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特許異議申立

2025-700396

口腔用組成物及び歯茎へのマッサージ実感付与剤

審判番号
2025-700396
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-533984
登録番号
7567791
請求日
2025年04月07日
審決日
2025年11月28日
公報発行日
2026年03月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ライオン株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人英明国際特許事務所
  • 【異議申立人】川口 結生
審判長/審判官
  • 審判長 阪野 誠司
  • 審判官 江間 正起
  • 審判官 冨永 保
分類
P1651.851-YAA(A61K) / P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.536-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第1項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7567791号発明「口腔用組成物及び歯茎へのマッサージ実感付与剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7567791号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1、2〕、〔7-9〕について訂正することを認める。 特許第7567791号の請求項3-13に係る特許を維持する。 特許第7567791号の請求項1及び2に係る特許についての本件特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7567791号(以下「本件特許」という。)の請求項1~13に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)7月16日(優先権主張 2019年(令和元年)7月23日)を国際出願日とする特許出願であって、令和6年10月7日に特許権の設定登録がされ、同年同月16日に特許掲載公報が発行され、その全請求項に係る発明の特許に対し、令和7年4月7日付けで川口 結生(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。 その後の手続の経緯は次のとおりである。 令和7年6月16日付け 取消理由通知 同年8月21日 意見書・訂正請求書の提出(特許権者) 同年同月27日 手続補正書(特許権者) 同年9月 2日付け 訂正請求があった旨の通知 なお、令和7年9月2日付けの通知に対して申立人から応答はなかった。 第2 訂正請求について 1 訂正の趣旨 令和7年8月27日付けの手続補正書によって補正された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の「請求の趣旨」は、 「特許第7567791号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、7、8、9について訂正することを求める。」 というものである。 2 訂正の内容 本件訂正の内容は、訂正請求書の記載及び訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲の記載からみて、次の訂正事項1~5からなるものであると認められる。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項7の「請求項1~6のいずれか1項」との記載を、「請求項3~6のいずれか1項」との記載に訂正する。 請求項7の記載を引用する請求項8及び9も同様に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項8の「請求項1~7のいずれか1項」との記載を、「請求項3~7のいずれか1項」との記載に訂正する。 請求項8の記載を引用する請求項9も同様に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項9の「請求項1~8のいずれか1項」との記載を、「請求項3~8のいずれか1項」との記載に訂正する。 3 本件訂正による訂正の適否 (1)訂正事項1及び2について 訂正事項1及び2は、順に訂正前の請求項1及び2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、これらの訂正は、本件特許の願書に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下「特許明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (2)訂正事項3~5について 訂正事項3~5は、順に訂正前の請求項7~9において、記載を引用する請求項のうち、請求項1及び2を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 また、これらの訂正は、特許明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 (3)独立特許要件について 本件特許異議申立においては、訂正前の全請求項に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1、2及び7~9に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。 (4)一群の請求項について 本件訂正に係る訂正前の請求項1、2及び7~9について、請求項2、7~9は直接的又は間接的に請求項1の記載を引用しているから、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正される。 したがって、訂正前の請求項1、2及び7~9は特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 よって、訂正前の請求項1、2及び7~9に対応する訂正後の1、2及び7~9について訂正することを求める本件訂正の請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。 (5)別の訂正単位とする求め 訂正後の請求項1及び2と、訂正後の請求項7、8及び9とは別の訂正単位とすることが求められている。 4 まとめ 以上のとおり、訂正事項1~5による本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、訂正後の請求項〔1、2〕、〔7-9〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正により訂正された請求項3~13に係る発明(以下請求項の番号順に「本件発明3」等という。)は、その特許請求の範囲の請求項3~13に記載された事項により特定される次に示すとおりのものである(下線は本件訂正による訂正箇所を示す。)。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】(削除) 【請求項3】 (A)シチュアンペッパー抽出物を0.0005~0.01質量%、及び (B)ピンクペッパー抽出物を0.005~0.05質量% を含有する口腔用組成物。 【請求項4】 (A)シチュアンペッパー抽出物が、(a)サンショオール及びヒドロキシサンショオールから選ばれる1種以上を40質量%以上含むものである請求項3記載の口腔用組成物。 【請求項5】 (B)ピンクペッパー抽出物が、(b)α-フェランドレンを20質量%以上含むものである請求項3又は4記載の口腔用組成物。 【請求項6】 (A)/(B)が質量比として0.01~2である請求項3~5のいずれか1項記載の口腔用組成物。 【請求項7】 更に、(C)シトラールを0.001~0.2質量%含有する請求項3~6のいずれか1項記載の口腔用組成物。 【請求項8】 更に、(D)シトラールジエチルアセタール及びシトラールジメチルアセタールから選ばれる1種以上を0.001~0.1質量%含有する請求項3~7のいずれか1項記載の口腔用組成物。 【請求項9】 歯磨剤組成物である請求項3~8のいずれか1項記載の口腔用組成物。 【請求項10】 (A)シチュアンペッパー抽出物、及び (B)ピンクペッパー抽出物 を含有する歯茎へのマッサージ実感付与剤。 【請求項11】 (A)/(B)が質量比として0.001~100である請求項10記載の歯茎へのマッサージ実感付与剤。 【請求項12】 更に、(C)シトラールを含有する請求項10又は11記載の歯茎へのマッサージ実感付与剤。 【請求項13】 更に、(D)シトラールジエチルアセタール及びシトラールジメチルアセタールから選ばれる1種以上を含有する請求項10~12のいずれか1項記載の歯茎へのマッサージ実感付与剤。」 第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要 1 特許異議申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付して下記(5)に示す甲第1号証~甲第5号証(以下「甲1」等ということがある。)を提出しているところ、申立書の全体の記載からみて、申立人が主張する本件訂正前の請求項1~13に係る特許についての特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)の概要は、下記(1)~(4)に示すとおりと認められる。 (1)申立理由1(特許法第29条第1項第3号(同法第113条第2号)) 本件特許発明1、2、9は、甲第1号証に記載の発明と同一の発明である。(必要に応じて甲第2号証及び/又は甲第3号証に記載の発明を参照することで、甲第1号証に記載の発明と同一の発明であることが、より明確に理解できる。) (2)申立理由2(特許法第29条第2項(同法第113条第2号)) 本件特許発明1~13は、甲第1号証に記載の発明から、あるいは、甲第1号証に記載の発明に甲第2~5号証に記載の発明を結びつけることで、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)申立理由3(特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号)) 本件特許の特許請求の範囲の記載に不備があり、本件特許発明1、2、9は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 具体的な理由の要点は、 「本件特許明細書において、実際に実施例で用いられるのは、(A)シチュアンペッパー抽出物、及び(B)ピンクペッパー抽出物であって、「サンショオール及びヒドロキシサンショオールから選ばれる1種」という化合物そのものや、「α-フェランドレン」という化合物そのものを用いた例は一切存在しない。このため、「(a)サンショオール及びヒドロキシサンショオールから選ばれる1種以上を0.0002~0.005質量%」、及び「(b)α-フェランドレンを0.001~0.02質量%を含有する」ことによって、「歯茎へのマッサージ実感付与効果に優れ、口腔内で使用中から使用後も独特なマッサージ実感を与える」という効果が得られるよう実際に用いることができないから、実施可能要件を充足しない。」 というものである(申立書6頁)。 (4)申立理由4(特許法第36条第6項第1号(同法第113条第4号)) 本件特許の特許請求の範囲の記載に不備があり、本件特許発明1、2、9は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 具体的な理由の要点は、 「本件特許明細書において、実際に実施例で用いられるのは、(A)シチュアンペッパー抽出物、及び(B)ピンクペッパー抽出物であって、「サンショオール及びヒドロキシサンショオールから選ばれる1種」という化合物そのものや、「α-フェランドレン」という化合物そのものを用いた例は一切存在しない。このため、「(a)サンショオール及びヒドロキシサンショオールから選ばれる1種以上を0.0002~0.005質量%」、及び「(b)α-フェランドレンを0.001~0.02質量%を含有する」ことによって、「歯茎へのマッサージ実感付与効果に優れ、口腔内で使用中から使用後も独特なマッサージ実感を与える」という課題を解決できるのか、当業者であっても認識することができないから、サポート要件を充足しない。」 というものである(申立書6~7頁)。 (5)証拠方法 甲第1号証:国際公開第2019/107338号 甲第2号証:特開2007-269706号公報 甲第3号証:Azhari Sddeeg et al.、「Extraction and Characterization of Peppermint (Mentha piperita) Essential Oil and its Assessment as Antioxidant and Antibacterial」、Gezira Journal of Engineering and Applied Sciences、(2018)、vol.13(1) 甲第4号証:特表2004-512931号公報 甲第5号証:特表2013-535450号公報 2 当審合議体が通知した取消理由の概要 本件訂正前の請求項1、2及び7~9に係る特許について、当審合議体が令和7年6月16日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。 [取消理由1](新規性欠如) 本件請求項1、2、7及び9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、本件請求項1、2、7及び9に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 [取消理由2](進歩性欠如) 本件請求項1、2及び7~9に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明及び甲5に記載された事項に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1、2及び7~9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 取消理由1及び2について引用した甲1及び甲5は、それぞれ上記1で示した甲第1号証及び甲第5号証である。 [取消理由3](サポート要件違反) 本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、本件請求項1、2及び7~9に係る特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものである。 取消理由3の具体的な理由の概要は次のとおりである。 サンショオールとヒドロキシサンショオール(以下「サンショオール類」ということがある。)の含有量が50%である、シチュアンペッパー抽出物については、当業者が上記課題を解決できると認識できるといえるが、使用中及び使用後の歯茎のマッサージ実感並びに嫌味のなさについての効果が、サンショオール類によるものであることは実施例の記載からは明らかではなく、当業者が発明の詳細な説明の記載に基づいてサンショオール類の歯茎へのマッサージ実感を付与するという作用を認識することができるとはいえない。 第5 当審の判断 当審合議体は、本件発明3~13に係る特許は、取消理由通知で通知した取消理由及び申立人が申し立てた申立理由によっては、取り消すことはできないものと判断する。その理由は以下のとおりである。 なお、以下の記載事項の摘記において、下線は特に注釈がない限り当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。 1 当審合議体が通知した取消理由1~3について 当審合議体が通知した取消理由1は、訂正前の請求項1、2、7及び9に係る特許を対象とするものであったところ、このうち、請求項7に係る特許については、請求項1及び2の記載を直接的に引用するもののみを対象とし、請求項9に係る特許については、請求項1及び2の記載を直接的に引用するもの、並びに請求項1及び2を直接的に引用する請求項7を直接的に引用するもののみを対象とするものであった。 同じく取消理由2及び3は、訂正前の請求項1、2及び7~9に係る特許を対象とするものであったところ、このうち、請求項7~9に係る特許については、請求項1及び2の記載を直接的又は間接的に引用するもののみを対象とするものであった。 (以上のことは、取消理由通知の記載(取消理由1が請求項3~6及び8に係る特許を対象としておらず、取消理由2及び3が請求項3~6に係る特許を対象としていない。)から明らかである。) そして、本件訂正によって、訂正前の請求項1及び2が削除され、また、請求項7~9の記載から請求項1及び2の記載の引用が削除された。 したがって、本件訂正によって、取消理由1~3の対象は全て存在しないものとなった。 よって、取消理由1~3は理由がない。 2 取消理由で採用しなかった申立理由について 申立理由1は取消理由1と同じ理由であり、取消理由において採用した理由である。 