特許異議申立
2025-700435
圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板
- 審判番号
- 2025-700435
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-068061
- 登録番号
- 7569626
- 請求日
- 2025年04月17日
- 審決日
- 2026年06月19日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】メクテック株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人秀和特許事務所
- 【異議申立人】山口 真知子
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 孝明
- 審判官 山田 由希子
- 審判官 岩瀬 昌治
- 分類
- P1651.113-YAA(H01R) / P1651.121-YAA(H01R)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7569626号発明「圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7569626号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第7569626号の請求項3、4に係る特許を維持する。
特許第7569626号の請求項1、2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7569626号(以下「本件特許」という。)の請求項1~4に係る特許についての出願は、令和2年4月6日に出願され、令和6年10月9日に特許権の設定登録がされ、同年10月18日に特許掲載公報が発行された。
その後、特許異議申立人 山口真知子(以下「申立人」という。)により、請求項1~4に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。本件特許異議の申立ての経緯は、概略、次のとおりである。
令和7年 4月17日 申立人による特許異議の申立て
令和7年10月 1日付け 取消理由通知書
令和7年11月14日 特許権者による訂正請求書及び意見書の提出
令和7年12月19日 特許権者による手続補正書の提出
令和8年 3月26日 申立人による意見書の提出
以下、令和7年11月14日に提出され、令和7年12月19日に補正された訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の請求は、特許第7569626号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~4につ いて訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は次のとおりである(下線は訂正箇所を示す。)。
(訂正事項1)
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(訂正事項2)
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(訂正事項3)
特許請求の範囲の請求項3に「複数の前記圧着片の少なくとも一部は、前記一部の領域以外の領域に配されており、これらの圧着片は前記ベースフィルム及び前記カバーフィルムを貫通した状態で前記回路の一部に食い込んでいることを特徴とする請求項1に記載の圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板。」と記載されているのを、独立形式に改め、「ベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面に設けられる金属箔により構成される回路と、前記回路を挟み込むように前記ベースフィルムに貼り合わされるカバーフィルムとを有するフレキシブルプリント配線板と、
圧着されることで、前記回路が設けられていない領域において前記フレキシブルプリント配線板を貫通し、かつ折り曲げ加工が施されて前記回路の一部に食い込む圧着片を複数備える圧着端子と、
を含む、圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板であって、
前記フレキシブルプリント配線板の一部の領域においては前記カバーフィルムが設けられずに前記回路の一部が露出されており、複数の前記圧着片のうちの少なくとも一部は、前記一部の領域に配されることで、前記カバーフィルムを貫通することなく前記回路の一部に食い込んでおり、
複数の前記圧着片の少なくとも一部は、前記一部の領域以外の領域に配されており、これらの圧着片は前記ベースフィルム及び前記カバーフィルムを貫通した状態で前記回路の一部に食い込んでいることを特徴とする、圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板。」に訂正する。(請求項3の記載を直接的に引用する請求項4も同様に訂正する)。
2 本件訂正の適否について
(1)訂正事項1、2について
ア 訂正の目的について
