特許異議申立
2023-700143
薬剤払出し装置
- 審判番号
- 2023-700143
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-208569
- 登録番号
- 7117680
- 請求日
- 2023年02月09日
- 審決日
- 2025年07月24日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社湯山製作所
- 【権利者代理人】藤田 隆
- 【異議申立人】中谷 浩美
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 哲男
- 審判官 佐々木 正章
- 審判官 安井 寿儀
- 分類
- P1651.121-YAA(A61J) / P1651.537-YAA(A61J)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第17条の2第3項、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7117680号発明「薬剤払出し装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7117680号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
特許第7117680号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7117680号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、平成28年 9月23日(優先権主張 平成27年11月 2日)に出願した特願2016-185219号の一部を、令和 2年12月16日に新たな特許出願としたものであって、令和 4年 8月 4日にその特許権の設定登録がされ、令和 4年 8月15日に特許掲載公報が発行された。
そして、令和 5年 2月 9日に、特許異議申立人 中谷浩美(以下「申立人」という。)により請求項1~6に係る特許に対して特許異議の申立てがされ、その後の手続の経緯は以下のとおりである。
令和 5年10月 3日付け:取消理由通知
令和 5年12月11日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 6年 2月 2日:申立人による意見書の提出
令和 6年 5月15日付け:取消理由通知
令和 6年 7月19日:特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和 6年 9月20日:申立人による意見書の提出
なお、令和 5年12月11日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正の請求について
1 訂正の内容
令和 6年 7月19日提出の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の請求の趣旨は、「特許第7117680号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-6について訂正することを求める。」というものであり、その内容は、次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「薬剤投入溝を有する分配皿とを有し、」と記載されているのを、「薬剤投入溝を有する複数の分配皿とを有し、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「同種の散薬グループである容器グループにおいて、」と記載されているのを、「同種の散薬が貯留されたグループである容器グループにおいて、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「最初の薬剤容器の散薬がなくなった場合には、」と記載されているのを、「薬剤払い出し装置は、薬剤払い出し装置を制御する制御手段をさらに有し、
薬剤払い出し装置は、さらに複数の分配皿の各々の周辺に薬剤容器を載置する複数の容器載置装置を有し、
同一の容器グループに属する薬剤容器は、一つの分配皿に対応する複数の容器載置装置に対して一個に限り載置するものであり、
制御手段により、最初の薬剤容器の散薬がなくなった場合には、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する)。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1に「記憶部に記憶された同種の散薬グループである容器グループにおいて、」と記載されているのを、「記憶部に記憶された同種の散薬が貯留されたグループである容器グループにおいて、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項1に「いずれの容器グループに属するかの情報を用いて、」と記載されているのを、「最初の薬剤容器がいずれの容器グループに属するかの情報を用いて、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項1に「容器保管部に同一の容器グループに属する薬剤容器が有るか否かが判断され、」と記載されているのを、「容器保管部に同一の容器グループに属する薬剤容器が有るか否かと、現に容器載置装置に搭載されておらず、散薬を排出していない薬剤容器が、容器保管部に有るか否かとが判断され、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項1に「最初の薬剤容器と同一の容器グループの次の薬剤容器の散薬を計量して排出させた散薬を薬剤投入溝に投入し、」と記載されているのを、「最初の薬剤容器と同一の容器グループの次の薬剤容器を容器載置装置に載置し散薬を計量して排出させた散薬を薬剤投入溝に投入し、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項1に「薬剤払い出し装置は、さらに薬剤容器を載置する容器載置装置を有し、
薬剤払い出し装置は、最初の薬剤容器の散薬がなくなった場合には、」と記載されているのを、「薬剤払い出し装置は、制御手段により、最初の薬剤容器の散薬がなくなった場合には、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項1に「記憶部に記憶された情報を用いて、容器保管部に同一の容器グループに属する薬剤容器で、現に容器載置装置に搭載されておらず、散薬を排出していない薬剤容器が有るか否かが判断され、」と記載されているのを、「記憶部に記憶された情報を用いて、同一の容器グループに属する薬剤容器で、現に容器載置装置に搭載されておらず、散薬を排出していない薬剤容器が、容器保管部に有るか否かが判断され、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2~6も同様に訂正する。)。
2 一群の請求項
本件訂正は、一群の請求項である請求項〔1~6〕について請求されたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「分配皿」を、「複数の分配皿」と限定する訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は、本件特許明細書の段落【0035】の「本実施形態では、薬品分割領域1 3に分配皿35が2個、並列して設置されている。・・・
