特許異議申立
2025-700874
アルカリ可溶性樹脂、感光性樹脂組成物、硬化物、及び画像表示装置
- 審判番号
- 2025-700874
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-579641
- 登録番号
- 7642683
- 請求日
- 2025年09月05日
- 審決日
- 2026年06月18日
- 公報発行日
- 2026年09月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大阪有機化学工業株式会社
- 【権利者代理人】田中 順也
- 【権利者代理人】水谷 馨也
- 【権利者代理人】迫田 恭子
- 【権利者代理人】福井 賢一
- 【異議申立人】藤江 桂子
- 審判長/審判官
- 審判長 細井 龍史
- 審判官 加藤 幹
- 審判官 藤井 勲
- 分類
- P1652.113-YAA(C08F) / P1652.121-YAA(C08F) / P1652.161-YAA(C08F) / P1652.536-YAA(C08F) / P1652.537-YAA(C08F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条の2、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7642683号発明「アルカリ可溶性樹脂、感光性樹脂組成物、硬化物、及び画像表示装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7642683号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
特許第7642683号の請求項7~13に係る特許を維持する。
特許第7642683号の請求項1~4に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7642683号に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は令和4年2月7日(優先権主張 令和3年2月8日)を国際出願日とする特願2022-579641号であって、令和7年2月28日にその特許権の設定登録(請求項の数 13)がされ、同年3月10日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和7年9月5日に、本件特許の請求項1~4及び7~13に係る特許を対象として、特許異議申立人 藤江 桂子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
その後の手続は以下のとおりである。
令和 7年10月23日付け 取消理由通知
同年12月26日 訂正請求書、意見書(特許権者)の提出
令和 8年 1月15日付け 訂正請求があった旨の通知
同年 3月24日付け 取消理由通知(決定の予告)
同年 5月26日 訂正請求書、意見書(特許権者)の提出
なお、令和7年12月26日提出の訂正請求書による訂正請求は、令和8年5月26日提出の訂正請求書による訂正請求(以下「本件訂正請求」という。)がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなされる。
また、当審合議体は令和8年1月15日付けの訂正請求があった旨の通知により申立人に意見書を提出する機会を与えたが、申立人は意見書を提出しなかった。そして、当審合議体は、本件訂正請求は本件特許のうち実質的に異議申立の対象となっていない部分(請求項5及び6並びにこれらを直接又は間接的に引用する請求項7~13)以外の部分を実質的に全て削除するものであって、本件において提出された全ての証拠方法及び意見を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると判断した。そのため、当審合議体は重ねて申立人に意見書を提出する機会を与える必要はないと判断した。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
(1)訂正請求の趣旨
本件訂正請求は、「特許第7642683号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~13について訂正することを求める。」ことを請求の趣旨とするものである。
(2)訂正事項
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する(訂正箇所には当審合議体において下線を付した。以下同じ。)。
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
エ 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
オ 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「前記R2の連結基は、母体の炭素数が1~7の炭化水素基、又は母体の炭素数が1~7であり、かつヘテロ原子を含む有機基であり、
前記R5は、下記一般式(3)で表される有機基であり、
前記R4は、前記R2の連結基の炭素原子に結合するヒドロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、又は下記一般式(4)で表される有機基である、請求項1に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【化5】
[図:0001439220000001.jpg]
(式中、R6及びR7はそれぞれ独立に母体の炭素数が1~6の炭化水素基であり、R6及びR7の母体の合計炭素数が3~8である。)
【化6】
[図:0001439220000002.jpg]
(式中、R8は水素又はメチル基であり、R9は母体の炭素数が1~5の炭化水素基、又は母体の炭素数が1~5であり、かつヘテロ原子を含む有機基である。)」
と記載されているのを、
「下記一般式(1)で表される繰り返し構造単位Xを1種以上含むアルカリ可溶性樹脂。
【化1】
[図:0001439220000003.jpg]
(式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は母体の炭素数が1~7の炭化水素基、又は母体の炭素数が1~7であり、かつヘテロ原子を含む有機基である連結基であり、R3は前記連結基の炭素原子に結合する下記一般式(2)で表される有機基であり、R4は前記連結基の炭素原子に結合するヒドロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、又は下記一般式(4)で表される有機基である。)
【化2】
[図:0001439220000004.jpg]
(式中、R5は下記一般式(3)で表される有機基である。)
【化5】
[図:0001439220000005.jpg]
(式中、R6及びR7はそれぞれ独立に母体の炭素数が1~6の炭化水素基であり、R6及びR7の母体の合計炭素数が3~8である。)
【化6】
[図:0001439220000006.jpg]
(式中、R8は水素又はメチル基であり、R9は母体の炭素数が1~5の炭化水素基、又は母体の炭素数が1~5であり、かつヘテロ原子を含む有機基である。)」
に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~13も同様に訂正する)。
カ 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に
「前記R2の連結基は、母体の炭素数が1~7の炭化水素基、又は母体の炭素数が1~7であり、かつヘテロ原子を含む有機基であり、
前記R5'は、下記一般式(3)で表される有機基であり、
前記R4は、前記R2の連結基の炭素原子に結合するヒドロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、又は下記一般式(4)で表される有機基である、請求項2に記載のアルカリ可溶性樹脂。
【化7】
[図:0001439220000007.jpg]
(式中、R6及びR7はそれぞれ独立に母体の炭素数が1~6の炭化水素基であり、R6及びR7の母体の合計炭素数が3~8である。)
【化8】
[図:0001439220000008.jpg]
(式中、R8は水素又はメチル基であり、R9は母体の炭素数が1~5の炭化水素基、又は母体の炭素数が1~5であり、かつヘテロ原子を含む有機基である。)」
と記載されているのを、
「下記一般式(1')で表される繰り返し構造単位X'を1種以上含む、ただし、各々がラジカル重合性置換基に終わる2~3個の末端を有する分岐した側鎖を備えた繰り返し構造単位を含まない、アルカリ可溶性樹脂。
【化3】
[図:0001439220000009.jpg]
(式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は母体の炭素数が1~7の炭化水素基、又は母体の炭素数が1~7であり、かつヘテロ原子を含む有機基である連結基であり、R3'は前記連結基の炭素原子に結合する下記一般式(2')で表される有機基であり、R4は前記連結基の炭素原子に結合するヒドロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、又は下記一般式(4)で表される有機基である。)
