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特許異議申立

2021-700571

染毛料組成物

審判番号
2021-700571
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-509235外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
6800314
請求日
2021年06月16日
審決日
2022年03月25日
公報発行日
2022年06月24日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第113条第4号、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6800314号発明「染毛料組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6800314号の特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 特許第6800314号の請求項1、3~6に係る特許を維持する。 特許第6800314号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6800314号(以下「本件特許」という。)に係る出願(特願2019-509235号)は、平成30年3月15日(優先権主張 平成29年3月29日)を国際出願日とするものであって、令和2年11月26日にその特許権の設定の登録(請求項の数:6)がなされ、同年12月16日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和3年6月16日に、特許異議申立人 柴田勇一(以下「申立人A」という。)及び特許異議申立人 栗原喜子(以下「申立人B」という。)により、本件特許の請求項1~6に係る発明の特許に対して、それぞれ特許異議の申立てがされた。 本件特許異議申立事件における手続の経緯は、次のとおりである。 令和3年 6月16日 :特許異議申立書及び甲第1~6号証の提出 (申立人A) 特許異議申立書及び甲第1~6号証の提出 (申立人B) 同年 9月27日付け:取消理由通知(特許権者あて) 同年11月26日 :訂正請求書及び意見書の提出(特許権者) 同年12月 6日付け:訂正請求があった旨の通知(申立人A及び 申立人Bあて) 令和4年 1月12日 :意見書の提出(申立人B) なお、申立人Aに対しても訂正の請求があった旨を通知したが、申立人Aからは、指定期間内に何ら応答がなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 令和3年11月26日提出の訂正請求書により特許権者が請求している訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を、当該訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項1~6について訂正することを求めるものであって、その内容は以下のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1における「成分Dの含有量」について、「0.01~0.5質量%」とあるのを、「0.01~0.15質量%」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~6も同様に訂正する。)。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に、「前記成分Aの含有量に対する、前記成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]が、0.01~1.0であり、」との構成を加入する訂正をする(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~6も同様に訂正する。)。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に、「前記成分Cの含有量に対する、前記成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]が、0.005~1.0であり、」との構成を加入する訂正をする(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~6も同様に訂正する。)。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に、「前記成分Aの含有量に対する、前記成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]が、0.05~6.0である」との構成を加入する訂正をする(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~6も同様に訂正する。)。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項3の引用先を、「請求項1又は2」から「請求項1」に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項4の引用先を、「請求項1~3のいずれか1項」から「請求項1又は3」に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項6の引用先を、「請求項1~5のいずれか1項」から「請求項1、3~5のいずれか1項」に訂正する。 (9)訂正事項9 願書に添付した明細書の段落【0080】に、 「以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量。所謂純分)であり、特記しない限り「質量%」で表す。なお、実施例1-5及び1-10は参考例として記載するものである。」 とあるのを、 「以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、表に記載の配合量は、各成分の配合量(すなわち、各原料中の有効成分の配合量。所謂純分)であり、特記しない限り「質量%」で表す。なお、実施例1-5、1-10、1-21、1-22、2-2は参考例として記載するものである。」 に訂正する。 (10)一群の請求項について 本件訂正前の請求項1~6について、請求項1の記載を請求項2~6がそれぞれ直接的又は間接的に引用しているから、請求項2~6は、訂正事項1~9によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。 したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である請求項1~6について請求されたものである。 2 訂正の適否の判断 (1)訂正事項1について ア 訂正の目的 訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1及びその記載を引用する請求項3~6において、「成分Dの含有量」の範囲を「0.01~0.5質量%」と特定していたところ、当該範囲を「0.01~0.15質量%」として、その上限をさらに限定するものである。 したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)の【0095】の【表1】に記載の「実施例1-13」では、染毛料組成物において、「成分(D)」に該当する「HC黄2」の含有量が「0.15質量%」とされているから、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アで説示したように、訂正事項1は、請求項1及びその記載を引用する請求項2~6において、「成分Dの含有量」の範囲を、「0.01~0.15質量%」に限定するものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (2)訂正事項2について ア 訂正の目的 訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項1及びその記載を引用する請求項3~6において、特定されていなかった「成分Aの含有量に対する、成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]」について、「0.01~1.0である」ことを具体的に特定し、限定を加えるものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 本件明細書の【0043】には、「本発明の染毛料組成物中において、成分Aの含有量に対する、成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]は、特に限定されないが、0.01~1.0であることが好ましく」との記載があるから、訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アで説示したように、訂正事項2は、請求項1及びその記載を引用する請求項3~6において、「成分Aの含有量に対する、成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]」について、「0.01~1.0である」ことを具体的に特定し、限定を加えるものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (3)訂正事項3について ア 訂正の目的 訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項1及びその記載を引用する請求項3~6において、特定されていなかった「成分Cの含有量に対する、成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]」について、「0.005~1.0である」ことを具体的に特定し、限定を加えるものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 本件明細書の【0044】には、「本発明の染毛料組成物中において、成分Cの含有量に対する、成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]は、特に限定されないが、0.005~1.0であることが好ましく」との記載があるから、訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アで説示したように、訂正事項3は、請求項1及びその記載を引用する請求項3~6において、「成分Cの含有量に対する、成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]」について、「0.005~1.0である」ことを具体的に特定し、限定を加えるものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (4)訂正事項4について ア 訂正の目的 訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項1及びその記載を引用する請求項3~6において、特定されていなかった「成分Aの含有量に対する、成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]」について、「0.05~6.0である」ことを具体的に特定し、限定を加えるものである。 したがって、訂正事項3は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 本件明細書の【0045】には、「本発明の染毛料組成物中において、成分Aの含有量に対する、成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]は、特に限定されないが、0.05~7.0であることが好ましく、より好ましくは0.1~6.0である。」