特許異議申立
2021-700830
水中油型乳化組成物
- 審判番号
- 2021-700830
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-003845
- 登録番号
- 6835441
- 請求日
- 2021年08月24日
- 審決日
- 2022年06月06日
- 公報発行日
- 2022年07月29日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ポーラ化成工業株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人秀和特許事務所
- 【異議申立人】柴田 勇一
- 審判長/審判官
- 審判長 森井 隆信
- 審判官 齋藤 恵
- 審判官 井上 典之
- 分類
- P1651.855-YB (A61K) / P1651.536-YB (A61K) / P1651.537-YB (A61K) / P1651.121-YB (A61K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法114条4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第114条第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6835441号発明「水中油型乳化組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6835441号の請求項1ないし2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6835441号(以下「本件特許」という。)についての出願(特願2017-3845号)は、平成29年1月13日に出願人 ポーラ化成工業株式会社(以下「特許権者」という。)によりなされた特許出願であり、令和3年2月8日に特許権の設定登録がされ、令和3年2月24日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許の請求項1~2に係る発明の特許について、令和3年8月24日に異議申立人 柴田 勇一(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
以後の手続(書面)は、以下のとおりである。
令和3年11月15日付け 取消理由通知
令和4年 1月14日 訂正請求書・意見書の提出
令和4年 3月22日 意見書の提出(申立人)
令和4年 4月 4日付け 訂正拒絶理由通知
令和4年 5月 9日 意見書の提出(特許権者)
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
令和4年1月14日提出の訂正請求書により特許権者が請求している訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許第6835441号の特許請求の範囲及び明細書を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項1~2について訂正することを求めるものであって、その訂正の内容は次の訂正事項を含むものである。(下線は訂正箇所を示す。)
訂正事項1
訂正前の特許請求の範囲の請求項1に記載の、「前記水性成分が、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを含み、」を、「前記油性成分が、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを含み、」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2も同様に訂正する)。
訂正事項2
訂正前の明細書の【0006】に記載の、
「[3]前記水性成分が、炭素数16 ~22の脂肪酸を含む、[1]又は[2]に記載の水中油型乳化組成物。
[4]前記水性成分が、炭素数16~22の脂肪酸を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。」を、
「[3]前記油性成分が、炭素数16~22の脂肪酸を含む、[1]又は[2]に記載の水中油型乳化組成物。
[4]前記油性成分が、炭素数16~22の脂肪酸を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の水中油型乳化組成物。」に訂正する。
訂正事項3
訂正前の明細書の【0015】に記載の、
「 水性成分としては、炭素数16~22の脂肪酸(いわゆる高級脂肪酸)を含むことが好ましい。具体的には、ステアリン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、パルミチン酸等が挙げられる。本発明において高級脂肪酸は、水中油型乳化組成物に通常配合される量を含有すればよい。
また、水性成分としては炭素数16~22のアルコール(いわゆる高級アルコール)を含むことが好ましくい。かかる高級アルコールとしては直鎖状のものが好ましく、具体的には、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール等が挙げられる。本発明において高級アルコールは、水中油型乳化組成物に通常配合される量を含有すればよい。」を、
「 油性成分としては、炭素数16~22の脂肪酸(いわゆる高級脂肪酸)を含むことが好ましい。具体的には、ステアリン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、パルミチン酸等が挙げられる。本発明において高級脂肪酸は、水中油型乳化組成物に通常配合される量を含有すればよい。
また、油性成分としては炭素数16~22のアルコール(いわゆる高級アルコール)を含むことが好ましくい。かかる高級アルコールとしては直鎖状のものが好ましく、具体的には、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール等が挙げられる。本発明において高級アルコールは、水中油型乳化組成物に通常配合される量を含有すればよい。」に訂正する。
2 訂正の適否
(1)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正請求について、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項は、明細書、特許請求の範囲又は図面の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであってはならないと規定する。そこで、本件訂正の訂正事項1が実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるか、否かを検討する。
(2)訂正事項1について
訂正前の特許請求の範囲の請求項1には、
「油性成分、水性成分、及び界面活性剤を含有し、
前記油性成分が組成物全体の40質量%以上であり、」
及び
「前記水性成分が、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを含み、」
と記載されていたことにより、訂正前の請求項1に係る発明は、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを含む「水性成分」とは別の成分とされていた、「油性成分」の含有量が、組成物全体の40質量%以上であった。
これに対し、訂正事項1により、訂正前の請求項1に係る発明において、「水性成分」に含まれるとされていた炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールが、当該「水性成分」とは切り分けられて、訂正後の請求項1に係る発明においては、「油性成分」に含まれることになる。
その結果、請求項1における「前記油性成分が組成物全体の40質量%以上であり、」との記載によって特定される組成の範囲が、訂正前は、水性成分に含まれるとされる炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを含まない油性成分が組成物全体の40質量%以上を占めるものであったのが、訂正後は、上記の炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを含めた油性成分が組成物全体の40質量%以上を占めるものへと変更されることになる。
したがって、訂正事項1により、訂正前と訂正後とでは本件特許の請求項1に係る発明における水中油型乳化組成物の組成が異なるものとなるから、訂正事項1は、特許請求の範囲を実質上変更するものである。
特許権者は、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコール自体が有する性質は、水性というよりも、専ら油性であることが通常である一方、【0016】に記載されるように、水相に炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールが存在することが好ましいことをもって、特許請求の範囲には「前記水性成分」と記載していたものであり、訂正の前後のいずれにおいても、請求項1における「前記油性成分が40質量%以上であり、」の「油性成分」には、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールが含まれ、訂正事項1による訂正は、本件特許の発明の水中油型乳化組成物の組成を変更するものではなく、また、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールの存在する場所が変更されないから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない旨を主張する(令和4年5月9日提出の意見書3頁~5頁)。