【化4】
[図:0001439220000010.jpg]
(式中、R5'は下記一般式(3)で表される有機基である。)
【化7】
[図:0001439220000011.jpg]
(式中、R6及びR7はそれぞれ独立に母体の炭素数が1~6の炭化水素基であり、R6及びR7の母体の合計炭素数が3~8である。)
【化8】
[図:0001439220000012.jpg]
(式中、R8は水素又はメチル基であり、R9は母体の炭素数が1~5の炭化水素基、又は母体の炭素数が1~5であり、かつヘテロ原子を含む有機基である。)」
に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7~13も同様に訂正する)。
キ 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に
「前記繰り返し構造単位X又はX'の含有量は、全繰り返し構造単位中に5~50mol%である請求項1~6のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。」
とあるうち、請求項5又は6を引用するものについて
「前記繰り返し構造単位X又はX'の含有量は、全繰り返し構造単位中に5~50mol%である請求項5又は6に記載のアルカリ可溶性樹脂。」
に訂正する(請求項7の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8~13も同様に訂正する)。
ク 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に
「前記アルカリ可溶性樹脂は、酸価が20~120mgKOH/gである請求項1~7のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。」
とあるうち、請求項5~7を引用するものについて
「前記アルカリ可溶性樹脂は、酸価が20~120mgKOH/gである請求項5~7のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。」
に訂正する(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9~13も同様に訂正する)。
ケ 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に
「前記アルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が5000~40000である請求項1~8のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。」
とあるうち、請求項5~8を引用するものについて
「前記アルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が5000~40000である請求項5~8のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。」
に訂正する(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10~13も同様に訂正する)。
コ 訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10に
「少なくとも請求項1~9のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂、重合性モノマー、及び光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物。」
とあるうち、請求項5~9を引用するものについて
「少なくとも請求項5~9のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂、重合性モノマー、及び光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物。」
に訂正する(請求項10の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11~13も同様に訂正する)。
(3)一群の請求項
訂正前の請求項1、3~5及び7~13について、訂正前の請求項3~5及び7~13は訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。そのため、訂正前の請求項1、3~5及び7~13に対応する訂正後の請求項1、3~5及び7~13は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、訂正前の請求項2~4及び6~13について、訂正前の請求項3、4及び6~13は訂正前の請求項2を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項2によって記載が訂正される請求項2に連動して訂正されるものである。そのため、訂正前の請求項2~4及び6~13に対応する訂正後の請求項2~4及び6~13は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
そして、上記各一群の請求項は、いずれも訂正前の請求項3、4及び7~13を含むから、特許法施行規則第45条の4の規定により、これらの請求項を介してこれら各一群の請求項が一体として一群の請求項を構成する。そのため、訂正前の請求項1~13に対応する訂正後の請求項1~13は一群の請求項である。
したがって、本件訂正請求は一群の請求項ごとにするものである。
2 訂正事項の検討
(1)訂正事項1~4
訂正事項1~4による請求項1~4についての訂正は、請求項1~4を削除するものである。
したがって、訂正事項1~4による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとともに、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(2)訂正事項5及び6
訂正事項5及び6による請求項5及び6についての訂正は、請求項1又は2の記載を引用しないようにするものである。
したがって、訂正事項5及び6による訂正は、他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるとともに、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(3)訂正事項7~10
訂正事項7~10による請求項7~10についての訂正は、請求項5及び6を引用するようにしたまま、請求項1~4の記載を引用しないようにするものである。
したがって、訂正事項7~10による訂正は、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるとともに、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
3 訂正の適否についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
また、訂正事項1~4及び7~10による請求項1~4及び7~10についての訂正は、特許異議の申立てがされている請求項である訂正前の請求項1~4及び7~13に係るものであるから、これに対応する訂正後の請求項1~4及び7~13に係る発明に、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
そして、訂正事項5及び6による請求項5及び6についての訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるから、これに対応する訂正後の請求項5及び6に係る発明にも、上記独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正請求による訂正は適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~13〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり本件訂正請求による訂正が認められたため、本件特許の請求項1~13に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明13」といい、これらを合わせて「本件発明」という。)は、その訂正後の特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
(削除)
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
【請求項5】
下記一般式(1)で表される繰り返し構造単位Xを1種以上含むアルカリ可溶性樹脂。
【化1】
[図:0001439220000013.jpg]
(式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は母体の炭素数が1~7の炭化水素基、又は母体の炭素数が1~7であり、かつヘテロ原子を含む有機基である連結基であり、R3は前記連結基の炭素原子に結合する下記一般式(2)で表される有機基であり、R4は前記連結基の炭素原子に結合するヒドロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、又は下記一般式(4)で表される有機基である。)