なお分配皿35の数は限定されるものではなく、一個であってもよいが、複数の分配皿35を有することが望ましい。」との記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項2は、訂正前の請求項1の「同種の散薬グループである容器グループ」が「同種の散薬が貯留されたグループである容器グループ」であることを明確にする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は、本件特許明細書の段落【0054】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項3のうち、「薬剤払い出し装置は、薬剤払い出し装置を制御する制御手段をさらに有し、」の訂正は、制御手段を限定するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)訂正事項3のうち、「薬剤払い出し装置は、さらに複数の分配皿の各々の周辺に薬剤容器を載置する複数の容器載置装置を有し、」の訂正は、容器積載装置の場所が「複数の分配皿の各々の周辺」であることと、個数が「複数」であることとを、限定した上で、記載を整理したものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(ウ)訂正事項3のうち、「同一の容器グループに属する薬剤容器は、一つの分配皿に対応する複数の容器載置装置に対して一個に限り載置するものであり、」は、分配皿に対する薬剤容器の配置を限定するものであって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(エ)訂正事項3のうち、訂正前の「最初の薬剤容器の散薬がなくなった場合には、」を「制御手段により、最初の薬剤容器の散薬がなくなった場合には、」とする訂正は、「最初の薬剤容器の散薬がなくなった場合」に判断する主体を「制御手段」に限定する訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3のうち、上記(ア)、(エ)に係る限定は、本件特許明細書の段落【0048】~【0050】の記載に基づくものであり、上記(イ)に係る限定は、同段落【0036】及び図4の記載に基づくものであり、また、上記(ウ)に係る限定は、同段落【0104】及び【0112】の記載に基づくものであるから、それぞれ、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項4は、訂正前の請求項1の「同種の散薬グループ」が「同種の散薬が貯留されたグループ」であることを明確にする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項4は、本件特許明細書の段落【0054】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(5)訂正事項5について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項5は、訂正前の請求項1の「いずれの容器グループに属するか」の主体が「最初の薬剤容器」であることを明確にする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項5は、本件特許明細書の段落【0055】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項6は、訂正前の請求項1の「容器保管部に同一の容器グループに属する薬剤容器が有るか否かが判断され」るという構成に加え、さらに「現に容器載置装置に搭載されておらず、散薬を排出していない薬剤容器が、容器保管部に有るか否かとが判断され」る構成を有することを特定する訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項6は、本件特許明細書の段落【0091】の「続いてステップ12に移行し、容器配置領域12の容器保管部23に同一の容器グループに属する薬剤容器4で未使用のものが有るか否かが判断される。容器保管部3に同一の容器グループに属し、且つ未使用の薬剤容器4が有るならば、前記したステップ4,ステップ5、ステップ6と同様の動作が実行される。」との記載及び図10のStep.12の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(7)訂正事項7について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項7は、次の薬剤容器の計量を「容器載置装置に載置し」て行うことを限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項7は、本件特許明細書の段落【0065】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(8)訂正事項8について
ア 訂正の目的の適否
(ア)訂正事項8のうち、「薬剤払い出し装置は、さらに薬剤容器を載置する容器載置装置を有し、」を削除する訂正は、上記(3)ア(イ)のとおり、訂正事項3において、「薬剤払い出し装置は、さらに複数の分配皿の各々の周辺に薬剤容器を載置する複数の容器載置装置を有し、」と訂正することに伴うものであり、訂正事項3に係る記載と重複する記載を削除して整理するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)訂正事項8のうち、「薬剤払い出し装置は、制御手段により、最初の薬剤容器の散薬がなくなった場合には、」とする訂正は、「最初の薬剤容器の散薬がなくなった場合」に判断する主体を「制御手段」に限定する訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項8のうち、上記ア(ア)に係る訂正は、訂正事項3に係る記載と重複する記載を削除して整理するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことは明らかである。
また、訂正事項8のうち、上記ア(イ)に係る訂正は、本件特許明細書の段落【0048】~【0050】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
(9)訂正事項9について
ア 訂正の目的の適否
訂正事項9は、「容器保管部に」との記載の係り受けを明確にする訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
イ 新規事項の追加の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項9は、本件特許明細書の段落【0091】の記載に基づくものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
4 むすび
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」といい、まとめて「本件発明」という。)は、令和 6年 7月19日提出の訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも同種の散薬が貯留された複数の薬剤容器と、記憶部と、複数の薬剤容器を設置して保管する容器保管部と、薬剤投入溝を有する複数の分配皿とを有し、
記憶部には、容器保管部に保管されている薬剤容器が、同種の散薬が貯留されたグループである容器グループにおいて、いずれの容器グループに属するかの情報と、いずれの薬剤容器であるかを特定する情報とを有し、
複数の薬剤容器のいずれかの薬剤容器から最初の薬剤容器を選択し、選択した最初の薬剤容器の散薬を計量して排出させた散薬を薬剤投入溝に投入する薬剤払い出し装置であって、
薬剤払い出し装置は、薬剤払い出し装置を制御する制御手段をさらに有し、
薬剤払い出し装置は、さらに複数の分配皿の各々の周辺に薬剤容器を載置する複数の容器載置装置を有し、
同一の容器グループに属する薬剤容器は、一つの分配皿に対応する複数の容器載置装置に対して一個に限り載置するものであり、
制御手段により、最初の薬剤容器の散薬がなくなった場合には、記憶部に記憶された同種の散薬が貯留されたグループである容器グループにおいて、最初の薬剤容器がいずれの容器グループに属するかの情報を用いて、容器保管部に同一の容器グループに属する薬剤容器が有るか否かと、現に容器載置装置に搭載されておらず、散薬を排出していない薬剤容器が、容器保管部に有るか否かとが判断され、最初の薬剤容器と同一の容器グループに属する薬剤容器が容器保管部に有る場合、最初の薬剤容器と同一の容器グループの次の薬剤容器を容器載置装置に載置し散薬を計量して排出させた散薬を薬剤投入溝に投入し、
薬剤払い出し装置は、制御手段により、最初の薬剤容器の散薬がなくなった場合には、記憶部に記憶された情報を用いて、同一の容器グループに属する薬剤容器で、現に容器載置装置に搭載されておらず、散薬を排出していない薬剤容器が、容器保管部に有るか否かが判断され、当該薬剤容器が有るならば、当該薬剤容器が次の薬剤容器として選定される動作を含むことを特徴とする薬剤払い出し装置。
【請求項2】
さらに分配皿に投入された散薬を前記分配皿の薬剤投入溝から掻き出す掻出装置と、散薬を包装する薬剤包装装置とを有し、
薬剤払い出し装置は、薬剤容器の散薬を計量して排出させた散薬を薬剤投入溝に投入を完了した後、掻出装置によって分配皿に投入された散薬を掻き出し、薬剤包装装置によって散薬を包装する動作を含むことを特徴とする請求項1に記載の薬剤払い出し装置。
