表示された調剤情報とが転送されて両者を対応して記憶するメモリ12と、調剤台3での調剤作業終了後散剤分包機1に運ばれた容器8の識別情報9を読取ってこの容器8に収容された散剤の調剤情報をメモリ12から呼出す呼出部材13と、呼出部材13によって呼出された調剤情報にしたがって分割包装装置2を作動させる制御部材14とが設けられている。
上記の作動装置は、散剤分包機1で分包すべき散剤についての薬品名、流動性状、指定量および分割包数等の調剤情報は、たとえば処方箋を受付けてその内容を入力する入力端末装置から調剤台3の表示部材10に転送されて表示されるから、作業者は表示部材10に表示された薬品の装置びん4を棚5から取って指定された量だけ秤7で計量する。このとき計量値は秤7に表示されるとともに表示部材10にも表示されるから、表示部材10によって指定量と計量値との差を目で確かめながら計量することができる。このようにして計量が終了したら、その散剤をいずれか1個の容器8に入れたうえこの容器8の識別情報9をバーコードリーダ11によって読取らせる。このようにしてバーコードリーダ11によって読取られた容器8の識別情報9と、この容器8に収容された散剤の表示部材10に表示された調剤情報とは、散剤分包機1に転送されて互いに対応してメモリ12に記憶されるから、前記の容器8が散剤分包機1に運ばれたうえ、この容器8の識別情報9を呼出部材13によって読取らせると、呼出部材13はこの識別情報9に対応した散剤の調剤情報をメモリ12から呼出し、制御部材14はこの呼出された調剤情報にしたがって分割包装装置2を作動させる。そのため容器8に収容された散剤を分割包装装置2の図示しない電磁フィーダのホッパに投入すれば、その散剤は調剤情報に示された流動性状および計量された量に応じた最適の振動数で作動する電磁フィーダから適宜の配分分割機構に配分されたのち、調剤情報に示された分割包数にしたがって分割されて包装されることとなる。」(第2ページ右上欄第15行-第3ページ左上欄第9行)
(イ)第1図
[図:0001411232000001.jpg]
イ 上記アを総合すると、甲1には、以下の甲1発明1及び甲1発明2が、記載されている。
甲1発明1
「調剤すべき散剤の指定量と計量値との差を作業者が目で確かめながら計量し、計量が終了した場合に、容器8の識別情報9と、この容器8に収容された散剤の薬品名、流動性状、計量された量等を含む調剤情報とを、転送する調剤台3と、
散剤を包装する分割包装装置2を作動させる制御部材14、メモリ12、呼出部材13からなる情報処理を行う装置と、
を含むシステムにおける前記情報処理を行う装置であって、
前記調剤台3から転送された前記識別情報9を取得するメモリ12であって、
容器8の前記識別情報9と、薬品名、流動性状、計量された量等を含む前記調剤情報とを互いに対応して記憶するメモリ12と、
散剤分包機1に運ばれた容器8の識別情報9を読み取り、この識別情報9に対応した調剤情報をメモリ12から呼出す呼出部材13と、
この呼び出された調剤情報にしたがって分割包装装置2を作動させる制御部材14と、
を備える情報処理を行う装置。」
甲1発明2
「調剤台3と、散剤を包装する分割包装装置2を作動させる制御部材14、メモリ12、呼出部材13からなる情報処理を行う装置とを含むシステムであって、
前記調剤台3は、
調剤すべき散剤の指定量と計量値との差を作業者が目で確かめながら計量する手段と、
前記計量が終了した場合に、容器8の識別情報9と、この容器8に収容された散剤の薬品名、流動性状、計量された量等を含む調剤情報とを、転送する手段とを備え、
前記情報処理を行う装置は、
前記調剤台3から転送された前記識別情報9を取得するメモリ12であって、
容器8の前記識別情報9と、薬品名、流動性状、計量された量等を含む前記調剤情報とを互いに対応して記憶するメモリ12と、
散剤分包機1に運ばれた容器8の識別情報9を読み取り、メモリ12に記憶されている複数の調剤情報の中から、この識別情報9に対応した調剤情報を呼出す呼出部材13と、
当該調剤情報を包装対象として選択し、選択した調剤情報の散剤を包装するように前記分割包装装置2に指示する制御部材14と、
を備えるシステム。」
(2)甲第2号証の記載
ア 甲第2号証には、次の記載がある。
「このように正しい薬瓶16を取出し、次にその薬瓶16から薬品を計量器12に取り出すと、制御器14がその計量値と処方箋の指定量とを比較し、許容値を越えていれば表示器17にエラー信号を出力する。したがって、エラー信号が無いように分量を調節することにより、指定量だけの薬品を取り出すことができる。」(第3ページ左下欄第16行-右下欄第2行)