申立理由4は、取消理由3のうち請求項1、2及び9に係る特許を対象とする理由と同じであり、取消理由において採用した理由である。 申立理由2のうち、請求項1、2及び7~9(請求項7~9については、請求項1及び2の記載を直接的又は間接的に引用するもの。)に係る特許を対象とする理由は、取消理由2として採用した理由である。 (なお、申立理由2について、特許異議申立書の記載全体(特に、26~28頁及び30頁)からみて、請求項1及び2に係る特許に対しては甲1に基づく理由であり、請求項7~9(請求項1及び2の記載を直接的又は間接的に引用するもの。)に係る特許に対しては甲1及び甲5に基づく理由であって、甲2及び甲3は甲1に記載された成分を説明するための証拠であり、甲4は上記請求項に係る特許に対する証拠ではない。) したがって、以下では、申立理由2のうち請求項3~6、請求項7~9(ただし、請求項3~6の記載を直接的又は間接的に引用するもの。)及び請求項10~13に係る特許を対象とする理由、並びに申立理由3について判断する。 2-1 申立理由2(進歩性)について (1)甲各号証に記載された事項 ア 甲1 甲1には以下の記載がある。 甲1a)「[請求項1] (A)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩、及び (B)サンショウ抽出物、トウガラシ抽出物、ジンジャー抽出物、オランダセンニチ抽出物、サンショオール、カプサイシン、ジンゲロール、ショウガオール、ジンゲロン、スピラントール及びメントール誘導体から選ばれる1種以上 を含有する口腔用組成物。 ・・・ [請求項6] (A)成分を0.01~2質量%、(B)成分を純分として0.000001~0.2質量%含有する請求項1~5のいずれか1項記載の口腔用組成物。」(請求の範囲の請求項1及び6) 甲1b)「[0007] ・・・ 即ち、本発明によれば、(A)重量平均分子量が1,000以上20,000以下のポリアクリル酸塩と、(B)サンショウ抽出物、トウガラシ抽出物、ジンジャー抽出物、オランダセンニチ抽出物、サンショオール、カプサイシン、ジンゲロール、ショウガオール、ジンゲロン、スピラントール及びメントール誘導体から選ばれる1種以上とを口腔用組成物に配合することによって、感覚刺激成分である(B)成分による口腔刺激が抑制され、かつ香味発現性が良く、また、外観安定性も良好に維持できることを見出し、本発明をなすに至った。 [0008] ・・・本発明では、重量平均分子量が20,000以下である(A)成分のポリアクリル酸塩が、(B)成分による口腔刺激、例えば口腔内の粘膜で感じられる刺激を抑制するという、今まで知られていなかった作用効果を奏することがわかった。更に、(A)及び(B)成分を組み合わせると、配合香料による香味の発現性が悪化することがなく、香味立ちが良く、味も良い使用感を与えることもできた。また、更に(C)ノニオン性界面活性剤を配合すると、上記作用効果がより優れ、しかも、経時においても製剤の外観安定性が優れることがわかった。これにより、本発明では、重量平均分子量が20,000を超えるポリアクリル酸塩を使用した場合には達成し得ない格別顕著な作用効果を得ることができた。 後述の表5中の比較例にも示すように、(B)成分を含み、(A)成分を含まない場合は、重量平均分子量20,000超のポリアクリル酸塩を含んでいても、口腔刺激性(刺激の抑制効果)が劣り、香味発現性及び外観安定性も悪く(比較例3)、更にノニオン性界面活性剤のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含んでいても、口腔刺激性及び香味発現性が劣っていた(比較例4)。なお、(A)成分を含まず(B)成分を含むと、ノニオン性界面活性剤を含んでも香味発現性及び味(異味のなさ)が悪く、使用感が低下した(比較例2)。これに対して、表1~4、6中の実施例に示すように、本発明の(A)及び(B)成分を含有する口腔用組成物は、口腔刺激性(刺激の抑制効果)が優れ、香味発現性、味(異味のなさ)及び外観安定性も良好であった。」 甲1c)「[0018] サンショウ抽出物、トウガラシ抽出物、ジンジャー抽出物、オランダセンニチ抽出物、サンショオール、カプサイシン、ジンゲロール、ショウガオール、ジンゲロン及びスピラントールから選ばれる成分(B1)は、温感剤としても知られている。・・・ (B1)成分としては、中でも、口腔刺激の抑制効果及び香味発現性の両方をより効果的に与える点で、サンショウ抽出物、オランダセンニチ抽出物、サンショオール、スピラントールが好ましく、より好ましくはサンショウ抽出物、サンショオール、スピラントール、特に好ましくはサンショウ抽出物、サンショオールであり、サンショウ抽出物、特にサンショウの二酸化炭素を用いた超臨界抽出物が更に好ましい。」 甲1d)「[0030] 香料は、(B)成分の他に、一般的な口腔用香料成分を使用できる。例えば、・・・、シトラール、・・・等、口腔用組成物に用いられる公知の香料素材を使用でき、実施例の香料に限定されない。 上記の香料素材は、成分により異なるが、口腔用組成物全体の0.000001~1%の範囲で使用するのが好ましい。特に、ペパーミント油(精製油含む)、スペアミント油(精製油含む)、和種ハッカ油(精製油含む)、メントール及びカルボンから選ばれる成分の1種以上を含有する香料とすることが好ましい。前記成分は口腔用組成中0.05~1%の範囲で使用することが好ましく、0.1~0.8%の範囲で使用することがより好ましい。 上記香料素材を使用した賦香用香料は、組成物中に0.001~2%配合するのが好ましく、0.1~2%がより好ましい。 なお、(B)成分を含む香料として口腔用組成物に配合する場合、(B)成分は、上記(B)成分に関する記載の範囲内で使用することができる。」 甲1e)「[0034][実施例、比較例] 表1~6に示す組成の口腔用組成物(洗口剤又は練歯磨)を常法によって調製し、これらを試験組成物として使用し、下記方法で評価した。