との記載があるから、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 上記アで説示したように、訂正事項4は、請求項1及びその記載を引用する請求項3~6において、「成分Aの含有量に対する、成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]」について、「0.05~6.0である」ことを具体的に特定し、限定を加えるものであり、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (5)訂正事項5について ア 訂正の目的 訂正事項5は、訂正前の請求項2を削除するものである。 したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項5は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項5は、訂正前の請求項2を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (6)訂正事項6について ア 訂正の目的 訂正事項6は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものである。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明、又は、同第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項6は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項6は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (7)訂正事項7について ア 訂正の目的 訂正事項7は、訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものである。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明、又は、同第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項7は、訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項7は、訂正前の請求項4が請求項1~3のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (8)訂正事項8について ア 訂正の目的 訂正事項8は、訂正前の請求項6が請求項1~5のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものである。 したがって、訂正事項6は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明、又は、同第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び同第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項8は、訂正前の請求項6が請求項1~5のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内でした訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項8は、訂正前の請求項6が請求項1~5のいずれか1項を引用するものであるところ、訂正事項5により削除された請求項2を引用しないものとするものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 (9)訂正事項9について ア 訂正の目的 訂正事項9は、本件明細書の【0095】【表1】に記載される実施例1-21、1-22、及び、【0097】【表3】に記載される実施例2-2が参考例であることを記載することによって、訂正後の請求項1に係る発明に、実施例1-21、1-22、及び2-2が含まれなくなったことを明確化するものである。 したがって、訂正事項9は、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の追加の有無 訂正事項9は、実施例1-21、1-22、及び2-2が参考例として記載されることを明確化するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項9は、実施例1-21、1-22、及び2-2が参考例として記載されることを明確化するものであって、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する第126条第6項の規定に適合するものである。 (10)独立特許要件について 本件特許異議申立事件においては、訂正前のすべての請求項1~6に対して特許異議の申立てがされているので、訂正事項1~8による訂正については、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるが、同法同条第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。 3 訂正の適否についての小括 以上のとおりであるから、本件特許の特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 第3 本件訂正後の本件特許に係る発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるので、本件訂正後の本件特許の請求項1~6(以下、請求項の番号順に「本件請求項1」等という。)の記載は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された次のとおりのものであり、本件請求項1、3~6に係る発明を、以下、請求項の番号順に「本件発明1」等といい、これらを総称して「本件発明」ということがある。なお、下線は本件訂正による訂正箇所である。 「【請求項1】 下記成分A、下記成分B、下記成分C、及び下記成分Dを含有し、 前記成分Aの含有量が0.5~3.0質量%であり、 前記成分Bの含有量が0.005~1.5質量%であり、 前記成分Cの含有量が0.1~1.5質量%であり、 前記成分Dの含有量が0.01~0.15質量%であり、 前記成分Aの含有量に対する、前記成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]が、0.01~1.0であり、 前記成分Cの含有量に対する、前記成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]が、0.005~1.0であり、 前記成分Aの含有量に対する、前記成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]が、0.05~6.0である染毛料組成物。 成分A:HC青16 成分B:塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87、及び塩基性黄57からなる群より選ばれる1以上の染料 成分C:HC青2 成分D:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料 【請求項2】(削除) 【請求項3】 前記成分D100質量%中の、前記HC黄2の含有量が50.0質量%以上である請求項1に記載の染毛料組成物。 【請求項4】 カラーリンス又はカラートリートメントである請求項1又は3に記載の染毛料組成物。 【請求項5】 さらに、下記成分Eを含有する請求項4に記載の染毛料組成物。 成分E:カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、及びシリコーン油からなる群より選ばれる1以上の成分 【請求項6】 白髪染め用の染毛料組成物である請求項1、3~5のいずれか1項に記載の染毛料組成物。 」 第4 当審が通知した取消理由の概要 本件訂正前の請求項1~6に係る発明の特許について、当審が令和3年9月27日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりであり、下記の引用文献1~2は、いずれも、本件特許出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能になったものである。 [取消理由1](進歩性欠如) 本件特許の請求項1~6に係る発明は、下記の引用文献1~2に記載された発明、及び本件特許出願前の技術常識に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 [取消理由2](サポート要件違反) 本件特許の請求項1~6に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないから、請求項1~6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものであり、取り消されるべきものである。 <引用文献一覧> 引用文献1:米国特許出願公開第2014/0298598号明細書(申立人Bが提出した甲第1号証(甲B1)) 引用文献2:特表2016-501207号公報(申立人Bが提出した甲第2号証(甲B2)) 第5 引用文献の記載事項及び引用発明 以下に、上記第4に示した引用文献1~2の記載事項について、当審の判断に必要な範囲で摘記し、引用文献1については、記載されていると認められる引用発明を示す。なお、下線は当審による。 1 引用文献1の記載事項及び引用文献1に記載された発明 引用文献1には、以下の事項が記載されている。引用文献1は外国語文献であるため、摘記は合議体による翻訳文で示す。 摘記1(1) 「1. (a)式(I)で示される少なくとも1種の化合物 (I) [図:0001385184000001.jpg] ・・・ (b)少なくとも1種の非イオン性界面活性剤、を含有するケラチン繊維の染色剤。」(請求の範囲) 摘記1(2) 「【0002】本明細書は、一般に、ケラチン繊維を染色し、任意に明るくするための剤に関する。より具体的には、本願は、特定のカチオン性アントラキノン染料および特殊な非イオン性界面活性剤を含む化粧品用剤に関するものである。本明細書はまた、増加した光沢、強烈な色結果、改善された堅牢性、および低減された選択性を有するヘアカラーを製造するためのこれらの薬剤の使用に関するものである。 【0003】一般的に、ケラチン繊維の染色には、直接染料または酸化染料が使用される。酸化染料では、良好な堅牢性を有する強い色が得られるが、色の発色は一般に、例えばH2O2のような酸化剤の影響下で行われ、場合によっては繊維に損傷を与えることがある。さらに、一部の酸化染料前駆体や酸化染料前駆体の特定の混合物は、敏感肌の人に感作作用を及ぼす可能性がある。直接染料は、より穏やかな条件で適用される。しかし、これらの染料の欠点は、特に洗髪や、日光などの外的影響、プールの水などの反応性環境化学物質に対する堅牢性が不十分であることである。また、このような色は、一般的に酸化染料に比べてシャンプーに対する感度が高く、望ましくない色合いの変化や、目に見える「脱色」がより早く発生してしまう。 【0004】例えば、ブリーチされた髪や永久にウェーブされた髪のように、頻繁に処理された髪の均一な染色を達成することは、繊維が様々な長さまたは様々に処理された領域で異なる程度の既存の損傷を呈する場合、直接染料で髪を染色するという点で特に困難である。染色プロセス自体において、染色剤は、既存の損傷の程度が異なる毛髪に対して不均一な染色挙動を示す可能性があり、一方で、繰り返しの洗髪により、毛髪の異なる領域から染料が様々な程度で洗い流される可能性があり、その結果、一貫性のない、したがって望ましくない色の結果が得られることになる。 