【化2】
[図:0001439220000014.jpg]
(式中、R5は下記一般式(3)で表される有機基である。)
【化5】
[図:0001439220000015.jpg]
(式中、R6及びR7はそれぞれ独立に母体の炭素数が1~6の炭化水素基であり、R6及びR7の母体の合計炭素数が3~8である。)
【化6】
[図:0001439220000016.jpg]
(式中、R8は水素又はメチル基であり、R9は母体の炭素数が1~5の炭化水素基、又は母体の炭素数が1~5であり、かつヘテロ原子を含む有機基である。)
【請求項6】
下記一般式(1')で表される繰り返し構造単位X'を1種以上含む、ただし、各々がラジカル重合性置換基に終わる2~3個の末端を有する分岐した側鎖を備えた繰り返し構造単位を含まない、アルカリ可溶性樹脂。
【化3】
[図:0001439220000017.jpg]
(式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は母体の炭素数が1~7の炭化水素基、又は母体の炭素数が1~7であり、かつヘテロ原子を含む有機基である連結基であり、R3'は前記連結基の炭素原子に結合する下記一般式(2')で表される有機基であり、R4は前記連結基の炭素原子に結合するヒドロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、又は下記一般式(4)で表される有機基である。)
【化4】
[図:0001439220000018.jpg]
(式中、R5'は下記一般式(3)で表される有機基である。)
【化7】
[図:0001439220000019.jpg]
(式中、R6及びR7はそれぞれ独立に母体の炭素数が1~6の炭化水素基であり、R6及びR7の母体の合計炭素数が3~8である。)
【化8】
[図:0001439220000020.jpg]
(式中、R8は水素又はメチル基であり、R9は母体の炭素数が1~5の炭化水素基、又は母体の炭素数が1~5であり、かつヘテロ原子を含む有機基である。)
【請求項7】
前記繰り返し構造単位X又はX'の含有量は、全繰り返し構造単位中に5~50mol%である請求項5又は6のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項8】
前記アルカリ可溶性樹脂は、酸価が20~120mgKOH/gである請求項5~7のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項9】
前記アルカリ可溶性樹脂は、重量平均分子量が5000~40000である請求項5~8のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂。
【請求項10】
少なくとも請求項5~9のいずれかに記載のアルカリ可溶性樹脂、重合性モノマー、及び光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の感光性樹脂組成物から得られる硬化物。
【請求項12】
前記硬化物は、フォトスペーサー、隔壁材、レンズ材、層間絶縁膜材、保護膜材、光導波路材、又は平坦化膜材である請求項11に記載の硬化物。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の硬化物を含む画像表示装置。」
第4 申立理由及び取消理由並びに証拠方法
1 特許異議申立書に記載された申立理由
(1)申立理由1(本件発明2~4及び7~13についての新規性、進歩性)
本件発明2~4及び7~13は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証~甲第8号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
また、本件発明2~4及び7~13は、上記甲第1号証~甲第8号証に記載された発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許の本件発明2~4及び7~13に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(本件発明1~4及び7~13についての新規性、進歩性)
本件発明1~4及び7~13は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第6号証、甲第7号証、甲第1号証、甲第10号証又は甲第11号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。
また、本件発明1~4及び7~13は、上記甲第6号証、甲第7号証、甲第1号証、甲第10号証又は甲第11号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
さらに、本件発明1~4、7~11及び13は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許の本件発明1~4及び7~13に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)申立理由3(本件発明2~4、7~11及び13についての拡大先願)
本件発明2~4、7~11及び13は、その優先日前の特許出願であって、その優先日後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた甲第9号証に係る特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件発明の発明者が上記特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許に係る出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本件特許の本件発明2~4、7~11及び13に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)申立理由4(本件発明1~4及び7~13についての実施可能要件)
本件特許の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載は、以下の(a)及び(b)の点で特許法第36条第4項第1号に適合しない。
(a)アルカリ可溶性樹脂が、R5又はR5'が、母体の炭素数が3~8で、かつ硫黄以外のヘテロ原子を含む有機基である前記繰り返し構造単位X又は前記繰り返し構造単位X'を含む場合については、当該アルカリ可溶性樹脂を当業者が製造可能な程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に開示されているとはいえない。
(b)アルカリ可溶性樹脂が、R5又はR5'が、母体の炭素数が3~8で、かつヘテロ原子として硫黄を含む有機基である前記繰り返し構造単位X又は前記繰り返し構造単位X'を含む場合であって、本件発明5、6に係る化学構造を有しない場合についても、当該アルカリ可溶性樹脂を当業者が製造可能な程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に開示されているとはいえない。
したがって、本件特許の本件発明1~4及び7~13についての特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(5)申立理由5(本件発明1~4及び7~13についてのサポート要件)
本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~7の記載は、以下の(a)及び(b)の点で特許法第36条第6項第1号に適合しない。
(a)アルカリ可溶性樹脂が、R5又はR5'が、母体の炭素数が3~8で、かつ硫黄以外のヘテロ原子を含む有機基である前記繰り返し構造単位X又は前記繰り返し構造単位X'を含む場合については、発明の詳細な説明に実質的な開示があるとはいえない。
(b)アルカリ可溶性樹脂が、R5又はR5'が、母体の炭素数が3~8で、かつヘテロ原子として硫黄を含む有機基である前記繰り返し構造単位X又は前記繰り返し構造単位X'を含む場合であって、本件発明5、6に係る化学構造を有しない場合についても、発明の詳細な説明に実質的な開示があるとはいえない。
したがって、本件特許の本件発明1~4及び7~13についての特許は、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 令和8年3月24日付けの取消理由通知書に記載された取消理由
(1)取消理由2-6(甲第6号証を主引用例とする進歩性)
本件発明1~4及び7~13は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第6号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許の本件発明1~4及び7~13に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)取消理由2-7(甲第7号証を主引用例とする進歩性)
