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特許異議申立

2021-700787

皮膚外用組成物

審判番号
2021-700787
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-520078
登録番号
6836017
請求日
2021年08月06日
審決日
2023年03月06日
公報発行日
2023年07月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】ロート製薬株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
  • 【異議申立人】上田 剛士
  • 【異議申立人】山▲崎▼ 浩一郎
  • 【異議申立人】小池 良
  • 【異議申立人】田中 精一
  • 【異議申立人】山下 桂
  • 【異議申立人】柴田 勇一
審判長/審判官
  • 審判長 森井 隆信
  • 審判官 井上 典之
  • 審判官 岡崎 美穂
分類
P1651.537-ZAA(A61K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項1号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第113条第4号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第6836017号発明「皮膚外用組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第6836017号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 特許第6836017号の請求項1~4、6に係る特許を取り消す。 特許第6836017号の請求項5に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第6836017号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和2年1月31日(優先権主張 平成31年2月1日、令和1年7月26日、ともに日本国)を国際出願日とする出願であって、令和3年2月8日にその特許権の設定登録がされたものである(特許掲載公報の発行は同年2月24日)。 その後、本件特許の請求項1~6に係る特許に対して、 ・令和3年8月6日に、特許異議申立人である上田 剛士(以下「申立人1」という。)により特許異議の申立てがされ、 ・令和3年8月12日に、特許異議申立人である山崎 浩一郎(当審注:「崎」の原文は「たつさき」。以下「申立人2」という。)により特許異議の申立てがされ、 ・令和3年8月19日に、特許異議申立人である小池 良(以下「申立人3」という。)により特許異議の申立てがされ、 ・令和3年8月23日に、特許異議申立人である田中 精一(以下「申立人4」という。)により特許異議の申立てがされ、 ・令和3年8月24日に、特許異議申立人である山下 桂(以下「申立人5」という。)により特許異議の申立てがされ、 ・令和3年8月24日に、特許異議申立人である柴田 勇一(以下「申立人6」という。)により特許異議の申立てがされた。 本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、次のとおりである。 令和3年12月10日付け:取消理由通知 令和4年 2月10日 :訂正請求書、意見書の提出(特許権者) 同年 3月22日付け:訂正拒絶理由通知 同年 4月14日 :手続補正書の提出(特許権者) 同年 5月10日付け:訂正請求があった旨の通知 同年 6月 7日 :意見書の提出(申立人2) 同年 同月13日 :意見書の提出(申立人3) 同年 同月15日 :意見書の提出(申立人6) 同年11月15日付け:取消理由通知(決定の予告) なお、申立人1、4及び5からは、令和4年5月10日付けの訂正請求があった旨の通知に対して、指定した期間内に何ら応答がなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正請求書の補正及びその適否 令和4年4月14日提出の手続補正書による補正の内容は、同年2月10日提出の訂正請求書による訂正事項1及び3について、特許請求の範囲の請求項1及び3に記載された皮膚外用組成物から、但し書きによって除外した(3)の皮膚外用組成物が含む一般式(1)の【化1】式の化合物におけるR1、R2及びR3基の定義が欠落しており不明確なものであったのを、これらの説明を補完して明確なものとした訂正事項とするものであるから、当該補正は、訂正請求書の要旨を変更するものではない。 したがって、前記補正は、特許法第120条の5第9項において準用する同法第131条の2第1項の規定に適合するから、当該補正を認める。 2 訂正の内容 令和4年4月14日提出の手続補正書により補正された、同年2月10日提出の訂正請求書による訂正の請求(以下「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、請求項1及び請求項1の記載を直接的に又は間接的に引用する請求項2~6からなる一群の請求項1~6を訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、 「(A)ニコチン酸アミド3質量%以上; (B)防腐剤;及び (C)二価カルボン酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオキシブチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンソルビット、ポリオキシアルキレンエリスリトールエーテル、ポリオキシアルキレンペンタエリスリトールエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル、ポリオキシアルキレントリメチロールプロパン、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシアルキレンキシリトール、ポリオキシアルキレンジペンタエリスリトール、ポリオキシアルキレンイノシトール、ポリオキシアルキレンスクロースエーテル、ポリオキシアルキレントレハロースエーテル、及びポリオキシアルキレンマルチトールエーテルからなる群より選択される1種又は2種以上;を含有する皮膚外用組成物: (但し、(1)下記化粧水 (成分) (%) 1.1,3-ブチレングリコール 10.0 2.グリセリン 5.0 3.ジグリセリン 0.5 4.精製水 残量 5.