訂正事項1、2は、訂正前の請求項1、2を削除するというものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項1、2は、訂正前の請求項1、2を削除するというものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項1、2は、訂正前の請求項1、2を削除するというものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(2)訂正事項3について
ア 訂正の目的について
本件訂正前の請求項3は請求項1を引用していたところ、訂正事項3に係る訂正は、請求項3について請求項間の引用関係を解消して独立形式の請求項へ改めるための訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定する「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
訂正事項3に係る本件訂正は、請求項間の引用関係を解消して独立形式の請求項へ改めるための訂正であって、実質的な内容の変更を伴うものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項に適合するものである。
ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
訂正事項3は、請求項間の引用関係を解消して独立形式の請求項へ改めるための訂正であって、実質的な内容の変更を伴うものではないから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項に適合するものである。
(3)独立特許要件について
本件訂正前のすべての請求項について特許異議の申立てがされているので、独立特許要件は課されない。
(4)一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~4は請求項1を直接又は間接的に引用する関係であるから、請求項1~4は一群の請求項である。
そして、本件訂正請求は、請求項1~4について訂正することを求めるものであるから、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに当該請求がされたものである。
(5)まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであって、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~4に係る発明(以下「本件発明1」などということがある。)は、特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりである。
【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
ベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面に設けられる金属箔により構成される回路と、前記回路を挟み込むように前記ベースフィルムに貼り合わされるカバーフィルムとを有するフレキシブルプリント配線板と、
圧着されることで、前記回路が設けられていない領域において前記フレキシブルプリント配線板を貫通し、かつ折り曲げ加工が施されて前記回路の一部に食い込む圧着片を複数備える圧着端子と、
を含む、圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板であって、
前記フレキシブルプリント配線板の一部の領域においては前記カバーフィルムが設けられずに前記回路の一部が露出されており、複数の前記圧着片のうちの少なくとも一部は、前記一部の領域に配されることで、前記カバーフィルムを貫通することなく前記回路の一部に食い込んでおり、
複数の前記圧着片の少なくとも一部は、前記一部の領域以外の領域に配されており、これらの圧着片は前記ベースフィルム及び前記カバーフィルムを貫通した状態で前記回路の一部に食い込んでいることを特徴とする、圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記カバーフィルムにおける前記一部の領域との境界線は波形となるように形成されていることを特徴とする請求項3に記載の圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板。
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
本件訂正前の請求項1及び2に係る特許に対して、当審合議体が令和7年10月1日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
(1)取消理由1(新規性)
請求項1及び2に係る発明は、本件特許についての出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2(進歩性)
請求項1及び2に係る発明は、本件特許についての出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
甲第1号証:Application Specification 114-94383,[online],2018年8月14日,TE Connectivity family of companies,[令和7年4月10日検索],インターネット <URL:https://www.te.com/commerce/DocumentDelivery/DDEController?Action=showdoc&DocId=Specification+Or+Standard%7F114-94383%7FE%7Fpdf%7FGerman%7FGER_SS_114-94383_E.pdf%7F1-2291853-1>
