特許異議申立
2024-700957
不眠症の治療および改善システム
- 審判番号
- 2024-700957
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-007724
- 登録番号
- 7461676
- 請求日
- 2024年10月02日
- 審決日
- 2025年05月12日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ロゴスサイエンス株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人高橋特許事務所
- 【異議申立人】弁理士法人 エピファニー特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 松田 直也
- 審判官 田川 泰宏
- 審判官 古川 哲也
- 分類
- P1651.121-YAA(G16H) / P1651.1 -YAA(G16H) / P1651.536-YAA(G16H) / P1651.537-YAA(G16H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第6項、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項、特許法第135条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7461676号発明「不眠症の治療および改善システム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7461676号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、3について訂正することを認める。
特許第7461676号の請求項4に係る特許を維持する。
特許第7461676号の請求項1~3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7461676号の請求項1~4に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和5年1月22日の出願であって、令和6年3月27日にその特許権の設定登録がされ、同年4月4日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、同年6年10月2日に特許異議申立人弁理士法人エピファニー特許事務所(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和 6年11月22日:手続補正指令書(方式)(起案日)
令和 6年12月 5日:手続補正書(方式)の提出
令和 7年 2月17日:取消理由通知書(起案日)
令和 7年 4月16日:訂正請求書、意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正請求の趣旨
特許第7461676号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3について訂正することを求める。(以下、本訂正請求書でする訂正を「本件訂正」という。)
2 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
3 一群の請求項について
訂正前の請求項1~2について、請求項2は、請求項1を引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~2に対応する訂正後の請求項1~2は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
4 訂正についての当審の判断
(1)一群の請求項1、2(訂正事項1、2)について
事案に鑑み、訂正事項1、2をまとめて検討する。
ア 訂正の目的について
訂正事項1、2は、それぞれ、訂正前の請求項1、2を削除する訂正である。
したがって、訂正事項1、2は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項1、2は、それぞれ、訂正前の請求項1、2を削除する訂正である。
したがって、訂正事項1、2は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないことについて
訂正事項1、2は、それぞれ、訂正前の請求項1、2を削除する訂正である。
したがって、訂正事項1、2は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
エ 独立特許要件について
本件においては、全ての請求項1~4について特許異議の申立てがなされているので、訂正事項1、2に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
(2)請求項3(訂正事項3)について
ア 訂正の目的について
訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除する訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする訂正である。
イ 特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であることについて
訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除する訂正である。
したがって、訂正事項3は、特許明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
ウ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと特許請求の範囲の拡張又は変更の有無について
訂正事項3は、訂正前の請求項3を削除する訂正である。
したがって、訂正事項3は、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
