特許異議申立
2024-700719
薬情出力システム、サーバ及びプログラム
- 審判番号
- 2024-700719
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-017930
- 登録番号
- 7430828
- 請求日
- 2024年07月29日
- 審決日
- 2024年10月02日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】東日本メディコム株式会社
- 【権利者代理人】坊野 康博
- 【権利者代理人】仲野 孝雅
- 【異議申立人】IPセイル 合同会社
- 審判長/審判官
- 審判長 松田 直也
- 審判官 梶尾 誠哉
- 審判官 田中 寛人
- 分類
- P1651.55 -Y (G16H) / P1651.537-Y (G16H) / P1651.113-Y (G16H) / P1651.121-Y (G16H)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第17条の2第3項、特許法第36条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7430828号発明「薬情出力システム、サーバ及びプログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7430828号の請求項1~7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7430828号の請求項1~7に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成26年3月12日に出願した特願2014-48842号の一部を新たな特許出願(特願2016-47234号:第1世代)とし、その一部を新たな特許出願(特願2018-12030号:第2世代)とし、その一部を新たな特許出願(特願2020-72538号:第3世代)とし、その一部を新たな特許出願(特願2021-83490号:第4世代)とし、その一部を令和5年2月8日に新たな特許出願(特願2023-17930号:第5世代)としたものであって、同年3月10日に手続補正がされ、令和6年2月2日にその特許権の設定登録がされ、同年2月13日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、同年7月29日に特許異議申立人 IPセイル合同会社(以下、「異議申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~7に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明7」といい、併せて「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。なお、請求項1に記載された構成要件「1A」~「1E」は、異議申立人が異議申立書で付与したものであり、本決定でも採用した。
「【請求項1】
1A ネットワークを介して通信可能に構成された端末装置とサーバとを含む薬情出力システムであって、
前記サーバは、
1B 前記ネットワークを介して受信した患者の処方箋の情報と、前記処方箋よりも過去の処方箋の情報との間の変化に基づいて、薬剤が変更したこと及び前記薬剤の変更の種別を示す変更種別を特定する特定手段と、
1C 前記特定手段による特定に基づいて、薬剤が変更したこと及び前記薬剤の変更種別を示す薬剤変更表示であって、前記変更前の薬剤から前記変更後の薬剤への変化の内容を説明する表示を含ませた薬剤変更表示を含む薬情のデータを前記端末装置に送信する薬情送信手段と、
を備え、
1D 前記端末装置は、
前記サーバから送信された前記薬情のデータを表示部に表示又は薬情書面に印刷させる薬情出力手段を備えることを特徴とする 1E 薬情出力システム。
【請求項2】
前記薬情送信手段は、前記変化の内容の説明を、前記特定手段により特定された変更種別に対応した説明とする、
ことを特徴とする請求項1に記載の薬情出力システム。
【請求項3】
前記薬情送信手段は、前記特定手段により特定された変更種別が、剤型が異なる薬剤に変更されたという種別である場合に、前記変化の内容の説明に、変更前の薬剤の剤型と変更後の剤型を示す内容を含ませる、
ことを特徴とする請求項2に記載の薬情出力システム。
【請求項4】
前記薬情送信手段は、前記特定手段により特定された変更種別が、ジェネリック医薬品に変更されたという種別である場合に、前記変化の内容の説明に、変更前の薬剤と価格が異なることを示す内容を含ませる、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の薬情出力システム。
【請求項5】
前記薬情送信手段は、前記特定手段により特定された変更種別が、成分が異なる薬剤に変更されたという種別である場合に、前記変化の内容の説明に、変更前の薬剤と、効果又は安全性に差異があることを示す内容を含ませる、
ことを特徴とする請求項2乃至4の何れか1項に記載の薬情出力システム。
【請求項6】
ネットワークを介して通信可能に構成された端末装置とサーバとを含む薬情出力システムを構成するサーバであって、
前記ネットワークを介して受信した患者の処方箋の情報と、前記処方箋よりも過去の処方箋の情報との間の変化に基づいて、薬剤が変更したこと及び前記薬剤の変更の種別を示す変更種別を特定する特定手段と、
前記特定手段による特定に基づいて、薬剤が変更したこと及び前記薬剤の変更種別を示す薬剤変更表示であって、前記変更前の薬剤から前記変更後の薬剤への変化の内容を説明する表示を含ませた薬剤変更表示を含む薬情のデータを前記端末装置に送信する薬情送信手段と、