結果を表1~6に併記した。 [0035](1)使用感(口腔刺激性)の評価方法 10人の被験者モニターが、下記の方法で試験組成物を使用した際の使用感として、口腔刺激性をそれぞれ下記の評点基準により評価した。10人の評点の平均値から、下記の判定基準により判定した。 ・洗口剤:試験組成物を口に含み、口腔内を洗浄した際の口腔刺激を評価した。 ・練歯磨:試験組成物1gを歯ブラシにのせ、3分間ブラッシングして口腔内を洗浄した際の口腔刺激を評価した。 口腔刺激性の評点基準 4点:口腔内で刺激をほとんど感じない 3点:口腔内でやや刺激を感じるが問題ない 2点:口腔内で刺激を感じる 1点:口腔内で非常に刺激を感じる 口腔刺激性の判定基準 ◎:平均点3.5点以上4.0点以下 ○:平均点3.0点以上3.5点未満 △:平均点2.0点以上3.0点未満 ×:平均点1.0点以上2.0点未満 [0036](2)使用感(味)の評価方法 10人の被験者モニターが、下記の方法で試験組成物を使用した際の使用感として、味(異味のなさ)をそれぞれ下記の評点基準により評価した。10人の評点の平均値から、下記の判定基準により判定した。 ・洗口剤:試験組成物を口に含み、口腔内を洗浄した際の味(異味)の有無を評価した。 ・練歯磨:試験組成物1gを歯ブラシにのせ、3分間ブラッシングして口腔内を洗浄した際の味(異味)の有無を評価した。 味(異味のなさ)の評点基準 4点:口腔内で異味を感じない 3点:口腔内でやや異味を感じるが問題ない 2点:口腔内で異味を感じる 1点:口腔内で非常に異味を感じる 味(異味のなさ)の判定基準 ◎:平均点3.5点以上4.0点以下 ○:平均点3.0点以上3.5点未満 △:平均点2.0点以上3.0点未満 ×:平均点1.0点以上2.0点未満 [0037](3)香味発現性の評価方法 被験者として専門家パネラー10人を対象に実施した。専門家パネラーが下記の方法で試験組成物を使用した際の香味発現性について、下記の評点基準により評価した。10人の評点の平均値から、下記の判定基準により判定した。 ・洗口剤:試験組成物を口に含み、口腔内を洗浄した際の香味発現性を評価した ・練歯磨:試験組成物1gを歯ブラシにのせ、3分間ブラッシングして口腔内を洗浄した際の香味発現性を評価した 香味発現性の評点基準 4点:香味を非常に感じる 3点:香味を感じる 2点:香味をやや感じる 1点:香味を感じない 香味発現性の判定基準 ◎:平均点3.5点以上4.0点以下 ○:平均点3.0点以上3.5点未満 △:平均点2.0点以上3.0点未満 ×:平均点1.0点以上2.0点未満 [0038](4)外観安定性の評価方法 試験組成物(いずれも澄明外観)を満注量500mLの無色透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)容器((株)吉野工業所製)に450mL充填し、50℃恒温槽に1ヶ月保存した後、外観安定性を下記の4段階の評点基準により目視で評価した。評価は3本について行い、これらの評点の平均値から、下記の判定基準により判定し、◎、○、×で示した。 外観安定性の評点基準 4:ニゴリが全くなかった 3:ニゴリがほとんどなかった 2:ニゴリがややあった 1:ニゴリがかなりあった 外観安定性の判定基準 ◎:平均点3.5点以上4.0点以下 ○:平均点3.0点以上3.5点未満 △:平均点2.0点以上3.0点未満 ×:平均点1.0点以上2.0未満 [0039] 使用原料の詳細を下記に示す。 (A)成分: ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:1,000) 直鎖状、ポリサイエンス社製 ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:6,000) 直鎖状、東亞合成(株)製、商品名:AC-10NP ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:8,000) 直鎖状、ポリサイエンス社製 ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:20,000) 直鎖状、東亞合成(株)製、商品名:アロンA-20UN ポリアクリル酸ナトリウム(Mw:300,000、比較成分) 架橋型、ポリサイエンス社製 [0040](B)成分: サンショウ抽出物 商品名:シチュアンペッパーアブソリュートCO2エキストラクト、 シャラボ(株)製 トウガラシ抽出物 商品名:トウガラシエキス、(株)永廣堂本店製 スピラントール 高砂香料工業(株)製 ジンジャー抽出物 商品名:ジンジャーオレオレジン、塩野香料(株)製 メンチルラクテート 商品名:フレスコラット(Frescolat)(登録商標)ML、 シムライズ社製 N-エチル-p-メンタン-3-カルボキシアミド 商品名:WS-3、シムライズ社製 N-{(エトキシカルボニル)メチル}-p-メンタン-3-カルボキシ アミド 商品名:WS-5、シムライズ社製 N-(4-シアノメチルフェニル)-2-イソプロピル-5-メチルシク ロヘキサンカルボキサミド 商品名:エバークール(Evercool)(登録商標)G-180、 ジボダンジャパン社製 N-(2-(2-ピリジニル)エチル)-2-イソプロピル-5-メチル シクロヘキサンカルボキサミド 商品名:エバークール(Evercool)(登録商標)G-190、 ジボダンジャパン社製 3-l-メントキシプロパン-1,2-ジオール 商品名:クーリングエージェント10、高砂香料工業(株)製 モノメンチルサクシネート 商品名:フィスクール(Physcool)(登録商標)、 ヴェ・マン・フィス社製 [0041](C)成分 ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油 商品名:ブラウノン RCW-60、青木油脂工業(株)製 ポリオキシエチレン(20)硬化ヒマシ油 商品名:ブラウノン RCW-20、青木油脂工業(株)製 ポリオキシエチレン(30)セチルエーテル 商品名:NIKKOL BC-30、日光ケミカルズ(株)製 ラウリルグルコシド 商品名:マイドール 12(アルキル基の炭素数8~16)、 花王(株)製 オレイン酸ポリエチレングリコール 商品名:EMALEX OE-10(E.O.10)、 日本エマルジョン(株)製 ショ糖脂肪酸エステル 商品名:リョートーシュガーエステルPOS-135(脂肪酸の炭素数 16~18)、 三菱ケミカルフーズ(株)製 デカグリセリンラウリン酸エステル 商品名:SYグリスター ML-750、阪本薬品工業(株)製 なお、表中の(B)成分が抽出物の場合、その配合量を示す数値は、溶媒を除いた抽出純分量である。 