特許異議申立
2025-700725
絶縁回路基板の製造方法
- 審判番号
- 2025-700725
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-032267
- 登録番号
- 7615769
- 請求日
- 2025年07月14日
- 審決日
- 2025年09月05日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三菱マテリアル株式会社
- 【権利者代理人】青山 正和
- 【異議申立人】廣瀬 尚子
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 丸山 高政
- 審判官 行武 哲太郎
- 分類
- P1651.16 -Y (H05K) / P1651.113-Y (H05K) / P1651.121-Y (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第29条の2
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7615769号発明「絶縁回路基板の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7615769号の請求項1~3に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7615769号(以下「本件特許」という。)の請求項1~3に係る特許についての出願は、令和3年3月2日の出願であって、令和7年1月8日にその特許権の設定登録がされ、同年1月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その全請求項(請求項1~3)に係る特許に対し、令和7年7月14日に特許異議申立人 廣瀬 尚子(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
前記特許異議の申立てのために提出された特許異議申立書を、以下では単に「申立書」という。
第2 本件発明
本件の特許請求の範囲の請求項1~3に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明3」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、その請求項に記載されたとおりのものと認める。
以下に本件特許請求の範囲の請求項1~3を示す。なお、後の参照の便宜のために、本件発明1については、以下に示すようにA~E′に分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
【請求項1】
A 分割用スクライブラインが形成された矩形状のセラミックス板と金属板とをろう材を介して積層する積層工程と、
B 積層体を加熱してろう材を溶融させた後、冷却することにより前記セラミックス板と前記金属板とを接合する接合工程と、
C 接合工程後に前記金属板をエッチングして不要部分を除去するエッチング工程と、
D エッチング工程後に前記セラミックス板を前記分割用スクライブラインに沿って分割することにより複数の絶縁回路基板を形成する分割工程と、
E を有する絶縁回路基板の製造方法であって、
F 前記セラミックス板に前記絶縁回路基板となる製品部とその周りのダミー部とを前記分割用スクライブラインにより区画形成するとともに、一つの角部を構成する二辺におけるダミー部を、前記一つの角部に対角に配置する角部を構成する二辺におけるダミー部より細幅に形成しておき、
G 前記積層工程では、前記セラミックス板の前記一つの角部に前記金属板の一つの角部を揃えた状態に位置決めすることにより、前記一つの角部に対角に配置する角部を構成する二辺の両方の辺に、前記セラミックス板のダミー部の一部を前記金属板からはみ出した状態に配置する
E′ ことを特徴とする絶縁回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記金属板を板素材から切断して形成する金属板形成工程を有し、前記積層工程では、前記金属板の切断端部において、バリが出ている側の面を前記セラミックス板の前記ダミー部の表面に重ねることを特徴とする請求項1に記載の絶縁回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記板素材は前記金属板の幅に設定された長尺材であり、前記金属板形成工程では、前記板素材を長さ方向に間欠的に搬送しながらシャーにより前記金属板の長さに切断して前記金属板を形成し、前記積層工程では、前記金属板の前記金属板形成工程における搬送方向の後方側の切断端部を前記一つの角部に対角に配置する角部を構成する二辺における前記ダミー部に配置し、かつ該切断端部のバリが出ている側の面を前記一つの角部に対角に配置する角部を構成する二辺における前記ダミー部の表面に重ねることを特徴とする請求項2に記載の絶縁回路基板の製造方法。