エ 独立特許要件について
本件においては、全ての請求項1~4について特許異議の申立てがなされているので、訂正事項3に関して、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
5 小括
上記のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、訂正要件を満たすものである。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~3について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められることから、訂正後の特許請求の範囲は、令和7年4月16日に提出された訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】(削除)
【請求項3】(削除)
【請求項4】
不眠症の疾患特異的な心理療法を実行する治療モジュールと、ユーザの不眠症のタイプに応じた治療モジュールのリストを記憶したメモリと、
前記治療モジュールをユーザに提供するためのユーザ端末と、
ユーザの不眠症のタイプを入力するための医療機関端末または前記ユーザ端末と、
前記メモリに記憶された前記リストに基づいて、前記タイプに応じた治療モジュールを前記ユーザ端末に提供する制御部、
を含む不眠症の治療・改善・セルフケア用のシステム。」
第4 令和7年2月17日付け取消理由の概要及び当該取消理由についての当審の判断
1 取消理由通知の概要
請求項1~3に係る特許に対して、当審が令和7年2月17日付けで特許権者に通知した取消理由通知の要旨は、次のとおりである。
(理由1)
請求項1~3の特許に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物1、2に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
<引用文献等一覧>
1.特許第6301573号公報(甲第1号証)
2.特開2022-68362号公報(甲第2号証)
2 当審の判断
取消理由通知における理由1(進歩性)は、本件訂正により請求項1~3が削除されたことにより、当該取消理由は存在しないこととなった。
第5 採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、特許異議申立書において、上記第4で言及した取消理由通知で採用した特許異議申立理由以外に、概略、以下のとおり主張している。
(1)特許法第29条第1項柱書
請求項1~3の特許に係る発明は、自然法則を利用した技術的思想の創作ではない。
(2)特許法第36条第4項第1号
本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載には不備があり、請求項1、3、4の特許に係る発明は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3)特許法第36条第6項第1号
請求項1~4の特許に係る発明は、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件特許は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(4)特許法第36条第6項第2号
請求項1~4の特許に係る発明は不明確であるから、本件特許は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
第6 採用しなかった特許異議申立理由に対する当審の判断
上記第2のとおり、本件訂正によって、請求項1~3は削除されたことから、上記第5で挙げられた特許異議申立理由のうち、請求項4に対する理由についてのみ検討をする。
1 特許法第36条第4項第1号の申立理由についての判断
(1)申立人の主張について
申立人は、実施可能要件違反について請求項4に係る発明は「ユーザの不眠症のタイプに応じた治療モジュールのリストを記憶したメモリ」を発明特定事項とするものの、
(主張1a)発明の詳細な説明の実施例では、治療モジュールがいかに提供されるかは具体的に記載されておらず、
(主張1b)「メモリ」とは一時的記憶する記憶装置(たとえば、RAM)を指すので、一時的なメモリを使って発明がいかに実現されるか、
当業者が実施できる程度に記載されているといえない旨主張する(特許異議申立書第10頁)。
(2)当審の判断
ア 本件明細書及び図面には、次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下、同様。)。
「【0010】
図1にユーザ端末101とサーバ106を含むネットワークシステム100の構成の概略を示した。ユーザ端末101は、インターネット110を介してユーザサーバ106と通信するための通信部102、個人情報や、データ、プログラムを記録するための記憶装置104、表示装置105、ユーザからの入力を受け付ける入力装置111、これらの制御を行う制御装置103などを含む。サーバ106は、インターネット110を介してユーザ端末101と通信するための通信部108、大容量の記憶装置109、および制御装置107などを含む。制御装置107には、通信部108を介してユーザ端末101と通信するための通信制御プログラムが実装されているとともに、記憶装置109に構築されたデータベースを管理するプログラムと、ユーザの現在または過去の症状・状態を記録した症状の記録(日誌)を管理する専用のプログラム(以下、症状日誌プログラムとも言う)や、治療用アプリのサーバ側プログラム、治療用アプリの治療用のモジュールであるワークや疾患教育の動画などのデータが実装されている。そして、サーバ側の治療用プログラムは、ユーザ側の治療用アプリと連携して診断・治療・緩和・改善・維持またはセルフケアを実行し、制御装置107が治療に必要な情報を通信制御プログラムやデータベース管理プログラムと連携させながらユーザ端末に提供する。・・・(以下省略)」
