特許異議申立
2022-701118
管理システム、管理プログラム
- 審判番号
- 2022-701118
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-074576
- 登録番号
- 7070754
- 請求日
- 2022年11月15日
- 審決日
- 2023年12月27日
- 公報発行日
- 2024年05月31日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社湯山製作所
- 【権利者代理人】種村 一幸
- 【権利者代理人】華山 浩伸
- 【異議申立人】中谷 浩美
- 審判長/審判官
- 審判長 内藤 真徳
- 審判官 後藤 泰輔
- 審判官 栗山 卓也
- 分類
- P1651.113-ZAA(A61J) / P1651.121-ZAA(A61J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第7項、特許法第113条第2号、特許法第120条の8
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7070754号発明「管理システム、管理プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7070754号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について、訂正することを認める。
特許第7070754号の請求項2、3、5に係る特許を取り消す。
特許第7070754号の請求項1、4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7070754号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~5に係る特許についての出願は、平成24年 5月22日(以下「原出願日」という。)に出願された特願2012-116301号の一部を平成28年 6月29日に新たな特許出願とした特願2016-129162号の一部を平成30年 4月17日に新たな特許出願とした特願2018-79298号の一部を令和 1年 7月 2日に新たな特許出願とした特願2019-123361号の一部を、さらに令和 3年 4月27日に新たな特許出願としたものであって、令和 4年 5月10日にその特許権の設定登録がされ、同年 5月18日に特許掲載公報が発行されたところ、同年11月15日に特許異議申立人中谷浩美より全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。
その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和 5年 1月31日付け 取消理由通知書
同年 3月30日提出 意見書(特許権者)
同年 7月20日付け 取消理由通知書(決定の予告)
同年 9月21日提出 意見書(特許権者)及び訂正請求書
以下、令和5年 9月21日提出の訂正請求書に係る訂正を「本件訂正」という。
第2 本件訂正の適否
1 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記区切り処理は、空の前記薬包を設けることである、請求項1に記載の管理システム。」と記載されているのを、「分包データに基づいて、一連の包装材料で形成される複数の薬包に医薬品を分包する薬品分包処理を実行する薬品分包装置と、
入力された複数の患者に対応する複数の処方データに基づいて、前記複数の患者に処方された複数の医薬品を、複数の前記患者を含む予め設定された配薬グループ単位で当該配薬グループに含まれる全ての患者の同一服用時期の前記薬包が連続体となり且つ前記配薬グループ単位で全ての服用時期に対応する前記薬包の連続体が連続するように前記薬包各々に分包することを指示する分包データを、前記分包装置に出力する分包データ出力手段と、
前記分包データ出力手段から出力された前記分包データに基づいて前記薬品分包装置によって実行される前記薬品分包処理において、同一の前記配薬グループにおける前記服用時期が切り替わることにより区切り処理を実行し、同一の前記配薬グループにおける前記患者が切り替わることでは前記区切り処理を実行しない制御部と、
を備え、
前記区切り処理は、空の前記薬包を設けることである、
管理システム。」に訂正する(請求項2を引用する請求項3も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5に「複数の前記患者を含む予め設定された配薬グループ単位で当該配薬グループに含まれる異なる患者の同一服用時期の前記薬包が連続体となるように前記薬包各々に分包することを指示する分包データ」と記載されているのを、「複数の前記患者を含む予め設定された配薬グループ単位で当該配薬グループに含まれる全ての患者の同一服用時期の前記薬包が連続体となり且つ前記配薬グループ単位で全ての服用時期に対応する前記薬包の連続体が連続するように前記薬包各々に分包することを指示する分包データ」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に「区切り処理」と記載されているのを、「空の前記薬包を設ける区切り処理」に訂正する。