特許権者の上記主張について検討する。
本件訂正前の明細書【0008】には、
「本発明の水中油型乳化組成物は、油性成分、水性成分、及び界面活性剤を含有する。
油性成分は組成物全体の40質量%以上であり、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%である。水中油型乳化組成物を反転させやすくするには、油性成分を多く、例えば70質量%以上として高内相にすることが通常であるが、本発明の水中油型乳化組成物は必ずしも高内相にせずとも反転感が得られやすい。」
との記載があり、本件訂正前の明細書において、組成物全体の40質量%以上である油性成分は水中油型乳化組成物における内相を形成する成分とされていたことが理解される。そして、【0016】に記載されるように、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールは、水中油型乳化組成物における外水相において、αゲルを形成することから、本件訂正前の特許請求の範囲において水性成分と記載され、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールが内相に存在することは、本件訂正前の明細書及び特許請求の範囲に記載されていなかった。これに対して、訂正事項1によって炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールが油性成分とされることにより、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールは内相を形成する成分であることになる。
そうすると、訂正事項1による訂正は、本件特許の発明の水中油型乳化組成物の組成を変更するものではなく、また、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールの存在する場所が変更されないから、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないとの特許権者の主張は、妥当なものではない。
(3)小括
以上より、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第6項に規定する要件を満たしていないから、その他の訂正事項の適否にかかわらず、本件訂正は認められない。
第3 本件発明
本件訂正は上記第2のとおり認められないところ、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、特許請求の範囲に記載されたとおりの事項により特定されたものである(以下、本件特許の特許請求の範囲に記載された発明を請求項の番号によって「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということがある。)
特許請求の範囲の記載は、以下のとおりである。
「【請求項1】
油性成分、水性成分、及び界面活性剤を含有し、
前記油性成分が組成物全体の40質量%以上であり、
前記油性成分が融点45~75℃の固形脂を組成物全体の0.2~4.0質量%含む水中油型乳化組成物であって、
前記水性成分が、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを含み、
0.3gの水中油型乳化組成物を塗布した前腕内側を、第二指、第三指及び第四指により荷重0.1~8.0Nで長軸10cm、短軸5cmの周回運動を行う試験において、乳化剤型がオイル状に変化し始めるのが1~20周回である、皮膚洗浄用の水中油型乳化組成物(ただし、組成物全体に対して、ポリエチレングリコール(100~200)ジ脂肪酸エステル0.1質量%、デカグリセリン(4~6)脂肪酸エステル0.5質量%、ビーズワックス1質量%、テトラオクタン酸ペンタエリスリット12質量%、スクワラン20質量%、流動パラフィン10質量%、グリセリルモノオレート1質量%、グリセリルモノステアレート1質量%、ステアリン酸、ベヘニルアルコール、(アジピン酸・2-エチルヘキサン酸・ステアリン酸)グリセリルオリゴエステル、イソステアリン酸PEG-20グリセリル及びPOE(20)ソルビタンセスキステアレートを含有するマッサージ料であって、前記ポリエチレングリコール(100~200)ジ脂肪酸エステルと前記デカグリセリン(4~6)脂肪酸エステルの組み合わせが、POE(150)ジステアリン酸エステル及びデカグリセリンペンタステアレート、POE(150)ジステアリン酸エステル及びデカグリセリンテトララウレート、又はPOE(150)ジオレイン酸エステル及びデカグリセリンペンタステアレートであるマッサージ料を除く)。
【請求項2】
前記固形脂が、ロウ類及び脂肪酸エステル類から選択される、請求項1に記載の水中油型乳化組成物。」
第4 取消理由の概要
令和3年11月15日付けの取消理由通知で通知された取消理由の概要は以下のとおりである。
理由1(明確性)本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願についてされたものである。
記
理由1(明確性)
・請求項1~2
(1)炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールは、通常、水性成分に含まれると当業者に認識されていないものであるので、請求項1における「前記水性成分が、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを含み、」との記載は、技術的に適切でなく、この記載により、何を特定しようとする記載であるのかが不明な記載である。
その結果、請求項1に記載された発明は明確でない。
同様に、請求項1を引用する請求項2に記載された発明も明確でない。
(2)請求項1において、「前記油性成分が組成物全体の40質量%以上であり」との記載は、油性成分に炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールの配合量を算入して40質量%以上であることを指すのかが不明である。
その結果、請求項1に記載された発明は明確でない。
同様に、請求項1を引用する請求項2に記載された発明も明確でない。
(3)固形脂として選択される物質が特定されていない請求項1における「前記油性成分が融点45~75℃の固形脂を組成物全体の0.2~4.0質量%含む」との記載は、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールの配合量を算入して、融点45~75℃の固形脂を組成物全体の0.2~4.0質量%となることを指すのか、不明確である。
その結果、請求項1に記載された発明は明確でない。
第5 取消理由についての当審の判断
本件発明1は、
「油性成分、水性成分、及び界面活性剤を含有し、
前記油性成分が組成物全体の40質量%以上であり、
前記油性成分が融点45~75℃の固形脂を組成物全体の0.2~4.0質量%含む水中油型乳化組成物であって、
前記水性成分が、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを含」むことが特定される水中油型乳化組成物の発明である。水中油型乳化組成物は、内相が油相であり、外相が水相である乳化形態の組成物であることは、技術常識である。本件特許の明細書(以下「本件明細書」ともいう。)【0008】の、
「本発明の水中油型乳化組成物は、油性成分、水性成分、及び界面活性剤を含有する。
油性成分は組成物全体の40質量%以上であり、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%である。水中油型乳化組成物を反転させやすくするには、油性成分を多く、例えば70質量%以上として高内相にすることが通常であるが、本発明の水中油型乳化組成物は必ずしも高内相にせずとも反転感が得られやすい。」
との記載から、油性成分が内相を形成することが理解されるところ、この理解は上記の技術常識とも整合するものである。また、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールは、通常は、水性成分であるとされる物質ではないが、本件明細書【0016】の「本発明において、上記の高級脂肪酸及び高級アルコールは、親水性界面活性剤と共に、外水相においてαゲルを形成していることが好ましい。」との記載があり、本件発明においては、高級脂肪酸及び高級アルコールは、水相に存在するものとされていることから、本件特許の特許請求の範囲及び明細書において、高級脂肪酸及び高級アルコールに相当する炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールは、親水性界面活性剤と共に水相に存在することをもって「水性成分」として記載されたものであることが理解できる。
また、「水性成分」については、請求項1において「炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを含み」との特定のほか、本件明細書に、
「水性成分としては、炭素数16~22の脂肪酸(いわゆる高級脂肪酸)を含むことが好ましい。具体的には、ステアリン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、パルミチン酸等が挙げられる。本発明において高級脂肪酸は、水中油型乳化組成物に通常配合される量を含有すればよい。
