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特許異議申立

2026-700210

化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物

審判番号
2026-700210
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-046567
登録番号
7738025
請求日
2026年03月11日
審決日
2026年06月09日
公報発行日
2026年07月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】花王株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人アルガ特許事務所
  • 【異議申立人】竹内 みどり
審判長/審判官
  • 審判長 冨永 保
  • 審判官 加々美 一恵
  • 審判官 野村 伸雄
分類
P1651.121-Y (A61K) / P1651.537-Y (A61K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条、特許法第36条
データ出所
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特許第7738025号発明「化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7738025号の請求項1~10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7738025号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、令和5年3月23日の出願であって(優先権主張 令和4年5月30日、以下「優先日」という。)、令和7年9月3日にその特許権の設定登録がされ、令和7年9月11日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての主な経緯は、次のとおりである。 令和8年3月11日 :特許異議申立人竹内みどり(以下「申立人」という。)による請求項1~10に係る特許に対する特許異議の申立て 第2 本件発明 本件特許の請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」等といい、それらをまとめて「本件発明」ということがある。)は、次に示す特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 (A)1質量%水溶液の30℃における粘度が1,000mPa・s以上であるカチオン性ポリマー、(B)アニオン性ポリマー、(C)ポリグリセリン変性シリコーン及びアミノ変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上の変性シリコーン、(D)ジメチルポリシロキサン、(E)カチオン性界面活性剤、及び(F)高級アルコールを含有し、前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比[(A)/(B)]が4.5以上である、化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物。 【請求項2】 前記成分(A)が下記一般式(1)で表される構成単位を含むポリマーである、請求項1に記載の組成物。 【化1】 [図:0001437433000001.jpg] 式(1)中、R1は水素原子又はメチル基であり、R2~R4はそれぞれ独立に、炭素数1以上4以下のアルキル基である。Xは-O-又は-NH-であり、mは1以上4以下の数である。 【請求項3】 前記成分(B)が(B1)(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含む架橋型重合体及びアニオン性多糖類からなる群から選ばれる1種以上を含む、請求項1又は2に記載の組成物。 【請求項4】 前記成分(B1)がアルギン酸又はその塩である、請求項3に記載の組成物。 【請求項5】 前記成分(D)が、(D1)25℃における粘度が1,000mm2/s以上10,000mm2/s以下のジメチルポリシロキサン、及び、(D2)25℃における粘度が30万mm2/s以上500万mm2/s以下のジメチルポリシロキサンを含む、請求項1又は2に記載の組成物。 【請求項6】 前記成分(A)が塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム重合体、及びN,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N-ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体からなる群から選ばれる1種以上である、請求項1又は2に記載の組成物。 【請求項7】 さらに(G)ノニオン性ポリマーを含有する、請求項1又は2に記載の組成物。 【請求項8】 前記成分(B)がさらに(B2)前記成分(B1)以外のアニオン性ポリマーを含む、請求項3に記載の組成物。 【請求項9】 前記成分(B2)が分子量1,000以上30,000以下の、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含む非架橋型重合体である、請求項8に記載の組成物。 【請求項10】 前記組成物中に含まれる前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比[(A)/(B)]が20以下である、請求項1又は2に記載の組成物。」 第3 特許異議申立理由の概要 申立人は、証拠方法として、特許異議申立書(以下、「申立書」という。)に添付して下記(4)に示す甲第1~6号証(以下、「甲1」~「甲6」という。)を提出し、本件特許の請求項1~10に係る特許を取り消すべき理由として、下記(1)~(3)に示す特許異議の申立ての理由(以下、「申立理由」という。)を主張している。 申立理由の概要は、申立書の記載全体からみて、以下のとおりであると認められる。 1 申立理由1(新規性欠如) 本件請求項1~4及び6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明であり、特許法29条1項3号に該当するから、これらの請求項に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立理由2(進歩性欠如) 本件請求項1~4、6に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明である甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術事項、必要に応じて甲3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、これらの請求項に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 3 申立理由3(サポート要件違反) 本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法36条6項1号に適合するものではないから、本件請求項1~10に係る特許は、同法同条同項同号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであり、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 申立理由3の具体的な理由の概要は次のとおりである。 本件発明は、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性、並びに耐湿性を向上させることができ、且つ安定性の高い化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物を提供することを課題とするものであり、カチオン性ポリマーとアニオン性ポリマーとから形成されるポリイオンコンプレックスを含有する組成物である。 本件発明1では、(A)カチオン性ポリマーと(B)アニオン性ポリマーについて、(A)カチオン性ポリマーの粘度と質量比[(A)/(B)]が規定されているのみで、各ポリマーの種類、電荷密度、溶媒のpH等について制限されていないから、本件発明の課題を解決できるとは認識できず、本件発明1は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものでない。 本件発明2~10も同様である。 4 証拠方法 提出された証拠方法は、次のとおりである。 