2 訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合し、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
ア.訂正の目的について
訂正事項2は、請求項2について、請求項1を引用しない独立形式に改め、連続体となるように分包する分包データを、「配薬グループに含まれる異なる患者の同一服用時期の前記薬包」から、「配薬グループに含まれる全ての患者の同一服用時期の前記薬包」且つ「配薬グループ単位で全ての服用時期に対応する前記薬包」に限定するものである。
したがって、訂正事項2は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものである。
イ.実質上特許請求の範囲を拡大し、又は変更するものでないこと
訂正事項2は、上記アで示したとおりであって、請求項2に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項2については、本件明細書の段落【0054】の「図10に示す前記薬包連続体72は、同一処方時期ごとに対応する薬包連続体72A~72Fの右端部及び左端部が連続したものである。例えば、図10に示す前記薬包連続体72では、2月4日(土)の朝食後、昼食後、夕食後、2月5日(日)の朝食後、昼食後、夕食後のそれぞれに対応する薬包連続体72A~72Fが空の薬包71Bを介して連続している。具体的に、前記薬包連続体72Aでは、2月4日(土)の朝食後に服用するべき、湯山一郎、田中一郎、川田朝子、湯山二郎、山田花子、山中末子各々の医薬品が連続する前記薬包71各々に分包されており、その後に前記空の薬包71Bが含まれている。」との記載及び図10の記載からして、本件明細書等に記載した事項の範囲内である。
したがって、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
訂正事項3は、請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合し、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(4)訂正事項4について
ア.訂正の目的について
訂正事項4は、請求項5について、連続体となるように分包する分包データを、「配薬グループに含まれる異なる患者の同一服用時期の前記薬包」から、「配薬グループに含まれる全ての患者の同一服用時期の前記薬包」且つ「配薬グループ単位で全ての服用時期に対応する前記薬包」に限定するものである。
したがって、訂正事項4は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
イ.実質上特許請求の範囲を拡大し、又は変更するものでないこと
訂正事項4は、上記アで示したとおりであって、請求項5に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項4については、本件明細書の段落【0054】の「図10に示す前記薬包連続体72は、同一処方時期ごとに対応する薬包連続体72A~72Fの右端部及び左端部が連続したものである。例えば、図10に示す前記薬包連続体72では、2月4日(土)の朝食後、昼食後、夕食後、2月5日(日)の朝食後、昼食後、夕食後のそれぞれに対応する薬包連続体72A~72Fが空の薬包71Bを介して連続している。具体的に、前記薬包連続体72Aでは、2月4日(土)の朝食後に服用するべき、湯山一郎、田中一郎、川田朝子、湯山二郎、山田花子、山中末子各々の医薬品が連続する前記薬包71各々に分包されており、その後に前記空の薬包71Bが含まれている。」との記載及び図10の記載からして、本件明細書等に記載した事項の範囲内である。
したがって、訂正事項4は、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(5)訂正事項5について
ア.訂正の目的について
訂正事項5は、請求項5について、「区切り処理」を「空の前記薬包を設ける区切り処理」に限定するものである。
したがって、訂正事項5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
イ.実質上特許請求の範囲を拡大し、又は変更するものでないこと
訂正事項5は、上記アで示したとおりであって、請求項5に記載された発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。
ウ.願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内であること
訂正事項5については、本件明細書の段落【0052】の「ステップS171において、前記制御部41は、前記服用時期が切り替わるタイミングを明示するための分包の区切り処理を実行する。例えば、前記区切り処理は、空の前記薬包71を一つ設けることである。」との記載からして、本件明細書等に記載した事項の範囲内である。
