特許異議申立
2020-700557
窒化珪素系セラミックス集合基板及びその製造方法
- 審判番号
- 2020-700557
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2016-049805外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年08月05日
- 審決日
- 2020年10月27日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 維持
- 分類
- P1651.121-Y (H05K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6642146号発明「窒化珪素系セラミックス集合基板及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6642146号の請求項に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
特許第6642146号の請求項1ないし6についての出願は、平成28年3月14日に出願した特願2016-49805号であって、令和2年1月8日にその特許権の設定登録がなされ、同年2月5日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1ないし6に係る特許に対し、同年8月5日に特許異議申立人 青木 眞理(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件発明
特許第6642146号の請求項1ないし6の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)は、それぞれその特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
矩形状の窒化珪素系セラミックス焼結基板から所定のサイズの窒化珪素系セラミックス集合基板を製造する方法において、
前記窒化珪素系セラミックス焼結基板の外縁部に、前記窒化珪素系セラミックス集合基板の四辺に対応する辺ブレークラインを形成するとともに、隣接する辺ブレークラインの交点近傍に前記隣接する辺ブレークラインの両方と交差する角ブレークラインを形成し、
前記辺ブレークラインの深さを前記窒化珪素系セラミックス焼結基板の厚さの半分以下とし、
前記角ブレークラインを前記窒化珪素系セラミックス焼結基板を貫通するスリットとし、
前記窒化珪素系セラミックス焼結基板を前記辺ブレークラインに沿って折ることにより、前記辺ブレークライン及び前記角ブレークラインより内側の窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分と外側のマージン部とに分割することを特徴とする窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法において、前記辺ブレークライン及び前記角ブレークラインをファイバレーザにより形成することを特徴とする窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法において、ファイバレーザビームスポットの走査を複数回繰り返すことにより、前記角ブレークラインを形成することを特徴とする窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法において、前記角ブレークラインの両端部が前記辺ブレークラインとの交差点を超えて延在することを特徴とする窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法において、前記辺ブレークラインとの交差点を超えて延在する前記角ブレークラインの各端部の長さが、ファイバレーザビームスポットの直径より大きく、且つ3.5mm未満であることを特徴とする窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法において、前記角ブレークラインと前記辺ブレークラインとの交差角が30~60°であることを特徴とする窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法。」