本件発明1~4、7~11及び13は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第7号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許の本件発明1~4、7~11及び13に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3)取消理由2-10(甲第10号証を主引用例とする進歩性)
本件発明1~4及び7~11は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第10号証に記載された発明に基いて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件特許の本件発明1~4及び7~11に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 証拠方法
(1)特許異議申立書に添付して提出された証拠方法
甲第1号証:特開2018-141968号公報
甲第2号証:国際公開第2018/169036号
甲第3号証:国際公開第2018/021184号
甲第4号証:国際公開第2019/123761号
甲第5号証:特開2015-176152号公報
甲第6号証:特開2010-168475号公報
甲第7号証:特開2009-53652号公報
甲第8号証:特開平3-289656号公報
甲第9号証:特願2020-21123号(特開2021-110917号公報)
甲第10号証:特開2009-300532号公報
甲第11号証:特開2007-102109号公報
以下「甲第1号証」等を「甲1」等という。
(2)令和7年10月23日付けの取消理由通知及び令和8年3月24日付けの取消理由通知において当審合議体が職権で採用し提示した証拠方法
参考1:日立化成工業株式会社,日立機能性アクリレート メタクリレート FANCRYL,2011年,URL:https://www.manuallib.com/download/pdf16/HITACHI---------------FANCRYL.PDF
以下「参考1」を「参1」という。
第5 当審の判断
1 判断の大要
当審合議体は、本件特許の請求項1~4に係る特許についての特許異議の申立ては、本件訂正請求による訂正により請求項1~4が削除された結果対象を失った、不適法な申立てであってその補正をすることができないものであると判断する。
また、当審合議体は、本件特許の請求項7~13についての特許は、申立理由1~申立理由5又は取消理由2-6、取消理由2-7若しくは取消理由2-10によっては取り消すことはできないと判断する。そして、そのように判断する理由は以下のとおりである。
なお、上記第3のとおり、本件発明7は本件特許の願書に添付された特許請求の範囲(以下「本件特許請求の範囲」という。)の請求項5及び6を引用する請求項7により特定されるものであるが、本件発明7についての検討にあたっては、本件発明7の発明特定事項がいずれの請求項に記載されているものであるかについての言及を省略する。
2 取消理由2-6(甲6を主引用例とする進歩性)について
(1)引用発明
甲6(段落0108~0112)に記載された実施例5に係る硬化性樹脂溶液P5中の樹脂固形分に着目すると、甲6には
「以下の製造方法により製造された硬化性樹脂溶液P5中の、樹脂固形分。
<製造方法>
ガス導入管、コンデンサー、攪拌翼、および温度計を備え付けた反応槽に、メトキシプロピルアセテート100部を仕込み90℃に昇温し、反応容器内を窒素置換した後、滴下槽から、グリシジルメタクリレート30部、2-アクリロイルオキシ-γ-ブチロラクトン15部、ブチルアクリレート20部、およびアゾビスイソブチロニトリル8部を予め均一に混合した混合液を2時間かけて滴下し、その後3時間、同じ温度で攪拌を続け、重合体[I]を得た。続いて、アクリル酸15部、およびジメチルベンジルアミン1部を仕込み、その後10時間、同じ温度で攪拌を続け、重合体[II]を得た。さらに、無水トリメリット酸15部を仕込み、その後10時間、同じ温度で攪拌を続けた。室温に冷却後、メトキシプロピルアセテートで希釈することにより、固形分30%の硬化性樹脂溶液P5を得た。なお、「部」は「重量部」を表す。」
の発明(以下「甲6発明」という。)が記載されているといえる。
(2)本件発明7について
ア 対比
本件発明7と甲6発明とを対比すると、両者の構成の対応は以下のとおりとなる。
(a)甲6には、硬化性樹脂溶液P5を含有する硬化性樹脂組成物S5を調製すること(段落0116~0118)及びこの硬化性樹脂組成物S5を用いてサンプル基板W5を作成するにあたって炭酸水素ナトリウム水溶液からなる現像液で現像すること(段落0132~0135)が記載されている。そうすると、甲6発明における「樹脂固形分」は、炭酸水素ナトリウム水溶液に溶解するといえるから、本件発明7における「アルカリ可溶性樹脂」に相当する。
(b)甲6発明における「樹脂固形分」は、グリシジルメタクリレート、2-アクリロイルオキシ-γ-ブチロラクトン及びブチルアクリレートをモノマーとする三元共重合体を合成し、その三元共重合体のグリシジルメタクリレートに由来するグリシジル基にアクリル酸を反応させ、この反応部位に生成したヒドロキシ基に無水トリメリット酸を反応させたものであると解される。そうすると、甲6発明における「樹脂固形分」は、グリシジルメタクリレートに由来する繰り返し構造単位を含み、その繰り返し構造単位は、グリシジルメタクリレートのメタクリロイル基に由来するメチル基、グリシジルメタクリレートのグリシジル基に由来する-CH(CH2-)2という3価の基、無水トリメリット酸に由来する基及びアクリル酸に由来するアクリロイルオキシ基を有するといえる。
そして、上記繰り返し構造単位における「グリシジルメタクリレートのメタクリロイル基に由来するメチル基」、「グリシジルメタクリレートのグリシジル基に由来する-CH(CH2-)2という3価の基」及び「アクリル酸に由来するアクリロイルオキシ基」は、それぞれ本件発明7の一般式(1)及び一般式(1')において「R1はメチル基」である場合、「R2は母体の炭素数が3の炭化水素基」「である連結基」である場合及び「R4は前記連結基の炭素原子に結合するアクリロイルオキシ基」である場合であるといえる。
(c)上記(b)で検討した上記繰り返し構造単位における「無水トリメリット酸に由来する基」は、本件発明7における「R3」である「連結基の炭素原子に結合する下記一般式(2)で表される有機基」及び「R3'」である「連結基の炭素原子に結合する下記一般式(2')で表される有機基」と「連結基の炭素原子に結合する有機基」という限りで一致する(当審合議体注:一般式(2)と一般式(2')は省略した)。
ここで、上記第3から、本件発明7において、「R5'」は「R5」と同じであり、そのため「一般式(2')で表される有機基」(すなわち「R3'」)は「一般式(2)で表される有機基」(すなわち「R3」)と同じであり、そのため「一般式(1')で表される繰り返し構造単位X'」は「一般式(1)で表される繰り返し構造単位X」と同じである。そこで、以下「R5」と「R5'」、「一般式(2)で表される有機基」と「一般式(2')で表される有機基」、「R3」と「R3'」、「一般式(1)で表される繰り返し構造単位X」と「一般式(1')で表される繰り返し構造単位X'」とを区別せず、「'」を使用しないで表すこととする。
イ 一致点、相違点
上記アから、本件発明7と甲6発明とは、
「下記一般式(1)で表される繰り返し構造単位Xを1種以上含むアルカリ可溶性樹脂。
【化1】
[図:0001439220000021.jpg]
(式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は母体の炭素数が1~7の炭化水素基、又は母体の炭素数が1~7であり、かつヘテロ原子を含む有機基である連結基であり、R3は前記連結基の炭素原子に結合する有機基であり、R4は前記連結基の炭素原子に結合するヒドロキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、又は下記一般式(4)で表される有機基である。)」
という点で一致し、
(相違点6-1)連結基の炭素原子に結合する有機基であるR3が、本件発明7は
「下記一般式(2)で表される有機基
【化2】
[図:0001439220000022.jpg]
(式中、R5は下記一般式(3)で表される有機基である。)
【化5】
[図:0001439220000023.jpg]
(式中、R6及びR7はそれぞれ独立に母体の炭素数が1~6の炭化水素基であり、R6及びR7の母体の合計炭素数が3~8である。)」(以下単に「一般式(2)で表される有機基」という。)
であるのに対し、甲6発明は無水トリメリット酸に由来する基である点
で少なくとも実質的に相違する。
ウ 検討