したがって、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。
(6)一群の請求項について
訂正事項1~3に係る訂正前の請求項1~4について、訂正前の請求項2~4は、いずれも訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正事項1によって訂正される訂正前の請求項1との関係で一群の請求項を構成するものである。
したがって、本件訂正は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。
(7)独立特許要件について
本件においては、訂正前の請求項1~5について特許異議の申立てがされているので、訂正事項1-5に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(8)小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。
第3 取消理由の概要
訂正前の請求項1~5に係る特許に対して、当審で令和 5年 7月20日付け取消理由通知書(決定の予告)により通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
請求項1~5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~5に係る発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
刊行物一覧:
甲第1号証:実願昭61-76705号(実開昭62-188403号)のマイクロフィルム(以下、「甲1」という。)
甲第2号証:特開平6-227526号公報(以下、「甲2」という。)
甲第3号証:特表2003-512088号公報(以下、「甲3」という。)
第4 当審の判断
1 本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項2、3、5に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明2」、「本件特許発明3」、「本件特許発明5」といい、それらをまとめて「本件特許発明」という。)は、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の請求項2、3、5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項2】
分包データに基づいて、一連の包装材料で形成される複数の薬包に医薬品を分包する薬品分包処理を実行する薬品分包装置と、
入力された複数の患者に対応する複数の処方データに基づいて、前記複数の患者に処方された複数の医薬品を、複数の前記患者を含む予め設定された配薬グループ単位で当該配薬グループに含まれる全ての患者の同一服用時期の前記薬包が連続体となり且つ前記配薬グループ単位で全ての服用時期に対応する前記薬包の連続体が連続するように前記薬包各々に分包することを指示する分包データを、前記分包装置に出力する分包データ出力手段と、
前記分包データ出力手段から出力された前記分包データに基づいて前記薬品分包装置によって実行される前記薬品分包処理において、同一の前記配薬グループにおける前記服用時期が切り替わることにより区切り処理を実行し、同一の前記配薬グループにおける前記患者が切り替わることでは前記区切り処理を実行しない制御部と、
を備え、
前記区切り処理は、空の前記薬包を設けることである、
管理システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記空の薬包に、当該空の薬包の前に連なっている各薬包の内容に関する検薬用又は鑑査用の情報を印字する、
請求項2に記載の管理システム。
【請求項5】
分包データに基づいて、一連の包装材料で形成される複数の薬包に医薬品を分包する薬品分包ステップと、
入力された複数の患者に対応する複数の処方データに基づいて、前記複数の患者に処方された複数の医薬品を、複数の前記患者を含む予め設定された配薬グループ単位で当該配薬グループに含まれる全ての患者の同一服用時期の前記薬包が連続体となり且つ前記配薬グループ単位で全ての服用時期に対応する前記薬包の連続体が連続するように前記薬包各々に分包することを指示する分包データに基づいて実行される前記薬品分包ステップにおいて、同一の前記配薬グループにおける前記服用時期が切り替わることにより空の前記薬包を設ける区切り処理を実行し、同一の前記配薬グループにおける前記患者が切り替わることでは前記区切り処理を実行しないステップと、
をコンピュータに実行させるための管理プログラム。」
2 甲各号証の記載、甲1発明
(1)甲1の記載事項及び甲1発明
取消理由通知書において引用した甲1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
ア.「そして従来のこの種の薬剤分包機、たとえば錠剤分包機においては、1人の患者について何と何の錠剤を1日の各服用回ごとにそれぞれ何錠ずつ分包するかという形式で処方情報を入力するようになっていて、そのため表示部材には患者1人分の処方情報に示された複数の錠剤が表示されて、これらが各服用回分ずつまとめて一連に分包されるようになっている。」(第3ページ第1-8行)