ニコチン酸アミド 6.0 6.シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸ビスエトキシジグリコール 0.5 7.ベタイン 0.1 8.エリスリトール 0.1 9.パラオキシ安息香酸メチル 0.1 10.エデト酸二ナトリウム 0.05 11.シロキクラゲ多糖体 0.01 12.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.1 13.アルカリゲネス産生多糖体 0.1 14.(PEG-240/デシルテトラデセス-20/HDI)コポリマー 0.1 15.カルボマー 0.1 16.キサンタンガム 0.1 17.水酸化ナトリウム 0.03 18.精製水 10.0 19.イソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.1 20.アスタキサンチン 0.1 21.ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル 0.1 22.エタノール 10.0 23.メントール 0.01 24.香料 0.2 (2)下記水性クレンジング (成分) (%) 1.精製水 残量 2.クエン酸 0.1 3.クエン酸ナトリウム 0.1 4.ジプロピレングリコール 15.0 5.1,3-ブチレングリコール 5.0 6.グリセリン 2.0 7.シロキクラゲ多糖体 0.01 8.ポリクオタニウム-51 0.5 9.ニコチン酸アミド 4.0 10.アスタキサンチン 0.1 11.エタノール 1.0 12.パラオキシ安息香酸メチル 0.1 13.PEG/PPG/ポリブチレングリコール-8/5/3グリセリン 5.0 14.トリイソステアリン酸ポリオキシエチレングリセリル(20E.O.) 1.0 15.テトラ2-ヘキシルデカン酸アスコルビル 0.01 16.ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド(10E.O.) 0.1 17.ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル 0.1 (3)アルブチン及びスクワランを共に含有する組成物、 及び (4)アグマチン又はその塩を配合する組成物、を除く)」 とあるのを、 「(A)ニコチン酸アミド3~10質量%; (B)安息香酸、安息香酸塩、イソプロピルメチルフェノール、カプリルヒドロキサム酸、ソルビン酸、ソルビン酸塩、及びクロロブタノールからなる群より選択される少なくとも1種である防腐剤0.05~0.5質量%;及び (C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル、及びポリオキシアルキレンソルビットからなる群より選択される1種又は2種以上;を含有し、水を含有する皮膚外用組成物: (但し、(1)アルブチン及びスクワランを共に含有する組成物、 (2)アグマチン又はその塩を配合する組成物、及び (3)下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする、皮膚外用組成物: 【化1】 [図:0001399314000001.jpg] [式中、R1は、カルボキシル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は炭素数1~4のアルキル鎖を有するカルボン酸エステル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分のアルキル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]を除く)。」 と訂正する。請求項1を引用する請求項2及び6も同様に訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2において、 「前記(C)成分が、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシブチレンポリオキシエチレンポリオキシプロピレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテル、ポリオキシプロピレンソルビット、ポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンジグリセリルエーテル、エイコサン二酸/テトラデカン二酸)ポリグリセリル-10、シクロヘキサンジカルボン酸ビスエトキシジグリコール、コハク酸ジエトキシエチル、又はコハク酸ジエチルヘキシルである」 とあるのを、 「前記(C)成分が、ポリオキシエチレンポリオキシプロヒピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロヒピレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレンソルビット、及びポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルからなる群より選択される1種又は2種以上である」 と訂正する。請求項2を引用する請求項6も同様に訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3において、 「前記(B)成分が、パラオキシ安息香酸エステル、安息香酸、安息香酸塩、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸塩、チモール、イソプロピルメチルフェノール、カプリルヒドロキサム酸、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニルの塩、ブチルカルバミン酸ヨウ化プロピニル誘導体、ソルビン酸、ソルビン酸塩、クロロブタノール、及びメチルイソチアゾリンからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2のいずれか1項に記載の皮膚外用組成物。」 