【請求項3】
最初の薬剤容器には薬剤容器を特定する情報記録部材が設けられ、薬剤払出し装置には情報読取手段が設けられており、情報記録部材に記録された情報に基づいて属する容器グループが特定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬剤払出し装置。
【請求項4】
さらに薬剤払出し装置を覆う筐体と、筐体内に薬剤容器を出し入れするための容器出し入れ口とを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の薬剤払出し装置。
【請求項5】
分配皿は回転可能であり、掻出装置を分配皿の薬剤投入溝に入れた状態で、分割数に応じた所定の角度だけ分配皿を回転して一定範囲の薬剤投入溝に分布する散薬を寄せ集めると共に集めた散薬を掻出装置で掻き出す分割・掻出行程を行い、この分割・掻出行程を繰り返して分配皿の薬剤投入溝の全周に分布した散薬を排出するものであり、且つ最後の分割・掻出行程においては、それ以前の分割・掻出行程の際よりも広い角度に渡って分配皿を回転させる最終分割・掻出行程を行うものであり、
分配皿に投入された散薬の性状に応じて、最終分割・掻出行程の際における分配皿の回転角度が相違することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の薬剤払出し装置。
【請求項6】
本体装置と、操作表示部を備えており、本体装置には複数の薬剤容器が収容されており、複数の薬剤容器には散薬が貯留されており、操作表示部を操作することにより複数の薬剤容器の中から所望の薬剤容器を選び出し、選び出した薬剤容器に収容された散薬を自動的に取り出して計量し、所定数に分割して分包する薬剤払い出し装置において、複数の薬剤容器には、少なくとも同種の散薬が貯留されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の薬剤払い出し装置。」
第4 取消理由通知の概要と当審の判断
1 令和 6年 5月15日付け取消理由通知について
当審が令和 6年 5月15日付けで通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
(明確性)本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
・請求項1~6
(1)請求項1の「制御手段により、最初の薬剤容器の散薬がなくなった場合には、記憶部に記憶された同種の散薬が貯留されたグループである容器グループにおいて、いずれの容器グループに属するかの情報を用いて」は、明確でない。
「いずれの容器グループに属するかの情報を用いて」とは、「最初の薬剤容器がいずれの容器グループに属するかの情報を用いて」のことであるのか、それとも他の意味であるのかが明確でない。
(2)請求項1の「同一の容器グループに属する薬剤容器が有る否か」は、日本語として明確でない。
「同一の容器グループに属する薬剤容器が有るか否か」のことかが、明確でない。
(3)請求項1の第5段落の「現に容器載置装置に搭載されておらず」と、第6-7段落の「薬剤払い出し装置は、さらに・・・容器載置装置を有し、同一の容器グループに属する薬剤容器は、・・・複数の容器載置装置に対して・・・ものであり、」の関係が不明確である。(i)第5段落の「容器載置装置」は、第6-7段落の「容器載置装置」であり、前提事項を記載した第6-7段落は、例えば第4段落の次に記載されるべきであったところ、第5段落より後に記載されたため不明確となっているのか、(ii)第6-7段落の「容器載置装置」は、第5段落の「容器載置装置」とは別に「さらに」設けたものであるのか、が不明確である。
(4)請求項1の「最初の薬剤容器と同一の容器グループの次の薬剤容器の散薬を計量して排出させた散薬を薬剤投入溝に投入し」は、「容器載置装置」との関係が明確でない。
「最初の薬剤容器と同一の容器グループの次の薬剤容器を容器載置装置に載置し散薬を計量して排出させた散薬を薬剤投入溝に投入し」のことかが明確でない。
(5)請求項1の「同一の容器グループに属する薬剤容器は、一つの分配皿に対応する複数の容器載置装置に対して一個に限り載置できるものであり」は、(i)段落【0104】の「一つの分配皿35に対応する容器載置装置36が複数台ある場合であっても」「同一の分配皿35に対応する容器載置装置36に同一の容器グループに属する薬剤容器4を複数設置しない」ことを特定しているのか、(ii)一個に限り載置できるという構造を特定しているのか、が明確でない。
(i)であるなら、「同一の容器グループに属する薬剤容器は、一つの分配皿に対応する複数の容器載置装置に対して一個に限り載置するものであ」る点が明確でない。また(ii)であるなら、具体的にどのような構造であるのかが明確でない。
(6)請求項1の「容器保管部に同一の容器グループに属する薬剤容器で、現に容器載置装置に搭載されておらず、散薬を排出していない薬剤容器が有るか否か」は、「容器保管部に」の係り受けの関係が日本語として明確でない。
具体的には、「同一の容器グループに属する薬剤容器で、現に容器載置装置に搭載されておらず、散薬を排出していない薬剤容器が、容器保管部に有るか否か」のことかが明確でない。
請求項2~6は、請求項1を引用するので上記と同様である。
よって、請求項1~6に係る発明は、明確でない。
2 令和 6年 5月15日付け取消理由通知についての当審の判断
(1)上記1(1)について
本件訂正の訂正事項5により、「いずれの容器グループに属するかの情報を用いて」との記載が、「最初の薬剤容器がいずれの容器グループに属するかの情報を用いて」を意味することが明確となった。
(2)上記1(2)について
本件訂正により、明確となった。
(3)上記1(3)について
本件訂正の訂正事項3及び訂正事項8により、明確となった。
(4)上記1(4)について
本件訂正の訂正事項7により、明確となった。
(5)上記1(5)について
本件訂正の訂正事項3により、明確となった。
(6)上記1(6)について
本件訂正の訂正事項9により、明確となった。
(7)申立人の主張について
申立人は、令和 6年 9月20日提出の意見書において、本件訂正後の請求項1の記載について、訂正事項2、3、6、7及び9に係る点について不明確である旨と、訂正事項3に係る点について実施可能要件違反及びサポート要件違反である旨を主張している。
しかしながら、不明確であるとされた点は、いずれも本件明細書及び図面の記載を踏まえれば、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確とはいえない。
また、実施可能要件違反及びサポート要件違反とされた点については、本件明細書の段落【0104】の記載事項を踏まえれば、当業者が実施に際して過度の試行錯誤を要することなく実施でき、発明の詳細な説明の記載から把握される課題が解決できることを当業者が認識できる範囲内のものであることは明らかである。
(8)小括
したがって、本件訂正により、当該取消理由は解消された。
3 令和 5年10月 3日付け取消理由通知書について
当審が令和 5年10月 3日付けで通知した取消理由は、概略、以下の理由を含むものである。
(進歩性)本件発明は、本件特許の優先日前に日本国内または外国において頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
本件発明1~4は、引用文献1(甲第1号証、以下「甲1」という。)に記載された発明(以下、「甲1発明」という。)及び引用文献2(甲第2号証、以下「甲2」という。)に記載された発明(以下「甲2発明」という。)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明5は、甲1発明、甲2発明、及び周知技術1(引用文献3(甲第5号証、以下「甲5」という。)及び引用文献4)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
本件発明6は、甲1発明、甲2発明、周知技術1、及び周知技術2(引用文献5(甲第6号証、以下「甲6」という。)、引用文献6(甲第7号証、以下「甲7」という。)に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
引用文献等一覧
1.国際公開第2015/076267号(甲1)
2.特開昭63-203501号公報(甲2)
3.特開平9-254904号公報(甲5)
4.特開2000-62702号公報