を備え、
前記端末装置において前記薬情のデータを表示又は印刷させることを特徴とするサーバ。
【請求項7】
ネットワークを介して通信可能に構成された端末装置とサーバとを含む薬情出力システムにおけるサーバを構成するコンピュータに、
前記ネットワークを介して受信した患者の処方箋の情報と、前記処方箋よりも過去の処方箋の情報との間の変化に基づいて、薬剤が変更したこと及び前記薬剤の変更の種別を示す変更種別を特定する特定機能と、
前記特定機能による特定に基づいて、薬剤が変更したこと及び前記薬剤の変更種別を示す薬剤変更表示であって、前記変更前の薬剤から前記変更後の薬剤への変化の内容を説明する表示を含ませた薬剤変更表示を含む薬情のデータを前記端末装置に送信する薬情送信機能と、
を実現させ、
前記端末装置において前記薬情のデータを表示又は印刷させることを特徴とするプログラム。」
第3 申立理由の概要
1 異議申立人の提出した証拠
異議申立人は、次の甲第1号証及び甲第2号証(以下、それぞれ、「甲1」及び「甲2」という。)を証拠として提出している。
甲第1号証(甲1):特開2002-259564号公報
甲第2号証(甲2):特開2003-150711号公報
2 特許異議の申立理由
異議申立人の主張する特許異議の申立理由の概要は以下のとおりである。
(1) 理由1(新規事項の追加)
本件特許に係る出願について、令和5年3月10日に提出された手続補正書における特許請求の範囲の補正(以下、「本件補正」という。)は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「出願当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではないから、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(2) 理由2(サポート要件)
本件発明は、本件特許についての願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明に記載したものではないから、本件特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(3) 理由3(新規性)
本件発明1、2、6及び7は、甲1に記載された発明であるから、本件特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものである。
(4) 理由4(進歩性)
本件発明は、甲1に記載された発明、あるいは、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
第4 異議申立人の提出した証拠の記載
1 甲1について
(1) 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある(下線は当審において加筆した。以下同じ。)。
「【請求項1】 複数の患者の処方箋内容を各患者のIDと関連付けて記録しておくための患者データベースと、
各患者から受け付けた処方箋の内容を前記患者データベースに入力して各患者IDと関連付けて記録しておくための処方箋内容入力手段と、
各患者の次回の処方箋受付予定日を前記患者データベースに入力して前記患者IDと関連付けて記録しておくための次回受付予定日入力手段と、
前記患者データベースに記録された次回の処方箋受付予定日と前記患者データベースに記録された過去の直近の処方箋内容とに基づいて、各患者毎の予製調剤内容を出力するための予製調剤内容出力手段と、
前記予製調剤内容出力手段により出力された予製調剤内容に基づいて予製された薬が保管されている予製箱を識別するための予製箱IDを、前記患者データベースに入力し前記患者IDと関連付けて記録しておくための予製箱ID入力手段と、
患者が実際に来局したとき、前記患者IDに基づいて、前記患者データベースから前記予製調剤内容と前記予製箱IDとを表示するための予製データ表示手段と、
患者が実際に来局したとき、前記患者IDに基づいて前記患者データベースから呼び出した前記予製調剤内容と前記患者の今回の処方箋内容とを照合し、その照合結果を表示するための照合結果表示手段と、を備えたことを特徴とする調剤処理システム。
【請求項2】 請求項1において、前記患者データベースは、個々の院外薬局とは遠隔の地にあるセンターのコンピュータに接続された記録装置に記録されており、
前記処方箋内容入力手段、前記次回受付予定日入力手段、及び、前記予製箱ID入力手段は、院外薬局側の端末からネットワークを介して前記センター側の前記患者データベースに情報を入力するのものであり、
前記予製調剤内容出力手段、前記予製データ表示手段、及び、前記照合結果表示手段は、前記センター側の前記患者データベース内の情報をネットワークを介して院外薬局側の端末に取り込んで紙又はディスプレイ画面に出力するものである、ことを特徴とする調剤処理システム。」
「【0002】
【従来の技術】従来より、院外薬局では、医療機関が発行した処方箋に基づいて、レセプトコンピュターに、患者名、診療科名、処方すべき薬剤の名称及びその服用日数・服用量などの処方箋の内容を入力し、これらのデータを基に、個々の患者ごとの調剤指示箋、服用する薬の情報を示す紙(薬情書)、薬袋(薬剤の名称や服用方法などが印刷されている)、薬歴簿などを発行するようにしている。」