「【0022】
次に、患者のアセスメント結果により患者のタイプが決定されると、記憶装置109に記憶されたリスト(タイプ毎にどの治療モジュールが提供されるかが記録されている。治療モジュールだけでなく、心理教育、疾患教育等をタイプ別に必要に応じて提供するような記録とすることもできる)に基づいて、治療モジュールのプログラムが決定される。図6(a)で、タイプ1が不安型タイプ、タイプ2がうつ型タイプ、タイプ3がうつ型タイプ・入眠異常タイプを示している。その他のタイプについては説明の簡略化のため省略した。1~2週目は疾患教育、アセスメントを行うため、治療は3週目から行われ、大文字の英数字は上述したような診断横断的な治療モジュール、小文字の英数字は上述したような疾患特異的な治療モジュールを示している。患者がタイプ1の場合、スケジュールに従って、治療モジュールA,B,a,b,c,dがシステム100からユーザ端末101に提供され、患者はユーザ端末101を利用して治療を受ける。リストに記載された、疾患の教育や治療モジュール群の構成はそれぞれのタイプに応じて構成されており、リラクゼーションのための治療モジュール、ストレスマネジメントのための治療モジュール、認知再構成のための治療モジュールなどの治療モジュールが治療効果を高めるために順序だって前述のリストに基づいて提供される。」
「【図6】
[図:0001425757000001.jpg]
」
イ 主張の検討
(ア)主張1aについて
段落【0022】には、患者のタイプ毎にどの治療モジュールが提供されるかについて、具体例として、「患者がタイプ1の場合、スケジュールに従って、治療モジュールA,B,a,b,c,dがシステム100からユーザ端末101に提供され、患者はユーザ端末101を利用して治療を受ける」ことが記載されているから、治療モジュールがいかに提供されるかについて、当業者であれば、実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
したがって、申立人の主張する理由1aに理由はない。
(イ)主張1bについて
上記(ア)で検討した事項及び段落【0022】の記載によれば、請求項4の発明特定事項である「メモリ」は、本件特許の発明の詳細な説明に記載された「記憶装置109」に対応することは明らかである。
そして、段落【0010】には、「記憶装置109」について、「大容量の記憶装置109」、「記憶装置109に構築されたデータベース」とあることから、請求項4の発明特定事項である「メモリ」が、申立人が主張するような一時的記憶をするRAMのような記憶装置ではないことは明らかである。
したがって、申立人の主張する理由1bに理由はない。
(3)小括
以上のとおりであるから、請求項4に関する、申立人の特許法第36条第4項第1号の申立理由に理由はない。
2 特許法第36条第6項第1号の申立理由についての判断
(1)申立人の主張について
申立人は、サポート要件違反について、以下のとおり主張する(特許異議申立書第11頁)。
(主張2a)請求項4の「前記タイプに応じた治療モジュールを前記ユーザ端末に提供する制御部」に相当する構成は、発明の詳細な説明に記載されていない。
(主張2b)請求項4の「前記不眠症を診断するための指標に対するユーザの回答の入力」に相当する構成は、発明の詳細な説明に記載されていない。
(主張2c)請求項4は「メモリ」を発明特定事項とするところ、「メモリ」は一般には、メインメモリ(主記憶装置)のことを指し、RAMと呼ばれるものであるのに対し、発明の詳細な説明に記載された実施例では上位概念である「記憶装置」のみで記載されており、「メモリ」については記載されていない。
(主張2d)請求項4に係る発明は「前記タイプに応じた治療モジュールを、前記メモリに記憶された前記リストに基づいて前記ユーザ端末に提供する制御部、」を発明特定事項とするところ、対応すると推定される明細書の発明の詳細な説明の段落【0022】には、リストに基づいて治療モジュールを提供する主体についての記載がなく、また、システムのいかなる装置がリストを用いて、いかなる母集団からどのように治療モジュールを選択するかも記載されていないため、本記載は発明の詳細な説明に記載されていない。
(2)主張の検討
ア 主張2aについて
上記1(2)アで摘記した【0010】には、サーバ106の「制御装置107には、通信部108を介してユーザ端末101と通信するための通信制御プログラムが実装されているとともに、記憶装置109に構築されたデータベースを管理するプログラムと、ユーザの現在または過去の症状・状態を記録した症状の記録(日誌)を管理する専用のプログラム(以下、症状日誌プログラムとも言う)や、治療用アプリのサーバ側プログラム、治療用アプリの治療用のモジュールであるワークや疾患教育の動画などのデータが実装されている。そして、サーバ側の治療用プログラムは、ユーザ側の治療用アプリと連携して診断・治療・緩和・改善・維持またはセルフケアを実行し、制御装置107が治療に必要な情報を通信制御プログラムやデータベース管理プログラムと連携させながらユーザ端末に提供する。」ことが記載されており、【0022】には、「患者のアセスメント結果により患者のタイプが決定されると、記憶装置109に記憶されたリスト(タイプ毎にどの治療モジュールが提供されるかが記録されている。治療モジュールだけでなく、心理教育、疾患教育等をタイプ別に必要に応じて提供するような記録とすることもできる)に基づいて、治療モジュールのプログラムが決定される。」ことが記載されており、さらに、【0006】には「前記タイプに応じた治療モジュールを前記ユーザ端末に提供する制御部」と記載されている。
そうすると、請求項4の「前記メモリに記憶された前記リストに基づいて、前記タイプに応じた治療モジュールを前記ユーザ端末に提供する制御部」は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
よって、申立人の主張する主張2aに理由はない。
イ 主張2bについて
申立人の主張する「前記不眠症を診断するための指標に対するユーザの回答の入力」に相当する構成は、請求項4の発明特定事項ではない。