第3 証拠方法及び申立理由
申立人は、申立書とともに以下の1に示す甲第1号証~甲第4号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲4」という。)を提出し、以下の2に示す申立理由により、本件発明に係る特許を取消すべきものである旨主張する。
1 証拠方法
甲1 特開2021-72374号公報
甲2 特開2012-231124号公報
甲3 特開2016-39163号公報
甲4 特開2009-252971号公報
2 申立理由
申立理由は、概略、以下の理由1~理由3B3のとおりである。
理由1 本件発明1は、本件特許出願の日前の甲1に係る特許出願(以下「先願」という。)であって、本件特許出願後に出願公開がされたものの願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、先願の発明をした者が本件発明1の発明者と同一の者ではなく、本件特許出願の時にその出願人と先願の出願人とが同一の者ではないから、本件発明1についての特許は、特許法29条の2の規定に違反してされたものであり、同法113条1項2号に該当する。(申立書23頁2~3行)
理由2A 本件発明1は、特許法29条1項3号に掲げる発明に該当する甲2に記載された発明と同一であるから、本件発明1についての特許は、同項の規定に違反してされたものであり、同法113条1項2号に該当する。(申立書26頁7~8行)
理由2B 本件発明1は、特許法29条1項3号に掲げる発明に該当する甲4に記載された発明と同一であるから、本件発明1についての特許は、同項の規定に違反してされたものであり、同法113条1項2号に該当する。(申立書33頁4~5行)
理由3A1 本件発明1は、甲2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条1項2号に該当する。(申立書26頁7~9行)
理由3B1 本件発明1は、甲4に記載された発明及び甲2に示される事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条1項2号に該当する。(申立書33頁4~6行)
理由3A2 本件発明2は、甲2に記載された発明及び甲3に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条1項2号に該当する。(申立書27頁1~2及び22~25行)
理由3B2 本件発明2は、甲4に記載された発明及び甲3に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条1項2号に該当する。(申立書34頁5~7及び20~23行)
理由3A3 本件発明3は、甲2に記載された発明及び甲3に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条1項2号に該当する。(申立書29頁9~11及び同頁26行~30頁3行)
理由3B3 本件発明3は、甲4に記載された発明並びに甲2及び甲3に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであり、同法113条1項2号に該当する。(申立書36頁6~12及び23~26行)
第4 理由1についての判断
甲1は、令和3年5月6日に公開された公開特許公報であり、甲1によれば、先願すなわち特願2019-198428号(令和元年10月31日出願)の出願人及び発明者は、本件特許の出願人及び発明者と同一の者ではない。
そして、甲1に掲載の明細書、特許請求の範囲及び図面は、先願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲及び図面である。
そこで、本件発明1と甲1に記載された発明とが実質的に同一であるかについて、以下、検討する。
1 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。なお、下線は強調のために当審で付した。
(1)「【0026】
セラミックス基板100の第一の主面100Aは、区画線によって複数に区画されている。図1に示すように、第一の主面100Aには、区画線として、第一の方向(図1の上下方向)に沿って延在し且つ等間隔で並ぶ複数の区画線L1と、第一の方向に直交する第二の方向(図1の左右方向)に沿って延在し且つ等間隔で並ぶ複数の区画線L2と、が設けられている。区画線L1と区画線L2とは互いに直交している。セラミックス基板100は、区画線L1及び区画線L2によって画定される複数の区画部18を有する。