第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として下記の甲第1号証ないし甲第5号証を提出し、本件発明1および2は、甲第1号証に記載された発明および甲第2号証と甲第3号証に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明3は、甲第1号証に記載された発明および甲第2号証と甲第3号証と甲第4号証に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明4ないし6は、甲第1号証に記載された発明および甲第2号証と甲第3号証と甲第4号証と甲第5号証に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件の請求項1ないし6に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである旨主張している。
[証拠]
甲第1号証:特開2008-198905号公報
甲第2号証:特開2014-42066号公報
甲第3号証:特開2012-43923号公報
甲第4号証:特開2013-4584号公報
甲第5号証:特開平9-11221号公報
第4 甲第1号証の記載
1.甲第1号証(特開2008-198905号公報)
(1)甲第1号証には、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
ア.「【0027】
まず、セラミックス回路基板の製造方法について述べる。ここではセラミックス基板として窒化珪素基板を用いた場合について示す。ただし、その組成や製造方法・製造条件は下記の例に限定されるものではない。
まず、窒化ケイ素粉末を主成分とする原料粉末に、酸化物系のマグネシア(MgO)、イットリア(Y2O3)のセラミックス焼結助剤粉末を加え、これに更に分散剤、粘結助剤、溶剤等を添加しボールミルで混合・粉砕し、所定粘度のスラリーを作製した。
次に、脱泡工程を経て、前記スラリーの粘度を更に基準範囲内に調整し、その後シート成形法によりグリーンシート(以下ではシートと表現することがある)を作製した。このシート成形時の条件を各種変更し、1枚のシート単体で用いたり、重ねたシートを圧着する積層工程により、焼結体サイズで厚さ0.1~3.2mmtとなるように各種シートを作製する。ただし、基板としては、せいぜい厚くとも0.63mmt厚さの基板の需要が一般的である。完成したグリーンシートは適切なサイズに切断後、脱脂処理および焼結工程を経て窒化珪素基板の焼結体とした。焼結体のサイズは、基板の取り数や基板厚さにもよるが、焼結後の厚さ0.32mmtの場合には、現在最大で300mm程度まで可能である。ただしハンドリング工程の改善や、焼成炉の大型化により更に大きい基板サイズも製造可能である。
【0028】
その後、レーザー加工により所望の集合基板(1個取りや多数個取りの場合もある)に加工される。例えば9個取りの場合は図8、図9に示す集合基板5となる。ここで集合基板5の外周は、製造過程での位置合わせ精度の関係により切断加工としたが、寸法精度の問題が生じないようであれば、部分的にあるいは全てスクライビング加工で形成しても良い。尚、レーザー加工は後工程の途中や最後に実施しても、前記同様に寸法精度に問題なければ、どの段階で実施しても良い。ここでは、焼結後にレーザー加工を実施した場合について示す。即ち、レーザー加工により集合基板の片方の面にスクライビング加工により未貫通孔を所望形状に格子状に形成した。またCやRの面取り加工が必要な場合には、面取り部をレーザー切断加工によりくり貫いて形成する。ただし、この切断加工は後の工程で別途実施しても構わない。
【0029】
その後、あらかじめ脱脂・焼結前にシート表面に塗布しておいたh-BN等の潤滑物質等を湿式ブラスト処理で基板表面の清浄化と平滑化を行った。仮に顧客先にて基板単体で使用する場合には、以上の状態から個々の基板に分割して使用することができる。この窒化珪素基板1の特性は、3点曲げ強度700MPa以上、熱伝導率が90W/(m・K)以上、破壊靭性値が5MPa√m以上であった。ちなみに前記セラミックス基板であるが、焼結条件や助剤量や成分により熱伝導率が120W/(m・K)、のものから60W/(m・K)のものまで用途に応じて作製することが可能である。」
イ.「【0040】
次に、この基板に面取り部(CまたはR面取り)を形成したセラミックス集合基板について説明する。
図8は1枚の集合基板5から9個のセラミックス基板1を作製する9個取りの一例である。集合基板の外周側面は、製造工程での基板寸法精度や回路基板パターン精度および位置合わせ精度を改善するためにレーザー切断加工で形成してある。また、基板の外周側の枠部には捨て代となる余肉部2を設けている。これは基板強度低下防止の観点から全ての基板側面を切断加工部ではなくスクライビング加工部にするためである。その理由は、既述したようにレーザー切断加工では熱応力によるマイクロクラックの生成で、基板強度が低下するためである。またそれ以外の理由として、ハンドリング性の改善、前記ハンドリングによる基板または回路基板の落下・突き当てによる欠け防止、回路基板を製造する際の金属/セラミックス接合部のボイド不良の低減なども理由として挙げられる。