また、水性成分としては炭素数16~22のアルコール(いわゆる高級アルコール)を含むことが好ましくい。かかる高級アルコールとしては直鎖状のものが好ましく、具体的には、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール等が挙げられる。本発明において高級アルコールは、水中油型乳化組成物に通常配合される量を含有すればよい。」(【0015】)
と説明する記載がある。
一方、「油性成分」については、本件明細書には、
「本発明において油性成分は、通常は油剤であるが、これに限らず、25~65℃の水に懸濁して1時間静置した後に水と相分離する成分(界面活性剤を除く)も含んでよい。
油性成分に含まれる油剤としては、シリコーン油、合成油、天然油、炭化水素油等が挙げられる。」(【0009】)
との記載があるが、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールは、油性成分として本件明細書の【0009】に例示された物質のいずれにも該当しない。
以上を踏まえると、取消理由通知で指摘した(1)の点に関し、「油性成分」及び「水性成分」の意味するところは理解することができる。
そして、上記のとおり、本件明細書の記載上、油性成分が内相を形成する成分であり、水性成分は、外水相に存在する高級脂肪酸及び高級アルコールを含むものであると解され、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールは、油性成分として本件明細書の【0009】に例示された物質のいずれにも該当しないことからすると、本件発明における油性成分の量について、取消理由通知で指摘した(2)の点に関し、本件明細書の記載と矛盾なく理解することができる。
また、「固形脂」について、本件明細書には、
「さらに、本発明において油性成分としては融点45~75℃の固形脂が含まれる。かかる固形脂の含有量は、組成物全体の0.2~4.0質量%であり、好ましくは0.2~2.0質量%、より好ましくは0.2~1.0質量%である。固形脂を上記の範囲で含有することにより、反転感が得られやすくなり心地良い使用感を付与することができる。また、水中油剤型が反転しやすいことによりメイク汚れと速やかになじむので、クレンジング力が優れる。
ここで、固形脂には半固形脂も含まれる。なお、固形とは25℃で流動性がないものをいい、半固形とは1気圧、20℃で応力の存在しない環境では殆ど変形しないが、若干の応力(10~100g/cm2程度)がかかると変形するものをいう。
固形脂としては、天然由来のものでも合成のものでも構わず、ロウ類や脂肪酸エステル類が好ましい。なお、通常はポリオキシエチレン等の化学的な付加・修飾がされていないものを指す。
かかる固形脂としては、ロウ類及び脂肪酸エステル類から選択されるものが好ましく、具体的には、セレシン、トリベヘン、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸セチル等がより好ましい。」(【0013】)
との記載があることから、本件発明における「固形脂」とは、本件発明における油性成分に含まれるものであり、ロウ類や脂肪酸エステル類が好ましいことが理解される。そうすると、取消理由通知で指摘した(3)の点に関し、本件発明における水性成分である炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールが本件発明における固形脂には含まれないことが理解できる。
以上より、請求項1において、通常は、水性成分であるとされる物質ではない炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを「水性成分」に含まれると記載したことによって、第三者に不測の不利益を与えるほどに本件発明が不明確になっているとはいえない。
したがって、本件発明1及び2は明確であるから、本件発明1及び2についての特許は、取消理由通知で通知した取消理由によって取り消されるべきものでない。
第6 異議申立ての理由について
1 異議申立ての理由の概要
申立人の主張する異議申立ての理由の概要及び提出した証拠は、以下のとおりである。
(1)申立理由1 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)
本件明細書の発明の詳細な説明は、本件特許の請求項1及び2に係る発明について、当業者がその実施をできる程度に明確かつ十分に記載されたものではないことから、特許法第36条第4項第1号の規定を満たしていないため、第113項第4号の規定により取り消されるべきものである。
(2)申立理由2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、本件明細書の発明詳細な説明の記載から発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えていることから、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていないため、第113項第4号の規定により取り消されるべきものである。
(3)申立理由3 特許法第36条第6項第2号(明確性)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、その技術的範囲が明確ではないことから特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていないため特許を受けることができないものであり、第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。
(4)申立理由4 特許法第29条第2項(進歩性)
本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明及び本件特許出願日前周知技術に基いてその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、第113項第2号の規定により取り消されるべきものである。
甲第1号証:特開2014-91734号公報
甲第2号証:特開2006-28062号公報
甲第3号証:特開2014-76970号公報
甲第4号証:特開2011-72310号公報
甲第5号証:特開2011-74071号公報
甲第6号証:「新化粧品ハンドブック」、日光ケミカルズ等、平成18年10月30日発行、p.24
2 取消理由通知において採用しなかった申立理由についての判断
異議申立ての理由のうち、申立理由3(明確性)は、取消理由通知において通知した取消理由の理由1と同趣旨であり、当該取消理由によって取り消されるべきものでないことは、第5で述べたとおりである。
残りの申立理由についての判断を以下に示す。
(1)申立理由1(実施可能要件)について
本件明細書には、本件発明の水中油型乳化組成物は、油性成分、水性成分、及び界面活性剤を含有し、油性成分は組成物全体の40質量%以上であり、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%であって、水中油型乳化組成物を反転させやすくするには、油性成分を多く、例えば70質量%以上として高内相にすることが通常であるが、本発明の水中油型乳化組成物は必ずしも高内相にせずとも反転感が得られやすいこと(【0008】)、本件発明において油性成分は、通常は油剤であるが、これに限らず、25~65℃の水に懸濁して1時間静置した後に水と相分離する成分(界面活性剤を除く)も含んでよく、油性成分に含まれる油剤としては、シリコーン油、合成油、天然油、炭化水素油等が挙げられること(【0009】)が記載され、本件明細書の【0010】~【0012】には、シリコーン油、合成油、天然油、炭化水素油の具体例が挙げられている。
また、本件明細書の【0013】には、油性成分としては融点45~75℃の固形脂が含まれ、かかる固形脂の含有量は、組成物全体の0.2~4.0質量%であり、固形脂を上記の範囲で含有することにより、反転感が得られやすくなり心地良い使用感を付与することができ、水中油剤型が反転しやすいことによりメイク汚れと速やかになじむので、クレンジング力が優れること、また、固形脂には半固形脂も含まれ、固形とは25℃で流動性がないものをいい、半固形とは1気圧、20℃で応力の存在しない環境では殆ど変形しないが、若干の応力(10~100g/cm2程度)がかかると変形するものをいい、かかる固形脂としては、ロウ類及び脂肪酸エステル類から選択されるものが好ましく、具体的には、セレシン、トリベヘン、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸セチル等がより好ましいことが記載されている。
本件明細書の【0015】には、水性成分としては、炭素数16~22の脂肪酸(いわゆる高級脂肪酸)を含むことが好ましく、具体的には、ステアリン酸、オレイン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、パルミチン酸等が挙げられ、また、水性成分としては炭素数16~22のアルコール(いわゆる高級アルコール)を含むことが好ましく、具体的には、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、バチルアルコール等が挙げられることが記載されている。
本件明細書の【0016】には、本発明において、高級脂肪酸及び高級アルコールは、親水性界面活性剤と共に、外水相においてαゲルを形成していることが好ましいことが記載されている。
本件明細書の【0014】には、水性成分は、水の他に、25~65℃の水に溶解する成分(界面活性剤を除く)であればよいことが記載されている。