【0027】
区画線L1,L2は、例えば、複数の凹みが直線状に並んで構成されていてもよいし、線状に溝が形成されていてもよい。具体的には、レーザー光で形成されるスクライブラインであってよい。レーザー源としては、例えば、炭酸ガスレーザー及びYAGレーザー等が挙げられる。このようなレーザー源からレーザー光を間欠的に照射することによってスクライブラインを形成することができる。なお、区画線L1,L2は、等間隔で並んでいなくてもよく、また、直交するものに限定されない。また、直線状ではなく、曲線状であってもよいし、折れ曲がっていてもよい。
【0028】
セラミックス基板100の第一の主面100A及び第二の主面100Bは略長方形であり、側端部42に属する4つの角部40を有する。この4つの角部40のうち、1つの角部40に、切り欠き部11を有する。切り欠き部11は、第一の主面100A及び第二の主面100Bの向きを識別する識別部10として機能する。切り欠き部11は、例えばC面取り形状であってもよいし、R面取り形状であってもよい。識別を簡便に行う観点から、切り欠き部11のサイズは目視可能であることが好ましい。例えば、切り欠き部11は、互いに直交して角部40を構成する2つの辺の仮想延長線の交点から、仮想延長線に沿って3~10mm程度の長さで切り欠いて形成されたものであってよい。」
(2)「【0030】
識別部10の位置は特に限定されず、例えば、角部40以外の側端部42に設けられていてよい。側端部42は、例えば、最も外側の区画線L1及びL2の一方又は双方と、セラミックス基板100の外縁との間の外周部分である。換言すれば、セラミックス基板100の外縁と、第一の主面100Aの中心Cから最も離れた位置にある区画線L1及び区画線L2よりも外側の部分である。セラミックス基板100が複数の分割基板に分割される回路基板(集合基板)である場合、導体部が形成される複数の区画部18を取り囲む領域が側端部42に相当する。
【0031】
第一の主面100Aは、識別部10よりも中心C寄りに、少なくとも一つの区画線L1,L2を有する。すなわち、中心Cと識別部10との間に区画線L1,L2を有する。この区画線L1,L2に沿って切断することによって、識別部10よりも中心C寄りの部分を回路基板(分割基板)等の各種加工品に有効利用することができる。」
(3)「【0040】
図6は、一実施形態に係る複合基板の斜視図である。複合基板200は、互いに対向するように配置された一対の金属板111,112と、一対の金属板111,112の間にセラミックス基板100を備える。金属板111及び金属板112は、それぞれ、セラミックス基板100の第一の主面及び第二の主面を覆うようにセラミックス基板100に接合されている。セラミックス基板100、金属板111、及び金属板112の形状及びサイズは同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、金属板111と金属板112の厚みは異なっていてもよい。金属板111及び金属板112とセラミックス基板100は、例えば、ろう材によって接合されていてよい。」
(4)「【0050】
図9は、一実施形態に係る回路基板の斜視図である。回路基板300は、セラミックス基板100と、セラミックス基板100を挟んで対向配置された導体部20と、を備える。導体部20は、区画部18毎に独立して、第一の主面100A及び第二の主面100B上に設けられている。すなわち、区画部18毎に、互いに対向するように配置された一対の導体部20が設けられている。セラミックス基板100の一つの角部40に識別部10を有する。セラミックス基板100が識別部10を有することから、第一の主面100A及び第二の主面100B上に設けられている導体部20が同じ形状であっても、セラミックス基板100の第一の主面100A及び第二の主面100Bの向きを識別することができる。このため、複数の回路基板300があったときに、当該向きを揃えて回路基板300を配置することによって、品質のばらつきを低減することができる。これによって、回路基板300の信頼性を向上することができる。
【0051】
回路基板300は集合基板である。したがって、区画線L1,L2に沿って切断され、複数の分割基板(回路基板)に分割される。識別部10がセラミックス基板の角部又は側端部に設けられていれば、分割基板から識別部10を排除することができる。分割基板の信頼性を向上するとともに、セラミックス基板100の有効活用を図ることができる。分割基板は例えばパワーモジュール等の部品として用いられる。分割基板における導体部20には、例えば電子部品が実装される。」
(5)「【0053】