「【0013】また、本発明の調剤処理用コンピュータプログラムは、複数の患者の処方箋の内容を各患者のIDと関連付けて患者データベースとして記録しておく機能と、各患者から受け付けた処方箋の内容を前記患者データベースに入力して各患者IDと関連付けて記録しておくと共に、各患者の次回の処方箋受付予定日を前記患者データベースに入力して各患者IDと関連付けて記録しておく機能と、前記患者データベースに記録された次回の受付予定日と前記患者データベースに記録された最新の処方箋内容とに基づいて、各患者ID毎に予製調剤内容を出力する機能と、この出力した予製調剤内容に基づく予製調剤により得られた薬を各患者毎に保管しておく予製箱を識別する予製箱IDを前記患者データベースに入力して前記患者IDと関連付けて記録しておく機能と、患者が実際に来局したとき、前記患者IDに基づいて前記患者データベースから前記予製調剤内容と前記予製箱IDとを画面に表示すると共に、前記患者IDに基づいて前記患者データベースから呼び出した前記予製調剤内容と前記患者の今回の処方箋内容とを照合してその照合結果を画面に表示する機能と、を実現させるためのものである。なお、本発明のプログラムは、例えば、コンピュータのハードディスクなどの記録媒体に記録されてCPUにより実行されるものであり、また、ASP(アプリケーションサービスプロバイダ)によりインターネットなどのネットワーク経由でユーザー側の情報端末に送信(譲渡・貸与)されるものである。」
「【0015】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施形態1を説明するための概略ブロック図である。図1において、1は、患者ID、患者名、病名、各処方箋の内容などを各患者毎に異なる患者IDと関連付けて記録しておくための患者データベースである。この患者データベースは、個々の院外薬局に設置されたコンピュータに接続された記録装置に記録されていてもよいが、個々の院外薬局のコンピュータにネットワークを介して接続された遠隔のセンターのサーバーに記録されていてもよい。」
「【0017】また、図1において、3はイメージ・テキスト変換部で、前記処方箋のイメージデータ入力部2から入力されたイメージデータの文字部分をテキストデータに変換するためのものである。前記処方箋のイメージデータには、患者ID(例えば10桁の数字などで構成される)、患者名、病名、病院名、薬剤の名称、服薬量などの文字が掲載されているので、前記イメージ・テキスト変換部3により、これらの文字画像データをテキストデータに変換し、前記のテキストデータとしての患者名、病名、病院名、薬剤の名称、服薬量・薬品の配置棚番号用法・患者の注意事項などを、前記のテキストデータとしての患者ID及び処方箋受付日(処方箋データ入力日)と関連付けて、前記患者データベース1に記録する。また、前記処方箋のイメージデータ入力部2からの処方箋のイメージデータも、前記の患者ID及び処方箋受付日と関連付けて、前記患者データベース1に記録する。」
「【0025】また、図1において、10は、前記調剤手順出力指示部7からの指示信号(患者IDを含む)に基づいて、前記患者データベース1から、該当する患者の今回処方箋の内容と前回処方箋の内容(予製の元になったデータ)とを引き出して、両者の内容を比較・照合するための照合部、11は、前記照合部10からの出力に基づいて、前記照合部10による照合結果を画面に表示するための照合結果表示部である。前記照合結果表示部11は、例えば、今回処方箋のテキストデータと次回処方箋のテキストデータとを画面に表示し、双方が異なっている部分があるときは、その部分について、例えば、赤色などで着色して強調表示することにより、前記照合結果を表示するようにしている。」
「【0034】その後、院外薬局のスタッフは、前記の来局した患者の患者IDに基づいて、調剤手順の出力を図1のシステムに指示する(ステップS14)。図1のシステムは、ステップS14の調剤手順出力の指示が入力されると、図1のシステムは、院外薬局のスタッフが使用する端末のディスプレイ画面に、今回新たに入力した今回処方箋のデータ、予製データ(前記の予製箱IDや前回処方箋データなどから構成されるデータ)、及び、今回処方箋データと予製に使用された前回処方箋データとの照合結果(図1の照合部10による照合結果)を表示する(ステップS15)。
【0035】図4は、前記ステップS15における今回処方箋データの表示画面の一例を示すものである。図4の画面例では、画面の右側に患者IDその他の今回処方箋のテキストデータが表示され、画面の右側に今回処方箋のイメージデータが表示されている。また、前記ステップS15における予製データの表示は、前回処方箋のテキストデータなどを画面表示することにより行われる。また、前記ステップS15における照合結果の表示は、例えば、前回処方箋の内容と今回処方箋の内容との間で不一致部分があればその部分を赤色などで着色して強調表示することなどにより行われる。」
(2) 甲1発明
ア 上記【0002】によれば、上記【請求項2】における「紙」は「薬情書」であって、「紙(薬情書)」ということができる。
イ 上記【請求項2】によれば、「前記患者データベースは、個々の院外薬局とは遠隔の地にあるセンターのコンピュータに接続された記録装置に記録されて」いるところ、上記【0015】によれば、「患者データベース」は、「遠隔の地にあるセンターのサーバに記録されて」いるということができる(なお、甲1には「サーバー」と記載されているが、本件発明との対比の便宜のため、以降、「サーバ」と記載する。)。
ウ 上記【0025】によれば、「照合結果表示部11」は「今回処方箋のテキストデータと次回処方箋のテキストデータとを画面に表示し、双方が異なっている部分があるときは、その部分について、例えば、赤色などで着色して強調表示する」ものである。また、上記【0035】によれば、「照合結果の表示」は「前回処方箋の内容と今回処方箋の内容との間で不一致部分があればその部分を赤色などで着色して強調表示する」ことによって行われるものである。
