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特許異議申立

2025-700631

医療用アプリのアクティベーションシステム

審判番号
2025-700631
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-190999
登録番号
7601370
請求日
2025年06月16日
審決日
2026年03月23日
公報発行日
2026年06月26日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】ロゴスサイエンス株式会社
  • 【異議申立人】弁理士法人 エピファニー特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 野崎 大進
  • 審判官 間野 裕一
  • 審判官 佐藤 智康
分類
P1651.16 -ZC (G16H) / P1651.113-ZC (G16H) / P1651.121-ZC (G16H) / P1651.536-ZC (G16H) / P1651.537-ZC (G16H) / P1651.14 -ZC (G16H)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条の2特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条の2、特許法第29条第2項、特許法第29条、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7601370号発明「医療用アプリのアクティベーションシステム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7601370号の請求項1に係る特許を取り消す。 同請求項2、3に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7601370号の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和2年11月17日にされたものであって、令和6年12月9日にその特許権の設定登録がされ、同年12月17日に特許掲載公報が発行され、その特許について令和7年6月16日に特許異議申立人弁理士法人エピファニー特許事務所(以下「申立人」という。)により本件特許の全請求項(請求項1~3)に対して特許異議の申立てがされた。 そして、特許権者に対して同年10月16日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~3に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明3」という。また、これらをまとめて「本件発明」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである 【請求項1】 医療機関側端末と、患者側端末と、サーバからなる医療用システムであって、 患者側端末はサーバから医療用アプリケーションプログラムをダウンロードし、 医療機関側端末は、医師、又は、医師の診断を代替えするシステムによる患者の診断により特定された患者の疾患あるいは病態に応じて処方された医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコードを発行し、 前記アクティベーションコードには前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能期間、前記医療用アプリケーションプログラムの利用時間、または前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能上限数が含まれることを特徴とするシステム。 【請求項2】 前記ダウンロード時に患者側端末に対して費用を課金し、医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用を支払う請求項1のシステム。 【請求項3】 医療用アプリケーションプログラムのアクティベーション時点、あるいは、医療用アプリケーションプログラムの処方の完了時にサーバから健康保険組合へ通知を行い、通知結果に基づいて前記健康保険組合から医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用の支払いが行われる請求項1、請求項2の何れかのシステム。 第3 特許異議の申立ての理由の概要及び取消理由の概要 1 特許異議の申立ての理由の概要 特許異議の申立ての理由の概要は、次のとおりである(理由の番号は当審で付与した)。 (理由1:特許法29条の2(拡大先願)) ・請求項1 甲第1号証に記載の発明である。 (理由2:特許法29条1項3号(新規性)) ・請求項1 甲第2号証に記載の発明である。 (理由3:特許法29条第2項(進歩性:主引用例が甲第2号証)) ・請求項1 甲第2号証から容易に想到できる発明である。 ・請求項2 甲第2号証と、例えば甲第6号証の一般常識と、の組み合わせから容易に想到できる発明である。 ・請求項3 甲第2号証と、例えば甲第7号証の一般常識と、の組み合わせから容易に想到できる発明である。 (理由4:特許法29条第2項(進歩性:主引用例が甲第3号証)) ・請求項1 甲第3号証と、甲第4号証または甲第5号証と、の組み合わせから容易に想到できる発明である ・請求項2 甲第3号証と、甲第4号証または甲第5号証と、例えば甲第6号証の一般常識と、の組み合わせから容易に想到できる発明である。 ・請求項3 甲第3号証と、甲第4号証または甲第5号証と、例えば甲第7号証の一般常識と、の組み合わせから容易に想到できる発明である。 (理由5:特許法第36条第6項第1号(サポート要件違反)) 請求項1-請求項3に係る発明は、サポート要件を満たさない。 (理由6:特許法特許法第36条第6項第2号(明確性要件違反)) 請求項1-請求項3に係る発明は、不明確である。 (理由7:特許法第36条第4項第1号(実施可能要件違反)) 当業者が請求項1-請求項3に係る発明を実施することができる程度に必要かつ十分に記載されたものではない。 (理由8:特許法第29条第1項柱書(発明該当性違反)) 請求項2の「課金、支払い」は人為的に行われる事項であり、請求項3の「健康保険組合への通知、費用の支払い」は人為的に行われる事項であり、産業上利用することができる発明ではない。 (甲号証一覧) 甲第1号証:特願2020-71923(特開2021-168093号公報) 甲第2号証:国際公開第2019/074996号 甲第3号証:特許第6611112号公報 甲第4号証:特開2019-197597号公報 甲第5号証:特開2019-70970号公報 甲第6号証:One IT Thing、「B2BスマホアプリをGooglePlay、AppStoreに公開することを安易にお勧め出来ない7つの理由とその対策」、「(2) ストア決済は要30%の手数料、2年目からの手数料減額は全てに対してではない」関連図面、[online]、2019年5月17日、[令和7年6月10日検索]、インターネット<URL: https://one-it-thing.com/705/> 甲第7号証:日本臨床外科学会、日本の医療保険制度、[online]、2017年11月22日、[令和7年6月10日検索]、インターネット<URL: https://www.ringe.jp/civic/20171122/> 2 取消理由の概要 令和7年10月16日付け取消理由通知書に記載された取消理由(以下「取消理由1」という。)の概要は、 「請求項1に係る発明は、本件特許出願の日前の特許出願であって、本件特許出願後に出願公開の発行がされた下記の特許出願である先願1の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、本件特許出願の発明者が本件特許出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本件特許出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないから、請求項1に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものである。 先願1.特願2020-71923号(特開2021-168093号、甲第1号証)」 というものである。 第4 甲号証について 1 甲第1号証について (1)甲第1号証に記載されている事項 甲第1号証は、本件特許出願前の令和2年4月13日に出願され、本件特許出願後に出願公開され、上記取消理由1で引用された先願1の当初明細書等であり、次の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付与した(以下同じ)。 「【0026】 <実施の形態> 図1は、実施の形態1に係る治療用アプリケーション管理システム1の概要を説明する概要図であって、そのシステム構成例を示すシステム図である。図1に示すように、治療用アプリケーション管理システム1は、管理サーバ100と、配信サーバ300とを含み、ユーザ端末200、医療従事者端末500、運用サーバ600が含まれてよい。管理サーバ100と、ユーザ端末200と、配信サーバ300と、医療従事者端末500と、運用サーバ600とは、ネットワーク400を介して互いに通信可能に接続される。なお、図1に示す各装置について1台ずつ示しているが、各端末、サーバは、1台に限定されるものではなく複数台あってよい。」 「【0028】 ここで、治療用アプリケーションとは、患者の日々の状態を管理するとともに、各患者にパーソナライズした医学的知見を伴ったガイダンスを行うアプリケーションソフトである。 【0029】 また、医療従事者とは、医療に携わる人間であればよく、例えば、医師、看護師、メンター、薬剤師などである。」 「【0031】 一方、患者は、ユーザ端末200を用いて、配信サーバ300から配信された治療用アプリケーション31をダウンロードして使用する。管理サーバ100は、患者が治療用アプリケーションを使用することにより蓄積される各種のデータを収集、保存、管理する。ユーザ端末200が治療用アプリケーションを実行する際には、ユーザ端末200の患者の治療に関する情報として、管理サーバ100または運用サーバ600から提供される治療情報を表示することができる。そして、治療用アプリケーションの使用期限が到来した場合には、制限情報11をユーザ端末200に送信し、治療用アプリケーションの使用を制限する。」 「【0034】 図2に示すように、管理サーバ100は、通信部110と、入力部120と、制御部130と、記憶部140と、出力部150と、を備える。