次に、セラミックス基板の製造方法の一例として、セラミックス基板100の製造方法を説明する。セラミックス基板100の製造方法は、セラミックスで構成される基材を得る工程と、基材の表面にレーザー光を照射して表面を複数に区画する区画線L1,L2を形成するとともに、基材の角部をレーザーで加工して切り欠き部11を設けて、セラミックス基板100を得る工程と、を有する。
【0054】
セラミックスで構成される基材は、以下の手順で製造することができる。まず、無機化合物の粉末、バインダ樹脂、焼結助剤、可塑剤、分散剤、及び溶媒等を含むスラリーを成形してグリーンシートを得る。
【0055】
無機化合物の例としては、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素、及び酸化アルミニウム等が挙げられる。焼結助剤としては、希土類金属、アルカリ土類金属、金属酸化物、フッ化物、塩化物、硝酸塩、及び硫酸塩等が挙げられる。これらは一種のみ用いてもよいし二種以上を併用してもよい。焼結助剤を用いることにより、無機化合物粉末の焼結を促進させることができる。バインダ樹脂の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、及び(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。」
(6)「【0057】
次に、グリーンシートの脱脂及び焼結を行って、セラミックスで構成される基材が得られる。脱脂は、例えば、400~800℃で、0.5~20時間加熱して行ってよい。これによって、無機化合物の酸化及び劣化を抑制しつつ、有機物(炭素)の残留量を低減することができる。焼結は、窒素、アルゴン、アンモニア又は水素等の非酸化性ガス雰囲気下、1700~1900℃に加熱して行う。これによって、セラミックスで構成される基材を得ることができる。」
(7)「【0063】
次に、複合基板の製造方法の一例として、複合基板200の製造方法を説明する。複合基板200の製造方法は、上述のセラミックス基板100を用いる。すなわち、この製造方法は、第一の主面100Aと第二の主面100Bの向きを識別する識別部10を有する、セラミックス基板100を準備する工程と、識別部10による第一の主面100Aと第二の主面100Bの向きの識別結果に基づいて、セラミックス基板100の第一の主面100A及び第二の主面100Bに、金属板111及び金属板112をそれぞれ接合し、複合基板200を得る工程を有する。金属板111,112は、セラミックス基板100と同様の平板形状であってよい。金属板111,112は、ろう材を介して、セラミックス基板100の第一の主面100A及び第二の主面100Bにそれぞれ接合される。
【0064】
具体的には、まず、セラミックス基板100を準備する。セラミックス基板100は上述の製造方法によって製造することができる。次に、識別部10によってセラミックス基板100の第一の主面100Aと第二の主面100Bの向きを識別する。これは目視に行ってもよいし、公知の画像解析方法によって行ってもよい。識別結果に基づいて、セラミックス基板100の第一の主面100A及び第二の主面100Bに、ロールコーター法、スクリーン印刷法、又は転写法等の方法によってペースト状のろう材を塗布する。ろう材は、例えば、銀及びチタン等の金属成分、有機溶媒、及びバインダ等を含有する。ろう材の粘度は、例えば5~20Pa・sであってよい。ろう材における有機溶媒の含有量は、例えば、5~25質量%、バインダ量の含有量は、例えば、2~15質量%であってよい。
【0065】
ろう材が塗布されたセラミックス基板100の第一の主面100A及び第二の主面100Bに、金属板111及び112をそれぞれ貼り合わせる。その後、加熱炉で加熱してセラミックス基板100と金属板111,112とを十分に接合させて、図6に示す複合基板200を得る。加熱温度は例えば700~900℃であってよい。炉内の雰囲気は窒素等の不活性ガスであってよく、大気圧未満の減圧下で行ってもよいし、真空下で行ってもよい。加熱炉は、複数の接合体を連続的に製造する連続式のものであってもよいし、一つ又は複数の接合体をバッチ式で製造するものであってもよい。加熱は、接合体を積層方向に押圧しながら行ってもよい。このようにして複合基板200を製造することができる。」
(8)「【0068】
次に、回路基板の製造方法の一例として、回路基板300の製造方法を説明する。上述の複合基板200の製造方法に引き続いて、複合基板200における金属板111,112の一部を除去して区画部18毎に独立した導体部20を形成する工程を行う。この工程は、例えば、フォトリソグラフィによって行ってよい。具体的には、まず、図10に示すように、複合基板200の一方面200Aに感光性を有するレジストを印刷する。そして、露光装置を用いて、所定形状を有するレジストパターンを形成する。レジストはネガ型であってもよいしポジ型であってもよい。未硬化のレジストは、例えば洗浄によって除去する。