【0005】直接染料に基づくカラーリング製品の開発においては、選択性を低下させた染料配合物を製造することに依然として特別な焦点が当てられている。これは、様々な程度の既存の損傷を有する毛髪の部分に対して均一な色結果を得ることができることを意味する。特に、この選択性の低下は、染色プロセスの直後だけでなく、繰り返しの洗髪後にも存在するべきである。 【0006】従って、本明細書の目的は、他の肯定的な堅牢性に加えて、特に低い選択性(又は良好な均一化能力)及び良好な洗髪堅牢性を有する、ケラチン繊維、特に人間の毛髪のための染色剤を提供することである。 【0007】本明細書による剤で達成される色は、染色プロセスの直後と繰り返しの洗髪の後の両方で、鮮やかで強烈な色の結果をもたらすべきである。染色剤の適用後、毛髪は、様々な程度の既存の損傷を示す場合であっても、均一に染色されるべきであり、この色結果の均一性は、繰り返しの洗髪の後でも存在するべきである。特に、上述の有利な堅牢性を有する、鮮やかで中性的な青の色合いまたは青の領域の色合いが達成されるべきであり、前記色合いはまた、マットに卓越して適している。剤はさらに、塗布プロセスと染色能力の両方の観点から、最適な粘度を有するべきである。 ・・・ 【0009】驚くべきことに、直接染料としての特定のカチオン性アントラキノンと特別な非イオン性界面活性剤との組み合わせが、本明細書の目的を卓越した程度で達成する色につながることが判明した。」 摘記1(3) 「【0040】用語「ケラチン繊維の染色」は、本明細書の文脈における繊維の変色の任意の形態を含む。特に、染色、美白、漂白、過酸化、酸化染色、半永久的染色、永久染色及び一時染色、といった用語がカバーする色変化が含まれる。また、例えば、染色と漂白のプロセスの組み合わせなど、元の色に比較して明るい色の結果を提示する本明細書による色の変化を含む。 【0041】本明細書による剤は、化粧品用担体、好ましくは適切な水性、アルコール性または水性-アルコール性担体中における活性剤を含む。染毛の目的では、そのような担体は、例えばクリーム、エマルジョン、ゲル、または界面活性剤を含有する発泡溶液であり、例えばシャンプー、発泡エアゾール、発泡製剤、または毛髪に使用するのに適した他の製剤などである。しかし、本明細書による薬剤が、粉末または錠剤の形態で製剤に組み込まれることも可能である。」 摘記1(4) 「【0057】本明細書に記載の、ケラチン繊維を染色、および場合により同時に明色化する剤は、次から選ばれる一般式(I)の化合物の少なくとも1つを含むことを特徴とする。・・・ 【0064】3-{[9、10-ジヒドロ-4-(メチルアミノ)-9、10-ジオキソ-1-アントラセニル]アミノ}-N、N-ジメチル-N-プロピル-1-プロパンアミニウム ブロミド、 ・・・ 【0068】式(Ia)の化合物は、本明細書に記載された目的を達成するうえで、理想的に適している。 [図:0001385184000002.jpg] ・・・。A-がメト硫酸である式(Ia)の化合物はCationic Blue 347という名前でも知られる。」 摘記1(5) 「【0070】ケラチン繊維を染色し、任意に同時に明色化するための本明細書による薬剤は、式(I)の化合物(複数可)を、それぞれの場合において、薬剤全体に対して、好ましくは0.0001重量%より多く、5重量%より少ない量で含む。 【0071】さらなる好ましい例は、それぞれの場合において、剤の総重量に対して、0.0001~5重量%、好ましくは0.005~3.5重量%、特に好ましくは0.01~2.5重量%、特に好ましくは0.05~1.5重量%、特に好ましくは0.01~1.0重量%の量で、式(I)の化合物(複数可)を含む剤である。」 摘記1(6) 「【0100】さらなる好ましい例では、本明細書による薬剤は、式(I)の化合物に加えて、少なくとも1つのさらなる直接染料をさらに含む。直接染料は、アニオン性、カチオン性および非イオン性の直接染料に分けることができる。直接染料は、好ましくは、ニトロフェニレンジアミン、ニトロアミノフェノール、アゾ染料、アントラキノン、トリアリールメタン染料またはインドフェノールおよびそれらの生理学的に許容される塩から選択される。追加の直接染料は、それぞれ好ましくは、塗布剤全体に対して、0.001から2重量%の量で使用される。 ・・・ 【0102】好ましいカチオン性直接染料は、カチオン性トリフェニルメタン染料、例えば塩基性青7、塩基性青26、塩基性紫2及び塩基性紫14、第4級窒素基で置換された芳香族系、例えば塩基性黄57、塩基性赤76、塩基性青99、塩基性茶16及び塩基性茶17、並びに少なくとも1つの第4級窒素原子を有する複素環化合物を含む直接染料、特に塩基性黄87、塩基性橙31及び塩基性赤51である。ARIANOR(R)の商標で販売されているカチオン性の直接染料も、本明細書によれば同様に好ましいカチオン性の直接染料である。 【0103】非イオン性の直接染料としては、特に非イオン性のニトロ染料、キノン染料および中性アゾ染料が好適である。好ましい非イオン性直接染料は、国際名または商品名HC黄2、HC黄4、HC黄5、HC黄6、HC黄12、HC橙1、分散橙3、HC赤1、HC赤3、HC赤 7、HC赤10、HC赤11、HC赤13、HC赤BNで知られる化合物である。HC青2、HC青11、HC青12、分散青3、HC紫1、分散紫1、分散紫4、分散黒9のほか、1,4-ジアミノ-2-ニトロベンゼン、2-アミノ-4-ニトロフェノール、1,4-ビス-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-2-ニトロベンゼン、3-ニトロ-4-(2-ヒドロキシエチル)アミノフェノールなどがある。2-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-4,6-ジニトロフェノール、4-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-3-ニトロ-1-メチルベンゼン、1-アミノ-4-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-5-クロロ-2-ニトロベンゼン、4-アミノ-3-ニトロフェノール、1-(2′-ウレイドエチル)アミノ-4-ニトロベンゼン、2-[(4-アミノ-2-ニトロフェニル)アミノ]安息香酸、4-[(3-ヒドロキシプロピル)アミノ]-3-ニトロフェノール、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、6-ニトロ-1,2,3,4-テトラヒドロキノキサリン、2-ヒドロキシ-1,4-ナフトキノン、ピクラミン酸およびその塩、2-アミノ-6-クロロ-4-ニトロフェノール、4-エチルアミノ-3-ニトロ安息香酸、2-クロロ-6-エチルアミノ-4-ニトロフェノールなどが挙げられる。 【0104】特に、本明細書による薬剤が、さらなる直接染料として、D&C赤No. 33(アシッドレッド 33)、アシッドブラックNo.1、D&C橙No.4(アシッドオレンジNo.4)、アシッドレッド18、塩基性赤 76、アシッドバイオレット43、HC青12、N-(2-ヒドロキシエチル)-4-メチル-2-ニトロアニリン(メチルイエロー)、HC黄 No.2、レッドB 54および2-アミノ-6-クロロ-4-フェノールから選択される少なくとも1つの染料を、さらなる直接染料として含む場合、特に優れた色強度、輝き、および良好な洗髪堅牢性を有する染色結果が得られる。」 摘記1(7) 「【0108】直接染料、発色剤成分およびカプラー成分は、すぐに使える(ready-to-use)薬剤に対して、それぞれ、0.0001~5.0重量%、好ましくは0.001~2.5重量%の量で使用されるのが好ましい。・・・」 摘記1(8) 「【0119】すぐに使用できる(ready-to-use)染色剤は、好ましくは液体製剤として提供され、したがって、さらなる表面活性物質が追加的に添加され、そのような表面活性物質は、適用分野に応じて、界面活性剤または乳化剤と呼ばれる。これらは好ましくは、アニオン性、カチオン性、双性イオン性および両性の界面活性剤および乳化剤から選択される。」 摘記1(9) 「【0124】本明細書による好適な薬剤には、第四級アンモニウム、エステルクワットおよびアミドアミンタイプのカチオン性界面活性剤も含まれる。好ましい第4級アンモニウム化合物は、ハロゲン化アンモニウムと、INCI名クオタニウム-27およびクオタニウム-83で知られるイミダゾリウム化合物である。本明細書により使用することができる更なるカチオン性界面活性剤は、第四級化されたタンパク質加水分解物である。本明細書で特に適しているアミドアミンの化合物は、Tegoamid(R) S 18の名称で市販されているステアラミドプロピルジメチルアミンである。好ましい4級エステルは、トリエタノールアミンによる脂肪酸の4級化エステル塩、ジエタノールアルキルアミンによる脂肪酸の4級化エステル塩、1,2-ジヒドロキシプロピルジアルキルアミンによる脂肪酸の4級化エステル塩である。カチオン性界面活性剤は、本明細書により使用される薬剤に、薬剤全体に対して0.05から10重量%の量で含まれることが好ましい。 【0125】すぐに使用できる剤は、助剤物質および添加剤を含んでもよい。したがって薬剤は、少なくとも一つの増粘剤を含む場合に好適であることが明らかになっている。これらの増粘剤に関する原理に限定されるものではない。有機相と、純粋に無機増粘剤を使用することができる。 【0126】好適な増粘剤は以下のものである。 【0127】カチオン性合成ポリマー; ・・・ 【0135】本明細書における剤はまた、更なる活性剤、補助物質および添加剤、例えば非イオン性ポリマーを含んでもよい、例えば・・・;有機官能基を有する特定のポリシロキサン、置換もしくは非置換アミン(アモジメチコン)基、カルボキシル基、アルコキシ基および/またはヒドロキシル基(ジメチコンコポリオール)、線状ポリシロキサン(A)-ポリオキシアルキレン(B)ブロックコポリマー、グラフト化シリコーンポリマーなどの追加のシリコーン、揮発性又は不揮発性の、直鎖、分枝または環式、架橋または非架橋のポリアルキルシロキサン(ジメチコンやシクロメチコンなど)、ポリアリールシロキサン及び/又はポリアルキルアリールシロキサンなどである;四級化セルロースエーテルなどのカチオン性ポリマーは、第四級基を有するポリシロキサン、ジメチルジアリルアンモニウムクロリドポリマー、アクリルアミド-ジメチルジアリルアンモニウムクロリドコポリマー、ジエチル硫酸で四級化されたジメチルアミノエチルメタクリレート-ビニルピロリドンコポリマー、ビニルピロリドンイミダゾリニウムメトクロリド共重合体および四級化ポリビニルアルコール、特にポリクオタニウム-2、ポリクオタニウム-4、ポリクオタニウム-6、ポリクオタニウム-7、ポリクオタニウム-10、ポリクオタニウム-11、ポリクオタニウム-16、ポリクオタニウム-24、ポリクオタニウム-28、ポリクオタニウム-37、ポリクオタニウム-44、ポリクオタニウム-46、ポリクオタニウム-55、ポリクオタニウム-67、ポリクオタニウム-68、ポリクオタニウム-67、及びポリクオタニウム-87;双性イオン性および両性ポリマー、特にポリクオタニウム-22、ポリクオタニウム-39など;グルコース、マレイン酸、乳酸などの構造化剤、リン脂質、例えばレシチン、セファリン等のヘアコンディショニング化合物;香油、ジメチルイソソルビドおよびシクロデキストリンである;活性剤は、繊維構造を向上させ、特にモノ-、ジ-およびオリゴ糖、例えばグルコース、ガラクトース、フルクトース、果糖、乳糖などである;薬剤を着色する染料;ピロクトンオラミン、ジンクピリチオンおよびクリンバゾール(climbazole)などの抗フケ活性剤;アミノ酸およびオリゴペプチド;動物及び/又は植物起源のタンパク質加水分解物ならびにそれらの脂肪酸縮合生成物の形態又は任意選択的にアニオン的又はカチオン的に修飾された誘導体である;植物油;光安定剤及びUV遮断剤;パンテノール、パントテン酸、パントラクトン、アラントイン、ピロリドンカルボン酸及びその塩、並びにビサボロールなどの活性剤・・・」 摘記1(10) 「【0137】本明細書の第1主題の薬剤をケラチン含有繊維に塗布し、5?60分間繊維上に放置した後、再び水で洗い流すか、またはシャンプーで洗い流すことを特徴とする、ケラチン含有繊維、特にヒトの毛髪を染色し、任意に明るくするための方法は、特に本明細書による薬剤の塗布に適している。