イ.「しかしなから、一般に病院の病棟には多数の患者が入院していて、これらの患者に対する投薬の管理を行わなければならないため、従来のもののように患者別に1日複数回分の錠剤が一連に分包されたのでは、複数の患者についてのこれらの分包体を各服用回分ずつ分離したうえ投薬スケジュールにしたがって並べ直さなければならず、しかもたとえば夕食の前後や就寝前に投薬すべき錠剤についてはその時間になるまで多数の分包体のまま保管しておかなければならず、そのため分包体の取扱いが煩わしくて不便である等の問題点があった。」(第3ページ第10行-第4ページ第1行)
ウ.「第1、2図はこの考案の一実施例を示し、1は各種の錠剤を収容した図示しない多数の錠剤フィーダと、任意の錠剤フィーダから排出された錠剤を各服用回分ずつ分包する図示しない包装部材とを具えた錠剤分包機の本体、2は処方情報を入力するキーボードからなる入力部材3と、入力部材3によって入力された処方情報を表示するCRTからなる表示部材4と、適宜の制御部材5とを具え、表示部材4に表示された処方情報にしたがって本体1を作動させるようになった入力装置である。」(第5ページ第3-13行)
エ.「その結果入力装置2は、表示部材4に表示された処方情報にしたがって本体1を作動させるに当り、割線19によって区分された複数の患者の処方情報を一括して処理することができるため、指定された病棟に属する複数の患者に対してそれぞれ処方された錠剤を投薬スケジュールにしたがって分包することができ、そのためたとえば朝食の前後に投薬すべき錠剤だけが複数の患者分まとめて順次分包されたのち、昼食の前後に投薬すべき錠剤だけが複数の患者分まとめて順次分包されたり、またたとえば昼までに投薬すべき錠剤だけがまず午前中に分包され、夕食の前後や就寝前に投薬すべき錠剤については午後になってから分包されたりすることとなる。」(第7ページ第19行-第8ページ第13行)
オ.「なお、上記実施例では複数の患者の処方情報を病棟単位で組合せたが、たとえば診療科単位や病床単位その他管理すべき適宜の単位で組合せることができる。」(第8ページ第14-17行)
カ.「この考案は上記のように構成したので、複数の患者に対してそれぞれ投薬すべき薬剤を一括して処理することができて、たとえば指定された病棟に属する複数の患者に対してそれぞれ処方された薬剤を投薬スケジュールにしたがって分包することができ、そのためたとえば朝食の前後に投薬すべき薬剤だけを複数の患者分まとめて順次分包したのち、昼食の前後に投薬すべき薬剤だけを複数の患者分まとめて順次分包することができ、またたとえば昼までに投薬すべき薬剤だけをまず午前中に分包し、夕食の前後や就寝前に投薬すべき薬剤については午後になってから分包することもでき、したがって複数の患者についての多数の分包体を投薬スケジュールどおりに並べ直したりそれらを長時間保管したりする必要がなくて、分包体の取扱いが容易できわめて便利である等のすぐれた効果を有するものである。」(第10ページ第3-19行)
キ.従来の技術として「各服用回分ずつまとめて一連に分包される」(上記アの下線部)ことが記載されており、また、実施例として、「複数の患者分まとめて順次分包され」(上記エの下線部)ること、錠剤分包機の本体は、「錠剤を各服用回分ずつ分包する図示しない包装部材とを具え」(上記ウの下線部)ることが記載されている。これらの記載に鑑みれば、甲1の錠剤分包機の本体は、一連の包装部材で形成される複数の分包体に錠剤を分包するものであるといえる。
ク.上記ウ~エの特に下線部の記載からすれば、甲1の入力装置2が、本体1を作動させるにあたり、複数の患者の処方情報を一括して処理することにより、投薬スケジュールにしたがって分包している。そして、入力装置2によって複数の患者の処方情報を一括して処理すると、本体1による分包のためのデータが生成されることが明らかであるから、入力装置2は、この一括して処理して得たデータを本体1による分包のために該本体1に出力しているといえる。
ケ.上記エ~カの特に下線部の記載からすれば、甲1において、複数の患者に処方された複数の錠剤は、予め設定された管理すべき適宜の単位(病棟等)ごとに、前記管理すべき適宜の単位に属する複数の患者に対してそれぞれ処方された錠剤の投薬スケジュール(朝食の前後、昼食の前後等)にしたがって分包される(朝食の前後に投薬すべき錠剤だけが複数の患者分まとめて順次分包されたのち、昼食の前後に投薬すべき錠剤だけが複数の患者分まとめて順次分包される)。そして、この錠剤分包処理は、入力装置2によって一括して処理して得たデータに基づいて、本体1により実行される。
コ.上記ア~カの記載及び上記キ~ケを総合すると、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
「入力装置2によって一括して処理して得たデータに基づいて、一連の包装部材で形成される複数の分包体に錠剤を分包する錠剤分包処理を実行する本体1と、