2 当審における判断
本件訂正前の請求項1及び2は、上記第3のとおり、本件訂正により削除されたから、上記取消理由1及び2は理由がないものとなった。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要
取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
(1)本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、又は、甲第1号証に記載の発明に甲第2号証に記載した技術的事項を適用し、又は、これらに甲第3号証に記載された技術的事項を適用し、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)本件特許の請求項4に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に甲第4号証又は甲第5号証に記載された技術的事項を適用し、又は、甲第1号証に記載の発明に甲第2号証に記載した技術的事項並びに甲第4号証又は甲第5号証に記載された技術的事項を適用し、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。
2 申立人の証拠方法
申立人提出の証拠方法は、上記第4の1で示した甲第1号証及び以下に示すとおりである。
甲第2号証:Application Specification 114-94449,[online],2017年3月20日,TE Connectivity family of companies,[令和7年4月10日検索],インターネット<URL:https://www.te.com/commerce/DocumentDelivery/DDEController?Action=showdoc&DocId=Specification+Or+Standard%7F114-94449%7FB%7Fpdf%7FEnglish%7FENG_SS_114-94449_B.pdf%7FN-A>
甲第3号証:特開2003-203703号公報
甲第4号証:特開2013-45818号公報
甲第5号証:特開2012-89710号公報
以下、甲第1号証~甲第5号証を、それぞれ「甲1」~「甲5」という。
3 甲号証の記載
(1)甲1について
ア 甲1には、以下の記載がある(申立人が提出した甲1訳文に基づき、甲1の摘記箇所に続けて、これに対応した訳文を丸括弧内に記載する。)。
(ア)「
[図:0001439190000001.jpg]
」(21 of 39ページ)
(
[図:0001439190000002.jpg]
)
(イ)「
[図:0001439190000003.jpg]
」(23 of 39 ページ)
(
[図:0001439190000004.jpg]
[図:0001439190000005.jpg]
[図:0001439190000006.jpg]
[図:0001439190000007.jpg]
)
(ウ)「
[図:0001439190000008.jpg]
」(25 of 39 ページ)
(
[図:0001439190000009.jpg]
[図:0001439190000010.jpg]
[図:0001439190000011.jpg]
)
(エ)「
[図:0001439190000012.jpg]
」(29 of 39ページ)
(
[図:0001439190000013.jpg]
[図:0001439190000014.jpg]
)
(オ)「
[図:0001439190000015.jpg]
」(32 of 39 ページ)
(
[図:0001439190000016.jpg]
[図:0001439190000017.jpg]
[図:0001439190000018.jpg]
[図:0001439190000019.jpg]
[図:0001439190000020.jpg]
[図:0001439190000021.jpg]
)
(カ)「
[図:0001439190000022.jpg]
」(34 of 39 ページ)
(
[図:0001439190000023.jpg]
[図:0001439190000024.jpg]
)
(キ)「
[図:0001439190000025.jpg]
」(36 of 39ページ)
(
[図:0001439190000026.jpg]
[図:0001439190000027.jpg]
)
(ク)「
[図:0001439190000028.jpg]
」(39 of 39ページ)
(
[図:0001439190000029.jpg]
)
イ 上記アの記載を総合すると、甲1には、次の甲1発明が記載されていると認められる。
[甲1発明]
絶縁材料からなるベースホイルと、前記ベースホイルの表面に設けられCu からなる導体ホイルと、前記導体ホイルを挟み込むように前記ベースホイルに貼り合わされたカバーホイルからなるフレキシブル・プリント回路と、
圧着されると、前記フレキシブル・プリント回路の圧着領域において、前記導体ホイルを穿刺せずに前記ベースホイル及びカバーホイルを穿刺し、かつ折れ曲がることで、前記導体ホイルの表面に食い込んで接触するFFC/FPCコンタクト圧着タインを複数備える圧着レセプタクルコンタクトと、
を含む、圧着レセプタクルコンタクトを備えるフレキシブル・プリント回路であって、