甲1:One To Belive In Leave-in Conditioner、MINTEL、記録番号(ID:5244969)、2017年12月、インターネット、URL:<http://www.gnpd.com> 甲2:特開2019-001726号公報 甲3:化粧品成分オンライン アルギン酸Naの基本情報・配合目的・安全性、化粧品成分ジャーナル、更新日:2023年2月21日、公開日:2021年10月6日、インターネット、URL:<https://cosmetic-ingredients.org/viscosity-increasing-agents/69/> 甲4:阿部康次、“ポリイオンコンプレックスの特性と機能”、高分子、36巻、11月号、1987年、794-797頁 甲5:中島章夫、“ポリイオンコンプレックスの理論と応用”、化学と工学、27巻、10号、1974年、746-751頁 甲6:特開2021-134161号公報 第4 当審合議体の判断 当審合議体は、本件請求項1~10に係る特許は、上記申立理由によっては、取り消されるべきものではないと判断する。 1 申立理由1(新規性欠如)及び申立理由2(進歩性欠如)について (1) 甲1に記載された事項及び甲1発明の認定 ア 甲1に記載された事項 本件特許の優先日前に発行された甲1には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001437433000002.jpg] 」 イ 甲1発明の認定 上記アの甲1に記載された事項から、甲1には、ヘアトリートメントについて次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明> 「水、ベヘントリモニウムクロリド、ジメチコン、グリセリン、カプリリルグリコール、セタノール、ポリクオタニウム-37、フェノキシエタノール、ココナツオイル、香料、クオタニウム-87、イロプロピルアルコール、アモジメチコン、パンテノール、カプリルヒドロキサム酸、プロピレングリコール、酢酸トコフェロール、ジメチコノール、Cystoseira Amentacea/Caespitosa/Branchycarpa抽出物、L-リモネン、C11-15 パレス-7、ラウレス-9、トリデセス-12、トリオレイン、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル、ワサビノキ種子エキス、ダイズアミノ酸、小麦アミノ酸、クエン酸、リン酸2Na、アルギニンHCL、DL-セリン、スレオニン、シトラール、リナロール、アルギン、カラギーナン、ココグルコシド、キサンタンガム、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸K、キトサン、ベンジルアルコールを含むヘアトリートメント。」 (2) 甲2~3に記載された事項の認定 ア 甲2に記載された技術事項 本件特許の優先日前に発行された甲2には、以下の技術事項(以下「甲2技術事項1」、「甲2技術事項2」という。)が記載されていると認められる。 <甲2技術事項1> 「ポリイオンコンプレックス粒子のカチオン性ポリマー/アニオン性ポリマーの量、例えば化学当量の比は、0.05~18、好ましくは0.1~10、より好ましくは0.5~5.0であってよく、特に、カチオン性ポリマーのカチオン性基の数/アニオン性ポリマーのアニオン性基の数は、0.05~18、より好ましくは0.1~10、更に好ましくは0.5~5.0であることが好ましい場合があること。」(【0051】、【0059】及び【0061】) <甲2技術事項2> 「ポリアニオンとしてのカルボキシメチルセルロース(CMC)の10wt%水溶液1.50g、ポリカチオンとしてのポリリジン(PLYS)の25wt%水溶液16.76g、ポリアニオンとしてのスチレン/マレイン酸コポリマーナトリウム(SMA)の40wt%水溶液0.58g、フェニルアラニン0.30g、フェノキシエタノール0.50g、及び水50.06gを、撹拌機を使用することによって混合し、撹拌しながら、33wt%のテレフタリリデンジカンファースルホン酸(Mexoryl SX)を含有する水溶液30.30gを上記の混合物に添加し、こうして得られた混合物のpHの低下に伴い、形成されたポリイオンコンプレックスゲル粒子。」(【0424】) イ 甲3に記載された技術事項 本件特許の優先日前に発行された甲3には、以下の技術事項が記載されている。 <甲3技術事項> 「アルギン酸ナトリウムのINCI名はAlginであること。」 (3) 本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明の対比 (ア) 本件発明1の「(A)1質量%水溶液の30℃における粘度が1,000mPa・s以上であるカチオン性ポリマー、(B)アニオン性ポリマー、(C)ポリグリセリン変性シリコーン及びアミノ変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上の変性シリコーン、(D)ジメチルポリシロキサン、(E)カチオン性界面活性剤、及び(F)高級アルコールを含有し、」の特定事項について 甲1発明の「ポリクオタニウム-37」について、本件特許の願書に添付した明細書及び特許請求の範囲(以下「本件特許明細書等」という。)の【0026】に、「ポリクオタニウム-37」が本件発明1の成分(A)の例として記載されているから、本件発明1の「(A)1質量%水溶液の30℃における粘度が1,000mPa・s以上であるカチオン性ポリマー」に相当する。 甲1発明の「アルギン、カラギーナン、キサンタンガム」について、本件特許明細書等の【0040】に、これらの成分が本件発明1の成分(B)の例として記載されているから、本件発明1の「(B)アニオン性ポリマー」に相当する。 甲1発明の「アモジメチコン」について、本件特許明細書等の【0040】に、「アモジメチコン」が本件発明1の成分(C)の例として記載されているから、本件発明1の「(C)ポリグリセリン変性シリコーン及びアミノ変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上の変性シリコーン」に相当する。 甲1発明の「ジメチコン」は、本件発明1の「ジメチルポリシロキサン」に相当する。 甲1発明の「ベヘントリモニウムクロリド」について、本件特許明細書等の【0067】に、「ベヘントリモニウムクロリド」が本件発明1の成分(E)の例として記載されているからは、本件発明1の「(E)カチオン性界面活性剤」に相当する。 甲1発明の「セタノール」は、本件発明1の「(F)高級アルコール」に相当する。 したがって、甲1発明は、上記特定事項を備える。 (イ) 本件発明1の「前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比[(A)/(B)]が4.5以上である」の特定事項について 本件発明1と引用発明は、次の点において相違する。 (A)1質量%水溶液の30℃における粘度が1,000mPa・s以上であるカチオン性ポリマー、(B)アニオン性ポリマーについて、本件発明1においては、「前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比[(A)/(B)]が4.5以上である」のに対して、甲1発明においては、「ポリクオタニウム-37」と「アルギン、カラギーナン、キサンタンガム」の質量比は不明である点。 (ウ) 本件発明1の「化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物」の特定事項について 甲1発明の「ヘアトリートメント」は、本件発明1の「化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物」に、相当する。 したがって、甲1発明は、上記特定事項を備える。 イ 一致点及び相違点 上記アから、本件発明1と甲1発明は以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 (ア) 一致点 「(A)1質量%水溶液の30℃における粘度が1,000mPa・s以上であるカチオン性ポリマー、(B)アニオン性ポリマー、(C)ポリグリセリン変性シリコーン及びアミノ変性シリコーンからなる群から選ばれる1種以上の変性シリコーン、(D)ジメチルポリシロキサン、(E)カチオン性界面活性剤、及び(F)高級アルコールを含有する、化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物。」である点。 (イ) 相違点 (A)1質量%水溶液の30℃における粘度が1,000mPa・s以上であるカチオン性ポリマー、(B)アニオン性ポリマーについて、本件発明1においては、「前記成分(B)に対する前記成分(A)の質量比[(A)/(B)]が4.5以上である」のに対して、甲1発明においては、「ポリクオタニウム-37」と「アルギン、カラギーナン、キサンタンガム」の質量比は不明である点。 ウ 判断 (ア) 上記相違点について検討する。 