入力された複数の患者に対応する複数の処方情報に基づいて、前記複数の患者に処方された複数の錠剤を、複数の前記患者を含む予め設定された管理すべき適宜の単位(病棟等)ごとに当該管理すべき適宜の単位に属する複数の患者に対してそれぞれ処方された錠剤の投薬スケジュール(朝食の前後、昼食の前後等)にしたがって分包する(朝食の前後に投薬すべき錠剤だけを複数の患者分まとめて順次分包したのち、昼食の前後に投薬すべき錠剤だけを複数の患者分まとめて順次分包する)ことを指示する前記一括して処理して得たデータを、前記本体1に出力する入力装置2と、
を備える、錠剤分包機。」
(2)甲2~3の記載事項
ア.取消理由通知書において引用した甲2には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0008】
【作用】すなわち、この発明は、上記の構成を採用することにより、服用日数分に応じた複数個の薬包が服用時期毎に連続して形成された薬包帯に、処方内容表示部を各服用時期毎にそれぞれ設け、これら処方内容表示部に各服用時期に相当する処方データの内容を印字してなるために、服用時期毎に薬包帯の各々の薬包と処方箋との照合が行なえ、これによって、検薬が容易にとなる。」
(イ)「【0012】この自動包装機構部10は、前記左右一対のベルトコンベア6,6間の中央下部に配置された錠剤投入機構部としてのシャッタコンベア11と、このシャッタコンベア11の投入口に向けて錠剤が投入されるロール状に巻回された連続な包装紙100を長手方向へ間欠的に連続して移送する移送装置としての包装紙送り機構部12と、この包装紙送り機構部12の途上に設置されて前記包装紙100上の薬包幅分に応じた範囲に「患者名」・「患者コード番号」・「処方年月日」・「用法」・「錠剤種」・「錠数」等を錠剤投入前に印字する印字機構部(プリンタ)13と、このプリンタ13にて印字された錠剤投入後の包装紙100をヒートシール(封入)して一回分の薬包110を連続して形成するヒートシール機構部14と、このヒートシール機構部14にてヒートシールされて一日分及び服用日数分に応じた個数の連続した複数の薬包110からなる薬包帯120を切断する切断機構部15と、この切断機構15にて切断された薬包帯120を前記包装機本体1の上部側面に開口した排出口7に搬送する薬包帯搬送機構16とから構成され、この薬包帯120は、図示しない薬袋に収納されて、患者に手渡すようになっている。」
(ウ)「【0015】すなわち、前記包装機本体1は、制御器20から転送された処方データ及び印字データ等により前記錠剤供給機構部2及び自動包装機構部10を駆動させて包装動作を行なうようになっているもので、前記プリンタ13は、予め定められたフォーマットに従って、図2に示すような包装紙100の長手方向と直交する方向に印字動作が行なわれるようになっている。」
(エ)「【0073】この場合、「朝」の分包が一つ終了して、レジスタR3にストアしている最初の日数データ「7」より「1」を減算した段階であり、レジスタR3が「0」でない場合には、ステップN´8に復帰し、レジスタR3が「0」になるまで、すなわち、服用日数分に応じた個数の服用時期「アサ」分に相当する薬包110を連続して形成するようになっている。」
(オ)「【0075】ステップN´16では、薬包110の形成とは別に、図2に示すように、包装紙100の一部に小袋状の処方内容表示部130を薬包110と連続させて作成すると同時に、この処方内容表示部130上に各服用時期に相当する処方デーを印字するようになっている。」
(カ)「【0090】ステップN´17では、包装機本体1の包装機コントローラ43が包装紙送り機構部12に制御信号を与えることにより、包装紙100を更に長手方向に所定寸法移動させ、これによって、予め設定された服用日数分の個数の薬包110の分包による薬包帯120の形成と共に、服用時期「アサ」に対応する処方データを印刷したこ小袋状の処方内容表示部130が包装紙100の一部に薬包帯120と別に連続して一体形成されるようになっている。」
(キ)「【0096】この場合、「昼」の分包が一つ終了して、レジスタR3にストアしている最初の日数データ「7」より「1」を減算して、レジスタR3が「0」、すなわち、服用日数分に応じた個数の服用時期「ヒル」分に相当する薬包110を連続して形成し、包装紙100の一部に小袋状の処方内容表示部130を薬包110と連続させて作成すると同時に、この処方内容表示部130上に服用時期「ヒル」に相当する処方データを印字するようになっている。」
(ク)「【0102】この場合、「夕」の分包が一つ終了して、レジスタR3にストアしている日数データ「7」より「1」を減算して、レジスタR3が「0」、すなわち、服用日数分に応じた個数の服用時期「ユウ」分に相当する薬包110を連続して形成し、包装紙100の一部に小袋状の処方内容表示部130を薬包110と連続させて作成すると同時に、この処方内容表示部130上に服用時期「ユウ」に相当する処方データを印字するようになっている。
【0103】このように、この発明では、服用日数分に応じた個数の薬包110を服用時期「アサ」,「ヒル」,「ユウ」毎に連続して形成し、これら服用時期毎の薬包帯120の包装紙100の一部に、薬包110とは別に分包されて連続する小袋状の処方内容表示部130を一連に形成するとともに、この服用時期毎の処方内容表示部130に、その服用時期に相当する処方データを印字することを特徴としているもので、これによって、オペレータは、調剤後の薬包帯120の内容確認が容易に行なえるようになっている。」