通信部110と、入力部120と、制御部130と、記憶部140と、出力部150とは、バス160を介して互いに通信可能に構成されてよい。 【0035】 通信部110は、他の装置と通信を実行するための機能を有する通信インターフェースである。通信部110は、他の装置と通信可能であれば、いずれの通信プロトコルにより通信を行ってもよく、有線、無線のいずれでの通信であってよい。通信部110は制御部130からの指示にしたがって、ユーザ端末200や、配信サーバ300、医療従事者端末500、あるいは、運用サーバ600と通信を行う。通信部110は、例えば、医療従事者端末500から、治療用アプリケーションを示す情報と、その治療用アプリケーションを使用する患者に関する情報、その治療用アプリケーションの使用期限に関する情報を受信して、制御部130に伝達する。また、通信部110は、例えば、ユーザ端末200からのアクティベーションコードを要求する要求情報を受信して、制御部130に伝達する。また、通信部110は、例えば、制御部130からの指示にしたがって、ユーザ端末200にアクティベーションコードや、治療用アプリケーションの使用を制限するための制限情報を送信する。」 「【0040】 制御部130は、制御部130が実現する機能として、取得部131と、登録部132と、計時部133と、制限部134と、と、発行部135と、提案部136と、変更部137とを備える。」 「【0045】 発行部135は、各治療用アプリケーションをアクティベイト(有効化、即ち、起動可能にすること)するためのアクティベーションコードを発行する。発行部135は、発行したアクティベーションコードを、アクティベーションコードを要求したユーザ端末200に、通信部110を介して送信する。」 「【0096】 治療情報705は、対応する患者名602で示される患者が使用している、アプリID703で示される治療用アプリケーションとして、確認することができる治療に関する情報の実データ、または、当該実データを確認することができる装置のアドレスを示す情報である。ここでいう実データを確認することができる装置とは、実際に患者が治療を受けている医療機関等による診察情報等の情報を保持するサーバ装置であり、管理サーバ100と提携している医療機関等のサーバ装置である。なお、治療情報705について全て運用サーバ600で運用管理する場合には、管理情報141に登録されていなくともよい。また、治療情報705と運用サーバ600が保持する治療情報641とは、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。治療情報が互いに異なる一例として、例えば、管理サーバ100では、患者の禁煙に関する治療の情報が保持され、運用サーバ600では、糖尿の治療に関する情報が保持されるというような態様であってもよい。」 「【0104】 管理サーバ100は、ユーザ端末200からのアクティベーションコードの要求を受けて、医療従事者からの許可が下りていることを確認したうえで、アクティベーションコードを送信する(ステップS807)。」 「【0140】 また、あるいは、アクティベーションコードは、所謂電子証明書と同様の運用をされてもよい。即ち、アクティベーションコードに、使用期限が含まれ、治療用アプリケーションの実行時に、その使用期限を経過していなければ、管理サーバ100あるいは治療情報を保持するサーバへのアクセスを可能とし、使用期限を経過していれば、管理サーバ100あるいは治療情報を保持するサーバへのアクセスを不可能とすることで、治療用アプリケーションの使用を制限する態様としてもよい。」 「【図1】 [図:0001436194000001.jpg] 」 「【図2】 [図:0001436194000002.jpg] 」 (2)甲第1号証に記載されている発明 上記(1)から、甲第1号証には、次の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているといえる。 「管理サーバ100と、配信サーバ300と、ユーザ端末200と、医療従事者端末500と、運用サーバ600が含まれる治療用アプリケーション管理システム1であって、(【0026】) 医療従事者とは、医師であり、(【0029】) 患者は、ユーザ端末200を用いて、配信サーバ300から配信された治療用アプリケーション31をダウンロードして使用するものであり、(【0031】) 管理サーバ100は、通信部110と、制御部130とを備え、(【0034】) 通信部110は、医療従事者端末500から、治療用アプリケーションを示す情報と、その治療用アプリケーションを使用する患者に関する情報、その治療用アプリケーションの使用期限に関する情報を受信して、制御部130に伝達し、通信部110は、ユーザ端末200からのアクティベーションコードを要求する要求情報を受信して、制御部130に伝達し、通信部110は、制御部130からの指示にしたがって、ユーザ端末200にアクティベーションコードや、治療用アプリケーションの使用を制限するための制限情報を送信し、(【0035】) 制御部130は、発行部135を備え、(【0040】) 発行部135は、各治療用アプリケーションをアクティベイト(有効化、即ち、起動可能にすること)するためのアクティベーションコードを発行し、発行部135は、発行したアクティベーションコードを、アクティベーションコードを要求したユーザ端末200に、通信部110を介して送信し、(【0045】) 管理サーバ100は、医療機関等のサーバ装置と提携しており、(【0096】) 管理サーバ100は、ユーザ端末200からのアクティベーションコードの要求を受けて、医療従事者からの許可が下りていることを確認したうえで、アクティベーションコードを送信し、(【0104】) アクティベーションコードに、使用期限が含まれ、治療用アプリケーションの実行時に、その使用期限を経過していなければ、管理サーバ100あるいは治療情報を保持するサーバへのアクセスを可能とし、使用期限を経過していれば、管理サーバ100あるいは治療情報を保持するサーバへのアクセスを不可能とすることで、治療用アプリケーションの使用を制限する、(【0140】) 治療用アプリケーション管理システム1。」 2 甲第2号証について (1)甲第2号証に記載されている事項 本件特許出願前の2019年(令和元年)4月18日に国際公開された甲第2号証には、次の事項が記載されている。 「[0002] This disclosure relates to systems and methods for ensuring data security in the treatment of diseases and disorders using digital therapeutics.」 (当審訳:本開示は、デジタル療法を用いた疾患及び障害の治療においてデータセキュリティを確保するためのシステム及び方法に関する。) 「[0029] The patients may access the therapy content when a healthcare professional (HCP) prescribes a digital therapy prescription to the patient for treating the specific disease or disorder. For instance, during an initial consultation or re-occurring appointment (e.g., every month) the HCP may prescribe the digital therapy prescription to the patient by providing the patient with an access code to access the prescription from the backend service. ・・・」 (当審訳:患者は、医療専門家(HCP)が特定の疾患又は障害を治療するためのデジタル治療処方箋を患者に処方すると、治療コンテンツにアクセスすることができる。例えば、HCPは、初診時又は繰り返しの予約時(例えば、毎月)に、処方箋にアクセスするためのアクセスコードをバックエンドサービスから患者に提供することによって、患者にデジタル治療処方箋を処方することができる。・・・) 「[0031] In some examples, the system 100 includes a network 20, a patient device 110, an HCP system 140, and a backend service 200. ・・・」 (当審訳:いくつかの例では、システム100が、ネットワーク20と、患者装置110と、HCPシステム140と、バックエンドサービス200とを含む。・・・) 「[0033] ・・・ For instance, audible alerts may be output by the speaker to notify the patient 10 when it is time to ingest a medication prescribed to the patient 10 in the digital therapy prescription or otherwise notify the patient 10 about some time sensitive event associated with the digital therapy prescription. In some implementations, the patient device 110 executes a patient application 300 (or accesses a web-based patient application) for establishing a connection with the backend service 200 to input and retrieve data 12 therefrom. For instance, the patient 10 may have access to the patient application 300 for a duration (e.g., 3 months) of the digital therapy prescription prescribed to the patient 10. ・・・」 (当審訳:・・・例えば、スピーカによって可聴アラートを出力して、デジタル治療処方箋において患者10に処方されている薬を摂取する時間が来た時に患者10に通知し、或いはデジタル治療処方箋に関連する何らかの時間制約のあるイベントについて別様に患者10に通知することができる。