前記フレキシブル・プリント回路の前記圧着領域において前記カバーホイルが剥離された場合には、複数の前記FFC/FPCコンタクト圧着タインのすべては、前記圧着領域において、前記カバーホイルを穿刺することなく、前記導体ホイルの表面に食い込んで接触する、圧着レセプタクルコンタクトを備えるフレキシブル・プリント回路。
(2)甲2について
ア 甲2には、以下の記載がある(申立人が提出した甲2訳文に基づき、甲2の摘記箇所に続けて、これに対応した訳文を丸括弧内に記載する。)。
(ア) 「
[図:0001439190000030.jpg]
」(1 of 5ページ)
(
[図:0001439190000031.jpg]
)
(イ) 「
[図:0001439190000032.jpg]
」(1 of 5ページ)
(
[図:0001439190000033.jpg]
[図:0001439190000034.jpg]
[図:0001439190000035.jpg]
)
(ウ) 「
[図:0001439190000036.jpg]
[図:0001439190000037.jpg]
」(2 of 5ページ)
(
[図:0001439190000038.jpg]
[図:0001439190000039.jpg]
[図:0001439190000040.jpg]
)
(エ) 「
[図:0001439190000041.jpg]
」(2 of 5ページ)
(
[図:0001439190000042.jpg]
[図:0001439190000043.jpg]
[図:0001439190000044.jpg]
)
(オ) 「
[図:0001439190000045.jpg]
[図:0001439190000046.jpg]
」(3 of 5ページ)
(
[図:0001439190000047.jpg]
[図:0001439190000048.jpg]
)
(カ) 「
[図:0001439190000049.jpg]
[図:0001439190000050.jpg]
」(3 of 5ページ)
(
[図:0001439190000051.jpg]
[図:0001439190000052.jpg]
[図:0001439190000053.jpg]
)
(キ) 「
[図:0001439190000054.jpg]
」(4 of 5ページ)
(
[図:0001439190000055.jpg]
[図:0001439190000056.jpg]
)
(ク) 「
[図:0001439190000057.jpg]
[図:0001439190000058.jpg]
」(4 of 5ページ)
(
[図:0001439190000059.jpg]
[図:0001439190000060.jpg]
)
(ケ) 「
[図:0001439190000061.jpg]
[図:0001439190000062.jpg]
[図:0001439190000063.jpg]
」(5 of 5ページ)
(
[図:0001439190000064.jpg]
[図:0001439190000065.jpg]
)
(コ) 「
[図:0001439190000066.jpg]
」(5 of 5ページ)
(
[図:0001439190000067.jpg]
)
イ 上記ア、特に(ウ)、(オ)及び(ケ)に着目すると、甲2には、次の甲2に記載された技術的事項が記載されていると認められる。
[甲2に記載された技術的事項]
FFC圧着端子の全ての圧着タインがFFCに圧入され、圧着エリアが導体の中央にあり、全ての圧着タインが導体を覆っており、導体は圧着タインの中央に配置され、導体が圧着エリアの中央にあること。
(3)甲3について
甲3の【請求項1】、【0001】、【0004】、【0005】、【0023】~【0030】及び【0032】並びに図面に記載された事項を総合すると、甲3には、次の甲3に記載された技術的事項が記載されていると認められる。
[甲3に記載された技術的事項]
端子(ピアス端子)1側に複数の突き刺し刃3を配線材の長さ方向に間隔を置いて設け、上記突き刺し刃群3を、偏平な導体(通常は導電性の金属箔)6とこの導体6の表裏両面を覆う電気絶縁性フィルムから成る被覆材7から成るフレキシブルフラットケーブル5に、上記導体6を厚み方向に貫通する状態でかしめ固着して端子(ピアス端子)1とフレキシブルフラットケーブル5を接続する構造において、上記フレキシブルフラットケーブル5における端子(ピアス端子)1との接続部分で上記被覆材7のうち片面の被覆材7のみ長さ方向一部を除去して導体6を露出させ、上記突き刺し刃群3を上記導体6の露出部分5aと被覆部分5bとに長さ方向に跨ってかしめ固着する端子(ピアス端子)1とフレキシブルフラットケーブル5の接続構造。
(4)甲4について
甲4の【請求項1】、【請求項5】、【0001】、【0021】及び【0029】並びに図面に記載された事項を総合すると、甲4には、次の甲4に記載された技術的事項が記載されていると認められる。
[甲4に記載された技術的事項]
基材層11と、該基材層11上に形成される配線回路12aと、前記基材層11及び前記配線回路12aを被覆する感光性樹脂からなる絶縁層13とからなるフレキシブルプリント配線板10であって、前記絶縁層13で被覆される絶縁層被覆領域Q1と前記絶縁層13で被覆されない絶縁層非被覆領域Q2とを備えるものにおいて、前記絶縁層13が波形の端面13-1を有することにより、前記絶縁層被覆領域Q1と前記絶縁層非被覆領域Q2との境界線が波形であること。
(5)甲5について
甲5の【請求項1】、【請求項9】、【0001】、【0013】~【0018】及び【0029】並びに図面に記載された事項を総合すると、甲5には、次の甲5に記載された技術的事項が記載されていると認められる。