本件明細書【0017】には、水中油型乳化組成物に必須に含有される界面活性剤は、特に限定されず、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等を用いることができることが記載され、【0017】~【0020】には、具体例も示されている。
このように、本件明細書には、水中油型乳化組成物を構成する油性成分、水性成分、及び界面活性剤について、具体的に説明する記載があり、水中油型乳化組成物の調製方法は、本件特許発明の属する化粧料の分野において周知慣用の技術であるから、当業者は、本件明細書の記載に基づき、本件発明の組成物を製造することができるといえる。
本件発明は、融点45~75℃の固形脂を組成物全体の0.2~4.0質量%含むことが特定されているものであるところ、本件明細書に記載された実施例は、いずれも本件発明における融点45~75℃の固形脂に相当する成分であるパルミチン酸セチルを40質量%含有する組成物である点において、本件発明に該当しないことは、申立人の指摘するとおりであるとしても、上記のとおり、本件明細書の記載の全体から理解できる事項を措いて、単に特許発明に該当する実施例がないことのみをもって、実施可能要件を満たしていないということはできない。
したがって、本件発明1及び2についての特許は、申立理由1によって、取り消されるべきものでない。
(2)申立理由2(サポート要件)について
本件発明の課題は、本件明細書の【0004】の記載からみて、高内相水中油型乳化剤型は、油性成分を高配合しているため、上記のとおり心地良い反転感や高いクレンジング力が得られる一方で、製造コストが高いという問題点があるところ、必ずしも高内相としなくても、反転感による心地良い使用感が得られ、かつクレンジング力にも優れる、水中油型乳化組成物を提供することであると認められる。当該課題について、本件発明は、水中油型乳化組成物において、油性成分を所定量とし、かつ固形脂を所定量含有させることにより、所望の反転感が得られることに想到し、本発明を完成するに至ったもので(【0005】)、本発明の水中油型乳化組成物は、油性成分、水性成分、及び界面活性剤を含有し、油性成分は組成物全体の40質量%以上であり、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%である。水中油型乳化組成物を反転させやすくするには、油性成分を多く、例えば70質量%以上として高内相にすることが通常であるが、本発明の水中油型乳化組成物は必ずしも高内相にせずとも反転感が得られやすい(【0008】)ということが本件明細書の記載から理解できる。
そして、この点は、請求項1及び2の記載に反映されており、本件発明1及び2は、発明の詳細な説明の記載から、本件発明の課題を解決可能な範囲内のものであることが当業者において理解できるものである。
上記のとおり、発明の詳細な説明の記載から、当業者は本件発明は発明の課題を解決できる範囲内のものであることを理解できるのであるから、申立人が主張するように、単に本件明細書の特許発明に該当する実施例がないことのみをもって、サポート要件を満たしていないということはできない。
したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものであり、本件発明1及び2についての特許は、申立理由2によって、取り消されるべきものでない。
(3)申立理由4(進歩性)について
ア 甲号証の記載
申立人の提出した甲第1号証から甲第3号証には、以下の記載がある(以下、甲号証をその番号によって「甲1」などという。下線は合議体が付したものである。)
(ア)甲1
1ア 【技術分野】
【0001】
本発明は、メイクアップ化粧料との馴染みが良好であり、メイクアップ化粧料を効果的に除去するとともに、べたつきがなく洗い流せるクレンジングクリームに関する。
1イ 【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、皮膚に施されたマスカラ、口紅、ファンデーション等のメイクアップ化粧料との馴染みが良好であり、メイクアップ化粧料を効果的に除去するとともに、べたつきがなく洗い流せるクレンジングクリームを提供することにある。
1ウ 【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、驚くべきことに後述の成分(A)~(F)を特定の割合で配合し、かつ成分(E)と(F)の質量比を特定の範囲とすることで上記課題を解決することを見出して本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は、次の通りである。
[1](A)グリセリンモノ脂肪酸エステルを1~4質量%、
(B)HLB11以上のポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤を2~8質量%、
(C)25℃で液体状の油を45~65質量%、
(D)25℃で固体状であり、炭素数が12~22の1価アルコールを0.5~5質量%、
(E)ソルビトール、および
(F)水を含み、
成分(E)と(F)の合計含有量が30~45質量%であり、成分(E)と(F)の質量比が(E)/(F)=2/3~2/1であるクレンジングクリーム。
本発明のクレンジングクレームはO/W型エマルションである。
【発明の効果】
【0010】
本発明のクレンジングクリームは、皮膚に施されたマスカラ、口紅、ファンデーション等のメイクアップ化粧料との馴染みが良好であり、メイクアップ化粧料を効果的に除去するとともに、べたつきがなく洗い流すことができる。すなわち、本発明のクレンジングクリームは、マッサージ中の転相が速く、その結果メイクアップ化粧料との馴染みが良好である。また、本発明のクレンジングクリームは、洗い流し時の乳化粒子サイズが小さく、その結果使用後(洗い流し後)のべたつきが低減されている。
1エ 【0018】
本発明で使用されるHLB11以上のポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレン(25モル)オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレン(15モル)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20モル)デシルテトラデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン(20モル)ポリオキシプロピレン(8モル)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(25モル)ポリオキシプロピレン(4モル)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(20モル)ポリオキシプロピレン(6モル)デシルテトラデシルエーテル等のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン(30モル)ステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(20モル)ミリスチン酸エステル、ポリオキシエチレン(14モル)イソステアリン酸エステル等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノステアリン酸エステル、ポリオキシエチレン(20モル)ソルビタンモノオレイン酸エステル、ポリオキシエチレン(10モル)ソルビタンモノラウリン酸エステル等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、・・・等が挙げられる。
1オ 【0022】
〔(C)25℃で液体状の油〕
本発明で用いられる25℃で液体状の油としては、化粧品、医薬品などに通常用いられる液体状の油を用いることができる。これらの液体状の油は、不揮発性油と揮発性油から選ばれる。不揮発性油としては炭化水素油(例えば、水添ポリイソブテン(好ましくは37.8℃における動粘度が3~25mm2/sの水添ポリイソブテン))、エステル油(例えば、パルミチン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル)、トリグリセライド等が挙げられ、特に経時安定性を維持し、クレンジング効果を高めるために水添ポリイソブテンが好ましく、市販品としてはパールリームEX(商品名:日油株式会社製)が挙げられる。揮発性油としては、低分子量炭化水素油(例えば、イソブテン三量体)、低分子量シリコーン油(例えば、デカメチルシクロペンタシロキサン)等が挙げられ、特にメイクアップ化粧料との馴染みを向上させ、クレンジング効果を高めるためにイソブテンの三量体が好ましく、市販品としてはパールリーム3(商品名:日油株式会社製)が挙げられる。
・・・
【0024】
〔(D)25℃で固体状であり、炭素数が12~22の1価アルコール〕
本発明で用いられる炭素数が12~22であり、25℃で固体状の1価アルコールは、分岐や不飽和結合を有していない1価アルコールであって、具体的には、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール等が挙げられ、特に経時安定性を維持する上でパルミチルアルコール、ステアリルアルコールが好ましい。25℃で固体状の1価アルコールは単独または2種以上を組み合わせて使用することができ、組成物(クレンジングクリーム)全体量に対して、0.5~5質量%、特に1~3質量%含有することが好ましい。0.5質量%より少ない場合には経時安定性を保つことができず、5質量%を越える場合は洗い流し時にべたつきがある。
1カ 【0034】
〔実施例1~10〕