【0041】
断続的なスクライビング孔による分割線3は格子状に形成され、格子状の分割線によって個々のセラミックス基板1が区画されている。スクライビング孔の加工部は基板厚さによって加工条件は異なるが、最深部に曲率を有する円錐状のノッチ状の孔(以下では凹部と表現することもある)を、所望の孔径で、所望の深さで、所望のピッチ間隔で導入するもので、通常は基板を貫通するものではない。また、前記孔の表面周囲には黒色のドロス状の物質が付着することもある。また、基板表面の加工孔周囲に盛り上がり箇所が出来ることもある。これらは基板中の酸化物や、分解した窒化物の残留物が付着したものであるが、アシストガスによる除去や、適正化した加工条件で加工した基板においては、基板の絶縁性能に問題を及ぼすものではないことを確認済みである。
【0042】
次に、四隅の面取り部については、板厚を貫通するレーザー切断加工により形成する。但し、面取り部の形状が大きく手作業での分割が容易である場合には、面取り部もスクライビング加工で対応しても良い。
レーザー切断加工では基板四隅の面取り部に位置する箇所を菱形状に加工してC面取り4を形成する。ここで、四隅のみを狙って面取りするのでも良いが、分割時の欠け不良を低減させるためには、図8に示すように余肉部2にも対称形状になるように面取り部4’を形成した方が好ましい。これは図9で示すようにR面取り6を設ける場合も同様で、四隅の加工部は対称形状になるようにし、余肉部2についてもR面取り部6’を施すことが望ましい。」
ウ.「【0043】
以下、本発明によるセラミックス基板を試作して試験した実施例について説明する。
実施例の集合基板は、図8に示す9個取りの50×30mmの集合基板であって、セラミックス基板の材質は窒化珪素、面取り有りの場合はC1.0mmの切断加工とし、余肉部にもC面取り加工を施したものを用いた。
次に、面取り部の端部から10mm以内の箇所を、スクライビング加工で、深さ、隣接する孔のピッチを種々変更した例を作製し、個々の基板に分割した。そして各基板に対する分割に起因する欠けなどの不良率を調査し評価した。
また、面取り加工が無い基板も上記と同様に、角部近傍のスクライビング加工条件を変化させて作製した。この面取りが無い場合の加工条件は全てスクライビング加工である。評価方法は上記と同様に実施した。
さらに、面取り加工が無い基板ではあるが、スクライビング孔加工の格子線(分割線)の交点に貫通孔を設けたものも作製した。」
エ.「【0046】
【表1】
【0047】
表1の試作No.1~No.3は、セラミックス基板の厚みが0.32mmtでC1.0mmの面取り部有りの従来技術による比較例である。ピッチおよび凹部の深さが一定である場合を示している。これらの比較例では、何れの厚さのセラミックス基板においても、その集合基板分割時に欠け不良が半数近く生じた。
尚、スクライブ孔(凹部)の深さ又は/及びピッチを変化させたところを以下変則スクライビングと呼ぶこととする。試作No.4~No.8は角部近傍のピッチを逆に大きくした比較例を示し、試作No.9~No.12は同様に凹部の深さを浅くした場合の比較例を示したものである。ここでは変則スクライビングを導入した距離を3mmで一定とし、この3mmの箇所でのスクライビング条件をセラミックス基板側面中央部に対し変化させている。いずれも不良が多く発生し良い結果は得られなかった。これらのことから、セラミックス基板に対して、分割時の不良を低減できる大凡の閾値があることがわかる。前記不良の大半はクラックが分割線に沿って進展しないことが原因である。
【0048】
次に本発明の実施例について説明する。試作No.13~No.16は変則スクライビングのピッチを狭くした場合を示し、試作No.17~No.19は変則スクライビングの凹部の深さが深い場合の例である。セラミックス基板の厚さによって値は異なるが、凹部のピッチを狭くした場合も深さを深くした場合も共に欠け不良を2/18個以下に抑えることができている。いずれも狭ピッチまたは深い凹部を用いることで、欠け不良が大幅に改善できることがわかる。特に凹部の深さに関しては、セラミックス基板厚の30%以上であることが大凡の目安となることが分かった。」
(2)上記アないしウによれば、窒化珪素基板のセラミックス焼結体から50×30mmのセラミックス集合基板5を加工し、該セラミックス集合基板5から9個のセラミックス基板1を作製する方法について記載されている。