5.特開2013-31706号公報(甲6)
6.特開2003-237714号公報(甲7)
4 令和 5年10月 3日付け取消理由通知についての当審の判断
(1)引用文献の記載事項及び引用発明
ア 甲1の記載事項、甲1発明
甲1には、次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
(ア)「[0010] 前記課題を解決するために、本発明は、薬剤容器から所定量の散薬を取り出し、これを所定の数に分割し、さらに個別に包装して排出する薬剤払出し装置であって、薬剤容器は散薬を排出する薬剤排出部を有し、前記薬剤払出し装置はその内部に、薬剤棚部領域と、薬剤分割領域と、薬剤包装領域があり、薬剤棚部領域には複数の薬剤容器を設置して保管する容器保管装置が設けられ、薬剤分割領域には、薬剤投入溝が設けられ動力によって回転される分配皿と、分配皿に投入された散薬を薬剤投入溝から掻き出す掻出装置と、薬剤容器が載置されると共に薬剤容器に作用して薬剤容器から薬剤を排出させる容器載置装置とが設けられ、薬剤包装領域には、薬剤包装装置が設けられ、前記薬剤棚部領域と、薬剤分割領域と、薬剤包装領域は、上下方向に配置されていて、上から薬剤棚部領域、薬剤分割領域、薬剤包装領域の順にあり、容器移動手段が設けられ、容器移動手段によって薬剤棚部領域の容器保管装置から所定の薬剤容器を取り出して薬剤分割領域の容器載置装置に載置し、薬剤容器から散薬を排出させて分配皿の薬剤投入溝に投入し、掻出装置によって分配皿に投入された散薬を薬剤投入溝から掻き出して薬剤包装領域側に落下させ、薬剤包装装置によって薬剤を包装し、排出を終えた薬剤容器を容器移動手段によって薬剤棚部領域の容器保管装置に戻すことが可能であるものである。」
(イ)「[0050] 以下さらに本発明の実施形態の薬剤払出し装置1について説明するが、理解を容易にするため、先に薬剤払出し装置1の概要と大まかな動作について説明し、その後に各部材や装置を詳細に説明する。
本実施形態の薬剤払出し装置1は、薬剤容器2に散薬を入れ、この散薬を自動的に取り出して計量し、所定の数に分割して包装する装置である。薬剤容器2には、二面に鉄板が設けられている。一面に設けられた鉄板は、ロボットハンドに磁着させて薬剤容器2をロボットハンドに固定するための運搬用鉄板部157である。他の面に設けられた鉄板は、薬剤容器を分配皿の近傍に設けられた容器保持手段に薬剤容器2を固定するために使用される固定用鉄板部6である。
また薬剤容器2には、RFID等の情報記録部材15が取り付けられている。
本実施形態の薬剤払出し装置1は、筐体7によって囲まれており、その内部は、薬剤棚部領域100と、薬剤分割領域200と、薬剤包装領域300に分かれている。
筐体7内には除湿装置と温度調節器が設けられており、内部の温度と湿度が一定範囲に維持される。
筐体7には薬剤容器2を薬剤払出し装置1内に出し入れするための扉部9が設けられている。扉部9には、薬剤容器2を仮置きする薬剤容器仮置部11がある。薬剤容器仮置部11は、機械的な係合によって薬剤容器2を保持するものであり、薬剤容器2を押し込むことによって薬剤容器2が機械的係合によって保持され、薬剤容器2を引っ張ると係合が外れて薬剤容器2を離脱させることができる。
また薬剤容器仮置部11には、情報読み取り手段16(図47)が設けられている。また薬剤容器仮置部11には、薬剤容器2の重量を測定する重量測定手段19が設けられている。
[0051] 薬剤棚部領域100には、薬剤容器2を設置する容器保管装置101が設けられている。本実施形態では、容器保管装置101は、略水平方向に回転する縦型のドラム部材102を有し、ドラム部材102の外周面に複数の容器設置部103が設けられたものである。容器設置部103は、機械的な係合によって薬剤容器2を保持するものであり、薬剤容器2を押し込むことによって薬剤容器2が機械的係合によって保持され、薬剤容器2を引っ張ると係合が外れて薬剤容器2を離脱させることができる。
本実施形態では、容器設置部103は3段に渡って設けられている。また一段に12個の容器設置部103が設けられており、合計36個の薬剤容器2を取り付けることができる。
ドラム部材102の近傍には、情報読み取り手段が設けられている。
容器設置部103には、突出する突出部材(装着検知部材322)があり、薬剤容器2が正規の姿勢で取り付けられると、突出部材(装着検知部材322)が側面支持部材321側に没入する。
これに対してドラム部材102の中には、図15に示す様に、突出部材(装着検知部材322)が没入しているか否か検知する光センサ(突出部材検知センサ333)が設けられている。
また図11に示す様に、ドラム部材102の外側にも光センサ(飛び出し検知センサ330)があり、薬剤容器2が正規の位置から飛び出していないかを確認することができる。」
(ウ)「[0054] 薬剤分割領域200は、2個の分配皿201が埋設状態に設置された領域であり、その周辺に容器載置装置3と、清掃装置500が配置されたものである。また薬剤分割領域200には、掻出装置930が設けられており、薬剤分割領域200の各分配皿201からは、掻出装置930の掻出用アーム931が突出している。
即ち薬剤分割領域200には、平板状のテーブル部材205がある。テーブル部材205は平面であり、上に物を置くことができる。すなわち、テーブル部材205は、物品を載置可能なテーブル面205aを有する。
図17に示すようにテーブル部材205には分配皿収容開口206が2箇所に設けられている。すなわち、テーブル面205aの2箇所に分配皿収容開口206が開口している。
そして分配皿収容開口206の中に分配皿201が設けられている。
分配皿201は、後記する皿回転機構211によって一定速度で回転させることができる。また所定の角度だけ回転させることもできる。
[0055] 容器載置装置3は、振動台20と、薬剤容器2の重量を直接的または間接的に測定する重量測定手段25とを有している。
振動台20には、振動台20に薬剤容器2を一時的に固定する容器保持手段が設けられている。容器保持手段は、具体的には磁石である。
本実施形態では、容器載置装置3に薬剤容器2が載置し、振動台20を振動させて薬剤容器2から薬剤を排出させることができる。またその時の薬剤容器2の重量変化が、重量測定手段25によって検知される。
[0056] 薬剤包装領域300には、薬剤包装装置410が内蔵されている。薬剤包装装置410は、公知のそれと同様に、薬剤を一服用分ずつ包装する機械であり、公知の様に、分包紙供給装置と、分包装置によって構成されている。また包装部に薬剤を投入する散薬投入ホッパー413が設けられている。」
(エ)「[0058] 前記した様に、本実施形態の薬剤払出し装置1では、特殊な薬剤容器2を使用する。薬剤容器2の数は多数にのぼり、原則として各薬剤容器2に異なる種類の薬剤が充填される。薬剤を充填する作業は、薬剤師が手作業で行う。
また各薬剤容器2には、RFID等の情報記録部材15が取り付けられており、情報記録部材15に薬剤の種類が記憶される。また必要に応じて薬剤容器2に薬剤を充填した日や、充填量を記憶させてもよい。
[0059] そして薬剤払出し装置1の筐体7に設けられた扉部9を開く。扉部9を開くことによって図示しない安全装置が起動し、容器移動手段700等が動作しえない状態となる。
そして扉部9に設けられた薬剤容器仮置部11(図47)に薬剤容器2を設置する。その後、扉部9を閉じて薬剤容器2を筐体7内に入れる。
薬剤容器仮置部11には、情報読み取り手段16と、重量測定手段19が設けられており、薬剤容器2に充填されている薬剤の種類が、情報読み取り手段16によって読み取られる。
また重量測定手段19によって薬剤容器2の重量が測定され、間接的に薬剤の充填量が検知される。
情報読み取り手段16が読みだした薬剤の種類と、重量測定手段19によって検知された薬剤の充填量は、制御装置内のメモリーに記憶される。また必要に応じて薬剤の充填量が情報記録部材15に書き込まれる。」
(オ)「[0065] また本実施形態の薬剤払出し装置1は、処方箋に応じて自動的に薬剤容器2を選び出す。具体的には、容器保管装置101のドラム部材102を回転し、所望の薬剤容器2を容器移動手段700に近づける。そして容器移動手段700のハンド部707で、薬剤容器2を保持する。即ち容器移動手段700のハンド部707がドラム部材102の容器設置部103に近接し、ハンド部707を薬剤容器2に押し当てる。そしてハンド部707に設けられた磁石によって薬剤容器2に設けられた運搬用鉄板部157を吸着させる。