そうすると、上記【請求項2】の「照合結果表示手段」は、「前回処方箋の内容と今回処方箋の内容との間で不一致部分があればその部分を赤色などで着色して強調表示する」ものであるということができる。
エ 上記【0017】によれば、上記【請求項2】の「処方箋の内容」は「薬剤の名称」を含んでいる。
以上によれば、甲1には次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
[甲1発明]
複数の患者の薬剤の名称を含む処方箋内容を各患者のIDと関連付けて記録しておくための患者データベースと、
各患者から受け付けた処方箋の内容を前記患者データベースに入力して各患者IDと関連付けて記録しておくための処方箋内容入力手段と、
各患者の次回の処方箋受付予定日を前記患者データベースに入力して前記患者IDと関連付けて記録しておくための次回受付予定日入力手段と、
前記患者データベースに記録された次回の処方箋受付予定日と前記患者データベースに記録された過去の直近の処方箋内容とに基づいて、各患者毎の予製調剤内容を出力するための予製調剤内容出力手段と、
前記予製調剤内容出力手段により出力された予製調剤内容に基づいて予製された薬が保管されている予製箱を識別するための予製箱IDを、前記患者データベースに入力し前記患者IDと関連付けて記録しておくための予製箱ID入力手段と、
患者が実際に来局したとき、前記患者IDに基づいて、前記患者データベースから前記予製調剤内容と前記予製箱IDとを表示するための予製データ表示手段と、
患者が実際に来局したとき、前記患者IDに基づいて前記患者データベースから呼び出した前記予製調剤内容と前記患者の今回の処方箋内容とを照合し、その照合結果を表示するための照合結果表示手段と、を備えた調剤処理システムであって、
前記照合結果表示手段は、前回処方箋の内容と今回処方箋の内容との間で不一致部分があればその部分を赤色などで着色して強調表示するものであり、
前記患者データベースは、個々の院外薬局とは遠隔の地にあるセンターのサーバに記録されており、
前記処方箋内容入力手段、前記次回受付予定日入力手段、及び、前記予製箱ID入力手段は、院外薬局側の端末からネットワークを介して前記センター側の前記患者データベースに情報を入力するものであり、
前記予製調剤内容出力手段、前記予製データ表示手段、及び、前記照合結果表示手段は、前記センター側の前記患者データベース内の情報をネットワークを介して院外薬局側の端末に取り込んで紙(薬情書)又はディスプレイ画面に出力するものである、調剤処理システム。
2 甲2について
甲2には、以下の記載がある。
「【請求項1】 処方箋及び薬歴記入票等に記載された各患者の薬歴に関する内容を入力する入力手段と、
処方箋及び薬歴記入票の複写像を作成する複写手段と、
記憶手段と、
前記入力手段によって入力され又は前記複写手段によって作成された薬歴に関する情報を各患者毎に纏めて前記記憶手段に記憶保存する制御手段と、
前記記憶手段に記憶された情報の内、次回投薬時への引継ぎを所望する引継ぎ情報を選択する選択手段と、
表示手段とを備え、
前記制御手段は、各患者の識別情報が入力された場合、前記選択手段によって選択された当該患者に対応する引継ぎ情報を前記記憶手段から抽出し、前記表示手段に表示することを特徴とする電子薬歴システム。
・・・
【請求項4】 前記引継ぎ情報には、前回投薬時における処方箋の内容と、今回投薬時における処方箋の内容とを比較した情報が含まれることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の電子薬歴システム。」
「【0029】図3は、引継ぎ情報の表示画面例を示す。図3に示すように、本実施形態では、引継ぎ情報一覧表示ウィンドウ145が、アクティブウインドウとしてポップアップ表示されるように構成されており、引継ぎ情報を確実に伝達することができる。なお、本実施形態における引継ぎ情報一覧表示ウィンドウ145には、引継ぎ情報として選択される可能性のある全ての項目が列挙される一方、各項目について実際に引継ぎ情報が有る場合、その旨を表示する表示部146が設けられている。なお、引継ぎ情報の内容を確認するには、当該引継ぎ情報を閲覧し得る画面(例えば、図2の表示欄143)を起動すればよい。
【0030】なお、前述のように、引継ぎ情報には、前回処方と今回処方との比較内容が含まれる。より具体的には、当該患者についての同一医療機関及び同一診療科の処方箋であることを前提に、前回投薬時における処方箋の内容と、今回投薬時における処方箋の内容とが制御手段112によって自動的に比較され、削除された薬剤(青色)、新規に処方された薬剤(赤色)、過去に処方されたことがあり今回再度追加された薬剤(紫色)、同一薬効群から変更された薬剤(緑色)等があった場合、これらの情報が引継ぎ情報として色別表示されるように構成されている。従って、斯かる引継ぎ情報を視認することにより、前回投薬時における処方箋の内容と、今回投薬時における処方箋の内容との相違点に特に注意を払って服薬指導を行うことができる他、処方箋の記載ミス等による医療事故の未然防止にも役立つものである。」
第5 当審の判断
1 理由1(新規事項の追加)について
(1) 判断
異議申立人は、本件特許に係る出願において、本件補正に係る以下のア及びイについて、出願当初明細書等に記載した事項の範囲内のものではないと主張するから、以下それぞれ検討する。
ア 本件発明1の構成要件1B(「前記サーバ」における「前記ネットワークを介して受信した患者の処方箋の情報」)について
(ア) 異議申立人は、構成要件1Bについて、出願当初明細書等の【0017】には、「ネットワーク」が「サーバ」と「端末装置」との間のネットワークであることや、「処方箋の情報」を受信する主体が「サーバ」であることは記載されていない旨主張する(異議申立書16頁中段)。