(3)上記ア、イによれば、セラミックス集合基板5の片方の面にスクライビング孔の分割線3を格子状に形成し、格子状の分割線によって個々のセラミックス基板1が区画されるとともに全てのセラミックス基板1の側面をスクライビング加工とすることが記載されている。
また、セラミックス基板1の四隅の面取り部に位置する箇所を菱形状に切断加工してC面取り4を形成するとともに余肉部2にも対称形状になるように面取り部4’を形成することが記載されている。
(4)上記エによれば、実施例の試作No.13~No.16では、基板の厚みを0.32mmとし、スクライビング孔の深さを0.13mmとすることが記載されている。
すなわち、スクライビング孔の深さを基板の厚みの半分以下とすることが記載されている。
(5)上記ア、イによれば、セラミックス集合基板5を分割線3で個々のセラミックス基板1に分割することが記載されている。
(6)したがって、上記アないしエの記載事項および図面を総合勘案すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「窒化珪素基板のセラミックス焼結体から50×30mmのセラミックス集合基板5を加工し、該セラミックス集合基板5から9個のセラミックス基板1を作製する方法であって、
セラミックス集合基板5の片方の面にスクライビング孔の分割線3を格子状に形成し、格子状の分割線によって個々のセラミックス基板1が区画されるとともに全てのセラミックス基板1の側面をスクライビング加工とし、セラミックス基板1の四隅の面取り部に位置する箇所を菱形状に切断加工してC面取り4を形成するとともに余肉部2にも対称形状になるように面取り部4’を形成し、
スクライビング孔の深さを基板の厚みの半分以下とし、
セラミックス集合基板5を分割線3で個々のセラミックス基板1に分割して作製する方法。」
第5 当審の判断
1.本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、
ア.甲1発明における「窒化珪素基板のセラミックス焼結体から50×30mmのセラミックス集合基板5を加工」することは、「セラミックス集合基板5」が「窒化珪素基板」から形成された「矩形状」の「セラミックス焼結体」であると言えるから、加工された「セラミックス集合基板5」は本件発明1の「矩形状の窒化珪素系セラミックス焼結基板」に相当する。
また、甲1発明の「9個のセラミックス基板1」はセラミックス基板1の集合体であるから、本件発明1の「窒化珪素系セラミックス集合基板」に相当する。
よって、「該セラミックス集合基板5から9個のセラミックス基板1を作製する方法」は、本件発明1の「矩形状の窒化珪素系セラミックス焼結基板から所定のサイズの窒化珪素系セラミックス集合基板を製造する方法」に相当する。
イ.甲1発明における「セラミックス集合基板5の片方の面にスクライビング孔の分割線3を格子状に形成し、格子状の分割線によって個々のセラミックス基板1が区画されるとともに全てのセラミックス基板1の側面をスクライビング加工」とすることは、セラミックス基板1の全ての側面にスクライビング孔の分割線3を形成することであり、図8も参照すれば、余肉部2とセラミックス基板1との間に形成されたスクライビング孔の分割線3は9個のセラミックス基板1の集合体の四辺に対応し、且つセラミックス集合基板5の外縁部に設けられているから、本件発明1の「前記窒化珪素系セラミックス焼結基板の外縁部に、前記窒化珪素系セラミックス集合基板の四辺に対応する辺ブレークラインを形成」することに相当する。
ウ.甲1発明における「セラミックス基板1の四隅の面取り部に位置する箇所を菱形状に切断加工してC面取り4を形成するとともに余肉部2にも対称形状になるように面取り部4’を形成」することは、図8も参照すれば、面取り部4’は隣接するスクライビング孔の分割線3の両方と交差していることから、本件発明1の「隣接する辺ブレークラインの交点近傍に前記隣接する辺ブレークラインの両方と交差する角ブレークを形成」することに相当する。
ただし、本件発明1が、隣接する辺ブレークラインの両方と交差する「角ブレークライン」であって、「前記角ブレークライン」を「前記窒化珪素系セラミックス焼結基板を貫通するスリット」としているのに対し、甲1発明における「面取り部4’」は菱形状に切断加工されている点で相違している。
エ.甲1発明における「スクライビング孔の深さを基板の厚みの半分以下と」することは、本件発明1の「前記辺ブレークラインの深さを前記窒化珪素系セラミックス焼結基板の厚さの半分以下と」することに相当する。
オ.甲1発明における「セラミックス集合基板5を分割線3で個々のセラミックス基板1に分割する」ことは、本件発明1の「前記窒化珪素系セラミックス焼結基板を前記辺ブレークラインに沿って折ることにより分割する」ことに相当する。