そしてアーム部材705,706を後退させて薬剤容器2を抜き取り、アーム部材705,706を動作させて当該薬剤容器2を容器載置装置3の振動台20に設置する。
なお複数の薬剤を配合して、一つの包装中に同封する場合には、複数の薬剤容器2が容器載置装置3に設置される。
また本実施形態では、容器載置装置3の近傍に、情報読み取り手段27(図17)が設けられているから、情報読み取り手段27によって薬剤容器2に内蔵されている薬剤の種類が確認される。すなわち、情報読み取り手段27によって、情報記録部材15に記録された薬剤容器2内の薬剤の種類等が読み取られる。
そして振動台20(図3)を振動させる。その結果、薬剤容器2の散薬が、ゆっくりと移動し、薬剤容器2から排出されて分配皿201に落下する。
[0066] 即ち振動台20が振動を開始すると、薬剤容器2が振動する。ここで、本実施形態では、薬剤容器2は、自己保持ソレノイド30a,30b(図7)の永久磁石によって強固に振動台20に接合されており、且つ振動台20との密着度合いも高いから、薬剤容器2は、振動台20と同一周波数で振動する。その結果、図6に示す様に、薬剤容器2の散薬貯留部17に貯留された散薬が、薬剤排出部8側に向かってゆっくりと移動する。自己保持ソレノイド30a,30bは、容器保持手段として機能する。
また振動開始と前後して散薬分配装置202の分配皿201を回転させる。振動開始と前後して、薬剤容器2の重量が測定される。薬剤容器2を振動させている間、薬剤容器2の重量が監視され、散薬の総落下量が所望の重量となったところで、振動台20の振動を停止する。」
(カ)「[0069] 前記した様に散薬の総落下量が所望の重量となったところで、振動台20の振動を停止し、その後に分配皿201の回転を停止する。そしてモータ950(図21)を正回転して、掻出用アーム931を揺動させ、先端側を降下させて掻出機構606を下げ、掻出機構606を分配皿201の薬剤投入溝208内に入れる。
さらに分配皿201を分配個数に応じた角度だけ回転させて、掻寄板609にかき寄せる。その後、モータを逆回転して、掻寄板609を回転し、掻出板607で薬剤をすくい上げて分配皿201から排出し、薬剤投入開口241に投入する。
薬剤投入開口241に投入された薬剤は、散薬投入ホッパー413を落下して薬剤包装装置410に運ばれ、薬剤包装装置410で包装される。
この動作を順次繰り返し、分配皿201内の薬剤を全て排出し、それぞれ薬剤包装装置410で包装される。
またこれと平行して、容器移動手段700が起動され、薬剤容器2がドラム部材102の容器設置部103に戻される。」
(キ)「[0076] 前記した様に、本実施形態では、振動台20を振動させて薬剤容器2の散薬を排出して分配皿201に落下させるが、振動台20が振動を続けているにも係わらず、散薬が落下しなくなってしまった場合や、振動台20が振動を続けているにも係わらず、単位時間当たりの散薬落下量が過度に少なくなってしまった様な場合には、振動台20の振動パターンが自動的に変更される。
具体的に説明すると、振動台20を振動させつつ薬剤容器2の重量を監視し続けている際、散薬の落下量Hが所望の重量に至らないにも係わらず、薬剤容器2の重量の単位時間あたりの変化が一定未満となった場合には振動台20の振幅を大きくする。あるいは振幅の周波数を大きくしたり小さくする。また可能であるならば、横振幅や長手方向の振幅を加える。
[0077] 振動台20を振動させているにも係わらず、薬剤容器2の重量の単位時間あたりの変化が一定未満となる原因は、次の2点である。
(1)散薬の固着
散薬が薬剤容器2内で固着するか、塊になってしまい。所定の部位を通過することができない。
(2)散薬不足
薬剤容器2内に散薬が無い。
そこで本実施形態では、振動台20を振動させているにも係わらず、薬剤容器2の重量の単位時間あたりの変化が一定未満である場合には、最初に散薬の固着を疑い、振動台20の振幅を大きくする。仮に原因が散薬の固着であるならば、振動台20の振幅を大きくすることによって、原因が解消する可能性がある。
[0078] そして振動台20の振幅を大きくしても、薬剤容器2の重量の単位時間あたりの変化が一定未満である場合には、振動台20の振動を停止し、使用者に対して所定の報知がなされる。例えば図示しない表示装置に、異常表示がなされる。あるいは音声や警報音、光によって薬剤払出し装置1に異常が発生したことを使用者に知らせる。
そして所定の欠品処理工程を実行する。
欠品処理工程においては、既に当該薬剤容器2が排出した薬剤の重量が記憶される。異常が起きたことを知った使用者は、手動又は容器移動手段700を使用して薬剤容器2を取り出し、点検することとなる。
[0079] 本実施形態では、欠品処理工程においては、容器移動手段700を使用して薬剤容器2が取り出される。即ち振幅を大きくしても、薬剤容器2の重量の単位時間あたりの変化が一定未満である場合には、振動台20の振動を停止する。そして容器移動手段700が自動的に動作し、薬剤容器2が扉部9に設けられた薬剤容器仮置部11に移動させる。
使用者は、扉部9を開いて薬剤容器2を取り出し、薬剤容器2内を点検する。薬剤容器2内に散薬が無い場合は、薬剤容器2に薬剤を補充する。また薬剤容器2内で散薬が塊になってしまっている場合には、塊を砕く。
[0080] その後、開かれた扉部9の薬剤容器仮置部11に薬剤容器2を載置し、図示しない入力装置や載置確認装置等で載置したことを装置に通知する動作を行うことで、薬剤容器2を薬剤払出し装置1内に導入する。そして手動又は容器移動手段700を使用して再度、薬剤容器2を容器載置装置3に載置し、自動又は手動によって振動台20及び分配皿201を再起動する。本実施形態では、薬剤容器2を扉部9の設けられた薬剤容器仮置部11に設置し、所定の操作をすることにより、容器移動手段700が動作し、薬剤容器2を容器載置装置3に運ぶ。
前記した様に、作業中断までに薬剤容器2が排出した薬剤の重量が記憶されるので、残りの排出量だけ、薬剤容器2から散薬が排出される。」
(ク)「[0082] 例えば、20人分の処方情報が入力され、図示しないメモリーにストックされる。ここで、ストックされた処方情報をまとめると、容器保管装置101に保管された薬剤だけでは量が不足する場合がある。
例えば、容器保管装置101に装着された特定の薬剤容器2に解熱剤Aが200g保管されていると仮定する。
しかしながら例えばインフルエンザ等が流行していて解熱剤を含む処方が多数あり、各患者の処方量を合計すると、薬剤容器2に保管されている解熱剤Aの量を超える場合がある。この様な場合には、図示しない報知手段によって薬剤が不足する見込みであることを報知し、使用者に薬剤の補充を促す。薬剤が補充されることにより、薬剤容器2から散薬を排出する作業の中断が未然に防がれる。」
(ケ)「[0101] また振動開始と前後して、薬剤容器2の重量が測定される。薬剤容器2の重量は、重量測定手段25の検知重量から、一定値を引いたものである。より具体的には、薬剤容器2の重量は、重量測定手段25の検知重量から、容器載置装置3の重量測定手段25より上の部材の重量を引いたものである。
振動台20に設置直後の薬剤容器2の重量は、原重量Gとして記憶される。また薬剤容器2の重量は、常時監視される。即ち薬剤容器2の現在の重量は、現重量gとして監視される。
[0102] 振動台20が振動を開始すると、薬剤容器2が振動する。ここで、本実施形態では、薬剤容器2は、自己保持ソレノイド30a,30bの永久磁石によって強固に振動台20に接合されており、且つ振動台20との密着度合いも高いから、薬剤容器2は、振動台20と同一周波数で振動する。その結果、薬剤容器2の散薬貯留部17に貯留された散薬が、薬剤排出部8側に向かってゆっくりと移動する。
[0103] そして散薬は、櫛状整流部材130の部位によって形成される狭窄開口部13に至る。狭窄開口部13を通過した散薬は、導出路部18に排出される。そして散薬は川の流れの如くに導出路部18を流れ、遂には薬剤容器2の薬剤排出部8に至り、滝のごとくに落下し、下の分配皿201の薬剤投入溝208に入る。
[0104] 散薬が落下中であることは、薬剤容器2の重量が低下することによって確認される。即ち本実施形態では、散薬が薬剤容器2の薬剤排出部8から落下中においても、薬剤容器2の現在の重量が、現重量gとして監視され続けている。そして振動台20に設置直後の薬剤容器2の原重量Gと、現重量gとを比較し、散薬の落下量H(Gマイナスg)を常時演算している。 そして散薬の総落下量Hが所望の重量となったところで、振動台20の振動を停止する。」
(コ)「[0115] またドラム部材102の近傍にはRFIDリーダ等の情報読み取り装置335が設けられている。