甲6には、甲6発明である硬化性樹脂溶液P5を含有する硬化性樹脂組成物S5を調製すること(段落0116~0118)、この硬化性樹脂組成物S5は密着性、透明性、硬度及び保存安定性が良好であり、カラーフィルタ保護膜用コーティング剤として有用であること(段落0141及び0142)、エポキシ基を有するエチレン性不飽和単量体(A)中のエポキシ基と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和単量体(D)中のカルボキシル基との付加反応により水酸基が生成すること(段落0025)、この水酸基と多塩基酸無水物(E)中の酸無水物基との反応により生成するカルボキシル基が、被着体との密着性に有効に作用することに加え優れたアルカリ現像性を付与すること(段落0026)、多塩基酸無水物(E)としては公知のものを使用でき、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水クロレンド酸、無水トリメリット酸等の多塩基酸無水物が挙げられ、特に好ましくはテトラヒドロ無水フタル酸であること(段落0062)が記載されている。
しかし、甲6には、多塩基酸無水物(E)として相違点6-1に係る有機基を形成するような酸無水物を使用し得ることは記載も示唆もされていない。また、甲1~5及び甲7~甲11並びに参1には、甲6発明において相違点6-1に係る有機基を形成するような酸無水物を使用することの動機付けとなるようなことは記載も示唆もされていない。さらに、甲6発明において相違点6-1に係る有機基を形成するような酸無水物を使用することの動機付けとなるような本願優先日当時の技術常識も見当たらない。
そうすると、甲6発明において、無水トリメリット酸に代えて相違点6-1に係る有機基を形成するような酸無水物を使用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
エ 本件発明7についてのまとめ
以上から、本件発明7が甲6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明8~13について
本件発明8~13は、本件特許請求の範囲の請求項7を直接又は間接的に引用し、本件発明7の構成をすべて備えるものである。
したがって、本件発明8~13は、本件発明7と同様、甲6発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)まとめ
以上から、取消理由2-6は理由がない。
また、同様に甲6を主引用例とする申立理由である申立理由1-6及び申立理由2-6も理由がない。
3 取消理由2-7(甲7を主引用例とする進歩性)について
(1)引用発明
甲7(段落0223及び0228)に記載された合成例7に係るバインダー樹脂(樹脂G)に着目すると、甲7には
「以下の製造方法により製造された、重量平均分子量Mwが約7000、酸価が79mgKOH/gである樹脂G。
<製造方法>
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145重量部を窒素置換しながら攪拌し、120℃に昇温した。ここにスチレン10重量部、グリシジルメタクリレート85.2重量部およびトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA-513M)66重量部を滴下し、および2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル9.00重量部を3時間かけて滴下し、更に90℃で2時間攪拌し続けた。次に反応容器内を空気置換に変え、アクリル酸43.2重量部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.7重量部およびハイドロキノン0.12重量部を投入し、100℃で12時間反応を続けた。その後、無水トリメリット酸69.2重量部、トリエチルアミン0.7重量部を加え、100℃3.5時間反応させた。」
の発明(以下「甲7発明」という。)が記載されているといえる。
(2)本件発明7について
ア 対比
甲7発明における「樹脂G」は、甲7に、樹脂Gを含有する実施例6に係る着色組成物を調製すること(段落0233及び0234)及びこの着色組成物の未露光部が水酸化カリウム水溶液である現像液に溶解すること(段落0246)が記載されていることから、本件発明7における「アルカリ可溶性樹脂」に相当する。
また、甲7発明における「樹脂G」は、スチレン、グリシジルメタクリレート及びトリシクロデカン骨格を有するモノアクリレート(日立化成社製FA-513M)をモノマーとする三元共重合体を合成し、その三元共重合体のグリシジルメタクリレートに由来するグリシジル基にアクリル酸を反応させ、この反応部位に生成したヒドロキシ基に無水トリメリット酸を反応させたものであると解される。そうすると、甲7発明における「樹脂G」の構造と本件発明7に係るアルカリ可溶性樹脂の構造の対応は、上記2(2)アで指摘した甲6発明における「樹脂固形分」の構造と本件発明7に係るアルカリ可溶性樹脂の構造の対応と同様となる。
イ 一致点、相違点
上記アから、本件発明7と甲7発明とは、
「下記一般式(1)で表される繰り返し構造単位Xを1種以上含むアルカリ可溶性樹脂。
【化1】
[図:0001439220000024.jpg]
(式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は炭素数が1以上の連結基であり、R3は前記連結基の炭素原子に結合する有機基であり、R4は前記連結基の炭素原子に結合するヒドロキシ基、又はアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アシルオキシ基、アミドオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、及び含窒素複素環からなる群より選択される1種以上の官能基を含む有機基である。)」
という点で一致し、
(相違点7-1)連結基の炭素原子に結合する有機基であるR3が、本件発明7は一般式(2)で表される有機基であるのに対し、甲7発明は無水トリメリット酸に由来する基である点
で少なくとも実質的に相違する。
ウ 検討
甲7には、エポキシ基含有(メタ)アクリレートと、他のラジカル重合性単量体との共重合体に対し、該共重合体が有するエポキシ基の少なくとも一部に不飽和一塩基酸を付加させることにより生じた水酸基の少なくとも一部に多塩基酸無水物を付加させてアルカリ可溶性樹脂を得ること(請求項1及び段落0075)、多塩基酸無水物としては無水トリメリット酸のほか無水ピロメリット酸等が使用できること(請求項5並びに段落0099及び0100)が記載されている。
しかし、甲7には、無水トリメリット酸のほか相違点7-1に係る有機基を形成するような酸無水物を使用し得ることは記載も示唆もされていない。また、甲1~6及び甲8~甲11並びに参1には、甲7発明において相違点7-1に係る有機基を形成するような酸無水物を使用することの動機付けとなるようなことは記載も示唆もされていない。さらに、甲7発明において相違点7-1に係る有機基を形成するような酸無水物を使用することの動機付けとなるような本願優先日当時の技術常識も見当たらない。
そうすると、甲7発明において、無水トリメリット酸に代えて相違点7-1に係る有機基を形成するような酸無水物を使用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
エ 本件発明7についてのまとめ
以上から、本件発明7が甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明8~11及び13について
本件発明8~11及び13は、本件特許請求の範囲の請求項7を直接又は間接的に引用し、本件発明7の構成をすべて備えるものである。
したがって、本件発明8~11及び13は、本件発明7と同様、甲7発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)まとめ
以上から、取消理由2-7は理由がない。
また、同様に甲7を主引用例とする申立理由である申立理由1-7及び申立理由2-7も理由がない。
4 取消理由2-10(甲10を主引用例とする進歩性)について
(1)引用発明
甲10(段落0128~0130)に記載された合成例6に係るカルボキシル基含有樹脂の水分散液(A-2-1)中のカルボキシル基含有樹脂に着目すると、甲10には
「以下の製造方法により製造された、重量平均分子量3000、酸価が150である、カルボキシル基含有樹脂。
<製造方法>
還流冷却器、温度計、窒素置換用ガラス管及び攪拌機を取付けた四ツ口フラスコに、メチルメタクリレート10部、スチレン10部、グリシジルメタクリレート180部、ラウリルメルカプタン1.5部、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)5部、メチルエチルケトン200部を加え、窒素気流下に加熱し、65℃において5時間重合を行い共重合溶液を得た。この共重合溶液に、ハイドロキノン0.05部、アクリル酸91部、ジメチルベンジルアミン0.2部を加え、75℃で24時間付加反応を行い、続いて無水トリメリット酸102部を加えて、75℃で8時間反応させて、重量平均分子量3000、酸価が150である、カルボキシル基含有樹脂溶液を得た。このカルボキシル基含有樹脂溶液に、トリエチルアミン54部を加え攪拌し、イオン交換水302部を加えてさらに30分攪拌して均一な溶液を得た。この溶液をエバポレータを用いて40℃、3時間の条件で減圧蒸留することにより有機溶剤であるメチルエチルケトンを除去し、カルボキシル基含有樹脂の水分散液(A-2-1)を得た。トリエチルアミンによるカルボキシル基含有樹脂の中和率は50%であり、またこの水分散液(A-2-1)の樹脂固形分量は60質量%である。また、この水分散液(A-2-1)についてガスクロマトグラフィーにて測定したところ有機溶媒(メチルエチルケトン)の含有率は0.01質量%であった。」