すぐに使用できる染色剤の接触時間は、好ましくは5~45分、特に10~40分、特に好ましくは15~35分である。繊維上の薬剤の接触時間の間、熱を供給することによって明色化プロセスを支援することが有利である。熱は、例えば熱風機からの熱風のような外部の熱源から供給されてもよく、また、特に髪の毛を明るくするプロセスが生きている被検者に対して行われる場合には、被検者の体温から供給されてもよい。後者の場合、明るくしたい部分を従来はフードで覆っていた。室温での接触相も同様に本明細書に従ったものである。特に、接触時間中の温度は、20℃から40℃の間、特に25℃から38℃の間である。接触時間の終了後、残った染色剤は、水または洗浄剤で毛髪から洗い流される。特に洗浄剤として市販のシャンプーを使用してもよく、特に染色剤が高い界面活性剤含有量を有する担体を有する場合には、洗浄剤を分配して、水ですすぎ工程を行ってもよい。」 摘記1(11) 「【0145】以下の例は、ケラチン繊維処理のために本明細書により製造される剤を示す。特に明示されていなければ、記載される量は重量%を意味する。 ・・・ [図:0001385184000003.jpg] 」 上記摘記事項、特に摘記1(1)、摘記1(11)の記載からみて、引用文献1には、製剤例4bとして、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 ≪引用発明≫ 「ケラチン繊維の染色剤であって、 染料として Bluequat bromide 0.21重量% 塩基性赤76 0.075 重量% 塩基性黄57 0.075 重量% HC青12 1.20 重量% HC黄2 0.20 重量% Cationic blue 347 0.50 重量% 塩基性茶17 0.075 重量% Ext. D&C 紫2 0.075 重量% N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-ニトロ-p-フェニレンジアミン 0.10 重量% を含み、さらに セテアリルアルコール 6.00 重量% ココナッツアルコール 6.00 重量% セテアレス-12 2.00 重量% セテアレス-20 3.00 重量% PEG-40水素添加ひまし油 2.00 重量% マカデミアナッツ油 1.00 重量% メチルパラベン 0.15 重量% プロピルパラベン 0.15 重量% トコフェロール 0.20 重量% フェノキシエタノール 1.00 重量% ヒドロキシエチルセルロース 1.00 重量% NaOH、50% 0.10 重量% ポリエチレングリコール MG400 5.00 重量% D-パンテノール、75% 0.30 重量% クエン酸 一水和物 0.10 重量% 香料 適量 水 残部 を含む染色剤。」 2 引用文献2の記載事項 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 摘記2(1) 「【0023】 特に強くて光沢のある着色は、本発明の剤において、式(I)で示されるカチオン性アントラキノン誘導体として化合物(Ia): 【化3】 [図:0001385184000004.jpg] [式中、A-は、生理学的に許容可能なアニオン、好ましくは硫酸メチルイオン(H3COSO3-)または臭化物イオン、特に好ましくは臭化物イオンを意味する] が使用される場合にもたらされ得る。 【0024】 A-が臭化物イオンを意味する化合物(Ia)は、HC Blue 16、Bluequat BまたはBluequat bromideの名称でも知られており、3-{[9、10-ジヒドロ-4-(メチルアミノ)-9、10-ジオキソ-1-アントラセニル]アミノ}-N、N-ジメチル-N-プロピル-1-プロパンアミニウムブロミドの化学名でも知られている。」 摘記2(2) 「【0044】 式(I)で示される化合物とは異なるカチオン性直接染料(b)の先に記載した群のうち、特定の染料は、他の重要な成分(a)、(c)および(d)と組み合わせてケラチン繊維の着色に使用される場合に、非常に優れた光沢を有する着色をもたらすために使用され得ることを特徴とする。 ・・・・ 【0047】 特に好ましいカチオン性直接染料(b)は下記化合物である。 [図:0001385184000005.jpg] 【0048】 式(I)で示される化合物とは異なるカチオン性直接染料は、本発明の剤に好ましい量的範囲で含まれる。この量は、高光沢を達成するのに十分多く、しかしながら、染料の過剰な使用濃度に関する欠点(例えば、皮膚の増大した変色、または起こり得る皮膚炎)を回避するのに十分少なく選択しなければならない。 【0049】 これらの必要条件は、本発明の剤が、式(I)で示される化合物とは異なる1つ以上のカチオン性直接染料(b)を、剤の総重量に基づいてそれぞれの場合に0.0005重量%以上0.55重量%以下の総量で含有する場合に満たされる。 【0050】 別の特に好ましい態様では、本発明の剤は、式(I)で示される化合物とは異なる1つ以上のカチオン性直接染料(b)を、剤の総重量に基づいてそれぞれの場合に0.0005~0.55重量%、好ましくは0.005~0.40重量%、より好ましくは0.025~0.30重量%、特に好ましくは0.05~0.20重量%の総量で含有することを特徴とする。」 第6 取消理由についての当審の判断 1 取消理由1(引用文献1を主引例とした進歩性の欠如)について 当審は、本件発明1、3~6は、引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2に記載された事項並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないと判断する。その理由は、以下のとおりである。 (1)本件発明1について ア 引用発明との対比 本件発明1と引用発明を対比する。 引用発明における「Bluequat bromide」は、引用文献2の記載事項(摘記2(1))によれば、「HC Blue 16」、すなわち本件発明1における「HC青16」に相当し、したがって、本件発明1における「成分A」に相当する。 引用発明における「1重量%」は、「1質量%」に換算できることは明らかである。 引用発明における「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」は、本件発明1における「成分B」の染料の選択肢に含まれる「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」に相当するところ、引用発明における「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」の合計量は0.150質量%であることから、「成分Bの含有量が0.005~1.5質量%」である点においても、本件発明1と一致する。 引用発明における「HC黄2」は、本件発明1における「成分D」の染料の選択肢の1つである「HC黄2」に相当する。 引用発明における「ケラチン繊維の染色剤」は、本件発明1における「染毛料組成物」に相当する。 引用発明における、成分Aに相当する「HC青16」の含有量に対する、成分Bに相当する「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」の含有量の質量割合〔成分B/成分A〕は、0.71(=0.150/0.21)であり、本件発明1における「0.01~1.0」の範囲内である。 そうすると、本件発明1と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「下記成分A、下記成分B、及び下記成分Dを含有し、 前記成分Bの含有量が0.005~1.5質量%であり、 前記成分Aの含有量に対する、前記成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]が、0.01~1.0である染毛料組成物。 成分A:HC青16 成分B:塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87、及び塩基性黄57からなる群より選ばれる1以上の染料 成分D:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料 」 <相違点> 本件発明1では、 成分Aの含有量は0.5~3.0質量%と特定され、 成分Dの含有量は0.01~0.15質量%と特定され、 成分CとしてHC青2を含み、その含有量は0.1~1.5質量%と特定され、 前記成分Cの含有量に対する、前記成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]が、0.005~1.0であり、 前記成分Aの含有量に対する、前記成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]が、0.05~6.0 と特定されているのに対し、 引用発明においては、 成分Aの含有量は0.21質量%であり、 成分Dの含有量は0.20質量%であり、 成分CとしてHC青2を含まず、 前記成分Cの含有量に対する、前記成分Dの含有量の質量割合、及び 前記成分Aの含有量に対する、前記成分Cの含有量の質量割合、 について、何も特定がされていない点。 イ 進歩性の判断 上記アの相違点について、検討する。 (ア) 引用発明は、青色のHC染料としてHC青12を含有するものである。そして、引用文献1には、非イオン性直接染料として、HC青12の他にHC青2を使用できることが記載されており(摘記1(6)【0103】)、引用発明である製造例4bと並んで記載される製造例4aの染料組成物は、1.50重量%のHC青2を含有している(摘記1(11))。 (イ) しかしながら、引用文献1には、青色のHC染料の種類に着目し、HC青2を選択したうえで、HC青16とHC青2の配合割合、HC黄2とHC青2の配合割合を所定の範囲となるよう調整すること、さらにHC青16の含有量を0.5~3.0質量%、HC黄2の含有量を0.01~0.15質量%、HC青2の含有量を0.1~1.5質量%の範囲とすることについては、記載も示唆もない。 (ウ) 引用文献2にも、青色のHC染料の種類に着目し、HC青2を選択したうえで、HC青16とHC青2の配合割合、HC黄2とHC青2の配合割合を所定の範囲となるよう調整したうえで、さらにHC青16の含有量を0.5~3.0質量%、HC黄2の含有量を0.01~0.15質量%、HC青2の含有量を0.1~1.5質量%の範囲とすることは、記載も示唆もされていないし、そのような各染料の組み合わせや配合量及び配合割合が、本件特許出願前の技術常識であったとも認められない。 (エ) そうすると、引用発明のケラチン繊維の染色剤を、本件発明1の発明特定事項である各染料の組み合わせ、配合量及び配合割合を全て兼ね備えた染毛料組成物とすることに、当業者が動機付けられたとはいえない。 (オ) さらに、本件明細書の実施例の記載によれば、本件発明1は、優れた染色性と皮膚汚れ抑制を両立させ、しかも、堅牢性及び変色抑制能にも優れる又は良好である効果を奏することが認められ、これは予測し得ない格別顕著な効果といえる。 (カ) したがって、本件発明1は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された事項、並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)本件発明3~6について 本件発明3~6は、本件発明1を直接的に又は間接的に引用する本件発明1の従属発明であり、本件発明1の発明特定事項を全て備え、更に技術的に限定してなる発明である。 