イ 上記アから甲第2号証には、「制御器14が計量値と処方箋の指定量とを比較する」ことが記載されている。
(3)甲第5号証の記載
ア 甲第5号証には、次の記載がある。
「【0041】一方、「決定」ボタン13を押すと、図5の調剤画面の「計量値」の欄11に決定した計量値を表示する(190)。例えば、図5のように、「薬剤名」欄10に「サンザイB」、「計量値」欄11に「1.80g」のように表示する。このように薬剤名と計量値が入力されると、処理手段7は用量マスタデータベース6aを検索し、入力された薬剤の用量上限の有無を検索する(200)。このとき、用量上限が登録されていると日数算出処理に進み(210)、登録されていないなら処理120へ戻り、次の薬剤のために処理を繰り返す。なお、図5の例では、サンザイBは用量上限の登録があることを示している。
【0042】日数算出処理(210)では、検索で読み出した用量上限値で計量値を除算することで、日数を算出する。このとき、年齢範囲別の用量上限がある場合は、それぞれの年齢範囲別の日数を算出する。算出した日数は、例えば図7に示すように表示される(220)。この処理(220)で日数が表示されると、調剤者は、表示画面を見て、「サンザイB」が用量上限を有する注意すべき薬剤であることを知ることができる。また、これを知った調剤者は、例えば図6の処方箋に記載された患者の「生年月日」と「本日の日付(調剤年月日)」から「年齢」が11歳11ヶ月であることを知ることができる。そのため、画面に表示された年齢範囲「7歳6ヶ月以上」~「12歳未満」に対応する用量上限→0.50gと日数→3.60日分を見れば、用量上限を超えていることを認識することができる。
【0043】ここで、調剤者は、患者の年齢が12歳直前だし、用量の0.6gは、次の年齢範囲「12歳以上」~「15歳未満」の用量上限である0.67g以下なので、特に、医師に問い合わせることなく、問題なしと判断できる。また、このとき、前記の認識により、他の調剤者に問い合わせたり、患者の過去の薬歴を調べたり、薬剤の添付文書を調べたりの確認作業を行って総合的に判断することができる。
【0044】このような図7に示す用量上限・日数確認画面による判断の結果、この確認画面の「はい」ボタン14を押すと(230)、処理220で退避した調剤画面(図5)を回復し(240)、処理120へ戻る。このとき、さらに調剤する薬剤がある場合は、処理120~240を繰り返す。調剤する薬剤の無い場合は、処理280の印字処理へ進む。」
イ 上記アから甲第5号証には、「薬剤の計量値が予め定められた用量上限を超えているかを確認する」ことが記載されている。
(4)甲第6号証の記載
ア 甲第6号証には、次の記載がある。
「【0097】
その後、決定ボタンが操作されるか、あるいは、天秤台2aから薬品を収容したトレイが取り除かれて所定時間が経過すれば(ステップS8)、秤量枠に表示した値を最終安定値すなわち秤量値として取り込み(ステップS9)、次に説明する常用量チェック処理を実行する(ステップS10)。
【0098】
常用量チェック処理では、前記ステップS4で、バーコードを読み込んでデータベース(薬品データ)を検索した際に読み込んだ常用量に関するデータを使用する。
【0099】
そして、図4のフローチャートに示すように、まず、「日数」、「分数」、「年齢」、「体重」の各ボタン操作後の入力により得られたデータが、薬品マスタにあるか否かを判断する(ステップS21)。いずれのデータもなければ、常用量には、前記薬品名によって特定される成人総量を参考値として表示する(ステップS22)。ここに、成人総量とは、成人であれば1日に服用してよいとされる薬品の総量を意味する。この場合、項目「チェック方法(2:図面では丸付き文字)」には(参)と表示し、常用量のチェックは行わない。つまり、秤量のみが実行されることになる。
【0100】
日数データすなわち処方日数のみが入力されていれば、秤量値を日数で除算し(ステップS23)、1日当たりの処方量を算出する。そして、この処方量と、前記ステップS4で読み込んだ1日当たりの成人の常用量(下限値~上限値)とを比較する(ステップS24)。処方量がこの常用量の範囲になければエラー画面に切り替える(ステップS25)。この場合、スピーカーで報知するようにしてもよい。これにより、確実に医師に相談する等の処置を講ずる必要性があることを報知することが可能となる。
【0101】