(ケ)「
[図:0001410188000001.jpg]
」
イ.取消理由通知書において引用した甲3には、以下の事項が記載されている。
(ア)「【0045】
包装形態としては、1日の服用時期が、例えば朝、昼、夕の複数ある場合、図18Aに示すように、錠剤23の各薬包部13aを連続的に包装したり、図18Bに示すように、錠剤23の各薬包部13aの間に空包を形成し、この空包に錠剤23の内容や服用方法等を印字して印刷部13bとする。」
(イ)「
[図:0001410188000002.jpg]
ウ.上記ア及びイの記載事項から、以下の事項は周知技術であった。
上記ア(ア)、(エ)の特に下線部の記載及び(ケ)の図面の記載、並びに、イ(ア)の特に下線部の記載及び(イ)の図面の記載からすれば、下記事項は本件特許の原出願日前の周知技術(以下、「周知技術1」という。)であった。
「薬品分包装置において、連続体となるように薬包各々に分包すること。」
上記ア(ア)~(ク)の特に下線部の記載及び(ケ)の図面の記載、並びに、イ(ア)の特に下線部の記載及び(イ)の図面の記載からすれば、下記事項は本件特許の原出願日前の周知技術(以下、「周知技術2」という。)であった。
「薬品分包装置において、区切り処理として、空の薬包を設ける処理を実行すること。」
上記ア(ア)~(ク)の特に下線部の記載及び(ケ)の図面の記載、並びに、イ(ア)の特に下線部の記載及び(イ)の図面の記載からすれば、下記事項は本件特許の原出願日前の周知技術(以下、「周知技術3」という。)であった。
「薬品分包装置において、区切り処理として空の薬包を設けるとともに、当該空の薬包より先に分包され、当該空の薬包の前に連なっている各薬包の内容に関する情報を、前記空の薬包に印字すること。」
上記ア(ア)、(ク)の特に下線部の記載からすれば、下記事項は本件特許の原出願日前の周知技術(以下、「周知技術4」という。)であった。
「各薬包の内容に関する情報を検薬に利用すること。」
第5 当審の判断
1 本件特許発明2について
(1)対比
甲1発明の「入力装置2によって一括して処理して得たデータ」は本件特許発明2の「分包データ」に相当し、以下同様に「包装部材」は「包装材料」に、「分包体」は「薬包」に、「錠剤」は「医薬品」に、「錠剤分包処理」は「薬品分包処理」に、「本体1」は「薬品分包装置」に、「処方情報」は「処方データ」に、「管理すべき適宜の単位(病棟等)ごとに」は「配薬グループ単位で」に、「入力装置2」は「分包データ出力手段」に、「錠剤分包機」は「管理システム」にそれぞれ相当する。
また、甲1発明の、管理すべき適宜の単位に属する複数の患者に対してそれぞれ処方された錠剤の投薬スケジュール(朝食の前後、昼食の前後等)にしたがって分包する(朝食の前後に投薬すべき錠剤だけを複数の患者分まとめて順次分包したのち、昼食の前後に投薬すべき錠剤だけを複数の患者分まとめて順次分包する)ことと、本件特許発明2の「当該配薬グループに含まれる全ての患者の同一服用時期の前記薬包が連続体となり且つ前記配薬グループ単位で全ての服用時期に対応する前記薬包の連続体が連続するように前記薬包各々に分包する」こととは、配薬グループに含まれる複数の患者の同一服用時期の薬包をまとめて薬包各々に分包する、という限りにおいて一致する。
してみれば、本件特許発明2と甲1発明は、次の一致点及び相違点を有する。
【一致点】
分包データに基づいて、一連の包装材料で形成される複数の薬包に医薬品を分包する薬品分包処理を実行する薬品分包装置と、
入力された複数の患者に対応する複数の処方データに基づいて、前記複数の患者に処方された複数の医薬品を、複数の前記患者を含む予め設定された配薬グループ単位で当該配薬グループに含まれる複数の患者の同一服用時期の前記薬包をまとめて前記薬包各々に分包することを指示する分包データを、前記分包装置に出力する分包データ出力手段と、
を備える、管理システム。
【相違点A】
当該配薬グループに含まれる複数の患者の同一服用時期の薬包をまとめて薬包各々に分包することについて、本件特許発明2では、「当該配薬グループに含まれる全ての患者の同一服用時期の前記薬包が連続体となり且つ前記配薬グループ単位で全ての服用時期に対応する前記薬包の連続体が連続するように前記薬包各々に分包する」のに対して、甲1発明は、管理すべき適宜の単位に属する複数の患者に対してそれぞれ処方された錠剤の投薬スケジュール(朝食の前後、昼食の前後等)にしたがって分包する(朝食の前後に投薬すべき錠剤だけを複数の患者分まとめて順次分包したのち、昼食の前後に投薬すべき錠剤だけを複数の患者分まとめて順次分包する)点。
【相違点B】
本件特許発明2は「前記分包データ出力手段から出力された前記分包データに基づいて前記薬品分包装置によって実行される前記薬品分包処理において、同一の前記配薬グループにおける前記服用時期が切り替わることにより区切り処理を実行し、同一の前記配薬グループにおける前記患者が切り替わることでは前記区切り処理を実行しない制御部」「を備え」、「前記区切り処理は、空の前記薬包を設けることである」のに対し、甲1発明は、そのような処理を行っていない点。