そして、上記(1)で説示したとおり、本件発明1が、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された事項、並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1を更に技術的に限定してなる、本件発明3~6も、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された事項、並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)申立人の主張について 申立人Bは、意見書において、本件発明と引用発明の、染料の種類の相違や、含有量の相違について、それぞれ個別に検討し、各相違点をそれぞれ埋めることは、想到容易である旨を主張している。 しかしながら、本件発明は、染毛料組成物に係る発明であって、染毛料組成物の「染色性」は、組成物に含有される単一の染料のみの染色性により決まるものではなく、個々の染料の彩度や染色速度の違いによっても影響されるという事情があるところ、組成物の要素がそれぞれ想到容易であるからといって、優れた染色性と皮膚汚れ抑制を両立させ、しかも、堅牢性及び変色抑制能にも優れる又は良好な染毛料組成物として、本件発明の特定事項である各染料の組み合わせ、配合量及び配合割合を全て兼ね備えた染毛料組成物を想到することが容易とはいえないことは、上記(1)イで説示したとおりである。 したがって、申立人の主張は採用できない。 (4)取消理由1についての小括 以上のとおり、本件発明1、3~6は、引用文献1に記載された発明、及び引用文献2に記載された事項、並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件請求項1、3~6に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、同法第113条第2号に該当しないから、取消理由1によって取り消すことはできない。 2 取消理由2(サポート要件違反)について (1)取消理由2の内容 当審が取消理由として通知した取消理由2の要点は、概ね以下のとおりである。 ア 本件発明の解決しようとする課題は、本件明細書【0006】の記載からみて、「毛髪に対する十分な染色性を有するにもかかわらず、皮膚への染着性は抑えられた染毛料組成物を提供すること」と認められる。 イ そして、カチオン性染料等の染料の過剰な使用濃度によって皮膚の増大した変色といった欠点が生じることは技術常識であるから、皮膚への着色を防ぐためには、染毛料組成物全体に含まれる染料の種類や総量も制御する必要があることが理解される。 ウ しかしながら、本件発明は、成分A~D以外の塩基性染料、HC染料は制限なく含みうると解されるものであり、しかも、製品形態を何も特定していないことに鑑みれば、酸化染料といった、塩基性染料やHC染料以上に皮膚への着色性が高い染料も含みうるものであるところ、このような他の染料を多量に含む染毛料組成物とした場合、本件発明の課題が解決できないことは明らかである。 エ そうしてみると、本件発明1~6は、成分A~Dを構成する染料の種類と含有量しか特定していない点において、その課題を解決できることを当業者が認識できる範囲を超えたものであるから、本件発明1~6は、発明の詳細な説明に記載したものではない。 (2)サポート要件の判断 ア 本件明細書の発明の詳細な説明には、成分A~Dそれぞれの役割や好ましい含有量及びその理由について、具体的な説明が記載されている(成分Aについては【0020】、【0023】、成分Bについては【0024】、【0025】、【0032】~【0034】、成分Cについては【0035】、【0037】、成分Dについては【0038】、【0040】、【0041】)。 イ そして、質量割合〔成分B/成分A〕及び〔成分D/成分C〕を所定の範囲にする理由については、色調を、特に白髪染めにおいてより自然にするためであることが記載され(【0043】、【0044】)、質量割合〔成分C/成分A〕を所定の範囲にする理由についても、ダメージ毛に対する色ムラが生じにくく、染色性と色持ちに優れることが記載されている(【0045】。) ウ さらに、発明の詳細な説明には、成分A~Dを本件発明1で特定される種類、配合量、配合比とすれば、前記課題を解決できることが実施例として具体的に確認されている。 エ すなわち、発明の詳細な説明の【0095】【表1】に記載された「実施例1-1」~「実施例1-4」、「実施例1-6」~「実施例1-9」、「実施例1-11」~「実施例1-20」のカラーリンス(カラートリートメント)は、成分Aを0.50~2.00質量%、成分Bを0.02~0.40質量%、成分Cを0.10~0.50質量%、成分Dを0.01~0.15質量%で含有しており、成分間の含有量割合は、成分B/成分Aが0.04~0.64、成分D/成分Cが0.02~0.3、成分C/成分Aが0.17~3.0であるところ、いずれも本件発明1で特定される各成分の含有量及び成分間の含有量割合の範囲の条件を全て満たしており、染色性と皮膚汚れの抑制を両立することが確認されている。同様に、【0097】【表3】に記載された「実施例2-1」及び「実施例2-3」のカラーシャンプーも、本件発明1で特定される条件を全て満たしており、染色性と皮膚汚れの抑制を両立することが確認されている。 オ また、「実施例1-12」~「実施例1-20」の組成物と、成分DのHC黄2の配合量が0.2重量%であり本件発明の範囲外の参考例とされる「実施例1-21」及び「実施例1-22」の組成物とを比較すると、前者の組成物では、後者の組成物と比べて、染料の総含有量が少ないにも関わらず、染色性が同等であって、皮膚汚れの抑制においてより優れたものになることも示されている。 カ そうすると、発明の詳細な説明の記載内容に基づけば、成分A~Dを、本件発明1で特定される配合量、配合比とすることで、高い蓋然性をもって本件発明の課題を解決できると当業者は認識できるといえる。 キ さらに、成分A~D以外の任意成分については、本件発明の課題の解決を明らかに妨げるような組成、例えば比較例1-9のように、塩基性青75を0.05質量%配合する態様の組成物は、本件発明には該当しないものと解するのが自然である。 ク また、当業者ならば、発明の詳細な説明において実際に本件発明の課題の解決の当否を認識できるように記載されている実施例及び比較例を参照することによって、当該課題を解決し得る種々の態様の本件発明の組成物を採用できることを理解し得るといえる。 ケ 以上のとおり、取消理由2で指摘した点はいずれも理由がなく、本件発明1、3~6は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載により、その課題を解決できると当業者が認識できる範囲のものであるから、本件請求項1、3~6の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。 (3)申立人の主張について ア 申立人Bは、意見書において、上記(2)クで検討した点に関し、本件発明の課題を解決できるかどうかによって、本件発明に該当するか否かが判断されるとすると、本件明細書の実施例に記載されている評価基準が、例えば、染色性については「◎(優れる):非常に濃く染色されている。」、「○(良好):十分に染色されている。」、「×(不良):染色が薄い」と、抽象的な表現であり明確に評価できないから、どのような場合に、本件発明の課題を解決できるかが明りょうでなく、本件特許発明の範囲が明確でない旨を主張している。 イ しかし、本件出願時の染毛料分野の技術常識に照らして、本件明細書の実施例に記載されている評価基準が、課題の解決の可否が判断できないほど不明瞭であるとは認められない。そして、発明の詳細な説明の記載から、本件発明の染毛料組成物が、発明の課題を解決できることを当業者が認識できることは、上記(2)で説示したとおりである。 ウ なお、毛髪に対する十分な染色性を有するにもかかわらず、皮膚への染着性は抑えられた染毛料組成物であることが、本件発明の特定事項として請求項に記載されているのではないから、発明の詳細な説明に記載された染色性や皮膚への染着性に関する評価基準が抽象的な表現を含んでいても、本件発明の明確性に影響を与えるものではない。 エ したがって、申立人Bの主張は採用できない。 (4)取消理由2についての小括 以上のとおり、本件請求項1、3~6に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、同法第113条第4号に該当するものではないから、取消理由2によって取り消すことはできない。 第7 特許異議の申立ての理由について 申立人A及び申立人Bのそれぞれの特許異議申立書(以下「申立書A」及び「申立書B」という。)の記載全体からみて、申立人A及び申立人Bは、本件訂正前の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由として、下記1及び4に概要を示す申立理由A1~A3及び申立理由Bを申し立てたものと認められる。 また、申立人Aは、証拠方法として、下記2に示す甲第1~6号証(以下、各甲号証を「甲A1」等と略記することがある。)を提出しており、申立人Bは、証拠方法として、下記5に示す甲第1~6号証(以下、各甲号証を「甲B1」等と略記することがある。)を提出している。 1 申立人Aによる申立理由の概要 申立人Aが申し立てた申立理由A1~A3の概要は、申立書Aの記載全体からみて、次のとおりのものと認められる。 [申立理由A1](甲A1を主引例とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲A1に記載された発明、甲A3~甲A5に記載された事項、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 [申立理由A2](甲A2を主引例とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲A2に記載された発明、甲A3~甲A5に記載された事項、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 [申立理由A3](サポート要件違反) 本件特許の請求項1~6に係る発明は、成分A~D以外の染料を含有する場合においても、皮膚への染着性が抑えられた染毛料組成物を得られないから、請求項に係る発明の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえないから、請求項1~6に係る特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立人Aが提出した証拠(証拠方法) 申立人Aが申立書Aに添付して提出した甲第1~6号証(以下、各甲号証を「甲A1」等と略して示す。)は、次のとおりである。 甲第1号証:特開2017-031085号公報(甲A1) 甲第2号証:特開2015-140326号公報(甲A2) 甲第3号証:特表2016-527282号公報(甲A3) 甲第4号証:特表2014-532737号公報(甲A4) 甲第5号証:特表2013-505208号公報(甲A5) 甲第6号証:特開2014-101292号公報(甲A6) 3 申立人Aによる申立理由に対する当審の判断 (1)申立理由A1について ア 甲A1の記載事項及び甲A1に記載された発明 甲A1には、以下の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、毛髪明度向上剤及び該毛髪明度向上剤を使用する毛髪色彩調整剤・・・に関する。 【背景技術】 【0002】 毛髪の染色には、染毛効果が優れるという理由から、酸化染毛剤が広く利用されている。一般に、酸化染毛剤は、酸化染料及びアルカリ剤を含む第1剤と、過酸化水素を含む第2剤からなり、第1剤と第2剤を混合して使用される。