いくつかの実装では、患者装置110が、バックエンドサービス200との接続を確立してデータ12の入力及びバックエンドサービス200からの検索を行うための患者アプリケーション300を実行する(又はウェブベースの患者アプリケーションにアクセスする)。例えば、患者10は、患者10に処方されたデジタル治療処方箋の継続期間(例えば、3ヶ月)にわたって患者アプリケーション300にアクセスすることができる。・・・) 「[0036] ・・・ The backend service 200 may provide the patient 10 with the patient application 300 (e.g., a mobile application, a web-site application, or a downloadable program that includes a set of instructions) executable on the data processing hardware 112 and accessible through the network 20 via the patient device 110 when the patient 10 provides a valid access code 302. ・・・」 (当審訳:・・・バックエンドサービス200は、データ処理ハードウェア112上で実行可能な、患者10が有効なアクセスコード302を提供した時に患者装置110を介してネットワークを通じてアクセスできる患者アプリケーション300(例えば、モバイルアプリケーション、ウェブサイトアプリケーション、又は命令セットを含むダウンロード可能なプログラム)を患者10に提供することができる。・・・) 「図1 [図:0001436194000003.jpg] 」 (2)甲第2号証に記載されている発明 上記(1)から、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 「ネットワーク20と、患者装置110と、HCPシステム140と、バックエンドサービス200とを含むシステム100であって、([0031]) バックエンドサービス200は、データ処理ハードウェア112上で実行可能な、患者アプリケーション300(例えば、モバイルアプリケーション、ウェブサイトアプリケーション、又は命令セットを含むダウンロード可能なプログラム)を患者10に提供することができ、([0036」) 患者は、医療専門家(HCP)が特定の疾患又は障害を治療するためのデジタル治療処方箋を患者に処方すると、治療コンテンツにアクセスすることができ、HCPは、初診時又は繰り返しの予約時(例えば、毎月)に、処方箋にアクセスするためのアクセスコードをバックエンドサービスから患者に提供することによって、患者にデジタル治療処方箋を処方することができ、([0029]) デジタル治療処方箋において患者10に処方されている薬を摂取する時間が来た時に患者10に通知し、或いはデジタル治療処方箋に関連する何らかの時間制約のあるイベントについて別様に患者10に通知することができ、患者10に処方されたデジタル治療処方箋の継続期間は例えば3ヶ月である、([0033]) システム100。」 3 甲第3号証について (1)甲第3号証に記載されている事項 本件特許出願前の令和元年11月27日に発行された甲第3号証には、次の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、治療関連アプリ管理システムおよび管理用サーバ装置に関し、特に、治療関連アプリの使用状態を管理するシステムおよび管理用サーバ装置に用いて好適なものである。」 「【0020】 治療関連アプリ管理システム100の管理用サーバ装置101は、インターネット600に接続されている。インターネット600には、ユーザ端末200、医師用端末300および運用サーバ400も接続されている。なお、医師用端末300は、医療機関のLANに接続される構成としてもよい。」 「【0022】 ユーザ端末200は、スマートフォンにより構成される。ユーザ端末200は、インターネット600上のアプリストア500から治療用アプリを自由にダウンロードし、インストールして使用することができる。なお、ここではユーザ端末200がスマートフォンであるとし、治療用アプリをアプリストア500からダウンロードすることとしているが、これに限定されない。例えば、ユーザ端末200は、パーソナルコンピュータまたはタブレット端末であってもよい。この他、治療用アプリを所定のサイトからダウンロードしてインストール可能な端末であれば、ユーザ端末200として使用することが可能である。」 「【0034】 なお、患者が医療機関端末102を操作してコード表示要求を行う際に、診断をした医師が発行する何らかのキー情報の入力を必須とするようにしてもよい。キー情報は、医師が患者に口頭で伝えるようにしてもよいし、紙に書いて伝えるようにしてもよいし、医師用端末300から紙にプリントアウトして伝えるようにしてもよい。このようなキー情報の伝達は、従来のように治療用アプリの使用を処方すること(治療用アプリをダウンロード可能にするためのユーザIDやパスワードを発行することなど)に比べて、情報技術に不慣れな医師でも簡単に行うことができ、負担が少ない。 【0035】 コード表示部12は、コード要求受付部11がコード表示要求を受け付けた場合、システム登録に必要な情報が記録された読取コード画像を医療機関端末102の表示装置に表示させる。読取コード画像は、例えば2次元コードまたはバーコードである。この読取コード画像に記録されるシステム登録に必要な情報は、ユーザIDおよびパスワードである。ユーザIDおよびパスワードは、コード表示部12により自動的に発行される。すなわち、コード表示部12は、ユーザIDおよびパスワードを発行し、その情報が記録された読取コード画像を生成した上で、それを医療機関端末102に送信して表示させる。これにより、患者を診断した医師は、ユーザIDおよびパスワードを発行するためのコンピュータ操作を行う必要がない。 【0036】 コード表示要求を行ったユーザは、ユーザ端末200において治療用アプリを起動し、医療機関端末102の表示装置に表示された読取コード画像を治療用アプリの機能によって読み取る。これにより、システム登録の要求を治療用アプリから管理用サーバ装置101に対して行うことができる。すなわち、治療用アプリのコード読取機能を用いて読取コード画像を読み取ると、システム登録要求情報が治療用アプリから管理用サーバ装置101に送信される。このシステム登録要求情報には、読取コード画像を解析することによって得たユーザIDおよびパスワードや、治療用アプリの識別情報、ユーザ端末200の識別情報などが含まれている。」 「【0039】 アプリ登録部14は、登録要求受付部13がシステム登録要求情報を受け付けた場合、当該要求を行った治療用アプリを正規アプリとして登録するとともに、通信機能の制限を解除する。治療用アプリのシステム登録は、システム登録要求情報に含まれているユーザID、パスワード、治療用アプリの識別情報、ユーザ端末200の識別情報などをデータベースに登録することによって行う。このシステム登録が行われた以降、ユーザが治療用アプリを使用する際は、ユーザIDおよびパスワードを用いたログインが必要となる。ログインをすれば、運用サーバ400との通信機能の制限を受けることなく治療用アプリを使用することができる。」 「【0051】 また、上記実施形態では、治療用アプリをシステム登録するまでの間は運用サーバ400との通信機能を制限する例について説明したが、治療用アプリの他の機能も併せて制限するようにしてもよい。」 「【図1】 [図:0001436194000004.jpg] 」 (2)甲第3号証に記載されている発明 上記(1)から、甲第3号証には、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されているといえる。 「治療関連アプリ管理システム100の管理用サーバ装置101は、インターネット600に接続されており、インターネット600には、ユーザ端末200、医師用端末300および運用サーバ400も接続されており、(【0001】、【0020】) ユーザ端末200は、インターネット600上のアプリストア500から治療用アプリを自由にダウンロードし、インストールして使用することができ、(【0022】) 患者が医療機関端末102を操作してコード表示要求を行う際に、診断をした医師が発行する何らかのキー情報の入力を必須とするようにしてもよく、医師用端末300から紙にプリントアウトして伝えるようにしてもよく、(【0034】) システム登録に必要な情報が記録された読取コード画像が医療機関端末102の表示装置に表示され、(【0035】) 治療用アプリのコード読取機能を用いて読取コード画像を読み取ると、システム登録要求情報が治療用アプリから管理用サーバ装置101に送信され、このシステム登録要求情報には、読取コード画像を解析することによって得たユーザIDおよびパスワードや、治療用アプリの識別情報、ユーザ端末200の識別情報などが含まれており、(【0036】) (管理用サーバ装置101の)アプリ登録部14は、登録要求受付部13がシステム登録要求情報を受け付けた場合、当該要求を行った治療用アプリを正規アプリとして登録するとともに、通信機能の制限を解除し、(【0039】) 治療用アプリをシステム登録するまでの間は運用サーバ400との通信機能を制限することに併せて、治療用アプリの他の機能も制限するようにしてもよい(【0051】) 治療関連アプリ管理システム100。」 4 甲第4号証について 本件特許出願前の令和元年11月14日に出願公開された甲第4号証には、次の事項が記載されている。 「【0036】 ユーザ端末2bは、利用者から受け付けた利用リクエストを管理サーバ1に送信する。利用リクエストは、コンテンツのライセンス条件毎に送信することが可能である。例えば、動画や音楽等の場合、コンテンツのライセンス条件として、「1日利用」、「3日利用」、「1週間利用」「1か月利用」等の期間が設定されていた場合、当該期間毎に利用リクエストを送信することが可能となる。 【0037】 管理サーバ1は、利用リクエストにかかるコンテンツ及びライセンス条件とユーザ端末2bを特定する情報とを含む利用許可情報をブロックチェーンネットワークにブロードキャストして当該ネットワークに参加している端末に共有する。一方で、管理サーバ1は、ユーザ端末2bに対しコンテンツの利用許可通知を送信する。利用許可通知にはコンテンツのデータそのものや、コンテンツのデータにアクセス可能なURI(URL)、ダウンロードキー等のパスワードなどが含まれている。」 