の発明(以下「甲10発明」という。)が記載されているといえる。
(2)本件発明7について
ア 対比
甲10発明における「カルボキシル基含有樹脂」は、甲10に、カルボキシル基含有樹脂の水分散液(A-2-1)を含有する実施例4に係る水系感光性樹脂組成物を調製すること(段落0138~0141)及びこの水系感光性樹脂組成物の非露光部分が炭酸ナトリウム水溶液で除去されること(段落0142~0147)が記載されていることから、本件発明7における「アルカリ可溶性樹脂」に相当する。
また、甲10発明における「カルボキシル基含有樹脂」は、メチルメタクリレート、スチレン及びグリシジルメタクリレートをモノマーとする三元共重合体を合成し、その三元共重合体のグリシジルメタクリレートに由来するグリシジル基にアクリル酸を反応させ、この反応部位に生成したヒドロキシ基に無水トリメリット酸を反応させたものであると解される。そうすると、甲10発明における「カルボキシル基含有樹脂」の構造と本件発明7に係るアルカリ可溶性樹脂の構造の対応は、上記2(2)アで指摘した甲6発明における「樹脂固形分」の構造と本件発明7に係るアルカリ可溶性樹脂の構造の対応と同様となる。
イ 一致点、相違点
上記アから、本件発明7と甲10発明とは、
「下記一般式(1)で表される繰り返し構造単位Xを1種以上含むアルカリ可溶性樹脂。
【化1】
[図:0001439220000025.jpg]
(式中、R1は水素又はメチル基であり、R2は炭素数が1以上の連結基であり、R3は前記連結基の炭素原子に結合する有機基であり、R4は前記連結基の炭素原子に結合するヒドロキシ基、又はアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アシルオキシ基、アミドオキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、及び含窒素複素環からなる群より選択される1種以上の官能基を含む有機基である。)」
という点で一致し、
(相違点10-1)連結基の炭素原子に結合する有機基であるR3が、本件発明7は一般式(2)で表される有機基であるのに対し、甲10発明は無水トリメリット酸に由来する基である点
で少なくとも実質的に相違する。
ウ 検討
甲10には、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物(d)と、エポキシ基を有さないエチレン性不飽和化合物(e)との重合反応により生成する重合体中のエポキシ基と、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物(f)とを反応させ、この反応で生成する水酸基と酸無水物(g)とを反応させることで、カルボキシル基含有樹脂(A-2)を合成すること(請求項1及び4)、酸無水物(g)としては無水トリメリット酸のほか無水ピロメリット酸等が使用できること(段落0061)が記載されている。
しかし、甲10には、無水トリメリット酸のほか相違点10-1に係る有機基を形成するような酸無水物を使用し得ることは記載も示唆もされていない。また、甲1~9及び甲11並びに参1には、甲10発明において相違点10-1に係る有機基を形成するような酸無水物を使用することの動機付けとなるようなことは記載も示唆もされていない。さらに、甲10発明において相違点10-1に係る有機基を形成するような酸無水物を使用することの動機付けとなるような本願優先日当時の技術常識も見当たらない。
そうすると、甲10発明において、無水トリメリット酸に代えて相違点10-1に係る有機基を形成するような酸無水物を使用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
エ 本件発明7についてのまとめ
以上から、本件発明7が甲10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件発明8~11について
本件発明8~11は、本件特許請求の範囲の請求項7を直接又は間接的に引用し、本件発明7の構成をすべて備えるものである。
したがって、本件発明8~11は、本件発明7と同様、甲10発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)まとめ
以上から、取消理由2-10は理由がない。
また、同様に甲10を主引用例とする申立理由である申立理由2-10も理由がない。
5 申立理由2-11(甲11を主引用例とする進歩性)について
(1)引用発明
甲11(段落0081~0083)に記載された合成例1に係る50%感光性樹脂溶液(A-1)中の樹脂に着目すると、甲11には
「以下の製造方法により製造された、重量平均分子量19000、酸価が85.5である樹脂。
<製造方法>
還流冷却器、温度計、窒素置換用ガラス管及び攪拌機を取付けた四ツ口フラスコに、グリシジルメタクリレート70部、メチルメタクリレート30部、カルビトールアセテート100部、ラウリルメルカプタン0.2部、アゾビスイソブチロニトリル3部を加え、窒素気流下に加熱し、75℃において5時間重合を行い、50%共重合体溶液を得た。上記50%共重合溶液に、ハイドロキノン0.05部、アクリル酸36部、ジメチルベンジルアミン0.2部を加え、100℃で24時間付加反応を行い、続いてH-TMAn(シクロヘキサントリカルボン酸無水物;三菱ガス化学株式会社製)24.8部、カルビトールアセテート63.8部を加えて、100℃で3時間反応させた。尚、上記に示される「部」及び「%」は、全て重量基準である。」
の発明(以下「甲11発明」という。)が記載されているといえる。
(2)検討
甲11発明における「H-TMAn(シクロヘキサントリカルボン酸無水物;三菱ガス化学株式会社製)」に着目して、上記2(2)アと同様に本件発明7と甲11発明とを対比すると、本件発明7と甲11発明とは、連結基の炭素原子に結合する有機基であるR3が、本件発明7は一般式(2)で表される有機基であるのに対し、甲11発明はシクロヘキサントリカルボン酸無水物に由来する基である点で少なくとも実質的に相違する。
そして、上記2(2)イ、3(2)イ及び4(2)イにおける検討と同様の理由により、甲11発明において、シクロヘキサントリカルボン酸無水物に代えて一般式(2)で表される有機基を形成するような酸無水物を使用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、本件発明7が甲11発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
同様に、本件発明8~13も、甲11発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)まとめ
以上から、甲11を主引用例とする申立理由である申立理由2-11は理由がない。
6 申立理由1-4及び申立理由2-4(甲4を主引用例とする新規性、進歩性)について
(1)引用発明
甲4(段落0076、0077、0080、0081及び0084)に記載された合成例15に係る(メタ)アクリル酸系重合体試料15中のアクリル酸系重合体に着目すると、甲4には
「以下の製造方法により製造された、重量平均分子量(Mw)7700、酸価(mgKOH/g)48.7であるアクリル酸系重合体。
<製造方法>
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート58.6gを加え、窒素ガス置換しながら攪拌し、118℃に昇温した。次いで、グリシジルメタクリレート54.2gにジシクロペンタニルメタアクリレート63gとスチレン29.8gとを混合したモノマー液に、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート16.5g(日油社製、パーブチルO)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート25.4gを混合したものを滴下ロートから2時間にわたって前記フラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃まで昇温し30分間攪拌して重合反応を行い、重合体を生成させた。その後、フラスコ内を空気に置換して、アクリル酸27.5g、トリフェニルホスフィン0.4g(付加反応触媒)及びメチルハイドロキノン0.2g(重合禁止剤)を上記の重合体溶液中に投入し、110℃で10時間にわたり反応を続け、グリシジルメタクリレート由来のエポキシ基とアクリル酸との反応によりグリシジルメタクリレート由来のエポキシ基を開裂すると同時に重合体の側鎖にエチレン性不飽和結合を導入した。次いで、フラスコにテトラヒドロフタル酸無水物29gを加えて110℃で3時間にわたり反応を続けて、グリシジルメタクリレート由来のエポキシ基の開裂により生じたヒドロキシル基とテトラヒドロフタル酸無水物の無水物基とを反応させて側鎖にカルボキシル基を導入し、アクリル酸系重合体を生成させた。次に、反応溶液に、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート145.2gを加えた。」
の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているといえる。