各成分を表1に示す質量部で配合した実施例1~10のクレンジングクリームを下記方法で調製した。また、各クレンジングクリームについて下記評価方法により評価を行った。結果を表1に示す。
【0035】
<調製>
(A)と(B)と(C)と(D)の混合物(油相)および、(E)と(F)の混合物(水相)を80℃にて加熱混合して均一にした後、攪拌しながら油相に水相を少量ずつ添加し、全量添加後にホモミキサーを使用して混合攪拌した。これを室温付近まで攪拌冷却して乳化状態の組成物を得た。水添ポリイソブテンは、パールリームEX(商品名:日油株式会社製)を使用した。イソブテン三量体は、パールリーム3(商品名:日油株式会社製)を使用した。
1キ 【0039】
(5)転相するまでに必要なマッサージ回数の評価
メイクをした20名の女性をパネラーとし、クレンジングクリームを使用した時に、転相するまでに必要なマッサージ回数について平均の回数を算出した。
1ク 【0041】
【表1】
[図:0001386145000001.jpg]
(イ)甲2
2ア 【技術分野】
【0001】
本発明はゲル状洗浄組成物、特にその使用感触と経時安定性の改善に関する。
2イ 【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の液晶ゲルによる化粧料は、経時で水分が揮散することにより、ゲルがこわれ粘度が低下する等、安定性に関して満足できるものではなかった。また、上記特許文献2のゲル状洗浄剤は、転相感が得られないなど使用感触に関して十分満足できるものではなかった。
本発明は前述の課題に鑑み行われたものであり、使用感触が良好で経時安定性に優れたゲル洗浄組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上述の課題に鑑み鋭意研究した結果、ゲル状の洗浄組成物に、特定構造のアルキレンオキシド誘導体を、ショ糖脂肪酸エステル、3個以上の水酸基を有する多価アルコール、油分と共に配合することによって、使用感触が良く、経時安定性に優れたゲル洗浄組成物が得られることを見出し、さらに非イオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤を加えることで、洗浄効果及び使用感触がさらに向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち本発明のゲル洗浄組成物は、
(a)下記式(I)で示され、分子量が1000以上であるブロック型アルキレンオキシド誘導体と、
(b)ショ糖脂肪酸エステルと、
(c)分子内に3個以上の水酸基を有する多価アルコールと、
(d)油分とを含有することを特徴とする。
(化1)
R1O-[(AO)m(EO)n]-R2 (I)
(式中、AOは炭素数3~4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基、mおよびnはそれぞれ前記オキシアルキレン基、オキシエチレン基の平均付加モル数で、1≦m≦70、1≦n≦70である。炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基はブロック状に付加しており、炭素数3~4のオキシアルキレン基とオキシエチレン基の合計に対するオキシエチレン基の割合は20~80質量%である。R1およびR2は同一もしくは異なっていてもよく炭素数1~4の炭化水素基または水素原子であり、R1およびR2の炭化水素基数に対する水素原子数の割合は0.15以下である。)
・・・
【0008】
本発明によれば、ゲル状の洗浄組成物に、特定構造のアルキレンオキシド誘導体を、ショ糖脂肪酸エステル、3個以上の水酸基を有する多価アルコール、油分と共に配合することによって、使用感触と経時安定性に優れたゲル洗浄組成物を得ることができる。
さらに非イオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤を加えることで、洗浄効果及び使用感触をさらに向上させることができる。・・・
2ウ 【0022】
(d)油分
本発明に用いる(d)油分は、通常化粧品、医薬部外品等に使用される液体油脂、固体油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油から任意に使用される。
液体油脂の具体例としては、アボガド油、ツバキ油、タートル油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ミンク油、オリーブ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エノ油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、コメヌカ油、シナギリ油、日本キリ油、ホホバ油、胚芽油、トリグリセリン等が挙げられる。
固体油脂の具体例としては、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられる。
【0023】
ロウ類の具体例としては、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられる。
炭化水素油の具体例としては、流動パラフィン、オゾケライト、スクワラン、プリスタン、パラフィン、セレシン、スクワレン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
・・・
【0025】
エステル油の具体例としては、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、・・・、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン、・・・が挙げられる。
・・・
【0027】
本発明においては、さらに非イオン性界面活性剤及び/又はアニオン性界面活性剤を配合することによって、洗浄力が向上し、使用感をさらに高めることができる。
本発明に用いる非イオン性界面活性剤の具体例としては、ソルビタン脂肪酸エステル類・・・が挙げられる。
【0028】
また親水性非イオン界面活性剤としては、例えば、・・・POE-ヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体(例えば、POE-ヒマシ油、POE-硬化ヒマシ油、・・・);・・・が挙げられる。
【0029】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、・・・高級脂肪酸アミドスルホン酸塩(例えば、N-ミリストイル-N-メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、・・・);・・・が挙げられる。
2エ 【0045】
評価(3):転相感
上記ファンデーションを重ね塗りし、2時間経過後試料を用いて皮膚上でなじませ、10数秒~30秒以内に転相する感触(のびが軽くなる感触)があるかどうかを専門パネラー10名により試験した。評価基準は以下の通りである。
◎…10名中8名以上が、転相感があると認めた。
○…10名中6名以上8名未満が、転相感があると認めた。
△…10名中3名以上6名未満が、転相感があると認めた。
×…10名中3名未満が、転相感があると認めた。
評価(4):すすぎやすさ
上記ファンデーションを重ね塗りし、2時間経過後試料を用いて洗顔を行ない、洗浄中のすすぎやすさについて専門パネラー10名により試験した。評価基準は以下の通りである。
◎…10名中8名以上が、すすぎやすいと認めた。
○…10名中6名以上8名未満が、すすぎやすいと認めた。
△…10名中3名以上6名未満が、すすぎやすいと認めた。
×…10名中3名未満が、すすぎやすいと認めた。
2オ 【0048】
下記表1に記載した配合組成よりなる試料を製造し、上記評価(1)~(7)について評価試験を行なった。結果を表1に示す。
(表1)
[図:0001386145000002.jpg]
(製法) 60℃に加熱した水相部に、低速ホモミキサーをかけながら60℃に加熱した油相部を徐々に添加し乳化する。その後室温まで冷却し、洗浄組成物を得た。
(ウ)甲3
3ア 【技術分野】
【0001】
本発明は、乳化型のクレンジング化粧料に関する。
3イ 【0005】
従って、本発明は、使い勝手が良く、クレンジング時に転相を起こすことにより皮膚の汚れやメイクアップ化粧料などの油性汚れを効果的に除去することが可能で、且つ保存安定性にも優れたクレンジング化粧料の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するために鋭意研究した結果、ソルビタン系非イオン界面活性剤、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、液状油、水と、さらにジペンタエリスリトールとヒドロキシ脂肪酸又はポリヒドロキシ脂肪酸のエステルを組み合わせることにより、使い勝手が良く、クレンジング時に転相を起して皮膚の汚れやメイクアップ化粧料などの油性汚れに対するクレンジング効果が高く、且つ保存安定性にも優れた乳化型クレンジング化粧料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
3ウ 【0010】
本発明の(A)成分であるジペンタエリスリトールとヒドロキシ脂肪酸又はポリヒドロキシ脂肪酸のエステルは、クレンジング時における製剤の転相を促進する目的で配合されるものであり、ジペンタエリスリトールをヒドロキシ脂肪酸又はポリヒドロキシ脂肪酸でエステル化することにより得ることができる。・・・
・・・
【0014】