また、使用した香料組成物A~Fの組成は、後述の表7~13に示す通りである。 ・・・ [0047][表6] [図:0001433095000001.jpg] [0048] また、香料組成物Aの代わりに香料組成物B、C、D、E又はFを使用する以外は上記実施例と同組成の洗口剤又は練歯磨を同様に調製し、評価したところ、それぞれ上記実施例と同様の結果が得られた。 [0049] [表7] [図:0001433095000002.jpg] [0050][表8] [図:0001433095000003.jpg] *;表中の部は、質量部である(以下同様)。 [0051] [表9] [図:0001433095000004.jpg] [0052][表10] [図:0001433095000005.jpg] [0053][表11] [図:0001433095000006.jpg] [0054][表12] [図:0001433095000007.jpg] [0055][表13] [図:0001433095000008.jpg] 」 イ 甲2 甲2には以下の記載がある。 甲2a)「【0020】 例えば、精油用として近年栽培量が増えているのは、丈夫で収油量の多いブラックミントのミッチャム種というペパーミントである。 主な構成成分は、炭化水素類として、モノテルペン類:αピネン0.2~2%、βピネン0.3~4%、リモネン0.6~6%、メンテン フェランドレン サビネン<1%、ミルセン<1%、シス‐オシメン微量~1.5%、ρシメン微量~0.5%、テルピノレン微量~0.2%、αテルピネン1%、γテルピネン1%、 セスキテルペン類:βカリオフィレン<1%、トランスβファルネセン微量~0.5%、αムウロレン微量~0.5%、ゲルマクレンD2.1~4.3%、γカジネン微量~0.7%、βボールボネン<1%、アルコール類として、モノテルペノ‐ル類:メンソール28~46%、イソメンソール ネオ‐メンソール2~7.7%、ピペリトール ピペリテノール イソピペリテノール α‐テルピネオール 0.1~1.9%、リナロール<1%、テルピネン‐4‐オール0~2.4%、セスキテルペノ‐ル類:ビリテ゛ィフロロール0.5~1.3%、10‐α‐カジノール微量~0.3%、3‐オクタノ‐ル<1%、ケトン類として、メントン16~36%、イソ‐メントン4~10.4% ネオメントン2~3%、ピペリトン0.5~1.2%、イソピペリトン フ゜ルゴン、酸化物として、1,8‐シネオール3~7.4%、メントフラン<3%、ピペリテノン微量~0.7%、トランス‐ピペリトンオキサイド0.5~3.1%、カリオフィレンオキサイド微量~0.5%、エステル類として、メンチルアセテート1.6~10%、ネオメンチルアセテート イソメンチルアセテート メンチルブチレート メンチルイソバレレート、クマリン類として、エスクレチン、その他に、メントフラン0.1~5.7%、トランス‐ザビネンハイドレート0.2~1.4%、シス‐サビネンハイドレート微量~0.8%が例示できる。」 ウ 甲3 甲3には以下の記載がある(翻訳文で示す。)。 甲3a)「ペパーミント精油の化学組成 フレッシュ(未加工)試料と乾燥試料の化学組成をガスクロマトグラフィーを用いて測定し、その結果を報告した。表2および表3に示すように、ペパーミントのフレッシュおよび乾燥試料から単離した精油から26成分の揮発性化合物が同定された。その結果、フレッシュ試料ではα-フェランドレン、β-ブルボネンがそれぞれ8.176、6.14と最も多く、次いでトランス-カルベオール、メチルカプロエート(C6)がそれぞれ5.884、4.541であった。表3では、乾燥試料ではα-フムレン、ボルニルアセテートが最も含有量が多く (149, 5.887)、次いでCis-リモネンオキシド、4, メチロールエート (C 18:1) (5.143, 8.184)であった。 表2:GCによるフレッシュペパーミントの化学組成 [図:0001433095000009.jpg] [図:0001433095000010.jpg] 」(5頁目、表1の下3行~6頁目、表2) エ 甲4 甲4には以下の記載がある。 甲4a)「【0003】 溶剤抽出方法は工業的規模で用いられるけれども、これらの方法で現在用いられる抽出溶剤は全体として満足ではない。即ち、食品及び化粧品産業で用いられる如き香味油又は芳香油を、これらの油を含有する植物から抽出するのにヘキサンの如き溶剤を用いる時には、植物中に含有される望ましくない材料例えば高分子量のワックスが所望の油と共に溶出される傾向があるからである。・・・ 【0005】 (発明の開示) ・・・1つの特定の具体例によると、本発明は或る植物材料又は培養材料に含有される香味、官能又は芳香油又は成分を抽出し得る溶剤抽出方法を提供する。本法の特定の特徴は吸着剤を用いることである。」 甲4b)「【0043】 本発明の抽出方法が完了してしまった後に、抽出物を含有する溶剤液体を蒸留して抽出溶剤を抽出物から除去できる。