本実施形態では、容器設置部103が3段に渡って設けられているので、情報読み取り装置335は、各段に対応して一個ずつ、合計3個設けられている。
本実施形態では、ギャードモータ302を駆動してドラム部材102を回転させると、ドラム部材102の周囲に取り付けられた薬剤容器2がドラム部材102と共に回動する。そのため、ドラム部材102の周囲に取り付けられた薬剤容器2が一つずつ順番に情報読み取り装置335に近づく。本実施形態では、ドラム部材102の回転中の適当なタイミングで、情報読み取り装置335を動作させ、個々の薬剤容器2に取り付けられたRFIDからそれぞれの薬剤容器2に収容された薬剤の種類を読み取り、図示しない制御装置に記憶する。即ち、薬剤容器2が装着されている位置と、内蔵されている薬剤とを関連付けて、制御装置に記憶する。
また既に制御装置に記憶されている情報を書き換えたり、内容を確認する用途に供する。」
(サ)「[0117](5)分配皿
本実施形態の薬剤払出し装置1では、分配皿201を2セット有している。
二つの分配皿201は、同一の大きさ及び構造をしている。即ち分配皿201は、円盤状であり、中央に機材収納開口210が設けられている。前記した様に分配皿201は、上面側に薬剤投入溝208が設けられている。薬剤投入溝208は、深さの浅い溝であり、断面形状が円弧状である。薬剤投入溝208は、分配皿201の外縁部近傍にあって、機材収納開口210の周囲を環状に取り巻いている。」
(シ)「[0124](7)掻出装置
次に、掻出装置930について説明する。
図21は、掻出装置930の斜視図であり、図22は、掻出装置930の掻出用アーム931の先端に装着された掻出機構606の斜視図である。また、図23は、掻出装置930の動力の伝動系統を示すスケルトン図である。
図21に示す様に、掻出装置930は、掻出用アーム931と、掻出用アーム931の先端に設けられた掻出機構606を有する。
また、図23に示す様に、掻出装置930は、破線Dで囲んだ掻出側動力伝動系統932と、破線Eで囲んだアーム側動力伝動系統933とを有する。 掻出装置930の掻出機構606は、掻出側動力伝動系統932で駆動される。
[0125] 掻出機構606は、図22に示す様に、掻寄板609と、掻出板607と、仕切板603とを有する部材である。掻寄板609は、薄板で作られた円盤である。
仕切板603は、掻寄板609と平行に配された薄板であり、扇型に近い形状をしている。即ち仕切板603は、中心角が30度程度の円弧と、直線の2辺によって形付けられた略三角形の板である。
仕切板603は、掻寄板609と平行に配置されている。そして仕切板603の中心角を成す直線状の一辺と掻寄板609が、掻出板607で接続されている。掻出板607は、掻寄板609に対しても仕切板603に対しても直交している。
掻出機構606は、掻出用アーム931の先端にあり、掻寄板609は後記する掻出側動力伝動系統932(図23)によって回転される。」
(ス)「[0195](13)骨格および筐体
本実施形態の薬剤払出し装置1は、鋼材でフレームが作られ、そのフレームに各部材や装置が取り付けられた構造となっている。
またフレームは全体的に筐体7で覆われ、内外が遮蔽されている。
筐体7内には除湿装置と温度調節器が設けられており、内部の温度と湿度が一定範囲に維持される。また筐体7の天面にはファンが2基設けられていて筐体7内を換気することができる。
筐体7は、概ね、薬剤棚部領域100を覆う棚領域筐体100aと、薬剤分割領域200を覆う分割領域筐体200aと、薬剤包装領域300を覆う包装領域筐体300aとに分かれている。
棚領域筐体100aと、分割領域筐体200aは、透明な樹脂で作られており、内部を観察することができる。これに対して包装領域筐体300aは、鋼板で作られており、内部を見ることはできない。」
(セ)「[0197] 棚領域筐体100aには、扉部9が設けられている。扉部9は、ヒンジによって開閉するものであり、ウイング式の扉である。
本実施形態では、扉部9は、左開きであって、引き方向に開く。即ち扉部9を開くと、扉部9は棚領域筐体100a内の空間から外側に突出する。扉部9は、薬剤払出し装置1内に薬剤容器2を出し入れするための出入り口である。本実施形態の薬剤払出し装置1では、原則として扉部9のみから薬剤容器2が出し入れされる。即ち本実施形態の薬剤払出し装置1では、故障等の異常に対する対処を実施する場合を除いて、扉部9のみから薬剤容器2が出し入れされる。
[0198] 本実施形態では、扉部9の内側に、薬剤容器仮置部11が設けられている。薬剤容器仮置部11は、筐体7内に薬剤容器2を導入する際の導入部として機能する。また筐体7内から薬剤容器2を取り出す際の取出部としても機能する。」
(ソ)「[0256](26)情報記録部材
前記した様に薬剤容器2には、情報記録部材15として、RFIDのチップが取り付けられている。
情報記録部材15には、薬剤の名称等の他、薬剤容器2内の薬剤の残量が記録される。
本実施形態では、薬剤払出し装置1を起動したとき、容器保管装置101は、ドラム部材102に搭載された全ての薬剤容器2に収容された薬剤の種類と残量が、情報記録部材15から読み出され、制御装置に記録される。即ちドラム部材102を回転し、情報読み取り装置335で情報記録部材15の情報が読み取られる。またドラム部材102のどの位置にどの薬剤容器2が収容されているかが確認され、記録される。」
(タ)図17
「
[図:0001427901000001.jpg]
」
上記(ア)~(タ)を総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
<甲1発明>
「原則として異なる種類の散薬が充填された複数の薬剤容器2と、制御装置と、複数の薬剤容器2を設置して保管する容器保管装置101と、薬剤投入溝208を有する二つの分配皿201とを有し、
制御装置内のメモリーには、容器保管装置101に保管されている薬剤容器2につき、散薬の種類と、薬剤容器2が装着される位置とが記憶されており、
複数の薬剤容器2から薬剤容器2を選び出し、薬剤容器2の重量を測定して排出させた散薬を薬剤投入溝208に投入する薬剤払出し装置1であって、
薬剤払出し装置1は、さらに薬剤容器2を載置する容器載置装置3を有し、
薬剤払出し装置1は、選び出した薬剤容器2の散薬がなくなった場合には、欠品処理工程として、薬剤容器2を取り出して薬剤容器仮置部11に移動させ、使用者が散薬を補充した後に、薬剤容器仮置部11から容器載置装置3に再度載置して、補充後の薬剤容器2の重量を測定して排出させた散薬を薬剤投入溝208に投入する、
薬剤払出し装置1。」
イ 甲2の記載事項、甲2発明
甲2には、次の事項が記載されている(下線は当審が付した。)。
(ア)「[従来の技術]
一般にこの種の錠剤分包機は、各錠剤フィーダにそれぞれ異なった種類の錠剤を収容しておき、作動時には指定された錠剤を収容した錠剤フィーダを作動させて、当該錠剤フィーダから排出された錠剤を指定錠数ずつ分包させるようになっている。
そのため、たとえばある錠剤フィーダの作動中に当該錠剤フィーダに収容されている錠剤が排出し尽されて無くなった場合や、あるいは錠剤フィーダが故障して作動させることができなくなったような場合に、そのことを作業者に知らせて錠剤の補給や故障の点検、修理を促すため、光や音による適宜のアラームを発生させるようになっている。
[発明が解決しようとする問題点]
しかしながら、このような従来のものは、アラームの発生と同時に分包動作が中断してしまい、作業者が錠剤の補給や故障の点検、修理等の必要な措置を講じたのちでなければ分包動作を再開させることができず、そのためたとえば病院の薬局において大勢の外来患者に対する調剤、投薬作業に忙殺されている薬剤師がアラームの発生に即応して錠剤の補給等を行うことはきわめて能率が悪く、しかしそれを行わなければいつまで経っても錠剤分包機の分包動作を再開させることができず、ひいてはその分包動作が終了することによって得られる錠剤をいつまでも患者に投薬することができない等の問題点があった。
この発明は上記従来のもののもつ問題点を解決して、所定の動作手順による分包動作が中断してしまうような場合に、その中断を必要に応じて未然に回避することのできる錠剤分包機を提供することを目的とするものである。」(第1ページ右欄第10行~第2ページ右上欄第3行)
(イ)「[実施例]
以下、図面に示すこの発明の実施例について説明する。