【0069】
図10は、一方面200Aにレジストパターン30が形成された複合基板200を示す斜視図である。図10には、一方面200A側のみを示しているが、他方面200B側にも同様のレジストパターンが形成される。レジストパターン30は、一方面200A及び他方面200Bにおいて、セラミックス基板100の各区画部18に対応する領域に形成される。」
(9)「【0071】
レジストパターン30を形成した後、エッチングによって、金属板111,112のうちレジストパターン30に覆われていない部分を除去する。これによって、当該部分にはセラミックス基板100の第一の主面100A及び第二の主面100Bが露出する。その後、レジストパターン30を除去して、区画部18毎に独立した導体部20を形成する。この導体部20は、図9に示すように、区画部18毎にセラミックス基板100を挟んで対をなすように形成される。以上の工程によって、図9に示すような回路基板300が得られる。」
(10)図1
[図:0001428037000001.jpg]
(11)図6
[図:0001428037000002.jpg]
(12)図9
[図:0001428037000003.jpg]
(13)図10
[図:0001428037000004.jpg]
2 甲1発明の認定
前記1の記載によれば、甲1には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、先願発明に記号a~pを付して分説し、「構成a」のようにして参照する。
〈先願発明〉
a 回路基板300の製造方法であって、(【0068】)
b セラミックスで構成される基材を得る工程であって、(【0053】)
b1 無機化合物の粉末、バインダ樹脂等を含むスラリーを成形してグリーンシートを得、無機化合物の例としては、窒化ケイ素(Si3N4)、窒化アルミニウム(AlN)、炭化ケイ素、及び酸化アルミニウム等が挙げられ、グリーンシートの脱脂及び焼結を行って、セラミックスで構成される基材が得られる、(【0054】、【0055】、【0057】)
b′ 工程と、
c 基材の表面にレーザー光を照射して表面を複数に区画する区画線L1,L2を形成するとともに、基材の角部をレーザーで加工して切り欠き部11を設けて、セラミックス基板100を得る工程と、(【0053】)
d 上述のセラミックス基板100を準備する工程と、(【0063】)
e セラミックス基板100の第一の主面100A及び第二の主面100Bに、ろう材を塗布し、金属板111及び金属板112をそれぞれ接合し、複合基板200を得る工程と、(【0063】~【0065】)
f 導体部20を形成する工程であって、(【0068】)
f1 複合基板200の一方面200Aに感光性を有するレジストを印刷し、レジストパターン30を形成し、レジストパターン30は、各区画部18に対応する領域に形成され、(【0068】、【0069】)
f2 エッチングによって、金属板111,112のうちレジストパターン30に覆われていない部分を除去する(【0071】)
f′ 工程と、
a′ を有し、
g セラミックス基板100は、区画線L1及び区画線L2によって画定される複数の区画部18を有し、(【0026】)
h セラミックス基板100の第一の主面100A及び第二の主面100Bは略長方形であり、側端部42に属する4つの角部40を有し、(【0028】)
i 側端部42は、最も外側の区画線L1及びL2の一方又は双方と、セラミックス基板100の外縁との間の外周部分であり、導体部が形成される複数の区画部18を取り囲む領域が側端部42に相当し、(【0030】)
j 回路基板300は、セラミックス基板100と、セラミックス基板100を挟んで対向配置された導体部20と、を備え、(【0050】)
k 回路基板300は集合基板であり、区画線L1,L2に沿って切断され、複数の分割基板に分割され、(【0051】)
l 識別部10がセラミックス基板の角部又は側端部に設けられていれば、分割基板から識別部10を排除することができ、(【0051】)
m 区画線L1,L2は、レーザー光で形成されるスクライブラインであり、(【0027】)
n 切り欠き部11は、識別部10として機能し、第一の主面100Aは、識別部10よりも中心C寄りに、区画線L1,L2を有し、識別部10よりも中心C寄りの部分を分割基板に有効利用することができ、(【0028】、【0031】)
o セラミックス基板100、金属板111、及び金属板112のサイズは異なっていてもよい、(【0040】)