(2)判断
上記相違点A及びBについて検討する。
甲1には、従来の技術として、「各服用回分ずつまとめて一連に分包される」(上記第4の2(1)ア参照)ことが記載されており、異なる患者の投薬スケジュールが同一である分包体をまとめて分包することで、「分包体の取扱いが容易できわめて便利である」点が言及されている(上記第4の2(1)カ参照)ことをふまえると、甲1は、異なる患者の投薬スケジュールが同一である分包体をまとめて分包するにあたり、連続体として分包していると解するのが自然である。
仮にそうでないとしても、甲1発明の「管理すべき適宜の単位に属する複数の患者に対してそれぞれ処方された錠剤の投薬スケジュール(朝食の前後、昼食の前後等)にしたがって分包する(朝食の前後に投薬すべき錠剤だけを複数の患者分まとめて順次分包したのち、昼食の前後に投薬すべき錠剤だけを複数の患者分まとめて順次分包する)」に際して、上記周知技術1を参考にして、薬包が連続体となるように薬包各々に分包することは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、甲1発明において、複数の患者に処方された複数の錠剤は、予め設定された管理すべき適宜の単位(病棟等)ごとに分包されるものであるから、分包する際、管理すべき適宜の単位(病棟等)の全ての患者についてまとめて分包することは、当業者が当然に考えることである。
また、例えば、甲1の第6ページ第2~14行及び図2、並びに、甲2の段落【0022】~【0030】及び図6~8に記載されているように、処方データを登録するにあたり、複数の服用時期のデータをまとめて登録することは一般的である。そして、薬剤を分包するにあたって、どの単位をひとまとまりとして扱うかは、当業者が利便性や管理のしやすさを考慮して適宜に決定しうることであり、甲1発明において、まとめて分包するにあたり、登録された複数の服用時期の全てについて連続体として分包することも、当業者が適宜になし得たことである。
また、甲1の上記第4の2(1)イの記載事項には、病院の病棟には多数の患者が入院しており、患者別に1日複数回分の錠剤が一連に分包されたのでは、複数の患者についてのこれらの分包体を各服用回分ずつ分離したうえ投薬スケジュールにしたがって並べ直さなければならないという問題点がある旨記載されている。他方、甲1の上記第4の2(1)カに示した記載事項には、甲1発明のように、病棟等の管理すべき単位ごとに、当該管理すべき単位に含まれる複数の患者の投薬スケジュールが同一である分包体をまとめて分包することにより、複数の患者についての多数の分包体を投薬スケジュールどおりに並べ直す必要がなくなる旨記載されている。これらの記載によれば、甲1発明は、朝食の前後、昼食の前後等の単位で管理されるものである。
そして、甲1には、「表示部材4に表示された処方情報にしたがって本体1を作動させる」(第4の2(1)ウ参照)ことが記載されているから、甲1発明は当然に、制御部により本体1を作動させている。
してみると、甲1発明において、朝食の前後、昼食の前後等の管理のタイミングを明確にするために、周知技術2を参考にして、制御部により、朝食の前後と昼食の前後の切り替わりのタイミングで空の薬包を設ける区切り処理を実行し、朝食の前後や昼食の前後の間、患者が切り替わることでは空の薬包を設けないようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
以上のとおり、甲1発明において、周知技術1及び2を参考にして、相違点A、Bに係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
そして、本件特許発明2の奏する作用効果は、甲1発明に周知の技術を適用することにより生じることが予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。
(3)特許権者の主張に対して
特許権者は、令和 5年 9月21日提出の意見書において、「本件特許発明1、2によれば、例えばユーザーが配薬グループに含まれる全ての患者の薬包を当該配薬グループの単位で容易に持ち運ぶことが可能であり、薬包の搬送漏れや搬送間違いが抑止されるという格別なる効果を奏する。」(意見書第4ページ第10~13行参照。)としつつ、「甲1には、本件特許発明1、2のように一つの配薬グループに含まれる全ての分包体を纏めて容易に扱うことについての記載及び示唆はなされていない。」(意見書第5ページ第5~7行参照。)と主張する。
しかしながら、上述したように、薬剤を分包するにあたって、どの単位をひとまとまりとして扱うかは、当業者が利便性や管理のしやすさを考慮して適宜に決定しうることであり、特許権者の主張する「薬包の搬送漏れや搬送間違いが抑止される」との効果も当業者が予測しうる範囲内のものに過ぎない。
また、特許権者は同意見書において、「甲1の第10ページ第3-19行には、効果として、多数の分包体を長時間保管したりする必要がない点が記載されている。そのため、甲1発明において、仮に本件特許発明1、2のように配薬グループ単位で一つの連続体が形成されることになれば、投薬スケジュールが同一である分包体の取り扱いを容易にすることや多数の分包体を長時間保管したりする必要がないという甲1発明の効果を阻害することになる。」(意見書第5ページ第13~19行参照。)と主張する。