得られる抽出物は次いでそのまま用いることができあるいは別法として1回又はそれ以上の別段の処理にかけて例えば抽出物を精製でき又は抽出物に含有される所与の化合物又は複数の化合物を単離できる。」 甲4c)「【0142】 ・・・ 実施例32 本実施例においては、前記の一般的手法Bを用いて43.5gの粉砕したピンクペッパーを抽出した。 【0143】 白色固形分を有する淡黄色油が5.5%の収率で得られた。 【0144】 GC/MS分析を該組成物について行なった。該組成物は次の成分を含有した。 【0145】 α-ピネン サビエン β-ミルセン β-ピネン α-フェランドレン 3-カレン リモネン リナリル アセテート β-フェランドレン コパエン カリョフィレン ゲルマクレン」 オ 甲5 甲5には以下の記載がある。 甲5a)「【0009】 本発明は、口腔、咽頭、及びスキンケア用の組成物等のパーソナルケア組成物で使用するための精油化合物の1つ以上の誘導体を含む組成物を目的とする。これら誘導体としては、精油のアルデヒド類及びケトン類のアセタール、精油のアルコール類及びフェノール類のエステル又はエーテル、並びに精油の酸類のエステルが挙げられる。誘導体化される親精油のアルデヒド類及びケトン類の例としては、シトラール、ケイ皮アルデヒド、ρ-アニスアルデヒド、バニリン、エチルバニリン、ヘリオトロピン、カルボン、及びメントンが挙げられる。・・・ 【0010】 口腔、鼻腔、及び咽頭ケア製品は、使用時に口腔又は鼻腔又は咽頭の表面及び内側粘膜と接触するのに十分な時間留まる粉末、ペースト、又は液体の形態の製品を含む。このような製品の例としては、口内洗浄剤、歯科用及び咽頭用トローチ、含嗽薬、チューインガム、歯磨剤又は練り歯磨き、咽頭用スプレー、楊枝、歯科用錠剤及び粉末、並びに歯科治療において適用するための局所用溶液、並びに咳止めシロップ、チュアブル制酸薬及び消化促進製剤が挙げられる。」 甲5b)「【0030】 化学的安定性の増大は、精油化合物の特定の誘導体を用いることの別の利点である。望ましい精油化合物の多くは、光、空気、水分、高温、及び酸化環境の存在下で化学的に不安定である。例えば、シトラールの化学的不安定性は、ある程度、化学反応及び分解を受けやすいアルデヒド基に起因するものである。シトラールを誘導体化する1つの方法は、アルデヒド基を保護することを伴う。シトラールの有用な誘導体は、アルデヒド基をアセタール基に変換し、シトラールジメチルアセタール及びシトラールジエチルアセタール等のシトラールアセタールを得ることにより調製することができる。シトラールアセタールは、酸の存在下でシトラールを過剰のアルコール(ROH)と反応させることにより調製することができる。水性環境における使用では、シトラールアセタール化合物のアセタール基が加水分解して、抗菌活性を提供する親シトラール化合物が生じる。 【0031】 ・・・口腔及び咽頭ケア製品は、効果を得るためにかなり長時間口内に滞留する必要があるので、これらにとって重要な属性は、当然ながら味である。例えば、いくつかの組成物は、シトラールジエチルアセタール、シトラールジメチルアセタール若しくはシトラールプロピレングリコールアセタール等のシトラールのアセタール誘導体、又は酢酸オイゲニル、酢酸イソオイゲニル、オイゲノールエチルエーテル若しくはイソオイゲノールエチルエーテル等のオイゲノール若しくはイソオイゲノールのエステル若しくはエーテル誘導体のうちの1つ又は混合物を含んでよい。」 甲5c)「【0120】 実施例II.歯磨剤組成物 本発明IIa~IIoによる歯磨剤組成物を、成分の量(重量%)とともに以下に示す。これらの組成物は、従来の方法を使用して製造される。消費者の官能検査では、本発明による口腔ケア組成物は、心地よく、長続きする、自然な、軽いハーブのような味を有し、灼熱感及び不快な後味なしに口を洗浄及びフレッシュニングすると判定された。 【表4】 [図:0001433095000011.jpg] 【表5】 [図:0001433095000012.jpg] 」 (2)引用発明 ア 甲1発明 甲1には、(A)所定の重量平均分子量のポリアクリル酸塩及び(B)サンショウ抽出物、サンショオール等の成分を含有する口腔用組成物が記載されているところ(摘記甲1a~甲1e)、その具体例として、実施例36~41及び43に練歯磨が記載されている。 したがって、甲1には、実施例36~41及び43の練歯磨に基づく、次に示す発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。 「以下の実施例36~41及び43の処方からなる練歯磨。 [図:0001433095000013.jpg] 各成分の数値は質量%を表す。 「香料組成物A」の組成については、摘記甲1eの表7~表13に記載されたとおり。」 (3)対比・判断 ア 本件発明3について (ア)甲1発明との対比・判断 本件発明3と甲1発明を対比する。 a 甲1発明の練歯磨が0.002質量%含有する「サンショウ抽出物」について、甲1には、「商品名:シチュアンペッパーアブソリュートCO2エキストラクト、シャラボ(株)製」であることが記載されているところ(摘記甲1e、[0040])、本件明細書の【0012】に、「このようなシチュアンペッパー抽出物は、市販品を用いることもでき、例えばシャラボ(株)製のシチュアンペッパーアブソリュートCO 2エキストラクト(SICHUAN PEPPERABSOLUTE CO 2 EXTRACT、二酸化炭素を用いた超臨界による抽出物、サンショオール類含有量50%)等を使用できる。」と記載され、同【0036】に、「(A)シチュアンペッパー抽出物(商品名;SICHUAN PEPPER ABSOLUTE CO 2 EXTRACT、シャラボ(株)製、サンショオール類(サンショオール+ヒドロキシサンショオール)含有量50%)」と記載されており、甲1発明のサンショウ抽出物は、これらと商品名が同一であることから、甲1発明が含有する「サンショウ抽出物」は、本件発明3の「(A)シチュアンペッパー抽出物」に相当する。 