よって、申立人の主張する理由2bは失当である。
ウ 主張2cについて
上記1(2)イ(イ)のとおり、請求項4の「メモリ」は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
よって、申立人の主張する理由2cに理由はない。
エ 主張2dについて
上記アのとおり、請求項4の「前記メモリに記憶された前記リストに基づいて、前記タイプに応じた治療モジュールを前記ユーザ端末に提供する制御部」は、発明の詳細な説明に記載されたものである。
よって、申立人の主張する理由2dに理由はない。
(3)小括
以上のとおりであるから、請求項4に関する、申立人の特許法第36条第6項第1号の申立理由に理由はない。
3 特許法第36条第6項第2号の申立理由についての判断
(1)申立人の主張について
申立人は、明確性要件違反について、以下のとおり主張する(特許異議申立書第11~12頁)。
(主張3a)請求項4は、「メモリと、ユーザ端末と、制御部と」を発明特定事項とするが、メモリと、制御部と、ユーザ端末とはデバイスのレイヤーが異なるものであるため、請求項4の特許に係る発明がいかに構成されるのか不明確である。例えば、メモリを持つサーバと、制御部を持つサーバと、ユーザ端末からなるシステムなのか、などが不明確である。
(主張3b)請求項4は、「不眠症の疾患特異的な心理療法を実行する治療モジュールと、ユーザの不眠症のタイプに応じた治療モジュールのリストを記憶したメモリと、前記治療モジュールをユーザに提供するためのユーザ端末と、ユーザの不眠症のタイプを入力するための医療機関端末または前記ユーザ端末と、前記メモリに記憶された前記リストに基づいて、前記タイプに応じた治療モジュールを前記ユーザ端末に提供する制御部、を含む」ことを発明特定事項とするところ、この発明特定事項に対応する本件明細書の詳細な説明の段落【0026】の「上述の実施例1-3では一連の制御が治療用アプリによって制御される例を示したが、例えば、実施例1でA4-4のフローの後に医療機関にアセスメント結果を提示する。あるいは、システム100に接続された医療機関の入力端末(図示しない)でタイプの指定を行い(入力はユーザ端末101からできるようにしてもよい)、その結果に基づいてA4-5の治療モジュールのシステムからの提供からのフローをユーザ端末101で受け、治療を開始するように設定することもできる。」との記載によれば、実施例1のA4-4までのフロー(ユーザの不眠症のタイプのアセスメント)は必須の事項であり、請求項4にはその特定事項がないため、いかに不眠症タイプが決定されるか不明確である。
(2)主張の検討
ア 主張3aについて
請求項4は、「不眠症の治療・改善・セルフケア用のシステム」が「メモリ」と、「制御部」とを含んでいるとする点で明確であって、そのように解釈しても、特許明細書等の段落【0009】の「(治療用アプリを含むシステムの構成)本発明の一実施形態として、インターネット上に設置されたネットワークシステムにインストールされたプログラムを挙げる。ネットワークシステムは、サーバやクラウド上の大容量の記憶装置を備え、ノートパソコンやスマートフォン、タブレットなどのユーザ端末がインターネットを介して接続されたサーバであり、このサーバ装置は、本実施形態に係るプログラムを実行することで、ユーザ端末とのデータ通信を通じて、ユーザ端末から入力された情報や、サーバの記憶装置に格納されている情報を用いてユーザ端末を介してユーザに不眠症の治療や緩和、セルフケアを可能とする治療用アプリや不眠症に関わる疾患教育等の各種情報を提供するものである。また、本システムはサーバとユーザ端末が協同して利用者、不眠症患者の症状を改善する例として示したが、すべての要素をサーバ側だけに保持し、ユーザ端末は情報入出力と情報表示のためだけに用いるシステム、あるいは、必要なデータやプログラムをユーザ端末にダウンロードして、すべての処理をユーザ端末で実行できるシステムや、ユーザーがアクセスできるウェブページでの提供も本発明の範囲に含まれる。」、上記1(2)アで摘記した段落【0010】の記載と齟齬しない。
また、「メモリ」や「制御部」がユーザ端末とはデバイスのレイヤーが異なるとしても、第三者に不測の不利益を及ぼすものでもない。
よって、申立人が主張する主張3aに理由はない。
イ 主張3bについて
請求項4は、「ユーザの不眠症のタイプを入力するための医療機関端末または前記ユーザ端末」と、「前記メモリに記憶された前記リストに基づいて、前記タイプに応じた治療モジュールを前記ユーザ端末に提供する」ことを含んでおり、申立人が主張する「実施例1のA4-4までのフロー(ユーザの不眠症のタイプのアセスメント)は必須の事項」であるという点で、請求項4の記載が不明確になるものではなく、第三者に不測の不利益を及ぼすものでもない。
よって、申立人が主張する主張3bに理由はない。
(3)小括
以上のとおりであるから、請求項4に関する、申立人の特許法第36条第6項第2号の申立理由に理由はない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、本件特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項1~3について訂正することを認める。
本件請求項4に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由によっては、取り消すことができない。また、他に本件請求項4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件訂正前の請求項1~3は、上記のとおり削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項1~3に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する特許法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700957