a 新規性欠如についての判断 本件発明1と甲1発明は、上記相違点で実質的に相違する。 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明ではない。 b 進歩性欠如についての判断 (a) 以下で検討するとおり、甲1発明において、「アルギン、カラギーナン、キサンタンガム」に対する「ポリクオタニウム-37」の質量比[「ポリクオタニウム-37」/「アルギン、カラギーナン、キサンタンガム」]が4.5以上であること、すなわち、相違点に係る本件発明1の構成とすることは、甲1発明及び甲2技術事項1、2に基づいて、当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 (b) まず、甲2技術事項1は、カチオン性ポリマー/アニオン性ポリマーの化学当量の比について記載されたものであり、質量比については記載されていない。 (c) 次に、甲2技術事項2は、ポリイオンコンプレックス粒子の1例であり、ヘアトリートメントについてのものではなく、また、甲1発明と同様の組成でもないことから、甲1発明に甲2技術事項2を採用する動機はない。 (d) したがって、甲1に記載された発明及び甲2に記載された技術事項1、2に基づいて、相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、甲1~3の全ての記載を参酌しても、上記判断は左右されない。 (イ) 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、甲1に記載された発明及び甲2、3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ) 申立人の主張について a 申立人の主張1 (a) 申立人の主張1の内容 申立人は、化粧品の成分表示では、含有量の多い順に記載されているところ、成分(A)に相当するポリクオタニウム-37と成分(B)アルギン、カラギーナン、キサンタンガムの記載順序からみて、(A)/(B)の値は4.5以上の蓋然性が高い旨主張する(申立書6頁)。 (b) 申立人の主張1についての検討 しかしながら、各成分の記載順序だけで、(A)/(B)の値は4.5以上の蓋然性が高いとする具体的な理由が不明であり、4.5以上であるといえる理由もない。さらに、化粧品の成分表示では、成分の配合量は、1%以下で順不同となることは、技術常識である(化粧成分オンライン:化粧品の全成分表示ルールの解説https://cosmetic-ingredients.org/rule-of-cosmetics-ingredient-labelling/)から、成分(A)に相当するポリクオタニウム-37と成分(B)に相当するアルギン、カラギーナン、キサンタンガムの記載順序を根拠に、(A)/(B)の値は4.5以上の蓋然性が高いということはできない。 したがって、申立人の上記主張は、採用することができない。 b 申立人の主張2 (a) 申立人の主張2の内容 申立人は、甲2には、ポリイオンコンプレックスの粒子を安定化させるために、アニオン性ポリマーとカチオン性ポリマーの化学当量比を0.5~5の範囲とすることが好ましいとされ、具体的に、カチオン性ポリマーであるポリリジンを4.19g(16.76×0.4(合議体注、「0.4」は、「0.25」の明らかな誤記である。))、アニオン性ポリマーであるカルボキシメチルセルロース0.15g(1.5×0.1)及びスチレン/マレイン酸コポリマーナトリウム0.232g(0.58×0.4)を含有し、アニオン性ポリマーに対するカチオン性ポリマーの質量比が約11(4.19/0.382)である組成物が開示され、したがって、当業者が甲1発明において、ポリイオンコンプレックスの安定化を目的として、成分(A)に相当する「ポリクオタニウム-37」と、成分(B)に相当する「アルギン、カラギーナン、キサンタンガム」の質量比を4.5以上とすることは容易に想到することにすぎない旨主張する(申立書6~7頁)。 (b) 申立人の主張2についての検討 前記(ア)bで説示したとおりである。 したがって、申立人の上記主張は、採用することができない。 (4) 本件発明2~4、6について 本件発明2~4、6は、本件発明1に従属するものであり、さらに請求項2~4、6のそれぞれの記載により特定される発明特定事項を追加したものであるから、前記(3)に示した理由と同様の理由により、本件発明2~4、6に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2、3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 申立理由3(サポート要件違反)について (1) サポート要件の判断の前提 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2) 発明の詳細な説明の記載 本件特許明細書等の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。 ア 技術分野(【0001】) 「【0001】 本発明は、化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物に関する。」 イ 背景技術(【0002】~【0004】) 「【0002】 カチオン系ポリマー及びアニオン系ポリマーを含有するケラチン物質処理用の水性組成物が知られている。例えば特許文献1には、溶剤媒質中に少なくとも一つのアニオン系ポリマーおよび少なくとも一つのカチオン系ポリマーを含むことを特徴とするケラチン物質の処理用組成物を用いることで、特に毛髪、皮膚または爪を含めることができる角質物質にアニオン系ポリマーを固定させることができる旨記載されている。また、上記効果が得られる理由として、アニオン系ポリマー及びカチオン系ポリマーのポリマー間の相互作用により形成される錯体(コンプレックス)が関係すると仮定されている。 【0003】 カチオン系ポリマー及びアニオン系ポリマーを含有する毛髪化粧料に関して、例えば特許文献2には、(A)L-テアニン、並びに(B)高分子化合物として非イオン性高分子、両性高分子、及びカチオン性高分子を含有する毛髪処理用組成物が開示され、必要に応じアニオン性高分子を含有してもよいことが記載されている。また、該毛髪処理用組成物によれば、毛髪に対して柔軟性を付与しながら、毛髪の根元付近の弾力性を向上させることができる旨の開示がある。 【0004】 特許文献3には、電荷密度が所定の範囲にあるカチオン性ポリマーと、所定のアニオン性構成単位を80質量%以上100質量%以下含み、重量平均分子量が4,000以上80,000以下のアニオン性ポリマーとを含有する毛髪化粧料が、傷んだ毛髪の感触及び外観を改善することができ、繰り返しの洗髪によってもこれらの効果を持続させることができる旨記載されている。」 ウ 発明が解決しようとする課題(【0006】~【0008】) 「【0006】 特許文献1に記載の通り、カチオン系ポリマーとアニオン系ポリマーとから形成されるコンプレックス(以下「ポリイオンコンプレックス」ともいう)を含有する組成物を、毛髪等のケラチン物質の処理用組成物として用いることは知られているが、その性能向上については未だ改善の余地があった。例えば毛髪化粧料組成物の一種であるヘアコンディショナーにおいては、処理後の毛髪の質感が向上し、絡まりが抑制されること、処理後の毛髪が高湿度条件下でも広がらず、優れた耐湿性を有することなどが求められる。しかし、特許文献1~3にかかる従来技術では特段の効果が得られていなかった。また、毛髪の処理効果は1回の洗髪により失われることがあり、処理効果の持続性(耐洗浄性)の向上が望まれていた。 【0007】 さらに、ポリイオンコンプレックスを含む組成物として、水中油型又は油中水型の乳化組成物の形態をとるものがあるが、これら乳化組成物においては経時安定性の改善が課題となっていた。とりわけ毛髪化粧料組成物においては、処理後の毛髪の感触を向上させるためにカチオン性界面活性剤、高級アルコール等を配合することがある。しかしながら、ポリイオンコンプレックスを含む組成物にこれらの成分を配合すると安定性が低下しやすいという問題があった。 【0008】 本発明は、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性、並びに耐湿性を向上させることができ、且つ安定性の高い化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物を提供することを課題とする。」 エ 発明の効果(【0010】) 「【0010】 本発明によれば、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性、並びに耐湿性を向上させることができ、特に毛髪又は頭飾製品用繊維処理に用いた際には毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果及びその持続性を向上させ、高湿度条件下での毛髪の広がりを抑制でき、且つ安定性の高い化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物を提供することができる。」 