また、甲1発明における「サンショウ抽出物」の含有量は0.002質量%であり、本件発明3の「0.0005~0.01質量%」に相当する。 b 甲1発明の「練歯磨」は、本件発明1の「口腔用組成物」に相当する。 c してみると、本件発明3と甲1発明とは、 「(A)シチュアンペッパー抽出物を0.0005~0.01質量%を含有する口腔用組成物。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本件発明3は「(B)ピンクペッパー抽出物を0.005~0.05質量%」を含有するのに対し、甲1発明はピンクペッパー抽出物を含有しない点。 d 上記相違点1について検討する。 甲1には、口腔用組成物にピンクペッパー抽出物を配合することは記載も示唆もされていない。 甲4には、「食品及び化粧品産業で用いられる如き香味油又は芳香油」及び「植物材料又は培養材料に含有される香味、官能又は芳香油又は成分を抽出し得る溶剤抽出方法」について記載されており(摘記甲4a及び甲4b)、実施例として、ピンクペッパーを抽出したことが記載されているが(摘記甲4c)、甲1には、口腔用組成物にピンクペッパー抽出物を配合することは記載も示唆もされていないから、単に甲4に、食品及び化粧品産業で香味油又は芳香油が用いられること、並びにピンクペッパーの抽出方法が記載されているだけでは、甲1発明の練歯磨にピンクペッパー抽出物を配合する動機付けはない。 また、甲1及び甲4の記載事項に加えて、甲2、甲3及び甲5の記載を参酌しても、甲1発明の練歯磨にピンクペッパー抽出物を配合する動機付けはない。 したがって、甲1発明において、相違点1に係る技術的事項を採用することは当業者が容易に想到し得る事項であるとはいえない。 e そして、本件発明3は、本件明細書の【0010】及び【0037】~【0046】に記載される、「歯茎へのマッサージ実感の付与効果に優れ、口腔内で使用中から使用後も独特かつ高いマッサージ実感を与える、歯茎へのマッサージ実感付与剤及びこれを含有する口腔用組成物を提供でき」、「刺激が比較的強いスピラントール、トウガラシ等の刺激性成分を添加しなくてもよく、前記刺激性成分を添加することなく、低刺激で味の良さも確保しつつ歯茎に独特なマッサージ実感を付与することができ、歯肉炎等の歯周疾患の予防又は抑制に有効である」という、格別の効果を奏するものである。 f したがって、本件発明3は、甲1~甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 イ 本件発明4~9について 本件発明4~9は、いずれも本件発明3を技術的にさらに限定したものであるから、上記アで本件発明3について述べたのと同様に、甲1~甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 ウ 本件発明10について 本件発明10と甲1発明を対比する。 a 上記アaで述べたとおり、甲1発明が含有する「サンショウ抽出物」は、本件発明3の「(A)シチュアンペッパー抽出物」に相当する。 b したがって、本件発明10と甲1発明は、 「(A)シチュアンペッパー抽出物を含有する物」 である点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点2> 本件発明10は「歯茎へのマッサージ実感付与剤」であるのに対し、甲1発明は「練歯磨」である点。 <相違点3> 本件発明10は「(B)ピンクペッパー抽出物」を含有するのに対し、甲1発明はピンクペッパー抽出物を含有しない点。 c 上記相違点3について検討するに、上記アdで述べたとおり、甲1~甲5の記載を参酌しても、甲1発明の練歯磨にピンクペッパー抽出物を配合する動機付けはない。 したがって、甲1発明の練歯磨がピンクペッパー抽出物を含有するものとすることは当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 d そして、本件発明10は上記アeで述べたのと同様の効果を奏するものである。 e したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明10は、甲1~甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 エ 本件発明11~13について 本件発明11~13は、いずれも本件発明10を技術的にさらに限定したものであるから、上記ウで本件発明10について述べたのと同様に、甲1~甲5に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできない。 (4)申立理由2のまとめ 以上のとおりであるから、申立理由2は理由がない。 2-2 申立理由3(実施可能要件違反)について 申立書の記載全体からみて、申立理由3のうち請求項9を対象とする理由は、訂正前の請求項1及び2の記載を引用するものを対象とするものであるところ、本件訂正によって請求項1及び2が削除されたから、申立理由3は対象とする特許が存在しない。 したがって、申立理由3に理由はない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由並びに申立人が申し立てた理由及び証拠によっては、請求項3~13に係る特許を取り消すことはできず、ほかに請求項3~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 また、請求項1及び2は本件訂正により削除され、請求項1及び2に係る申立ては申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700396

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