そこで検討するに、出願当初明細書等には以下の記載がある。
「【0016】
[薬情出力装置10の機能的構成]
続いて、薬情出力機能を発揮するための薬情出力装置10の機能的構成を、図2を参照して説明する。
図2は、薬情出力装置10の機能的構成を示す、模式図である。薬情出力機能の発揮において、薬情出力装置10の制御部11は、処方箋受付部111と、薬剤変更特定部112と、変更種別特定部113と、用法変更特定部114と、薬情出力部115とが機能する。また、記憶部12には、処方箋データベース121と、薬剤データベース122とが設けられる。
【0017】
処方箋受付部111は、処方箋の情報を入力部13から処方箋の情報として受け付ける。処方箋受付部111は、受け付けた処方箋の情報を処方箋データベース121に記憶する。
具体的には、処方箋受付部111は、窓口を担当する、薬局の受付担当者が患者から処方箋を受け取り、処方箋の内容を入力部13から入力して、処方箋の情報を受け付ける。処方箋受付部111は、受け付けた処方箋の情報を、受付日時及び患者を特定する情報と関連付けて処方箋データベース121に記憶する。
なお、処方箋の情報の受け付けは、各種態様があってよく、例えば、処方箋の画像をスキャナーから取得して、取得した画像に基づいて処方箋の情報を受け付けてもよいし、有線又は無線の通信回線を介して処方箋の情報を受信することにより受け付けてもよい。」
「【0053】
また、本願発明は、図2に示す機能的構成を備える端末装置に対して適用することができる。このとき、図2に示す機能的構成を備えるとは、当該機能的構成を実現するソフトウェアを端末装置にインストールすることに加え、所定のサーバにインストールされたソフトウェアを端末装置がネットワークを介して利用可能な状態も含む。即ち、インターネットを通じて顧客にビジネス用アプリケーションを提供する、所謂ASPサービスについても本願発明を適用することができる。」
[図:0001416524000001.jpg]
上記記載によれば、出願当初明細書等には、【図2】に示す薬情出力装置10の機能的構成について、「サーバ」と「端末装置」を用いて構成する場合、制御部11における処方箋受付部111や薬剤変更特定部112、薬情出力部115等の機能的構成を実現するソフトウェアは「サーバ」にインストールされており、「端末装置」は、そのソフトウェアを「ネットワーク」を介して利用するというシステムの形態が想定される(【0053】)。
そして、「処方箋の情報」の受け付けは、有線又は無線の「通信回線」を介して受信することによってもよいのであるから(【0017】)、当該「通信回線」とは、上記システムの形態であれば、「ネットワーク」のことであると当業者は理解することができる。
そうすると、上記システムの形態において、「処方箋の情報」を受信する主体は「サーバ」であることが理解できる。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。
(イ) 異議申立人は、構成要件1Bについて、「サーバ」が「処方箋の情報」をどこから受信するのか特定されていないから、「ネットワーク」を介して「サーバ」と通信可能な「端末装置」だけではなく、当該「端末装置」以外の装置(他装置)から受信するものも含んでいるため、本件発明1は「端末装置」ではなく、「他装置」から「処方箋の情報」を「ネットワーク」を介して受信するという当初明細書では想定されていない構成を含んでいる旨主張する(異議申立書16頁下段)。
しかしながら、出願当初明細書等の【0017】には、「処方箋の情報の受け付けは、各種態様があってよく」と記載され、「処方箋の画像をスキャナーから取得して、取得した画像に基づいて処方箋の情報を受け付けてもよい」ことや、「有線又は無線の通信回線を介して処方箋の情報を受信することにより受け付けてもよい」ことが記載されているところ、異議申立人が主張の前提とする、「ネットワーク」を介して「サーバ」と通信可能な「端末装置」だけが「処方箋の情報」を受信するように構成することは記載されていない。
したがって、異議申立人の主張は、主張の前提を欠いており、採用できない。
イ 本件発明1の構成要件1C(「前記サーバ」における「薬情のデータを前記端末装置に送信する薬情送信手段」)について
異議申立人は、構成要件1Cについて、出願当初明細書等の【0053】には、「サーバ」が「薬情のデータ」を「端末装置」に送信することは記載されていない旨主張する(異議申立書17頁中段)。
そこで検討するに、出願当初明細書等には、上記ア(ア)の記載に加え、以下の記載がある。
「【0035】
続いて、薬情出力部115は、特定した処方箋の変化に基づいて薬剤が変更したことを示す薬剤変更表示又は用法用量が変更したことを示す用法用量変更表示を含む薬情のデータを生成する(ステップS8)。」
当該記載によれば、「薬情のデータ」を生成するのは、(制御部11の)「薬情出力部115」であるところ、上記ア(ア)のとおり、【図2】に示す薬情出力装置10の機能的構成について、「サーバ」と「端末装置」を用いて構成する場合、制御部11における処方箋受付部111や薬剤変更特定部112、薬情出力部115等の機能的構成を実現するソフトウェアは「サーバ」にインストールされており、「端末装置」は、そのソフトウェアを「ネットワーク」を介して利用するというシステムの形態が想定されるから、構成要件1Cの「薬情のデータ」は、「サーバ」で生成されるものである。