オ 発明を実施するための形態(【0011】~【0117】) 「【発明を実施するための形態】 …(中略)… 【0012】 本発明の組成物が上記効果を奏する理由は定かではないが、以下のように考えられる。 本発明の組成物は、所定の比率の成分(A)と成分(B)とから形成されるポリイオンコンプレックスを含むものである。ポリイオンコンプレックスにおいては、成分(A)-成分(B)間でイオン性相互作用による架橋構造が形成されており、これにより本発明の組成物を用いて得られる皮膜は高い弾性率を発現すると考えられる。さらに、該ポリイオンコンプレックスは水難溶性であり、該ポリイオンコンプレックスを含む組成物を対象物に塗布することで疎水性皮膜を形成できる。この疎水性皮膜の形成により、処理対象物の質感及び耐湿性が向上すると考えられる。 本発明に用いる成分(A)は、1質量%水溶液の30℃における粘度が1,000mPa・s以上である。成分(A)を用いることにより、得られる皮膜の潤滑性が向上するため、処理対象物の質感がより向上し、本発明の組成物を毛髪又は頭飾製品用繊維処理に用いた際には、毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果が向上すると考えられる。また成分(A)を含むポリイオンコンプレックスは安定性が高いことから、成分(E)、(F)等の油性成分を添加して乳化組成物とした場合でもポリイオンコンプレックスの構造が破壊され難く、安定性が向上すると考えられる。 【0013】 さらに本発明の組成物は成分(C)、(D)としてシリコーン化合物を含有する。成分(C)である変性シリコーンはケラチン物質への吸着性が高く、成分(D)は疎水性が高く且つ表面張力が低い化合物である。そのため本発明の組成物を処理対象物に適用すると、成分(C)、(D)により対象物表面が疎水性コーティングされ、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性、及び耐湿性がより向上すると考えられる。 …(中略)… 【0021】 (成分(A):カチオン性ポリマー) 成分(A)は、1質量%水溶液の30℃における粘度が1,000mPa・s以上であるカチオン性ポリマーであり、成分(B)との相互作用によりポリイオンコンプレックスを形成し得るポリマーである。 成分(A)であるカチオン性ポリマーは、好ましくはカチオン性基を有し、且つ総電荷として正に帯電しているポリマーである。成分(A)は本発明の効果を阻害しない範囲で、カチオン性基以外に、アニオン性基、ノニオン性基、又は、ベタイン基等の両性基を有していてもよい。 本明細書においてカチオン性基とはカチオン基、又は、イオン化されてカチオン基になり得る基であり、具体的には、第一級アミノ基、第二級アミノ基、第三級アミノ基、第四級アンモニウム基が挙げられる。 アニオン性基とはアニオン基、又は、イオン化されてアニオン基になり得る基であり、具体的には、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基からなる群から選ばれる1種以上が挙げられ、好ましくはカルボキシ基及びスルホン酸基から選ばれる1種以上、より好ましくはカルボキシ基である。アニオン性基の少なくとも一部は中和され、塩の状態になっていてもよい。 【0022】 成分(A)の1質量%水溶液の30℃における粘度は、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上、特に、毛髪又は頭飾製品用繊維処理に用いた際の毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果及びその持続性向上の観点、耐湿性向上の観点、並びに組成物の安定性向上の観点から、1,000mPa・s以上であり、好ましくは1,300mPa・s以上、より好ましくは1,500mPa・s以上、更に好ましくは1,700mPa・s以上、より更に好ましくは1,800mPa・s以上である。該粘度の上限は特に制限されないが、ポリイオンコンプレックスの形成しやすさ、及び取り扱い性の観点から、好ましくは100,000mPa・s以下、より好ましくは80,000mPa・s以下、更に好ましくは50,000mPa・s以下、より更に好ましくは30,000mPa・s以下、より更に好ましくは25,000mPa・s以下である。そして、成分(A)の1質量%水溶液の30℃における粘度は、1,000mPa・s以上であり、好ましくは1,000mPa・s以上100,000mPa・s以下、より好ましくは1,300mPa・s以上80,000mPa・s以下、更に好ましくは1,500mPa・s以上50,000mPa・s以下、より更に好ましくは1,700mPa・s以上30,000mPa・s以下、より更に好ましくは1,800mPa・s以上25,000mPa・s以下である。 成分(A)の1質量%水溶液の30℃における粘度は、具体的には実施例に記載の方法により測定できる。 …(中略)… 【0025】 成分(A)としては、カチオン化多糖類等の天然ポリマー又はそのカチオン化物、並びに合成ポリマーのいずれも用いることができるが、入手容易性の観点から、好ましくは合成ポリマーである。 成分(A)として用いられるポリマーの具体例としては、1質量%水溶液の30℃における粘度が1,000mPa・s以上である、カチオン化ポリビニルアルコール、ポリエチレンイミン、メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム塩重合体、第4級化ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸塩重合体、ジアリル第4級化アンモニウム塩重合体、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩重合体、ビニルイミダゾリウムトリクロリド・ビニルピロリドン共重合体(ポリクオタニウム-16)、ビニルピロリドン・アルキルアミノ(メタ)アクリレート共重合体、ビニルピロリドン・アルキルアミノ(メタ)アクリレート・ビニルカプロラクタム共重合体、アルキルアクリルアミド・(メタ)アクリレート・アルキルアミノアルキルアクリルアミド・ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体、アジピン酸・ジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミン共重合体等が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。なお本明細書において「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。 【0026】 上記のうち、メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム塩重合体としては、塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム重合体(ポリクオタニウム-37)、メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸メトキシポリエチレングリコール共重合体(ポリクオタニウム-49)、メタクリロイルエチルジメチルベタイン・塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム・メタクリル酸2-ヒドロキシエチル共重合体(ポリクオタニウム-48)等が挙げられる。 第4級化ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリル酸塩重合体としては、ビニルピロリドン・N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩共重合体(ポリクオタニウム-11)、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N-ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体(ポリクオタニウム-52)等が挙げられる。 ジアリル第4級化アンモニウム塩重合体としては、塩化ジメチルジアリルアンモニウム重合体(ポリクオタニウム-6)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリル酸共重合体(ポリクオタニウム-22)、塩化ジメチルジアリルアンモニウム・アクリルアミド共重合体(ポリクオタニウム-7)、アクリルアミド・アクリル酸・塩化ジメチルジアリルアンモニウム共重合体(ポリクオタニウム-39)等が挙げられる。 