とあるのを、 「(A)ニコチン酸アミド3~10質量%; (B)安息香酸、安息香酸塩、イソプロピルメチルフェノール、カプリルヒドロキサム酸、ソルビン酸、ソルビン酸塩、及びクロロブタノールからなる群より選択される少なくとも1種である防腐剤0.05~0.5質量%;及び (C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル、及びポリオキシアルキレンソルビットからなる群より選択される1種又は2種以上;を含有する液状又は半固形状の皮膚外用組成物: (但し、 (1)アルブチン及びスクワランを共に含有する組成物、 (2)アグマチン又はその塩を配合する組成物、及び (3)下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする、皮膚外用組成物: 【化1】 [図:0001399314000002.jpg] [式中、R1は、カルボキシル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は炭素数1~4のアルキル鎖を有するカルボン酸エステル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分のアルキル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]を除く)。」 と訂正する。請求項3を引用する請求項6も同様に訂正する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4において、 「前記(A)成分の含有量が、3~10質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の皮膚外用組成物。」 とあるのを、 「前記(C)成分が、ポリオキシエチレンポリオキシプロヒピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロヒピレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレンソルビット、及びポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルからなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項3に記載の皮膚外用組成物。」 と訂正する。請求項4を引用する請求項6も同様に訂正する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項6において、 「請求項1~5のいずれか1項に記載の皮膚外用組成物」 とあるのを、 「請求項1~4のいずれか1項に記載の皮膚外用組成物」 と訂正する。 3 訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の追加の有無について (1) 訂正事項1について ア 訂正の目的について 訂正事項1のうち、(A)成分に係る訂正は、含有量の上限を限定するものであり、(B)成分に係る訂正は、成分の選択肢の化合物及び含有量を限定するものであり、(C)成分に係る訂正は、成分の選択肢の化合物を限定するものであり、また、皮膚外用組成物が水を含有するか否か特定されていなかったところ、水を含有すると限定するものであり、さらに、但し書きにおける訂正は、(B)成分の特定により除外する必要がなくなったもの(訂正前の請求項1において除外されていた(1)~(4)のうちの(1)及び(2)が該当)を削除し、新規性・進歩性について取消理由が通知された引用文献9(特開2019-14709号公報)に記載された皮膚外用組成物(訂正後の請求項1において除外する(3)が該当)を除外するものであるから、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項1のうち、(A)~(C)成分に係る訂正は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであって、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 また、訂正事項1のうち、但し書に関する訂正は、(B)成分の訂正により除外するのが不要となった部分を削除し、上記引用文献9に記載された皮膚外用組成物を除外するものであるから、訂正前の請求項1に記載された発明のカテゴリーを変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「願書に添付した明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1のうち、(A)成分に係る含有量の上限の限定は、訂正前の請求項4の記載に基づくものであり、また、(B)成分に係る選択肢の化合物及び含有量の限定は、訂正前の請求項3の記載及び実施例の記載に基づくものであり、さらに、(C)成分に係る選択肢の化合物の限定は、訂正前の請求項2の記載及び実施例の記載に基づいて限定するものであるから、いずれも願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でするものである。 また、訂正事項1のうち、但し書きに係る訂正は、(B)成分の限定により除外対象から外れたものを削除し、新規性・進歩性について取消理由が通知された上記引用文献9に記載された皮膚外用組成物を除外するものであるから、願書に添付した明細書等に記載した事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものでないことは明らかである。 そうすると、訂正事項1は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (2) 訂正事項2について ア 訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載されている(C)成分の選択肢の化合物をさらに限定するものであり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載されている(C)成分の選択肢の化合物をさらに限定するものであって、、訂正前の請求項2に係る発明のカテゴリーを変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正後の請求項2に記載されている(C)成分の選択肢の化合物は、訂正前の請求項2に記載されているものであるから、訂正事項2は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項3の記載において訂正前の請求項1の記載を引用する部分のみを、訂正後の請求項3において、訂正後の請求項1の記載を引用しない独立形式に記載を改めた上で、訂正前の請求項3で特定されていた(B)成分の選択肢の化合物をさらに限定し、訂正事項1と同様に、(A)成分の含有量の上限を限定し、(B)成分の含有量を限定し、(C)成分の選択肢の化合物を限定し、さらに皮膚外用剤の性状を特定し、但し書きにおいて、(B)成分の特定により除外する必要がなくなった部分を削除し、新規性・進歩性について取消理由が通知された上記引用文献9に記載された皮膚外用組成物を除外するものである。 