そうすると、「サーバ」で生成された「薬情のデータ」を「ネットワーク」を介して「端末装置」が利用すること、すなわち、「サーバ」が「薬情のデータ」を「端末装置」に送信することは、出願当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであるということができる。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。
ウ 本件発明2~7について
異議申立人は、上記ア及びイのとおり、本件発明1には、出願当初明細書等に記載した事項の範囲内のものではない事項が含まれるから、本件発明2~7についても、出願当初明細書等に記載した事項の範囲内のものではない事項が含まれる旨主張する(異議申立書18頁中段)。
しかしながら、上記ア及びイのとおり、本件発明1についての補正は、出願当初明細書等に記載した事項の範囲内のものである。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。
(2) 理由1(新規事項の追加)のまとめ
以上によれば、本件補正は、出願当初明細書等に記載した事項の範囲を超えるものであるとはいえないから、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。
したがって、異議申立人の主張する理由1は理由がない。
2 理由2(サポート要件)について
(1) 判断
出願当初明細書等のうち、特許請求の範囲は、本件補正により補正されたが、本件明細書及び図面は補正されていない。
しかるところ、異議申立人は、上記1で主張した本件発明1の構成要件1B及び1C、当該構成要件と同様の構成要件を有する本件発明2~7は、上記1と同様の理由により、本件明細書の発明の詳細な説明及び図面には記載されていないから、本件発明1~7は、発明の詳細な説明に記載したものではない旨主張する(異議申立書18頁下段~20頁上段)。
しかしながら、上記1のとおり、異議申立人の主張する理由1は理由がないから、異議申立人の主張は前提を欠いており、採用できない。
(2) 理由2(サポート要件)のまとめ
以上によれば、本件発明は、本件明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるから、本件特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。
したがって、異議申立人の主張する理由2は理由がない。
3 理由3(新規性)について
(1) 本件発明1について
ア 対比
(ア) 構成要件1A及び1Eについて
甲1発明の「調剤処理システム」は、「前記センター側の前記患者データベース内の情報をネットワークを介して院外薬局側の端末に取り込んで紙(薬情書)又はディスプレイ画面に出力するものである」から、本件発明1と同様、「薬情出力システム」であるといえる。
また、甲1発明の「院外薬局側の端末」は、本件発明1の「端末装置」に相当する。
そして、甲1発明の「調剤処理システム」において、「患者データベース」は「個々の院外薬局とは遠隔の地にあるセンターのサーバに記録されて」おり、「院外薬局側の端末」は「ネットワークを介して」「患者データベース内の情報」を取り込んでいるから、「院外薬局側の端末」と「サーバ」は、ネットワークを介して通信可能に構成されているということができる。
そうすると、甲1発明の「調剤処理システム」は、本件発明1と同様、「ネットワークを介して通信可能に構成された端末装置とサーバとを含む薬情出力システム」であるということができる。
(イ) 構成要件1Bについて
a 甲1発明の「照合結果表示手段」は「前回処方箋の内容と今回処方箋の内容との間で不一致部分があればその部分を赤色などで着色して強調表示するもの」であるところ、「前回処方箋の内容と今回処方箋の内容」は「前記センター側の前記患者データベース内」に記録されている「情報」であって、「ネットワークを介して」取り込まれるものである。
また、甲1発明の「今回処方箋の内容」及び「前回処方箋の内容」は、本件発明1の「患者の処方箋の情報」及び「前記処方箋よりも過去の処方箋の情報」に相当する。
そして、甲1発明の「処方箋内容」は「薬剤」の名称を含むものであるから、「前回処方箋の内容と今回処方箋の内容との間で不一致部分」とは、「薬剤」の名称部分が不一致であることを含んでいるところ、「不一致部分があればその部分を赤色などで着色して強調表示する」ことができるのであるから、その態様は「薬剤」が変更したことを特定しているといえ、甲1発明の「調剤処理システム」は、そのための手段(特定手段)を備えているということができる。
そうすると、甲1発明は、本件発明1の「前記ネットワークを介して受信した患者の処方箋の情報と、前記処方箋よりも過去の処方箋の情報との間の変化に基づいて、薬剤が変更したこと及び前記薬剤の変更の種別を示す変更種別を特定する特定手段」と、「前記ネットワークを介して受信した患者の処方箋の情報と、前記処方箋よりも過去の処方箋の情報との間の変化に基づいて、薬剤が変更したことを特定する特定手段」を備える点で共通する。
b これに対し、異議申立人は、本件明細書の【0024】の記載によれば、薬剤の「変更種別」には「変更」、「追加」、「削除」などの種別があるが、本件発明1の構成要件1Bでは、「変更種別」は単に「前記薬剤の変更の種別を示す」としか規定されていないから、甲1発明のように、今回処方箋と前回処方箋とを比較・照合することで、今回処方箋において前回処方箋からどの薬剤が追加されているのか、又は削除されているのか等を特定するものも「変更種別」を特定するものであると旨主張する(異議申立書25頁中段)。
しかしながら、甲1発明の「照合結果表示手段」は、「前回処方箋の内容と今回処方箋の内容との間で不一致部分があればその部分を赤色などで着色して強調表示するもの」であるから、単に両者の比較を行った結果、不一致部分があれば、「薬剤が変更した」ということを特定するものであって、それに加えて、さらに薬剤が「変更」されたのか、「追加」されたのか、あるいは、「削除」されたのか等の薬剤の変更の種別を特定するものではない。