5 甲第5号証について 本件特許出願前の令和元年5月9日に出願公開された甲第5号証には、次の事項が記載されている。 「【0022】 利用可能期間付きライセンス401(あるいは有効期限付きライセンス401)をインストールした場合は、ライセンス情報記憶部305は有効期限日数413を元に現在日時から計算した値を利用終了日にセットし、記憶する。無期限ライセンス402をインストールした場合についても、ライセンス情報記憶部305が有効期限日数415を元に利用終了日に無期限であることをセットし、記憶する。ライセンスを画像形成装置101にインストールすることでアプリケーションの利用が可能となる。」 6 甲第6号証について 本件特許出願前の令和元年5月17日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第6号証には、次の関連図面が記載されている。 「 [図:0001436194000005.jpg] 」 すなわち、甲第6号証には、周知のアプリストア(Google Play、App Store)において、ダウンロード時にユーザに課金し、アプリメーカーであるサービス運営会社に代金を支払う技術が記載されているといえる。 7 甲第7号証について 本件特許出願前の平成29年11月22日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第7号証には、次の事項が記載されている。 「1.医療保険制度とは ・・・ 患者は保険料を各保険者に納め、医療機関は患者負担金を除いた医療費を保険者に請求し支払を受けます。」 すなわち、甲第7号証には、医療機関が医療費を保険者に請求し支払を受ける技術が記載されているといえる。 第5 当審の判断 1 取消理由通知に記載した取消理由(理由1(拡大先願))について (1)対比 本件発明1と先願発明とを対比する。 ア 「医療機関側端末と、患者側端末と、サーバからなる医療用システムであって、」について (ア)先願発明の「管理サーバ100」は、医療機関等のサーバ装置と提携しており、ユーザ端末200からのアクティベーションコードの要求を受けて、医療従事者からの許可が下りていることを確認したうえで、アクティベーションコードを送信するものであり、本件発明1の「医療機関側端末」に相当する。 (イ)先願発明の「ユーザ端末200」は、患者が、配信サーバ300から配信された治療用アプリケーション31をダウンロードして使用するために用いるものであり、本件発明1の「患者側端末」に相当する。 (ウ)先願発明の「配信サーバ300」は、ユーザ端末200に治療用アプリケーション31を配信するものであり、本件発明1の「サーバ」に相当する。 (エ)先願発明の「治療用アプリケーション管理システム1」は、管理サーバ100と、配信サーバ300と、ユーザ端末200を含むものであり、上記(ア)から(ウ)で整理した事項を踏まえると、本件発明1の「医療用システム」に相当する。 (オ)上記(ア)~(エ)を踏まえれば、先願発明は、本件発明1と、「医療機関側端末と、患者側端末と、サーバからなる医療用システム」である点で共通する。 イ 「患者側端末はサーバから医療用アプリケーションプログラムをダウンロードし、」について 先願発明の「治療用アプリケーション31」は、「患者の日々の状態を管理するとともに、各患者にパーソナライズした医学的知見を伴ったガイダンスを行うアプリケーションソフト」(甲第1号証の段落【0028】)としてダウンロードされて使用されるものであり、「特定の疾患の治療目的、特定の疾患の補助的な目的などで使われるようにプログラミング」(本件特許明細書の段落【0012】)されたプログラムとしてダウンロードされて使用されるものである、本件発明1の「医療用アプリケーションプログラム」に対応するものといえ、先願発明において「ユーザ端末200」が「配信サーバ300」から治療用アプリケーション31をダウンロードすることは、本件発明1において「患者側端末」が「サーバ」から医療用アプリケーションプログラムを「ダウンロード」することに相当する。 したがって、先願発明は、本件発明1と、「患者側端末はサーバから医療用アプリケーションプログラムをダウンロード」する点で共通する。 ウ 「医療機関側端末は、医師、又は、医師の診断を代替えするシステムによる患者の診断により特定された患者の疾患あるいは病態に応じて処方された医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコードを発行し、」について (ア)先願発明において、管理サーバ100の通信部110が、医療従事者端末500から、治療用アプリケーションを示す情報と、その治療用アプリケーションを使用する患者に関する情報、その治療用アプリケーションの使用期限に関する情報を受信する際には、医療従事者である医師が、患者を診断し、その診断結果として、その患者の疾患あるいは病態を治療するために必要な治療用アプリケーションを特定するとともに、その治療に合わせた治療用アプリケーションの使用期限を特定していることは明らかであり、先願発明においても、医師により特定された患者の疾患あるいは病態に応じて治療用アプリケーション31が処方されているといえる。 してみれば、先願発明における、医師による患者の診断は、本件発明1における、「医師、又は、医師の診断を代替えするシステムによる患者の診断」に相当し(本件発明1の「医師、又は、医師の診断を代替えするシステム」は、「医師」と「医師の診断を代替えするシステム」を選択事項としており、「医師」が一致点であれば、全体として一致点となる。)、先願発明における、医師により特定された患者の疾患あるいは病態に応じて「治療用アプリケーション」が処方されることは、本件発明1における、「医師、又は、医師の診断を代替えするシステムによる患者の診断により特定された患者の疾患あるいは病態に応じて」「医療用アプリケーションプログラム」が処方されることに相当する。 (イ)先願発明の「アクティベーションコード」は、「各治療用アプリケーションをアクティベイト(有効化、即ち、起動可能にすること)する」ためのものであるから、本件発明1の「医療用アプリケーションプログラム」の「アクティベーションコード」に相当し、先願発明において、「管理サーバ100」が「治療用アプリケーションプログラム」の「アクティベーションコード」を発行することは、本件発明1において、「医療機関側端末」が「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコードを発行」することに相当する。 (ウ)上記(ア)、(イ)を踏まえれば、先願発明は、本件発明1と、「医療機関側端末は、医師、又は、医師の診断を代替えするシステムによる患者の診断により特定された患者の疾患あるいは病態に応じて処方された医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコードを発行」する点で共通する。 エ 「前記アクティベーションコードには前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能期間、前記医療用アプリケーションプログラムの利用時間、または前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能上限数が含まれること」について (ア)先願発明において、アクティベーションコードには、使用期限が含まれ、治療用アプリケーションの実行時に、その使用期限を経過していなければ、管理サーバ100あるいは治療情報を保持するサーバへのアクセスを可能とし、使用期限を経過していれば、管理サーバ100あるいは治療情報を保持するサーバへのアクセスを不可能とすることで、治療用アプリケーションの使用を制限している。 (イ)上記(ア)の、先願発明における、アクティベーションコードに使用期限が含まれることは、当該治療用アプリケーションがいつまで「利用可能」であるかを示す「期間」が含まれることといえるから、本件発明1における、アクティベーションコードに医療用アプリケーションプログラムの「利用可能期間」が含まれることに相当する。 (ウ)また、上記(ア)の、先願発明における、アクティベーションコードに使用期限が含まれることは、当該治療用アプリケーションがいつまで「利用」できるかを示す「時間」が含まれることでもあるから、本件発明1における、アクティベーションコードに医療用アプリケーションプログラムの「利用時間」が含まれることに相当するともいえる。 (エ)上記(ア)~(ウ)を踏まえれば、先願発明は、本件発明1と、「前記アクティベーションコードには前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能期間、前記医療用アプリケーションプログラムの利用時間、または前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能上限数が含まれる」点で共通する。(本件発明1の「前記アクティベーションコードには前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能期間、前記医療用アプリケーションプログラムの利用時間、または前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能上限数」は、「前記アクティベーションコードには前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能期間」、「前記医療用アプリケーションプログラムの利用時間」、「前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能上限数」を選択事項としており、「前記アクティベーションコードには前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能期間」と「前記医療用アプリケーションプログラムの利用時間」が一致点であれば、全体として一致点となる。) (2)小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、先願発明と同一である。 2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について (1)理由2(新規性)について ア 対比 本件発明1と甲2発明とを対比すると、少なくとも、以下の点で両者は相違する。 <相違点> 本件発明1では、医療機関側端末が医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコードを発行しているのに対し、甲2発明では、HCPシステム140は、処方箋にアクセスするためのアクセスコードを提供しているものの、患者アプリケーション300のアクティベーションコードを発行していない点。 