ア 訂正の目的について 訂正事項3は、上記のとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 また、訂正事項3は、上記(1)アと同様に、(A)、(B)、(C)成分について限定し、さらに組成物の性状も限定し、但し書きにおいて、(B)成分の特定により除外するのが不要になった部分を削除し、上記引用文献9に記載された皮膚外用組成物を除外するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項3は、訂正前の請求項3において、訂正前の請求項1の記載を引用する記載であったものを、請求項間の引用関係を解消するとともに、訂正事項1と上記(1)アと同様に(A)、(B)、(C)成分について限定するものであり、さらに組成物の性状を限定し、但し書きにおいて、(B)成分の特定により除外するのが不要になった部分を削除し、上記引用文献9に記載された皮膚外用組成物を除外するものであって、訂正前の請求項3に係る発明のカテゴリーを変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項3は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3のうち、(A)成分に係る含有量の上限の限定は、訂正前の請求項4の記載に基づくものであり、また、(B)成分に係る選択肢の化合物及び含有量の限定は、訂正前の請求項3の記載及び実施例の記載に基づくものであり、さらに、(C)成分に係る選択肢の化合物の限定は、訂正前の請求項2の記載及び実施例の記載に基づいて限定するものであるから、いずれも願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でするものである。 訂正事項3のうち、組成物の性状の限定については、願書に添付した明細書の段落【0121】に記載されており、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でするものである。 また、訂正事項3のうち、但し書きに係る訂正は、(B)成分の限定により除外対象から外れたものを削除し、新規性・進歩性について取消理由が通知された上記引用文献9に記載された皮膚外用組成物を除外するものであるから、願書に添付した明細書等に記載した事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものでないことは明らかである。 そうすると、訂正事項3は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でするものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。 (4) 訂正事項4について ア 訂正の目的について 訂正前の請求項4は、訂正前の請求項1~3の記載を引用し、(A)成分の含有量の上限を特定していたところ、訂正事項1及び3により、訂正後の請求項1及び3において当該(A)成分の含有量の上限が特定され、また、訂正事項3により、訂正後の請求項3が独立形式とされたのに伴って、訂正事項4は、訂正後の請求項4を請求項3の記載のみを引用するものとし、さらに訂正前の請求項3が引用する訂正前の請求項2の(C)成分の選択肢の化合物を、訂正後の請求項4において、さらに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項4は、訂正前の請求項4が訂正前の請求項1~3の記載を引用していたのを、訂正後の請求項4において、訂正事項3により独立形式とされた請求項3の記載のみを引用するものとするとともに、訂正前の請求項4において訂正前の請求項3の記載の引用を介して引用していた訂正前の請求項2に記載の(C)成分の選択肢の化合物を、訂正後の請求項4において、さらに限定するものであるから、訂正前の請求項4に係る発明のカテゴリーを変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 よって、訂正事項4は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 ウ 願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項4のうち、限定された(C)成分の選択肢の化合物は、訂正前の請求項2に記載されていたものであるから、願書に添付した明細書等に記載された範囲内でするものである。 したがって、訂正事項4は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (5) 訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項5は、訂正前の請求項5を削除するものであるから、訂正前の請求項5に係る発明のカテゴリーを変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないので、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 さらに、訂正事項5は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でするものであり、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (6) 訂正事項6について 訂正事項6は、訂正事項5により訂正前の請求項5が削除されたのに伴って、請求項6において、引用する請求項を、訂正前の請求項1~5から訂正後の請求項1~4へと訂正するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項6は、請求項6が引用する請求項のうち、訂正事項5により削除された請求項5を除くものであるから、訂正前の請求項6に係る発明のカテゴリーを変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないので、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合するものである。 さらに、訂正事項6は、願書に添付した明細書等に記載した事項の範囲内でするものであって、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合するものである。 (7) 独立特許要件について 本件特許異議申立事件においては、訂正前の請求項1~6に係る特許に対して特許異議の申立てがされているから、訂正後の請求項1~6に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。 