第1剤中のアルカリ剤は、第2剤中の過酸化水素を分解して酸素を発生させる。発生した酸素により、毛髪中のメラニン色素が分解されて毛髪が脱色されると共に、第1剤中の酸化染料が毛髪内部で酸化重合されて毛髪が染色される。また、アルカリ剤は、毛髪表面のキューティクルを開いて毛髪を膨潤させる効果を有するため、酸化染料が毛髪内部に浸透しやすくなって、染毛効果が向上する。しかしながら、アルカリ剤は毛髪の主成分であるケラチン蛋白を分解する作用も有しており、染毛時における毛髪損傷の一因となっている。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 このように、毛髪の脱色時や染色時における毛髪へのダメージ軽減を目的とした染毛剤が検討されているものの、未だその効果は十分とはいえず、更なる改良が求められている。 【0006】 そこで、本発明は、脱色時に毛髪に与える損傷を軽減することができる毛髪明度向上剤を提供することを主目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明は、アルカノールアミン及び/又は低級アルコール、高級アルコール、並びにアミノ酸及び/又はアミノ酸塩を含有する毛髪処理用組成物と、酸化剤を含有する酸化剤組成物と、を混合して使用される毛髪明度向上剤を提供する。また、本発明は、上記毛髪明度向上剤と、HC染料、塩基性染料、並びにアミノ酸及び/又はアミノ酸塩を含有する第1染着用組成物と、を混合して使用される毛髪色彩調整剤を提供する。 ・・・ 【発明の効果】 【0008】 本発明によれば、脱色時に毛髪に与える損傷を軽減することができる。 ・・・ 【発明を実施するための形態】 ・・・ 【0011】 <毛髪明度向上剤> 本発明の一実施形態に係る毛髪明度向上剤は、アルカノールアミン及び/又は低級アルコール、高級アルコール、並びにアミノ酸及び/又はアミノ酸塩を含有する毛髪処理用組成物と、酸化剤を含有する酸化剤組成物と、を混合して使用される。本実施形態に係る毛髪明度向上剤は、毛髪の明度を向上させる作用、即ち、毛髪の色の明るさの度合いを高める作用を有するものである。 【0012】 (毛髪処理用組成物) 毛髪処理用組成物は、アルカノールアミン及び低級アルコールのうち少なくとも一方と、高級アルコールと、アミノ酸及びアミノ酸塩の少なくとも一方と、を含有する。 ・・・ 【0027】 (酸化剤組成物) 本実施形態に係る毛髪明度向上剤のために使用される酸化剤組成物は、酸化剤を含有する。酸化剤は、特に限定されないが、例えば、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、臭素酸ナトリウム等が挙げられる。・・・。これらの酸化剤の中でも、メラニン色素を分解する効果が優れていることから、過酸化水素が好ましい。 ・・・ 【0032】 <毛髪色彩調整剤> 本発明の一実施形態に係る毛髪色彩調整剤は、毛髪明度向上剤として用いられる毛髪処理用組成物及び酸化剤組成物と、HC染料、塩基性染料、並びにアミノ酸及び/又はアミノ酸塩を含有する第1染着用組成物と、を混合して使用される。当該毛髪明度向上剤は、上記にて詳説した毛髪明度向上剤と同一である。本実施形態に係る毛髪色彩調整剤のために使用される第1染着用組成物は毛髪に色彩を付与する作用を有する。毛髪処理用組成物と酸化剤組成物と第1染着用組成物とを組み合わせて使用することで、毛髪を明るくかつ色彩豊かに染毛することが可能である。 【0033】 (第1染着用組成物) 第1染着用組成物に含有されるHC染料は、特に限定されず、公知のHC染料を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。HC染料としては、例えば、HC青2、HC青8、HC赤1、HC赤3、HC赤7、HC赤11、HC赤13、HC黄2、HC黄4、HC黄5、HC黄9、HC黄11、HC黄13、HC橙1、HC橙2、HC紫1、HC紫2等が挙げられる。 【0034】 第1染着用組成物に含有される塩基性染料は、特に限定されず、公知の塩基性染料を1種又は2種以上組み合わせて使用することができる。塩基性染料としては、例えば、塩基性青7、塩基性青9、塩基性青26、塩基性青75、塩基性青99、塩基性赤2、塩基性赤22、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄57、塩基性黄87、塩基性橙31、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性紫3、塩基性紫4、塩基性紫14等が挙げられる。 ・・・ 【0036】 従前より、HC染料及び塩基性染料は、カラートリートメントの染毛成分として使用されている。・・・。 ・・・ 【0042】 本実施形態に係る毛髪色彩調整剤は、毛髪処理用組成物と第1染着用組成物とを混合して得た混合物に、酸化剤組成物を混合することにより得られる。・・・。 ・・・ 【実施例】 【0068】 以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。・・・。また、配合量の単位は、特記しない限り質量%である。 【0069】 <試験例1> 以下に示す各成分を常法により混合して、毛髪処理用組成物A-1を調整 した。(当審注:「調整」は「調製」の明らかな誤記と認める。) [毛髪処理用組成物A-1] モノエタノールアミン 8.0 セチルアルコール 9.0 ステアリルアルコール 2.0 プロピレングリコール 5.0 ミリスチン酸イソプロピル 2.0 10%アンモニア水 3.0 ステアリン酸 1.0 ラウリン酸ポリグリセリル-10 1.0 ステアリン酸グリセリル 1.0 アルギニン 0.1 水酸化ナトリウム 0.2 EDTA-2Na 0.1 香料 0.6 精製水 残量 【0070】 上記毛髪処理用組成物A-1と、6%過酸化水素水(・・・)とを、1: 1の質量比で混合し、実施例1の毛髪明度向上剤を調製した。 ・・・ 【0073】 <試験例2> 以下に示す各成分を常法により混合して、第1染着用組成物B-1(茶色 )を調整した。(当審注:「調整」は「調製」の明らかな誤記と認める。) [第1染着用組成物B-1(茶色)] エタノール 0.5 セチルアルコール 5.0 ステアリルアルコール 1.0 ベヘニルアルコール 0.5 ジプロピレングリコール 3.0 ベンジルアルコール 2.0 ミネラルオイル 3.0 ステアルトリモニウムクロリド 1.0 ベヘントリモニウムクロリド 0.5 ラノリン 0.5 ヒドロキシエチルセルロース 0.3 トリエタノールアミン 0.2 エチドロン酸 0.1 HC青2 0.11 HC黄2 0.041 HC赤3 0.053 塩基性茶17 0.277 塩基性茶16,塩基性青99,塩基性青76,塩基性赤76,塩基性黄57,紫401 各0.143 アルギニン 0.1 L-システイン塩酸塩 0.1 リシン 0.05 ヒスチジン 0.05 メチルパラベン 0.15 プロピルパラベン 0.05 香料 0.6 精製水 残量 【0074】 また、上記第1染着用組成物B-1(茶色)の成分のうち、色素(HC染料、塩基性染料、紫401)の種類を変更して、常法によりこれらを混合し、第1染着用組成物B-2(青色)と、第1染着用組成物B-3(赤色)を調整した。(当審注:「調整」は「調製」の明らかな誤記と認める。) 【0075】 上記毛髪処理用組成物A-1と上記第1染着用組成物B-1(茶色)とを、1:1の質量比で混合し、混合物を得た。得られた混合物と上記6%過酸化水素水とを、1:1の質量比で混合し、実施例2の毛髪色彩調整剤(茶色)を調製した。同様に、第1染着用組成物B-2(青色)、第1染着用組成物B-3(赤色)のそれぞれについても、毛髪処理用組成物A-1と混合した後上記6%過酸化水素水を混合した。これにより、実施例3の毛髪色彩調整剤(青色)及び実施例4の毛髪色彩調整剤(赤色)を調製した。・・・【0077】実施例2~4の毛髪色彩調整剤と比較例2~4の染料をそれぞれ黒色の人毛毛束に均一に塗布し、30分間放置した後、シャンプー処理した。その後、ドライヤーで毛束を乾燥した。・・・。【0078】・・・、実施例2~4は、比較例2~4と比較して毛髪の乾燥が抑制されており、損傷が少なく、また、発色がより鮮やかであった。試験例2の結果から、本発明に係る毛髪色彩調整剤は、毛髪の損傷を軽減しつつ色鮮やかに染毛することが可能であることが確認された。」 甲A1に記載された実施例2の毛髪色彩調整剤(茶色)」には、その調製工程からみて、[第1染着用組成物B-1(茶色)]の各成分が、それぞれの含有量の4分の1の量で含まれていると認められる。 そうすると、甲A1には、上記実施例2の「毛髪色彩調整剤(茶色)」について、染料成分に着目すると、次の発明(以下「甲A1発明」という。)が記載されているものと認められる。 ≪甲A1発明≫ 「塩基性赤76を0.03575質量%、 塩基性黄57を0.03575質量%、 HC青2を0.0275質量%、 HC黄2を0.01025質量%、 塩基性青99を0.03575質量%、 塩基性青76を0.03575質量%、 塩基性茶17を0.06925質量%、 塩基性茶16を0.03575質量%、 HC赤3を0.01325質量%、 紫401を0.03575質量%、 含有する、毛髪色彩調整剤(茶色)。」 イ 本件発明1と甲A1発明の対比 本件発明1と甲A1発明を対比する。 甲A1発明における「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」は、本件発明1における「成分B」の染料の選択肢に含まれる「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」に相当するところ、甲A1発明における「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」の合計量は0.0715質量%であることから、「成分Bの含有量が0.005~1.5質量%」である点においても、本件発明1と一致する。 甲A1発明における「HC青2」は、本件発明1における「成分C」の染料の「HC青2」に相当する 甲A1発明における「HC黄2」は、本件発明1における「成分D」の染料の選択肢の1つである「HC黄2」に相当するところ、「HC黄2」の含有量は0.01025質量%であることから、「成分Dの含有量が0.01~0.15質量%」である点においても、本件発明1と一致する。 甲A1発明における「毛髪色彩調整剤(茶色)」は、毛髪を染毛するために毛髪に直接適用される組成物であるから(【0032】、【0077】~【0078】)、本件発明1における「染毛料組成物」に相当する。 甲A1発明における、成分Cに相当する「HC青2」の含有量に対する、成分Dに相当する「HC黄2」の含有量の質量割合〔成分D/成分C〕は、0.37(=0.01025/0.0275)であり、本件発明1における「0.005~1.0」の範囲内である。 そうすると、本件発明1と引用発明A1の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「下記成分B、下記成分C、及び下記成分Dを含有し、 前記成分Bの含有量が0.005~1.5質量%であり、 前記成分Dの含有量が0.01~0.15質量%であり、 前記成分Cの含有量に対する、前記成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]が、0.005~1.0である染毛料組成物。 