イ 判断 上記相違点は実質的な相違点であるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明ではない。 ウ 申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書(以下「申立書」という。)の3(4)イ-1-2において、 「本件特許発明1の構成要件C「医療機関側端末は、医師、又は、医師の診断を代替えするシステムによる患者の診断により特定された患者の疾患あるいは病態に応じて処方された医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコードを発行」することが記載されているが、甲第2号証の(b3)に医療機関側端末に相当する医療専門家(HCP)が特定の疾患又は障害を治療するためのアクティベーションコードに相当するデジタル治療処方箋を患者に提供することが記載されている。」 と主張している。 しかしながら、甲2発明において、「デジタル治療処方箋」自体は、患者アプリケーション300をアクティベートするためのものではないから、本件発明1の「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコード」に相当するものではない。 また、上記「デジタル治療処方箋」にアクセスするための「アクセスコード」も、患者アプリケーション300をアクティベートするためのものではないから、本件発明1の「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコード」に相当するものではない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 エ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2発明ではない。 (2)理由3(進歩性:主引用例が甲第2号証)について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明とを対比すると、少なくとも上記(1)アの<相違点>において相違する。 (イ)判断 上記(1)ウで言及したように、甲2発明における「デジタル治療処方箋」も「アクセスコード」も、本件発明1の「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコード」に相当するものではない。 また、甲2発明において、患者アプリケーション300は、デジタル処方箋とは別に患者に提供されるものであって、どのようにアクティベートされるのかについては甲第2号証には記載されていないし、患者がデジタル処方箋によって治療コンテンツにアクセスできることと患者アプリケーション300がアクティベートされることとは異なることである。 さらに、上記<相違点>に係る構成は、申立人が提出した甲第3号証~甲第7号証にも記載されておらず、課題解決のための具体化手段における微差であるともいえない。 そして、本件発明1は、上記<相違点>に係る構成により、医療機関側端末が医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコードを発行することによって、「医療用アプリの利用可否や利用期間等を容易に設定することができるシステムを提供」(本件特許の明細書の段落【0006】)できるようになるという有利な効果を奏するものである。 (ウ)申立人の主張について 申立人は、申立書の3(4)ウ-1-2において、 「基本的には、イ-1-2で述べた内容の通りであるが、本件特許発明1と甲第2号証との間に差異があったとしても、その差異は、課題解決のための具体化手段における微差にすぎず、本特許発明1は、甲第2号証から容易に想到することができ、進歩性がない。」 と主張している。 しかしながら、上記(イ)のとおりであるから、申立人の主張は採用できない。 (エ)小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲2発明から当業者が容易に想到できる発明ではない。 イ 本件発明2について 本件発明2は本件発明1を引用する発明である。そうすると、本件発明2と甲2発明とは、少なくとも上記(1)アの<相違点>において相違する。 したがって、上記アで本件発明1について検討したのと同様に、本件発明2は、甲2発明と甲第6号証等に記載の一般常識との組み合わせから容易に想到できる発明ではない。 ウ 本件発明3について 本件発明3は本件発明1または本件発明2のいずれかを引用する発明である。そうすると、本件発明3と甲2発明とは、少なくとも上記(1)アの<相違点>において相違する。 したがって、上記アで本件発明1について検討したのと同様に、本件発明3は、甲2発明と甲第7号証等に記載の一般常識との組み合わせから容易に想到できる発明ではない。 (3)理由4(進歩性:主引用例が甲第3号証)について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲3発明とを対比すると、少なくとも、以下の点で両者は相違する。 <相違点> 本件発明1では、医療機関側端末が医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコードを発行しているのに対し、甲3発明では、診断をした医師が、患者が医療機関端末102を操作してコード表示要求を行う際に入力する何らかのキー情報を発行しているものの、治療用アプリのアクティベーションコードを発行していない点。 (イ)判断 a 甲3発明において、診断をした医師が発行する何らかのキー情報は、患者が医療機関端末102に入力するための情報であって、治療用アプリをアクティベートするためのコードではないから、本件発明1の「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコード」に相当するものではない。 b 甲3発明において、患者が当該キー情報を医療機関端末102に入力すると読取コード画像が表示され、治療用アプリのコード読取機能を用いて読取コード画像を読み取ると、システム登録要求情報が治療用アプリから管理用サーバ装置101に送信され、管理用サーバ装置101が、当該要求を行った治療用アプリを正規アプリとして登録するとともに、通信機能の制限を解除しているが、これは、管理用サーバ装置101側の処理として、その患者が当該治療用アプリを使用することを許可しているだけであり、治療用アプリ自体をアクティベートすることとは異なるものである。 したがって、甲3発明の「読取コード画像」も、本件発明1の「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコード」に相当するものではない。 c 甲第4号証には、上記第4の4で摘記した事項が記載されているが、甲第4号証の「ライセンス情報」は、利用者が動画や音楽等のコンテンツにアクセスするための条件であって、コンテンツへのアクセスに用いるアプリケーションをアクティベートするための情報ではないから、本件発明1の「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコード」に対応するものではない。 d 甲第5号証には、上記第4の5で摘記した事項が記載されており、特に「ライセンスを画像形成装置101にインストールすることでアプリケーションの利用が可能となる」と記載されているものの、当該「ライセンス」がどのようなデータであるのかが判然とせず、本件発明1の「前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能期間、前記医療用アプリケーションプログラムの利用時間、または前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能上限数が含まれる」「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコード」に対応するものとはいえない。 e 仮に、甲第4号証に記載の「ライセンス情報」または甲第5号証に記載の「ライセンス」が、本件発明1の「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコード」に対応するものであるとしても、甲第4号証及び甲第5号証には医療用アプリケーションプログラムに関する記載がないから、これらを甲3発明の「キー情報」または「読取コード画像」に適用する動機付けがない。 f 上記<相違点>に係る構成は、申立人が提出した甲第6号証、甲第7号証にも記載されておらず、一般常識との組み合わせから容易に想到できることであるともいえない。 g 本件発明1は、上記<相違点>に係る構成により、医療機関側端末が医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコードを発行することによって、「医療用アプリの利用可否や利用期間等を容易に設定することができるシステムを提供」(本件特許の明細書の段落【0006】)できるようになるという有利な効果を奏するものである。 (ウ)申立人の主張について 申立人は、申立書の3(4)エ-1-2において、 「本件特許発明1の構成要件C「医療機関側端末は、医師、又は、医師の診断を代替えするシステムによる患者の診断により特定された患者の疾患あるいは病態に応じて処方された医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコードを発行」することが記載されているが、甲第3号証の(c3)にアクティベーションコードに相当する、診断をした医師が発行する何らかのキー情報、読み取りコード画像を患者に提供し、通信機能の制限を解除することが記載されている。」 と主張している。 しかしながら、上記(イ)a、bのとおり、甲3発明の「診断をした医師が発行する何らかのキー情報」、「読み取りコード画像」は、本件発明1の「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコード」に相当するものではない。 また、申立人は、同申立書において、 「ここで、本件特許発明1と同じ技術分野(所有者端末と、利用者端末と、ダウンロードするコンテンツのライセンス情報に関する技術分野)の甲第4号証には、 「・・・」(甲第4号証0037段落) と記載され、ライセンス情報に利用可能期間などの情報が含まれることが記載されている。」 「また、本件特許発明1と同じ技術分野に係る甲第5号証には、 「・・・」(甲第5号証0022段落) と記載されている。 