本発明の(B)成分であるソルビタン系非イオン界面活性剤は、本発明の乳化型クレンジング化粧料において良好な乳化分散、及び洗い流し時の容易な再乳化のために配合するものである。ソルビタン系非イオン界面活性剤としてはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。この非イオン界面活性剤の脂肪酸部分は炭素数が10~22で、直鎖状、分岐鎖状、飽和、不飽和のいずれでもよく、炭素数が12~22のものが好ましく用いられる。エチレンオキサイドの平均付加モル数としては6~20モルのものが好ましく用いられる。具体的には、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(6E.O.)、トリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)、・・・が好ましく用いられる。・・・
・・・
【0016】
本発明の(C)成分であるアシルアミノ酸型界面活性剤は、本発明の乳化型クレンジング化粧料において良好な乳化分散、及び洗い流し時の容易な再乳化のために配合するものである。アシルアミノ酸型界面活性剤としては、炭素数10~22、さらに炭素数12~18のアシル基を有するN-アシルアミノ酸又はその塩が好ましく、アシル基部分の炭素鎖は直鎖、分岐鎖のいずれでも、また飽和、不飽和のいずれであってもよい。好ましいアミノ酸及びアミノ酸残基としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、タウリン、サルコシン(N-メチルグリシン)が挙げられる。またその塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩やトリエタノールアミン塩等の有機アミン塩等が挙げられる。具体的なアシルアミノ酸型界面活性剤としては、例えば、Nーラウロイルグルタミン酸ナトリウム、Nーラウロイルグルタミン酸トリエタノールアミン、Nーミリストイルグルタミン酸ナトリウム、Nーミリストイルグルタミン酸トリエタノールアミン、Nーパルミトイルグルタミン酸ナトリウム、Nーパルミトイルグルタミン酸トリエタノールアミン、Nーステアロイルグルタミン酸ナトリウム、・・・が挙げられるが、これらの中でもNーアシルグルタミン酸塩がさらに好ましい。・・・
3エ 【0018】
本発明の(D)成分である液状油は、本発明の乳化型クレンジング化粧料において皮脂やメイクアップ化粧料などの油性汚れに対するクレンジング効果を発揮させるために配合するものである。係る液状油としては、一般に化粧料に用いられ、常温(20℃)において流動性を有する高級アルコール以外の油剤であれば特に限定されるものではなく、例えばイソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソデシル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソプロピル、2ーエチルヘキサン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソセチル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸イソステアリル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸イソステアリル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリル、トリ(2ーエチルヘキサン酸)グリセリル、イソステアリン酸コレステリルエステル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール等のエステル油;流動パラフィン、スクワラン、揮発性イソパラフィン等の炭化水素油;ひまし油、ホホバ油、ひまわり油、オリーブ油等の植物油;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサン等のシリコーン油;エーテル油等が挙げられる。本発明では、これら液状油から選択される、1種又は2種以上を用いることができる。
3オ 【0023】
本発明の乳化型クレンジング化粧料の乳化系は水中油型であり、クレンジング時に水中油型から油中水型に転相を起こすという特徴を有する。転相により油相である液状油が出てくるため、メイクアップ化粧料とのなじみが良くなり除去効果が高まると共に、メイクアップ化粧料となじむタイミングが分かるという利点がある。尚、転相までの時間については、クレンジングマッサージの強さや速さに個人差があるため一概に規定することはできないが、通常クレンジング開始後30秒~1分の間で転相を起こすのが好ましい。本発明の乳化型クレンジング化粧料の性状としては、特に限定はないが、使い勝手が良く、また転相して液状となる変化がより明確に感じられることから、クリーム状叉はゲル状であることが好ましい。
3カ 【0027】
以下、実施例をもって本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。尚、実施例、比較例における配合成分の配合量は全て質量%である。
・・・
【0029】
<使用試験>
女性専門パネラー20名が、顔面に市販の油性ファンデーションを塗布し、30分経過後、実施例又は比較例のクレンジング化粧料約2gを用い、1分間一定の力及び速さで顔面を手でマッサージし、その後水で洗い流した。そして(1)クレンジング効果、(2)転相感(転相までの時間、転相の分かりやすさ)、(3)洗い流しやすさの各項目について評価し、下記基準により5段階評価した。結果はパネラー20人の評価の平均値で示した。
【0030】
(評価基準)
5;非常に良い
4;良い
3;普通
2;やや悪い
1;悪い
3キ 【0034】
【表1】
[図:0001386145000003.jpg]
3ク 【0036】
以下、本発明の乳化型クレンジング化粧料のその他の処方を実施例として挙げる。尚、これらの実施例の乳化型クレンジング化粧料についても、クレンジング効果、転相感、洗い流しやすさ及び保存安定性において、優れた特性を有するものであった。
・・・
【0038】
実施例11 (クレンジングクリーム)
[図:0001386145000004.jpg]
イ 引用発明
(ア)甲1に記載された発明
甲1の【0034】【0035】【0041】の実施例1についての記載より、甲1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
(引用発明1)
「以下の(A)と(B)と(C)と(D)の混合物(油相)および、(E)と(F)の混合物(水相)を80℃にて加熱混合して均一にした後、攪拌しながら油相に水相を少量ずつ添加し、全量添加後にホモミキサーを使用して混合攪拌し、これを室温付近まで攪拌冷却して乳化状態の組成物としたクレンジングクリーム。
[図:0001386145000005.jpg]
」
(イ)甲2に記載された発明
甲2の【0048】の試験例1の記載より、甲2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているといえる。
(引用発明2)
「以下の配合組成よりなり、60℃に加熱した水相部に、低速ホモミキサーをかけながら60℃に加熱した油相部を徐々に添加し乳化した後室温まで冷却して得た洗浄組成物。
[図:0001386145000006.jpg]
」
(ウ)甲3に記載された発明
甲3の【0038】の実施例11の記載より、甲3には以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているといえる。
(引用発明3)
「以下の組成(質量%)を有するクレンジングクリーム。
[図:0001386145000007.jpg]
」
ウ 進歩性について
(ア)甲1を主引用例とする進歩性について
本件発明1と引用発明1を対比する。
引用発明1のクレンジングクリームは、攪拌しながら油相に水相を少量ずつ添加し、全量添加後にホモミキサーを使用して混合攪拌し、これを室温付近まで攪拌冷却して乳化状態とする方法で調製したものであるから(甲1【0034】)、水中油型乳化組成物であると認められる。引用発明1のクレンジングクリームに含まれるポリオキシエチレン(25モル)オクチルドデシルエーテルは界面活性剤である(甲1【0018】)。引用発明1のクレンジングクリームに含まれる水添ポリイソブテン、イソノナン酸イソノニル、デカメチルシクロペンタンシロキサンは、甲1において25℃で液体状の油として配合されるものであるから(甲1【0022】)、本件発明1の油性成分に相当し、それらの合計配合量は56%であるから、本件発明1における油性成分の配合量である組成物全体の40質量%以上の範囲内である。引用発明1のソルビトールは水相に含まれるものであり(甲1【0034】)、本件発明1の水性成分に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明1の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
油性成分、水性成分、及び界面活性剤を含有し、
前記油性成分が組成物全体の40質量%以上であり、
炭素数16~22のアルコールを含む、
皮膚洗浄用の水中油型乳化組成物(ただし、組成物全体に対して、ポリエチレングリコール(100~200)ジ脂肪酸エステル0.1質量%、デカグリセリン(4~6)脂肪酸エステル0.5質量%、ビーズワックス1質量%、テトラオクタン酸ペンタエリスリット12質量%、スクワラン20質量%、流動パラフィン10質量%、グリセリルモノオレート1質量%、グリセリルモノステアレート1質量%、ステアリン酸、ベヘニルアルコール、(アジピン酸・2-エチルヘキサン酸・ステアリン酸)グリセリルオリゴエステル、イソステアリン酸PEG-20グリセリル及びPOE(20)ソルビタンセスキステアレートを含有するマッサージ料であって、前記ポリエチレングリコール(100~200)ジ脂肪酸エステルと前記デカグリセリン(4~6)脂肪酸エステルの組み合わせが、POE(150)ジステアリン酸エステル及びデカグリセリンペンタステアレート、POE(150)ジステアリン酸エステル及びデカグリセリンテトララウレート、又はPOE(150)ジオレイン酸エステル及びデカグリセリンペンタステアレートであるマッサージ料を除く)。