日数データに加えて分数データすなわち1日の服用回数が入力されていれば(ステップS26)、ステップS23で算出した処方量をさらに分数で除算し、1回当たりの服用量を算出する(ステップS27)。この場合、薬品を包装する包装紙(薬包)の重量を考慮しておく。そして、この服用量と、前記ステップS4で読み込んだ1回当たりの成人の常用量(下限値~上限値)とを比較する(ステップS28)。その結果、服用量が常用量の範囲になければ、前記同様エラー画面に切り替える(ステップS25)。但し、薬品データに1回当たりの成人の常用量が登録されていなければ、この処理は行わない。
【0102】
年齢データが入力されていれば、ステップS4で読み込んだ各データのうち、該当する年齢帯に入る常用量と比較する(ステップS29)。この場合、日数データのみが入力されているのか、あるいは、さらに分数データが入力されているのかで、比較する対象データが相違する。但し、年齢に応じた常用量が登録されていない場合、15歳未満であれば、前記(数1)に従って算出して得た値を常用量とし、1歳未満であれば、前記(数2)に従って算出して得た値を常用量とする。そして、服用量が常用量の範囲になければ、前記同様エラー画面に切り替える(ステップS25)。
【0103】
体重データが入力されていれば、ステップS4で読み込んだデータのうち、「区」列に「kg」と表示されているデータを参照する。そして、登録された常用量に入力された体重を乗算し、体重に応じた常用量を求める(ステップS30)。体重別の常用量が得られれば、この常用量の範囲内に秤量値があるか否かを判断し(ステップS31)、範囲内になければ、前記同様エラーを報知する(ステップS25)。
【0104】
このようにして、入力された秤量条件に従って常用量チェックを行った結果、秤量値が常用量の範囲内にある場合、「決定」ボタン(15:図面では丸付き文字)がタッチ操作されることにより(ステップS32)、秤量を中止し、最終安定値を取得する(ステップS33)。そして、監査業務画面に切り替え、一覧表に秤量した薬品名と実測値とを表示させる(ステップS34)。この場合、決定した薬品名を読み上げ、再度調剤者が聴覚によっても確認できるようにするのが好ましい。
【0105】
なお、年齢データと体重データの両方が入力されている場合、体重データによる常用量チェックを行う。」
イ 上記アから甲第6号証には、「秤量値について常用量チェック処理を実行する」ことが記載されている。
(5)甲第7号証の記載
ア 甲第7号証には、次の記載がある。
「【0043】そして、秤量作業が適切に果たされると、秤量監査ルーチンによって、分包制御装置40aに対してその旨の電文通知が送出されるとともに、情報処理装置21内で振動設定ルーチン及び清掃指示ルーチンが起動される。そして、振動設定ルーチンによって、散薬フィーダの容量等に基づく振動特性や,秤量対象薬剤の種類に応じて変わる粒度・嵩密度等の特質および秤量値などに基づいて、適切な振動パラメータが決定される又は選出される。その際、秤量対象薬剤の種類や秤量値は、秤量監査ルーチンから渡された実際の秤量結果(計量結果)が用いられるので、秤量データ(計量データ、処方データ)で指示された薬剤が等価な薬効を持つ他の薬剤で代替されていても、常に、薬効以外の特質や秤量値まで反映した適切な振動パラメータが定まる。その決定等は分包制御装置40aに対して通知される。」
イ 上記アから甲第7号証には、「秤量作業が適切に果たされると、秤量監査ルーチンによって、分包制御装置に対して、秤量対象薬剤の種類や秤量値は、実際の秤量結果(計量結果)が渡され、用いられる」ことが記載されている。
3 本件発明1についての当審の判断
本件発明1と甲1発明1とを対比すると、
甲1発明1の「散剤を包装する分割包装装置2を作動させる制御部材14、メモリ12、呼出部材13からなる情報処理を行う装置」は、本件発明1の「薬品を包装する包装装置を制御する情報処理装置」に相当し、
甲1発明の「容器8の前記識別情報9と、薬品名、流動性状、計量された量等を含む前記調剤情報とを互いに対応して記憶するメモリ12」は、本件発明1の「処方箋情報と秤量結果とを特定するための前記特定情報を当該処方箋情報及び秤量結果に対応付けて管理する手段」に相当し、
甲1発明1の「散剤分包機1に運ばれた容器8の識別情報9を読み取り、この識別情報9に対応した調剤情報をメモリ12から呼出す呼出部材13と、この呼び出された調剤情報にしたがって分割包装装置2を作動させる制御部材14」は、本件発明1の「記憶部に記憶されている複数の処方箋情報の中から、前記包装装置により包装する処方箋情報の指定を受け付ける手段」に相当する。