第1、2図はこの発明の一実施例を示し、1、1、・・・はそれぞれ適宜の設置位置に配設され、かつその設置位置に応じて個別の番号が付けられてその番号によってそれぞれ識別されるようになった錠剤フィーダであって、各錠剤フィーダ1には、それに収容した錠剤を排出させる際作動する図示しないモータと、このモータの作動により1錠ずつ逐次排出される錠剤を検出する図示しない適宜のセンサとが設けられている。2は各錠剤フィーダ1から排出された錠剤を分包する包装装置、3は錠剤フィーダ1、1、…および包装装置2を含む錠剤分包機全体の分包動作を制御する適宜の制御装置、4は分包データを受付ける入力装置、5は入力装置4が受付けた分包データに基づいて制御装置3が実行する分包動作の動作手順を記憶しておく動作メモリであって、動作メモリ5に記憶される分包動作の動作手順は、操作パネル6による適宜の操作によって任意に設定、変更等が可能に構成されている。
すなわち動作メモリ5には、たとえば15番の錠剤フィーダ1に収容されている錠剤を3錠排出させて包装装置2で1包中に分包する旨の分包データを受付けた場合、指定された15番の錠剤フィーダ1が動作可能であるときそのモータを作動させて錠剤を1錠排出させ、センサがこの錠剤を検出したらモータを再び作動させて錠剤をもう1錠排出させ、以下同様にして指定された3錠の排出をセンサが検出したら、包装装置2を作動させてその3錠の錠剤を1包中に分包させるという分包動作を制御装置3が実行するための必要な動作手順が記憶されている。そして操作パネル6は、このような動作手順に代えて、第2図に示すように、たとえば分包データによって指定された15番の錠剤フィーダ1が何らかの原因で動作不可能であった場合、15番の錠剤フィーダ1に代わるべき代替の錠剤フィーダ1が動作メモリ5に設定されているか否かを検出して、たとえば91番の錠剤フィーダ1が代替として設定されている場合には、その設定された91番の錠剤フィーダ1を使って指定された錠数またはそれに相当する錠数の錠剤を1包中に分包させるという分包動作を制御装置3が実行するための必要な動作手順を動作メモリ5に対して設定することができるように構成されている。
つぎに、上記のものの作用について説明する。
まず、錠剤フィーダ1、1、…には原則としてそれぞれ異なった種類の錠剤を収容するが、使用量が多くて補給頻度の高い錠剤は複数の錠剤フィーダ1、1、…に(たとえば15番の錠剤フィーダ1だけでなく91番の錠剤フィーダ1にも)収容しておき、このような場合には操作パネル6を操作して、15番の錠剤フィーダ1に収容されている錠剤を分包する旨の分包データを受付けた際、指定された15番の錠剤フィーダ1による分包動作が不可能になった場合には15番の錠剤フィーダ1に代えて91番の錠剤フィーダ1によって分包動作を実行するように動作手順を設定しておく。このようにしておけば、分包データに基づいて指定された15番の錠剤フィーダ1による分包動作を実行する際、たとえばそれに収容されている錠剤が無くなった場合に、制御装置3は、そのことを作業者に知らせるためのアラームを発生させることなく、15番の錠剤フィーダ1の代わりに91番の錠剤フィーダ1を使って指定された錠数またはそれに相当する錠数の錠剤を1包中に分包させることとなる。そして、代替となる91番の錠剤フィーダ1も動作不可能であった場合にはじめて、15番および91番の錠剤フィーダ1がいずれも動作不可能であることを作業者に知らせるためのアラームを発生させることとなる。
なお、上記実施例では15番の錠剤フィーダ1とその代替となる91番の錠剤フィーダ1とに全く同一の錠剤を収容したが、これに限らず、たとえば15番の錠剤フィーダ1にA薬品の50mg錠を収容する一方、91番の錠剤フィーダ1に同じA薬品の25mg錠を収容しておき、15番の錠剤フィーダ1の収容錠剤を分包すべき旨の分包データを受付けた際、15番の錠剤フィーダ1の収容錠剤が無かった場合には、15番の錠剤フィーダ1に代えて91番の錠剤フィーダ1を使用し、しがもそれに収容された錠剤を分包データで指定された錠数の2倍の錠数だけ排出させて分包するように動作手順を設定しておくこともできる。また錠剤フィーダ1が作動不可能となる原因としては、収容されている錠剤が無くなった場合の他、たとえば1度に複数錠が排出されたり、または指定された錠剤フィーダ1以外から錠剤が排出されたりした場合にも適用することができる。」(第2ページ右上欄第14行~第3ページ左下欄第4行)
(ウ)「[発明の効果]
この発明は上記のように構成したので、所定の動作手順による分包動作が中断してしまうような場合に、その中断を必要に応じて未然に回避することができ、そのためたとえば使用量が多くて補給頻度の高い錠剤の補給回数を削減して、病院の薬局において大勢の外来患者に対する調剤、投薬作業に忙殺されている薬剤師を頻繁な錠剤補給作業から開放することができ、しかも患者を長時間待たせることなく錠剤分包機を利用して迅速に調剤、投薬することができる等のすぐれた効果を有するものである。」(第3ページ左下欄第14行~同ページ右下欄第5行)
(エ)第2図
「
[図:0001427901000002.jpg]
」
上記(ア)~(エ)を総合すると、甲2には、以下の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されている。
「錠剤フィーダは、原則としてそれぞれ異なった種類の錠剤を収容するが、使用量が多くて補給頻度の高い錠剤に関して、同種の薬剤が収容された複数の錠剤フィーダを有し、
動作メモリ5を有し、
錠剤フィーダは、設置位置に応じて個別の番号が付けられてその番号によってそれぞれ識別されるようになっており、
たとえば15番の錠剤フィーダに収容されている錠剤を分包する旨のデータを受付けた場合、指定された15番の錠剤フィーダから薬剤を排出し、
15番の錠剤フィーダに収容されている錠剤が無くなった場合に当該錠剤フィーダに代わるべき代替の錠剤フィーダとして、同種の錠剤が収容された錠剤フィーダ、たとえば91番の錠剤フィーダが、動作メモリ5に設定され、
指定された錠剤フィーダである15番の錠剤フィーダに収容されている錠剤が無くなった場合、同種の錠剤が収容された代替の錠剤フィーダが設定されているか否かを検出し、たとえば91番の錠剤フィーダが代替として設定されている場合には、91番の錠剤フィーダを使って分包する、
分包機。」
また、甲2発明は、「使用量が多くて補給頻度の高い錠剤の補給回数を削減する」という作用効果を奏する。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「薬剤容器2」は、本件発明1の「薬剤容器」に相当する。
甲1発明の「制御装置」は、本件発明1の「薬剤払出し装置を制御する制御手段」に相当する。また、甲1発明の「制御装置内のメモリー」は、その機能からみて、本件発明1の「記憶部」に相当する。
甲1発明の「容器保管装置101」は、本件発明1の「容器保管部」に相当する。
甲1発明の「二つの分配皿201」は、本件発明1の「複数の分配皿」に相当する。
甲1発明の「薬剤投入溝208」は、本件発明1の「薬剤投入溝」に相当する。
甲1発明の「原則として異なる種類の散薬が充填された複数の薬剤容器2」と本件発明1の「少なくとも同種の散薬が貯留された複数の薬剤容器」とは、複数の薬剤容器2の限りで一致する。
甲1発明の「制御装置には、容器保管装置101に保管されている薬剤容器2につき、散薬の種類と、薬剤容器2が装着される位置とが記憶されて」いることと、本件発明1の「記憶部には、容器保管部に保管されている薬剤容器が、同種の散薬グループである容器グループにおいて、いずれの容器グループに属するかの情報と、いずれの薬剤容器であるかを特定する情報とを有」することとは、記憶部には、容器保管部に保管されている薬剤容器につき散薬に関する情報と薬剤容器に関する情報とを有する限りで一致する。
甲1発明の「複数の薬剤容器2から薬剤容器2を選び出」すことについて、一番目に選ばれ薬剤容器2は「最初の薬剤容器」と表現できるから、甲1発明の「複数の薬剤容器2から薬剤容器2を選び出し、薬剤容器2の重量を測定して排出させた散薬を薬剤投入溝208に投入する」ことは、本件発明1の「複数の薬剤容器のいずれかの薬剤容器から最初の薬剤容器を選択し、選択した最初の薬剤容器の散薬を計量して排出させた散薬を薬剤投入溝に投入する」ことに相当する。
甲1発明の「薬剤払出し装置1」は、本件特許発明1の「薬剤払い出し装置」に相当する。
甲1発明の「薬剤容器2を載置する容器載置装置3」は、図17(上記(タ))から、二つの分配皿201の各々の周辺に複数の容器載置装置3が配置されていることが看て取れるから、本件特許発明1の「複数の分配皿の各々の周辺に薬剤容器を載置する容器載置装置」に相当する。
そうすると、両者は、