p 回路基板300の製造方法。
3 本件発明1と先願発明との対比
事案に鑑み、発明特定事項Fについて対比する。
発明特定事項Fは、「前記セラミックス板に前記絶縁回路基板となる製品部とその周りのダミー部とを前記分割用スクライブラインにより区画形成するとともに、一つの角部を構成する二辺におけるダミー部を、前記一つの角部に対角に配置する角部を構成する二辺におけるダミー部より細幅に形成しておき、」というものである。
(1)先願発明の「セラミックス基板100」(構成c)は、本件発明1の「セラミックス板」に相当する。
(2)本件の明細書には、「従来のパワーモジュール等に用いられる絶縁回路基板として、例えば、特許文献1に記載の金属接合セラミックス基板(絶縁回路基板)では、AlN(窒化アルミ)、Al2O3(アルミナ)、Si3N4(窒化ケイ素)などからなるセラミックス基板と、このセラミックス基板の一方の面に第一の金属板が接合されて構成された回路層と、セラミックス基板の他方の面に第二の金属板が接合されて構成された金属層とを備えている。」(【0002】)との記載、「本実施形態の製造方法で製造される絶縁回路基板1は、例えば電源回路に用いられるパワーモジュール用基板である。この絶縁回路基板1は、図2に示すように、矩形状のセラミックス基板2と、そのセラミックス基板2の一方の面に形成された回路層3と、セラミックス基板2の他方の面に形成された放熱層4と、を有している。」(【0015】)との記載、及び、「セラミックス基板2は、回路層3と放熱層4との間の電気的接続を防止するものであって、」(【0016】)との記載がある。
上記記載によれば、本件発明1の「絶縁回路基板」は、絶縁性のセラミックス基板の両面に金属層を備えた回路基板であると解される。
(3)先願発明において、「回路基板300は、セラミックス基板100と、セラミックス基板100を挟んで対向配置された導体部20と、を備え」る(構成j)から、「回路基板300」は、セラミックス基板100の両面に導体部20を備えた回路基板であると認められる。
ここで、先願発明の構成b~cによれば、先願発明の「セラミックス基板100」は、窒化ケイ素などによる絶縁性のセラミックス基板であると解される。
また、先願発明の「回路基板300」は、「集合基板であり」「複数の分割基板に分割され」る(構成k)から、「分割基板」の各々も、「回路基板300」と同様に、絶縁性のセラミックス基板100の両面に導体部20を備えた回路基板であると解される
そうすると、前記(2)に示した解釈に照らせば、先願発明の「分割基板」は、本件発明1の「絶縁回路基板」に相当する。
(4)先願発明の「回路基板300」は、「集合基板であり、区画線L1,L2に沿って切断され、複数の分割基板に分割され」る(構成k)ものであって、「セラミックス基板100は、区画線L1及び区画線L2によって画定される複数の区画部18を有し、」(構成g)、「レジストパターン30は、各区画部18に対応する領域に形成され」る(構成f1)のだから、「回路基板300」のうち「区画部18」に対応する部分にのみ導体の回路パターンが残存すると解される。
そうすると、「回路基板300」のうち「区画部18」に対応する部分は、回路基板の製品として用いられる部分であると解されるから、本件発明1の「絶縁回路基板となる製品部」に相当する。
(5)先願発明の「回路基板300」のうち、前記(4)に示した「区画部18」に対応する部分以外の部分、すなわち、「最も外側の区画線L1及びL2の一方又は双方と、セラミックス基板100の外縁との間の外周部分であり、導体部が形成される複数の区画部18を取り囲む領域」である「側端部42」(構成i)に属する「角部」には「切り欠き部11」があり(構成c)、「切り欠き部11」は「識別部10として機能」するものであって(構成n)、「識別部10がセラミックス基板の角部又は側端部に設けられていれば、分割基板から識別部10を排除することができ」る(構成l)のだから、先願発明の「側端部42」は、製品とはならず、排除される部分であると解される。
そうすると、先願発明の「側端部42」(構成i)すなわち製品部の外周部分は、本件発明1の「その周りのダミー部」に相当する。
(6)先願発明の「区画線L1,L2」は、「スクライブラインであり」(構成m)、「区画線L1,L2に沿って切断され、複数の分割基板に分割」する(構成k)ためのものであるから、本件発明1の「分割用スクライブライン」に相当し、「区画線L1,L2」は、その名のとおり区画を形成するものと解されるから、本件発明1と先願発明とは、「前記セラミックス板に前記絶縁回路基板となる製品部とその周りのダミー部とを前記分割用スクライブラインにより区画形成する」点で一致する。