[甲5に記載された技術的事項]
フレキシブルプリント配線板10が、表面に導体パターン11が設けられたベース層12と、前記ベース層12の端部で前記表面および前記導体パターン11が露出された状態に前記表面および前記導体パターン11を覆う第一の層13と、前記ベース層12の端部の裏面を覆う第二の層14と、を有し、前記第一の層13の前記端部側の第一の端縁13a、および当該第一の端縁の裏側に配置された前記第二の層14の第二の端縁14aのうち少なくとも一方が波状の凹凸形状を有したこと。
4 当審における判断
以下、「本件特許の請求項3に係る発明」は「本件発明3」、「本件特許の請求項4に係る発明」は「本件発明4」という。
(1)上記1(1)について
ア 本件発明3と甲1発明の対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「絶縁材料からなるベースホイル」は、本件発明3の「ベースフィルム」に相当し、以下同様に、「Cu からなる導体ホイル」は「金属箔により構成される回路」に、「カバーホイル」は「カバーフィルム」に、「フレキシブル・プリント回路」は「フレキシブルプリント配線板」に相当する。
また、甲1発明の「圧着されると、前記フレキシブル・プリント回路の圧着領域において、前記導体ホイルを穿刺せずに前記ベースホイル及びカバーホイルを穿刺」することは、本件発明3の「圧着されることで、前記回路が設けられていない領域において前記フレキシブルプリント配線板を貫通」することに相当し、以下同様に「折れ曲がることで、前記導体ホイルの表面に食い込んで接触する」ことは「折り曲げ加工が施されて前記回路の一部に食い込む」ことに相当するから、甲1発明の「FFC/FPCコンタクト圧着タイン」及びこれを複数備える「圧着レセプタクルコンタクト」は、それぞれ本件発明3の「圧着片」及び「圧着端子」に相当する。
そして、甲1発明の「フレキシブル・プリント回路」の「前記圧着領域」は、本件発明3の「前記フレキシブルプリント配線板の一部の領域」に相当し、甲1発明の「前記フレキシブル・プリント回路の前記圧着領域において前記カバーホイルが剥離された場合」とは、フレキシブル・プリント回路のカバーホイルが剥離されたことにより、導体ホイルの一部が露出することであるから、本件発明3の「前記フレキシブルプリント配線板の一部の領域においては前記カバーフィルムが設けられずに前記回路の一部が露出されて」いることに相当する。
以上を総合すると、本件発明3と甲1発明とは、次の一致点で一致し、次の相違点で相違する。
[一致点]
ベースフィルムと、前記ベースフィルムの表面に設けられる金属箔により構成される回路と、前記回路を挟み込むように前記ベースフィルムに貼り合わされるカバーフィルムとを有するフレキシブルプリント配線板と、
圧着されることで、前記回路が設けられていない領域において前記フレキシブルプリント配線板を貫通し、かつ折り曲げ加工が施されて前記回路の一部に食い込む圧着片を複数備える圧着端子と、
を含む、圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板であって、
前記フレキシブルプリント配線板の一部の領域においては前記カバーフィルムが設けられずに前記回路の一部が露出されている、圧着端子を備えるフレキシブルプリント配線板。
[相違点]
本件発明3は「複数の前記圧着片のうちの少なくとも一部は、前記一部の領域に配されることで、前記カバーフィルムを貫通することなく前記回路の一部に食い込んでおり、複数の前記圧着片の少なくとも一部は、前記一部の領域以外の領域に配されており、これらの圧着片は前記ベースフィルム及び前記カバーフィルムを貫通した状態で前記回路の一部に食い込んでいる」のに対し、甲1発明は「複数の前記FFC/FPCコンタクト圧着タインのすべては、前記圧着領域において、前記カバーホイルを穿刺することなく、前記導体ホイルの表面に食い込んで接触する」点。
イ 判断
上記相違点に関し、甲2~5に記載された技術的事項について検討する。
まず、甲2に記載された技術的事項は、上記相違点に係る本件発明3の構成とは無関係であるから、これを甲1発明に適用したとしても、上記相違点に係る本件発明3のように構成されることはない。
次に、端子(ピアス端子)1の突き刺し刃3が導体6を厚み方向に貫通する甲3に記載された技術的事項は、「ピアシング方式によって端子とフラット配線材を接続するに当たって端子接続部分で被覆材を部分的に除去する被覆除去方式をとりながら、配線材強度を確保できるとともに、非接着式の配線材においても被覆材の剥離を防止することができる端子とフラット配線材の接続方法及び接続構造を提供する」(甲3の【0015】)という課題を解決するものであるところ、甲1発明はFFC/FPCコンタクト圧着タインが導体ホイルを穿刺せずにベースホイル及びカバーホイルを穿刺するものであって、前提となる構成が異なるから、甲1発明に甲3に記載された技術的事項を適用する動機付けはない。
また、前記前提となる構成が異なることを無視するとしても、甲1の「FFC圧着端子付きNanoMQS端子の仕様書」(上記3(1)ア(ア))という記載からみて、甲1発明はFFC圧着端子付きNanoMQS端子の仕様の一つとして具体化されたものであることが明らかであるところ、甲1には、甲1発明におけるカバーホイルが剥離される領域について、更に変形することについて記載又は示唆されていないのであるから、甲1発明について、甲3に記載された技術的事項を参考にして都合良く上記相違点に係る本件発明3のように構成することは、当業者が設計上適宜になし得たこととはいえない。