(相違点1ア)
本件発明1は、前記油性成分が融点45~75℃の固形脂を組成物全体の0.2~4.0質量%含むのに対し、引用発明1は、固形脂を含まない点。
(相違点1イ)
本件発明1は、前記水性成分が、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを含むのに対し、引用発明1では、炭素数16~22のアルコールに該当するステアリルアルコールは水性成分とされておらず、水性成分が炭素数16~22の脂肪酸も含まない点。
(相違点1ウ)
甲1には、引用発明1は、0.3gの水中油型乳化組成物を塗布した前腕内側を、第二指、第三指及び第四指により荷重0.1~8.0Nで長軸10cm、短軸5cmの周回運動を行う試験において、乳化剤型がオイル状に変化し始めるのが1~20周回であることについて記載されていない点。
上記相違点1アにつき検討する。
甲1には、クレンジングクリームに固形脂を配合することについて何ら記載されていない。
甲1には、引用発明1は、メイクアップ化粧料との馴染みが良好であり、メイクアップ化粧料を効果的に除去するとともに、べたつきがなく洗い流せるクレンジングクリームを提供することを課題とし(甲1【0007】)、(A)グリセリンモノ脂肪酸エステルを1~4質量%、(B)HLB11以上のポリオキシエチレン付加型非イオン性界面活性剤を2~8質量%、(C)25℃で液体状の油を45~65質量%、(D)25℃で固体状であり、炭素数が12~22の1価アルコールを0.5~5質量%、(E)ソルビトール、および(F)水を含み、成分(E)と(F)の合計含有量が30~45質量%であり、成分(E)と(F)の質量比が(E)/(F)=2/3~2/1という特定の組成とすることで、前記課題を解決するものであることが記載されている(甲1【0005】)。そうすると、甲1において、油性成分の種類と配合量は、メイクアップ化粧料との馴染みが良好であり、メイクアップ化粧料を効果的に除去するとともに、べたつきがなく洗い流せるクレンジングクリームを提供するという甲1の課題の解決に不可欠な要素であるから、仮に、申立人が主張するように、甲2、甲3に、配合可能な成分として固形脂が記載され、クレンジング化粧料に固形脂を配合することが本件特許の出願時の周知技術であるとしても、水中油型乳化組成物である引用発明1のクレンジングクリームに固形脂を配合して、油性成分の組成を引用発明1から変更することが当業者に動機付けられるとはいえない。
したがって、引用発明1を相違点1アの本件発明1に係る構成を備えるものとすることは、甲1~甲3及び周知技術から当業者が容易になし得たことであるとはいえないから、その他の相違点につき検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明1、甲1~甲3及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
本件発明2は、本件発明1の特定事項を全て備え、さらに限定された発明である。
そして、上記のとおり、本件発明1が引用発明1、甲1~甲3及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないのであるから、本件発明2も、引用発明1、甲1~甲3及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないことは明らかである。
(イ)甲2を主引用例とする進歩性について
本件発明1と引用発明2を対比する。
引用発明2の流動パラフィン、トリ-2-エチルヘキサン酸グリセリン及びオクタン酸セチルは油分であり、本件発明1の油性成分に相当し、これらの合計配合量は、57重量%であるから、本件発明1における油性成分の配合量である組成物全体の40質量%以上の範囲内である。引用発明2のソルビトール及びグリセリンは、水相に存在する水溶性の成分であるから、本件発明1の水性成分に相当する。ショ糖ステアリン酸エステル(置換度1.5)、POE(60)硬化ヒマシ油及びヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウムは界面活性剤である。
そうすると、本件発明1と引用発明2の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
油性成分、水性成分、及び界面活性剤を含有し、
前記油性成分が組成物全体の40質量%以上である、
皮膚洗浄用の水中油型乳化組成物(ただし、組成物全体に対して、ポリエチレングリコール(100~200)ジ脂肪酸エステル0.1質量%、デカグリセリン(4~6)脂肪酸エステル0.5質量%、ビーズワックス1質量%、テトラオクタン酸ペンタエリスリット12質量%、スクワラン20質量%、流動パラフィン10質量%、グリセリルモノオレート1質量%、グリセリルモノステアレート1質量%、ステアリン酸、ベヘニルアルコール、(アジピン酸・2-エチルヘキサン酸・ステアリン酸)グリセリルオリゴエステル、イソステアリン酸PEG-20グリセリル及びPOE(20)ソルビタンセスキステアレートを含有するマッサージ料であって、前記ポリエチレングリコール(100~200)ジ脂肪酸エステルと前記デカグリセリン(4~6)脂肪酸エステルの組み合わせが、POE(150)ジステアリン酸エステル及びデカグリセリンペンタステアレート、POE(150)ジステアリン酸エステル及びデカグリセリンテトララウレート、又はPOE(150)ジオレイン酸エステル及びデカグリセリンペンタステアレートであるマッサージ料を除く)。
(相違点2ア)
本件発明1は、前記油性成分が融点45~75℃の固形脂を組成物全体の0.2~4.0質量%含むのに対し、引用発明2は、固形脂を含まない点。
(相違点2イ)
本件発明1は、前記水性成分が、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを含むのに対し、引用発明2は、水性成分が、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを含まない点。
(相違点2ウ)
甲2には、引用発明2は、0.3gの水中油型乳化組成物を塗布した前腕内側を、第二指、第三指及び第四指により荷重0.1~8.0Nで長軸10cm、短軸5cmの周回運動を行う試験において、乳化剤型がオイル状に変化し始めるのが1~20周回であることについて記載されていない点。
上記相違点2アにつき検討する。
甲2の【0022】には、油分として、通常化粧品、医薬部外品等に使用される液体油脂、固体油脂、ロウ類、炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、シリコーン油から任意に使用されることが記載され、固体油脂の具体例としては、カカオ脂、ヤシ油、馬脂、硬化ヤシ油、パーム油、牛脂、羊脂、硬化牛脂、パーム核油、豚脂、牛骨脂、モクロウ核油、硬化油、牛脚脂、モクロウ、硬化ヒマシ油等が挙げられ、ロウ類の具体例としては、ミツロウ、カンデリラロウ、綿ロウ、カルナウバロウ、ベイベリーロウ、イボタロウ、鯨ロウ、モンタンロウ、ヌカロウ、ラノリン、カポックロウ、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ジョジョバロウ、硬質ラノリン、セラックロウ、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル等が挙げられることが記載されている。このように、甲2には、本件発明1における固体脂に相当し得る固体油脂及びロウ類が使用し得ることが記載されているが、固体油脂としては、植物性及び動物性のものを含め多様なものが例示され、ロウ類としては、液状ラノリンのような固体でないものも挙げられており、その配合量について説明する記載はない。また、甲2には、上記の固体油脂及びロウ類に該当する油分を用いた具体的実施例の記載もない。
このような甲2の記載から、固体油脂及びロウ類として挙げられた物質の中から、融点45~75℃の固形脂を選択し、組成物全体の0.2~4.0質量%の配合量で配合するように引用発明2の組成物の組成を変更することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。仮に、水中油型のクレンジング化粧料に固体脂を用いることが本願出願時の周知技術であるとしても、それだけで固体脂の中から融点45~75℃の固形脂を選択し、引用発明2の組成物中に全体の0.2~4.0質量%の配合量で配合することが動機づけられるとはいえない。
したがって、引用発明2を相違点2アの本件発明1に係る構成を備えるものとすることは、甲1~甲3及び周知技術から当業者が容易になし得たことであるとはいえないから、その他の相違点につき検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2、甲1~甲3及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
本件発明2は、本件発明1の特定事項を全て備え、さらに限定された発明である。
そして、上記のとおり、本件発明1が引用発明2、甲1~甲3及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないのであるから、本件発明2も、引用発明2、甲1~甲3及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないことは明らかである。