(7)先願発明の「セラミックス基板100」は、その「第一の主面100A及び第二の主面100Bは略長方形であり、側端部42に属する4つの角部40を有」するもの(構成h)である。
ここで、「切り欠き部11」が設けられた「角部40」を「一つの角部」と呼ぶことは任意であり、こう呼んだ場合、その対角に位置する「角部40」は「前記一つの角部に対角に配置する角部」となる。
そして、先願発明の「切り欠き部11」が設けられた「角部40」を構成する「側端部42」(図1の右側及び下側の「側端部42」であり、以下では「右下側端部42」という。)は、本件発明1の「一つの角部を構成する二辺におけるダミー部」に相当し、先願発明の前記「角部40」の対角に位置する「角部40」を構成する「側端部42」(図1の左側及び上側の「側端部42」であり、以下では「左上側端部42」という。)は、本件発明1の「前記一つの角部に対角に配置する角部を構成する二辺におけるダミー部」に相当する。
そうすると、前記(6)も合わせると、本件発明1と先願発明とは、「前記セラミックス板に前記絶縁回路基板となる製品部とその周りのダミー部とを前記分割用スクライブラインにより区画形成するとともに、一つの角部を構成する二辺におけるダミー部と、前記一つの角部に対角に配置する角部を構成する二辺におけるダミー部とを形成してお」く点で共通するものの、次の相違点において相違する。
〈相違点〉
本件発明1は、「一つの角部を構成する二辺におけるダミー部を、前記一つの角部に対角に配置する角部を構成する二辺におけるダミー部より細幅に形成してお」くのに対し、先願発明の「右下側端部42」は、「左上側端部42」より細幅に形成されているか不明な点。
上記相違点について、ある角部を構成する二辺におけるダミー部を、前記角部に対角に配置する角部を構成する二辺におけるダミー部より細幅に形成することは、甲1~甲4のいずれにも記載も示唆もなく、技術常識ではない。
よって、上記相違点は、実質的な相違点であると認められる。
(8)上記相違点について、申立人は、次のとおり主張する。
「[図1]からわかるとおり、角部と側端部は区画部よりも狭くなっており、識別部28に含まれる切り欠き部が形成された角部は他の角部よりも細幅に形成されております。区画部は回路基板に用いられる箇所であります。つまり、角部と側端部はセラミックス回路基板に用いられない箇所であるからダミー部に相当することは明らかです。これらのことは、本件特許発明1における「一つの角部を構成する二辺におけるダミー部を、前記一つの角部に対角に配置する角部を構成する二辺におけるダミー部より細幅に形成」しておく構成に相当します。」(申立書21頁6~13行、上記主張中の「識別部28」は、「識別部10」の誤記と認める。)
申立人の主張は判然としないが、以下のとおり、採用できない。
まず、申立人が主張する「角部と側端部は区画部よりも狭くなって」いる点は、本件発明1に特定されている事項と無関係である。先願発明の「側端部」及び「区画部」は、それぞれ本件発明1の「ダミー部」及び「製品部」に対応するものである。本件発明1は、「ダミー部」が「製品部」よりも狭いとは特定されていない。
次に、申立人が主張する「識別部10に含まれる切り欠き部が形成された角部は他の角部よりも細幅に形成されて」いる点も、本件発明1に特定されている事項と無関係である。本件発明1は、「一つの角部を構成する二辺におけるダミー部を、前記一つの角部に対角に配置する角部を構成する二辺におけるダミー部より細幅に形成」(発明特定事項F)を特定しているのであって、一方の「ダミー部」と他方の「ダミー部」との幅を特定しているが、一方の「角部」と他方の「角部」との幅は特定していない。
加えて、図1を参照しても、右下側端部42が左上側端部42に比べて細幅に形成されていると認めることはできない。
以上によれば、申立人の主張は採用できない。
(9)上記相違点に関連し、申立人は、甲2及び甲4について、以下のとおり主張する。
甲2について:「[0043]や[図1]からもわかるとおり、ダミー部の領域はセラミックス回路基板の領域よりも狭くなっており、一つの角部は、他の角部よりも線幅に形成されております。これらのことは、本件特許発明1における「一つの角部を構成する二辺におけるダミー部を、前記一つの角部に対角に配置する角部を構成する二辺におけるダミー部より細幅に形成」しておく構成に相当します。」(申立書24頁9~14行、上記主張中の「線幅」は「細幅」の誤記と認める。)
甲4について:「[0051]からわかるとおり、ダミー部の領域はセラミックス基板の領域よりも狭くなっており、一つの角部は、他の角部よりも細幅に形成されております。このことは、本件特許発明1における「一つの角部を構成する二辺におけるダミー部を、前記一つの角部に対角に配置する角部を構成する二辺におけるダミー部より細幅に形成」しておく構成に相当します。」(申立書31頁9~14行)