(2)検討
甲4発明における「テトラヒドロフタル酸無水物」に着目して、上記2(2)アと同様に本件発明7と甲4発明とを対比すると、本件発明7と甲4発明とは、連結基の炭素原子に結合する有機基であるR3が、本件発明7は一般式(2)で表される有機基であるのに対し、甲4発明はテトラヒドロフタル酸無水物に由来する基である点で少なくとも実質的に相違する。
そして、上記2(2)イ、3(2)イ及び4(2)イにおける検討と同様の理由により、甲4発明において、テトラヒドロフタル酸無水物に代えて一般式(2)で表される有機基を形成するような酸無水物を使用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、本件発明7が甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
同様に、本件発明8~11及び13も、甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)まとめ
以上から、甲4を主引用例とする申立理由である申立理由1-4及び申立理由2-4は理由がない。
7 申立理由1-1及び申立理由2-1(甲1を主引用例とする新規性、進歩性)について
(1)引用発明
甲1(段落0088及び0089)に記載された合成例1に係る重合性不飽和基含有アルカリ可溶性共重合体樹脂溶液(A)-1中の重合性不飽和基含有アルカリ可溶性共重合体樹脂に着目すると、甲1には
「以下の製造方法により製造された、酸価62mgKOH/g、Mw8200である重合性不飽和基含有アルカリ可溶性共重合体樹脂。
<製造方法>
還留冷却器付き1Lの四つ口フラスコ中に、PGMEA300gを入れ、フラスコ系内を窒素置換した後120℃に昇温した。このフラスコ中にモノマー混合物(ベンジルメタクリレート52.9g(0.30モル)、ジシクロペンタニルメタクリレート77.1g(0.35モル)、グリシジルメタクリレート49.8g(0.35モル)にAIBN10gを溶解した混合物)を滴下ロートから2時間かけて滴下し、さらに120℃で2時間撹拌し、共重合体溶液を得た。次いで、フラスコ系内を空気に置換した後、得られた共重合体溶液にアクリル酸24.0g(グリシジル基の95%)、TDMAMP0.8g及びHQ0.15gを添加し、120℃の加熱下で6hr撹拌し、重合性不飽和基含有共重合体溶液を得た。さらに、得られた重合性不飽和基含有共重合体溶液にテトラヒドロ無水フタル酸45.7g(AA添加モル数の90%)、TEA0.5gを加え120℃で4時間反応させる。」
の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。
(2)検討
甲1発明における「テトラヒドロ無水フタル酸」に着目して、上記2(2)アと同様に本件発明7と甲1発明とを対比すると、本件発明7と甲1発明とは、連結基の炭素原子に結合する有機基であるR3が、本件発明7は一般式(2)で表される有機基であるのに対し、甲1発明はテトラヒドロフタル酸無水物に由来する基である点で少なくとも実質的に相違する。
そして、上記2(2)イ、3(2)イ及び4(2)イにおける検討と同様の理由により、甲1発明において、テトラヒドロフタル酸無水物に代えて一般式(2)で表される有機基を形成するような酸無水物を使用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、本件発明7が甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
同様に、本件発明8~13も、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)まとめ
以上から、甲1を主引用例とする申立理由である申立理由1-1及び申立理由2-1は理由がない。
8 申立理由1-2及び申立理由2-2(甲2を主引用例とする新規性、進歩性)について
(1)引用発明
甲2(段落0057及び0059)に記載された製造例4に係るアクリル樹脂(A-4)に着目すると、甲2には
「以下の製造方法により製造された、
[図:0001439220000026.jpg]
という構造(ただし、X:Y=80:20)の、酸価は46.2、重量平均分子量(Mw)は17000であるアクリル樹脂(A-4)。
<製造方法>
加熱冷却・撹拌装置,還流冷却管,窒素導入管を備えたガラス製フラスコに,グリシジルメタクリレート100g,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150gを仕込んだ。系内の気相部分を窒素で置換したのち,2,2‘
-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)8.7gを添加し,80℃に加熱し,同温度で8時間反応させた。得られた溶液に,更にアクリル酸51g,テトラブチルアンモニウムクロライド2g,ハイドロキノン0.3g,プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート110gを添加し,100℃で12時間反応させた。その後,溶液に更に無水コハク酸14gを添加し,70℃で6時間反応させ,目的の重合体(A-4)の40%溶液を得た。」
の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。
(2)検討
甲2発明における「無水コハク酸」に着目して、上記2(2)アと同様に本件発明7と甲2発明とを対比すると、本件発明7と甲2発明とは、連結基の炭素原子に結合する有機基であるR3が、本件発明7は一般式(2)で表される有機基であるのに対し、甲2発明は無水コハク酸に由来する基である点で少なくとも実質的に相違する。
そして、上記2(2)イ、3(2)イ及び4(2)イにおける検討と同様の理由により、甲2発明において、無水コハク酸に代えて一般式(2)で表される有機基を形成するような酸無水物を使用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、本件発明7が甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
同様に、本件発明8~13も、甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)まとめ
以上から、甲2を主引用例とする申立理由である申立理由1-2及び申立理由2-2は理由がない。
9 申立理由1-3及び申立理由2-3(甲3を主引用例とする新規性、進歩性)について
(1)引用発明
甲3(段落0218)に記載された樹脂C-12-4に着目すると、甲3には「以下の構造の、重量平均分子量5000、酸価100(mgKOH/g)である樹脂C-12-4。
[図:0001439220000027.jpg]
(主鎖に付記した添字はモル比であり、X=40、Y=30、Z=30である。)」
の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。
(2)検討
甲3発明における添字zが付された構造の無水コハク酸残基に着目して、上記2(2)アと同様に本件発明7と甲3発明とを対比すると、本件発明7と甲3発明とは、連結基の炭素原子に結合する有機基であるR3が、本件発明7は一般式(2)で表される有機基であるのに対し、甲3発明は無水コハク酸に由来する基である点で少なくとも実質的に相違する。
そして、上記2(2)イ、3(2)イ及び4(2)イにおける検討と同様の理由により、甲3発明において、添字zが付された構造を無水コハク酸残基に代えて一般式(2)で表される有機基とすることは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、本件発明7が甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
同様に、本件発明8~11及び13も、甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)まとめ
以上から、甲3を主引用例とする申立理由である申立理由1-3及び2-3は理由がない。
10 申立理由1-5及び申立理由2-5(甲5を主引用例とする新規性、進歩性)について
(1)引用発明
甲5(段落0023~0025及び0143~0145)に記載された合成例2-(1)に係るアルカリ可溶性樹脂(A-1)に着目すると、甲5には
「以下の製造方法により製造された、酸価32.8mgKOH/g、重量平均分量Mw約6350、ガラス転移温度-12℃、以下の化学式1に示す繰り返し単位70モル%であるアルカリ可溶性樹脂(A-1)。
<化学式1>
[図:0001439220000028.jpg]
(式中で、R1及びR2は、それぞれ独立的に水素原子またはメチル基であり、R3は、酸無水物により誘導されたカルボン酸を含む残基である)。
<製造方法>