成分B:塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87、及び塩基性黄57からなる群より選ばれる1以上の染料 成分C:HC青2 成分D:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料 」 <相違点> 本件発明1では、 成分AとしてHC青16を含有し、 成分Aの含有量は0.5~3.0質量%と特定され、 成分Cの含有量は0.1~1.5質量%と特定され、 成分Aの含有量に対する、成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]が、0.01~1.0であり、 成分Aの含有量に対する、成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]が、0.05~6.0 と特定されているのに対し、 引用発明においては、 成分AとしてHC青16を含有せず、その配合量の特定もなく、 成分Cの含有量が0.0275質量%であり、 成分Aの含有量に対する、成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A] 及び 成分Aの含有量に対する、成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A] について、何も特定がされていない点 ウ 本件発明1の進歩性の判断 上記イの相違点について、検討する。 (ア) 甲A1には、第1染着用組成物に含有される塩基性染料は、特に限定されず、公知の塩基性染料を1種又は2種以上組み合わせて使用することができることが記載されているが(【0034】)、塩基性染料としてHC青16を配合することは記載されていない。 (イ) そして、甲A3~甲A5には、カチオン性直接染料としてHCブルー16が記載されていることから(甲A3:【0034】、甲A4:【0032】、甲A5:【0054】)、HC青16は本件出願時に公知の塩基性直接染料であったことが認められるものの、甲A1には、HC青16について何ら記載もなく、青色の塩基性染料の種類に着目してHC青16を選択し、その配合量を0.5~3.0質量%の範囲に特定したうえで、HC青16と塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87及び塩基性黄57の合計量との配合割合、HC青16とHC青2の配合割合を所定の範囲となるよう調整することについて、記載も示唆もされていない。 (ウ) 甲A3~甲A5にも、本件発明1を構成する各染料に着目して、その配合量、配合割合を特定することは、記載も示唆もされていないし、そのような各染料の組み合わせや配合量及び配合割合が、本件特許出願前の技術常識であったとも認められない。 (エ) そうすると、甲A1発明の毛髪色彩調整剤を、本件発明1の発明特定事項である各染料の組み合わせ、配合量及び配合割合を全て兼ね備えた染毛料組成物とすることに、当業者が動機付けられたとはいえない。 (オ) さらに、本件明細書の実施例の記載によれば、本件発明1は、優れた染色性と皮膚汚れ抑制を両立させ、しかも、堅牢性及び変色抑制能にも優れる又は良好である効果を奏することが認められ、これは予測し得ない格別顕著な効果といえる。 (カ) したがって、本件発明1は、甲A1に記載された発明、及び甲A3~甲A5に記載された事項並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 本件発明3~6について 本件発明3~6は、本件発明1を直接的に又は間接的に引用する本件発明1の従属発明であり、本件発明1の発明特定事項を全て備え、更に技術的に限定してなる発明である。 そして、上記ウで説示したとおり、本件発明1が、甲A1に記載された発明、及び甲A3~甲A5に記載された事項並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1を更に技術的に限定してなる、本件発明3~6も、甲A1に記載された発明、及び甲A3~甲A5に記載された事項並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 オ 申立人の主張について 申立人Aは、 (ア)HC青16は甲A3~甲A5に記載される公知の染料であって、染毛料組成物の技術分野において公知の染料から好適なものを選択することは、当業者の通常の創作能力の発揮であること、 (イ)塩基性染料の含有量を多くすると染毛力が向上し、多くなりすぎると皮膚汚れが生じることは、本件特許出願日前の周知技術であること、 (ウ)各染料の配合量や質量割合は当業者が適宜設定する設計的事項であること、 (エ)本件明細書に記載される実施例1-1と比較例1-9との対比から、塩基性青75に代えてHC青16を使用することにより、皮膚汚れを改善するという効果が認められるものの、直接染料を含有する染毛料組成物の技術分野において皮膚への染着(地肌汚れ)を改善することは、本件出願前の周知の課題である(甲A6:【0006】)から、HC青16を使用する際に、皮膚への染着がどの程度であるかを確認することは当業者が通常行うことであること、 を主張する。 そこで検討するに、申立人Aの上記主張は、いずれも、本件発明と甲A1発明の、染料の種類の相違や、含有量の相違について、それぞれ個別に検討し、各相違点をそれぞれ埋めることは想到容易であるとの論理に基づくものである。 しかしながら、本件発明は、染毛料組成物に係る発明であって、染毛料組成物の「染色性」は、組成物に含有される単一の染料のみの染色性により決まるものではなく、個々の染料の彩度や染色速度の違いによっても影響されるという事情があるところ、組成物を構成する要素が、個別にはそれぞれ想到容易であるからといって、優れた染色性と皮膚汚れ抑制を両立させ、しかも、堅牢性及び変色抑制能にも優れる又は良好な染毛料組成物として、本件発明の特定事項である各染料の組み合わせ、配合量及び配合割合を全て兼ね備えた染毛料組成物を想到することが容易とはいえないことは、上記ウで説示したとおりである。 したがって、申立人Aの上記主張は採用できない。 カ 申立理由A1についての小括 以上のとおり、本件発明1、3~6は、甲A1に記載された発明、及び甲A3~甲A5に記載された事項並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件請求項1、3~6に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、同法第113条第2号に該当しないから、申立理由A1によって取り消すことはできない。 (2)申立理由A2について ア 甲A2の記載事項及び甲A2に記載された発明 甲A2には、以下の事項が記載されている。 「【請求項1】 下記の一般式(1)で表されるラクトン誘導体を含有する、染色した毛髪の褪色防止剤。 【化1】 [図:0001385184000006.jpg] (ただし式中、nは1又は2であり、Rは炭素数9~22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和炭化水素基を表す) ・・・ 【請求項8】 請求項1に記載の褪色防止剤を含有する染毛料。 ・・・ 【背景技術】 【0002】 近年、白髪染めに加え、毛髪を好みの色に染めるおしゃれ染めをする人が増加し、染毛に対する消費者意識の高まりに伴い、染毛の技術は日々進歩している。しかしながら、シャンプー等の洗髪や日常のダメージなどにより染色した毛髪が褪色してしまう問題は、従来から重要な課題のひとつとなっている。 ・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 染色した毛髪に対して優れた褪色防止効果を有する褪色防止剤、及び、これを用いた褪色防止方法を提供する。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、下記一般式(1)で表されるラクトン誘導体が、染色した毛髪に対して優れた褪色防止効果を有することを見出し、本発明を完成させた。・・・。 【化1】 (当審注:式の摘記は省略する。) ・・・ 【発明を実施するための形態】 ・・・ 【0011】 本発明において、染色した毛髪とは、一般に用いられる方法で染色した毛髪であればよく、特に制限はないが、例えば、酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料などを用いた染毛料、又は、酸化染料を主体とした染毛剤などによって染色した毛髪が挙げられる。・・・。 ・・・ 【0017】 本発明において染毛料とは、酸性染料、塩基性染料、ニトロ染料などの直接染料を主剤としたものであり、具体的にはヘアマニキュア、ヘアカラーリンス、ヘアカラートリートメントなどが挙げられる。・・・。 ・・・ 【0019】 本発明の褪色防止剤を配合した染毛前処理剤、染毛後処理剤、又は、染毛料には、一般的に毛髪化粧料に配合される添加成分、例えば油性基剤、・・・、香料、色素、着色剤、染料、顔料、水等を配合することができる。 ・・・ 【0032】 香料としては、アセチルセドレン、・・・、ペパーミント油、ペパー油、ヘリオトロピン、赤色223号、・・・、黄色5号等の法定色素;Acid Red 14等のその他酸性染料;Arianor Sienna Brown、Arianor Madder Red、Arianor Steel Blue、Arianor Straw Yellow等の塩基染料;HC Yellow 2、HC Yellow 5、HC Red 3、・・・、HC Blue 2、Basic Blue 26等のニトロ染料;分散染料;二酸化チタン、酸化亜鉛等の無機白色顔料;・・・;表面処理無機及び金属粉末顔料;赤色201号、・・・;インドリン等の自動酸化型染料;ジヒドロキシアセトンが好ましいものとして挙げられる。 ・・・ 【0036】 合成例1 γ-エルカラクトン(4-ヒドロキシドコサン酸γ-ラクトン)の合成 ・・・。本化合物について1H-NMRスペクトルにて構造確認を行ったところ、下記一般式で表される化合物であることを確認した(・・・)。 【化3】 [図:0001385184000007.jpg] ・・・ 【0065】 実施例12 ヘアカラートリートメント 下記処方のヘアカラートリートメントを調製した。このトリートメントは、優れた染色性及び褪色防止効果を有し、毛髪にしっとり感、ハリコシ感を付与し、うねり、絡まりを抑制するものであった。また、その効果はトリートメント塗布後ドライヤーでブローすることで、シャンプー後も持続するものであった。 成 分 配合量(重量%) ---------------------------------- A部 合成例1の化合物 0.3 ステアリルアルコール 3.0 B部 ステアルトリモニウムクロリド(70%) 1.5 ステアリン酸グリセリル 1.0 コカミドメチルMEA 1.0 YOFCO CLE-S(日本精化) 0.5 ラウロイルグルタミン酸ジ(オクチルドデシル/フィトステリル/ベヘ ニル)(Plandool-LG1:日本精化) 0.3 シア脂 0.5 ジメチコン(50cs) 2.0 フェノキシエタノール 0.5 コカミドメチルMEA 0.5 C部 ヒドロキシエチルセルロース 0.5 精製水 合計で100となる量 D部 BG 1.0 塩基性黄57 0.1 塩基性赤76 0.05 HC青2 0.15 HC黄4 0.03 炭酸アンモニウム 0.8 HC赤3 0.01 クチナシ青 0.05 4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール 0.05 精製水 20.0 ---------------------------------- (調製方法) あらかじめ均一に混合しておいたA部をB部に添加し約80℃に加温して溶解させた(E部)。別の容器でC部を約80℃に加温し溶解させた。E部にC部を攪拌しながら徐々に加え均一に混合した後、急冷した(F部)。約40℃となったF部にD部を加え均一にした。」 甲A2に記載された実施例12の「ヘアカラートリートメント」について、染料成分に着目すると、甲A2には、以下の発明(以下「甲A2発明」という。)が記載されている。 ≪甲A2発明≫ 「塩基性赤76を0.05重量%、 塩基性黄57を0.1重量%、 HC青2を0.15重量%、 HC黄4を0.03重量%、 HC赤3を0.01重量% クチナシ青を0.05重量%、 を含有する、ヘアカラートリートメント。」 