ア 甲2についての申立人の主張について検討する。
申立人の主張の「ダミー部の領域はセラミックス回路基板の領域よりも狭くなっており」及び「一つの角部は、他の角部よりも細幅に形成されております。」については、前記(8)と同様、本件発明1に特定されている事項と無関係であり、採用できない。
甲2の【0043】の記載は、次のとおりである。
「【0043】
[分割]
セラミックス回路基板集合体1に形成した分割線に沿って分割して1枚のセラミックス回路基板集合体1からセラミックス回路基板2を9枚とダミー部31~35を15個得た。ダミー部31におけるセラミックス基板の寸法は5mm×5mm一定とし、厚さは0.4mmである。セラミックス基板の表裏に接合された一対のダミー金属板141、151は、同形状かつ同面積であってセラミックス基板を挟んで対向配置し、さらにその面積はセラミックス基板の80%の4.47×4.47mm2である。」
また、甲2の図1を次に示す。
【図1】
[図:0001428037000005.jpg]
甲2の【0043】の記載及び図1を参照しても、ある角部を構成する二辺におけるダミー部を、前記一つの角部に対角に配置する角部を構成する二辺におけるダミー部より細幅に形成することについては、記載も示唆もない。
よって、申立人の甲2についての主張は採用できない。
イ 甲4についての申立人の主張について検討する。
申立人の主張の「ダミー部の領域はセラミックス基板の領域よりも狭くなっており」及び「一つの角部は、他の角部よりも細幅に形成されております。」については、前記(8)と同様、本件発明1に特定されている事項と無関係であり、採用できない。
甲4の【0051】の記載は、次のとおりである。
「【0051】
このサンプルは、最終的にセラミックス基板の外形が長さ41.0mm、幅35.5mmとなる4個の金属セラミックス接合基板が得られるように設計した。そして、分割前はセラミックス基板に対して、その中央部に田型に4個の金属セラミックス接合基板が配置され、その外周部にダミー部のセラミックス基板(後でセラミックス基板を割ったときに捨てる部分)を3mmとってある、設計となっている。」
上記記載に「その外周部にダミー部のセラミックス基板(後でセラミックス基板を割ったときに捨てる部分)を3mmとってある」と記載されているように、甲4のダミー部は、いずれの辺においても同じ幅であると解される。
よって、申立人の主張は採用できない。
4 本件発明1と先願発明との同一性について
前記3のとおりであるから、本件発明1と先願発明とは、前記3(7)に示した相違点において実質的に相違する。
よって、他の発明特定事項について対比するまでもなく、本件発明1と先願発明とは実質的に同一ではないと認められる。
したがって、理由1には理由がない。
第5 理由2A及び2Bについての判断
前記第4(特に第4、3(7))に示したように、甲1~甲4のいずれにも、前記相違点に係る構成ついて記載も示唆もない。
そうすると、本件発明1と甲2に記載された発明(以下「甲2発明」という。)との間には、前記相違点と同様の相違点が存在し、同様に、本件発明1と甲4に記載された発明(以下「甲4発明」という。)との間にも、前記相違点と同様の相違点が存在する。
よって、本件発明1と甲2発明及び甲4発明とは、同一ではないと認められる。
したがって、理由2A及び2Bには理由がない。
第6 理由3A1及び3B1についての判断
本件発明1と甲2発明との間、及び、本件発明1と甲4発明との間には、前記第5に示した相違点がある。
そして、前記第4、3(7)に示したように、上記相違点に係る構成ついては甲2~甲4のいずれにも記載も示唆もなく、技術常識ではない。
また、上記相違点に係る構成が、周知技術であるとも認められない。
よって、上記相違点に係る構成は、当業者といえども甲2~甲4に記載された発明から容易に想到し得たと認めることはできない。
したがって、理由3A1及び3B1には理由がない。
第7 理由3A2~3B3についての判断
本件発明2及び3は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項により限定されたものであるから、本件発明2及び3と、甲2発明及び甲4発明との間には、前記第5に示した相違点がある。
そして、該相違点は、前記第6のとおり、容易に想到し得たものではない。
したがって、理由3A2~3B3には理由がない。
第8 むすび
前記第4~第7によれば、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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