4 小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 よって、本件特許の特許請求の範囲を、手続補正書により補正された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~6〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正請求による訂正後の請求項1~6に係る発明(以下、請求項の番号順に「本件発明1」~「本件発明6」といい、これらを総称して「本件発明」いうことがある。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。なお、下線は本件訂正による訂正変更箇所を示す。 「【請求項1】 (A)ニコチン酸アミド3~10質量%; (B)安息香酸、安息香酸塩、イソプロピルメチルフェノール、カプリルヒドロキサム酸、ソルビン酸、ソルビン酸塩、及びクロロブタノールからなる群より選択される少なくとも1種である防腐剤0.05~0.5質量%;及び (C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル、及びポリオキシアルキレンソルビットからなる群より選択される1種又は2種以上;を含有し、水を含有する皮膚外用組成物: (但し、 (1)アルブチン及びスクワランを共に含有する組成物、 (2)アグマチン又はその塩を配合する組成物、及び (3)下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする、皮膚外用組成物: 【化1】 [図:0001399314000003.jpg] [式中、R1は、カルボキシル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は炭素数1~4のアルキル鎖を有するカルボン酸エステル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分のアルキル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]を除く)。 【請求項2】 前記(C)成分が、ポリオキシエチレンポリオキシプロヒピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロヒピレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレンソルビット、及びポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルからなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項1に記載の皮膚外用組成物。 【請求項3】 (A)ニコチン酸アミド3~10質量%; (B)安息香酸、安息香酸塩、イソプロピルメチルフェノール、カプリルヒドロキサム酸、ソルビン酸、ソルビン酸塩、及びクロロブタノールからなる群より選択される少なくとも1種である防腐剤0.05~0.5質量%;及び (C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル、及びポリオキシアルキレンソルビットからなる群より選択される1種又は2種以上;を含有する液状又は半固形状の皮膚外用組成物: (但し、 (1)アルブチン及びスクワランを共に含有する組成物、 (2)アグマチン又はその塩を配合する組成物、及び (3)下記一般式(1)で表される化合物を含むことを特徴とする、皮膚外用組成物: 【化1】 [図:0001399314000004.jpg] [式中、R1は、カルボキシル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分岐のアルキル基、又は炭素数1~4のアルキル鎖を有するカルボン酸エステル基により置換された炭素数1~4の直鎖若しくは分のアルキル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立に、炭素数1~4の直鎖又は分岐のアルキル基を表す。]を除く)。 【請求項4】 前記(C)成分が、ポリオキシエチレンポリオキシプロヒピレングリセリルエーテル、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロヒピレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレンソルビット、及びポリオキシプロピレンジグリセリルエーテルからなる群より選択される1種又は2種以上である、請求項3に記載の皮膚外用組成物。 【請求項5】(削除) 【請求項6】 前記(C)成分の含有量が、0.1~15質量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の皮膚外用組成物。」 第4 令和4年11月15日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について 本件訂正請求により訂正された請求項1~4、6に係る特許について、当審が令和4年11月15日付け取消理由通知(決定の予告)で特許権者に通知した取消理由は、次のとおりである。 「(取消理由1)(サポート要件) 本件特許は、特許請求の範囲の記載に下記の点で不備があるため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。」 具体的な理由は以下のとおりである。 「1 本件発明が解決しようとする課題・その解決手段 本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。)における発明の詳細な説明(以下「発明の詳細な説明」という。)の記載からみて、本件発明1~4、6が解決すべき課題は、化粧品等において防腐剤((B)成分)に両親媒性成分((C)成分)を配合した場合、それぞれの成分単独では生じない析出が生じてしまうところ、防腐剤と両親媒性成分を含む組成物であっても、析出が抑制された皮膚外用組成物を提供することであると解される(【0006】~【0007】、【0036】~【0037】等)。 そして、発明の詳細な説明には、上記課題に対して、防腐剤と両親媒性成分の組み合わせによって生じる析出が、ニコチン酸アミドを加えることによって抑制できることを見出し、本件発明を完成するに至ったことが記載されている(【0008】)。 