そして、甲1の【0025】や【0035】をみても、本件発明1の構成要件1Bの「薬剤が変更した」ということを特定する構成が記載されているだけで、「薬剤の変更の種別を示す変更種別」を特定する構成は記載も示唆もされていない。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。
(ウ) 構成要件1Cについて
a 上記(イ)のとおり、甲1発明は、「前記ネットワークを介して受信した患者の処方箋の情報と、前記処方箋よりも過去の処方箋の情報との間の変化に基づいて、薬剤が変更したことを特定する特定手段」を備えているところ、甲1発明の「院外薬局側の端末」(端末装置)は「照合結果表示手段」による「照合結果」、すなわち、「薬剤が変更したことを示す薬剤変更表示」を「紙(薬情書)又はディスプレイ画面に出力するもの」である。
また、「薬剤が変更したことを示す薬剤変更表示」は、「薬情のデータ」であるといえる。
そうすると、甲1発明の「調剤処理システム」は、「院外薬局側の端末」(端末装置)が上記「薬情のデータ」を表示することを前提として、「前記特定手段による特定に基づいて、薬剤が変更したことを示す薬剤変更表示を含む薬情のデータを前記端末装置に送信する薬情送信手段」を備えるものであるということができる。
したがって、甲1発明は、本件発明1の「前記特定手段による特定に基づいて、薬剤が変更したこと及び前記薬剤の変更種別を示す薬剤変更表示であって、前記変更前の薬剤から前記変更後の薬剤への変化の内容を説明する表示を含ませた薬剤変更表示を含む薬情のデータを前記端末装置に送信する薬情送信手段」と、「前記特定手段による特定に基づいて、薬剤が変更したことを示す薬剤変更表示を含む薬情のデータを前記端末装置に送信する薬情送信手段」を備える点で共通する。
b これに対し、異議申立人は、甲1発明の構成によれば、例えば「薬剤A」が追加されている場合には今回の処方箋の「薬剤A」が赤色で強調表示され、「薬剤B」が削除されている場合には前回処方箋の「薬剤B」が赤色で強調表示されることになるので、双方が異なっていること(薬剤が変更したこと)及び薬剤の追加か削除かという「変更種別」を示しつつ、その不一致部分、つまりいずれの薬剤が変更されたかが分かるように強調表示するものであるため、前回処方箋から今回処方箋にかけての薬剤の変化の内容を説明する表示を含むということができるから、甲1発明は、本件発明1の構成要件1Cに相当する旨主張する(異議申立書25頁下段~26頁中段)。
しかしながら、甲1発明が「(薬剤の変更の種別を示す)変更種別」を特定するものでないことは、上記(イ)のとおりである。
なお、異議申立人は、甲1発明は、「いずれの薬剤が変更されたかが分かるように強調表示するものであるため、前回処方箋から今回処方箋にかけての薬剤の変化の内容を説明する表示を含むということができる」と主張するが、甲1発明の「院外薬局側の端末」(端末装置)において、「いずれの薬剤が変更されたかが分かるように強調表示」したとしても、単に「薬剤が変更したこと」を理解することができるだけであって、薬剤の「変化の内容を説明する表示」であるとはいえない。
したがって、異議申立人の主張は採用できない。
(エ) 構成要件1Dについて
上記(ウ)のとおり、甲1発明の「院外薬局側の端末」(端末装置)は、「薬情のデータ」を「紙(薬情書)又はディスプレイ画面に出力するもの」であるから、そのための「薬情出力手段」を備えているということができる。
そうすると、甲1発明の「院外薬局側の端末」(端末装置)は、本件発明1の「前記サーバから送信された前記薬情のデータを表示部に表示又は薬情書面に印刷させる薬情出力手段を備える」と、「前記薬情のデータを表示部に表示又は薬情書面に印刷させる薬情出力手段」を備える点で共通する。
以上によれば、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点、相違点を有する。
[一致点]
1A ネットワークを介して通信可能に構成された端末装置とサーバとを含む薬情出力システムであって、
1B’ 前記ネットワークを介して受信した患者の処方箋の情報と、前記処方箋よりも過去の処方箋の情報との間の変化に基づいて、薬剤が変更したことを特定する特定手段と、
1C’ 前記特定手段による特定に基づいて、薬剤が変更したことを示す薬剤変更表示を含む薬情のデータを前記端末装置に送信する薬情送信手段と、
を備え、
1D’ 前記端末装置は、
前記薬情のデータを表示部に表示又は薬情書面に印刷させる薬情出力手段を備える 1E 薬情出力システム。
[相違点]
[相違点1]
構成要件1Bの特定手段について、本件発明1は、「サーバ」が備えるものであり、「薬剤が変更したこと」に加え、「前記薬剤の変更の種別を示す変更種別」も特定するのに対し、甲1発明は、「サーバ」が備えるものではなく、「薬剤が変更したこと」を特定するのみである点。
[相違点2]
構成要件1Cの薬情送信手段について、本件発明1は、「サーバ」が備えるものであり、「薬情のデータ」が「薬剤が変更したこと」に加え、「前記薬剤の変更種別を示す薬剤変更表示であって、前記変更前の薬剤から前記変更後の薬剤への変化の内容を説明する表示を含ませた薬剤変更表示」を含んでいるのに対し、甲1発明は、「サーバ」が備えるものではなく、「薬情のデータ」が「薬剤が変更したことを示す薬剤変更表示」を含むものの、「前記薬剤の変更種別を示す」ものではなく、「前記変更前の薬剤から前記変更後の薬剤への変化の内容を説明する表示を含ませた薬剤変更表示」を含んでいるものでもない点。