イ 本件発明1と甲A2発明の対比 本件発明1と甲A2発明を対比する。 甲A2発明における「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」は、本件発明1における「成分B」の染料の選択肢に含まれる「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」に相当するところ、甲A2発明における「塩基性赤76」及び「塩基性黄57」の合計量は0.15質量%であることから、「成分Bの含有量が0.005~1.5質量%」である点においても、本件発明1と一致する。 甲A2発明における「HC青2」は、本件発明1における「成分C」の染料の「HC青2」に相当するところ、甲A2発明における「HC青2」の含有量は0.15質量%であることから、「成分Cの含有量が0.1~1.5質量%」である点においても、本件発明1と一致する。 甲A2発明における「HC黄4」は、本件発明1における「成分D」の染料の選択肢の1つである「HC黄4」に相当するところ、「HC黄4」の含有量は0.03質量%であることから、「成分Dの含有量が0.01~0.15質量%」である点においても、本件発明1と一致する。 甲A2発明における「ヘアカラートリートメント」は、本件発明1における「染毛料組成物」に相当する。 甲A2発明における、成分Cに相当する「HC青2」の含有量に対する、成分Dに相当する「HC黄4」の含有量の質量割合〔成分D/成分C〕は、0.2(=0.03/0.15)であり、本件発明1における「0.005~1.0」の範囲内である。 そうすると、本件発明1と甲A2発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点> 「下記成分B、下記成分C、及び下記成分Dを含有し、 前記成分Bの含有量が0.005~1.5質量%であり、 前記成分Cの含有量が0.1~1.5質量%であり、 前記成分Dの含有量が0.01~0.15質量%であり、 前記成分Cの含有量に対する、前記成分Dの含有量の質量割合[成分D/成分C]が、0.005~1.0である染毛料組成物。 成分B:塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87、及び塩基性黄57からなる群より選ばれる1以上の染料 成分C:HC青2 成分D:HC黄4及びHC黄2からなる群より選ばれる1以上の染料 」 <相違点> 本件発明1では、 成分AとしてHC青16を含有し、 成分Aの含有量は0.5~3.0質量%と特定され、 成分Aの含有量に対する、成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A]が、0.01~1.0であり、 成分Aの含有量に対する、成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A]が、0.05~6.0 と特定されているのに対し、 引用発明においては、 成分AとしてHC青16を含有せず、その配合量の特定もなく、 成分Aの含有量に対する、成分Bの含有量の質量割合[成分B/成分A] 及び 成分Aの含有量に対する、成分Cの含有量の質量割合[成分C/成分A] について、何も特定がされていない点 ウ 本件発明1の進歩性の判断 上記イの相違点について、検討する。 (ア) 甲A2には、染毛料に配合できる塩基染料として幾つか例示されているが(【0032】)、塩基染料としてHC青16を配合することは記載されていない。 (イ) そして、甲A3~甲A5には、カチオン性直接染料としてHCブルー16が記載されていることから(甲A3:【0034】、甲A4:【0032】、甲A5:【0054】)、HC青16は本件出願時に公知の塩基染料であったことが認められるものの、甲A2には、HC青16について何ら記載もなく、青色の塩基染料の種類に着目してHC青16を選択し、その配合量を0.5~3.0質量%の範囲に特定したうえで、HC青16と塩基性橙31、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄87及び塩基性黄57の合計量との配合割合、HC青16とHC青2の配合割合を所定の範囲となるよう調整することについては、記載も示唆もされていない。 (ウ) 甲A3~甲A5にも、本件発明1を構成する各染料に着目して、その配合量、配合割合を特定することは、記載も示唆もされていないし、そのような各染料の組み合わせや配合量及び配合割合が、本件特許出願前の技術常識であったとも認められない。 (エ) そうすると、甲A2発明のヘアカラートリートメントを、本件発明1の発明特定事項である各染料の組み合わせ、配合量及び配合割合を全て兼ね備えた染毛料組成物とすることに、当業者が動機付けられたとはいえない。 (オ) さらに、本件明細書の実施例の記載によれば、本件発明1は、優れた染色性と皮膚汚れ抑制を両立させ、しかも、堅牢性及び変色抑制能にも優れる又は良好である効果を奏することが認められ、これは予測し得ない格別顕著な効果といえる。 (カ) したがって、本件発明1は、甲A2に記載された発明、及び甲A3~甲A5に記載された事項並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 エ 本件発明3~6について 本件発明3~6は、本件発明1を直接的に又は間接的に引用する本件発明1の従属発明であり、本件発明1の発明特定事項を全て備え、更に技術的に限定してなる発明である。 そして、上記ウで説示したとおり、本件発明1が、甲A2に記載された発明、及び甲A3~甲A5に記載された事項並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本件発明1を更に技術的に限定してなる、本件発明3~6も、甲A2に記載された発明、及び甲A3~甲A5に記載された事項並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 オ 申立人の主張について 申立人Aは、 (ア)HC青16は甲A3~甲A5に記載される公知の染料であって、染毛料組成物の技術分野において公知の染料から好適なものを選択することは、当業者の通常の創作能力の発揮であること、 (イ)塩基性染料の含有量を多くすると染毛力が向上し、多くなりすぎると皮膚汚れが生じることは、本件特許出願日前の周知技術であること、 (ウ)各染料の配合量や質量割合は当業者が適宜設定する設計的事項であること、 (エ)本件明細書に記載される実施例1-1と比較例1-9との対比から、塩基性青75に代えてHC青16を使用することにより、皮膚汚れを改善するという効果が認められるものの、直接染料を含有する染毛料組成物の技術分野において 皮膚への染着(地肌汚れ)を改善することは、本件出願前の周知の課題である(甲A6:【0006】)から、HC青16を使用する際に、皮膚への染着がどの程度であるかを確認することは当業者が通常行うことであること、 を主張する。 そこで検討するに、申立人Aの上記主張は、いずれも、本件発明と甲A2発明の、染料の種類の相違や、含有量の相違について、それぞれ個別に検討し、各相違点をそれぞれ埋めることは想到容易であるとの論理に基づくものである。 しかしながら、本件発明は、染毛料組成物に係る発明であって、染毛料組成物の「染色性」は、組成物に含有される単一の染料のみの染色性により決まるものではなく、個々の染料の彩度や染色速度の違いによっても影響されるという事情があるところ、組成物を構成する要素が、個別にはそれぞれ想到容易であるからといって、優れた染色性と皮膚汚れ抑制を両立させ、しかも、堅牢性及び変色抑制能にも優れる又は良好な染毛料組成物として、本件発明の特定事項である各染料の組み合わせ、配合量及び配合割合を全て兼ね備えた染毛料組成物を想到することが容易とはいえないことは、上記ウで説示したとおりである。 したがって、申立人Aの上記主張は採用できない。 カ 申立理由A2についての小括 以上のとおり、本件発明1、3~6は、甲A2に記載された発明、及び甲A3~甲A5に記載された事項、並びに本件特許出願前の技術常識に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 よって、本件請求項1、3~6に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、同法第113条第2号に該当しないから、申立理由A2によって取り消すことはできない。 (3)申立理由A3について 申立理由A3は、上記第4に示した取消理由2(サポート要件違反)と同趣旨である。 そして、取消理由2については、上記第6の2(2)において当審の判断を説示したとおりであり、本件請求項1、3~6の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。 したがって、本件請求項1、3~6に係る特許は、特許法第113条第4号に該当するものでないから、申立理由A3によって取り消すことはできない。 4 申立人Bによる申立理由の概要 申立人Bが申し立てた申立理由Bの概要は、申立書Bの記載全体からみて、次のとおりのものと認められる。 [申立理由B](甲B1を主引例とする進歩性欠如) 本件特許の請求項1~6に係る発明は、甲B1に記載された発明、甲B2~甲B6に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 5 申立人Bが提出した証拠(証拠方法) 申立人Bが申立書Bに添付して提出した甲第1~6号証(以下、各甲号証を「甲B1」等と略して示す。)は、次のとおりである。 甲第1号証:米国特許出願公開第2014/0298598号明細書(甲B1:取消理由通知で引用された引用文献1) 甲第2号証:特表2016-501207号公報(甲B2:取消理由通知で引用された引用文献2) 甲第3号証:米国特許出願公開第2016/0158125号明細書(甲B3) 甲第4号証:特開2012-246284号公報(甲B4) 甲第5号証:特開2017-048153号公報(甲B5) 甲第6号証:特開2014-101290号公報(甲B6) 6 申立理由Bに対する当審の判断 申立理由Bは、上記第4に示した取消理由1(引用文献1を主引例とした進歩性の欠如)と同趣旨である。 そして、取消理由1については、上記第6の1において当審の判断を説示したとおり、本件請求項1、3~6に係る発明は、甲B1(引用文献1)に記載された発明、及び甲B2(引用文献2)に記載された事項及び甲B3~B6に記載される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 したがって、本件請求項1、3~6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえず、同法第113条第2号に該当するものでないから、申立理由Bによって取り消すことはできない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、本件特許についての訂正の請求は、適法なものであり、これを認める。そして、取消理由通知に記載した取消理由及び申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件請求項1、3~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1、3~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 本件特許の請求項2は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項2に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項において準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700571

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