(ウ)甲3を主引用例とする進歩性について
本件発明1と引用発明3を対比する。
引用発明3の記載のクレンジングクリームは、水中油型の乳化組成物であって、メイクアップになじませて除去するためのものであり(【0023】)、メイクアップになじませた後、洗い流して使用するものであるから(【0036】)、本件発明1の皮膚洗浄用水中油型乳化組成物に相当する。引用発明3の流動パラフィン、スクワラン、オリーブ油、ヒマワリ油、アーモンド油、ミツロウ及びジメチルポリシロキサン、グレープシード油は、本件発明1の油性成分に相当し、それらの合計配合量は、58.01質量%であるから、本件発明1における油性成分の配合量である組成物全体の40質量%以上の範囲内である。引用発明3のミツロウは、ロウ類であり、その融点は64℃であることが技術常識であるから、本件発明1における融点45~75℃の固形脂に相当し、その配合量は、2質量%であるから、本件発明1における固形脂の含有量である組成物全体の0.2~4.0質量%の範囲内である。引用発明3は、濃グリセリン、キサンタンガム、エデト酸二ナトリム、水溶性コラーゲンなどの水溶性成分を含むから、本件発明1の水性成分に相当する成分を含んでいる。また、引用発明3のNーステアロイルグルタミン酸ナトリウムは、アシルアミノ酸界面活性剤であるから、本件発明1の界面活性剤に相当する。
そうすると、本件発明1と引用発明3の一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
油性成分、水性成分、及び界面活性剤を含有し、
前記油性成分が組成物全体の40質量%以上であり、
前記油性成分が融点45~75℃の固形脂を組成物全体の0.2~4.0質量%含む、
皮膚洗浄用の水中油型乳化組成物(ただし、組成物全体に対して、ポリエチレングリコール(100~200)ジ脂肪酸エステル0.1質量%、デカグリセリン(4~6)脂肪酸エステル0.5質量%、ビーズワックス1質量%、テトラオクタン酸ペンタエリスリット12質量%、スクワラン20質量%、流動パラフィン10質量%、グリセリルモノオレート1質量%、グリセリルモノステアレート1質量%、ステアリン酸、ベヘニルアルコール、(アジピン酸・2-エチルヘキサン酸・ステアリン酸)グリセリルオリゴエステル、イソステアリン酸PEG-20グリセリル及びPOE(20)ソルビタンセスキステアレートを含有するマッサージ料であって、前記ポリエチレングリコール(100~200)ジ脂肪酸エステルと前記デカグリセリン(4~6)脂肪酸エステルの組み合わせが、POE(150)ジステアリン酸エステル及びデカグリセリンペンタステアレート、POE(150)ジステアリン酸エステル及びデカグリセリンテトララウレート、又はPOE(150)ジオレイン酸エステル及びデカグリセリンペンタステアレートであるマッサージ料を除く)。
(相違点3ア)
本件発明1は、前記水性成分が、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを含むのに対し、引用発明3は、水性成分が、炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを含まない点。
(相違点3イ)
甲3には、引用発明3は、0.3gの水中油型乳化組成物を塗布した前腕内側を、第二指、第三指及び第四指により荷重0.1~8.0Nで長軸10cm、短軸5cmの周回運動を行う試験において、乳化剤型がオイル状に変化し始めるのが1~20周回であることについて記載されていない点。
上記相違点3アにつき検討する。
甲3には、クレンジング化粧料に炭素数16~22の脂肪酸及び炭素数16~22のアルコールを配合することについて、何ら記載も示唆もない。
申立人は、甲4及び甲5の記載から、水中油型クリームに高級脂肪酸及び高級アルコールを配合してαゲルとすることにより、安定性の高いO/Wクリームが得られることが本件特許出願時における周知技術であり、化粧料の分野において、乳化状態を安定化させることが周知の課題であることから、引用発明3を高級アルコールと高級脂肪酸を配合したαゲルとすることは当業者が容易になし得ることである旨を主張している(異議申立書31頁~33頁)。そこで、甲4及び甲5から認定できる周知技術から、相違点3アに係る構成を当業者が容易に想到し得たといえるかを検討する。
甲4には「従来、高粘度のクリーム等を製造する際には、処方中に2質量%以上の高級アルコールを配合してαゲルを形成させるか、増粘剤を多量に配合する必要があった。また、このような高粘度クリームを調製する方法としては、室温以上に融点を持つ成分(親水性非イオン性界面活性剤、脂肪酸、高級アルコール、ワックス等)のみならず、配合される全成分をその融点以上に加熱し、乳化した組成物をオンレーターなどの冷却機で室温付近まで冷却する方法が用いられてきた(例えば、非特許文献1参照)。」との記載がある(甲4【0002】)。
甲5には、「従来より、化粧品、医薬部外品、医薬品などの皮膚外用剤の乳化安定性を保つ目的で高級脂肪族アルコールとポリオキシエチレン型非イオン界面活性剤が形成するαゲルを用いたO/W乳化組成物が用いられており、特に、化粧料として用いることが知られている。このようなO/W乳化組成物を調製する方法としては、水に保湿剤と親水的なポリオキシエチレン型非イオン界面活性剤等を溶解させ70℃付近に加温した水相に、必須成分として油分と高級アルコールを70℃付近で均一にした油相をホモゲナイザーで攪拌しながら添加し、乳化したものをオンレーターなどの冷却機で35℃付近まで冷却する方法が用いられてきた(例えば、非特許文献1参照)。」との記載がある(甲5【0002】)。
甲4の上記記載より、高級アルコールを配合してαゲルを形成することにより、高粘度クリームを調製することが知られていたこと、また、甲5の上記記載より、乳化安定性を保つ目的で高級脂肪族アルコールとポリオキシエチレン型非イオン界面活性剤が形成するαゲルを用いたO/W乳化組成物が用いられることが、本願出願日における周知技術であることが推認される。
引用発明3は、ポリオキシエチレン型非イオン界面活性剤であるトリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)を含むものであるが、甲3の【0014】に「本発明の(B)成分であるソルビタン系非イオン界面活性剤は、本発明の乳化型クレンジング化粧料において良好な乳化分散、及び洗い流し時の容易な再乳化のために配合するものである。と記載されるとおり、ソルビタン系非イオン界面活性剤としてはポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが挙げられる。」と記載されるとおり、引用発明3のトリステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20E.O.)は、良好な乳化分散、及び洗い流し時の容易な再乳化のために配合するものであり、引用発明3の組成物にさらに高級アルコールを配合して、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルが高級アルコールとαゲルを形成すると、洗い流し時の容易な再乳化の作用が保持されるかは不明である。
したがって、当業者が引用発明3の組成物にさらに高級アルコールを配合してαゲルを形成するように変更するとは考えられない。
また、甲4に記載されたように、高級アルコールを配合してαゲルを形成することにより、高粘度クリームを調製することが本願出願日における周知技術であったとしても、引用発明3において、さらに粘度を高める必要があるともいえないから、当業者が引用発明3の組成物に高級アルコールを配合することを容易に想到し得たということもできない。
したがって、引用発明3を相違点3アの本件発明1に係る構成を備えるものとすることは、当業者が容易になし得たことではないから、その他の相違点につき検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明3、甲1~甲3及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでない。
本件発明2は、本件発明1の特定事項を全て備え、さらに限定された発明である。
そして、上記のとおり、本件発明1が引用発明3、甲1~甲3及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないのであるから、本件発明2も、引用発明3、甲1~甲3及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないことは明らかである。
エ 小括
以上のとおり、本件発明1及び2は、甲1~3に記載された発明、甲1~甲3の記載及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでないから、本件発明1及び2についての特許は、申立理由4によって取り消されるべきものでない。
(4)まとめ
申立理由はいずれも理由がなく、異議申立ての理由によっては、本件特許1及び2についての特許は取り消されるべきものでない。
第7 むすび
以上のとおり、本件発明1及び2についての特許は、取消理由通知に記載した理由、並びに、異議申立ての理由及び証拠のいずれによっても取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法第114条第4項の規定により、本件請求項1及び2に係る特許について、上記結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2021-700830