つまり、ダウンロードコンテンツの技術分野において、ライセンス情報として、利用可能期限等の情報を含ませることは周知慣用技術であり、本件特許発明1の構成要件Dに記載されたような利用可能期間や、利用時間や利用可能上限数の情報を、甲第3号証の発明のライセンス情報をとしての、キー情報、読み取りコード画像にこれらの周知慣用技術を適用し、本件特許発明1を想到することは当業者には容易だったといえる。」 と主張している。 しかしながら、上記(イ)c~eのとおり、甲第4号証の「ライセンス情報」または甲第5号証の「ライセンス」は、本件発明1の「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコード」に対応するものではなく、また、これらを甲3発明の「キー情報」または「読取コード画像」に適用する動機付けもない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 (エ)小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲3発明と、甲第4号証または甲第5号証と、の組み合わせから容易に想到できる発明ではない。 イ 本件発明2について 本件発明2は本件発明1を引用する発明である。そうすると、本件発明2と甲3発明とは、少なくとも上記ア(ア)の<相違点>において相違する。 したがって、上記アで本件発明1について検討したのと同様に、本件発明2は、甲3発明と、甲第4号証または甲第5号証と、甲第6号証等に記載の一般常識と、の組み合わせから当業者が容易に想到できる発明ではない。 ウ 本件発明3について 本件発明3は本件発明1または本件発明2のいずれかを引用する発明である。そうすると、本件発明3と甲3発明とは、少なくとも上記ア(ア)の<相違点>において相違する。 したがって、上記アで本件発明1について検討したのと同様に、本件発明3は、甲3発明と、甲第4号証または甲第5号証と、甲第7号証等に記載の一般常識と、の組み合わせから当業者が容易に想到できる発明ではない。 (4)理由5(サポート要件違反)について ア 申立人は、申立書の3(4)オ-1-1において、本件発明1の「医療機関側端末と、患者側端末と、サーバからなる医療用システムであって、」について、本件特許の明細書には、本件発明における医療用システムは病院である医療施設101と、人間である患者102とサーバからなることが記載されているにすぎず、医療機関側端末や患者側端末を含むシステムについての記載は存在しないから、この記載は本件特許の明細書に記載されていたとはいえず、発明の詳細な説明によってサポートされているとはいえない旨を主張している。 しかしながら、本件特許の明細書の段落【0012】の「医療施設101の情報処理端末」の記載、段落【0014】の「患者102の端末」の記載、「医療用システム100の実施例のシステム構成例」を示す【図1】内の「医療施設101」及び「患者102」の記載を総合的に参酌すると、本件発明1の「医療用システム」は「医療機関側端末」及び「患者側端末」を含んでいるといえる。 したがって、申立人の主張は採用できない。 イ 申立人は、申立書の3(4)オ-1-2において、本件発明1の「医療機関側端末は、医師、又は、医師の診断を代替えするシステムによる患者の診断により特定された患者の疾患あるいは病態に応じて処方された医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコードを発行し、」について、本件特許の明細書には、医療機関側端末が医師の診断を代替えするシステムによる患者の診断により特定された患者の疾患あるいは病態に応じて処方することは教示も示唆もされていないから、この記載は本件特許の明細書に記載されていたとはいえず、また、医療機関側端末がアクティベートコードを発行することは本件特許の明細書には記載されておらず、本件発明1は発明の詳細な説明によってサポートされているとはいえない旨を主張している。 しかしながら、本件特許の明細書の段落【0002】には、従来技術としてではあるが、「医師の診断、あるいは代替えするシステムの疾患の診断により、患者の疾患あるいは病態が特定され、それらに応じた医療用アプリが処方され、」と記載されており、本件発明は当該従来技術を背景としたものであるから、同明細書の段落【0014】の「医療施設101によって発行されたアクティベートコード」等の記載に基づけば、本件発明1の「医療機関側端末が医師の診断を代替えするシステムによる患者の診断により特定された患者の疾患あるいは病態に応じて処方すること」も「医療機関側端末がアクティベートコードを発行すること」も、発明の詳細な説明に記載されていたことといえる。 また、申立人は、本件発明1において、処方箋とアクティベーションコードがいかなる関係を有するものなのかについても記載がない旨を主張している。 しかしながら、同明細書の段落【0007】の「(5)前記アクティベーションコードは医療機関で発行される処方箋情報に含まれる」の記載、段落【0017】の「次に、患者102が医療施設を訪問し、アクティベートコードを含む処方箋を取得する。」の記載、段落【0018】の「その代わりに本実施例の処方箋には本人の識別情報を含むアクティベートコードが含まれ」の記載から、処方箋にアクティベーションコードが含まれるという関係であることが明らかである。 したがって、申立人の主張は採用できない。 ウ 申立人は、申立書の3(4)オ-1-3において、本件発明1の「前記アクティベーションコードには前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能期間、前記医療用アプリケーションプログラムの利用時間、または前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能上限数が含まれることを特徴とするシステム」について、「利用時間」については本件特許の明細書に記載された事項ではないから、この記載は本件特許の明細書に記載されていたとはいえず、発明の詳細な説明によってサポートされているとはいえない旨を主張している。 しかしながら、本件特許の明細書の段落【0013】には「また、アプリを利用する推奨時間情報を含ませ(例えば、医薬品で言えば、朝食後、昼食後、夕食後、寝る前などといった服用時間に対応する情報)、」と記載されており、当該「推奨時間情報」は、アプリを利用することが推奨される時間の情報であって、服用時間に対応する情報であるから、これは本件発明1の「利用時間」の情報に対応するといえる。 したがって、申立人の主張は採用できない。 エ 申立人は、申立書の3(4)オ-2において、本件発明2の「前記ダウンロード時に患者側端末に対して費用を課金し、医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用を支払う」について、本件特許の明細書には、ダウンロード時に患者側端末に課金すること及びアプリメーカーに費用を支払うことは記載されていないから、この記載は本件特許の明細書に記載されていたとはいえず、発明の詳細な説明によってサポートされているとはいえない旨を主張している。 しかしながら、本件特許の明細書の段落【0015】には「本発明のシステムでは患者102がダウンロードした際にサーバ103で本人負担分を患者102に課金し、サーバ103は必要に応じてサーバ103の利用料を減算した料金をアプリメーカー104に支払う。」と記載されており、「本人負担分を患者102に課金」することは、患者102が利用する患者側端末に課金することに対応し、「サーバ103の利用料を減算した料金をアプリメーカー104に支払う」ことは、アプリメーカーに費用を支払うことに対応するから、発明の詳細な説明には、患者側端末に課金すること及びアプリメーカーに費用を支払うことが記載されているといえる。 したがって、申立人の主張は採用できない。 オ 申立人は、申立書の3(4)オ-3において、本件発明3の「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーション時点、あるいは、医療用アプリケーションプログラムの処方の完了時に」健康保険組合に通知を行うことは本件特許の明細書に記載されていないから、この記載は本件特許の明細書に記載されていたとはいえず、発明の詳細な説明によってサポートされているとはいえない旨を主張している。 しかしながら、本件特許の明細書の段落【0014】には「また、医療施設から電子カルテ情報(特に、処方の有無)がサーバ103に送付され、電子カルテでの処方情報と、患者102からのダウンロード要求とが対になったときに処方が完了されたとシステムでは判断する。または、医療用アプリがアクティベーションされたことをサーバまたは医療施設101に通知するようにして判断する、あるいは、サーバ103から医療施設101にダウンロードの事実を通知して処方完了を判断するようにしてもよい。」と記載されているから、本件発明3の「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーション時点、あるいは、医療用アプリケーションプログラムの処方の完了時」は、処方の完了が判断された時点といえ、また、同明細書の段落【0015】には「そこで、上述の処方の完了が判断された時点で、本人の課金手続きを実施し、および/また、健康保険組合に通知を行うようにしてもよい。」と記載されているから、その時点で健康保険組合に通知を行うことは発明の詳細な説明に記載されているといえる。 したがって、申立人の主張は採用できない。 カ 小括 上記ア~オから、本件発明1~3は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、サポート要件違反を理由とする申立人の主張には理由がない。 (5)理由6(明確性要件違反)について ア 申立人は、申立書の3(4)カ-1-1において、本件発明1の「医療機関側端末と、患者側端末と、サーバからなる医療用システムであって、」について、医療用システム100の医療施設101、患者102、サーバ103がいかなる装置やネットワークなどによって接続されたものかについての記載もなく、どのように接続されたシステムなのか不明確である旨を主張している。 しかしながら、上記(4)アで検討したのと同様に、本件特許の明細書の記載から、「医療用システム100」は「医療施設101の情報処理端末」と「患者102の端末」と「サーバ」を含むものであり、本件特許の出願時の技術常識を勘案すれば、それらが何らかの装置やネットワークなどによって接続されたものであることが明らかであるから、本件発明1の「医療機関側端末と、患者側端末と、サーバからなる医療用システム」が不明確であるとはいえない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 イ 申立人は、申立書の3(4)カ-1-2において、本件発明1の「医療機関側端末は、医師、又は、医師の診断を代替えするシステムによる患者の診断により特定された患者の疾患あるいは病態に応じて処方された医療用アプリケーションプログラムのアクティベーションコードを発行し、」について、本件特許の明細書の詳細な説明においては、「アクティベーションコード」という用語は用いられておらず、「アクティベートコード」という用語が用いられており、これらの用語がいかに技術的に使い分けられているのか不明確である旨を主張している。 