しかしながら、甲1には、「従来のもののように患者別に1日複数回分の錠剤が一連に分包されたのでは、複数の患者についてのこれらの分包体を各服用回分ずつ分離したうえ投薬スケジュールにしたがって並べ直さなければならず、しかもたとえば夕食の前後や就寝前に投薬すべき錠剤についてはその時間になるまで多数の分包体のまま保管しておかなければならず、そのため分包体の取扱いが煩わしくて不便である等の問題点があった。」(第4の2(1)イ参照)と記載されており、従来のように患者別に複数回分の錠剤が一連に分包された場合は、分包体を各服用回分ずつ分離したうえ投薬スケジュールにしたがって並べ直す必要があり、それに伴って、分離した多数の分包体を長時間保管する必要があった点が不便であり、それを解決するために、並べ直す必要がないように、複数の患者について投薬スケジュールにしたがってまとめて分包するようにしたものと理解できる。したがって、複数の患者について投薬スケジュールにしたがってまとめて分包するようにしたものである以上、甲1発明において、複数の服用時期の分包体を連続体として分包することに阻害要因は認められない。同意見書における主張は、「長時間保管したりする必要がない」という甲1の効果の一部のみを切り取ったものであって、採用することはできない。
さらに、特許権者は同意見書において、「甲1発明において、仮に同一の分包タイミングで分包される薬包が連続する連続体が形成されることを考えると、異なる服用時期に対応する薬包が連続する可能性がある」(意見書第8ページ第5~7行参照。)と主張する。
しかしながら、甲1の第6ページ第7~11行及び図2の記載からして、甲1発明において、朝、昼、夕、寝という服用タイミングにしたがって複数の患者分の薬包をまとめて分包するものであることは明らかである。上記主張はあくまで特許権者による独自の甲1の解釈に基づくものであって、甲1の記載内容に基づくものとはいえず、採用できない。
よって、特許権者の上記主張は採用できない。
(4)小括
以上のとおりであるから、本件特許発明2は、甲1発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明できたものである。
2 本件特許発明3について
本件特許発明3は、本件特許発明2の「空の前記薬包を設けることである」区切り処理において、「空の薬包に、当該空の薬包の前に連なっている各薬包の内容に関する検薬用又は鑑査用の情報を印字する」点を新たに特定するものである。
してみれば、本件特許発明3と甲1発明は、相違点A及びBに加えて以下の点で相違し、その余の点で一致する。
【相違点C】
本件特許発明3では、「前記制御部は、前記空の薬包に、当該空の薬包の前に連なっている各薬包の内容に関する検薬用又は鑑査用の情報を印字する」のに対して、甲1発明では、制御部がそのような処理を実行しているか否か不明である点。
相違点A及びBについては、上記1(2)のとおりである。
次に、上記相違点Cについて検討する。
薬品分包装置において、区切り処理として空の薬包を設けるとともに、当該空の薬包より先に分包され、当該空の薬包の前に連なっている各薬包の内容に関する情報を、前記空の薬包に印字することは、周知技術3のとおり周知の技術事項である。また、各薬包の内容に関する情報を検薬に利用することは、周知技術4のとおり周知の技術事項である。
そして、甲1発明において、上記周知の技術事項を適用し、空の薬包に、当該空の薬包の前に連なっている各薬包の内容に関する検薬用の情報を印字することは、当業者が容易になし得たことである。また、各薬包の内容に関する情報を鑑査用に利用することも当業者が適宜になし得たことである。
よって、本件特許発明3は甲1発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
3 本件特許発明5について
本件特許発明5は、本件特許発明2の管理システムを単に管理プログラムとして表現したものに過ぎない。そして、甲1には、甲1発明に係る管理プログラムの発明(以下、「甲1プログラム発明」という。)が記載されているから、本件特許発明5は、甲1プログラム発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許発明は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、本件請求項2、3、5に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
そして、本件特許の請求項1、4は、本件訂正により削除されたため、本件特許の請求項1、4に対して申立人がした特許異議の申立てについては、対象となる請求項が存在しない。よって、本件特許の請求項1、4に係る特許異議の申立ては不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8で準用する同法第135条の規定により、却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2022-701118