2 防腐剤及び両親媒性成分の特定について (1) 本件訂正により特定された事項 本件発明1及び3において、防腐剤については、本件訂正により、 「(B)安息香酸、安息香酸塩、イソプロピルメチルフェノール、カプリルヒドロキサム酸、ソルビン酸、ソルビン酸塩、及びクロロブタノールからなる群より選択される少なくとも1種である防腐剤0.05~0.5質量%」 と特定された。 また、防腐剤と組み合わせる両親媒性成分については、 「(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル、及びポリオキシアルキレンソルビットからなる群より選択される1種又は2種以上」 と特定された。 (2) 発明の詳細な説明に記載された事項 ここで、本件訂正で特定された防腐剤と両親媒性成分との組み合わせについて、発明の詳細な説明において具体的な析出抑制の結果が開示されているのは、【0137】【表5】に記載されている、 ・実施例19の組成物: ニコチン酸アミド3質量%、ソルビン酸0.2質量%、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド(10P.O.)5質量%、水残量、全量100質量%、及び、 ・実施例20の組成物: ニコチン酸アミド3質量%、安息香酸0.5質量%、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド(10P.O.)5質量%、水残量、全量100質量% のみである。 上記実施例19又は20の組成物において、「ソルビン酸」又は「安息香酸」は、本件発明1及び3における(B)成分の防腐剤の選択肢に含まれるものであり、「ポリオキシプロピレンメチルグルコシド(10P.O.)」は、本件発明1及び3における(C)成分の選択肢の1つである「ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド」に該当するものと認められる。 そして、同【表5】には、上記実施例19又は20の組成物とは、(A)成分のニコチン酸アミドを含まない点が異なる比較例として、比較例19及び20の組成物が記載されており、上記実施例19及び20の組成物では、4℃において析出が生じないが、当該比較例19及び20の組成物では、4℃において析出が生じることが記載されている。 (3) 防腐剤について ア 安息香酸塩及びソルビン酸塩について 上記(2)に示したとおり、本件明細書には、(B)成分の防腐剤として安息香酸又はソルビン酸を含有する、本件発明1及び3の条件を満たす組成物において、析出が抑制されたことを確認した実施例は具体的に記載されているが、(B)成分の防腐剤として安息香酸塩又はソルビン酸塩を含有する組成物についての具体的な実施例の記載はない。 そして、安息香酸塩について、新たに引用する引用文献14の記載によれば、安息香酸カリウムの水への溶解度は20℃で1Lに492gであり、同じく新たに引用する引用文献15の記載によれば、安息香酸ナトリウムの水溶解度は20℃で63g/100mlである。また、引用文献2には、安息香酸カリウムの水溶解度について、39.89重量%(0℃)、40.2重量%(10℃)、42.4重量%(25℃)と記載されており、安息香酸の水溶解度として記載されている0.17重量%(0℃)、0.21重量%(10℃)、0.34重量%(25℃)よりも、かなり大きく、異なるものと認められる(なお、安息香酸カリウム及び安息香酸ナトリウムの水溶解度については、新たに引用する引用文献22も参照。)。 同様に、ソルビン酸塩についても、新たに引用する引用文献16によれば、水溶解度は58.2g/100ml(20℃)であって、引用文献3に記載されたソルビン酸の水溶解度0.16g/100ml(20℃)よりもかなり大きく、異なるものである。 この点について、特許権者は、令和4年2月10日提出の意見書の第5頁「(4)-1 防腐剤の種類について」において、(B)成分として限定されたものは実施例で実証されている成分かその塩、又は溶解状態の水和状態や融点や溶解度の点において、実証された成分と類似する性質を有する成分である旨主張している。 しかしながら、上記のとおり、安息香酸塩及びソルビン酸塩については、塩ではない遊離酸と比べて水溶解度が相当に大きいから、水溶解度の高い塩を用いた場合には、水溶液中において、両親媒性成分((C)成分)に対し、水溶解度の低い遊離酸を用いた場合と同様の挙動を示すとは推認できず、そもそも析出の課題が生じるものとは認められない。 そうすると、本件発明1及び3のうち、(B)成分の防腐剤として安息香酸塩又はソルビン酸塩を用いた場合には、本件特許出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載により、上記1に示した課題を解決できると当業者が認識できるものとはいえない。 この点については、本件発明1又は3を直接的に又は間接的に引用し、(B)成分の防腐剤の選択肢として安息香酸塩又はソルビン酸塩を含む、本件発明2、4、6も同様である。 したがって、本件発明1~4、6は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 イ クロロブタノールについて 発明の詳細な説明の【0138】【表6】には、実施例26として、クロロブタノール1.2質量%を含む組成物は、4℃で析出がなかったことが記載されているが、これは本件発明1及び3の(B)成分の含有量「0.05~0.5質量%」の範囲内のものではない。また、発明の詳細な説明の【0139】【表7】に記載された、クロロブタノール1.2質量%を含み、(A)成分のニコチン酸アミドを含まない比較例27の組成物では、4℃で析出があったとされているが、新たに引用する引用例17の記載によれば、クロロブタノールの水溶解度は8g/L(20℃)であり、0.8g/100ml(20℃)で析出することになるから、4℃の水溶液中のクロロブタノール1.2gの量は、(C)成分の配合の有無によらず、析出が生じると解されるものであって、そもそも(C)成分との組み合わせの配合によって析出が生じるとの課題が存するのかも疑問があるものである。 そうすると、本件発明1及び3のうち、(B)成分の防腐剤としてクロロブタノールを用いた場合には、本件特許出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載により、上記1に示した課題を解決できると当業者が認識できるものとはいえない。 この点については、本件発明1又は3を直接的に又は間接的に引用し、(B)成分の防腐剤の選択肢としてクロロブタノールを含む、本件発明2、4、6も同様である。 