ただし、本件発明1が、前記窒化珪素系セラミックス焼結基板を前記辺ブレークラインに沿って折ることにより「前記辺ブレークライン及び前記角ブレークラインより内側の窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分と外側のマージン部とに」分割しているのに対し、甲1発明は分割することについては記載されているものの、窒化珪素セラミックス集合基板に相当する部分と外側のマージン部とに分割することについて特定されていない点で相違する。
よって、本件発明1と甲1発明とは、
「矩形状の窒化珪素系セラミックス焼結基板から所定のサイズの窒化珪素系セラミックス集合基板を製造する方法において、
前記窒化珪素系セラミックス焼結基板の外縁部に、前記窒化珪素系セラミックス集合基板の四辺に対応する辺ブレークラインを形成するとともに、隣接する辺ブレークラインの交点近傍に前記隣接する辺ブレークラインの両方と交差する角ブレークを形成し、
前記辺ブレークラインの深さを前記窒化珪素系セラミックス焼結基板の厚さの半分以下とし、
前記窒化珪素系セラミックス焼結基板を前記辺ブレークラインに沿って折ることにより分割する窒化珪素系セラミックス集合基板の製造方法。」
である点で一致し、次の点で相違する。
[相違点1]
本件発明1が、隣接する辺ブレークラインの両方と交差する「角ブレークライン」であって、「前記角ブレークライン」を「前記窒化珪素系セラミックス焼結基板を貫通するスリット」としているのに対し、甲1発明における「面取り部4’」は菱形状に切断加工されている点。
[相違点2]
本件発明1が、前記窒化珪素系セラミックス焼結基板を前記辺ブレークラインに沿って折ることにより「前記辺ブレークライン及び前記角ブレークラインより内側の窒化珪素系セラミックス集合基板に相当する部分と外側のマージン部とに」分割しているのに対し、甲1発明は分割することについては記載されているものの、窒化珪素セラミックス集合基板に相当する部分と外側のマージン部とに分割することについて特定されていない点。
(2)相違点についての判断
ア.[相違点1]について
甲1発明における「面取り部4’」は菱形状に切断加工されたものであって「窒化珪素系セラミックス焼結基板を貫通するスリット」ではない。また、甲1発明における「面取り部4’」を「窒化珪素系セラミックス焼結基板を貫通するスリット」とする動機付けも見いだせず、甲1発明から上記相違点1の構成とすることが容易と言える理由もない。
更に、甲第2号証(図1参照)や甲第3号証(図1,9参照)、甲第4号証(段落[0104]参照)、甲第5号証(段落[0017]および図1参照)にも、「前記角ブレークラインを前記窒化珪素系セラミックス焼結基板を貫通するスリット」とする点について、記載も示唆もされていない。
この点について、特許異議申立人は特許異議申立書にて、甲1発明は、段落0042に記載されているように窒化珪素系セラミックス集合基板5の面取り部をレーザー加工により貫通孔を形成するものであり、本件特許発明1の構成Cと一致していると主張している。
しかしながら、甲第1号証に記載された面取り部は、レーザー切断加工により基板の四隅をくり貫いて形成されるものであって、本件発明1のスリット(切れ目)とは異なるものであり、両者は一致するものではない。
よって、特許異議申立人の主張は採用することができない。
イ.小括
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明および甲第2号証から甲第5号証に記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2.本件発明2ないし6について
請求項2ないし6は、請求項1に従属する請求項であり、本件発明2ないし6は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2ないし6は、甲1発明および甲第2号証から甲第5号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第6 むすび
本件の請求項1ないし6に係る特許は、甲1発明および甲第2号証から甲第5号証に記載の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえず、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるということはできない。
よって、特許異議申立ての理由および証拠によっては、請求項1ないし6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2020-700557