【0027】 また、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩重合体としては、塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム重合体、ビニルピロリドン・塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム共重合体、アクリル酸・アクリル酸メチル・塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム共重合体(ポリクオタニウム-47)、アクリル酸・アクリルアミド・塩化メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム共重合体(ポリクオタニウム-53)等が挙げられる。 …(中略)… 【0035】 (成分(B):アニオン性ポリマー) 成分(B)は、成分(A)との相互作用によりポリイオンコンプレックスを形成し得るポリマーである。本明細書において「アニオン性ポリマー」とは、アニオン性基を有し、且つカチオン性基及び両性基を実質的に有さないポリマーを意味する。「カチオン性基及び両性基を実質的に有さない」とは、アニオン性基に対するカチオン性基及び両性基のモル量が好ましくは0.1%以下であることをいう。 【0036】 成分(B)が有するアニオン性基としては、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基が好ましく、成分(A)との相互作用によりポリイオンコンプレックスを形成しやすくする観点、及び入手性の観点から、より好ましくはカルボキシ基である。なお成分(B)において、アニオン性基の少なくとも一部は中和され、塩の状態になっていてもよい。 【0037】 <成分(B1):(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含む架橋型重合体、アニオン性多糖類> 成分(B)は、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上、特に、毛髪又は頭飾製品用繊維処理に用いた際の毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果及びその持続性向上の観点、耐湿性向上の観点、並びに組成物の安定性向上の観点から、(B1)(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含む架橋型重合体及びアニオン性多糖類からなる群から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。 【0038】 成分(B1)のうち、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含む架橋型重合体としては、架橋構造を有する、(メタ)アクリル酸の単独重合体又は共重合体、又はこれらの塩が挙げられる。ここでいう架橋構造とは、重合体の主たる構造であるポリマー鎖が、ポリマー鎖内又はポリマー鎖間で連結してなる三次元の網目構造を意味する。該架橋構造の形成方法は特に制限されず、例えば、重縮合やラジカル重合のように重合と同時に架橋する方法や、ポリマー鎖を後から架橋する方法により形成されたものが挙げられる。 上記(メタ)アクリル酸の単独重合体としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、及びこれらの塩が挙げられる。 上記(メタ)アクリル酸の共重合体としては、(メタ)アクリル酸/マレイン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/イタコン酸共重合体、(メタ)アクリル酸/フマル酸共重合体、(メタ)アクリル酸/酢酸ビニル共重合体、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、(メタ)アクリル酸/2-ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキルエステル/(N-アルキル)アクリルアミド共重合体、及びこれらの塩が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。 上記のうち、(メタ)アクリル酸の共重合体としては、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、アクリル酸/アクリル酸アルキルエステルがより好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、アルキルの炭素数が好ましくは1以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは8以上であり、好ましくは40以下、より好ましくは36以下、更に好ましくは32以下の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。 【0039】 (メタ)アクリル酸由来の構成単位を含む架橋型重合体の具体例としては、カルボキシビニルポリマー又はその塩、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリン/ジメチルアクリルアミド)クロスポリマー、アクリレーツクロスポリマー-4等が挙げられる。 【0040】 成分(B1)のうちアニオン性多糖類としては、カルボキシ基を有する多糖類(ヒアルロン酸、アルギン酸、ペクチン酸、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム等)、及び多糖類の硫酸物(カラギーナン、ケラタン硫酸、デルマタン硫酸、硫酸化デンプン、ヘパリン、ヘパラン硫酸)、及びこれらの塩が挙げられ、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。 上記の中でも、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上、特に、毛髪又は頭飾製品用繊維処理に用いた際の毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果及びその持続性向上の観点から、アニオン性多糖類としては、好ましくはカルボキシ基を有する多糖類又はその塩であり、より好ましくはアルギン酸、カルボキシメチルセルロース、又はこれらの塩であり、更に好ましくはアルギン酸又はその塩である。 【0041】 成分(B1)が塩である場合、該塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等が挙げられ、入手性の観点から、好ましくはアルカリ金属塩である。 【0042】 上記の中でも、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上、特に、毛髪又は頭飾製品用繊維処理に用いた際の毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果及びその持続性向上の観点、耐湿性向上の観点、並びに組成物の安定性向上の観点から、成分(B1)は、好ましくはカルボキシビニルポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル(C10-30))クロスポリマー、及びアニオン性多糖類からなる群から選ばれる1種以上であり、より好ましくはアニオン性多糖類又はその塩、更に好ましくはアルギン酸又はその塩である。 …(中略)… 【0088】 (含有量) 本発明の組成物中の各成分の含有量又は配合量は、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上、特に、毛髪又は頭飾製品用繊維処理に用いた際の毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果及びその持続性向上の観点、耐湿性向上の観点、並びに組成物の安定性向上の観点から、好ましくは下記の通りである。 【0089】 組成物中の成分(A)の含有量は、ポリイオンコンプレックスの形成しやすさの観点、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上、特に、毛髪又は頭飾製品用繊維処理に用いた際の毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果及びその持続性向上の観点、並びに耐湿性向上の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、より更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは0.2質量%以上である。