したがって、本件発明1~4、6は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 ウ カプリルヒドロキサム酸及びイソプロピルメチルフェノールについて カプリルヒドロキサム酸及びイソプロピルメチルフェノールの2成分については、発明の詳細な説明の【0015】に、(B)成分の防腐剤として例示されているものの、実際に組成物に配合した実施例は発明の詳細な説明に記載されていない。 特許権者は、令和4年2月10日提出の意見書の第4頁(4)-1において、(B)成分として限定されたものは実施例で実証されている成分かその塩、又は溶解状態の水和状態や融点や溶解度の点において、実証された成分と類似する性質を有する成分である旨を主張するとともに、 a クロロブタノールとカプリルヒドロキサム酸は、構造中に1つの水酸基を有し、かつ融点が極めて近しい物質同士であること、 b パラオキシ安息香酸メチルとイソプロピルメチルフェノールは構造中に水酸基を有し、かつ近い融点が近い物同士であること、 を主張している。 しかしながら、上記aの主張について検討すると、構造中に1つの水酸基を有するとはいえ、両化合物の構造は大きく異なり類似のものとはいえない。また、融点が近いことは、(C)成分に対する析出についての技術的な説明とはいえず、そもそも、水に対する溶解度等の類似性についての説明もないから、カプリルヒドロキサム酸が、実証されたクロロブタノールと類似する性質を有する成分であるとはいえない。 次に、上記bの主張について検討するに、両化合物は、共通してフェノール水酸基の構造ではあるが、その他の基が一方はエステル基であり、他方はアルキル基が2つあって構造上は異なるものである。また、両化合物の融点が近いことは、(C)成分に対する析出についての技術的な説明とはいえないし、そもそも、水に対する溶解度等の類似性の説明もないから、両化合物が類似する性質を有するのかも不明である。 なお、カプリルヒドロキサム酸と近いと主張するクロロブタノールについては、上記イで述べたとおり、これを(B)成分の防腐剤として用いた場合の本件発明1~4、6が、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないことを付言する。 そうすると、本件発明1及び3のうち、(B)成分の防腐剤としてカプリルヒドロキサム酸又はイソプロピルメチルフェノールを用いた場合には、本件特許出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載により、上記1に示した課題を解決できると当業者が認識できるものとはいえない。 この点については、本件発明1又は3を直接的に又は間接的に引用し、(B)成分の防腐剤の選択肢としてカプリルヒドロキサム酸又はイソプロピルメチルフェノールを含む、本件発明2、4、6も同様である。 したがって、本件発明1~4、6は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 (4) 両親媒性成分について 本件発明1及び3においては、両親媒性成分である(C)成分について、 「(C)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリセリルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンジグリセリルエーテル、及びポリオキシアルキレンソルビットからなる群より選択される1種又は2種以上」 と特定されているが、上記(2)で説示したとおり、発明の詳細な説明において、本件訂正により特定された(B)成分との関係で具体的な析出抑制の結果が開示されているのは、「ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド」のうちの「ポリオキシプロピレンメチルグルコシド(10P.O.)」のみである(実施例19及び20)。 その他の(C)成分の選択肢の化合物については、発明の詳細な説明において、防腐剤がパラオキシ安息香酸メチルである場合に、これらを用いた組成物の実施例が記載されているものの、それらの実施例が、パラオキシ安息香酸メチルとは構造や物性も異なる(B)成分について、(C)成分や(A)成分のニコチン酸アミドとの関係を技術的に説明する根拠にはならない。 さらに、(C)成分の選択肢の化合物が有するオキシアルキレン基、アルキル基等について、「ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド」を例にすると、オキシアルキレン基の構造、その繰り返し数、アルキル基の構造により、その性質が大きく異なるものと解されるところ、実施例19及び20で用いられた「ポリオキシプロピレンメチルグルコシド(10P.O.)」と構造が大きく異なるものについては、実施例19及び20の組成物と同様の性質を発揮するのか不明である。他の(C)成分のオキシアルキレン基及びその繰り返し数、アルキル基についても同様である。 そうすると、本件発明1及び3のうち、(C)成分として、実施例による裏付けがある「ポリオキシプロピレンメチルグルコシド10P.O.)」又はこれに構造が類似した「ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド」以外の化合物を用いた場合には、本件特許出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載により、上記1に示した課題を解決できると当業者が認識できるものとはいえない。 この点については、本件発明1又は3を直接的に又は間接的に引用し、(C)成分の選択肢として、「ポリオキシプロピレンメチルグルコシド10P.O.)」又はこれに構造が類似した「ポリオキシアルキレンアルキルグルコシド」以外の化合物を含む、本件発明2、4、6も同様である。 したがって、本件発明1~4、6は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 3 皮膚外用剤組成物が(B)成分の良溶媒を含む場合について 本件発明の皮膚外用剤組成物は、(B)成分の良溶媒を多く含む態様も排除していないところ、その場合には、(C)成分を配合したとしても析出するような問題、つまり、そもそも課題自体が生じ得ないといえる。 例えば、新たに引用する引用文献17には、クロロブタノールがエタノール、グリセロールによく溶けることが記載されており、同じく新たに引用する引用文献18には、クロルブタノール(クロロブタノール)がエタノール、グリセリンに易溶と記載されていることから、クロロブタノールを含む皮膚外用剤組成物が、クロロブタノールの良溶媒であるエタノールやグリセリンを多く含む場合には、(C)成分の配合による析出は生じないと解される。 