しかしながら、本件特許の明細書の全体を参酌すれば、本件発明1の「アクティベーションコード」と同明細書中の「アクティベートコード」とが同じものを指していることが明らかである。 また、申立人は、アクティベーションコードは患者側の情報処理端末で当該コードを解読する機能を持っていないと実用できないと思われるが情報処理端末でいかに処理されるのか不明確である旨を主張している。 しかしながら、本件特許の明細書の段落【0012】に「本実施例で用いる医療用アプリは特定の疾患の治療目的、特定の疾患の補助的な目的などで使われるようにプログラミングされており、アクティベートコードの入力で利用可能となるように構成されている。アプリにおける利用の可否の制御は当業者に周知なプログラミング技法で実行することができる。」と記載されているように、アクティベーションコードを患者側の情報処理端末で何らかの方法で入力して、アプリにおける利用の可否の制御を行うことは、本件特許の出願時の周知技術といえるから、アクティベーションコードが情報処理端末でいかに処理されるのかが不明確であるとはいえない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 ウ 申立人は、申立書の3(4)カ-1-3において、本件発明1の「利用可能期間情報」がいかなるものか不明確である旨を主張している。 しかしながら、本件特許の明細書の段落【0011】に「利用可能期間情報の含まれていない医療用アプリに対するアクティベートコードは少なくとも処方期間情報(例えば、アクティベート日から2週間、1か月など)を含み」と記載されているように、「利用可能期間情報」は、文字どおり、患者がその医療用アプリを利用可能である期間の情報という意味で明確である。 また、申立人は、本件発明1の「医療用アプリケーションプログラムの利用時間」について、「利用時間」という用語で、利用する時刻を指すのか、あるいは利用している時間を指すのか不明確である旨を主張している。 しかしながら、当該「利用時間」は、同明細書の段落【0013】の「アプリを利用する推奨時間情報を含ませ(例えば、医薬品で言えば、朝食後、昼食後、夕食後、寝る前などといった服用時間に対応する情報)」の「アプリを利用する推奨時間」に対応しているといえ、また、医療用アプリを利用するより前には「利用している時間」の情報を含ませることはできないから、「利用時間」は「利用している時間」ではなく「利用する時刻」を意味することが明らかである。 さらに、申立人は、本件発明1の「利用可能上限数」について、一日の回数なのか集計した回数なのかなども理解できずに、この記載がいかなるものなのか理解ができず、不明確である旨を主張している。 しかしながら、同明細書の段落【0013】の「アプリに利用回数を記憶するメモリを設け、患者によるアプリの利用ごとにメモリ内の利用回数を更新するように構成し、アプリの利用可能上限回数の情報をアクティベートコードに含ませ、実際の利用回数とアクティベートコードで指定された上限回数を比較し、利用可能上限回数に達したらアプリの利用を制限するようにしてもよい。」との記載から、「集計した回数」を意味することが明らかである。 なお、申立人は、同明細書に、アプリに物理的なメモリを設けてカウントすることが記載されていること、このメモリを持たない構成をも含むことからいかにこの構成が実現できるか不明確である旨を主張しているが、本件発明1ではアプリに物理的なメモリを設けてカウントすることは特定されていないし、アプリがカウント専用の物理的なメモリなしでカウントすることができることも技術常識であるから、この点において本件発明1が不明確であるとはいえない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 エ 申立人は、申立書の3(4)カ-2において、本件発明2の「前記ダウンロード時に患者側端末に対して費用を課金し、医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用を支払う」について、保険の負担額は一般的に健康保険組合によって異なるのでいかに本件発明2でこの負担率が決定されそれに基づいて、課金されるのか不明確である旨を主張しているが、保険の負担率は、健康保険組合ごと異なる負担額の応じて適宜の方法で決定すればよいだけのことであるから、この点において本件発明2が不明確であるとはいえない。 また、申立人は、費用を患者端末に課金して、アプリメーカーに費用を支払うということが技術的にいかなる処理を指すのか不明確である旨を主張しているが、サーバが患者側から得た金銭の一部をアプリメーカーに支払うという意味で、当該処理は明確である。 さらに、申立人は、アプリストアはユーザの端末に課金しないで登録したクレジットカードなどに対して課金するのでいかに課金が行われるのか不明確である旨を主張しているが、「課金」とは、そこから直接金銭を得ることに限られないため、ユーザの端末に課金するという処理が、例えばその端末のユーザに対して金銭を請求することを含むことは技術常識といえ、この点において本件発明2が不明確であるとはいえない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 オ 申立人は、申立書の3(4)カ-3において、本件発明3の「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーション時点、あるいは、医療用アプリケーションプログラムの処方の完了時にサーバから健康保険組合へ通知を行い、通知結果に基づいて前記健康保険組合から医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用の支払いが行われる」について、いかにアクティベーションされたことをサーバが認識するか、その構成が不明確である旨を主張している。 しかしながら、例えば、本件特許の明細書の段落【0014】の「または、医療用アプリがアクティベーションされたことをサーバまたは医療施設101に通知するようにして判断する、あるいは、サーバ103から医療施設101にダウンロードの事実を通知して処方完了を判断するようにしてもよい。」との記載のように、医療用アプリ自身がアクティベーションされたことをサーバに通知するようにしてもよいから、この点において本件発明3が不明確であるとはいえない。 また、申立人は、医療施設101とサーバがいかに接続されるか記載がないので、どのように医療用アプリケーションプログラムの処方の完了時を認識するのか、その構成が不明確である旨を主張している。 しかしながら、同明細書の段落【0014】の「また、医療施設から電子カルテ情報(特に、処方の有無)がサーバ103に送付され、電子カルテでの処方情報と、患者102からのダウンロード要求とが対になったときに処方が完了されたとシステムでは判断する。または、医療用アプリがアクティベーションされたことをサーバまたは医療施設101に通知するようにして判断する、あるいは、サーバ103から医療施設101にダウンロードの事実を通知して処方完了を判断するようにしてもよい。」との記載は、医療用アプリ自身がアクティベーションされたことをサーバに通知し、その通知を受けたサーバが処方が完了されたと判断することを意味しており、医療施設101とサーバがいかに接続されていようとも、サーバは医療用アプリケーションプログラムの処方の完了時を認識できるから、この点において本件発明3が不明確であるとはいえない。 さらに、申立人は、「サーバから健康保険組合へ通知を行い、通知結果に基づいて前記健康保険組合から医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用の支払いが行われる」ことがこのシステムを構成する関係者によっていかに実行されるか不明確である旨を主張している。 しかしながら、同明細書の段落【0015】の「そこで、上述の処方の完了が判断された時点で、本人の課金手続きを実施し、および/また、健康保険組合に通知を行うようにしてもよい。健康保険組合ではこの通知をそこに含まれるサーバで電子的に受信し、随時または所定の期間ごとに集計された金額をアプリメーカー104に支払うようにしてもよい。」の記載から、「サーバから健康保険組合へ通知を行い、通知結果に基づいて前記健康保険組合から医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用の支払いが行われる」ことは、サーバの動作として理解できるから、この点において本件発明3が不明確であるとはいえない。 さらに、申立人は、「サーバから健康保険組合へ通知を行い、通知結果に基づいて」との記載があるがいかなる通知結果であるかが不明確である旨を主張している。 しかしながら、同明細書の段落【0015】の「本発明のシステムでは患者102がダウンロードした際にサーバ103で本人負担分を患者102に課金し、サーバ103は必要に応じてサーバ103の利用料を減算した料金をアプリメーカー104に支払う。残りの費用についてはサーバ103から健康保険組合(図示しない)に通知し、健康保険組合からアプリメーカー104に支払う。」の記載から、上記「通知結果」は、例えば、健康保険組合が「残りの費用」をアプリメーカー104に支払うために必要な情報であると理解できるから、この点において本件発明3が不明確であるとはいえない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 カ 小括 上記ア~オから、本件発明1~3は、不明確であるとはいえず、明確性要件違反を理由とする申立人の主張には理由がない。 (6)理由7(実施可能要件違反)について ア 申立人は、申立書の3(4)キ-1において、本件発明1の「前記アクティベーションコードには前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能期間、前記医療用アプリケーションプログラムの利用時間、または前記医療用アプリケーションプログラムの利用可能上限数が含まれること」について、これらの事項が請求項の構成によっていかに処理され、いかなる効果を奏するのか当業者といえども理解できない旨を主張している。 しかしながら、本件特許の明細書の段落【0012】の「本実施例で用いる医療用アプリは特定の疾患の治療目的、特定の疾患の補助的な目的などで使われるようにプログラミングされており、アクティベートコードの入力で利用可能となるように構成されている。