また、組成物の安定性向上の観点から、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2.0質量%以下、より更に好ましくは1.5質量%以下、より更に好ましくは1.0質量%以下である。そして、組成物中の成分(A)の含有量は、好ましくは0.01質量%以上3.0質量%以下、より好ましくは0.02質量%以上2.5質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以上2.0質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下、より更に好ましくは0.2質量%以上1.5質量%以下、より更に好ましくは0.2質量%以上1.0質量%以下である。 【0090】 組成物中の成分(B)の含有量は、ポリイオンコンプレックスの形成しやすさの観点、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上、特に、毛髪又は頭飾製品用繊維処理に用いた際の毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果及びその持続性向上の観点、並びに耐湿性向上の観点から、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、更に好ましくは0.02質量%以上、より更に好ましくは0.025質量%以上である。また、組成物の安定性向上の観点から、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.0質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、より更に好ましくは1.0質量%以下、より更に好ましくは0.5質量%以下、より更に好ましくは0.3質量%以下、より更に好ましくは0.2質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以下である。そして、組成物中の成分(B)の含有量は、好ましくは0.005質量%以上3.0質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上2.0質量%以下、更に好ましくは0.02質量%以上1.5質量%以下、より更に好ましくは0.02質量%以上1.0質量%以下、より更に好ましくは0.02質量%以上0.5質量%以下、より更に好ましくは0.02質量%以上0.3質量%以下、より更に好ましくは0.02質量%以上0.3質量%以下、より更に好ましくは0.02質量%以上0.2質量%以下、より更に好ましくは0.02質量%以上0.1質量%以下、より更に好ましくは0.025質量%以上0.1質量%以下である。 【0091】 組成物中の成分(A)及び成分(B)の合計含有量は、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上、特に、毛髪又は頭飾製品用繊維処理に用いた際の毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果及びその持続性向上の観点、並びに耐湿性向上の観点から、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.04質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上、より更に好ましくは0.1質量%以上、より更に好ましくは0.2質量%以上、より更に好ましくは0.3質量%以上である。また、組成物の安定性向上の観点から、好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは4.0質量%以下、更に好ましくは3.0質量%以下、より更に好ましくは2.0質量%以下である。そして、組成物中の成分(A)及び成分(B)の合計含有量は、好ましくは0.02質量%以上5.0質量%以下、より好ましくは0.04質量%以上4.0質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以上3.0質量%以下、より更に好ましくは0.1質量%以上2.0質量%以下、より更に好ましくは0.2質量%以上2.0質量%以下、より更に好ましくは0.3質量%以上2.0質量%以下である。 【0092】 組成物中に含まれる成分(A)及び成分(B)の含有量の比は、ポリイオンコンプレックスの形成しやすさの観点、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上、特に、毛髪又は頭飾製品用繊維処理に用いた際の毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果及びその持続性向上の観点、並びに耐湿性向上の観点から、成分(B)に対する成分(A)の質量比[(A)/(B)]が、4.5以上であり、好ましくは4.7以上、より好ましくは4.8以上、更に好ましくは5.0以上、より更に好ましくは5.5以上、より更に好ましくは6.0以上、より更に好ましくは6.2以上、より更に好ましくは6.5以上である。また、組成物の安定性向上の観点から、好ましくは20以下、より好ましくは18以下、更に好ましくは16以下、より更に好ましくは15以下となる量である。そして、質量比[(A)/(B)]は、4.5以上であり、好ましくは4.5以上20以下、より好ましくは4.7以上18以下、更に好ましくは4.8以上18以下、より更に好ましくは5.0以上18以下、より更に好ましくは5.5以上16以下、より更に好ましくは6.0以上16以下、より更に好ましくは6.2以上15以下、より更に好ましくは6.5以上15以下である。 なお本発明の組成物では、本発明の効果に対し、成分(A)と成分(B)とのカチオン電荷/アニオン電荷比よりも、成分(A)と成分(B)の質量比の方が優位に働く。 【0093】 組成物中の成分(A)のカチオン電荷のモル数と、成分(B)のアニオン電荷のモル数との比(成分(A)のカチオン電荷/成分(B)のアニオン電荷)は、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上、特に、毛髪又は頭飾製品用繊維処理に用いた際の毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果及びその持続性向上の観点、並びに耐湿性向上の観点から、好ましくは10/90~95/5、より好ましくは20/80~95/5、更に好ましくは25/75~90/10、より更に好ましくは30/70~80/20、より更に好ましくは40/60~80/20、より更に好ましくは50/50~80/20、より更に好ましくは52/48~80/20である。 …(中略)… 【0107】 (pH) 組成物のpHは、安全性の観点から、組成物を水で20倍希釈した水溶液の25℃におけるpHとして、好ましくは3.0以上、より好ましくは3.2以上である。また、組成物の安定性向上の観点から、好ましくは7.5以下、より好ましくは7.0以下、更に好ましくは6.0以下、より更に好ましくは5.0以下である。 上記pHは、pHメーターを用いて、実施例に記載の方法により測定することができる。 …(後略)」 カ 実施例(【0118】~【0143】) 「【実施例】 …(中略)… 【0128】 【表1】 [図:0001437433000003.jpg] 【0129】 【表2】 [図:0001437433000004.jpg] 【0130】 【表3】 [図:0001437433000005.jpg] 【0131】 【表4】 [図:0001437433000006.jpg] …(中略)… 【0143】 表1~4に示すように、本実施例の組成物は、毛髪処理に用いた際に毛髪の絡まり抑制効果及びその持続性を向上させ、高湿度条件下での毛髪の広がりを抑制でき、且つ安定性も高いことがわかる。これに対し比較例の化粧料組成物は、毛髪の絡まり抑制効果及びその持続性向上効果、毛髪の広がり抑制効果、及び、安定性のいずれかの点において劣る結果となった。」 キ 産業上の利用可能性(【0144】) 「【0144】 本発明によれば、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性、並びに耐湿性を向上させることができ、特に毛髪又は頭飾製品用繊維処理に用いた際には毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果及びその持続性を向上させ、高湿度条件下での毛髪の広がりを抑制でき、且つ安定性の高い化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物を提供することができる。」 (3) 本件発明の課題 本件特許明細書等の明細書の記載事項全体、特に【0008】の記載からみて、本件発明1~10の課題は、「処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性、並びに耐湿性を向上させることができ、且つ安定性の高い化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物を提供すること」であると認める。 (4) 判断 本件特許明細書等の明細書には、上記(2)に記載したとおりの記載がある。 特に、本件特許明細書等の【0012】及び【0013】には、ポリイオンコンプレックスにおいては、成分(A)-成分(B)間でイオン性相互作用による架橋構造が形成されており、これにより本発明の組成物を用いて得られる皮膜は高い弾性率を発現すると考えられること、さらに、該ポリイオンコンプレックスは水難溶性であり、該ポリイオンコンプレックスを含む組成物を対象物に塗布することで疎水性皮膜を形成でき、この疎水性皮膜の形成により、処理対象物の質感及び耐湿性が向上すると考えられること、成分(A)は、1質量%水溶液の30℃における粘度が1,000mPa・s以上であり、成分(A)を用いることにより、得られる皮膜の潤滑性が向上するため、処理対象物の質感がより向上し、本発明の組成物を毛髪又は頭飾製品用繊維処理に用いた際には、毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果が向上すること、成分(A)を含むポリイオンコンプレックスは安定性が高いことから、成分(E)、(F)等の油性成分を添加して乳化組成物とした場合でもポリイオンコンプレックスの構造が破壊され難く、安定性が向上すると考えられること、及び、成分(C)である変性シリコーンはケラチン物質への吸着性が高く、成分(D)は疎水性が高く且つ表面張力が低い化合物であり、そのため本発明の組成物を処理対象物に適用すると、成分(C)、(D)により対象物表面が疎水性コーティングされ、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性、及び耐湿性がより向上すると考えられることが記載されている。 そして、実施例において、本件発明の組成物が、毛髪処理に用いた際に毛髪の絡まり抑制効果及びその持続性を向上させ、高湿度条件下での毛髪の広がりを抑制でき、且つ安定性も高いことが記載されている。 してみると、当業者は、本件発明における化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物が、「処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性、並びに耐湿性を向上させることができ、且つ安定性の高い化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物を提供する」ことを理解するといえるから、本件発明は、本件発明の課題を解決できると認識できるといえる。 したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであり、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 よって、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものである。 (5) 申立人の主張について ア 申立人の主張3 まず、申立人は、ポリイオンコンプレックスの形成反応や物理化学的性質等は、強酸、弱酸、弱塩基の組合せ、ポリマーの化学構造、立体構造、pH、イオン強度などの影響を受け、通常は化学量論的にポリイオンコンプレックスの形成が進行することは技術常識である(甲4、甲5)旨主張している(申立書8頁ウ)。 以下に具体的な主張を記載する。 (ア) 申立人の主張3の内容 申立人は、ポリイオンコンプレックスの物理化学的性質等は、構成するポリマーの化学構造等に影響されることは技術常識であるから、塩化メタクリロイルエチルトリメチルアンモニウム重合体(ポリクオタニウム-37)及びN,N-ジメチルアミノエチルメタクリル酸ジエチル硫酸塩・N,N-ジメチルアクリルアミド・ジメタクリル酸ポリエチレングリコール共重合体(ポリクオタニウム-52)のみの実施例に基づき、他の様々な化学構造の構成単位を含むあらゆるカチオン性ポリマーにおいて、本件発明の課題を解決できるとは認識できない旨主張している(申立書8~9頁ウ(ア))。 (イ) 申立人の主張3についての検討 しかしながら、本件明細書の【0012】には、ポリイオンコンプレックスにおいては、成分(A)-成分(B)間でイオン性相互作用による架橋構造が形成されており、これにより本発明の組成物を用いて得られる皮膜は高い弾性率を発現すると考えられ、さらに、該ポリイオンコンプレックスは水難溶性であり、該ポリイオンコンプレックスを含む組成物を対象物に塗布することで疎水性皮膜を形成でき、この疎水性皮膜の形成により、処理対象物の質感及び耐湿性が向上すると考えられると記載されていることからも、本件発明の化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物が、成分(A)のカチオン性ポリマーを含有することにより、カチオン性ポリマーを含有しないものに比べ、質感及び耐湿性が向上しているものといえる。 そして、(A)カチオン性ポリマーについて、その具体例等が、本件特許明細書の【0021】~【0034】に記載されており、当該記載、上記【0012】の記載及び実施例の記載から、当業者は、用いる(A)カチオン性ポリマーの種類に応じて、毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果及びその持続性、耐湿性、並びに組成物の安定性等について違いが生じることがあったとしても、(A)カチオン性ポリマーを用いることで、上記課題を解決できると認識できるといえる。 したがって、申立人の上記主張は、採用することができない。 イ 申立人の主張4 (ア) 申立人の主張4の内容 申立人は、本件発明では、成分(A)の粘度について、1質量%水溶液の30℃における粘度が1,000mPa・s以上であることが規定されているところ、本件明細書において、本件発明の課題を解決できることが確認されているのは、好ましいとされる1,800mPa・s以上25,000mPa・s以下の範囲にある粘度2,070mPa・s~17,650mPa・sのカチオン性ポリマーのみであり、その範囲外の粘度のカチオン性ポリマーを用いて、本件発明の課題が解決できたことを裏付ける具体例は存在しないから、粘度が1,000mPa・s以上であるあらゆるカチオン性ポリマーにおいて、本件発明の課題を解決できると認識することはできない旨主張する(申立書9~10頁ウ(イ))。 (イ) 申立人の主張4についての検討 しかしながら、本件特許明細書等の【0012】には、成分(A)は、1質量%水溶液の30℃における粘度が1,000mPa・s以上であり、成分(A)を用いることにより、得られる皮膜の潤滑性が向上するため、処理対象物の質感がより向上し、本発明の組成物を毛髪又は頭飾製品用繊維処理に用いた際には、毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果が向上すると考えられると記載されており、同【0022】には、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上等の観点から、好ましい範囲の粘度が記載されている。 したがって、上記各記載及び実施例の記載から、当業者は、成分(A)の粘度に応じて、当業者は、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性について違いが生じることがあったとしても、本件発明の化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物おいて、成分(A)が、1質量%水溶液の30℃における粘度が1,000mPa・s以上でカチオン性ポリマーを含有することにより、毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果が向上し、本件発明の課題を解決できると認識できるといえる。 よって、申立人の上記主張は、採用することができない。 ウ 申立人の主張5 (ア) 申立人の主張5の内容 申立人は、ポリイオンコンプレックスの物理化学的性質は、構成するポリマーの化学構造等に影響されることが技術常識であるところ、すべてアルギン酸塩を使用した実施例に基づき、アルギン酸塩以外のあらゆる化学構造のアニオン性ポリマーを用いた場合でも、本件発明の課題を解決できると認識することなどできない旨主張する(申立書10~11頁ウ(ウ))。 (イ) 申立人の主張5についての検討 しかしながら、本件特許明細書等の【0012】には、ポリイオンコンプレックスにおいては、成分(A)-成分(B)間でイオン性相互作用による架橋構造が形成されており、これにより本発明の組成物を用いて得られる皮膜は高い弾性率を発現すると考えられ、さらに、該ポリイオンコンプレックスは水難溶性であり、該ポリイオンコンプレックスを含む組成物を対象物に塗布することで疎水性皮膜を形成でき、疎水性皮膜の形成により、処理対象物の質感及び耐湿性が向上すると考えられると記載されていることからも、本件発明の化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物が、成分(B)のアニオン性ポリマーを含有することにより、アニオン性ポリマーを含有しないものに比べ、質感及び耐湿性が向上しているものといる。 そして、(B)アニオン性ポリマーについて、その具体例等が、本件特許明細書等の【0035】~【0054】に記載されており、当該記載、上記【0012】の記載及び実施例の記載から、当業者は、用いる(B)アニオン性ポリマーの種類に応じて、毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果及びその持続性、耐湿性、並びに組成物の安定性等について違いが生じることがあったとしても、(B)アチオン性ポリマーを用いることで、上記課題を解決できると認識できるといえる。 したがって、申立人の上記主張は、採用することができない。 エ 申立人の主張6 (ア) 申立人の主張6の内容 申立人は、ポリイオンコンプレックスにおいて、正電荷の量が負電荷の量よりも多く、全体として正電荷を有するものの方が負電荷を有するものよりも、毛髪を処理した際の毛髪の滑らかさや柔らかさ等の質感においてより優れることが知られている(甲6)から、成分(A)のカチオン電荷のモル数の方が、成分(B)のアニオン電荷のモル数よりも多く、全体として正電荷を有するポリイオンコンプレックスの実施例のみに基づき、成分(A)のカチオン電荷のモル数の方が、成分(B)のアニオン電荷のモル数よりも少なく、全体として負電荷を有するポリイオンコンプレックスを形成する場合においても、本件発明の課題を解決できると認識することなどできない旨主張する(申立書11頁ウ(エ))。 (イ) 申立人の主張6についての検討 しかしながら、本件特許明細書等の【0092】には、本発明の組成物では、本発明の効果に対し、成分(A)と成分(B)とのカチオン電荷/アニオン電荷比よりも、成分(A)と成分(B)の質量比の方が優位に働くと記載されているから、本件発明の課題を解決するためには、成分(A)と成分(B)の質量比が重要であり、本件発明は、当該質量比を規定している。 また、本件特許明細書等の【0093】には、成分(A)のカチオン電荷のモル数と、成分(B)のアニオン電荷のモル数との比について、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上等の観点から、好ましい範囲として、例えば、10/90~95/5であることが記載され、成分(A)のカチオン電荷のモル数の方が、成分(B)のアニオン電荷のモル数よりも少ないものを含む比が好ましい範囲として記載されている。 したがって、上記各記載及び本件発明における質量比の特定並びに実施例の記載から、当業者は、成分(A)のカチオン電荷のモル数と、成分(B)のアニオン電荷のモル数との比に応じて、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上等について違いが生じることがあったとしても、本件発明は、上記課題を解決できると認識できるといえる。 よって、申立人の上記主張は、採用することができない。 オ 申立人の主張7 (ア) 申立人の主張7の内容 申立人は、本件発明において、成分(A)と成分(B)の質量比(A)/(B)について、下限が4.5以上と規定されているのみで、その上限については規定されておらず、これに対し、本件特許明細書等の発明の詳細な説明の記載において、本件発明の課題を解決できることが確認されているのは、(A)/(B)が14.88であるもの(実施例13)にとどまり、このような実施例に基づき、(B)に対し(A)が100倍あるいはそれ以上のあらゆる質量の範囲で含有する場合においても、本件発明の課題を解決できると認識することなどできない旨主張する(申立書11~12頁ウ(オ))。 (イ) 申立人の主張7についての検討 しかしながら、本件特許明細書等の【0012】には、ポリイオンコンプレックスにおいては、成分(A)-成分(B)間でイオン性相互作用による架橋構造が形成されており、これにより本発明の組成物を用いて得られる皮膜は高い弾性率を発現すると考えられ、さらに、該ポリイオンコンプレックスは水難溶性であり、該ポリイオンコンプレックスを含む組成物を対象物に塗布することで疎水性皮膜を形成でき、疎水性皮膜の形成により、処理対象物の質感及び耐湿性が向上すると考えられると記載されており、また、同【0092】には、成分(A)及び成分(B)の含有量の比について、ポリイオンコンプレックスの形成しやすさの観点、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上等の観点から、好ましい範囲が4.5以上であり、また、組成物の安定性向上の観点から、好ましくは20以下であることが記載されている。 そして、上記【0012】の記載から、成分(A)と成分(B)によりポリイオンコンプレックスを形成するといえるから、当業者は、成分(A)をポリイオンコンプレックスの形成に必要な範囲を超えて多量に用いるものではないと理解するといえ、また、当該記載、上記【0092】の記載及び実施例の記載から、当業者は、成分(A)及び成分(B)の含有量の比に応じて、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上等について違いが生じることがあったとしても、本件発明は、上記課題を解決できると認識できるといえる。 したがって、申立人の上記主張は、採用することができない。 カ 申立人の主張8 (ア) 申立人の主張8の内容 申立人は、質量比(A)/(B)が、4,5以上の範囲にある限り、(A)及び(B)の含有量があらゆる範囲にあるものが本件発明に含まれるが、本件特許明細書等において、本件発明の課題を解決できることが確認されているのは、成分(A)が0.0343~0.0370質量%、成分(B)が、0.025~0.052質量%の範囲のみであり、このような実施例に基づき、本件発明に含まれるすべての領域において本件発明の課題を解決できるとはおよそ認識できない旨主張する(申立書12~13頁ウ(カ))。 (イ) 申立人の主張8についての検討 しかしながら、本件特許明細書等の【0089】~【0091】には、成分(A)及び成分(B)の含有量並びに成分(A)及び成分(B)の合計含有量について、ポリイオンコンプレックスの形成しやすさの観点、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上、特に、毛髪又は頭飾製品用繊維処理に用いた際の毛髪又は頭飾製品用繊維の絡まり抑制効果及びその持続性向上の観点、並びに耐湿性向上の観点等に基づいた好ましい範囲が記載されている。 したがって、当業者は、当該記載に基づいて成分(A)及び成分(B)の含有量を理解することができるといえ、成分(A)及び成分(B)の含有量に応じて、処理対象物の質感向上効果及び該効果の持続性向上等について違いが生じることがあったとしても、本件発明は、当該理解に基づいた、常識的な範囲の含有量において本件発明の課題を解決できると認識できるといえる。 よって、申立人の上記主張は、採用することができない。 キ 申立人の主張9 (ア) 申立人の主張9の内容 申立人は、本件発明の発明の詳細な説明の記載において、本件発明の課題を解決できることが確認されているのは、本件特許明細書等において、より好ましい範囲内のpH3.4のみであり、pH3.4の実施例のみに基づき、pH7以上のアルカリ領域を含め、あらゆるpHの範囲において本件発明の課題を解決できると当業者が認識できることなどできない旨主張する(申立書13頁ウ(キ))。 (イ) 申立人の主張9についての検討 しかしながら、本件特許明細書等の【0107】には、組成物のpHについて、安全性の観点、安定性向上の観点から好ましい範囲が記載されており、また、本件発明は、化粧料組成物又は頭飾製品用繊維処理組成物であることから、安全性の観点や化組成物の安定性向上の観点を当該組成物のpHを考慮するといえる。 したがって、当業者は、それらの事情を考慮した、常識的な範囲のpHにおいて、本件発明は、上記課題を解決できると認識できるといえる よって、申立人の上記主張は、採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1~10に係る特許を取り消すことはできない。さらに、他に、本件発明1~10に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2026-700210

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