甲1発明1の「容器8の識別情報9と、この容器8に収容された散剤の薬品名、流動性状、計量された量等を含む調剤情報とを、転送する調剤台3」と、本件発明1の「当該処方箋情報と秤量結果とを特定するための特定情報及び前記秤量結果を出力する監査装置」とは、当該処方箋情報と秤量結果とを特定するための特定情報及び前記秤量結果を出力する限りにおいて一致する。
甲1発明1の「前記調剤台3から転送された前記識別情報9を取得するメモリ12」と、本件発明1の「前記監査装置から出力された前記特定情報を取得する手段」とは、出力された特定情報を取得する手段の限りにおいて一致する。
そうすると、両者は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
(相違点1)
本件発明1は、システムが、「処方箋情報に含まれる薬品についての秤量手段による秤量値が予め定められた常用量の範囲内であるかを判断する監査処理が終了し、且つ前記秤量手段による秤量が完了した場合に当該処方箋情報と秤量結果とを特定するための特定情報及び前記秤量結果を出力する監査装置」を含み、情報処理装置が「前記監査装置から出力された」前記特定情報を取得する手段を備えるのに対して、
甲1発明1は、「調剤すべき散剤の指定量と計量値との差を作業者が目で確かめながら計量し、計量が終了した場合に、容器8の識別情報9と、この容器8に収容された散剤の薬品名、流動性状、計量された量等を含む調剤情報とを、転送する調剤台3」を含み、情報処理を行う装置が「前記調剤台3から転送された」前記識別情報9を取得する点。
(相違点2)
本件発明1が、「指定を受け付けた処方箋情報に対応する前記特定情報で特定される前記秤量結果を取得していることを条件に、当該処方箋情報の薬品を包装するように前記包装装置に指示し、指定を受け付けた処方箋情報に対応する前記特定情報で特定される前記秤量結果を取得していないことを条件に、当該処方箋情報の薬品を包装する前記指示を前記包装装置に対して行わない手段」を備えるのに対して、甲1発明1は、「散剤分包機1に運ばれた容器8の識別情報9を読み取り、この識別情報9に対応した調剤情報をメモリ12から呼出す呼出部材13と、この呼び出された調剤情報にしたがって分割包装装置2を作動させる制御部材14と、を備える」点。
上記相違点1、2について検討する。
甲第2号証には、「制御器14が計量値と処方箋の指定量とを比較する」ことが記載されており、甲第5号証には、「薬剤の計量値が予め定められた用量上限を超えているかを確認する」ことが記載されており、甲第6号証には、「秤量値について常用量チェック処理を実行する」ことが記載されており、甲第7号証には、「秤量作業が適切に果たされると、秤量監査ルーチンによって、分包制御装置に対して、秤量対象薬剤の種類や秤量値は、実際の秤量結果(計量結果)が渡され、用いられる」ことが記載されている。
しかし、本件発明1は、「処方箋情報に含まれる薬品についての秤量手段による秤量値が予め定められた常用量の範囲内であるかを判断する監査処理が終了し」たことで、「特定情報及び前記秤量結果を出力」し、「指定を受け付けた処方箋情報に対応する前記特定情報で特定される前記秤量結果を取得していることを条件に、当該処方箋情報の薬品を包装するように前記包装装置に指示し、指定を受け付けた処方箋情報に対応する前記特定情報で特定される前記秤量結果を取得していないことを条件に、当該処方箋情報の薬品を包装する前記指示を前記包装装置に対して行わない」ことにより、「秤量値が常用量の範囲内であるかを判断する監査装置による監査処理が行われていない薬品の包装が包装装置で行われることが防止される」という作用・効果を奏するものであるところ、甲第2号証、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証には、当該事項に関して、記載も示唆もない。
したがって、本件発明1は、甲1発明1及び甲第2号証、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件発明2についての当審の判断
本件発明2と甲1発明2とを対比すると、
甲1発明2の「散剤を包装する分割包装装置2を作動させる制御部材14、メモリ12、呼出部材13からなる情報処理を行う装置」は、本件発明2の「薬品を包装する包装装置を制御する情報処理装置」に相当し、