アプリにおける利用の可否の制御は当業者に周知なプログラミング技法で実行することができる。利用可能期間情報の含まれていない医療用アプリに対するアクティベートコードは少なくとも処方期間情報(例えば、アクティベート日から2週間、1か月など)を含み、また、利用可能期間情報の含まれている医療用アプリ(例えば、1か月用アプリなど)に対するアクティベートコードは少なくとも始期に関する情報(例えば、2020年11月3日)を含む。これらのアクティベートコードによって利用期間が定義され、利用期間期間経過後は少なくともアプリの治療機能の一部が利用不可となるように構成されている。利用可能期間の範囲内か、範囲外かは、利用期間として設定された日時情報と、端末内の時計の日時情報やネットワークを介して取得される日時情報とを比較して判断される。」との記載及び段落【0013】の「さらに、アプリに利用回数を記憶するメモリを設け、患者によるアプリの利用ごとにメモリ内の利用回数を更新するように構成し、アプリの利用可能上限回数の情報をアクティベートコードに含ませ、実際の利用回数とアクティベートコードで指定された上限回数を比較し、利用可能上限回数に達したらアプリの利用を制限するようにしてもよい。」との記載から、本件発明1における「アクティベーションコード」に含まれた「医療用アプリケーションプログラムの利用可能期間」、「医療用アプリケーションプログラムの利用時間」、「医療用アプリケーションプログラムの利用可能上限数」は、医療用アプリをアクティベートコードの入力で利用可能とする際に、端末内の時計の日時情報、ネットワークを介して取得される日時情報、メモリ内のアプリの利用回数と比較することによって、アプリにおける利用の可否の制御を行ったり、アプリの治療機能の一部が利用不可となるように制御するために用いられるものであると理解できる。 また、申立人は、本件特許の明細書の詳細な説明ではアクティベートコードなる用語が用いられており、このアクティベーションコードといかなる関係があるのかも不明確であり、さらにアクティベートコードと処方箋の関連も不明確である旨を主張している。 しかしながら、上記(5)イで検討したとおり、「アクティベートコード」と「アクティベーションコード」とが同じものを指すことは明らかであり、また、上記(4)イで検討したとおり、処方箋にアクティベーションコードが含まれるという関係であることが明らかである。 そして、上記のとおり、「アクティベーションコード」に「医療用アプリケーションプログラムの利用可能期間」、「医療用アプリケーションプログラムの利用時間」、「医療用アプリケーションプログラムの利用可能上限数」を含ませることにより、「医療用アプリの利用可否や利用期間等を容易に設定することができるシステムを提供する」ことが実現できているといえる。 したがって、申立人の主張は採用できない。 イ 申立人は、申立書の3(4)キ-2において、本件発明2の「前記ダウンロード時に患者側端末に対して費用を課金し、医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用を支払う」について、課金する主体、支払う主体が特定されておらず、また、課金と支払いにどのような関連があるかも当業者といえども理解できない旨を主張している。 しかしながら、本件特許の明細書の段落【0015】の「本発明のシステムでは患者102がダウンロードした際にサーバ103で本人負担分を患者102に課金し、サーバ103は必要に応じてサーバ103の利用料を減算した料金をアプリメーカー104に支払う。」の記載から、サーバが主体となる処理として、患者に対して課金するとともに、アプリメーカーに料金(費用)を支払うことが明らかであり、また、患者への課金で取得した料金の一部をアプリメーカーに支払うという関係であることも理解できる。 したがって、申立人の主張は採用できない。 ウ 申立人は、申立書の3(4)キ-3において、本件発明3の「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーション時点、あるいは、医療用アプリケーションプログラムの処方の完了時にサーバから健康保険組合へ通知を行い、通知結果に基づいて前記健康保険組合から医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用の支払いが行われる」について、いかにサーバから健康保険組合へ通知が行われ、どのような通知結果に基づいて費用の支払いが行われるかについて本件特許の明細書に記載されていない旨を主張している。 しかしながら、本件特許の明細書の段落【0015】の「本発明のシステムでは患者102がダウンロードした際にサーバ103で本人負担分を患者102に課金し、サーバ103は必要に応じてサーバ103の利用料を減算した料金をアプリメーカー104に支払う。残りの費用についてはサーバ103から健康保険組合(図示しない)に通知し、健康保険組合からアプリメーカー104に支払う。・・・そこで、上述の処方の完了が判断された時点で、本人の課金手続きを実施し、および/また、健康保険組合に通知を行うようにしてもよい。健康保険組合ではこの通知をそこに含まれるサーバで電子的に受信し、随時または所定の期間ごとに集計された金額をアプリメーカー104に支払うようにしてもよい。」の記載から、サーバから健康保険組合へ「電子的に」通知が行われ、「残りの費用」の情報を含む「通知」に基づいて、健康保険組合からアプリメーカーに費用の支払いが行われることが理解できる。 したがって、申立人の主張は採用できない。 エ 小括 上記ア~ウから、本件特許の明細書は、当業者が本件発明1~3に係る発明を実施することができる程度に必要かつ十分に記載されたものではないとはいえず、実施可能要件違反を理由とする申立人の主張には理由がない。 (7)理由8(発明該当性違反)について 申立人は、申立書の3(4)クにおいて、本件発明2の「前記ダウンロード時に患者側端末に対して費用を課金し、医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用を支払う」及び本件発明3の「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーション時点、あるいは、医療用アプリケーションプログラムの処方の完了時にサーバから健康保険組合へ通知を行い、通知結果に基づいて前記健康保険組合から医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用の支払いが行われる」について、自然法則を利用した技術的思想の創作に該当せず、人為的に行われる手続きであるので、産業上利用することができる発明ではない旨を主張している。 しかしながら、そもそも、本件発明1は発明該当性違反を理由とする対象ではない。つまり、本件発明1は、自然法則を利用した技術的思想の創作に該当し、産業上利用することができる発明であることは申立人も認めている。 そのうえで、申立人の主張する本件発明2の「前記ダウンロード時に患者側端末に対して費用を課金し、医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用を支払う」及び本件発明3の「医療用アプリケーションプログラムのアクティベーション時点、あるいは、医療用アプリケーションプログラムの処方の完了時にサーバから健康保険組合へ通知を行い、通知結果に基づいて前記健康保険組合から医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用の支払いが行われる」との事項が、仮に、人為的に行われる手続きであるとして、発明を構成する一部にそのような事項が特定されていたとしても、発明が全体として自然法則を利用していると判断される場合には、当該発明は自然法則を利用したものとなる。 したがって、本件発明2、3は、自然法則を利用した発明であり、産業上利用することができる発明である なお、申立人の主張する本件発明2及び本件発明3の各事項についても検討する。 本件発明2において、「費用を課金し」及び「費用を支払う」との記載は末尾の「システム」を特定する記載となっており、本件発明2が引用する本件発明1の「医療機関側端末と、患者側端末と、サーバからなる医療用システムであって、」の記載及び本件特許の明細書の段落【0015】の「本発明のシステムでは患者102がダウンロードした際にサーバ103で本人負担分を患者102に課金し、サーバ103は必要に応じてサーバ103の利用料を減算した料金をアプリメーカー104に支払う。」の記載から、本件発明2の「前記ダウンロード時に患者側端末に対して費用を課金し、医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用を支払う」との記載は、「医療用システム」のうちの「サーバ」の処理を意味していると理解できる。 してみると、本件発明2における当該処理は、人為的に行われる手続きではなく、自然法則を利用した技術的思想の創作に該当するといえる。 また、本件発明3の「サーバから健康保険組合へ通知を行い」との記載は、「医療用システム」のうちの「サーバ」の処理を意味していることが明らかである。 他方、「通知結果に基づいて前記健康保険組合から医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用の支払いが行われる」との記載は、サーバの処理を意味しているのではなく、サーバから健康保険組合へ行われる「通知」について、その通知の結果に基づいて「前記健康保険組合から医療用アプリケーションプログラムを作成するメーカーであるアプリメーカーに費用の支払いが行われる」ものであることを特定するための記載である。 すなわち、本件発明3は、サーバが、上記のように特定された「通知」を健康保険組合へ行うものであるから、サーバによる当該処理は、人為的に行われる手続きではなく、自然法則を利用した技術的思想の創作に該当するといえる。 したがって、申立人の主張は採用できず、本件発明2、3は、自然法則を利用した発明であり、産業上利用することができる発明である。 第6 むすび 以上のとおり、本件発明1に係る特許は、特許法第29条の2の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 また、本件発明2、3に係る特許は、特許異議申立書に記載された申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に本件発明2、3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700631

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