したがって、本件発明3は、甲1発明に基いて、又は、甲1発明に甲2に記載した技術的事項を適用し、又は、これらに甲3に記載された技術的事項を適用し、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、上記1(1)については理由がない。
(2)上記1(2)について
本件発明4は、本件発明3を「前記カバーフィルムにおける前記一部の領域との境界線は波形となるように形成されていることを特徴とする」ことで更に限定するものであるところ、本件発明3については上記(1)イのとおりであるから、本件発明4は、甲第1号証に記載された発明に甲第4号証又は甲第5号証に記載された技術的事項を適用し、又は、甲第1号証に記載の発明に甲第2号証に記載した技術的事項並びに甲第4号証又は甲第5号証に記載された技術的事項を適用し、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、上記1(2)については理由がない。
5 申立人の主張について
ア 申立人は、令和8年3月26日に提出した意見書において、「甲1発明と、甲3発明とは、何れも、フレキシブルフラットケーブル(FFC) 及びフレキシブルプリントサーキット(FPC)に関するものであり、これらの端部に導体を露出させ、コンタクト圧着タインを複数備える圧着レセプタクルコンタクトを取り付ける点において技術分野が共通している。」(10ページ21~24行)、「甲1発明は、甲3発明を実施するためのコンタクト圧着タインを複数備える圧着レセプタクルコンタクトが記載されていると言え、甲1発明を知る当業者が、甲3の図3を引用し、甲1の図9に示す変形例1及び2において、導体露出部分と被覆部分とを設け、構成要件C2を着想することは容易である。」(11ページ1~4行)と主張するが、甲1発明に甲3に記載された技術的事項を適用することについては、上記4(1)イに示すとおりであるから、申立人の当該主張を採用することはできない。
イ 申立人は、令和8年3月26日に提出した意見書において、「・甲3発明 A:間隔を置いて平行に配置した複数の偏平導体(通常は導電性の金属箔)6…の表裏両面を電気絶縁性フィルムから成る被覆材7,7で一括被覆して構成されるフレキシブルフラットケーブル5と、 B:かしめ固着されることにより、突き刺し刃3…がケーブル5の端末で導体6を表裏の被覆体7,7ごと貫通した状態で内向きに折り曲げてかしめる、複数の突き刺し刃3…を備える端子(ピアス端子)1と、を含む、端子1を備えるフレキシブルフラットケープル5であって、 C:フレキシブルフラットケーブル5における導体露出部分5aにおいては被覆材7の長さ方向一部を除去して導体6が露出されており、端子(ピアス端子)1の突き刺し刃3…の一部が、除去された被覆材7を貫通することなく、導体露出部分5aに跨ってかしめ固着されており、 C2:突き刺し刃3…の一部が、長さ方向に跨って被覆部分5bにかしめ固着されている、端子(ピアス端子)1とフレキシブルフラットケーブル5の接続方法。」(7ページ11~25行)を前提として「当業者が、甲3発明を実施するときに、フレキシブルプリントサーキットとして、甲1の表2に記載されているようなフレキシブルプリント回路を用い、圧着レセプタクルコンタクトにおけるコンタクト圧着タインを、導体ホイルを穿刺せずにベースホイル及びカバーホイルを穿刺し、かつ折れ曲がることで、導体ホイルの表面に食い込んで接触させることを着想することは容易である。すなわち、甲3発明を知る当業者が、甲3発明に、甲1を引用し、構成要件Bを着想することは容易であり、本件訂正特許発明3は進歩性が欠如している。」(13ページ12~19行)と主張するが、異議申立書において異議申立人が主張した特許異議申立理由は上記1のとおりであって、甲3発明を主引用発明とする主張はしていなかったのであるから、申立人の当該主張はもとより採用することはできない。
それは措いて、申立人の当該主張について検討したとしても、甲3に記載された発明は「ピアシング方式によって端子とフラット配線材を接続するに当たって端子接続部分で被覆材を部分的に除去する被覆除去方式をとりながら、配線材強度を確保できるとともに、非接着式の配線材においても被覆材の剥離を防止することができる端子とフラット配線材の接続方法及び接続構造を提供する」(甲3の【0015】)という課題を解決するものであるから、例え、圧着レセプタクルコンタクトにおけるコンタクト圧着タインを、導体ホイルを穿刺せずにベースホイル及びカバーホイルを穿刺し、かつ折れ曲がることで、導体ホイルの表面に食い込んで接触させることが周知・公知の技術であったとしても、そのことのみをもって、ただちに、甲3発明において、相違点に係る本件発明3のように構成することが、動機付けられるものではない。
したがって、申立人の当該主張を採用することはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によっては、本件の請求項3、4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項3、4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項1、2は本件訂正により削除された。これにより、請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立は、申立の対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700435