撹拌機、温度計還流冷却管、積荷ロット及び窒素導入管を具備するフラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部(質量部)、プロピレングリコールモノメチルエーテル100部、AIBN5部、2-エチルヘキシルアクリレート23.0部、4-メチルスチレン1.6部、グリシジルメタクリレート46.0部、n-ドデシルメルカプト3部を投入し、窒素置換した。その後に、撹拌して反応液の温度を80℃に上昇させて4時間反応させた。続いて、反応液の温度を常温に下げ、フラスコ雰囲気を窒素から空気に置換した後に、トリエチルアミン0.2部、4-メトキシフェノール0.1部、アクリル酸23.3部を投入して100℃から6時間反応させた。その後に反応液の温度を常温に下げ、コハク酸無水物6.0部を投入し、80℃から6時間反応させた。」
の発明(以下「甲5発明」という。)が記載されているといえる。
(2)検討
甲5発明における「酸無水物により誘導されたカルボン酸を含む残基」である「R3」及び「コハク酸無水物」に着目して、上記2(2)アと同様に本件発明7と甲5発明とを対比すると、本件発明7と甲5発明とは、連結基の炭素原子に結合する有機基であるR3が、本件発明7は一般式(2)で表される有機基であるのに対し、甲5発明はコハク酸無水物に由来する基である点で少なくとも実質的に相違する。
そして、上記2(2)イ、3(2)イ及び4(2)イにおける検討と同様の理由により、甲5発明において、コハク酸無水物に代えて一般式(2)で表される有機基を形成するような酸無水物を使用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、本件発明7が甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
同様に、本件発明8~11及び13も、甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)まとめ
以上から、甲5を主引用例とする申立理由である申立理由1-5及び申立理由2-5は理由がない。
11 申立理由1-8及び申立理由2-8(甲8を主引用例とする新規性、進歩性)について
(1)引用発明
甲8(5頁左下欄3~15行)に記載されたベースポリマーに着目すると、甲8には
「以下の製造方法により製造された、重量平均分子量が300000、軟化点が60℃、酸価が100であるベースポリマー。
<製造方法>
メチルメタクリレート(MMA)とグリシジルメタクリレート(GMA)とを6:4のモル比で混合し、これに溶媒としてエチルセロソルブを40重量%となるように加え、触媒としてアゾイソブチロニトリルの存在下に窒素ガス雰囲気中、60℃で溶液重合を行った。その後アクリル酸を、得られる共重合体中1エポキシ当量当り1.05モル反応させ、酸価が一定になった後、更にテトラヒドロフタル酸無水物0.8モルを反応させた。」
の発明(以下「甲8発明」という。)が記載されているといえる。
(2)検討
甲8発明における「テトラヒドロフタル酸無水物」に着目して、上記2(2)アと同様に本件発明7と甲8発明とを対比すると、本件発明7と甲8発明とは、連結基の炭素原子に結合する有機基であるR3が、本件発明7は一般式(2)で表される有機基であるのに対し、甲8発明はコハク酸無水物に由来する基である点で少なくとも実質的に相違する。
そして、上記2(2)イ、3(2)イ及び4(2)イにおける検討と同様の理由により、甲8発明において、テトラヒドロフタル酸無水物に代えて一般式(2)で表される有機基を形成するような酸無水物を使用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
したがって、本件発明7が甲8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
同様に、本件発明8~11も、甲8発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)まとめ
以上から、甲8を主引用例とする申立理由である申立理由1-8及び申立理由2-8は理由がない。
12 申立理由3(甲9に基づく拡大先願)について
(1)引用発明
甲9当初明細書等(段落0168~0174)に記載されたバインダ樹脂(F-1)溶液中のバインダ樹脂(F-1)に着目すると、甲9当初明細書等には
「以下の製造方法により製造された、Mw16000、酸価99(mgKOH/g)であるバインダ樹脂(F-1)。
<製造方法>
セパラブル4口フラスコに温度計、冷却管、窒素ガス導入管、撹拌装置を取り付けた反応容器にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100部を入れ、容器に窒素ガスを注入しながら120℃に加熱して、同温度で滴下管より2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)14.4部、グリシジルメタクリレート(GMA)55.4部、ジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)11.5部、アゾビスイソブチロニトリル1.1部の混合物を2.5時間かけて滴下し重合反応を行い、次にフラスコ内を空気置換し、アクリル酸(AA)28.1部にトリスジメチルアミノメチルフェノール0.5部、及びハイドロキノン0.5部を投入し、120℃で5時間反応を続け不揮発分酸価が0.8となったところで反応を終了し、重量平均分子量が約12,000の樹脂溶液を得、さらに無水コハク酸23.6部、トリエチルアミン0.6部を加え120℃で4時間反応させ、不揮発分が20%になるようにプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを添加する。」
の発明(以下「甲9発明」という。)が記載されているといえる。
(2)検討
甲9発明における「無水コハク酸」に着目して、上記2(2)アと同様に本件発明7と甲9発明とを対比すると、本件発明7と甲9発明とは、連結基の炭素原子に結合する有機基であるR3が、本件発明7は一般式(2)で表される有機基であるのに対し、甲9発明はコハク酸無水物に由来する基である点で少なくとも実質的に相違する。
したがって、本件発明7が甲9発明と同一であるとはいえない。
また、甲9当初明細書等には、甲9発明は、洗浄溶剤に環状溶剤を使用した場合に異物が生じ難く現像時の残渣も抑制できる感光性着色組成物の提供を目的とする旨(段落0007)及び甲9発明における上記コハク酸無水物に由来する基は、洗浄溶剤による凝集異物の発生をより抑制するという観点から選択されたものである旨(請求項4、段落0063、0064及び0067)が記載されている。そうすると、上記相違は課題解決のための具体化手段における微差ではない。したがって、本件発明7が甲9発明と実質的に同一であるともいえない。
同様に、本件発明8~11及び13も、甲9発明と同一であるとはいえないし、甲9発明と実質的に同一であるともいえない。
(3)まとめ
以上から、申立理由3は理由がない。
13 申立理由4(実施可能要件)について
申立理由4の具体的理由は、上記第4の1(4)で指摘したとおり、
(a)アルカリ可溶性樹脂が、R5又はR5'が、母体の炭素数が3~8で、かつ硫黄以外のヘテロ原子を含む有機基である前記繰り返し構造単位X又は前記繰り返し構造単位X'を含む場合については、当該アルカリ可溶性樹脂を当業者が製造可能な程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に開示されているとはいえない。
(b)アルカリ可溶性樹脂が、R5又はR5'が、母体の炭素数が3~8で、かつヘテロ原子として硫黄を含む有機基である前記繰り返し構造単位X又は前記繰り返し構造単位X'を含む場合であって、本件発明5、6に係る化学構造を有しない場合についても、当該アルカリ可溶性樹脂を当業者が製造可能な程度に、発明の詳細な説明が明確かつ十分に開示されているとはいえない。
というものである。
しかし、上記第2のとおり本件訂正請求による訂正が認められたため、本件発明7~13は、本件発明5又は6に係る化学構造を有するものである。
したがって、申立理由4は理由がない。
14 申立理由5(サポート要件)について
申立理由5の具体的理由は、上記第4の1(5)で指摘したとおり、
(a)アルカリ可溶性樹脂が、R5又はR5'が、母体の炭素数が3~8で、かつ硫黄以外のヘテロ原子を含む有機基である前記繰り返し構造単位X又は前記繰り返し構造単位X'を含む場合については、発明の詳細な説明に実質的な開示があるとはいえない。
(b)アルカリ可溶性樹脂が、R5又はR5'が、母体の炭素数が3~8で、かつヘテロ原子として硫黄を含む有機基である前記繰り返し構造単位X又は前記繰り返し構造単位X'を含む場合であって、本件発明5、6に係る化学構造を有しない場合についても、発明の詳細な説明に実質的な開示があるとはいえない。
というものである。
しかし、上記第2のとおり本件訂正請求による訂正が認められたため、本件発明7~13は、本件発明5又は6に係る化学構造を有するものである。
したがって、申立理由5は理由がない。
第6 むすび
上記第5の2~14のとおり、本件特許の請求項7~13に係る特許は、上記第4の1及び2で掲げたいずれの申立理由及び取消理由によっても取り消すことはできない。
そして、他に本件特許の請求項7~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件特許の請求項1~4に係る特許についての特許異議の申立ては、上記第5の1のとおり、対象が存在しない不適法な申立てであって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2025-700874