また、同じく新たに引用する引用例文献19には、ソルビン酸がエタノールに可溶と記載され、同じく新たに引用する引用文献20には、ソルビン酸がエタノールに易溶であることが記載されており、また、同じく新たに引用する引用例21及び引用文献22には、安息香酸がエタノールに易溶であることが記載されていることから、ソルビン酸又は安息香酸を含む皮膚外用剤組成物がエタノールを多く含む場合にも、(C)成分の配合による析出は生じないといえる。 そうすると、(B)成分の良溶媒を多く含む場合の本件発明1~4、6は、そもそも(C)成分の配合による析出の課題が生じないから、本件特許出願時の技術常識に照らし、発明の詳細な説明の記載により、上記1に示した課題を解決できると当業者が認識できるものとはいえない。 したがって、本件発明1~4、6は、発明の詳細な説明に記載したものでない。」 「引用文献等一覧 2.改訂4版 化学便覧 基礎編II、平成5年9月30日発行、丸善株式会社、II-175、(申立人1が提出した甲第8号証)(技術常識を示す文献) 3.丸善食品総合辞典、平成10年3月25日発行、丸善株式会社、p.635-636(技術常識を示す文献) 14.SAFETY DATA SHEET、Potassium benzoate、Sigma-Aldrich、令和3年4月11日改訂、p.1~10(申立人3が意見書とともに提出した甲第6号証)(新たに引用する技術常識を示す文献) 15.ICSC:1536 日本語版 安息香酸ナトリウム、国立医薬品食品衛生研究所、2018年(申立人3が意見書とともに提出した甲第7号証)(新たに引用する技術常識を示す文献) 16.Chemical Book ソルビン酸カリウム、[online],URL:https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB0294184.htm(申立人3が意見書とともに提出した甲第8号証)(新たに引用する技術常識を示す引用例) 17.Chemical Book クロロブタノール、[online]、[検索日:2021年11月29日]、URL:https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB8715683.htm (新たに引用する技術常識を示す引用例) 18.「クロルブタノール」、化学大辞典3 縮刷版第22刷、共立出版株式会社、昭和53年9月10日発行、第256頁(新たに引用する技術常識を示す文献) 19.Chemical Book ソルビン酸、[online]、[検索日:2022年10月26日]、URL:https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB1748891.htm (新たに引用する技術常識を示す引用例) 20.「ソルビン酸」、化学大辞典5 縮刷版第22刷、共立出版株式会社、昭和53年9月10日発行、第256頁(新たに引用する技術常識を示す文献) 21.Chemical Book 安息香酸、[online]、[検索日:2022年10月26日]、URL:https://www.chemicalbook.com/ChemicalProductProperty_JP_CB8698780.htm (新たに引用する技術常識を示す引用例) 22.「安息香酸」、「安息香酸カリウム」、「安息香酸ナトリウム」、化学大辞典1 縮刷版第22刷、共立出版株式会社、昭和53年9月10日発行、第476~481頁(新たに引用する技術常識を示す文献)」 第5 当審の判断 当審は、上記「第4 令和4年11月15日付け取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由について」で述べたとおり、令和4年11月15日付け取消理由通知(決定の予告)を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。 そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件特許の請求項1~4、6に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 また、本件訂正により、本件特許の請求項5が削除されたため、申立人1~6による請求項5に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象を欠くこととなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により決定をもって却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-700787

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  • 2024-700178異議申立 / 2025-02-25 / 訂正認容油性粒子分散組成物及びその製造方法
    同じ当事者: 上田 剛士、小池 良
  • 2021-701237異議申立 / 2023-01-31 / 訂正認容外用組成物
    同じ当事者: ロート製薬株式会社、小池 良
  • 2020-700124異議申立 / 2021-06-21 / 請求成立(取消)洗浄剤組成物
    同じ当事者: ロート製薬株式会社、山下 桂
  • 2025-701132異議申立 / 2026-08-31 / 異議終了
    同じ当事者: ロート製薬株式会社
  • 2025-701104異議申立 / 2026-06-22 / 維持情報処理システムおよび情報処理方法
    同じ当事者: 山▲崎▼ 浩一郎
同じ論点・分野の審決(審決分類)3,674件(537・A61K)
  • 2026-700269異議申立 / 2026-07-03 / 維持水型又は水中油型化粧料
    共通の審決分類: 537・A61K
  • 2025-700768異議申立 / 2026-06-23 / 訂正認容水系クレンジング化粧料
    共通の審決分類: 537・A61K
  • 2024-701182異議申立 / 2026-06-19 / 訂正認容酸化染毛剤組成物
    共通の審決分類: 537・A61K
  • 2025-700392異議申立 / 2026-06-12 / 訂正認容エアゾール型の染毛、脱色・脱染のための酸化剤含有組成物
    共通の審決分類: 537・A61K
  • 2026-700210異議申立 / 2026-06-09 / 維持化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物
    共通の審決分類: 537・A61K

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