甲1発明2の「容器8の前記識別情報9と、薬品名、流動性状、計量された量等を含む前記調剤情報とを互いに対応して記憶するメモリ12」は、本件発明2の「処方箋情報と秤量結果とを特定するための前記特定情報を当該処方箋情報及び秤量結果に対応付けて管理する手段」に相当し、
甲1発明2の「散剤分包機1に運ばれた容器8の識別情報9を読み取り、メモリ12に記憶されている複数の調剤情報の中から、この識別情報9に対応した調剤情報を呼出す呼出部材13と、当該調剤情報を包装対象として選択し、選択した調剤情報の散剤を包装するように前記分割包装装置2に指示する制御部材14と」を備えることは、本件発明2の「記憶部に記憶されている複数の処方箋情報の中から、取得した前記特定情報に対応する処方箋情報を包装対象として選択する手段と、選択した処方箋情報の薬品を包装するように前記包装装置に指示する手段と」を備えることに相当する。
甲1発明2の「容器8の識別情報9と、この容器8に収容された散剤の薬品名、流動性状、計量された量等を含む調剤情報とを、転送する手段」と、本件発明2の「前記監査手段による監査処理が終了し、且つ前記秤量手段による秤量が完了した場合に前記処方箋情報と秤量結果とを特定するための特定情報を出力する手段」とは、処方箋情報と秤量結果とを特定するための特定情報を出力する限りにおいて一致する。
甲1発明2の「前記調剤台3から転送された前記識別情報9を取得するメモリ12」と、本件発明2の「前記監査装置から出力された前記特定情報を取得する手段」とは、出力された特定情報を取得する手段の限りにおいて一致する。
そうすると、両者は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。
<相違点>
本件発明2は、システムが「監査装置」を含み、「前記監査装置は、処方箋情報に含まれる薬品についての秤量手段による秤量値が予め定められた常用量の範囲内であるかを判断する監査処理を実行する監査手段と、前記監査手段による監査処理が終了し、且つ前記秤量手段による秤量が完了した場合に前記処方箋情報と秤量結果とを特定するための特定情報を出力する手段とを備え」、情報処理装置が「前記監査装置から出力された」前記特定情報を取得する手段を備えるのに対して、
甲1発明2は、システムが「調剤台3」を含み、「前記調剤台3は、調剤すべき散剤の指定量と計量値との差を作業者が目で確かめながら計量する手段と、前記計量が終了した場合に、容器8の識別情報9と、この容器8に収容された散剤の薬品名、流動性状、計量された量等を含む調剤情報とを、転送する手段とを備え」、情報処理を行う装置が「前記調剤台3から転送された」前記識別情報9を取得する点。
上記相違点について検討する。
甲第2号証には、「制御器14が計量値と処方箋の指定量とを比較する」ことが記載されており、甲第5号証には、「薬剤の計量値が予め定められた用量上限を超えているかを確認する」ことが記載されており、甲第6号証には、「秤量値について常用量チェック処理を実行する」ことが記載されており、甲第7号証には、「秤量作業が適切に果たされると、秤量監査ルーチンによって、分包制御装置に対して、秤量対象薬剤の種類や秤量値は、実際の秤量結果(計量結果)が渡される」ことが記載されている。
しかし、本件発明2は、「監査装置」が「処方箋情報に含まれる薬品についての秤量手段による秤量値が予め定められた常用量の範囲内であるかを判断する監査処理」「が終了し」たことで「特定情報を出力」し、「情報処理装置」が「前記監査装置から出力された前記特定情報を取得する手段」を備え、かつ「記憶部に記憶されている複数の処方箋情報の中から、取得した前記特定情報に対応する処方箋情報を包装対象として選択する手段」及び「選択した処方箋情報の薬品を包装するように前記包装装置に指示する手段」を備えることにより、「秤量値が常用量の範囲内であるかを判断する監査装置による監査処理が行われていない薬品の包装が包装装置で行われることが防止される」という作用・効果を奏するものであるところ、甲第2号証、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証には、当該事項に関して、記載も示唆もない。
したがって、本件発明2は、甲1発明2及び甲第2号証、甲第5号証、甲第6号証、甲第7号証に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1、2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-700538