「複数の薬剤容器と、記憶部と、複数の薬剤容器を設置して保管する容器保管部と、薬剤投入溝を有する複数の分配皿とを有し、
記憶部には、容器保管部に保管されている薬剤容器につき散薬に関する情報と薬剤容器に関する情報とを有し、
複数の薬剤容器のいずれかの薬剤容器から最初の薬剤容器を選択し、選択した最初の薬剤容器の散薬を計量して排出させた散薬を薬剤投入溝に投入する薬剤払い出し装置であって、
薬剤払い出し装置は、薬剤払出し装置を制御する制御手段をさらに有し、
薬剤払い出し装置は、さらに複数の分配皿の各々の周辺に薬剤容器を載置する容器載置装置を有する、
薬剤払い出し装置。」
である点で一致する。
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1>
「複数の薬剤容器」について、本件発明1は、「少なくとも同種の散薬が貯留され」ているのに対して、甲1発明は、「原則として異なる種類の散薬が充填され」ている点。
<相違点2>
「記憶部」について、本件発明1は、容器保管部に保管されている「薬剤容器が、同種の散薬が貯留されたグループである容器グループにおいて、いずれの容器グループに属するかの情報と、いずれの薬剤容器であるかを特定する情報とを有」するのに対して、甲1発明は、「容器保管装置101に保管されている薬剤容器2につき、散薬の種類と、薬剤容器2が装着される位置とが記憶されて」いる点。
<相違点3>
本件発明1は、「同一の容器グループに属する薬剤容器は、一つの分配皿に対応する複数の容器載置装置に対して一個に限り載置するものであり」、制御手段により、「最初の薬剤容器の散薬がなくなった場合には、記憶部に記憶された同種の散薬が貯留されたグループである容器グループにおいて、最初の薬剤容器がいずれの容器グループに属するかの情報を用いて、容器保管部に同一の容器グループに属する薬剤容器が有るか否かと、現に容器載置装置に搭載されておらず、散薬を排出していない薬剤容器が、容器保管部に有るか否かとが判断され、最初の薬剤容器と同一の容器グループに属する薬剤容器が容器保管部に有る場合、最初の薬剤容器と同一の容器グループの次の薬剤容器を容器載置装置に載置し散薬を計量して排出させた散薬を薬剤投入溝に投入し」、「最初の薬剤容器の散薬がなくなった場合には、記憶部に記憶された情報を用いて、同一の容器グループに属する薬剤容器で、現に容器載置装置に搭載されておらず、散薬を排出していない薬剤容器が、容器保管部に有るか否かが判断され、当該薬剤容器が有るならば、当該薬剤容器が次の薬剤容器として選定される動作を含む」のに対して、甲1発明は、「最初に選び出した薬剤容器2の散薬がなくなった場合には、欠品処理工程として、薬剤容器2を取り出して薬剤容器仮置部11に移動させ、使用者が散薬を補充した後に、薬剤容器仮置部11から容器載置装置3に再度載置して、補充後の薬剤容器2の重量を測定して排出させた散薬を薬剤投入溝208に投入する」点。
イ 判断
上記相違点について検討する。
事案に鑑み、まず相違点3について検討する。
薬剤払い出し装置が、「同一の容器グループに属する薬剤容器は、一つの分配皿に対応する複数の容器載置装置に対して一個に限り載置するものであ」ることは、甲1及び2のいずれにも記載されていないし、示唆もされていない。また、甲5~7及び引用文献4にも上記事項を示唆する記載はないし、技術常識でもない。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、本件発明1と同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 特許法第29条第2項について
上記第4の4(2)で説示した本件発明1の進歩性の判断に関し、上記相違点3について、申立人は、特許異議申立書において、「錠剤がなくなった場合に、補充されるまで分包動作が中断されてしまう」という「課題は、甲第3号証(【0018】)または甲第4号証(【0023】)にも記載されているから、周知の課題と言える。」として、「甲1発明の示唆および周知の課題に基づいて、同様の課題を解決する甲第2号証に記載の技術を、甲1発明に適用することは容易である。」と主張する。
しかしながら、上記相違点3に係る「同一の容器グループに属する薬剤容器は、一つの分配皿に対応する複数の容器載置装置に対して一個に限り載置するものであ」ることは、甲第3号証及び甲第4号証のいずれにも記載されていないし、示唆もされていない。
したがって、申立人の当該主張は、採用することができない。
2 特許法第17条の2第3項について
申立人は、特許異議申立書において、請求項1における「容器グループ」は、「同種のみの散薬」及び「同種と異種の散薬」が貯留されている複数の薬剤容器のうち「同種のみの散薬」が貯留された薬剤容器をグループ化することと、文理解釈できるが、本件の明細書には、「散薬グループ」について一切記載されておらず、散薬を「同種のみ」と「同種と異種」のようにグループ分けするとの概念は一切記載されていないため、「少なくとも同種の散薬が貯留された複数の薬剤容器」を「同種の散薬グループである容器グループ」でグループ化する事項は、新規事項に該当する旨を主張する。
しかしながら、本件特許の明細書の段落【0052】~【0054】には、薬剤容器4が容器グループにグループ分けされ、容器グループごとに異なる散薬が薬剤容器4に充填されていること、その例として、特定の容器グループの属する薬剤容器4の数が3である場合、属する3個の薬剤容器4の全てに同種の散薬Aが充填されることが記載されている。
したがって、申立人の当該主張は、採用することができない。
3 特許法第36条第6項第2号について
(1)申立人は、特許異議申立書において、請求項1の記載について、「記憶部には、(中略)薬剤容器が(中略)容器グループにおいて、いずれの容器グループに属するかの情報と、いずれの薬剤容器であるかを特定する情報とを有し」との記載が不明確であり、さらに「いずれの薬剤容器であるかを特定する情報」の意味が不明である旨、及び、「容器載置装置」について、載置しているか否かと選定されるか否かの判断との関係性が不明であり、排出しているか否かと選定されるか否かの判断との関係性が不明である旨を主張している。
しかしながら、いずれの点も本件明細書及び図面の記載を踏まえれば、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確とはいえない。
(2)また、申立人は、特許異議申立書において、請求項6の「操作表示部を操作することにより」との記載について、薬剤払出し装置による動作なのか、使用者による動作なのか不明であると主張する。
しかしながら、本件特許の明細書の段落【0092】には、「使用者が」「操作表示部3を手動で操作する」ことが記載されており、当該記載事項を踏まえれば、上記請求項6の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確とはいえない。
4 特許法第36条第4項第1号について
申立人は、特許異議申立書において、請求項6の「操作表示部を操作することにより複数の薬剤容器の中から所望の薬剤容器を選び出す」ことについて、本件明細書には、具体的にどのような操作・制御によって選び出すのかについて記載されておらず、また、「操作表示部を操作することにより複数の薬剤容器の中から所望の薬剤容器を選び出す」工程をどの時点で実施するのか記載されていないので、どのように「操作表示部を操作することにより複数の薬剤容器の中から所望の薬剤容器を選び出す」構成を実現するのか、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない旨を主張する。
しかしながら、本件特許の明細書の段落【0084】~【0094】、図9及び10には、使用者が操作表示部3を操作することにより(ステップ16)、空の薬剤容器4が容器保管部23から容器仮置部18に運搬され、その後、容器移動手段28によって選定(ステップ12~15)された未使用状態の薬剤容器4が容器保管部23から容器載置装置36に運搬される(ステップ7)ことが記載されており、当該記載事項を参酌すると、請求項6で特定される上記構成について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
したがって、申立人の当該主張は、採用することができない。
第6 むすび
以上のとおり、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件発明1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700143