[相違点3]
構成要件1Dの端末装置の薬情出力手段について、本件発明1は、「前記サーバから送信された前記薬情のデータを表示部に表示又は薬情書面に印刷させる」のに対し、甲1発明は、「前記薬情のデータを表示部に表示又は薬情書面に印刷させる」ものの、「前記薬情のデータ」は「前記サーバから送信された」ものではない点。
イ 判断
上記アのとおり、本件発明1と甲1発明を対比すると、[相違点]を有するものであって、当該[相違点]は、後述するように実質的な相違点であるから、本件発明1は、甲1発明であるとはいえない。
(2) 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を限定した発明であって、甲1発明と対比すると、少なくとも、上記(1)の[相違点]を有するから、上記(1)のとおり、本件発明1が甲1発明であるとはいえない以上、本件発明2も甲1発明であるとはいえない。
(3) 本件発明6について
本件発明6の「サーバ」は、「ネットワークを介して通信可能に構成された端末装置とサーバとを含む薬情出力システムを構成する」ものであって、本件発明1の「薬情出力システム」が含む「サーバ」と同じ構成を備えるものである。
そうすると、本件発明6と甲1発明の「調剤処理システム」(薬情出力システム)が含む「サーバ」の発明(以下、「甲1に記載されたサーバの発明」)という。)を対比すると、少なくとも、上記(1)の[相違点1]及び[相違点2]を有する。
したがって、本件発明6は、上記(1)と同様、甲1発明であるとはいえない。
(4) 本件発明7について
本件発明7は、概ね、本件発明6の「サーバ」が備える手段をコンピュータに実現させる「プログラム」に係る発明である。
そうすると、本件発明7と甲1発明をプログラムに書き換えた発明とを対比すれば、上記(3)と同様、少なくとも、上記(1)の[相違点1]及び[相違点2]と同様の相違点を有することになる。
したがって、本件発明7は、上記(1)と同様、甲1発明をプログラムに書き換えた発明であるとはいえない。
(5) 理由3(新規性)のまとめ
以上によれば、本件特許は、特許法29条1項の規定に違反してされたものではない。
したがって、異議申立人の主張する理由3は理由がない。
4 理由4(進歩性)について
(1) 本件発明1について
本件発明1と、甲1発明を対比すると、上記3(1)アの[相違点]に係る構成を有する。
そこで、事案に鑑み、[相違点2]について検討するに、[相違点2]は、「薬情送信手段」が送信する「薬情のデータ」が「前記薬剤の変更種別を示す薬剤変更表示であって、前記変更前の薬剤から前記変更後の薬剤への変化の内容を説明する表示を含ませた薬剤変更表示」を含んでいる構成を有するところ、当該構成は、甲1には記載も示唆もない。
また、甲2に記載された事項は、上記第4の2のとおりであるところ、甲2にも、当該構成は記載も示唆もされていないし、他に周知技術であるという証拠もない。
そして、本件発明1は、当該構成を有することによって、本件明細書の【0037】~【0038】に記載されているように、「A錠と同一成分の安価なお薬です。」、「B錠より効果の強いお薬です」、「錠剤からカプセルになりました。」という、薬剤の変化の内容を説明することができるから、本件明細書の【0009】に記載されているように「薬剤の交付内容の変化を容易に把握できるようになる」という格別顕著な効果を奏するものである。
そうすると、[相違点1]及び[相違点3]について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(2) 本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1を限定した発明であって、甲1発明と対比すると、少なくとも、上記(1)の[相違点2]を有するから、上記(1)のとおり、本件発明1が甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件発明2~5も甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3) 本件発明6について
上記3(3)のとおり、本件発明6と甲1に記載されたサーバの発明を対比すると、少なくとも、上記(1)で述べた[相違点2]を有する。
そうすると、本件発明6も、上記(1)と同様、甲1に記載されたサーバの発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1に記載されたサーバの発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(4) 本件発明7について
上記3(4)のとおり、本件発明7と甲1発明をプログラムに書き換えた発明とを対比すると、少なくとも、上記(1)で述べた[相違点2]と同様の相違点を有することになる。
そうすると、本件発明7も、上記(1)と同様、甲1発明をプログラムに書き換えた発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないし、甲1発明をプログラムに書き換えた発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5) 理由4(進歩性)のまとめ
以上によれば、本件特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものではない。
したがって、異議申立人の主張する理由4は理由がない。
第6 むすび
以上の次第であるから、特許異議の申立ての理由及び異議申立人の提出した証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700719